創刊号で森山大道さんを特集していた雑誌「COYOTE」(スイッチ・パブリッシング)の第2号は、「星野道夫の冒険」という名目の特集号です。今回も当誌のテーマである「旅」の魅力が誌面からオーラを放っていて、とても素敵です。星野さんが愛読書を紹介するページがあって、これまた素敵な選書で大いに私は共感しました。まるで自分も旅に参加しているかのような陶酔に浸りながら読み進んでいると、口に含んだお茶を一気に吹いてしまうくらいの華麗なる誤植が。
私も大好きなル・グウィンの『ゲド戦記』が紹介されているのですが、そこにこんな記述があります。
「『島との戦い』『こわれた満腹』『さいはての島へ』、そして『帰還』の四部作。」
見事な、見事すぎる読者へのボディブローです。『島との戦い』は正しくは、『影との戦い』で、『こわれた満腹』は本当は、『こわれた腕輪』です。誤植というものは出版にはつきもので、それを笑うのは私にとっては天に唾するようなものです。しかし、これには我を忘れて本当に笑ってしまいました。だって、間違い方にもセンスってものがあると思うのですが、これはどうにもわざとやったとしか考えられないほどお見事ですから。それにしてもどの時点で間違っていたのか、星野さんが編集者を笑わせるつもりで故意にやったのか、それとも、組版の段階で、オペレーターさんに魔がさしたのか。色々な可能性はあるでしょう。でも、これしきの誤植で、この特集号の価値は下がりません。やっぱり素敵です。
ちなみに、『ゲド戦記』は『アースシーの風』もあわせて現時点では五部作で、外伝が一冊出ています。いずれも岩波書店から刊行されています。本当に大好きな作品で、人に薦めまくってきました。皆様もぜひどうぞ。(H)

それにしてもいつも下手っぴな撮影のデジカメ画像ですみません。