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2017年 01月 29日

注目新刊:『現代思想の転換2017』『コミュニズムの争異』『政治の理論』、ほか

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現代思想の転換2017――知のエッジをめぐる五つの対話』篠原雅武編、人文書院、2017年1月、本体1,800円、4-6判並製208頁、ISBN978-4-409-04109-3
コミュニズムの争異――ネグリとバディウ』アルベルト・トスカーノ著、長原豊訳、航思社、2017年1月、本体3,200円、46判上製308頁、ISBN978-4-906738-21-2
フレイマー・フレイムド』トリン・T・ミンハ著、小林富久子+矢口裕子+村尾静二訳、水声社、2016年12月、水声社、本体4,000円、四六判上製407頁、ISBN978-4-8010-0206-7
十九世紀フランス哲学』フェリックス・ラヴェッソン著、杉山直樹+村松正隆訳、知泉書館、2017年1月、本体6,500円、菊判上製440頁、ISBN978-4-86285-247-2

★『現代思想の転換2017』は人文書院のウェブサイト上で連載された4本の対談「いま、人文学の本を書くとは」に新たな1本を加えて1冊としたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。編者の篠原さんは中村隆之さん(中村さんは「不透明なものを訳す」という追記も寄稿しておられます)、小泉義之さん、藤原辰史さん、千葉雅也さんと対談し、さらにティモシー・モートンさんにもインタヴューしています。モートンさんへのインタヴューは篠原さんが先月上梓した『複数性のエコロジー』(以文社、2016年12月)にも別のものが付録として掲載されており、すでに目にした方もいらっしゃるかと思います。『現代思想の転換2017』に収められた諸篇は篠原さんが「歴史学、哲学、文学という、人文学の基礎にかかわる人たちに、研もので、究をおこなううえでのモチベーションを、新年を、率直に聞きたいと考え」て行ったものだ、と巻頭の「はじめに」には書かれています。また、巻末の「インタヴューを終えて」ではこう書かれています。「私は、このインタヴューをする前、現在は、先行き不透明で暗い時代だと考えていた。「唯ぼんやりした不安」に強く苛まれていた。終えてみた今の気分を率直にいうと、不安はわずかに薄れてきて、新しいことが始まっている、もっと楽に構えていいと思えるようになってきた。〔・・・〕いま始まりつつあるのは、喪失と崩壊を本当に埋め合わせようとする機運ではないか。〔・・・〕私はこのインタヴューをつうじて、新しい思想、新しい人文学が、すでに始まっていることを感じ取ったということだけはいっておきたい」。

★『コミュニズムの争異』はまもなく発売。日本オリジナル編集の論文集で、帯文によれば、自らの師であるネグリとバディウの理論をめぐる批判的入門書とのことです。今回が初訳となるトスカーノ(Alberto Toscano, 1977-)はロンドン大学コールドスミス校で社会学を講じており、バディウやネグリ、アリエズらの著書の英訳のほか、『生産の劇場』『ファナティシズム』などの自著があり、マルクス主義の新たな再生を模索する「歴史的唯物論」誌の編集委員を務めています。『コミュニズムの争異』にはネグリ論が3編、バディウ論が4編おさめられています。目次明細は近く版元サイトで公開されるものと思われます。書き下ろしの序文「係争のもとにあるさまざまなコミュニズム」でトスカーノが綴った次の言葉が印象的です。「僕らの手近にはやや妥協的な別種のコミュニズム哲学があったことも確かだ。古典的なマルクス主義的展望の数知れない反復は言うまでもないが、アガンベン、ナンシー、デリダの哲学がそうである。けれども、当時、コミュニズムの釈明なき肯定を哲学の必要性の等しく「純真な」強調に、より精確には、(単に)歴史的に積み上がった思想の身体-遺体としての哲学ではなく一箇の能動的実践としての哲学の必要性の強調に、結びつけていた思想家は、ネグリとバディウだけだったのである」(8~9頁)。

★『フレイマー・フレイムド』は叢書「人類学の転回」の第6弾。『Framer Framed』(Routledge, 1992)の全訳です。ヴェトナム出身でアメリカで活躍する思想家・映像作家であるトリン・ミンハ(Trinh T. Minh-ha, 1952-)の4つ目の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。映像作品三作(「ルアッサンブラージュ」1982年、「ありのままの場所――生きることは円い」1985年、「姓はヴェト、名はナム」1989年)の台本や、インタヴュー9本を収録しています。既訳書と異なり、映像作家としてのトリンに焦点を当てた本で、待望久しかった刊行です。原書とは判型こそ違いますが、多数掲載されていた図版は訳書でもすべて収められているようです。共訳者の小林富久子さんはこれまでもトリンの著書の翻訳に携わってこられており、『月が赤く満ちる時』の上梓から数えて20年以上貢献されています。本書の翻訳を思い立ったのは原著刊行より間もない頃と言いますから、四半世紀以上の献身と言うべきでしょう。

★『十九世紀フランス哲学』は発売済。『La Philosophie en France au XIXe siècle』(Hachette, 1867)の全訳です。ラヴェッソン(Félix Ravaisson, 1813-1900)の単独の訳書は実に『習慣論』野田又夫訳、岩波文庫、1938年;原著『De l'habitude』1838年)以来のもので、約80年ぶりの刊行に驚きを禁じえません。ラヴェッソンがベルクソンに影響を与えていることは良く知られているはずですが、19世紀ヨーロッパの思想家で日本人が思い浮かべるのはヘーゲル、マルクス、ディルタイ、ニーチェなどドイツの巨星たちであり、フランスの思想家たちについてはあまり多くを知らなかったと思われます。本書はその欠落を埋めてくれるものであり、人物小事典ともなっている巻末の人名索引を含め、特筆すべき労作と呼ぶべき成果です。内容紹介や目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

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★このほか以下の新刊との出会いがありました。特に稲葉振一郎さんの『政治の理論』は先述の『現代思想の転換2017』や『コミュニズムの争異』との対比において非常に示唆的です。稲葉さんの前作『宇宙倫理学入門』や篠原さんの『複数性のエコロジー』などの既刊書と合わせて、人文知を問い直し活気づける必読書となっています。

日本批評大全』渡部直己著、河出書房新社、2017年1月、本体7,000円、46判上製644頁、ISBN978-4-309-02534-6
青年の主張――まなざしのメディア史』佐藤卓己著、河出ブックス、2017年1月、本体1,800円、B6判並製440頁、ISBN:978-4-309-62500-3
政治の理論――リベラルな共和主義のために』稲葉振一郎著、中公叢書、2017年1月、本体1,700円、四六判並製320頁、ISBN978-4-12-004935-4
解離の舞台――症状構造と治療』柴山雅俊著、金剛出版、2017年1月、本体4,200円、A5判上製320頁、ISBN978-4-7724-1531-6
短歌で読む哲学史』山口拓夢著、田畑書店、2017年1月、本体1,300円、A5判並製136頁、ISBN978-4-8038-0340-2

★河出書房新社さんの新刊2点は発売済。渡部直己『日本批評大全』は、上田秋成『雨月物語』序や本居宣長『源氏物語玉の小櫛』から、蓮實重彦『夏目漱石論』、柄谷行人『日本近代文学の起源』まで、近現代日本の約百年間の批評70作を渡部さんによる解題を付して収録ないし抄録したアンソロジーです。全8頁の投込小冊子には、本書のサポートを担った大澤聡さんと渡辺さんの対談「近代批評の記念碑のために」が収められています。「「批評」はいま明らかに死にかけている。すでに心肺停止に陥っているといって過言ではない」(638頁)と渡辺さんは後記に本書編纂の動機を明かしておられます。

★2009年10月に創刊された河出ブックスが8年目にして100点目に到達したとのことです。佐藤卓己『青年の主張』はその記念すべき100番で、NHKが毎年の「成人の日」に放送してきた番組「NHK青年の主張全国コンクール」(ラジオ中継は1956年より;テレビ放送は1960~1989年;1990~2004年は「NHK青春メッセージ」と改題)をめぐる初めての総括的研究です。章立ては以下の通り。序章「《青年の主張》の集合的記憶」、第一章「ラジオから響く「小さな幸せ」――1950年代」、第二章「ブラウン管に映る弁論大会――1960年代」、第三章「「らしさ」の揺らぎと再構築――1970年代」、第四章「笑いの時代の「正しさ」――1980年代」、第五章「《青年の主張》のレガシー――1990年以降」。

★稲葉振一郎『政治の理論』は昨年末に刊行された『宇宙倫理学入門』に続く稲葉さんの新著。「すべてが「資本」として流動化していく世界の中で、確固とした(アレント的な意味での)公共世界と私有財産を、資本主義といかに折り合いをつけつつ構築し維持していくか」(298頁)を基本課題とする「リベラルな共和主義」を論じたもの。もともとは入門書として新書で刊行するはずが膨らんだものだそうで、以下の十章から成ります。第一章「政治権力はどのように経験されるか」、第二章「アレントの両義性」、第三章「フーコーにとっての政治・権力・統治」、第四章「自由とは何を意味するのか」、第五章「市場と参加者のアイデンティティ」、第六章「信用取引に潜在する破壊性」、第七章「「市民」の普遍化」、第八章「リベラルな共和主義と宗教」、第九章「リベラルな共和主義の可能性」、第十章「政治の場」。巻末のあとがきには〈ドゥルーズ=ガタリ左派〉への批判が素描されており、興味深いです。

★柴山雅俊『解離の舞台』は帯文に曰く「解離性障害を理解・支援するための比類なき決定書」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「解離性障害では、解離性の意識変容(空間的変容)が基盤にあって、そこからさまざまな解離症状が発展していく。誤解を恐れずに表現すれば、解離とは現実と夢(空想)の接近の諸相である」(22頁)。「夢と現実が織りなす意識変容の夢幻空間が「解離の舞台」である。それは解離の病理であるとともに、解離から回復するための重要な契機となるように思われる」(23頁)。付録として「解離の主観的体験チェックリスト」が巻末に掲載されています。本来の用途ではありませんが、自己診断の手掛かりになるかもしれません。

★山口拓夢『短歌で読む哲学史』は、昨秋に休眠状態から脱し新たな出発を開始した田畑書店さんが放つ「田畑ブックレット」の創刊第一弾です。著者の山口拓夢(やまぐち・たくむ:1966-)さんはかの山口昌男さんのご子息で、本書が初の単独著となります。ギリシア哲学に始まり、イエス・キリストと教父哲学、中世神学、ルネッサンスの哲学、近世哲学、近現代哲学、構造主義以降までの西洋哲学史を概括する入門書となっており、特徴をなすのは哲学者の思想的核心を短歌で表現している点です。たとえばハイデガーはこう詠まれています。「ものごとを立ち現せる「在る」というはたらきに目をじっと凝らそう」。なるほど覚えやすいかもしれませんね。目次や内容詳細については書名のリンク先をご覧ください。

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by urag | 2017-01-29 23:20 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 27日

佐野方美写真展「SLASH」

佐野方美写真展「SLASH」

期日:2017年1月27日(金) ~ 2月5日(日)12:00~19:00 会期中無休
料金:入場無料
場所:AL(アル;東京都渋谷区恵比寿南3-7-17;電話03-5722-9799;代官山駅から徒歩5分;JR恵比寿駅から徒歩8分)

内容:佐野方美(さの・まさみ)の撮り下ろし写真集第一作『SLASH』 (スラッシュ) が月曜社より発売されることを記念して、同タイトルの写真展を開催いたします。写真集176点の中から50点程をセレクトし、デジタルプリントにて展示。作品の販売に加え、G.V.G.V.FLATと河村康輔氏との三者コラボレーションにより実現したTシャツを販売しています。

※同時開催として、2017年1月26日(木)~2月5日(日)に、NADiff Window Gallery(東京都渋谷区恵比寿1-18-4 1F)にてコラージュ作品展示しております。
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by urag | 2017-01-27 14:00 | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 24日

アガンベン『哲学とはなにか』ほか、書評情報

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
昨年イタリアで刊行されたばかりのアガンベンさんの最新刊『哲学とは何か』の訳書が早くも上村忠男さんによって実現されました。書誌情報を以下に掲出しますが、目次を含めた詳細は書名のリンク先をご覧ください。なお、上村さんは来月、グラムシ『革命論集』を講談社学術文庫より上梓されます。2月10日発売予定、本体1,680円です。弊社の12月新刊、カッチャーリ『抑止する力』を合わせると、3か月連続でイタリア思想の訳書を世に送り出したことになります。

哲学とはなにか
ジョルジョ・アガンベン著 上村忠男訳
みすず書房 2017年1月 本体4,000円 四六判上製224頁 ISBN978-4-622-08600-0

帯文より:音声を奪われて文字と化した知の弱さ、無調律の政治風景。哲学は今日、音楽の改革としてのみ生じうる。言葉の始原=詩歌女神〔ムーサ〕たちの場所へと、思考を開く。

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なお『抑止する力』と『哲学とはなにか』をめぐっては、文化人類学者の真島一郎さん(東京外国語大学大学院国際協力講座教授)がブログ「真島一郎研究室」1月21日付エントリー「カッチャーリ 『抑止する力』 / アガンベン 『哲学とはなにか』 」で論及してくださっています。

「現実の歴史のうちでカテコーンの抑止的な力が危機を迎えるとき、 当のカテコーンによって維持されていたプロメーテウス的秩序が、エピメーテウス(プロメーテウスの弟)の時の到来により復讐されることになるというのが、著者カッチャーリの予測です。とりわけ、世界の現在と未来を展望する本書末尾の一文は、読み手を戦慄させることになるかもしれません。「プロメーテウスは引退してしまった。あるいはふたたび岸壁に縛りつけられてしまった。そしてエピメーテウスがわたしたちの地球を徘徊してはパンドラの壺の蓋をつぎつぎに開けて回っている」(159頁)。エピメーテウスが扉をひらいてしまう永続的な危機の時とは、かつて『政治神学』のシュミットが、「例外状況」についてふれたのち鮮やかに描いてみせた、ドイツロマン派の「永遠の対話」と、そしてあの「純粋決定/決意」の対立と、どこまで交叉した問題系を形成しうるのか、大いに興味を惹かれるところです」。

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いっぽう最近、弊社11月既刊書、森山大道×鈴木一誌『絶対平面都市』に書評が2本寄せられています。ひとつは「キネマ旬報」2017年2月上旬号「映画・書評」欄に掲載された上野昂志さんによる書評「急かされ、考えさせられる」です。

「『遠野物語』に書かれた森山の言葉を引いた鈴木が、「現実世界のあちら側に、写され、コピーされ、印刷されたものたちの別世界がかたちづくられている」というのは「単なる比喩ではないんですね」と問い、森山が「比喩ではすまない感じ」といい「おびただしい印刷物の世界。コピーされたものの反乱〔ママ〕のなかに人々はいますから」と応えるというような刺激的な応酬が随所にある」(本書294~295頁参照)。

もうひとつは「朝日新聞」2017年1月22日付読書欄の、大竹昭子さんによる書評です。

「森山の発言はつねにブーメランのように同じ場所に戻ってくる。「なにも写さなかったんじゃないか」という自問と「こうしちゃいられない」という焦り。〔・・・〕無意識と自意識のはざまを行き来する言葉の彼方から、写真の不思議さが立ち上がってくる。世界を理解するのではない。世界が謎の集積であることを可視化するのが写真なのだと」。

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by urag | 2017-01-24 17:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 22日

注目新刊:栗原康さんの一遍上人伝、ほか

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死してなお踊れ――一遍上人伝
栗原康著
河出書房新社 2017年1月 本体1,600円 46版上製256頁 ISBN978-4-309-24791-5

帯文より:家も土地も財産も、奥さんも子どもも、ぜんぶ捨てた一遍はなぜ踊り狂ったのか――いま最高度に注目される思想家による絶後の評伝。
推薦文(瀬戸内寂聴氏):踊り狂うほど、民衆を熱狂させた、一遍上人の希有な魅力を、瑞々しい栗原さんの新鮮な文体で描いた、最高に魅力的な力作!
推薦文(朝井リョウ氏):栗原康の言葉を通せば、教科書の中のあの人もこの人もまるで旧知の悪友のよう。一遍と踊りたい、朝まで、床が抜けるまで!

目次:
はじめに
第一章 捨てろ、捨てろ、捨てろ
第二章 いけ、いけ、往け、往け
第三章 壊してさわいで、燃やしてあばれろ
第四章 国土じゃねえよ、浄土だよ
第五章 チクショウ

参考文献
おわりに

★まもなく発売。売り出し中の若手の中でもっとも破天荒で転覆的で痛快な評伝を世に送り出せるアナーキスト、栗原康さんによる最新作。大杉栄伝(夜光社、2013年)、伊藤野枝伝(岩波書店、2016年)に続く第三弾で、踊り念仏で知られる時宗の開祖、一遍を扱います。瀬戸内さん、朝井さんを魅了したその文体は読む者の魂を鼓舞する生気に満ちたもので、このテンションを維持するのはなかなかのエネルギーを必要とするのではないかと思います。栗原さんのエネルギーの源泉のひとつかもしれないものが本書の冒頭にずばり書き記されていますが、こんな書き出しが近年の人文書にあっただろうかという赤裸々な告白になっています。引用するのも無粋なので、ぜひ現物を手に取ってみていただければ幸いです。

★「富も権力もクソくらえ。アミダにまかせろ、絶対他力。浄土にいくということは、権力とたたかうということとおなじことだ」(33頁)。「トンズラだ、トンズラしかない。いちど人間社会をとびだして、アミダの光をあびにゆこう。一遍は、それをやるのが念仏なんだといっている」(57頁)。「だいじなことなので、くりかえしておこう。念仏に作法なんてありゃしない。うれしければうれしいし、たのしければたのしい。念仏は爆発だ。はしゃいじまいな」(110頁)。一遍につられて踊り念仏の輪が広がる様を描いた第三章の「踊り念仏の精神――壊してさわいで、燃やしてあばれろ」の節は、あたかも野外のレイヴでのトランス状態にも似た沸騰の中で、一遍の時代と現代とが見事にひとつになる瞬間を捉えています。「まるで獣だ、野蛮人だ。ここまでくると身分の上下も、キレイもキタナイも、男も女も関係ない。およそ、これが人間だとおもいこんできた身体の感覚が、かんぜんになるなるまで、自分を燃やして、燃やして、燃やしつくす。いま死ぬぞ、いま死ぬぞ、いま死ぬぞ。体が念仏にかわっていく」(114頁)。

★「生きて、生きて、生きて。生きて、生きて、往きまくれ。おまえのいのちは、生きるためにながれている。なんでもできる、なんにでもなれる、なにをやっても死ぬ気がしない。あばよ、人間、なんまいだ。気分はエクスタシー!!」(114~115頁)。「さけべ、うたえ、おどれ、あそべ。おのれの神〔たましい〕をふるわせと。だまされねえぞ、鎌倉幕府。したがわねえぞ、戦争動員。念仏をうたい、浄土をたのしめ。しあわせの歌をうたうということは、あらゆる支配にツバをはきかけつということだ」(158頁)。「一遍にとって、念仏をとなえて死ぬというのは、いまある自分を殺してしまう、からっぽにしてしまうということであった。なんどでも、なんどでも、ゼロから自分の人生をやりなおす、やりなおしていい、やりなおせる。そういう境地を成仏するといっていた」(161頁)。今まで様々な仏僧伝があったとはいえ、栗原さんのそれは最初から最後までそれ自体が「歌」のようで、今までにない、天にも昇るようなヴァイブレーションを発散しています。

★本書『死してなお踊れ』と同日発売となる河出書房新社さんの新刊に、荒川佳洋『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』があります。こちらも評伝です。ジュニア小説と官能小説をともに数多く残した流行作家、富島健夫(とみしま たけお:1931-1998)の生涯を描いたもの。富島の代表作は『おさな妻』(1970年)で、幾度となく映画化やTVドラマ化されています。

★このほか、最近の新刊では『子午線――原理・形態・批評 Vol.5』(書肆子午線、2017年1月、本体2,000円、B5変型判並製264頁、ISBN978-4-908568-10-7)に注目しました。八幡書店社主の武田崇元さんの長編インタヴュー「願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」が掲載されています。子午線ではこれまで既刊号で、松本潤一郎さん(第1号)、大杉重男さん、安里ミゲルさん(ともに第2号)、金井美恵子さん、花咲政之輔さん(ともに第3号)、稲川方人さん(第4号)といった方々のインタヴューを掲載されてきましたが、今回の相手はオカルト界の重鎮。レフトとオカルトのあわいの変遷をたどることのできる貴重な内容で、必読です。
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by urag | 2017-01-22 23:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 17日

月曜社2017年2月新刊:人文書1点、写真集2点

弊社2017年2月中旬刊行予定の新刊3点をご紹介します。

【人文・哲学思想】

崇高の修辞学 アマゾン予約
星野太=著
月曜社 2017年2月 本体3,600円 A5判[タテ216mm×ヨコ147mm×ツカ21mm]上製288頁 ISBN978-4-86503-041-9

われわれが用いる言葉のうち、およそ修辞的でない言葉など存在しない。美学的崇高の背後にある修辞学的崇高の系譜を、ロンギノス『崇高論』からボワローらによる変奏を経て、ドゥギー、ラクー=ラバルト、ド・マンらによるこんにちの議論までを渉猟しつつ炙り出す。古代から現代へと通底する、言語一般に潜む根源的なパラドクスに迫る力作。シリーズ「古典転生」第13回配本、本巻第12巻。

目次:序論|第Ⅰ部 『崇高論』と古代【第一章 真理を媒介する技術――「ピュシス」と「テクネー」|第二章 情念に媒介されるイメージ――「パンタシアー」と「パトス」|第三章 瞬間と永遠を媒介するもの――「カイロス」と「アイオーン」】|第Ⅱ部 変奏される『崇高論』――近代におけるロンギノス【第四章 崇高論の「発明」――ボワロー『崇高論』翻訳と新旧論争|第五章 言葉と情念――バーク『崇高と美の観念の起源』と言語の使命|第六章 「美学的崇高」の裏箔――カント『判断力批判』における修辞学】|第Ⅲ部 崇高なるパラドクス――二〇世紀における「崇高」の脱構築【第七章 放物線状の超越――ミシェル・ドゥギーと「崇高」の詩学|第八章 光のフィギュール――フィリップ・ラクー=ラバルトと誇張の哲学|第九章 読むことの破綻――ポール・ド・マンにおける「崇高」と「アイロニー」】|結論|あとがき|参考文献|索引

星野 太(ほしの・ふとし):1983年生まれ。専攻は美学、表象文化論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、金沢美術工芸大学講師。共編著にThe Sublime and the Uncanny(UTCP、2016年)、共著に『コンテンポラリー・アート・セオリー』(イオスアートブックス、2013年)、共訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で』(千葉雅也・大橋完太郎との共訳、人文書院、2016年)などがある。『崇高の修辞学』は著者の単独著デビュー作である。

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【芸術・写真】

SLASH【スラッシュ】 アマゾン予約
佐野方美写真集
月曜社 2017年2月 本体4,000円 A4変形(タテ280mm×ヨコ210mm×ツカ155mm)、ハードカバー上製120頁(作品点数176点、オール4C印刷) ISBN:978-4-86503-039-6

コマーシャルフォト界で活躍を続ける佐野方美、初の撮り下ろし写真集。
情景やモノ、コトの断片、街角のポスター、アスファルトや路上の車など、彼女が無意識下で惹きつけられた裸形のものが淡々と映し撮られる。巨大なパズルを組み立てるように、あらゆる境界線を取り払い、目に映るものすべてをパーツとして納めた一冊。いつでも同じテンションで撮り続けること。ただシャッターを押し続けること。純粋な行為が果てしなく重なり合い、反復そのものの間隙が露出する。

佐野方美(さの・まさみ):神奈川県生まれ。2000年、東京ビジュアルアーツ専門学校写真学科卒業。2000年「写真新世紀」優秀賞。ファッション誌やブランド・カタログ、CDジャケットなどの広告撮影を中心に活動。写真集に、玉城ティナフォトブック『Tina』 (講談社、2015年)、水原希子フォトブック『KIKO』(講談社、2010年)、加藤ミリヤ写真集『MILIYAH 300 STYLES』(講談社、2010年)など。


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【芸術・写真】

Hashima【ハシマ】 アマゾン予約 復刊ドットコム予約
松江泰治写真集
月曜社 2017年2月 本体3,600円 A5変形(タテ146mm×ヨコ225mm×ツカ12mm) ソフトカバー168頁(作品点数160点、ダブルトーン印刷) ISBN:978-4-86503-040-2

廃坑-無人島となって9年後、1983年に軍艦島=端島(Hashima)の廃墟をとらえた未発表作品集。作家本人がフィルム原板から精緻にデジタルデータ化・リマスタリングした究極の廃墟作品集。

松江泰治(まつえ・たいじ):1963年東京生まれ。東京大学理学部地理学科卒業。1996年、第12回東川賞国内作家賞受賞。2002年、第27回木村伊兵衛写真賞。2012年、第28回東川賞国内作家賞受賞。写真集に、『LIM』(青幻舎、2015年)、『JP-01 SPK』(赤々舎、2014年)、『TYO-WTC』(赤々舎、2013年)、『jp0205』(青幻舎、2013年)、『世界・表層・時間』(NOHARA、2013年)、『cell』(赤々舎、2008年)、『JP-22』(大和ラヂエーター製作所、2006年)、『CC』(大和ラヂエーター製作所、2005年)、『Gazetteer』(大和ラヂエーター製作所、2005年)、『Taiji Matsue』(うげやん、2004年)、『Hysteric 松江泰治』(ヒステリックグラマー、2001年)。

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by urag | 2017-01-17 16:06 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 15日

注目新刊:ニーチェ『愉しい学問』新訳、ほか

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★毎月の出費はそれなりのものになりますが、素晴らしき文庫の数々が毎月刊行されていることには本当に驚嘆するばかりです。出版社さんと編集者の皆さんに感謝の念を捧げます。

引き裂かれた自己――狂気の現象学』R・D・レイン著、天野衛訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,300円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-09769-9
未開社会における性と抑圧』B・マリノフスキー著、阿部年晴/真崎義博訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,200円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-09775-0
共産主義黒書〈アジア篇〉』ステファヌ・クルトワ/ジャン=ルイ・マルゴラン著、高橋武智訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,700円、文庫判576頁、ISBN978-4-480-09774-3
柄谷行人講演集成1995-2015 思想的地震』柄谷行人著、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,000円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-09773-6
愉しい学問』フリードリヒ・ニーチェ著、森一郎訳、講談社学術文庫、2017年1月、本体1,450円、文庫判512頁、ISBN978-4-06-292406-1
禅語の茶掛を読む辞典』沖本克己/角田恵理子著、講談社学術文庫、2017年1月、本体920円、文庫判256頁、ISBN978-4-06-292411-5
三木清教養論集』三木清著、大澤聡編、講談社文芸文庫、2017年1月、本体1,500円、文庫判272頁、ISBN978-4-06-290336-3
すばらしい新世界〔新訳版〕』オルダス・ハクスリー著、大森望訳、ハヤカワepi文庫、2017年1月、本体800円、文庫判375頁、ISBN978-4-15-120086-1
動物農場〔新訳版〕』ジョージ・オーウェル著、山形浩生訳、ハヤカワepi文庫、2017年1月、本体700円、文庫判206頁、ISBN978-4-15-120087-8
古代研究I 民俗学篇1』折口信夫著、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体920円、文庫判351頁、ISBN978-4-04-400196-4
平治物語 現代語訳付き』日下力訳注、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体1,480円、文庫判477頁、ISBN978-4-04-400034-9
よくわかる真言宗 重要経典付き』瓜生中著、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体960円、文庫判342頁、ISBN 978-4-04-400135-3
生きるよすがとしての神話』ジョーゼフ・キャンベル著、飛田茂雄/古川奈々子/武舎るみ訳、角川ソフィア文庫、2016年11月、本体1,240円、文庫判454頁、ISBN978-4-04-400187-2
乳房の神話学』ロミ著、高遠弘美訳/解説、角川ソフィア文庫、2016年9月、本体1,200円、文庫判476頁、ISBN978-4-04-400162-9
幸福な王子/柘榴の家』ワイルド著、小尾芙佐訳、光文社古典新訳文庫、2017年1月、本体880円、文庫判304頁、ISBN978-4-334-75347-4
ポケットマスターピース13 セルバンテス』野谷文昭編、三倉康博編集協力、吉田彩子訳、集英社文庫、本体1,300円、文庫判712頁、ISBN978-4-08-761046-8

★まずはちくま学芸文庫の今月新刊から。レイン『引き裂かれた自己』の親本は1971年にせりか書房より刊行(著者名の当時のカタカタ表記は「レイング」)。文庫化にあたり正副題を逆転させ(原題は『The Divided Self: An Existential Study in Sanity and Madness』で1960年刊)、全面的な訳文改訂の上、新たに1965年の「ペリカン版への序文」を訳出。レインの著書が文庫化されるのは初めてのことです。

★マリノフスキー『未開社会における性と抑圧』の親本は1972年に社会思想社より刊行。原著は『Sex and Repression in Savage Society』(1927年)で底本には53年の第4版が使用されています。文庫版へのあとがきや、編集部による特記はなし。クルトワ/マルゴラン『共産主義黒書〈アジア篇〉』は昨春(2016年3月)に刊行された「ソ連篇」に続くもの。親本は2006年に恵雅堂出版より刊行。文庫化にあたり「誤りを適宜訂正し、新たに人名索引を付した」とのことです。『柄谷行人講演集成1995-2015』は文庫版オリジナルアンソロジー。収録作については書名のリンク先をご覧ください。

★次に講談社学術文庫。ニーチェ『愉しい学問』は文庫版オリジナルの新訳。底本は1887年に刊行された原著第二版。講談社学術文庫にはニーチェ論は複数あるものの、訳書は初めてで(講談社文庫では1971年に吉沢伝三郎訳『このようにツァラトゥストラは語った』上下巻が刊行されていました)、意外な印象があります。訳者の森さんは東北大学教授。一昨年夏(2015年6月)にはみすず書房よりアーレント『活動的生』の訳書を上梓されています。いっぽう『禅語の茶掛を読む辞典』は2002年の同社の単行本を文庫化。掛軸の写真を多数収録し、解説は1頁ないし見開きで読み切れるので、通勤に最適かもしれません。慌ただしい日常のさなかに思索と鑑賞のひとときを。

★続いて講談社文芸文庫。『三木清教養論集』は生誕120年記念の文庫オリジナルアンソロジー。カバー紹介文に曰く「読書論・教養論・知性論の三部構成で、その思想の真髄に迫る」と。それぞれの部には9篇ずつ収められ、合計で27篇を読むことができます。底本は岩波書店版全集で、「新漢字新かなづかいに改め〔・・・〕底本中明らかな誤りは正し」たと特記されています。編者の大澤聡さんが巻末に長文解説「しゃべる教養をめぐって」を寄せておられます。

★続いてハヤカワepi文庫。ハクスリー『すばらしい新世界』とオーウェル『動物農場』はともに新訳。前者は3年前に黒原敏行さんによる新訳が光文社古典新訳文庫より刊行されたばかり。ハヤカワepi文庫でのオーウェルの新訳は、2009年の高橋和久訳『一九八四年』に続くもの。1947年のウクライナ版序文が重訳(英語原文は失われており、ウクライナ語訳の英訳からの日本語訳)されているのが貴重です。『動物農場』の最近の訳書では、新訳ではありませんが、開高健訳/解説がちくま書房より3年前に刊行されています。ハクスリーにせよオーウェルにせよ、その問題意識の鋭さゆえに今後とも長く読まれ続けるに違いありません。

★続いて「創刊20周年」だという角川ソフィア文庫。折口信夫『古代研究』は生誕130周年記念による旧版全6巻(1974~1977年)のリニューアルです。新版も全6巻予定で解説を担当しているのは安藤礼二さん。旧版に掲載されていた池田弥三郎さんの解説も併載されています。今月下旬に第Ⅱ巻「民俗学篇2」が発売予定です。日下力訳注『平治物語』はカバー表4紹介文に曰く「最新の研究成果をふまえ、本文、脚注、現代語訳、校訂注に解説までを収載した文庫で初めての完全版」。瓜生中『よくわかる真言宗 重要経典付き』は、同著者の書き下ろしとなる「よくわかる」シリーズの、お経読本(2014年)、浄土真宗(2015年)、曹洞宗(2016年7月)に続く4点目。重要経典の読み仮名付き原文と現代語訳が、簡潔な解題や語句解説とともに収められているのが勉強になります。

★同文庫については昨年末までに取り上げていなかった2点の既刊書にも注目。キャンベル『生きるよすがとしての神話』は1996年に同版元から刊行された単行本の文庫化。キャンベルの文庫本は『神話の力』(飛田茂雄訳、ハヤカワ文庫NF、2010年)や『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕』(上下巻、倉田真木/斎藤静代/関根光宏訳、ハヤカワ文庫NF、2015年)に続く3点目。いっぽう、ロミ『乳房の神話学』の親本は1997年に青土社から刊行された単行本の改訂版。ロミの単行本は数多くありますが、文庫化は本書が初めて。新たに書き直されたご様子の訳者あとがきによれば図版については版権の問題があり、すべてを収録するわけにはいかなかったとのことです。原著『Mythologie du sein』(1965年)や青土社版と比べてみるのも一興かと。

★最後に光文社古典新訳文庫と集英社文庫「ポケットマスターピース」。前者のワイルドは、同文庫では『ドリアン・グレイの肖像』(仁木めぐみ訳、2006年)、『サロメ』(平野啓一郎訳、2012年)、『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(南條竹則訳、2015年)に続くもの。帯文に曰く「大人のために訳しました。ビターな味わいの童話集、全9篇収録」と。後者の『セルバンテス』は、「ポケットマスターピース」第13弾で、これでシリーズ完結。昨年はセルバンテスの没後400年でした。今どきの文庫はこの大冊ではこうした値段にはなりようがないはずなのですが、そこは天下の集英社で、コスパ抜群の新訳文学古典シリーズでした。第二期があってもおかしくないと思います。

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トランプは世界をどう変えるか?――「デモクラシー」の逆襲』エマニュエル・トッド/佐藤優著、朝日新書、2016年12月、本体720円、新書判176頁、ISBN978-4-02-273699-4
乾浄筆譚2――朝鮮燕行使の北京筆談録』洪大容著、夫馬進訳注、東洋文庫、2017年1月、本体2,800円、6変判上製函入292頁、ISBN978-4-582-80879-7
徂徠集 序類2』荻生徂徠著、澤井啓一/岡本光生/相原耕作/高山大毅訳注、東洋文庫、2017年1月、本体3,000円、B6変判上製函入352頁、ISBN978-4-582-80880-3

★トッド/佐藤優『トランプは世界をどう変えるか?』は帯に「緊急出版」の文字が躍っています。朝日新聞編集委員の大野博人さんによるトッドさんへのインタヴュー「民主主義がトランプを選んだ」(2016年11月10日)と、佐藤さんによる書き下ろし「「トランプ現象」の世界的影響、そして日本は」が併載されています。トランプ次期大統領による「共和党候補指名受諾演説」(2016年7月21日)も収められています。トッドさんはインタヴューの末尾でこう指摘しています。「ある意味で、米国ではどんな大統領であれ、人格的な面はやや二次的なことなのです。やりたいことが何でもできるわけではない」(36頁)。佐藤さんもやはり末尾付近でこう指摘しています。「あるいは、政策がうまくいかなければ、敵を作り出そうとするかもしれません。/今回の大統領選で可視化された、パワーエリートやエスタブリッシュメントから顧みられることのない人々の「不安」を背景に、アメリカ自身が、国内にアメリカの敵を探し始める可能性が充分にあるのです」(162頁)。

★まもなく発売となる東洋文庫の今月最新刊は2点、第879番『乾浄筆譚2』と、第880番『徂徠集 序類2』です。ともに全2巻完結。2月刊行は『陳独秀文集3』と予告されています。また来月、平凡社ライブラリーでは『ヘーゲル・セレクション』(廣松渉著、加藤尚武編訳/解説)が予定されています。佐藤優さん推薦とのこと。
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by urag | 2017-01-15 23:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 11日

メモ(12)

昨年末は岩波ブックセンター信山社さんの破産による閉店がニュースになりましたが、破産や倒産ではなくても書店さんの閉店というものは版元にとっては半ば日常的に経験する不可避の出来事です。たいていは返品依頼であったり、電話やFAXが不通だったりということで初めて閉店を知るケースが多く、すべての書店さんに最後のご挨拶ができるわけではありません。寂しいですがその後どこで何をされているのか存じ上げない書店員さんも多数いらっしゃいます。

リーディングスタイルが手がけるsolid & liquid TENJIN(大阪屋栗田帳合、2014年11月28日開店)は、今週末(2017年1月15日)で閉店とのこと(公式ブログ12月28日付エントリー「【お知らせ】solidandliquidTENJIN閉店のお知らせ。」)。また、ふたば書房チェーンの複合店、FUTABA+京都マルイ店(日販帳合、2011年4月27日開店)は今月末(1月31日)で閉店と(京都マルイによる2016年12月1日付告知「6F 【FUTABA+京都マルイ店】閉店のお知らせ 」)。

前者の紹介記事は、「Y氏は暇人」の2015年3月13日付エントリー「【天神】イムズのsolid&liquid TENJINというブックカフェが良い感じだ!」や、デザイン会社「BULANCO」さんのウェブマガジン「swings」の2015年9月14日付記事「本屋の枠に収まらない「solid & liquid」で本との出会いを楽しむ」をご参照ください。

後者の店頭写真や、店長の清野さんへのインタヴューは、デザイン会社「フィールド」さんによる約半年前(2015年8月8日付)の記事「お世話になり図鑑 vol.01 ふたば書房 FUTABA+京都マルイ店」をご覧ください。

閉店理由はそれぞれ個別具体的にあるものと思いますが、上記2店のような、読者へのアプローチにおいて比較的に新しいタイプの「複合型書店」が撤退するというのは、この業界の厳しさを想像させる、と言うべきでしょうか。ポスト「複合型書店」のヴィジョンがここしばらく業界に求められてきている、とも言えるのかもしれません。

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by urag | 2017-01-11 13:12 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 09日

第一期全12巻完結、晶文社版『吉本隆明全集』、ほか

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吉本隆明全集3[1951-1954]』吉本隆明著、晶文社、2017年1月、本体7,000円、A5判変型上製848頁、ISBN978-4-7949-7103-6
エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読』ヤン・アスマン著、安川晴基訳、藤原書店、2016年12月、本体6,400円、A5判上製432頁、ISBN978-4-86578-104-5
東京を愛したスパイたち 1907-1985』アレクサンドル・クラーノフ著、村野克明訳、藤原書店、2016年12月、本体3,600円、四六判上製432頁、ISBN978-4-86578-103-8
シン・ゴジラ論』藤田直哉著、作品社、2016年12月、本体1,800円、46判並製256頁、ISBN978-4-86182-612-2
現代思想 2017年2月臨時増刊号 総特集=神道を考える』青土社、2016年12月、本体2,000円、A5判並製310頁、ISBN978-4-7917-1336-3
文藝 2017年春季号』河出書房新社、2017年1月、本体1,300円、A5判並製512頁、ISBN978-4-309-97909-0
こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ著、斎藤真理子訳、河出書房新社、2016年12月、本体1,900円、46変形判上製360頁、ISBN978-4-309-20723-0

★第一期完結となる第12回配本『吉本隆明全集3[1951-1954]』はまもなく発売、明日10日取次搬入です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。付属する「月報12」は、吉増剛造「沈黙の言語」、芦田宏直「「転回」について」、ハルノ宵子「eyes」を掲載。帯文に曰く「『日時計篇』の後半部と『転位のための十篇』の初期異稿を含む21篇を新たに収録。大学の特別研究生を修了し、東洋インキ製造株式会社に就職・勤務の日々に書き継がれ、2冊の私家版詩集発行に結実する膨大な詩稿群を中心に収録」と。800頁近い詩群に圧倒されるばかりです。「わたしに信なきものの強さを与へよ」(153頁)という法外な一行は、彼の人生を貫く強烈な光芒であるかのように感じます。次回配本は第37巻、今春(4~5月)の刊行予定とのことです。

★藤原書店さんの新刊2点、ヤン・アスマン『エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読』と、クラーノフ『東京を愛したスパイたち 1907-1985』は発売済。前者の原書は『Moses der Ägypter: Entzifferung einer Gedächtnisspur』(Hanser, 1998)です。前年(97年)に英語版がまず刊行され、著者自身がドイツ語に訳し大幅に加筆したのが当訳書の底本である98年版です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。帯文に曰く「西洋の人文学に“記憶論的転回”をもたらした、大論争の書!〔・・・〕聖書の伝承に対し、モーセを“エジプト人”とする――邪とされたエジプトに、ある真理の故郷を求める――試みが、西洋の精神史にはあった。古代エジプトの王アクエンアテンから、スペンサー、カドワース、ウォーバートン、ラインホルト、シラー、そしてフロイトへ、“エジプト人モーセ”の想起の系譜を掘り起こす」。巻末の訳者解説ではアスマンのその後の著書『モーセの区別』(2003年)、『一神教と暴力の言葉』(2006年)も紹介されており、訳書の続刊を期待せずにはいられません。

★『東京を愛したスパイたち 1907-1985』は「今日のロシアで最も脂の乗り切った日本学舎の一人である」(訳者あとがきより)というクラーノフ(1970-)が2014年に刊行した『スパイの東京』のロシア語版に基づいて大幅に加筆訂正を施し、東京以外の年が舞台の第五章を省略して、全四章にまとめた日本オリジナル版、とのことです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。カバー表4の紹介文によれば、「格闘技サンボの創始者ワシーリー・オシェプコフ、ゾルゲ事件で日本でも名高いリヒャルト・ゾルゲ、ソ連の探偵小説の先駆者として注目が高まっているロマン・キム(キン・キリュー)、さらに主として戦後に活動した四人の諜報員たち。小伝によって彼らの人物像をコンパクトに紹介すると共に、彼らや関係者の書きのこしたもの、さらに公文書の記録から、〔・・・〕現代の東京にその足跡を再現し、著者自身が訪ね歩く」。

★なお藤原書店さんの今月新刊にはピエール・ブルデュー『男性支配』(坂本さやか・坂本浩也訳)が予告されています。「ブルデュー唯一の「ジェンダー」論」とのことです。

★藤田直哉『シン・ゴジラ論』は発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者は巻頭で、『シン・ゴジラ』だけでなく『君の名は。』にも言及し、次のように自問しておられます。「何故2016年に、震災を想起させるエンターテイメントがこれほどヒットしたのか? 震災の経験を心理的に「昇華」させたい人々がこれほど大勢いたからこそ、これほどの「国民的」ヒットとなたのではないか?」(5頁)。先日も書きましたが、この本と、先に発売された笠井潔『テロルとゴジラ』の刊行記念イベントとして、お二人のトークショー「ゴジラの戦後、シン・ゴジラの震災後」が、今月17日(火)19時から八重洲ブックセンター本店8Fギャラリーにて行われます。新刊2点の内いずれかをお買い上げのお客様に参加整理券が配布されます。なお、作品社さんでは今月より山中峯太郎訳著『名探偵ホームズ全集』全三巻が刊行開始となるとのことです。

★『現代思想 2017年2月臨時増刊号 総特集=神道を考える』は発売済。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。赤坂憲雄「イザベラ・バードの見た神道」、山本ひろ子「中世の諏訪――「南宮」と諏訪流神道をめぐって」、彌永信美「八百万の神達=「梵天帝釈、無量の天子……」?」、檜垣立哉「吉本隆明・記紀書・南島論」、福嶋亮大「家・中国化・メディア――折口信夫『死者の書』の構造」などを収録。「現代思想」は2月号(1月27日発売予定)が特集「ビットコインとブロックチェーンの思想」、2月発売の3月臨時増刊号が「人類学の時代」「知のトップランナー46人の美しいセオリー」の2本となるそうです。

★『文藝 2017年春季号』はまもなく発売。佐々木中さんの小説「私を海に投げてから」(165-202頁)や、1月24日発売予定の渡部直己『日本批評大全』(河出書房新社、46判640頁、ISBN978-4-309-02534-6)をめぐる対談、渡部直己×斎藤美奈子「批評よ、甦れ――『日本批評大全』刊行によせて」(476-489頁;『日本批評大全』の詳細目次が484-485頁に掲出)のほか、昨年7月30日に73歳で死去された柳瀬尚紀さんへの追悼特集が組まれています。亡くなる前日まで取り組んでおられたという、ジョイズ『ユリシーズ』第15章「キルケー」冒頭部を訳した遺稿をはじめ、朝吹真理子、いしいしんじ、稲川方人、円城塔、岡田利規、柴田元幸、高山宏、四方田犬彦の各氏がエッセイを寄稿されています。

★四方田さんは昨年末に発売された同社の新刊、チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』にも解説「病身〔ピョンシン〕の眼差し」を寄せておられます。同書は1978年に韓国で刊行されて以来、「約300刷、130万部」(プレスリリースより)のロングセラーで、映画化されたり教科書に掲載されてきたという作品です。四方田さんは本書を次のように紹介しています。「1970年代の韓国社会に横たわっていた数多くの問題が取り上げられている。貧困と身障者差別。土地の再開発と強制執行。劣悪な労働条件と自然破壊。キリスト教信仰と労働争議。〔・・・〕作家としての趙世煕の面目とは、〔・・・〕悲惨な現実を〈病身〉、つまり身体障碍者という視座を通して描いてみせたところにある」(345頁)。
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by urag | 2017-01-09 22:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 06日

保管:2015年7月~11月刊行図書書評

◎2015年11月30日発売:B・シュティーグラー『写真の映像』本体3,400円、芸術論叢書第3回配本。
書評1⇒増田玲氏書評「周到な仕掛けを施す――55の断章からなる切れ味鋭い写真論」(「週刊読書人」2016年2月26日号)

◎2015年10月9日発売:森山大道『犬と網タイツ』本体3,500円

◎2015年7月22日発売:W・シュスラー『ヤスパース入門』本体3,200円、シリーズ古典転生第12回配本、本巻11。
書評1⇒池田喬氏書評「改めてヤスパースから学ぼう――基本思想を心地よいテンポで解説」(「週刊読書人」2015年9月18日号)
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by urag | 2017-01-06 17:11 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)