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2011年 02月 07日

注目新刊:主に11年1月から2月にかけて(その1)

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★『梵文和訳 維摩経』高橋尚夫+西野翠訳、春秋社、2011年1月刊
帯文に「サンスクリット原典からの世界初の現代語訳がついに完成」とあります。大正大学の綜合佛教研究所が原典写本がチベット自治区のラサにあるポタラ宮のダライ・ラマの書斎で発見したのが1999年7月。それまでは長い年月、断片の存在しか知られていませんでした。私たちはこうして一冊の書物として原典訳をいま手にすることができるわけですが、この本の成り立ちの背景には数知れぬ関係者の並々ならぬ苦労と尽力があったことを思うと、感動を覚えずにはいられませんね。巻末に用語解説と訳注が付されています。訳注で梵蔵漢(サンスクリット原典・チベット語訳・漢語訳)の相違点について言及されていますが、どちらかといえば研究者向きです。それでも、「訳者あとがき」によれば訳注は全体の半分を削除したそうです。さらには原典と漢訳三種と既存の日本語訳(チベット語訳からの翻訳)との対照一覧表も作成されたそうですが、残念ながらこちらも割愛。チベット語訳からの日本語訳というのは長尾雅人訳のこと。中公文庫の『大乗仏典(7)維摩経/首楞厳三昧経』(2002年)に収録されています。仏教用語に不慣れな方は、文庫版の訳文の方がより親しみやすく感じるかもしれません。二冊を読み比べてみるといっそう理解が深まるはずです。


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★『西田幾多郎の生命哲学』檜垣立哉著、講談社学芸文庫、2011年1月
2005年に刊行された講談社現代新書の増補改訂版です。帯文の言葉が本書の内容を端的に示しています。曰く「西田哲学の本質は、ベルクソン、ドゥルーズと響きあう「生命の哲学」である」。難解な西田哲学を「もっと柔軟に、もっと横断的に理解したい」(学術文庫版への序文、3頁)読者にとってはうってつけの、非常に啓発的な本です。檜垣さんは今月(2011年2月)、勁草書房から編著書『生権力論の現在――フーコーから現代を読む』を上梓されると聞いています。

ちなみに講談社さんでは今週水曜日9日発売の選書メチエで、ロベルト・エスポジト『三人称の哲学――生の政治と非人称の思想』(岡田温司監訳、佐藤真理恵+長友文史+武田宙也訳)が発売されますね。2007年にエイナウディから出版されたTerza persona: Politica della vita e filosofia dell'impersonaleの翻訳と見て間違いないでしょうね。


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★『蕪村句集講義(3)』佐藤勝彰校注、東洋文庫(平凡社)、2011年2月刊
鳴雪、子規、虚子、碧梧桐による5年間にわたる全63回の輪講の記録。全三巻で完結です。第1巻が「冬之部・春之部」、第2巻が「夏之部」、そしてまもなく発売となる第3巻が「秋之部」。「僅に十有七字、しかも之を解釈するに呶々数千語を費して猶足らざる事あり」(蕪村句集講義に就きて、第3巻271頁)と子規は書いています。また、「美的連想」力にたけた人が俳句をよく理解する、とも言っています。「子規は死の床にあってなお発言を続けた」と帯文にあります。

今月の東洋文庫はもう一冊、V・V・バルトリド『トルキスタン文化史(1)』(小松久男監訳)です。帯文によれば「「トルキスタンのギボン」と呼ばれたロシアの東洋学の泰斗バルトリドが、中央アジアの古代から近代までを通観。多様な文化、民族、言語、宗教が織りなす中央アジア史の基本書」とのこと。帯で予告されている来月の東洋文庫はやはり2点で『トルキスタン文化史(2)』(全2巻完結)と『花甲録』。『花甲録』と言えば 内山完造(1885-1959)の自伝。現在も神田神保町で営業している中国図書専門店「内山書店」を興した書店人です。


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★『盛岡さわや書店奮戦記』伊藤清彦著、論創社、2011年2月
小田光雄さんがインタビュワーをおやりになっているシリーズ「出版人に聞く」の第2弾は、新宿や町田の山下書店、そして近年まで盛岡のさわや書店本店で店長をつとめられていた伊藤さんのインタビュー本です。帯に「本を売ることもひとつの冒険である」とありますが、これは同シリーズ第1弾の今泉正光さんの本『「今泉棚」とリブロの時代』の帯文、「本を売ることもひとつの思想である」と響き合っています。伊藤さんのインタビューの内容については「つん堂」さんのブログ記事「伊藤晴彦「盛岡さわや書店奮戦記」を読んだ」に的確な要約があります。やはり一流書店人の言うことは全部勉強になります。

なお、平安堂長野店に現在バイトで復帰中の今泉さんの講演会が歴史書懇話会の主催で今月下旬にあるのですが、これはどうやら業界内むけのセミナーの様子。一般読者を対象にしてもきっと聴講者が集まるような気がします。「出版人に聞く」の続刊予定は、小田さんの「出版状況クロニクル」の第33回(2011年1月分)にある通り、第3巻が緑風出版の高須次郎社長の『流対協と再販制、グーグル問題』(3月刊行予定)、第4巻がリブロ/ジュンク堂の中村文孝さんの『もうひとつのリブロの時代』(4月刊行予定)。業界人であれば第1弾から第4弾までの恐ろしいまでの「濃さ」は誰もが認めざるをえないのではないかと思います。むろん、「濃い」先達はまだまだいらっしゃるので、この先も「出版人に聞く」シリーズには注目です。

by urag | 2011-02-07 04:35 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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