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ウラゲツ☆ブログ

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2020年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
◎2020年4月30日発売:クレア・ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー』本体2,000円。
◎2020年4月24日発売:『表象14:アポカリプスの表象/表象のアポカリプス』本体2,000円。
◎2020年3月20日発売:井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』本体3,500円、シリーズ・古典転生、第22回配本(本巻21)。
◎2020年3月17日発売:エルンスト・ユンガー『エウメスヴィル』本体3,500円、叢書エクリチュールの冒険、第16回配本。
◎2020年3月2日発売:土橋茂樹編『存在論の再検討』本体4,500円、シリーズ・古典転生、第21回配本(本巻20)。
◎2020年2月6日発売:『西野達完全ガイドブック』本体2,700円。
◎2020年1月22日発売:ロドルフ・ガシェ『脱構築の力』本体2,700円、叢書エクリチュールの冒険、第15回配本。
 星野太氏書評(「artscapeレビュー」2020年2月11日付
◎2020年1月17日発売:秋元康隆『意志の倫理学』本体2,100円、シリーズ〈哲学への扉〉、第6回配本。
◎2019年12月24日発売:ジュディス・バトラー『新版 権力の心的な生』本体3,200円。
◎2019年12月5日発売:『森山大道写真集成(3)写真よさようなら』本体7,500円。
◎2019年11月29日発売:榊貴美作品集『KIMI SAKAKI twinkle』本体2,000円。
◎2019年11月13日発売:カール・ヤスパース『ニーチェ』本体8,400円、シリーズ・古典転生、第20回配本(本巻19)。
 山下真氏書評「全体主義による簒奪からニーチェを取り返す、秘かな思想的抵抗――誰もが自由にニーチェに向き合い、交わりを遂行し得る多源性の空間としてニーチェを現前させる〈メタ・ニーチェ論〉」(「図書新聞」2020年2月22日号書評特集「さらなる現代思想の大海へーー新しい思想史の海図をえがくための三冊」)
◎2019年11月1日発売:ラシード・ブージェドラ『ジブラルタルの征服』本体3,000円、叢書・エクリチュールの冒険、第14回配本。
 福田育弘氏書評「極小の物語による極大の主観性――現実とはなにかをわたしたちに考えさせる力を持っている作品」(「図書新聞」2020年1月25日号)
 福嶋伸洋氏書評「救済の隘路を探す〈歴史〉の営み――独立戦争時のアルジェリアを舞台に、奇妙なまでの堂々巡りが展開される螺旋の物語」(「週刊読書人」2020年2月14日号)
◎2019年10月3日発売:ジョルジョ・アガンベン『書斎の自画像』本体2,700円、シリーズ〈哲学への扉〉、第5回配本。
 鈴木慎二氏短評「19年下半期読書アンケート」(「図書新聞」2019年12月21日号)
 長谷正人氏短評(月刊誌「みすず」2020年1/2月合併号「読書アンケート特集」)
 田中純氏短評(月刊誌「みすず」2020年1/2月合併号「読書アンケート特集」)
◎2019年10月3日発売:水野浩二『倫理と歴史』本体2,200円、シリーズ〈哲学への扉〉、第4回配本。
 増田靖彦氏書評「道標を打ち込むサルトル――サルトル倫理学のありえたであろう全貌に迫る」(「図書新聞」2020年2月22日号書評特集「さらなる現代思想の大海へーー新しい思想史の海図をえがくための三冊」)
◎2019年9月19日発売:『森山大道写真集成(2)狩人』本体5,000円。
◎2019年9月12日発売:山下純照/西洋比較演劇研究会編『西洋演劇論アンソロジー』本体3,600円。
◎2019年8月7日発売:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』本体1,800円、シリーズ〈哲学への扉〉、第3回配本。
◎2019年8月7日発売:新井俊春『名人農家が教える有機栽培の技術』本体2,700円。
◎2019年5月23日発売:『森山大道写真集成(4)光と影』本体6,000円。
◎2019年5月14日発売:ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』本体3,800円、叢書・エクリチュールの冒険、第13回配本。
 中村隆之氏書評「外界を隔つ「私の肌の砦」――カリブ文学を代表する作家の〈原点〉」(「週刊読書人」2019年8月30日号)
◎2019年4月26日発売:『表象13:ファッション批評の可能性』本体2,000円。

◆重版情報
◎2019年5月10日:甲斐義明編訳『写真の理論』2刷。
◎2019年7月26日:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』2刷。
◎2019年9月4日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』2刷。
◎2019年10月10日:森山大道『犬と網タイツ』3刷。
◎2020年1月10日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』3刷。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷、ブルワー=リットン『来るべき種族』。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象03』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』『表象12』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、バトラー『自分自身を説明すること』、クラウス+ボワ『アンフォルム』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』『ガセネタの荒野』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『モノクローム』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、中平卓馬『都市 風景 図鑑』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、『猪瀬光全作品』、佐野方美写真集『SLASH』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

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# by urag | 2020-12-31 23:59 | ご挨拶 | Comments(21)
2020年 05月 31日

注目新刊:『現代思想2020年6月号 特集:汎心論』ほか

注目新刊:『現代思想2020年6月号 特集:汎心論』ほか_a0018105_23445474.jpg


現代思想2020年6月号 特集:汎心論――21世紀の心の哲学』青土社、2020年5月、本体1,500円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1398-1
小説版 韓国・フェミニズム・日本』チョ・ナムジュ/松田青子/デュナ/西加奈子/ハン・ガン/イ・ラン/小山田浩子/高山羽根子/深緑野分/星野智幸著、河出書房新社、2020年5月、46変形判並製320頁、ISBN978-4-309-02883-5
五輪と戦後――上演としての東京オリンピック』吉見俊哉著、河出書房新社、2020年4月、本体2,600円、46判上製368頁、ISBN978-4-309-25405-0
法制度における男性差別――合法化されるミサンドリー』ポール・ナサンソン/キャサリン・K・ヤング著、久米泰介訳、作品社、2020年5月、本体3,600円、46判上製495頁、ISBN978-4-86182-797-6
科学の人種主義とたたかう――人種概念の起源から最新のゲノム科学まで』アンジェラ・サイニー著、東郷えりか訳、作品社、2020年5月、本体2,700円、46判並製400頁、ISBN978-4-86182-810-2
小説 夏の速度』四方田犬彦著、作品社、2020年5月、本体1,800円、46判上製162頁、ISBN978-4-86182-809-6
黒田勝雄写真集 最後の湯田マタギ』黒田勝雄著、藤原書店、2020年5月、本体2,800円、B5判上製144頁、ISBN978-4-86578-271-4
金時鐘コレクション(X)真の連帯への問いかけ――「朝鮮人の人間としての復元」ほか 講演集Ⅰ』金時鐘著、中村一成解説、細見和之解題、藤原書店、2020年5月、本体3,600円、四六変上製392頁+口絵2頁、ISBN978-4-86578-266-0
内田義彦の学問』山田鋭夫著、藤原書店、2020年5月、本体3,300円、四六判上製384頁、ISBN978-4-86578-273-8
評伝 関寛斎 1830-1912――極寒の地に一身を捧げた老医』合田一道著、藤原書店、2020年5月、本体2,800円、四六上製328頁、ISBN978-4-86578-272-1

★『現代思想2020年6月号 特集:汎心論』は巻頭に永井均さんへのインタビュー「いま心を哲学する」(聞き手=飯盛元章、8~26頁)が置かれ、「現代汎心論の震源地」と銘打って3篇の海外論考が訳出されていることを特記しておきます。デイヴィッド・ジョン・チャーマーズ「組合せ問題(抄)――汎心論のとり組むべき課題」(山口尚訳、27~54頁;"The Combination Preblem for Panpsychism", in: Panpsychism: contemporary perspectives, edited by G. Brüntrup and L. Jaskolla, Oxford University Press, 2016)、ゲレイン・ストローソン「実在論的な一元論――なぜ物理主義は汎心論を含意するのか」(大厩諒訳、55~85頁;"Realistic Monism: Why Physicalism Entails Panpsychism" in: Journal of Consciousness Studies, Vol. 13, No.19-11, 2006)、イアン・ハミルトン・グラント「あらゆる事物は考える――汎心論と自然の形而上学」(中島新訳、86~109頁;""All things think: Panpsychism and the metaphysics of nature", in: Mind that Abides: Panpsychism in the New Millennium, John Benjamins Publishing, 2009)。

★デイヴィッド・ジョン・チャーマーズ (チャルマーズとも:David John Chalmers, 1966-)は、オーストラリアの哲学者でオーストラリア国立大学哲学教授、同校意識研究センターのディレクター。訳書に『意識する心――脳と精神の根本理論を求めて』(林一訳、白揚社、2001年)、『意識の諸相』(上下巻、太田紘史ほか訳、春秋社、2016年)などがあります。ゲレイン・ストローソン(ギャレンとも:Galen Strawson, 1952-)は、イギリスの哲学者P・F・ストローソン(Peter Frederick Strawson, 1919-2006)の長男でテキサス大学オースティン校哲学科教授。イアン・ハミルトン・グラント(Iain Hamilton Grant, 1963-)は、イギリスの哲学者で、西イングランド大学ブリストル校上級講師。

★河出書房新社さんの4~5月新刊より2点。特記したいのは『小説版 韓国・フェミニズム・日本』。帯文に曰く「「文藝」86年ぶり3刷の2019年秋季号特集小説がパワーアップ。日韓最前線、12人の作家たちが響きあう」。12篇のうち、チョ・ナムジュ「離婚の妖精」小山内園子/すんみ訳、デュナ「追憶虫」斎藤真理子訳、の2篇が初邦訳。松田青子「桑原さんの赤色」は書き下ろし。なお、今月作品社から刊行された四方田犬彦さんの小説『夏の速度』は1980年に書き下ろされたもの。1979年の夏、朴正煕軍事政権下のソウルで主人公の日本人が体験した出来事が綴られています。わずかな修正を加えてついに出版。この2冊、さらに藤原書店さんの新刊『金時鐘コレクション(X)』を隣同士に置いて下さる書店員さんがいらっしゃると良いのですが。

★作品社さんの5月新刊より3点。特記しておきたいのは『Legalizing Misandry: From Public Shame to Systemic Discrimination Against Men』(McGill-Queen's University Press, 2006)の抄訳『法制度における男性差別』。訳者あとがきによれば割愛したのは第1章(マクマーティン児童性的虐待事件)、第8章(セクシュアルハラスメントの法律)、付録2~5および7~13とのこと。そのかわり、巻頭にはネイサンソンによる日本語版序文「より広がり続ける男性蔑視〔ミサンドリー〕――「レイプカルチャー」から「#Me Too」へ」が収められています。「男性全体に対する敵意の津波は、アンデンティティハラスメントに達している。これは男性にとって、女性にとってのセクシュアルハラスメントと機能的に同等であると私は示唆する」(8頁)。「自分たちが潜在的なレイピストである――そして法律からそのように扱われるのに値する――と信じるようになった男性が、健全なアイデンティティを持てる確率は極めて低い。男性は悪の加害者階級であるという考えを言行ともに押し進めている全ての女性は、つまり簡単に言えば、男性をハラスメントしている」(8~9頁)。本書に先行するナサンソン/ヤングの共著には『広がるミサンドリー――ポピュラーカルチャー、メディアにおける男性差別』(原著2001年; 久米泰介訳、彩流社、2016年)があります。

★藤原書店さんの5月新刊は4点。特記しておきたいのは、岩手県西和賀郡湯田町(現:西和賀町)に20年間通い、シシ(熊)獲りを続けてきたマタギたちの生活、家族、風習を丁寧に記録した写真集『最後の湯田マタギ』。「見た瞬間から強く感動しました」との瀬戸内寂聴さんの推薦文が目を惹きます。黒田さんは巻末の「みちのく湯田撮影二十一年」でこう綴っておられます。「製造会社に勤務していた私は、湯田への撮影行を休日と有給休暇、時には盛岡市雫石にある関連会社への出張のおりも日程を調整して活用した。雫石から湯之沢まではバス一本で来られる。/この本に収めた写真は1977年から97年までの撮影となっている。つまり、39歳から59歳までの21年間の作品である。98年1月の定年退職後も3回ほど湯田を尋ねたが、生活環境の変化に加え、ちょうどフィルムからデジタルへの移行時にも重なり、結局、撮影は途絶えた。〔…〕40年の時空を超えて、この人たちの記録を残さなければ申し訳ないとの思いが募った」(140~141頁)。なお黒田さんは藤原書店の雑誌「兜太」の写真担当をお務めです。

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# by urag | 2020-05-31 23:45 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 05月 26日

新規取引店情報:月曜社の本を置いてくださる本屋さん

2020年6月7日(月)開店予定
湘南天狼院(70坪:BOOK12坪)
神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 エノトキ 2-A区画
トーハン帳合。弊社へのご発注は写真関連書数点。トーハン東京支店からの「新規店出品依頼」FAXでは情報が少なすぎるので、天狼院の公式サイトの情報を参照すると、5月1日開店予定のところ6月開店予定に変更、と。小田急江ノ島線「片瀬江ノ島」駅徒歩5分、江ノ島電鉄「江ノ島」駅徒歩12分に4月13日開業予定だった複合施設「ENOTOKI」内に出店。ENOTOKI公式サイトに掲出されている完成予想図を見ると3Fに本棚らしきものが描かれていますが、野村不動産グループが2月に公開しているプレスリリースPDF「片瀬海岸に、海を感じる商業施設『ENOTOKI〔エノトキ〕』4月13日(月)オープン決定」を参照すると、湘南天狼院が入居するのは2F。2Fのコンセプトは「江ノ島水族館や海水浴を楽しみにきたお客様に「観光地価格ではない安心感」や、地元の方に「デイリーに気軽に楽しめる」憩いの空間を提供します」というもので、湘南天狼院は「本とその先の「体験」を提供する書店。書籍、カフェ、著者によるセミナーなど、様々な形で再定義された「本」を楽しめます」と紹介されています。南池袋、福岡、京都などに支店がある天狼院さんとは弊社はお付き合いがありませんでしたが、湘南の新店では森山大道さんの写真集やエッセイなどを扱うようで、少し毛色が違うのかな、と想像しています。その答えのヒントはYouTubeにアップされている動画「【2020年5月以降オープン予定!/湘南天狼院】屋上を初お披露目します。」にありました。動画にご出演の元「東京天狼院店長」で「湘南天狼院」準備室室長(オープン後は店長に)の山中菜摘さんはカメラマン。「「海の出版社」の本拠地として盛り上げ、いまだかつてない編集空間を演出し、また、プロカメラマン店長としてフォト系のイベント、旅などを随時企画」するよう任命されたとのことです。


「海の出版社」というのは、湘南天狼院内に設立されるという「海の出版社/SEASIDE PUBLISHING」のこと。湘南天狼院公式サイトでは以下のように特記されています。「〔湘南天狼院の店舗の〕出店は2階ですが、我々、湘南天狼院/海の出版社が、屋上を独占使用させていただけることです。つまり、江ノ島や海や富士山まで一望できる屋上で、過ごすことができます。ここで、様々な仕掛けを準備しています。徐々に公開していきますので、お楽しみに」。様々な仕掛けというのは3月7日付記事「【湘南天狼院】5/1(金)オープンにつき「天狼院のゼミ」の「湘南」会場を募集開始しました!!《お得に受講できる「ファイナルクラブ天狼院」も50席増席中!》《湘南会場オープン記念キャンペーン!》」でその一端が公開されているものかと思われます。

天狼院書店店主の三浦崇典さんによる4月29日付記事「「海の出版社」旗揚げ宣言/なぜ、僕らは海で出版をやろうと考えたのか?」によれば、「日本の出版は、実に9割の機能が東京に集中している〔…〕僕は、これにずっと違和感を覚えていた。〔…〕僕らが最終的に選んだのは、「海」だった。〔…〕長崎でも、熱海でも、沖縄でも、函館でも、シーサイドであればどこでも、僕らが創作する場所にしようと考えた。〔…〕海から世界にコンテンツを送り出す出版社。それだから、「海の出版社/SEASIDE PUBLISHING」と名づけた」。「僕らが思い描く「出版」の定義は幅広い。もともと、僕らが定義する「本」の概念が広いからだ。僕らは「有益な情報」はパッケージに関わらず、すべて「本」と定義する。だとすれば、書籍のみならず、講演も演劇も旅やテレビ番組すらも「本」となる。ただし、僕らは「海の出版社」は、「物」としての書籍にも徹底してこだわっていこうと考えている。僕らが出版する条件は、「一度作ったら永遠に売り続ける本」だ」。

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# by urag | 2020-05-26 14:25 | 販売情報 | Comments(0)
2020年 05月 26日

月曜社2020年6月新刊:中井亜佐子『〈わたしたち〉の到来――英語圏モダニズムにおける歴史叙述とマニフェスト』

2020年6月24日取次搬入予定

〈わたしたち〉の到来ーー英語圏モダニズムにおける歴史叙述とマニフェスト
中井亜佐子[著]
月曜社 本体:2,000円 B6変型判(180x115x21)並製308頁 ISBN: 978-4-86503-100-3 C0090

【予約受付中】

【内容】
大英帝国が内側から解体していくさまを描いたポーランド系英国人作家、ジョゼフ・コンラッド。英国モダニズム文学を代表する小説家にして、第2波フェミニズムの先駆者でもあるヴァージニア・ウルフ。英領トリニダードに生まれ、植民地独立運動を先導した革命思想家、C・L・R・ジェームズ。世界戦争と革命の20世紀を生きた3人のモダニストたちのテクストから〈わたしたち〉という集合性の危うさと可能性を読み解く。【シリーズ〈哲学への扉〉、第7回配本】

【目次】
序 章 「フィクションは人間の歴史である」
第一章 時間、主体、物質――モダニズムの歴史感覚
第二章 大衆社会の到来――ジョゼフ・コンラッドとわたしたちの時代
第三章 歴史、人生、テクスト――晩年のコンラッドと世界戦争
第四章 賃金なき者たちの連帯――ヴァージニア・ウルフとふたりのジェームズ
第五章 戦争とともに生を書く――ヴァージニア・ウルフの晩年
第六章 革命と日常――〈ブラック・ジャコバン〉ふたたび

【著者】
中井亜佐子(なかい・あさこ)1966年生まれ。オクスフォード大学博士課程修了(D. Phil)。専門は英文学、批評理論。現在、一橋大学大学院言語社会研究科教授。単著に『他者の自伝――ポストコロニアル文学を読む』(研究社、2007年)。共編著に『ジェンダー表象の政治学――ネーション、階級、植民地(彩流社、2011年)など。翻訳に、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(共訳、月曜社、2014年)、ポール・ビュール『革命の芸術家――C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房、2014年)、ウェンディ・ブラウン『いかにして民主主義は失われていくのか――新自由主義の見えざる攻撃』(みすず書房、2017年)など。

月曜社2020年6月新刊:中井亜佐子『〈わたしたち〉の到来――英語圏モダニズムにおける歴史叙述とマニフェスト』_a0018105_12493683.png


# by urag | 2020-05-26 12:51 | 近刊情報 | Comments(0)
2020年 05月 25日

注目新刊:デリダ講義録『ハイデガー』白水社、ほか

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近の出版物をご紹介します。併せて弊社続刊情報も添えます。

★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
白水社版『ジャック・デリダ講義録』の第4回配本、高等師範学校(ENS:エコール・ノルマル・シュペリウール)での1964~65年度の講義(Heidegger : la question de l'Être et l'Histoire, Cours de l'ENS-Ulm (1964-1965), Galilée, 2013)の訳書が刊行されました。概要や目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。亀井さんによる「訳者あとがき」によれば、本書の日本語訳においては、ジェフリー・ベニントンによる英訳本を第二の底本として参照したとのことです。仏語手稿を判読した際に生じた仏語版の膨大な(!)誤りが英訳版では正されている、と。「英訳で修正されたと思われる箇所はことごとく反映することによって成ったのが、この日本語訳である。したがって、指摘された誤記の問題は、基本的に――日本語訳者が確認しえた限りにおいてではあるが――払拭されているとお考えいただきたい。その反面、底本であるフランス語原文とこの日本語訳との間には膨大な数の違いが生じていることを、以上の事情からご理解いただきたい」(321頁)。訳者の皆さんの苦労はたいへんなものだったことが想像できます。

ジャック・デリダ著 亀井大輔/加藤恵介/長坂真澄訳
白水社 2020年5月 本体7,300円 A5判上製366頁 ISBN978-4-560-09804-2
版元紹介文より:ハイデガーの『存在と時間』をデリダ自身が翻訳し、読解する全9回の講義。自筆原稿16頁カラー口絵収録。

※なお、月曜社ではデリダの70年代後半の著作をまもなく翻訳出版する予定です。


★ヴェルナー・ハーマッハーさん(著書:『他自律』)
インスクリプトより3月に刊行されたクライスト論集『ハインリッヒ・フォン・クライスト――「政治的なるもの」をめぐる文学』に、ハーマッハーさんの著書『遠ざかった理解』(Entferntes Verstehen, Suhrkamp, 1998)に収録されているクライスト論(Das Beben der Darstellung. Kleists Erdbeben in Chili)が訳出されました。「描出の揺らぎ――クライストの「チリの地震」」(大宮勘一郎/橘宏亮/西尾宇広訳、219~282頁)です。本書全体の目次は、書名のリンク先でご覧いただけます。この論集は、2017年5月に開催された日本独文学会春季研究発表会のシンポジウム「ハインリッヒ・フォン・クライスト――政治的詩人か、政治的なるものの詩人か」での日本の研究者三氏による発表と全体討議が出発点となっているとのことです。

ハインリッヒ・フォン・クライスト──「政治的なるもの」をめぐる文学
大宮勘一郎/橘宏亮/西尾宇広/R・クリューガー/G・ノイマン/W・ハーマッハー/H・ベーメ著 大宮勘一郎/橘宏亮/西尾宇広編訳
インスクリプト 2020年3月 本体4,400円 四六判上製364頁 ISBN978-4-900997-78-3
帯文より:実存を賭した抗争に露呈する「政治的なるもの」――。「チリの地震」「ヘルマンの戦い」、その極北たる「ペンテジレーア」…。近代のとば口を疾駆したクライストの文学世界を、主要テクストすべてに触れながら照らし出し、その現代性を鋭く剔抉。重要クライスト論四篇、併せて訳出。

※なお、月曜社ではハーマッハーさんの著書の翻訳や独自論文集の編纂、論考の翻訳が合計4件進行中です。そのうちのひとつである論考の翻訳は、本年の近刊書に収録予定です。


★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『瀆神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』『書斎の自画像』)
★ジャン=リュック・ナンシーさん(著書:『ミューズたち』)
★高桑和巳さん(訳書:アガンベン『バートルビー』『思考の潜勢力』、共訳:クラウス/ボワ『アンフォルム』)
青土社の月刊誌『現代思想』2020年5月号、緊急特集「感染/パンデミック」にアガンベンさんのエッセイ3篇、ナンシーさんのエッセイ2篇が掲載されています。高桑さんはアガンベンさんの2篇を翻訳しているほか、ロベルト・エスポジトや、セルジョ・ベンヴェヌートのエッセイも訳しておられます。本特集全体の目次詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。

アガンベン「エピデミックの発明」高桑和巳訳、9~10頁;“L'invenzione di un'epidema”, Quodlibet, 26/2/2020.
ナンシー「ウイルス性の例外化」伊藤潤一郎訳、11頁;“Exception virale”, Antinomie, 27/2/2020.
エスポジト「極端に配慮される者たち」高桑和巳訳、12~13頁;“Curati a oltranza”, Antinomie, 28/2/2020.
ベンヴェヌート「隔離へようこそ」高桑和巳訳、14~17頁;“Coronavirus and philosophers”, Europian Journal of Psychoanalysis, 8?/3/2020.
アガンベン「感染」高桑和巳訳、18~19頁;“Contagio”, Quodlibet, 11/3/2020.
アガンベン「説明」高桑和巳訳、20~21頁;“Chiarimenti”, Quodlibet, 17/3/2020.
ナンシー「あまりに人間的なウイルス」伊藤潤一郎訳、22~26頁;“Un trop humain virus”, YouTube, 17/3/2020.

青土社 2020年4月 本体1,500円 A5判並製270頁 ISBN978-4-7917-1397-4
版元紹介文より:感染症との闘いとその共存は、人類史のなかで一大テーマとなってきた。本特集では感染症とその対策をめぐる現場の最前線から、パンデミックをめぐる人類史、そして患者の隔離政策やワクチン接種などをめぐる統治、感染をめぐる表現などを追い、検討する。

※なお、月曜社ではアガンベンさんの訳書やナンシーさんの訳書を何点か続刊予定です。


★江川隆男さん(訳書:ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』)
コロナ禍を受けて河出書房新社から刊行されたアンソロジー『思想としての〈新型コロナウイルス禍〉』に「自由意志なき〈自由への道〉――行動変容から欲望変質へ」と題した論考を寄せておられます(164~171頁)。本書全体の目次が版元ウェブサイトと現物とで少々異なるようなので、現物通りの目次を以下に転記しておきます。

河出書房新社編集部編
河出書房新社 2020年5月 本体1,800円 A5判並製200頁 ISBN978-4-309-24966-7
版元紹介文より:コロナウイルは人類を未曽有の危機へおいやろうとしている。感染症と文明、人間と病気などをめぐって、この危機がなげかける問いに思想家、専門家たちが向きあう、いま最も必要な一冊。

目次:
大澤真幸「不可能なことだけが危機をこえる――連帯・人新世・倫理・神的暴力」
仲野徹「オオカミが来た!――正しく怖がることはできるのか」
長沼毅「コロナウイルスで変わる世界」 
宮沢孝幸「新型コロナウイルスは社会構造の進化をもたらすのか」 
椹木野衣「ポスト・パンデミックの人類史的転換」 
與那覇潤「歴史〔ワクチン〕が切れた後に――感染爆発するニヒリズム」
笙野頼子「台所な脳で?――Died Corona No Day」
酒井隆史「パンデミック、あるいは〈資本〉その宿主」
小川さやか「資本主義経済のなかに迂回路をひらく――タンザニアの人々の危機への対処から」
木澤佐登志「統治・功利・AI――アフターコロナにおけるポストヒューマニティ」 
樋口恭介「Enduring Life (in the time of Corona)」
綿野恵太「「ウンコ味のカレーか、カレー味のウンコか?」という究極の選択には「カレー味のカレー」を求めるべきである。」
工藤丈輝「流感・舞踏」
小泉義之「自然状態の純粋暴力における法と正義」
江川隆男「自由意志なき〈自由への道〉――行動変容から欲望変質へ」
石川義正「「人間に固有の原理としての愚劣」」
堀千晶「感染症と階級意識」
白石嘉治×栗原康「カタストロフを思考せよ」


★岡田温司さん(著書:『アガンベンの身振り』、共訳:アガンベン『書斎の自画像』)
担当編集者だった松井純さんの逝去という困難を乗り越え出版された書き下ろし作が平凡社より刊行されました。「モランディやカラヴァッジョの本も、アガンベンの翻訳も、松井純との接点があってこそ生まれえたもので、これらのわたしの仕事は、まさしくこの敏腕編集者との「共作」であるといっても過言ではないほどだ。/その松井純との数年ぶりの仕事として出発したのが小著で、予定では三月末のわたしの退官に合わせて出版されるはずであったが、残念ながら完成を俟たずしてひとり逝ってしまった。ある意味でこの小著には、わたしたちのこれまでの「共作」の成果がさまざまなかたちで盛り込まれているといって過言でない」(あとがき、187頁)。版元サイトに目次情報がないので書誌情報とともに転記しておきます。

岡田温司著
平凡社 2020年5月 本体3,000円 4-6判上製208頁 ISBN978-4-582-47906-5
帯文より:ルネサンスやバロックという偉大な遺産を受け継ぐイタリアで、現代の芸術は、いかに過去と向き合い、乗り越えるのか――映画と絵画と文学のうちに分光され屈折される多彩な光を読む。

はじめに
Ⅰ ピランデッロと初期映画
Ⅱ フェリーニとカトリシズム
Ⅲ パゾリーニと伝統のアヴァンギャルド
Ⅳ アントニオーニとイメージの迷宮
Ⅴ ベルトルッチと造形芸術
あとがき
参考文献
人名索引


★岡田聡さん(共著:『交域する哲学』、訳書:シュスラー『ヤスパース入門』)
スイスの改革派神学者フリッツ・ブーリ(Fritz Buri, 1907-1995)の、本邦初訳となる一書を上梓されました。主著である『Theologie der Existenz』(Bern: Paul Haupt, 1954)の全訳です。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

実存の神学
フリッツ・ブーリ著 岡田聡訳
ヨベル 2020年4月 本体1,500円 46判並製168頁 ISBN978-4-909871-14-5
実存の哲学か、実存の神学か? シュヴァイツァー、ヤスパースらから影響を受け、ブルトマン、バルトらとの対決のなか、自らの「哲学的神学」を形成したフリッツ・ブーリ。本邦初訳。


★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
光文社古典新訳文庫より刊行中の、ハイデガー『存在と時間』全8巻の第7巻が先月発売になりました。第7巻に収録されているのは、第一部第二篇第三章第六一節「現存在にふさわしい本来的な全体存在の確定から始めて、時間性を現象的にあらわにするまでの方法論的な道程の素描」から、第四章第七一節「現存在の日常性の時間的な意味」までを収録。後半部は中山さんによる詳しい解説です。

ハイデガー著 中山元訳
光文社古典新訳文庫 2020年4月 本体1,300円 文庫判並製448頁 ISBN978-4-334-75423-5
カバー裏紹介文より:通常わたしたちは「今(現在)」の連続を生きていると考えているが、ハイデガーはそうは考えない。この巻では現存在の全体性と本来の可能性について、気遣いや頽落、恐れ、不安などの現象を「将来」「既往」「瞬視」という独自の時間概念に結びつけて考察する。(第2篇第4章第71節まで)


★松葉祥一さん(共訳:ロゴザンスキー『我と肉』)
コレージュ・ド・フランス講義草稿 1959-1961』(ステファニー・メナセ編、松葉祥一/廣瀬浩司/加國尚志訳、みすず書房、2019年1月)に続いて、モーリス・メルロ=ポンティの講義ノートの共訳書を上梓されました。前著は『Notes de cours 1959-61』(Gallimard, 1996)の翻訳で、「メルロ=ポンティが1961年に急逝する直前まで書かれていたコレージュ・ド・フランス講義のための草稿はじめ、遺稿として発見された当時の講義草稿を復元・編集して一書となすもの」(版元紹介文より)でした。今回の新刊はそれに先立つ1956~1960年の講義ノート(原著は『La Nature. Notes. Cours du Collège de France』Seuil, 1995年)で、「1956年から1960年にいたる〈自然〉を主題としたメルロ=ポンティのコレージュ・ド・フランス講義を、受講生のノートや著者自身の講義準備草稿をもとに再構成したものである」(版元紹介文より)とのことです。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

モーリス・メルロ=ポンティ著 ドミニク・セグラール編 松葉祥一/加國尚志訳
みすず書房 2020年5月 本体8,400円 A5判上製528頁 ISBN978-4-622-08891-2
帯文より:〈自然〉は、われわれの土壌であり、目の前にあるものではなく、われわれを支えているものなのである・・・。自然と人間の関係を多角的に考察した、1956-1960年、メルロ=ポンティの講義ノート。


★水野浩二さん(著書:『倫理と歴史』、訳書:ヴァール『具体的なものへ』)
サルトルの初期代表作『L'Imaginaire : psychologie phénoménologique de l'imagination』(Gallimard, 1940)の新訳『イマジネール』を共訳で出版されました。既訳には『サルトル全集(12)想像力の問題――想像力の現象学的心理学』(平井啓之訳、人文書院、1955年;改訂版、1975年)があります。共訳者の澤田直さんによる「訳者解説」に曰く「今回、その〔平井訳〕改訂版(1975年)を参照したが、解釈はまことに的確で、文章としての読みやすく、見事と言うほかないものだった。にもかかわらず、ここに新訳を出して世に問うのは、すでに述べたように、新資料もいろいろ発見され、新しい知見ももたらされたからである」(456頁)。新訳の訳書名については次のように書かれています。「ここでの想像力に関する議論は、いわゆるカント的な「構想力(Einbildungskraft)」の流れにはない。つまり、直観と概念のあいだを媒介し、それによって規定される心的能力が問題なのではない。そうではなくて、ベルクソンとフッサールによって――だが別々に――始められた、別の発想での想像力、つまり、ある物質的・知覚的対象との関係における像(image; Bild)の意識が問題なのである。その意味で、本書で頻出するimaginationを「想像力」と一義的に訳してしまうと、誤解を与えてしまう可能性である。確かに、日本語の「想像力」は、過去の表象を再生することだけでなく、何もないところから何かを発想することも指すが、ここでのimaginationは、むしろ、現実を否定して、何かをイメージとして表象する力のことだからだ。本書の訳を『イマジネール』と訳した所以である」(436頁)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

ジャン=ポール・サルトル著 澤田直/水野浩二訳
講談社学術文庫 2020年5月 本体1,720円 A6判並製472頁 ISBN978-4-06-519438-6
カヴァー裏紹介文より:実存主義の旗手ジャン=ポール・サルトル(1905-80年)が1940年に出版した哲学著作。豊富な具体例を交えて「イメージ」と「想像力」を考察した本書は、哲学・思想のみならず創作の現場に尽きせぬインスピレーションを与え続けている。これまで『想像力の問題』の表題で流通してきた重要書を、第一級の研究者が総力をあげて待望の新訳!


★本橋哲也さん(共訳:スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
北ダコタ州立大学教授で英文科長のレベッカ・ウィーバー=ハイタワー(Rebecca Weaver-Hightower, 1968-)の初訳を上梓されました。単著第一作である『Empire Islands: Castaways, Cannibals, and Fantasies of Conquest in Post/Colonial Island Narratives』(University of Minnesota Press, 2007)の全訳です。「本書では、シェイクスピアの『テンペスト』からデフォーの『ロビンソン・クルーソー』、そして「植民地主義的かつ帝国主義的な島のトポス」が、精神分析理論の応用によって詳細に検出されます。日本語圏でも多くの読者を得てきたピーター・ヒュームの『征服の修辞学』やホミ・バーバの『文化の場所』以来の、ポストコロニアリズムの視点からの文学・文化表象研究のひとつの到達点を示す著作であると申し上げても過言ではないでしょう」と本橋さんは訳者あとがき「島々と所有の物語」でお書きになっています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。ちなみに『征服の修辞学』『文化の場所』はともに本橋さんの共訳書として法政大学出版局より刊行されています。

レベッカ・ウィーバー=ハイタワー著 本橋哲也訳
法政大学出版局 2020年5月 本体4,800円 四六判上製454頁 ISBN978-4-588-01118-4
帯文より:『テンペスト』『ロビンソン・クルーソー』から現代小説・映画・政治的言説へ。われわれを魅了してやまない漂着物語に潜む植民地主義的かつ帝国主義的な島のトポスを剔出する。

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# by urag | 2020-05-25 04:30 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 05月 24日

注目新刊:ニック・ランド『暗黒の啓蒙書』講談社、ほか

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暗黒の啓蒙書』ニック・ランド著、五井健太郎訳、木澤佐登志序文、講談社、2020年5月、本体1,900円、四六判上製272頁、ISBN978-4-06-519703-5

★ついに、イギリス出身の哲学者でブロガーのニック・ランド(Nick Land, 1962-)による2012年発表のテクスト「The Dark Enlightenment(暗黒啓蒙)」が完訳されました。まず最初に言っておかなければならないのは、現代思想の主戦場はもはや紙媒体ではなくネットに移っているということです。日本語訳書に序文を寄せた木澤佐登志さんが優れたブロガーであることからもはっきりしているように、紙媒体(木澤さんはいまものすごい勢いで紙媒体にも寄稿されていますが)はもはやそのエスタブリッシュメントとしての地位を失い、ネットを後追いするしかなくなっています。「暗黒啓蒙」もまた印刷されざるネット上のテクストであり、それが日本では国内最大手の出版社が刊行する紙媒体の書籍になるわけですが、それはひとまずの代替物としては良しとしましょう。というのも「暗黒啓蒙」は長文のテクストであり、訳書では本文だけでも240頁近い分量になります。これだけ長い文書の場合、印刷された複写を手元に置いておくことは無益とは(まだ、に過ぎませんが)言えないでしょう。

★木澤さんによる序文「『暗黒の啓蒙書』への「入口」」は書名のリンク先で立ち読みできますし、「現代ビジネス」でも公開されています。木澤さんはこう書きます。「ランドはそのPART 1〔新反動主義者は出口(イグジット)へと向かう〕において、ティールやヤーヴィンら新反動主義者たちの思想を紹介しながら、そこで目指されているのは民主主義の「出口(イグジット)」へ向かうことであると要約してみせる。/すなわち、この腐敗が宿命付けられた民主制の〈外部〉を目指すこと、そして同時に民主政に代わるオルタナティヴな体制を具体的に構想すること、これこそが新反動主義の要諦なのだという」。ちなみに帯文はこうです。「民主主義と平等主義の欺瞞を暴け。資本主義を加速せよ。民主主義を棄て去り、資本主義を極限まで推し進め、〈出口〔イグジット〕〉を目指すのでなければ、真の自由は獲得できない――。“現代思想の黒いカリスマ”が放つ、禁断の書」。

★各パート冒頭には日本の読者向けに要約が付されていますので、まずはそこを通しで読んでみるのも良いと思います(中核となる部分を追うためならたったの4頁で、すべを読んでも10頁に過ぎません)。本文に戻ってランドの議論についていくためにはある程度の教養が必要にはなりますが、彼が分析する現代社会像を理解するために必要なのは、教養ではなくむしろ共感です。ランドが次のように書いていることについて共感するのはさほど難しいことではないでしょう。「民主主義というウイルスが社会を覆いつくしていくにつれて、苦心して積みかさねてきた習慣や、先を見越して思考する態度、あるいは慎重になされる人的かつ産業的な投資といったものは、その場の勢いだけの不毛な消費主義や財政上の無節制、そして「リアリティ・ショー」的な政治のサーカスに置きかえられてしまうことになる。将来は別の誰かのものになってしまうかもしれないのだとしたら、なされるべきはいまこの瞬間にそのすべてを喰らいつくしてしまうことなのだというわけである」(PART 1, 31頁)。

★加速主義を「行き過ぎた夢追い人たち」の思想と貶めるのは割と簡単かもしれませんし、議会制民主主義への絶望感や、既成秩序の崩壊と人類滅亡の予感に凡庸さを認めるのも比較的には容易でしょう。しかし、ランドの「暗黒啓蒙」の功績は、その思想内容の是非に掛かっているというよりは、彼が見せた「到来しかねない未来」のヴィジョン、その批判的可視化に存するのだろうと感じます。見えないはずのものをランドは私たちの目前に鮮やかに描いて見せた。ゆえに私たちはその未来(という名の現在)を選択することもできるし、選択しないこともできます。むろん二者択一しか私たちに残されていないのではなく、ランドの議論の中から使える武器と手ごわい武器を選別し、なおかつ「手ごわい武器」を捨てずに手元に置いてさらに改造を試みることも可能でしょう。一番ダメなのは、ランドを異端視して無視することです。ランドのニーチェ的思考実験を「西洋社会特有の病理であり、日本では通用しない」と斬って捨てるのも早計です。

★確かに、ランドが分析しているアメリカの社会状況と日本のそれとは違いますから、ランドの議論をそのままスライドさせることができるわけではありません。ゆえに、日本人の誰かが日本人向けの「暗黒啓蒙」を書くことは可能でしょう。私個人としては、3.11以後の社会状況をめぐってピーター・ティールが2004年にスタンフォード大学のシンポジウム「政治と黙示録」で行った講演「シュトラウス主義者の時代(The Straussian Moment)」(所収:Politics and Apocalypse, Michigan State University Press, 2007)に、木澤さんが序文で言及されていたことに注目したいと思います。ティール講演の論旨は木澤さんが要約されているので再説しませんが、ここで言うシュトラウス主義者という名称は、ドイツ出身のアメリカの政治哲学者レオ・シュトラウス(Leo Strauss, 1899-1973)に由来するものと見ていいかと思います。

★一部の弟子たちの政治的影響力のせいでネオコンの思想的源流のひとつと目されることがあるシュトラウスですが、シュトラウスの著書を読めばそうした解釈が誤解であることは明白です。ただし道徳重視と哲人政治への志向が保守主義や貴族主義に通底する契機がまったくないかと言えば、そこはもう少し掘り下げて分析する必要があるのだと思われます。ランドの啓蒙主義批判や現代ギリシア批判には、明示的ではないにせよ、シュトラウスの称揚する古代ギリシア思想との比較を促す回路を見出すことができるのかもしれません。

★ティールの発表を収めた『政治と黙示録』の編者であるロバート・ハミルトン=ケリーは序論の「時代の兆候を読むこと」と題された節で、カール・シュミット、レオ・シュトラウス、エリック・フェーゲリンの3人の政治哲学者を召喚します。この3人は論集において幾度となく言及されている特異点的知性です。この3名は『暗黒の啓蒙書』には出てきませんが、政治において「良かれと思ったこと」や理想が現実への落とし込みにおいて反転したり横すべりしたりして本来の意義から逸脱するような思想的事故に見舞われることがある、という観点からすると、シュミット、シュトラウス、フェーゲリンをどのように読むかということが存外の重要性を帯びてくる可能性があると思われます。あるいはここにシュペングラーやエルンスト・ブロッホも加えていいのかもしれません。つまり理想=光(啓蒙)と反転=暗黒(脱啓蒙)との落差について考えること。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

神々は真っ先に逃げ帰った――棄民棄兵とシベリア抑留』アンドリュー・バーシェイ著、富田武訳、人文書院、2020年5月、本体3,800円、4-6判上製296頁、ISBN978-4-409-52081-9
文化は人を窒息させる――デュビュッフェ式〈反文化宣言〉』ジャン・デュビュッフェ著、杉村昌昭訳、人文書院、2020年5月、本体2,200円、4-6判上製140頁、ISBN978-4-409-10043-1

★『神々は真っ先に逃げ帰った』は『The Gods Left First: The Captivity and Repatriation of Japanese POWs in Northeast Asia, 1945-1956』(University of California Press, 2013)の全訳。バーシェイ(Andrew E. Barshay, 1953-)はカリフォルニア大学バークレイ校の歴史学教授で、専門は近現代日本史。既訳書に『南原繁と長谷川如是閑――国家と知識人・丸山眞男の二人の師』(宮本盛太郎監訳、ミネルヴァ書房、1995年)と、『近代日本の社会科学――丸山眞男と宇野弘蔵の射程』(山田鋭夫訳、NTT出版、2007年)があります。今回の新刊は過酷なシベリア抑留を体験した捕虜たちの精神世界を「画家の香月泰男、評論家の高杉一郎、詩人の石原吉郎を通じて描いたもの」(訳者あとがきより)。書名の由来について訳者は、著者が「満州や朝鮮の神社の「神体」が真っ先に保護され、本国に搬送された点に注目したわけである」(同)と説明しています。著者は序章で以下のように書いています。

★「天照大神と子孫、明治天皇の御神体の挑戦からの返送は、日本人の祖国帰還の最初の例となった。最初の帰還者は、その高いステータスのゆえに、兵士、現地官吏、居留民の誰よりも先に脱出させられたのである。〔…〕日本の支配が崩壊するや、植民地社会で「神々」の位置を占めた官僚や高級将校は、極めて慎重に退去が準備されていた。残る人々は放置され、死亡するか、生き残っても、よくて自分たちがいかに裕福な生活から惨めな生活に転落したかを思い知らされたのである」(19~20頁)。

★著者はこうも書いています。「私の関心事は、抑留それ自体、それに至る前史だけではなく、抑留体験者の一部――全体のうちではほんの少数――による自身の個人的回想の帰国後の出版物である。この努力、すなわち回想し、折り合いをつけ、思い出を克服さえする戦いは、それぞれの個人的・集団的文脈を持っている。これらの回想は、抑留体験をつかむ上でも、歴史を書く上でも不可欠なのである。〔…〕本書が抑留史を書く仕事への一つの貢献になればと思っている」(24頁)。

★『文化は人を窒息させる』はまもなく発売(28日取次搬入予定)。『Asphyxiante culture』(Pauvert, 1968)の全訳で、日本語版オリジナルの「付属資料」として、「無作法の居場所」(1967年パリ装飾美術館での展覧会カタログの序文)が訳出されています。意外ですが、日本でも高名なこの画家の著書が訳されるのは今回が初めてだそうです。杉村さんは訳者あとがきでこう本書を紹介しています。「彼が「文化的芸術」と呼ぶ既成の規範の枠内にとどまる芸術を批判をし、かつそうした芸術を繁茂させる背景をなす「文化という制度」を厳しく批判した乾坤一擲の快著と言える」。連続性のある断章形式で綴られる冷徹な知識人/文化人批判、国家批判は痛快というべきで、なぜもっと早く翻訳されなかったのか、不思議なくらいです。

★「私は個人主義者である。つまり私は、私の個人としての役割は社会的利害関係が引き起こすあらゆる拘束に反対することだと考えている。個人の利益は社会の利益と対立する。この二つの利益に同時に役立とうとすると、偽善と混乱に陥ることになる。国家が社会の利益を見張り、私は個人の利益を見張るということだ。しかし私は国家の顔をひとつしか知らない。警察の顔だ。政府の全省庁はこの顔しか持っていないように私には思われる。警視総監と警察官からなる文化の警察としての文化省しか私には想像できない。その顔つきはきわめて敵対的で不愉快である。〔…〕社会秩序に対立する気紛れ、独立不羈、反逆といったものは民族集団の健全性にとって最も必要なものである。集団の健全度は集団的規律への違反者の数で測ることができる。「従属」精神以上に集団を硬直させるものはない」(11~12頁)。

★「教授とは目録製作者であり、規格化推進者であり、「優位に立った」ものの確定者であり、いつどこでこの優位が生じたかを決める者である」(15頁)。

★「「社会的なもの」の増大と「個人的なもの」の衰退という近年の際立った特徴は、作家たちが投票用紙をポケットに入れて政治や法律に関心を集中することから生じている。1900年の作家たちがポケットに入れていたのは爆弾(またはパイプ)であった。近年の作家たちは法律に望みを託す。かつての作家たちは法律から逃れることしか考えていなかったのに」(16頁)。

★「今日、文化という概念は、本質的に宣伝広告的であり、宣伝広告のメカニズムによく合致した度し難く単純な作品を指し示すものとなっている。要するに、作品の価値はしだいに宣伝広告の価値に移行しているのである」(54頁)。

★「真理はひとりひとりのものとしてしか存在しない。そしてそれは注意深く保護されなくてはならない」(55頁)。

★「国家の膨大な数の係員、大学教授、論説家、注釈家、商売人、投機家、広告業者などによって構成された文化の分配装置は、農産物や工業製品の分配において利潤を貪るネットワークと同じほど巨大で寄生的な団体をなしている。芸術生産の領域においては〔…〕優先権による利潤が重要である。なぜなら、この寄生虫的分配団体は、おのれが強化されるにつれて、芸術は創造そのものよりも解釈や発見や流布が重要であると考えるようになり、しかもそういう考えを押しつけようとするからである。かくしてこの領域においては、真の生産者は芸術家ではなくて、芸術家の作品を紹介しそれを優位に立たせる者たちであるということになる」(73~74頁)。

★「これまで書いてきたことは、私がずっと以前から書きつけていたメモに基づいている。私はそこで、「長い射程」を持った概念や原理を告発し、断片的思想やベクトル(方向)としてのみ有効な「「短い」射程の原理をそれに取って代えようとした。〔…〕旋回運動をする世界にアプローチするには、回転する概念が必要なのだ」(114~115頁)。

★このように、引用するとキリがないほどこの本は警句と洞察とに満ちています。いささか古めかしい議論のように感じる向きもあるかもしれませんが、現代人はデュビュッフェの時代からさほど隔たっているわけではなく、根っこの部分の多くは変わっていないのではないでしょうか。

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# by urag | 2020-05-24 23:58 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 05月 18日

『建築雑誌』『美術手帖』でブルーノ・ラトゥールが取り上げられています

建築雑誌』2020年5月号のメイン特集「社会のマテリアライゼーション――建築の社会的構想力」の座談会「アクター・ネットワークは建築に適用できるか――ノンモダニズムの観点からデザインを考える」(2~7頁)に『ブルーノ・ラトゥールの取説』(月曜社、2019年8月)の著者、久保明教さんが参加されています。座談会では同『取説』掲載の「モダニズム/ポストモダニズム/ノンモダニズム」分類図2点が参照され、ANT(アクターネットワーク理論)の建築分野への応用が議論されています。『美術手帖』6月号「新しいエコロジー」特集ではラトゥールの論考「地球に降り立つことへの7つの反対理由」(鈴木葉二訳、119~130頁)が訳者の鈴木さんによる解説「扉を開き続けること」(131頁)とともに掲載されました。人文学の範疇を越えた、ラトゥールの越境的影響は海外ではすでに顕著でしたが、日本国内でも広がりつつあるようです。

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# by urag | 2020-05-18 16:08 | 広告・書評 | Comments(0)
2020年 05月 17日

注目新刊:東浩紀『哲学の誤配』ゲンロン、ほか

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哲学の誤配』東浩紀著、ゲンロン、2020年5月、本体1,800円、四六判並製208頁、ISBN978-4-907188-37-5
創造する心――これからの教育に必要なこと』Marvin Minsky著、Cynthia Solomon/Xiao Xiao編、大島芳樹訳、オライリー・ジャパン発行、オーム社発売、2020年4月、本体2,400円、四六判並製296頁、ISBN978-4-87311-900-7
ランスへの帰郷』ディディエ・エリボン著、塚原史訳、三島憲一解説、みすず書房、2020年5月、本体3,800円、四六判上製264頁、ISBN978-4-622-08897
国富論(下)』アダム・スミス著、高哲男訳、講談社学術文庫、2020年5月、本体2,190円、A6判並製704頁、ISBN978-4-06-519093-7
スーパーナチュラル・ウォー』オーウェン・デイヴィス著、江口之隆訳、ヒカルランド、2020年4月、本体3,200円、四六判上製384頁、ISBN978-4-86471-865-3

★『哲学の誤配』は「ゲンロン叢書」第7弾で、第6弾の『新対話篇――東浩紀対談集』と同時発売。株式会社ゲンロンの創業10周年を記念した出版物です。帯文に曰く「韓国の読者に向けて語った2つのインタビューと、中国・杭州での最新講演を収録。日韓並行出版」。第1の対話「批評から政治思想へ」は2012年6月に、第2の対話「哲学の責務」は2018年8月に、それぞれ東さんの著書の韓国語訳者・安天(アンチョン)氏が聞き手となったもの。安天氏は巻末の「日本語版刊行によせて」も書かれています。付録として2019年11月の中国講演「データベース的動物は政治的動物になりうるか」の草稿を収録。本書の韓国語版(韓国語題は『哲学の態度』)に収められた、批評家パク・カブン氏による解説「東浩紀との出会い」も安天さんによって訳出され日本語版へ併載されています。

★第2の対話では、安天さんの「ポストモダニストたちは主張と実践が乖離しているということでしょうか」という質問に、東さんは次のようにお答えになっています。「そうです。いっていることとやっていることがちがいすぎます。人文学の研究者は一方で国家を批判する。けれども、現実では文学部が危機に瀕し、美術館が閉鎖されかねない状況になると、デモをして国家に支援を要求する。これではつじつまが合わない。自由な知のアソシエーションを唱えながら、他方でそのために国家の支援を欲しがるというのは、子どもでもわかる矛盾です。でもみんなそこは見ないふりをして、それが矛盾でないかのような小むずかしい理屈をつくっている。信頼を失うのは当然だと思います」(100頁)。大学教員ではなく在野の一企業家として活動されている東さんならではの鋭い指摘です。

★このほか後段では、人文学の研究手法が現実の変化に対応できていないのではないか、というやりとりがあります。消費様式の変化や、コンテンツだけでなくコミュニケーション(アーキテクチャ)の仕組みに対し注目することの重要性が語られます。安天さんは東さんの議論の主旨を引き受けつつこう確認します、「人文学が構築してきた方法論自体がコンテンツの読解を目的としているので、コミュニケーションやその仕組みのもつ意味を汲み取れないという傾向があると」。東さんの答えは次の通りです。「そのとおりです。とりわけ新しい情報技術に関する議論では、個々のコンテンツはさほど重要ではないことが多いものです。ユーチューブのすごさは、そこに投稿されている動画にはありません。プラットフォームの革新、仕組みの革新こそが刺激的な部分です。だから、仕組みそのものをおもしろいと思えるかどうか、という感性のちがいが重要になってくる。/この感性のちがいはなかなか深刻です」(112頁)。さらにこの後、次のように東さんは続けます。

★「ぼくは、批評や人文知を復活させるために大事なのは、まずは書き手より読者だと思っています。読者がいなければ書き手も存在しません。いま日本で批評や人文知が苦境に陥っているのは、要は読者が減っているからです。だから、読者こそ再生する必要がある。書き手を養成するのではなく、まずは批評や人文知が好きなひとたちをつくらなければならない。ぼくはそのような考えをもってゲンロンやゲンロンスクールを運営しているのですが、理解してくれるひとがじつに少ない。すごい論文を読みたい、すごいひとが現れてほしい、といったひとばかりで、読者をつくり上げることの重要性を理解しているひとはほとんどいない。このことが人文知の衰退の理由だと思います。人文知の未来について考えたとき、コンテンツからプラットフォームやアーキテクチャのほうへ発想をシフトすることは、理論的にも実践的にもとても重要です」(113頁)。

★読者を育てていない、という危機感に強い共感を覚えます。一部の出版人や書店人はまさにそこに焦点を絞ろうとして日々もがいていますが、もっとどん欲にゲンロンや東さんの活動からヒントを得てマネしていいのではないか。むろん簡単にはマネできないですが、模倣することから自分たちの現場の問題点が浮かび上がってくるはずです。東さんの著書は近年ますます、業界人必読になっています。これは一出版人の媚でもへつらいでもなく、東さんの格闘を他人事とは思えないからです。意識ある業界人や教育者はそう思っているはずだと私は予感しています。

★『創造する心』は『Inventive Minds: Marvin Minsky on Education』(The MIT Press, 2019)の訳書。ミンスキー博士による子供の教育論が、「無限の組み立てキット」「数学を学ぶのはなぜ難しいのか」「年齢別クラスの弊害」「ロール・モデル、メンター、インプリマから学ぶ」「一般教育を問う」「教育と心理学」の6つのエッセイとして収められています。日本語版独自のコンテンツとして、巻頭に静岡大学教授の竹林洋一さんによる「日本語版刊行に寄せて」、巻末に日本語版特別寄稿として日本学術振興会顧問で内閣府人工知能戦略実行会議座長の安西祐一郎さんによる「“創造するこころ”を創造する環境」が収録されています。さらに原書ではミンスキーの第1エッセイ「無限の組み立てキット」へのあとがきとして収められていたアラン・ケイによる文章が、無削除版草稿からの翻訳で、日本語特別版あとがき「マーヴィン・ミンスキーと究極のティンカートイ」として巻末近くに併載されています。元版のあとがきはミンスキー博士の長女マーガレット・ミンスキー氏によるものですが、こちらも訳出されています。

★「インプリマ」についてミンスキーは次のように書いています。「インプリマ(imprimer):インプリマとは、子どもが愛着を持つ対象となった人のことである。子を育てる習性のある動物では、幼い子が持つ愛着が果たす機能は明らかである。子のすぐそばに親がいることによって、栄養を与えることができ、生存に必要な知識を教え、危険から守ることができる。しかし人間においては、子どもの究極的価値基準と目標に影響を及ぼすという、さらなる意味を持つ。インプリマが褒めてくれれば、特別で身震いするような興奮を感じ、現在行っている活動の目標の優先度が上がる。もし恥の感情を持つと、現在の目標は価値が下がる。/あなたが尊敬できる仕事をしている人に会った時は、その人のスキルを獲得したいと思う。しかし、インプリマであれば、スキルだけではなく、その人の価値基準も獲得し、さらに一般的に言えば、その人自身になりたいと思う。〔…〕私たちが教育について考える時には、子どもが持つ愛着について注意深く考える必要がある」(132頁)。

★『ランスへの帰郷』はディディエ・エリボン(Didier Eribon, 1953-)の自伝『Retour à Reims』(Fayard, 2009)の全訳。日本では『ミシェル・フーコー伝』(田村俶訳、新潮社、1991年)や、デュメジル、レヴィ=ストロースへのインタヴュー本(『デュメジルとの対話――言語・神話・叙事詩』松村一男訳、平凡社、1993年;『遠近の回想』竹内信夫訳、みすず書房、1992年、増補新版2008年)などで知られていますが、仏独ベストセラーとなった本作で、日本でもエリボンその人の生きざまと思想に注目が集まるようになることを期待したいです。訳者あとがきで塚原さんは「労働者階級という出自とゲイとしての生き方をご50代半ばで改めて直視するために、あえて「自伝」を書かずにはいられなかった彼の心情が素直に伝わってくる」と評しておられます。なお本書で言及されているエリボンの主著には『ゲイ問題に関する考察』(Réflexions sur la question gay, Fayard, 1999)や『マイノリティのモラル』(Une morale du minoritaire. Variations sur le theme de Jean Genet, Fayard, 2001)などがあります。いずれも未邦訳。

★エリボンは、極右政党を支持していたという2人の弟に言及し、次のように書いています。「社会的地位は基本的には出自の階級に結びついたままであり、元の地位とそれにともなう決定論に制約されている〔…〕。結局、この種の制約は、ます自分の意志で学校に行かなくなることから始まり、学校教育のシステムから排除された者たちに提供される職業や職種の選択が制限される事態へとつながるのだが、教育システムは排除されることを自発的に選んだと、彼らに思い込ませてしまう。/こう考えると、私は次のような問いかけに直面することになる。もし弟たちを気づかっていたら、もし彼らの学校での勉強を援助していたら、もし彼らに読書の楽しみを教えていたら、どうなっていただろうか? というのも、学問を理解する明晰さを身につけたり、本が好きになって読書をしたくなったりすることは、誰にでも最初から備わっている特質ではなくて、むしろ社会的境遇や所属する環境と関連しているのであり、弟たちの場合には、同じ環境で育ったほとんどすべての子どもたち同様、社会的境遇が、私が奇跡的にめざすことになった目標を拒絶する方向へと彼らを向かわせたのだ」(105~106頁)。

★「学校による選抜と排除の過酷な論理」(106頁)を自分が阻止できただろうか、と問いつつ、弟たちの「守護者」になれなかったことにエリボンは罪悪感を抱いていた、と告白します。この自伝ではほかにも様々なエピソードや家族関係の変化が描かれており、部分的な引用がためらわれるほど複雑な側面があります。



★『国富論(下)』は先月発売の上巻に続く新訳全2巻の下巻。底本は1789年の第5版で原著では全3巻のところ訳書では2分冊となっています。下巻では第四編「政治経済学の体系について」の第五章「助成金について」から、第五編「統治者または国家の収入について」の第三章「公債について」まで。巻末には訳者解説と主要事項索引、人名索引が配されています。訳者の高さんは解説でこう述べておられます。「第五編の課題は、「公共の利益」をいかに確保するべきかという問題、つまり、「公共」というものの制度設計をめぐる議論で埋め尽くされている、ということである。ここでは、スミスは「政治」の在り方について分析する経済学者であって、「公共の精度」を、その歴史的発展のプロセスに即して再構成する「制度」の経済学者なのである」(687頁)。高さんは「現代でもなお、いや現代だからこそ、注目すべき「公共の利益」の促進に関する論点と考察」(同)だと評価されています。

★『スーパーナチュラル・ウォー』は『A Supernatural War: Magic, Divination, and Faith During the First World War』(Oxford University Press, 2018)の全訳(索引は一部省略とのこと)。カヴァー表1紹介文に曰く「全世界で死傷者1800万人超――未曾有の大災厄から生まれた無数の伝承・呪物で紡ぎ出す、かつてない〈戦争民俗学/戦争社会史〉の名著」と。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「超自然信仰と〔信仰〕活動の連続性についていえば、第一次世界大戦は護符とお守りの商業主義化を固めた点で影響があった。さらに魔術的な分野に機械化を組み込んだり、来世観を世俗化したり、心霊分野の心理学化を招くなどしたといえる。戦時下の新聞は、同時代における神的介入や世界の解釈との関連を再形成するうえで重要であった。戦間期の新たな危機と社会発展、とりわけ大恐慌はそれなりの役割を果たしたといえる」(324頁)。著者のオーウェン・デイヴィス(Owen Davis, 1969-)はハートフォードシャー大学歴史学部教授。既訳書には『世界で最も危険な書物――グリモワールの歴史』(宇佐和通訳、柏書房、2010年;著者名の表記は「オーウェン・デイビーズ」;Grimoires: A History of Magic Books, Oxford University Press, 2009)があります。

★なお本書の特設サイトでは購入者特典として、訳者の訳者の江口之隆さん(西洋魔術博物館主宰)による本書の特別解説および関連収蔵品紹介のPDFが、限定公開されています。
注目新刊:東浩紀『哲学の誤配』ゲンロン、ほか_a0018105_00125848.jpg


★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

不確実性の人類学──デリバティブ金融時代の言語の失敗』アルジュン・アパドゥライ著、中川理/中空萌訳、以文社、2020年5月、本体3,000円、四六判上製カバー装296頁、ISBN978-4-7531-0358-4​
ハリエット・タブマン――彼女の言葉でたどる生涯』篠森ゆりこ著、法政大学出版局、2020年5月、本体2,800円、四六判並製294頁、ISBN978-4-588-36419-8
思考の技法』グレアム・ウォーラス著、松本剛史訳、ちくま学芸文庫、2020年5月、本体1,200円、352頁、ISBN978-4-480-09977-8
フランス革命の政治文化』リン・ハント著、松浦義弘訳、ちくま学芸文庫、2020年5月、本体1,600円、512頁、ISBN978-4-480-09974-7
民間信仰』桜井徳太郎著、ちくま学芸文庫、2020年5月、本体1,400円、400頁、ISBN978-4-480-09976-1
古代日本語文法』小田勝著、ちくま学芸文庫、2020年5月、本体1,400円、416頁、ISBN978-4-480-09979-2
増補 複雑系経済学入門』塩沢由典著、ちくま学芸文庫、2020年5月、本体1,600円、544頁、ISBN978-4-480-09978-5

★『不確実性の人類学』は『Banking on Words: The Failure of Language in the Age of Derivative Finance』(University of Chicago Press, 2015)の訳書。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。第1章「約束型金融の論理」の冒頭にある「論点の要約」の書き出しはこうです。「本書の主な主張は、2007~8年のアメリカの金融システムの失敗は、何よりもまず言語の失敗だったということである。〔…〕このような主張をするためには、いかにして言語が現代金融において新しい役割を担うようになったかを理解する必要がある。〔…〕どのように言語が金融において今日の役割を担うようになったのか理解するには、4つの段階が必要である」(9頁)。アパドゥライ(既訳書ではアパデュライと表記されることもありましたが、アパドゥライの方がより正確なようです)は続けてこう書きます。

★「第一の段階は、どれほどデリバティブが現代金融を特徴づける中心的な技術革新であるかを示すことである。〔…〕第二の段階は、デリバティブは本質的に各種の金融資本の未来における価格に関する書面契約であり、結果として未来にある特定の価格となった場合、合意した金額を負けた方が勝った側に支払うという約束が、その契約の核心であると示すことである。〔…〕第三の段階は、定義上商品価値を表現する最も抽象的な形態である貨幣が金融の世界においてとる特殊な形態を介して、デリバティブが契約の言語的な力をいかに利用しているかを示すことである。最後に来る第四の段階は、デリバティブ市場(とくに住宅ローンの領域における)失敗は、何よりも(オースティンの遂行的発話の分類において最も重要な)失敗した約束、すなわち、時たま起こるその場限りのものではなく、体系的で伝染性があるため金融市場全体を破滅の寸前にまで追いやるタイプの失敗にかかわっていると理解することである」(9~10頁)。

★第一章では「この主張について順を追って図式的に述べ」(10頁)、続く各章では「リスク、儀礼、救済、遂行的発話の失敗、そして分人/個人といった概念を、エミール・デュルケーム、マルセル・モース、そしてマックス・ウェーバーの戦略的な再読を通してより詳しく検討する。〔…第7章から第9章までの〕最後の三つの章は、デリバティブと分人に対する従来と異なるアプローチを用いた政治に関するものであり、現代金融の言語的核心から進歩的な政治的教訓を引き出す方法を示す」(10~11頁)。

★ちなみに「分人(dividual)」というのは、訳者解説での説明を借りると、「人は不可分な個人(individual)ではなく複数の関係性の結節点として存在しており分割可能だ」とする人格概念のこと。「アパドゥライによると、デリバティブは「捕食性分人主義」である。ここでは、分割可能なのはトレーダーたち自身ではなくて、その餌食となる債務者たちだ。〔…〕債務者はまとまりを持った人格ではなく、切り分けられて数値化された一連のデータになる。トレーダーたちは、それらのデータを使って不確実性に賭けたのだ。だから、デリバティブは「少数の(利益獲得による)個人化のために他の多数を分人化」(本書172頁)するものである」(274頁)と訳者は論及しています。

★アパドゥライは捕食性分人主義ではなく、人々が皆、贈与によって豊かさを共有できるような「進歩的分人主義」の可能性を論じます。「グローバル金融から古い考え方(国民国家)を守ろうとするのではなく、それと似た論理を用いながらそれを打ち倒そうとするという「われわれの社会思想の設計のラディカルな変革」(本書180頁)の可能性」(訳者解説、275頁)。本書のユニークな議論に現代人が学べる示唆は多いだろうと感じます。

★『ハリエット・タブマン』は翻訳家の篠森ゆり子さんによる力作評伝。帯文の文言を借りると、タブマンは「奴隷制が敷かれていた19世紀のアメリカで、命をかけて多くの黒人奴隷を救い出し、「黒人のモーセ」と呼ばれた女性」。彼女は「逃亡奴隷を救出する秘密組織「地下鉄道」の車掌として指揮をとり、南北戦争時は北軍のスパイとして活躍し、晩年には女性参政権運動に身を投じた」(版元紹介文より)と言います。篠森さんは「はじめに」でこう書いています。

★「非の打ちどころがない偉人の姿が浮かんでくるけれども、身近な人にとっては決して特別な人間ではなかった。奴隷制廃止運動の仲間のある黒人は、タブマンのことをこう評している。「ごく普通の黒人らしい外見で、読み書きができず、地理もわからず、(病気のせいで)半分は寝ている」。そんな持病のある野育ちの女性が、なぜここまで多くのことをなし遂げられたのか。もちろん彼女が聡明で機略に富み、慎重さと行動力を持ち合わせていたからだが、それだけではなかった。背後には人々の連帯の力があり、それによって彼女の生まれ持った能力が押し出され、最大限に生かされたのである。本書では地下鉄道という連帯の力にも目を向け、掘り下げていきたい」(4~5頁)。

★「本書では、記録に残っている彼女自身の言葉をできるだけ紹介するよう努めた。その言葉を通じて彼女の存在を身近に感じながら一生をたどり、人物像を探っていきたい。そして、生まれつき背負った逆境に負けず、それを克服する生き方を見ていく」(5頁)。「彼女の人間的魅力と壮絶な生きざまは、死後100年以上たった現在でも多くの人々を惹きつけてやまない」(6頁)。

★ちくま学芸文庫の5月新刊は5点。『思考の技法』は文庫のための訳し下ろし。原著はイギリスの政治学者にして社会学者のグレアム・ウォーラス(Graham Wallas, 1858-1932)による1926年の著書『The Art of Thought』です。政治学者の平石耕さんが解説を寄せておられます。アメリカの伝説的広告マンであるジェームス・W・ヤング(James Webb Young, 1886-1973)によるベストセラー『アイデアのつくり方』(今井茂雄訳、TBSブリタニカ、1988年;阪急コミュニケーションズ、2000年;CCCメディアハウス、2015年)の「源泉になった先駆的名著、本邦初訳」と帯文に特記されています。目次は以下の通り。

はしがき
第1章 心理学と思考
第2章 意識と意志
第3章 技法に先立つ思考
第4章 コントロールの諸段階
第5章 思考と情動
第6章 思考と習慣
第7章 努力とエネルギー
第8章 思考のタイプ
第9章 意識の遊離
第10章 教育の技法
第11章 公的教育
第12章 教えと実践
原註
解説(平石耕)
人名索引

★『フランス革命の政治文化』は1989年に平凡社から刊行された単行本の文庫化。原著は『Politics, culture, and class in the French Revolution』(University of California Press, 1984)。文庫化にあたって、著者のリン・ハント(Lynn Avery Hunt, 1945-)さん自身が5頁強に及ぶ「ちくま学芸文庫版へのまえがき」を2020年1月の日付で書き下ろしています。ハントさんは単行本にも「日本語版への序文」を寄せているので、これで2度目の寄稿です。訳者による「ちくま学芸文庫版訳者あとがき」によれば、「この機会に、平凡社のテオリア叢書版の訳文を原文を照合し、不適切と思われる訳語や表記を修正するなどして、日本語としてより自然で読みやすい訳文となるようにつとめた」とのことです。

★『民間信仰』は1966年に塙書房から刊行された単行本の文庫化。著者は2007年に逝去されており、解説「生きた怪異を活写する、それが可能だった時代」を民俗学者の岩本通弥さんが寄せておられます。岩本さん曰く「愛媛県宇和地方(第Ⅰ章)、大分県国東半島(第Ⅱ章)、淡路島(第Ⅲ章)の現地調査に基づいた、1960年代前半に執筆された各論考から、読者が目撃するのは、高度経済成長期以前の、普通の人びとの暮らしの中に、怪異や俗信あるいは信仰が生き生きと蠢いている姿であろう。わずか5、60年前のこの日本に、こうした世界が生きてあったことに、驚嘆する者も少なくないに違いない」。疫病をもたらすハヤリ神、不可視の妖怪ノツゴ、特殊神事ケベス祭、等々、「民衆生活の奥底に息づいている精神」(帯文より)への興味は尽きません。

★『古代日本語文法』は2007年におうふうから刊行された単行本の文庫化。巻頭の「はしがき」によれば、おうふう版は『古典文法読本』(開成出版、2004年)を全面的に改訂した改題新版。「古代語文法の基礎知識」「動詞」「述語の構造」「時間表現」「文の述べかた」「形容詞と連用修飾」「名詞句」「とりたて〔副助詞と係助詞〕」「副文構造」「敬語法」の全10章立て。新たに付された「文庫版あとがき」によれば「若干の字句を修正し、用例のルビを少し多めに増やしたほかは原著のままですが、原著刊行後に見出だされた知見など現時点で補われるべき事項について、若干の補注を新たに加えました」とのことです。「広く日本語文法や日本古典文学に関心を寄せる人々に推奨したい一冊」(カバー裏紹介文より)。

★『増補 複雑系経済学入門』は、1997年に生産性出版より刊行された単行本を増補改訂し文庫化したもの。中核となる4部13章構成のそれそれの題名は変わっていませんが、新たに補章として「『複雑系経済学入門』以後の20年」が加えられ、それに先立つ「読書案内」もアップデートされているようです。著者の塩沢由典(しおざわ・よりのり、1943-)さんは大阪市立大学名誉教授。ご専門は理論経済学です。補章内の節題を以下に列記しておきます。

1. 20年の歩み
2. ブライアン・アーサとサンタフェ研究所の貢献
3. サンタフェ流アプローチへの不満
4. 進化という視点
5. 新しい価値論と経済像
6. 技術進歩と経済発展
7. 金融経済の経済学
8. 一般読者への読書案内

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# by urag | 2020-05-17 23:46 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 05月 14日

新規取引店情報:月曜社の本を置いてくださる本屋さん

2020年7月23日(木)プレオープン、10月1日(木)グランドオープン予定
松本本箱(坪数不明)
長野県松本市浅間温泉3-13-1 松本十帖「松本屋」1F

日販帳合。弊社は電算短冊で人文系既刊書数点を受注。挨拶状等の送付がないので自力で調べると、松本本箱は、雑誌刊行に留まらずホテル事業やオーガニック食品販売、グルメ事業などを手広く手掛ける株式会社自遊人がプロデュースする、リノベーションホテル「松本屋」1階に併設される書店。創業334年の歴史を持つ浅間温泉の老舗旅館「小柳」が、里山十帖、箱根本箱、商店街ホテル講大津百町の姉妹館として、全室露天風呂付きで24室の「松本屋」と、ファミリーや一人旅、長期滞在やグループ旅行などに対応する13室を備えた「カジュアルステイ ホテル小柳」の二館のほか、本屋やエデュケーションプレイス、ハードサイダーファクトリー、レストランを併設した「「学都」「岳都」「楽都」な松本を感じるコミュニティホテルに生まれ変わ」るとのこと。この施設一帯の名称が「松本十帖」です。プレオープンやグランドオープンの予定は、松本市でセレクトショップを運営される会社による某ブログ記事で紹介されていましたが、松本十帖に電話確認したところおおよそその予定とのことでした。

松本本箱では約1万冊を扱うとのこと。弊社への発注短冊には「カフェ――哲学と甘いもの――の哲学」との注記があるのが興味深いです(でも返条付の希望なら「客注」短冊で発注しないで欲しいし、出品しろというなら店舗の概要書ぐらいは欲しいって毎回申し上げてるんですけどね、日販さん、客注での発注ってことは返品しないんだよね?)。「本箱」の名前が付くのは日販が手掛けるブックホテル「箱根本箱」に続く二例目ですね(ちなみに箱根本箱はオーナーが日販で、運営受託が自遊人)。松本十帖の公式ウェブサイト内の紹介文によれば、松本本箱は「知識が広がっているようで視野が狭くなっている現代社会。人間の知と感性を複層的に重ねていけるような多様な知と出会う場所。それが「松本本箱」です。大人はもちろん子供の創造力も刺激する写真集や絵本を多数取り揃えます」とのこと。松本十帖の公式ウェブサイトで公開されている館内写真を拝見するかぎり、とにかく美しい、素敵な「ブックホテル」とお見受けしました。

関連記事ですが、「市民タイムスWEB」2020年2月25日付記事「浅間に今春 複合宿泊施設オープン 飲食店や書店も」に曰く「松本市の浅間温泉で今春、ホテルやレストラン、書店、雑貨店などが入った複合施設がオープンする。出版や旅館運営などを手掛け、平成30年から浅間温泉3〔所在地〕の老舗旅館・静保庵ホテル小柳も運営している「自遊人」(新潟県南魚沼市)が、同ホテルを大規模改修して複合施設にする。合わせて敷地外の施設の改修も進めており、一帯を「松本十帖」として周遊性を高めることで、温泉街全体の活性化を図る」と。コロナの影響で4月末オープンが延期となり、予約受付は今日2020年5月14日現在「ただいま7/23〜のご予約を承っております」とサイトに表示されていましたが、実際のところ予約可能なのは10月1日利用分からのようです。

同記事には「小柳の施設内には二つのホテルと書店、信州産の食材を使った料理を提供するレストラン、雑貨店、ベーカリー、蔵を改修したシードル工場などを設ける。ホテルは書店の本を楽しめる「ブックホテル松本本箱」(4月末開業予定・24室)と、バリアフリーの「ファミリーホテル自遊人」(7月以降に開業予定・14室)で、どちらのホテルも広々とした全個室に源泉を引いた露天風呂が付いている」とも書かれています。その後「ブックホテル松本本箱」は「松本屋」に、「ファミリーホテル自遊人」は「カジュアルステイ ホテル小柳」に名前を変えたということでしょう。外部のホテル予約サイトでは「松本屋」を「松本本箱 WEST」、「カジュアルステイ ホテル小柳」を「松本本箱 EAST」と表記している例も見受けます。

発注短冊に記載されていた注記「「カフェ――哲学と甘いもの――の哲学」の由来は同記事から推測できます。曰く「施設から約50メートル東にある空き家の長屋はブックカフェ「哲学とあまいもの。」に改修し、長屋の外観はそのままに、哲学書とスイーツを楽しめるカフェにする」と。また、外部のホテル予約サイトでの紹介文には、「松本本箱 WEST」すなわち「松本屋」について、以下のような記述があります。「全24室、すべて温泉露天風呂付き。全客室に、プライベート露天風呂がついています。歴史ある浅間温泉の湯を心ゆくまでお楽しみください。ホテル1階には1万冊以上の本が並ぶ本屋があり、ご宿泊のお客様は自由にご利用いただけます。敷地内や徒歩圏内に、本屋、ダイニング、醸造所、ブックカフェ等が点在。湯街を歩いて、楽しむホテルです。ツインルームが基本ですが、エキストラルーム・エキストラベッドのご利用で最大5名様までお泊まりいただける客室もあります。各客室の定員は、それぞれのお部屋タイプ詳細をご覧ください。小さなお子様のご宿泊は隣接のホテル「松本本箱 EAST」をご利用ください。なお客室のテラスも含め、敷地内は全面禁煙です」。

つまり「松本十帖」敷地内には、ホテル「松本屋」1階に書店「松本本箱」があり、離れにはブックカフェ「哲学とあまいもの。」がある、と。弊社が受けたのは松本本箱の発注だけれどもブックカフェ扱い分であると。

別の予約サイトによれば、「松本本箱は、洋室と和室を併設する宿泊施設で、温泉/露天風呂と炭火料理を提供しています。JR松本駅まで車で20分です。エアコン完備のお部屋には、テレビ、冷蔵庫、電気ポット(緑茶ティーバッグ付)、専用バスルームが備わっています。ダイニングルームでは和朝食と夕食を楽しめます。松本本箱から松本城、松本民芸館まで車で10分です」とのこと。

なお「自遊人」のウェブサイトは会社のキャッチコピーでしょうか、「Ecological, Creative, Organic. We're designning lifestyles.」という文言が掲げられています。ライフスタイルのデザイン。蔦屋書店が言う「ライフスタイルの提供」と少し異なりますが、書店や出版社が「ライフスタイル」のデザインと提供を、紙媒体の雑誌編集やその販売という範疇を超えて物理的空間のデザインと提供まで進出した好例が、自遊人であり、蔦屋書店だということに歴史的には説明できるのでしょう。そして書店の進化系ということでは、近年有隣堂が試みているような「HIBIYA CENTRAL MARKET」をはじめとする複合店や、日販が手掛ける「六本木文喫」などもそうした試みに位置づけうるのでしょう。

株式会社自遊人のウェブサイトには、同社の代表取締役/クリエイティブディレクター/雑誌「自遊人」編集長の岩佐十良(いわさ・とおる:1967-)さんは「Founder's Message」として次のように発信されています。「自遊人は「伝える」のプロです。雑誌編集に始まって、食品の企画、製造、販売、農業、宿泊施設……私たちは「伝える」をテーマに、いろんなモノやコトを社会に提供してきました。そして最初のホテル「里山十帖」の開業後は、たくさんのご相談もいただくようになりました。「本当に、名もない温泉地の古い宿にも将来はあるの?」 私たちは「一軒の宿が地域のセンターハブになり得る」と考えています。もっと言うならば、衣食住遊、ライフスタイルのすべてを提案できる「宿」は新たなリアルメディアであり、地域の司令塔にもなれるはずなのです。里山十帖はその実験施設。新しいメディアの「新潟特集」でもあります。今後はブランドコンサルティングからオペレーション受託まで幅広く活動し、日本全国で「伝える」仕事をしていきたいと思っています」。

プロフィールによれば岩佐さんは「武蔵野美術大学でインテリアデザインを専攻。在学中の1989年にデザイン会社を創業し、のちに編集者に転身。2000年、温泉や食に関する記事が人気の雑誌「自遊人」を創刊、編集長に。編集者の役割は社会に「体験・発見・感動」を伝えることというポリシーのもと、雑誌だけでなく、既存の「モノ」を「リアルメディア」化することに力を注ぐ」とあります。会社沿革には「1989年5月、代表者の岩佐十良が武蔵野美術大学在学中にデザイン会社として創業。当初の業務はグラフィックデザイン&空間デザイン」と。空間設計という出発点があればこその「現在」なのでしょう。

岩佐さんは「What We Do」欄でこうも書いておられます。「私たちの会社の存在意義は「新しい体験・発見・感動を社会に提案し続けること」。雑誌をつくっているころから常に考えているのは、「社会的意義の ある仕事をすれば、利益は必ずついてくる」「必ず応援してくれる人が現れる」。「どうやったら儲かるか」ではなく、「どうしたら世の中が楽しくなるか」」。そんな株式会社自遊人さんですが、「「10年、10拠点」。地域の魅力を再編集した施設を全国に! 一緒に働いてくれる仲間を募集しています」とのことで、メディア型ホテルで情報を発信するプレゼンター、プランナー・ディレクター、経理、などの人材を募集されているようです。

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# by urag | 2020-05-14 14:36 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)
2020年 05月 10日

注目新刊:コルバン/クルティーヌ/ヴィガレロ監修『感情の歴史』藤原書店、ほか

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★最近では以下の新刊との出会いがありました。

感情の歴史 Ⅰ――古代から啓蒙の時代まで』アラン・コルバン/ジャン=ジャック・クルティーヌ/ジョルジュ・ヴィガレロ監修、ジョルジュ・ヴィガレロ編、片木智年監訳、藤原書店、2020年4月、本体8,800円、A5判上製760頁、ISBN978-4-86578-270-7
全著作〈森繁久彌コレクション〉4 愛――人生訓』森繁久彌著、佐々木愛解説、藤原書店、2020年4月、本体2,800円、四六判上製360頁、ISBN978-4-86578-268-4
生きる――17歳の生命誌 中村桂子コレクション いのち愛づる生命誌 第6巻』中村桂子著、伊東豊雄解説、藤原書店、2020年4月、本体2,800円、四六変上製360頁+口絵2頁、ISBN978-4-86578-269-1
日本の「原風景」を読む――危機の時代に』原剛著、佐藤充男写真、藤原書店、2020年4月、本体2,700円、四六判並製328頁+カラー口絵8頁、ISBN978-4-86578-264-6

★藤原書店さんの4月新刊は4点。概要や目次詳細はそれぞれの書名のリンク先でご確認いただけます。特に注目したいのは『感情の歴史』全3巻の刊行開始。第1巻「古代から啓蒙の時代まで」は『Histoire des émotions, vol. 1 : De l'Antiquité aux Lumières』(Seuil, 2016)の訳書。「古代」「中世」「近代」の3部構成で24本の論考を収録し、巻頭に「総序」が置かれています。帯文に曰く「心性史を継承するアナール派の到達点!」と。藤原書店さんで刊行されてきた、コルバン/クルティーヌ/ヴィガレロ監修による『身体の歴史』(全3巻、2010年)と『男らしさの歴史』(全3巻、2016~2017年)に続く、「シリーズ〈歴史の時空〉三部作完結編」とのことです。

★「感情 émotions」という語が16世紀に初めて使用され〔…〕内面空間の増大と複雑化が、感情の歴史によって明らかにされる。たとえば感情、感傷、情念、さらには倒錯、狂気へと深みを段階的に増しながら、絶えず多様になっていく混乱を把握すること。人生の幼年期から、内的均衡を予期せぬかたちで破るさまざまな偶発症状――たとえば19世紀末に示唆された「トラウマ」という豊かな主題――まで、混乱の痕跡を段階的に示す思いがけない影響を考察すること。そして20世紀に入ると、感情システムそのものが根本的に移動したことが不可避的に確認される」(総序、24~25頁)。

★「感情の歴史はこうして、西洋人の意識における心的空間のゆるやかな構築をめぐる歴史に接合される。感情の歴史は内面性の果てしない変化を示す。〔…〕当事者たちが感じていることにできるかぎり果断に接近し、彼らが「内面的に」みずからの世界をどのように生きているか、そして彼らがどのようにその世界の反映になっているかを明らかにしなければならない」(25頁)。



★さらに次の新刊との出会いもありました。

1964年の東京パラリンピック――すべての原点となった大会』佐藤次郎著、紀伊國屋書店、2020年5月、本体1,800円、46判並製240頁、ISBN978-4-314-01172-3
ドイツ軍攻防史――マルヌ会戦から第三帝国の崩壊まで』大木毅著、作品社、2020年4月、本体2,700円、46判上製336頁、ISBN978-4-86182-807-2
美術手帖 2020年6月号 特集:新しいエコロジー 危機の時代を生きる、環境観のパラダイムシフト』美術手帖編集部編、美術出版社、2020年5月、本体1,600円、A5判並製220頁、雑誌コード07611-06

★『1964年の東京パラリンピック』は「日本の障碍者福祉・医療・スポーツに多大な貢献をした中村裕医師と、1964年の国際身体障害者スポーツ大会(のちに第2回パラリンピックとして認定)に出場した選手や関係者、そして、戦後の障碍者を取り巻く社会を描いたノンフィクション」(版元プレスリリースより)。日本パラ陸上競技連盟会長の増田明美さんが推薦文を寄せておられます。曰く「日本が共生社会への第一歩を踏み出した瞬間」と。

★『ドイツ軍攻防史』は、「新書大賞『独ソ戦』の著者、最新作」(帯文より)。マルヌ海戦、ダンケルク撤退、独ソ激突のほか、数々の激戦を明解に分析とのこと。「鋼鉄の嵐 第一次世界大戦とドイツ軍」「稲妻はいかにして鍛えられたか 両大戦間期から第二次世界大戦まで」「拡散する嵐 ソ連侵攻」「薄暮の狼たち ドイツ国防軍の終焉」の全4章構成。補章としてドイツ軍事史基本文献案内が付されています。

★『美術手帖 2020年6月号 特集:新しいエコロジー』では、ブリュノ・ラトゥールによる論考「地球に降り立つことへの7つの反対理由――『クリティカル・ゾーン:地球に降り立つことの科学と政治学』序論」と訳者の鈴木葉二さんによる付記「扉を開け続けること」に注目したいです。ドイツのZKM(カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター)で今年開催予定の展覧会「クリティカル・ゾーン:地球的政治学のための観測所」のカタログとして刊行される予定の『クリティカル・ゾーン:地球に降り立つことの科学と政治学』に寄せられる序論の第二草稿とのこと。

★ラトゥールはこう書いています。「科学と政治をきれいに分けておけるのは平和なときだけであって、地球の動きが加速しているのに人類の反応が鈍っているいまは違う。最初の「科学革命」のときと同様に、いまはたんに科学的事実を言明しただけで、どうしてもそのすべてが警鐘、行動の呼びかけ、政治的声明、誰かの信条への耐え難い干渉となってしまう状況なのだ。気候科学否認派がどれほどあちこちに現れていることか。社会の権力構造が現状を保てないほど、宇宙の秩序が揺さぶられているということである。本書では、こうした科学と政治学の結び目をできるだけ包み隠さずあらわにし、新たな着地点から逃れられるという幻想を払拭しよう」(122頁)。

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★複数冊注文(いわゆる「マルチ」。1点のみの注文は「シングル」)から5日後にネット書店側の手違いでキャンセルされ、渋々その5日後に再注文(再度複数冊発注)をし、ようやくその14日後に届いた書籍たちを列記しておきます。急いでいないとはいえ、コロナ影響下での本のネット注文は、なかなか厳しい状況が続きそうです。

全体性と無限』エマニュエル・レヴィナス著、藤岡俊博訳、講談社学術文庫、2020年4月、本体1,880円、592頁、ISBN978-4-06-519344-0
レイシズム』ルース・ベネディクト著、阿部大樹訳、講談社学術文庫、2020年4月、本体920円、224頁、ISBN978-4-06-519387-7
ペルシア人の手紙』シャルル=ルイ・ド・モンテスキュー著、田口卓臣訳、講談社学術文庫、2020年4月、本体1,880円、592頁、ISBN978-4-06-519341-9
国富論(上)』アダム・スミス著、高哲男訳、講談社学術文庫、2020年4月、本体2,110円、736頁、ISBN978-4-06-519094-4
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』カール・マルクス著、丘沢静也訳、講談社学術文庫、2020年4月、本体840円、192頁、ISBN978-4-06-519346-4
稲垣足穂詩文集』稲垣足穂著、講談社文芸文庫、2020年3月、本体2,200円、352頁、ISBN978-4-06-519277-1
大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット著、佐々木孝訳、岩波文庫、2020年4月、本体1,070円、428頁、ISBN978-4-00-342311-0
ロールズ政治哲学史講義 I』ジョン・ロールズ著、サミュエル・フリーマン編、齋藤純一/佐藤正志/山岡龍一/谷澤正嗣/高山裕二/小田川大典訳、岩波現代文庫、2020年4月、本体1,880円、542頁、ISBN978-4-00-600420-0
ロールズ政治哲学史講義 II』ジョン・ロールズ著、サミュエル・フリーマン編、齋藤純一/佐藤正志/山岡龍一/谷澤正嗣/高山裕二/小田川大典訳、岩波現代文庫、2020年4月、本体1,820円、502頁、ISBN978-4-00-600421-7
すべては消えゆく――マンディアルグ最後の傑作集』マンディアルグ著、中条省平訳、光文社古典新訳文庫、2020年4月、本体980円、312頁、ISBN978-4-334-75422-8
マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ:自由と闘争のパラドックスを越えて』丸山俊一/NHK「欲望の時代の哲学」制作班著、NHK出版新書、2020年4月、本体800円、224頁、ISBN978-4-14-088620-5
嘘と孤独とテクノロジー ―― 知の巨人に聞く』エドワード・O・ウィルソン/ティモシー・スナイダー/ダニエル・デネット/スティーブン・ピンカー/ノーム・チョムスキー/吉成真由美著、インターナショナル新書、2020年4月、本体940円、304頁、ISBN978-4-7976-8051-5
人類学とは何か』ティム・インゴルド著、奥野克巳/宮崎幸子訳、亜紀書房、2020年3月、本体1,800円、四六判並製180頁、ISBN978-4-7505-1595-3

★都下23区内に住んでいても上記のすべての書目が置いてある書店は近隣にはなく、30分から小一時間をかけてターミナル駅の大書店に出向く必要があります。文庫や新書ですらそういった具合ですから、いわんや単行本の専門書となれば購入前に現物を確認するのは困難になります。なおかつコロナの影響により臨時休業や時短営業を余儀なくされている大型店が多い。本を買いにくい状況がこの先どれくらい続くでしょうか。

★店頭にない本は存在しないわけではありません。目の前にない本が実際は「ある」。紙媒体の世界はネットの情報網とは別の仕方で広大な王国です。それが実世界に接続されている環境がいかにか細く見えるとしても確かにそれらは実在します。そうしたことを理解するためには、データベースやネット書店や電子書籍だけがあればいいのではない。大書店ないし専門書を扱うことに特化した書店があって欲しいと思います。未知との遭遇を果たせる場所、他なるものたちとの出会いの場所として。

★さて、上段に掲げた既刊書の数々ですが、まず講談社学術文庫の新訳ラッシュには目をみはるものがあります。文芸文庫で足穂単独の著書が出るのが初めてだったり、岩波文庫にオルテガが入るのが今回が最初だったりというのは、意外な驚きです。また、岩波現代文庫のここ最近の、他社に先駆けてのロールズの文庫化は好感が持てます。マンディアルグはそのカルト的な人気の割には(人気のせいでというべきか)なかなか文庫化されない作家です。今回の新刊は96年に白水社から刊行された『すべては消えゆく』を大幅加筆訂正し、新たに「クラッシュフー」(« Crachefeu »、1983年『薔薇の葬儀』より )、「催眠術師」(« L'Hypnotiseur »、1976年『刃の下』より)の2編の訳を加えて文庫化したもの。

★『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』と『嘘と孤独とテクノロジー』はそれぞれ第一線の知識人の最新インタヴューを堪能できます。インゴルド『人類学とは何か』(原著『Anthropology』Polity Press, 2018)は人類学にとってという以上に、人文学や社会科学全般にとっても重要な鍵となる小著です。第一章「他者を真剣に受け取ること」から印象的な部分を以下に引きます。

★「人間の生とは社会的なものである。それは、どのように生きるのかを理解することについての、けっして終わることのない、集合的なプロセスなのである。それゆえ、どのような生き方も、生きていく中でつくり上げるものなのだということになる。道が、まだ見ぬゴールにどうやってたどり着くかの答えではないように、生き方は、生についての問題に対する答えなのではない。そうではなく、人間の生とは、その問題に対する一つのアプローチなのである」(6~7頁)。「背景や暮らしや環境や住む場所がどのようなものであるかを問わず、世界中に住まうすべての人の知恵と経験を、どのように生きるのかという〔…〕問いに注ぎ込む」(7頁)のが人類学である、とインゴルドは言います。「私の定義では、人類学とは、世界に入っていき、人々とともにする哲学である。/人類史において、この種の哲学が今ほど必要とされたことはなかった」(9頁)。

★誤解を恐れずに言えば、私は書店はこうした人類学の営為そのものにコミットできる場でありうると思っています。動的で実践的な「読み書き」と「共有」の場としての書店。



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# by urag | 2020-05-10 23:34 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)