2012年 10月 09日
幾度となく変遷してきた当ブログのアイコンでここしばらく使っていたオバケ画像は拾いものを加工したものでしたが、元ネタ(Ghostly International)があることをツイッターで教えてくださった方がいらしたので、使用を中止し、差し替えました。hさんありがとうございました。
#
by urag
| 2012-10-09 15:11
| ご挨拶
|
Comments(0)
2012年 10月 08日
JR京浜東北線北浦和駅下車西口駅前の北浦和公園内にある埼玉県立近代美術館で2012年11月11日まで開催している開館30周年記念展「日本の70年代 1968-1982」は70年代の芸術や雑誌、書籍、ポスター、レコードなどのデザインが好きな人間にとっては見ておきたい企画展です。 さほど大規模なものではありませんが、展示を隅々まできっちり見て、映像資料まで全部見ようとすると3時間は必要かと思います。しょっぱなから粟津潔×山下洋輔の映像作品「ピアノ炎上」(1973年、約7分)が入口手前で鳴り響き、入ってすぐ左手の袋小路では佐々木美智子さんによる写真群「日大全共闘」(1968年)と、映像作品「いつか死ぬのね」(1974年、28分)が待ち構えています。椅子がないからと言って一瞥して終わりにするのはもったいない作品です。大阪万博の「せんい館」の肉感的な壁面に投影した「スペース・プロジェクション・アコ」(1970年、約15分)も迫力十分。テクノロジー自体は今に比べたら断然アナログですが、ディジタルにはない「厚み」があります。このほか見どころはたくさんありますが、絶対に欲しくなるレア本やレア雑誌が並んでいる様を見るのはたいへん目に毒ではあります。 A5判並製フルカラー288頁の図録(1300円)は購入しておくべきですが、展示されている現物のオーラをしっかり目に焼き付けることがまず最優先かと思います。美術館を出たら公園にある黒川紀章設計の「中銀カプセルタワービル」の「住宅カプセル」をご覧になるのをお忘れなく。公園の噴水は定時ごとに派手な噴水ショーを見せてくれます。北浦和はのんびりした街で、ふれあい横町などの古い商店街もありますから、適度な散策が楽しめます。 #
by urag
| 2012-10-08 19:56
| 本のコンシェルジュ
|
Comments(0)
2012年 10月 06日
田村孟全小説集 田村孟著 航思社 2012年9月 本体7,800円 A5判上製函入布クロス装2段組702頁 ISBN978-4-906738-02-1 帯文より:戦後日本の虚妄を鋭くえぐる奇想、詩情あふれる描写、卓越した語り――大島渚・篠田正浩・長谷川和彦らの映画の脚本家にして、数々の名うての作家・評論家をうならせた幻の小説家、田村孟=青木八束。70年代の文壇を疾風のごとく駆けぬけ、今なお賛辞の声がやまない全8作を、 没後15年にして初の単行本化。蓮實重彦氏、青山真治氏が絶賛! 目次: 細民小伝 会計係加代子 理容師リエ 三人の運動会 居残りイネ子 七年目のシゲ子 忍ヒ難キヲ忍ヒ 個室は月子 見送り仙子 蛇いちごの周囲 世を忍ぶかりの姿 目螢の一個より 津和子淹留 狼の眉毛をかざし いま桃源に 鳶の別れ 年譜 映画脚本一覧 TVドラマ脚本一覧 ★航思社さんの新刊第三弾です。取次搬入が9月27日(木)と同社ブログに書かれているので、すでに店頭での発売が始まっているはずですが、紀伊國屋書店や丸善&ジュンク堂では10月6日現在まだデータベースにヒットがありません。主な取り扱い書店一覧は、書名のリンク先でご覧いただけます。なお、アマゾンやhontoなどのオンライン書店では取り寄せ扱いになっているようですが、版元ドットコムでは「在庫あり」表示です。『ムネモシュネ・アトラス』の時もそうでしたが、さすが、安心の版元ドットコム。 ★版元ウェブサイトでの紹介文をお借りすると、著者の田村孟(たむら・つとむ:1933-1997)さんは、脚本家、小説家で、東京大学文学部国文科卒業後に松竹大船撮影所に入社されました。大島渚・篠田正浩・吉田喜重らとともに「松竹ヌーベルバーグ」と称され、脚本家として大島、篠田のほか長谷川和彦、藤田敏八などの監督と組んで戦後の名画を支えました。一方、70年代に、本名および「青木八束」の筆名で小説を発表。73年には「蛇いちごの周囲」(青木八束)で文学界新人賞受賞、丸谷才一に絶賛されました。同作は第69回芥川賞候補となり、瀧井孝作、舟橋聖一、吉行淳之介の強い支持を受けるも落選。主な脚本作品には、『白昼の通り魔』『日本春歌考』『無理心中 日本の夏』『絞死刑』『帰って来たヨッパライ』『新宿泥棒日記』『儀式』『少年』(以上、大島渚監督)、『青春の殺人者』(長谷川和彦監督)、『十八歳、海へ』『波光きらめく果て』(以上、藤田敏八監督)、『瀬戸内少年野球団』『舞姫』(以上、篠田正浩監督)などがあります。 ★ほれぼれとする美しい装幀は前田晃伸さんによるもの。前田さんは航思社さんのあの「燈台」マークをデザインされてもいます。投げ込みの栞は12頁構成で、青山真治「紙面を覆う不気味な無表情」、荒井晴彦「脚本家の「純文学」」、上野昂志「解読すべきテキスト群」、松田政男「田村孟の表現世界」の四篇が掲載されています。 ★航思社さんの次の新刊は2013年春出版予定の、松田政男『私闘する革命——戦後思想の10人』(聞き手=平沢剛・矢部史郎)となるようです。 喜ばしき知恵 フリードリヒ・ニーチェ著 村井則夫訳 河出文庫 2012年10月 本体1,200円 文庫判並製496頁 ISBN978-4-309-46379-7 カバー裏紹介文より:ニーチェの最も美しく、最も重要な著書が、冷徹にして流麗な日本語によってよみがえる。「この書物の言葉は、氷晶を融かす春風にも似ている[…]。いまだ冬の圏内にありながら、冬を打倒する勝利が予感されるのだ。」「神は死んだ」と宣言しつつ永遠回帰の思想をはじめてあきらかにしたニーチェ哲学の中核をなす大いなる肯定の書。 ★発売済。文庫で読める既訳には、信太正三訳『悦ばしき知識〔ニーチェ全集 8〕』(ちくま学芸文庫、1993年)があります。新潮文庫でもかつて、1958年に氷上英廣訳『華やかな知慧』が出ていましたが、氷上訳はその後1980年、白水社版『ニーチェ全集』第1期第10巻に「華やぐ知慧」として収録されました(現在は品切)。 ★『ツァラトゥストラ』に比べれば『喜ばしき知恵』は翻訳が少ない方ですが、ニーチェの言葉で一番有名であろう「神は死んだ」は、ほかならぬ本書(第三書、125節)で読むことができます。該当箇所のニーチェの名調子を村井訳で読んでみましょう。 「諸君はあの狂乱の男の話を聴いたことがないか。日も高い昼日中に提灯を掲げて広場に駆け入り、息もつかずに「神はいないか! 神はどこだ!」と叫んでいたあの男のことを。〔…〕彼が叫んだ――「はっきり言ってやろう、われわれが神を殺したのだ、――諸君と私が! われわれ全員が神の殺害者なのだ!〔…〕神の遺体の腐臭はまだ漂ってこないだろうか?――神もまた腐敗するのだ! 神は死んだ! 二度と甦ることはない! われわれが神を殺めたのだ! あらゆる殺害者のなかでも最たる殺害者たるわれわれに、心休まる時があろうか? これまで世界に君臨していた至聖者と至権者――それがわれわれの刃にかかって、血の海に浸かっている。――誰がこの血の汚れをわれわれの手から拭ってくれるだろうか? いかなる水でわれわれはわが身を浄めることができるだろうか? いかなる贖罪の儀式、いかなる聖務典礼をわれわれは作り出さねばならないのだろうか? われわれがやり遂げたことの偉大さは、われわれにとって立派すぎるのではないか? それに見合った分際になるためには、われわれがみずから神々になるほかはないのではないか? かつてこれほど偉大な行いがなさめたためしはない。――そして、われわれのあとから生まれてくる者どもはことごとく、この行いゆえに、これまで存在したすべての歴史に優る高次の歴史の一員となるのだ!」(216-218頁)。 ★このあとに続く文章も、本来的には省略することなく、是非とも読まれなければなりませんが、引用が長くなるのでやめておきます。ぜひお買い求めになって、続きをお楽しみください。ニーチェの新訳はここ数年でまた増えていますが、かつて1966年1月に刊行が開始された中央公論社の「世界の名著」シリーズの記念すべき第一回配本は、ニーチェの巻(46巻)でした。手塚富雄訳『ツァラトゥストラ』(現在は中公文庫全一巻や、中公クラシックス全二巻で読むことができます)と、西尾幹二訳『悲劇の誕生』(中公文庫版は現在品切、中公クラシックス版が現在も入手可能)が収録されていました。その帯にはこう書かれていました。「歴史の曲がり角には常にニーチェが現われる。今またニーチェ・ルネサンスが叫ばれている。組織の重圧にうちひしがれた現代人に鋭く呼びかける予言者ツァラトゥストラ。処女作『悲劇の誕生』以来、失われた人間性の回復を終生の主題とした詩人哲学者の思想は、最適の訳者を得てここに躍動する」。こうした「前史」の蓄積なしには昨今の超訳ブームもないでしょう。 ★ほかならぬla gaya scienzaから誌名を採った、浅田彰さん、伊藤俊治さん、四方田犬彦さんらが80年代にやっていらっしゃった雑誌「GS たのしい知識」についても言及しておいた方がいいかもしれませんが、一言二言で終わるものではありません。懐古趣味と罵られるかもしれませんが、あの頃はとても美しい、勢いのある時代でした。今よりずっと。 ★人文系文庫の話題として、筑摩書房の月刊PR誌「ちくま」2012年10月号に掲載された特集「ちくま学芸文庫創刊20周年」についてご紹介しておきたいと思います。鷲田清一さんの寄稿「閉じが外れるほど繰り返し開いた本」ではオルテガ『大衆の反逆』が挙げられています。講談社学術文庫や岩波文庫、角川文庫にもそれぞれの一冊があることが書かれています。また、取材記事「図書館でのちくま学芸文庫」では、さいたま市立東浦和図書館の主事、青山遼さんが企画されたちくま文庫、同学芸文庫、ちくま新書の特設展示について、青山さんにインタビューされています。青山さんは当時ブックガイドの冊子までお作りになっていらっしゃいました(伝聞によると、展示名は「筑摩書房創立70周年記念特集――部屋とちくまと私」で、2011年9月6日~18日に開催されたとのことです)。 ★「ちくま」2012年10月号では、これらの記事・寄稿のほか、「ちくま学芸文庫 思想の星座」と題した見開きのダイアグラムが興味深いです。二十世紀西洋編と日本編があって、代表的な書目が分類され整理されています。読者にとっても、書店さんにとっても、保存しておきたい資料になっていると思います。写真を添えますが、あくまでもサムネイルということで御勘弁ください。 新訳 ラーマーヤナ 3 ヴァールミーキ著 中村了昭訳 東洋文庫(平凡社) 2012年10月 本体2,800円 全書判上製308頁 ISBN978-4-582-80827-8 帯文より:魔王ラーヴァナに妻シーターを拉致されたラーマは、弟ラクシュマナと共にシーター奪還の闘いに旅立つ。魔女・怪物が現れる幻想の世界へ、物語はいよいよ佳境へ入る。第3巻『森林の巻』原文からの初の邦訳。 ★まもなく発売です。全7巻のうち、今年4月に第1巻、6月に第2巻、そして10月に第3巻と順調な刊行が続いています。現在ワイド版で刊行されている岩本裕訳は第2巻までの刊行で途絶しましたから、中村訳は今回で前例を越えたことになります。このままのペースで刊行が続くことを念願してやみません。 ★本書のほかに、平凡社さんの今月の新刊には、シリーズ「イタリア現代思想」第3弾となるジャンニ・ヴァッティモ『透明なる社会』(多賀健太郎訳)や、A4変型判からA5判に版型を変えてリニューアルされるシリーズ「新版イメージの博物誌」が2点同時発売でスタートします。フィリップ・ローソンの二冊『聖なるチベット――秘境の宗教文化』と『タントラ――インドのエクスタシー礼賛』です。また、中高生向けに書かれた白川静さんの入門字典『常用字解』(2003年刊)の増補版となる。『常用字解[第二版]』が刊行されます。版元の紹介によれば「一昨年11月に「常用漢字表」に追加された196字を含む常用漢字全2136字を平易に解説する」とのことです。なお、東洋文庫の来月新刊はイザベラ・バードの『完訳 日本奥地紀行』の第3巻と予告されています。 ★なお、上記の書影で『新訳 ラーマーヤナ 3』の隣に映っているのは、同じく平凡社さんの先月の新刊写真集、有野永霧『日本人景 温泉川』です。その名の通り、温泉に寄り添うように流れる川を映したモノクロ写真集です。有野さんの「あとがき」には「温泉川」について次のように解説されています。「自然の悠久の時間の中で流れていた川辺に温泉が見つかると、人の手が入り、河の姿が大きく変えられていく。小屋が建ち、湯治場ができ、民宿、旅館、ホテルが建ち、さらには大ホテル群が林立してくる。それらと歩調をあわせるように、脇を流れる川にも、治水の名目、営業や経営上の事情などさまざまな理由で河岸工事がなされる。自然の川が、人の手が入ることで、「温泉川」という人工の川に変わるのだ。その間に、意識的に、時に無意識的に、国民の自然観や美意識や感性が塗りこめられていくのである。〔…〕人が温泉を利用するためにどのように維持管理をしているか、人が自然とどのように関わっているかを“川の目線”から見ようと、川の中に入ったり、渓谷の岩場に立ったりして撮影するよう心がけた。その行為によって確認できたのは、日本人の多種多様な思いとアイデアの集積によって日本独特の「温泉川」という風景が出来上がっていることであった」(116頁)。本書には2002年から2008年までのあいだに撮影された106箇所の温泉川の光景が収録されています。また、巻末には、池内紀さんによる解説「天地の恵み」が置かれています。早くも版元品切になっているようですが、店頭にまだ在庫がある書店さんもあるようです。 ビジュアル版 イギリスの歴史 R・G・グラント+アン・ケイ+マイケル・ケリガン+フィリップ・パーカー著 田口孝夫+田中英史+丸川桂子訳 東洋書林 2012年10月 本体15,000円 B4変判上製400頁 ISBN978-4-88721-800-0 帯文より:世界史を先導する、誇り高き連合王国の栄光と蹉跌。各項が一見開きで進行する簡潔な紙面構成、地図を含む写真・図版900点、時代の前後や象徴的人物などを扱うコラムが350本、複雑な変遷を総括した歴王・首相一覧付。原始から欧州再編以降までの空前の歳月を凝縮した図説英国史の決定版。 原書:History of Britain & Ireland: the Definitive Visual Guide, Dorling Kindersley, 2011. 目次: 1.ブリトン人と侵略者[1066年まで] 2.中世のイギリス[1066-1485] 3.テューダー朝とステュアート朝[1485-1688] 4.勢力の増大[1688-1815] 5.現代[1914年以降] 歴代国王・首相など 訳者あとがき 索引 図版出典 ★まもなく発売。取次12日搬入と聞きますので、来週明けあたりから書店店頭発売でしょうか。訳書名は『イギリスの歴史』ですが、原書では「ブリテンとアイルランドの歴史」となっていることに注意。イギリスの正式な国名はUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandで、日本では「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」と訳されています。単純にイギリスや英国と表記しているせいなのか、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの四者からなる連合王国であり、長い間、様々な政治的問題を抱えてきたことはあまり知られていないかもしれません。本書では見開きごとに項目(主題)が立てられカラー図版とともに簡潔な文章で歴史が解説されています。いずれも美麗な写真が揃っていて、眺めるだけでも楽く、さながら博物館めぐりをしているような気分になります。歴史的文物や古い意匠がお好みの方にもうてつけの資料になると思います。どの頁も本当に美しいですから、ぜひ手にとってご覧ください。 #
by urag
| 2012-10-06 21:31
| 本のコンシェルジュ
|
Comments(2)
2012年 10月 05日
★ジャン=ジャック・ルソーさん(著作:『化学教程』) ★淵田仁さん(共訳:ルソー『化学教程』ウェブ連載) ★飯田賢穂さん(共訳:ルソー『化学教程』ウェブ連載) ★ポール・ド・マンさん(著書:『盲目と洞察』) ★宮崎裕助さん(訳書:ポール・ド・マン『盲目と洞察』) ★近藤和敬さん(著書:『構造と生成(1)カヴァイエス研究』) 白水社さんの「白水iクラシックス」シリーズ内の「ルソー・コレクション」全4巻の最終巻である『孤独』が先月刊行されました。また、先週発売された青土社さんの月刊誌『現代思想』10月号はルソーの特集号となっています。 ルソー・コレクション 孤独 ジャン=ジャック・ルソー著 佐々木康之訳 川出良枝選・解説 白水iクラシックス 2012年9月 本体2,500円 四六判並製228頁 ISBN978-4-560-09604-8 帯文より:ルソー生誕三百年! 生きていくことの喜びと哀しみ。『孤独な散歩者の夢想』『マルゼルブ租税法院院長への四通の手紙』を収録。コレクション完結! ※白水社版『ルソー全集』からの改訳再編集版全4巻の完結です。『孤独』の巻末におかれた川出さんの解説は「ジュネーヴ市民から孤独な散歩者へ」と題されています。『孤独な散歩者の夢想』は同じく先月、光文社古典新訳文庫で永田千奈訳が刊行されています。ルソーのこの晩年作はこれまで幾度となく翻訳されており、現在でも今野一雄訳(岩波文庫)や、青柳瑞穂訳(新潮文庫)などが入手可能です。なお、白水iクラシックスでは今月、アラン『哲学講義』(『アラン著作集(1)思索と行動のために』改題、中村雄二郎訳、前田英樹解説)が刊行される予定で、来月はなんとブロッホ『希望の原理 第一巻』(山下肇ほか訳)も同シリーズで再刊するようです。 現代思想 2012年10月号 特集=ルソー――「起源」への問い 青土社 2012年9月 本体1,238円 A5判並製246頁 ISBN978-4-7917-1251-9 ※特集では、『化学教程』のウェブ連載でおなじみの淵田仁さんと飯田賢穂さんがそれぞれ論考や翻訳に健筆をふるっておられます。淵田さんは御論文「何者かになること――自己服従の哲学者ルソー」を寄稿されたほか、ブルーノ・ベルナルディの論考「なぜ化学なのか?――ルソーの場合」をお訳しになっています。飯田さんはセリーヌ・スペエクトールの論考「ルソーと政治経済学批判」をお訳しになっています。さらに同特集では宮崎裕助さんが御論文「法のテクスト/テクストの法――ポール・ド・マンにおけるルソー『社会契約論』のキアスム読解」をお寄せになるとともに、ポール・ド・マンが「ルソー学会年報」に寄稿した書評「ジャック・デリダ『グラマトロジーについて』のルソー読解」をお訳しになっています。弊社刊『盲目と洞察』第七章「盲目性の修辞学――ジャック・デリダのルソー読解」と一緒にお読みいただければ幸いです。また、同号の連載では近藤和敬さんの「真理の生成」の第11回「文脈の不定性、記述のプトレマイオス的転回」が掲載されています。 ★鵜飼哲さん(共訳書:ジュネ『公然たる敵』) ★佐藤嘉幸さん(共訳書:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』) 以文社さんより先週発売された新刊『レイシズム・スタディーズ序説』で、鵜飼さんがインタビューと鼎談に、佐藤さんが翻訳で参加されています。 レイシズム・スタディーズ序説 鵜飼哲+酒井直樹+テッサ・モーリス=スズキ+李孝徳=著 以文社 2012年10月 本体2,800円 四六判上製320頁 ISBN 978-4-7531-0304-1 帯文より:人種主義(レイシズム)が立ち現われる現場は、ある社会的な関係が人体の特徴などを通して反照し、私と他者の自己画定(アイデンティティ)を同時に限定するときである。この投射されたアイデンティティ・ポリティックスは現代のあらゆる社会関係に随伴する。本書は、この視点から、近代化とグローバル化で不透明化された現代を読み解く壮大な試みである。 目次: レイシズム・スタディーズへの視座(酒井直樹) グローバル化するレイシズム(テッサ・モーリス=スズキ) 移民/先住民の世界史――イギリス、オーストラリアを中心に(テッサ・モーリス=スズキ/聞き手=李孝徳) 共和主義とレイシズム フランスと中東問題を中心に(鵜飼哲/聞き手=李孝徳) 近代化とレイシズム イギリス、合州国を中心に(酒井直樹/聞き手=李孝徳) 新しいレイシズムと日本(鵜飼哲×酒井直樹×テッサ・モーリス=スズキ×李孝徳) レイシズムの構築(エティエンヌ・バリバール/訳=佐藤嘉幸) 用語解説 参考文献 ※版元さんからいただいた「編者一同」の記名がある挨拶文によれば、本書は「レイシズム・スタディーズ」シリーズの第一巻という位置付けです。このシリーズでは「困難ではあるが是非とも研究・考察しなければならない問題としての人種主義を主題的に扱った著作を刊行する予定」であるとのことです。非常にアクチュアルなシリーズで続刊にも注目したいですね。 ★レーモン・クノーさん(著書:『オディール』『棒・数字・文字』) 「日本ウリポ史上、最大の新シリーズ」と謳われた水声社さんの「創立30周年企画」である、「レーモン・クノー・コレクション」は、6月に第7回配本、8月に第8回配本、そして9月に第9回配本と順調に刊行されています。 レーモン・クノー・コレクション(1)はまむぎ 久保昭博訳 水声社 2012年6月 本体3,200円 4/6判上製376頁 ISBN978-4-89176-861-4 帯文より:ゴム製のアヒルから始まる、田舎町での陰謀譚。銀行員マルセルは、たまたま立ち寄った場末のフライドポテト屋で、ガラクタ屋の老人と出会う。物をもたないことの幸せを語るその貧しい老人の家には、彼が決して手放そうとしない謎の青い扉があり、町ではそれをめぐって、ある噂が囁かれはじめる……。バタイユやデスノスが、ただこの作品を讃えんがために、ドゥマゴ賞を創設することとなった、クノーの第1作にして代表作。 レーモン・クノー・コレクション(5)わが友ピエロ 菅野昭正訳 水声社 2012年8月 本体2,500円 4/6判上製272頁 ISBN978-4-89176-865-2 帯文より:陰謀? 事故? 《ユニ・パーク》で巻き起こる謎の事件。遊園地《ユニ・パーク》で働くこととなった青年ピエロ。人はいいがどじばかり踏んでいる彼は、ひっそりと《ユニ・パーク》に隣接し、謎の王国ポルデーヴの王子がまつられているという礼拝堂の主と知り合いになる。そんななか、《ユニ・パーク》では、ある事件が巻き起こり……。『ルイユから遠くはなれて』『人生の日曜日』とともに「知恵の三部作」と呼ばれ、アルベール・カミュが称賛した、「不滅の奇蹟の物語」。 レーモン・クノー・コレクション(7)文体練習 松島征・河田学・原野葉子・福田裕大訳 水声社 2012年9月 本体2,200円 4/6判上製260頁 ISBN978-4-89176-867-6 帯文より:「ここには、練習が99個あります。フランス語のさまざまな様式や、レトリックの文彩や、それにめっぽう文学的なジャンルなどを使いながら、おなじひとつのささいな出来事がちがったふうに語られてゆくのですが、当の出来事ときたらほとんど小話の、それも下書き程度のものでしかないのです。この本には序文もなければ結論もありません。お読みになられた方は、まだまだもっと違うやつだってぽんぽん思いつかれることでしょう。ぞんぶんにやってみるといいのです。こころのおもむくままに」——レーモン・クノー ※周知の通り、『はまむぎ』の既訳には滝田文彦訳(白水社、1976年;2001年新装復刊)があり、『文体練習』の既訳には朝比奈弘治訳(朝日出版社、1996年)があります。前者は残念ながら品切ですが、後者は今年一月に十刷に達しているロングセラーです。本文はスミと赤の二色刷で、非常に美しい本です。『わが友ピエロ』はかつて同じ訳者によって上梓されており(『現代フランス文学13人集』第三巻所収、新潮社、1965年)、全面的に改訳されています。「クノー・コレクション」は全13巻のうち、これで10冊が刊行されたことになります。残すは、第3巻『リモンの子どもたち』塩塚秀一郎訳、第12巻『青い花』新島進訳、第13巻『イカロスの飛行』石川清子訳、の3冊。次回配本は『イカロスの飛行』が予定されています。 #
by urag
| 2012-10-05 19:49
| 本のコンシェルジュ
|
Comments(0)
2012年 10月 01日
本日(2012年10月1日)発売の月刊誌「ブレーン」2012年11月号(628号)の「エディターズ・チェック」欄に、弊社8月刊、アガンベン『到来する共同体』の紹介記事が掲載されました。ひまわり色の本文用紙が「強烈」ということで取り上げていただきました。叢書「エクリチュールの冒険」の既刊書にも触れていただいており、拙コメントも載っております。非常に光栄です! 同叢書の先月の最新刊、ド・マン『盲目と洞察』はお蔭様で堅調な売れ行きです。ハイブリッド書店hontoでは先週、「小説・文学」内の「文学論」で売上トップになりました。hontoさんがお持ちの在庫がいったんすべて捌けてしまったため、現在はランクを落としていますが、本日「24時間」以内の出荷に戻っています。 先週発売の月刊誌「ユリイカ」2012年10月号「特集*ジョン・ケージ――鳴り続ける〈音〉 生誕100年/没後20年」に、弊社出版物の広告を出しました。そこで初公開した『間章著作集』全三巻の予告がすでにtwitterなどに反響が出ているほか、ちくさ正文館のヴェテラン書店人Fさんから「内容見本」のご発注をすぐさまいただきました。残念ながら内容見本は作っていないのですが、近刊情報は当ブログなどで随時公開して参ります。 #
by urag
| 2012-10-01 20:49
| 広告・書評
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
ブログジャンル
検索
リンク
カテゴリ
最新の記事
画像一覧
記事ランキング
以前の記事
2024年 12月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2004年 06月 2004年 05月 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||