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2013年 04月 14日
![]() バロックの王国――ハプスブルグ朝の文化社会史1550-1700年 R・J・W・エヴァンズ著 新井皓士訳 慶應義塾大学出版会 2013年4月 本体9,500円 A5判上製598頁 ISBN978-4-7664-2025-8 帯文より:ハプスブルク王朝の17世紀。ルネサンスとプロテスタンティズムの支配からバロックとカトリシズム興隆の時代へ。ハプスブルク家繁栄の礎と、キリスト協会との密接な関係とは。その構造とダイナミズムを、中欧歴史研究の碩学、R・J・W・エヴァンズが精緻に描く。待望の邦訳。 原書:The Making of the Habsburg Monarchy 1550-1500: An Interpretation, Oxford University Press, 1979. ★発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。『魔術の帝国――ルドルフ二世とその世界』(Rudolf II and his World: A Study in Intellectual History 1576-1612, Oxford University Press, 1973;中野春夫訳、平凡社、1988年;ちくま学芸文庫、上下巻、2006年)に続く、待望の邦訳第二弾です。著者のエヴァンズ(Robert John Weston Evans, 1943-)は歴史家で、長らくオックスフォード大学で教鞭を執ってきました。専門は近世から近代の中欧史および東欧史。中でもハプスブルク家の研究で知られ、本書はかの有名なウルフソン文芸賞(歴史部門)を1980年に受賞した名著です。ちなみに似た名前の歴史家にリチャード・J・エヴァンズ(Sir Richard John Evans, 1947-)がいて、邦訳も二冊ほどありますが別人です。こちらはナチス第三帝国の研究で有名。 ★『バロックの王国』の装丁は『魔術の帝国』親本および文庫版と同じ、戸田ツトムさんによるもの。カバー絵はアルチンボルド。『魔術の帝国』文庫版下巻もそうでしたね。ひょっとして、と思い「訳者あとがき」を覗いてみると、二宮隆洋(1951-2012)さんのお名前がありました。晩年(と言ってもお亡くなりになったのは60歳という若さでしたが)に慶應義塾大学出版会さんで校閲や編集の仕事などをなさっていたので、おそらく本書は二宮さんの置き土産のひとつと受け止めてよさそうです。二宮さんの置き土産は他社さんにもあると聞きますから、今後しばらくは星界から書物が届くものと思います。なお、文庫版『魔術の帝国』の解説は弊社刊『ミクロコスモス』の編者である平井浩さんがお書きになっています。現在この文庫版上下巻は品切。なんとかこの機会に重版されないものでしょうか(『ミクロコスモス』第1巻は第2巻刊行時に重版する予定です)。 ★昨年4月15日にお亡くなりになった二宮さんは言うまでもなく『西洋思想大事典』(叢書「ヒストリー・オヴ・アイデアズ」)や、「エラノス叢書」、「ヴァールブルク・コレクション」、『中世思想原典集成』(すべて平凡社)などを手掛けた編集者であり、人文書業界で知らぬ者はいません。昨年8月から9月にかけて、ブックファースト青葉台店で追悼フェア「親密なる秘儀――編集者二宮隆洋の仕事 1977-2012」が開催され、好評を博しました。そして、一周忌を迎えるこの時期に、以下の通り、ジュンク堂書店京都店で追悼フェアがスタートしました。昨夏に催された「偲ぶ会」で特別に配布された、二宮さんの業績を偲ぶカラー小冊子「親密なる秘儀」(二宮さんと親しい編集者で詩人の、中村鐵太郎さんが作成されたもの)が、昨年のフェアに続いて今回も配布されます。おそらくこのフェアが、貴重なカラー小冊子の実物を入手する最後の機会になるかもしれません。 ◎二宮隆洋さん追悼フェア(編集に携わった書籍と蔵書) 会期:2013年4月9日~5月下旬頃 会場:ジュンク堂書店京都店 1F入口左手フェアコーナー ※カラー冊子は税込6,000円以上お買い上げの方に差し上げます。備え付けの配布券をレジまでお持ち下さい。無くなり次第終了とさせていただきます。 ![]() 建築はどうあるべきか――デモクラシーのアポロン ヴァルター・グロピウス著 桐敷真次郎訳 ちくま学芸文庫 2013年4月 本体1,400円 文庫判並製352頁 ISBN978-4-480-09530-5 カバー紹介文より:モダンデザインを語る上で欠かすことのできないバウハウス運動。その先頭に立ったのが建築家ヴァルター・グロピウスである。空間の使いやすさ、心地よさ、そして美しさを同時に実現させるにはどうしたらよいのか? 街にはどぎついネオンや標識が溢れ、新旧の建築物が無秩序に並ぶ。一歩建物に入れば使い勝手を無視したデザインの数々が……。1954年に世界一周のフィールドワークを行ったグロピウスは、自分たちの伝統的な美意識を共有することの重要性を説き、近代的な工法によっても意識しだいで調和のとれた美しい建築・街づくりが可能であると訴える。20世紀デザイン論の名著。解説:深澤直人「つり合う美、関係の美」 ★発売済。親本は彰国社より1972年に刊行された『デモクラシーのアポロン――建築家の文化的責任』。原書は Apollo in the Democracy: The Cultural Obligation of the Architect, McGraw-Hill, 1968で、言わずと知れた近代建築の巨匠にしてバウハウス創設者グロピウス(Walter Gropius, 1883-1969)の、最後の講演・評論集です。ドイツに生まれ育ち、優秀な建築家として美術学校バウハウス創設に携わり、ナチスによるその閉鎖の翌年1934年にイギリスに亡命して、その後はアメリカで活躍しました。彰国社ウェブサイトの商品ページにある「自らが中心となってもたらした建築革命の結果に満足できず、絶望と再検討をくりかえす巨匠。芸術家グロピウスと合理主義者グロピウスの相克を赤裸々に語っている」という紹介文が本書の性質を端的に物語っています。 ◎ヴァルター・グロピウス(Walter Gropius, 1883-1969)単独著既訳書 1958年12月『生活空間の創造』蔵田周忠・戸川敬一共訳、彰国社 1972年01月『デモクラシーのアポロン――建築家の文化的責任』桐敷眞次郎訳、彰国社;改題『建築はどうあるべきか――デモクラシーのアポロン』、ちくま学芸文庫、2013年4月 1991年02月『国際建築』貞包博幸訳、中央公論美術出版 1991年07月『バウハウス工房の新製品』宮島久雄訳、中央公論美術出版 1995年06月『デッサウのバウハウス建築』利光功訳、中央公論美術出版 ★ちくま学芸文庫では、これまでフランク・ロイド・ライトや、ル・コルビュジエ、コールハースや隈研吾といった建築家たちの著作を刊行しています。そして今回はグロピウス。今後も新旧織り交ぜた建築系もしくはデザイン系の新刊が刊行され続けますように。なお、今月の学芸文庫では、『ニーチェ物語』(有斐閣、1980年)の改題版で、巻末に読書案内(清水真木)を増補した大冊『ニーチェを知る事典――その深淵と多面的世界』(渡邊二郎・西尾幹二編)が出ています。学芸文庫ではニーチェ系は色々と出ているのですが、全集の別巻の一括重版をそろそろ期待したいところですね。なお、来月の学芸文庫ではアーサー・O・ラヴジョイのゆるぎなき名著『存在の大いなる連鎖』(内藤健二訳、656頁、税込1,785円)の予告が出ています。晶文社本の文庫化ですね。 思考と動き アンリ・ベルクソン著 原章二訳 平凡社ライブラリー 2013年4月 本体1,600円 HL判並製436頁 ISBN978-4-582-76784-1 カバー紹介文より:「今回の論集は研究方法に関するものであり、前著(『精神のエネルギー』)を補うものである(まえがき)。直観と持続、変化の知覚、科学と哲学、形而上学・・・について、あるいはW・ジェームズやラヴェッソンなど、他の精神にことよせながら、書き・語ったベルクソン哲学の方法に関する諸論考を、さらに方法序説というべき「序論」二篇を書き下ろして、哲学者が自ら編んだ絶好の入門書! 的確な新訳で! ★発売済。昨年2月に刊行された『精神のエネルギー』に続く、原章二さんによる新訳ベルクソン第二弾です。従来『思想と動くもの』と訳されることの多かった本書を『思考と動き』としたわけは「訳者あとがき」に記されています。同書の既訳は四種あります。吉岡修一郎訳(第一書房、1938年)、河野与一訳(岩波文庫、三分冊版、1952-1955年;合本版、1998年)、矢内原伊作訳(白水社版『ベルグソン全集』第7巻、1965年)、宇波彰訳(『思考と運動』上下巻、レグルス文庫/第三文明社、2000年)。「訳者あとがき」に書かれている「今回の翻訳に際して、難渋するたびにそのうちの三つを参考にして大いに助けられた。伏して先輩諸氏にお礼を言いたい」というくだりにある既訳三点というのは恐らく河野・矢内原・宇波の三氏の訳書かと思われます。ただし、既訳に対する原さんの眼は厳しく、『精神のエネルギー』の「訳者あとがき」では「ベルクソンは翻訳に恵まれていない」(319頁)とお書きになっておられましたし、今回は「改版し文庫になっているものも含めて、おびただしい誤訳には驚かされた」(421頁)と告白しておられます。これは悪口というよりは翻訳の難しさを指摘されたものかと思います。後段で「翻訳の完成度には果てがない。モデルを見て彫刻しているようなものであり、気がついたら彫りすぎて何もなくなっている」(同)と。なお、原さんは初心者のためにこうアドバイスも書かれています。「ベルクソン哲学に不慣れな読者、ベルクソンをはじめて読む人は、「ウィリアム・ジェームズのプラグマティズムについて」と「変化の知覚」から読むのがよいかもしれない」(423頁)。 ★なお、アマゾンではすでに5月のライブラリー新刊、『へーゲル初期哲学論集』(村上 恭一訳)の予約受付が始まっていますね。平凡社ライブラリーでのヘーゲルの訳書は、『精神現象学』(上下巻、樫山 欽四郎訳、1997年)、『キリスト教の精神とその運命』(伴博訳、1997年)に続く3点目。 ![]() 20世紀のシンフォニー 大崎滋生(おおさき・しげみ:1948-)著 平凡社 2013年4月 本体7,600円 A5判上製728頁 ISBN978-4-582-21966-1 帯文より:20世紀に作曲された世界の3000曲ほどのシンフォニーを調べ聴き尽くし、無限の資料から終わりのない歴史を描く。交響する大河は今まさに音の海に還る。 ★まもなく発売。『文化としてのシンフォニー I 18世紀から19世紀中頃まで』(平凡社、2005年)、『文化としてのシンフォニー II 19世紀中頃から世紀末まで』(平凡社、2008年)に続く、三部作完結篇です。帯文(裏)には「5つのアポリアを問う音楽史」として本書の特徴が列記されています。5つの問いとその答えは以下の通り。「20世紀に創作されたシンフォニーをすべて知りうるのか――伝承された作品は創作のすべてではなく、すべての地域の作品を知ることはできない」。「日々新たに発掘され増大する資料を歴史として記述できるのか――ある時点でその流れを凍結させて行われた終着点のない中間報告にすぎない」。「過去の時間と空間をどのように区切って歴史を叙述するのか――世代別にした上で地域(活躍した国民国家文化圏)に分けて論述した」。「20世紀においてシンフォニーとは何だったのか――西欧音楽至高のジャンルの地位は失ったが、多様な地域の音楽文化の中で再生産された」。「「20世紀シンフォニー」の特徴を見出しうるか――「社会の鏡」として20世紀に「オラトリオ型シンフォニー」を大きく展開した」。著者は「あとがき」で、「「シンフォニーの時代」は総じて終わったことはやはり確かである」と述懐しておられます。 【増補決定版】若松孝二 反権力の肖像 四方田犬彦・平沢剛編 作品社 2013年4月 本体2,800円 46判上製336頁 ISBN978-4-86182-435-7 帯文より:「俺は国家権力を打倒するために映画を撮ってきたんだ――」性とテロルをラディカルに問い続けた稀代の映画人・若松孝二。初期ピンク映画から『実録・連合赤軍』、『11・25自決の日』、『千年の愉楽』まで、半世紀に及ぶ監督作品を総覧する、決定版評論集! ★発売済。2007年11月に刊行された初版本に、四方田犬彦さんの三つの論考「若松孝二、足立正生とパレスチナ問題」「連合赤軍の映像」「若松孝二における晩年のスタイル」を加え、フィルモグラフィーを改訂したものです。若松さんが昨年10月に新宿でタクシーにはねられ、5日後に亡くなったことは御承知の通り。遺作となった映画「千年の愉楽」は先月(2013年3月)より公開されています。都下では「ユナイテッドシネマズ豊洲」で今週金曜日、4月19日まで上映。 ![]() 蘇生した魂をのせて 石牟礼道子著 河出書房新社 2013年4月 本体1,800円 46判上製224頁 ISBN978-4-309-02177-5 帯文より:水俣からの言魂。破壊し尽くされた自然や人間の悲劇と、その闇の奥底に立ち上がる新しき叡智。受難の時代に響く、珠玉の対談・講演集。 ★まもなく発売。対談2篇:「深遠な「自給自足」の暮らし――田上義春さんとの対話」「加害・被害の枠組みをどう超えるか――緒方正人さんとの対話」、講演5篇:「蘇生した魂をのせて」「来水前に話しておきたいこと」「水俣・水天荘にて」「日月の舟」「私たちは何処へ行くのか」、インタヴュー1篇:「魂が揺れる場所」。おおかたは94年から96年に発表されたもので、あとは、緒方氏との対談が2006年、インタヴューが2007年。同時発売で「KAWADE道の手帖」の『石牟礼道子――魂の言葉、いのちの海』もまもなく刊行。全集未収録エッセイ2篇:「水俣からの蘇りのための標しを」(1996年9月)、「原田先生のご遺言」(未発表)のほか、過去の座談や討議を再録し、渡辺京二、緒方正人、のお二人の談話、そして、最首悟、町田康、季村敏夫、上野朱、高山文彦、姜信子、小池昌代、石井光太、鹿島田真希、湯浅学、佐野眞一、若松英輔、五所純子、友常勉、池田雄一、東琢磨、森元斎、らの各氏が寄稿しておられます。池澤夏樹、伊藤比呂美、の両氏のエッセイは過去作の再録。
by urag
| 2013-04-14 23:32
| 本のコンシェルジュ
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