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2012年 12月 09日

注目の新刊、既刊:『新訳 ラーマーヤナ 4』平凡社、ほか

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新訳 ラーマーヤナ 4
ヴァールミーキ著 中村了昭訳
平凡社 2012年12月 本体2,800円 全書判上製304頁 ISBN978-4-582-80829-2

帯文より:ラーマは、追放中の猿王の復位を助け、シーター奪還に猿軍団の援軍を得る。インドで大人気の猿将軍ハヌマトの大活躍がついに始まる。第4巻『猿の王国キシュキンダーの巻』サンスクリット原文からの初の邦訳。

★まもなく発売。東洋文庫の第829巻です。新訳全7巻予定の第4巻。ハヌマトというのはご存知「ハヌマーン」のこと。猿王スグリーヴァに仕える文武両道の知者にして風の神の息子たるハヌマトは、同じ猿の勇士ジャーンバヴァトに慫慂され、シーター奪還のために大海を渡る決意を固めます。ジャーンバヴァトの説得には、こんなくだりがあります。「大きな森のなかで、子供のおまえは昇った太陽を見て、『果実だ』と思い、取りたいと望んで立ち上がり、空中に飛び上がった。そして、偉大な猿よ、三千ヨージャナも進んだ。おまえはその太陽の熱力に打たれても元気を失わずに、進み続けた。すると、強い猿よ、インドラ神は、お前が空中を速力をあげて突進するのを見て、インドラ神は怒りに満たされて、力強く雷電をお前に投げつけた。その時、お前は山頂の岩に落下して左あごを損傷した。そのことからそなたの異名は『(傷ついた)あご(ハヌ)を持つ者(マト)』と呼ばれた」(294頁)。猿軍団の期待に応えて立ち上がるハヌマトの勇壮な姿と口上は圧倒的であり、物語は一気に続巻へと盛り上がっていきます。

★東洋文庫の来月新刊は『シャマニズム1』とのこと。なお、平凡社さんでは現在、編集者の正社員(若干名)を募集されています。資格は「4年制大学卒業(卒業見込不可)30歳位まで、経験者も歓迎」とのこと。 履歴書、職務経歴書、作文(テーマ「平凡社のこの一冊」を400字以内で)を、指定応募用紙に記入して、同社管理部まで12月14日(金)必着で郵送します。書類選考後、詳細通知。募集の詳細や応募用紙はこちらのリンク先でご確認ください。

★このほか、最近気になった今月の新刊には以下のものがありました。

『知の逆転』ジャレド・ダイアモンド+ノーム・チョムスキー+オリバー・サックス+マービン・ミンスキー+トム・レイトン+ジェームズ・ワトソン著、吉成真由美インタビュー・編、NHK出版新書
『ニーチェ詩集――歌と箴言』太田光一訳著、郁朋社
『金太郎の謎』鳥居フミ子著、みやび出版
『批評研究 vol.1 創刊号(2012):特集=以後の思想』論創社
『5000人の白熱教室 DVDブック』マイケル・サンデル著、NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム訳、早川書房
『夢と眠りの博物誌』立木鷹志著、青弓社
『世界の美しい欧文活字見本帳――嘉瑞工房コレクション』嘉瑞工房著、グラフィック社

新しい思想誌「批評研究」では、弊社刊『文化=政治』の著者である毛利嘉孝さんが、スガ秀実さん、大田俊寛さんとともに、座談会「3・11以後の革命と終末」(53-96頁)に参加されています。また、既刊書になりますが、感銘を受けた2点を以下にご紹介します。


心と身体に響く、アランの幸福論
合田正人著
宝島社 2012年9月 本体1,300円 四六判並製285頁 ISBN978-4-7966-9869-6

帯文より:なぜ「幸福であることは義務」(『幸福論』「幸せであることの義務について」より)なのか――NHK「100分de名著」でおなじみの合田正人先生が徹底解説! 「幸福」の根拠と構造がよくわかる。

版元紹介文より:世界三大幸福論のひとつといわれている、アランの『幸福論』が最近また見直されてきています。言葉の美しさだけでなく、プロポという文章形式の妙、構成の周到さなど、読めば読むほど奥が深い『幸福論』の世界。アランはなぜ「幸福であることは義務」と提唱したのか。その真意や、そう考えるに至った経緯など、古来の哲学者たちの考えも交えながら、NHK「100分de名著」の解説も務めた明治大学の合田正人教授がひもといていきます。

目次:
はじめに
第1講 『幸福論』へ向けて
第2講 自分と他人
第3講 自然と身体
第4講 道徳と宗教
第5講 経済と政治
第6講 美と戦争
おわりに

★発売済。アラン『絵本 アランの幸福論』(合田正人訳、田所真理子画、PHP研究所、2012年2月)や、NHK「100分de名著」ブックスの『アラン 幸福論』(NHK出版、2012年4月)の姉妹篇とも言うべき本作は、『アラン著作集』(全10巻、白水社、1980-1983年;新装復刊、1997年)、『ラニョーの思い出』(中村弘訳、筑摩書房、1980年)、『アラン経済随筆』(橋田和道訳、私家版、1979年;筑摩書房、1980年;論創社、1995年)、『プロポ』(全2巻、山崎庸一郎訳、みすず書房、2000/2003年)や、古今の哲学書を自在に引用しつつ、『幸福論』のみではなくアラン(1858-1951)の著作全体ひいては哲学史の観点から「幸福」について懇切に解説しておられます。なお、アラン『幸福論』は幾度となく邦訳されてきましたが、文庫や新書では以下のものがあります。訳の古い順から、石川湧訳(角川ソフィア文庫)、白井健三郎訳(集英社文庫)、宗左近訳(社会思想社:現代教養文庫、絶版)、串田孫一・中村雄二郎訳(白水uブックス)、神谷幹夫訳(岩波文庫)。


火によって
ターハル・ベン=ジェッルーン(1944-)著 岡真理訳
以文社 2012年11月 本体1,900円 四六判上製128頁 ISBN 978-4-7531-0305-8

帯文より:中東を革命の炎に包む「アラブの春」の発端となった一青年の焼身自殺。その瞬間を、文学は、思想は、いかに表現し、それに応答できるか。生きるなかで打ちのめされ、辱められ、否定され、ついに火花となって世界を燃え上がらせた人間の物語。

訳者解説より:2010年12月の末に始まるチュニジア市民の抗議運動によって、1987年以来、同国に君臨したベン・アリ大統領は翌2011年1月14日、国外に遁走した。……このチュニジアの革命が、30年にわたる大統領独裁のもとにあったエジプト市民を鼓舞し、1月25日の決起へとつながり、さらには同じように独裁政権や抑圧的な体制下にある中東諸国へと広がっていくことになる。これら一連の革命の発端となったのが、チュニジア中部の地方都市、シディ・ブズィドに暮らす貧しい一青年、ムハンマド・ブアズィーズィの焼身自殺という出来事だった。……この出来事を受けてターハル・ベン・ジェッルーンは独裁体制下の腐敗した社会で、貧しいが実直で聡明な青年が、なぜ、いかにして自らの肉体に火を放ったのかを、そして、その炎がなにゆえに中東の各地に燃え広がったのかを、作家の文学的想像力を駆使して描いた。それが本書『火によって』である。

★発売済。今月(12月)1日生まれのターハル・ベン=ジェッルーン(タハール・ベン・ジェルーンとも)の小説です。訳者の岡さんはフランス語小説の翻訳が初めてとのことですが、とても読みやすい訳文に仕上がっています。物語は至極明瞭で、警官たちによる恐ろしいほどの不正義が残酷に主人公をはじめとする民衆を日々襲い、簡潔な訳文はその横暴と悲惨のすべてを淡々と描写します。主人公がついに自分の身を投げ出すに至る光景は涙なしには読めません。

◎タハール・ベン・ジェルーン(Tahar Ben Jelloun, 1944-)既訳書

1993年03月『歓迎されない人々――フランスのアラブ人』高橋治男・相磯佳正訳、晶文社
1996年07月『気狂いモハ、賢人モハ』沢田直訳、現代企画室:シリーズ「越境の文学/文学の越境」
1996年07月『砂の子ども』菊地有子訳、紀伊國屋書店
1996年08月『聖なる夜』菊地有子訳、紀伊國屋書店
1998年05月『不在者の祈り』石川清子訳、国書刊行会:シリーズ「Contemporary writers」
1998年12月『娘に語る人種差別』松葉祥一訳、青土社;新装版、2007年03月
1999年05月『最初の愛はいつも最後の愛』堀内ゆかり訳、紀伊國屋書店
2000年12月『あやまちの夜』菊地有子訳、紀伊國屋書店
2002年09月『子どもたちと話す イスラームってなに?』藤田真利子訳、鵜飼哲解説、現代企画室
2009年02月『出てゆく』香川由利子訳、早川書房
2011年12月『アラブの春は終わらない』齋藤可津子訳、河出書房新社
2012年11月『火によって』岡真理訳、以文社

注目の新刊、既刊:『新訳 ラーマーヤナ 4』平凡社、ほか_a0018105_14354367.jpg


by urag | 2012-12-09 13:56 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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