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2011年 12月 11日
![]() 世界史の中のフクシマ――ナガサキから世界へ 陣野俊史(1961-)著 河出ブックス 2011年12月 本体1,300円 B6判並製208頁 ISBN978-4-309-62438-9 帯文より:言葉なき人々の声のために――苦しみをこえる思想をさぐる。ナガサキの悲劇と世界の新しい動きの交点においてフクシマは何を問うのか。 カバー紹介文より:3・11以降、われらに残された希望はあるのか。ヒロシマ・ナガサキの体験を問い返しながら、アラブからロンドンまでの世界史的スケールの中に2011年の苦悩を刻印する渾身の力編。 目次: はじめに 第1章 ナガサキから 第2章 フクシマへ 第3章 言葉なき人の声を代弁する――狐火インタビュー 第4章 尊厳を傷つけられた人々 あとがき ★13日発売と告知されていますが、週末から書店店頭に並び始めているようです。「できることは少ないと思っていた」という書き出しで始まり、「残された者は、生きている限り、やり続けなければ、と思う」という一文で終わる本書は、批評家である陣野さんの体温を感じることができる素晴らしい本です。陣野さんは長崎県出身。第一章は長崎の原爆投下について。医者であり作家であり被爆者である永井隆さんの著書『長崎の鐘』を手掛かりに、考察を進めます。第二章は福島の原発事故について。福島出身の古川日出男の『聖家族』や、橋爪健「死の灰は天を覆う」、大江健三郎「アトミック・エイジの守護神」、井上光晴『西海原子力発電所』などを読み解き、「文学サイドから」(8頁)問題に切り込みます。第3章は福島出身のラッパー「狐火」さんへのインタビュー。第4章は、中東や欧米、日本でも起きた「デモ」について考察。帯に記載されている「あとがき」からの引用をご紹介しますと、「私たちこそが「99%」なのだ。誇りや尊厳を毀損され、沸々とした怒りを抱えている存在、indignésなのだ。きっとそうだとは思っていた。自分がその外部にいるとは思っていなかった。余計な断りを入れておくと、ここで私の言う「indigné」は経済力とは関係ない。いわゆる「格差問題」とは別の、尊厳の問題として、私はここまで書いてきたつもりだ。そして福島第一原子力発電所の未曾有の事故以後、民意が脱原発へ傾いているにもかかわらず、「再稼働」に踏み切る(しかも同年12月には定期検査に入って再び運転を停止する以上、「再稼働」だけが目的であり、既成事実の積み上げが狙い)「1%」の、その狂気はどうやら本物らしい。なんとかしなくちゃ。そのために、この本を書いた」(200-201頁)。 ★河出書房新社さんは今月27日に、TwitNoNukes編『デモいこ!』を発売予定。A5判64頁で本体700円という身軽な本で、弊社刊『文化=政治』著者・毛利嘉孝さんらが寄稿しています。 フェルメールとスピノザ――〈永遠〉の公式 ジャン=クレ・マルタン(Jean-Clet Martin, 1958-)著 杉村昌昭訳 以文社 2011年12月 本体1,800円 46判上製108頁 ISBN978-4-7531-0296-9 帯文より:フェルメールの描いた『天文学者』のモデルはスピノザである。〈永遠〉の観念をめぐる極上の思想サスペンス。画家と哲学者の出会い、そして〈永遠〉の創造。二人の秘められた共通性に肉薄する。 原書:Bréviare de l'éternite: Vermeer et Spinoza, Leo Scheer, 2011. ★15日発売と聞いています。ヨハネス・フェルメールとバルフ・デ・スピノザはともに1632年、アムステルダム生まれ。フェルメールが1668年に描いた『天文学者』(本書のカバーや口絵で掲載)のモデルはスピノザである、とマルタンは断言します。確かにスピノザの自画像(こちらも図版掲載されています)と、「天文学者」は似ています。担当編集者のMさんからのご紹介によれば本書は「フェルメールとスピノザの、おそらく実際にあったであろう“出会い”を証明せんとする、大変スリリングな“哲学書”」とのこと。単なるモデルと画家の関係ではなく、思想的な共通性もあったとするのが本書の興味深いところです。原著の裏表紙には次のような一節があります、「彼らの作品の核心には、ものの形態や様式に対する捉え方の類縁性、あるいはものを見る視線における奥深い親近性がある、とマルタンは主張する。無限の属性で構成された唯一の実体というスピノザ的な神の観念が、フェルメールの代表的な絵画のひとつ『天文学者』における地球を無数の明かりで照らし出す光線に対応する」(訳者あとがきに訳出、100頁)。訳者は本書をこう評しています、「かつて「ゴッホ論」(拙訳『物のまなざし』2001年、大村書店刊)で披瀝されたマルタン独自の哲学的絵画読解の技法が、ここではフェルメールの作品を素材にしながら、よりいっそうの腕の冴えを見せている。〔…〕本書は小冊子ながら、スピノザ好きの哲学愛好家にとっても、フェルメール好きの美術愛好家にとっても、格別の興味をそそる濃密な記述にあふれている」(103-104頁)。 ![]() 東京湾の魚類 河野博監修 加納光樹+横尾俊博編 平凡社 2011年12月 本体3,200円 A5変型判並製376頁 ISBN978-4-582-54243-1 帯文より:江戸前の魚たちのすべてがわかる。300種以上の魚類を、20年にわたる調査データとカラー写真で解説。東京湾に出現する魚類737種の一覧リスト付き。 版元紹介文より:「江戸前」と呼ばれた東京湾は、多様な海洋環境を擁し、魚類の種数も多く、仔稚魚のゆりかごともなっている。約350種の魚類の紹介と、チリモン(チリメンモンスター)、釣り、漁業、透明標本などトピックスも満載。 ★まもなく店頭発売開始です。カラー図鑑好きで東京住まいの私にとってはたまらなく魅力的な一冊。コンパクトな見た目とは裏腹にズッシリ重い(全頁コート紙でフルカラー印刷だからでしょうか)のに盛り上がり、頁をめくっては盛り上がり、「えっ、ラブカって東京湾にいるの?」などと喜んでいます。ウィトゲンシュタインとのコラボ本(『透明な沈黙』青志社)で人文系でも有名になった透明標本などの写真も収録。今年は創元社さんの『世界で一番美しい花粉図鑑』でも盛り上がりましたが、動物にせよ植物にせよ、かたちの世界というのは実に神秘的で美しいですね。「自然が創り出す美しいパターン」をめぐるフィリップ・ボールによる三部作の既刊二冊『かたち』『流れ』(ともに早川書房)もまた、今年の収穫でした。 ★平凡社さんの12月新刊は実に多彩です。上記の『東京湾の魚類』のほかにまもなく発売となるのは、松原正毅『カザフ遊牧民の移動――アルタイ山脈からトルコへ 1934-1953』は、社会人類学の重鎮による畢生の大作で「遊牧から見た20世紀ユーラシア史」(帯文より)と銘打たれています。アルタイ山脈からトルコに至る約2万キロにも及ぶカザフ遊牧民の苦難に満ちた移動と難民化の実態、遊牧生活の消滅過程を辿ります。また、最近発売になった新刊には吉田一彦編『変貌する聖徳太子――日本人は聖徳太子をどのように信仰してきたか』、ブズルク・ブン・シャフリヤール『インドの驚異譚――10世紀〈海のアジア〉の説話集(2)』(家島彦一訳、東洋文庫)があります。前者は三部構成(「信仰の対象になった「聖徳太子」」「進化する聖徳太子信仰」「民衆へと広がる聖徳太子信仰の展開」)で、序論と併せ10本の論考と、3本のコラムが収められており、くだんの信仰発展史を伝記や絵画から解明しています。後者は162の説話の内、後半80話と用語集・索引を収録するもので、全2巻完結となります。東洋文庫の来月配本は『江戸後期の詩人たち』『共同研究 転向 戦前篇I』の2点だそうです。 ![]()
by urag
| 2011-12-11 23:19
| 本のコンシェルジュ
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