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2012年 03月 21日

『アドルフ・ロース著作集(1)虚空へ向けて』、アセテートより

版元に予約していた例の本が今日ついに届きました。

アドルフ・ロース著作集(1)虚空へ向けて
アドルフ・ロース著 加藤淳訳 鈴木了二+中谷礼仁監修
編集出版組織体アセテート 2012年4月 本体2,800円 A5判並製314頁 ISBN978-4-902539-21-9
帯文より:ラディカルな近代建築宣言「装飾と犯罪」で知られる建築家アドルフ・ロース(1870-1933)による、めくるめく19世紀末ウィーン文化批評の全貌。全31編中27編本邦初訳。ドイツ語初版より訳出。解題2篇、200以上の詳細な訳注を付す。アドルフ・ロース全集発刊開始第1弾。

原書:Ins Leere gesprochen, 1879-1900. Georges Crès et Cie, Paris / Zürich, 1921.

★「アセテート友の会通信」第23号(2011年9月10日)の挨拶文に本書刊行の意義の端的な説明がありますので、引用します。「ロースの著作は現在、ドイツ語圏において3巻本の全集として刊行されています。『虚空へ向けて(INS LEERE GESPROCHEN)』はその第1巻目にあたり、主に1897年から1900年までのわずか4年の間に執筆された論文を集めたものです。これは、ロースの批評家としてのキャリアの最初期に書かれたものでありますが、実際に発行されたのは晩年を迎えた1921年でした。執筆にとどまらず、出版に関してもロース自身が関わったとされています。今回のアセテート版刊では、同書におさめられた全31稿中、なんと27稿が本邦初訳となっています。/日本ではロース関する既往研究は数多く存在します。しかしそのほとんどが「建築家ロース」の見解に視点がおかれ、装飾の排除を確言したモダニズム建築の先駆者と理解されがちでした。伊藤哲夫氏(元国士舘大学教授)による、日本で唯一のロース著作集の翻訳本『装飾と罪悪』(中央公論美術出版、1987)でも、建築に関係する論稿がその大部分を占めています。しかし、今回の『虚空へ向けて』では、その概念を覆すかのような新しいロースの見解がご覧頂けるかと思います。専攻研究者〔ママ。あるいは先行研究者?〕である伊藤哲夫先生も私たちの意向に大いに賛同され、資料面で大きなご協力をいただいております。/アセテート版に収録されるロースの論考は「建築」論だけではありません。「メンズモード」「女たちのモード」「工芸の展望I」(本邦初訳)で端的に判明するように、進歩、伝統、倫理三つどもえの葛藤、ファッションや工芸への深い洞察といった、生活全体を構成するディティールへの意識の高さは、建築論の領域を越えた「非建築」論、はたまた新しい「生活」「文化」誌としてたち現れてきます」。

★訳注は早稲田大学中谷研究室によるもので、解題2篇というのは、ヴァルター・ループレヒター「アドルフ・ロースとウィーン文化」(安川晴基訳)と、細井淳「『虚空へ向けて』と皇帝即位50周年記念展示会」です。目次詳細は版元サイトに掲載されています。書容設計は羽良多平吉(EDiX)さん。たいへん美しく繊細です。版元直販の場合、消費税を取らないばかりか、「2000円以上のご購入で日本国内送料無料」とのことですので、本書は国内住所に限り送料無料。なおかつクレジットカード決済可能です。カラー口絵といい、詳細な訳注といい、これで2,800円というのは実にお得です。中谷さんのブログ記事によれば初版1000部とのことですからご注文はお早めに。「アセテート編集者日記」によれば、初回出荷で在庫を使い切ったご様子で、印刷所からの追加待ちとのこと。出だし好調なのですね。

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★なお、中谷礼仁さんはまもなく平凡社より発売になる以下の新刊にも執筆者として深くかかわっておられます。貴重な記録です。

今和次郎「日本の民家」再訪 
瀝青会(れきせいかい)著
平凡社 2012年3月 本体3,200円 A5判上製394頁 ISBN978-4-582-54440-4
帯文より:90年前のあの民家たちはいま、どうしているだろう――。瀝青会は『日本の民家』に収められた45件を探して全国津々浦々、今日もアスファルトの上を行く。2000日の旅が教えてくれたのは、うつろい、うつろわぬ、歴史の狭間にある民家・農山漁村・都市・人々の姿でした。
版元紹介文より:今和次郎が訪ねた民家・集落を、90年後にあらためて実地調査。その結果は? 驚きと発見の「21世紀版・日本の民家」。汐留ミュージアムで初の今和次郎回顧展開催中(2012年3月25日まで)。

★今和次郎『日本の民家』(1922年)は、岩波文庫(1989年)で読むことができましたが、2005年に一括重版されたのち、現在は品切。そろそろ再刊されてもおかしくないだろうと思います。

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by urag | 2012-03-21 14:30 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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