2017年 03月 20日

注目新刊:櫂歌書房版『プラトーン著作集』、ほか

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人生の短さについて 他2篇』セネカ著、中澤務訳、光文社古典新訳文庫、2017年3月、本体900円
デカメロン 上』ボッカッチョ著、平川祐弘訳、河出文庫、2017年3月、本体1,000円
北欧の神話』山室静著、ちくま学芸文庫、2017年3月、1,000円
組織の限界』ケネス・J・アロー著、村上泰亮訳、ちくま学芸文庫、2017年3月、本体1,000円
重力と恩寵』シモーヌ・ヴェイユ著、冨原眞弓訳、岩波文庫、2017年3月、本体1,130円
口訳万葉集(上)』折口信夫著、岩波現代文庫、2017年3月、本体1,400円
『老子』――その思想を読み尽くす』池田知久訳注、講談社学術文庫、2017年3月、本体2,200円
新版 雨月物語 全訳注』上田秋成著、青木正次訳注、講談社学術文庫、2017年3月、本体1,650円
アルキビアデス クレイトポン』プラトン著、三嶋輝夫訳、講談社学術文庫、2017年3月、本体820円
『プラトーン著作集 第六巻 善・快楽・魂 第一分冊 第一アルキビアデース/ヒッパルコス/第二アルキビアデース』水崎博明訳、櫂歌全書16/櫂歌書房発行、星雲社発売、2017年2月、本体2,800円
『プラトーン著作集 第六巻 善・快楽・魂 第二分冊 プロータゴラース』水崎博明訳、櫂歌全書17/櫂歌書房発行、星雲社発売、2017年2月、本体2,200円
『プラトーン著作集 第六巻 善・快楽・魂 第三分冊 ピレーボス』水崎博明訳、櫂歌全書18/櫂歌書房、星雲社発売、2017年2月、本体2,800円
『プラトーン著作集 第七巻 自然哲学 ティーマイオス/クリティアース』水崎博明訳、櫂歌全書19/櫂歌書房、星雲社発売、2017年2月、本体3,000円
復刻版 きけ小人物よ!』ウィルヘルム・ライヒ著、片桐ユズル訳、赤瀬川源平挿画、新評論、2017年2月、本体2,000円

★まずは文庫新刊から。光文社古典新訳文庫のセネカ『人生の短さについて 他2篇』は表題作のほか、「母ヘルウィアへのなぐさめ」と「心の安定について」を収録。岩波文庫版では樋口勝彦訳(『幸福なる生活について 他一篇』1954年;「人生の短さについて」を併載)、茂手木元蔵訳(『人生の短さについて 他二篇』1980年;「心の平静について」「幸福な人生について」を併載)、大西英文訳(『生の短さについて 他二篇』2010年;「心の平静について」「幸福な人生について」を併載)という風に長く読み継がれてきた名著です。「母ヘルウィアへのなぐさめ」は文庫では初訳(単行本としては大西英文訳が岩波書店版『セネカ哲学全集(2)倫理論集Ⅱ』2006年に、茂手木元蔵訳が東海大学出版会〔現・東海大学出版部〕『セネカ道徳論集』1989年に収録)。皇帝ネロの教育係を務め、自死を命じられた哲人の言葉は二千年の時を超えて今なお読む者の胸に刺さります。ローマ帝国の爛熟期と現代社会がどこか似ているからでしょうか。

★次に河出文庫。平川訳『デカメロン』は親本が2012年刊。全3巻で文庫化。文庫での同作の既訳には、柏熊達生訳(既刊2巻、世界古典文庫、1948~49年;全10巻、新潮文庫、1954~56年;全3巻、ちくま文庫、1987~88年)、野上素一訳(全6巻、岩波文庫、1949~59年)、高橋久訳(全5巻、新潮文庫、1965~66年)、河島英昭訳(上下巻、講談社文芸文庫、1999年)などがありますが、現在も新本で入手可能なのは河島訳のみ。平川訳には長編の訳者解説が付されていて、上巻では第一章「西洋文学史上の『デカメロン』」、第二章「新訳にあたって」を収録。中巻は4月6日発売予定。

★次にちくま学芸文庫。山室静『北欧の神話』は筑摩書房版「世界の神話」シリーズで刊行された単行本(1982年)の文庫化。訳書ではなく、解説を交えた再説本。ですます調が柔らかく、若年の読者層にも訴求するのではないかと思います。アロー『組織の限界』は岩波書店の単行本(初版、1976年;岩波モダンシラシックス、1999年)からのスイッチ。文庫版オリジナルの巻末解説は慶応大学経済学部教授の坂井豊貴さん。「読者は本書『組織の限界』から、情報という厄介なもの、そして信頼という貴重な資産について、考えさせられることになるだろう」(162頁)という結語に至る前半部の論説がユニーク。

★続いて岩波文庫および岩波現代文庫。『重力と恩寵』は『自由と社会的抑圧』(2005年)、『根をもつこと』(上下巻、2010年)に続く、冨原眞弓さん訳による岩波文庫のヴェイユ新訳本。文庫の既訳には田辺保訳(講談社文庫、1974年;ちくま学芸文庫、1995年)があります。『口訳万葉集』は全三巻予定の上巻。解説「最高に純粋だった」は文芸評論家の持田叙子さんによるもの。中公文庫版「折口信夫全集」では第4巻と5巻の上下巻でした(1975~76年)。

★最後に講談社学術文庫。池田知久訳注『『老子』』は『淮南子』『荘子』に続く、同文庫での池田さんによる懇切な訳注本。『老子』の「諸思想を総合的・体系的に解明し、一般読者にその諸思想のありのままの内容を分かりやすい形で提供しよう」(凡例より)というもので、巻末には原文・読み下し、現代語訳がまとめられています。同文庫では、金谷治さんによる訳解本である『老子』が1997年に刊行されていますが、それを残しつつ新刊も出すという講談社さんの姿勢は好ましいですし正しいです。青木正次訳注『新版 雨月物語 全訳注』は同文庫の同氏による訳注本上下巻(1981年)を再構成し、一巻本としたもの、とのことです。原文(原文が漢文の場合は読み下し付き)、現代語訳、語文注、考釈という構成。プラトン『アルキビアデス クレイトポン』三嶋輝夫訳は文庫オリジナルの新訳。訳者の三嶋さんは同文庫ではプラトンの『ラケス』を1997年に、『ソクラテスの弁明・クリトン』を1998年に上梓されています。「アルキビアデス」の副題は「人間の本性について」、「クレイトポン」は「徳の勧め」です。

★続いて単行本新刊。水崎博明訳『プラトーン著作集』(全10巻27冊予定)は、福岡の出版社「櫂歌書房(とうかしょぼう)」さんより刊行中の個人全訳。第六巻第一分冊に収められたのは「第一アルキビアデース――人間の本性について」「ピッパルコス――利得の愛好者」「第二アルキビアデース――祈願について」。短期間に先述の三嶋訳とこの水崎訳の二つの新訳が上梓されたわけで、驚くべき成果です。櫂歌書房は星雲社扱いで、基本的にパターン配本はないでしょうから、大型書店でも限られた店舗でしか見かけないかもしれませんが、取り寄せは比較的に容易ですから、買い逃す手はありません(ネット書店の場合、アマゾンよりもhontoの方が便利です)。ここまで既刊15巻が上梓されていますが、2月付で4点を発行。2011年2月の第1回配本以降、27冊中19巻までたどり着いたことになります。最新巻である第七巻は「自然哲学」部門であり、「ティーマイオス」と「クリティアース」が一冊にまとめられています。次回配本は順番通りであれば第八巻「人間存在の在るところ」部門となり、三分冊の「国家」に「クレイトポーン」が含まれることになります。全巻共通の感動的な「序」の冒頭には、水崎さんの恩師の言葉が刻まれています。「しかし、プラトンは、僕は思うが、未だ誰一人にも読まれてはいないのだ」。

★ライヒ『復刻版 きけ小人物よ!』片桐ユズル訳は、太平出版社版『W・ライヒ著作集』第4巻(1970年)の復刻。旧版は刊行10年余の間に10刷を数えるロングセラーでした。復刻にあたり、巻頭には訳者による「復刻に寄せて――訳者巻頭言」が新たに付されています。赤瀬川源平さんによる挿画本であることを知っているのは中年以上の世代でしょうから、若い読者には新たな出会いとなることと思います。しかし、本書が素晴らしいのは赤瀬川さんの超現実主義的な挿画による以上にその内容です。「小人物よ、あなたがどんなであるかあなたは知りたいでしょう。あなたはラジオで便秘薬や歯みがきやデオドラントの広告を聞く。しかしあなたにはプロパガンダの音楽は聞こえない。あなたの耳をとらえようとしてつくられているこれらのものの吐き気のするような悪趣味と底知れぬおろかしさをあなたはわからないでいる。ナイトクラブの司会者たちがあなたについてしゃべっている冗談をちゃんときいたことがありますか? あなたについて、かれ自身について、あなたのみじめなちっぽけな世界のすべてについての冗談。あなたの便秘薬の広告をきいてあなたがどんなふうな、どんな人間であるかを知りなさい」(53頁;旧版では59頁;おそらくこの言葉に読者の方が見覚えがあるとしたらそれは、キィの名著『メディア・セックス』の引用だからかもしれません)。実を言えば私はこの著作をドイツ語原書からの新訳で再刊したいと念願してきましたが、今まで果たせずにきました。片桐訳は英訳からの重訳ではあるものの、充分に読み応えがある名訳です。ちなみに太平出版社のライヒ著作集は全10巻のうち半分まで刊行されて途絶しましたが、未刊の半分はすべて他社から翻訳が出ているので、既訳を利用すれば全10巻を再現できます。今こそライヒを再評価すべき時です。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

無名鬼の妻』山口弘子著、作品社、2017年3月、本体1,600円、46判上製468頁、ISBN978-4-86182-624-5
『触れることのモダニティ――ロレンス、スティグリッツ、ベンヤミン、メルロ=ポンティ』高村峰生著、以文社、2017年2月、本体3,200円、菊判上製314頁、ISBN978-4-7531-0339-3
ドゥルーズと多様体の哲学――二〇世紀のエピステモロジーにむけて』渡辺洋平著、人文書院、2017年2月、本体4,600円、4-6判上製370頁、ISBN978-4-409-03093-6
ラカン 真理のパトス――一九六〇年代フランス思想と精神分析』上尾真道著、人文書院、2017年3月、本体4,500円、4-6判上製344頁、ISBN978-4-409-34050-9
フクシマ6年後 消されゆく被害――歪められたチェルノブイリ・データ』日野行介/尾松亮著、人文書院、2017年2月、本体1,800円、4-6判並製208頁、ISBN978-4-409-24115-8
日本人のシンガポール体験――幕末明治から日本占領下・戦後まで』西原大輔著、人文書院、2017年3月、本体3,800円、4-6判上製312頁、ISBN978-4-409-51074-2
近代皇族妃のファッション』青木淳子著、中央公論新社、2017年3月、本体4,000円、A5判上製416頁、ISBN978-4-12-004957-6
ユネスコ番外地 台湾世界遺産級案内』平野久美子編著、中央公論新社、2017年3月、本体1,400円、A5判並製128頁、ISBN978-4-12-004959-0
西洋美術の歴史7 19世紀:近代美術の誕生、ロマン派から印象派へ』尾関幸/陳岡めぐみ/三浦篤著、中央公論新社、2017年2月、本体3,800円、B6判上製600頁、ISBN978-4-12-403597-1

★まず作品社さんの新刊。山口弘子『無名鬼の妻』は帯文に曰く「悲劇の文人・村上一郎との波瀾の半生。海軍主計中尉との出会いから、その壮絶な自死まで。短歌と刀を愛した孤高の文人・村上一郎の悲運に寄り添い支え続けた妻、93歳の晩晴!」と。「戦後、ジャーナリスト、編集者として活躍し、思想家であり、文芸評論家で、小説も書き、日本の古典と詩歌をこよなく愛した歌人でもあった」(「プロローグ」より)村上一郎(1920-1975)さんの伴侶だった人形作家、長谷えみ子さんの半生を取材した本です。無名鬼とは村上さんが創刊した文芸誌の名前。貴重な証言から成る無類の一冊です。

★次に以文社さんの新刊。高村峰生『触れることのモダニティ』は、イリノイ大学大学院へ2011年に提出された英文の博士論文『Tactility and Modernity』を日本語に直し、大幅な改稿と増補を施したもの。序論「触覚とモダニズム」、第一章「後期D・H・ロレンスにおける触覚の意義」、第二章「スティーグリッツ・サークルにおける機械、接触、生命」、第三章「ヴァルター・ベンヤミンにおける触覚の批判的射程」、第四章「触覚的な時間と空間――モーリス・メルロ=ポンティのキアスム」、結論、あとがき、という構成。結論の末尾近くで著者はこう記しています。「本稿が検討したモダニストたちの多くは〔・・・〕接触〔contact〕のエピファニー的な性質に言及していた。彼らは触覚=接触が西洋の伝統的な時間・空間概念、ならびに主体と世界との静的な関係に挑戦すると考えたのだ」(244頁)。

★続いて人文書院さんの新刊。渡辺洋平『ドゥルーズと多様体の哲学』は博士論文を増補改訂したもの。多様体(multiplicité)とはドゥルーズにおいて「特殊な個体化のあり方をとらえるために考案された概念であり、ひとつの固定した人格や性格、性別、あるいは種や類、主体と言った概念とは全く異なる思考法のために創造された概念である」(222頁)と著者は解説します。生成変化や此性、固有名もそこに連なります上尾真道『ラカン 真理のパトス』は21日(火)取次搬入でまもなく発売。ラカンの1960年代の仕事の解明を目指したもので、2011年から2016年にかけて発表してきた成果に書き下ろし(第七章「科学の時代の享楽する身体」)を加えた一書。著者の単独著第一作です。日野行介/尾松亮『フクシマ6年後 消されゆく被害』は、福島における小児甲状腺がんの多発と原発事故の因果関係をなんとか誤魔化そうとする国、県、医師たちの卑劣さを追及した痛烈な本。「情報がいびつにシャットダウンされた社会で、民主主義はありうるのだろうか」(199頁)という言葉が胸に刺さります。西原大輔『日本人のシンガポール体験』は巻頭の「はじめに」によれば、「主に幕末から戦後に至る百年あまりの間に、日本人が旅行記に記録し、絵画に描き、文学の舞台とし、音楽や映画の題材としたシンガポールのイメージを論じたもの」で、「日本人の眼に映ったシンガポールの姿を日本文化史の中に探り、その全体像を描こうと試みた」もの。元は日本シンガポール協会の機関誌に2000年から2011年まで連載された文章とのことです。

★最後に中央公論新社さんの新刊です。青木淳子『近代皇族妃のファッション』は博士論文をもとに書籍化。「日本人の洋装化、生活文化の近代化をリードした皇族妃たち」(帯文より)を研究したもので、梨本宮伊都子妃と朝香宮允子妃の例が詳細に検討されています。カラーを含む図版多数。著者は婦人画報社の編集者を務めたご経験もおありです。細野綾子さんによる組版と装丁が美しいです。『ユネスコ番外地 台湾世界遺産級案内』は書名の「級」の字がミソ。「台湾には世界遺産が一つもない」(帯文より)ながら、素晴らしい自然と文化に恵まれており、本書ではオールカラーで18の名所が紹介されています。『西洋美術の歴史』第7巻は第5回配本。「今ここにあるものこそ美しい。革新と多様性の世紀」(帯文より)と謳う本書では19世紀が扱われ、「多様なベクトルが作用して、坩堝のような混沌」(序章、39頁より)が描出されています。

◎『西洋美術の歴史』既刊書と次回配本(すべて本体価格は3,800円)

2016年10月:第4巻「ルネサンスⅠ:百花繚乱のイタリア、新たな精神と新たな表現」小佐野重利/京谷啓徳/水野千依著、ISBN978-4-12-403594-0
2016年11月:第6巻「17~18世紀:バロックからロココへ、華麗なる展開」大野芳材/中村俊春/宮下規久朗/望月典子著、ISBN978-4-12-403596-4
2016年12月:第2巻「中世Ⅰ:キリスト教美術の誕生とビザンティン世界」加藤磨珠枝/益田朋幸著、ISBN978-4-12-403592-6
2017年01月:第1巻「古代:ギリシアとローマ、美の曙光」芳賀京子/芳賀満著
2017年02月:第7巻「19世紀:近代美術の誕生、ロマン派から印象派へ」尾関幸/陳岡めぐみ/三浦篤著、ISBN978-4-12-403593-3
2017年03月:第3巻「中世Ⅱ:ロマネスクとゴシックの宇宙」木俣元一/小池寿子著、ISBN978-4-12-403593-3

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# by urag | 2017-03-20 16:39 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 17日

ブックフェア「美と崇高の表象文化論」@東大生協駒場

◎『崇高の修辞学』刊行記念ブックフェア「美と崇高の表象文化論」

期間:2017年3月21日~4月26日(終了予定)
場所:東京大学消費生活協同組合駒場書籍部(コミュニケーションプラザ北館1階)

内容:東大UTCP出身の新星・星野太氏の『崇高の修辞学』(月曜社)刊行を記念し、ブックフェア「美と崇高の表象文化論」を開催します。星野氏の選書リストに加えて、関連書籍を集めました。美学・表象文化論・現代思想にまたがる氏の思想圏を自薦コメントと共にご紹介します。みなさまのご来店をお待ちしております。

※月曜社より・・・長期品切本だった『表象04:パフォーマンスの多様体──エンボディメントの思想/ドゥルーズの逆説的保守主義』と『表象08:ポストメディウム映像のゆくえ/ドゥルーズの時代』を特別出品しています。「表象」誌のドゥルーズ特集はこの2号のみ。4号では共同討議「ドゥルーズの逆説的保守主義」(國分功一郎+佐藤嘉幸+千葉雅也)。8号では共同討議「『ドゥルーズの哲学原理』と『動きすぎてはいけない』」(國分功一郎+千葉雅也+堀千晶+佐藤嘉幸)などを収録。その他目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。どうぞお早目に。

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# by urag | 2017-03-17 18:02 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 15日

続報:星野太トークイベント@代官山蔦屋

代官山蔦屋書店さんで販売中だった星野太『崇高の修辞学』初版本がついに売り切れてしまいました。近々に2刷が入荷する予定ですので、よろしくお願いいたします。なお、来週金曜日(3月24日)に迫りました同店での星野さんのトークイベント「『崇高の修辞学』――その構造と生成(仮)」は、同店で同書をご購入のお客様には無料で参加券をお渡しできます。他店でお買い上げ、もしくはイベントのみのご参加のお客様にはイベント参加券を税込1000円でお分けしています。店頭もしくはオンラインストア(こちらは22日まで。イベント名のリンク先よりご利用いただけます)にて受付中です。

なお、イベントへのご来場者様には当日、書き下ろし特別小冊子をプレゼントします。『崇高の修辞学』本編未収録の覚書「超越論的な修辞学」および、人文コンシェルジュ宮台由美子さんとの一問一答「星野太さんに聞く」が収録されています。表紙別でA5判2段組全12頁、読み応えがあります。限定ナンバリング付で、ご来場順に若い番号からお渡しすることになると思われます。

さらにこの星野さんのイベント当日には、蔦屋さんの次回の催事(國分功一郎×大澤真幸トークショー「中動態と自由――『中動態の世界』(医学書院)刊行記念」2017年05月10日(水) 代官山蔦屋書店1号館2階イベントスペース)の予告として、國分さんの新刊『中動態の世界』がイベント会場にて部数限定で都内初売となると聞いています。この対談イベントにはすでに多数の参加予約があり、残席が少なくなってきた、とも耳にしました。星野さんのイベントにご予約済のお客様で、國分×大澤対談へのご予約(イベント参加権付の書籍は税込2,500円、イベントのみの参加券は1,000円)をご希望される方は、お早目に代官山蔦屋書店人文フロア(電話03-3770-2525)までご一報いただいた方がいいかもしれません。【3月18日追記:國分×大澤対談イベントは定員満席となったとのことです。キャンセル待ちはできないようです。なお、星野イベントの当日に國分さんの新刊の販売が行われることに変更はありません。ご来場者に限り、いち早くご購入いただけます。】

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なお『崇高の修辞学』は現在アマゾン・ジャパンでもついに品切になってしまいましたが、いずれ重版分が在庫として入荷予定です。お待たせして申し訳ございません。

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2017年3月17日追記:代官山蔦屋書店さんでのイベント用「限定小冊子」が完成しました。A5判2段組全12頁、1万字に及ぶボリュームです。限定100部ナンバリング付。また、本日『崇高の修辞学』2刷がようやくできあがりました。

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# by urag | 2017-03-15 22:25 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 15日

4月下旬発売予定新刊:『表象11:ポスト精神分析的主体の表象』

2017年4月18日取次搬入予定 *人文・思想

表象11:ポスト精神分析的主体の表象
表象文化論学会=編【表象文化論学会=発行、月曜社=発売】
本体予価2,000円 A5判並製312頁 ISBN978-4-86503-045-7

アマゾン・ジャパンにて予約受付中

人工知能の爆発的発展、ビッグデータによる管理の遍在化、アルゴリズムを介した行動予測──人間が「内面」や「無意識」といった深みなしに捉え返されつつあるいま、「自己」や「心」はどこにあるのか? それはいかなる「主体」なのだろうか? 本特集では、ラカンの精神分析(ミレール派)と認知科学の自然主義との交錯、自閉症の前景化といった現象に着目しながら「ポスト精神分析的主体」の光景をめぐって討議する。特別掲載として、シェイクスピアのソネットを翻訳したツェランについてのペーター・ソンディの未邦訳批評を紹介。

目次:
◆巻頭言「表象からのこの不気味な撤退は何を意味しているのだろう?」佐藤良明
◆特集「ポスト精神分析的主体の表象」
 共同討議「精神分析的人間の後で──脚立的超越性とイディオたちの革命」千葉雅也+松本卓也+小泉義之+柵瀨宏平
 「因果的決定論から悲劇的行為へ──精神分析的主体をめぐって」柵瀨宏平
 「個の認知から相互行為的認知へ──行為のマイクロ分析から」細馬宏通
 「自己・再帰性・異種混交性──手帳術本の再分析を中心に」牧野智和
 「無意識と語る身体」ジャック゠アラン・ミレール|山﨑雅広+松山航平訳
 「ただひとつの生──生物学的抵抗、政治的抵抗」カトリーヌ・マラブー|星野太訳
◆特別掲載「シェイクスピア没後400年」
 「Poetry of Constancy/変わらなさの詩法──シェイクスピアのソネット105番のツェランによる翻訳について」ペーター・ソンディ|清水一浩訳
◆論文
 「合生的形象──ピカソ他《ラ・ガループの海水浴場》における物体的思考プロセス」平倉圭
 「理性の使用価値──ジョルジュ・バタイユのサド論について」井岡詩子
 「保存修復とX線の「暴力性」──キャサリン・ジルジュ《スザンナと長老達:修復後》(1998)をてがかりに」田口かおり
 「モデルに倣う──ファッションにおけるパターンの出現」平芳裕子
 「二重記述へのステップ──デヴィッド・ダンの《樹の中の光の音》における科学的視座の役割」岡崎峻
 「映像化される『雁』の世界──戦後日本映画における女性表象の生成過程をめぐって」北村匡平
◆書評
 「貧しさについて――池野絢子『アルテ・ポーヴェラ』書評」松浦寿夫
 「〈絶滅の文化〉としての演劇、その未来のために――内野儀『「J演劇」の場所』書評」小澤英実
 「身体で読む身体の喜悦――沖本幸子『乱舞の中世』書評」武藤大祐
 「古典的ハリウッド映画の継承/異化――小野智恵『ロバート・アルトマン 即興性のパラドクス』書評」山本祐輝
 「苛烈な闘争の記録――木下千花『溝口健二論』書評」蓮實重彦
 「〈原子力〉に対して哲学は何をなしうるか――佐藤嘉幸・田口卓臣『脱原発の哲学』書評」渡名喜庸哲
 「「不実なる忠実さ」の系譜――竹峰義和『〈救済〉のメーディウム』書評」海老根剛
 「「ポスト真実」時代のアートヒストリー――田中純『過去に触れる』書評」高山宏
 「「過剰」の効用――長木誠司『オペラの二〇世紀』書評」広瀬大介
 「ポピュラー音楽とメディエーション:グローバル化したアメリカ音楽と日本(そして韓国)――東谷護『マス・メディア時代のポピュラー音楽を読み解く』書評」佐藤守弘
 「ロシア現代思想というブルーオーシャン――乗松亨平『ロシアあるいは対立の亡霊』書評」東浩紀
 「〈無国籍者〉の映画論――御園生涼子『映画の声』書評」中村秀之

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# by urag | 2017-03-15 22:16 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 15日

「図書新聞」にカッチャーリ『抑止する力』の書評

弊社12月刊、マッシモ・カッチャーリ『抑止する力』(上村忠男訳)について、「図書新聞」2017年3月18日号に書評「オレンジとバカにされている偉そうなジジイのアポカリプスとともに、アメリカのいたるところは主の到来を待ち望む人たちによって埋め尽くされようとしている」が掲載されました。評者は篠原雅武さんです。本書の難解な部分を丁寧に解きほぐし、「カッチャーリの本は反時代的に見えて、未来を予見する本として読むことができる」と評していただきました。本書とアメリカの情勢を合わせて読み解くという非常にアクチュアルな書評を寄せて下さった篠原さんに深く御礼申し上げます。

ちなみにオレンジというのは、米国の現大統領の一風変わった日焼け顔を揶揄して言う表現として知られているようです。興味深いですね。
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# by urag | 2017-03-15 17:49 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 14日

メモ(15)

「NHKニュース」2017年3月12日1時39分付動画記事「TSUTAYA展開の会社 徳間書店を傘下に入れる方針固める」に曰く「関係者によりますと、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブは、子会社のカルチュア・エンタテインメントを通じて、「徳間書店」の議決権のある株式のおよそ96%を取得する方針を固めました。/カルチュア・コンビニエンス・クラブは、すでに子会社を通じて徳間書店の議決権のある株式のおよそ15%を持っていて、さらに保有する株式を議決権付きに転換するなどして、今月中にも徳間書店を傘下に入れることにしています」と。さらに「今回、徳間書店を傘下に入れることで、出版事業を強化し、そのコンテンツやノウハウを書店の店作りや電子書籍の配信などに活用する狙いがあるものと見られ、厳しい経営環境にある出版業界の新たな動きとして注目を集めそうです」とも報じられています。

「ORICON NEWS」3月14日11時9分付記事「CCC、「徳間書店を子会社化」報道にコメント」などが報じているようにCCCは広報より「本日の一部報道に関するお知らせ」として「本日、一部報道機関において、CCCグループのカルチュア・エンタテインメント株式会社が出版社の株式を取得し子会社化するという報道がなされておりますが、当社が発表したものではございません。/今後、開示すべき事実が決定した場合は、お知らせいたします」とコメントを出していますが、以後各紙からも報道が出ている状況です。

関連記事には以下のものがあります。

「産経ニュース」3月14日11時23分付記事「ツタヤ親会社が徳間書店を買収へ 出版やコンテンツ増強、96%出資で子会社化
「日本経済新聞」3月14日11時29分付記事「CCC、徳間書店を買収へ 数億円追加出資
「時事通信」3月14日12時54分付記事「TSUTAYA、徳間書店を子会社化=出版事業強化
「TBSニュース」3月14日14時16分更新動画記事「TSUTAYA運営会社、徳間書店を傘下に

「日本著者販促センター」のウェブサイトに転載されている「新文化」紙発表による、「丸善ジュンク堂書店 2016年 出版社別 売上げ ベスト 300」では、徳間書店は40位(前年度31位)で、同紙発表の、「2016年 紀伊國屋書店 出版社別 売上ベスト300社」では34位(前年度30位)で、下降気味とはいえ、ベスト50位以内に入る大出版社です。以前当ブログでも確認した通り、CCCの傘下版元にはCCCメディアハウスや美術出版社、ネコ・パブリッシング、復刊ドットコム、光村推古書院などがあり、今後もますます増えていくのかもしれませんし、書店、取次、版元、IT企業、印刷会社、等々を巻き込んだ、上位企業をターゲットにした業界再編が進むのかもしれません。

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2017年3月18日付追記:「Business Journal」2017年3月18日付、ジャーナリストの日向咲嗣氏による記名記事「ツタヤ図書館、ダミー本3万5千冊に巨額税金…CCC経営のカフェ&新刊書店入居」は痛烈。ホンモノの本よりダミー本(「ダミーで見た目だけを整えて集客するためのインテリア」)、国の補助金、800メートルしか離れていない場所に中央図書館、駅ビル開発ありき、傲慢な市議会、「公共性を無視した指定管理の典型」。・・・この手の図書館に違和感を抱く出版人がますます増えそうな予感です。

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2017年3月30日追記:「朝日新聞」2017年3月30日付、黒田健朗氏記名記事「「ツタヤ図書館」批判の投書、市幹部らが投稿者宅を訪問」(ヤフーニュース版)によれば、「佐賀県の武雄市図書館に関して、市民が市の施策を批判する投書を新聞〔佐賀新聞3月4日付〕にしたところ、「事実誤認」があるとして市幹部らが投稿者や家族を訪問した。市議会一般質問でも市議が投稿者を個人情報を交えて批判。こうした直接の働きかけについて「圧力になりかねない」「反論は紙面ですべきだ」という指摘がでている」と。

記事によれば市こども教育部は「内容の数カ所が市の見解と異なり「事実誤認」だと判断。3月6日に水町直久理事ら3人が男性宅を訪れた。男性は「一部説明不足や数字の誤りはあったが、自分の主張に間違いはない」などと話したという。翌7日には諸岡隆裕・こども教育部長が男性の家族の職場に行き、投稿内容について説明した」。さらに「9日の市議会一般質問では、山口昌宏市議〔自民党〕が投書を「あることないこと書いてある」と批判。市側に対応などをただした。山口市議は男性を名字で挙げたうえで、家族について職業や、仕事柄、市図書館にも縁があることに触れ、「そういう中でこの投稿は通常ありえない」「当たり前のことを書かないで、皆さん方に迷惑をかけている」などと男性を批判した」と。

市職員が男性の自宅のみならず、男性の家族の職場に出向くというのは異常です。さらに市議が名指しで議会で一般市民の個人情報をあげつらって批判するのも異常。武雄市では「例の」樋渡啓祐元市長が「反対者に対する過剰な攻撃性」を指摘された過去があり、こうした市や市議会による市民の口封じはまったく不名誉の上塗りでしかありません。出版社はちゃんと見てますよ、これからも。

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# by urag | 2017-03-14 15:37 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 12日

注目新刊:森元斎『アナキズム入門』ちくま新書、ほか

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アナキズム入門
森元斎著
ちくま新書、2017年3月、本体860円、新書判272頁、ISBN978-4-480-06952-8

帯文より:「森元斎は共が飢えていたらパンをかっぱらってでも食わしてくれる。魂のアナキストだ。アニキ!!」栗原康氏推薦!

カバーソデ紹介文より:国家なんていらない。資本主義も、社会主義や共産主義だって要らない。いまある社会を、ひたすら自由に生きよう――そうしたアナキズムの施行は誰が考え、発展させてきたのか。生みの親プルードンに始まり、奇人バクーニン、聖人クロポトキンといった思想家、そして歩く人ルクリュ、暴れん坊マフノといった活動家の姿を、生き生きとしたアナーキーな文体で、しかし確かな知性で描き出す。気鋭の思想史研究者が、流動する瞬間の思考と、自由と協働の思想をとらえる異色の入門書。

目次:
はじめに
第一章 革命――プルードンの智慧
第二章 蜂起――バクーニンの闘争
第三章 理論――聖人クロポトキン
第四章 地球――歩く人ルクリュ
第五章 戦争――暴れん坊マフノ
おわりに
引用文献

★発売済。デビュー作『具体性の哲学――ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考』(以文社、2015年)が胚胎していたアナキズム思想への枝分かれが、ついに開花へと転じていくさまを感じさせる、鮮烈な一冊が生まれた、というのが第一印象です。文体は盟友である栗原康さんとの共振を感じさせ、短く畳みかけていく音楽性が心地よいです。「本当は、みんなアナキストだ」(13頁)、「反国家を掲げずとも、皆アナキストでしかない。そしてコミュニストでしかない」(14頁)。生きている限りお互い助け合う関係(17頁)、「互酬性なき贈与の関係」(18頁)、それをアナキズム、コミュニズム、アナルコ・コミュニズムの基底に見るところから本書は出発します。「相互扶助を行っていた種こそが常に子孫を残し、?栄していった。虫のほとんどは、群れをなして、何千年も生きているではないか! 人間だって、そうだろう。アナルコ・コミュニズムはいたるところにあるし、それが基盤にある。私たちは虫である、動物である、人間である、自然である。ただ生きている。生そのもののあり方、それがアナルコ・コミュニズムなのではないだろうか」(20頁)。

★本書は目次にある通り、過去の様々なアナキストの活躍を活写するもので、権威権力上司先生からの抑圧に日々うんざりしている人々すべてに「暴れる力」(参照:栗原康『現代暴力論――「あばれる力」を取り戻す』角川新書、2015年)を思い出させてくれます。おそらく「暴れる力」、爆発的な生命力は、本当は誰しもが幼い頃には持ち合わせていた何かではなかったかと思います。「大人しさ」とは対極的なこの力が自分の中にもまだあることを本書は教えてくれる気がします。実に爽快な一書です。ネタバレはやめておきますが、あとがきの最後にある一言も素敵です。アナキスト人類学者であるグレーバーの『負債論――貨幣と暴力の5000年』(酒井隆史監訳、高祖岩三郎・佐々木夏子訳、以文社、2016年11月)がよく売れた書店さんなら、森さんの『アナキズム入門』も必ず売れると思います。ちょうどひと月前、森さんと栗原さんはほかならぬ『負債論』をめぐるトークイベントを某書店さんで行っています。

★なお、森さんが「現在の私たちが読むべき本だと本当に思う」と激賞されているクロポトキンの『相互扶助論』は先月、「〈新装〉増補修訂版」が同時代社から発売されています。大杉栄訳。内田樹さんはこの本に次のような推薦文を寄せておられます「定常経済・相互扶助社会は「夢想」ではなくて、歴史の必然的帰結です。意図的に創り出さなくても、自然にそうなります。この企ての合理性が理解できない人たちは「弱者を支援するために作られた組織」の方が「勝者が総取りする組織」よりも淘汰圧に強いということを知らないのでしょう。――『相互扶助論』をぜひお手に取って頂きたいと思います。クロポトキンは相互扶助する種はそうしない種よりも生き延びる確率が高いという生物学的視点からアナーキズムを基礎づけようとしました。なぜアナーキズムが弾圧されたのか、その理由が読むと分かります。国家による「天上的介入」抜きで市民社会に公正と正義を打ち立てることができるような個人の市民的成熟をアナーキズムは求めました。「公正で雅量ある国家」を建設するより前に、まずその担い手たる「公正で雅量ある市民」を建設しようとしたことに国家は嫉妬したのです」。

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★このほか最近では以下の新刊に目が留まりました。

語録 要録』エピクテトス著、鹿野治助訳、中公クラシックス、2017年3月、本体1,600円、新書判284頁、ISBN978-4-12-160172-8
不安(上)』ジャック・ラカン著、ジャック=アラン・ミレール編、小出浩之/鈴木國文/菅原誠一/古橋忠晃訳、岩波書店、2017年3月、本体4,900円、A5判上製248頁、ISBN978-4-00-061186-2
メディアの本分――雑な器のためのコンセプトノート』増田幸弘編、彩流社、2017年3月、本体2,200円、四六判並製280頁、ISBN978-4-7791-7087-4

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★エピクテトス『語録 要録』は中公バックス版『世界の名著14 キケロ エピクテトス マルクス・アウレリウス』(1980年)からのスイッチ。同じ訳者による『エピクテートス 人生談義』(上下巻、岩波文庫、1958年)との違いについてですが、底本は共に1916年のトイプナー版ではあるものの(中公クラシックス版には原典情報が記載されていないため親本である『世界の名著』版の巻頭にある鹿野治助さんによる解説「古代ローマの三人の思想家」の末尾にある「後記」を参照)、岩波文庫の方は現存する『語録』全4巻を全訳し、関連する断片と『提要』(『要録』のこと)を訳出したものであり、いっぽう、中公クラシックス版は岩波文庫より10年下った1968年に出版されたハードカバー版『世界の名著13』で実現された改訳版であり、『語録』の抄訳と『要録』の全訳を収めています。この改訳版では『語録』は各章の順番が入れ替えられるなどの工夫が為されています。さらに今回の新書化にあたって、巻頭に國方栄二さんによる解説「エピクテトス――ストイックに生きるために」が新たに加えられています。

★ジャック・ラカン『不安(上)』はラカンのセミネール(講義録)の第10巻の前半です。講義は1962年から63年にかけて行われたもので、書籍としては2004年にスイユから刊行されています。上巻では講義の第11回までを収録。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。リンク先では立ち読み用PDFもあり、上下巻の目次や10頁までの本文が読めます。カバーソデ紹介文に曰く「主体と欠如、欲望とその原因をめぐるトポロジカルな迷宮の果てに、ついに「対象a」をめぐる本格的考察を展開」と。ラカン自身は「不安」という主題を「極めて大きな鉱脈」(3頁)だと評価しており、第1回講義「シニフィアンの網の中の不安」では、サルトルやハイデガーら同時代の哲学者に目配せを送りつつも、実存思想から画然と隔たった「刃の上」(21頁)へと聴講生を導きます。難解な(よそよそしい)『エクリ』に比べると『セミネール』ではいくらか、より親切な(魅惑的な)ラカンに出会えます。むろんそれは単純に分かりやすいことを意味してはいないのですが、分からないなりにも受講している感覚を味わえるのが『セミネール』の魅力ではないかと思います。

★増田幸弘編『メディアの本分』は、版元紹介文に曰く「記者や編集者、カメラマン、デザイナー、コピーライター、映画監督ら25人が考えた現場からのメディア論」であり、帯には「マスコミ希望は必読!」と謳われています。日ごろ弊社もお世話になっている紀伊國屋書店新宿本店仕入課の大矢靖之(おおや・やすゆき:1980-)係長が「器と書店についての試論」と題して寄稿されており、私と同世代の「共和国」代表、下平尾直(しもひらお・なおし:1968-)さんによる「未完のページを埋めるもの」と題した実に軽妙な小説仕立ての一文を読むこともできます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。それぞれの現場からの肉声が胸に沁みます。特に編者の増田幸弘(ますだ・ゆきひろ:1963-)さんによる「幸福な出会いの哲学」の末尾にある、自分が世間に対して感じる「屈服しきれないもの」の根っこが「子どもたちに語り継ぐため」という点にあるのだ、という言葉に強い共感を覚えます。また、増田さんの「編者あとがき」での発言にも同様な思いを抱きました。曰く「いまの時代、「器」、なんでも載せられる「雑な器」が失われた」のではないか、「それが社会の閉塞感につながっているのではないか」(274頁)と書いておられます。「かつて暮らしの回りには、「雑な器」があふれていた。新聞も、雑誌も、本も、音楽も、映画も、テレビも、あらゆるものが「雑な器」であり、社会そのものが「雑な器」だった」(274~275頁)。洗練され、セレクトされたものしか「器」に盛り込むのをゆるさない社会、と。まさに私自身、同様な感覚の中で出版の仕事をしており、その一帰結はおそらく遠からず形にできると思います。

★同じく「編者あとがき」によれば増田さんは先月、『不自由な自由 自由な不自由――チェコとスロヴァキアのグラフィック・デザイン』という新刊を六耀社さんから刊行されており、「本書〔『メディアの本分』〕を編集した同時期、チェコとスロヴァキアのグラフィック・デザイナーたちを取材して回り、表現の自由が著しく制限されていた社会主義時代を浮き彫りにしようとした」と述懐されています。この本は『メディアの本分』と表裏一体のもので、いまの日本や世界を考えるうえで併読されたい、とのことです。

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# by urag | 2017-03-12 21:10 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)