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2016年 03月 28日

『季刊哲学』0号=悪循環

弊社にて直販中の哲学書房さんの本について一点ずつご紹介いたします。『羅独辞典』に続いては、「季刊哲学」0号です。「季刊哲学」は0号「悪循環」(87年11月)から12号「電子聖書」(91年10月)まで刊行されました。中野幹隆さんは哲学書房として独立されてから、二誌を創刊されています。「哲学」と「ビオス」です。同時並行されていたセーマ出版の「セーマ」も含めると、三誌を連続的に手掛けられていたことになります。なお、独立される前に手掛けられていた雑誌は、朝日出版社の「エピステーメーII(第二次エピステーメー)」第2号「自己組織化」(86年1月25日)でした。哲学書房の創業第一作である、蓮實重彦さんの小説『陥没地帯』はその直後、86年3月に刊行されています。

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季刊哲学 ars combinatoria 《pré創刊号》 0号 悪循環
哲学書房 1987年11月30日 本体1,500円 A5判並製200頁 ISBN4-88679-017-8 C1010

目次:
[in-forma-terial――1]  無限者の曲率:ロマネスク幻聴 pp.1-16
ニーチェと悪循環――欲動の記号論の起源としての病的諸状態 P・クロソウスキー/兼子正勝訳 pp.18-84
訳者解題 兼子正勝 pp.85-86
喜びの記号論――『ニーチェと悪循環』について 兼子正勝 pp.87-96
個別性と単独性 柄谷行人 pp.98-103
そして、歌うことに決めた 島田雅彦 p.104
演繹系としての生物学の出現――構造主義が紡ぎ出すもう一つの生物学 柴谷篤弘 pp.105-107
創刊号[ライプニッツ……普遍記号学]予告 pp.108-109
哲学書房季刊一覧 pp.110-111
悪循環原理――Principia Mathematica序文から B・ラッセル+A・N・ホワイトヘッド/岡本賢吾+戸田山和久+加地大介訳 pp.114-190
訳者解題 岡本健吾+戸田山和久+加地大介 pp.190-192
[in-forma-terial――2]  未刊の書の序:ニーチェ自筆自家製本 pp.193-200

造本・装幀:鈴木一誌

編集後記:邪な巡り。あるいはパラドクス。時代が自らを名づくべく選びとった名には、スポジチオ・マテリアリスの趣がある。一方に、生それ自体が生みなした永劫回帰の体験を端緒とする悪循環。他方に、結晶の時をうかがう〈論理〉が、不当な全体を拒むための悪循環原理。二つながら、近世=現代の思考態勢の劈開を導く稜線★ところで、真理とははたして、「それなしには生けるものが存続できないような、ある種の錯誤」であるのか。真理と実在と無限を相手どるべく運命づけられた現代の思考は、無限を数学として解くライプニッツの傍ら、指呼の間にあり、まごうかたなき出自の刻、普遍論争の中世を召喚する★自らの産出物としての身体を身にまとって(生命という悪循環!)、神経系は直立する。脳の構造は思考の条件なのか、思考とは脳の過程の謂であるのか。悪循環を解き放って、希哲学の回廊が、ここに発つ。(N)

補足一:続刊となる「創刊号[ライプニッツ……普遍記号学]予告」に記載されていたものの、実際には創刊号(1号)には掲載されなかったテクストは以下の通り。
G・W・ライプニッツ「普遍記号学に関する試論」
G・W・ライプニッツ「普遍記号学の歴史とその擁護」
L・クーチュラ「ライプニッツの形而上学について」
大岡昇平「十八世紀哲学とスタンダール」
管啓次郎「おはようブラジル」
柄谷行人「(連載)」

補足二:クロソウスキー『ニーチェと悪循環』は0号では第二章のみが掲載されたが、その後全訳が1989年2月20日に単行本として哲学書房より刊行されている。幾度か版を重ねたのち、2004年10月10日にちくま学芸文庫の一冊となっている。ラッセル+ホワイトヘッド「悪循環原理」は『プリンキピア・マテマティカ序論』第二章に当たり、序論全体の翻訳は1988年7月15日に単行本として哲学書房の叢書「思考の生成」第一弾として刊行された。その後、同叢書の続刊はなく、当初の予定についても未詳である。

補足三:「in-forma-terial」は図像コラージュの頁。「エピステーメー」時代にあった「イコンゾーン」と同様の試みと考えていいかもしれない。

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◎「季刊哲学」「季刊ビオス」「羅独辞典」を直販いたしております

月曜社では哲学書房(2016年1月31日廃業)様から引き取った一部の出版物の在庫品を、直販にて読者の皆様にお分けしております。「季刊ビオス2号」以外はすべて、新本および美本はなく、返本在庫であることをあらかじめお断りいたします。「読めればいい」というお客様にのみお分けいたします。いずれも数に限りがございますことにご留意いただけたら幸いです。

季刊哲学0号=悪循環 (本体1,500円)
季刊哲学2号=ドゥンス・スコトゥス (本体1,900円)
季刊哲学4号=AIの哲学 (本体1,900円)
季刊哲学6号=生け捕りキーワード'89 (本体1,900円)
季刊哲学7号=アナロギアと神 (本体1,900円)
季刊哲学9号=神秘主義 (本体1,900円)
季刊哲学10号=唯脳論と無脳論 (本体1,900円)
季刊哲学11号=オッカム (本体1,900円)
季刊哲学12号=電子聖書 (本体2,816円)
季刊ビオス1号=生きているとはどういうことか (本体2,136円)
季刊ビオス2号=この私、とは何か (本体2,136円) 
羅独-独羅学術語彙辞典 (本体24,272円)

※哲学書房「目録」はこちら
※「季刊哲学12号」には5.25インチのプロッピーディスクが付属していますが、四半世紀前の古いものであるうえ、動作確認も行っておりませんので、実際に使用できるかどうかは保証の限りではございません。また、同号にはフロッピー版「ハイパーバイブル」の申込書も付いていますが、現在は頒布終了しております。

なお、上記商品は取次経由での書店への出荷は行っておりません。ご注文は直接小社までお寄せ下さい。郵便振替にて書籍代と送料を「前金」で頂戴しております(郵便振替口座番号:00180-0-67966 口座名義:有限会社月曜社)。送料については小社にご確認下さい。後払いや着払いや代金引換は、現在取り扱っておりません。

小社のメールアドレス、電話番号、FAX番号、所在地はすべて小社ウェブサイトに記載してあります。

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by urag | 2016-03-28 14:51 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 27日

注目新刊:『アルトー後期集成』全三巻完結、ほか

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アルトー後期集成 II
アントナン・アルトー著 宇野邦一・鈴木創士監修 管啓次郎・大原宣久訳
河出書房新社 2016年3月 本体5,000円 46判上製472頁 ISBN978-4-309-70532-3

帯文より:われわれの生を救出するためにアントナン・アルトーが帰ってくる。ユーモアとやさしさ、激情と悪意、陽気さと悲痛なみじめさ、笑いと沈黙。絶叫・・・とともに。その思考を凝縮させた奇跡的な後期テクスト群をはじめて集成。生前のアルトーが「本」として構想していた最後の作品にして〈残酷の演劇〉の極限的な実践でもあった「アルトーのすべての作品のうち、もっとも電撃的であり、彼自身がもっともさらされた作品」=『手先と責苦』を全訳。世界でも稀有の集成、10年めに完結。

★発売済。第I巻(宇野邦一・岡本健訳、2007年3月)、第III巻(鈴木創士・荒井潔・佐々木泰幸訳、2007年6月)に続く全三巻完結配本となる第II巻です。帯文にある通り刊行10年目にしての完結。アマゾン・ジャパンの書誌情報では発売日が2007年7月20日となっていますが、これはその昔の登録のままになっていると見え、いずれ版元さんが修正するものと思われますが、当初の予定では10年前に完結させたかっただろうことが窺えます。このたび刊行された第II巻に収録されているのは、帯文にある通りアルトーが生前に著書として構想していた最後の作品『手先と責苦 Suppôts et Suppliciations』です。ガリマール版『アントナン・アルトー著作集』第14巻(2分冊、ポール・テヴナン編、1978年)と、同じくガリマールのポエジー叢書版(エヴリン・グロスマン編、2006年)が参照されていることが窺えます。

★『手先と責苦』は「断片化 Fragmentations」「書簡 Lettres」「言礫 Interjections」の三部構成。1947年2月に執筆されたと思しい序文にはこう書かれています。「第一部は息せき切っておこなわれる、文化の再検討のごときもの。かたちをなす以前に台無しにされてしまった一文化のあらゆるトーテム群を横断してゆく、身体のアブラカダブラ的な騎行だ。/第二部では、この騎行を企てて苦しむ身体が、その身をさらけだす。/その人間がまぎれもなく人間であり霊などではないということが、よくわかってもらえるだろう。/第三部にいたると、もはや問題にならない。/文化も。/生も。/問題となるのはただ、人間の身体が呼吸をはじめる以前に窒息してしまう、創造以前から〔アンクレー〕の忌々しい地獄、/思考の縁のみならず、感情の縁でもある地獄だ」(10-11頁)。また、序文の後段にはこんな言葉も書きつけられています。「現代人は疲れきっていて、自分の理想など深く掘り下げてみるまでもなく、自分が欲するのはたださしだされた生をがぶ飲みすることだけなのだということがわかる。そうすれば、正気を失い、ついにはそれでくたばるばかり」(11-12頁)。

★管さんは訳者あとがきでこうしたためられています。「われわれのアルトー体験は文字を介するしかなく、そこで改めて、文字という不思議な記号の作用を考える必要が出てくるのかもしれない。文字とは、いつまでもおとなしく死んでいるものではないのだから。〔・・・〕こうして文字を手がかりに、アルトーが瞬時によみがえることを、われわれは経験するだろう。翻訳された書物とは一個の反響箱でしかなく、いかにもはかない装置だが、そこにも彼はやってくる、いや、生じるだろう。生起するだろう」(467—468頁)。甦るもの、レヴェナントとしての書物。常に異なる肉体へと憑依し続けるものとしての作品。アルトーは「言礫」に収められた「[叩きのめし、一発くれてやること]」で次のように書きます。「それでもやはり私が語るのは、言葉が性交を望んでくるから。普遍的な姦淫は止むことがなく、考えずにすませることを私に忘れさせる」(247頁)。

★このほか、直近では以下の新刊との出会いがありました。

村に火をつけ、白痴になれ――伊藤野枝伝』栗原康著、岩波書店、2016年3月、本体1,800円、四六判並製192頁、ISBN978-4-00-002231-6
天使とは何か――キューピッド、キリスト、悪魔』岡田温司著、中公新書、2016年3月、本体780円、新書判232頁、ISBN978-4-12-102369-8
知能はもっと上げられる――能力アップ、なにが本当に効く方法か』ダン・ハーリー著、渡会圭子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2016年3月、本体2,000円、46判並製360頁、ISBN978-4-7726-9550-3

★『村に火をつけ、白痴になれ』は発売済。『大杉栄伝――永遠のアナキズム』(夜光社、2013年)と対になる鮮烈な伝記が誕生しました。伊藤野枝や大杉栄が憑依したかのような内面吐露はところどころ太宰治の「駆け込み訴え」を彷彿とさせ、リズムのいい文体で一気に読ませます。人物描写の妙に加えて、自著のフレーズを滑り込ませる(例えば76頁、辻潤のくだり)など、栗原節の魅力はますます進化しています。まさかこんなにも「自由な」本が天下の「お堅い」岩波書店から出るとは。栗原さんが書く言葉の根っこには「肯定の思想」があります。それは、現代人を惨めに縛る様々な自己規制から読む者を開放し、大きな「諾」で包もうとする力です。光に影が寄り添うように、肯定は否定を伴います。本書は新たな毀誉褒貶を惹起する爆弾となることでしょう。目次と著者メッセージ、編集者コメントなどは特設頁にてご覧いただけます。

★『天使とは何か』は発売済。「異教の神々――天使とキューピッド」「天からの使者として――天使とキリスト」「歌え、奏でよ――天使と聖人」「堕ちた天使のゆくえ――天使と悪魔」「天使は死なない――天使と近代人」の全五章。本書の狙いについて岡田さんは「はじめに」でこう述べています。「隠れた天使や異端的とされてきた天使を現代に救い出す試み」(ii頁)。前者「隠れた天使」については第II章で、天使としてのキリスト像の系譜として論じられており、「神学的にも図像学的にも今後のさらなる解明が望まれるきわめて興味深いテーマ」だと指摘されています。後者「異端の天使」すなわち堕天使については第IV章で取り上げられ、「他者(他の信仰や宗教や神話)における天使(的存在)を「悪魔」呼ばわりしてきた」「隠れた歴史」に迫りつつ、「自由と抵抗、そして本能的なものの解放と創造的エネルギーのシンボル」としての側面にも言及されています。

★『知能はもっと上げられる』は発売済。原書は、Smarter: The New Science of Building Brain Power (Avery, 2013)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者のダン・ハーリー(Dan Hurley)はアメリカの科学ジャーナリスト。本書が本邦初訳となります。『進化しすぎた脳』などの著書で高名な池谷裕二さんは本書を「どうすれば知能が上げられるかを科学者に取材し、著者自ら効果的な方法を試した体当たり的検証録」と評価されています。さらに著者はこうも言っています、「本書は大きな変化の渦中にある知能研究という分野についての本だ」と。作業記憶、流動性知能、長期記憶、結晶性知能、そして様々なトレーニングや脳の活性化に良いもの、良いことをめぐって、科学、医学、ビジネスの諸領域と最新動向を紹介してくれます。近年ますます研究が進み、軍事面からも注目されているという知能研究の面白さを知ることができます。
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by urag | 2016-03-27 18:35 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 25日

備忘録(27)

◆2016年3月25日18時現在。
東洋書店(2015年6月25日事業停止、2016年2月3日倒産)とサイゾー傘下の東洋書店新社(2016年2月9日ツイート開始)について追いかけていらっしゃる@strangebookloveさんから、当ブログで本件への言及がないことについて「残念」だとコメントをいただいたのですが(唐突に話を振っていただいていささか面食らっています)、ごく単純な話、私は事情を知りません。夏目書房(1992年7月創業、2007年10月4日業務停止)が同じくサイゾー傘下で夏目書房新社として復活していたのも知りませんでした。人づてに初めて夏目書房新社さんのお名前を聞いたのは先月上旬。その時点では特に深追いすることはなく、ウェブサイトの存在やサイゾー傘下であることについて、@strangebookloveさんのツイートを辿りつつ、関連情報をようやく確認した次第です。そんなわけで「知っていることがあるけどしがらみがあって言えない」状態ではございません。

「日刊サイゾー」2016年1月1日記事「謹賀新年」に曰く「この一年、株式会社サイゾーでは、海外セレブ情報サイト「ビッグ☆セレブ」やコミック事業部「道玄坂書房」の立ち上げ、ロシア専門書を扱う東洋書店の出版事業継承など、これまでにないプロジェクトやタスクに挑みはじめました」。「弊社は今秋で10期目の事業年度を迎え、熟れ頃、食べ頃との評価をいただかなければいけない勝負の時期になります。まずはみなさまが思わず手にとって、かじりつきたくなるようなメディアやプロダクトを提供できるよう、一層の努力をして参る所存です」と。

@strangebookloveさんのご推測、「金策つきた、しかし破産はしていない、つまり銀行の調査が入らない曖昧な状態の版元を手に入れよう、と画策しているビジネスモデルに飲み込まれてしまった」「そんなケースが他にもあるのかもしれないな、と思いました」という件については、私個人の印象ですが、サイゾーさんや東洋書店新社さん、夏目書房新社さんに当てはまるケースではないように感じます。@strangebookloveさんもお気づきの通り、まずサイゾーは取次口座を狙っているわけではないでしょう。ではそのコンテンツを「狙っている」のかと言えば、もう少しシンプルに、それぞれの版元の方と何かしらの人間関係があったであろうことが新社のきっかけだろう、と推測しています。むろん、そもそもサイゾーさんの新しい事業展開の勘所がどこにあるのか、ということについては私が想像しうるものではありませんが。

ただし、@strangebookloveさんが前段で仰っている、「事故やトラブルがある版元から著者が自著のデータを引き上げることが困難」(要旨)という事態については、一般論としてありうることだと思います。

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◆3月26日午前11時現在。
私の先の投稿に対する、@strangebookloveさんの呟き3件(123)を拝読しました。私が「事実誤認です」と申し上げられるのは、あくまでも@strangebookloveさんの何日か前のご投稿「今回のことで残念だったのは、ウラゲツさんが何もおっしゃらないことでした。そしてその理由が、夏目書房にある、ということがわかり、なるほどね、と合点したのでした。ウラゲツさんのおっしゃる、しがらみ、ってやつですね。検索してみてください。」についてです。

@strangebookloveさんもご指摘の通り、確かに私にはかつて夏目書房の社長・夏目純さんとの面識がありました。最後にお目に掛かったのがいつだったかはっきりと思い出せませんが、2007年10月の業務停止よりずいぶん前だったかもしれません。その後はまったくご消息を存じ上げないまま現在に至ります。旧社と新社の関係もよく分かりません。そんなわけで、先だって書いた通り「知っていることがあるけどしがらみがあって言えない」というような状態ではないのです。

夏目書房/夏目書房新社さんの経緯について現時点で私が言えることは特にありませんし、いわんや、サイゾーさんや東洋書店/東洋書店新社さんについてはもっと知りません。「箝口令が敷かれていたのでは」というご疑念についても、聞いたことがないです。これ以上のお尋ねがあっても他社さんの内情については答えようがありませんこと、悪しからずご了承ください。

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◆2016年4月5日19時現在。
「東京商工リサーチ」2016年4月1日付速報「[高知] 書店運営、出版取次/(株)興文堂書店ほか1社~出版取次の(株)太洋社に連鎖~」に曰く、「(株)興文堂書店(高知市若松町8-4、設立平成8年10月、資本金1000万円、隅田遼介社長)は3月17日、高知地裁へ破産申請した。負債総額は約5億円。/興文堂書店は書籍取次の高知出版販売の関連会社として書店運営を目的に設立。「興文堂書店」の屋号で高知県内に複数の店舗を構え、〔・・・太洋社の自主廃業発表後に〕書籍や雑誌の入荷が困難となったことから店舗を順次閉鎖していた。/関連の高知出版販売(株)(同所、設立昭和33年8月、資本金1500万円、同社長)は3月15日、高知地裁へ破産を申請した。負債総額は約5億2000万円。設立当初より太洋社との結び付きが強く、同社の平成27年6月期の売掛金(未収入金)内訳書には、高知出版販売に対する債権4億3914万円が計上されていた。太洋社が3月15日、東京地裁に破産申請し、これに連鎖した」。

「文化通信」4月5日付記事「高知出版販売が自己破産を申請」に曰く「帝国データバンクによると、高知出版販売(隅田遼介代表)が3月15日に高知地方裁判所に自己破産を申請した。申請時点での負債は債権者約53人に対して約5億2400万円。関連会社の興文堂書店(隅田遼介代表…」(以下有料)。

「新文化」4月4日付記事「大阪屋栗田が創業、体制を発表」に曰く「4月1日、大阪屋と栗田出版販売が統合し、組織・機構と人事体制を発表した。代表取締役社長執行役員に大竹深夫氏が就任。〔・・・〕社外取締役に関谷幸一氏(KADOKAWA)、佐藤隆哉氏(小学館)が就いた。また、日販の専務である加藤哲朗氏が特別顧問として経営に参画する。〔・・・〕組織は、大阪本社と東京本社の「2本社制」。企画管理本部、営業第一本部、同第二本部、MD本部、流通本部の「5本部」を設置した。各組織の管掌、職掌、任務の範囲は原則として3月末日までの大阪屋および栗田の組織を継承する」。

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◆2016年4月11日16時現在。
「アマゾンジャパンは〔2015年〕6月3日、Amazon.co.jpで「Amazon 本買取サービス」を始めた。買い取り価格を事前にWebサイトで確認でき、1冊から無料で集荷する」(「ITmediaニュース」2015年6月3日付速報「Amazon、本の買い取り開始 1冊から無料集荷、事前に買い取り価格をWebで確認」)。

「Amazon.co.jpは〔2016年〕4月8日、書籍やゲームソフトなどをユーザーから買い取る「Amazon買取サービス」を終了した」(「ITmediaニュース」2016年4月11日付速報「「Amazon買取サービス」終了」)。

わずか一年足らず。早ッ。何がダメだったのでしょう。

一方、アマゾンの配送料無料(2009年9月以降)が終了するまでのおさらいについてもすべて「ITmediaニュース」で振り返っておきます。

2010年03月31日付速報「Amazon.co.jpの全品無料配送、期間延長 終了日未定
2010年11月01日付速報「Amazon.co.jp、通常配送が無料に
2013年01月07日付速報「Amazon、低価格商品で単品注文不可に 「全商品無料配送」終了
2016年04月06日付速報「Amazon.co.jp、「全商品送料無料」が終了 2000円未満は送料350円に

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by urag | 2016-03-25 18:35 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 24日

哲学書房フェア、売れ筋や会期延長情報など

哲学書房の出版物を取り揃えた回顧フェアが以下の通り都内3店舗で絶賛開催中です。好評につき会期延長となっていますので、最新情報を下記に列記いたします。哲学書房はすでに廃業されており、版元在庫はありませんので、店頭販売はこの3店舗を頼るほかありません。なお、「季刊哲学第12号」については3店舗では展開されておらず、弊社直販のみの扱いとなります。フェアでは、中野幹隆さんが手がけられた書籍一覧の年表がレジュメとして無料配布されています。貴重な資料です。

◎哲学書房を《ひらく》――編集者・中野幹隆が遺したもの

売れ筋ベスト5:
山内志朗『笑いと哲学の微妙な関係』
中沢新一ほか『季刊哲学2号=ドゥンス・スコトゥス』
中村元ほか『季刊哲学9号=神秘主義』
大森荘蔵ほか『季刊哲学10号=唯脳論と無脳論』
稲垣良典ほか『季刊哲学11号=オッカム』

◆ジュンク堂書店立川高島屋店(2月26日オープン)
場所:6Fフェア棚
期間:2月26日(金)~4月20日(水)
住所:立川市曙町2-39-3 立川高島屋6F
営業時間:10:00~21:00
電話:042-512-9910

ジュンク堂さん手作りの資料は無料配布中。
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店頭に1冊しかない本はどうぞお早めに。
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◆ジュンク堂書店池袋本店
場所:4F人文書売場
期間:3月1日(火)~4月20日(水)
住所:豊島区南池袋2-15-5
営業時間:月~土10:00~23:00/日祝10:00~22:00
電話:03-5956-6111

池袋本店ではエスカレーターを上がって右手壁面で展開中。
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「セーマ」誌は中野さんが手がけられた最後の雑誌です。貴重!
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◆丸善丸の内本店
場所:3F人文書売場(Gゾーン)
期間:3月1日(火)~4月17日(日)※延長の可能性あり
住所:千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾショップ&レストラン1~4F
営業時間:9:00~21:00
電話:03-5288-8881

丸の内本店では蓮実重彦『陥没地帯』が早々に完売したとのこと。
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フェアタイトルにもなっている「哲学書房を開く」は会社設立挨拶から採られています。 「フィロギア」というのは原文では「フィロロギア」です。
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なお、弊社(月曜社)では「季刊哲学」「季刊ビオス」「羅独辞典」を直販にて絶賛販売中です。弊社での売れ筋ナンバー1は「羅独辞典」です。

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by urag | 2016-03-24 11:55 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 23日

4月新刊『表象10:爆発の表象』、創刊10周年

2016年4月15日取次搬入予定 *人文・芸術

表象10――爆発の表象
表象文化論学会=発行 月曜社=発売
2016年4月 本体1,800円 A5判並製336頁 ISBN978-4-86503-031-0

いま、表象文化研究の最前線はどこにあるのか? 巻頭対談では、領域横断的なイメージ論を精力的に展開している岡田温司・田中純の両氏に訊く。続く特集1では爆発の表象をめぐる様々なアプローチを吟味。花火製造術から現代アートまで、初期映画から現代ハリウッド映画まで、至るところで表象されている「爆発」を、崇高論の枠組みを超えて論じる。さらに特集2では、演劇やダンスから儀礼・祭祀までを包括する「パフォーマンス」をめぐる言説のあり方を再検討する。

アマゾン・ジャパンにてご予約受付中

目次
◆【巻頭言】
言語と表象(佐藤良明)
◆【対談】
新たなるイメージ研究へ(岡田温司×田中純)
◆【特集1:爆発の表象】
共同討議:「爆発的メディウム」の終焉?――映画、アニメーション、ドローン(石岡良治+北村紗衣+畠山宗明+星野太+橋本一径)
電気じかけの夜(フィリップ゠アラン・ミショー/森元庸介訳)
爆発への無関心(ジェフリー・スコンス/仁井田千絵訳)
平和と原子爆弾(セルゲイ・エイゼンシュテイン/畠山宗明訳・解題)
◆【特集2:パフォーマンス論の現在】
共同討議:パフォーマンスの場はどこにあるのか(森山直人+武藤大祐+田中均+江口正登)
方法論としてのニュー・ドラマトゥルギー――共同討議の余白に(内野儀)
パフォーマンス/ミュージアム(三輪健仁)
◆【投稿論文】
パンとサイコロに賭けられるもの――聖史劇の聖別と瀆聖(杉山博昭)
洞窟という鑑賞装置――フレデリック・キースラーの《ブケパロス》(瀧上華)
歌う声を〈きく〉行為――歌う身体と聴く身体が交叉するところ(堀内彩虹)
小津安二郎『お早よう』におけるオナラの音(正清健介)
◆【書評】
スクリーン・プラクティスのふくらみ――大久保遼『映像のアルケオロジー――視覚理論・光学メディア・映像文化』書評(細馬宏通)
エクフラシスの快楽――岡田温司『映画は絵画のように――静止・運動・時間』書評(堀潤之)
ロシア・アヴァンギャルドの複雑に絡んだ糸を解きほぐす――河村彩『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』書評(柏木博)
過去と未来の狭間にあり続けること――田口かおり『保存修復の技法と思想――古代芸術・ルネサンス絵画から現代アートまで』書評(金井直)
薄明の映画論──中村秀之『敗者の身ぶり──ポスト占領期の日本映画』書評(松浦寿輝)
写真のパラノーマリティ――浜野志保『写真のボーダーランド――X線・心霊写真・念写』書評(前川修)
メディアアートの歴史的瞬間――馬定延『日本メディアアート史』書評(原島大輔)
映画の「自動性」と「世界への信」――三浦哲哉『映画とは何か――フランス映画思想史』書評(武田潔)
音楽と驚異――村山則子『ペローとラシーヌの「アルセスト論争」――キノー/リュリの「驚くべきものle merveilleux」の概念』書評(横山義志)
「世界認識の方法」としてのリアリズム――小林剛『アメリカン・リアリズムの系譜――トマス・エイキンズからハイパーリアリズムまで』書評(横山佐紀)
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by urag | 2016-03-23 22:10 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 20日

注目新刊:吉本隆明『全南島論』作品社、ほか

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全南島論
吉本隆明著、安藤礼二解説
作品社 2016年3月 本体5,400円 A5判上製 ISBN978-4-86182-571-2

帯文より:日本国と天皇制の起源。「吉本隆明によって南島は、人間の表現の「原型」、さらには、人間の家族・親族・国家の「起源」を探ることが可能な場所であった。それは同時に自らの詩人としての起源、批評家としての起源が立ち現われてくる場所でもあった。本書『全南島論』は、吉本隆明の表現の「原型」、表現の「起源」を明らかにしてくれる特権的な書物になった。一冊の書物のなかに、文字通り、一つの宇宙が封じ込められているのだ」(安藤礼二「解説」より)。

本文より:沖縄は沖縄の本島独自の、八重垣島は八重垣島の、奄美大島は奄美の、そして与論島は与論島、宮古島は宮古島独自の、神話と接続された歴史的時代の記述をもっています。そういう意味あいからいいますと、現在の日本国家が、権力の版図内にあるとかんがえている空間的地域は、実は大小のちがいこそあれ、これらの島の一つ一つを本土と同等に扱う理由しかないといっていいのです。つまり、琉球や沖縄の諸島も、その一つ一つが、やはり本土と同等の国家であるとかんがえてよろしいわけです。(「国家と宗教のあいだ」147頁)

目次:
まえがき
I
南島論序説
『琉球弧の喚起力と南島論』覚書
南島論I・II
II
島はみんな幻
母制論
起源論
異族の論理
国家と宗教のあいだ
宗教としての天皇制
南島論――家族・親族・国家の論理
「世界-民族-国家」空間と沖縄
南島の継承祭儀について――〈沖縄〉と〈日本〉の根底を結ぶもの
家族・親族・共同体・国家――日本~南島~アジア視点からの考察
『記』『紀』歌謡と『おもろ』歌謡――何が原形か
色の重層
縦断する「白」
共同幻想の時間と空間――柳田国男の周辺
共同体の起源についての註
おもろさうしとユーカラ
イザイホーの象徴について
島尾敏雄『琉球弧の視点から』
島尾敏雄――遠近法
聖と俗
III
鬼伝承〔島尾敏雄〕
民話・時間・南島〔大山麟五郎〕
歌謡の発生をめぐって〔藤井貞和〕
母型論と大洋論〔山本哲士・高橋順一〕
南島歌謡研究の方法と可能性〔玉城政美〕
あとがき
初出掲載
解説 〔安藤礼二〕

★18日取次搬入済。まえがきとあとがきは2005年の書き下ろし。第I部は本書の担当編集者・高木有さんが編集長をおつとめだった時代の「文藝」誌に連載され、未完に終わった「南島論」と同論をめぐる覚書を収録。第II部には68年から93年までの関連テクストを集成、第III部には76年から91年までの関連対談がまとまっています。吉本さんの言う「南島」とは、琉球と奄美のことです。沖縄をめぐる諸問題が今なお未解決にとどまるこんにち、現代の読者が吉本さんの数十年に及ぶ思索の結晶に触れることの意義は大きいのではないでしょうか。また、まもなく筑摩書房さんからも吉本さんの『アジア的ということ』が刊行されると聞きます。こちらは「80年代前半、「試行」誌に書き続けられた論稿「アジア的ということ」に他の論稿を加え、著者の生前の構想に沿って編集したアジア的世界思想の可能性を示す論集」とのことです。

★『全南島論』巻末にある安藤礼二さんによる解説はこう始まります、「『共同幻想論』(1968年)を書きあげた吉本隆明にとって、そこで提出された諸主題をあらためて総括し、その彼方へと抜け出そうと意図された書物が「南島論」であった。吉本は、繰り返し「南島論」に立ち戻り、新たな構想のもとで「南島論」を何度も書き進め、書き直そうとしていた。しかしながら、自身の思索の深まりとともに「南島論」として一つに総合されなければならない論点は限りなく広がり、限りなく複雑化してゆく。結局のところ、吉本の生前、「南島論」というタイトルで一冊の書物がまとめられることはなかった。「南島論」は、詩人であり批評家であった吉本隆明が、そのすべての力を注ぎ込みながら――それ故に――「幻」となった書物であった」(572頁)。

★「南島論序説」はその昔、第1回「文藝」シンポジウム「吉本隆明を聴く――琉球弧の喚起力と「南島論」の可能性」(1988年12月2日、那覇市沖縄タイムス・ホール、主催=『文藝』沖縄実行委員会、後援=尚学院・沖縄タイムス社)における基調報告として講演されたもので、後日、季刊「文藝」1989年春季号に、パネルディスカッション「それぞれの南島論」吉本隆明・赤坂憲雄・嵩元政秀・比嘉政夫・上原生男・渡名喜明(司会)、総括評論「南島論、あらたなる胎動」とともに掲載されました。同号の編集後記で高木さんはこう綴っておられます、「次号予定の吉本隆明氏「南島論」の連載に先駆け、先頃、小誌としては初の試みのシンポジウムを沖縄で開催した。会場の沖縄タイムス・ホールは550名で満席となり、急遽第二会場にTVモニターを用意し150名を収容する始末。予測を遥かに超えた盛況に予定の三時間は瞬く間にすぎ、会場限界の11時迄5時間に亙り熱気ある討論が重ねられた。会場の片隅で思い知ったのは、言葉を支えるのは知識だけではないという単純なことであった」。

★『全南島論』の「あとがき」にはこうあります。「漱石の絶品『彼岸過迄』の敬太郎とおなじで、さんざん追っかけた積りだろうが、結局何も確かなことは判らないじゃないかと言われそうな気がするが、それが素人の宿命にちがいない。ただ比較的良質の宿命だとしたら以って瞑すべきだと思っている。高木有さんが懸命の努力でわたしなど自分で忘れていた文章も蘇生させていただいた。その労力に叶う返報が少しでもあったなら、わたしにとってもこれに過ぎる幸はない」(569頁)と。

★著者にライフワークがあるのならば、編集者にもそれはあるのだと思います。「早い・安い・旨い」が求められざるをえない、市場サイクルの短い昨今の出版業界において、それは稀有なことです。きっと高木さんの胸の内には吉本さんとの出会いのインパクトや、シンポジウムの会場の熱気が今なお鮮明に息づいているのでしょう。くだんのシンポジウムは雑誌掲載後、登壇者らの論考を加えて単行本『琉球弧の喚起力と南島論』(現在は品切重版未定)としてもまとめられています。今回刊行された『全南島論』の姉妹編とも言える本なので、以下に書誌情報を掲出しておきます。本書からは「南島論序説」と「『琉球弧の喚起力と南島論』覚書」が『全南島論』に収録されています。

琉球弧の喚起力と南島論――シンポジウム1988・12・2那覇
吉本隆明ほか著
河出書房新社 1989年7月 本体1,748円 A5判並製220頁 ISBN:978-4-309-00575-1

目次:
第一部=基調報告
南島論序説 〔吉本隆明〕
第二部=パネルディスカッション
それぞれの南島論 〔嵩元政秀・比嘉政夫・上原生男・赤坂憲雄・吉本隆明・渡名喜明〕
第三部=後論
南島論、あらたなる胎動 〔赤坂憲雄〕
海のしらべからの返書 〔上原生男〕
文化の基層をみきわめるために 〔比嘉政夫〕
グスク論――その性格をめぐって 〔嵩元政秀〕
琉球王権のコスモロジー 〔渡名喜明〕
うふゆー論序説 〔高良勉〕
覚書 〔吉本隆明〕
コラム
 ノロとキコエオオキミ 〔比嘉政夫;『沖縄大百科事典』より〕
 をなり信仰とカーミヌチビティーチ 〔比嘉政夫〕
 南島文化の系譜論 〔嵩元政秀〕
 南島の地名 〔比嘉政夫〕
 異端の天皇・後醍醐 〔赤坂憲雄〕
 南島の神話群 〔渡名喜明〕
著者紹介
初出一覧
地図(琉球弧、宮古・八重山諸島、沖縄諸島)

★最後に『全南島論』第II部に収録されている1970年9月の講演「南島論――家族・親族・国家の論理」から引用します。「火の神信仰とか、家の世代的遡行から出てくる、たかだか親族における共同性にしかすぎない祭りの本質を追求してゆく中に、農耕民族、あるいは農耕神話起源以前における古形が、〈本土〉においても〈南島〉においてもあからさまに存在しているのだと考えられます。こういう問題は、やがて調査、発掘の進展とともに明らかになっていくでしょう。そして、それによって、天皇制統一国家に対して、それよりも古形を保存している風俗、習慣、あるいは〈威力〉継承の仕方があるという意味で、〈南島〉の問題が重要さを増してくるだけでなく、それ以前の古形、つまり弥生式国家、あるいは天皇制統一国家を根柢的に疎外してしまうような問題の根拠を発見できるかどうか、それはまさに今後の追求にかかっているのです。/そういう問題のはらんでいる重さが開拓されたところで、本格的な意味で琉球、沖縄の問題が問われることになるだろうとおもいます。こんなことをいっている間にも、さまざまな政治的課題が起こりつつあるわけですが、起こりつつある問題の解決の中に根柢的な掘り下げ、あるいは根底的な方向性が存在しないかぎり、依然として最初の問題は解決されないだろうと信じます。それなしには、〈南島〉の問題は、たんに地域的辺境の問題として軽くあしらわれるにすぎないでしょう。つまり、現在の問題に限っても、日本の資本制社会の下積みのところで、末梢的な役割を果すにすぎないという次元で、琉球、沖縄の問題はいなされてしまうことは確実です。現在の政治的な体制と反体制のせめぎあいのゆきつくところは、いまのままでは、たかだか辺境の領土と種族の帰属の問題にすぎなくなることは、まったく明瞭だとおもいます」(200-201頁)。そろそろこの講演から半世紀が過ぎようかとしている現在、『全南島論』の射程の遥かさに改めて驚きを禁じ得ません。

★高木さんは今月、もう一冊新刊を手掛けられています。17日取次搬入済、『川村湊自撰集』完結編となる第五巻「民族・信仰・紀行編」(作品社、2016年3月、本体2,800円、46判上製408頁、ISBN978-4-86182-518-7)です。帯文に曰く「アジア的風土への積年の執心と煩を恐れぬ綿密なフィールドワーク、行動の批評家の思索の核心をなす民俗学的・宗教的諸論考を選りすぐって集成」と。巻末の著者解題では、札幌の北海道立文学館に「川村湊文庫」が作られる予定であることが明かされています。そのためにもご自身の年譜を編む必要性があったとのことで、年譜作成のご苦労について「並大抵のものではない」「大変な作業」「膨大な手間暇」と吐露されています。作家が「あとは検索エンジンで検索するだけ」と言いうるような、すべての媒体が電子化される未来というものは果たしていつ到来するでしょうか。

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★ここ半年ほどの間に当ブログで言及する機会を逸していた新刊の一覧を書き起こしたいと思います。それなりの点数になるので、まずはその中でも特記しておきたい2点についてまず一言ずつ。

ユークリッドと彼の現代のライバルたち』ルイス・キャロル著、細井勉訳・解説、日本評論社、2016年1月、本体2,900円、A5判並製340頁、ISBN978-4-535-79803-8
アッティカの夜1』アウルス・ゲッリウス著、大西英文訳、西洋古典叢書/京都大学学術出版会、2016年1月、本体4,000円、四六変判上製492頁、ISBN978-4-87698-915-7

★『ユークリッドと彼の現代のライバルたち』の原書は、ルイス・キャロルが本名Charles Lutwidge Dodgsonの名義で上梓した幾何教育論「Euclid and His Modern Rivals」(Macmillan, 1879, 2nd ed., 1885)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。版元紹介文には「ユークリッドの幾何学を中学生にどのように教えるべきか、ルイス・キャロルが演劇台本の形を借りて縦横に論じる。初の日本語全訳」とあります。複数の登場人物が議論を交わす(登場人物の一人の夢の中ではユークリッドも登場する)という、ドラマ仕立てのユニークな教科書です。本書巻頭の、訳者による「前書き的な解説」や巻末の訳者略歴によれば、細井先生による訳注書『ルイス・キャロルのユークリッド論』が日本評論社さんより刊行予定だそうです。

★『アッティカの夜1』は「西洋古典叢書」2015年第6回配本(2016年全6点の配本は今年5月開始)。帯文に曰く「帝政期ローマの著述家ゲッリウスは、ギリシアに遊学して哲学を修めた人物。プルタルコスの友人に師事し、マルクス帝の師らとも交流をもった。本書は著者が若かりし頃、アテナイ滞在中に冬の長夜の無聊を慰めんがため、広範な文献を渉猟して蒐集した逸話や随筆から成り、後に散佚した作品からの引用も豊富。本分冊には、B・ショーによる戯曲化で有名な寓話なども含まれる。本邦初訳。(全2冊)」。ショーの戯曲とは「アンドロクレスと獅子」(1912年)で、1954年に映画化もされています。ゲッリウスの本では第5巻に「プレイストニケスの異名をもつ博学者アピオンが、ローマで見た、と記している、ライオンと人が、古い交情を思い出し、再び互いを認め合ったという話」として収録されており、月報に寄稿された西村賀子教授によればこの寓話は「ゲッリウスが遺した最も有名な遺産」として知られており、イソップ寓話の一つとしても数え上げられているとのことです。

★では最後に、上記2書以外の注目既刊書(単行本のみ、文庫本は除く)について、列記してみます。当然のことながらこれらが「すべて」ではなく、拾い切れていない書目がたくさんあるはずですが、いずれ思いがけず出会うこともあるのではないかと期待するほかありません。

『エラスムス神学著作集』金子晴勇訳、教文館、2016年3月、ISBN978-4-7642-1811-6
『エラスムス『格言選集』』金子晴勇編訳、知泉書館、2015年9月、ISBN978-4-86285-216-8
『ギリシア詞華集 2』沓掛良彦訳、西洋古典叢書/京都大学学術出版会、2016年3月、ISBN978-4-87698-916-4
『ギリシア悲劇名言集 新装版』ギリシア悲劇全集編集部編、岩波書店、2015年11月、ISBN978-4-00-061082-7
『ギリシア喜劇名言集』ギリシア喜劇全集編集部編、岩波書店、2015年11月、ISBN978-4-00-061081-0
『内乱記 (カエサル戦記集)』カエサル著、高橋宏幸訳、岩波書店、2015年10月、ISBN978-4-00-024173-1
『大山猫の物語』クロード・レヴィ=ストロース著、渡辺公三監訳、みすず書房、2016年3月、ISBN978-4-622-07912-5
『もっとも崇高なヒステリー者――ラカンと読むヘーゲル』スラヴォイ・ジジェク著、鈴木國文ほか訳、みすず書房、2016年3月、ISBN978-4-622-07973-6
『生の書物』J・クリシュナムルティ著、藤仲孝司ほか訳、UNIO、2016年3月、ISBN978-4-434-21796-8
『ブッダとクリシュナムルティ――人間は変われるか』J・クリシュナムルティ著、正田大観ほか訳、コスモス・ライブラリー、2016年3月、ISBN978-4-434-21760-9
『思考の限界――知性のまやかし』J・クリシュナムルティ+デイヴィッド・ボーム著、中野多一郎訳、創英社、2016年2月、ISBN978-4-88142-930-3
『デカルト全書簡集 第4巻 1640-1641』大西克智ほか訳、知泉書館、2016年3月、ISBN978-4-86285-227-4
『デカルト全書簡集 第8巻 1648-1655』安藤正人ほか訳、知泉書館、2016年2月、ISBN978-4-86285-226-7
『デカルト全書簡集 第6巻 1643-1646』倉田隆ほか訳、知泉書館、2015年12月、ISBN978-4-86285-226-7
『一流の狂気――心の病がリーダーを強くする』ナシア・ガミー著、山岸洋ほか訳、日本評論社、2016年2月、ISBN978-4-535-98426-4
『フランス・ルネサンス文学集 2 笑いと涙と』宮下志朗ほか編訳、白水社、2016年2月、ISBN978-4-560-08486-1
『徳と理性――マクダウェル倫理学論文集』ジョン・マクダウェル著、大庭健編・監訳、勁草書房、2016年2月、ISBN978-4-326-19968-6
『プラハの墓地』ウンベルト・エーコ著、橋本勝雄訳、東京創元社、2016年2月、ISBN978-4-488-01051-5
『爆弾のすきな将軍』U・エーコ作、E・カルミ絵、海都洋子訳、六耀社、2016年1月、ISBN978-4-89737-824-4
『火星にいった3人の宇宙飛行士』U・エーコ作、E・カルミ絵、海都洋子訳、六耀社、2015年11月、ISBN978-4-89737-820-6
『ドイツ的大学論』フリードリヒ・シュライアマハー著、深井智朗訳、未來社、2016年2月、ISBN978-4-624-93445-3
『評伝レヴィナス――生と痕跡』サロモン・マルカ著、斎藤慶典ほか訳、慶應義塾大学出版会、2016年2月、ISBN978-4-7664-2287-0
『他者のための一者――レヴィナスと意義』ディディエ・フランク著、米虫正巳ほか訳、法政大学出版局、2015年10月、ISBN978-4-588-01034-7
『プラトン『ソクラテスの弁明』注解』金子佳司編著、ピナケス出版、2016年2月、ISBN978-4-903505-16-9
『一五〇〇〇〇〇〇〇』マヤコフスキー著、小笠原豊樹訳、土曜社、2016年2月、ISBN978-4-907511-27-2
『仏の真理のことば註 ダンマパダ・アッタカター 2』ブッダ・ゴーサ著、及川真介訳註、春秋社、2016年2月、ISBN978-4-393-11332-5
『仏の真理のことば註 ダンマパダ・アッタカター 1』ブッダ・ゴーサ著、及川真介訳註、春秋社、2015年9月、ISBN978-4-393-11331-8
『これで駄目なら――若い君たちへ:卒業式講演集』カート・ヴォネガット著、円城塔訳、飛鳥新社、2016年1月、ISBN978-4-86410-408-1
『無底と意志−形而上学――ヤーコプ・ベーメ研究』薗田坦著、創文社、2016年1月、ISBN978-4-423-17158-5
『ルクリュの19世紀世界地理 第1期セレクション2 北アフリカ 第2部 トリポリタニア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、サハラ』エリゼ・ルクリュ著、柴田匡平訳、古今書院、2016年1月、ISBN978-4-7722-9007-4
『スクリブナー思想史大事典』10巻セット、Maryanne Cline Horowitz編、丸善出版、2015年12月、ISBN978-4-621-08961-3
『あなたが世界のためにできるたったひとつのこと――〈効果的な利他主義〉のすすめ』ピーター・シンガー著、関美和訳、NHK出版、2015年12月、ISBN978-4-14-081692-9
『神殿伝説と黄金伝説――シュタイナー秘教講義より 新装版』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖ほか訳、国書刊行会、2015年12月、ISBN978-4-336-05984-0
『虚無感について――心理学と哲学への挑戦』ヴィクトール・E・フランクル著、広岡義之訳、青土社、2015年12月、ISBN978-4-7917-6906-3
『商業についての政治的試論』ムロン著、米田昇平ほか訳、京都大学学術出版会、2015年12月、ISBN978-4-87698-883-9
『時ならぬマルクス――批判的冒険の偉大さと逆境(十九−二十世紀)』ダニエル・ベンサイド著、佐々木力監訳、未來社、2015年12月、ISBN978-4-624-01194-9
『フリーメーソン・イルミナティの洗脳魔術体系――そのシンボル・サイン・儀礼そして使われ方』テックス・マーズ著、宮城ジョージ訳、ヒカルランド、2015年11月、ISBN978-4-86471-326-9
『図説ユダヤ・シンボル事典』エレン・フランケル著、ベツィ・P・トイチ画、木村光二訳、悠書館、2015年9月、ISBN978-4-903487-91-5
『数学と裸の王様――ある夢と数学の埋葬 新装版(収穫と蒔いた種と)』アレクサンドル・グロタンディーク著、辻雄一訳、現代数学社、2015年10月、ISBN978-4-7687-0451-6
『ポリス的動物――生物学・倫理・政治』スティーブン・R・L・クラーク著、古牧徳生訳、春秋社、2015年10月、ISBN978-4-393-32343-4
『世界を変えるデザイン 2 スラムに学ぶ生活空間のイノベーション』シンシア・スミス編、北村陽子訳、英治出版、2015年10月、ISBN978-4-86276-170-5
『聞こえくる過去――音響再生産の文化的起源』ジョナサン・スターン著、中川克志ほか訳、インスクリプト、2015年10月、ISBN978-4-900997-58-5
『風立ちぬ――宮崎駿の妄想カムバック』宮崎駿著、大日本絵画、2015年10月、ISBN978-4-499-23167-1
『七つ星の宝石』ブラム・ストーカー著、森沢くみ子訳、アトリエサード、2015年9月、ISBN978-4-88375-212-6
『我々はどのような生き物なのか――ソフィア・レクチャーズ』ノーム・チョムスキー著、福井直樹ほか編訳、岩波書店、2015年9月、ISBN978-4-00-006227-5
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by urag | 2016-03-20 17:20 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 17日

重版出来:アガンベン『バートルビー』4刷

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
★高桑和巳さん(訳書:アガンベン『バートルビー』『思考の潜勢力』、共訳:クラウス+ボワ『アンフォルム』)
アガンベン『バートルビー 偶然性について [附]ハーマン・メルヴィル『バートルビー』』(高桑和巳訳、月曜社、2005年)の4刷が3月14日(月)にできあがりました。なお、高桑和巳さんのアガンベン論を集成した『アガンベンの名を借りて』が青弓社さんより来月下旬に刊行されます。


★ドリーン・マッシーさん(著書:『空間のために』)
3月11日(金)にご自宅で逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。オープン・ユニヴァーシティによる訃報「Doreen Massey, 1944-2016」、それを受けたマンチェスター・イヴニング・ニュース紙の訃報「Tributes after the death of geographer and acclaimed social scientist Professor Doreen Massey」などをご参照ください。マッシーさんは2014年3月に来日されています。既訳書には以下のものがあります。

ドリーン・マッシィ『空間的分業――イギリス経済社会のリストラクチャリング』富樫幸一・松橋公治訳、古今書院、2000年。
ドリーン・マッシー『空間のために』森正人・伊澤高志訳、月曜社、2014年。
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by urag | 2016-03-17 15:33 | 重版情報 | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 16日

「紙と印刷のフェア」@カネイリ・ミュージアムショップ6

せんだいメディアテーク(仙台市青葉区春日町2-1)の1Fにある「KANEIRI Museum Shop 6」では現在「紙と印刷のフェア」の後期が今週月曜日から始まっています。紙モノのメーカーの製品や出版社の書籍などに使用されている紙の特性や印刷加工技術に注目したユニークなフェアです。参加しているメーカーや出版社は以下の通り。

7 days cards、福永紙工、ララデザイン、赤々舎、朝日出版社、カラマリインク、月曜社、研究社、青幻舎、大福書林、竹尾、ナナロク社、パイ・インターナショナル、プランクトン、プチグラパブリッシング、ミシマ社、港の人、リトルモア、HeHe、ONE STROKE、TOTO出版、YK Publishing。

弊社からは『曽根裕|Perfect Moment』を出品。ブックデザインを手がけられたカラマリインクの尾中俊介さんが本の紹介文をお書きになっておられます。裏表紙をわざわざ破った加工が施されている真っ白な本で、店頭販売をしているお店はごく少数です。ネット書店でももう販売していませんので、この機会をぜひご利用いただけたら幸いです。フェアの会期は4月3日まで。3月27日(日)にはメディアテークとの協同イベント「活版印刷体験」が開催されるそうですがすでに定員いっぱいとのことです。

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いよいよ来週月曜日、福岡で皆さんにお目に掛かります。この激動期に出版とは何か、本を作ることと売ることについて、工藤さんや会場の皆さんと議論してみたいと念願しております。どうぞよろしくお願いいたします。

◎トークイベント「今、出版を続けるための方法

日時:2016年3月21日月曜日 15:00~17:00(予定)
場所:福岡パルコ新館6Fタマリバ6

ゲスト:
工藤 秀之(株式会社トランスビュー代表取締役)
小林 浩(有限会社月曜社取締役)

参加方法:
・フタバ図書福岡パルコ新館店レジカウンターにてチケットをご購入ください。
・席代 1,000円(税込) ドリンク1杯つき
・募集人数 30名(定員に達し次第終了させていただきます)

主催:フタバ図書福岡パルコ新館店(問い合わせ電話番号092-235-7488 担当:神谷)

内容:今大きな転換期を迎えている出版業界にあって、独自の方法をもって奮闘する出版社の経営者のお2人をお迎えし、業界の現状の徹底的な分析を踏まえた、“今、出版を続けるための方法”についての議論を行っていただきます。お2人は現在発売中の「ユリイカ2016年3月臨時増刊号『出版の未来』で 『構造変動期の出版流通と営業』というテーマで対談をなさっていますが、ここで語られた内容についてもさらに思考を深めていく試みになればと思います。業界関係者はもちろん、これから出版を目指す人、本を愛する日々を送る読者の皆様も必聴のイベントです。
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by urag | 2016-03-16 16:24 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 14日

哲学書房版『羅独-独羅学術語彙辞典』(1989年)

弊社で直販しております哲学書房さんの本を今後一点ずつご紹介いたします。まず最初は、もっともお問い合わせが多い『羅独辞典』から。

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羅独-独羅学術語彙辞典
麻生建+黒崎政男+小田部胤久+山内志朗編
哲学書房 1989年5月 本体24,272円 A5判函入上製797頁 ISBN4-88679-033-X

内容紹介:かつて思考の行為はラテン語を用いて、スコラの枠組の中で営まれていた。十八世紀に至ってドイツ語の学術語の形成が始まり、やがてカントを生むドイツ思想が自発する。この辞典は、こうして現れるドイツ語学術語とその元をなすラテン語とを当時の学術書から収集してコンピュータ処理を施したもの。哲学・神学・法学・数学・文法学等諸分野に亘る。

欧語書名:Onomasticon philosophicum latinoteutonicum et teutonicolatinum.

序文より:この学術語彙辞典の出典は、18世紀ドイツの哲学書が中心となっているが、収録している分野は以下の通りである。哲学(存在論・形而上学)、神学、論理学、倫理学、法学、美学、文芸学、解釈学、言語学、文法学、修辞学、数学(数論・幾何学)、自然哲学、占星術、心理学。特に哲学関係では、ヴォルフ、バウムガルテン、カントの主要著作のほとんどを網羅している。しかし、これで満足すべき状態に到達したわけではない。〔・・・〕この学術語彙辞典は私家版(第一版1986年9月、第二版1987年2月)を前身とし、そこでの蓄積を基礎にしている。

補足:『季刊哲学6号=生け捕りキーワード'89』の表紙にはデスクトップパソコン(エプソン製かもしれない)やシステムコンポ(ケンウッドのロゴが見える)らしきものと並んで『羅独辞典』が置かれている写真があしらわれている。目次の欄外には「表紙の写真は「生け捕りキーワード」が接続されるデータベース「羅独-独羅学術語彙辞典」(哲学書房)」とある。

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◎『羅独辞典』についてのネットでの反響

@maiky_booさん曰く 「おおお知らなんだ。18世紀ドイツ哲学を研究してる人間にとって哲学書房といったら、やっぱりオノマスティコンに尽きるよな。『羅独‐独羅学術語彙辞典』。あれはドイツの研究者も重宝がる、世界にも類を見ない名辞典」。また曰く「余談ですが、あれ丸善ジュンク堂では洋辞書にカテゴライズされるらしく、店頭在庫を電話で取り寄せるとき部署をたらい回しされて難儀した」。

@paragesさん曰く「今では入手困難な貴重な辞典だが、今こそコンピュータ処理に使ったデータを戻して電子書籍として再版して欲しい。。「…ドイツ語学術語とその元をなすラテン語とを当時の学術書から収集してコンピュータ処理を施した…」『羅独-独羅 学術語彙辞典』」。

@crepuscule1976さん曰く「池袋のジュンク堂に寄ったら、哲学書房のフェアをやっており、『羅独-独羅 学術語彙辞典』があったので即買いした。お値段は度外視」。

@pliselonpliさん曰く「すさまじい辞書が編纂されていたものだ:哲学書房版『羅独-独羅学術語彙辞典』(1989年)」。

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◎「季刊哲学」「季刊ビオス」「羅独辞典」を直販いたしております

月曜社では哲学書房(2016年1月31日廃業)様から引き取った一部の出版物の在庫品を、直販にて読者の皆様にお分けしております。「季刊ビオス2号」以外はすべて、新本および美本はなく、返本在庫であることをあらかじめお断りいたします。「読めればいい」というお客様にのみお分けいたします。いずれも数に限りがございますことにご留意いただけたら幸いです。

季刊哲学0号=悪循環 (本体1,500円)
季刊哲学2号=ドゥンス・スコトゥス (本体1,900円)
季刊哲学4号=AIの哲学 (本体1,900円)
季刊哲学6号=生け捕りキーワード'89 (本体1,900円)
季刊哲学7号=アナロギアと神 (本体1,900円)
季刊哲学9号=神秘主義 (本体1,900円)
季刊哲学10号=唯脳論と無脳論 (本体1,900円)
季刊哲学11号=オッカム (本体1,900円)
季刊哲学12号=電子聖書 (本体2,816円)
季刊ビオス1号=生きているとはどういうことか (本体2,136円)
季刊ビオス2号=この私、とは何か (本体2,136円) 
羅独-独羅学術語彙辞典 (本体24,272円)

※哲学書房「目録」はこちら
※「季刊哲学12号」には5.25インチのプロッピーディスクが付属していますが、四半世紀前の古いものであるうえ、動作確認も行っておりませんので、実際に使用できるかどうかは保証の限りではございません。また、同号にはフロッピー版「ハイパーバイブル」の申込書も付いていますが、現在は頒布終了しております。

なお、上記商品は取次経由での書店への出荷は行っておりません。ご注文は直接小社までお寄せ下さい。郵便振替にて書籍代と送料を「前金」で頂戴しております(郵便振替口座番号:00180-0-67966 口座名義:有限会社月曜社)。送料については小社にご確認下さい。後払いや着払いや代金引換は、現在取り扱っておりません。

小社のメールアドレス、電話番号、FAX番号、所在地はすべて小社ウェブサイトに記載してあります。
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by urag | 2016-03-14 11:40 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2016年 03月 14日

備忘録(26)

◆2016年3月14日午前10時現在。
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◆3月15日午前10時現在。
ついにこの時が来ました。太洋社國弘社長名で取引出版社、取引書店宛に3月15日付「ご報告とお詫び」全3枚のFAXです。経緯の説明が長いですが、3枚目に「もはや万策が尽きたものとして、自主廃業を断念し、この度、本日の午前10時をもって東京地方裁判所に対し破産申立をするに至ったことをご報告申し上げます」と。

「帝国データバンク」3月15日付大型倒産情報「中堅の出版取次業者/続報、出版取次業界では過去2番目の大型倒産/株式会社太洋社/破産手続き開始決定受ける/負債76億2900万円」に曰く「(株)太洋社(資本金1億8000万円、千代田区外神田6-14-3、登記面=中央区銀座2-2-20、代表國弘晴睦氏、従業員100名)は、3月15日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日同地裁より破産手続き開始決定を受けた」。「その後の資産精査により書店からの売掛金回収が当初想定通りに進まない可能性が高まるなか、主要販売先の(株)芳林堂書店(東京都豊島区)が2月26日に破産手続き開始決定を受けたことで同社に多額の不良債権が発生。その後、8割超の書店で帳合変更のメドが経ったことで、3月1日には今後の取次業務の停止方針を取引先に対して通知していた。〔・・・〕なお、出版取次業者の倒産では栗田出版販売(株)(負債133億8200万円)に次いで過去2番目の負債額」。

「東京商工リサーチ」3月15日付速報「[東京] 出版取次ほか/(株)太洋社/破産開始決定負債総額76億2964万円~自主廃業方針から一転、破産~」に曰く「2月5日、自主廃業の準備に入っていたことを公表していた(株)太洋社(千代田区外神田6-14-3、登記上:中央区銀座2-2-20、設立昭和28年8月、資本金1億8000万円、國弘晴睦社長)は3月15日、東京地裁へ破産を申請し同日開始決定を受けた。破産管財人には深山雅也弁護士(深山・小金丸法律会計事務所)が選任された。/負債総額は76億2964万円(平成28年6月期中間決算時点)だが、変動する可能性がある」。「大口取引先の(株)芳林堂書店(豊島区西池袋3-23-10、設立昭和23年3月20日、資本金2000万円、齋藤聡一社長)が2月26日、東京地裁へ破産を申請したことで、約8億円の焦付が確定した。また、廃業を除き、96.5%の帳合変更が完了したが、約2億円の帳合変更に伴う未回収が生じ、万策尽きたことから自主廃業を断念し、破産を申請した」。

おさらい。「東京商工リサーチ」3月7日付速報「[東京] 書店経営/(株)S企画(旧:(株)芳林堂書店)/破産開始決定負債総額20億3535万円~破産申立書の内容が判明~」に曰く、「申立書によると、過去において事業多角化を目的に語学や飲食業に参入したものの、これら投資の一部が不良資産化し有利子負債が増加した。また、本業である書店事業も苦戦を強いられ、〔・・・〕売上高が〔・・・〕減少。資金繰りが次第に悪化したため、主力取引先で取次業者の(株)太洋社(千代田区)に対する支払いの繰り延べを要請して凌いだものの、これに伴い太洋社からの仕入報奨金(売価ベースで1.8%)を受け取ることが出来なくなり、利益率がさらに悪化。28年1月には、太洋社が求めていた額の56%程度しか支払いをすることが出来なかったことから、商品の納入が停止される事態となり、自力での店舗の運営が困難になった。/店舗運営の継続に向け交渉を重ねた結果、2月23日に、(株)アニメイト(板橋区)のグループ会社の(株)書泉(千代田区)との間で、書店・外商事業について譲渡対価約1億4800万円で事業譲渡契約を締結するに至った。〔・・・〕「債権者一覧表」における最大の債権者は太洋社〔・・・〕」。

それぞれの速報は細部が大事なので、ぜひ全文をリンク先でお読みください。

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◆3月15日午前11時現在。
太洋社の自主廃業が難しいだろうことはおおよそ予想の範囲だったとしても、芳林堂の推移については具体的な実情が今般判明したわけで、これが呼び起こす信用不安は当然、芳林堂以外の書店チェーンへの疑いの目として波及することになるものと思われます。取次による書店チェーンの子会社化に限界があるとすれば、帳合変更組も含めて、日販、トーハン、大阪屋栗田を利用している書店は、支払いが厳しいお店から順次切り捨てられていく可能性があるのかもしれません。たとえ支払いがきちんとできていても、街ナカの小書店に対する物流は昨今省力化される傾向にある、との証言も耳にします。この先数年は、書店・取次・版元の三者いずれにとっても、いっそう厳しいサバイバル状況に突入することになるのは間違いありません。取次が総量規制以上の何らかの施策を打ち出すことになるとしても不思議ではないと言えますし、パターン配本を行っている版元は全面的に配本先を見直さざるをえないでしょう。今まで以上に版元は書店の動向に敏感になり、問題ありと見れば出荷停止も辞さないでしょう。こんなにも体力の弱り切った状態下では、率直に言えば、再販制撤廃や委託制廃止(買切制への完全移行)はカンフル剤としては強烈すぎて業界全体の死を早めるだけではないかと懸念されます。

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◆3月15日正午現在。
この業界はいったん焼野原にならないかぎり生まれ変われない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、私はそうした議論には与するつもりはありません。輝かしい新天地を展望する前に失うものの大きさについて数えることができなければ、それは単なる破壊主義であり、ニヒリズムにすぎません。ただし、再販制や委託制の是非や評価については積極的かつ柔軟に広く議論すべきであることは言うまでもありません。異なる利害を持つ者同士が話し合うのですから、最初から「対立」だけがクローズアップされても不毛なだけです。問題なのは、同じ書店業であっても、また同じ取次業、出版業であっても、異なる利害が明白であるがゆえに「議論しないまま水面下で争いを続ける」ことがこの期に及んで有効なのかどうか、というものです。

業界よ、ひとつになれ(団結せよ)と言っているのではありません。ただ、先の栗田事案ではっきりしたのは、版元同士が出版ジャンルを超えて語り合えるという思いがけない発見があったこと、そして、会社同士の団結や一致が難しいにもかかわらず、個人レベルでは様々なネットワークができあがる兆しもあったということです。危機が招来した新しい地平というものがあったとするならば、敢えてリアリズムに徹して言えば、「全員が生き残ることはできないかもしれないけれど、私たちが生きた証しと知恵と技術を精一杯残すために、バトンを渡し合い、リレーしていこう」ということです。私たち出版人はけっして孤独ではなかった。独りきりで呆然とする夜すら実は「大勢」であった。まだ見ぬあなたへと向かう一筋の光の矢であった。あなたへと降り注ぐ涙の雨であった。あなたの背中を押す、諦めの悪い一陣の風であった。あなたへの。私の。私たちの。

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◆3月15日19時現在。
太洋社トップページに、破産手続開始の申し立ての挨拶文あり。版元・書店向けの「ご報告とお詫び」もPDFファイルで公開されています。太洋社破産の報道で、この「ご報告とお詫び」を元にした記事には以下のものがあります。
「新文化」3月15日付記事「太洋社、破産手続き開始決定受ける
「産経ニュース」3月15日付記事「出版取り次ぎ「太洋社」が破産 芳林堂の売掛金回収困難
「クリスチャントゥデイ」3月15日付「太洋社が破産、出版取次中堅 昨年末時点で負債76億3千万円

また、TDB(コメント欄付ヤフーニュース版)やTSRの速報に準拠した記事は以下の通り。
「ITmediaニュース」3月15日付速報記事「取次中堅の太洋社、破産決定 芳林堂書店の倒産で8億円焦げ付き」(コメント欄付ヤフーニュース版
「ねとらぼ」3月15日付記事「「万策尽きた」 出版取次業者の太洋社が自主廃業から一転して破産へ」(コメント欄付ヤフーニュース版
「読売新聞」3月15日付記事「中堅出版取次「太洋社」、破産手続き開始決定」(コメント欄付ヤフーニュース版
「時事通信」3月15日付記事「太洋社が自己破産=出版取り次ぎ、負債76億円」(コメント欄付ヤフーニュース版
「ハフィントン・ポスト」3月15日付、安藤健二氏記名記事「太洋社が破産。芳林堂書店の自己破産で8億円が焦げ付く
「BIGLOBEニュース」3月15日付記事「コミックの太洋社、自主廃業を断念し破産 負債総額76億円
「文化通信」3月15日付記事「太洋社、東京地裁が破産手続き開始決定

さらに、TSR(東京商工リサーチ)の「データを読む」欄3月15日付記事「太洋社に連鎖した書店の倒産・休廃業調査」では太洋社事案に連鎖して倒産・閉店・休業した書店の判明分一覧が記載されるとともに、「苦境の出版社、取次、書店」と題した次節ではグラフ「出版業の倒産 年次推移」(1996~2015年)を掲出しつつ、「太洋社は、3月1日に通知した「ご報告とお願い」の中で、同日までに帳合変更の目途がたっていない書店について「(当該書店の)財務状況、その他の事情」があると記している。このため、3月15日現在も帳合変更が出来ていない書店を中心に、店舗の閉鎖や休業、倒産がさらに拡大することも危惧される。/このままでは地域に書店が一店舗もない「書店空白エリア」が拡大する恐れがある。取次業者のパイの奪い合いのしわ寄せは、地域書店と地方の読者が受けることになる」と懸念を表明しています。また、太洋社と芳林堂の関係性については「太洋社の自主廃業に向けた動きから破産の流れは、芳林堂書店の支払い遅延が大きな要因になったとの見方もできる。ただし、出版取次は通常の卸売業と異なり、書店に対する流通やファイナンス機能も兼ね合わせている。ファイナンスでは与信管理が極めて重要な要素だ。取引の戦略上、ある程度の債務履行の延滞を認めざるを得ないケースもあるが、自社の資金繰りに致命傷を与えるまで引き延ばすことは経営判断のミスとの指摘もある」と言明しています。これは先日の日経新聞有料記事が両社のもたれ合いを指摘したのと同様に、傾聴すべき賢明な分析だと言えるでしょう。

また、元業界人で現在はIT企業に勤務されているという方がこんな鋭いことをツイートされています。「芳林堂の焦げ付きがやはり大きかったのか。こういった隠れ不良債権を全書店について精査すると、日販トーハンですら危ないかもしれない」。この悪い予感はおそらく多くの現役出版人が共有するものです。大手書店チェーンも例外とは思われてはいないでしょう。

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◆3月16日19時現在。
太洋社破産のその後の報道は以下の通りです。

「日本経済新聞」3月15日付記事「出版取次の太洋社、破産手続き開始
「朝日新聞」3月15日付記事「出版取り次ぎの太洋社が自己破産申請 負債総額76億円
「マイナビニュース」3月16日付記事「太洋社が破産決定、書店に影響は?
「ITmediaニュース」3月16日付記事「太洋社に連鎖、書店14社が休廃業 東京商工リサーチ調査」(コメント欄付ヤフーニュース版
「THE PAGE」3月16日付記事「中堅出版取次の太洋社が破産、出版業界独特の業態「取次」って何?」(コメント欄付ヤフーニュース版

日経や朝日の記事はごくあっさりしたもので、扱いの小ささに寂しくなります。本の世界にコミットしている記者がいるのにもったいないことですが、記者がいるかどうかよいうよりは、日経や朝日の基準からすれば小さな出来事なのでしょう。それにしても朝日は産経ニュースと同じように「取次」を「取り次ぎ」と書いていて、業界人からはいささか失笑を買っているようです。

「マイナビニュース」や「ITmediaニュース」続報は東京商工リサーチの「データを読む」欄記事を受けてのものが、「マイナビ」の方は記事末尾にTSR当該記事には掲出されていなかった「2015(平成27)年出版業 従業員数別倒産状況」と「2015(平成27)年 主な「出版業」の倒産」の一覧を添付していて参考になります。50人以上の出版社の倒産が昨年度はない一方で、5人以上50人以下の中小規模の倒産がちらほら、そして4人までの零細版元は中小の倒産を合わせた数の倍以上の会社が倒産していることが窺えます。後者の一覧を見ると倒産原因のほとんどは「販売不振」です。トップに掲出されている美術出版社の倒産原因は過小資本で、民事再生法を適用、CCCのグループ会社である「カルチュア・エンタテインメント株式会社」をスポンサーに向えたことは周知の通りです。昨年7月30日付プレスリリース「ARTの出版社から、ARTで動かす会社へ! 美術出版社が生まれ変わります。カルチュア・エンタテインメントをスポンサーに迎え、8月1日より始動」に曰く「美術出版社は、今後、これまでの出版事業、編集・制作事業を軸としながら、蔦屋書店をはじめ、TSUTAYA店舗との協働によるイベント開催、Tポイントのデータベースを活用したマーケティング・サービスなど、CCCグループのリソースとの連携をおこなっていきます。/また、ART をあつかう企画・提案型企業としての事業領域を広げるため、他業種との業務提携も予定しています」と。

「THE PAGE」記事は一般読者にはなじみの薄い「取次業」についての概要説明となっています。「いわば返品ができる「卸」」「書籍は典型的な多品種少量生産」「取次を中抜きするケースも」といった構成。第二節目に曰く「例えば標準的なコンビニには2500~3000点ほどの商品があるといわれていますが、同じ売り場面積の書店には2万冊を超える本が置いてあります。よほど売れている本でなければ、同じ題名の本が何冊も置いてあるわけではありませんから、書籍がいかに多品種少量生産であるかが分かると思います」。「〔零細〕書店は在庫リスクを抱える余裕がありません。このため出版業界では、出版社が大きなリスクを負う代わりに利益は大きく、一方、取次や書店はリスクが少ない分、利益も少ないという構図に落ち着いたわけです」と。実際のところ、返品は取次や書店にとってもリスクではあります。返品が少ない方がいいには決まっていますが、かと言ってすべての新刊を取次や書店が買い切るのは無理です。春樹新刊の紀伊國屋書店による買取はいまだに例外に属するものです。

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by urag | 2016-03-14 10:28 | 雑談 | Trackback | Comments(0)