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2021年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
◎2021年3月3日発売予定:ロザリンド・E・クラウス『アヴァンギャルドのオリジナリティ』本体4,500円。
◎2020年12月9日発売:桑原甲子雄『物語昭和写真史』本体2,400円。
◎2020年11月6日発売:アルフォンス・ド・ヴァーレンス『マルティン・ハイデガーの哲学』本体4,500円、シリーズ・古典転生第23回配本(本巻22)。
◎2020年10月29日発売:ジェイソン・ワイス編『スティーヴ・レイシーとの対話』本体3,500円。
 塚原立志氏書評(「ミュージック・マガジン」2021年1月号「BOOK」欄)
 松尾史朗氏書評「自発的な求道者がゆむぐ驚異的に破綻のない言葉たち」(「レコード・コレクターズ」2021年2月号「INFO.STATION BOOKS」欄)
◎2020年10月2日発売:『多様体2 総特集:ジャン=リュック・ナンシー』本体3,200円。
◎2020年8月12日発売:ジャック・デリダ『スクリッブル 付:パトリック・トール「形象変化」』本体2,200円、叢書エクリチュールの冒険、第17回配本。
◎2020年6月23日発売:中井亜佐子『〈わたしたち〉の到来』本体2,000円、シリーズ〈哲学への扉〉、第7回配本。
 巽孝之氏短評(「図書新聞」2020年7月25日号、「2020年上半期読書アンケート」)
 山田雄三氏書評「だれも排除しない理想の「わたしたち」ーー沈黙を余儀なくされてきた女性たちが慎重に、しかし凛として語りはじめる」(「図書新聞」2020年10月31日号)
◎2020年4月30日発売:クレア・ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー』本体2,000円。
◎2020年4月24日発売:『表象14:アポカリプスの表象/表象のアポカリプス』本体2,000円。
◎2020年3月20日発売:井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』本体3,500円、シリーズ・古典転生、第22回配本(本巻21)。
 古永真一氏書評「バタイユ流芸術擁護論をさらに推し進める――ヘーゲル的な価値観に抗するバタイユの野心的な世界観をあらためて浮き彫りに」(「図書新聞」2020年7月11日号、特集「ポストコロナ時代を透視する思想」欄)
 安原伸一朗氏書評「長きにわたる思索を俯瞰する試み――初期の『ドキュマン』から最晩年の『エロスの涙』まで」(「週刊読書人」2020年8月14日号)
◎2020年3月17日発売:エルンスト・ユンガー『エウメスヴィル』本体3,500円、叢書エクリチュールの冒険、第16回配本。
 前田良三氏書評「文明社会の生態系を知り尽くした老いた「マタギ」の手になる「SF小説」――語りのなかに夥しい数の歴史上の人名や出来事への言及を織り込む」(「図書新聞」2020年06月20日号)
◎2020年3月2日発売:土橋茂樹編『存在論の再検討』本体4,500円、シリーズ・古典転生、第21回配本(本巻20)。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎重版出来:
 2021年2月15日:ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー』2刷
 2021年2月17日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』4刷
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷、ブルワー=リットン『来るべき種族』。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象03』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』『表象12』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、バトラー『自分自身を説明すること』、クラウス+ボワ『アンフォルム』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』『ガセネタの荒野』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『モノクローム』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、中平卓馬『都市 風景 図鑑』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、『猪瀬光全作品』、佐野方美写真集『SLASH』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください。 
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# by urag | 2021-12-31 23:59 | ご挨拶 | Comments(21)
2021年 04月 12日

月曜社2021年5月中旬新刊:アルベール・ロトマン『数理哲学論集――イデア・実在・弁証法』

月曜社新刊案内【2021年5月:人文書1点】

2021年4月26日受注締切
2021年5月12日取次搬入予定 *人文・哲学思想

数理哲学論集 イデア・実在・弁証法
アルベール・ロトマン[著]近藤和敬/中村大介/原田正樹/米虫正巳[訳・解説]
月曜社 本体4,500円 A5判上製192頁 ISBN978-4-86503-110-2 C1010

若くしてナチスの銃弾に倒れたロトマン(1908-1944)は、カヴァイエス(1903-1944)と同様に、戦後のフランスにおける独創的な数理哲学の豊かな源泉であり続けてきた。博士副論文『数理諸科学の現代的展開における統一性について』(1937年)、『数学の弁証法的構造について:新たな探求』(1939年)、および死後に刊行された遺稿「数学と物理学における対称性と破れた対称性」「時間の問題」(1946年)を収録し、ドゥルーズやバディウにも多大なる影響を与えてきた主要論考を集成する。日本初の翻訳選集、解説論考4本併載。シリーズ・古典転生第24回配本、本巻23。

アルベール・ロトマン(Albert Lautman, 1908–1944):フランスの数理哲学者。大学教員資格試験に合格した翌年の1931年9月から2年間訪日し、大阪で教鞭をとる。フランス帰国後は各地のリセで教えつつ研究を進め、1937年博士号を取得。第2次大戦で対独戦争に参加し、動員解除後は対独レジスタンス活動に身を投じる。1944年8月ジロンド県スージュ収容所で銃殺された(享年36)。

近藤和敬(こんどう・かずのり, 1979-)鹿児島大学法文教育学域法文学系准教授。著書:『ドゥルーズとガタリの『哲学とは何か』を精読する─〈内在〉の哲学試論』(講談社選書メチエ、2020年)、『〈内在〉の哲学へ─ドゥルーズ、カヴァイエス、スピノザ』(青土社、2019年)、『カヴァイエス研究』(月曜社、2011年)。訳書:ジャン・カヴァイエス『論理学と学知の理論について』(月曜社、2013年)。

中村大介(なかむら・だいすけ、1976-)豊橋技術科学大学総合教育院准教授。著書:『数理と哲学─カヴァイエスとエピステモロジーの系譜』(青土社、2021年)。

原田雅樹(はらだ・まさき、1967-)関西学院大学文学部教授。共著:『エピステモロジー』(金森修編、慶應義塾大学出版会、2013年)。

米虫正巳(こめむし・まさみ, 1967-)関西学院大学文学部教授。著書:『自然の哲学史』(講談社選書メチエ、2021年)。

* * *

◆3月重版1点
3月29日3刷出来:クラウス『視覚的無意識』

◆3月新刊3点
3月3日搬入発売:クラウス『アヴァンギャルドのオリジナリティ
3月5日搬入発売:マラブー『真ん中の部屋
3月5日搬入発売:吉田裕『持たざる者たちの文学史
3月19日搬入発売:ガシェ『地理哲学

◆4月新刊3点
4月5日搬入発売:柿木伸之『断絶からの歴史
4月15日以降出荷開始予定:『森山大道写真集成(5)1960-1982』※近日情報公開、委託配本しません

◆5月新刊
5月7日搬入発売予定:『表象15:配信の政治――ライヴとライフのメディア』

* * *


# by urag | 2021-04-12 12:40 | Comments(0)
2021年 04月 11日

注目新刊:『情報の歴史21』編集工学研究所

情報の歴史21』松岡正剛監修、編集工学研究所&イシス編集学校構成、編集工学研究所、2021年4月、本体6,800円、B5変型判並製512頁、ISBN978-4-9911639-0-6

★「日本の電話100年」を記念して1990年にNTT出版から刊行された『情報の歴史――象形文字から人工知能まで』。1996年に増補版が発行され、絶版後は異常とも言える高値で売られることもありましたが、昨年9月に『情報の歴史2020』として増補再刊されることが編集工学研究所から正式告知されて受注開始となりました。その折は「今冬発売」とのことでしたが、その後『情報の歴史21』と書名変更され、ついに2021年4月より発売となりました。オールカラーでこの値段は安いです。

★初版では7000万年前から1988年までの地球史の各時代の諸相を5つのテーマごとに分け、同時代に東西で何が起こったのか、グローバルとローカルな諸事象を並列させ見開きで一望させる視点で作成されており、画期的な年表として話題を集めました。96年の増補版では1989年から1995年までの年表を追加。そして初版刊行から30年を経て、1996年から2020年まで4半世紀分の年表が加わった最新版『情報の歴史21』が誕生しました。

★20世紀では5つのテーマは「世界政治動向」「技術・資本・産業」「科学・思想・研究」「芸術」「文芸・メディア・流行」に立て分けられ、『21』が新たに扱う96年以降は「世界政治動向」「経済・産業・金融」「科学・技術」「思想・社会・流行」「芸術・文芸・文化」に分けられています。読者は自由にこの年表に個人史や特定のテーマを盛り込んで、新しい年表を作ることもできるでしょう。

★企画編集を担当された編集工学研究所の吉村堅樹さんによる巻末の「『情報の歴史21』の編集構成を了えて」によれば、「継続するプロジェクトとしてとりくみつづける」とのことです。素晴らしい計画だと思います。初版、増補版、と関わられてきたデザイナーの戸田ツトムさんは2020年7月にお亡くなりになっています。今回の最新版『21』は年表のフォーマットは踏襲されているものの、カヴァーやオビは若い世代が担当されており、戸田さんのテイストとは異なる印象があります。

★『情報の歴史21』は年長の世代にとっては遅れてきた書物、最後の書物、のように映るかもしれません。しかし人間が血肉を構成要素とする有限の有機体である以上、紙とインクの肉体をもった紙媒体との相性は悪くはないでしょう。電子機器や再生ソフト、電源が不要である紙媒体のアーカイヴが、拡張されつつある人体の意識世界とどう再接続を果たしうるか、読み書きと学習の霊的実践が問い直されています。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

伊藤整日記 2 ――1955-1956年』伊藤整著、伊藤礼編、平凡社、2021年4月、本体4,200円、A5判上製300頁、ISBN978-4-582-36532-0
文藝』2021年夏季号、河出書房新社、2021年4月、本体1,350円、A5判並製424頁、ISBN978-4-309-98029-4
知のトポス』第16号、新潟大学大学院現代社会文化研究科/同人文学部哲学・人間学研究会、2021年3月、非売品、A5判並製196頁、ISSN1880-0005
アンドレ・バザン研究』第5号、アンドレ・バザン研究会、2021年3月、非売品、A5判並製140頁、ISSN2432-9002

★『伊藤整日記 2』は全8巻の第2回配本。1955年から1956年にかけての日記を収録。帯文に曰く「第2巻は、「感傷夫人」「若い詩人の肖像」を終え、「氾濫」を始め、『ユリシーズ』改訳、『文壇史』継続、全集を出し、文学全集の編集に参加、対談、賞の選考、講演旅行、税務署との交渉に飛び回る」と。執筆に追われ続ける日々は凄絶の一言。熱心な読者に付きまとわれたりして、なかなかのホラー要素もあります。

★『文藝』2021年夏季号の第1特集は「もふもふもふもふ」。注目したいのは藤原辰史さんの論考「表皮の脱領域的考察」。曰く「中身を知ろうとしなくても、表皮に刻まれた情報でなんとか、その内実を知ろうという無謀な試みを、私たちは無謀だと思わずに続けている。/近代社会がますます視覚優位にの状況を形成する中で、表皮の意味はますます重くなっている。表皮の情報を収集し、分析することが、ますます重要になっていくだろう」(111頁上段)。また曰く「つまり、表皮とは、外界と内界のあわいにあって、物質を交換したり、自分を殺したり、増殖させたりして、均衡を保ちつつ、他の生きものを生かす存在である、ということだ」(112頁上段)。

★山本貴光さんの「季評 文態百版」で、弊誌『多様体』第3号(特集:詩作/思索)に言及していただいたことに喜びを覚えました。扱いにくい雑誌だと思うので、余計に、感謝とともに。

★『知のトポス』第16号は、ジャン=マリ・ベサード、ヘンリーステーテンの論考2本と、ゲルハルト・クリューガー、ヨハネス・ローマンの翻訳連載2本を掲載。学術翻訳に毎号尽力されており、貴重です。いずれウェブ上ですべて無料で読めるようになるはずです。

★『アンドレ・バザン研究』第5号はメイン特集が「不純なバザンのために」、小特集は「バザンの収容所映画論」。バザンのテクストの翻訳は、アニメーション映画論やテレビ論を含め、全部で10本。堀潤之さんによる編集後記によれば、同誌は次号で完結予定。

注目新刊:『情報の歴史21』編集工学研究所_a0018105_22524114.jpg


# by urag | 2021-04-11 22:23 | Comments(0)
2021年 04月 05日

本日取次搬入:柿木伸之『断絶からの歴史――ベンヤミンの歴史哲学』

本日、柿木伸之『断絶からの歴史――ベンヤミンの歴史哲学』を取次搬入いたしました。書店さんでの店頭発売は、4月7日以降、順次開始となります。どうぞよろしくお願いいたします。どの書店さんでの扱いがあるかは当ツイートへの返信などで、地域をご指定のうえ、お気軽にお問い合わせください。

# by urag | 2021-04-05 10:00 | Comments(0)
2021年 04月 04日

出版業界の4月からの変化と、注目新刊:ミーオドヴニク『Liquid 液体』インターシフト、ほか

★新刊が続々と生み出される以上、取り上げないわけにはいかない。しかし「コロナ以後」の出版業界の変化を受け止めるにつけ、新刊紹介だけに留まるわけにはいかなくなっているのは明白です。ここしばらく、出版業界についてちゃんと意見を言う必要性を感じています。まず今回はその序文となるべき部分を手短かに書きたい。

★コロナ禍により大書店への訪問機会が削られている現在、新刊については専門書だけでなく文庫や新書すら買いにくくなっている。もとより中小書店への配本が少ないうえに、再入荷もしない。取次が近年喧伝するマーケットインというのは「書店が欲しい本を欲しいだけ入手できる」施策を指すわけだが、版元がパターン配本を減らし、取次が返品を減らすために書店に責任転嫁している側面がかいま見えることは否めない。書店があらゆる客層に開かれた場所である以上、新刊をえり好みするわけにはいかない。しかし版元のパターン配本に頼るのはもう限界だろう。売れる本は(あいかわらず)売上の大きな書店に流れる。

★「マーケットイン」を肯定的に捉えるためには、そうしたヒエラルキーの支配下から脱出する必要があるのではないか。新刊を最重点化する時代は過ぎたと言っていい。新刊だけが新鮮な商品なのではない。既刊の山々は発掘するに足る宝の鉱脈である。これは実は図書館にとっては当たり前の話だったはずなのだ。業界三者は委託制度の便利さに縛られてしまって、新刊重視のその先へ踏み出せずにいるのではないか。価値観が大きく変わらねばならないだろう。

★「マーケットイン」を謳いつつ、実際には出版社が報奨金や分戻しをちらつかせて自社商品のゴリ押しをするのは旧態依然の「プロダクトアウト」である。そうした企画モノを取次が傘下の子会社書店に次々と押しつけるのはほとんど「書店殺し」「書店員殺し」に等しい。商売だから何でも我慢しなければならないというのは、そもそもブラックすぎやしないか。確かに商売は厳しい。しかし売上が至上の目的であるならば、薄利商材である紙の書籍はすでに「オワコン」でしかなくなってしまう。デジタル・トランスフォーメーションで何とかなる話ではなく、人間と書物の関係性が問い直されなければならない。

★出版社は直販を強化する必要がある。そして書店は出版社の送品の受け皿から脱して、自身でコンテンツを制作する器となる冒険へ踏み出していいはずである。お互いに苦労を押しつけ合うのはやめにして、ちゃんとお互いの良さを知っている者同士のみが、売ったり買ったりする関係性を立て直せるだろう。私たちは「今まで通りの便利さ」からいったん解放される必要があるのではないか。可能か不可能かではなく、ゼロから出版流通・出版販売を考え直す共同作業が必要なのではないだろうか。

★出版業界はこの4月からいくつかの変化を余儀なくされている。1)総額表示義務化、2)書籍運賃協力金徴収開始、3)新刊配本「中4日」体制開始。まず1については痛税感・重税感をなんとか誤魔化したい財務省の下らない愚策であり、ビュロークラシーから脱することのできない日本政治の馬鹿馬鹿しさがよく表れている。消費税総額表示義務化がどのようなかたちで「既刊書の絶版化」を生んでいくかはおそらく出版社によって事情は異なるだろう。しかし消費税導入時と同様に、絶版化を回避しえない書目などないと断言するのは無理だ。

★2と3は物流規模を維持できず、北海道や関西以西には運ぶだけで赤字になっている出版流通の現実から、取次の連合体である日本出版取次協会(通称取協)が推進しつつあるものだ。まずはトーハンが、書籍1冊を運ぶにあたり本の大きさ別に3~8円を出版社から一律徴収すべく大半の版元に昨秋から今春にかけて打診した。扱い量の多い版元には何度か訪問したものの、少ない版元には書類を送るだけで済ませようとした。正味も条件も異なる版元から一律に徴収するというのは役人じみた発想で、説得力に乏しい。話し合いの機会も一切なく、結局、売上下位版元からの強い反発をまともに食らうかたちとなっている。

★察しの良い方はもうお気づきだろうが、この書籍運賃協力金はバラマキ配本を抑制しうる。つまり、版元の都合でどうしても売りたい本を除いて、書店への送品はますます絞られることになるだろう。書店は版元に対する、自社の販売力アピールが求められる。紀伊國屋書店がとある版元の新刊を直取引で大量に買い付け、それを他書店に配布するという二次卸は今後も起こりうる。

★新刊配本「中4日」体制開始は、あまり書店には知られていないかもしれない。新刊の見本出しから配本までの準備期間が取次の要請により「中4日」となった。これまでは「中2~3日」だったが、それが不可能になった。これを取次は「見本日の前倒し」と呼んだわけだが、実際には配本までいっそう時間が掛かるようになっただけだ。実はこの事態には少し不穏な要素がある。

★アマゾンと直取引している版元にとっては、取次経由の書店への着店がアマゾンよりも計算上では10日前後遅れる可能性がある。これを取次は書店に説明していない。例えば月曜日に見本出しをしたとすると、中4日では土日を挟んで翌週月曜日の搬入となり、そこからさらに平均中2日をかけて書店に届く。このあいだに祝日や連休などを挟もうものなら、着店はもっと遅れる。しかし、アマゾンには直取引の場合、見本日の当日には搬入できる。発売開始に1週間以上の開きがあれば、ベストセラーなら、アマゾンが売り切ってしまえる長さである。

★こうしたリスクについてある日、某取次の書籍仕入部のヴェテランに問いただしたが、答えは「そんなひどいこと、版元さんはしないでしょ」とのことだった。絶句である。なんという暢気。ぬるいことを承知で言えば確かに、今までの商習慣を大切にし、リアル書店とネット書店との着店日数差を拡げたくない版元はおそらくそうはしないだろう。しかし現時点ですら、発売日協定のない大半の単行本については、たとえ同日の取次搬入でもその先は、巨大通販サイトの発売開始の方がリアル書店より早いのである。

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出版業界の4月からの変化と、注目新刊:ミーオドヴニク『Liquid 液体』インターシフト、ほか_a0018105_03314280.jpg

★新刊紹介は今まで以上に簡潔にしないと時間が足りない。まだどうしたらいいか分からないけれども、まず最近の注目新刊から並べてみます。

日本古典と感染症――日本古典と感染症』ロバート・キャンベル編著、角川ソフィア文庫、2021年3月、本体920円、文庫判336頁、ISBN978-4-04-109942-1
保元物語・平治物語』日下力編、角川ソフィア文庫、2021年3月、本体1,100円、文庫判 368頁、ISBN978-4-04-400493-4
『広告 Vol.415 特集:流通』博報堂、2021年2月、本体3,000円、245x168mm並製472頁、雑誌89619-04
フォン・ノイマンの哲学――人間のフリをした悪魔』高橋昌一郎著、講談社現代新書、2021年2月、本体940円、新書判272頁、ISBN978-4-06-522440-3

★歴史への眼差しは現在と未来を耕す。古典の掘り起こしはいつでも重要だし、角川ソフィア文庫の新刊はそのことを教えてくれる。「保元物語」にある鬼島は背丈3メートルの異人たちが住む島で、八丈島から東方へ一昼夜、船を走らせた先に位置する。伝説とはいえ、どう読み解くべきか。『広告』は3号目でようやく買いやすくなった感じ。今回も造本が挑戦的で、段ボール箱を開けるとそのまま本の表紙がくっついている。やりたい放題で楽しい。リニューアル後、特集は価値、著作、流通と来て、次号は「虚実」だという。さすがだ。

★まもなく発売となる新刊書を列記します。

Liquid 液体――この素晴らしく、不思議で、危ないもの』マーク・ミーオドヴニク著、松井信彦訳、インターシフト発行、合同出版発売、2021年4月、本体2,200円、四六判並製288頁、ISBN978-4-7726-9572-5
『民俗地名語彙事典』松永美吉著、日本地名研究所編、ちくま学芸文庫、2021年4月、本体2,200円、判800頁、ISBN978-4-480-09930-3
『近代とホロコースト〔完全版〕』ジグムント・バウマン著、森田典正訳、ちくま学芸文庫、2021年4月、本体1,600円、文庫判512頁、ISBN978-4-480-51021-1
『世界市場の形成』松井透著、ちくま学芸文庫、2021年4月、本体1,600円、文庫判496頁、ISBN978-4-480-51041-9
『フィヒテ入門講義』ヴィルヘルム・G・ヤコプス著、鈴木崇夫/パトリック・グリューネベルク訳、ちくま学芸文庫、2021年4月、本体1,320円、文庫判272頁、SBN978-4-480-51045-7
『近代日本思想選 福沢諭吉』福沢諭吉著、宇野重規編、ちくま学芸文庫、2021年4月、本体1,760円、文庫判592頁、ISBN978-4-480-51046-4
『フォン・ノイマンの生涯』ノーマン・マクレイ著、渡辺正/芦田みどり訳、ちくま学芸文庫、2021年4月、本体1,870円、文庫判576頁、ISBN978-4-480-51043-3

★インターシフトさんの新刊はロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ教授による2018年の著書を訳したもの。この版元さんのポピュラーサイエンス本は毎回本当に楽しく、ハズレがない。ちくま学芸文庫の4月新刊は6点。うち文庫オリジナルは『フィヒテ入門講義』と『近代日本思想選 福沢諭吉』の2点。ヤコプス(Wilhelm G. Jacobs, 1935-)はドイツにおけるフィヒテおよびシェリング研究の大家による2014年の本の訳書。もとになっているのはフィヒテ生誕250年の2012年に行われた大学講義。バウマン『近代とホロコースト』が完全版とあるのは、旧版である大月書店版を全面的に改訂し、原著2000年版へのあとがき「記憶する義務 しかし何を」を新たに訳出しているため。『民俗地名語彙事典』は三一書房版『日本民俗文化資料集成』第13巻および第14巻を合本文庫化したもの。『フォン・ノイマンの生涯』は先に掲げた『フォン・ノイマンの哲学』と一緒にひもときたい一冊。

★また最近では以下の新刊との出会いがありました。

ライプニッツの正義論』酒井潔著、法政大学出版局、2021年3月、本体4,300円、A5判上製390頁、ISBN978-4-588-15115-6
ニーチェ――外なき内を生きる思想』梅田孝太著、法政大学出版局、2021年4月、本体3,700円、A5判上製328頁、ISBN978-4-588-15117-0
ゲニウスロキ』平野淳子著、平凡社、2021年3月、本体3,000円、A4変型判並製100頁、ISBN978-4-582-27837-8
アワビと古代国家――『延喜式』にみる食材の生産と管理』清武雄二著、平凡社、2021年3月、本体1,000円、A5判並製104頁、ISBN978-4-582-36464-4
春日懐紙の書誌学』田中大士著、平凡社、2021年3月、本体1,000円、A5判並製84頁、ISBN978-4-582-36465-1
近代日本の農学研究機関』山本悠三著、藤原書店、2021年3月、本体4,500円、A5上製280頁、ISBN978-4-865-78305-6
政治の倫理化』後藤新平著、後藤新平研究会編、新保祐司解説、藤原書店、2021年3月、本体2,200円、B6変型判上製280頁+口絵4頁、ISBN978-4-86578-308-7
政治家の責任――政治・官僚・メディアを考える』老川祥一著、藤原書店、2021年3月、本体2,600円、四六上製288頁、ISBN978-4-86578-304-9
「アイヌ新聞」記者 高橋真――反骨孤高の新聞人』合田一道著、藤原書店、2021年3月、本体2,700円、四六判上製304頁、ISBN978-4-86578-306-3

★法政大学出版局さんの3月新刊より2点。うち、『ライプニッツの正義論』は『ライプニッツ読本』や第二期『ライプニッツ著作集』を手掛けた酒井さんによる論文集。平凡社さんの3月新刊より3点。『ゲニウスロキ』は新国立競技場を題材にした表題作と「武蔵野図」シリーズを収録した、写真とミクストメディアの作品集。ただならぬ美しさに惹き込まれるばかり。藤原書店さんの3月新刊は4点。『「アイヌ新聞」記者 高橋真』は初の評伝とのこと。高橋真(たかはし・まこと, 1920-1976)は北海道幕別生まれの新聞記者。「アイヌ新聞」やアイヌ問題研究所を創った人です。『政治家の責任』の著者、老川祥一(おいかわ・しょういち, 1941-)さんは読売新聞グループ本社 代表取締役会長・主筆代理をお務めです。

出版業界の4月からの変化と、注目新刊:ミーオドヴニク『Liquid 液体』インターシフト、ほか_a0018105_03313437.jpg


# by urag | 2021-04-04 23:30 | Comments(0)