2011年 02月 01日
本日2011年2月1日午前11時から、ジュンク堂書店の公式サイトが「丸善&ジュンク堂書店」のサイトにリニューアルされました。これまでは、丸善&ジュンク堂書店を含む、ジュンク堂書店の各支店での単品ごとの在庫の有無が確認できましたが、今後は丸善の各支店の在庫もヒットするようになり、さらに情報のヴォリュームが増しました。店頭に出向ける方は「取置」ボタンで商品の購入を予約することができますし、出向けない方も電話をすれば代金引き換えで購入可能です。毎回誉めてますけど、やっぱり素晴らしいですね。 ほかのチェーン書店さんもぜひこうした「店頭在庫」の表示をやってほしいです。一読者としては入手しにくい本が支店にまだ残っているのを発見できることもありますし、一版元としても在庫の活用はたいへん嬉しいです。と言うのも、たまにですけれどもどの店でも売り切れてしまっている貴重本が、ある店ではバックヤードに眠っていたりすることがままあるからです。売れる本は全国的にどこに置かれていても売れるかと言えば、そうでもありません。売れている本でも、必ず返品はあります。全国紙の書評に出たばかりの本の返品依頼が入ることすらあります。余っているところには余っている。余っていることがオンラインで分かればいいのですけれど、対応できないお店もある。で、欲しいお客様の手には届かず、返品されて廃棄される、と。取次さんはこの辺をどうお考えなんでしょうねえ。 +++ 【2011年2月5日22時追記】当エントリーに対するブックマークやツイート、リツイートが一段落した様子なので、業界界隈の方々のご興味を惹いた分、可能な範囲で追記を試みたいと思います。 まずasakura-tさんのコメント:「昔は本やタウン http://www.honya-town.co.jp/hst/HT/index.html 提携書店の一部で店頭在庫確認できた記憶があるのだけれど。(今はできないよね?/未確認)」について。 以前は有隣堂やら平安堂やらで確か店頭在庫と連動してましたね。ただし、M&Jのように単品別ページに各支店の在庫が一覧で出てくるのではなく、今の紀伊國屋書店のように、特定の支店ごとのページで単品在庫があるかないかが分かる程度だったと記憶しています(支店ごとに検索し直さなければならず、めちゃくちゃ面倒くさい)。今では「本やタウン」の倉庫(日販の倉庫)を一律に使用しているので、リアル書店の店頭在庫情報とは連動していませんね。宅配のほか、加盟店での受け取りが可能となっています。 次にh_magaraさんのコメント:「取次云々とは別の話では?」について。 ウェブ上で単品ごとに書店の各支店の店頭在庫の有無が一覧で分かる、という記事の末尾に唐突に「取次さんはこの辺をどうお考えなんでしょうねえ」と書いたため、取次云々とは別の話ではないか、というご意見をいただくのは当然だと思います。実は投稿前にはこの一文の前後に自分の考えを書いてたのですが、アップする前にすべて削除しました。全部書いたらそれで話が自己完結してしまうのと、話が発展しすぎてしまう気がしたからです。だからぼそっと一言だけ残しました。 私の意見はこうです。まず私の理想は、先に書いたように「ほかのチェーン書店さんもぜひこうした「店頭在庫」の表示をやってほしい」ということです。しかし、その実現は実際は難しいだろう、と悲観しています。なぜ難しいのかという点についてはもっとたくさんの言葉が必要かと思いますが、これは最後の一文で私が本当に問いたかったこと、すなわち「書店店頭の在庫の適正化のために出版社や取次に何かできることはないのか」ということとは主体が別になる問題(書店さんの自助努力がどこまで可能なのかという問題)なので、これは別の機会に譲ります。 「書店店頭の在庫の適正化のために出版社や取次に何かできることはないのか」という問いについて、私は取次にできることはあると思っています。全取次が帳合書店一店ごとの納品返品数を全出版社に無償で開示することです。情報提供社ごとの既存の有料システムは残念ながらすべての出版社が導入するのは不可能です。無償でなんてできるか、と取次は思っているでしょうけれど。 最後にworrisさんのコメント:「営業を取次任せにする出版社さんはこの辺をどうお考えなんでしょう」について。 「営業を取次任せにする」という表現でworrisさんが正確には何を言わんとしているのか、によって答えは違ってきますね。「書店=取次=出版社」の三者間におけるそれぞれの「営業」はどちらかがどちらかに一方的にもたれかかっているというような関係ではない(と同時にそれは三者間の関係が常に公平であり均等であることを意味してはいない)。それを踏まえた上で、もし、worrisさんが言う「営業を取次任せにする」が、例えば限定的な意味で「新刊配本を取次任せにする」ことを示しているのか、あるいは広い意味で「商品流通を取次に頼っている」ことを示しているのか、そうした違いによって応答は違ってきます。前者について言えば、小社は取次のパターン配本には依存していない。後者について言えば取次に頼っていることは確か。 そのうえで、先般の問い「書店店頭の在庫の適正化のために出版社や取次に何かできることはないのか」に立ち返ると、後者の場合、出版社にとっては、すべての書店さんと直取引する、という方法があるでしょうね。出版社側がコントロールする実力をつけるということ。しかしこれは実際には少量多品種を扱うとなるとたいへんですし、市場の完璧なコントロールは無理でしょう。 一方、前者つまり、取次との関係性の中で適正化を模索するとしたら、一版元から取次への要望としては上記の通りです(全取次が帳合書店一店ごとの納品返品数を全出版社に無償で開示して欲しい)。様々な経験則やノウハウを、立場や利害が違う者同士で共有することの不可能性……それでも何が互いにとって必要なのか、率直に話すしかありません。 さらに、再販制に絡む話で、次のような模索もありえると思っています。それは、書店さんに責任販売制(買切)を実行してもらって返品をなくし、さらに再販制をすべて時限再販に変更して、一定期間が過ぎた書籍の価格を小売サイドの裁量で自由に再設定してもらう、ということです。そうしたことを実現するにあたって、取次では出版社に正味を落とす(卸値を安くする)ことを要求してくるでしょうが、それが問答無用の大前提になるのは出版社としては承服しかねるだろうと予想できます。「正味を落とさなければ、結局読者の負担が増えるのではないか」という疑問もありえますが、それはいささか「大義」めいていて胡散臭いです。こうしたせめぎ合いに公正な答えは残念ながら存在しないでしょう。 あるいは現行の再販制から、取次へ返品された本を除外し、取次が版元に返さず自由価格で再度卸すことを可能にする、とか(アマゾン方式の応用)。まあ、そんなバカなとか、いやそれでは別の問題(二重価格)が、とか色々あるわけですけれども。 飛躍を承知で言うならば、私の考えはさらにその先へ、「国の文化政策としてすべての書物が無償で入手でき、すべての出版社は(そしてむろん、著者も印刷製本所もデザイナーも倉庫も取次も書店も)その経営的安定を国から保証される」ことが可能か、という途方もない問い(それを仮に「書物のコミュニズム」と呼んでおきます)へと進みますが、そもそも国という怪物を信用していない私にとって、それは出版論という以上に政体論でなければなりません。また、「《すべて》は許されるか」という自由をめぐる問いでなければなりません。私は生涯で一度もコミュニストであったことはないし、これからもないでしょうが、かといってコミュニズムが持つ可能性を全否定はしません。より進んだ共通善に向かって、少しでも前進を試みなければならない。問いの地平は尽きないのですね。 とか格好良いこと言って結局は、手間がかかる「情報開示」を無料で手に入れたいとか、都合が良すぎるんじゃないの。都合良すぎるとか言って版元から金をふんだくりたいだけじゃないの。ふんだくるってそれは出版社だろ。いやいや一緒にすんな、ふんだくってるのは大手だけだろうが(小零細を調整弁に使いやがって)。……以下自主規制。 と、ここでもう一度「書店店頭の在庫の適正化のために出版社や取次に何かできることはないのか」という問いに立ち返り、そもそも出版社がどうでもいい内容の本、あるいは似通った内容の本、あるいはさっぱり理解できない本を無駄に量産しているのが問題なんじゃないの、という、おそらく書店員さんや取次さんが抱いておられるであろう疑問についても一言書いておきたいと思います。無駄に量産しているかどうかは版元の会社規模の都合から言えば一概には言えない。市場全体にとっては無駄、という人がいるならば、どこからが無駄じゃない数字なのか、言わなきゃならない。大方の版元は一点あたりの発行部数をここ十年以上絞り続けていると思う。点数の多さはすべての版元がそうじゃない(どこが多いか、よく見る必要あり)。書店運営に破綻をもたらさないていどの新刊点数と発行部数が「適正」なのか。内容については各版元の良識次第だから、読者が自由に批評していいと思うが、個人的な主観で言えば、駄本はたしかに存在する。しかし何が「駄」なのか、その線引が難しかろう。……以下略。 自己矛盾と論理的破綻とを抱えつつ、黙っているのが得策か、それでも問い続けるのが責務か。
by urag
| 2011-02-01 23:09
| 雑談
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