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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2010年 05月 18日

近日発売:ルイ・サラ-モランス『ソドム――法哲学への銘』

まもなく発売の弊社新刊をご紹介します。シリーズ「暴力論叢書」第五弾になります。トーハン、大阪屋、栗田、太洋社には明後日木曜日20日搬入、日販は金曜日21日搬入です。書店さんの店頭で販売開始となるのは、来週明けの24日以降かと思います。一部の大型書店では21日(金)からの発売となるかもしれません。

◆2010年5月新刊*人文・フランス現代思想・哲学

ソドム 法哲学への銘 〔暴力論叢書5〕
ルイ・サラ-モランス:著 馬場智一+柿並良佑+渡名喜庸哲:訳
46判並製400頁 本体3,200円 ISBN978-4-901477-74-1

内容:法は人間を秩序のもとにおき、そこから外れる者を裁く。みずからを正当化する法の暴力に迫り、歴史を貫くその自在な支配に鋭い釘をさす、鏤骨の一撃。法の〈正体〉があばかれる。スペイン・カタルーニャ出身の異貌の哲学者の主著、本邦初訳。暴力論叢書第五弾刊行。

原書:Sodome : Exergue à la philosophie du droit, Paris: Albin Michel, 1991.

ルイ・サラ-モランス(Louis Sala-Molins):1935年スペイン・カタルーニャ地方生まれ。フランスの政治哲学者。50年代後半に渡仏し、ジャンケレヴィッチに師事、1971年に博士論文『ライムンドゥス・ルルスにおける愛の哲学』を提出。ソルボンヌ大学やトゥールーズ大学で教鞭を執った。著書に『異端審問辞典:ヴァレンシア、1494年』(1981年)、『黒人法:あるいはカナンの受難』(1987年)、『ソドム:法哲学への銘』(1991年、本書)、『啓蒙の悲惨』(1991年)、『アメリカ大陸におけるアフリカ:スペイン黒人法』(1992年)、『ヤハウェの赤い本』(2004年)などがある。邦訳論文に「国家」(浜名優美訳、『現代フランス哲学12講』所収、青土社、1986年、121-138頁)がある。

ヴラディミール・ジャンケレヴィッチはサラ-モランスの博士論文が1974 年に出版された折に、「愛について」と題された序文を寄せ、次のような賛辞を送っている。「われわれはルイ・サラ-モランスを指導したいうよりも、まさに彼の後をついていったのだった。彼は自分が受け取ったものよりもはるかに多くのものをわれわれに与えてくれた。だから、彼の仕事からわれわれが真に学んだことや、同じ闘争と同じ大義への愛着の念によって培われた長きにわたる友情を読者の方々に伝える機会を今日得ることができて、われわれとしては実に喜ばしく思う。ルイ・サラ-モランスの博士論文や彼によって翻訳され出版された数々の論考がラモン・ルル〔ライムンドゥス・ルルス〕を再発見するための大きな推進力をわれわれに与えてくれることは疑いない」(合田正人訳『最初と最後のページ』所収、みすず書房、1996 年、288 頁――編集部注: 固有名詞を本書の表記にあわせルイ・サラ-モランスとした)。

馬場智一(ばば・ともかず):1977年生。日本学術振興会特別研究員PD(一橋大学)。哲学史、混成語論専攻。訳書にアラン・バディウ『世紀』(長原豊・松本潤一郎との共訳、藤原書店、2008 年)。
柿並良佑(かきなみ・りょうすけ):1980年生。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。フランス思想、表象文化論専攻。
渡名喜庸哲(となき・ようてつ):1980年生。日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)。フランス哲学、社会思想専攻。

◆目次
序文 遅かれ早かれ
第一章 全体=無
 法の地理学
 石蹴り遊び。全体化への永劫の渇望
 結び目のある縄
 全体化するアリストテレス、トマス、ヘーゲル
 全体性。法、学知、政治の概念
 法外、澄んだ水と暖かい皮膚
第二章 無=神(神即無。無即神)
第三章 神=法
 歴史という法あるいは法という歴史
 式服と外套――歴史の法服
 縄の歴史とその法
 炎の歴史とその法。ソドム
 真昼の法と月の法。王の理性と教皇の理性
 一者のさまざまな歴史、あるいは法の血
 「直立の法-人間」の悲しき垂直性
第四章 法=きみ
 フォイエルバッハとらい病人
 ヘルメス――無法者たちの法
 平等な者たちのそぞろ歩き
終章

訳者解説 『ソドム』を読み解く
 全体性、情感性、隠れたる神(渡名喜庸哲)
 神聖なる法の系列的歴史(馬場智一)
 愛と対話の哲学(柿並良佑)
訳者あとがき
ルイ・サラ-モランス 主要文献
ルイ・サラ-モランス その生涯と奇跡
近日発売:ルイ・サラ-モランス『ソドム――法哲学への銘』_a0018105_14555276.jpg

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10年5月24日追記:書店様から『ソドム』の売り方や関連書についてご質問をいただきましたので、少し情報を追加します。『ソドム』は副題に「法哲学への銘」とありますが、法へのアプローチは非常に独特です。ここしばらく法哲学や正義論の分野では英米の哲学者が目立っており、マイケル・サンデル(『これからの「正義」の話をしよう』)への注目などはそのひとつでしょう。弊社新刊『ソドム』は西欧系なので、英米流のプラグマティズムとは異なり、西欧人の精神に根深く巣食っている神学的問題を鋭くえぐるものとなっています。

『ソドム』が刊行されたフランスでは、ジャック・デリダ(『法の力』)、ピエール・ルジャンドル(法制史、ドグマ人類学)やアレクサンドル・コジェーヴ(『法の現象学』『権威の概念』)、ジョルジュ・ギュルヴィッチ(『法社会学』)らの議論が参考になりますし、隣国のドイツではカール・シュミット(『憲法論』)やハンス・ケルゼン(『法と国家』)、ニクラス・ルーマン(『社会の法』『法と正義のパラドクス』)、グンター・トイプナー(『オートポイエーシス・システムとしての法』)がいます。英米系は英米系でまとまってしまいがちなので、議論の広がりを見せるためには、上記のような西欧系とどう混合ないし対決させるかが、商品構成や棚作りのポイントのひとつになってくるかもしれません。

さらにフランスの文化人類学における諸成果、たとえばピエール・クラストル(『国家に抗する社会』『暴力の考古学』)、モーリス・ゴドリエ(『贈与の謎』)、ジョルジュ・バランディエ(『意味と力』)なども参照すると、法と国家権力の問題へのアプローチにいっそう厚みが出てくるのではないかと思います。

by urag | 2010-05-18 14:49 | 近刊情報 | Comments(0)


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