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2018年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊と近刊
◎2018年5月22日発売:荒木優太『仮説的偶然文学論』本体2,000円、哲学への扉第1回配本。
◎2018年4月24日発売:岡田聡/野内聡編『交域する哲学』本体3,500円
◎2018年4月23日発売:『表象12:展示空間のシアトリカリティ』本体2,000円
◎2018年4月5日発売:ジャン=リュック・ナンシー『ミューズたち』本体2,700円、芸術論叢書第5回配本。
◎2018年3月16日発売:佐藤真理恵『仮象のオリュンポス』本体3,400円、シリーズ・古典転生第17回配本、本巻16。
◎2018年2月16日発売:『多様体 第1号:人民/群衆』本体2,500円
 宮﨑裕助氏書評「現代日本の思想誌の最良の命脈を継承」(「週刊読書人」2018年4月13日号)
◎2018年1月31日発売:ヴィンフリート・メニングハウス『生のなかば』本体2,500円、叢書・エクリチュールの冒険第10配本。
◎2017年11月29日発売:ジャン・ウリ『コレクティフ』本体3,800円
◎2017年11月1日発売:南嶌宏『最後の場所』本体3,500円
◎2017年10月16日発売:甲斐義明編訳『写真の理論』本体2,500円
◎2017年10月6日発売:森山大道『』本体2,500円
◎2017年8月4日発売:ポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』本体3,800円
 酒井隆史氏書評「不変と変化、この30年――レイシズムとナショナリズムの不可分な力関係」(「図書新聞」2017年11月4日号)
 石田昌隆氏書評(「ミュージックマガジン」2017年11月号「RANDOM ACCESS BOOK」欄)
 野田努氏書評(「ele-king」WEB版2017年10月4日付「Book Reviews」欄)
 無記名氏書評(「河北新報」10月1日付読書欄「新刊抄」)
◎2017年7月4発売:ジャコブ・ロゴザンスキー『我と肉』本体4,800円、シリーズ・古典転生第16回配本。
 廣瀬浩司氏書評「あらたな思考の出発点をうちたてる――現象学的身体論の刷新へと波及する潜在性」(「週刊読書人」2017年9月8日号)
◎2017年6月2日発売:荒木経惟『私情写真論』本体1,500円
◎2017年5月30日発売:ソシュール『伝説・神話研究』本体3,400円、シリーズ・古典転生第15回配本。
 千野帽子氏書評「伝承に象徴の意図は存在しない――ストーリーの大筋から逸脱した無意味そうな細部に〈歴史的事実〉の痕跡を見ようとする」(「図書新聞」2017年12月02日号)
◎2017年5月15日発売:金澤忠信『ソシュールの政治的言説』本体3,000円、シリーズ・古典転生第14回配本。
 加賀野井秀一氏書評「〈一般言語学〉から遠く離れて」(「フランス」2017年9月号)
◎2017年5月12日発売:『鉄砲百合の射程距離』内田美紗[句]、森山大道[写真]、大竹昭子[編]、本体2,500円
◎2017年4月17日発売:『表象11:ポスト精神分析的主体の表象』本体2,000円。
◎2017年3月30日発売:上野俊哉『[増補新版]アーバン・トライバル・スタディーズ』本体3,000円。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『何かへの旅』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

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# by urag | 2018-12-31 23:59 | ご挨拶 | Trackback(1) | Comments(21)
2018年 05月 23日

ブックツリー「哲学読書室」に、藤野寛さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『友情の哲学』(作品社、2018年4月)の著者、藤野寛さんによるコメント付き選書リスト「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う」が追加されました。


◎哲学読書室

1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
9)金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う

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# by urag | 2018-05-23 16:58 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 20日

注目新刊:アスペイティア『ヴェネツィアの出版人』作品社、ほか

ヴェネツィアの出版人』ハビエル・アスペイティア著、八重樫克彦/八重樫由貴子訳、作品社、2018年5月、本体2,800円、四六判上製370頁、ISBN978-4-86182-700-6
はじめての沖縄』岸政彦著、新曜社、2018年5月、本体1,300円、四六判並製240頁、ISBN978-4-7885-1562-8
東大闘争の語り──社会運動の予示と戦略』小杉亮子著、新曜社、2018年5月、本体3,900円、A5判上製480頁、ISBN978-4-7885-1574-1
天皇陵と近代――地域の中の大友皇子伝説』宮間純一著、平凡社、2018年5月、本体1,000円、A5判並製92頁、ISBN978-4-582-36451-4
熊野と神楽――聖地の根源的力を求めて』鈴木正崇著、平凡社、2018年5月、本体1,000円、A5判並製116頁、ISBN978-4-582-36452-1
神代文字の思想――ホツマ文献を読み解く』吉田唯著、平凡社、2018年5月、本体1,000円、A5判並製100頁、ISBN978-4-582-36453-8

★『ヴェネツィアの出版人』はスペインの作家にして編集者であるハビエル・アスペイティア(Javier Azpeitia, 1961-)による小説『El impresor de Venecia』(Tusquets Editores, 2016)の訳書。「グーテンベルクによる活版印刷発明後のルネサンス期、イタリック体を創出し、持ち運び可能な小型の書籍を開発し、初めて書籍にノンブルを付与した改革者。さらに自ら選定したギリシャ文学の古典を刊行して印刷文化を牽引した出版人、アルド・マヌツィオの生涯」(帯文より)を描いた長篇小説です。

★序章「何年ものち」で描かれている、アルドの妻マリアと息子パオロとの対話(27~28頁)が印象的です。パオロはアルドの伝記を執筆すべく母に父親のことを尋ね、マリアはためらいつつ答えようとします。

「言っても差支えのないことだけを書く。何でも思いのままに書ける時代ではなかったのよ、パオロ。いずれあなたにも理解できると思うけど」
「書けないようなことって、父さんは何を考えていたの?〔・・・〕」
「思いを表現することはいつの時代にも危険を伴う行為だった。思考が制限されたのではなく、表現が制限されたのよ。〔・・・〕思想の表現が制限されたのは今に始まったことではない。だけどキリスト教が文化の中心になって以来、人々は思ったことを書かなくなった。何世紀にもわたって敷かれた規制によって、数多くの思想の生命力が弱められて現在に至っている。〔・・・〕」
「ほかに父さんが出版したかったけど、できなかった本は何?」
「何の変哲もない一冊の本。広範にわたる完璧な対話が綴られ、タイトルも著者も偽った上で、一般的でない言語に翻訳されて生き延びたものよ」
「誰にも読まれぬように隠されたってこと?」
「誰にも破壊されぬようによ」

★巻末の訳者あとがきでは、本書刊行当時の2016年に行われたインタヴューでアスペイティアが次のように語っていたことが紹介されています。「文芸復興のルネサンス期に深く浸る中、印刷・出版を取り巻く当時の状況と今の状況に相似点が多いことに少なからず驚かされた」と。また別の機会には次のように語ったと言います。「技術と生産性を重視する職人と商人が印刷事業の実権を握り、菓子のごとく本を作っては売っていた時代に、アルドは絶えず文学的意義から良書を出版する方法を模索し、常軌を逸した試みをいくつも打ち出した。アリストテレスの全集をはじめとする、ギリシャ文学の原典にこだわったのもその一つだし、みずから出版物の選定をし、校正をしていたことも当時としては革新的だった」。今また「菓子のごとく本を作っては売って」いる時代にあって、アスペイティアが本書に込めたメッセージを私たちはどう受け取るべきでしょうか。

★『はじめての沖縄』は「よりみちパン!セ」シリーズ復刊第一弾として刊行された6点の内の1冊。ほかの5点は同シリーズの理論社版(2004~2010年)やイースト・プレス版(2011~2014年)で刊行されたものの決定版や増補新版、改訂新版で、『はじめての沖縄』のみ新曜社版で初めて刊行されるもの。2015年から2017年にかけて各紙誌などで発表されてきたテキストを中心に再構成し、大幅な加筆修正を施したもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。なお本書の刊行を記念し、以下の通り催事が続々と行われる予定だそうです。

境界線を抱いて」(お相手:温又柔さん)5月27日(日)18時~、青山ブックセンター本店
マジョリティとはだれか」(お相手:信田さよ子さん)6月9日(土)14時~、八重洲ブックセンター本店
「ほんとうの沖縄、ふつうの沖縄」(お相手:新城和博さん)6月17日(日)14時もしくは15時~、ジュンク堂書店那覇店
「刊行記念トーク」6月30日(土)13時~、心斎橋・スタンダードブックストア
「はじめての大阪」(お相手:柴﨑友香さん)7月21日(土)17時~、梅田蔦屋書店
「欲望すること/されることのキモさについて」(お相手:川上未映子さん)8月3日(金)19時~、新宿・紀伊國屋ホール

★『東大闘争の語り』は、あとがきによれば「2016年1月に東北大学大学院文学研究科に提出した博士論文「1960年代学生運動の形成と展開――生活史にもとづく参加者の政治的志向性の分析」に大幅に加筆修正を加えたもの」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「1960年代学生運動と現在のあいだに存在する断絶を踏まえつつ、1960年代学生運動に参加した当事者の動機・問題意識と運動の論理にかんする内在的分析を行い、その歴史的意義を明らかにする」(17頁)とのことです。

★平凡社さんのブックレット〈書物をひらく〉の第11巻、第12巻、第13巻が同時配本。『天皇陵と近代』は、「伝承を発掘し、大友皇子の墓(弘文天皇陵)が自分たちの地域にあることを検証・主張して、それを認めさせることに奔走した人びとの営為を追跡し、その歴史的事情、また、それがもたらした効果を探り当てる」(カバーソデ紹介文)もの。『熊野と神楽』は「各地に伝播した熊野信仰が神楽を生成して地域的展開を遂げた諸相を考察し、精緻の根源的力とは何であったかを探求するもの」(はじめに)。『神代文字の思想』は「ホツマ文献を筆頭とした神代文字文研研究を思想史研究の土俵にあげ」(あとがき)、神代文字が生み出された背景を探るもの。

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# by urag | 2018-05-20 23:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 17日

注目新刊:ヴィーコ『新しい学』文庫化、水声社の新雑誌『午前四時のブルー』、バタイユの新訳『太陽肛門』

★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、編訳書:パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
2007年から2008年にかけて法政大学出版局より全3巻で刊行された『新しい学』が全2巻で文庫化されました。まもなく発売。「中公文庫版への訳者あとがき」によれば、「文庫化にあたっては訳註を中心に補正を」施したとのことです。上巻には第1巻「原理の確立」と第2巻「詩的知恵」の第4部「詩的家政学」までを収録。下巻には第2巻第5部「詩的政治学」から第3巻「真のホメロスの発見」、第4巻「諸国民のたどる経過」、第5巻「諸国民が再興するなかで生じる人間にかんすることがらの反復」と「著作の結論」までを収録し、付録として「新しい学の応用法――ヴィーコ『新しい学』への招待」が併載され、巻末には訳者解説「大いなるバロックの森」が配されています。

新しい学(
ジャンバッティスタ・ヴィーコ著 上村忠男訳
中公文庫 2018年5月 各本体1,600円 文庫判各608頁 ISBN978-4-12-206591-8/206592-5

★星野太さん(著書:『崇高の修辞学』)
小林康夫さんの責任編集で今般、水声社さんから創刊された新雑誌「午前四時のブルー」の第1号(特集=謎、それは自分)に論文「アペイロンと海賊――『雲』をめぐる断章」を寄稿されています(63~72頁)。ブルガリアの哲学者ボヤン・マンチェフさん(1970-)の新著『雲』(2017年)と、彼が昨年11月に東京で行った講演「光、雲――哲学的海賊とアペイロンの発明」について論及されています。

小林さんによる編集人あとがき「庭、その誰?」によれば、鈴木宏社長に「第二期「風の薔薇」を復刊して、わたしに編集させてくれないかしら? と頼みこんでみた」とのことで、「言葉もコミュニケーションもすさまじいスピードで電子化され、この電子革命によって人類はまったく新しい文化の時代へと突入しつつあることは確かだし、雑誌は、そこでは最終的に絶滅危惧種であることは明白なのだが、だからこそ、終りつつあるメディアを触覚的にもう一度体験したいということかもしれない」とご自身の動機について綴っておられます。秋頃発売予定の次号特集は「夜、その明るさ」、もしくは「夜という光」と予告されています。

午前四時のブルー Ⅰ 謎、それは自分
小林康夫責任編集
水声社 2018年4月 本体1,500円 A5判並製128頁 ISBN978-4-8010-0341-5

★ジョルジュ・バタイユさん(著書:『マネ』)
1927年の小品「太陽肛門〔L'Anus Solaire〕」の酒井健さんによる新訳が景文館書店さんより出版されました。長篇の訳者解題「輝くテクストの前夜にさまよう―-愛欲の孤独と豊穣なるパロディ」が併載されています。景文館書店さんから発売となる、酒井さんによるバタイユ新訳本は『ヒロシマの人々の物語』『魔法使いの弟子』に続いて3点目です。

太陽肛門
ジョルジュ・バタイユ著 酒井健訳
景文館書店 2018年5月 本体520円 四六判ブックレット64頁 ISBN978-4-907105-07-5

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# by urag | 2018-05-17 19:22 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 13日

注目文庫新刊:2018年3月下旬~5月上旬

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鶴見俊輔全漫画論1 漫画の読者として』松田哲夫編、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,700円、656頁、ISBN978-4-480-09855-9
鶴見俊輔全漫画論2 日本の漫画の指さすもの』松田哲夫編、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,600円、624頁、ISBN978-4-480-09856-6
増補 革命的な、あまりに革命的な――「1968年の革命」史論』絓秀実著、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,500円、560頁、ISBN978-4-480-09864-1
初学者のための 中国古典文献入門』坂出祥伸著、ちくま学芸文庫、2018年5月、本体1,200円、320頁、ISBN978-4-480-09869-6
荒地/文化の定義のための覚書』T・S・エリオット著、深瀬基寛訳、中公文庫、2018年4月、本体1,000円、336頁、ISBN978-4-12-206578-9

★ちくま学芸文庫の5月新刊から4点。『鶴見俊輔全漫画論』は文庫オリジナル編集。解説者の福住廉さんによれば本書は鶴見さんの漫画論を網羅的に編纂した選集。「幼少の頃から漫画の熱心な読者だった鶴見は、戦後から晩年まで、同時代の漫画を盛んに論じた。〔…〕鶴見の人生には、つねに漫画が同伴しており、彼は漫画とともに思想を練り上げていたと言っても過言ではあるまい。/しかし鶴見俊輔の漫画論は、知の巨人としての知名度とは裏腹に、じつのところ正当に評価されてこなかったのではないか」(第1分冊、解説「反映論の彼方へ」645頁)。

★絓秀実『増補 革命的な、あまりに革命的な』は、2003年に作品社より刊行された親本を増補・改訂したもの。「文庫版あとがき」によれば「文庫化に際しては、やや長めの付論〔「戦後‐天皇‐民主主義をめぐる闘争――八・一五革命vs.一九六八年革命」(453~484頁)〕を書き下ろした。それは、現在の諸状勢にかんがみて六八年を再発見し、併せて、改めて六八年の視点から現在を論じた試みである」(517頁)と。解説「戦後民主主義の「革命的な」批判のために」は王寺賢太さんによるもの。同書について「2003年の刊行後、ただちに日本における「六八年」の運動史と理論・思想史に関する必読文献となった書物である。〔…〕このちくま学芸文庫版は、絓自身の最近の関心に基づく付論とともに、刊行後15年を経た今も古びることのない本書の今日的射程をよく伝える一冊となっている」(520頁)と評価しておられます。

★坂出祥伸『初学者のための 中国古典文献入門』は、2008年に集広舎(福岡)から刊行された『中国古典を読む はじめの一歩』の改題文庫化。「文庫版あとがき」によれば、誤植、脱字、錯字などの校正漏れを正し、「主として書名・人名などのむつかしい感じには読み仮名(ルビ)を付して、より多くの方々に読みやすいように心がけた」とのことです。

★T・S・エリオット『荒地/文化の定義のための覚書』は巻末の編集付記によれば、中央公論社版『エリオット全集』(改訂版、1971年)を底本として語句時に編集したもの。長編詩の代表作「荒地」(1922年)と、最晩年の評論「文化の定義のための覚書」(1948年)に、訳者の深瀬基寛さんによる講義録「エリオットの人と思想」(筑摩書房版『深瀬基寛集』第1巻、1967年所収)、さらに英文学者の阿部公彦さんによる解説「ほんとうのエリオットはどこに」が添えられています。エリオットは「文化の定義のための覚書」の第五章「文化と政治についての一つの覚書」でこう述べています。「山と積まれた印刷文字のなかで、最も深遠で最も独創的な作品が一般大衆の眼に触れ、彼等の注意をひく機会のないことはもちろん、そういうものを玩味するだけの資格をもつ相当多数の読者の注意を捉えることすらも稀であります。一時の流行もしくは時代の単なる情緒におもねるごとき思想の影響するところは遥かに大きいのであります」(204頁)。エリオットの直言は今なお示唆に富んでいると感じます。

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★ちょっとした事情によりコメントを付すのを中断せざるをえないのですが、ここ三ヶ月ほどでほかに注目してきた新刊には以下のものがありました。

ヨハネの黙示録』小河陽訳、講談社学術文庫、2018年5月、本体920円、240頁、ISBN978-4-06-292496-2
新校訂 全訳注 葉隠(中)』菅野覚明/栗原剛/木澤景/菅原令子訳、講談社学術文庫、2018年5月、本体2,450円、872頁、ISBN978-4-06-511642-5
宇治拾遺物語(下)全訳注』高橋貢/増古和子著、講談社学術文庫、2018年4月、本体2,500円、880頁、ISBN978-4-06-292492-4
エスの本――ある女友達への精神分析の手紙』ゲオルク・グロデック訳、岸田秀/山下公子訳、講談社学術文庫、2018年4月、本体1,580円、464頁、ISBN978-4-06-292495-5
哲学の練習問題』河本英夫著、講談社学術文庫、2018年4月、本体1,050円、288頁、ISBN978-4-06-292480-1
内省と遡行』柄谷行人著、講談社文芸文庫、2018年4月、本体1,700円、336頁、ISBN978-4-06-290374-5
帳簿の世界史』ジェイコブ・ソール著、村井章子訳、文春文庫、2018年4月、本体880円、414頁、ISBN978-4-16-791060-0
孤独な帝国 日本の一九二〇年代――ポール・クローデル外交書簡一九二一-二七』ポール・クローデル著、奈良道子訳、草思社文庫、2018年4月、本体1,500円、592頁、ISBN978-4-7942-2330-2
ボルヘス怪奇譚集』ホルヘ・ルイス・ボルヘス/アドルフォ・ビオイ=カサーレス編、柳瀬尚紀訳、河出文庫、2018年4月、本体830円、188頁、ISBN978-4-309-46469-5
ボートの三人男――もちろん犬も』ジェローム・K・ジェローム著、小山太一訳、光文社古典新訳文庫、2018年4月、本体880円、398頁、ISBN978-4-334-75374-0
ヨゼフ・チャペック エッセイ集』飯島周編訳、平凡社ライブラリー、2018年4月、本体1,200円、280頁、ISBN978-4-582-76866-4
ウンガレッティ全詩集』河島英昭訳、岩波文庫、2018年4月、本体1,260円、592頁、ISBN978-4-00-377006-1
文選 詩篇(二)』川合康三/富永一登/釜谷武志/和田英信/浅見洋二/緑川英樹訳注、岩波文庫、2018年4月、本体1,020円、416頁、ISBN978-4-00-320452-8
江戸川乱歩作品集 Ⅲ パノラマ島奇談・偉大なる夢 他』浜田雄介編、岩波文庫、2018年3月、本体1,000円、496頁、ISBN978-4-00-311816-0
全品現代語訳 法華経』大角修訳・解説、角川ソフィア文庫、2018年3月、本体1,200円、480頁、ISBN978-4-04-400391-3

★『内省と遡行』の「文芸文庫版へのあとがき」で柄谷さんは以下のような趣旨のことを述べておられます。2015年に行った講演「移動と批評――トランスクリティーク」(『思想的地震』ちくま学芸文庫所収)の最後で「30年前に未刊に終った「言語・数・貨幣」をこれから完成することも考えています」と話したが、私が近年取り組んでいる「力と交換様式」という論文がそういうものなのかもしれないと思い至った、と。「今考えていることも、かつて考えたことと似ています。「霊的な力」を口にするのだから。〔…〕このような問題が私において再来するということは、そこに私個人の意図や関心を越えたものがあるからだと感じています」(332~333頁)。

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# by urag | 2018-05-13 18:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 10日

紹介記事、イベント情報など

「出版ニュース」2018年5月上旬号の「情報区」欄の「思想雑誌『多様体』創刊」(37頁)にて弊誌の内容を詳しくご紹介いただきました。ありがとうございます。

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★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★本橋哲也さん(共訳:スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
ハミッド・ダバシ『ポスト・オリエンタリズム――テロに時代における知と権力』(早尾貴紀/本橋哲也/洪貴義/本山謙二訳、作品社、2017年12月)をめぐるトークイベントが以下の通り来月下旬に行われるとのことです。

◎鵜飼哲×本橋哲也×早尾貴紀「『ポスト・オリエンタリズム』を読み解く――サイード、スピヴァクとともに/を超えて、思想のゲリラ戦を!」

日時:2018年6月28日(木)18:30~
場所:三省堂書店神保町本店8階特設会場
下記いずれかの方に参加整理券を差し上げます。
A)対象書籍『ポスト・オリエンタリズム』を当店でお買い上げの方。
B)当日、会場にて参加料500円(税込)をお支払いの方。

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# by urag | 2018-05-10 18:18 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 08日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる本屋さん

2018年4月27日(金)オープン
フタバ図書ジ・アウトレット広島店:BOOK450坪、文具60坪、カフェ70坪、ゲーム50坪、セル50坪、カープグッズ他(レジ・バックヤード含め)120坪
広島県市佐伯区石内東4-1-1 THE OUTLETS HIROSHIMA 1F

日販帳合。弊社へのご注文は、芸術書の主要銘柄。株式会社フタバ図書の代表取締役社長、世良與志雄さんの挨拶状では「ライフスタイルを提案する「見つかる・育てる・感じる 広島エンタテイメント」をコンセプトに、書店を中心に文具・CD/DVD、ゲーム、タリーズ(カフェ)を併設し、今までにない本との出会いを楽しんでいただける洗練された品揃えで、より多くのお客様に喜んでいただく所存」とのことです。営業時間は10:00~20:00。

「THE OUTLETS HIROSHIMA(ジ・アウトレット・ヒロシマ)」のウェブサイト下の店舗ページにある紹介文「フタバ図書の新しいカタチ-ジアウトレット広島店-」では「フタバ図書が目指すのは書店の新しい形です。情報発信の最先端として人々の新たな発見・機会の場となり、地域・人・文化を育む、そんな存在であり続けたいと思っています。本を中心にCD、DVD、ゲーム、文具などさまざまなエンタテインメントを組み合わせつつ、タリーズコーヒーも併設し、くつろぎの空間もご提供いたします。コンセプトは「見つかる・育てる・感じる 広島エンタテインメント」。従来の形にとらわれない柔軟な発想で、「広島にフタバ図書がある意味」を感じていただける複合書店として進化を続けて参ります」とも書かれています。

入居先の複合施設「THE OUTLETS HIROSHIMA」は、日販広島支店の支店長、岡田充弘さんの挨拶状を参照すると、「本格アウトレット×エンターテインメント×地域との出会い」をコンセプトに国内外の人気のブランドショップが集積したアウトレットフロアと、瀬戸内・広島の食文化やライフスタイルを体感できる「食」や、シネマ・アクティビティーなど体感型の「遊び」のコンテンツが充実したフロアから成る、賑わいあふれる“地域創生型商業施設”だそうで、全国に先駆けた「THE OUTLETS」第1号店なのだとか。

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前回、当ブログで新規開店情報を発信したのは昨年9月でした。弊社のような小零細の専門書版元に開店分の発注があることはさほど多くはなく、新規店のオープンにも波があります。一方で、閉店情報は継続的に耳に入ってきます。正確に言えば、閉店前に知るのは返品依頼がある時がほとんどで、たいていは事後的に気づくものなのですが。

09月24日:書原仙川店(トーハン帳合)
11月26日:旭屋書店イオン宮崎店(トーハン帳合)
02月20日:幸福書房南口〔代々木上原〕店(トーハン帳合)
02月28日:ブックファースト京都店(トーハン帳合)
02月28日:ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店(大阪屋栗田帳合)
03月21日:ジュンク堂書店松戸伊勢丹店(大阪屋栗田帳合)
03月31日:あおい書店川崎駅前店(トーハン帳合)
04月26日:山下書店渋谷南口店(トーハン帳合)
05月20日:新星堂カルチェ5柏店(日販帳合)※書籍売場のみ閉店、CD売場は継続。
06月25日:青山ブックセンター六本木店(日販帳合)

あおい書店川崎駅前店の閉店をめぐっては、「yamak's diary」2017年3月11日付エントリー「あおい書店 閉店とリアル大型書店の価値」を興味深く拝読しました。特に次のくだり。

「今リアル大型書店に将来性は全く期待されていません。もちろん自分もAmazonは利用しますし、電子書籍も買います。ただ自分にとってはリアル大型書店でしかない価値はいまだに大きい。/Web書店は買うものが明確に決まっているときはいいのですが、なんとなくその分野の本を調べたいときに一覧性が悪いです。物理的な書棚の背表紙の情報量に対し、ディスプレイの情報量は少なすぎる。〔…〕Amazon時代のリアル書店の方向性として、店主のセレクトショップ的な方向が注目されたりしています。でも自分はそれには全く興味ないですね。店主とのコミュニケーションにも全く興味がないです。/リアル大型書店には自分にとってはまだ大きな価値がある。ただその価値は多くの人にとってはなくなってきているのは事実だと思います。そこをなんとかする案が自分にあるかというと思いつかないです」。

リアル大型書店にはまだ大きな価値がある、という言葉に励まされる業界人は多いと思います。私も同感です(ちなみに私は「店主のセレクトショップ」も、センスの良い品揃えならたちまち好きになります)。紙の本を作る出版社と、紙の本を売る書店が「あってもいい」と思って下さる方がいるならば、とても嬉しいですし、人の目を気にせずに本をゆっくり選べる大書店がまだ望まれているなら、なおさら業界人はそのことを意識すべきです。ブログ主さんが書いているように、「その価値は多くの人にとってはなくなってきている」のかもしれないのですから。

書店さんの現在形は上記の新規店情報で見た通り「複合書店」です。もうしばらくは様々な複合形態が模索され続けるでしょうし、書店以外の小売店が書籍売場を新設する形態も引き続き追求されるだろうと思われます。そして「ポスト複合化」の鍵のひとつが、町の本屋さんの復活としての小規模セレクトショップにあることはおそらく間違いありません。昨今ではセレクトショップというと、VMD優先型の美的な複合店が思い浮かびますが、前述の「町の本屋さんの復活としての小規模セレクトショップ」というのはそれとは異なり、パターン配本に頼らず選書できる書店員さんがいて、地域に密着しつつ、書棚の手入れを怠らないような、小規模な本屋さんのことであって、チェーン店が展開している複合書店とは基本的に別物です。出版業界にとって大きな問題なのは、セレクト型の複合店にせよ大型店にせよ、人材不足が進行していることです。経験者をリストラして、より賃金の安い未経験者でも運営できるような店づくりが進んでいる現実がその背景にあります。結局のところ、書店員というのは未経験者でも簡単にこなせる職種とは言い難く、人材を失えば運営はままなりません。このことは「書店」を「出版社」と置き換えても同様のことが言えます。そうした事実――書店や出版社の仕事がプロフェッショナルな職能であること――がちゃんと認識されていないどころか、軽視されている気さえします。

最近では退職した書店経験者や版元経験者はますます業界外に移る傾向が強まっているように感じます。経験者を大切にしない業界はどんな職種であれ、衰退を避けられないだろうというのが私の意見です。出版業界にとって重要な課題は、経験者を大切にしうるほどの収益をいかに上げるかということです。今後、製造(出版社)と販売(書店)は利益分配をめぐっていっそう緊密に連携しなければならないでしょうし、それは相互の買収というかたちも当然含むことになるでしょう。そうした再編劇はすでに始まっています。

大型書店の衰退がどういった未来を招来するかについては語るべきことが多いのですが、いったんここで筆を擱きます。ここから先は昨年11月、第29回まで書いてその後中断ている「メモ」の続きを書くことになるからです。あれ以降、つまりここ半年間に、様々な出来事が業界を襲っており、注目すべき事案は多いです。しかし、今はそれを書き留めている時間すらもどかしいほどの変化が進行しています。出版業界の誰もが、とまでは言わないにしても大多数が、自分がまず死なないようにその日を精一杯生きるしかないような、立ち止まって考えているいとますら許されないような、そうした切迫した危機のさなかにいるのではないでしょうか。私たちは崩壊過程に直面しています。そしてその崩壊の中から、新しい樹々を育てなければならないのです。これは絶望の態度でも単純な盲目でもありません。終末でも革命でもない、二者択一ではないいばらの道。

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# by urag | 2018-05-08 19:44 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 07日

月曜社5月新刊:荒木優太『仮説的偶然文学論』

◆月曜社2018年5月新刊:人文/文芸/思想・批評:5月14日受注締切/5月22日取次搬入予定

仮説的偶然文学論――〈触れ‐合うこと〉の主題系
荒木優太著
月曜社 2018年5月 本体:2,000円 B6変判[180mm×114mm×23mm]上製336頁 ISBN: 978-4-86503-059-4


なぜ「たまたま」や「ひょんなこと」や「奇跡」で小説を組み立ててはいけないのか。昭和10年代、中河与一の偶然文学論は近代文学伝統のリアリズムに対して果敢に挑戦した。本当にリアルなのは偶然の方なのだ。が、その偶然なるものは、どんな〈触れ‐合い〉を排除することで成り立っているのか。中河、国木田独歩、寺田寅彦、葉山嘉樹のテクストに宿るcontingencyを、〈遭遇 con-tact〉と〈伝染 con-tagion〉、つまりは〈触れ‐合うこと con-tangere〉の主題系として読み解く。偶然という言葉でもってなにかを語った気になってはいけない。新シリーズ〈哲学への扉〉創刊!

目次:
序 偶然を克服/導入せよ?
第一部 コンタクト
第一章 偶然性の時代
第二章 中河与一『愛恋無限』と日本的伝統
第三章 国木田独歩『鎌倉夫人』と主題〈場所性〉
第四章 国木田独歩『号外』と主題〈外部性〉
第五章 国木田独歩『第三者』と主題〈感性〉
第六章 国木田独歩の諸作と主題〈断片性〉
第二部 コンテイジョン
第七章 中河与一の初期小説と主題〈伝染性〉
第八章 寺田寅彦の確率論
第九章 寺田寅彦の風土論
第一〇章 葉山嘉樹文学の住環境と主題〈混合性〉
第一一章 葉山嘉樹の寄生虫
終章 偶然的他者との幅のある出会い方
あとがき
文献
索引

荒木優太(あらき・ゆうた:1987-):在野研究者。専門は有島武郎。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。ウェブを中心に大学の外での研究活動を展開している。2015年、「反偶然の共生空間――愛と正義のジョン・ロールズ」が第59回群像新人評論賞優秀作となる。著書に『これからのエリック・ホッファーのために――在野研究者の生と心得』(東京書籍、2016年)、『貧しい出版者――政治と文学と紙の屑』(フィルムアート社、2017年;『小林多喜二と埴谷雄高』ブイツーソリューション、2013年の増補改題版)。

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# by urag | 2018-05-07 11:06 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 07日

ドイッチャー賞受賞作の訳書一覧

イギリスのマルクス主義歴史学者アイザック・ドイッチャー(Isaac Deutscher, 1907-1967)とその伴侶タマラ(Tamara Deutscher, 1913-1990)を記念し、英語圏で出版されたマルクスおよびマルクス主義をめぐる革新的な研究に対して毎年贈られる「ドイッチャー賞(the Deutscher Memorial Prize)」の受賞作(1969-2017)の訳書をまとめてみました。記載のない年は訳書がないか受賞なしの場合です。研究者の名前だけ記載しているのは、受賞作が翻訳されていないものの、他の著作や編書の訳書がある場合です。2018年はマルクス生誕200周年ですので、ブックフェアやコーナーづくりのご参考になれば幸いです。

2015年
タマシ・クラウス

2013年
グローバル資本主義の形成と現在:いかにアメリカは、世界的覇権を構築してきたか
レオ・パニッチ/サム・ギンディン著、長原豊監訳、芳賀健一/沖公祐訳、作品社、2018年

2010年
資本の「謎」:世界金融恐慌と21世紀資本主義
デヴィッド・ハーヴェイ著、森田成也ほか訳、作品社、2012年

2009年
ベン・ファイン

2003年
近代国家体系の形成:ウェストファリアの神話
ベンノ・テシィケ著、君塚直隆訳、桜井書店、2008年

1999年
カール・マルクスの生涯
フランシス・ウィーン著、田口俊樹訳、朝日新聞社、2002年

1997年
ロビン・ブラックバーン

1996年
ドナルド・サスーン

1995年
20世紀の歴史:極端な時代(上下)
エリック・ホブズボーム著、河合秀和訳、三省堂、1996年

20世紀の歴史:両極端の時代(上)
エリック・ホブズボーム著、大井由紀訳、ちくま学芸文庫、2018年6月7日発売予定

1994年
市民社会の帝国 : 近代世界システムの解明
J・ローゼンバーグ著、渡辺雅男/渡辺景子訳、桜井書店、2008年

1993年
ハーヴェイ・J・ケイ

1992年
必要の理論
L・ドイヨル/I・ゴフ著、遠藤環/神島裕子訳、勁草書房、2014年

1991年
要塞都市LA
マイク・デイヴィス著、村山敏勝/日比野啓訳、青土社、2001年;増補新版2008年

1990年
A・J・メイア

1989年
美のイデオロギー
テリー・イーグルトン著、鈴木聡ほか訳、紀伊國屋書店、1996年

1988年
ボリス・カガルリツキー

1986年
エレン・メイクシンス・ウッド

1985年
所有と進歩:ブレナー論争
ロバート・ブレナー著、山家歩/田崎愼吾/沖公祐訳、日本経済評論社、2013年

1984年
失われた美学:マルクスとアヴァンギャルド
マーガレット・A・ローズ著、長田謙一ほか訳、法政大学出版局、1992年

1980年
現代資本主義の論理:対立抗争とインフレーション
ボブ・ローソン著、藤川昌弘ほか訳、新地書房、1983年

1979年
G・A・コーエン

1977年
S・S・プロウアー

1976年
社会化と政治体制:東欧社会主義のダイナミズム
W・ブルス著、大津定美訳、新評論、1982年

1975年
M・リーブマン

1974年
イスラームと資本主義
M・ロダンソン著、山内昶訳、岩波現代選書、1978年;岩波現代選書特装版、1998年

1972年
A・ギャンブル/P・ウォルトン

1970年
マルクスの疎外理論
I・メサーロシュ(イシュトヴァン・メーサロシュとも)著、三階徹/湯川新訳、啓隆閣、 1972年;再版1975年

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# by urag | 2018-05-07 01:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 06日

注目新刊:フランソワ・マトゥロン『もはや書けなかった男』航思社、ほか

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もはや書けなかった男』フランソワ・マトゥロン著、市田良彦訳、航思社、2018年4月、本体2,200円、四六判並製200頁、ISBN978-4-906738-34-2
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』三宅陽一郎著、BNN新社、2018年4月、本体2,500円、A5判並製384頁、ISBN978-4-8025-1080-6
黄金の華の秘密 新装版』C・G・ユング/R・ヴィルヘルム著、湯浅泰雄/定方昭夫訳、人文書院、2018年4月、本体2,800円、4-6判上製338頁、ISBN978-4-409-33057-9
フェレンツィの時代――精神分析を駆け抜けた生涯』森茂起著、人文書院、2018年4月、本体3,600円、4-6判上製240頁、ISBN978-4-409-34052-3
グローバル資本主義の形成と現在――いかにアメリカは、世界的覇権を構築してきたか』レオ・パニッチ&サム・ギンディン著、長原豊監訳、芳賀健一/沖公祐訳、作品社、2018年4月、本体3,800円、46判上製600頁、ISBN978-4-86182-694-8
友情の哲学――緩いつながりの思想』藤野寛著、作品社、2018年4月、本体1,800円、46判並製208頁、ISBN978-4-86182-692-4
生物模倣――自然界に学ぶイノベーションの現場から』アミーナ・カーン著、松浦俊輔訳、作品社、2018年5月、本体2,600円、46判並製376頁、ISBN978-4-86182-691-7

★『もはや書けなかった男』はアルチュセールの死後出版の編纂・校訂者で『ミュルティテュード(マルチチュード)』誌の編集委員を務めた哲学者フランソワ・マトゥロン(François Matheron, 1955-)による著書の、初めての日本語訳。フランス語版『L’homme qui ne savait plus écrire』(Zones/La Découverte, 2018)は3月に刊行されており、その出版に尽力し「あとがき」も著した盟友である市田良彦さん(本書においては「戦いの同伴者ヨシ」)が日本語訳を手掛けておられます。2005年の11月、家族との団らん中に脳卒中で倒れたマトゥロンが、リハビリ訓練中の翌年9月に書くことを薦められ、とはいえ文字通りの執筆が困難なため、テープレコーダーに録音し、のちに音声入力ソフトを使用してできあがったのが本書だそうです。人の名前を忘れ、排泄を含めて自身のことがどんどんままならなくなる中での自画像であり、その合間にアルチュセールやスピノザをめぐる思索の軌跡が刻まれます。糞尿まみれの拷問のような日々には絶句するばかりです。

★壊れていく伴侶を日々支えることによって深く疲弊していくマトゥロン夫人キャロルとの関係がありのままに描かれている一方で、ひどい鬱状態のために2016年には「あの」サンタンヌ病院に搬送されたマトゥロンが、アルチュセールとの符合をめぐってヨシとやりとりをしたエピソード(「最初に読まれるべき訳者あとがき」)に厚い友情を感じます。また、本書巻末に収められたネグリからのメッセージにも友愛が溢れています。父親であるスピノザ学者アレクサンドル・マトゥロン(Alexandre Matheron, 1926-)が、息子に代わってアルチュセール本の校正を手伝ったというくだりにも胸を打たれました。アレクサンドルは息子が倒れた一年後に同じく脳卒中を患ったことがあるそうです。

★三宅陽一郎『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』は2016年に出版された西洋哲学篇の続編で、「人工知能の足元を支える哲学を探求する」という名目で行われた「人工知能のための哲学塾」の成果です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「東洋哲学篇は僕にとって未来にあたります。なぜなら、東洋哲学篇はこれから僕自身も進むべき人工知能の新しい方向を示した場であるからです。知能を作るためには、人類の持つあらゆる叡智を結集・結晶せねばなりません。西洋から発祥した人工知能の方向がやがて行き詰まりを迎えるときには、東洋の示す人工知能が新しい活路を示さねばなりません」と、三宅さんは「はじめに」でお書きになっています。荘子、井筒俊彦、道元、龍樹、鈴木大拙、等々がゲーム開発におけるキャラクターAIのために参照される様は非常に興味深く、科学・哲学・工学の交差点にあるという人工知能の議論への関心は、本書の登場によっていっそう高まるのではないかと予感します。

★続いて人文書院さんの新刊2点。『黄金の華の秘密』は1980年の初版刊行以来、版を重ねオンデマンドでもロングセラーを続けてきた古典の、新装再刊です。原著は1929年刊で、道教の文献『太乙金華宗旨』と『慧命経』のヴィルヘルムによるドイツ語訳に、ユングが長大な注解を添えたもの。ユングのマンダラ論、原型論、個性化論を理解するうえで欠かせない必読書です。長い年月を掛けてユングの著作の重版や新装版を刊行し続けておられる人文書院さんに敬意を表したいです。

★次に、森茂起『フェレンツィの時代』はハンガリーの精神分析家、フェレンツィ・シャーンドル(Ferenczi Sándor, 1873-1933)をめぐる、おそらく日本初の専門研究書です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。本書では幼少期から時系列的に出来事を追うのではなく「フェレンツィの生涯から日付を特定できるいくつかの瞬間を取り上げ、そこに至る過程を振り返る叙述を大幅に取り入れ」(あとがきより)、「ある特定の場所である時代のある瞬間を生きたフェレンツィの姿を描き出し」(同)ています。著者の森さんによるフェレンツィの訳書、『臨床日記』(みすず書房、2000年)も新装版が本書と同じく4月に発売されており、フェレンツィと往復書簡を交わしていたゲオルク・グロデックの著書『エスの本――ある女友達への精神分析の手紙』(岸田秀/山下公子訳、誠信書房、1991年)も、同月に講談社学術文庫の一冊として再刊されています。

★最後に作品社さんの新刊3点。まず、パニッチ&ギンディン『グローバル資本主義の形成と現在』は、『The Making of Global Capitalism: The Political Economy of American Empire』(Verso, 2012)の全訳。マルクスおよびマルクス主義をめぐる革新的な研究に対して毎年贈られるドイッチャー賞(the Deutscher Memorial Prize)を2013年に受賞しています。監訳者の長原さんによれば本書は、アメリカの帝国的発展こそがグローバル資本主義の形成過程にほかならないことを実証した同時代史の書であり、現状分析の書でもある、と紹介しておられます。また、サスキア・サッセンやナオミ・クライン、デヴィッド・ハーヴェイをはじめとする多くの識者から「偉大な一書」「必要不可欠な書」「すべての人びとが読むべき一書」等々という賛辞が寄せられています。アメリカとの付き合いに様々な困難と課題が付きまとう日本においても参考になる本ではないでしょうか。目次は以下の通りです。

まえがき
序文 方法論的視点
第Ⅰ部 新たなアメリカ帝国へのプレリュード
 第1章 アメリカ資本主義の遺伝子
 第2章 アメリカ国家の能力――第一次世界大戦からニューディールまで
第Ⅱ部 グローバル資本主義というプロジェクト
 第3章 新たなアメリカ帝国を計画する
 第4章 グローバル資本主義の船出
第Ⅲ部 グローバル資本主義への移行
 第5章 成功の矛盾
 第6章 危機を貫く構造的な力
第Ⅳ部 グローバル資本主義の実現
 第7章 帝国的力能の更新
 第8章 グローバル資本主義の統合
第Ⅴ部 グローバル資本主義の支配
 第9章 法の支配――グローバル化を統治する
 第10章 帝国の新たな挑戦――危機を管理する
第Ⅵ部 グローバル資本主義の21世紀
 第11章 自分の姿に似せた世界
 第12章 アメリカの危機、世界の危機
結論
[日本語版解説]忖度〔ぼうりょく〕を制度化する非公式帝国アメリカ――相対的脱領土〔グローバリゼーション〕化装置(長原豊)

★次に、藤野寛『友情の哲学』はこんにちもっとも困難であろう問いと向き合った好著。「本書では、理想主義にも冷笑主義にも陥ることなく友情について考えることが試みられる。そういう方向性を採るように促されるのは、友情をめぐる21世紀の現実によってである。より具体的に言えば、高齢化社会、セクシュアリティ、家族、ジェンダー、SNSをめぐる私たちの現実だ」(プロローグより)。アクセル・ホネットの承認論を導きの糸とし、アリストテレス、モンテーニュ、カント、ニーチェ、フーコーらの議論を振り返りつつ、アレクサンダー・ネハマス(Alexander Nehamas, 1946-)や、ヤノーシュ・ショービン(Janosch Schobin, 1981-)らの友情(Freundschaft)論も参照しつつ、平易な言葉で「友情の原理」(第Ⅰ部)と「変化の中の友情」(第Ⅱ部)が掘り下げられます。恋愛でも博愛でもない友情の中間的性格や緩さの再発見は、超高齢社会に突入して久しい日本の現状と未来を考える上で欠かせない視点ではないかと感じます。

★カーン『生物模倣』は明日5月7日取次搬入となる新刊で、『Adapt: How Humans Are Tapping into Nature's Secrets to Design and Build a Better Future』(St. Martin's Press, 2017)の翻訳。「ロサンゼルス・タイムズ」紙のサイエンスライターによる「生物に着想を得たデザイン(biologically inspired design)」をめぐる一冊。「本書では、生物学から学ぼうと集まり、私たちの技術開発能力の限界を超えようとしている様々な分野の科学者と出会う。極微の世界(光合成の化学)からきわめて大きな世界(生態系の原理)まで見て回る。そこで話を、材料科学、運動の力学、システムの基礎構造、持続可能性という四つのテーマに分けることにする。各章では、自然がどのように今の科学技術の上を行っているかを人々が調べるうちに、いくつかの新発見がなされ、またさらに現われようとしている分野を見ていく。本書全体で、そうした例やさらにその先を見て、自然の新機軸を人間の科学技術向上にあてはめることで、ものごとを大きくするのではなく、良くすることが可能になる様子を探る」(プロローグより)と。目次詳細は書名のリンク先でご覧になれます。

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# by urag | 2018-05-06 23:00 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)