2017年 04月 09日

注目新刊:観光客/来たるべきバカ/混合体・・・の哲学、ほか

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ゲンロン0:観光客の哲学』東浩紀著、ゲンロン、2017年3月、本体2,300円、A5版並製320頁、ISBN978-4-907188-20-7
勉強の哲学――来たるべきバカのために』千葉雅也著、文藝春秋、2017年4月、本体1,400円、四六判並製240頁、ISBN978-4-16-390536-5
五感〈新装版〉――混合体の哲学』ミッシェル・セール著、米山親能訳、法政大学出版局、2017年3月、本体6,200円、四六判上製584頁、ISBN978-4-588-14039-6

★このところ人文書では話題の新刊が続いています。今月は東浩紀さんや千葉雅也さんの新刊が書店さんの店頭にほぼ同時期に並ぶことになり、私がよくお邪魔している某店では國分功一郎さんの先月新刊『中動態の世界』を加えて三冊の「白い本」が強烈な波動を放っています。お店によってはさらに今月新刊の、西兼志さんの『アイドル/メディア論講義』(東京大学出版会)を並べておられることでしょうし、星野太さんの『崇高の修辞学』の重版(月曜社)を一緒に展開して下さっていることもあるかと思います。偶然かもしれませんが、東さんの本も千葉さんの本も「~の哲学」という書名で、哲学的思索の再起動を垣間見る思いがします。

★「~の哲学」といえば、少し前にミシェル・セールの『五感――混合体の哲学』も再刊されました。セールはつくづく「未来の哲学者」です。東さんや千葉さんが盛り上げてくださっている売場で、若い読者がセールの柔らかで魅力溢れる知的文体に出会うことを期待したいです。本書は『Les cinq sens : philosophie des corps mêlés Tome 1』(Grasset, 1985)の翻訳で、1991年に刊行されました(その後一度カバーデザインが変わったのは2004年の復刊時だったでしょうか)。「偉大な思想ほど価値のあるものは何もない。なぜならその思想は、雑多な色の波型模様を描きつつ、壮大な風景を開くからであり、その思想をよりよく理解することの奇跡のような歓喜は、誰であれ凡庸な部屋のなかで眠っている者の住居を拡げ、宮殿としての彼の世界を突然改造するからである」(528頁)。それに続く一連の美しい論証を見るとき、私は哲学の再起動がいかに世界(の見方)を変えるか、その鮮やかさを思います。

★『ゲンロン0:観光客の哲学』は「『郵便的』から19年、集大成にして新展開」(帯文より)の新著で、「いままでの仕事をたがいに接続するように構成されている」(はじめに、7頁)のだと言います。つまり本書は、『存在論的、郵便的』(新潮社)、『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)、『一般意志2・0』(講談社)、『弱いつながり』(幻冬舎)のいずれの続編としても読めるもので、その基本的主題は「誤配こそが社会をつくり連帯をつくる。だからぼくたちは積極的に誤配に身を曝さねばならない」(はじめに、9頁)というものです。第4章「郵便的マルチチュードへ」には次のように記されており、これは帯文にも引かれています。「ネグリたちのマルチチュードは、あくまでも否定神学的なマルチチュードだった。だから彼らは、連帯しないことによる連帯を夢見るしかなかった。けれどもぼくたちは、観光客という概念のもと、その郵便化を考えたいと思う。そうすることで、たえず連帯しそこなうことで事後的に生成し、結果的にそこに連帯が存在するかのように見えてしまう。そのような錯覚の集積がつくる連帯を考えたいと思う。ひとがだれかと連帯しようとする。それはうまくいかない。あちこちでうまくいかない。けれどもあとから振り返ると、なにか連帯らしきものがあったかのような気もしてくる。そしてその錯覚がつぎの連帯の(失敗の)試みを後押しする。それが、ぼくが考える観光客=郵便的マルチチュードの連帯のすがたである」(159頁)。

★さらにこのあとこう書かれてもいます。「マルチチュードが郵便化すると観光客になる。観光客が否定神学化するとマルチチュードになる。〔・・・〕連帯の理想を掲げ、デモの場所を求め、ネットで情報を集めて世界中を旅し、本国の政治とまったく無関係な場所にも出没する21世紀の「プロ」の市民運動家たちの行動様式がいかに観光客のそれに近いか、気がついていないのだ。〔・・・〕観光客は、連帯はしないが、そのかわりたまたま出会ったひとと言葉を交わす。デモには敵がいるが、観光には敵がいない。デモ(根源的民主主義)は友敵理論の内側にあるが、観光はその外部にあるのだ」(160頁)。本書は昨年から今年にかけての冬の三ヶ月に執筆されたそうです。「本書の執筆を終え、ぼくはいま、かつてなく書くことの自由を感じている」(はじめに、7頁)という東さんの本書は、かつてない疾走感に満ちた同時代感覚を読者に届けるものです。それは誤配のユートピア、とでも言うべきものでしょうか。

★「21世紀の新たな抵抗は、帝国と国民国家の隙間から生まれる。それは、帝国を外部から批判するのでもなく、また内部から脱構築するのでもなく、いわば誤配を演じなおすことを企てる。出会うはずのないひとに出会い、行くはずのないところに行き、考えるはずのないことを考え、帝国の体制にふたたび偶然を導き入れ、集中した枝をもういちどつなぎかえ、優先的選択を誤配へと差し戻すことを企てる。そして、そのような実践の集積によって、特定の頂点への富と権力の集中にはいかなる数学的な根拠もなく、それはいつでも解体し転覆し再起動可能なものであること、すなわちこの現実は最善の世界ではないことを人々につねに思い起こさせることを企てる。ぼくには、そのような再誤配の戦略こそが、この国民国家=帝国の二層化の時代において、現実的で持続可能なあらゆる抵抗の基礎に置かれるべき、必要不可欠な条件のように思われる。21世紀の秩序においては、誤配なきリゾーム状の動員は、結局は帝国の生権力の似姿にしかならない。/ぼくたちは、あらゆる抵抗を、誤配の再上演から始めなければならない。ぼくはここでそれを観光客の原理と名づけよう。21世紀の新たな連帯はそこから始まる」(192頁)。

★「観光客の哲学とは誤配の哲学なのだ。そして連帯〔ローティ〕と憐み〔ルソー〕の哲学なのだ。ぼくたちは、誤配がなければ、そもそも社会すらつくることができない」(198頁)。毎回インスピレーションを感じるのですが、東さんの著書はすべて出版論に読み替えることが可能だと思います。誤配は皮肉にも物流においてもっとも忌避すべき過ちだからこそ、東さんの言う「誤配」を出版人は真剣に受け止めねばならないと思うのです。なぜならば、私たちは「子として死ぬだけではなく、親としても生き」(300頁)るべきだからです。ここでは実体的な家族のことを論じられているという以上に、リレーのありようが問われているのです。

★いっぽう、千葉さんの『勉強の哲学』は、東さんにとっての『弱いつながり』のように、本来的な意味での「自己啓発」書へと踏み出された一歩ではないかというのが第一印象です。「人生の根底に革命を起こす「深い」勉強、その原理と実践」と帯文にはいたわれています。「勉強を深めることで、これまでのノリでできた「バカなこと」が、いったんできなくなります。「昔はバカやったよなー」というふうに、昔のノリが失われる。全体的に、人生の勢いがしぼんでしまう時期に入るかもしれません。しかし、その先には「来たるべきバカ」に変身する可能性が開けているのです。この本は、そこへの道のりをガイドするものです。/勉強の目的とは、これまでとは違うバカになることなのです。その前段階として、これまでのようなバカができなくなる段階がある。/まず、勉強とは獲得ではないと考えてください。勉強とは、喪失することです。これまでのやり方でバカなことができる自分を喪失する」(はじめに、13~14頁)。

★書名のリンク先では「はじめに」と第一章の最初の二ページ分の立ち読みも可能です。本書はもとより千葉さんのデビュー作『動きすぎてはいけない』(河出書房新社、2013年)に比べて親切な語り口の本ですが、さらに結論では本書の主題が端的にまとめられており、通読した方にとってはおさらいになるとともに、未読の方にとっては本書の通覧的な見通しを得るよすがとなります。こうしたネタバレを恐れない書き方は、本書に細部があるからこそできることです。第1章「勉強と言語――言語偏重の人になる」は原理編その1であり「勉強とは、これまでの自分の自己破壊である」と要約されています。第2章「アイロニー、ユーモア、ナンセンス」は原理編その2であり、「環境のノリから自由になるとは、ノリの悪い語りをすることである」。第3章「決断ではなく中断」は原理編その1であるとともに実践編その1で、「どのように勉強を開始するか。まず、自分の現状をメタに観察し、自己アイロニー〔自己ツッコミ〕と自己ユーモア〔自己ボケ〕の発想によって、現状に対する別の可能性を考える」。第4章「勉強を有限化する技術」は実践編その2であり、「勉強とは、何かの専門分野に参加することである」。

★本文では重要な語句や文章はゴシック体で組まれています。「ツイッター哲学」としての『別のしかたで』(河出書房新社、2014年)の次の、千葉さんの最新作が勉強論だということはしばらく前から知られていたことではありました。こうしてひもといてみると、千葉さんの思考と実践のエッセンスがぎゅっと凝縮された本で、なおかつそれを可能なかぎり明晰に明瞭に記述しえた魅力的な本だと感じます。結論の後にある「補論」は。「本書の学問的背景を知りたい方、専門家の方へ」と始まり、「本書は、ドゥルーズ&ガタリの哲学とラカン派精神分析学を背景として、僕自身の勉強・教育経験を反省し、ドゥルーズ&ガタリ的「生成変化」に当たるような、または精神分析過程に類似するような勉強のプロセスを、構造的に描き出したものです」(222頁)と説明されています。こうした種明かしは自画像に似て、自意識との困難な格闘が伴うものですが、千葉さんにとってこうした相対化は、ある種必然だったのではないかと思われます。というのも、『勉強の哲学』は、NHKの特番を書籍化した『哲子の部屋Ⅲ: “本当の自分”って何?』(河出書房新社、2015年)で言及されていた「変態の哲学」を出発点に、詳しく方法論を示したものだとも読めるからです。

★「僕が言いたいことはシンプルです――「最後の勉強」をやろうとしてはいけない。絶対的な根拠を求めるな、ということです。それは、究極の自分探しとしての勉強はするな、と言い換えてもいい。自分を真の姿にしてくれるベストな勉強など、ない」(136頁)。また、後段ではこのようにも書かれています。「アイロニーの批判性を生かしておくには、絶対的なものを求めず、そして、複数の他者の存在を認めなければならない。アイロニカルな批判は、むしろハンパな状態にとどめておく必要があるのです」(145頁)。そして、「複数の他者のあいだで旅しながら考えること」(146頁)の可能性が説明されます。「信頼に値する他者は、粘り強く比較を続けている人である」(148頁)という千葉さんが言う、「出来事と出会い直そうとする」(153頁)ことや「「変化しつつあるバカさ」で行為する」(170頁)ことをめぐる議論は、どこか東さんの「観光客の原理」と交差する部分があるような予感がします。

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★さらにここ最近の文庫新刊では以下のものに注目したいと思います。
点と線から面へ』ヴァシリー・カンディンスキー著、宮島久雄翻訳、ちくま学芸文庫、2017年4月、本体1,000円、文庫判256頁、ISBN978-4-480-09790-3
『枕草子』巻、清少納言著、島内裕子校訂訳、ちくま学芸文庫、2017年4月、本体1,400円/本体1,500円、文庫判464頁/528頁、ISBN978-4-480-0978-6/978-4-480-09787-3

★『点と線から面へ』と『枕草子』上下巻は今月のちくま学芸文庫の新刊。このほかには納富信留『哲学の誕生』、アルフレッド・W・クロスビー『ヨーロッパの帝国主義』が発売されています。カンディンスキー『点と線から面へ』は、中央公論美術出版社の「バウハウス叢書」の第9巻として1995年に刊行されたものの文庫化。底本は原著第二版(1926年)。既訳には『カンディンスキー著作集(2)点・線・面――抽象芸術の基礎』(西田秀穂訳、美術出版社、1959年;改訂版1979年;新装版2000年)がありますが、こちらの底本は1955年の第3版(ベンテリ社版)です。巻末の文庫版あとがきによれば、再刊にあたり、訳語の修正が行われています。ちくま学芸文庫さんには今後もバウハウス叢書の品切本の文庫化を期待したいところです。

★いっぽう島内裕子校訂・訳『枕草子』上下本は文庫オリジナル。凡例によれば「現代では「三巻本」で『枕草子』を読むことが主流となっているが、昭和20年代頃までは「枕草子を読む」とは、基本的に、北村季吟『春曙抄』を読むことであった。日本文化に大きな影響を与えてきた『枕草子』の本分に触れるために、本書の底本を『春曙抄』とするゆえんである」と(下巻巻末の「解説」には『春曙抄』に対するさらなる言及あり)。構成は段ごとに本文、現代語訳、評というシンプルなもの。語釈や補注が欲しいという方は、石田穣二訳注『新版 枕草子―――付現代語訳』(上下巻、角川ソフィア文庫、1979~1980年)や、上坂信男/神作光一全訳注『枕草子』(全3巻、講談社学術文庫、1999~2003年) などが参考になるかと思います。このほか、橋本治さんによる『桃尻語訳 枕草子』(全3巻、河出文庫、1998年)や、大庭みな子さんによる『現代語訳 枕草子』(岩波現代文庫、2014年)をはじめ、様々なヴァージョンがあります。

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★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。
もうひとつの〈夜と霧〉――ビルケンヴァルトの共時空間』ヴィクトール・E・フランクル著、諸富祥彦編、広岡義之編訳、林嵜伸二訳、ミネルヴァ書房、2017年4月、本体2,200円、4-6判上製208頁、ISBN978-4-623-07936-0
18歳で学ぶ哲学的リアル――「常識」の解剖学』大橋基著、ミネルヴァ書房、2017年4月、本体2,800円、A5判並製306頁、ISBN978-4-623-07937-7
『新しき土』の真実――戦前日本の映画輸出と狂乱の時代』瀬川裕司著、平凡社、2017年4月、本体4,500円、A5判上製376頁、ISBN978-4-582-28264-1
2100年へのパラダイム・シフト』広井良典+大井浩一編、作品社、2017年3月、本体1,800円、A5判並製217頁、ISBN 978-4-86182-597-2

★ミネルヴァ書房さんの新刊『もうひとつの〈夜と霧〉』『18歳で学ぶ哲学的リアル』はともにまもなく発売(今月20日頃)。フランクル『もうひとつの〈夜と霧〉』はドイツ語版『夜と霧』の初版に付録として併載されていた思想劇「ビルケンヴァルトの共時空間――ある哲学者会議」(Synchronisation in Birkenwald : Eine metaphysische Conference. 初出は1948年『ブレンナー峠』誌第17号)の、初の単行本化です。既訳には武田修志訳(『道標』第33号、人間学研究会、2011年6月、2~54頁)があるとのこと。この思想劇について広岡さんは巻頭の「はしがき」で「強制収容所を舞台として展開されており、『夜と霧』の内容がリアルに戯曲化されている」と紹介されています。この思想劇はまず、スピノザ、ソクラテス、カントが天国で話し合うところから始まります。「人間は地獄でも人間であり続けることができるということを証明する」とソクラテスは述べ、3人は下界のビルケンヴァルト強制収容所へ降りていきます。そこで語り合う被収容者らを観察し、さらに議論を交わします。淡々とした劇ですが、作者の血涙が行間に滲み出るような内容です。本書の後半はこの劇作の詳細な解説。

★『18歳で学ぶ哲学的リアル』の著者、大橋基さん(おおはし・もとい:1965-)は現在法政大学文学部・社会学部兼任講師。共著や共訳書がありますが、単独著は本書が初めてになります。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭の序章にはこう書かれています。「本書は「哲学入門」に先立つ緩やかなエントランスである。ここから「哲学」のなかに踏み込んでも、「社会科学」や「自然科学」に立ち返ってもかまわない。学校の勉強とは無関係な「怖いものみたさ」でも大歓迎だ。/君たちが、自分に似た「哲学者」を見つけたとき、彼らは君たちを「非日常」へのいざなう「秘密の友人」になる」(8頁)。各章末には参考文献が列記され、巻末には用語集と索引が配されています。本書は「大学の社会科学系学部に在籍する学生向けの「哲学案内」として企画された。〔・・・〕内容は〔・・・〕「近代以後の規範的倫理学」を中心とするものとなっている」(あとがき)。本書執筆に至りつくまでの苦労の一端は終章の最終節「ある日の夕暮れどき、「教室」で」にリアルに描写されています。

★瀬川裕司『『新しき土』の真実』はまもなく発売(今月14日頃)。帯文に曰く「若き原節子を〈世界の恋人〉たらしめた、戦前における「最初で最後の本格的輸出映画」の真相に切り込む力作。日独共同製作の裏側で囁かれ、現在でも定説として語り継がれる数々の嘘と虚報を、ドイツ側の視点も含めて丹念に検証し、『新しき土』という怪物を生み出した時代の精神を明らかにする。「日独防共協定の産物」か、「ナチのプロパガンダ」か、果ては「国辱映画」か」。目次についても列記します。序章「世界への夢」、第一章「日本映画の海外進出」、第二章「『新しき土』の誕生」、第三章「伊丹版・ファンク版の相違点」、第四章「批評の諸相」、第五章「『新しき土』製作期以降の輸出映画」、第六章「関係者の運命」、最終章「『新しき土』を生み出したもの」、あとがき、参考文献。序章の末尾には各章が次の通り要約されています。「第一章で『新しき土』以前の日本における映画輸出の流れを確認し、第二章で『新しき土』が企画されてから完成後の海外プロモーション活動までの経過、第三章で『新しき土』における〔両監督〕伊丹〔万作〕版と〔アーノルト・〕ファンク版の相違点、第四章で『新しき土』が受けた批評の諸相、第五章で『新しき土』製作時期以後の日本映画輸出の試み、第六章で『新しき土』に関わった主要人物のその後の運命を扱い、最終章で何が同作を生み出したかについて総括をおこなう」。

★『2100年へのパラダイム・シフト』は発売済。帯文はこうです。「日本を代表する50人の知性が“21世紀の歴史”の大転換を予測する。資本主義の危機、ポピュリズムの台頭、宗教とテロ、覇権交代の国家……世界、そして日本はどうなるのか?」。「国家と紛争の行方」「脱〈成長〉への道」「〈核〉と人類」「新しい倫理」「変貌する学と美」の五部構成で、それぞれの冒頭には編者の広井さんと識者による討議が置かれ、そのあとに7~10本の寄稿が並べられています。収録作はオンライン書店「honto」に上がっています。「述」とあるのが各部冒頭の討議です。

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★さらに注目すべき新刊としては、4月5日発売となったらしいもののその値段ゆえに書店店頭ではまだ見かけていない二冊本、伊藤博明『ヨーロッパ美術における寓意と表象――チェーザレ・リーパ『イコノロジーア』研究【付属資料『イコノロジーア』一六〇三年版全訳】』(ありな書房、2017年4月、本体36,000円、B5判上製函入272頁+別冊432頁、ISBN978-4-7566-1751-4)があります。図像学のかの大古典、リーパの『イコノロジーア』の全訳が成ったということで、2017年の大ニュースのひとつになるべきところですが、版元ドットコムでの特記や雑誌広告を除くと、アマゾンでもhontoでもこの驚嘆すべき付属資料について記載がなく、もっと宣伝したらいいのに、と感じます。アマゾンでは在庫なしですが、買い物カゴが付いているので取り寄せ可能ということでしょう【4月13日現在、カゴが外れてしまいました】。hontoでは「現在お取り扱いができません」となっており、丸善、ジュンク堂、文教堂のいずれにも店頭在庫なし。まあこの値段ですから今後も書店さんが仕入れるというのは難しいかもしれません。さほど発行部数は多くないでしょうからうかうかしていると図書館に買われて品切、となる可能性もあります。ただ、ありな書房さんの前回の高額本『ヴァールブルク著作集 別巻1 ムネモシュネ・アトラス』(2012年3月刊、本体24,000円、ISBN978-4-7566-1222-9)に比してもさらに高いわけなので、なかなか手が届きにくいですね。

★最後にもうひとつ。これまで復刊ドットコムでは「ジャガーバックス」の復刊が行われてきましたが、ついに「ジュニアチャンピオンコース」の復刊も開始となりそうです。しかもその第一弾は、斎藤守弘著『なぞ怪奇 超科学ミステリー』(1974年)だというのです。子どもの頃愛読していたにもかかわらず大学生になる前に一括処分してしまい、あとあとになってそのことを悔やんだだけに、購入を決断するには一秒もかかりませんでした。身も蓋もないことを言うと、子供だった時分のインパクトは、復刊されて見直す際にはずいぶん薄れてしまっていることに気づくことが多いです。それでも、この本とともに生きたことを思い出すのは、自分の奥に埋もれて見つけがたくなってしまったものをもう一度掘り起こすきっかけになるわけで、その意味で復刊本は「特別な装置」たりうるのです。

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# by urag | 2017-04-09 23:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 04月 05日

星野太×塩津青夏「美学的崇高 vs. 修辞学的崇高?」@NADiff名古屋

◎トークイベント:星野太×塩津青夏「美学的崇高 vs. 修辞学的崇高?――崇高における像と言語」(星野太『崇高の修辞学』(月曜社)刊行記念トーク
出演:星野太(美学・表象文化論)× 塩津青夏(美術史学)
日時 :2017年4月23日(日)18:30-20:30(開場 18:00)
会場:NADiff愛知(愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センターB2F)
定員:50名
料金:500円
参加方法: ご希望日、ご参加を希望される方のお名前、お電話番号、ご参加人数を明記の上、イベント名のリンク先からメールにてご予約ください。 お電話(TEL : 052-972-0985)でも承っております。なお、当日キャンセルはお断りしております。

星野太(ほしの・ふとし): 1983年生まれ。美学、表象文化論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、金沢美術工芸大学講師。著書に『崇高の修辞学』(月曜社、2017年)、共著に『コンテンポラリー・アート・セオリー』(イオスアートブックス、2013年)、共訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で』(共訳、人文書院、2016年)などがある。

 
塩津青夏(しおつ・せいか): 1985年生まれ。美術史学。名古屋大学大学院文学研究科修士課程修了。修士(文学)。2010年より愛知県美術館学芸員。2017年4月より、トリエンナーレ推進室で勤務。愛知県美術館で担当した主な展覧会に「ピカソ、天才の秘密」(2016年)などがある。


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# by urag | 2017-04-05 15:59 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2017年 04月 04日

『人文学報』ナンシー特集号、『舞台芸術』第20号

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★西山雄二さん(訳書:デリダ『条件なき大学』、共訳:『ブランショ政治論集』
★柿並良佑さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
西山さんが所属されている首都大学東京人文科学研究科が先月下旬に発行された『人文学報』513-15号(フランス文学、ISSN0386-8729)ではメイン特集が「ジャン=リュック・ナンシーの哲学の拍動」となっており、西山さんと柿並さんの責任編集となっています。以下、目次を転記しておきます。なお首都大学東京既刊リポジトリ「みやこ鳥」では、同誌の収録先はすべて一本ごとにPDFで無料公開されています。トップページから『人文学報』で検索してみてください。

◎『人文学報』513-15号(フランス文学;首都大学東京人文科学研究科、ISSN0386-8729)
特集:ジャン=リュック・ナンシーの哲学の拍動|責任編集=西山雄二+柿並良佑
 はじめに|西山雄二
 キルケゴール――ジャン=リュック・ナンシーへの問い|ジャン=リュック・ナンシー/伊藤潤一郎訳
 変容、世界|ジャン=リュック・ナンシー&ボヤン・マンチェフ/横田祐美子訳
 民主主義の執拗さ――ミゲル・アバンスール、ジャン=リュック・ナンシー、ジャック・ランシエールとの対話|伊藤潤一郎訳
 ジャン=リュック・ナンシーの「キリスト教の脱構築」をめぐって|松田智裕訳
  1)『脱閉域』(オリヴィエ・ペーターシュミット)
  2)『アドラシオン』(フィリップ・ロールバッハ)
  3)応答(ジャン=リュック・ナンシー)
 非恋愛論 « Ceci n'est pas un (traité de l') amour » – de Jean-Luc Nancy|柿並良佑
 時間、自己触発、固有性――超越論的感性論をめぐるジャン=リュック・ナンシーとジャック・デリダの討論|市川崇
 近接と対立  ――モーリス・ブランショ『明かしえぬ共同体』の試練にかけられるジャック・デリダとジャン=リュック・ナンシー|ジゼル・ベルクマン/亀井大輔+市川博規訳
 世界の欲望――ジャン=リュック・ナンシーと存在論的エロス|ボヤン・マンチェフ/横田祐美子訳
 「素描されてその姿を表すもの…… 」――四つの特徴−線によるジャン=リュック・ナンシーの〈感性学〉|ジネット・ミショー/吉松覚訳

国際連続セミナー「文学と愛」
 はじめに|西山雄二
 愛の悪魔|ダリン・テネフ/橋本智弘訳
 愛の地政学――『蝶々夫人』の変容|デンニッツァ・ガブラコヴァ/栗脇永翔+中村彩訳
 デンニッツァ・ガブラコヴァ「愛の地政学」への応答|荒木典子/大杉重男
 「愛せ、さもなくば去れ」?――マグレブ系フランス人による文学からの回答|下境真由美

研究集会「フランス文学と愛」
 趣旨説明――恋愛論の源流へ|藤原真実
 マルシリオ・フィチーノとプラトニック・ラブ |グロワザール・ジョスラン/藤原真実訳
 激情的な愛から昇華された愛へ――『マノン・レスコー』から『新・エロイーズ』まで|ジゼル・ベルクマン/藤原真実訳

『王太子のための古典ラテン文集』に見るプラウトゥスとテレンティウスの価値|榎本恵子
2016年度活動報告

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★京都造形芸術大学舞台芸術研究センターさん(発行元:『舞台芸術』第1期全10巻)
★星野太さん(著書:『崇高の修辞学』)
舞台芸術研究センターさんが企画編集されている機関誌『舞台芸術』第20号(特集:〈2020年以後〉の舞台芸術)が今月発売となりました。星野さんは共同討議「ダンス・振付という行為」に相模友士郎さん、平原慎太郎さん、きたまりさんらと参加されています。なお、同誌は第16号から第3期となり、企画編集は京都造形芸術大学舞台芸術研究センターさんで変わらないものの、発行・発売・編集が以下のように変遷しており、角川書店さんのここ5年の動向の一端を感じさせます。

第16号(2012年3月):発行=角川学芸出版、発売=角川グループパブリッシング
第17号(2013年3月):発行=角川学芸出版、発売=角川グループパブリッシング
第18号(2014年3月):発行=株式会社KADOKAWA、編集=角川学芸出版
第19号(2015年9月):発行=株式会社KADOKAWA
第20号(2017年3月):発行=角川文化振興財団、発売=株式会社KADOKAWA

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# by urag | 2017-04-04 19:59 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2017年 04月 04日

書評:『統治性』『東京は、秋』『抑止する力』『SLASH』『Hashima』

弊社既刊書に寄せていただいたここ3ヶ月の書評や紹介記事を列記いたします。

◎ウィリアム・ウォルターズ『統治性』阿部潔ほか訳、2016年7月刊
『佛大社会学』第41号(2017年3月30日発行)「書評」欄で社会学部専任講師の山本奈生さん曰く「本書ではフーコーの思想に内在して統治性概念が、他の「生権力」「主体化/服従化」「規律訓練型権力」などとどういった関連にあるのかが検討されるのではなく、あくまでも統治性概念の広がり、そしてこれを用いる際の批判的観点に主眼が置かれているが、これが手際よく整理されて心憎いほどである」。また、「「もうすぐ絶滅すると言われる紙の書物」を粘り強く支える編集者と著者らの作品リストを時系列で眺めてみるとき、出版社もまたウォルターズの方法と同じように「対抗的記憶」と「忘れられた闘争」に寄り添って政治的なものの境界線に挑戦し続けていることに気づかされる」と激励の言葉もいただきました。山本先生、ありがとうございます。

◎荒木経惟+荒木陽子『東京は、秋』2016年12月刊
『FUDGE』2017年2月号(1月12日発売)「PICK UP NEW BOOKS 今月の新刊&注目作」欄で山本アマネさん曰く「「要するに街のディテールを撮るのが好きなんだよね」と得意げに話す荒木と、作為なしにユーモラスで愛情のある返答をする陽子にほほが緩む」。
『men's FUDGE』2017年3月号(1月24日発売)「BOOKS」欄で同じく山本アマネさん曰く「一見して何処なのか分からないそれらの写真には、その場所や時代ならではの人々の生活が染み込んでいる。そこには魅力的な街とともに、そのときの荒木自身の気持ちが記録されている」。
『母の友』2017年5月号(福音館書店)「polyphony/Books」欄に曰く「実はこの本、今回が三度目の刊行となるのだが、何度も復刊されるのは、この夫婦対話の魅力も大きいだろう。実に“いい”加減なのだ。仲が良いが、べたべたせず、適度な距離感もある」。

◎カッチャーリ『抑止する力』上村忠男訳、2016年12月刊
「週刊読書人」2017年3月31日号、中村勝己さん(中央大学兼任講師)による書評「「カテコーン」の概念の解釈を主題に――〈世界の再宗教化〉をどう捉えどう向き合うべきか」に曰く「イタリア現代思想には、シュミットの「カテコーン」論を再考する解釈史の流れがある。その前史はドイツのヤーコプ・タウベス『パウロの政治神学』(岩波書店、1993)だが、評者が知る限りでは、これを承けてジョルジョ・アガンベン『残りの時』(岩波書店、2000)、ロベルト・エスポジト『インムニタス[免疫]』(未邦訳、2002)、カッチャーリ、トロンティ共著『歴史の十字路にある神学と政治学』(未邦訳、2007)、パオロ・ヴィルノ『ポストフォーディズムの資本主義』(人文書院、2008)、ネグリ=ハート『コモンウェルス』(NHKブックス、2009)、そして本書『抑止する力』(原著、2013)などがある。政治神学的な観点からカテコーンの解釈について最も熱を込めて主題的に論じているのは、もちろんカッチャーリの本書である」。

◎佐野方美写真集『SLASH』2017年2月刊
『アサヒカメラ』2017年4月号「TOPICS/BOOK」欄「写真に封じ込められた一瞬の集積――時代の空気を写しとめた新作写真集を読む」(解説=山内宏泰、聞き手=池谷修一)に曰く「写真そのものも編集もデザインセンスにあふれています。20世紀以降のすぐれた表現者は必ずデザイナー的資質を持っている。彼女もそのひとりでしょう」。

◎松江泰治写真集『Hashima』2017年2月刊
『CANON PHOTO CIRCLE』2017年4月号(3月15日発行)「今月の新刊」欄に曰く「世界遺産登録をきっかけに30年の時を経て振り返り、その記録性に面白みを感じたという写真群を、自身の手によってデジタルリマスターした諧調豊かなモノクロームは、見る者に当時の軍艦島の空気感を伝えます」。
「信濃毎日新聞」2017年3月26日(日)付「読書欄」に曰く「晴天下、シャープなピントで撮られた作品群は、すでに現在の著者のスタイルが感じられて面白い」。

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# by urag | 2017-04-04 15:18 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2017年 04月 01日

注目新刊:松田行正『デザインってなんだろ?』、ほか

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デザインってなんだろ?』松田行正著、紀伊國屋書店、2017年3月、本体1,800円、B6変形判並製328頁、ISBN978-4-314-01145-7
タウリス島のイフィゲーニエ』ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ作、市川明訳、松本工房、2017年1月、本体1,100円、新書判並製352頁、ISBN978-4-944055-87-6
ゴーストタウン』ロバート・クーヴァー著、上岡伸雄・馬籠清子訳、作品社、2017年3月、本体2,400円、四六判上製246頁、ISBN978-4-86182-623-8

★松田行正『デザインってなんだろ?』は3月29日取次搬入済の新刊。新書判よりわずかに天地左右が大きいサイズで、手のひらにしっくりくる美しい本です。帯文に曰く「ブックデザインの世界を颯爽と駆け抜けてきた著者が、長年の経験と博覧強記の知識を駆使して、デザインや美的感覚が、そもそもどのように形成されていったか、歴史の糸をときほぐしつつ解説する渾身のデザイン論。混迷する文化状況を俯瞰し、その行く末を占う読み物としても楽しめる、基礎教養が詰まったコンパクトブック」。目次は書名のリンク先をご覧ください。小口に仕掛けがあり、2種類の模様が浮かび上がるようになっています。巻頭からめくるのと巻末からめくるのでは模様が違うのです。一見、硬くて開きづらい本のように感じますが、PUR製本なので、よほど乱暴にしないかぎりはぐいっと開いてもしっかり開きます。松田さんは巻頭の「はじめに」で、現在はコンピュータで仕事をしているものの、コンピュータ以前のデザインは「コンピュータまかせではない発送の宝庫だ」と指摘されています。「本書は、歴史探偵さながらに、さまざまなデザインの背景にある意味などを探求し、まとめてみたものです」。またこうも記しておられます「効率や実利にばかり気を取られ、〔・・・〕すぐに役立つことばかりにとらわれ過ぎるのも、なにか寂しい気がします。やはり精神的で持続可能性のある豊かさは大事です」。歴史をひもとくカラー図版多数、これこそ本当の「自己啓発本」です。「さっさと仕事を終えて遊ぼう!」という帯のキャッチフレーズも素敵です。

★ゲーテ『タウリス島のイフィゲーニエ』は、大阪大学名誉教授の市川明さん(いちかわ・あきら:1948-)の個人訳によるドイツ語圏演劇翻訳シリーズ「Akira Ichikawa Collection」の第1巻として2014年10月に刊行されたものの新装版。初版は横長のB5変型判という大判な本でしたが、新装版では第2巻以降と同じ新書判となっています。本文は美しいオリーブ色で刷られ、ドイツ語原文との対訳となっています。同シリーズの既刊書には以下のものがあります。第2巻:クライスト『こわれがめ 喜劇』2015年、第3巻:レッシング『賢者ナータン 五幕の劇詩』2016年、第4巻:ブレヒト『アルトゥロ・ウイの興隆』2016年。有限会社松本工房さんは大阪市でグラフィックデザイン、組版、出版を営んでいる会社。二代目の代表者松本久木さんへの2009年のインタヴュー記事によれば同社は1977年に松本さんの父上が創業。経営難から2000年代前半に久木さんが関わるようになり、見事に危機を脱して、大阪の「ひとり出版社」として活躍されています。制作されている書籍はいずれも造本が美麗なものばかりですが、ほとんどがお手頃価格なのがすごいところ。たとえば劇作家の深津篤史さん(ふかつ・しげふみ:1967-2014)の作品集成『深津篤史コレクション』3巻本をご覧ください。その繊細な佇まいにはっとします。このほか、海外からの注文が多く来るという博士号取得論文刊行シリーズ「INITIAL」、アートブックレーベル「colophon.」、ギャラリーとヴィジュアルブックのレーベル「ondo」など、いずれも紙媒体の喜びに満ちあふれた仕事を手掛けておられます。

★クーヴァー『ゴーストタウン』は『Ghost Town』(Henry Holt/Grove Press, 1998)の翻訳。訳者あとがきによれば、本書の刊行によって「クーヴァーのパロディ物4冊が揃った」と。ほかの3冊は『老ピノッキオ、ヴェネツィアに帰る』『ノワール』『ようこそ、映画館へ』で、いずれも作品社より刊行。『ゴーストタウン』について訳者はこうも述べています。「いわば西部劇のテーマパークで乗り物に乗り、決められたコースを走っているかのような感じなのだ。とはいっても、ディズニーランドのような清潔なテーマパークではない。暴力的な要素、卑猥で下品な要素が思い切り誇張され、神話に隠された裏の部分を露わにする。そして、人間が作り上げた文化的構築物の中でしか生きられない我々の姿を照射して見せる」(244頁)。「ピンチョン、バース、バーセルミらと並び称される、アメリカのポストモダン文学を代表する小説家」(著者略歴より)としてのクーヴァーの面目躍如とした一作、と言ってよいかと思われます。

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★今月以降の注目新刊を列記します。

0329『カウンター・デモクラシー――不信の時代の政治』ピエール・ロザンヴァロン著、嶋崎正樹訳、岩波書店
0329『幻想としての〈私〉: アスペルガー的人間の時代』大饗広之著、勁草書房
0331『〈わたし〉と〈みんな〉の社会学』大澤真幸/見田宗介著、左右社
0331『不協和音の宇宙へ: モンテスキューの社会学』中江桂子著、新曜社
0331『人間の運命』ラインホールド・ニーバー著、髙橋義文/柳田洋夫訳、聖学院大学出版会
0331『歴史の喩法――ホワイト主要論文集成』ヘイドン・ホワイト著、上村忠男訳、作品社
0401『理念の進化』ニクラス・ルーマン著、土方透監訳、新泉社
0404『書店員の仕事』NR出版会編、新泉社
0404『流されるな、流れろ! ありのまま生きるための「荘子」の言葉』川崎昌平著、洋泉社
0405『啓蒙と神話: アドルノにおける人間性の形象』藤井俊之著、航思社
0406『デカメロン(中)』ボッカッチョ著、平川祐弘訳、河出文庫
0406『現金の呪い――紙幣をいつ廃止するか?』ケネス・S・ロゴフ著、村井章子訳、日経BP社
0408『ゲンロン0 観光客の哲学』東浩紀著、ゲンロン
0410『第四の革命――情報圏(インフォスフィア)が現実をつくりかえる』ルチアーノ・フロリディ著、春木良且/犬束敦史/先端社会科学技術研究所訳、新曜社
0411『実体概念と関数概念【新装版】――認識批判の基本的諸問題の研究』エルンスト・カッシーラー著、山本義隆訳、みすず書房
0411『死に至る病』セーレン・キェルケゴール著、鈴木祐丞訳、講談社学術文庫
0411『写生の物語』吉本隆明著、講談社文芸文庫
0411『ヨハネス・コメニウス 汎知学の光』相馬伸一著、講談社選書メチエ
0411『勉強の哲学――来たるべきバカのために』千葉雅也著、文藝春秋
0411『人類の未来――AI、経済、民主主義』ノーム・チョムスキー/レイ・カーツワイル/マーティン・ウルフ/ほか著、NHK出版新書
0412『アナキスト民俗学: 尊皇の官僚・柳田国男』絓秀実/木藤亮太著、筑摩選書
0414『スノーデン 日本への警告』エドワード・スノーデン/青木理/井桁大介/金昌浩 /ベン・ワイズナー/宮下紘/マリコ・ヒロセ著、集英社新書
0415『バウドリーノ』上下巻、ウンベルト・エーコ著、堤康徳訳、岩波文庫
0418『科学とモデル――シミュレーションの哲学 入門』マイケル・ワイスバーグ著、松王政浩訳、名古屋大学出版会
0418『ゾンビ学』岡本健著、人文書院
0419『辺境図書館』皆川博子著、講談社
0419『ポピュリズムとは何か』ヤン=ヴェルナー・ミュラー著、板橋拓己訳、岩波書店
0420『ラカニアン・レフト――ラカン派精神分析と政治理論』ヤニス・スタヴラカキス著、山本圭/松本卓也訳、岩波書店
0420『もうひとつの〈夜と霧〉: ビルケンヴァルトの共時空間』ヴィクトール・E・フランクル著、諸富祥彦/広岡義之編、広岡義之/林嵜伸二訳、ミネルヴァ書房
0420『戦争にチャンスを与えよ』エドワード・ルトワック著、奥山真司訳、文春新書
0422『再起動する批評――ゲンロン批評再生塾第1期全記録』東浩紀編著、朝日新聞出版
0422『老子道徳経(井筒俊彦翻訳コレクション)』井筒俊彦著、古勝隆一訳、慶應義塾大学出版会
0422『著作権の誕生――フランス著作権史』宮澤溥明著、太田出版
0425『美学講義』G. W. F. ヘーゲル著、寄川条路監修、石川伊織/小川真人/瀧本有香訳、法政大学出版局
0425『記号と再帰 新装版: 記号論の形式・プログラムの必然』田中久美子著、東京大学出版会
0425『人工知能の哲学: 生命から紐解く知能の謎』松田雄馬著、東海大学出版部
0427『臨床哲学の知』木村敏/今野哲男著、言視舎
0427『美味礼讃』ブリア=サヴァラン著、玉村豊男訳、新潮社
0429『アレゴリー:ある象徴的モードの理論』アンガス・フレッチャー著、伊藤誓訳、白水社
0430『思考の体系学: 分類と系統から見たダイアグラム論』三中信宏著、春秋社
0510『柄谷行人講演集成1985-1988 言葉と悲劇』ちくま学芸文庫
0512『ラテン語を読む――キケロ―「スキーピオーの夢」』山下太郎著、ベレ出版
0526『メルロ=ポンティ哲学者事典 第二巻:大いなる合理主義・主観性の発見』加賀野井 秀一ほか監訳、白水社
0529『トールキンのベーオウルフ物語<注釈版>』J・R・R・トールキン著、岡本千晶訳、原書房

★なんといっても今月は、東浩紀さんの『観光客の哲学』と、千葉雅也さんの『勉強の哲学』に注目。翻訳ではヘイドン・ホワイト『歴史の喩法』と、ヤニス・スタヴラカキス『ラカニアン・レフト』。古典ものでは寄川条路監修『美学講義』と、鈴木祐丞訳『死に至る病』、玉村豊男訳『美味礼讃』ですね。

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# by urag | 2017-04-01 19:20 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 31日

本日スタート:ブックフェア「特集:『主体の論理・概念の倫理』」@東京堂

◎ブックフェア「特集:『主体の論理・概念の倫理――二〇世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義』(以文社)」

概要:フランス20世紀のエピステモロジー(科学認識論)の系譜におけるスピノザ主義に注目したグループ研究「フランス・エピステモロジーの伏流としてのスピノザ」の成果をまとめた論集がこの度刊行された。当フェアではこの論集『主体の論理・概念の倫理――二〇世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義』(以文社)の関連書籍とともに、フランス現代思想の隠れた水脈を探りたい。

場所:東京堂書店神田神保町店3階エスカレーター前
期間:2017年3月31日(金)~2017年5月30日(火)

※大きなパネルで掲示されている人物相関図は『主体の論理・概念の倫理』の巻頭に収められているダイアグラムです。共編著者の近藤和敬さんによる力作と伺っています。
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※弊社既刊書の、近藤和敬さんによる『構造と生成』2巻本も並んでいます。
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※共編著者の上野修さんによるステートメントとフェア担当のMさんによるブックガイドを含む貴重な小冊子が店頭にて無料配布中!これは貴重です。
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# by urag | 2017-03-31 17:00 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 30日

近藤和敬さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」

主体の論理・概念の倫理――二〇世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義』(以文社、2017年2月)の共編著者でいらっしゃる近藤和敬さん(こんどう・かずのり:1979-)によるブックツリー「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」が、オンライン書店hontoにて公開されました。「哲学読書室」の第三弾です。皆様にご高覧いただけたら幸いです。

◎「哲学読書室」@honto

第1弾「崇高が分かれば西洋が分かる」選書:星野太さん(1983-:金沢美術工芸大学講師。『崇高の修辞学』月曜社、2017年2月刊)
第2弾「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!」選書:國分功一郎さん(1974-:高崎経済大学准教授。『中動態の世界』医学書院、2017年3月刊)
第3弾「20世紀フランスの哲学地図を書き換える」選書:近藤和敬さん(1979-:鹿児島大学法文学部准教授。『主体の論理・概念の倫理』以文社、2017年2月刊)

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# by urag | 2017-03-30 16:15 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)