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2017年 12月 03日

白水社『メルロ=ポンティ哲学者事典』および「異貌の人文学」第2シリーズ、ともに完結

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新版 アリストテレス全集 第4巻 自然学』内山勝利訳、岩波書店、2017年11月、本体6,000円、A5判上製函入496頁、ISBN978-4-00-092774-1
メルロ=ポンティ哲学者事典 別巻 現代の哲学・年表・総索引』加賀野井秀一/伊藤泰雄/本郷均/加國尚志監修、白水社、2017年11月、本体6,400円、A5判上製564頁、ISBN978-4-560-093146
ボーリンゲン――過去を集める冒険』ウィリアム・マガイアー著、高山宏訳、白水社、2017年11月、本体6,800円、4-6判上製426頁、ISBN978-4-560-08310-9
安倍晴明『簠簋内伝』現代語訳総解説』藤巻一保著、戎光祥出版、2017年11月、本体2,700円、四六判並製411頁、ISBN978-4-86403-263-6

★『新版 アリストテレス全集 第4巻 自然学』は8か月ぶりとなる第16回配本。「自然学」は旧版全集では出隆/岩崎允胤訳で1968年刊の第3巻に収録。なお旧版全集は岩波オンデマンドブックスで、第13巻「ニコマコス倫理学」(加藤信朗訳、1973年)のみ現在も入手可能です。今回の新訳「自然学」の底本はウィリアム・デイヴィッド・ロス(Sir William David Ross, 1877-1971)による校訂版(Oxford Classical Texts, 1950)。訳者の内山さんは解説で次のように説明されています。「「自然」(ピュシス)なるものをはじめて学的対象として主題化し、それに明確な規定を与えて、「自然学」の学的領域とその内実とを確定したのは、まぎれもなくアリストテレスであった。その意味では、「自然学」はアリストテレスによってはじめて十全に確立されたものであり、またその後の長い歴史を通じてなされた自然学的考察や自然哲学は、およそ17世紀にガリレオらによる近代物理学への大転換が始まるまでは、すべて直接間接にそれを基盤とし、その大きな影響下に置かれていた、と言ってよかろう。アリストテレスにとって「自然学」が包括する領域には〔・・・大気圏内の諸事象に関わる〕気象論が加わるとともに、〔・・・動物学を中心とするきわめて浩瀚な〕生物学もそこに含まれ、また、『魂について』に纏められた考察も、その重要な一環をなしている。〔・・・〕近代的な「物理学」の領域を大きく越え出ていることが注意されよう」(448~449頁)。付属する「月報16」では、伊藤邦武さんによる「開かれた宇宙から閉じられた世界へ」と、リンゼイ・ジャドソン「アリストレテス『自然学』における素材-形相論、目的論、ゼノンのパラドクス」を収録。次回配本は2018年3月下旬刊行予定で第17巻「政治学 家政論」とのことです。新訳全集全20巻+別巻は残すところ、第17巻のほかは、第11巻「動物の発生について」と別巻「総索引」の刊行を残すのみとなりました。

★『メルロ=ポンティ哲学者事典 別巻 現代の哲学・年表・総索引』は最終回となる第4回配本。帯文に曰く「ソシュールをはじめ20世紀現代思想の巨人たちから、サンデル、バトラー、メイヤスー、ピケティ、ガブリエルまで……290名超の「セレブな哲学者たち」を収録する別巻」と。事典全三巻を補完する、日本の書き手による大部な現代哲学者名鑑となっています。税込6912円とけっして安くはないですが、A5判で500頁を優に超える本書が版元さんの他の新刊と比してそれでもこの値段に収まっているのは、努力の賜物かと想像します。哲学を学ぶ大学生のみならず、書店員や編集者にとっても必携の一冊です。

★マガイアー『ボーリンゲン』は「高山宏セレクション〈異貌の人文学〉」の第2シリーズ完結となる一冊。『Bollingen: An Adventure in Collecting the Past』(Princeton University Press, 1982; 2nd edition, 1989)の全訳です。『メルロ=ポンティ哲学者事典 別巻』を買う方は本書『ボーリンゲン』も購読せねばなりません。なぜならそういう本だからです。巻末の訳者解説「出会いのアルケミア」の冒頭で高山さんはこう書かれています。「次々と人名が登場してくるが、なにしろ当時にして国際的な有名人、21世紀劈頭の今みて確かに20世紀人文学をこの人が変えたと納得できる面子が、平凡な言い方だが綺羅星のごとくに登場してくるわけで、次には誰がという興味だけでどんどん読み進めてしまう、一種の、ひとつの文化自体を主人公にした集合的伝記、とでも言っておこう」(331頁)。「各分野にまたがる世界的名士の名をたどるだけで20世紀文化の消長が追えたことになる。新しい学知の創発は人と人の出会いがうむケミストリー(化学変化に擬される人間と人間の関係)だということを圧倒的に教えられる。世界は関係だということを人と人との関係を通して知るあり方がとても錬金術的だ。ユングは会議〔ダーグンク〕を必要としていた、出会いのアルケミアを。そのことを『ボーリンゲン』は、1ページ1ページ繰り続けていく作業の中で教える」(343頁)。

★また、こうも評しておられます。「読み方はいろいろあるが、まず単純にはフィランスロピー(philanthropy)の事例研究ということである。つまり産業界の大立者の中に篤志家がいて、学術・芸術・文化事業を財政的に援助する営みを指す。広くはパトロンの事前行為ということでパトロネージュ(女性パトロンによるマトロネージュ)の研究書と言ってもよいが、20世紀の巨大産業・金融資本による大型のパトロネージュはもはやパトロネージュというよりはフィランスロピーの名で呼ばれるのが一般的である」(337頁)。「1980年代、いわゆるバブル経済期そのものの只中では余りフィランスロピーと言わず、「メセナ」というフランス語を使って議論したようにも思う」(339頁)。書店や出版社、図書館の活動を一種のフィランスロピーだ考えるならば、本書から偉大なる先達の足跡を学ぶ意義は小さくないと思われます。また、巻末付録の「ボーリンゲン叢書」や「ボーリンゲン奨学金受給者」を参考にすれば、興味深いブックフェアができるでしょう。

★『安倍晴明『簠簋内伝』現代語訳総解説』は、学研から2000年に刊行された『安倍晴明占術大全――『簠簋内伝金烏玉兎集』現代語訳総解説』の新版です。巻頭の「新版の刊行にあたって」によれば「今回、新版を出すにあたっては、旧版では割愛していた宿曜道(密教占星術)の巻も訳出して全訳版に改めるとともに、訂正補筆を行った」とのことです。目次は書名のリンク先をご覧ください。『簠簋内伝(ほきないでん)』全五巻の全訳ということになりますが、今回新たに訳出された第五巻「文殊宿曜経」の解説で、藤巻さんはこう述べておられます。「本書は複数の編術者の手になった別個の著述が合冊され、伝安倍晴明として権威付けられたもので、もとより晴明の著作ではなく、また純然たる陰陽師による著作ともみえない。法師陰陽師や密教の宿曜師らによる雑占集というのが実情に近いのではないだろうか」(351頁)。「本訳書の初版出版後、熱心な読者から占いの内実にかかわるご質問や相談などが多々寄せられたが、編訳者としては、ここに述べられている吉凶等にこだたっていただきたくはない。〔・・・〕本書は一切の矛盾を考慮の外に置いて占術にまつわる諸説を雑多に網羅した、ひとつの時代資料、民俗資料なのである」(352頁)。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

『文学問題(F+f)+』山本貴光著、幻戯書房、2017年11月、本体3,600円、四六上製539+50頁、ISBN978-4-86488-135-7
戦争と虚構』杉田俊介著、作品社、2017年11月、本体2,400円、46判並製400頁、ISBN978-4-86182-660-3
バンコクナイツ 潜行一千里』空族(富田克也/相澤虎之助)著、河出書房新社、2017年11月、本体1,600円、46判並製304頁、ISBN978-4-309-02631-2
資本主義と死の欲動――フロイトとケインズ』ジル・ドスタレール+ベルナール・マリス著、斉藤日出治訳、藤原書店、2017年11月、本体3,000円、四六判上製264頁、ISBN978-4-86578-150-2

★山本貴光『文学問題(F+f)+』は、全三部の本編と三篇の附録から成ります。第Ⅰ部「漱石の文学論を読む」は夏目漱石の『英文学形式論』と『文学論』の読解です。こんにちの読者にとっては読みにくい二著の骨子を現代語抜粋訳と簡潔な解説で示します。第Ⅱ部「『文学論』で読む世界文学」は応用編で「漱石の『文学論』を念頭に文学作品を読むと同時に、文学作品によって『文学論』の不足を観察してみる」(「はじめに」より)というもの。取り上げられている作品10点は『ギルガメシュ叙事詩』『イリアス』「客中作[李白]」『アラビアン・ナイト』『源氏物語』『溶ける魚』『フィネガンズ・ウェイク』。第Ⅲ部「来たるべき『文学論』へ向けて」は「『文学論』をアップデートしようという試み」で「『文学論』以後の漱石が文学について考えたこと、漱石以後の文学理論で考えられたことを材料として、『文学論』に足りない点を補い、知見を更新して、来たるべき『文学論』の姿を浮かび上がらせてみたい」(同)というもの。三つの附録は「『文学論』――110年の読解史」「『文学論』以降の一般文学論の動き」「文学を考え続けるためのブックガイド」。さらに本書の予約特典として30頁もの別冊非売品冊子「メイキング・オブ・『文学問題(F+f)+』」があります。機能性と美を兼ね備えた小沼宏之さんによる非常にシステマティックな造本設計もさることながら、知のエヴァンジェリストたる山本さんの親切な情報共有愛が爆発的に横溢している、素晴らしい一冊です。

★杉田俊介『戦争と虚構』は、鮮烈な『ジョジョ論』(作品社、2017年6月)に続く杉田さんの最新批評集。帯文が熱いです。「災厄の気配――鳴り響く早朝のJアラート。力なき笑いに覆われた〈戦前〉――に満ちる転換期としての2010年代。『シン・ゴジラ』『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』、押井守、宮崎駿、リティ・パン、伊藤計劃、湯川遥菜、安倍晋三、東浩紀、土本典昭……、それらを星座のようにつなぎ合わせたとき、見えてくる未来とは。新たなる時評=批評の形」。杉田さん自身の言葉も熱いです。「暗い時代である。暗すぎる、と言ってもまだ足りない。しかし、破局的な危機の時代においてこそ、人類の芸術や思想、批評はその力を発揮してきた。そうやって未来の人類を豊かに底上げしてきた。今後もしていくだろう。ファシズムや全体主義や独裁体制が永続した時代はなかった。極右化やポピュリズムだってそうだろう。近代化やデモクラシーや平和思想はこの地球上で少しずつ陣地を増やし、低い呟きによって勝利し続けてきた。それを忘れないことだ。政治的人間であらざるをえないときにこそ、芸術的人間でもあろうとし、生活をよりよきものたちで満たしていくことだ」(「はじめに」5頁)。「平和にとってフィクション作品とは何か。/虚構は戦争に抗することかできるのか。/そういうことを愚直に考えてみたかった」(4頁)。

★映像制作集団「空族(くぞく)」の二氏による『バンコクナイツ 潜行一千里』は「boid」誌2014年4月号から2016年12月号に連載された「潜行一千里」(全44回)を加筆修正し、書き下ろしを加えたもの。帯文に曰く「映画『バンコクナイツ』に至る十年間の潜入が生み出した驚愕のドキュメント」と。さらに「バンコクの日本人向け歓楽街・タニヤ通りを舞台にした映画を撮ろうと目論んだ空族は、そこで出会った娼婦や出稼ぎ労働者たちが熱狂する音楽“モーラム”や“プア・チーウィット(生きるための歌)”の存在を知る。その魅惑的な旋律に導かれ、男たちはイサーン(タイ東北地方)の森へ、そしてメコン川を越えラオスの山岳地帯へと迷い込むことに。次第に明らかになるベトナム戦争の陰惨なる傷跡と、資本主義の下劣なる欲望。しかし、世界経済の暴力に覆い尽くされたインドシナの大地で、抵抗の音楽とともに生きる人々の姿は、その最深部にこそ“楽園”があることを示していたのであった……」。著者たちはこう書いています。「映画製作を作戦と呼ぶ空族にとって、本書はその全行程の記録を基に校正された作戦報告書と呼ぶことができる。〔・・・〕この作戦報告書は空族がこの20年間、とりわけ映画『バンコクナイツ』を製作する過程の10年間(2007~2017)において起こった事件、出来事などが詳細に記されている」(6頁)。「本書は。もはや決して若くはない二人がしばし日本を離れ、実際に21世紀の東南アジアに入り込んでその土地の風花、ジャングル、山々、大メコン川の流れ、経済によって急速に近代化する都市、そして何よりそこで生きる人々との出会いによって何を感じ、考えたのかを綴った路上の記録にもなっている」(6~7頁)。



★ドスタレール/マリス『資本主義と死の欲動』は、『Capitalisme et pulsion de mort』(Albin Michel, 2009)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。訳者あとがきによれば本書は「21世紀資本主義が抱えている破局的な危機の実相を、フロイトの「死の欲動」という概念装置を通して読み解こうとする」もので、「資本主義が人類と地球に破滅をもたらすほどの危機を招いているという認識と、その破局的危機の根底に人間の無意識の欲動(死の欲動)が作動しているという独自の考察が語りだされている」とのことです。また「本書の魅力は、精神分析のフロイトと経済学のケインズをフランス独自の思想的土壌において節合し、現代世界の危機認識の理論として再創造しようとするところにある」とも紹介されています。「ジラールの模倣欲望論、バタイユの蕩尽論、コンヴァンシオン理論やレギュラシオン理論といった経済学説などが、フロイトとケインズの学説を節合するうえで重要な媒介装置として作用している」と。

★二人の経済学者、ドスタレール/マリスはこう書いています。「今日、われわれのコンドルセ、われわれのケインズ、われわれのフロイトはだれなのか。タイタニック号が氷山にぶつかったとき、すべての乗客は、船の部品よりも、自然よりも、船体が優位にあると信じ込んでいた。乗客が信じていたのは、技術が、不沈の船の素晴らしい技術が、乗客を救ってくれるであろう、ということであった。エリート――設計技師、船長、船主――は、壮大な船舶が沈み行くことを知って、愕然とする。船主は最初の救命ボートに飛び乗った。船主はわれわれの時代のブルジョアジーである。疑いもなく、ブルジョアジーはしゃにむにつき進んだあとに、卑劣な行為に走る。なぜ氷山で覆われた海に船舶という機械を押し出したのか。このエリートをそそのかしたのは、いかなる傲慢な無意識であり、そこにはいかなる破局の欲望が隠されていたのか。ケインズとフロイトは、この疑問を解き明かしてくれる」(30~31頁)。

★またこうも書いています。「本書で見るように、資本主義の壮大な企みとは、消滅への諸力を、つまり死の欲動を成長へと誘導し、転移させることである。その意味で、エロス〔生の欲動〕がタナトス〔死の欲動〕を支配し、利用し、従属させる。とりわけこのエロスによるタナトスの支配・利用・従属化は、自然を破壊することによっておこなわれる。だが、タナトスはエロスに住みつく。つまり、快楽は破壊のなかにある。そもそも快楽は消費のなかにあるが、消費は投資とは対立する破壊行為にほかならない。これに対して、投資は消費を拒絶する。現代の金融危機は、未曾有の危機に昇りつめた。北の諸国の住民は高齢化が進んでいるが、これらのひとびとはみずからの生活水準を譲り渡すことを拒んでいる。かれらの生活水準は無駄な消費という「呪われた部分」の発現であるというのに、である。他方で、中国およびその13億の人口のような超絶的な資本主義的エネルギーがたちあらわれている。そこから想像しうることは、おそらく中国にそのつもりはないであろうが、この超絶的なエネルギーが傲慢で好戦的なものになるという宿命であろう」(10~11頁)。本書は鏡のように現代社会の素顔を映し出します。それがいかにおぞましいものであれ、私たちはそれと向き合うべきです。

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★まもなく発売(12月6日)となる、ちくま学芸文庫の12月新刊から5点を紹介します。

『コミュニティ――安全と自由の戦場』ジグムント・バウマン著、奥井智之訳、ちくま学芸文庫、2017年12月、本体1,100円、256頁、ISBN978-4-480-09825-2
『ロック入門講義――イギリス経験論の原点』冨田恭彦著、ちくま学芸文庫、2017年12月、本体1,200円、352頁、ISBN978-4-480-09833-7
『ハーバート・スペンサー コレクション』ハーバード・スペンサー著、森村進編訳、ちくま学芸文庫、2017年12月、本体1,400円、480頁、ISBN978-4-480-09834-4
『定本 葉隠〔全訳注〕下』山本常朝/田代陣基著、佐藤正英校訂、吉田真樹監訳注、ちくま学芸文庫、2017年12月、本体1,700円、624頁、ISBN978-4-480-09823-8
『鉱物 人と文化をめぐる物語』堀秀道著、ちくま学芸文庫、2017年12月、本体1,300円、384頁、ISBN978-4-480-09835-1

★バウマン『コミュニティ』の親本は筑摩書房より2008年刊行(原著は2001年刊)。「文庫版への訳者あとがき」によれば、「今回の文庫化にあたっては全篇を通じて、訳文の見直しを図った」とのことです。「本書で著者は、コミュニティをめぐる人間の様々なドラマを描き出している。そのドラマの舞台装置あるいは時代背景として著者が設定しているのは、日増しにグローバル化し個別化する世界である。〔・・・〕本書で描かれるドラマは、いまもってわたしたちの目の前で上演中である。いや私たちの一人一人がそのドラマの登場人物であると言うべきかもしれない。〔・・・〕本書の記述がわたしたちの胸に「グサグサ突き刺さってくる」ように感じられるのは、偶然の産物ではない。要するに本書には、いまもって十分な存在価値があるのである」(244~245頁)。

★冨田恭彦『ロック入門講義』は文庫オリジナルの書き下ろし。目次を列記しておくと、はじめに|第1章 ロック略伝――1632年~1704年|第2章 観念はヴェールではない――仮説の論理の無理解に抗して|第3章 経験論――「白紙」からの出発|第4章 感覚と概念的把握――ロックを心像論者とする誤解に抗して|第5章 抽象観念論はナンセンス?――もう一つの流言|第6章 単純観念を求めて――可感的単純観念と可想的単純観念|第7章 観察の理論負荷性への視点――モリニュー問題|第8章 現代指示理論の二重のさきがけ――記述主義と反記述主義のはざまで|第9章 創造的変化の思想――ローティの批判にもかかわらず彼の先駆者として|あとがき。

★森村進編訳『ハーバート・スペンサー コレクション』も文庫オリジナルの訳し下ろし。19世紀イギリスの思想家スペンサーは日本では19世紀末にもっとも盛んに訳されていましたが、20世紀後半以降はずいぶん減っていましたから、初めての文庫本としてだけでなく新訳自体が非常に貴重です。帯文に曰く「歴史上、最も不当に批判されてきた「適者生存」の思想家の全貌! リバタリアニズムの原点」。収録されているのは『政府の適正領域』(1843年)、『社会静学(抄)』(1851年)、『人間対国家』(1884年)で、訳者解説「なぜ今スペンサーを読むのか」が付されています。参考文献、スペンサー年譜、人名と事項の索引あり。

★『定本 葉隠〔全訳注〕下』は全3巻の完結編。「葉隠聞書」八~十一を収録。上野太祐さんが解説「武勇と情念――女たちの『葉隠』」を執筆されています。なお、講談社学術文庫版の『新校訂 全訳注 葉隠』全3巻は上巻が9月に刊行されたのち、残り2巻はまだ刊行されていません。

★堀秀道『鉱物 人と文化をめぐる物語』は、今はなき「どうぶつ社」から2006年に刊行された『宮沢賢治はなぜ石が好きになったのか』に訂正を施し改題したもの、とのことです。文庫化にあたっての新たなあとがきは付されていません。もともとは雑誌や広報誌に長年にわたって寄稿されてきたものをまとめたのが本書です。堀さんの著書の文庫本は『「鉱物」と「宝石」を楽しむ本』(PHP文庫、2009年)以来久しぶりのもの。

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# by urag | 2017-12-03 22:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 28日

注目新刊:ブランショ『終わりなき対話』ついに全三巻完結

★郷原佳以さん(共訳:『ブランショ政治論集』)
★西山達也さん(訳書:サリス『翻訳について』)
★安原伸一朗さん(訳書:ブランショ『問われる知識人』、共訳:『ブランショ政治論集』)
ブランショ最大の評論集『終わりなき対話』(1969年)の翻訳が、今般発売された第三部の刊行をもってついに完結しました。郷原さんは訳者を代表されて「訳者あとがき」をお書きになっておられます。

終わりなき対話 Ⅲ 書物の不在(中性的なもの・断片的なもの)
モーリス・ブランショ著 湯浅博雄/岩野卓司/郷原佳以/西山達也/安原伸一朗訳
筑摩書房 2017年11月 本体5,200円 A5判上製352頁 ISBN978-4-480-77553-5

カバー紹介文:外へ、純粋なる外部へ――。語ること、書くこと。始まりも終わりもなく、痕跡を残すこともなく、肯定でも否定でもなく、あらゆる負荷と重力を逃れ、文学が切り開くものとは一体何か? 伝説の名著、ついに完結。

目次:
1 最後の作品
2 残酷な詩的理性――飛翔への貪欲な欲求
3 ルネ・シャールと中性的なものの思考
4 断片の言葉
5 忘れがちの記憶
6 夜のように広々とした
7 言葉は長々と歩まねばならない
8 ヴィトゲンシュタインの問題
 フローベール
 ルーセル
9 バラはバラであり・・・
10 アルス・ノーヴァ
11 アテネーウム
12 異化効果
13 英雄の終焉
14 語りの声――「彼」、中性的なもの
15 木の橋――反復、中性的なもの
16 もう一度、文学
17 賭ける明日
18 書物の不在
訳註
訳者あとがき

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筑摩書房さんのウェブサイトでは全巻完結の特設頁が解説されており、中山元さんや澤田直さんの推薦文(「webちくま」掲載)を読むことができます。澤田さんによる「遅配された伝説の書」の末尾には次のような印象的な言葉があります。「遅配された『終わりなき対話』。だが、それを開けた時、なんという初々しい相貌だろうか。モーリス・ブランショには「孤高の作家」というイメージが長らくつきまとってきたが、エンターテイメントに徹した文学と、象牙の塔に閉じこもった哲学との間にいかなる架け橋もないように思われる今日の日本でこそ、この本を読むことの意味がある。それは、哲学的思考と文学的エクリチュールを弁証法的に接続するためではなく、むしろ、その分化の手前に立ち戻るためだ。時間が熟成をもたらすこと、時間的にも空間的にも即座に繋がらないことの重要性について私たちはあらためて思いを巡らせるべきだし、amazonの即日配達の異常さに気づくべきなのだ。ほとんどタイムカプセルのように届けられたこの本を読む幸福を多くの人と分かち合いたいと思う」。

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# by urag | 2017-11-28 15:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 27日

「図書新聞」にソシュール「伝説・神話研究」の書評

「図書新聞」第3329号(2017年12月02日号)に、弊社5月刊行のソシュール『伝説・神話研究』(金澤忠信訳)の書評「伝承に象徴の意図は存在しない――ストーリーの大筋から逸脱した無意味そうな細部に〈歴史的事実〉の痕跡を見ようとする」が掲載されました。評者は千野帽子さんです。「訳者は、編者たちがつけた註をきわめて詳細な訳註でさらに補い、訳者みずからも手稿にあたって、編者たちが省略した部分のなかから読解の助けになる部分を抜き出したり、ソシュールの手書き文字の編者たちとは違う読解を示したりする。根気強い仕事だ」と評していただきました。千野先生、ありがとうございました。

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# by urag | 2017-11-27 12:15 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 26日

注目新刊:『コミュニズム ― HAPAX 8』夜光社、ほか

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★マルクス『資本論』刊行150周年記念となる今年(2017年)も残すところあと一ヶ月、ここ最近ではマルクス主義やコミュニズム、そして資本主義の未来/終焉をめぐる新刊が目白押しとなっています。歴史学、地理学、社会学、人類学、など視点は様々ですが、人間と社会をどうとらえ直すかが問われているのだと思います。

『コミュニズム ― HAPAX 8』夜光社、2017年11月、本体1,200円、四六判変形並製180頁、ISBN978-4- 906944-13-2
いかに世界を変革するか――マルクスとマルクス主義の200年』エリック・ホブズボーム著、水田洋監訳、伊藤誠/太田仁樹/中村勝己/千葉伸明訳、作品社、2017年11月、本体3,800円、四六判上製618頁、ISBN978-4-86182-529-3
資本主義の終焉――資本の17の矛盾とグローバル経済の未来』デヴィッド・ハーヴェイ著、大屋定晴/中村好孝/新井田智幸/色摩泰匡訳、作品社、2017年10月、本体2,800円、四六判上製430頁、ISBN978-4-86182-667-2
資本主義はどう終わるのか』ヴォルフガング・シュトレーク著、村澤真保呂/信友建志訳、河出書房新社、2017年11月、本体4,200円、46判上製362頁、ISBN978-4-309-24831-8
非‐場所――スーパーモダニティの人類学に向けて』マルク・オジェ著、中川真知子訳、水声社、2017年11月、本体2,500円、四六判上製176頁、ISBN978-4-8010-0287-6
『経済人類学――人間の経済に向けて』クリス・ハン/キース・ハート著、深田淳太郎/上村淳志訳、水声社、2017年11月、本体2,800円、四六判上製304頁、ISBN978-4-8010-0311-8
現代思想2017年12月号 特集=人新世――地質年代が示す人類と地球の未来』青土社、2017年11月、本体1400円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1356-1

★『HAPAX』第8号は発売済。「コミュニズム」と銘打たれ、以下の11編が収録されています。

コミュニストの絶対的孤独――不可視委員会の新著によせて|HAPAX
黙示録的共産主義者(アポカリプティック・コミュニスト)|高祖岩三郎
自由人の共同体と奴隷の共同体|李珍景
文明破壊獣ヒビモス、あるいは蜂起派のためのシュミット偽史|混世博戯党
非統治のための用語集|NPPV(マジで知覚するためのニュアンス)
壁のしみ|ヴァージニア・ウルフ
かたつむりの内戦、小説の倫理――「壁のしみ」訳者解題|五井健太郎
「復興」共同体と同じ場所に暮れをつくりだす  廉想渉「宿泊記」(一九二八)論|影本剛
「別の長い物語り」について|食卓末席組
巨椋沼における3つの議論|Great Caldrons
分裂的コミュニズム|HAPAX+鼠研究会

★巻頭論考で言及されている不可視委員会の新著というのは、今年刊行された『Maintenant』(La Fabrique, 2017)のこと。論考の注においては「いまこそ」と訳されています。いずれ日本語訳も読めるようになるのではないかという予感がします。続く高祖さんのテクストではコミュニズムとコミュニストがこんにち何を意味するかが問われており、高祖さんはこう書かれています。「今日の「コミュニズム」の一つの大きな役割は、諸々の技術の錬磨とその共有によって、「別の存在論的地平を開拓すること」であろう。わたしたちは、今後、解放された制度を夢見ることなく、瓦解する世界の中で、いつまでも地球的闘争を生き続ける以外にないのだ」(23頁)。「世界から積極的に離脱し続けること、それが今日のコミュニストの合言葉である」(22~23頁)。『HAPAX』は常に(反)時代のアトモスフィアとともにありましたが、当号でもそうした同時代性を感じます。また、当号ではヴァージニア・ウルフの最初期の短篇作「The Mark of the Wall」(1917年)の新訳が掲載されているのも特徴的です。底本は1921年の短編集『月曜日から火曜日』。訳者の五井さんによる解題も鮮烈で興味深いです。

★作品社さんの新刊、ホブズボーム『いかに世界を変革するか』とハーヴェイ『資本主義の終焉』はともに発売済。前者はイギリスの歴史家ホブズボーム(Eric Hobsbawm, 1917-2012)の最晩年に出版された論文集『How to Change the World: Tales of Marx and Marxism』(Abacus, 2011)の全訳で、日本語版解説として水田洋さんによる「著者エリックについて」、伊藤誠さんによる「21世紀世界をどのように変えるか――本書の魅力」、中村勝己さんによる「ホブズボームとグラムシ、アルチュセール」、千葉伸明さんによる「編集後記」が付されています。巻末には人名、事項、書名、地名・国名の各種索引を完備。「マルクス、マルクス主義、さらに歴史的文脈と思想の発展やその影響との相互作用」(10頁)をめぐる半世紀以上に及ぶ著者の研究を一望できる希有な一書です。全16章の章題を列記しておくと、「現代のマルクス」「マルクス、エンゲルスとマルクス以前の社会主義」「マルクス、エンゲルスと政治」「エンゲルスの『イングランドにおける労働者階級の状態』について」「『共産党宣言』について」「『経済学批判要綱』の発見」「マルクスの資本主義に先行する諸形態」「マルクスとエンゲルスの諸著作の遍歴」(以上が第Ⅰ部「マルクスとエンゲルス」)、「マルクス博士とヴィクトリア時代の評論家たち」「マルクス主義の影響――1880年から1914年まで」「反ファシズムの時代に――1929年から1945年まで」「グラムシ」「グラムシの受容」「マルクス主義の影響力――1945年から1983年」「マルクス主義の後退期――1983年から2000年まで」「マルクスと労働者階級――長い世紀」(以上が第Ⅱ部「マルクス主義」)。

★ハーヴェイ『資本主義の終焉』は『Seventeen Contradictions and the End of Capitalism』(Profile Books, 2014)の全訳。ハーヴェイ(David Harvey,1935-)はイギリス出身の地理学者。訳書は多数ありますが、本書の共訳者の大屋定晴さんによる日本語版解説「資本主義に対する「最も危険な本」」によれば、ハーヴェイはこの『資本主義の終焉』を「私がこれまで執筆したもののなかで最も危険な本だ」と述べているとのことです。大屋さんはその発言の背景をこう説明しておられます。「本書の目的は、米国ミレニアル世代に見られる「反資本主義」的なムードを、より論理的に一貫したものにすることにある。それは資本の諸矛盾を分析することによって、「反資本主義運動」が生まれざるをえない理由を解明し、さらにこの運動がめざすべき方向を提示しようとする」。興味深いのは、ハーヴェイが「資本の領域のなかには抑えがたい諸矛盾が存在しており、それが希望の多くの根拠を与えるものである」(390頁)と本書の末尾で逆説的に述べていることです。矛盾と危機を見つめる中に変革への契機もある、ということでしょうか。彼はこうも書いています。「われわれが反資本主義的活動を通じて世界を革新的に変化させ、多様な人々が存在する別種の場所を実現するためには、いかなる種類の人間主義を必要とするのか?/私は、世俗的な革命的人間主義を明言することが喫緊の必要であると考えている」(380頁)。以下に目次を列記しておきます。

[はじめに]21世紀資本主義は、破綻するか、ヴァージョン・アップするか
序章 “資本”がもたらす矛盾について
第Ⅰ部 資本の基本的な矛盾
第1章 使用価値と交換価値
第2章 労働の価値と貨幣
第3章 私的所有と国家
第4章 私的領有と共同の富〔コモン・ウェルス〕
第5章 資本と労働
第6章 資本は過程なのか、物なのか
第7章 生産と資本増大の実現
第Ⅱ部 運動する資本の矛盾
第8章 技術、労働、人間の使い捨て
第9章 分業における矛盾
第10章 独占と競争
第11章 地理的不均等発展と資本の時空間
第12章 所得と富の格差
第13章 労働力と社会の再生産
第14章 自由と支配
第Ⅲ部 資本にとって危険な矛盾
第15章 無限の複利的成長
第16章 資本と自然
第17章 人間性の疎外と反抗
第18章 資本主義以後の社会――勝ち取られるべき未来の展望
[おわりに]政治的実践について

★ちなみに作品社さんではハーヴェイが今年上梓した新刊『Marx, Capital and the Madness of Economic Reason』(Profile Bokks, 2017)の翻訳出版の準備が進んでいるとのことです。

★シュトレーク『資本主義はどう終わるのか』は発売済。『How Will Capitalism End?: Essays on a Failing System』(Verso, 2016)の全訳です。シュトレーク(Wolfgang Streeck, 1946-)はドイツの社会学者。著書の既訳書には『時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか』(みすず書房、2016年)、共編著書の訳書には『現代の資本主義制度――グローバリズムと多様性』(NTT出版、2001年;論考「ドイツ資本主義」を収録;人名表記は「ウォルフガング・ストリーク」)があります。今回の新刊は11本の論文に書き下ろしの注記と60頁もの序文を付して一冊としたもので「どれも共通して、〔・・・〕とくにマクロ政治社会学と政治掲載学と関連のある社会科学と社会学理論にとって、2008年の金融危機が何を意味しているのかを理解しようとする継続的な試みから生まれている。〔・・・〕この論文集は、現代のグローバル資本主義体制の根底に潜んでいる資本主義および資本主義社会の長期的な危機を中心的主題としている。そして、このシステムがそう遠くない未来、それを継承するシステムも不明のまま、その内的矛盾が拡大してどのように終わりを迎えるのかについて、より具体的に考えるよう読者を促すことを目的としている」(5~6頁)とのことです。「対立と矛盾にみち、つねに不安定で流動的」(7頁)な資本主義の行方を冷徹に分析する本書について訳者は「前著『時間かせぎの資本主義』で主張された内容をさらに大きく展開した内容になって」おり、「戦後の民主主義政治体制の歴史とその背後にある思想や社会状況を検討することにより、戦後先進諸国における民主制資本主義の崩壊過程と、その将来を考察することに特徴がある」(350頁)と評しています。

★水声社さんの「叢書・人類学の転回」の新刊2点が今月刊行されています。オジェ『非‐場所』は発売済。『Non-lieux : Introduction à une anthropologie de la surmodernité』(Seuil, 1992)の全訳です。目次は書名のリンク先でご覧になれます。オジェ(Marc Augé, 1935-)はフランスの人類学者であり民族学者。既訳書には『国家なき全体主義』(勁草書房、1995年)や『同時代世界の人類学』(藤原書店、2002年)があります。訳者あとがきでは「非‐場所」について次のような説明がなされています。「三つの過剰(出来事の過剰、空間の過剰、準拠枠の個人化)によって変容した、私たちが生きるこの時は、「近代〔モダニティ〕」ではなく「スーパーモダニティ」という尺度ではかられる。そして人類学がスーパーモダニティに向き合うとき、出会う空間は、「人類学の場」ではなく「非‐場所」なのである。/「人類学の場」は社会の構造を、その複雑な構成を、意味を読みとらせてくれる場所である。住居や祭壇や広場のように、歴史をそなえ、アイデンティティを構築し、関係をうむ場所だ。その意味でスーパーモダニティに登場する空間は、「場所」ではない。空港に代表される交通の空間、大規模スーパーマーケットのような消費の空間、そしてテレビに顕著なコミュニケーションの空間は、孤独の場なのである」(169頁)。こうした「場」について考えることは「スーパーモダニティ」に翻弄されているこんにちの出版や小売を考える上でとても重要です。「「いま・ここ」の新たな理論を立ち上げる」(帯文より)という本書の試みに注目したいです。なお水声社さんではオジェの1986年の著書『メトロの民族学者』が近刊予定であるとのことです。

★同叢書ではもう1点刊行されています。ハン/ハート『経済人類学』はまもなく発売。『Economic Anthropology: History, Ethnography, Critique』(Polity Press, 2011)の全訳です。ハン(Chris Hann, 1953-)とハート(Keith Hart, 1943-)はともにイギリス出身の社会人類学者。著書の日本語訳は本書が初めて。序文では本書の試みは次のように紹介されています。「これまで経済人類学は、かの高名なマルクスやヴェーバー、デュルケームなどの近代社会理論の父祖たちと結びつけて説明されてきた。ときにその歴史は啓蒙主義時代のポリティカル・エコノミー研究者にまで遡ることもあった。だが私たちの主張は、経済人類学の中核的な問いがそれよりもはるかに古くからのものだということである。究極的には経済人類学は、人間の本性や幸福をめぐる問いに、つまりあらゆる社会の哲学者たちが原初から心を奪われてきた問いに取り組むのである。本書において私たちは、この人類全体による創造物としての「人間の経済」をあらゆる時間、空間を通して探求できるのが経済人類学だということを論証していく」(14頁)。帯文には「グローバルな新自由主義的経済に代わるオルタナティブな方法論とは?」と大書されています。版元さんのブログにはまだ本書は掲出されていませんが、遠からず目次を含めた書誌情報がアップされることと思います。

★『現代思想』12月号は発売済。人新世(アンソロポシーン)とは1万7000年前に始まった完新世に継ぐ新しい地質年代として、ドイツの大気化学の権威パウル・クルッツェンが提唱した概念。中村桂子さんによるエッセイ「「人新世」を見届ける人はいるのか」によれば、その後の国際的議論でその始まりは20世紀の後半、つまり1950年以降と考えられているとのことで、プラスチックやコンクリートなどの大量生産、エネルギー大量消費、地球温暖化、核開発による汚染など、長期間に渡り人間の営為が地層に影響を与えることが予測されるためだそうです。同特集号では、ブルーノ・ラトゥール「人新世の時代におけるエージェンシー」、ダナ・ハラウェイ「人新世、資本新世、植民新世、クトゥルー新世――類縁関係をつくる」、ティモシー・モートン「この美しいバイオスフィアは私のものではない」などの論考が読めます。なお次号となる2018年1月号の特集は「現代思想地図2018」と予告されています。

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# by urag | 2017-11-26 20:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 19日

注目新刊:レリス『ゲームの規則』全4巻刊行開始、ほか

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ゲームの規則Ⅰ 抹消』ミシェル・レリス著、岡谷公二訳、平凡社、2017年11月、本体3,400円、4-6判上製360頁、ISBN978-4-582-33323-7
ゲームの規則Ⅱ 軍装』ミシェル・レリス著、岡谷公二訳、平凡社、2017年11月、本体3,200円、4-6判上製292頁、ISBN978-4-582-33324-4
七十人訳ギリシア語聖書 モーセ五書』秦剛平訳、講談社学術文庫、2017年11月、本体3,150円、1200頁、ISBN978-4-06-292465-8
書簡詩』ホラーティウス著、高橋宏幸訳、講談社学術文庫、2017年11月、本体900円、248頁、ISBN978-4-06-292458-0
水滸伝(三)』井波律子訳、講談社学術文庫、2017年11月、本体1,780円、640頁、ISBN978-4-06-292453-5
中国名言集―― 一日一言』井波律子著、岩波現代文庫、2017年11月、本体1,280円、448頁、ISBN978-4-00-602295-2
世界の共同主観的存在構造』廣松渉著、岩波文庫、2017年11月、本体1,320円、560頁、ISBN978-4-00-381241-9

★レリス『ゲームの規則〔La Règle du jeu〕』全4巻の刊行開始です。岡谷公二訳『Ⅰ 抹消』(原書:Biffures, Gallimard, 1948)と『Ⅱ 軍装』(原書:Fourbis, Gallimard, 1955)が同時発売。前者の初訳は『ゲームの規則 ビフュール』として筑摩書房より1995年に刊行されたことがあります。新訳にあたっては原題の音写ではなく漢字二文字の訳語で統一するとの方針です。帯文に曰く「神話の偉大さに達した告白文学」と謳われ、個々の帯文は『Ⅰ 抹消』が「ビフュール。未来が暗い穴でしかなかった日々の幼少期の記憶の執拗な重ね書き〈日常生活の中の聖なるもの〉の探求」、『Ⅱ 軍装』は「フルビ。死を飼い馴らし、正しく振る舞い、おのれの枠を超え出る……〈生きる/書く〉心情の一件書類」。今回初訳となる『軍装』について岡谷さんは訳者あとがきで次のようにお書きになっておられます。「『軍装』は『抹消』とは異なり好評をもって迎えられた。ナドー、ビュトール、ポンタリス、ブランショらが有力な雑誌に次々と好意的な批評を発表、そして〔・・・〕刊行翌々年には『抹消』と合わせてクリティック賞を受け、レリスの文名は不動のものとなったのである」。シンプルで美しい装幀は細野綾子さんによるもの。第Ⅲ巻『縫糸』(千葉文夫訳、原書:Fibrilles, 1966)、第Ⅳ巻『囁音』(谷昌親訳、原書:Frêle bruit, Gallimard, 1976)が続刊予定です。

★講談社学術文庫の11月新刊より3点を選択。秦剛平訳『七十人訳ギリシア語聖書 モーセ五書』はいよいよ税別本体価格で3000円を超える時代に突入した、ということでしょうか。親本は河出書房新社より2002から2003年にかけて刊行された5点の単行本。奥付前の特記によれば、合本文庫化にあたり「その後の研究をもとに加筆・修正・再構成を行い、新に図版を挿入」したとのことです。分冊せずに大冊となるのをあえて避けずに全一巻としたことに強い印象を覚えます。訳者の秦さんは昨秋より、七十人訳聖書の預言者シリーズとして青土社から「イザヤ書」「エレミヤ書」「エゼキエル書」「十二小預言書」を上梓されています。

★ホラーティウス『書簡詩』は同文庫のための訳し下ろし。原著『Epistles』の既訳には、古いものでは田中秀央/村上至孝訳(生活社、1943年)、新しいものでは鈴木一郎訳(『ホラティウス全集』所収、玉川大学出版部、2001年)がありますがいずれも古書でしか買えません。原著第二巻第三歌は「詩論」としてさらに翻訳があり、文庫版では岡道男訳『アリストテレース 詩学/ホラーティウス 詩論』(岩波文庫、2001年)でも読むことができます。新訳より一節を引きます。「簡潔であろうと努力する。すると曖昧になる。流麗さを追究する。すると気骨と気勢が乏しくなる。荘重さを打ち出す。すると鼻持ちならない。安全無事ばかりを考えて嵐を恐れる人は地面に這いつくばる」(「詩論」より、146~147頁)。

★井波律子訳『水滸伝(三)』は全五巻のうちの第三巻。第43回から第60回までを収録。なお井波さんは今月、岩波現代文庫から『中国名言集―― 一日一言』が発売されたばかりです。親本は岩波書店から2008年に刊行。366篇の名言が選ばれ、出店や注釈が簡潔に記されています。「ジャンルをとわず、時代を超えて生き生きとなした生命力を保つ言葉を選ぶように心がけ、あまりに教訓的なものや説教臭の強いものは避けた。/しみじみと味読すると、発言者の深い叡智を感受して、なるほどと元気になったり、楽しくなったり、勇気がわいてきたりする」と巻頭の「はじめに」に記されています。なるほどその通りで、実に味わい深い句々に胸が熱くなります。「精衛微木を銜み、将に以て滄海を塡めんとす」(陶淵明)。

★廣松渉『世界の共同主観的存在構造』は凡例によれば、1972年に勁草書房より刊行された同書に「附録として足立和浩/白井健三郎/廣松渉による鼎談「サルトルの地平と共同主観性」(「情況」1973年1月号)を併録するもの」とのことです。同書の底本には岩波書店版『廣松渉全集』第一巻(1996年)が使用されており、「底本にある「学術文庫版への序」は省き、巻末の索引は初出の単行本に基づいて作成した」ともあります。なお講談社学術文庫版は1991年に刊行されていました。今回の再文庫化にあたり、熊野純彦さんが解説と解説者注を担当され、熊野さんの責任において「底本にふくまれるあきらかな誤記・誤植を訂正し、読みやすさを考慮して振り仮名の追加・整理をし、通行の表記法に基づいて記号を整理するなどの変更をおこなった個所がある」そうです。

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南方熊楠と説話学』杉山和也著、平凡社、2017年11月、本体1,000円、A5判並製108頁、ISBN978-4-582-36449-1
聖なる珠の物語――空海・聖地・如意宝珠』藤巻和宏著、2017年11月、本体1,000円、A5判並製120頁、ISBN978-4-582-36450-7
マルクスと商品語』井上康/崎山政毅著、社会評論社、2017年11月、本体6,500円、A5判上製580頁、ISBN978-4-7845-1846-3
哲学すること――松永澄夫への異議と答弁』松永澄夫監修、木田直人/渡辺誠編、中央公論新社、2017年11月、本体5,800円、A5判上製704頁、ISBN978-4-12-005028-2
ウールフ、黒い湖』ヘラ・S・ハーセ著、國森由美子訳、作品社、本体2,000円、四六判上製196頁、ISBN978-4-86182-668-9

★『南方熊楠と説話学』『聖なる珠の物語』はまもなく発売。ブックレット「書物をひらく」の第9弾と第10弾です。カバーソデ紹介文を引いておくと、『南方熊楠と説話学』は「民俗学や植物学をはじめ、南方熊楠が渉猟した学問領域は多岐にわたり、その足跡は広く深く展開している。説話学においても、南方熊楠の博学は、高木敏雄、柳田國男らをリードする役割をもった。けれども南方の説話学派、彼らや芳賀矢一など、その後の学界の主流とは別の方向をめざし、別の視野を拓いている。膨大な遺存資料のなかに、南方説話額の可能性をとらえる」。「南方熊楠の生涯」「南方熊楠の学問」「日本における説話学の勃興と南方熊楠」「南方熊楠の説話学と、その可能性」「南方熊楠旧蔵資料の価値――説話研究の側から」の五章立てです。『聖なる珠の物語』の紹介文は「ある場所が〈聖なる力〉によって〈聖なる空間〉に変容されるそのなりゆきを、たとえば寺社の縁起が語る。そして〈聖なるモノ〉が、その言葉に力を与え、その聖性を持続させる――。空海が中国から請来した「如意宝珠」。この聖なるモノの由来を語り、その由来譚を解釈しなおす言葉の群れが、室生寺の、高野山の聖性を増幅する。歴史のなかに、その言説システムを丹念に解きほぐす」。「空海と如意宝珠」「室生山の如意宝珠」「龍と如意宝珠」「高野山の如意宝珠」の四章立て。

★『マルクスと商品語』は発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭のはしがきによれば「本書の目的は、『資本論』冒頭商品論の解読であり、それを第二版以降に述べられる「商品語」という概念に焦点をあてたうえで遂行するものである」とのことです。「「商品語」という一般には聞きなれない用語について、人間語と対照させて、そのおおよその輪郭を明らかにしたのが、第一部〔第Ⅰ章、第Ⅱ章〕であり、本書の序論に当たる。/第二部〔第Ⅲ章~第Ⅶ章〕は本論である。『資本論』冒頭商品論をまったく新たな視点から捉え、従来の解読を刷新することを目指した。従来流布していたほとんどすべての読みを覆し、『資本論』冒頭商品論の精確な読解をなせた、と自負している。/第三部〔第Ⅷ章、第IX章〕は補論というべきものである。第三部草稿まで含めた『資本論』全体を踏まえて、今日の資本主義を批判するという課題は今後のものであり、そのための準備作業に相当する。〔・・・〕鍵となるのは架空資本の概念である。マルクスによるこの概念を復権させ、その新たな内容展開を目指していきたい」。本書はもともと2013年から2014年にかけて紀要「立命館文学」に連載された共著論文「商品語の〈場〉は人間語の世界とどのように異なっているか」を大幅に加筆修正したものとのことです。

★『哲学すること』は発売済。版元さんウェブサイトでは目次が未掲出のようですが、アマゾンには目次が掲載されています。帯文はこうです。「松永の薫陶を受けた13人が、渾身の力をふるって師に立ち向かう。厳密・緻密・稠密な言語使用を実践し、人間にとって本質的なことのみを論じ交わした火花散る師弟対決」。13人というのは次の方々です。朝倉友海、伊多波宗周、伊東俊彦、大西克智、木田直人、越門勝彦、佐藤香織、高橋若木、手塚博、中真生、原一樹、吉田善章、渡辺誠、の各氏です。松永さんは巻末の謝辞で次のように述べておられます。「私にとって、哲学は学問というより、生きることそのことと切り離せないものです。どうしてかと言いますと、人は単純に生きてはいず、ああだこうだと考え、そして悩んだり差し当たり得心したりして生きているわけで、すると、人はどのように生きてゆく存在なのか、その襞々までを十分に見通したいし、見通すことで生きることを心から納得したいという思いをもつからです。/そこでこの論文集の執筆者の皆さんが、私が哲学に対してもつこのようなイメージに対応する主題を選び、どの主題であれ、私と同じような姿勢で論じてくださったことは本当に嬉しいことでした」(679頁)。また、こうも書かれています。「私の哲学的思索について、「生きることの肯定の哲学」だとか「幸福の哲学」とかの評を聞くことがありますが、今回、答弁を書きながら、自分の哲学の営みの中心にあるものは、同時に「哀しみ」でもあるのかな、とあらためて感慨を懐いた次第です。「幸福の哲学」が「哀しみの哲学」でもあるということ、これは如何ともし難いことだと考えています」(680頁)。ちなみに松永さんは『めんどりクウちゃんの大そうどう』という絵本シリーズをご準備中とのことです。

★『ウールフ、黒い湖』は発売済。原書は1948年にオランダで刊行された『Oeroeg』です。ヘラ・S・ハーセ(Hella S. Haase, 1918-2011)はバタヴィア(現ジャカルタ)生まれのオランダの作家で、本国では非常に有名なのだそうですが、日本では本書が初訳。「訳者あとがき ヘラ・S・ハーセ その生涯と作品」(135~196頁)では著者について詳しく紹介しており、本書について「旧植民地で生まれ育った白人少年と現地少年の友情と別離を描き、読者に問いかけるように終わるこの作品は、オランダの東インド植民地文学とポスト・コロニアル文学とのちょうど境目に当たる時期に書かれ、オランダ文学史上においても、きわめて重要な位置づけとなっている」と説明されています。著者自身は「あとがき ウールフと創造の自由」で本作を「過去を探し求める旅の記録」と書いています。オランダの若者である主人公「ぼく」が1947年に現在のインドネシアで過ごした自身の少年時代を振り返り、同年齢の現地少年ウールフとの友情を顧みるというものです。訳者は本作に「誕生から20歳までのほとんどの日々を過ごした旧オランダ領東インド(ジャワ島)での作家自身の体験」が随所に反映されている、とも解説されています。

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# by urag | 2017-11-19 18:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 17日

ブックツリー「哲学読書室」に明石健五さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『柄谷行人書評集』(読書人、2017年11月)の担当編集者・明石健五さんによるコメント付き選書リスト「今を生きのびるための読書」が追加されました。リンク先にてご覧いただけます。


◎哲学読書室

星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ
明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「今を生きのびるための読書

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# by urag | 2017-11-17 09:33 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 16日

注目新刊:上村忠男『ヴィーコ論集成』みすず書房

★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、編訳書:パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
みすず書房さんより、今月、上村さんのヴィーコ論をまとめた大冊が刊行されました。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

ヴィーコ論集成
上村忠男著
みすず書房 2017年11月 本体10,000円 A5判上製520頁 ISBN978-4-622-08665-9
カバー表4紹介文より:学問に必要なのは、認識可能なものと不可能なものを区別する原理である。主著『新しい学』を筆頭に、徹底した学問批判を展開したイタリアの哲学者ジャンバッティスタ・ヴィーコ(1668-1744)。今まさに学ぶところの多いその透徹した思考と生涯を研究してきた第一人者による長年にわたる論考を、ここに一書にする。学者としての緻密さと思想家としての奥行きを兼ね備えた、著者のヴィーコ研究の集大成。

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# by urag | 2017-11-16 11:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 15日

今月末発売:笠井叡『金鱗の鰓を取り置く術』現代思潮新社

舞踏家でありオイリュトミストの笠井叡さんが今月末(11月27日)、現代思潮新社さんから大著『金鱗の鰓を取り置く術』をご刊行になります。「きんうろこのえらをとりおくじゅつ」と読むそうです。パンフレットには、目次詳細などの書誌情報のほか、笠井さんご自身による紹介文「「金鱗の鰓を取り置く術」のために」や、高橋巖さん、鈴木邦男さん、萩尾望都さんの推薦文が掲載されていますが、これらは書名のリンク先からご覧いただけますし、版元さんのウェブサイトの同書ニュース欄でPDFが配布されています。なお、来年1月から1年間、月1回ずつ、本書をめぐるワークショップが天使館で開催されるとのことです。詳しい日程や定員や参加費についてはリンク先でご確認いただけます。「完全に目覚めた社会意識、人間関係、国際意識を保持しつつ、「肺呼吸から鰓呼吸への変換」を、実践するためのWSです。社会活動・芸術活動・政治活動のための新しい出発」とのことです。

金鱗の鰓を取り置く術(きんうろこのえらをとりおくじゅつ)
笠井叡著
現代思潮新社 2017年11月 本体20,000円 A5判上製貼函入832頁 ISBN978-4-329-10007-8

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# by urag | 2017-11-15 12:03 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 12日

注目新刊:『文化・階級・卓越化』青弓社、ほか

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文化・階級・卓越化』トニー・ベネット/マイク・サヴィジ/エリザベス・シルヴァ/アラン・ワード/モデスト・ガヨ=カル/デイヴィッド・ライト著、磯直樹/香川めい/森田次朗/知念渉/相澤真一訳、青弓社、2017年10月、本体6,000円、A5判上製560頁、ISBN978-4-7872-3425-4
世界を揺るがした10日間』ジョン・リード著、伊藤真訳、光文社古典新訳文庫、2017年11月、本体1,540円、748頁、ISBN978-4-334-75365-8
社会分業論』エミール・デュルケーム著、田原音和訳、ちくま学芸文庫、2017年11月、本体1,800円、800頁、ISBN978-4-480-09831-3
鏡の背面――人間的認識の自然誌的考察』コンラート・ローレンツ著、谷口茂訳、ちくま学芸文庫、2017年11月、本体1,600円、512頁、ISBN978-4-480-09832-0
定本 葉隠〔全訳注〕中』山本常朝/田代陣基著、佐藤正英校訂、吉田真樹監訳、ちくま学芸文庫、2017年11月、本体1,500円、528頁、ISBN978-4-480-09822-1

★『文化・階級・卓越化』は「ソシオロジー選書」の第4弾。『Culture, Class, Distinction』(Routledge, 2009)の全訳です。フランスの社会学者ブルデューの主著『ディスタンクシオン』の「問題設定・理論・方法を批判的に継承し、質問紙調査とインタビューを組み合わせた社会調査によって、2000年代以降のイギリス社会の分析に応用した」(版元紹介文より)論集です。第1部「分析の位置づけ」、第2部「嗜好・実践・個人のマッピング」、第3部「文化界と文化資本の構成」、第4部「卓越化の社会的次元」の全4部13章を序論と結論で挟み、「方法論的補遺」として4篇の付録が付されています。巻末にはインタヴューを受けた人々の簡単な紹介(「登場人物」)と「参考文献」「訳者解説」、そして人名と事項の二種の「索引」が付されています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。文化一般のみならず出版界を考える上でも重要であり、特に第6章「人気と稀有と――読むことの界に関する探究」は必読かと思います。「われわれの質問紙調査からは、本を読むことは相対的に不人気な活動であることが明らかになった」というギクリとする一文から始まり、非常に興味深い具体的な分析が続きます。やや高額な本ですが、それだけの価値はあります。

★『世界を揺るがした10日間』は光文社古典新訳文庫の「ロシア革命100周年企画」第2弾(第1弾は先月刊行の『ロシア革命とは何か――トロツキー革命論集』森田成也訳)です。文庫で刊行された同書の訳本には、原光雄訳(上下巻、岩波文庫、1957年)、大崎平八郎訳(角川文庫、1972年)、松本正雄/村山淳彦訳(上下巻、新日本文庫、1977年)、小笠原豊樹/原暉之訳(ちくま文庫、1992年) などがあり、長く読み継がれてきたベストセラーでしたが、いずれも紙媒体では品切中。タイミングの良い新訳刊行となりました。たった100年前の話と読むのか、遠い昔の話と読むのか、読み手によって様々な感慨を呼び起こす本です。

★ちくま学芸文庫の今月新刊6点から3点のみ挙げると、『社会分業論』は『宗教生活の基本形態――オーストラリアにおけるトーテム体系』(山崎亮訳、2014年)に続く、ちくま学芸文庫でのデュルケームの訳書第2弾。親本は青木書店版「現代社会学大系」第2巻(1971年刊)で、底本はPUF版第7版(1960年刊)。文庫版解説は菊谷和宏さんによるもの。大著ですが分冊ではなく全1巻のままなのは幸いでした。 『鏡の背面』は新思索社版(1996年刊)の文庫化。巻末に「「ちくま学芸文庫」版再刊に寄せて」と題された訳者あとがきがあります。『定本 葉隠〔全訳注〕中』は「葉隠聞書」五~七を収録し、巻末解説「『葉隠』の中心思想とその問題点について――聞書六の74を手掛かりに」は岡田大助さんが執筆されています。来月発売の下巻で全三巻完結です。

★なお同文庫の今月新刊にはチラシ「ちくま学芸文庫創刊25周年フェア」が挟み込まれており、ちくま学芸文庫で読む「思想の星座」20世紀西洋編/日本編の二つのダイアグラムが掲載されています。これは同フェアのウェブサイトにも掲出されているもの。同フェアは今月から全国主要書店で順次開催し、以下の4点6冊が復刊されるとのことです。松田壽男『古代の朱』、稲田浩二編『日本の昔話』上下巻、ベンヤミン『ドイツ悲劇の根源』上下巻、アドルノ『プリズメン』。特にベンヤミンはこの機会を逃さない方が良いと思います。なお、先月末まで紀伊國屋書店チェーンで展開していた、紀伊國屋書店創業90年記念特別企画「知の絆を未来につなげ――河出文庫×ちくま文庫・ちくま学芸文庫合同フェア」でも復刊が行なわれており、河出文庫で、ボルヘスほか『ラテンアメリカ怪談集』鼓直編、寺山修司『青少年のための自殺学入門』の2点、ちくま文庫で荒俣宏『パラノイア創造史』、中島梓『美少年学入門』の2点、合計4点が復刊されています。オリジナルグッズプレゼントの応募期間は終了しましたが、復刊書はまだ入手可能なので、こちらも見逃すことなく購入しておきたいところです。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

柄谷行人書評集』柄谷行人著、読書人、2017年11月、本体3,200円、四六判上製600頁、ISBN978-4-924671-30-0
映画時評集成 2004ー2016』伊藤洋司著、読書人、2017年11月、本体2,700円、四六判上製528頁、ISBN978-4-924671-31-7
現代思想2017年12月臨時増刊号 総特集=分析哲学』青土社、2017年11月、本体1,800円、A5判並製294頁、ISBN978-4-7917-1355-4
ミルクとはちみつ』ルピ・クーア著、野中モモ訳、アダチプレス、2017年11月、本体1,400円、四六変型判並製208頁、ISBN978-4-908251-07-8

★書評紙「週刊読書人」で知られる株式会社読書人さんはこれまで長らく、書店新風会の年度版『棚づくりに役立つ ロングセラー目録』を発売してこられましたが、このたび自社本出版にも進出されることとなりました。その第一弾が『柄谷行人書評集』と、伊藤洋司さんの『映画時評集成 2004―2016』です。前者は「朝日新聞」に掲載された107本の書評(2005~2017年)を中心に、68年から93年に執筆された書評、作家論、文芸時評、さらに1971年から2002年に発表された文庫解説、全集解説など、単行本未収録作51本も併載され、本書のために書き下ろされた「あとがき」が付されています。書評委員となることによって「『世界史の構造』その他の著作を書くのに必要な最新の文献に継続的に目を通すことができた」と述懐しておられます。

★『映画時評集成 2004―2016』は「週刊読書人」連載「映画時評」を中心にまとめられた一書で、映画作家5氏(青山真治、黒沢清、パスカル・フェラン、ギヨーム・ブラック、ペドロ・コスタ)との対談7本、さらに映画本の回顧、青山真治さんと伊藤さんがそれぞれが選んだ「映画ベスト300」などが収録されています。蓮實重彥さんの推薦文が帯に記されています。曰く「その感覚と知性と筆力の幸運な融合を真に四っとすべき批評家が、ここに登場する」と。刊行を記念して、以下のトークイベントが今月末に予定されています。

出演:黒沢清(映画監督)×伊藤洋司(中央大学教授・フランス文学専攻)
日時:2017年11月28日(火)19時~
場所:東京堂ホール(神保町・東京堂書店本店6階)
料金:500円(要予約:東京堂書店 03-3291-5181)

★『現代思想2017年12月臨時増刊号 総特集=分析哲学』は、分析哲学ガイド、分析哲学の実践、分析哲学のハードコア、分析哲学との対話、分析哲学のハイブリディゼーション、の5部構成で、第一線に経つ20名の寄稿を読むことができる必読文献です。各論文の参考文献は、哲学思想書のご担当者ならチェックしておいて損はありません。ちなみに青土社さんは2017年10月27日(金)12:00から2017年12月27日(水)11:59まで期間限定で開催されている、楽天ブックスの「謝恩価格本フェア」(全品45%OFF)に参加されておられます。見逃せません。

★クーア『ミルクとはちみつ』はアダチプレスさんの約1年ぶりの新刊。原題は『milk and honey』で2014年刊。全米100万部のベストセラー詩集で、すでに世界30か国で翻訳されているそうです。ルピ・クーア(Rupi Kaur, 1992-)さんはインド生まれで、幼少期にカナダに移住。『ミルクとはちみつ』は2014年、彼女が21歳の時に自費出版した第一詩集で、翌2015年にはカナダの出版社Andrews McMeel Publishingから再刊されました。「傷つくこと」「愛すること」「壊れること」「癒やすこと」の全4章で、181篇の詩と92点の自筆イラストを収めています。版元さんによれば彼女は160万ものフォロワーがいる「インスタ詩人」の代表的存在なのだそうです。本書の一節「半分は刃で半分はシルク」(30頁)という言葉は、男性にとっての本書を表わす上で最適な表現のように感じます。「あなたは/絶対に/あなたの正直さを/伝わりやすさと引き換えにしてはだめ」(202頁)と彼女は書いています。先月には『太陽と花々』という第二詩集が英米語圏で発売されています。

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# by urag | 2017-11-12 20:31 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 09日

中沢研×星野太トークイベント@青山BC本店

★星野太さん(著書:『崇高の修辞学』)
2017年12月8日 (金) に、表参道の青山ブックセンター本店にて行われる、『Ken NAKAZAWA』(赤々舎) 刊行記念のトークイベントにご出演されます。


日程:2017年12月8日 (金) 19:15~20:45 (開場18:45~)
料金:1,350円(税込)
定員:50名様
会場:青山ブックセンター本店内 小教室
お問合せ先:青山ブックセンター本店 電話03-5485-5511(受付時間10:00~22:00)

内容:初の作品集『Ken NAKAZAWA』が赤々舎から出版された、美術家の中沢研さん。針金やテグスなど視覚的ヴォリュームが希薄な素材を用い、展示空間に呼応したインスタレーションを制作する作家として、国内外で高い評価を得ています。今回は『Ken NAKAZAWA』刊行を記念して、本書にテキストを寄稿した哲学者・星野太さんとのトークイベントを開催します。星野さんは今年2月に初の単著『崇高の修辞学』を刊行。美学・哲学・芸術学にわたる崇高論を展開し、今注目される気鋭の哲学者として活躍しています。お二人には一冊の作品集を通し、中沢作品を存分に語り合っていただきます。対話から見えてくる中沢研の世界にどうぞご期待ください。

中沢研(なかざわ・けん)1970年、東京都生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了。主な展覧会に「中沢研展」(アンドーギャラリー、東京/2008〜2017)、「MOTアニュアル1999 ひそやかなラディカリズム」(東京都現代美術館)、「横浜トリエンナーレ2001」(パシフィコ横浜)、「on paper」(ギャラリー・アイゲン+アート ラボ、ドイツ/2013)などがある。

星野太(ほしの・ふとし)1983年生まれ。美学、表象文化論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、金沢美術工芸大学講師。著書に『崇高の修辞学』(月曜社、2017年)、共著に『コンテンポラリー・アート・セオリー』(イオスアートブックス、2013年)、訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で』(共訳、人文書院、2016年)などがある。

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# by urag | 2017-11-09 15:50 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)