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2013年 04月 21日

注目新刊その1:F・シュレーゲル唯一の大学講義『超越論的哲学』が完訳、ほか

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イェーナ大学講義『超越論的哲学』
フリードリヒ・シュレーゲル(Friedrich Schlegel, 1772-1829)著 酒田健一(1934-)訳・註解
御茶の水書房 2013年3月刊 本体8,400円 A5判上製382頁 ISBN978-4-275-01023-0

帯文より:ドイツ観念論哲学の担い手たちと並走・競合しつつその特異な書法と論法――「私の哲学は諸断章の体系、諸構想の進展である――によって独自の思想世界を切り拓いていった初期ロマン主義の旗手フリードリヒ・シュレーゲルの“幻”の大学講義、本邦初訳、稠密な註解・解説付き。

目次:
序論
 体系詳論
第一部 世界の理論
第二部 人間の理論
第三部 哲学の自己自身への回帰、あるいは哲学の哲学
訳註
訳者解説
年譜 
訳者後記
事項索引
人名索引

★発売済。奥付は3月刊ですが、発売は今月になってから。大学での唯一の講義「Transcendentalphilosophie」(1800-1801)の全訳です。底本は新校訂全集版である『フリードリヒ・シュレーゲル原典批判的全集版』第12巻(1964年刊)に収録されたテクスト。「訳者解説」では本書の思想圏を以下のように要約されています。「自然を「生成する神性」と捉え、この「神性の顕現」としての自然の探究をもって哲学の根源的課題であるとした独自の自然汎神論的視界の中で「宗教の構成」のためには「信仰、奇蹟、啓示の概念は不要である」と明言し、また「宗教的位階制度」と「家族制度」とを政治カテゴリーの両構成要素としながらも、依然としてカントの『永遠平和のために』に対抗して1776年に発表した『共和制の概念についての試論』の理念を捨てず、民衆の反乱の権利をも是認する「民主主義的共和国」を理想の国家体制と見ることに執着し続けた思想圏」(323-324頁)。『共和制の概念についての試論』には山本定祐訳「共和制概念試論」(『ドイツ・ロマン派全集(20)-太古の夢 革命の夢』国書刊行会、1992年)があります。シュレーゲルの思想はその後さらに進化し、新たな雑誌の創刊や私講義、公開講義などを積み重ねていきます。作家や批評家としては著名でも、思想家としての全体像はまだ日本ではよく知られていないため、本書はその理解のための貴重な、偉大な里程標となるに違いありません。


心情研究者としてのゲーテ
ルートヴィッヒ・クラーゲス(Ludwig Klages, 1872-1956)著 田島正行(1949-)訳
うぶすな書院 2013年4月 本体1,800円 46判上製160頁 ISBN978-4-90047-028-6

目次:
第一章 ゲーテの精神史的位置
第二章 現象研究者としてのゲーテ
第三章 無意識の発見者としてのゲーテ
第四章 造形の思想家としてのゲーテ
第五章 性格学者としてのゲーテ
原註
付録『ゲーテ的人間の限界についての覚書』(1917年)
訳註
訳者あとがき

★発売済。「Goethe als Seelenforscher」の全訳に、付録として「Bemerkungen ueber die Schranken des Goetheschen Menschen」の翻訳を付したものです。前者の底本は1932年にライプツィヒで出版された刊本です。後者は、『人間と大地』(1920年)に収録されている論考で、既訳には、「ゲーテ的人間の限界」(『意識と生命』所収、小立稔訳、畝傍書房、1943年)と、「ゲーテ的人間の柵について」(千谷七郎・小谷幸雄訳、『人間と大地』所収、うぶすな書院、1986年)があります。「訳者あとがき」によれば本書は「クラーゲス自身が学問的に基礎づけ、体系化した性格学の成果に基づいて、「ゲーテの心情学(心理学)からそれが秘めている普遍的拘束力のある地を取り出そうとする」試み」(143頁)であるとのことです。「小著ながら、クラーゲスの著作の中でも大変わかりやすく、魅力的な書で〔…〕クラーゲスの性格学、それどころか彼の深遠な哲学の格好の入門書」(同頁)でもある、と。田島さんによるクラーゲスの翻訳は『宇宙生成的エロース』(うぶすな書院、2000年)に続く2冊目。


アントロポゾフィー医学の本質
ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861-1925)+イタ・ヴェーグマン(Ita Wegman, 1876-1943)著 浅田豊(1952-)+中谷三恵子(1955-)訳
水声社 2012年4月 本体2,500円 46判上製 ISBN978-4-89176-968-0

カバー裏紹介文より:今日承認されている人間についての科学的な知識に新たな認識(アントロポゾフィー=人智学)を付け加え、医学的な知識と技術のための新しい可能性を見出す。1935年、ルドルフ・シュタイナーが、迫りくる死の三日前まで、最後の力を振りしぼって推敲をつづけた最後の著書であり、また唯一の共同執筆による著書の待望の完訳。

目次:
序文(ミヒャエラ・グレックラー)
第一章 医術の基礎としての、真の人間本性の認識
第二章 なぜ人は病気になるのか
第三章 生命の現れ
第四章 感受する有機体の本質
第五章 植物、動物、人間
第六章 血液と神経
第七章 治癒作用の本質
第八章 人間の有機体内の諸活動、糖尿病
第九章 人体における蛋白質の役割とアルブミン尿
第十章 人間の有機体における脂肪の役割と見せかけの局所症候群
第十一章 人体の造形と痛風
第十二章 人間の有機体の構築と分離
第十三章 病気と治癒の本質
第十四章 治療的な考え方について
第十五章 治療方法
第十六章 薬剤の認識
第十七章 薬剤認識の基礎としての素材認識
第十八章 オイリュトミー療法
第十九章 特徴的な症例
第二十章 典型的な薬剤
初版(1925年)の前書き(イタ・ヴェーグマン)
初版(1925年)の後書き
日本におけるアントロポゾフィー医学の発展(安達晴己)
訳者後書き

★発売済。原題は直訳すると「霊学的認識による医術拡張の基礎」。底本は「Grundlegendes fuer eine Erweiterung der Heilkunst nach geisteswissenschatflichen Erkenntnissen」の第7版(1991年刊)。第一章の末尾には本書の内容の端的な紹介があります。「人間は、体、エーテル体、魂(アストラル体)、そして自我(霊)から成り立っている時、人間である。健康な人間はこれらの構成要素から観察され、病気の人間はこれらの構成要素のバランスが崩れているところが知覚されなければならない。そして健康になるためには、この崩れたバランスを再び取り戻す治療薬を見つけ出さなければならない。/以上のような原則にもとづく医学的見方が、本書の示すところである」(30-31頁)。「初版の後書き」によれば、「本書の続きとして、金、銀、鉛、鉄、銅、水銀、錫といった金属の中に、地上的宇宙的な諸力として働いているものを取り上げ、どのようにこれらを医術の中で用いれば良いかを取り上げることが、私たちの計画であった。そして古代の秘儀の本質の中に、金属と惑星の関係について、また金属と人間の有機体のさまざまな機関との関係について、どのような深い理解があったかについても、叙述されるはずだった」とのことです。シュタイナーの医学関連書、治療論、健康論、栄養学、アントロポゾフィー身体論などの既訳には、『オカルト生理学』(高橋巖訳、ちくま学芸文庫、2004年)や『治療教育講義』(高橋巌訳、ちくま学芸文庫、2005年)をはじめ、以下のものがあります。

『病気と治療』西川隆範訳、イザラ書房、1992年
『健康と食事』西川隆範訳、イザラ書房、1992年
『あたまを育てるからだを育てる』(西川隆範訳、風濤社、2002年;新装版、2011年)
『人智学から見た家庭の医学』西川隆範訳、風濤社、2003年
『健康と病気について――精神科学的感覚教育の基礎』由井寅子監修、熊坂春樹訳、ホメオパシー出版、2004年;新装改訂版、2007年
『身体と心が求める栄養学』西川隆範訳、風濤社、2005年
『医学は霊学から何を得ることができるか』中村正明訳、水声社、2006年
『シュタイナー〈からだの不思議〉を語る』中谷三恵子監修、西川隆範訳、イザラ書房、2010年
『私たちの中の目に見えない人間――治療の根底にある病理』(石川公子+小林國力訳、涼風書林、2011年)

また、序文を寄せているミヒャエラ・グレックラーには『医療と教育を結ぶシュタイナー教育』(石川公子+塚田幸三訳、群青社、2006年)や『才能と障がい――子どもがもたらす運命の問いかけ』(村上祐子訳、涼風書林、2009年)などの訳書があります。

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存在と時間(一)
ハイデガー(Martin Heidegger, 1889-1976)著 熊野純彦(1958-)訳
岩波文庫 2013年4月 本体1,260円 文庫判並製532頁 ISBN978-4-00-336514-4

カバーソデ紹介文より:「存在すること」の意味はなにか。――1927年、マルティン・ハイデガーは『存在と時間』を発表、鮮烈な問いで哲学界の地形を一変させた。生まれでる思考の彩りをも伝える正確な訳文に、注解・訳注、全体を見通す梗概を付す、画期的新訳。(全四冊)

★発売済。底本はニーマイヤー社の第17版(1993年)です。岩波文庫では、桑野務訳全三巻(1960, 1961, 1963年)に続く、新訳になります。桑野版での底本は第4版(1935年)でした。同三巻本は今回の新訳の発売のために版元では品切重版未定になり、書店さんの店頭在庫が新本入手の最後のチャンスになります。三巻本は熊野訳でも参照されていますから、お持ちでない方は急いでお買い求めになることをお薦めします。なお、店頭の現物を見て調べた限りでは、上巻は63刷(2011年11月)、中巻は48刷(2011年5月)、下巻は49刷(2012年1月)を確認できました。文庫で読める『存在と時間』には細谷貞雄訳(ちくま学芸文庫、上下巻、1994年)があります。これは理想社版『ハイデッガー全集』第16・17巻(1963-1964)を文庫化したもので、底本は1927年の初版本ですが、1960年の第9版までのすべての版を参照し、約120箇所にも及ぶ異動について訳者注記でひとつひとつ特記されています。ちくま学芸文庫版では上巻が19刷(2012年5月)、下巻が16刷(2012年4月)に達しています。ところで今回の新訳の訳者でいらっしゃる熊野さんは作品社で目下カントの三批判書を上梓されている最中で、昨年1月に『純粋理性批判』を、そして遠からず『実践理性批判』も刊行されるはずです。後者は4月17日の作品社さんのtweetでは、今月末発売とのことでしたが、公式ウェブサイトの新刊近刊欄からは書名が消えています。発売が近いためにいったんデータが隙間に落ちたのかもしれません。


ニーチェを知る事典 ─その深淵と多面的世界
渡邊二郎+西尾幹二編
ちくま学芸文庫 2013年4月 本体2,000円 文庫判並製784頁 ISBN978-4-480-09528-2

カバー紹介文より:哲学史の巨人ニーチェ。魅力的だが断片的な言葉の表層からは、なかなかその思想にたどりつくことはできない。ニーチェがその著者・箴言で言おうとしたことの本質とはいったい何なのだろうか。本書は、生い立ち、交友、影響を受けた思想、キー概念から掘り下げるその哲学の根本問題、さまざまなニーチェ解釈、フーコー、ドゥルーズに至る現代思想への影響などを、各分野の第一人者が解説。ニーチェの思想の深淵と多面的世界を、50人以上の錚々たる執筆陣が描き出した、いわば「読む事典」である。文庫化にあたり、新しい視点からのユニークな読書案内(清水真木)を増補。

主要目次:
まえがき
I ニーチェの生涯と思想形成の軌跡
 A 生涯の歩み(1~6)
 B 対人関係(7~14)
 C 著作活動の展望(15~21)
II ニーチェの精神史的系譜
 A 総論(22~25)
 B 精神的親縁者(26~35)
 C 歴史上の問題的人物(36~40)
III ニーチェ哲学の根本問題
 A 中心的思想(41~56)
 B 諸学の中におけるニーチェ(57~63)
 C 芸術と文化をめぐる諸思想(64~73)
IV ニーチェの影響
 A ニーチェ評価の変遷――受容と批判の間で(74~76)
 B さまざまなニーチェ解釈と影響(77~94)
文献案内――ニーチェをさらに知るために
ニーチェ年譜

★発売済。親本は『ニーチェ物語――その深淵と多面的世界』(有斐閣ブックス、1980年12月)。A5判388頁の本で、当時本体2,700円でした。今回の文庫化にあたり、「ニーチェの主要著作のタイトルと、ニーチェに近しくかかわる主な人名・地名について、読者の便宜のため表記を統一」したほかは、「各論文筆者の表記を尊重し、人名、論文名、用語に見られる不統一」はあえてそのまま残したとのことです。また、巻頭の旧版まえがきに続いて、西尾さんによる「文庫化に当たって」が追加されており、旧版巻末で三段組11頁にわたり戦後35年分のニーチェ関連文献の書誌情報を網羅した高松敏男さんによる「文献案内」は割愛されています。1980年以降のさらなる30数年分の関連文献を増補するのは難しかったでしょうし、専門家向けということで、掲載されなかった模様です。ともあれ、新しい文献案内を加えて合計95本もの論文が掲載されているので、読みごたえは充分すぎるくらいですし、哲学系とゲルマニスト系の両方の研究者が揃っている事典というのは、今ではなかなか実現しにくいかもしれません。その意味で今回の文庫化は英断だと思います。

by urag | 2013-04-21 20:03 | Trackback | Comments(0)
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