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2013年 04月 04日
弊社出版物の著者や訳者の皆さんの最近のご活躍をご紹介します。ネグリさんの初来日、三度目の正直まであとわずかです。年齢的に考えると、現実的にはこれが最初で最後の機会なのかもしれません。【追記:どうやら入国はすでに無事済んでいるようです。】 ![]() ★アントニオ・ネグリさん(著書:『芸術とマルチチュード』) ★清水知子さん(共訳書:バトラー『自分自身を説明すること』、同『権力の心的な生』) ネグリさんとハートさんの共著最新作が早くも翻訳されました。これまでの理論書に比べ、よりいっそう具体的で総括的で読みやすい、アクチュアルな本に仕上がっており、今までネグリ=ハートを読んだことのない読者にも親しみやすい、絶好の読みものになっています。 叛逆――マルチチュードの民主主義宣言 アントニオ・ネグリ+マイケル・ハート著 水嶋一憲+清水知子訳 NHKブックス 2013年3月 本体1,000円 B6判並製216頁 ISBN978-4-14-091203-4 帯文より:代議制を否定せよ。デモが目ざすべき政治とは? 待望の具体的提言! カバーソデ紹介文より:2010年代初頭、世界中にデモが広がった。「アラブの春」、スペインの「M-15」運動、アメリカのウォール街占拠……敵は金融業、マスコミ、警察、そして政治家だった。抵抗するのは、多様な人間の集合体=マルチチュード。かれらは自然発生的に集まり、リーダー不在のまま支配者層を動揺させた。一部の人だけを利する政治が否定され、あたらしい統治のかたちが示されたのだ。機能不全に陥った現在の代議制民主主義にNOを突きつけ、真に民主的な政治をとりもどすための「宣言」の書! 原書:Declaration, Argo Navis Author Service, 2012. 目次: 序 闘争の始まり――バトンを引き継げ! 第一章 危機が生みだした主体形象 借金を負わされた者 メディアに繋ぎとめられた者 セキュリティに縛りつけられた者 代表された者 第二章 危機への叛逆 借金をひっくり返せ 真理を作り出せ 逃走し、自由になれ 自らを構成せよ 第三章 〈共〉を構成する 諸原理の宣言 構成的闘争とは何か 闘争原理1 自律的な時間 闘争原理2 対抗権力 闘争原理3 コミュニケーション 闘争原理4 マイノリティの保護と表明 闘争原理5 政治の多元的存在論 闘争原理6 いかに決定するか 〈共〉の構成のための実例 実例1 水は〈共〉的財である 実例2 銀行をいかに変革するか 実例3 教育のスキーム 実例4 〈公〉から〈共〉へ 実例5 ラテンアメリカの進歩的政府と社会運動 新たな三権分立のためのアジェンダ アジェンダ1 立法をどう変容させるか アジェンダ2 行政をどう変容させるか アジェンダ3 司法をどう変容させるか 次なる闘争へ――共民〔コモナー〕の出来事 謝辞 原註 解説 これはマニフェストではない――宣言から構成へ(水嶋一憲) ★政治家たちによるmanifestoではなく民衆によるdeclaration。その違いは本書の冒頭から如実に示されています。「これはマニフェストではない。マニフェストは来るべき世界を垣間見させ、いまだ亡霊のような存在にすぎないものを変革の担い手として主体化してみせる。マニフェストの働きは、その幻視力〔ヴィジョン〕によって自分に従う民衆を創り出そうとした古代の預言者のようなものだ。/今日の社会運動はその順番を逆転させ、マニフェストも預言者も時代遅れのものにした。変革の担い手たちはすでにストリートに降り立ち、街の広場を占拠している。支配者を脅かし権力の座から引きずりおろすだけでなく、新たな世界のヴィジョンを呼び起こしている。/さらに重要なのは、マルチチュードが自己の論理と実践、スローガンと欲望を介して、一群の新たな原理と真理をすでに宣言したことだろう」(9頁)。 ★本書の痛快さは締めくくりの言葉にもくっきりと現れています。「もっと伝統的な左翼の政治思想家やオルガナイザーのなかには、2011年の闘争のサイクルが気にくわない者もいれば、それに警戒心を抱いている者さえいる。彼らはこう嘆く、「ストリートは人でいっぱいだが、〔左翼の〕教会は空っぽだ」、と。/教会が空っぽという表現の意味は、たしかにそれらの運動のなかにはたくさんの闘いが存在してはいるけれども、イデオロギーも集中的な政治的統率力〔リーダーシップ〕もそこにはほとんど存在しない、ということである。そのうえで彼らはこう推論する――ストリートの抗争を指揮することのできる党やイデオロギーが存在するようになるまでは、またその結果、教会が人でいっぱいになるまでは、いかなる革命も起こらないだろう、と。/だが、じつはまさにその正反対なのである! 私たちに必要なのは、左翼の教会を空っぽにし、その扉を閉ざし、それを焼き払うことなのだ! それらの運動は指導者〔リーダー〕を欠いている〈にもかかわらず〉強力なのではない。そうではなくて、まさに指導者を欠いている〈からこそ〉強力なのだ。マルチチュードと同じく、それらの運動は水平に組織される。そしてあらゆるレベルで民主主義の重要性が強調されるのだが、それはたんなる美徳を超えたもの、言いかえれば、運動が保持する権力の鍵にあたるものなのだ」(192頁)。 ★大して信頼しているわけでもなく票を投じた政治家に政治を任せる「代議制民主主義」から、民衆自身が政治を行う「直接民主主義」へ。本書の分析と提言は、民衆の力の解放へと向けられています。ネグリさんの来日前に発売が適ったというのは本当に素晴らしいことです。かの「入国拒否」事件からはや5年経ちます。あの後、2010年4月10日に日本学術会議の主催する公開シンポ「ネットワーク社会と知識労働:コモンウェルスの構築を目指して」で来日が叶うはずでしたが、東日本大震災の影響で取りやめになったのでした※。このシンポジウムは粘り強くあらためて企画しなおされ、そしてついに、今度こそ、ネグリ初来日が実現しようとしています。いずれも参加申込は締め切られていますが、おそらく某版元が記念論文集を発刊してくれることでしょうし、イベントとは別に、NHKあたりが特番を組んでくれることでしょう。【追記:イベントは二つともライブ中継が予定されているそうです。】 ※追記:東日本大震災は2011年3月11日に起きていますから、日本学術会議の第90回幹事会の「議事次第資料」2010年2月25日付「審議事項、提案18」に記載されている開催予定の日付2010年4月10日と1年のズレがあるのですが、『国際文化会館の歩み 57』2011年度版9頁には「2008年の訪日を中止したイタリアの政治哲学者アントニオ・ネグリ氏が、日本学術会議との共同招聘により、4月8日より24日まで訪日の予定でした。国際文化会館での公開講演「コモンウエルスと今日の知識人」および日本学術会議でのシンポジウム「ネットワーク社会と知識労働:コモンウエルスの構築を目指して」(日本学術会議との共催)を含むさまざまなプログラムに参画される予定でしたが、3月11日の東日本大震災の影響により、再び訪日が中止となりました」と報告されています。 ◎シンポジウム「マルチチュードと権力 : 3.11 以降の世界」 基調講演者:アントニオ・ネグリ氏(政治哲学者) 報告者:市田良彦(神戸大学国際文化学研究科教授)、上野千鶴子(立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘教授)、毛利嘉孝(東京藝術大学大学院音楽研究科准教授) コーディネーター・司会:伊藤守(早稲田大学教育・総合科学学術院教授) 日時:2013年4月6日(土)13:00-16:40 会場:日本学術会議講堂 (東京都港区六本木7-22-34) 会費:無料 用語:フランス語/日本語(同時通訳付き) ※このシンポジウムはすでに参加申込を締め切っています。 共催:日本学術会議社会学委員会メディア・文化研究分科会;公益財団法人国際文化会館 後援:日本社会学会;社会情報学会;社会学系コンソーシアム;情報通信学会;早稲田大学メディア・シティズンシップ研究所 内容:2011年年3月11日に起った東日本大震災とそれに続く福島原発事故は、日本の社会を一変させました。東北沿岸部が津波になって壊滅的な打撃を受ける一方で、原発事故による放射線に対する不安は依然として広がったままです。この状況の下で、これまで私たちの生活を支えてきた近代的な思考、科学技術に対する態度、経済至上主義などが根本から問い直され、人々の新しい行動が生み出されつつあります。被災地では多くの人々がボランティアに参加し、反原発運動や脱原発運動は、全国に広がりました。インターネットのソーシャルメディアの普及は、こうした動向を後押しし、これまでになかったネットワークを形成しました。しかし、こうした出来事を、東日本大震災を契機とした日本固有の出来事として捉えるべきではないでしょう。経済危機に瀕したアメリカやヨーロッパのような先進国では、「オキュパイ運動」に代表されるような反グローバリゼーション運動やフェミニズム、反エコロジー運動が広がり、中東では「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が起りました。こうした動向は、世界が大きく変容する中で、国家と人びと、そして資本主義や民主主義をめぐる新しい思想の枠組みを必要としていることを示しています。本シンポジウムは、アントニオ・ネグリ氏を基調講演者にお迎えし、〈マルチチュードと権力〉の視座から、「オキュパイ運動」や「アラブの春」などの政治・民主化運動が、現在のグローバル社会において持つ意味を議論したのち、3.11 以降の日本の社会の変容をも、このグローバルな文脈の中で捉え直そうという試みるものです。 ◎「日本におけるアントニオ・ネグリとの対話」 日時:2013年4月12日(金) 2:00~5:00 pm 第一部:アントニオ・ネグリ講演 第二部:アントニオ・ネグリ×姜尚中(対談) 会場:国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール 主催:公益財団法人 国際文化会館 会費:1,000円 (学生:500円、国際文化会館会員は無料) 用語:フランス語/日本語(同時通訳付き) 定員:100名 【抽選制】※登録申込はすでに締め切られています。 内容:牛場記念フェローシップ:アントニオ・ネグリ初来日記念プログラム。2000年の『帝国』刊行後の地政学的な国際情勢の変動をみると、9.11同時多発テロ、金融危機、中東の民主化など、現在、世界は錯綜する時代の転換期を迎えているように思われます。日本でも少子高齢化、経済の低迷・雇用問題など山積する多くの課題に加えて、2011年の3.11東日本大震災以降、 原子力”が大きくクローズアップされています。第二次世界大戦における唯一の被爆国で起きた未曽有の原発事故がもたらした危機的状況は、西洋的近代化のもと、科学、テクノロジーや啓蒙主義により可能となった、現代人が生を営むうえでのシステムや価値規範を見直すよう促しています。また、東アジアにおいては、領土問題、歴史認識、核の安全保障問題をめぐり、互いのナショナリズムが刺激され、摩擦が生じ、今後に影を投げかけています。こうした状況下で、世界の行方や方向性を提示するグランド・ビジョンがますます求められています。本プログラムでは、こうした国内外の喫緊の諸課題を踏まえ、アントニオ・ネグリ氏を講師に迎え問題提起いただいたのち、政治学者の姜尚中氏を交え、グローバル化の中で再燃する「地政学」の諸問題などさまざまな主題に関し議論します。
by urag
| 2013-04-04 17:28
| 本のコンシェルジュ
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