2012年 03月 11日
![]() ★あさぎ色の色上質紙を使い、モスグリーンの特色で本文を刷った弊社1月刊、ガシェ『いまだない世界を求めて』は叢書「エクリチュールの冒険」第2配本でした。第1回配本は2007年1月刊、ブランショ『書物の不在』。ブランショの生誕百年記念出版です。発売翌日に売り切れてしまった初版800部は、本文を朱色の紙に墨で刷り、光沢のある漆黒の繻子のクロスで表紙をくるんだものでした。第二版1000部をブランショの7回忌、2009年2月に刊行。鉄色の紙に銀色のインクで本文を刷り、表紙は白銀色の繻子のクロスで包みました。これは幸いなことにまだ在庫があります(重版というのは零細出版社にとってなかなかハードルが高く、思いがけず早期品切になると焦ります)。『いまだない世界を求めて』は、著者にとって日本で初めての単行本になるので(初めての本というのはだいたい売上で苦戦します)、初版部数は控えめに700部しか作っていません。限定とは謳いたくない(品切後に古書価が高くなりがちの)ため、部数はこれまで公表しませんでしたが、購入を迷われているお客様がいらっしゃるといけませんから、一言だけお知らせしておきます。 ★発売後に書店さんを訪問した際、小口の紙の色が水色の本と若草色の本を新刊台で発見。朝日出版社さんから発売された、「これからのアイデア」をコンパクトに提供する新シリーズ〈アイデアインク〉の2点でした。ブックデザインはグルーヴィジョンズさん。色紙をカバー、表紙、本文紙に使用している点が期せずして、同月刊行ながら弊社本が追っかけるかたちに。担当編集者のお名前を確認すると、私がすっかりご無沙汰してしまっているAyさん。Ayさん、カブった感じになってごめんなさい……。さらに別の書店さんで日経BP社さんが昨年末発売された灰色の本を発見。エセルさんの新刊ってこういう本だったのですね。カバーを脱がしても美しい、本文の組版も個性的な本。デザインはcozfishの佐藤亜佐美さん。偶然とはいえ、こうして本文紙が白くない本が人文書売場に立て続けに出るのは珍しいような気がしたので、いつか当ブログでご紹介しようと思っていました。人文書担当の書店員さんでこの4冊がお目に留まっている方がいらっしゃったら嬉しいです。 情報の呼吸法 津田大介著 朝日出版社 2012年1月 本体940円 B6判変型168頁 ISBN978-4-255-00621-5 版元紹介文より:発信しなければ、得るものはない。『Twitter社会論』以来2年ぶりとなる待望の単著! ツイッターの第一人者で「tsudaる」という流行語を生み、フォロワーは20万人弱、ソーシャルメディアの最前線を疾走する。メディア・アクティビスト津田大介による、超情報時代を楽しむための情報の「吸い込み方と吐き出し方」。フォロワーの増やし方から、信憑性のはかり方、アイデアを生む「連想ゲーム」術まで。発信しなければリターンはない。情報というガソリンを取り込んで、人を巻き込み、変化を引き起こすための行動型情報入門。 ソーシャルデザイン グリーンズ編著 朝日出版社 2012年1月 本体940円 B6判変型160頁 ISBN978-4-255-00622-2 版元紹介文より:社会の問題は、楽しく解決できる。毎日の暮らしも世界の問題も、たったひとつの思いつきで「楽しく」変えられる。おばあちゃんを元気にするニットブランド、街を賑わす「うわさ」の貼り紙。月間読者12万人、毎日更新されるいま大注目のウェブマガジンを営むグリーンズが、社会を変えた伝説のアイデアを世界中から紹介。これからの街づくり、子育て、エネルギー……「自分ごと」で未来の社会をつくるためのヒント集。話題の実践家、山崎亮、山口絵理子、井上英之各氏のインタビューも収録。 ★上記2作は、今月25日までに購入されたお客様に、電子版を無料配布中とのこと。詳しくは〈アイデアインク〉特設ページで。 怒れ!憤れ! ステファン・エセル(Stéphane Hessel, 1917-)著 村井章子訳 日経BP社 2011年12月 本体800円 B6変型判並製112頁 ISBN978-4-8222-4876-5 版元紹介文より:「ウォール街を占拠せよ」デモに代表される欧米の怒れる人々に火をつけたといわれているフランスで200万部を超えるベストセラー。「若者よ、無関心はいけない。怒りを持って行動せよ」と呼びかけたパンフレット。著者は90歳を超えた元レジスタンス活動家のステファン・エセル。世界で不正義が横行しているなか、無関心でいる人々に対して、ナチに逮捕されて処刑される寸前に脱出した自らの若き日々を振り返りつつ、「世の不正義に目をつぶるな。行動を起こせ!」と訴えた32ページのシンプルな内容。フランス国内で2010年秋に出版されると、若い人へのクリスマスプレゼントしてベストセラーになった。ドイツ、イタリア、スペインなど債務問題で揺れる国々へ波及し、欧州全域で300万部を超えた。「戦後、フランスは社会保障制度や年金制度を創設し、特権者を排除した民主主義の理念を掲げたが、いまや社会保障制度はぐらつき、利益追求が横行し、報道の自由や教育の機会均等が脅かされている。レジスタンスの動機は怒り。自由が回復した戦後になっても、フランスが植民地アルジェリアの民族独立を封じ込めようとしたアルジェリア戦争、社会主義を掲げながら自国や東欧を抑圧したスターリンの独裁政治など、怒りの種は尽きなかった。いまの世界は相互依存が強く、わかりにくくなっているが、それでも容認できないことはたくさん存在する。貧富の格差拡大、人権、地球環境など、世の矛盾や不正義は周囲を見回せばいいっぱいある。だから、若者よ、怒れ!憤れ!」エセルさん本人は、いまもパレスチナ問題の不正義に怒り、非暴力での解決のため奔走している。 原書:Indignez-Vous!, Indigène éditions, 2010. ★エセルさんの本は今週15日に、以下の新刊が明石書店さんから発売予定と聞きます。 若者よ怒れ! これがきみたちの希望の道だ――フランス発 90歳と94歳のレジスタンス闘士からのメッセージ ステファン・エセル+エドガール・モラン著 林昌宏訳 明石書店 2012年3月 本体1,000円 4-6判128頁 ISBN9784750335575 版元紹介文より:拡大する格差、疲弊する社会、蔓延する不正腐敗、マネーの暴力、気候変動、大規模災害。現代社会は根本から崩れようとしている今こそ、理想を取り戻さなくてはならない。ともに90歳を超える元レジスタンス闘士二人が怒り、未来をつくる「希望の道」を語る。 ★「怒りはすぐれて政治的感情である」と書いたのはジャン=リュック・ナンシーでした(『共出現』、松籟社、2002年、82頁)。3・11一周年の今日、哀悼の祈りとともに私たちは今一度自身の胸の内を覗かねばならないようです。矢部史郎さんが明言したように、私たちは3・11(大震災)と3・12(原発爆発による放射能汚染)を区別しなければなりません。それが現実の出発点なのですから。
by urag
| 2012-03-11 21:46
| 本のコンシェルジュ
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