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2026年 12月 31日
2025年11月21日取次搬入予定:甲斐扶佐義写真集『新版 地図のない京都』本体3,000円。 2025年11月06日取次搬入予定:大竹伸朗展公式図録『網膜』本体4,500円。 2025年10月29日取次搬入予定:髙山花子『世界のかなしみ――『苦海浄土』全三部作試解』本体2,600円。 ◆新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません) 2025年09月18日発売:阿部晴政編『ドゥルーズ革命』本体3,200円。 2025年08月12日発売:ジル・ドゥルーズ『尽くされた』本体2,400円。叢書・エクリチュールの冒険、第26回配本。 2025年07月09日発売:E・P・トムスン『ウィリアム・モリスーーロマン派から革命家へ』本体6,800円。 2025年07月03日発売:河野靖好『谷川雁の黙示録風革命論』本体3,600円。 2025年06月13日発売:東京芸術大学未来創造継承センター編『アート×リサーチ×アーカイヴ――調査するアートと創造的人文学』本体2,400円。 2025年05月23日発売:江澤健一郎『思想家 岡本太郎』本体2,600円。 2025年04月28日発売:『表象19:記憶の支持体――アンゼルム・キーファー』本体2,000円。 2025年04月18日発売:『HAPAX III-1:革命』本体2,200円。 2025年04月18日発売:秋元康隆『意志の倫理学 第2版』本体2,100円、シリーズ〈哲学への扉〉第11回配本。 2025年03月04日発売:クリストフ・フリードリヒ・ハインレ『ハインレ詩文集』本体4,500円。 2025年02月14日発売:井口時男『井口時男批評集成』本体4,500円。 2024年12月12日発売:豊田市美術館編『しないでおく、こと。――芸術と生のアナキズム』本体2,600円。 2024年12月09日発売:本橋哲也『鈴木忠志の演劇――騙る身体と利賀の思想』本体2,400円。 2024年12月09日発売:長崎浩『他力という力――叛乱論終章』本体3,200円。 2024年11月27日発売:H・G・ウェルズ『モダン・ユートピア』本体3,400円、叢書・エクリチュールの冒険、第25回配本。 2024年10月30日発売:ゲルハルト・クリューガー『カントの批判における哲学と道徳』本体5,400円、シリーズ・古典転生第31回配本(本巻30)。 2024年10月24日発売:中山幸雄『暴動の時代に生きて――山谷 '68-'86』本体3,200円。 ◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々) ◎重版出来: 2024年06月19日:小田原のどか・山本浩貴編『この国の芸術』2刷(2023年11月初刷) 2024年07月24日:アンドレアス・マルム『パイプライン爆破法』2刷(2021年12月初刷) 2024年08月01日:ウィリアム・モリス『小さな芸術』2刷(2022年11月初刷) 2025年02月20日:中山幸雄『暴動の時代に生きて』2刷(2024年10月初刷) 2025年02月21日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』6刷(2019年8月初刷) 2025年02月26日:アンヌ・ソヴァニャルグ『ドゥルーズと芸術』2刷(2024年5月初刷) 2025年05月23日:森山大道『写真よさようなら 普及版』2刷(2023年9月初刷) ◆出版=書店業界情報:リンクまとめ ◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信」 ◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン」 ◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞 ◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍 ※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください。 ※月曜社について一般的につぶやかれている様子はYahoo!リアルタイム検索からもご覧になれます。月曜社が公式に発信しているものではありませんので、未確定・未確認情報が含まれていることにご注意下さい。ちなみに月曜社はtwitterのアカウントを取得する予定はありませんが、当ブログ関連のアカウントはあります。 #
by urag
| 2026-12-31 23:59
| ご挨拶
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2025年 11月 17日
★まずは注目文庫新書新刊から。 『純粋理性批判の超批判』ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(著)、杉山卓史(訳)、講談社学術文庫、2025年11月、本体2,100円、A6判並製528頁、ISBN978-4-06-541579-5 『経験論と主体性――ヒュームにおける人間的自然についての試論』ジル・ドゥルーズ(著)、木田元/財津理(訳)、河出文庫、2025年11月、本体1,500円、文庫判並製288頁、ISBN978-4-309-46823-5 『ヘーゲル読解入門――『精神現象学』を読む(上)』アレクサンドル・コジェーヴ(著)、上妻精/今野雅方(訳)、白水Uブックス「思想の地平線」、2025年11月、本体1,600円、新書判並製324頁、ISBN978-4-560-72145-2 『ヘーゲル読解入門――『精神現象学』を読む(下)』アレクサンドル・コジェーヴ(著)、上妻精/今野雅方(訳)、白水Uブックス「思想の地平線」、2025年11月、本体1,600円、新書判並製294頁、ISBN978-4-560-72146-9 ★『純粋理性批判の超批判』は、18世紀ドイツの哲学者ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(Johann Gottfried von Herder, 1744-1803)の著書『Eine Metakritik zur Kritik der reinen Vernunft』(1799年)の全訳。カバー紹介文に曰く「『言語起源論』で注目されたヘルダーが満を持して公刊した主著『人類歴史哲学考』に対して、カントは厳しい批判を浴びせた。これを受けて旧師の主著『純粋理性批判』を俎上に載せて徹底的に批判し、ドイツ観念論の先駆をなした書、本邦初訳」。訳者解説によれば「本書は、被批判者カントを「本気」にさせた(=再批判を用意させた)数少ない批判のうちの一つである」(508頁)。「さらに後世の哲学との関連では、カントの超越論哲学をパースの記号論によって刷新しようとするアーペルの「超越論的語用論」を本書が先取りしている――アーペル自身もそう認めている――ことも付言しておこう」(510頁)。 ★『経験論と主体性』は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze, 1925- 1995)の初期作『Empirisme et subjectivité. Essai sur la nature humaine selon Hume』(1953年)の訳書の文庫化。『ヒュームあるいは人間的自然――経験論と主体性』(朝日出版社、1980年)の改訂改題版である『経験論と主体性――ヒュームにおける人間的自然についての試論』(河出書房新社、2000年)の文庫化ですが、共訳者の財津さんの「文庫版への訳者あとがき」によれば「さらに多くの箇所を修正した」のことです。カバー表4紹介文に曰く「ドゥルーズが、イポリットとカンギレムの指導のもと、22歳で執筆した研究論文をもとにした、初期の重要な著作。哲学者としての早熟さと、のちの思想の萌芽がうかがえる、独創的なヒューム論。想像や妄想、虚構や自然が交じり合い、主体が生成していく過程を描く」と。 ★『ヘーゲル読解入門(上・下)』は、ロシア生まれのフランスの哲学者で官僚でもあったアレクサンドル・コジェーヴ(Alexandre Kojève, 1902-1968)による高名な講義録『Introduction à la lecture de Hegel. Leçons sur la Phénoménologie de l'esprit professées de 1933 à 1939 à l'École des Hautes Études, réunies et publiées par Raymond Queneau』(Gallimard, 1947)の抄訳(国文社、1987年)の新書化。上巻巻末に、共訳者の今野雅方(こんの・まさかた, 1946-)さんによる「『ヘーゲル読解入門』への後書き」が新たに加わっています。改訳についての特記はありませんが翻訳作業当時の貴重なエピソードが紹介されています。国文社の廃業とともに親本が入手できなくなっていたので、こうして再刊されたことはたいへん幸いでした。帯文に曰く「現代思想への分岐点」。講義には前任者のコイレのほか、編者のクノー、さらにレイモン・アロン、バタイユ、クロソウスキー、ラカン、メルロ=ポンティ、カイヨワ、サルトル、レリス、アンリ・コルバンらが聴講し、またフランスにおけるヘーゲル受容において重要な役割を果たしたヴァール、イポリット、エリック・ヴァイルらも参加していたと伝えられています。本書を読むとき、これらの思想家たちの星座に読者もまた参入することになるわけです。 ★有名な「歴史の終末」に関する注記(第七章原注6)は、上巻の298頁から301頁にかけて細かい活字で収録されています。特に次のくだりはよく知られているかと思います。「「ポスト歴史の」日本の文明は「アメリカ的生活様式」とは正反対の道を進んだ。〔…〕生のままのスノビスムがそこでは「自然的」或いは「動物的」な所与を否定する規律を作り出していた。〔…〕執拗な社会的経済的な不平等にもかかわたず、日本人はすべて例外なくすっかり形式化された価値に基づき、すなわち「歴史的」という意味での「人間的」な内容をすべて失った価値に基づき、現に生きている。〔…〕最近日本と西洋世界との間に始まった相互交流は、結局、日本人を再び野蛮にするのではなく、(ロシア人も含めた)西洋人を「日本化する」ことに帰着するであろう。〔…〕どのような動物もスノッブではありえない以上、「日本化された」ポスト歴史の後の時代はどれも特有な仕方で人間的であろう」(300~301頁)。 ★まもなく発売となる新刊3点を列記します。 『遠い国 遠い言葉――柄谷行人未刊行文集』柄谷行人(著)、読書人、2025年11月、本体5,500円、A5判上製652頁、ISBN978-4-924671-99-7 『戦後の日本社会に影響を与えた「古典」を読む――現代社会と民主主義を考えるための10講座』王寺賢太/小林康夫/渡辺靖/武田徹/苅部直/米本浩二/成田隆一/野家啓一/吉見俊哉/小松美彦(著)、読書人、2025年11月、本体2,600円、四六判並製370頁、ISBN978-4-924671-98-0 『FSB ロシア連邦保安庁――沿革・任務・機構』ケヴィン・P・リール(著)、並木均(訳)、作品社、2025年11月、本体2,700円、四六判並製280頁、ISBN978-4-86793-123-3 ★『遠い国 遠い言葉』は、批評家の柄谷行人(からたに・こうじん, 1941-)さんの未刊行文集。版元紹介文によれば「30代の時に雑誌に発表し、これまで単行本に収録されてこなかった、連載、批評、エッセイ、発言を、ほぼ網羅する。近年打ち立てられた「交換様式」の理論に先立つマルクス論、作家・坂上弘との貴重な往復書簡を収める。書簡のなかでは、アメリカでの日常生活や大学の様子などを事細かに綴る。「匿名」で執筆した「侃侃諤諤」(新発見)も収録」と。「一頁時評(連載)」「往復書簡 遠い言葉、遠い国(柄谷行人・坂上弘)」「マルクスの系譜学 (予備的考察/貨幣の形而上学)」「手帖(連載)」「短・中篇批評、エッセイ、インタビュー」の5部構成。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「マルクス論だけではなく、本書におさめられた文章は、出版界のみならず世界全体を文学のオーラが包んでいたような、文学が輝かしかった時代の濃厚な名残のなかで書かれたのである」(あとがきより)。 ★『戦後の日本社会に影響を与えた「古典」を読む』は、2024年4月から7月にかけて立教大学でにおいて行われた「読書人カレッジ」の全10回の講義「戦後日本社会に影響を与えた「古典」を読む――現代社会を読み解くために」の記録に加筆訂正を加えたもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。取り上げられる主な書籍は以下の通りです。ルソー『人間不平等起源論』、三島由紀夫『豊饒の海』四部作、トクヴィル『アメリカのデモクラシー』、沢木耕太郎『テロルの決算』『一瞬の夏』、小林秀雄「ヒューマニズム」(『考へるヒント2』所収)、石牟礼道子『苦海浄土』、網野善彦『「日本」とは何か』、トマス・S・クーン『科学革命の構造』、真木悠介『時間の比較社会学』、フーコー『知への意志』。 ★『FSB ロシア連邦保安庁』は、英国ブルネル大学講師のケヴィン・P・リール(Kevin P. Riehle)さんの著書『The Russian FSB: A Concise History of the Federal Security Service』(Georgetown University Press, 2024)の全訳。FSB(ロシア連邦保安庁)とは、ソ連KGB(国家保安委員会)の国内保安担当部局を継承した諜報機関。本書の特色は帯文に次のようにまとめられています。「米政府で30年以上分析官を務めた専門家による入門書。ロシア語一次資料を多数使用。帝政期に遡る組織の起源、構造、歴代指導者から、映画等に描かれるロシア文化内のFSB表象までを射程に。FSBを特徴づけるソ連時代から続く国民への抑圧的な精神構造と、ウクライナ侵攻にも繫がった歴史観を分析」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。付録として、FSBの主要部局を記載した組織図が挟みこまれています。訳者あとがき全文がnoteで公開されています。 ★このほか最近では以下の新刊との出逢いがありました。 『隣接の遁走曲〔フーガ〕』四方田犬彦/飯沢耕太郎(著)、作品社、2025年11月、本体2,700円、四六判並製288頁、ISBN978-4-86793-122-6 『サラム・アサイラム』崔真碩(著)、夜光社、2025年10月、本体1,500円、A5判並製142頁、ISBN978-4-906944-24-8 ★『隣接の遁走曲〔フーガ〕』は、四方田犬彦(よもた・いぬひこ, 1953-)さんと飯沢耕太郎(いいざわ・こうたろう, 1954-)さんの往復書簡形式の対論集。版元紹介文に曰く「詩、小説、漫画、映画、写真、美術、音楽、建築、世界への旅、1960~70年代の記憶……。あらゆる表象芸術を論じ、同じ時代を疾駆した博覧強記の評論家ふたりによる初の対論。隣り合って交錯し、ずれながら反響する知のセッション」。四方田さんが高校二年生の折にガリ版刷りで製作したという詩集『暗い入江』(1969年)の写真が掲載され、一部が引用されています。図書室にある書物からの引用で詩作品を作ったとのこと。「半世紀ぶりに読み返して気が付いたのは、あちらこちらにカミュとボブ・ディランの断片が顔を覗かせていることです」(143頁)。本書付録となる二氏の詩作品5篇を掲載した「詩選集」がPDFで作品社ウェブサイトで無料公開されています。 ★『サラム・アサイラム』は、広島大学大学院准教授で、朝鮮近現代文学やポストコロニアル研究がご専門の崔真碩(ちぇ・じんそく, 1973-)さんの『サラム ひと』(夜光社、2018年)に続く第2詩集。収録作品は、「クロムビに行く門」「アサイラム ひと」「アンダーグラウンド・オキナワ」「放蕩ステイション」「ニューヨーク」「ポストコロニアル」「歴史と民族の再生」「歴史の天使」「K」の9篇。あとがきから引きます。「詩で戦争を止める。詩で朝鮮戦争を終わらせる。これが私の詩心であり、私のライフワーク、私の本気だ。/本書は、在日朝鮮人文学だ。在日朝鮮人文学の継承だ。根無し草の私にルーツがあるとすれば、それは在日朝鮮人文学だ。在日朝鮮人文学はいつでも私のアサイラムだった」(137頁)。 #
by urag
| 2025-11-17 01:09
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2025年 11月 09日
★まもなく発売となるちくま学芸文庫の11月新刊を列記します。 『仮面と神話』大林太良(著)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,400円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-51333-5 『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』スティーヴン・グリーンブラット(著)、河野純治(訳)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,600円、文庫判472頁、ISBN978-4-480-51332-8 『英語の習得法』最所フミ(著)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,000円、文庫判176頁、ISBN978-4-480-51331-1 『近代小説の表現機構』安藤宏(著)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,600円、文庫判560頁、ISBN978-4-480-51328-1 『エントロピーと秩序――熱力学第二法則への招待』ピーター・W・アトキンス(著)、米沢富美子/森弘之(訳)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,600円、文庫判448頁、ISBN978-4-480-51325-0 ★『仮面と神話』は、1998年に小学館から刊行された、民族学者の大林太良(おおばやし・たりょう, 1929‐2001)さんの講演録をまとめたもののの文庫化。版元紹介文に曰く「人類は文明のどの段階から仮面を使うようになるのか。多数の図版と分布地図を用い、世界的視野で民族学の重要な諸論点を平明に語る」。文庫版解説「世界・東アジア・日本」は、松村一男さんによるもの。 ★『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』は、米国の文学史家スティーヴン・グリーンブラット(Stephen Greenblatt, 1943-)さんのピュリッツァー賞受賞作『The Swerve: How the World Became Modern』(Norton, 2011)の訳書(柏書房、2012年)を文庫化したもの。版元紹介文に曰く「ルネサンスの原動力となったのは、忘れ去られていた古代ローマの哲学詩だった──。ある写本の発見が与えた衝撃を描く傑作歴史物語」。巻末解説は、池上俊一さんによるもの。古代ローマの哲学詩というのは、ルクネティウス『事物の本性について』のことです。ちくま学芸文庫では今年3月に藤沢令夫/岩田義一訳が刊行されています。 ★『英語の習得法』は、評論家で翻訳家の最所フミ(さいしょ・ふみ, 1908-1990)さんの著書(研究社、1981年)の文庫化。「英語と日本語の違い、効果的な「読み」、「書く」ための心構え、英会話と音読といったテーマを通し、著者一流の秘訣を一挙公開」(カバー表4紹介文より)。巻末特記によれば「北村一真氏のご協力の下、本文内の誤りは適宜訂正した」とのことです。北村さんは巻末解説もお書きになっています。書名のリンク先では、巻頭の「はしがき」を立ち読みすることができます。 ★『近代小説の表現機構』は、東京大学名誉教授で日本近代文学がご専門の安藤宏(あんどう・ひろし, 1958-)さんの著書(岩波書店、2012年)の文庫化。「小説が小説たろうとするための"よそおい"や"みぶり"を「表現機構」と名付け、分析概念の核に据えて考察することで、近代小説の全体像に新たな見取り図を示す」(カバー表4紹介文より)。著者による「ちくま学芸文庫版の刊行に当たって」と、佐藤秀明さんによる巻末解説が加わっています。 ★『エントロピーと秩序』は、レーベル内シリーズ「Math&Sciences」の最新刊。英国の物理化学者ピーター・W・アトキンス(Peter William Atkins, 1940-)の著書『The Second Law』(Scientific American Library/Freeman, 1984/1994)の訳書(日経サイエンス社、1992年)の文庫化です。熱力学第二法則をめぐり、「その基本となる考え方を、できるだけ数式を用いずに、かつ学問的な厳密性をいささかも損なうことなく、懇切丁寧に説明していく。〔…〕蒸気機関から生命現象まで多様なトピックを扱いつつ、熱力学の奥深さを説き明かした不朽の名著」(カバー表4紹介文より)。「文庫版訳者あとがき」が新たに加わっています。 ★次に、注目の文庫新刊既刊書から。 『チベット死者の書――サイケデリック・バージョン』ティモシー・リアリー/ラルフ・メツナー/リチャード・アルパート(著)、菅靖彦(訳)、平凡社ライブラリー、2025年10月、本体1,900円、B6変型判320頁、ISBN978-4-582-77000-1 『永久革命者とは何か――埴谷雄高論集』吉本隆明(著)、講談社文芸文庫、2025年10月、本体2,400円、A6判368頁、ISBN978-4-06-541226-8 『人魚紀聞――椿實幻想短篇選』椿實(著)、中公文庫、2025年9月、本体1,300円、文庫判448頁、ISBN978-4-12-207699-0 『神秘学入門』高橋巖(著)、講談社学術文庫、2025年10月、本体1,000円、A6判192頁、ISBN978-4-06-541432-3 『ペンテジレーア』クライスト(著)、大宮勘一郎(訳)、岩波文庫、2025年10月、本体910円、文庫判312頁、ISBN978-4-00-324169-1 『エミール3』ルソー(著)、斉藤悦則(訳)、光文社古典新訳文庫、2025年10月、本体1,600円、ISBN978-4-33-410790-1 『ブレシアの飛行機/バケツの騎士』カフカ(著)、丘沢静也(訳)、光文社古典新訳文庫、2025年10月、本体900円、ISBN978-4-33-410791-8 『安芸厳島社』松岡久人(著)、法蔵館文庫、2025年10月、本体1,400円、文庫判296頁、ISBN978-4-831827104 ★『チベット死者の書』は、1994年に八幡書店から刊行された単行本の文庫化。『The Psychedelic Experience: A Manual Based on The Tibetan Book of the Dead』(1964年)の訳書で、アメリカの心理学者で戦後アメリカの対抗文化を牽引したティモシー・リアリー(Timothy Francis Leary, 1920-1996)らによる実験的トリップマニュアルです。付録として朗読CD『バルド・ソドル』の全訳が併録され、菅靖彦さんによる「平凡社ライブラリー版訳者あとがき」、木澤佐登志さんによる巻末解説「変性意識とカウンターカルチャーの精神史」も加わっています。平凡社ライブラリーの記念すべき1000巻目が本書というのはなかなか凄いチョイスですね。なおCD『バルド・ソドル』は八幡書店より1994年に発行されていました。 ★『永久革命者とは何か』は、吉本隆明さんによる埴谷雄高論21篇をまとめたもの。収録テクストは書名のリンク先でご確認いただけます。巻末解説は安藤礼二さんによる「先鋭的な対立と創造的な対話」。安藤さんは二人の関係をこう評しておられます。「先鋭的に対立するからこそ創造的な対話が成り立つのである。/吉本隆明によって、埴谷雄高は、畏怖すべき「対立者」であるとともに創造的な「対話者」でもあった。深い共感とともにその著作を読み進めると同時に、ある場合には、その行動に根底から抗い、厳しい異議を申し立てる。しかし、その異議申し立てによって、吉本隆明は未知なる自己の可能性を再認識し、その表現は新たな次元に到達する」(336~337頁)。 ★『人魚紀聞』は、作家の椿實(つばき・みのる, 1925-2002)さんの生誕100年記念出版で、デビュー作にして代表作の「メーゾン・ベルビウ地帯」をはじめ、晩年に至るまでの17篇の幻想・推理短篇を厳選した「初のベスト・セレクション」(カバー表4紹介文より)。巻末に資料として5篇の関連テクストが併録されています。柴田錬三郎「二十世紀ロマンの旗幟」、吉行淳之介「椿實のデビューまで」、窪田般彌「忘れられたアリエッタ」、澁澤龍彦「神話的な名曲」、小笠原賢二「文字でつくった「万華鏡」――椿實インタビュー」。 ★『神秘学入門』は、美学者で日本におけるルドルフ・シュタイナー研究の第一人者である、高橋巖(たかはし・いわお, 1928-2024)さんが2000年にちくまプリマーブックスの1冊として上梓したものの文庫化。「シュタイナー思想を軸に神秘学の基本的な考え方と歴史的転回をやさしく解説しながら、魂を探る旅へとみちびく最良の入門書」(カバー表4紹介文より)。巻末解説「神秘学徒の視座」は若松英輔さんによるもの。 ★『ペンテジレーア』はクライストによる悲劇『Penthesilea』(1808年)の、大宮勘一郎(おおみや・かんいちろう, 1960-)さんによる新訳。岩波文庫での旧訳は、吹田順助訳で、1941年初版、2012年の3刷が最終重版と思われます。内容紹介文は旧版のカバーソデ記載の文言が端的なので借りてみると、「ギリシア軍のトロヤ攻撃に材を取り、女人国アマゾン〔アマツォーネ:アマゾネス〕の女王ペンテジレーアと英雄アヒレス〔アキレス〕との激しい恋の葛藤を主題として、愛と憎しみ、憧憬と絶望との交錯を描いた悲劇」。 ★『エミール3』は、全3巻の完結篇。「女子教育、恋愛、結婚にたいするルソーの考えが語られる。〔…〕『社会契約論』とも密接に通じる最終巻」。巻末解説は淵田仁さんによる「Q&Aで読む『エミール』」。既刊は第1巻(2025年4月)、第2巻(2025年7月)。『社会契約論』は光文社古典新訳文庫では、2008年に中山元訳『社会契約論/ジュネーヴ草稿』として刊行済。 ★『ブレシアの飛行機/バケツの騎士』は、カフカ短篇集。「短編集収録の小品ほか、表題の2作と親友M・ブロートとの共作など、新聞・雑誌にだけ掲載されたものを含む38編+1を収録。そのうちの24編が「カフカがカフカになった」といわれる傑作『判決』以前の小品、初期の習作。若書き特有のぎこちなさの奥にある原石のカフカに出会える一冊」(カバー表4紹介文)。収録作品は書名のリンク先でご確認いただけます。『観察』より16篇、『田舎医者』より10篇、『断食芸人』より2篇、新聞や雑誌にだけ掲載された作品群から10篇です。表題作2篇はいずれも新聞掲載のもの。 ★『安芸厳島社』は、日本中世史がご専門の歴史家、松岡久人(まつおか・ひさと, 1918-2009)さんの著書(法蔵選書、1986年)の文庫化。「世界遺産・日本三景の一つ安芸の宮島にまします厳島神社。厳島神の鎮座、社殿の造営、平清盛の信仰、社家・供僧・内侍の活動、大内氏・毛利氏による復興など、原子から中世末に至るまでに積み重ねられた奥深い文化を、史料から丁寧に明らかにする」(カバー表4紹介文より)。巻末解説は秋山伸隆さんによる「松岡久人氏と厳島研究」。 #
by urag
| 2025-11-09 22:24
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2025年 11月 05日
2025年12月01日取次搬入予定 丹生谷貴志コレクションⅠ・Ⅱ(全3巻のうち、2巻同時刊行) Ⅰ 本体4,500円 46判(縦188mm×横130mm×束35mm, 645g)並製616頁 ISBN:978-4-86503-216-1 C0010 Ⅱ 本体4,300円 46判(縦188mm×横130mm×束32mm, 620g)並製592頁 ISBN:978-4-86503-217-8 C0010 孤高の批評家/思想家の40年にわたる営為からその精髄を集成。哲学・美術・文学・映画をつらぬいて思考の極限を歩みつづける批評家の全貌を3巻1800頁に凝縮して、その核心をあきらかにする。伝説的デビュー作『光の国』(抄録)から幻の連載「中世への途上」まで、「批評(家)」誕生と生成の軌跡を示す第Ⅰ巻、ドゥルーズ/フーコーとともに終わりなき思想の闘争を刻印する第Ⅱ巻を同時刊行。 ★第Ⅰ巻巻末エッセイ:青山真治・小林康夫、解説:石川義正 ★第Ⅱ巻巻末エッセイ:朝吹真理子・鈴木創士、解説:稲川方人 第Ⅲ巻(2026年1月発売予定)は直近20年の発表論考から単行本未収録を多数集成。巻末エッセイ:絓秀実、雑賀恵子。解説:東海晃久。 第Ⅰ巻目次: 軽いまえがき 光の国――あるいはVoyage enVain(抄) Ⅰ 神・神々・砂の書 Ⅱ「死」・木星の逃亡者・「光の国」 Ⅲ 沙漠・bêtise・「光の国」 舗石の下には砂浜が………――マネ・カタログをめぐって モネの花畑のように 投げ捨てる土 幸福なポジティヴィスト 月と水仙 真ん中の部屋 真冬の切迫――『鏡・空間・イマージュ』に寄せて 雪崩れる鏡――「生の日曜日」のために 〈不毛〉の系譜学 キーワード「戦争」 「戦士」と共同体 国家と戦争 原罪と黙示録――ホッブズ、へーゲル 絶滅主義 戦車の思想 ポスト・モダンと身体のアルカイズム 恋の囚われ 吉田健一は分裂病直前の静けさとざわめきとひしめきを生きる 中世への途上 1 覚書:映像のフーコー 2 スコトゥスの擾乱の魅力 3 サハラと《存在〉の一義性――ブレッソン/スコトゥス1 4 〈モデル〉・動詞・〈出来事〉――ブレッソン/スコトゥス/ドゥルーズ2 5 『経験論と主体性』を巡るノート 6 ディオゲネスの贋金 丹生谷貴志のために 『光の国』に寄せて|青山真治 『光の国』異聞|小林康夫 解説 丹生谷貴志、今日………|石川正義 解題(初出一覧) 第Ⅱ巻目次: 表象論あるいは恋するシーニュ 映画/ニヒリズム/自由 未知もなければ既知もない幸福な〈外〉の住人 映画的意志に貫かれた心踊る90編のフィルム――『金井美恵子全短篇』(全三巻) 侵犯と発明――退屈さのエクササイズ 絶対的不毛を生きること――エルキュリーヌ・バルバンをめぐって 老いの言葉 1「……言うまでもなく……」 2 廃墟の書物 3 素朴な書物 4 「老い」の書物 5 アルチュセールの言葉から 6 葉叢とサングラス 7 吃音の穴 8 物質的饒舌 造成居住区の午後へ 不在の災害 誘惑と遮蔽――図像と野生の視線を巡って 死体は窓から投げ捨てよ 持続と記憶――砂漠のイマージュ 「文学」は夜にむかう インスタント・カーマ 1 これがせきたんやのくまさんの話です 2 墓標と忘却 3 死体はモノになってくれない 4 ここでは誰も迷わない 墓石との熱狂的なダンス 雲の肯定 「幼児的なるもの」と崩壊 小さなアポカリプス 幽霊的な閃光 来るべき子どもたち――野性と革命と異質性の場 無関心の恋 Accidiaあるいはアパシー 孤島と恋、そして散-歩――新たなるバロック 丹生谷貴志のために あこがれることしかできない|朝吹真理子 ニブヤさん|鈴木創士 解説 無限人格としての丹生谷貴志を個人的な挿話から語ろう|稲川方人 解題(初出一覧) 丹生谷貴志(にぶや・たかし, 1954-):批評家(哲学・芸術)。著書に『光の国』(朝日出版社)、『砂漠の小舟』(筑摩書房)、『ドゥルーズ・映画・フーコー』『女と男と帝国』『三島由紀夫とフーコー』(以上、青土社)、『死体は窓から投げ捨てよ』、『死者の挨拶で夜がはじまる』『家事と城砦』(以上、河出書房新社)など。 #
by urag
| 2025-11-05 10:00
| 近刊情報
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2025年 11月 02日
★最近出会いのあった新刊を列記します。 『ソシュールとインド――構造主義の源流を求めて』川村悠人(著)、人文書院、2025年10月、本体2,800円、四六判並製240頁、ISBN978-4-409-03143-8 『ネクロポリティクス――死の政治学』アシル・ンベンベ(著)、岩崎稔/小田原琳(訳)、人文書院、2025年10月、本体4,500円、四六判上製340頁、ISBN978-4-409-04129-1 『枢軸――ベルリン・ローマ・東京 一九一九—一九四六年』ダニエル・ヘディンガー(著)、清水雅大(監訳)、山本晶子/山根徹也(訳)、人文書院、2025年10月、本体8,000円、A5判上製522頁、ISBN978-4-409-51109-1 『フランス論2.0』大浦康介(著)、2025年10月、本体2,700円、四六判並製224頁、ISBN978-4-409-14072-7 『日米関係からみた昭和の日本――なぜ日本はアメリカと戦ったのか』草原克豪(著)、藤原書店、2025年10月、本体3,600円、四六判上製424頁、ISBN978-4-86578-476-3 『「新しい市民協働」を拓く――ハーバーマス、ロールズ、センの思想から考える』向井清史(著)、藤原書店、2025年10月、本体2,200円、四六変型判上製232頁、ISBN978-4-86578-477-0 『絹と日本人――日常着として、きもの暮らし六十年』中谷比佐子(著)、藤原書店、2025年10月、本体2,200円、A5変型判並製184頁+カラー口絵16頁、ISBN978-4-86578-475-6 『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト――純粋社会学の基本概念』テンニエス(著)、重松俊明(訳)、中公クラシックス、2025年10月、本体2,300円、新書判336頁、ISBN978-4-12-160187-2 『公共デザイン学入門講義――コミュニティセンスを生む演出術』権安理(著)、作品社、2025年10月、本体2,000円、46判並製192頁、ISBN978-4-86793-115-8 『クマタカ生態モノグラフ』クマタカ生態研究グループ(編著)、平凡社、2025年10月、本体6,800円、B5変型判並製432頁、ISBN978-4-582-54270-7 『正宗敦夫文集――ふぐらにこもりて(2)』財団法人正宗文庫(監修)、小川剛生(編注)、東洋文庫:平凡社、2025年9月、本体4,400円、B6変型判上製函入456頁、ISBN978-4-582-80928-2 ★人文書院さんの10月新刊より4点。目次詳細は各書名のリンク先でご確認いただけます。『ソシュールとインド』は、「ソシュールの言語思想とインド文法学の言語思想の二つを比較検討し、両思想には間違いなく通底するものがあることを明示しようと試みる。そして、のちに構造主義と呼ばれることになる思想体系をソシュールのもとで育むことになった、あるいはそれを発展させる動力となった素材の一つとして、インドのサンスクリット文法家であるパタンジャリやバルトリハリの言語思想というものがあった可能性を、一定の確度をもって開きたい」(序論、16頁)。著者の川村悠人(かわむら・ゆうと, 1986-)さんは広島大学教授。 ★『ネクロポリティクス』は、南アフリカのウィットウォータースランド大学教授をつとめるカメルーン出身の政治理論家アシル・ンベンベ(Achille Mbembe, 1957-;ムベンベとも)によるフランス語の著書『Politiques De L’Inimitié』(Éditions La Découverte, 2016)の英訳で、仏語版の増補改訂版でもある『Necropolitics』(translated by Steven Corcoran, Duke University Press, 2019)の全訳。宇野邦一訳『黒人理性批判』(講談社選書メチエ、2024年)に続く2冊目の訳書です。「この本が目指しているのは、わたしが暮らしは当たら射ているアフリカから(しかし同時に、たえまなく見渡している世界の他の部分から)わたしたちのこの時代を批判するという課題に寄与することである。この時代とは、ミリタリズムと資本の盾に守られながら、人間が移動し世界がグローバル化していく時代のことだ。そして、その帰結として、民主主義からの退出(あるいは民主主義の転倒)を体験している時代のことだ」(第一章、23頁)。 ★「生を死の権力〔ネクロポリティクス〕に隷属させている現代の形態が、抵抗と犠牲とテロルの関係を深刻に書き換えている〔…〕。生が死の権力に隷属させられている現代の形態を説明するには、生の権力の概念では不十分である〔…〕。わたしは、この現代世界において、できるだけ多くの人間を破壊し、死-世界を生み出すために武器が動員されるさまざまなあり方を説明するために、ネクロポリティクスという概念、あるいは死の権力という概念を提示した。「死-世界」とは、社会的生存の新奇で特異な形態であり、そこでは法外な数の人口が、生ける死者という地位を与えられる生存条件に服している」(第三章、149頁)。 ★『枢軸』は、ライプツィヒ大学グローバル動態研究センター研究員で歴史家のダニエル・ヘディンガー(Daniel Hedinger)さんの著書『Die Achse : Berlin-Rom-Tokio 1919-1946』(C. H. Beck, 2021)の全訳。帯文に曰く「ファシズムのグローバルヒストリー。新たな社会的・文化的・地政学的秩序を構想した枢軸国。ファシズムの引力は、いかにして世界をかつてないほどの大規模戦争に引きずり込んだのか。従来の一国史、二国間関係史の枠組みでは捉えきれなかった、枢軸の形成・拡大と世界大戦に至るプロセスを鮮やかに描いた巨編」。『フランス論2.0』は、京都大学名誉教授の大浦康介(おおうら・やすすけ, 1951-)さんによる「複眼的アプローチにより「フランスらしさ」のゆくえをさぐる」(帯文より)試み。柔らかい文体で、フランス人気質、フランス文化、フレンチ・フェミニズムへの理解を助けてくれます。 ★藤原書店さんの10月新刊は3点。目次詳細は各書名のリンク先でご確認いただけます。『日米関係からみた昭和の日本』は、文部省の局員や大臣官房審議官を歴任し、現在は拓殖大学名誉教授をつとめる草原克豪(くさはら・かつひで, 1941-)さんが「昭和百年を振り返りつつ、日本の針路を展望」(帯文より)したもの。『「新しい市民協働」を拓く』は「既存の組織形態や地域の垣根を越えて育ちつつある「新しい市民協働」に注目し、市民的公共圏の担い手としての可能性を問う。ハーバーマス、ロールズ、センを援用しつつ、「新しい市民協働」の運動・組織・分配のあり方を思想的・理論的に明確化」(帯文より)と。著者の向井清史さんは名古屋市立大学名誉教授。『絹と日本人』は、「きものと日本人による文化的知恵」(略歴より)の普及に長年尽力されている中谷比佐子(なかたに・ひさこ, 1936-)さんが、絹の歴史ときもの文化を語ったもの。「きものというのは、着ることによって自分自身を知り、素材によって暮らしや自然とどうつながっているのかを知り、きものの模様や色に意味をもたせた先人たちの想いを受け、そして手仕事をする人に対してどのように心を通わせるのかを学ぶものだ」(まえがき、1~2頁)。 ★中公クラシックスの新刊1点。テンニエス『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』は、河出書房版『世界思想教養全集(19)ドイツの社会思想』(1963年)所収からの切り出し。巻頭解説「社会学史上最も重要な概念」は大澤真幸さんによるもの。版元紹介文に曰く「ゲマインシャフト(親密な共同体)の時代に、ゲゼルシャフト(公共世界)の時代がつづく――。社会の二類型を定式化し、文化は前者から後者へと発展すると捉える。1887年の初版刊行以来、社会学の発展に大きな影響を与えた、コミュニティ論の古典。縮約版」。省略されているのは、第二篇「本質意志と選択意志」の第二章「対立の解明」、第三篇「自然法の社会学的基礎」の第二章「法における自然的なもの」です。付録「結論と外観」は全9節のうち第7節のみ訳出されています。 ★大澤さんはこう書いています。「任意の人間の社会はゲマインシャフト性とゲゼルシャフト性を含んでいる〔…〕二つの力の配分には多様性があるが、ゲゼルシャフト的な側面を完全に排除したゲマインシャフトもなければ、ゲマインシャフト的な基礎をまったくもたないゲゼルシャフトも存在しない。〔…〕この二律背反的な状態が極端に先鋭化して現れるようになったのが近代社会ではないか」(viii頁)。既訳(全訳)には、岩波文庫上下巻の杉之原寿一訳『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト――純粋社会学の基本概念』がありますが、現在は品切。上巻が1957年12月初刷で最終重版は2012年12月40刷、下巻が1957年12月初刷で最終重版は2013年5月37刷です。岩波書店のウェブサイトに載っている書影は2011年春のリクエスト復刊時のもの。当時は復刊後の翌年に上巻、翌々年に下巻が重版となったわけでした。 ★作品社さんの10月新刊より1点。『公共デザイン学入門講義』は、「公共を「難しい議論」ではなく、日常の風景や人とのつながり、身近なモノの工夫から考える(=デザイン)。豊富な体験、事例、写真、図やイラストでたどる、公共空間・まちづくり・地域活性化の最前線。思想と実践をつなぐ入門書」(帯文より)。目次詳細は、版元ドットコムの単品頁で確認できます。著者の権安理(ごん・あんり)さんは立教大学准教授。著書に『公共的なるもの』(作品社、2018年)があります。 ★平凡社さんの新刊既刊より2点。『クマタカ生態モノグラフ』は「生物多様性に富む森林生態系の指標種であるため、研究の発展が望まれているが、調査がきわめて困難なクマタカの生態の全貌を知ることができる最新研究論集」(帯文より)。「40年余のフィールドワークの成果を集積」とのこと。平凡社さんでの類書には2023年3月刊、若尾親『クマタカ生態図鑑』があります。『正宗敦夫文集(2)』は、東洋文庫の第928弾。全2巻完結。第1巻は2024年7月刊でした。第2巻は「地元岡山の歌人・儒者たちの研究、近世和歌史講義、備前焼への愛着」(帯文より)。発売済の次弾は10月刊、成俔『慵斎叢話――朝鮮王朝前期の士大夫が綴る博学の書(2)』野崎充彦訳注。12月刊は成俔『慵斎叢話(3)』。
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by urag
| 2025-11-02 17:23
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