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2010年 07月 04日
昨年(2009年)、50歳の若さでお亡くなりになった編集者・津田新吾さんが生前に構想していた「本の島」というプロジェクトへのオマージュとして、ここ数ヶ月間青山ブックセンター本店でブックフェア「本の島――「オマージュ 津田新吾」」が展開され、二度にわたってトークイベントも開催されました(5月16日:「本の島」をめぐる対話vol.1 管啓次郎×野崎歓×鄭暎惠トークイベント/6月19日:「本の島」をめぐる対話vol.2 堀江敏幸×前田英樹×冨原眞弓トークイベント)。その際、イベント来場者に冊子が配布されました。船出を予感させるヨットのようなかたちをした、手作りの素敵な冊子です。 冊子にはまず冒頭に、本の島実行委員会からの挨拶文があり、続いて「「本の島」の書棚」と題して、津田さんが青土社、書肆風の薔薇/水声社で手掛けられた本の一覧があり、ブックフェアで陳列している関連書の本のリストが続き、最後に青山BC本店の担当者・寺島さやかさんの挨拶文が載っています。ここまでが第一部。第二部は寄稿からなっており、詳細は以下に列記します。私も寄稿しました。第一部と第二部は大きさの異なる三角形であるため、見開きにした時にヨットに見えるのです。添えられたイラストには、本があたかもカモメのように舞っています。フェア会場でそれらの冊子は公開されているそうですが、ウェブ上では内容についての情報が少ないので、寄稿依頼者の了解を得て、以下に写真とともに紹介します。 ![]() 本の島へ 〔写真左〕 編集・発行 本の島実行委員会(ブログ) 2010年5月16日発行 制作・デザイン BEKA(ブログ) イラスト 鈴木英果 内容:「津田新吾の編集した本から、「私の三冊」あるいは「私と三冊」を選んでください、そんなシンプルな問いをさまざまな方に投げかけてみました。この冊子に収められたのは、そんな単純な難問への返答です」(本の島実行委員会)。 寄稿者: 管啓次郎(すが・けいじろう:詩人・比較文学者)「本が本としておとなしく本の世界だけに留まっているのでは物足りない」 山本充(やまもと・みつる:『ユリイカ』編集長)「津田新吾の本 私の三冊」 桂川潤(かつらがわ・じゅん:装本家)「最初で最後の依頼」 谷昌親(たに・まさちか:早稲田大学教授、フランス文学・映像論)「島に渡るための乗船券」 姜信子(きょう・のぶこ:作家)「(無題)」 西口徹(にしぐち・とおる:河出書房新社、編集者)「(無題)」 柴田元幸(しばた・もとゆき:東京大学教授)「(無題)」 柳瀬徹(やなせ・とおる:編集者)「(無題)」 本橋哲也(もとはし・てつや:東京経済大学教授、英文学・文化研究」「「本の島、島の本」――津田新吾さんの志へむけて」 月永理絵(つきなが・りえ:出版社〈港の人〉、編集者)「(無題)」 和泉仁士(いずみ・ひとし:紀伊國屋書店出版部)「(無題)」 笹浪真理子(ささなみ・まりこ:スイッチ・パブリッシング編集部) 越川芳明(こしかわ・よしあき:明治大学教授、アメリカ文学)「津田新吾と作る本」 山元伸子(やまもと・のぶこ:ブックデザイナー)「(無題)」 樽本周馬(たるもと・しゅうま:国書刊行会編集部)「(無題)」 淺野卓夫(あさの・たかお:サウダージ・ブックス)「私と三冊」 大友哲郎(おおとも・てつお:無職、元青土社営業部)「(無題)」 後藤享真(ごとう・きょうただ:東京外国語大学出版会)「(無題)」 鵜戸聡(うど・さとし:京都造形芸術大学非常勤講師)「(無題)」 小林浩(こばやし・ひろし:月曜社取締役)「私と3冊」 吉成秀夫(よしなり・ひでお:書肆吉成・札幌)「石狩シーツの枕もと」 古賀弘人(こが・ひろと:イタリア文学)「(無題)」 大竹昭子(おおたけ・あきこ:文筆家)「(無題)」 宮崎志乃(みやざき・しの:NTT出版書籍編集部)「(無題)」 伊香祝子(いか・しゅくこ:CLILAJ、日本ラテンアメリカ子どもと本の会、スペイン語講師)「(無題)」 阿部日奈子(あべ・ひなこ:詩人)「(無題)」 藤田省一(ふじた・しょういち:フランス文学研究、翻訳論)「(無題)」 吉田大作(よしだ・だいさく:中央公論新社、編集者)「あとがきの名前」 岩津航(いわつ・こう:金沢大学准教授、20世紀フランス文学・比較文学)「津田新吾さんと私の3冊」 陣野俊史(じんの・としふみ:批評家・フランス文学者)「津田新吾さんの作った本の中でもっとも記憶に残っているのは」 佐久間文子(さくま・あやこ:朝日新聞文化グループ)「(無題)」 竹中龍太(たけなか・りゅうた:リアル・アリーナ)「(無題)」 樋口良澄(ひぐち・よしずみ:編集者)「(無題)」 今福龍太(いまふく・りゅうた:文化人類学者)「(無題)」 石塚千恵子(いしづか・ちえこ:主婦・編集)「「本の島」へ――私の(と)津田さんの作った本三冊」 本の島へ Vol.2 〔写真右〕 編集・発行 本の島実行委員会 2010年6月19日発行 制作・デザイン BEKA イラスト 鈴木英果 寄稿者: 堀江敏幸(ほりえ・としゆき:作家、フランス文学者)「アンケート――津田新吾三景」 冨原眞弓(とみはら・まゆみ:フランス文学、哲学)「「本の島」の岸辺に――津田さんにささぐ」 鵜飼哲(フランス文学・思想)「(無題)」 大辻都(おおつじ・みやこ:フランス語圏文学)「(無題)」 岡本由希子(おかもと・ゆきこ:編集者)「(無題)」 小柳学(こやなぎ・まなぶ:左右社代表)「(無題)」 米田綱路(よねだ・こうじ:図書新聞)「(無題)」 上野千鶴子(うえの・ちづこ:社会学者)「津田新吾「本の島」」 酒詰治男(さかづめ・はるお:フランス語、仏文学専攻)「思い出す、津田新吾」 東辻浩太郎(とうつじ・こうたろう:左右社)「津田新吾さんの書物たち(いつの間にか)」 中島郁(なかじま・ふみ:クインテッセンス出版編集部、元青土社同僚)「「本の島」のはじまり」 野崎歓(のざき・かん:フランス文学者・翻訳家・エッセイスト)「津田新吾、自由自在」 鄭暎恵(ちょん・よんへ:社会学(教信)者、元(詩人+岳人))「(無題)」 *** なお、第一号に寄稿した拙文は字数の関係で一部削除されています。寄稿依頼者の了解のもと、以下に完全版を公開します。 私と3冊 2010年4月29日 小林浩(月曜社取締役) ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』竹村和子訳(1999) ジュディス・バトラー『アンティゴネーの主張』竹村和子訳(2002) S・サリー『ジュディス・バトラー』竹村和子他訳(2005) 津田新吾さんと初めて同席したのは、ジュディス・バトラーが来日した2006年1月14日のことだった。お茶の水女子大学講堂で「Undoing Gender」と題する講演が行なわれた。私は津田さんのお名前をそのずっと前から知っていたし、津田さんも私のことを憶えてくださっていたと思う。講演会が終わり、バトラーさんを見送ったあと、私はK書店本店人文書担当のYさんらと連れだってお茶を飲んだ。津田さんのパートナーである鈴木英果さんも一緒だった。津田さんはその席に合流されたのだった。 津田さんは座るなり、私の手帖を見て「ブレポルスですね」とそっと言った。あとにもさきにも、手帖のブランドをひとから一目で言い当てられたのはこの一度しかない。そのまなざしはおだやかだった。津田さんは当時バトラーの訳書を二冊刊行し、さらにバトラー入門も手掛けられていた。私には、始まったばかりのバトラーの翻訳企画があった。津田さんが担当された様々な本を私は愛読してきたけれど、バトラーがいなければ、そして彼女が来日しなければ、私と津田さんは会わないままかもしれなかった。 津田さんの視線は静かに目の前の同席者に注がれていた。そのいっぽうでつねに未来へ、前へと進まねばならない予感に満ちているようにも見えた。しばらくして津田さんは途中で退席された。次の仕事へ向かわねばならなかったのだ。 いまからちょうど一年前の2009年5月、青土社退職の葉書をいただいた。「これからは、野に放たれた編集者として職人仕事を継続し、書物という複製技術に愛情をこめて、素晴らしい本の世界をさらに探究する所存です」とあった。私はその弾むような活きいきとした言葉に触発されてすぐに連絡を取ろうとしたものの、先輩編集者の苦労を前に軽々しい挨拶はできないぞと躊躇した。それからわずか数カ月後のことだ。青土社のOさんとの何気ない会話のなかで、津田さんが亡くなったことを知らされた。絶句するほかはなかった。 津田さんが著者や読者からいかに愛された編集者だったかについては、私があらためて書くまでもない。遅かれ早かれひとは誰しも死ぬ。しかし津田さんの旅立ちは早かった。私たちは津田さんが手掛けた書物から、彼の挙措の痕跡をいまなお窺い見ることができる。これらの本をとくとごらんなさい、あなたにも彼のユートピアが見えないか?
by urag
| 2010-07-04 17:52
| 本のコンシェルジュ
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Comments(1)
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