2011年 05月 26日
◎ジョルジョ・アガンベンさん(『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』著者) ◆以下の訳書が刊行されました。 事物のしるし―─方法について ジョルジョ・アガンベン(1942-):著 岡田温司+岡本源太:訳 筑摩書房 2011年5月 本体2,600円 四六判上製200頁 ISBN978-4-480-84718-8 原書:Signatura Rerum: Sul metodo, Bollati Boringhieri, 2008. 帯文より:フーコーを契機として〈パラダイム〉〈しるし〉〈哲学的考古学〉をめぐり、その思想の展開方法や認識の可能性を再構築するアガンベン版〈方法論序説〉。ホモ・サケル、回教徒、強制収容所……これらはどのように思考されてきたのか。アガンベンによる人文科学の方法論。 帯文(表4)より:「仕事の方法という問題に関するかぎり、この本はわたし自身にとってとても重要なものです」(アガンベン)。「方法についての書であると銘打ったこの本は、同時にすぐれて、その方法をアド・ホックに実践している書である。つまり、そこにおいて理論と実践、手続きと結果、解釈と提示とが分かちがたいかたちで合体しているのであり、方法について思考することが、そのまま方法の実践となりえている稀有な試みなのである」(「訳者あとがき」より)。 目次: はしがき 第一章 パラダイムとはなにか 第二章 しるしの理論 第三章 哲学的考古学 新たなる方法序説――訳者あとがきにかえて 岡田温司 文献 人名索引 ★人文科学の再定礎ともいうべき課題に果敢に挑んだ本です。アガンベンさんが訳者の岡田さんに宛てた私信(その一部が帯文に引用されてます)の中で、今回の本の重要性について明かしていますが、確かに本書の副題のシンプルさはその重要性に比しているかもしれません。シンプルな副題は他の例では96年刊の2点『目的なき手段――政治についての覚書』(日本語訳『人権の彼方に――政治哲学ノート』以文社、00年5月)、『イタリア的カテゴリー――詩学の試み』(日本語訳『イタリア的カテゴリー――詩学序説』みすず書房、10年4月)などがありました。アガンベンさんは近年、ヴェネツィア建築大学をお辞めになっており、おそらくは今後も大作を世に問うことでしょう。『事物のしるし』はアガンベンさんの新たなスタートを予感させる気がします。 ★今までに訳された単独著既刊書を、原著刊行順に列記すると以下の通りです。 1970年『中味のない人間』(岡田温司・岡部宗吉・多賀健太郎訳、人文書院、2002年) 1977年『スタンツェ――西洋文化における言葉とイメージ』(岡田温司訳、ありな書房、1998年;ちくま学芸文庫、2008年) 1979年『幼児期と歴史――経験の破壊と歴史の起源』(上村忠男訳、岩波書店、2007年) 1982年『言語と死――否定性の場所にかんするゼミナール』(上村忠男訳、筑摩書房、2009年) 1993年『バートルビー――偶然性について』(高桑和巳訳、月曜社、2005年) 1995年『ホモ・サケル――主権権力と剥き出しの生』(高桑和巳訳、以文社、2003年) 1996年『人権の彼方に――政治哲学ノート』(高桑和巳訳、以文社、2000年) 1996年/2010年『イタリア的カテゴリー――詩学序説』(岡田温司監訳、2010年) 1998年『アウシュヴィッツの残りのもの――アルシーヴと証人』(上村忠男・廣石正和訳、月曜社、2001年) 2000年『残りの時――パウロ講義』(上村忠男訳、岩波書店、2005年) 2002年『開かれ――人間と動物』(岡田温司・多賀健太郎訳、人文書院、2004年) 2003年『例外状態』(上村忠男・中村勝己訳、未來社、2007年) 2005年『涜神』(堤康徳・上村忠男訳、月曜社、2005年) 2005年『思考の潜勢力――論文と講演』(高桑和巳訳、月曜社、2009年) 2008年『事物のしるし―─方法について』(岡田温司・岡本源太訳、筑摩書房、2011年) 2009年『王国と栄光――オイコノミアと統治の神学的系譜学のために』(高桑和巳訳、青土社、2010年) ★筑摩書房さんでは来月、中山元さん(弊社刊、ブランショ『書物の不在』訳者)の新刊『正義論の名著』(ちくま新書、6月6日発売、税込861円、ISBN978-4-480-06612-1)を出版されます。また、以下の新刊も予定されています。 マイケル・サンデル『公共哲学―─政治のなかの道徳をめぐる小論集』(鬼澤忍訳、ちくま学芸文庫、6月8日、税込1,470円、ISBN978-4-480-09387-5) 三輪裕範『自己啓発の名著30』(ちくま新書、6月6日、税込903円、ISBN978-4-480-06613-8) 清水幾太郎『流言蜚語』(ちくま学芸文庫、6月8日、定価1,155円、ISBN978-4-480-09390-5) 『中井久夫コレクション(2)「つながり」の精神病理』(ちくま学芸文庫、定価1,365円、6月8日、ISBN978-4-480-09362-2) 『ヴァレリー集成2』(塚本昌則編訳、筑摩書房、5月25日、定価7,980円、ISBN978-4-480-77062-2) 『ゲーテ スイス紀行』(木村直司編訳、ちくま学芸文庫、6月8日、定価1,575円、ISBN978-4-480-09386-8) ◎鵜飼哲さん(ジャン・ジュネ『公然たる敵』共訳者) ◆以下の共訳書が復刊されました。 恋する虜――パレスチナへの旅 ジャン・ジュネ(1910-1986):著 海老坂武+鵜飼哲:訳 人文書院 1994年3月 本体7,000円 46判上製616頁 ISBN978-4-409-13017-9 原書:Un captif Amoureux, Gallimard, 1986. 帯文より:パレスチナ、その土地と人々を見据え、夥しい死者を出した、孤独で絶望的な闘争の記録。 政治的ルポを越える新たな文学的営為。癌に冒されつつ書き続けた最後の大作。待望の復刊。 目次: 回想I 回想II 『恋する虜』関連地図 『恋する虜』関連年表 『恋する虜』完成にいたるジュネ晩年の歩み――あとがきにかえて ★どれくらいの期間、品切だったでしょうか。久しぶりの復刊です。巻末に「再版のためのあとがき」と題された鵜飼さんによる新規テクストが5頁追加され、「新たな角度で読み直す可能性」について言及されています。訳文も最低限の見直しを経ているとのことです。版元情報によれば、高価本にもかかわらず反響が大きいとのこと。大冊でなかなか重版しにくいでしょうから、初版本をお持ちの方もこの機会に再度購入された方がいいかもしれません。手元にある初版本を見直したところ、当時も本体価格7000円でした(17年前としては高い印象)。今回値段を据え置きにされたのは嬉しいことです。 ★人文書院さんでは本書と同時に以下の2点も重版されました。『ユング・コレクション(6)結合の神秘II』(池田紘一訳、本体7000円)と、E・ルナン『イエスの生涯』(忽那錦吾+上村くにこ訳、本体2000円)。
by urag
| 2011-05-26 16:22
| 本のコンシェルジュ
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