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ウラゲツ☆ブログ

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2021年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
◎2021年8月27日発売予定:江川隆男『残酷と無能力』本体3200円。
◎2021年8月5日発売予定:森山大道写真集『Nへの手紙』本体2500円。
◎2021年7月5日発売:小泉義之『災厄と性愛――小泉義之政治論集成Ⅰ』『闘争と統治――小泉義之政治論集成Ⅱ』本体各2600円。
◎2021年6月1日発売:アルベール・ロトマン『数理哲学論集』本体4,500円、シリーズ・古典転生第24回配本(本巻23)。
◎2021年5月7日発売:『表象15:配信の政治――ライヴとライフのメディア』本体2,000円。
◎2021年4月5日発売:柿木伸之『断絶からの歴史』本体3,600円。
◎2021年3月19日発売:ロドルフ・ガシェ『地理哲学』本体3,000円、叢書エクリチュールの冒険、第18回配本。
◎2021年3月5日発売:吉田裕『持たざる者たちの文学史』本体4,500円。
◎2021年3月5日発売:カトリーヌ・マラブー『真ん中の部屋』本体3,400円、シリーズ〈哲学への扉〉、第8回配本。
◎2021年3月3日発売:ロザリンド・E・クラウス『アヴァンギャルドのオリジナリティ』本体4,500円。
 大岩雄典氏書評「さらば、全てのアヴァン……」(「美術手帖」2021年6月号「BOOK」欄)
◎2020年12月9日発売:桑原甲子雄『物語昭和写真史』本体2,400円。
◎2020年11月12日発売:『多様体3 特集:詩作/思索』本体3,000円。
◎2020年11月6日発売:アルフォンス・ド・ヴァーレンス『マルティン・ハイデガーの哲学』本体4,500円、シリーズ・古典転生第23回配本(本巻22)。
 森一郎氏書評「フランスにおけるハイデガー受容史上の道標」(「週刊読書人」2021年2月19日号)
 黒岡佳柾氏書評「『存在と時間』の読解とフランス哲学界とハイデガー哲学との対話から、現代にも通じる独自の「ハイデガー論」が開陳される良書」(図書新聞4月10日号「特集:哲学と思想の波打際」)
◎2020年10月29日発売:ジェイソン・ワイス編『スティーヴ・レイシーとの対話』本体3,500円。
 塚原立志氏書評(「ミュージック・マガジン」2021年1月号「BOOK」欄)
 松尾史朗氏書評「自発的な求道者がゆむぐ驚異的に破綻のない言葉たち」(「レコード・コレクターズ」2021年2月号「INFO.STATION BOOKS」欄)
◎2020年10月2日発売:『多様体2 総特集:ジャン=リュック・ナンシー』本体3,200円。
◎2020年8月12日発売:ジャック・デリダ『スクリッブル 付:パトリック・トール「形象変化」』本体2,200円、叢書エクリチュールの冒険、第17回配本。
◎2020年6月23日発売:中井亜佐子『〈わたしたち〉の到来』本体2,000円、シリーズ〈哲学への扉〉、第7回配本。
 巽孝之氏短評(「図書新聞」2020年7月25日号、「2020年上半期読書アンケート」)
 山田雄三氏書評「だれも排除しない理想の「わたしたち」ーー沈黙を余儀なくされてきた女性たちが慎重に、しかし凛として語りはじめる」(「図書新聞」2020年10月31日号)
 片山亜紀氏書評「〈わたしたち〉は歴史のつくり手になれるのか」(『レイモンド・ウィリアムズ研究』第10号、レイモンド・ウィリアムズ研究会、2021年3月)

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎重版出来:
 2021年3月29日:クラウス『視覚的無意識』3刷
 2021年2月15日:ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー』2刷
 2021年2月17日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』4刷
 2021年5月19日:ボワ/クラウス『アンフォルム』4刷
 2021年6月07日:ブルワー=リットン『来るべき種族』2刷
◎主要品切書目:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象03』『表象04』『表象05』『表象07』『表象08』『表象09』『表象12』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ギルロイ『ブラック・アトランティック』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、平井浩編『ミクロコスモス 第1集』、バトラー『自分自身を説明すること』、ユンガー『パリ日記』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』『ガセネタの荒野』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『モノクローム』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、中平卓馬『都市 風景 図鑑』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、佐野方美写真集『SLASH』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

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# by urag | 2021-12-31 23:59 | ご挨拶 | Comments(21)
2021年 07月 25日

注目新刊:ユング『パウリの夢』創元社、ほか

注目新刊:ユング『パウリの夢』創元社、ほか_a0018105_02182114.jpg

パウリの夢――C・G・ユングの夢セミナー』C・G・ユング著、スザンヌ・ギーザ―編、河合俊雄監修、猪股剛/宮澤淳滋/鹿野友章/長堀加奈子訳、創元社、2021年7月、本体4,200円、A5判並製448頁、ISBN978-4-422-11765-2
魂のコード』ジェイムズ・ヒルマン著、鏡リュウジ訳、朝日新聞出版、2021年7月、本体2,300円、四六判並製416頁、ISBN978-4-02-251769-2
フロイト、性と愛について語る』フロイト著、中山元訳、光文社古典新訳文庫、2021年7月、本体1,040円、文庫判336頁、ISBN978-4-334-75447-1

★心理学関連の注目新刊が3点。『パウリの夢』は、近年ようやく公刊された講義録である『個性化過程の夢象徴』(Dream Symbols of the Individuation Process: Notes of C. G. Jung's Seminars on Wolfgang Pauli's Dreams, Princeton University Press, 2019)の訳書。監修者の河合さんによるまえがきによれば、本書は「ノーベル賞物理学賞受賞者であるヴォルフガング・パウリの受けた夢分析の内容について、ユングがアメリカで1936年と1937年に英語で行なった2回のセミナーの記録」(5頁)。「本書を読むと、ユングがいかに意識と無意識の対立、そしてそれの相補的関係を重視していたのかがわかる。そのためにはまず個としての存在になることが大切で、母親や父親からの分離、万人と同一化しないことなどが強調されている。それは教会、国家、科学と同一化しないこととしても指摘されている」(7頁)。

★また編者のギーザーによれば「ユングがこのセミナーで明らかにしようとしたのは、全体性という元型の表現であるマンダラが、現代人の心の中にどのようにして自発的に出現し、そして、この出現がどのように癒しの過程に反映されるのか、という点であった。ユングは、元型を人間が生まれながらに持つものであると定義している。そして元型は文化や環境によって条件づけられる経験上の素材が「書き込まれた」変化することのない意味の核を持っている、とされる。したがって、ユングにとってさまざまな文化や時代から、そしてとりわけ宗教的な象徴の領域から凡例を挙げることが、この仮説を根拠づけるために重要であった」(11頁)。

★「講義の中で、ユングが触れている主題は幅が広い。提示されたものは、夢の理論、精神疾患、個性化過程、退行、心理療法的治療の原理、男性の心理とアニマ・影・ペルソナの重要性、タイプ論、心的エネルギー論である。ユングは、ナチズム、共産主義、ファシズム、そして群集心理といった当時の政治的動向にも言及している。現代物理学、因果関係、そして現実性の本質に関する思索も披露している。宗教の領域からは、ミトラ教の秘儀、仏教、ヒンドゥー教、中国哲学、易経、クンダリニー・ヨーガ、身体と心に関する古代エジプトの概念を例に挙げて、自分の理論を描写してもいる。また、キリスト教の伝承からは、第一にカトリックの教義と三位一体の象徴に焦点を当て、そして新しく発見された外典福音書やグノーシス思想についても論じている。オーストラリア先住民のアボリジニの夢見の概念と、癒しをもたらす物体への信仰や、古代ギリシアのアポロン崇拝やディオニュソス崇拝、北欧神話、ピタゴラスとピタゴラス学説、そしてコーランのハディルについても言及している。文学の世界からは、ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』、ゲーテの『ファウスト』、マイリンクの『ゴーレム』に触れている。そして、イグナティウス・デ・ロヨラの霊操とゾシモスの幻視〔ヴィジョン〕についての議論も展開している。これらの主題とユングの後年の著作との関係は注に記してある」(12頁)。充実したセミナーであることが窺えます。

★『魂のコード』は『The Soul's Code: In Search of Character and Calling』(Random House, 1996)の全訳『魂のコード――心のとびらをひらく』(河出書房新社、1998年)の再刊。新装復刊にあたり、副題は削除され、河合俊雄さんによる新たな解説と、訳者の鏡さんによる新しい「訳者あとがき」が追加されています。訳文改訂については言及なし。河合さんは次のように本書を紹介されています。「本書は、ユング派の分析家で、特にこころの個人的なところを超えた側面を強調した元型的心理学を推進し、ユング以後で最も影響力のある心理学者・思想家James Hillman, 1926-2011man, 1926-2011〕のベストセラーの翻訳である」(393頁)。

★「ヒルマンが主張する「どんぐり理論」とは、自分の中には生まれつき一粒のどんぐりがある、つまり生まれ持った運命のようなもの、その人の守護霊のようなものがあるというものである。まさに個人を超えたものが、備わっているのである。それは遺伝によっても、育てられ方という環境によっても決まるものではない。〔…〕近年の心理学・心理療法は、遺伝や過去における体験によってパーソナリティーや様々な問題を説明する傾向が強いのに対して、ヒルマンはそれを徹底して論破していくのである。このあたりに、魂というものが何にも還元できず、自律性を持っているとする彼の心理学の真骨頂が見られる。〔…〕ヒルマンはまずグロウダウン、この世に着地することを強調するのが興味深い。さらには後半に悪の問題と平凡さ、つまり誰にもどんぐりはあるという話になっていって、一層議論は深まっていく」(394頁)。

★訳者の鏡さんは本書を「まさにあなたのための本だ」とはしがきに記しています。「巨大な樫の木がすでにたった一粒のどんぐりに内包されているように、あなたのなかには生まれながらの魂が存在するのだと本書は主張する。これがヒルマンが展開する「どんぐり理論」の中核だ。/あなたの「どんぐり」、あなたの「運命」、あなたの「性格」、あなたの「守護霊〔ダイモーン〕」」(11頁)。

★『フロイト、性と愛について語る』は、古典新訳文庫での中山元さんによるフロイト新訳の6点目。1908年から1925年に発表された論考7本を収録。「男性における対象選択の特殊な類型について ──「愛情生活の心理学」への寄与(1)」(1910年)、「性愛生活が多くの人によって貶められることについて ──「愛情生活の心理学」への寄与(2)」(1912年)、「処女性のタブー ──「愛情生活の心理学」への寄与(3)」(1918年)、「ある女性の同性愛の事例の心的な成因について」(1920年)、「エディプス・コンプレックスの崩壊」(1924年)、「解剖学的な性差の心的な帰結」(1925年)、「「文化的な」性道徳と現代人の神経質症」(1908年)。帯文に曰く「わたしたちはどのように他者を愛するようになるのか。また、どのような愛情関係と性愛関係を結んでいくのか。一人の人間における心的なメカニズムから、性に対して抑圧的な社会との関係にまで考察を進めた論文集」と。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。書名を列記いたします。

マン・レイと女性たち』巖谷國士監修・著、平凡社、2021年7月、本体2,500円、A5判上製272頁、ISBN978-4-582-20722-4
現代思想2021年8月号 特集=自由意志――脳と心をめぐるアポリア』青土社、2021年7月、本体1,600円、A5判並製256頁、ISBN978-4-7917-1417-9
テレビ・ドキュメンタリーの真髄――制作者16人の証言』小黒純/西村秀樹/辻一郎編著、藤原書店、2021年7月、本体3,800円、A5判上製552頁、ISBN978-4-86578-314-8
漢字とは何か――日本とモンゴルから見る』岡田英弘著、宮脇淳子編・序、樋口康一特別寄稿、藤原書店、2021年7月、本体3,200円、四六判上製392頁、ISBN978-4-86578-319-3
何があっても、君たちを守る――遺児作文集:「天国にいるおとうさま」から「がんばれ一本松」まで』玉井義臣/あしなが育英会編、藤原書店、2021年7月、本体1,600円、四六変判並製312頁、ISBN978-4-86578-303-2


# by urag | 2021-07-25 23:30 | Comments(0)
2021年 07月 23日

「図書新聞」に弊社4月刊、柿木伸之『断絶からの歴史』の書評

「図書新聞」2021年7月31日付3506号にて、弊社4月刊、柿木伸之『断絶からの歴史』に対する書評が掲載されました。高橋順一さんによる「歴史の闇のなかにまどろむ死者たちを目覚めさせよ――ベンヤミンの歴史哲学の根源」で、第8面から7面に及ぶ長文のものです。「今や日本のベンヤミン研究の最先頭に躍り出たといっても過言ではない柿木伸之の新著『断絶の歴史』〔…〕にさっそく目を通し、驚愕の念に襲われた。その内容があまりにも深く自分が直面している問題と共鳴しあっているからであった」。

# by urag | 2021-07-23 16:40 | Comments(0)
2021年 07月 20日

「図書新聞」の「2021年上半期読書アンケート」にて弊社既刊書2点が選ばれました

「図書新聞」2021年7月24日付3505号の「2021年上半期読書アンケート号」にて、弊社既刊書2点が4氏の選者によってそれぞれのベスト書目中の一冊として選ばれました。吉田裕『持たざる者たちの文学史』を、中村隆之さん、大野光明さん、新城郁夫さんに挙げていただき、柿木伸之『断絶からの歴史』を、佐藤泉さんに選んでいただきました。ありがとうございました。


# by urag | 2021-07-20 15:08 | Comments(0)
2021年 07月 18日

注目新刊:ルヴェルディ『魂の不滅なる白い砂漠』幻戯書房、ほか

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セガレン著作集(2)ゴーガンを讃えて/異教の思考』ヴィクトル・セガレン著、丹治恆次郎/木下誠訳、水声社、2021年6月、本体10,000円、A5判並製函入622頁、ISBN978-4-8010-0576-1
思考する芸術――非美学への手引き』アラン・バディウ著、坂口周輔訳、水声社、2021年6月、本体3,200円、四六判上製296頁、ISBN978-4-8010-0578-5

★水声社さんの『セガレン著作集』全8巻の最終回配本の2点のうち、先日、第8巻『煉瓦と瓦』に言及しましたが、もう1点、第2巻『ゴーガンを讃えて/異教の思考』をようやく購入できました。収録作は本編7本、付録3本、書簡28通。巻末解説に曰く「ポール・ゴーガンとマオリ民族についてセガレンが書いたテクストをまとめたもの」。同解説での紹介に沿って収録作を順に見ていくと、「最後の舞台装置の中のゴーガン」(1904年)がヒヴァ-オア島のゴーガンの家屋への訪問記、「異教の思考」(1906年)が架空のマオリ人とヨーロッパ人の対話によるマオリ神話論、「死せる声――マオリの音楽」(1907年)がマオリ音楽論、「快楽の師」(1907~08年)がゴーガンを主人公とする中編小説、「火の歩み」(1908年)は老マオリ人が自らの火渡りを語る短編小説、「ゴーガンを讃えて」(1918年)はゴーガンの生涯についての紹介と考察、「島の日記」(1903~05年)はセガレンのポリネシア旅行記です。付録の「アルカイスムの精神」(1916年)はゴーガン論、「一つの序文のための雛型〔マケット〕」(1916年)はゴーガン『ノア・ノア』完全版のための序文、「罹災者の方へ」(1903年)はトゥアモトゥ諸島のサイクロン罹災者救援記録、とのことです。1903年7月から1918年11月までに書かれた書簡28通は資料として併載されています。さらに、渡辺諒さんによる「セガレン伝Ⅰ タヒティまで(1878年1月〜1902年12月)」も収載。ちなみに渡辺さんによるこの伝記は、同著作集の第2巻、第4巻『天子』、第6巻『碑/頌/チベット』、第8巻『煉瓦と瓦』に掲載されています。第8巻のは「セガレン伝Ⅳ 中国からフランスへ(1917年1月~1919年5月)」でした。

★『思考する芸術』は『Petit manuel d'inesthétique』(Seuil, 1998)の全訳。全10章で構成されています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻頭には著者自身による以下の短文が訳出されています。「「非美学」という言葉で私が意味するのは、哲学と芸術とのある関係である。それは、芸術それ自体が諸真理の生産者であると想起するのであって、哲学のために芸術を一つの対象にしようとは少しも望んでいない。美学的思弁に抗して、非美学が記述するのは、いくつかの芸術作品の自立した実存によって生み出される厳密に哲学内的な諸効果である」。訳者あとがきに曰く「本書は〔…バディウ自身の著書〕『世紀』〔原著2005年刊行、訳書は2008年に藤原書店より刊行〕へとつながる20世紀論であり、マラルメから始まる20世紀芸術を対象とする」(286頁)。「バディウの扱う「世紀」は、厳密に言えば、第一次世界大戦が勃発した1914年から、ソ連解体と冷戦終結の年である1989年までの75年間を指すのだが、バディウは1890年から1914年までの約20年間を「世紀」の「序幕」として捉え、〔…その〕「序幕」に「現代のエクリチュール」の試みとして位置するのが1897年に発表されたマラルメによる「賽の一振り」なのである」(285~286頁)。「本書が出版された年に注意するなら、この著作全体が一つのマラルメ論なのではないかと考えさせられる」(289頁)。「実際、本書の至るところにマラルメが登場し、最終章〔第10章「半獣神の哲学」〕がマラルメ論であることからも、本書がマラルメ没後百周年に対するバディウなりの貢献であると考えることもあながち的外れではあるまい」(同頁)。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。うち、近日発売の2点について特記しておきます。

魂の不滅なる白い砂漠――詩と詩論』ピエール・ルヴェルディ著、平林通洋/山口孝行訳、幻戯書房、2021年7月、本体3,200円、四六変形判ソフト上製264頁、ISBN978-4-86488-227-9
Humankind 希望の歴史――人類が善き未来をつくるための18章(上)』ルトガー・ブレグマン著、野中香方子訳、文藝春秋、2021年7月、本体1,800円、四六判上製272頁、ISBN978-4-16-391407-7
Humankind 希望の歴史――人類が善き未来をつくるための18章(下)』ルトガー・ブレグマン著、野中香方子訳、文藝春秋、2021年7月、本体1,800円、四六判上製272頁、ISBN978-4-16-391408-4
聖徳太子と蘇我入鹿』海音寺潮五郎著、作品社、2021年7月、本体1,900円、46判上製264頁、ISBN978-4-86182-856-0
伊藤整日記(5)1961-1962年』伊藤整著、伊藤礼編、平凡社、2021年7月、本体4,200円、A5判上製函入330頁、ISBN978-4-582-36535-1
文藝 2021年秋季号』河出書房新社、2021年7月、本体1,380円、A5判並製568頁、ISBN978-4-309-98034-8


★『魂の不滅なる白い砂漠』はまもなく発売となる、「ルリユール叢書」第16回配本(23点目)。訳者あとがきに曰く「本書はピエール・ルヴェルディ〔Pierre Reverdy, 1889–1960〕の1918年から1960年にわたる紙業から、いくつかの詩作品と詩論を摘み取ったアンソロジーである」。書名は収録された散文詩の題名から採られています。「シュルレアリスムの先駆的存在と知らしめた〈イマージュ〉から孤高の存在へと歩を進めた詩人ルヴェルディ――初期から晩年に至る30篇の「詩」、本邦初訳「詩と呼ばれるこの情動」他「詩論」4篇、E・グリッサンのルヴェルディ論を付したルヴェルディ詩学の核心に迫る精選作品集」(帯文より)。グリッサンの論考「純粋な風景」は、彼の詩人論『詩的意図』(1966年)から訳出されたもの。 

★詩論「詩と呼ばれるこの情動」(1950年)より印象的な言葉を引きます。「詩人はコミュニケーションの種類をはっきりさせなければなりません。つまり、詩人は自身について何を伝えようとするのか、他者のうちの何に到達しようとするのかをはっきりさせなければなりません。楽しませるのが肝要なのでしょうか。そんなことではまったくないのです。心を動かすことこそが肝要なのです。まさにそれは岩から泉を湧出させることなのです」(140頁)。これはラジオ番組での講演が元になっているとのことです。

★『Humankind 希望の歴史』はまもなく発売。オランダ出身の歴史家でジャーナリストのルトガー・ブレグマン(Rutger Bregman, 1988-)による、『隷属なき道――AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(野中香方子訳、文藝春秋、2017年;原著『Utopia for Realist』2014年)に続く訳書第2弾。『Humankind: A Hopeful History』(Little, Brown and Company, 2020)の訳書。悲観的であったり冷笑的であるのが現実主義なのではなく、他者を信頼し、善きことを行ない、寛大さを保つことこそが現実主義なのだと教える、新しい人間観を提示する書。ほとんどの人間は本質的にかなり善良であり、なおかつ互いに対して善良でありたいと思っている、と著者は様々な歴史的事実をひもとき分析しつつ例証します。「人間の善性を擁護するのは、時の権力者に立ち向かうことを意味する」(上巻43頁)と著者は書きます。

★本書では人間の暗い側面にも光をあてています。例えば次の言葉は日本の読者の胸に刺さる痛い指摘ではないでしょうか。「現代の民主主義社会において、恥を知らないことは、その人にとってプラスに働く。羞恥心に邪魔されない政治家は、他人があえてしないようなことを堂々と行うことができる。〔…〕無恥な人々は無欲ではない。しかも無恥な政治家の図々しい振る舞いは、例外的で不合理なものにスポットライトをあてる現代のメディアにとって、格好のネタになる。/このタイプの世界でトップに立つのは、友好的で共感力のあるリーダーではなく、正反対の人間、すなわち、恥を知らないせいで生き残った人間なのだ」(下巻59~60頁)。


# by urag | 2021-07-18 23:30 | Comments(0)