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2020年 12月 31日

月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)

◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。

◆最新刊と近刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
◎2019年8月7日発売:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』本体1,800円、シリーズ〈哲学への扉〉第3回配本。
◎2019年8月7日発売:新井俊春『名人農家が教える有機栽培の技術』本体2,700円。
◎2019年5月23日発売:『森山大道写真集成(4)光と影』本体6,000円。
◎2019年5月14日発売:ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』本体3,800円、叢書・エクリチュールの冒険第13回配本。
◎2019年4月26日発売:『表象13:ファッション批評の可能性』本体2,000円。
◎2019年3月22日発売:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』本体4,500円。
 志賀信夫氏書評「テキストの迷宮が絵画とは何かを問いかける」(「週刊読書人」2019年5月31日号)
 暮沢剛巳氏書評「グリーンバーグのモダニズム美術論の批判的克服、ある種の「親殺し」の書――ようやく実現した待望の邦訳の出版を素直に喜びたい」(「図書新聞」2019年6月15日号)
◎2019年3月6日発売:筧菜奈子『ジャクソン・ポロック研究』本体4,000円、シリーズ・古典転生第19回配本、本巻18。
 中島水緒氏短評(「美術手帖」2019年6月号「BOOK」欄)
◎2019年2月22日発売:ハナ・ロスチャイルド『パノニカ――ジャズ男爵夫人の謎を追う』本体2,700円。
 宮下志朗氏短評(「読売新聞」2019年5月5日付書評欄)
◎2019年2月20日発売:十和田市現代美術館編『毛利悠子 ただし抵抗はあるものとする』本体2,200円。
◎2019年2月18日発売:須藤温子『エリアス・カネッティ――生涯と著作』本体3,500円、シリーズ・古典転生第18回配本、本巻17。
◎2019年2月1日発売:松江泰治『JP-34』本体3600円。
◎2018年12月17日発売:『森山大道写真集成(1)にっぽん劇場写真帖』本体6,000円。
◎2018年10月5日発売:東琢磨ほか編『忘却の記憶 広島』本体2,400円。
 好井裕明氏書評「読み応えのあるヒロシマ論――「記憶」の「劣化」を防ぐために」(「週刊読書人」12月8日号)
 渡邊英理氏書評「「忘却の口」=他なる記憶の穴へとはいりこむ――「信頼」への「信頼」を忘れていたかもしれないことに、わたしたちは本書を通じて気づくことができる」(「図書新聞」2019年1月19日号)
◎2018年10月1日発売:AYUO『OUTSIDE SOCIETY』本体2,000円。
 松山晋也氏書評「稀有な体験を糧に唯一無二の視点からの優れた音楽論」(「intoxicate」#137(2018 December)O-CHA-NO-MA REVIEW「BOOK」欄)

◆重版情報
◎2019年5月10日:甲斐義明編訳『写真の理論』2刷。
◎2019年7月26日:ロザリンド・E・クラウス『視覚的無意識』2刷。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷、バトラー『権力の心的な生』新版。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『何かへの旅』、森山大道フォトボックス『NOVEMBRE』、やなぎみわ作品集『WHITE CASKET』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍

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# by urag | 2020-12-31 23:59 | ご挨拶 | Trackback(1) | Comments(21)
2019年 09月 23日

注目文庫新刊:2019年9月:平凡社ライブラリー、光文社古典新訳文庫、ほか

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★点数が多いため、今回も2回に分けてご紹介します。

中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2』上智大学中世思想研究所編訳監修、平凡社ライブラリー、2019年9月、本体2,400円、B6変型判664頁、ISBN978-4-582-76887-9
われら』ザミャーチン著、松下隆志訳、光文社古典新訳文庫、2019年9月、本体1,060円、文庫判392頁、ISBN:978-4334-75409-9
西洋占星術史――科学と魔術のあいだ』中山茂著、講談社学術文庫、2019年9月、本体920円、A6判208頁、ISBN978-4-06-517132-5
平治物語 全訳注』谷口耕一/小番達訳、講談社学術文庫、2019年9月、本体2,030円、A6判656頁、ISBN978-4-06-517181-3
後拾遺和歌集』久保田淳/平田喜信校注、岩波文庫、2019年9月、本体1,680円、文庫判752頁、ISBN978-4-00-300299-5
伊藤野枝集』森まゆみ編、岩波文庫、2019年9月、本体1,130円、文庫判448頁、ISBN978-4-00-381281-5
臨済録』柳田聖山訳、中公文庫、2019年9月、文庫判264頁、本体720円、ISBN978-4-12-206783-7
ポー傑作集――江戸川乱歩名義訳』エドガー・アラン・ポー著、渡辺温/渡辺啓助訳、中公文庫、2019年9月、本体1,200円、文庫判480頁、ISBN978-4-12-206784-4
ジャンヌ・ダルク』ジュール・ミシュレ著、森井真/田代葆訳、中公文庫、2019年9月、本体1,000円、文庫判320頁、ISBN978-4-12-206785-1
古事記の研究』折口信夫著、中公文庫、2019年9月、本体1,000円、文庫判352頁、ISBN978-4-12-206778-3

★平凡社ライブラリーの9月新刊は1点。『中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2』は精選版全7巻の第6回配本。親本の第13巻「盛期スコラ学」、第14巻「トマス・アクィナス」、第18巻「後期スコラ学」より10篇を選び、佐藤直子さんによる巻頭解説と、赤江雄一さんによる巻末エッセイ「スコラ学と中世の説教」が加えられています。収録作品は以下の通り。

ディオニュシウス神秘神学註解(アルベルトゥス・マグヌス|須藤和夫訳)
聖書の勧めとその区分(トマス・アクィナス|竹島幸一訳)
聖書の勧め(トマス・アクィナス|竹島幸一訳)
知性の単一性について――アヴェロエス主義者たちに対する論駁(トマス・アクィナス|水田英実訳)
最高善について(シュトラスブルクのウルリヒ|須藤和夫/渡部菊郎訳)
一二七〇年の非難宣言(エティエンヌ・タンピエ|八木雄二/矢玉俊彦訳)
一二七七年の禁令(エティエンヌ・タンピエ|八木雄二/矢玉俊彦訳)
哲学者たちの誤謬(アエギディウス・ロマヌス|箕輪秀二訳)
第一原理についての論考(ヨハネス・ドゥンス・スコトゥス|小川量子訳)
未来の偶然事に関する神の予定と予知についての論考(ウィリアム・オッカム|清水哲郎訳)

★光文社古典新訳文庫の9月新刊より1点。光文社古典新訳文庫でのロシア文学の新訳にはドストエフスキーやトルストイ、チェーホフ等々が刊行されていますが、ザミャーチンの翻訳は今回の『われら』で初めて。帯文に曰く「ディストピアSFの先駆け、待望の新訳」。「ザミャーチンが「私のもっとも滑稽でもっとも真剣な作品」(「自伝」、1922年)と述べる『われら』は、創作にもっとも勢いがあった1920~21年にかけて書かれた。作家が存命中に完成させた唯一の長編にして最高傑作である」(訳者解説より)。底本は1988年刊のクニーガ社版作品集。さらに、「妻リュドミーラによる校正が加えられた唯一現存する『われら』のタイプライター原稿(2011年刊)を参照しつつ、訳者の判断で適宜修正を加えた」とのことです。現在も入手可能な、文庫で読める既訳には、川端香男里訳『われら』(岩波文庫、1992年)、小笠原豊樹訳『われら』(集英社文庫、2018年)があります。川端訳は1975年に講談社文庫でも刊行されたことがあります。岩波文庫版はその改訂版です。

★講談社学術文庫の9月新刊より2点。『西洋占星術史』は、1992年に講談社現代新書の一冊として刊行された『西洋占星術――科学と魔術のあいだ』の改題文庫化。鏡リュウジさんによる巻末解説が加えられています。科学史家の中山茂(なかやま・しげる:1928-2014)さんの著書で講談社学術文庫にて文庫化されているのは本書のほかにこれまで、『近世日本の科学思想』(1993年、品切;『日本人の科学観』〔創元新書、1977年〕増補改題)、『天の科学史』(2011年;『天の科学史』〔朝日選書、1984年〕改訂)、『パラダイムと科学革命の歴史』(2013年;『歴史としての学問』〔中央公論社、1974年〕増補改題)があります。

★『平治物語 全訳注』は講談社学術文庫オリジナルの新訳。「敗れゆく源氏の悲哀と再興の予兆を描いた物語を、伝本の中でも個性豊かな登場人物と起伏に富んだストーリーで知られる四類本から現代語訳した決定版」(カバー裏紹介文より)。本文、現代語訳、語釈、校訂注、解説で構成。補注と地図、谷口耕一さんによる解説「四類本系統の『平治物語』について」は巻末にまとめられています。「『平治物語』は平治の乱を題材にした物語である。〔…〕この物語は、おおまかにいって三部構成になっている。前半では合戦までの経緯、中心部は合戦の様子、後半では戦後処理と後日譚が描かれる。そしてそのような歴史的流れのなかに、笑話や哀話などのエピソードがちりばめられ、全体として、非常におもしろい物語となっている」(解説より)。現在も入手可能な、文庫で読める『平治物語』には、日下力訳注『平治物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫、2016年)があります。

★岩波書店9月新刊より2点。『後拾遺和歌集』は岩波文庫では1940年刊の西下経一校訂版以来の新版。「新日本古典文学大系」シリーズで1994年刊に刊行された第8巻に所収の『後拾遺和歌集』に基づき、「注などを改変して文庫化した」もの。注は、現代語による大意、出典、語釈、参考事項の順で記されています。講談社学術文庫より刊行されていた藤本一恵訳注本全4巻は品切のため、文庫本で読める『後拾遺和歌集』は今回の岩波文庫版のみとなります。

★『伊藤野枝集』は、創作、評論・随筆・書簡、大杉栄との往復書簡、の三部構成で編まれたもの。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。底本は、堀切利高/井手文子編『定本 伊藤野枝全集』(全4巻、學藝書林、2000年)、堀切利高編著『野枝さんをさがして』(學藝書林、2013年)、大杉栄研究会編『大杉栄書簡集』(海燕書房、1974年)などを使用。巻末には編者による解説「嵐の中で夢を見た人――伊藤野枝小伝」と、「伊藤野枝略年譜」を収めています。今月の岩波文庫新刊5点のうち、本書のみが帯が掛かっていて、瀬戸内寂聴さんの推薦文が掲げられています。曰く「恋と革命の天才先駆者、伊藤野枝の若き命をかけた切実華麗な名文のすべて!」。

★中公文庫の9月新刊より4点。『臨済録』は2004年の中公クラシックス版から文庫へのスイッチ。さらに遡ると柳田訳は『世界の名著』続編第3巻(1974年)に収められていたものです。かの有名な「仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷を殺して、始めて解脱することを得ん。物に拘せられず、透脱自在なり」は「四七」の一節(読み下し154頁;原文162頁:逢佛殺佛、逢祖殺祖、逢羅漢殺羅漢、逢父母殺父母、逢親眷殺親眷、始得解脱、不与物拘、透脱自在)。現代語訳を前段を含めて引いてみます。「仲間よ、君たちが堅気を望むなら、けっして世間の誘いに引っかかってはならぬ。内でも外でも、出会ったら、すぐに斬ってすてよ。仏に出会ったら、仏を斬りすて、祖師に出会ったら祖師を切りすて、羅漢に出会ったら羅漢を斬りすて、父母に出会ったら父母を斬りすて、親族に出会ったら、親族を斬りすてて、君ははじめて解放される。物に拘束せられることなく、思いのままに斬りぬけるのだ」(170~171頁)。カバー裏紹介文では「既成概念に縛られず、あえて斬り捨てて自由を得よ」と説明されています。

★『ポー傑作集』はカバー裏紹介文に曰く「本書は刊行当時「江戸川乱歩訳」で発売され、後日、全集から削除された幻のベストセラーである。実際の訳者は27歳で事故死した作家・渡辺温、共訳はその兄でミステリ作家となった渡辺啓助である」と。目次は以下の通り。

序文
黄金虫(渡辺温訳)
モルグ街の殺人(渡辺温訳)
マリイ・ロオジェ事件の謎(渡辺温訳)
窃まれた手紙(渡辺啓助訳)
メヱルストロウム(渡辺啓助訳)
壜の中に見出された手記(渡辺温訳)
長方形の箱(渡辺温訳)
早過ぎた埋葬(渡辺啓助訳)
陥穽と振子(渡辺啓助訳)
赤き死の仮面(渡辺温訳)
黒猫譚(渡辺啓助訳)
跛蛙(渡辺啓助訳)
物言ふ心臓(渡辺温訳)
アッシャア館の崩壊(渡辺啓助訳)
ウィリアム・ウィルスン(渡辺温訳)
附録
 渡辺温(江戸川乱歩著)
 春寒(谷崎潤一郎著)
温と啓助と鴉(渡辺東著)
解説(浜田雄介著)

★底本は『世界大衆文学全集(30)ポー、ホフマン』(改造社、1929年)。附録の「渡辺温」は『探偵小説三十年』(岩谷書店、1954年)、「春寒」は『谷崎潤一郎全集(22)』(愛読愛蔵版、中央公論社、1983年)が底本。渡辺さんのエッセイと浜田さんの解説は書き下ろしです。

★『ジャンヌ・ダルク』は中公文庫プレミアム「知の回廊」の最新弾。1987年刊の中公文庫の改版。文庫版の親本は1983年刊の中央公論社の単行本。改版にあたり、巻末に佐藤賢一さんによる解説が付されています。佐藤さんはこう書いておられます。「ジャンヌ・ダルクについて書かれた本は、それでもすでに五百冊を超えていたというが、史料も満足に整わない段階で、どれだけ史実に基づけたのかは疑わしい。ミシュレの『ジャンヌ・ダルク』こそは正統な歴史として書かれた、最初のジャンヌ・ダルクなのだ。著者は信頼に足る歴史家、十九世紀フランスを代表する大歴史家なのだ」(304~305頁)。

★『古事記の研究』は中公文庫プレミアム「日本再見」の最新弾。「昭和九年と十年に長野県下伊那郡教育会で行われた三つの講義「古事記の研究」(一・二)と「万葉人の生活」を収める。「古事記研究の初歩」と著者自身が呼ぶ一般向けの入門講義を初めて文庫化する」(カバー裏紹介文より)。三浦佑之さんによる巻末解説が付されています。「折口信夫が古事記という作品そのものに向き合うことは、あまり多くないのではないか。その点で本書は貴重な一冊だと思う」。「本書で論じられている古事記は、戦前に凡百が講じたであろう古事記とは一線を画しているというのもまた明らかである。本書に収められた講演のなかで、折口信夫がこだわるのは音声によることばの問題であって、歴史書としての古事記の文字表記にはほとんどこだわっていない。〔…〕折口にとって、そこに残されている神話や歌謡の表現こそがだいじであったというのは、かれの古代研究の方法をみれば説明するまでもなかろう」。

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# by urag | 2019-09-23 02:03 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 18日

ブックフェア「『ブルーノ・ラトゥールの取説』をより深く読むために」

ブックフェア「『ブルーノ・ラトゥールの取説』をより深く読むために」

期間:2019年9月17日(火)~2019年10月15日(月)
展開場所:ブックファースト新宿店地下1階、Bゾーン人文書売場

概要:「私たちはいまだかって近代的であったことはない」。ノンモダンの地平に立ちアクターネットワーク理論を構想したブルーノ・ラトゥール。その難解な議論を解きほぐしたと話題の書『ブルーノ・ラトゥールの取説』。より深く横断的に読み込むために本書で言及されている書籍を中心にブルーノ・ラトゥールと久保明教さんの著書も集めました。フェア期間中、第二弾としてあわせて読むのにおすすめの関連書を久保明教さんにお選びいただき追加で展開いたします。

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# by urag | 2019-09-18 14:04 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 17日

取次搬入日決定:『森山大道写真集成(2)狩人』

『森山大道写真集成(2)狩人』の取次搬入日が決定しました。日販と大阪屋栗田は9月19日(木)、トーハンは9月20日(金)です。

# by urag | 2019-09-17 11:25 | 森山大道 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 16日

注目新刊:ガブリエル『「私」は脳ではない』講談社選書メチエ、ほか

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「私」は脳ではない――21世紀のための精神の哲学』マルクス・ガブリエル著、姫田多佳子訳、講談社選書メチエ、2019年9月、本体2,100円、四六判並製392頁、ISBN978-4-06-517079-3
開かれた対話と未来――今この瞬間に他者を思いやる』ヤーコ・セイックラ/トム・アーンキル著、斎藤環監訳、医学書院、2019年9月、本体2,700円、A5判並製376頁、ISBN978-4-260-03956-7
植物の生の哲学――混合の形而上学』エマヌエーレ・コッチャ著、嶋崎正樹訳、山内志朗解説、勁草書房、2019年8月、本体3,200円、四六判上製228頁、ISBN978-4-326-15461-6
神経美学――美と芸術の脳科学』石津智大著、共立出版、2019年8月、本体2,000円、B6判並製198頁、ISBN978-4-320-00930-1

★『「私」は脳ではない』はドイツの哲学者マルクス・ガブリエル(Markus Gabriel, 1980-)による『Ich ist nicht Gehirn: Philosophie des Geistes fuer das 21. Jahrhundert』(Ullstein, 2017)の全訳。世界的なベストセラー『なぜ世界は存在しないのか』(清水一浩訳、講談社選書メチエ、2018年1月;『Warum es die Welt nicht gibt』Ullstein, 2013)に続く、待望の単独著翻訳第2弾です。版元紹介文に曰く「『なぜ世界は存在しないのか』の続編にして、一般向け哲学書「3部作」の第2巻」と。3作目は『思考の意味』(『Der Sinn des Denkens』Ullstein, 2018)で、これもいずれ翻訳されるようです。

★著者による「日本語版の出版に寄せて」にはこう書いてあります。「本書のテーマになっているのは、人間を一つの総体として、すなわち自らの自己決定において自由な、精神をもつ生き物として認識することです。〔…〕本書で名を明示し、その克服に努めることになる病とは、神経中心主義です。神経中心主義とは、私たちの精神生活は脳と同一視することができ、したがって人間を神経ネットワークに置き換えることができる、という考え方のことです。これは根本的に誤った考え方です。神経中心主義は人間をおかしくします。なぜなら、神経中心主義に侵されると、もはや私たちは自分自身を認識できなるなるからです。/本書のクライマックスは、自己決定という精神の自由を擁護することです。これはフランス革命に始まった近代民主主義の基本であり、これからもそうであり続けます」(11~12頁)。

★「人間にとって最も危険な敵は、自分自身や他者について誤ったイメージを作り上げる人間であることを、私たちは認識しなければなりません。今日広まっている危険なイデオロギーは、実は私たちとは同一視できないものを私たちと同一視することで、人間を自己決定のレベルで台無しにしています」(12頁)。「人間を機械とみなすようなイメージから私たちを解き放ち、啓蒙の精神を再び鼓舞するため、私たち皆が――生まれた土地や文化に関係なく――分かち合い、共同で活用できるような、人間の精神の自由の防衛策が今や必要です。どれほど文化の違いがあっても、私たちには共有するものがあるのです」(13頁)。

★「『「私」は脳ではない』では自由の理論が展開されます。私たちは世界から――すべてを内包する決定論的な地平線から――解放されています。つまり、徹底的に自由なのです。ですから、私たちは人間についての自然科学的研究と精神科学的研究のあいだの対話を新たなレベルに高める必要があります。なぜなら精神科学はテクノロジーや自然科学の進歩で代替できる、という誤った考えは直接的または間接的にサイバー独裁制をもたらすからです。人間が自分は何者であるかを知らないかぎり、技術をその人間のために使う理由はないからです。これを研究するのは、ですから、英語圏で言うところのヒューマニティーズ〔人文科学〕の仕事です。ヒューマニズム〔人文主義〕を攻撃する者は、人間たる自分自身を攻撃しているのです」(14~15頁)。

★ガブリエルの議論と分析は、その表題に表れているように一見するとトリッキーな部分がありますが、その内実は衒学的細部へのこだわりではなく、常識(コモンセンス)に立脚しており、それゆえに説得的です。本書の詳細目次と巻頭部分の閲覧は、書名のリンク先の「試し読み」でできるようになっています。

★『開かれた対話と未来』は、フィンランドの臨床心理士ヤーコ・セイックラ(Jaakko Seikkula)とトム・エーリク・アーンキル(Tom Erik Arnkil)による共著『Open Dialogues and Anticipations: Respecting Otherness in the Present Moment』(National Institute for Health and Welfare, 2014)の訳書です。巻頭には斎藤環さんによる「日本語版解説」が置かれ、巻末には付録として、ODNJP(オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン)作成による「オープンダイアローグ 対話実践のガイドライン」が収められています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。著者による「はじめに――本書のテーマと目指すもの」もリンク先で読むことができます。帯文には「オープンダイアローグ、これが決定版! フィンランドの創始者ふたりによるガイド、待望の翻訳」と謳われています。

★「本書ではこれから、対話について、「対話性」について、ポリフォニー(多声性)について、間主観性について、そして社交ネットワーク〔=人間関係のネットワークのこと〕について検討しようと思います。対話性とは、技法のことではありません。それはある種の立場や態度、あるいは人間関係のあり方を指す言葉です。その核心にあるのは、「他者性」というものとの根源的な関係です」(36頁)。「本書の目的は、対人援助における「対話性」の地位を高めることです。そうすることで、心理療法、精神医学、ソーシャルワーク、教育、保育、経営管理、その他多くの関連分野に、なんらかの変革がもたらされることになるでしょう」(38頁)。

★セイックラとアーンキルの共著書の訳書には、『オープンダイアローグ』(高木俊介/岡田愛訳、日本評論社、2016年3月;『Dialogical Meetings in Social Networks』Karnac Books, 2006)があるほか、共著論文や関連書なども翻訳され、人気を博しています。今後ますます読者層が広がっていく機運を感じます。

★『植物の生の哲学』は、ジョルジョ・アガンベンの弟子筋にあたるイタリアの哲学者で現在はフランスで活躍するエマヌエーレ・コッチャ(Emanuele Coccia, 1976-)による『La vie des plantes : Une métaphysique du mélange』(Rivage, 2016)の全訳です。2001年に早逝した双子の兄弟マッテオに捧げられた本書は、「植物の本性、文化と称されるものへの植物の沈黙、そのあからさまな無関心について考察しつづけたその5年間〔14歳から19歳までイタリア中部の農業高校に在籍した時期〕に生まれた思想を、よみがえらせようという試みである」(vii頁)とのこと。帯文(表4)に曰く「動物の哲学も存在論的転回もやすやすと超えて、植物の在り方から存在論を問い直す哲学エッセイ」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★山内志朗さんは巻末解説で本書から引用しつつこう評価を記されています。「植物の存在においては、世界に在るとは、必然的に〈世界を創り上げる〉ことを意味する(55頁、第7章「空気のただ中で──大気の存在論」)。そして、「植物が世界に在ること、それは空気を(再)創造する能力のうちに見いだされる」(65頁、第7章)。/「世界のうちに存在するとは、アイデンティティを共有するのでなく、常に同じ〈息吹〉(プネウマ)を共有することだ」(74頁、第7章)。〈息吹としての世界〉というイメージが現れている。「身を浸す体験」(immersion)こそ、世界に存在する実存形式なのである。私はここに、この『植物の生の哲学』の核心を見出した」(209~210頁)。

★『神経美学』は共立出版さんのシリーズ「共立スマートセレクション」の第30弾。著者の石津智大(いしづ・ともひろ)さんはロンドン大学ユニバーシティ校シニアリサーチフェロー。単独著は本書が初めてのものです。「神経美学〔neuroaesthetics〕とは、認知神経科学の新しい一分野であり、脳のはたらきと美学的経験(美醜、感動、崇高など)との関係や、認知プロセスや脳機能と芸術的活動(作品の知覚・認知、芸術的創造性、美術批評など)との関係を研究する学問です。神経科学者や心理学者だけでなく、哲学者、芸術家、美術史学者などが参画する学際領域です」(まえがき、v頁)。

★「神経美学の誕生から今日までのおよそ20年弱の成果をまとめ」た入門書である本書は、おそらく本屋さんでは理工書売場に並べられるでしょうけれど、人文書でも併売されると刺激的だと思います。今春刊行された雑誌『思想 2016年4月号:神経系人文学――イメージ研究の挑戦』(岩波書店、2019年3月)や、アンソロジー『イメージ学の現在――ヴァールブルクから神経系イメージ学へ』(東京大学出版会、2019年4月)には、石津さんの論文「神経美学の功績――神経美学はニューロトラッシュか」が収録、再録されています。『神経美学』の目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。リンク先では本書の「まえがき」などもPDFで閲覧することができます。

★また、最近では以下の新刊との出会いが出会いがありました。

吉本隆明全集20[1983-1986]』吉本隆明著、晶文社、2019年9月、本体6,800円、A5判変型上製660頁、ISBN978-4-7949-7120-3
戦争と資本――グローバルな内戦と統合された世界資本主義』エリック・アリエズ/マウリツィオ・ラッツァラート著、杉村昌昭/信友建志訳、作品社、2019年8月、本体3,800円、46判上製428頁、ISBN978-4-86182-772-3
戦下の淡き光』マイケル・オンダーチェ著、田栗美奈子訳、作品社、2019年9月、本体2,600円、46判上製294頁、ISBN978-4-86182-770-9
モーガン夫人の秘密』リディアン・ブルック著、下隆全訳、作品社、2019年9月、本体3,200円、46判上製402頁、ISBN978-4-86182-686-3

★『吉本隆明全集20[1983-1986]』は第21回配本。1983年から1986年という時期はニューアカデミズムの流行期と重なっており、戦後日本の資本主義社会がもっとも特異な輝きを見せていたかもしれない時節でした。吉本も、中沢新一、フーコー、ドゥルーズ/ガタリ、坂本龍一、ビートたけし、糸井重里、高橋留美子、コム・デ・ギャルソン、原子力エネルギーといった同時代文化のシンボルたちと本書収録の諸テクストで向き合っています。第20巻には単行本未収録が32篇もあるとのことです。その中でも、出版人として特に興味深いのは、1986年の「編集者としての安原顯」(481~492頁;初出は安原顯『まだ死ねずにいる文学のために』筑摩書房、綴じ込み栞)です。ここでは、物書きと編集者との間の緊張関係についてかなり率直な見解が述べられていますし、編集者の器量や優秀な編集者のタイプについてもはっきりと書かれています。編集者という人種がよく分からないと感じる物書きの方には、このエッセイが理解の一助となるかもしれません。

★月報21は、中島岳志さんの「「和讃」について」、岩阪恵子さんの「書く習慣」、ハルノ宵子さんの「'96夏・狂想曲」を収録。次回配本についての記載は今回は何もありませんでした。

★『戦争と資本』は、フランスの哲学者エリック・アリエズ(Éric Alliez, 1957-)と、イタリア出身でパリで活躍する社会学者マウリツィオ・ラッツァラート(Maurizio Lazzarato, 1955-)の共著『Guerres et Capital』(Éditions Amsterdam, 2016)の全訳です。主要目次は以下の通りです。

謝辞
序文 統合された世界資本主義とグローバルな内戦――われわれの敵たちへ
第1章 国家、戦争機械、通貨
第2章 本源的蓄積は続いている
第3章 戦争機械の領有化
第4章 フランス革命の二つの歴史
第5章 恒常的内戦の生政治
第6章 新たな植民地戦争
第7章 フーコーのリベラリズムの限界
第8章 シュミットからレーニンに至る収奪の優先性
第9章 総力戦
第10章 冷戦の戦略ゲーム
第11章 クラウゼヴィッツと六八年の思想
第12章 資本のフラクタル戦争
訳者あとがき 「戦争と平和」ではなく「戦争と資本」という認識への転換――資本主義とは、資本が民衆に対して永久戦争を仕掛ける体制運動である。

★序文には30項目にわたり本書の主張が先どりされており、その主文は書名のリンク先で確認することができます。そこからいくつか拾ってみます。「現在、金融資本主義が、“グローバルな内戦”を引き起こしている。経済とは、戦争の目的を別の手段により追求することである。資本主義のすべての岐路には「創造的破壊」ではなく“内戦”がある。「総力戦」体制によって、社会とその生産力の戦争経済への全面的従属が始まった。「戦争」と「平和」は、いかなる相違もなくなった。技術革新はすべて、冷戦-総力戦の「破壊のための生産」から/のなかで生まれた。民衆のなかの民衆に対する戦争は、ネオリベラリズムと負債経済のもとに開始された。資本は構造やシステムではなく“戦争機械”であり、経済・政治・技術などすべてが含まれる。資本は「エコロジー危機」を利用して、地球全体の商品化を完遂しようとしている。資本の論理とは、無限の価値化のロジスティクスであり、経済にとどまらない権力を蓄積していく。資本の権力の第一の機能は、“内戦”の存在をその記憶にまで遡って否定することである。本書の目的は、多数多様な形で進行中の本当の戦争の「うなり声」を聞かせることである。対抗しうるのは「抵抗」という現象でしかありえない」。

★「この本の目的は、経済と「民主主義」のもとで、そしてテクノロジー革命と“一般知性”という「大衆的知性」の背後において、多数多様なかたちで進行中の本当の戦争の「うなり声」を聞かせることにほかならない」(29頁)。訳者あとがきによれば「本書は、「本源的蓄積」(マルクス)、「生政治」(フーコー)、「戦争機械」(ドゥルーズ=ガタリ)といったキイ概念に依拠しながら、リベラリズムと結びついた資本が、いかに世界を「植民地化」し続け、“ネオリベラリズム”と呼ばれる現在の姿に至っているかを、豊富な文献資料を援用しながら解明した一種の「唯物論的歴史哲学」の書であると言えるだろう」(421頁)。日本では一昨年に佐藤嘉幸さんと廣瀬純さんによる『三つの革命――ドゥルーズ=ガタリの政治哲学』(講談社選書メチエ、2017年12月)というすばらしい本が出ていますが、アリエズとラッツァラートの『戦争と資本』は、フランスにおけるドゥルーズ=ガタリの思想的後継者たちによる成果と言えるのではないかと思います。

★本書に続き、原書では第二巻『資本と戦争(仮)』が続刊予定であり、そこでは「68年の奇妙な革命ならびにその革命のその後についての調査をするつもりだ」(31頁)とのことです。そこでは加速主義や思弁的実在論などの「「症候的読解」を大胆に試みることになるだろう」と予告されています。この続篇はまだ未刊ですが、関連書としてラッツァラートは今春『資本はすべての人びとを嫌悪する――ファシズムか革命か』(Le Capital déteste tout le monde: Fascisme ou Révolution, Éditions Amsterdam, 2019)という新著を上梓していることが訳者あとがきの追記で言及されています。

★『戦下の淡き光』はスリランカ生まれのカナダの作家マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje, 1943-)の長編小説『Warlight』(Jonathan Cape, 2018)の全訳。前作『名もなき人たちのテーブル』(田栗美奈子訳、作品社、2013年;『The Cat's Table』2011年)より原書では7年ぶり、訳書では6年ぶりの新刊です。出だしはこうです。「1945年、うちの両親は、犯罪者かもしれない男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消した」(6頁)。「そのころ僕は14歳、レイチェル〔主人公「僕」の姉〕はもうじき16歳だった。休暇のあいだは、母が後見人と呼ぶ人物が面倒を見てくれるという。両親による同僚だそうだ。僕らもすでに面識があった――“蛾”という名前を思いつき、そう呼んでいた。うちの家族にはあだ名をつける習慣があって、それはつまり隠しごとの多い家庭ということでもあった。すでにレイチェルは彼が犯罪者ではないかと疑い、僕にもそんなふうに話していた」(7頁)。目次は以下の通りです。

第一部
 見知らぬ人だらけのテーブル
第二部
 受け継ぐこと
 母との暮らし
 屋根の上の少年
 堀に囲まれた庭
謝辞
訳者あとがき

★「原題のwarlightは、戦時中の灯火管制の際、緊急車両が安全に走行できるように灯された薄明かりを指している。この物語全体もまた、そうしたほのかな明かりに照らされるかのように、真実がおぼろにかすみ、なかなか姿を現さない。登場人物の多くがニックネームで呼ばれ、それぞれに謎を秘めて、意外な役割を担っていたりする。主人公は、自分にとってもっとも難解な謎である母の秘密を突きとめようとするが、淡く射す光のなかを手探りで進むしかない。/著者の話によると、本書の執筆を始めたときは、冒頭の一行しか頭になかったそうだ」(訳者あとがき、293頁)。

★『モーガン夫人の秘密』はイギリスの作家リディアン・ブルック(Rhidian Brook, 1964-)の小説『The Aftermath』(Random House, 2013)の全訳。帯文に曰く「リドリー・スコット製作総指揮、キーラ・ナイトレイ主演、映画原作小説! 1946年、破壊された街、ハンブルク。男と女の、少年と少女の、そして失われた家族の、真実の愛への物語」。


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# by urag | 2019-09-16 19:47 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 15日

注目新刊:ロッコ/ジェンティーレ/ムッソリーニ『ファシズムの原理』紫洲書院、ほか

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★本日と明日の2回に分けて注目新刊について記します。まず本日は7~8月までの新刊の拾遺から。

ファシズムの原理 他三篇』アルフレード・ロッコ/ジョヴァンニ・ジェンティーレ/ベニート・ムッソリーニ著、竹本智志/下位春吉訳、紫洲書院、2019年8月、本体1,270円、B6判並製132頁、ISBN978-4-909896-02-5
ヨーロッパ憲法論』ユルゲン・ハーバーマス著、三島憲一/速水淑子訳、法政大学出版局、2019年7月、本体2,800円、四六判上製238頁、ISBN978-4-588-01097-2
神性と経験――ディンカ人の宗教』ゴドフリー・リーンハート著、出口顯監訳、坂井信三/佐々木重洋訳、法政大学出版局、2019年7月、本体7,300円、四六判上製534頁、ISBN978-4-588-01095-8
プリンシピア 自然哲学の数学的原理 第Ⅲ編 世界体系』アイザック・ニュートン著、中野猿人訳、ブルーバックス:講談社、2019年8月、本体1,500円、新書判並製368頁、ISBN978-4-06-516657-4
インスマスの影――クトゥルー神話傑作選』H・P・ラヴクラフト著、南條竹則編訳、新潮文庫、2019年8月、本体750円、文庫判542頁、ISBN978-4-240141-5
小泉八雲東大講義録――日本文学の未来のために』ラフカディオ・ハーン著、池田雅之編訳、角川ソフィア文庫、2019年8月、本体1,080円、文庫判400頁、ISBN978-4-04-400486-6
あなたと原爆――オーウェル評論集』ジョージ・オーウェル著、秋元孝文訳、光文社古典新訳文庫、2019年8月、本体880円、文庫判312頁、ISBN978-4-334-75408-2

★『ファシズムの原理』は紫洲書院のシリーズ「紫洲古典」の第3弾。ファシズムの原理をめぐる3本の論考、アルフレード・ロッコ「ファシズムの原理――ペルージャの夏季学校開会に寄せた演説(La dottrina del fascismo e il suo posto nella storia del pensiero politico)」(1925年)、ジョヴァンニ・ジェンティーレ「思想の根本原理(Idee fondamentali)」(1933年)、ベニート・ムッソリーニ「社会的・政治的原理(Dottrina politica e sociale)」(1933年)の翻訳に加え、付録として、ベニート・ムッソリーニ「組閣直後の臨時議会における就任演説」(初出:下位春吉訳『ムッソリニの獅子吼』〔大日本雄辯會講談社、1929年〕所収「登閣直後の臨時議会における第一獅子吼」)、巻末には「用語・人名索引辞書」が配されています。

★ムッソリーニの「社会的・政治的原理」から引きます。「ファシスト国家は、国民公会においてロベスピエール率いる過激派がそうしたように、自らの「神」を作り出そうなどとはしない。あるいはボリシェビズムがそうしたように、無闇にそれを人々の精神から消し去ろうとしないはしない。ファシズムは禁欲者、聖者、英雄、そして未開の人びとが素朴な心をして思い描き、祈る神そのものに敬意を払う」(81頁)。「ファシスト国家とは、力と帝国への意志である。この国におけるローマの伝統は、力という概念そのものである。ファシズムの原理において帝国とは、単に領土・軍事・貿易に関する概念ではなく、むしろ精神と道徳に関しての意味を持つものである」(同)。

★シリーズ「紫洲古典」では2019年5月に、第一弾として田辺元『歴史的現実』、第二弾として三木清『技術哲学』が刊行されています。紫洲書院(しずしょいん、と読むようです)さんの社名の由来は公式ウェブサイトによれば「洲は何者にも囚われない領域、紫という高貴な色、この二つより、紫洲書院は作られました」とのことです。目下のところアマゾン・ジャパンでの販売のみのようです。

★『ヨーロッパ憲法論』は『Zur Verfassung Europas. Ein Essay』(Suhrkamp, 2011)の全訳。「人間の尊厳というコンセプトおよび人権という現実的なユートピア」と「国際法の憲法化の光に照らしてみたEUの危機──ヨーロッパ憲法論」という2本の論考を中心に編まれたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。補遺として収められた論考3本のうち、「破綻のあとで」と「ヨーロッパ連合の運命はユーロで決まる」の2本は、初出版の翻訳が先ごろ発売された『デモクラシーか資本主義か』(三島憲一編訳、岩波現代文庫、2019年6月)にも収録されています。後者の論考の初出版タイトルは「我々にはヨーロッパが必要だ」です。

★「新自由主義の幻想が打ち砕かれたのち、誰の目にもあきらかになったのは、金融市場によって、さらにいえば国民国家の境界を越える世界社会の機能システム全般によって作りだされている問題的状況である。個々の国家――あるいは国家連合――では、もはやこれに取り組むことができない。しかし取り組む必要はあり、そこからいわば単数形の政治を求める挑戦が生じる。諸国家からなる国際的な共同体を、諸国家と世界市民からなる世界市民的な共同体へと発展させなければならないのである」(序文、7頁)。「何びとにも等しい権利をグローバルに実現せよという要求」(同、8頁)をめぐる粘り強い考察です。

★『神性と経験』は、『Divinity and Experience: The Religion of the Dinka』(Clarendon Press, 1961)の全訳。「生涯でわずか2冊しか本を残さなかったリーンハートのあの名著が、刊行から約60年を経ていよいよ邦訳なる!」と帯文に記されています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。謝辞にはこうあります。「私がエヴァンズ=プリチャード教授のナイロート研究に、とりわけヌアーの宗教についての彼の業績に恩恵を受けていることはきわめて明白だろう。しかし個人的に彼に負うことの方が大であり、その指導と友情に感謝を込めて、本書を彼に捧げる」(2頁)。監訳者の出口さんによる巻末解説では、本書への歴史学者ダクラス・ジョンソンによる評価を引用しています。曰く「その時代の流行に決して完全に拘束されることなく、後に流行となる話題やアプローチへの道を、それは指し示している。そのような本が『神性と経験』であ〔る。…〕多くの学者が、他の分野における実り豊かな研究に彼らを導いた示唆を、そこに見いだしてきた」。リーンハート(Godfrey Lienhardt, 1921-1993)はイギリスの人類学者。もう一冊の著書は翻訳されています。現在品切ですが『社会人類学』(増田義郎/長島信弘訳、岩波書店、1967年;Social Anthropology, Oxford University Press, 1964)がそれです。

★『プリンシピア 第Ⅲ編 世界体系』は、1977年版単行本の3分冊新書化の完結編。第Ⅲ編「世界体系」を収録。目次は書名のリンク先をご覧ください。「ここに「万有引力の法則」が普遍化され、確立されることになる」(カバー裏紹介文より)。全巻の結びとして書かれたという「一般注」ではニュートンの「神」観が表明されています。曰く「神は永遠にして無限、全能にして全知である。すなわち、永劫より永劫にわたって持続し、無窮より無窮にわたって偏在する。万物を統治し、ありとあらゆるもの、あるいはなされうるすべてのことがらを知っている。神は永遠や無限そのものではないが、永遠なもの、無限なものである。持続や空間が神ではなくて、神は持続し、かつ存在する。いつまでも変わらず、いたるところに存在し、かつ常住普遍の存在によって時間と空間とを構成する」(226頁)。「神はいずれの時、いずれの所においても同一の神である。神は仮想的にだけ偏在するのではなくて、実体的にも偏在するのである。なぜならば、実体なしでは効能は保てないからである。万物は神の中に含まれ、かつ動かされている〔…〕神は物体の運動から何の損害をもこうむることはないし、物体は神の遍在から何も抵抗をも受けない」(227頁)。「彼〔神〕はすべて相似たものであって、すべて眼であり、すべて耳であり、すべて頭脳であり、すべて腕であり、すべてこれ知覚し、理解し、行動する力である」(228頁)。

★『インスマスの影』はチェスタトンやブラックウッド、マッケンなど数多くの翻訳を手掛けてこられた南條竹則さんによる文庫オリジナル新訳。「異次元の色彩」「ダンウィッチの怪」「クトゥルーの呼び声」「ニャルラトホテプ」「闇にささやくもの」「暗闇の出没者」「インスマスの影」の7篇を収録。「ヨグ・ソトホートこそは、天球と天球が出会う門への鍵である。人が今支配する場所を、“かれら”はかつて支配した。“かれら”はまもなく支配するであろう――人が今支配する場所を。夏のあとに冬が来て、冬のあとに夏が来る。“かれら”は忍耐強く、力強く待っている。ここはふたたび“かれら”が統治するのだから」(「ダンウィッチの怪」91頁)、そう『ネクロノミコン』には書いてあります。

★『小泉八雲東大講義録』はちくま文庫版『小泉八雲コレクション』の一冊として2004年に刊行された池田雅之編訳『さまよえる魂の歌』から「ハーンが東京帝国大学で行った講義録16篇を選び、大幅に改訳・修正のうえ新編集したもの」とのこと。目次は書名のリンク先をご覧ください。「文章作法の心得」と題された講義ではこんなことが書かれています。「みなさんに注意を促したい最初の誤りは、創作に関することである。〔…〕教育は〔詩人や物語作家となるための〕何の助けにもならない。〔…〕創作に関する書物を読んでみても、創作の方法は学ぶことはできない。実作によってのみ習得されるという意味では、文学はまさに職人の手仕事なのである」(214頁)。

★『あなたと原爆』は文庫オリジナル評論集。1945年の表題作「あなたと原爆」や、名編として知られる「象を撃つ」など、全16篇を収録。詳細は書名のリンク先をご覧ください。「『一九八四年』に繋がる先見性に富む評論集」とカバー裏紹介文にあります。表題作は「原爆投下のわずかふた月後、その後の核をめぐる米ソの対立を予見し「冷戦」と名付けた」(カバー裏紹介文より)ものとのこと。このエッセイの最後の方にはこんな分析があります。「世界を全体として眺めれば、ここ何十年の趨勢は、無政府状態ではなく奴隷制の復活へと向かっている。我々が向かう先にあるのは、全般的な崩壊ではなく、奴隷制のあった古代帝国と同じように恐ろしくも安定した時代なのかもしれない」(16~17頁)。

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# by urag | 2019-09-15 23:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 11日

新規取引店情報:月曜社の本を置いてくださっている本屋さん

2019年9月20日(金)開店
くまざわ書店大分明野店:図書668坪
大分県大分市明野東1丁目1番1号 あけのアクロスタウン二番館(新館)2F
トーハン帳合。弊社へのご発注は芸術書と人文書の主要商品。あけのアクロスタウンはJR大分駅から東に約5キロ、車で約15分のショッピングセンター。1971年にトキハインダストリー明野センターとして開業し、幾度かの増床と改装を経て現在に至ります。紀伊國屋書店大分店(トーハン帳合、2006年4月~2019年4月7日)の閉店跡に出店です。取次さんの7月下旬時点での開店予定日は27日(金)でしたが、一週間早まったようです。開店記念キャンペーンとして、Kポイントキャンペーン、文具セール、ロゴ入りボールペンプレゼント、風船フレゼント、などが実施予定とのことです。

2019年9月27日(金)開店
誠品生活日本橋:約877坪(書籍、文具・雑貨、レストラン、食物販ほか)
東京都中央区日本橋室町3-2-1 COREDO室町テラス 2F
日販帳合。弊社へのご発注は芸術書と人文書の主要商品。台湾のチェーン複合店「誠品生活」が今月27日に開業するCOREDO室町テラス内に日本初出店。注文短冊のみで挨拶状や出品依頼書が一切来ないので、三井不動産と誠品生活と有隣堂の連盟による6月11日更新済のプレスリリースを頼ると、誠品生活は「「Books, and Everything in Between. (本とくらしの間に)」のコンセプトのもと、書店からスタートし、読書と文化の交流を育む場づくりに注力し発展してきた台湾発の文化情報発信拠点」。日本初進出となる「誠品生活日本橋」は「「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」をコンセプトに出店」。店舗設計は台湾の建築家・姚仁喜(クリス・ヤオ)氏が担当。フロアは「誠品書店(書籍)」「文具」「セレクト物販・ワークショップ」「レストラン・食物販」の4ゾーン構成。「日本初進出5ブランドを含む約50の台湾ブランドや、日本をはじめ世界中から洗練されたアイテム、フード、ワークショップなどをセレクト」とのことです。

店舗運営を担当するのは、「HIBIYA CENTRAL MARKET」(東京ミッドタウン日比谷内)などの出店で、従来の書店像を大胆にぶっ壊して賛否を集めてきた有隣堂。「文学の香りただよう書籍ゾーンから「誠品書店」独自の読書文化を提案」し、「最大の特徴である体験型イベントについては、文化人によるトークセッション、音楽イベント、アート展、料理実演など、バラエティに富んだコンテンツを定期的に展開」するとのことです。

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# by urag | 2019-09-11 12:25 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 10日

取次搬入日決定:『西洋演劇論アンソロジー』

山下純照/西洋比較演劇研究会編『西洋演劇論アンソロジー』の取次搬入日が決定しました。日販と大阪屋栗田は9月12日(木)、トーハンは9月13日(金)です。

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# by urag | 2019-09-10 16:52 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 10日

「週刊読書人」にラミング『私の肌の砦のなかで』の書評が掲載

弊社5月刊、ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』(吉田裕訳)の書評「外界を隔つ「私の肌の砦」――カリブ文学を代表する作家の〈原点〉」が「週刊読書人」2019年8月30日号に掲載されました。評者は中村隆之さんです。「素朴な人々を騙すこの非情なからくりの鋭利な観察こそ、本書が植民地問題を扱った政治小説の傑作と評される所以だろう」と評していただきました。

# by urag | 2019-09-10 14:47 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2019年 09月 08日

注目新刊:ハヴェル『力なき者たちの力』人文書院、ほか

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午前四時のブルー(Ⅲ)蜻蛉の愛、そのレッスン』小林康夫責任編集、水声社、2019年8月、本体1,500円、A5判並製128頁、ISBN978-4-8010-0343-9 
新装版 シェリング著作集 第6a巻 啓示の哲学(上)』諸岡道比古編、文屋秋栄、2019年9月、本体5,000円、A5判上製248頁、ISBN978-4-906806-07-2
原始文化(下)』エドワード・バーネット・タイラー著、松村一男監修、奥山倫明/奥山史亮/長谷千代子/堀雅彦訳、国書刊行会、2019年8月、本体6,600円、A5判626頁、ISBN978-4-336-05742-6

★『午前四時のブルー』第Ⅲ豪の特集名は、フランスの哲学者マルク=アラン・ウアクニン(Marc-Alain Ouaknin, 1957-)の著書の中でも本誌編集人の小林康夫さんが一番愛しているという『だからひとは蜻蛉〔とんぼ〕を愛する』(C'est pour cela qu'on aime les libellules, Calmann-Lévy, 1998)から採られています。編集人あとがきによれば「今号は、マルク=アラン・ウアクニンと〔舞踏家の〕工藤丈輝の二人の空駈ける蜻蛉=竜(Dragonfly)の特集ということになりました」と。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。

★ウアクニン関連では、ウアクニン自身の『だからひとは蜻蛉〔とんぼ〕を愛する』第一部「だからひとは蜻蛉〔とんぼ〕を愛する……」(髙山花子訳、33~80頁)が訳出され、小林康夫さんのエッセイ「パリ、シナゴーグの午後――マルク=アラン・ウアクニンとの出会い」、永井晋さん(東洋大学文学部教授)のエッセイ「カバリストMAO」、ウアクニンの弟子ヴァンサン・シュミットさんによるエッセイ「マルク=アラン・ウアクニンへ――心よりの感謝をこめて」の計4編を収録。『だからひとは蜻蛉〔とんぼ〕を愛する』は、いずれ水声社さんより全訳が出版されるとのことで、たいへん楽しみです。ウアクニンはウアクナンと発音される場合もあるようですが、前者のウアクニンが正しいと思われます。

★『新装版 シェリング著作集 第6a巻』は第3回配本で『啓示の哲学』上巻。燈影舎版『シェリング著作集』で2007年10月に第5b巻『啓示の哲学』として刊行されたものを底本に、加筆訂正が施されたものです。『啓示の哲学』全37講のうち、第一書「啓示の哲学への序論あるいは積極的哲学の基礎付け」(全8講、1858年)を諸岡道比古さんの訳・注・解説で収録しています。「本巻『啓示の哲学』第一書で提示された積極的哲学という考え方に基づいて、つまり、経験を通して与えられた啓示という事実を扱う積極的哲学の一つとして、「啓示の哲学」は神の実存を実証するのである。この点にこそ、第一書が『啓示の哲学』で持つ重要な意義がある。また、この思想こそ、シェリングの最終的到達点でもある」と諸岡さんは説明されています。

★ちなみに『啓示の哲学』は今回の第6a巻に続き、第6b巻(中巻)、第6c巻(下巻)と合計全3巻で全37講が全訳される予定。また、2019年9月3日現在の最新情報によれば、文屋秋栄(ふみやしゅうえい)さんでは今月末、第1a巻『自我哲学』(高山守編)を発売予定とのことです。

★『原始文化』下巻は、シリーズ「宗教学名著選」の第6巻。上巻は今年3月に刊行済です。下巻は第12章「アニミズム(二)」から第19章「結論」までを収録。巻末には、奥山史亮さんによる解題「『原始文化』初版から第六版に至る増補改訂について」と、3本の解説(長谷千代子「タイラーについて――文化人類学の視点から」、堀雅彦「タイラー『原始文化』の思想」、松村一男「タイラーと十九世紀の知的土壌」)、人名・事項・文献の、3種の索引が配されています。帯文に曰く「下巻には、アニミズム教義の概略として、転生説、死後の世界、霊の教義、霊的存在の分類、多神教、二元論、至高神、最高神を検討〔第12章~17章「アニミズム(二)~(七)」〕。次いで宗教儀礼のなかから、祈り、供犠、断食、人為的忘我、方角の決定、祓い、の発展過程を概観する〔第18章「儀礼と儀式」〕。文化の普遍的発展理論を追い求めた人類学者による、〈文化の科学〉の金字塔!」。

★シリーズ「宗教学名著選」全6巻は、2013年8月刊のエリアーデ『アルカイック宗教論集――ルーマニア・オーストラリア・南アメリカ』以来、今回で5点を刊行。残すところ第3巻、ラッファエーレ・ペッタッツォーニ『神の全知――宗教史学論集』を刊行するのみとなりました。

★まもなく発売となる、ちくま学芸文庫の9月新刊を列記します。

『世界の混乱』アミン・マアルーフ著、小野正嗣訳、ちくま学芸文庫、2019年9月、本体1,200円、文庫判304頁、ISBN978-4-480-09935-8
『改訂増補 古文解釈のための国文法入門』松尾聰著、ちくま学芸文庫、2019年9月、本体1,700円、文庫判672頁、ISBN978-4-480-09940-2
『戦略の形成――支配者、国家、戦争(上)』ウィリアムソン・マーレー/マクレガー・ノックス/アルヴィン・バーンスタイン編著、石津朋之/永末聡監訳、歴史と戦争研究会訳、ちくま学芸文庫、本体1,900円、文庫判784頁、ISBN978-4-480-09941-9
『シェーンベルク音楽論選――様式と思想』アーノルト・シェーンベルク著、上田昭訳、ちくま学芸文庫、2019年9月、本体1,300円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-09948-8
『天丼 かつ丼 牛丼 うな丼 親子丼――日本五大どんぶりの誕生』飯野亮一著、ちくま学芸文庫、2019年9月、本体1,200円、文庫判320頁、ISBN978-4-480-09951-8

★『世界の混乱』は、『アイデンティティが人を殺す』(Les Identités meurtrières, Grasset, 1998;小野正嗣訳、ちくま学芸文庫、2019年5月)に続く、小野さんによるマアルーフ作品の文庫オリジナル訳書第2弾。原書は『Le Dérèglement du monde』(Grasset, 2009)です。目次は以下の通り。Ⅰ「いつわりの勝利」、Ⅱ「さまよえる正統性」、Ⅲ「想像力による確信」、エピローグ「長すぎた歴史」、注記。訳者による解説やあとがきはありません。ただし、注記で支持されている本書の参考文献や著者自身の注釈、読書案内を掲出していたはずのウェブサイト(www.bibliographiemaalouf.com)について、2019年7月現在は閲覧できない旨が訳注で記されています。9月現在も閲覧できません。

★「私たちが生きている時代――個々の文化が日常的に他の文化と出会い、個々のアイデンティティが強固にみずからを表明する必要を感じ、個々の国や町がその内部で微妙な共生を組織しなければならない時代において、問題は、私たちの宗教的、民族的、文化的な偏見が、以前の世代よりも強まったとか弱まったとかいうことではなく、みずからの社会が暴力や狂信や混沌へと逸脱するのを私たちが防げるかどうかなのです」(72頁)。

★「問題は、日々私たちの生活を便利にしていく急速な物質的な進化と、私たちの道徳的な進化――あまりに緩慢で、このままでは私たちは物質的な進化の悲劇的結果にとても立ち向かえません――とのあいだのスピードの差なのです」(73頁)。この2箇所だけの引用ではとうてい足りません。末長く読まれるべき本です。マアルーフの真摯な警句が胸に沁みます。「あらゆる国、あらゆる都市で隣り合って暮らすさまざまな出自の人びとは今後もずっと、歪んだプリズム――紋切り型、昔からずっと続く偏見、単純なイメージーーごしにたがいを眺めるのでしょうか? 私たちの習慣と優先事項を変えて、私たちが生きるこの世界にもっと真摯に耳を傾けるときが来たと思われます。この21世紀にはもはや外国人などいないからです。「旅の同行者」しかいないのです。通りの反対側に住んでいようが、地球の反対側に住んでいようが、私たちは目と鼻の先に暮らしているも同然なのです。私たちの行為が世界中の人々に影響を及ぼし、彼らの行為もまた私たちに実際に影響を及ぼすのです」(188頁)。

★『改訂増補 古文解釈のための国文法入門』は巻末の特記によれば、本書は1973年12月に研究社より刊行された単行本の文庫化で、「1991年の改訂13版を底本とし、ルビを増やした。なお、明らかな誤りは適宜訂正した」とのことです。著者は1997年に没しており、解説「碩学の示したスタートライン」は國學院大學教授の小田勝さんがお書きになっています。「絶大な支持を得た往年のベストセラー」であり、「初学の学習者にも、プロの専門家にも有意義」と評されています。

★『戦略の形成』上巻は、2007年11月に中央公論新社より刊行された上下巻の単行本を文庫化するもの。まず上巻が9月発売で、下巻は10月発売予定です。原書は『The Making of Strategy: Rulers, States, and War』(Cambridge University Press, 1994)で、上巻には第一章「はじめに――戦略について」(ウィリアムソン・マーレー/マーク・グリムズリー著、源田孝訳)から、第十一章「決定的影響力を行使する戦略――イタリア(1882~1922年)」(ブライアン・R・サリヴァン著、源田孝訳)までが収録されています。「戦略史研究の画期的名著」(帯文より)。

★『シェーンベルク音楽論選』は1973年9月に三一書房より刊行された単行本『音楽の様式と思想』の文庫化。巻末特記によれば、原書『Style and Idea』(Philosophical Library, 1950;Univ. of California Press, 1984年)を参考にし、譜例などに訂正を加えたとのことです。ブラケット[ ]は編集部補注。巻末の文庫解説は岡田暁生さんが寄せておられます。「世評とは対照的にシェーンベルクは、自分のことを歴史を断絶させる革命家ではないと思っていた。過去を継承し、それを前へ進めるのだと考えていた。〔…〕シェーンベルクは直線的な歴史の前進を信じるモダニストであった。〔…〕彼は「過去に戻る」ことを厳しく自分に禁じていた」(340頁)と評されています。ちなみにシェーンベルクの著書が文庫化されるのはレーベルを問わず今回が初めてのことです。同書は古書で購入しようとすると1万円以上することが多かったので、まさに待望の文庫化と言えるでしょう。目次は以下の通り。

[訳者解説]アーノルト・シェーンベルクの調性感について(上田昭)
音楽の様式と思想
革新主義者ブラームス
グスタフ・マーラー
十二音による作曲
音楽における心と理性
音楽教育の方法と目的
音楽評価の基準
音楽と詩の関連性
民族的音楽について
芸術の想像と大衆性
シェーンベルクの用語について(上田昭)
訳者あとがき(上田昭)
文庫解説(岡田暁生)

★『天丼 かつ丼 牛丼 うな丼 親子丼』は文庫オリジナルの書き下ろし。どんぶり物の日本史をひもとくもの。「どんぶり物の誕生は、日本の食文化史における一つの革命であった」(「はじめに」3頁)。「ご飯の上におかずをのせるという革命は、今からおよそ200年前の文化年間(1804~18年)に起こった。鰻丼が発明され、売りにだされたのだ。〔…〕そして、鰻丼人気に支えられて、天丼、親子丼、牛丼、かつ丼といった日本人に人気のあるどんぶり物が誕生してくる。ただし、それは明治以降のこと」(同4頁)。「多くの史料にあたることで、これまで明らかにされていなかった、鰻丼が生まれた時期やその背景、天丼よりも天茶〔かきあげなどをご飯に乗せてお茶漬けにしたもの〕が先行した事実、鳥肉と鶏卵を食べるようになってもなかなか親子丼が生まれなかった理由、牛丼ブームが起きたある事情、かつ丼が生まれてくるまでの過程、等々を突き止めることができた」(同3~4頁)。大いに興味をそそられる労作です。

★また最近では以下の新刊との出会いがありました。

力なき者たちの力』ヴァーツラフ・ハヴェル著、阿部賢一訳、人文書院、2019年8月、本体2,000円、4-6判並製154頁、ISBN978-4-409-03104-9
大江健三郎とその時代――「戦後」に選ばれた小説家』山本昭宏著、人文書院、2019年9月、本体3,500円、4-6判上製330頁、ISBN978-4-409-52079-6
人類の意識を変えた20世紀――アインシュタインからスーパーマリオ、ポストモダンまで』ジョン・ヒッグス著、梶山あゆみ訳、インターシフト発行、合同出版発売、2019年9月、本体2,250円、四六判並製392頁、ISBN978-4-7726-9565-7
小説集 明智光秀』菊池寛/八切止夫/新田次郎/岡本綺堂/滝口康彦/篠田達明/南條範夫/柴田錬三郎/小林恭二/正宗白鳥/山田風太郎/山岡荘八著、末國善己解説、作品社、2019年8月、本体1,800円、46判上製236頁、ISBN978-4-86182-771-6

★『力なき者たちの力』は発売済。『Moc bezmocných』(『Spisy, sv. 4. Eseje a jiné texty z let 1970–1989. Dálkový výslech』(Praha: Torst, 1999, str. 224-330)の全訳。哲学者ヤン・パトチカの想い出に捧げられた、ポスト全体主義体制をめぐるハヴェル(Václav Havel, 1936-2011)による論考「力なき者たちの力」(1978年)と、共産党による独裁国家だったチェコスロバキア社会主義共和国時代の民主化運動文書「憲章七七」(1977年)を収録しています。

★「力なき者たちの力」から引きます。「現実と直面しない限り、「見せかけ」は「見せかけ」として見えない。「真実の生」と直面しなければ、「嘘の生」が嘘であることを暴く視点は存在しない。〔…〕ポスト全体主義体制における「真実の生」にあるのは、実存的(人間が人間らしさを取り戻す)、認識論的(あるがままの現実を明らかにする)、倫理的(他の模範となる)次元だけではない。これらにも増して、明らかに政治的次元がある。/体制の基本的な支柱が「嘘の生」であるとしたら、「真実の生」がその根本的な脅威となるのは当然である。それゆえ、「真実の生」は、何にも増して厳しく抑圧されることになる」(36頁)。

★「ポスト全体主義体制の社会では、伝統的な意味での政治的生活はすべて根絶やしにされている。人びとが公けの場で政治的見解を表明できる可能性はなく、そればかりか、政治組織を編成することも叶わない。その結果生じた隙間は、イデオロギーの儀式がことごとく埋めることになる。このような状況下、政治への関心は当然のことながら低下し、大半の人びとは、独自の政治思想、政治的活動といったものは現実離れした抽象的なもので、ある種の自己目的化した戯れでしかなく、強固な日常という心配事から絶望的に遠く離れたものと感じる」(51頁)。

★ハヴェルの言葉は、今となっては打倒された遠い国の話どころではなく、日本人が生きる現実を強烈に照射するものでもあります。日本が果たして充分に「自由で民主的」な国かどうか、疑わざるを得ない人々にとっては、本書は数少ない《信じるに足る一書》です。広く読まれることを祈るばかりです。

★『大江健三郎とその時代』はまもなく発売(9月9日取次搬入)。「大江健三郎の小説と発言を戦後社会の変遷のなかに位置づけるという、筆者の長年の課題に取り組んだ」(「あとがき」323頁)もの。「より具体的に述べると、「共同体」と「超越性」という二つの概念を意識しながら、大江の試みを戦後史のなかに置き直していく」(「はじめに」13頁)。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。

★『人類の意識を変えた20世紀』は発売済。『Stranger Than We Can Imagine: Making Sense of the Twentieth Century』(Soft Skull Press, 2015)の訳書。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「19世紀の目で見ている限り、21世紀の意味など絶対に掴めない」(13頁)と考える著者は20世紀に点在する「暗く深い森」に果敢に分け入ります。「過激な新しい概念に共通するパターン」を見出そうとする興味深い試み。

★『小説集 明智光秀』は発売済。明智光秀を題材にした小説作品の名編12篇を独自に集めたアンゾロジー。収録作品は書名のリンク先でご確認いただけます。帯文には「2020年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』視聴者必読」と謳われています。編者の末國善己さんによる解説は、古今の物語世界で描かれた、史実とは「まったく違う光秀」像の来歴に言及しており、光秀像のアクチュアリティが紹介されています。


# by urag | 2019-09-08 23:26 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)