2012年 12月 02日
生成と消滅について アリストテレス著 池田康男訳 京都大学学術出版会 2012年11月 本体3,100円 四六変上製280頁 ISBN978-4-87698-199-1 版元紹介文より:著者の自然学領域に属し、そこでの体系的順序において『自然学』、『天について』の次に来るとともに、後続する『気象論』や生物学領域のための基礎論ともなっている作品。月下の世界の自然的に生成消滅する事物についてが、質料因および始動因の観点から考察される。最近の研究成果にも目を配り、詳細で充実した註と解説を加えた新訳。 目次: 第一巻 第二巻 補註 解説 索引 ★「西洋古典叢書」の最新刊です。訳者の池田康男(いけだ・やすお:1938-)先生は、高知大学名誉教授でいらっしゃいまして、西洋古典叢書では、アリストテレス『天について』や『トピカ』の翻訳と解説を手掛けておいでです。 ◎京都大学学術出版会「西洋古典叢書」でのアリストテレスの訳書 1997年10月『天について』池田康男訳 2001年02月『政治学』牛田徳子訳 2001年06月『魂について』中畑正志訳 2002年07月『ニコマコス倫理学』朴一功訳 2005年02月『動物部分論 動物運動論 動物進行論』坂下浩司訳 2007年07月『トピカ』池田康男訳 2012年11月『生成と消滅について』池田康男訳 ★なお、業界紙「新文化」2012年11月2日付記事「岩波書店、創業百年で山口昭男社長がステートメント発表」によれば、岩波書店は来年、創業100年を記念して大型企画を先月発表しましたが、主要企画のひとつに『新版 アリストテレス全集』(全20巻+別巻、同10月刊)が挙がっています。すごい企画ですね。出隆監修、山本光雄編集による旧全集は全17巻。こちらを先にすべて文庫化されたらもっとすごいのですが、そういうことはなさそうですね。 科学と証拠――統計の哲学入門 エリオット・ソーバー(Elliott Sober, 1948-)著 松王政浩訳 名古屋大学出版会 2012年10月 本体4,600円 A5判上製256頁 ISBN978-4-8158-0712-2 版元紹介文より:科学理論はどのように根拠づけられるのか。その根幹を支える統計的推論の枠組みを丹念に検討し、ベイズ主義や有意検定、AICなどが抱える本質的課題を浮彫りにする。科学において証拠の果たすべき役割を、哲学者と科学者の双方に向けて明瞭に示した希有な著作。 原書:Evidence and Evolution: The Logic behind the Science, Cambridge University Press, 2008. 目次: 日本語版序文 はじめに §1 ロイヤルの3つの問い §2 ベイズ主義の基本 §3 尤度主義 §4 頻度主義Ⅰ――有意検定と確率論的モーダス・トレンス §5 頻度主義Ⅱ――ネイマン-ピアソンの仮説検定 §6 テストケース――停止規則 §7 頻度主義Ⅲ――モデル選択理論 §8 第2のテストケース――偶然の一致についての推論 §9 結語 訳者解説 ★発売済。エリオット・ソーバーさんは言うまでもなく「生物学の哲学」を確立した第一人者で、アメリカ科学哲学会会長を務めたあと、現在は「科学史・科学哲学国際連合(科学の論理、方法、哲学部門)」 の会長に就かれています。人文書フロアの哲学思想書売場の「科学哲学」コーナーにはなくてはならない哲学者です。既訳書は以下の通り。 1996年07月『過去を復元する――最節約原理、進化論、推論』三中信宏訳、蒼樹書房;2010年4月、勁草書房 2009年04月『進化論の射程――生物学の哲学入門』松本俊吉・網谷祐一・森元良太訳、春秋社 ★今回の新刊『科学と証拠』の書評が、『日経サイエンス』2013年1月号に掲載されています。評者は『過去を復元する』の訳者、三中信宏さんです。 +++ ★最後に、現時点で明らかになっている近刊情報の中から、気になる書目をピックアップします。 2012年 12月05日『虹の西洋美術史』岡田温司著、ちくまプリマー新書 12月06日『希望の原理 第二巻』エルンスト・ブロッホ著、山下肇ほか訳、白水iクラシックス 12月08日『ショーペンハウアー――自分を救う幸福論』アルトゥル・ショーペンハウアー著、鈴木憲也訳、かんき出版 12月10日『新編 分裂病の現象学』木村敏著、ちくま学芸文庫 12月14日『内乱――パリサリア(下)』ルーカーヌス著、大西英文訳、岩波文庫 12月15日『音楽的コミュニケーション――心理・教育・文化・脳と臨床からのアプローチ』ミール+マクドナルド+ハーグリーヴズ編、星野悦子監修、誠信書房 12月18日『予言・預言対談 飛鳥昭雄×五島勉』飛鳥昭雄・五島勉著、ムー・スーパーミステリー・ブックス(学研) 12月20日『龍蛇神――諏訪大明神の中世的展開』原直正著、樹林舎 12月20日『古代天皇家の婚姻戦略』荒木敏夫著、吉川弘文館 12月21日『ポール・ド・マン――言語の不可能性、倫理の可能性』土田知則著、岩波書店 12月21日『読むことのアレゴリー――ルソー、ニーチェ、リルケ、プルーストにおける比喩的言語』ポール・ド・マン著、土田知則訳、岩波書店 12月22日『古事記と岩石崇拝――「磐座論」のこころみ』池田清隆著、角川学芸出版 12月26日『知の歴史学』イアン・ハッキング著、出口康夫・大西琢郎訳、岩波書店 12月26日『スペルズ――世界のおまじない事典』ジュディッカ・ルイス著、説話社 ※ビジネス書や一般書の版元からショーペンハウアーの新訳語録が出る機会を目にするのが徐々に増えてきたように思います。「超訳ニーチェ」や新潮文庫版『幸福について』の影響でしょうか。『【新訳】読書について――知力と精神力を高める本の読み方』(渡部 昇一編訳、PHP研究所、2012年8月)、『ショーペンハウアー 大切な教え』(友田葉子訳、イースト・プレス、2010年10月)など。飛鳥昭雄・五島勉対談は小学生の頃に五島さんの『大予言』ブームに出会った私としては一読したいところです。当時、小学生男子は学校やテレビで「冷戦」や「公害」問題を知り、家庭ではアニメ作品『宇宙戦艦ヤマト』に釘付けになっていましたから、「世界の終わり」は今よりずっとリアリティがある「本当に来るかもしれない危険」だったのです。 2013年 01月09日『来るべき書物』モーリス・ブランショ著、粟津則雄訳、筑摩書房(文庫) 01月11日『市民法理論』ランゲ著、大津真作訳、京都大学学術出版会 01月13日『希望の原理 第三巻』エルンスト・ブロッホ著、山下肇ほか訳、白水iクラシックス 01月15日『放射能問題に立ち向かう哲学』一ノ瀬正樹著、筑摩書房 01月16日『第二次世界大戦秘録――幻の作戦・兵器 1939-45』マイケル・ケリガン著、餅井雅大訳、創元社 01月16日『人類哲学へ』梅原猛著、NTT出版 01月28日『ジャン=リュック・ナンシー――思考のEx』澤田直著、白水社 01月28日『新訳ベルクソン全集(4)創造的進化』アンリ・ベルクソン著、竹内信夫訳、白水社 01月28日『神の文化史事典』松村一男編著、白水社 01月30日『縄文ビジュアル大百科』小川忠博著、平凡社 ※ブランショ『来るべき書物』は『明かしえぬ共同体』の前例を考えれば、おそらくちくま文庫ではなくちくま学芸文庫でしょうね。ランゲはシリーズ「近代社会思想コレクション」の最新刊。ナンシー論はシリーズ「哲学の現代を読む」の最新刊。『神の文化史事典』は「世界中の神々の名前や能力、属性をまとめた日本で初めての事典」とのことです。
by urag
| 2012-12-02 17:53
| 本のコンシェルジュ
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