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ウラゲツ☆ブログ

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2020年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊と近刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
◎2020年1月22日発売予定:ロドルフ・ガシェ『脱構築の力』本体2,700円、叢書エクリチュールの冒険、第15回配本。
◎2020年1月17日発売予定:秋元康隆『意志の倫理学』本体2,100円、シリーズ〈哲学への扉〉、第6回配本。
◎2019年12月24日発売:ジュディス・バトラー『新版 権力の心的な生』本体3,200円。
◎2019年12月5日発売:『森山大道写真集成(3)写真よさようなら』本体7,500円。
◎2019年11月29日発売:榊貴美作品集『KIMI SAKAI twinkle』本体2,000円。
◎2019年11月13日発売:カール・ヤスパース『ニーチェ』本体8,400円、シリーズ・古典転生、第20回配本(本巻19)。
◎2019年11月1日発売:ラシード・ブージェドラ『ジブラルタルの征服』本体3,000円、叢書・エクリチュールの冒険、第14回配本。
◎2019年10月3日発売:ジョルジョ・アガンベン『書斎の自画像』本体2,700円、シリーズ〈哲学への扉〉、第5回配本。
 西山雄二氏書評「独特かつ魅力的な自伝――多種多様な知的交流を回想しつつ、みずからの生涯を綴る」(「週刊読書人」2020年1月3日号)
 鈴木慎二氏短評「19年下半期読書アンケート」(「図書新聞」2019年12月21日号)
◎2019年10月3日発売:水野浩二『倫理と歴史』本体2,200円、シリーズ〈哲学への扉〉、第4回配本。
◎2019年9月19日発売:『森山大道写真集成(2)狩人』本体5,000円。
◎2019年9月12日発売:山下純照/西洋比較演劇研究会編『西洋演劇論アンソロジー』本体3,600円。
◎2019年8月7日発売:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』本体1,800円、シリーズ〈哲学への扉〉、第3回配本。
◎2019年8月7日発売:新井俊春『名人農家が教える有機栽培の技術』本体2,700円。
◎2019年5月23日発売:『森山大道写真集成(4)光と影』本体6,000円。
◎2019年5月14日発売:ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』本体3,800円、叢書・エクリチュールの冒険、第13回配本。
 中村隆之氏書評「外界を隔つ「私の肌の砦」――カリブ文学を代表する作家の〈原点〉」(「週刊読書人」2019年8月30日号)
◎2019年4月26日発売:『表象13:ファッション批評の可能性』本体2,000円。
◎2019年3月22日発売:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』本体4,500円。
 志賀信夫氏書評「テキストの迷宮が絵画とは何かを問いかける」(「週刊読書人」2019年5月31日号)
 暮沢剛巳氏書評「グリーンバーグのモダニズム美術論の批判的克服、ある種の「親殺し」の書――ようやく実現した待望の邦訳の出版を素直に喜びたい」(「図書新聞」2019年6月15日号)
 沢山遼氏書評「モダニズムの視覚と欲望とは」(「美術手帖」2019年8月号「BOOK」欄)
◎2019年3月6日発売:筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究』本体4,000円、シリーズ・古典転生、第19回配本、本巻18。
 中島水緒氏短評(「美術手帖」2019年6月号「BOOK」欄)
 大島徹也氏書評「ポロック芸術の再解釈を果敢に試みる――ポロックの装飾性の研究はさらなる発展の可能性を感じさせる」(「図書新聞」2019年6月29日号)
 黒岩恭介氏書評「整理された良質の研究書――ポロックの様式展開を考える上で、重要な問題提起を含む」(「週刊読書人」2019年7月19日号)
◎2019年2月22日発売:ハナ・ロスチャイルド『パノニカ――ジャズ男爵夫人の謎を追う』本体2,700円。
 宮下志朗氏短評(「読売新聞」2019年5月5日付書評欄)
◎2019年2月20日発売:十和田市現代美術館編『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』本体2,200円。
◎2019年2月18日発売:須藤温子『エリアス・カネッティ――生涯と著作』本体3,500円、シリーズ・古典転生、第18回配本、本巻17。
 古矢晋一氏書評「死者たちの群衆の後に唯一者として「生き残る」――カネッティは実に多彩な思想的、芸術的問題と格闘していた」(「図書新聞」2019年6月22日号)
◎2019年2月1日発売:松江泰治『JP-34』本体3600円。
◎2018年12月17日発売:『森山大道写真集成(1)にっぽん劇場写真帖』本体6,000円。

◆重版情報
◎2019年5月10日:甲斐義明編訳『写真の理論』2刷。
◎2019年7月26日:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』2刷。
◎2019年9月4日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』2刷。
◎2019年10月10日:森山大道『犬と網タイツ』3刷。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷、バトラー『権力の心的な生』新版。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『何かへの旅』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください。 
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# by urag | 2020-12-31 23:59 | ご挨拶 | Trackback(1) | Comments(21)
2019年 12月 31日

月曜社の出版物【2019】

弊社は2019年12月7日で創業満19周年を迎え、20年目の営業へと入りました。今年一年の皆様のご愛顧に深く御礼申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

◎2019年の発行/発売実績

★自社発行
02月01日:松江泰治『JP-34』本体3600円【芸術/写真】
02月18日:須藤温子『エリアス・カネッティ――生涯と著作』本体3,500円、シリーズ・古典転生、第18回配本、本巻17【人文/思想研究】
02月20日:十和田市現代美術館編『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』本体2,200円【芸術/作品集】
02月22日:ハナ・ロスチャイルド『パノニカ――ジャズ男爵夫人の謎を追う』小田中裕次訳、本体2,700円【音楽/評伝】
03月06日:筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究――その作品における形象と装飾性』本体4,000円、シリーズ・古典転生、第19回配本、本巻18【芸術/作品研究】
03月22日:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』谷川渥/小西信之訳、本体4,500円【芸術/芸術論】
05月14日:ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』吉田裕訳、本体3,800円、叢書・エクリチュールの冒険、第13回配本【外国文学/カリブ文学】
05月23日:『森山大道写真集成(4)光と影』本体6,000円【芸術/写真集】
08月07日:新井俊春『名人農家が教える有機栽培の技術』本体2,700円【農業】
08月07日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説――アクターネットワーク論から存在様態探求へ』本体1,800円、シリーズ〈哲学への扉〉、第3回配本【人文/思想研究】
09月12日:山下純照/西洋比較演劇研究会編『西洋演劇論アンソロジー』本体3,600円【芸術/演劇】
09月19日:『森山大道写真集成(2)狩人』本体5,000円【芸術/写真集】
10月03日:水野浩二『倫理と歴史――1960年代のサルトルの倫理学』本体2,200円、シリーズ〈哲学への扉〉、第4回配本【人文/思想研究】
10月03日:ジョルジョ・アガンベン『書斎の自画像』岡田温司訳、本体2,700円、シリーズ〈哲学への扉〉、第5回配本【人文/思想】
11月01日:ラシード・ブージェドラ『ジブラルタルの征服』下境真由美訳、本体3,000円、叢書・エクリチュールの冒険、第14回配本【外国文学/マグレブ文学】
11月13日:カール・ヤスパース『ニーチェ――彼の〈哲学すること〉の理解への導き』本体8,400円、シリーズ・古典転生、第20回配本、本巻19【人文/哲学】
12月05日:『森山大道写真集成(3)写真よさようなら』本体7,500円【芸術/写真集】
12月24日:ジュディス・バトラー『新版 権力の心的な生』佐藤嘉幸/清水知子訳、本体3,200円【人文/思想】

★自社重版
05月10日:甲斐義明編訳『写真の理論』2刷【芸術/写真論】
07月26日:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』2刷【芸術/芸術批評】
09月04日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』2刷【人文/思想研究】
10月10日:森山大道『犬と網タイツ』3刷【芸術/写真集】

★発売元請負
04月26日:表象文化論学会『表象13:ファッション批評の可能性』本体2,000円【人文/思想】

★製作請負
12月06日:日本ヤスパース協会『コムニカチオン 第26号』【人文/哲学】

以上、自社本18点、重版4点、発売元請負1点、製作請負1点でした。第20期も出版事業に微力を尽くします。どうぞよろしくお願いいたします。


# by urag | 2019-12-31 12:44 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 30日

2020年手帳:ブレポルスのリマがないためパレルモに

当ブログでは不定期でベルギーのブレポルス社製の手帳について3回書いてきました。


2020年手帳:ブレポルスのリマがないためパレルモに_a0018105_16155532.jpg

今回が4回目です。おそらく2000年版から毎年、Brepolsの手帳を銀座の伊東屋か、輸入元の株式会社不二越がヤフーに出店しているオンラインストア「DESCO Online Store」か、いずれかで買っていました(最初の1、2年は日本橋の丸善を利用していたと記憶します)。Genova、Parelmo、Ravenna、などの合皮カヴァーに「Interplan」のリフィルが付いたものを長らく使用していましたが、2016年版からLimaに乗り換えていました。合皮カヴァーのシリーズをやめた理由については以前のエントリーに書いています。

しかしこの2019年末、困ったことにLimaのInterplanは輸入されていません。フォーマットでInterplanを選ぼうとすると、リフィル以外ではMooseかCorolaを選ぶしかない。けれども、色味やデザインが派手だったり、表紙の資材だったりで好きになれないのです。Interplan以外の製本版ではSetaシリーズがあるものの、見開きに2週間を詰め込んでいるBreplan仕様のため、見開きで1週間のInterplanに比べると書き込む欄が狭すぎます。

困り果てたあげく、久しぶりにParelmoに戻ることになりました。3,300円也。結果、LimaのInterplanは2016年からわずか4年で終了。ベルギー本国ではまだ生産されているようなので、2021年版を不二越さんが再び仕入れて下さるならLimaに戻りたいと思います。ぜひ、ムースやコロラではなく、リマを輸入してくださると嬉しいです。



# by urag | 2019-12-30 16:17 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 29日

注目新刊:バディウ『存在と出来事』藤原書店、ほか

注目新刊:バディウ『存在と出来事』藤原書店、ほか_a0018105_02414467.jpg

存在と出来事』アラン・バディウ著、藤本一勇訳、藤原書店、2019年12月、本体8,000円、A5判上製656頁、ISBN978-4-86578-250-9
世界の悲惨Ⅰ』ピエール・ブルデュー編、荒井文雄/櫻本陽一監訳、藤原書店、2019年12月、本体4,800円、A5判並製496頁、ISBN978-4-86578-243-1
全著作〈森繁久彌コレクション〉第2巻 人――芸談』森繁久彌著、松岡正剛解説、藤原書店、2019年12月、本体2,800円、四六版上製512頁/口絵2頁、ISBN978-4-86578-252-3
いのちを刻む――鉛筆画の鬼才、木下晋自伝』木下晋著、城島徹編著、藤原書店、2019年12月、本体2,700円、A5判上製304頁/口絵16頁、ISBN978-4-86578-253-0

★藤原書店さんの12月新刊はいずれも力強い内容。バディウの主著『L'Être et l'Événement』(Seuil, 1988)の全訳は当初別の訳者名が挙がっていたものの、おそらく様々なドラマを経て今回、藤本さんの単独訳として成ったもの。「数学的存在論では語り尽くすことのできない出来事性のポテンシャルを、数学的存在論の臨界点において、しかし数学的に証明すること」(訳者解説より)を試みた難解な書ですが、理解できそうかどうかという迷いなど一切無視して構わない、購読すべき、挑戦すべき大著です。メイヤスーらの思弁的実在論に先立つ理論的前史として本書は再読されるでしょう。

★「われわれの目標は、数学とは〈存在としての存在〉に関する言説の歴史性であるという、メタ存在論のテーゼを立証することにある。そしてこの目標のさらに先にある目標は、哲学ではない二つの言説(および実践)のありうる分節を思考する仕事を、哲学に与えることである。その二つの言説(および実践)とは、一方は存在の学である数学であり、もう一方は出来事(これはまさしく「〈存在としての存在〉ではないもの」を指す)に関する介入的な諸学説である」(序論、28頁)。

★『世界の悲惨Ⅰ』は『La misere du monde』(Seuil,1993)の全訳で全3分冊の第1回配本。第1分冊では第Ⅰ部「様々な視点からなる空間」、第Ⅱ部「場所の作用」、第Ⅲ部「国家の不作為」を収録。帯文に曰く「ブルデューとその弟子ら23人が、52のインタビューにおいて、ブルーカラー労働者、農民、小店主、失業者、外国人労働者などの「声なき声」に耳を傾け、その「悲惨」をも たらした社会的条件を明らかにする」。巻頭には加藤晴久さんによるブルデューへのインタビュー「『世界の悲惨』とは何か」が収められています。これは加藤さんの編書『ピエール・ブルデュー1930-2002』(藤原書店、2002年)に収められたインタビューの前半部分を再録したものです。

★『全著作〈森繁久彌コレクション〉第2巻 人――芸談』は全5巻の第2回配本「月報2には、大宅映子/小野武彦/伊東四朗/ジュディ・オング、の4氏が寄稿。本書に収められた「交友録」にせよ月報にせよ、森繁さんが語り、語られるエピソードはいずれも興味深いものばかりです。『いのちを刻む』は鉛筆画家の木下晋(きのした・すすむ:1947-)さんの「初の自伝」(帯文より)。胸打つ逸話の中にも、桜井哲夫さんとの出会いは、木下さんの描く桜井さんの肖像画の迫力とあいまって、強い印象を読者に抱かせます。

★「その後ろ姿を見た瞬間、背筋に何か走るものがあった。こういう背中をした人を私は二人知っていた。それが瞽女の小林ハルであり、私の母であった。顔はテレビで見ているから驚きはしない。だがその背中にはぞっとした。いわゆる孤独という、我々が日ごろ抱く孤独のイメージとは全然違う、はかりしれない深みのある孤独だった。人間の尊厳そのものが剥ぎ取られ、絶対の孤島に佇む人物に私はどう向き合えばよいのか。/「この人の孤独を知りたい」/心の底から湧き上がってくるものを感じた。ハルさんとの出会いもそうだったが、桜井さんとの出会いも、私には「偶然の必然」だった。幼少時の過酷な体験から私に身についた、人物の闇の深さを感知する能力が、激しく揺さぶられたのである」(169~170頁)。

生まれてきたことが苦しいあなたに――最強のペシミスト・シオランの思想』大谷崇著、星海社新書、2019年12月、本体1,100円、新書判352頁、ISBN978-4-06-515162-4
断片 1926-1932』萩原恭次郎著、共和国、2020年1月、本体2,700円、四六変型判上製264頁、ISBN978-4-907986-67-4

★『生まれてきたことが苦しいあなたに』はルーマニア思想史研究者の大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さんの単独著第一作。一冊丸ごと、シオランをめぐる新書というのは、おそらく初めてではないかと思います。「シオランは失敗した、挫折した、中途半端な思想家であり、ペシミストである。彼の失敗と、彼のペシミズムとは、偶然のものではなく、密接な関連がある。そして失敗した思想家だからこそ、彼は素晴らしい」(288頁)。編集担当は木澤佐登志さんの『ニック・ランドと新反動主義』(星海社新書、2019年5月)も担当されたIさん。さすがの眼力です。これをきっかけにシオラン再評価が若い世代においても進むことを念じてやみません。

★『断片 1926-1932』は巻頭の特記によれば、「萩原恭次郎(1899-1938)の第2詩集『断片』(渓文社、1931年)全篇にくわえ、その収録作とほぼ同時期(1926-1932)に発表された詩と散文から〔41篇を〕選んで編んだもの」こと。巻末の「解説にかえて」は共和国代表のSさんが執筆。過去に埋もれた名作を復活させる名手としての面目に瞠目するばかりです。銀と墨を基調とした美しい造本も見事です。

クレットマン日記――若きフランス士官の見た明治初年の日本』ルイ・クレットマン著、松崎碩子訳、東洋文庫:平凡社、 2019年12月、本体3,400円、B6変判上製函入392頁、ISBN978-4-582-80898-8
明史選挙志――明代の学校・科挙・任官制度(2)』井上進/酒井恵子訳注、東洋文庫:平凡社、 2019年12月、本体3,800円、B6変判函入466頁、ISBN978-4-582-80899-5

★平凡社さんの「東洋文庫」の12月新刊は2点。第898巻『クレットマン日記』は『Deux ans au Japon, 1876-1878』(Boccard, 2015)のうち日記部分を訳出し、フランシーヌ・エライユの「序」を収録したもの。巻末には訳者解説のほか、保谷徹さんによる論考「幕末維新期の軍制改革とフランスの役割」が併載されています。帯文に曰く「草創期日本陸軍の教育・訓練の日々、教え子が体験する西南戦争、東京、横浜はもとより、旅先の日光、箱根、京阪神での見聞……1976-78年の日本の姿が豊富な写真とともに活写される」。第899巻『明史選挙志』は全2巻完結。第2巻には「科挙」についての続きと、「銓選」(官員選考制度)についての記述を収録。

★東洋文庫の次回配本は2020年2月、叡尊の自伝『感身学正記2』(全2巻完結)の予定。第1巻は実に1999年12月刊なので、20年越しの完結ということに。これが第901巻のようなので、そうすると900巻というのは――。なお3月には「東洋文庫マイブック」というノートが発売予定とのことです。このマイブックが「通巻900巻記念」。記番がないので、このマイブック自体が第900巻なのか、それとも別に第900巻があるのかは版元さんにお尋ねした方がよさそうです。

現代思想2020年1月号 特集=現代思想の総展望2020』青土社、2019年12月、本体1400円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1391-2
現代思想2020年1月臨時増刊号 総特集=明智光秀』青土社、2019年12月、本体1800円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1390-5
scripta winter 2020』紀伊國屋書店、2020年1月、非売品、A5判並製64頁

★『現代思想』の年頭号は例年通り「総展望」。目下『思弁的ホラー論(仮)』をご執筆中だという仲山ひふみさんによる論考「ラリュエル的ホラーの言語」、篠原雅武さんと斎藤幸平さんによる討議「ポスト資本主義と人新世」、奥野克巳さんによる論考「アニミズムを再起動する――インゴルド、ウィラースレフ、宮沢賢治と、人間と非人間の「間」」、編集部の訳編によるユク・ホイさんへのインタヴュー「東西のはざまで――世界の哲学者はいま何を考えているのか」などのほか、浅沼光樹さんによる新連載「ポスト・ヒューマニティーズへの百年」の第1回「シェリングと現代実在論――メイヤスーの相関主義批判に寄せて」が掲載されています。一方、同誌の臨時増刊号は大河ドラマ「麒麟が来る」を受けてか「明智光秀」。個人的には大澤真幸「理性の狡知――本能寺の変における」、小泉義之「謀叛と歴史――『明智軍記』によせて」、福島亮大「「消失する媒介者」としての明智光秀」などが気になります。

★紀伊國屋書店のPR誌「scripta」の第54号(2020年冬号)では、すでにネット上で話題になっている通り、吉川浩満さんの連載「哲学の門前」第14回が、「私の履歴書(上)国書刊行会編」が業界話として非常に興味深いです。就職当時(1994年頃?)の写真も掲載されていて、スーツの肩幅の広さが当時を思い起こさせます。私自身が未來社から哲学書房、さらに作品社に移った激動期に吉川さんの国書時代の二年半があたっています。この頃には一度もすれ違っていません。

注目新刊:バディウ『存在と出来事』藤原書店、ほか_a0018105_02424315.jpg

★このほか最近では人文書院さんの新刊4点と、作品社さんの新刊5点との出会いがありました。

「大東亜」を建設する――帝国日本の技術とイデオロギー』アーロン・S・モーア著、塚原東吾監訳、人文書院、2019年11月、本体4,500円、4-6判上製400頁、ISBN978-4-409-52080-2
大宅壮一の「戦後」』阪本博志著、人文書院、2019年11月、本体3,800円、4-6判上製336頁、ISBN978-4-409-24127-1
新芸とその時代――昭和のクラシックシーンはいかにして生まれたか』野宮珠里著、人文書院、2019年12月、本体3,000円、4-6判上製296頁、ISBN978-4-409-10042-4
女性たちの保守運動――右傾化する日本社会のジェンダー』鈴木彩加著、人文書院、2019年12月、本体4,500円、4-6判上製346頁、ISBN978-4-409-24128-8
〈未来像〉の未来――未来の予測と創造の社会学』ジョン・アーリ著、吉原直樹/高橋雅也/大塚彩美訳、作品社、2019年11月、本体2,400円、四六判上製302頁、ISBN978-4-86182-782-2
俺のアラスカ――伝説の“日本人トラッパー”が語る狩猟生活』伊藤精一著、作品社、2019年12月、本体2,200円、四六判並製268頁、ISBN978-4-86182-738-9
精神科医・安克昌さんが遺したもの――大震災、心の傷、家族との最後の日々』河村直哉著、作品社、2019年12月、本体2,000円、四六判並製236頁、ISBN978-4-86182-786-0
新増補版 心の傷を癒すということ――大災害と心のケア』安克昌著、作品社、2019年12月、本体2,200円、四六判並製488頁、ISBN978-4-86182-785-3
「ユダヤ」の世界史―― 一神教の誕生から民族国家の建設まで』臼杵陽著、作品社、2019年12月、本体2,600円、四六判並製424頁、ISBN978-4-86182-757-0

★それぞれ印象的な一冊を挙げます。人文書院さんの『女性たちの保守運動』は鈴木彩加(すずき・あやか:1985-)さんの博士論文(「現代日本社会における右傾化現象と女性たちの保守運動」2016年)に大幅な加筆修正を施したもの。「戦後の保守運動史、現代フェミニズム理論、保守派の言説分析、保守団体へのフィールドワークという四つの視点から〔…〕女性による保守運動に内在するアンビバレンスを明らかにし、ジェンダー論にも新たな視角をもたらす社会学研究の力作」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★作品社さんの『〈未来像〉の未来』は、イギリスの社会学者ジョン・アーリ(John Urry, 1946-2016)の遺作となる『What is the Future?』(Polity, 2016)の全訳。このところ未来予測をめぐる海外の著名人による新刊の日本語訳が相次いでおり、当ブログでも取り上げてきましたが――テグマーク『LIFE 3.0――人工知能時代に人間であるということ』(紀伊國屋書店、2019年12月)、ハラリ『21 Lessons――21世紀の人類のための21の思考』(河出書房新社、2019年11月)、ヴィリリオ/ロトランジェ『黄昏の夜明け――光速度社会の両義的現実と人類史の「今」』(新評論、2019年10月)など――、アーリは未来予測そのものを社会学的に分析しています。「平たく言うと〔…〕未来の予測は、現在に対して重大な影響をもたらす」(20頁)。

★なお同書のほか、『俺のアラスカ』『精神科医・安克昌さんが遺したもの』『新増補版 心の傷を癒すということ』を手掛けたのはすべて編集部のUさんです。ランズマン『ショアー』、アタリ『21世紀の歴史』、ハーヴェイなど人文社会系の話題書だけでなく、ロミの『~大全』や『~文化史』ものなど、左翼からエログロまでの守備範囲の広さは、Uさんならではのもの。ちなみに安克昌さん関連の2書は、来年1月18日にスタートするというNHK土曜ドラマ「心の傷を癒すということ」の関連書でもあります。

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# by urag | 2019-12-29 23:56 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 26日

アガンベン『書斎の自画像』の書評が「週刊読書人」に掲載されました

弊社10月刊、ジョルジョ・アガンベン『書斎の自画像』(岡田温司訳)に対する書評が「週刊読書人」2020年1月3日号に掲載されました。西山雄二さんによる書評記事「独特かつ魅力的な自伝――多種多様な知的交流を回想しつつ、みずからの生涯を綴る」です。

また、同書『書斎の自画像』については、「図書新聞」2019年12月21日号(3428号)の「19年下半期読書アンケート」にて、書店員の鈴木慎二さんに、ベスト3の1冊として選んでいただきました。


# by urag | 2019-12-26 18:32 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 25日

注目新刊:ポール・ド・マン『ロマン主義と現代批評』彩流社

★ポール・ド・マンさん(著書『盲目と洞察』)
E・S・バート、ケヴィン・ニューマーク、アンジェイ・ウォーミンスキーの3氏によって、ド・マンの没後にまとめられた論文集『Romanticism and Contemporary Criticism: The Gauss Seminar and Other Papers』(The Johns Hopkins University Press, 1993)が全訳されました。「本書には、1954年から1981年までのおよそ30年間にド・マンによって書かれたものの一度も出版されなかった文書が収録されている」(編者序文より)。第1部が1967年の「ガウス・セミナー」(全6回の連続講義のうちの5回分の講義)、第2部が関連する論考5本を収めた「エセーと論攷」です。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

凡例によれば、第2部冒頭の第7章「ヘルダーリンとロマン主義の伝統」は原著所収版ではなく『ダイアクリティクス』(第40巻第1号、2012年)版のテクストを訳出したとのことです。その理由について訳者付記ではこう説明されています。原著所収版「のもとになった1958年ごろに書かれたと思われる手稿が、未完のまま中断された非常に粗いものであるのに対し、その後プリンストン大学図書館にある〔…〕アーカイヴのなかから発見された〔…〕タイプ原稿は、ある公開講義(1959年2月)のために準備されたという経緯もあって、完成版にかぎりなく近いものとなっている」。このタイプ原稿が『ダイアクリティクス』版のもとになっているとのことです。

なお、巻頭の編者序文では3氏の編集方針が明かされています。「本書の出版には大規模な準備を要したが、わたしたち編者は必要最小限の介入しかしなかった〔…〕。編者が行なったのは、注を付け、欠けている書誌情報を補うこと、文法的にちぐはぐな部分を修正すること、必要に応じて引用を英訳することだけであった」(11頁)。

ロマン主義と現代批評――ガウス・セミナーとその他の論稿
ポール・ド・マン著 中山徹/鈴木英明/木谷厳訳
彩流社 2019年12月 本体5,000円 四六判上製407頁、ISBN978-4-7791-2638-3
帯文より:常に既に「内省家」と「歴史家」は、ド・マンのなかで首尾一貫した相関関係にあった。ロマン派詩人の「自己認識の深まり」を読む批評家は、ロマン派を「歴史的」に考察せざるをえない。だが、それを歴史として語ることができない。このジレンマこそが、ガウス・セミナーをはじめとする「ロマン主義研究」を通じて直面した「困難」であった。

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# by urag | 2019-12-25 12:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 23日

取次搬入日決定:バトラー『新版 権力の心的な生』

ジュディス・バトラー『新版 権力の心的な生』の取次搬入日が決定しました。日販と楽天BNが12月24日(火)、トーハンが25日(水)です。本書が弊社の2019年最後の新刊となります。書店さんの店頭に並び始めるのは早くて首都圏の大型店で年内となるかと思われますが、そのほかの地域への着店は年明けになる可能性もあるかと想像します。なお、どの書店さんで扱われる予定があるかについては、地域を指定していただければお知らせできます。

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なお本書の共訳者の佐藤嘉幸さんが聞き手となった、海渡雄一弁護士(東電刑事裁判被害者代理人)へのインタヴュー記事「東電刑事裁判の判決の誤りを徹底批判する」が、今月、「週刊読書人」に掲載されました。東電刑事裁判の判決についての検証に留まらず、東電がいかにコスト増大を恐れて津波対策を先送りしたかが、明白な証拠とともに解説されている、とのことです。

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# by urag | 2019-12-23 11:17 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 22日

注目新刊:アバンスール『国家に抗するデモクラシー』法政大学出版局、ほか

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★まず、まもなく発売となる新刊3点を取り上げます。

LIFE 3.0――人工知能時代に人間であるということ』マックス・テグマーク著、水谷淳訳、紀伊國屋書店、2019年12月、本体2,700円、46判並製512頁、ISBN978-4-314-01171-6
誤解としての芸術――アール・ブリュットと現代アート』ミシェル・テヴォー著、杉村昌昭訳、ミネルヴァ書房、2019年12月、本体2,800円、A5判上製208頁、ISBN978-4-623-08751-8
国家に抗するデモクラシー ――マルクスとマキァヴェリアン・モーメント』ミゲル・アバンスール著、松葉類/山下雄大訳、法政大学出版局、2019年12月、本体3,400円、四六判上製310頁、ISBN978-4-588-01108-5

★『LIFE 3.0』は『Life 3.0: Being Human in the Age of Artificial Intelligence』(Knopf, 2017)の全訳。帯文はこうです。「AI開発の指針「アシロマAI原則」の取りまとめに尽力し、AI安全性研究を牽引する著者が、来るべき世界の姿と生命の究極の未来を考察する。労働、法律、軍事、倫理から、生命と宇宙、機械の意識まで多岐にわたる問題を論じた全米ベストセラー。31か国で刊行」。ホーキング、オバマ元大統領、ビル・ゲイツなど、著名人の称讃を集めた話題書の翻訳です。目次の確認や第1章の途中までの試し読みは書名のリンク先で可能です。

★水谷さんは訳者あとがきで本書をこう紹介しています。「本書は、AIによって生命と宇宙はどのような未来を迎えるか、安全なAIを実現させるにはどのような課題を克服しなければならないかという、重大な問いに挑んだ本である。テグマークはこれらの問いに対して、まずは間近に迫る短期的な課題(AIによる失業や格差拡大、自律型兵器の軍拡競争など、おもに政治・経済・法律に関する問題)を取り上げ、次いで遠い未来(数千年~数十億年後まで)の地球と宇宙の姿に思考をめぐらせ、最後には「意識とは何か」という「本当に難しい問題」にまで踏み込んで深く掘り下げていく。エピローグでは、FLI〔生命の未来研究所〕の立ち上げから「アシロマAI原則」に漕ぎつけるまでの顛末がスリリングに描かれている」(487頁)。

★72頁には本書の構成の全体的見取り図があり、さらに各章末尾には要約が箇条書きされています。「自らのハードウェアもデザインできて、自身の運命を司ることのできる技術的段階」であるライフ3.0の新世界が間近に迫っていることを教える本書は、鳥肌を催さずにはおかないスリリングな内容となっています。著者のテグマーク(Max Erik Tegmark, 1967-)はスウェーデン出身の、アメリカで活躍する理論物理学者。既訳書に『数学的な宇宙――究極の実在の姿を求めて』(谷本真幸訳、講談社、2016年;Our Mathematical Universe, Knopf, 2014)があります。


★『誤解としての芸術』は『L'Art comme malentendu』(Minuit, 2017)の全訳。スイスの美術史家でキュレーターのテヴォー(Michel Thévoz, 1936-)の訳書は『不実なる鏡――絵画・ラカン・精神病』(岡田温司/青山勝訳、人文書院、1999年)、『アール・ブリュット』(杉村昌昭訳、人文書院、2017年)に次いで本書が3冊目です。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。巻頭には日本語版への序文として「誤解の創造性」という一文が加えられています。簡潔な翻訳論ともなっているこの序文は本書の主題である「誤解」の根本的な重要性に繋がっています。「昔から今に至るまで、作品から作品へと目を通してみると、芸術の歴史はひとえに芸術の受容の歴史にほかならず、芸術の歴史はいわゆる意思疎通によってではなく誤解によってよりよく説明されうるものであることに気づかされる」(第6章「誤解としての芸術」104頁)。

★またテヴォーはこうも書いています。「退行的と形容される時代――後期古代、初期中世、あるいはわれわれの生きるポスト・ヒストリカルな時代――においては、象徴的秩序は崩壊し、すべては平らになり新たにグローバルな再形状化に身をさらすようになる。カオスという移行的段階を通ってしか袋小路から脱することはできない。/われわれはいま、あきらかに“エントロピーに左右される時代”に入った」(第8章「地球のミュージアム化」167~168頁)。「誤解も、それが広がったときには、コードを攪乱することはなく、むしりコードに取って代わる。もう一度言うなら、われわれの意図は、小さな誤解から大きな誤解への移行を浮き彫りにすることである。/拡張がある危機的量に達すると、ひとつのプロセスが内破して拡張そのもののなかに融解し、逆のプロセスが発動するというこの可逆性が現れるのは、まさに芸術のなかにおいてである」(170頁)。

★『国家に抗するデモクラシー』はフランスの政治哲学者アバンスール(Miguel Abensour, 1939-2017)の主著のひとつ『La Démocratie contre l'État. Marx et le moment machiavélien』(Félin, 2012)の全訳。原書初版は1997年にPUFより刊行され、2004年には第二版がFélinより刊行されました。2012年に刊行されたのはそのポケット版で、「イタリア語版への序文」が追加されているとのことです。アバンスールは論文の翻訳があったものの単行本の訳書は今回が初めてで、待望の日本語訳と言えます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「第二版への序文」でアバンスールはこう書いています。

★「真のデモクラシーを問い続ける人々に対して、蜂起するデモクラシーという名を提示するべきではないだろうか。〔…〕この語がはっきりと示しているのは、デモクラシーの到来とは、国家を「本来的」かつ特権的な標的とする闘争の舞台の幕開けであり、さらにはデモクラシーが国家に、あるいは統一し、統合し、組織化する形態-国家に抗する「永遠の蜂起」の劇場でもある」(8~9頁)。「デモクラシーがその真の意味に到達するまでに人民にデモクラシーをいきわたらせ」ること(10頁)。「みなでひとつの存在からすべての〈一者〉への転換に対する抵抗〔…〕みなでひとつの存在の共同体をつねに脅かす、すべての〈一者〉へと画一化する形態へ、複数性とその存在論的条件を否定する形態への横すべりを予防し、食い止める〔…〕この抵抗」(14頁)。

★続いて発売済の注目新刊をいくつか列記します。

告発と誘惑――ジャン=ジャック・ルソー論』ジャン・スタロバンスキー著、浜名優美/井上櫻子訳、法政大学出版局、2019年12月、本体4,200円、四六判上製430頁、ISBN978-4-588-01106-1
フランクフルト学派のナチ・ドイツ秘密レポート』フランツ・ノイマン/ヘルベルト・マルクーゼ/オットー・キルヒハイマー著、ラファエレ・ラウダーニ編、野口雅弘訳、みすず書房、2019年12月、本体6,500円、A5判上製456頁、ISBN978-4-622-08857-8
イミタチオ・クリスティ――キリストにならいて』トマス・ア・ケンピス著、呉茂一/永野藤夫訳、講談社学術文庫、2019年12月、本体1,230円、336頁、ISBN978-4-06-518277-2
告白――三島由紀夫未公開インタビュー』三島由紀夫著、TBSヴィンテージクラシックス編、講談社文庫、2019年11月、本体620円、240頁、ISBN978-4-06-517385-5
photographers' gallery press no.14』photographers' gallery、2019年12月、本体2,500円、B5判並製360頁、ISBN978-4-907865-31-3

★『告発と誘惑』は帯文に曰く「文芸批評の名著『透明と障害』と対をなす、著者最晩年に刊行されたルソー論」。スイスの批評家スタロバンスキー(Jean Starobinski, 1920-2019)による『Accuser et séduire』(Gallimard, 2012)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭の謝辞によれば「本書収録のテクストはすでにさまざまなところで発表したものである。今回の出版にあたって、すべて見直しをし、時には大幅に修正を加えた」とのことです。2012年6月28日と日付が記されているエピローグ「ジャン=ジャック・ルソーに贈る花束」には次のような言葉があります。

★「体系として組み立てられる音楽と植物学以上に彼の心を占めた問題は、人間社会と社会を一つにまとめる手段の問題であっ」た(335頁)。「ルソーは、自分を取り巻く人間的な光景のなかに、花束の花々のように一つにまとまっているものの調和ではなく、恣意と濫用とを発見したのであった。同時に、彼は現実の敵または想像上の敵のなせる業とみなす自分の人格に敵対する体系を過度に心配した。その反面、彼は人間の共同体の幸福と生き残りの必要条件を定義したいと望んだ。相互性の要求をもとにして、各人=一人ひとりの自由と全員の意志を一致させるような政治システムを望んだのだ。彼の倫理学は、相互性と従属が矛盾しないことを望んでいた」(同頁)。「彼が口にしたもろもろの問題は現在もつねに、そして今では地球全体の規模で生じている。それらの問題にわたしたちは答えを出すことができるだろうか。あの大きな花束をつくることができるだろうか」(336頁)。

★なお法政大学出版局さんでは今月、新しい雑誌『対抗言論――反ヘイトのための交差路』を創刊されました。杉田俊介/櫻井信栄編、川村湊編集協力。年1回の刊行予定だそうです。創刊号の特集は「日本のマジョリティはいかにしてヘイトに向き合えるのか」「歴史認識とヘイト──排外主義なき日本は可能か」「移民・難民/女性/LGBT──共にあることの可能性」の3本立て。

★『フランクフルト学派のナチ・ドイツ秘密レポート』は『Secret Reports on Nazi Germany: The Frankfurt School Contribution to the War Effort』(Princeton University Press, 2013)の抄訳。凡例によれば、31本のレポートから15本を選んで訳出したもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。亡命知識人の3氏、政治学者フランツ・ノイマン(Franz Neumann, 1900-1954)、哲学者ヘルベルト・マルクーゼ(Herbert Marcuse, 1898-1979)、政治学者オットー・キルヒハイマー(Otto Kirchheimer, 1905-1965)の執筆によるドイツ分析の秘密文書です。編者の序論では3氏と諜報機関との関係に論及があり、興味深いです。

★『イミタチオ・クリスティ』は1975年に刊行された単行本の文庫化。巻頭に今道友信さんによる序文、巻末には用語解説と、呉茂一さんによるあとがきが配されています。奥付前の特記によれば「文庫化に際しては、本文中に使われている同じ語の表記に関し、漢字・仮名の不統一を適宜整理しました」とのこと。今道さんは序文で「西洋古典文学研究のわが国における第一人者であり、かねてキリスト教にも深い理解を寄せられる呉茂一先生とゲルマン的中世キリスト教文学の研究者永野藤夫教授の合作と言えば、本書の訳業としては望みうる最高の組み合わせにちがいない」と評されています。

★現在も入手可能な同書の文庫版既訳には、大沢章/呉茂一訳『キリストにならいて』(岩波文庫、1960年)があります。どちらにも呉さんが関わっておられるわけですが、岩波文庫版については大沢さんの解題には「この訳書は、最初に私が訳したものを、呉茂一先生が厳密に校閲され、訂正され、最も読みやすい文体に改められたものである」とあります。どちらの訳書にも呉さんが関わっているというのが興味深いです。なお、近年の文庫版では山内清海訳『キリストを生きる』(文芸社セレクション、2017年)がありますが、すでに絶版で異様な高額古書になっているのは非常に残念なことです。

★『告白』は2017年8月に刊行された単行本の文庫化。自決の9か月前、『豊饒の海』第3巻「暁の寺」脱稿日に、ジョン・ベスターを聞き手に45歳の三島由紀夫が語ったインタビュー(初出は「群像」2017年3月号に部分掲載)をメインに収め、評論「太陽と鉄」を併録。TBSテレビで長らく報道記者をつとめ、当該インタビューを発掘した小島英人氏によるあとがき「発見のこと――燦爛へ」が巻末に添えられています。平和憲法(特に憲法第9条第2項)を偽善だと断じる三島の肉声は、今なお私たちに問い掛けることをやめていないように思えます。

★『photographers' gallery press no.14』は2015年11月刊行の13号に続く、4年ぶりの新号。帯には「HUMAN - EXHIBITIONS - HISTORIES」と書かれており、ウェブサイトでの情報によれば「特集:「人類館」の写真を読む――新発見の写真3枚をもとに」とあります。1903年に大阪で開催された第五回内国勧業博覧会(勧業博)の場外施設「学術人類館」において撮影された写真が2017年に発見されており、本号では、当時の人種観に基づいた「人間の展示」=「帝国のショーケース」がいかなるものであったかが分析されます。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。

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# by urag | 2019-12-22 23:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 16日

月曜社2020年1月下旬新刊:ロドルフ・ガシェ『脱構築の力――来日講演と論文』

2020年1月22日取次搬入予定

脱構築の力――来日講演と論文
ロドルフ・ガシェ[著] 宮﨑裕助[編訳] 入江哲朗/串田純一/島田貴史/清水一浩[訳]
月曜社 本体:2,700円 46判並製272頁 ISBN: 978-4-86503-094-5 C0010

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

ド・マン、デリダ亡き後、脱構築思想の命運を担ってきた主導的哲学者の日本版オリジナル論集第2弾。2014年の来日講演を全収録し、デリダ追悼論文のほか、文芸批評における脱構築の理論的射程を初めて解き明かした記念碑的論文「批評としての脱構築」(1979年)を併載。ハイデガー、アーレント、デリダの思考との対決を経てその先へ。【叢書・エクリチュールの冒険、第15回配本】

【目次】はじめに|Ⅰ:デリダ以後の脱構築〔1:脱構築の力|2:批評としての脱構築|3:タイトルなしで〕|Ⅱ:判断(アーレント)と省察(ハイデガー)〔4:思考の風|5:〈なおも来たるべきもの〉を見張ること〕|訳者あとがき

ロドルフ・ガシェ(Rodolphe Gasché):1938年ルクセンブルク生。ニューヨーク州立大学バッファロー校比較文学科卓越教授。専門は哲学、比較文学、批評理論。著書の日本語訳に『いまだない世界を求めて』(吉国浩哉訳、月曜社、2012年)。

宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ):1974年生。新潟大学人文学部准教授。著書に『ジャック・デリダ』(岩波書店、2020年1月)など。

入江哲朗(いりえ・てつろう):1988年生。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程在籍。著書に『火星の旅人』(青土社、近刊)。

串田純一(くした・じゅんいち):1978年生。早稲田大学ほか非常勤講師。著書に『ハイデガーと生き物の問題』(法政大学出版局、2017年)。

島田貴史(しまだ・たかふみ):1986年生。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程在籍。共訳書にマーティン・ヘグルンド『ラディカル無神論』(法政大学出版局、2017年)。

清水一浩(しみず・かずひろ):1977年生。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程単位取得退学。訳書にマルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ、2018年)など。

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# by urag | 2019-12-16 16:41 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 12月 16日

月曜社2020年1月上旬新刊:秋元康隆『意志の倫理学――カントに学ぶ善への勇気』

◎2020年1月17日取次搬入予定

意志の倫理学――カントに学ぶ善への勇気
秋元康隆[著]
月曜社 本体:2,100円 46変型判並製296頁 ISBN: 978-4-86503-093-8 C0010

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

倫理的善への道は万人に開かれている。カントやその批判者たちから学びつつ、そこから我々が生きる上での糧が得られることを示す本書では、利己性を排除した純粋な意志のうちに善性を見出すことを論じる。意志することに、才能、運、結果といった偶発的要素は必要ない。己の信念を行動に移す勇気と決意さえあれば、確実に道徳的善をなすことができるのだ。論旨を随時図式化して理解に資するとともに、用語解説、読書案内などを添える。【シリーズ〈哲学への扉〉、第6回配本】

【目次】はじめに|用語集|第一部:カントの言葉を頼りに考えてみる|第二部:伝統的な巻と倫理学批判|第三部:カント倫理学への批判的考察|第四部:他の倫理学説との関係〔ミルの古典的功利主義|アリストテレスの倫理学説|ジョン・ロールズの正義論|ユルゲン・ハーバーマスの討議倫理学〕|第五部:カントの啓蒙思想と教育論|カントからの引用文献|読書案内|あとがき

秋元康隆(あきもと・やすたか)1978年生まれ。高校卒業後に一度会社勤めをしたものの、そこで人生の意味について真剣に考えるようになり、日本大学の哲学科に入学。同学大学院において修士課程修了後、トリア大学教授であり、カント協会会長であるBernd Dörflinger 教授のもとで博士論文を執筆。博士号取得後も講師として同学に残り、カント倫理学のゼミナールを担当し、現在に至る。主要業績として、Das Lügenproblem bei Kant(博士論文、2016年)、「カント倫理学におけるアリストテレス的アレテーの役割について」(『倫理学年報』64号所収、2015年)、「人の弱さと不純についてーーいかなる意味でそれは悪なのか」(『日本カント研究』20号所収、2019年)、等。ブログ yasutakaakimoto.com にて定期的に記事を配信中。

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