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2015年 12月 31日

2015年の月曜社の出版物

弊社は2015年12月7日で創業満15周年を迎え、16年目の営業へと突入いたしました。今年一年の皆様のご愛顧に深く御礼申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

◎2015年出版

自社発行
02月06日:ジョルジョ・アガンベン『到来する共同体 新装版』本体1,800円【イタリア現代思想】
03月06日:C・L・R・ジェームズ『境界を越えて』本体3,000円【カルチュラル・スタディーズ】
03月27日:阿部将伸『存在とロゴス』本体3,700円、シリーズ古典転生第11回配本本巻10【哲学】
04月01日:『猪瀬光全作品』本体9,000円【写真】
04月10日:フィリップ・ソレルス『ドラマ』本体2,400円、叢書エクリチュールの冒険第9回配本【仏文】
07月22日:ヴェルナー・シュスラー『ヤスパース入門』本体3,200円、シリーズ古典転生第12回配本本巻11【哲学】
10月09日:森山大道『犬と網タイツ』本体3,500円【写真】
11月30日:B・シュティーグラー『写真の映像』本体3,400円、芸術論叢書第3回配本【写真論】

自社重版
05月12日:ジュディス・バトラー『権力の心的な生』2刷
06月02日:ジョルジョ・アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』7刷

発売元請負
04月14日:『表象09:音と聴取のアルケオロジー』本体1,800円【人文・思想】

製作請負
12月07日:『コムニカチオン 第22号』日本ヤスパース協会【哲学】

以上、自社本8点、重版2点、発売元請負1点、製作請負1点でした。16期目も出版事業に全力を尽くします。どうぞよろしくお願いいたします。
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by urag | 2015-12-31 10:15 | ご挨拶 | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 28日

備忘録(15)

◆2015年12月28日13時現在。

太洋社の年末年始業務について。

2015年12月28日(月)午前11:30まで【仕入窓口業務最終日】
2015年12月29日(火)平常営業【仕入窓口業務なし】
2015年12月30日(水)~2016年1月4日(月)【社休日】
2016年01月05日(火)平常営業【仕入窓口業務なし】
2016年01月06日(水)平常営業【仕入窓口業務開始日】

以上。
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by urag | 2015-12-28 13:41 | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 27日

注目新刊:『ニュクス』第2号、ほか

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ニュクス』第2号、堀之内出版、2015年12月、本体1,800円、A5判並製312頁、ISBN978-4-906708-69-7
イナンナの冥界下り』安田登著、ミシマ社、2015年12月、本体1,000円、四六判並製角丸96頁、ISBN978-4-903908-70-0
新訳 弓と禅――付・「武士道的な弓道」講演録』オイゲン・ヘリゲル著、魚住孝至訳・解説、角川ソフィア文庫、2015年12月、本体800円、文庫判237頁、ISBN978-4-04-400001-1
ヘーゲルからニーチェへ――十九世紀思想における革命的断絶(上)』レーヴィット著、三島憲一訳、岩波文庫、2015年12月、本体1,440円、文庫判並製672頁、ISBN978-4-00-336932-6
中世と貨幣――歴史人類学的考察』ジャック・ル=ゴフ著、井上櫻子訳、藤原書店、2015年12月、本体3,600円、四六上製328頁、ISBN978-4-86578-053-6
スパム[spam]――インターネットのダークサイド』フィン・ブラントン著、生貝直人・成原慧監修・解説、松浦俊輔訳、河出書房新社、2015年12月、本体2,400円、46判並製336頁、ISBN978-4-309-24744-1
エトワール広場/夜のロンド』パトリック・モディアノ著、有田英也訳、作品社、2015年12月、本体1,900円、46判並製196/76頁、ISBN978-4-86182-552-1

★『ニュクス』第2号は「ドイツ観念論と理性の復権」「恋愛論」の特集二本立て。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。哲学の最前線をめぐって、ガブリエル/ジジェク『神話・狂気・哄笑』(堀之内出版、2015年11月)、『ニュクス』第2号(堀之内出版、2015年12月)、『現代思想』2016年1月号「特集=ポスト現代思想」(青土社、2015年12月)、メイヤスー『有限性の後で』(人文書院、2016年2月)、『ゲンロン2』(ゲンロン、2016年3月;千葉雅也氏特別対談収録)と、知的刺激に満ちた論戦含みの怒涛の新刊攻勢が来春まで続きます。こうしたコンスタントな流れは近年珍しいですから、書店店頭への追い風になればいいなと思います。

★『イナンナの冥界下り』はシリーズ「コーヒーと一冊」の第4弾。先月文庫化された『シュメール神話集成』(ちくま学芸文庫)にも収録されている「イナンナの冥界下り」の新訳を核に、安田さんが豊かに神話を読み解かれ、現代へと蘇らせておられます。執筆・編集・造本の妙がこれほどまで巧みに寄り合わさって読者に対する愛情へと昇華しているのを視覚や触覚を通じてまじまじと実感できる本は、さほど多くはないのではないかと思います。実に見事です。投げ込みの四つ折「くじら通信」に掲載されている「「コーヒーと一冊」について」はミシマ社さんの戦略が端的に記されていて非常に説得力があります。

★『新訳 弓と禅』は、『日本の弓術』(岩波文庫)として知られるヘリゲルの講演「武士道的な弓道」の新訳と、それに続く『弓と禅』(福村出版)の新訳をカップリングしたもの。ロングセラーを再び味わうのに最適な一冊です。今年は著者ヘリゲルの没後60年に当たるのだとか。旧訳本でもそうでしたが、私は講演で語られている、弓の師匠による暗闇の中の二射的中のくだりを読むたび、感銘を新たにし、深くします。日本文化における最も奥深い何ものかを私たちはこのドイツ人哲学者から何度でも学び続けるでしょう。

★フッサールに捧げられたレーヴィットの大著『ヘーゲルからニーチェへ』(原著初版1941年、今回の底本は1986年刊第9刷)はかつて、ヘリゲル『日本の弓術』を訳した柴田治三郎さんによる翻訳が半世紀以上前の1950年代にに岩波現代叢書で全2巻本で刊行されたことがあります。今回の新訳では上巻には第一部「十九世紀における精神の歴史」のほか、「初版の序文」「第二版の序文」を収録。凡例によれば続刊予定の下巻に付録として「初版との異同」を掲げるとのことです。

★『中世と貨幣』の原書は、Le Moyen Âge et l'argent (Perrin, 2010)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。序にはこうあります。「本書で取り上げる主要テーマは二つある。一つは、中世の経済、生活、心性において貨幣というもの、あるいはむしろさまざまな貨幣がいかなる境遇にあったか、ということ。そしてもう一つは、宗教が支配的な社会の中で、キリスト教徒としてあるべき貨幣に対する態度やその使い道について、キリスト教がどのように考え、それを説いていたか、ということである」(14頁)。多くの訳書があるル=ゴフですが、初訳は1977年の岩波新書でした(『中世の知識人――アベラールからエラスムスへ』)。

★『スパム』の原書は、Spam: A Shadow History of the Internet (MIT Press, 2013)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。デジタルメディアをめぐる技術史と技術論が専門のフィン・ブラントンは本書が単独著デビュー作で日本語訳としても初めての本になります。これまでの業績については著者自身によるウェブサイトをご参照ください。帯文に曰く「情報工学、国際法、経済、複雑系科学、地政学などを駆使して分析する、ネットの裏側の歴史」と。著者はスパムをこう定義します。「スパムとは情報テクノロジー基盤を利用して、現に集積している人間の注目を搾取することである」(277頁)。カバーを剥ぐとスパムメールがあしらわれている表紙があらわになります。デザインは『表象』や『ゲンロン』などを手掛ける加藤賢策さんです。

★今年は一方で、ジェイミー・バートレット『闇〔ダーク〕ネットの住人たち――デジタル裏世界の内幕』(星水裕訳、鈴木謙介解説、CCCメディアハウス、2015年8月)のような、ネットのまさにダークな(犯罪的な)側面を紹介する新刊も翻訳されました。日本語文献はまだ多くありませんが、危険な誘惑に満ちた「dark web」を巡る啓蒙書は増えてくるのではないかと思われます。

★『エトワール広場/夜のロンド』は、モディアノのデビュー作La Place de l'Étoile (Gallimard, 1968)と、第2作 La ronde de nuit (Gallimard, 1969)の、2つの初訳を1冊にまとめたものです。周知の通りモディアノは昨年、ノーベル文学賞を受賞しており、ナチス占領下のパリの群像を描いたデビュー作が「記憶の芸術」として改めて評価されたのでした。巻末には詳細な解説と地図、訳注が付されています。今年2015年はモディアノの訳書が本書を含め合計6冊も刊行され、たいへん賑わいました。いずれも評価が高く、安定感抜群といったところでしょうか。
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by urag | 2015-12-27 00:26 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 25日

備忘録(14)

◆2015年12月25日11時現在。
「新文化」12月24日付記事「東京地裁、栗田の再生計画案を認可決定」に曰く「投票社851人のうち806人が賛成、賛成票が88.94%と圧倒した。来年1月末までに不服申立てがなければ認可される」と。賛成以外に道がないという苦々しさが見え隠れしているように感じます。

一方、筑摩書房「INFORMATION & TOPICS」ブログの12月24日付エントリー「朝日新聞平成27年12月24日朝刊の記事について」は、「朝日新聞」2015年12月24日付の塩原賢氏・竹内誠人氏記名記事に対する同社の見解を代表取締役・山野浩一さんが示したものです。ポイントは3点。1)当社の読者謝恩価格本セールに「アマゾンジャパンも参加した」というのが事実。2)「読者謝恩価格本セール」は事前に業界紙などを通して全国の書店様に等しく告知し参加を募ったもの。3)「謝恩価格本セール」は再販売価格維持制度の弾力的運用の一つである「時限再販」の一形態であり、「再販を護持するための方策の一つであると理解し、小規模ながら率先して実施して」いるもの。また「あらためて当社へきちんと取材をしたうえで、より正確な記事をなるべく早い段階で掲載するよう、強く要請」したとのことです。朝日新聞が記事作成にあたって筑摩書房に事前に取材しなかったのかどうか。していなかった可能性が疑われます。「朝日新聞より、冒頭の要請に対する返答が届き次第、この場でまた、みなさまにご報告させていただきます」とのことなので、事態の推移を注視している業界人は多いでしょう。

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by urag | 2015-12-25 11:30 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 22日

Happy Holidays





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by urag | 2015-12-22 12:00 | ご挨拶 | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 19日

注目新刊:批評誌『ゲンロン』創刊、ほか

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ゲンロン1 特集=現代日本の批評
東浩紀編
ゲンロン 2015年12月 本体2,300円 A5判並製276+E16頁 ISBN978-4-907188-12-2

★発売済。目次詳細や入手方法については誌名のリンク先をご覧ください。書店向けの内容紹介文に曰く「批評誌『ゲンロン』新創刊!『思想地図β』のゲンロンが、2年の沈黙を破り、この秋より年3回批評誌を刊行します。/特集:現代日本の批評……創刊号特集は『季刊思潮』『批評空間』を受けた大型企画「現代日本の批評」。東浩紀・大澤聡・市川真人・福嶋亮大の4人が1975年から1989年までの批評史を語り尽くします。佐々木敦・安藤礼二も論文で参加。大澤渾身の制作の折込年表は必見!」と。

★東さんによる「創刊にあたって」は東さんの現在の立ち位置を端的に示すもので、71年~81年生まれの四氏による共同討議「昭和批評の諸問題 1975-1989」はこの世代の歴史認識を明確にしています。また、巻頭の鈴木忠志さんと東さんの対談「演劇、暴力、国家」はゲンロンカフェの意義を明かす内容ともなっています。おそらく世代が違ったり異なる文化的背景を持っていれば別の現況認識や歴史記述が生まれるでしょうから、それぞれのコンテンツには賛否両論があるのでしょうけれども、新たに磁場=媒体を立ち上げる苦労を厭わず、特集や討議などを通じて一視角を打ち出し、啓蒙的であることを恐れない姿勢に共感を覚えます。これらはこんにちではすべて面倒臭い作業と思われているであろうことだからです。

★一般書店で同誌を扱っているのは、オンラインではアマゾンと楽天ブックス、リアル書店では紀伊國屋書店、青山ブックセンター、丸善/ジュンク堂書店、ブックファースト、三省堂書店、有隣堂書店、リブロ/パルコブックセンター、大垣書店、戸田書店、といったチェーンのほか、個別の店舗では東京大学生協駒場書籍部、ちくさ正文館、スタンダードブックストア、ブックスキューブリックなど。書店への案内によれば「『ゲンロン』の委託販売は特約店に限定させていただいています。特約店以外のみなさまには、買切でのご注文をお願いしています(1冊より、送料別。5冊以上は送料弊社負担)。卸正味70%」とのことです。

★なお、来年2月には東さんによる書き下ろし/語り下ろし作『観(光)客の哲学』が「ゲンロン0」として発売予定とのことです。さらに3月予定の「ゲンロン2」ではメイン特集「慰霊の思想(仮)」が予定されているほか、共同討議の続編と思われる「現代日本の批評2(平成批評の諸問題 1989-2001)」や、千葉雅也さんが思弁的実在論を語る特別対談などが掲載されるそうです。

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★また、まもなく以下の新刊が店頭発売開始と聞いています。

吉本隆明全集11[1969‐1971]』晶文社、2015年12月、本体6,500円、A5判変型上製640頁、ISBN978-4-7949-7111-1
戦略とスタイル 増補改訂新版』津村喬著、高祖岩三郎解説、航思社、2015年12月、本体3,400円、四六判上製360頁、ISBN978-4-906738-14-4
1945 予定された敗戦――ソ連進攻と冷戦の到来』小代有希子著、人文書院、2015年12月、本体3,500円、4-6判上製372頁、ISBN978-4-409-52062-8
貧困大国ニッポンの課題――格差、社会保障、教育』橘木俊詔著、人文書院、2015年12月、本体1,700円、4-6判並製216頁、ISBN978-4-409-24105-9

★『吉本隆明全集11[1969‐1971]』は12月19日発売予定。第8回配本となる第11巻には「大学紛争をひとつの背景とする『情況』と、国家の思想としての天皇および天皇制論、そして重要な講演「南島論」」などを収録、と帯文にあります。「〈書物〉を著述するもの書きとしてのわたしが、いちばん大切にかんがえている声や視線は、けっしてわたしの〈書物〉を読まない人々の声や視線である」(584頁)という「書物の評価」の一節が個人的に印象に残ります。届かない人々、不可視の人々への畏怖。付属の「月報8」は、磯崎新さんによる「「東京原人」吉本隆明」と、ハルノ宵子さんの「でたらめな人、文を書く」(『midnight press』第8号より再録)が掲載されています。次回配本は第12巻、来年3月刊行予定とのことです。なお、他社の近刊になりますが、吉本さんの南島論に関連する論考をまとめた『全南島論』が作品社さんより来年2月刊行と予告されています。予価5,000円。

★津村喬『戦略とスタイル 増補改訂新版』は12月22日取次搬入予定。シリーズ「革命のアルケオロジー」の第4弾です。親本は田畑書店、1971年刊。当時津村さんは弱冠23歳、わずか1ヶ月で書き下ろしたという伝説の本です。同書についての回想を津村さんのブログ記事「戦略とスタイル その1」(「津村喬の気功的生活」2012年7月4日付)で読むことができます。今回発売される増補改訂新版では巻頭に「新版まえがき」を置き、新版補遺として「風俗と文化の革命――日本民俗学批判の実践的諸前提」が追加され、「あとがき」では旧版のそれに続いて「新版追記」が足され、巻末には高祖岩三郎さんによる長文解説「「遥か彼方からの通信〔コミュニケ〕」をいま読むために」が配されています。「新版まえがき」にある「本書は、国家を離脱した人にこそ読んでほしい本です。まだそこまでいかずとも、意識の上で離脱した人々に」(23頁)という呼びかけが鮮烈です。同シリーズでは津村さんの新著『横議横行論――名もなき人々による革命』が続刊予定と記載されています。

★人文書院さんの新刊2点、小代有希子『1945 予定された敗戦』と橘木俊詔『貧困大国ニッポンの課題』はともに12月18日取次搬入済で、すでに書店店頭に並び始めているようです。両書とも目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。前者は、著者のImperial Eclipse: Japan's Strategic Thinking about Continental Asia before August 1945 (Cornell University Press, 2013)を著者自身が日本語で書きなおしたもののようです。日本語の単著としては本書が初めてのものになります。アメリカによる「太平洋戦争史観」の克服を企図する試みで非常に興味深いです。「正体がつかめないものは、終わらせることはできないし、その遺産を処理することもできない」(25頁)という著者の鋭い指摘が胸に響きます。長らく海外で教鞭を執られ、2006年からは日大国際関係学部教授をおつとめの小代さんの業績はご自身の公式ウェブサイトに詳しく、本書についても言及されています。

★橘木俊詔『貧困大国ニッポンの課題』は「日本はすでに貧困大国だ。しかし、消費増税による社会保障と教育改革で再生する!」と帯にあって、一見すると人文書院さんのこれまでの本のキャッチコピーにはなかったような空気感があるのですが、同社では橘木さんの共著書を2点刊行しています。『貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか』(山森亮共著、2009年)、『来るべき経済学のために』(根井雅弘共著、2014年)です。帯文の意味するところは巻頭の「序 「脱成長」から福祉国家の構築へ」でも明らかですが、橘木さんは日本が福祉国家になるための財源を「消費税で賄うしかない」(3頁)とする立場で、詳しくは本書第II部「福祉」で詳しく論じられています。消費税に懐疑的だというピケティさんとのやりとりも序で簡単に紹介されています。なお生活必需品については橘木さんは課税なしや軽減税率が不可欠とのご見解です。
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by urag | 2015-12-19 22:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 18日

備忘録(13)

◆2015年12月18日14時現在。
日本出版者協議会(出版協)が12月16日付で声明「アマゾンによる出版社直取引(e託取引)の勧誘に対する声明」を発表し、「新文化」12月16日付記事「出版協、アマゾン「e託」勧誘に関する声明」でも取り上げられています。栗田事案以後活発化しているように見えるアマゾンの出版社向け「売り伸ばしセミナー」は実際には直取引勧誘のプレゼンテーションであったわけですが、声明ではアマゾンの提示した条件を明かしながら、改めてアマゾンが再販制を尊重していないことに対し警鐘を鳴らしつつ、一方で大手取次が新しい出版社との口座開設に消極的である様子を指摘しています。声明で示された業界分析には興味深いものがあり、業界人必読かと思われます。

声明には「今回のアマゾンの勧誘に、出版協会員社のような中小零細出版社で、かつ大手取次店と過酷な条件での取引を強いられている社のなかには、アマゾンとの取引を検討する出版社も出てきている。/しかし、これまでのアマゾンの取引等から推察するとこの条件は恒常的なものとは思えず、アマゾンとの力関係で変更されないとは限らない」とあり、「新文化」記事では「中小・零細出版社のなかには既存の取次会社の取引条件が厳しく、「e託」に乗り換えかねない危険性があるからだ。また、アマゾンとの直接契約は恒常的なものでなく、改悪が予想されることも付け加えた」と要約されています。アマゾンが将来的に契約を「改悪」しない、などと信じている版元はほとんどいないでしょう。また、アマゾン扱いの物量や取次経由の納品速度から判断して、わざわざアマゾンとの直取引に乗り換える必要を感じていない版元もそれなりに多いようです。アマゾンによるここ数ヶ月間の熱心な直取勧誘は、「成約数が目標に達していないのではないか」とかえって版元に印象付けることになっています。

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◆12月24日10時現在。
「朝日新聞」2015年12月24日付、塩原賢氏・竹内誠人氏記名記事「アマゾンが本の値引き販売 根強い警戒感、参加1社だけ」に曰く、「「今回は参加できない」/前回参加した出版社の社長は11月にアマゾンから誘いを受け、そう漏らした。前回の販売初日、大手書店から「どういうことか説明に来て欲しい」と電話がかかってきた。書店役員らが居並ぶ部屋で、経緯説明と謝罪を求められ、他の一般書店からも本が続々と返本されてきた。「まさかここまでたたかれるとは思わなかった」」と。また曰く、「10月、東京・目黒のアマゾンジャパン本社ビルに、大手・中堅出版社の社長と営業担当者らが集められ、2週にわたって計約40社が“懇談会”に参加した。/「出版がこれほど低落した原因は?」「アマゾンに期待することは?」/アマゾン側から立て続けに質問され、参加した社長らは、渡されたスケッチブックに「コンテンツの魅力を増すのを怠った」「アマゾンに長く本を置いてもらいたい」などと書き込んで見せた」と。

率直に言えばこういう露悪的な書き方はそこに真実が含まれているにせよ、あまり関心できません。とはいえ、新聞記者は記事に書く内容よりも多くの情報を知っているのが常ですから、ある種の徴候は捉えているでしょう。某書店が版元を「呼びつけて謝罪させた」という話は当時すでに業界内に広まっていました。業界内では《果たして版元が某書店の呼び出しに応じて謝罪する必要は本当にあったのかどうか。他書店実施の時限再販をいちいち業界全体に周知しなければならない理由はない。過剰な横並び強制だ》との批判の声があるようです。《某書店とてその後、他書店との横並びを無視して、カネにモノを言わせた対抗策を取ったではないか》。そうしたツッコミも聞こえてきます。

また、朝日記事(ログインなしで読めるヴァージョンでヤフー・ニュースにも転載されており、記事の全文は掲載されていません)ではあたかもアマゾンが版元に「反省させた」かのように読めますが、これは私のようなアマゾンに対して慎重姿勢の出版人ですら懐疑的に感じる、印象操作の類いに思えます。ただし、会合に参加した出版人の中にはアマゾンの態度が「上から目線」であると感じた方もおられるでしょう。アマゾンのこうした「上から」な態度は今に始まったことではありません。こうした態度が出版社をアマゾン以外の競合ネット書店への接近、という戦略へと駆り立てていることは否めません。長期的に見てそれがアマゾンの利益になるものなのかどうか。

なお、朝日新聞では同日付で「「再販制度で競争原理働かず」アマゾン書籍担当・村井氏」という、アマゾンジャパンの村井良二バイスプレジデント(書籍事業本部担当)へのインタヴュー記事も掲載しています。ログインなしで読めるのは前半部分のみです。村井さんは「再販制度によって市場の競争原理が働かず、システム的に疲弊している。出版業界に活気がなくなっている原因ではないか」と述べたとされていますが、再販制度がなくなったらどうなるか、という議論が必要でしょう。私は再販制堅持派では必ずしもありませんが、再販制がなくなって市場の競争が激しくなったとしたら、今以上に出版界には《すさむ》側面も現れるだろうと予想しています。市場原理のみが世界を良くするのではない。コンテンツを創ることにはたくさんの《不合理やムダや回り道》に見えることが伴います。ごく当たり前の現場認識が、市場原理の名のもとに許されなくなるのだとしたら、それはほとんど自滅です。

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by urag | 2015-12-18 14:52 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 12日

注目新刊:ミッチェル『革命のジョン・レノン』共和国、ほか

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革命のジョン・レノン―― サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ
ジェイムズ・A・ミッチェル著 石崎一樹訳
共和国 2015年12月 本体2,400円 菊変型判並製320頁 ISBN978-4-907986-17-9

帯文より:ロックで政治を変える! 街頭デモ、政治犯救援ライヴ、裁判闘争……。1970年代初頭、最もラディカルに輝いたレノンの「革命時代」を、《いま》この時代に検証する。

★発売済。原書は、The Walrus & the Elephants: John Lennon's years of revolution (Seven Stories Press, 2013)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。FBI初代長官フーヴァーをして「レノンたちがわれわれにつきまとっている、だからわれわれもつきまとってやる、やつらは日毎に扱いにくくなっている、これはわれわれにとっての戦いなのだ」と報告書に書かしめた英国人ミュージシャンとそのパートナーであるオノ・ヨーコの、アメリカでの活動と発言を辿り、彼らを邪魔者扱いした人々との対峙を鮮やかに描いた実録本です。版元さん曰く「この本は、1970年代初頭のジョン・レノンによる社会的実践のドキュメントですが、いま現在の日本でさまざまなアクションとどう関わっていくかについても示唆的です。また、これまであまり照明が当てられてこなかった、ジョン・レノンが一緒に活動したビートルズ以外の唯一のバンド、エレファンツ・メモリーの元メンバーたちからのインタビューも多く用いられていて、ロックファン必読」と。ジョンとヨーコの大胆な活躍と影響力の大きさに改めて驚くとともに、文化人や活動家が権力から受ける実に寒々しい攻撃パターンというものへの理解を深めることができます。ジョンはあるとき、曲に入る前にこう観客に投げかけたと言います、「フラワー・パワーはダメだった、って言うやつもいる。そう言われて、で、何だってんだ? もう一度はじめればいいんだよ」(18頁)。

★なお今月は、岩波書店からジョナサン・コット『忘れがたき日々――ジョン・レノン、オノ・ヨーコと過ごして』(栩木玲子訳)も発売されたばかりです。版元紹介文に曰く「『ローリングストーン』誌創刊以来の中心的なライターが、1968年の出会いから、ジョンとヨーコと過ごした日々を二人の肉声ともに回想する。1980年12月8日、凶弾に倒れたジョンの3日前の貴重なインタビューも収録」と。ジョンの命日を挟んで注目作が2点発売されたかたちです。

★また、先月下旬から今週にかけては以下のように古典ものの刊行が相次ぎました。いずれも発売済です。

ニコマコス倫理学(上)』アリストテレス著、渡辺邦夫・立花幸司訳、光文社古典新訳文庫、2015年12月、本体1,280円、文庫判520頁、ISBN978-4-334-75322-1
新版アリストテレス全集(8)動物誌(上)』金子善彦ほか訳、岩波書店、2015年11月、本体5,600円、A5判上製函入400頁、ISBN978-4-00-092778-9
ジャック・ラカン 転移(下)』ジャック=アラン・ミレール編、小出浩之ほか訳、岩波書店、2015年11月、本体5,200円、A5判上製328頁、ISBN978-4-00-024052-9
デカルト的省察』フッサール著、船橋弘訳、中公クラシックス、2015年11月、本体1,700円、新書判336頁、ISBN978-4-12-160164-3
空海「性霊集」抄』加藤精一訳、角川ソフィア文庫、2015年11月、本体920円、文庫判272頁、ISBN978-4-04-409492-8

★アリストテレスの新訳が相次いでいます。新版全集の第11回配本は『動物誌』上巻(第8巻)で、下巻(第9巻)は今月(2015年12月)25日発売予定です。底本は2002年に刊行された新校訂本(Aristotle: 'Historia Animalium', Volume 1, Books I-X: Text, Edited by D. M. Balme, Cambridge University Press, 2002)です。岩波版旧全集では『動物誌』は島崎三郎・山本光雄訳で第7巻と第8巻でした。金子善彦・伊藤雅巳・金澤修・濱岡剛の4氏による新訳上巻に付属している「月報10」では、倉谷滋「セイボウとアリストテレス」、渡辺政隆「ダーウィンのアリストテレス賛歌」が掲載されています。一方、光文社古典新訳文庫ではアリストテレス新訳は初めてのことです。底本には1894年のバイウォーター編OCT(Oxford Classical Text)版が使用されており、上巻では原典全10巻のうち、前半5巻までを収録しています。巻末には共訳者の渡辺さんによる長篇解説が収められています。徳倫理学をめぐる新刊が増えている昨今、源流である『ニコマコス倫理学』が説く「徳(アレテー)」を学び直す絶好の機会となると思われます。

★『ジャック・ラカン 転移(下)』はセミネール第8巻の後半です。第14講「口唇期と肛門期における要求と欲望」から第27講「分析家とその喪」が収められ、巻末には「訳者覚え書き」が付されています。『デカルト的省察』は『世界の名著』からのスイッチ。巻頭には谷徹さんによる解説「フッサールの問いは終わらない」が付されています。プレスナーによって紹介されたフッサールの言葉が引かれています。「ドイツ観念論のすべてが私にはいつも糞食らえという感じだった。私は生涯にわたって、現実を求めてきた」。また、フッサールがレヴィナスの『フッサール現象学の直観理論』を読んで友人に書き送ったという手紙の一節も印象的です。「彼〔レヴィナス〕は、私の現象学をハイデガーの〔現象学〕と同一平面に置き、そのことで私の現象学の本来的な意味を奪っています」。『空海「性霊集」抄』はカバー裏紹介文に曰く「空海がその人生の折々に著した、詩文や碑文、書簡などを弟子の真済が写し取り、編纂した性霊集。この中から三十篇を厳選し、書き下し文と平易な口語訳、解説で紹介」と。大きな活字と過不足ないルビでたいへん親しみやすいです。
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by urag | 2015-12-12 20:25 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 07日

ドキュメンタリー映画『カメラになった男—写真家 中平卓馬』上映会

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★中平卓馬さん(写真集:『都市 風景 図鑑』)
★森山大道さん(写真集:『犬と網タイツ』ほか多数)
小原真史監督によるドキュメンタリー映画「カメラになった男—写真家 中平卓馬」(2003年/DVD/カラー/91分)の特別上映会が、2016年1月10日から1月17日までの8日間、新宿のphotographers’ galleryにて開催されます。映画には中平さんはもちろん、森山さんや荒木経惟さん、東松照明さんも出演されています。詳しくは下記リンクをご覧ください。

ドキュメンタリー映画『カメラになった男—写真家 中平卓馬』上映会
日時:2016年1月10日(日)~17日(日)
上映時間:1)13:00~14:40/2)15:00~16:40/3)17:00~18:40
会場:photographers’ gallery(新宿区新宿2-16-11-401)
鑑賞料:1000円 ※各回入れ替え制
定員:20名・当日先着順 ※上映開始時間30分前より整理券を配布します。
※初日最終回上映後に小原真史監督のミニトークあり。

内容:1960年代から70年代にかけて、先鋭的な写真と言葉で「政治の季節」を牽引した中平卓馬は、写真家としてはスランプに陥り77年に病に倒れた。記憶と言葉の大部分を失うこととなったが、それ以降、写真を撮ることが生活のほとんどすべてとなった。本作では中平に3年間密着、横浜の自宅周辺を日々撮影する姿や失われた記憶をなぞるようにかつて訪れた沖縄へと向かう姿を追った。


★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
photographers’ galleryの機関誌「photographers’ gallery press」の第13号が発売されました。鵜飼哲さんによる講演「「どこにいても」――墓とその代補をめぐって」(26-38頁)が掲載されています。これは、ICANOF第12回企画展「矢野静明――種差 ENCLAVE」(2014年8月22日~9月15日)特別プログラムとして開催されたレクチュアに加筆修正をして収録したもの、とのことです。なお、第13号ではディディ=ユベルマンの論考「なんという感動!なんという感動?」(橋本一径訳、69-85頁)が収録されているほか、既刊号に掲載されていたディディ=ユベルマン、バッチェン、マイケル・フリードのインタヴューが再録されています。目次詳細は号数のリンク先をご覧ください。
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by urag | 2015-12-07 09:42 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2015年 12月 05日

注目新刊:デランダ『社会の新たな哲学』、メッザードラ『逃走の権利』、ほか

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社会の新たな哲学――集合体、潜在性、創発』マヌエル・デランダ著、篠原雅武訳、人文書院、2015年11月、本体2,800円、4-6判並製238頁、ISBN978-4-409-03089-9
逃走の権利――移民、シティズンシップ、グローバル化』サンドロ・メッザードラ著、北川眞也訳、人文書院、2015年11月、本体3,400円、4-6判並製370頁、ISBN978-4-409-24103-5
カドモスとハルモニアの結婚』ロベルト・カラッソ著、東暑子訳、河出書房新社、2015年11月、本体5,500円、46判上製548頁、ISBN978-4-309-23096-2
哲学者の自己矛盾――イスラームの哲学批判』ガザーリー著、中村廣治郎訳注、東洋文庫、2015年12月、本体3,100円、B6変判上製函入380頁、ISBN978-4-582-80867-4

★人文書院さんの新刊2点、デランダ『社会の新たな哲学』と、メッザードラ『逃走の権利』は発売済。前者『社会の新たな哲学』の原書は、A New Philosophy of Society: Assenblage Theory and Social Complexity (Bloomsbury Publishing, 2006)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭の「はじめに」を立ち読みすることもできます。デランダ(Manuel DeLanda, 1952-)の著書が訳されるのは、『機械たちの戦争』(杉田敦訳、アスキー出版局、1997年)に続いてようやく2冊目。後者『逃走の権利』の原書は、Diritto di fuga: migrazioni, cittadinanza, globalizzasione (ombre corte, 2006)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭の「序論」を立ち読みすることもできます。メッザードラ(Sandro Mezzasra, 1963-)の単独著は単行本としては本邦初訳。既刊にはフマガッリとの共編書『金融危機をめぐる10のテーゼ――金融市場・社会闘争・政治的シナリオ』(以文社、2010年)があります。メッザードラの新刊は昨今日常的にニュースで見聞きする移民問題について考える上で非常に示唆的です。人文書院さんでは来月末にいよいよ、カンタン・メイヤスー『有限性の後で――偶然性の必然性についての試論』(千葉雅也・大橋完太郎・星野太訳、人文書院、2016年1月、本体2,200円、4-6判236頁、ISBN978-4-409-03090-5)が発売されると聞きます。ガブリエル=ジジェク『神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性』(堀之内出版、2015年11月)も発売されたことですし、ガブリエルの論考「形而上学の根本的問いに対するシェリングの答え――『啓示の哲学 初稿』における」の翻訳と解題を掲載した『ニュクス』第2号もまもなく発売(12月10日頃)になるので、新刊台が賑わいますね。

★『カドモスとハルモニアの結婚』は発売済。原書は、La nozze di Cadmo e Armonia (Adelphi, 1988)です。カラッソ(Roberto Calasso, 1941)は、『ニーチェ全集』やカッチャーリの主要著作などの出版で著名なイタリア・ミラノの人文系版元の名門アデルフィの社長であり、編集を務めるかたわら、本書のような、23カ国で発売されているベストセラーも上梓しています。岡田温司さんが日本語版解説「神話の想像力――ロベルト・カラッソの言語的宇宙」を寄稿されておられます。イタリア現代思想が気になる方にはカラッソやメッザードラの新刊が要チェックです。なお、カラッソさんは現在来日中で、今週は東京で講演を終え、来週は京都で講演があります。リンク先の情報をご覧ください。また、河出書房新社さんの注目新刊には、同社編集部編『長渕剛――民衆の怒りと祈りの歌』(河出書房新社、2015年11月、本体1,300円、A5判並製256頁、ISBN978-4-309-97876-5)というムックがあります。これは普通は長渕剛さんのファンの方が買うのでしょうけれども、ファンでない方にとっても武田砂鉄さんによるロングインタビューや、藤原新也さん、柳美里さんとの対談は一読(と言わず二読三読)の価値がある、ど直球の圧倒的名篇です。和合亮一さん、栗原康さん、マニュエル・ヤンさん、杉田俊介さん、森元斎さんらによる多彩な寄稿も眼を惹きます。

★ガザーリー『哲学者の自己矛盾』はまもなく発売。帯文に曰く「ヘレニズム哲学の深奥を究めた上で、人格的唯一神への帰依を説くイスラーム神学の立場から、哲学の不信仰を批判するガザーリーの代表的著作。西洋思想とイスラームとの最も深い亀裂が浮き彫りになる」と。イスラーム神学を代表する隠れもなき名著の、待望の初訳です。中村さんによるガザーリーの訳書は『誤りから救うもの』(ちくま学芸文庫、2003年)、『中庸の神学――中世イスラームの神学・哲学・神秘主義』(東洋文庫、2013年)に続いて3冊目。平凡社版『中世思想原典集成(11)イスラーム哲学』に収録されているガザーリーの『イスラーム神学綱要』『光の壁龕』の翻訳と解説を担当されているのも中村さんで、ガザーリーの翻訳紹介において大きな足跡を遺されておられるのは周知の通りです。なお『哲学者の自己矛盾』へのイブン・ルシュドによる批判書はラテン語訳からの日本語訳書がかつて刊行されたことがあります。アヴェロエス『《(アルガゼルの)哲学矛盾論》の矛盾』(田中千里訳、近代文藝社、1996年)です。東洋文庫の次回新刊は、イブン・ジュバイル『メッカ巡礼記――旅の出会いに関する情報の備忘録1』(家島彦一訳註、東洋文庫、2016年1月、本体3,100円、B6変判上製函入380頁、ISBN978-4-582-80868-1)とのことです。また、平凡社さんの来月新刊には、アンリ・ベルクソン/ジークムント・フロイト著『笑い/不気味なもの――付:ジリボン「不気味な笑い」』(原章二訳、平凡社ライブラリー、2016年1月、本体1,500円、B6変判並製392頁、ISBN978-4-582-76836-7)や、E・トゥーゲントハット/A・M・ビクーニャ/C・ロペス『ぼくたちの倫理学教室』(鈴木崇夫訳、平凡社新書、2016年1月、本体800円、新書256頁、ISBN978-4-582-85801-3)といった注目書が控えており、たいへん楽しみです。

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このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。

トッド 自身を語る』エマニュエル・トッド著、石崎晴己編訳、藤原書店、2015年11月、本体2,200円、四六変上製224頁、ISBN978-4-86578-048-2
オーソン・ウェルズ』アンドレ・バザン著、堀潤之訳、インスクリプト、2015年12月、本体1,700円、四六判変型上製192頁、ISBN978-4-900997-61-5
語られた自叙伝』遠山一行著、長谷川郁夫編、作品社、2015年11月、本体1,400円、46判上製194頁、ISBN978-4-86182-562-0)

★『トッド 自身を語る』は発売済。日本語版オリジナル編集の新刊です。編訳者あとがきによれば、藤原書店さんの『環』誌に掲載されたトッドさんの近年のインタビューで単行本に収録されていないものを一冊にまとめた本で、巻頭には書き下ろしの「〈日本の読者へ〉私を形成したもの――フランス、英米圏、そして日本」が収められています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。藤原書店さんではさいきん、二つの記念出版物を発売されています。鶴見俊輔『まなざし』(藤原書店、2015年11月、本体2,600円、四六変上製272頁、ISBN978-4-86578-050-5)は追悼出版、紅野謙介・富岡幸一郎編『文学の再生へ――野間宏から現代を読む』(藤原書店、2015年11月、本体8,200円、菊大判上製784頁、ISBN978-4-86578-051-2)は野間宏生誕100年記念出版です。ともに目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★バザン『オーソン・ウェルズ』は発売済。巻末の訳者解説によれば本書は「ジャン・コクトーの序文つきでアンドレ・バザン(1918-1958)が1950年に上梓したオーソン・ウェルズ論(Orson Welles, Editions Chavane, 1950)の全訳に加えて、『市民ケーン』(1941年)をめぐって戦後のフランスで交わされた論選の要諦を紹介すべく、サルトル、サドゥール、レーナルト、そしてバザンが同作品を論じた四篇の雑誌記事を「資料」として訳出したもの」とのことです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。バザンは今年、代表作評論集『映画とは何か』の新訳が岩波文庫で刊行されたばかりです。インスクリプトさんの新刊では、10月に刊行されたジョナサン・スターン『聞こえくる過去―─音響再生産の文化的起源』(中川克志・金子智太郎・谷口文和訳、インスクリプト、2015年10月、本体5,800円、A5判上製590頁、ISBN978-4-900997-58-5)も話題になっています。

★遠山一行『語られた自叙伝』は発売済。帯文に曰く「音楽批評七十年。戦後日本の音楽界をリードし、真の演奏の意義を求め続けた著者。常に現状への批判を内に秘め、言葉による文学的音楽批評を貫いた。芸術、人間、家族への深い愛をこめ、初めて人生を語り綴った遺稿集。晩年の未刊エッセイ20篇を併録」と。音楽批評家の遠山一行(とおやま・かずゆき:1922-2014)さんはちょうど一年前の12月10日に92歳でお亡くなりになっています。本書は表題作となる聞書きを第一部、『芸術随想』(彌生書房、2003年)以後の未収録エッセイ20篇を第二部として収録したものです。本書の編集実務を担当されたTさんは、ほぼ同時発売の小説、岳真也『真田信幸――天下を飾る者』(作品社、2015年11月、本体1,800円、46判上製290頁、ISBN978-4-86182-560-6)も手掛けておられます。
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by urag | 2015-12-05 17:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)