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2015年 03月 31日

書影公開:ソレルス『ドラマ』と『表象09』

昨年(2014年)年頭に弊社ではアガンベン『涜神 新装版』を刊行しました。そして今年(2015年)の刊行第一弾は、アガンベン『到来する共同体 新装版』です。期せずして2年連続でアガンベンでスタートしたことになります。弊社の処女出版もアガンベン。『アウシュヴィッツの残りのもの』は現在7刷を準備中です。弊社の人文書の中で一番売れている書目です。

26・27日取次搬入済の最新刊、阿部将伸『存在とロゴス』はまもなく書店店頭発売開始。こちらはシリーズ「古典転生」の1年ぶりの配本(第11回配本、本巻10)です。古典転生では5月にも配本を予定しており、ほどなく御案内を開始できるのではないかと思います。

また、Akio NagasawaNADiff書肆蒼穹舎などでサイン本を先行発売してきた『猪瀬光全作品』ですが、まもなくアマゾン・ジャパンではサインなしの通常本の取り扱いが始まります。今のところ一般書店での取り扱いは「取り寄せ」のみとなりますので、ご注意下さい。

弊社4月新刊は2点、ソレルス『ドラマ』と『表象09』です。書影サンプルを初公開します。『ドラマ』は写真では分かりにくいかと思いますが、カヴァー用紙にはパール系の光沢があり、書名にはレインボー箔を使っていて、加工特性により1冊ずつ虹色の模様が異なります。店頭でぜひご確認いただけると幸いです。今のところ、『ドラマ』は4月10日頃取次搬入予定、『表象09』は16日頃搬入予定です。

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+++【2014年年頭~春、月曜社はこんな本を出していました】

◎2014年4月11日発売:青木敦子『影像の詩学』本体3,500円、シリーズ古典転生第10回配本
書評1⇒坂本貴志氏「シラーの戯曲がもつ建築的な輪郭が浮かび上がる――シャープな哲学的概念によって構築される議論」(「図書新聞」2014年9月6日号)

◎2014年4月10日発売:『表象08:ポストメディウム映像のゆくえ』本体1,800円

◎2014年3月14日発売:ドリーン・マッシー『空間のために』本体3,600円

◎2014年1月17日発売:ジョルジョ・アガンベン『涜神 新装版』本体1,800円
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by urag | 2015-03-31 11:45 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 29日

注目新刊:ブルデュー『介入』藤原書店、ほか

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介入 Ⅰ――社会科学と政治行動1961-2001
介入 Ⅱ――社会科学と政治行動1961-2001
ピエール・ブルデュー著 フランク・プポー+ティエリー・ディセポロ編 櫻本陽一訳・解説
藤原書店 2015年3月 本体各3,600円 A5並製408/368頁 ISBN978-4-86578-016-1/017-8

帯文より:40年にわたる「政治的発言」の主要テクストを網羅! グローバリズムに対するブルデューの「回答」の核心。1960年代の活動当初から社会に介入=発言し続ける「知識人」であった、社会学者ブルデューの真価とは何だったのか。冷戦終結を経て、20世紀型知識人が有効性を失っていく今、全生涯の社会的発言を集成し、旧来型の「社会運動」への挺身でも「国家」の単純な再評価でもなく、その両者を乗り越えてグローバリズムと対峙したブルデュー思想の現代的意味を炙り出す、決定版論集。

★発売済。原書は、Interventions, 1961-2001: Science sociale et action politique (Agone, 2002)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。本書は「1961年から2001年までという、ブルデューの知的生涯の全期間にわたって、一方ではブルデューの政治社会状況に対する発言、他方で、政治やメディアと学問あるいは知識人の関わりについて、言及、考察しているテクストを、フランス人読者にとっても一般には入手が容易でないものも含めて集成した論集」(訳者序)であり、フランス語原書では未収録の「「ヨーロッパ社会運動憲章に向けての提案」第一次文案」(1999年12月)が第II巻に付録として併載されています。そこでは新自由主義に対する批判的勢力の結集が呼びかけられています。

★藤原書店さんは今春創業25周年をお迎えになるとのことです。最初の刊行物(1990年3月)のひとつはほかでもないブルデューの『ディスタンクシオン』でした。周知の通り第I巻はまず社長の藤原良雄さんが新評論に在籍時代の1989年に刊行され、その翌年の藤原書店独立時に第II巻とともに再刊されます。藤原さんの特徴は新評論時代から変わらず、一人ひとりの著者ととことん付き合うこと。ブルデューをはじめ、コルバン、ブローデル、トッド、イリイチ等々、数多くの訳書を手掛けられてきました。同版元のPR誌「機」276号(2015年3月)に掲載された「出版随想」で藤原社長はこう述懐しておられます。「我が出版屋は、人と人との関係からすべてが生まれてくる商売。〔・・・〕今、出版界にとってもっとも大事なのは〔・・・〕人間の中身であり、人間関係である」。藤原書店さんはこの四半世紀で1106点もの書籍を世に送り出されました。来月はいよいよアニー・コーエン=ソラルの『サルトル伝』上下巻が刊行予定とのことです。


21世紀に、資本論をいかによむべきか』フレドリック・ジェイムソン著、野尻英一訳、作品社、2015年3月、本体2,400円、46判上製320頁、ISBN978-4-86182-513-2
原子爆弾 1938~1950年――いかに物理学者たちは、世界を残虐と恐怖へ導いていったか?』ジム・バゴット著、青柳伸子訳、作品社、2015年3月、46判上製640頁、ISBN978-4-86182-512-5

★作品社さんの3月新刊より2点をご紹介します。いずれも発売済。『21世紀に、資本論をいかによむべきか』の原書は、Representing "Capital": A Reading of Volume One (Verso, 2011)です。序章「資本論をいかに読むべきか」、第一章「カテゴリーの演奏」、第二章「対立物の統一」、第三章「コーダ(終楽章)としての歴史」、第四章「『資本論』の時間性」、第五章「『資本論』の空間性」、第六章「『資本論』と弁証法」、第七章「政治的結論」といった構成で、巻末に「訳者解説――本書をいかに読むべきか?」と「『資本論』日独英目次対照表」が付されています。著者は序章でこう述べています。「『資本論』は、政治についての本ではないし、労働についての本ですらない。『資本論』は失業についての本なのである。私はこのスキャンダラスな主張を、『資本論』の議論の各段階およびその要点ごとの展開に注意を払うことによって、証明していくつもりである」(5頁)。第七章ではこうも書いています。「「不公正と不平等」は、この全体的なシステムそのものと構造的に一体のものであり、不公正や不平等は決して修復などされないと示したことこそが、まさに『資本論』の力であり、建設的な偉業なのである」(247頁)。トマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房)をお読みになった方は、本書もまた興味深く読まれるだろうと思います。

★『原子爆弾 1938~1950年』の原書は、Atomic: The First War of Physics and The Secret History of the Atom Bomb 1939-1949 (Icon Books, 2006)です。「物理学者たちの戦い」「原爆開発競争」「戦争と原爆投下」の3部構成で、巻末には英米独ソの4カ国対照版「原子爆弾年表(1938~1950年)」と、「登場人物の紹介」と題した人物小辞典が付されています。著者のバゴットさんは著名なサイエンス・ライターで既訳書に『究極のシンメトリー――フラーレン発見物語』(白揚社、1996年)や『ヒッグス粒子――神の粒子の発見まで』(東京化学同人、2013年)があります。若い読者層向けの類書としては先月、スティーヴ・シャンキン『原爆を盗め!――史上最も恐ろしい爆弾はこうしてつくられた』が紀伊國屋書店さんから刊行され話題を集めていますが、こちらは原書が2012年の刊行。バゴットさんの作品はさらにその3年前で、当時各紙誌から絶賛を浴びた傑作です。『原爆を盗め!』をお読みになって原爆開発競争のさらにもっと深く詳しい歴史を知りたいと感じた方はぜひ『原子爆弾 1938~1950年』を手に取ってみて下さい。


イタリア建築紀行――ゲーテと旅する7つの都市』渡辺真弓著、平凡社、2015年3月、本体2,600円、4-6判並製448頁、ISBN978-4-582-54452-7
現代デザイン事典 2015年版』平凡社、2015年3月、B5変型判並製326頁、ISBN978-4-582-12934-2

★平凡社さんの3月新刊より2点をご紹介します。いずれも発売済。『イタリア建築紀行』は、ゲーテの『イタリア紀行』(全3巻、相良守峯訳、岩波文庫)の旅程をひもとき、イタリアの7都市(ヴィンチェンツァ、パドヴァ、ヴェネツィア、アッシージ、ローマ、ナポリ、パレルモ)の町並みや建築の魅力を語り尽くすという「机上の旅」(437頁)です。写真多数。机上の旅とは言っても、著者は建築史家なので、各都市を実際に巡った経験をお持ちです。「ゲーテが見たもののほかに、見なかったもの、見ようとしなかったものも取り上げている。都市と建築を主に論じた章もあれば、歴史的な推移に重点を置いた章もある」(435-436頁)と著者は終章で書いておられます。

★『現代デザイン事典 2015年版』の今年の巻頭特集は「風景再考――記憶をつなぐデザイン」。「今あらためて風景と人間の関係に着目したい。風景がどのうように発見され考察されたのか、書物を通して概観し、さらに現在どのように見られ、想像されているのか、記憶と結びついてきたかを考えていく。そして最後に、戦争や災害といった讃辞から人々が立ち直るためのひとつの方法論=デザインという視点で、風景と記憶の継承に取り組んでいる事例を紹介する」と特集頁の扉に特記されています。「風景と記憶の継承」では、近年試みられるようになってきたデジタルマップやデジタルアーカイヴが紹介されています。そのあとに続く通常頁では25分野800項目に及ぶキーワードの解説や、デザイン人名録、ブックガイドなどの情報を網羅。文化拠点としての未来の出版像・書店像を考える上で、数知れないアイデアと触発を毎年与えてくれるのが『現代デザイン事典』です。


サイエンス・ブック・トラベル――世界を見晴らす100冊』山本貴光編、河出書房新社、本体1,600円、46判並製216頁、ISBN978-4-309-25323-7
ポスト代表制の政治学――デモクラシーの危機に抗して』山崎望・山本圭編、ナカニシヤ出版、2015年3月、本体3,500円、4-6判並製318頁、ISBN978-4-7795-0919-3

★続いて2点のアンソロジーをご紹介します。いずれも発売済。『サイエンス・ブック・トラベル』は物理学者、天文学者、生物学者、情報学者、サイエンスライター、医師等々、多彩な執筆陣30名が最先端の科学書を丁寧に紹介してくれるブックガイドです。「宇宙を探り、世界を知る」「生命のふしぎ、心の謎」「未来を映す」の3章立てで、コラムや特別対談などが挟まれています。編者の山本さんによる巻頭言を引用しておくと、「第一部は、地球や宇宙といった物質環境をテーマとし〔・・・〕第二部では、生物や人間の精神を含む生命現象に関わる分野に注目〔・・・〕そして第三部は、科学の歴史や科学を理解すること、あるいは科学の未来に関わる謎を集めて」いるとのことです。ジュンク堂書店池袋本店の理工書担当Uさんもインタビューで登場。100冊の情報は、書店さんの理工書の現場の方に有益なだけでなく、人文書売場で科学哲学コーナーを作っていらっしゃる方にとっても要チェックな情報源だろうと思います。

★『ポスト代表制の政治学』は現代の政治と社会が抱える難問をめぐる真摯な探究を集めています。巻頭の「序」の説明を借りると、「本書では、自由民主主義において一般に前提されてきた、人民の意志を議会に集約する諸制度および理念を総合して「議会制民主主義(Parliamentary democracy)」と理解している。これに対して「代表制民主主義(representative democracy)」とは、住民投票はネオコーポラティズム[政府・経営者・労働組合団体の協調にもとづく政策過程の制度化]など、議会にとどまらない多様な場における代表関係を射程に含んでいる。さらに、代表制度が存続しているにもかかわらず、政治がその枠内に回収されず、代表のメカニズムそれ自体がうまく機能していないような状況を、本書では「ポスト代表制」と呼ぶことにしよう。本書において私たちが捉えようとするのは、このポスト代表制状況における私たちの代表制民主主義の行方である。アラブの春、オキュパイ・ウォール・ストリート、そして3・11以後の脱原発デモであらわになったポスト代表的な状況において、政治学にはいかなるレスポンスができるだろうか」(7頁)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。


山岳信仰――日本文化の根底を探る』鈴木正崇著、中公新書、2015年3月、本体880円、新書判320頁、ISBN978-4-12-102310-0
十九世紀イギリス自転車事情』坂元正樹著、共和国、2015年3月、本体3,700円、菊変判上製288頁、ISBN978-4-907986-07-0
『出版とは闘争である』西谷能英著、論創社、2015年3月、本体2,000円、四六版並製246頁、ISBN978-4-8460-1425-4

★『山岳信仰』は発売済。カバーソデ紹介文に曰く「本書は山岳信仰の歴史をたどりつつ、修験道の成立と展開、登拝の民衆化と女人禁制を解説。さらに八つの霊山の信仰と祭祀、神仏分離後の状況までを詳解する。長年、山岳修験研究に携わってきた著者による決定版」。序章「山岳とは何か」、第一章「出羽三山――死と再生のコスモロジー」、第二章「大峯山――修験道の揺籃の地」、第三章「英彦山――西日本の山岳信仰の拠点」、第四章「富士山――日本人の心のふるさと」、第五章「立山――天空の浄土の盛衰」、第六章「恐山――死者の魂の行方」、第七章「木曽御嶽山――神がかりによる救済」、第八章「石鎚山――修行から講へ」という構成。著者は文化人類学・宗教学・民俗学の専門家で今月慶應義塾大学を定年退職。若い頃から山登りがお好きで、日本山岳会の会員でいらっしゃるほか、日本山岳修験学会の会長をつとめておられます。

★『十九世紀イギリス自転車事情』は著者のデビュー作で、2011年に京都大学に提出された博士論文「オーディナリ型自転車の時代」に加筆修正したもの。帯文はこうです。「「自転車趣味」はこうして生まれた! わたしたちの日常生活に欠かせない移動手段・自転車は、なぜ現在のような形態になったのか? 1880年代の英国で、趣味から娯楽・スポーツへと発展した、前輪の大きな「オーディナリ型自転車」の発展と消滅を、雑誌・地図・旅行記・カタログなど、豊富な資料を駆使して描き出す《自転車秘史》」。今回も特徴的な、天地の短い「菊判変型」サイズ(宗利淳一さん造本)が採用されています。かつてA5判の左右の横幅を短くしたスマートな造本で他社本と差別化したパピルスさんの本(東幸見さん装丁)のように、共和国さんの本はその個性的な愛らしい形で存在感を放っています。共和国さんは来月4月2日で創業1周年をお迎えになるとのこと。おめでとうございます!

★『出版とは闘争である』は未來社社長の西谷能英さんによるブログ「出版文化再生」から選ばれたエントリーをまとめたもの。西谷さんご自身による告知によれば、「前著『出版文化再生――あらためて本の力を考える』(未來社)刊行後の出版事情、出版界をふくむ社会への批判的エッセイ、書物にかんするさまざまなエピソードなどをそのつど書きためてきたエッセイをテーマ別に編集しなおし、注を加えた集成です」とのことです。「出版とは闘争である」という書名はもともと前著『出版文化再生』の帯文に大書されていた文言でした。「現在のような政治状況、文化状況、出版環境のなかでは、私が考えてきたような専門書、人文書をあえて刊行していくことは、ひとつの文化闘争のありかたなのだ」(iii頁)と本書の「はじめに」で西谷さんはお書きになっておられます。なお、未來社さんではいよいよ来月から『【新版】日本の民話』全79巻を刊行されます。46判ソフトカバーで各巻平均270頁、本体価格は2000~2200円とのことです。全巻揃えても本体16万円ほどという高コスパ。第1回配本は3冊同時で『信濃の民話』『岩手の民話』『越後の民話1』。内容見本は書店などで配布されています。
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by urag | 2015-03-29 23:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2015年 03月 25日

搬入日決定&書影公開:阿部将伸『存在とロゴス』

シリーズ「古典転生」第11回配本(本巻10)である、阿部将伸『存在とロゴス――初期ハイデガーにおけるアリストテレス解釈』の取次搬入日が決定しましたのでお知らせいたします。日販、トーハン、太洋社が明日26日(木)、大阪屋と栗田が27日(金)です。書影も公開いたします。表1と背のメインタイトルは銀箔です。

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by urag | 2015-03-25 10:49 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 22日

まもなく発売:吉本全集第8巻は『言語にとって美とはなにか』

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◎『吉本隆明全集』第8巻は代表作『言語にとって美とはなにか』を全1巻で収録

吉本隆明全集8[1961‐1965]
吉本隆明著
晶文社 2015年3月 本体6,300円 A5判変型上製600頁 ISBN978-4-7949-7108-1

版元紹介文より:長く深い時間の射程で考えつづけた思想家の全貌と軌跡がここにある。第8巻には、党派的な文学論を一掃するため、言語についての基礎的な考察から取り組まれた画期的な労作『言語にとって美とはなにか』を収録する。月報は、岡井隆氏・ハルノ宵子氏が執筆。

★まもなく発売(3月25日発売予定)。第5回配本は1961年~1965年を扱う第8巻で、吉本さんの代表作のひとつ、『言語にとって美とはなにか』が全1巻で収録されています。「もうじぶんの手で文学の理論、とりわけ表現の理論をつくりだすほかに道はないと思った」(「序」13頁)との並々ならぬ決意から書き綴られた同作はまず1961年から1965年に『試行』で連載され、その後、加筆訂正されて2巻本として勁草書房から1965年に単行本化されました。その後、勁草の全著作集版や角川文庫の改訂新版、角川選書および角川ソフィア文庫の定本が出るわけですが、全1巻だったのは勁草の全著作集版のみです(より正確に言うと、角川ソフィア文庫の電子書籍版では紙媒体の全2巻が合本全1巻となっています)。今回の全集版は角川ソフィア文庫の「定本」2分冊を底本としつつ、「角川ソフィア文庫版とそれが底本とした角川選書版との間にある異同も含め、疑問箇所は初出およびそれ以降の版すべてを校合し、あらたに本文を確定し」、「引用文は可能な限り原文に当たり校訂した」(間宮幹彦さんによる巻末解題より)とのことです。

★最初の単行本化のあとがきで吉本さんはこう書いています。「いままでいくつかの著書を公刊しているので、つながりをもった小さな出版社もひとつふたつないではなかった。しかし本稿はみすみす出版社に損害をあたえるだけのような気がして、わたしのほうからはなじみの出版社に公刊をいいだせなかった。それでいいとおもったのである。最小限『試行』の読者がよみさえすればわたしのほうにはかくべつの異存はなかった」(557頁)。このあと某版元がいったん企画として検討したものの諦め、後発の勁草書房さんが採用したわけですが、それにしてもこの最初の「あとがき」には出版人に色々のドラマを想像させる味わい深さがあります。それは採用不採用にまつわる話が面白いかどうかというのではなくて、自作に対する思いや編集者との距離感に表れている書き手の意識の興味深さです。書き手の「勝利」とは何か。そこに本作の深淵が潜んでいる気がします。

★「月報5」は岡井隆さんによる「『言葉からの触手』に触れながら考えたこと」と、ハルノ宵子さんによる「混合比率」を収録。岡井さんはこう書いておられます。「吉本さんの思想本とは違って、『言葉からの触手』はなにかを教えてくれる本ではない。豊かに、ひとりだけの連想をさそう本である。外国旅行にもっていくには、ふさわしい本といえる」。なお、全集編集部からのお知らせには「二年目以降は隔月刊と予告しておりましたが、編集上の万全を期するため、この先も三カ月に一冊の刊行にあらためたいと思います」とあります。次回配本は第9巻、6月刊予定。刊行ペースがひと月ずつ延びていくことは、編集作業の大変さを思えばどうということはありません。ただ、京都の某書店さんの場合、全巻予約者が次々と急逝されているとのことで、熱心な読者の年齢層が高い分、完結までの長い道のりの中ではそうしたことも避けがたいのかもしれません。


◎注目新刊雑誌:『なnD』第3号、『現代思想』4月臨時増刊号

なnD 3nu、2015年2月、本体800円、B6変型判並製152頁、ISBNなし
『現代思想』2015年4月臨時増刊号「総特集=菅原文太――反骨の肖像」青土社、2015年3月、本体1,300円、A5判並製198頁 ISBN978-4-7917-1298-4

★『なnD(なんど)』は「なんとなく、クリティック」「nu」「DU」の3誌の編集者である森田真規、戸塚泰雄、小林英治の3氏が「1週間くらいでガッと集中して」(編集後記より)作っているという雑誌で、第3号では近代ナリコさんの短篇や坪内祐三さんのインタビュー、ドミニク・チェンさんの日記などが収録されています。なかでも、先月(2015年2月13日)営業を終了した京都の書店「ガケ書房」の店主・山下賢二さんのロング・インタビュー「ガケ書房の11年とこれからの本屋のかたち」(114-151頁)が業界人には必読かと思われます。ガケ書房はまもなく4月1日より京都市左京区浄土寺馬場町71の「ハイネストビル」1~2Fで「ホホホ座」として営業を再開するとのことで、1Fで新刊と雑貨、2Fで古書と雑貨を扱うそうです。また、ガケ書房で昨夏自主制作された本『わたしがカフェをはじめた日。』の増補普及版がまもなく小学館より4月1日取次搬入発売とのことです。

★このところ臨時増刊号を連発してただならぬ気迫を感じさせる『現代思想』ですが、先だって逝去された俳優の菅原文太さんを特集した4月臨時増刊号にも、やはり業界人必読のエッセイが収録されています。東京堂書店本店の元店長・佐野衛さんのエッセイ「菅原文太さんの書店訪問」です。菅原さんの旺盛な探究心に全力の真剣勝負で応じた佐野さんが披露する数々のエピソードは、俳優の凄みだけでなく、書店員の覚悟をも伝えるもので、さながら剣術の立ち合いを目の当たりにするようでした。その研ぎ澄まされた一期一会の積み重ねに鳥肌が立ちます。ちなみに『現代思想』の編集長の栗原一樹さんは、3月20日よりリブロ池袋本店とリブロ福岡天神店のCartographiaコーナーで開催スタートしたブックフェア「新しいリベラルアーツのためのブックリスト」にも選書人の1人として参加されています。47人もの選書人がそれぞれの主題のもと3冊ずつ選ぶのですが、栗原さんのご担当はそのものズバリ「現代思想」。そこでありがたいことに弊社刊、岡本源太『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』を挙げて下さっています。また「写真集」を担当されている大竹昭子さんはドアノー『不完全なレンズで』を揚げて下さいました。ブックリストは撰者コメント付きで小冊子になって無料配布されていますから、ぜひ皆さん入手されてみて下さい。


◎平凡社さんの新刊より:ハイデガーの弟フリッツに光をあてたユニークな評伝と、イエイツの初訳物語

マルティンとフリッツ・ハイデッガー――哲学とカーニヴァル』ハンス・ディーター・ツィンマーマン著、平野嘉彦訳、平凡社、2015年3月、本体3,000円、4-6判上製290頁、ISBN978-4-582-70338-2
赤毛のハンラハンと葦間の風』W・B・イェイツ著、栩木伸明編訳、平凡社、2015年3月、本体2,500円、B6変型判上製176頁、ISBN978-4-582-83687-5

★『マルティンとフリッツ・ハイデッガー』は発売済。原書は、Martin und Fritz Heidegger: Philosophie und Fastnacht (Beck, 2005)です。著者のツィンマーマン(Hans Dieter Zimmermann, 1940-)さんは『カフカとユダヤ性』(清水健次ほか訳、教育開発研究所、1992年)の共編者であり、来日されたこともあります。単独著が訳されるのは本書が初めてです。版元紹介文によれば「マルティンとフリッツの兄弟関係を軸にした小評伝。高名な哲学者と故郷の朴訥な庶民という対比から、ハイデッガー哲学の本質へ導く」というユニークな本。巻頭には著者による「日本の読者のための序文」が付されています。「日本の読者は、この書のなかで、哲学者の甥であるハインリヒ・ハイデッガーが私に伝えてくれた、これまでわずかしか、あるいはまったくといっていいほどに、知られていなかった、ハイデッガーの家族の消息をみいだすことでしょう。〔マルティンの弟フリッツ・ハイデッガーは〕困難な時代に兄の原稿を保管し、複写し、兄に修正を促すこともまれではなかった、文字どおり血を分けたパートナーであり、協力者でした」(2~3頁)。フリッツは銀行員であり、読書家であり、信仰心の厚いカトリック教徒だったと言います。ナチズムに幻惑されなかった彼の言動が本書では紹介されています(第11章「一九三七年のカーニヴァル」)。興味深いエピソードが満載の好著です。

★『赤毛のハンラハンと葦間の風』は発売済。底本は『神秘の薔薇』1897年初版に収められたヴァージョンで、訳者によれば、その後の改作版よりも「見どころがはるかに多い」とのことです。『神秘の薔薇』には国書刊行会の「幻想文学大系」第24巻として井村君江・大久保直幹訳が80年に出ており、94年に新装版も刊行されましたが、現在は品切。この訳書にはハンラハンの物語は収録されていませんけれども、大久保さんによる巻末解説では「イェイツの創造した架空の吟遊詩人ハンラハンの遍歴を淡い幻想を混じえながら綴っている」等々と言及されています。ハンラハンをめぐる物語の初期のヴァージョンが栩木さんの懇切な解説とともに読めるようになったのは素晴らしいことで、本書には1899年の詩集『葦間の風』から18篇の新訳も併載されています。いずれもハンラハンの物語と響き合う作品です。今年2015年はイェイツ生誕150周年にあたるそうで、願わくば『神秘の薔薇』を平凡社ライブラリーで再刊していただけたらと願わずにはいられません。


◎作品社さんの新刊より:アーリによる「移動の社会学」と、初訳作家による全米100万部突破の小説

モビリティーズ――移動の社会学』ジョン・アーリ著、吉原直樹・伊藤嘉高訳、作品社、2015年3月、本体3,800円、46判上製504頁、ISBN978-4-86182-528-6
孤児列車』クリスティナ・ベイカー・クライン著、田栗美奈子訳、作品社、2015年3月、本体2,400円、46判並製368頁、ISBN978-4-86182-520-0

★『モビリティーズ』は発売済。原書は、Mobilities (Polity Press, 2007)です。「モバイルな世界」「移動とコミュニケーション」「動き続ける社会とシステム」の3部構成。モノや人の移動だけでなく、ネットワーク資本やSNS等についても考察されており、出版人や書店人にとっても、第1章「社会生活のモバイル化」や第8章「つながる、想像する」、第10章「ネットワーク」、第11章「人に会う」、といった諸章は興味深く読めるのではないかと思われます。巻末の日本語版解説「アーリの社会理論を読み解くために」の冒頭で訳者の吉原さんはこう書いておられます。「アーリは〔・・・〕ヨーロッパやアメリカでは、社会学、いや広く社会科学において“モビリティ”を議事日程〔アジェンダ〕に上らせた社会理論家としてよく知られている。文字通り、モビリティーズ・スタディーズの第一人者である。そして本書は、その集大成をなすものである。〔・・・〕グローバル化が世界を席捲するいま、アーリは最も注目される社会理論家の一人であると言っても過言ではない」(433頁)。「モビリティーズ・スタディーズと銘打たれた本書は、The Anatomy of Capitalist Societies以降のアーリの近代認識とそれに寄り添う理論的推敲の到達点を示すものとしてある。とりわけ社会学の新たなアジェンダを構成する「移動論的転回」に明確に照準することになったSociology beyond Societiesの衣鉢を継ぐものとなっている。つまり、これまで断片的に語られてきたことにたいして、さしあたりトータルな認識が示されているということになる」(441頁)。2000年刊のSociology beyond Societiesは吉原さんの監訳で法政大学出版局から『社会を越える社会学』として2006年に刊行され、新装版が2011年に出ており、現在も入手可能。1981年刊のThe Anatomy of Capitalist Societiesはアーリの記念すべき本邦初訳本として清野正義監訳『経済・市民社会・国家――資本主義社会の解剖学』が法律文化社から1986年に刊行されていましたが、現在は品切。ちくま学芸文庫あたりで文庫化されてもおかしくない本です。

★『孤児列車』は発売済。原書は、Orphan Train (William Morrow, 2013)です。イギリス生まれのアメリカの作家クリスティナ・ベイカー・クライン(Christina Baker Kline, 1964-)の作品が訳されるのは本書が初めてのようです。帯裏の紹介文に曰く「《孤児列車》とは、1854~1929年にアメリカ東海岸の都市から中西部へ、養子縁組のために20万人以上の孤児を輸送した実在の事業。だが現実には主に労働力として期待されており、兄弟が引き裂かれたり、きびしい環境下で肉体労働を強制され、虐待を受けた子どもも少なくない。本書は、当事者たちが口を閉ざしたためにほぼ忘れられていた《孤児列車》の痛ましい歴史に光を当てた長篇小説。『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストに1年以上入りつづけ、5週にわたって第1位を獲得、8カ月以上トップ3にランクインした。全米で100万部を突破し、Amazon.comの読者レビューは1万4000件に迫る。さらに、28カ国で出版されて150万部以上を売り上げ、今も感動の輪が世界中に広がりつづけている」とのことです。巻末附録には、インタヴュー「著者クリスティナ・ベイカー・クライン、作家ロクサーナ・ロビンソンと語る」と、資料「孤児列車小史」が併載されています。著者自身による本書の紹介動画を以下に掲出しておきます。


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by urag | 2015-03-22 23:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 18日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2015年4月28日(火)開店予定
丸善名古屋本店:1474坪
愛知県名古屋市中区栄三丁目818
大阪屋帳合。弊社へのご発注は芸術書および文芸書の主力商品。1000坪以上のお店から人文書の発注がほとんど皆無なのは人文書版元としては寂しい限りですが、たぶん別途追加発注があるのだろうと期待したいです。名古屋の「栄」の地域一番店といえば古く丸善であったわけですが、丸栄の6~7階に今も「MARUZEN名古屋栄店」(日販帳合)が健在なのにわずか1ブロック先に同じ系列のさらに大きな店舗を出店するというのは、名古屋を死守したい丸善ジュンク堂書店の意地なのでしょうか。

新店舗からさらに2ブロック南には「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」(大阪屋帳合)もあるのです。将来的に丸栄かロフトから撤退するのを見越しての布石であるかのように見えてしまいます。ロフトにはかつて紀伊國屋書店があった時代もあり、他チェーンの付け入るすきを与えないという戦略なのでしょうか。しかしなにぶん栄は書店激戦区で、旭屋書店名古屋ラシック店や、あおい書店名古屋本店、マナハウス、等々と大型店が現れては消えてきた経緯があります。あまり否定的なことは書きたくありませんが、やっぱりオーバーストアなのではないかと思ってしまいます。

丸善ジュンク堂書店と大阪屋のそれぞれの挨拶状が届いていますが、素っ気ないもので内容に乏しく、既存店とどう棲み分けていくかについての説明がありません。名古屋市役所が公開している届出状況「26-11(新設):平成26年9月5日届出 S3プロジェクト:中区栄三丁目(縦覧期間 平成27年2月9日まで)」によれば、「開店時刻:午前9時00分、閉店時刻:午後9時30分」とのことで、「MARUZEN名古屋栄店」(10:00-19:00)や「ジュンク堂書店ロフト名古屋店」(10:30-20:00)より営業時間が長そうなのがお客様にとって評価できる点でしょうか。


2015年5月3日(日)開店予定
蔦屋家電:??坪
東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川ライズS.C.
日販帳合。弊社へのご発注は、写真集・写真エッセイの主力商品です。CCCの二子玉川プロジェクトの白方啓文店長名義の出品依頼状にはこうあります。「代官山蔦屋書店の流れをくむ本のコンシェルジュによる選書、売場作り、接客、フェア・イベントの企画運営はもりとんのこと、「家電」とのコラボレーションという世界に例を見ない新たな挑戦をします。/本の売場面積は、代官山蔦屋書店規模を予定しております。プレミアエイジ、ファミリー、クリエイターをターゲットに、人文、衣、食、住、デザイン、旅行の6ジャンルで構成します」。ちなみにここで書かれている「人文」というのはいわゆる人文書よりも概念的に拡張されているようで、発注短冊を拝見する限り、弊社の写真集や写真エッセイはすべてこの「人文」の中に入っています。

すでに予告が開始されている同店のサイトにはこんな謳い文句が踊っています。「二子玉川ライズ S.C. テラスマーケット内に、新しい文化拠点が生まれます。この場所ならではの生活提案を、ここで。/代官山 蔦屋書店は二子玉川に、まったく新しい家電店をつくります。家電を売るだけでなく本や、イベントや、コンシェルジュを通じ、世界に類を見ない生活提案型の家電店を創造します」。蔦屋家電では、家電や本だけでなく、トータルビューティーサロンukaとTSUTAYAがコラボした新業態のサロン「Cu by uka(シーユーバイウカ)」や、カフェ「GOOD MEALS SHOP 二子玉川店」、新しいモバイルライフスタイルを提案するコンシェルジュ「TSUTAYA mobile」などを併設するとのことです。「蔦屋家電」のオープンで、二子玉川駅周辺の紀伊國屋書店(玉川高島屋SC南館5F)や文教堂書店(二子玉川ライズS.C. タウンフロント6F)の売上にどんな影響が出るのか、注目されるところです。

いよいよてんこ盛りになってきた観のある蔦屋の新業態ですが、「生活提案型」や「文化拠点」というフレーズをしばらく前面に押し出していくのだろうなと想像できますし、ますます色んな業態を巻き込んでいく可能性があると思います。
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by urag | 2015-03-18 17:08 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 16日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2015年4月10日(金)開店予定
リブロ富士見店:??坪
埼玉県富士見市山室1-1313 ららぽーと富士見
日販帳合。弊社へのご発注は確認できる範囲では最近の芸術書。短冊でのご発注のみなので、店舗の大きさや何階に展開されるかは未詳です。ららぽーと富士見の1Fでは先日お伝えした通り、ブックカフェのBOWLでも弊社の書籍が扱われる予定です。

リブロと言えば西武百貨店池袋本店内の旗艦店が6月に閉店するという衝撃的なニュースが今月初めに各紙に報道されましたが、業界では2月半ばにはすでに話があるていどの末端まで出回っていました。ツイッター上にそれが漏れなかったのは、あまりのショックに誰もが絶句していたからかもしれません。毎日新聞の丸山進記者による3月4日の記事の副題に「セゾン文化体現、ニューアカの聖地」と特記されている通り、リブロ池袋本店の閉店は近年の書店史上で象徴的な「区切り」と見なされるだろうことは間違いありません。はっきりしているのは、リブロの後にたとえ他社が後継店として参入してもリブロに比べれば物足りないと言わざるをえないだろうということと、池袋本店が池袋駅周辺で現在の場所にとって代わりうる好立地の物件を確保するのは難しいだろうということ、この2点です。この閉店劇がトーハンと日販の帳合戦争の延長線上にある出来事なのかどうかは確証がありませんが、日販の子会社であるリブロのいわば顔が潰れるわけですから、いずれにせよおだやかな話ではありません。


2015年4月18日(土)開店予定
PAPER WALL 国立店:??坪
東京都国立市北1丁目 nonowa国立
日販帳合。弊社へのご発注は芸術系主要書と文芸書少々。短冊のみのご発注なので、店舗の大きさや場所の詳細は分かりませんが、求人情報やプレスリリース等を総合すると、「nonowa 国立」の第1期(東側)開業に含まれるだろうと見て間違いないと思われます。JR中央ラインモールによる2014年4月24日付のプレスリリース「中央ラインモールプロジェクト 国立駅東側高架下開発計画について」には、想定業種欄に「日用雑貨、服飾雑貨、ブックストア、カフェ、ベーカリー等(店舗数は未定)」とあり、併設されるカフェ「PAPER WALL CAFE 国立店」の求人情報には「国立駅すぐ!4月OPEN予定」とあります。さらには国立の市議が昨日「nonowa国立の中身がJRから発表されました。新しく十店舗オープンするようです。中身はパン屋、カフェ、ブックストア、雑貨、茶葉専門店などです。開業は4月18日(土)」とツイートされています。


2015年5月1日(金)開店予定
梅田蔦屋書店:図書400坪、カフェ260坪、文具50坪、携帯電話110坪、その他380坪
大阪府大阪市北区梅田3-1-3 ルクアイーレ 9F
日販帳合。弊社へのご発注は芸術系主要書と人文書少々。CCCデザインカンパニーの執行役員で梅田蔦屋書店の館長をお勤めになる小笠原寛さんによる挨拶状によれば、同店の概要は以下の通りです。「JR大阪駅直結の「大阪ステーションシティ ノースゲートビルディング」にリニューアルオープンする「ルクア1100(イーレ)」内にて〔・・・〕出店する運びとなりました。/東京「代官山 蔦屋書店」を源流にしたライフスタイル提案型の書店で、居心地の良い時間と空間をお届けします。1000坪をゆうに超える売場では、あらゆるカルチャーが触発しあい、新しいつながりを生み出す。そんなコミュニティを梅田に創造します」。

また、日販さんの出品依頼書にはこんな紹介文もあります。「1000坪のカフェ――SC内とは思えない公園とBOOK&CAFEが融合したような象徴的な場所を創りたい――。従来の書店と違い、本や他の商材やサービスが、「Luxury Life, Work Style, Communication, Beauty&Health」の4つのスタイル起点で分類されたゾーンで構成されるシームレスなBOOK&CAFE店舗が「梅田蔦屋書店」です」。この文言の出所がCCCさんなのか日販さんなのかは存じ上げませんが、こんにちのリアル書店の一理想形を良くも悪くも表していることは確かです(イメージとしては美しいけれど、心地よく響く言葉を羅列しているだけという印象も否めない)。どんな店舗を設計するにせよ、書店の生命線は優れた選書と優れた売場編集ができる人材の層がどれくらい厚いか、です(90年代前半までのリブロ池袋本店が当時の一種の「聖地」と見なされていたのは、こうした点で優れていたからです)。こんにちどの書店さんでももっとも苦労されているのはこの人材の確保と育成です。どんなにコンセプトを刷新して先進的な複合店舗をつくっても、その点がもしもおろそかならばその店はしょせん張り子の虎に過ぎません。その書店が本当に面白いかどうかは如実に書棚に表れますから、目利きの目にはごまかしようがないのです。書店業界の最先端を担っているCCCがそのことに気づいて努力しているかどうかという点が出版人には一番気になるところです。
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by urag | 2015-03-16 15:07 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 12日

3月末発売予定:写真集『猪瀬光全作品』

2015年3月30日発売予定 *芸術・写真

猪瀬光全作品(INOSE Kou COMPLETE WORKS)
猪瀬光写真/著
月曜社 2015年3月 本体9,000円 B5変型判上製(横263mm/縦187.5mm/束26mm)クロス装260頁 ISBN978-4-86503-024-2

※現在アマゾン・ジャパンでご予約受付中です(サイン本ではありません)※

迷宮の記憶を宿す写真標本群――寡作で知られる写真家の30年の全貌、待望の全作品集。撮影年1982年から2013年。収録作品140点、特色4色印刷。巻末に猪瀬光によるテキスト「はじまりのはなし」、作品データ(撮影場所、撮影年)、略年譜+書誌を併載。別刷テキスト「猪瀬光という名のミステリー」=森山大道

「猪瀬光とぼくとは、その写真の方法論上において北極と南極ほどの違いがある。彼は原質を問い、ぼくは表象を思うが、つまるところ一枚の銅貨である」(森山大道)。

猪瀬光(いのせ・こう):1960年生まれ。写真集に『Visons of Japan INOSE Kou』(光琳社、1998年)がある。

◎サイン本先行発売・・・・Akio Nagasawa Online Shop
◎サイン本予約受付・・・・NADiff Online

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◎猪瀬光作品展「THE COMPLETE WORKS

日時:2015年3月6日(金) - 4月19日(日)11:00-19:00 (休廊月火)
場所:Akio Nagasawa Gallery (東京都中央区銀座4-9-5 銀昭ビル6F)

第1期 ”DOGRA MAGRA"3月6日(金)- 3月29(日)
第2期 ”PHANTASMAGORIA"4月1日(水)- 4月19日(日)

内容:一枚一枚のプリントに究極のこだわりを見せるが故に発表の機会が少ない猪瀬光。極限にまで集中し焼き上げられたそのプリントには驚くべき密度と強度が充満しています。本展では代表作『DOGRA MAGRA』、新作『PHANTASMAGORIA』と会期を二期に分け猪瀬光の全貌に迫ります。会期に併せ、ポートフォリオ『DOGRA MAGRA』&『PHANTASMAGORIA』(Akio Nagasawa Publishing)も刊行致します。
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by urag | 2015-03-12 11:18 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 11日

4月中旬発売予定:ソレルス『ドラマ』待望の改訂版

2013年4月13日取次搬入予定 *フランス文学・小説

ドラマ
フィリップ・ソレルス=著 岩崎力=訳
月曜社 2015年4月 本体2,400円 46判並製200頁 ISBN978-4-86503-026-6

※ただいまアマゾン・ジャパンにてご予約受付中※

まずはじめに(最初の状態、線が何本か、版画――演技〔ゲーム〕がはじまる)、目と額の内側に集まってくるのは、もっとも安定度の高い要素なのかもしれない。すばやく彼は調査する。海の思い出が一連の鎖となって右腕を通りぬける。なかばめざめ、なかば眠った状態でそれをとらえるのだが、まるで風にあおられた泡のようだ。左脚は逆にさまざまな鉱物の集団の作用を受けているらしい。背中の大部分は、たそがれどきのいくつかの部屋のイメージを、上下に積み重ねて保っている。(本書冒頭より)

《書く》という営為そのものを主題とし、《書くことを書く》試みのめくるめき変幻と遷移によって、《書く者》の意識の流れと記憶の連環を不可視の領界から紙幅という肉体へと浮上させた稀有な小説。虚無が支配するしるしなき白い沈黙の王国は、本書によって破られる。ジョイス以後の文学における言語実験の一頂点をなしたソレルスの傑作。待望の改訂版(初版は新潮社より1967年刊)。【叢書・エクリチュールの冒険】第9回配本。

本書の造本について:本文は作品中の描写に倣って白い紙に墨のインクで刷っています。カヴァーはパール系の白い特殊紙に書名をレインボー箔で加工します。

フィリップ・ソレルス(Philippe Sollers, 1936-):フランスの作家。近年出版された訳書に以下のものがある。『神秘のモーツァルト』(堀江敏幸訳、集英社、2006年)、『女たち』上下巻(鈴木創士訳、河出文庫、2007年)、『ステュディオ』(齋藤豊訳、水声社、2009年)、『セリーヌ』(杉浦順子訳、現代思潮新社、2011年)。

岩崎力(いわさき・つとむ, 1931-):仏文学者。近年の訳書に、ユルスナール『世界の迷路(I)追悼のしおり』(白水社、2011年)、ラルボー『A.O.バルナブース全集』(上下巻、岩波文庫、2014年)、プルースト『楽しみと日々』(岩波文庫、2015年)などがある。
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by urag | 2015-03-11 10:36 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 10日

マクルーハン『メディアはマッサージである』新訳、ほか

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

★門林岳史さん(共訳:リピット水田堯『原子の光(影の光学)』)
マクルーハンの伝説的名作『メディアはマッサージである――影響の目録』の新訳を手掛けられておられます。デザイン監修は旧版の装丁も担当されていた加藤賢策さん。巻末には「副音声」と題した解説が配されています。門林さんと加藤さんに編集担当の吉住唯さんが司会でお話しを聞くという趣向です。名著が文庫で入手できるというのは嬉しいことです。この勢いでぜひ、マクルーハンとフィオーレのもうひとつの共作であるWar and Peace in the Gloval Village(日本語訳は『地球村の戦争と平和』広瀬英彦訳、番町書房、1972年)の新訳も手掛けていただけたら素敵だなと思います。

メディアはマッサージである――影響の目録
マーシャル・マクルーハン+クエンティン・フィオーレ著 門林岳史訳
河出文庫 2015年3月 2015年3月 文庫判192頁 ISBN978-4-309-46406-0

帯文より:メディアの多様化それ自体が、発せられた内容よりも、現代人の近くを拡張し、価値観を変える――マクルーハンが展開したこの「メッセージ」を、本書は、ヴィジュアルとテクストのミックスによってパフォーマティヴに体現する。新しい時代の幕開けを象徴するベストセラー、待望の新訳。訳者と日本語版デザイナーによる詳細な「副音声解説」を付す。


★トニ・ネグリさん(著書:『芸術とマルチチュード』)
★清水知子さん(著書:『文化と暴力』、共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★廣瀬純さん(著書:『絶望論』、共著:『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★吉田裕さん(共訳:ロイル『デリダと文学』)
現代思想 3月臨時増刊号 シャルリ・エブド襲撃/イスラム国人質事件の衝撃』(青土社、2015年2月、本体1,300円、ISBN978-4-7917-1296-0)に論考や訳稿を寄せておられます。関係するコンテンツだけ抜き出しますと、T・ネグリ「シャルリー・エブドからグローバル戦争へ?――トニ・ネグリへの二つの質問」中村勝己訳、S・ジジェク「最悪の者らは本当に強烈な情熱に満ち満ちているのか?」清水知子訳、鵜飼哲「一月七日以前――アラブ人の友人たちとの対話から」、廣瀬純「我々はいったいどうしたら自殺できるのか。――「シャルリ・エブド」襲撃事件について」、T・アリ「「そもそも必要のないことだった」」吉田裕訳。目次内容の全容は、誌名のリンク先をご覧ください。なお、シャルリ・エブド事件を巡っては今月、鹿島茂・関口涼子・堀茂樹編『シャルリ・エブド事件を考える――ふらんす特別編集』(白水社、2015年3月、本体925円、ISBN978-4-560-08430-4)が緊急出版されていることは周知の通りです。


★馬場智一さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
ちょうど一年前の2014年2月に東大東洋文化研究所にて開催された若手研究者ワークショップ「「ヨーロッパ」とその他者」の記録がCPAGブックレットの第5号として発行され、馬場さんは「「ヨーロッパ」への抵抗――リオタールにおける「異教」」を寄稿されているほか、ブックレットの編者と装幀を担当されています。CPAGというのは、「グローバル化時代における現代思想」(科研費補助金・基盤A・研究課題番号24242002)のこと。ワークショップの概要はこちらで馬場さんご自身によって報告されています。


★川田喜久治さん(写真集:『地図』)
イギリスの出版社「MACK」から写真集『The Last Cosmology』が今春出版されるのに先立ち、来週末より東京国際フォーラムの地下2階展示ホールで催される「アートフェア東京2015」(一般公開:3月20日11:00-21:00、3月21日11:00-20:00、3月22日10:30-17:00)の企画ブース「MACK by P.G.I. / twelvebooks」にて、上記写真集の先行販売が行われるとともにオリジナルプリントの販売も行われます。

また、同アートフェア会場内で21日に、川田さんとMACKのディレクターMichael Mackさん、グラフィック・デザイナーの田中義久さんをパネリストに、上記書の制作をめぐるトークショーが行われるとのことです。

◎【トーク】写真集と写真の関係

日時:2015年3月21日(土) 15:30-17:00
会場:エデュケーショナルラウンジ
 ※通訳付き。予約不要、入場の際にアートフェア東京のチケットを提示。開場は20分前(予定)。

登壇者:マイケル・マック(MACK ディレクター)、川田喜久治(写真家)、田中義久(グラフィックデザイナー/Nerhol)
モデレーター:増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)

主催:ILPT 実行委員会
後援:ブリティッシュ・カウンシル

内容:複数の写真を紡ぐことで1枚の写真作品が持つ意味やストーリーとは違う新たな作品として提示される写真集。写真集制作における写真の捉え方や編集方法、ブックデザインの考え方。写真家、学芸員、出版社、デザイナー、それぞれの視点からアートオブジェとしての写真集の魅力とその可能性について考えます。
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by urag | 2015-03-10 18:46 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 08日

注目新刊:『HAPAX』第3号「健康と狂気」、など

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HAPAX vol.3――健康と狂気
夜光社 2015年2月 本体1,000円 B6変判並製160頁 ISBN978-4-906944-05-7

目次:
新しい健康を発明せよ!  HAPAX
狂気の真理への勇気  小泉義之
〈戦争国家革命〉前夜  友常勉
水煙草、パンクス、〈分断法〉  シーシャ=ヤニスタ解放戦線+TOD
蜂起的イスタンブール  Snoopy+高祖岩三郎
ロジャヴァ:国境を破壊し自律を目指す闘争  アリ・ベクタシ
悲惨ノート  Deng!
孤独へと浮上せよ  アンナ・R
二〇一四年六月の恋唄  マニュエル・ヤン

★発売済。アナキズム思想誌を標榜する「ハパックス」の第3号は本号より誌面を横組から縦組にリニューアル。変更の違和感はまったくありません(なお、すべてが縦組なのではなく、注や寄稿の一部が本文から独立して横組になっています)。第3号の特徴は、書店や読者に向けた特集の要旨もしくは宣伝文がほぼ「ない」ということです。同誌第1号(2013年9月)には帯文がついていて、「もう、誰にも動員されたくないあなたのための思想誌、創刊!  世界/地球と蜂起主義アナキズムの交錯点から未来なき未来へ。いまこの世界の破滅そのものを蜂起に反転させる新しい思想/政治/文化はどこにあるか。市民の製造こそが社会的のみならず、政治的、経済的、さらには人類学的な帝国の勝利である」という宣言がありました。

★第2号(2014年6月)に帯文はありません。夜光社のブログにも目次が列記されているだけです。書店向けの新刊案内にはこうあります。「アナキズム系思想誌ハパックス第2号! 高祖岩三郎やティクーンなど論考10本(翻訳4本)。1号の執筆陣に加え、友常勉、そして関西から強力な匿名グループ、影丸13号が参加!」。そして今回の第3号ですが、帯文なし、ブログには目次の列記のみ。書店向けの新刊案内には「アナキズム思想誌ハパックス第3号! 誌面をリニューアル。本文縦組となります」と素っ気ないです。さらに言えば、同誌の編集を担当する「HAPAX」氏が毎号の巻頭に寄稿していますが、内容的に見て各号の統一的な方向性を説明したり要約したりするという役割を担っているという様子ではありません。

★つまり本誌においては複数の声がそれぞれに鳴り響き、多方向に言論を展開する、連帯なき連帯の運動となっていると言うべきだろうと思われます。表紙の寄稿者名も全員同じ大きさで横並びになっているのも、そうしたスタンスの表れであるように感じます。既刊号と唯一違うのは、第3号では「健康と狂気」という標語が掲げられていることです。既刊号にはこうしたフレーズはありませんでした。「より高次の狂気=新しい健康への覚醒」(12頁))と巻頭論文でHAPAX氏は書きます。「高次の狂気」というのは、本号でも寄稿されている小泉義之さんの近著『ドゥルーズと狂気』(河出書房新社、2014年7月)で論じられた主題です。小泉さんはこの著書においてドゥルーズの読解を通じて「高次の健康にして高次の狂気を生きる人間」(359頁)について書かれていました。

★小泉さんは第3号への寄稿論文「狂気の真理への勇気」では主にフーコーのパレーシア論を援用し、ヘイトスピーチと「行動の狂気の自由」(28頁)の問題系に切り込んでおられます。「フーコーの最後の講義録である『真理の勇気』〔慎改康之訳、筑摩書房、2012年〕によるなら、パレーシアとは、語源的には、「すべてを語ること」、「何を前にしても尻込みせず、何も隠すことなく語ること」である。したがって、ヘイトスピーチもパレーシアである。そう認めておかなければならない」(25頁)。このあとさらにフーコーの講義録からパレーシアをめぐる重要な引用が続きますが、核心的なネタバレになるので引用はやめておきます。言うまでもありませんが、小泉さんはヘイトスピーチの「内容」を擁護されているわけではありません。

★偶然ですが、青土社の月刊誌『現代思想』3月号「特集=認知症新時代」もまた、こんにちにおける「健康」を問う特集号となっています。ノンフィクションライターの向井承子さんによるエッセイ「国益としての健康」をはじめ、力作論考やインタヴューが並んでいます。「健康」志向が政治や企業にとって都合のいい道具にされてしまうリスクについて考えたい読者にお薦めです。


氷山へ
J・M・G・ル・クレジオ著 中村隆之訳
水声社 2015年3月 本体2,000円 46判上製152頁 ISBN978-4-8010-0082-7

帯文より:"ことばの極北"への旅――。2008年にノーベル文学賞を受賞したル・クレジオの思考と実践に大きな影響を与えた孤高の詩人アンリ・ミショー。彼の至高の詩篇「氷山」「イニジ」について、ル・クレジオが包括的かつ詩的に綴った珠玉の批評エッセイ。解説:今福龍太

目次:
氷山(アンリ・ミショー)
〔序文 (ル・クレジオ)〕
氷山へ(ル・クレジオ)
イニジ(アンリ・ミショー)
イニジ(ル・クレジオ)
ことばの氷海への至上の誘い(今福龍太)
訳者あとがき

★発売済。シリーズ「批評の小径」の最新刊。原書は、Vers les icebergs (Fata Morgana, 1978)です。ミショーによる2篇の詩――「氷山」(1934年執筆、35年刊『夜動く』所収)と「イニジ」(1955年頃執筆、62年『風と埃』および73年『様々な瞬間』所収)――、さらにそれらをめぐるル・クレジオのエッセイが訳され、今福龍太さんが解説を書かれています。1978年6月15日と日付を打たれた巻頭の無題の序文で、ル・クレジオはこう書いています。「「イニジ」、「氷山」、これらはフランス語が生み出したもっとも美しく、もっとも純粋で、もっとも真実な詩のうちでも究極の二篇(二十年の隔たり)だ。詩がこの力、この本能、宇宙における生命の諸元素と結びついたこの行為であるとき、文体上の工夫、技法上の達成や隠された意味などといったことはどうでもいい。ぼくはアンリ・ミショーの詩を旅するように読みたい」(12頁)。

★ル・クレジオの2篇のテクストは「旅するように読む」というその自由さにおいて、単なる批評でも論評でもない、形式やジャンルから解き放たれた独特の呼吸を獲得しています。それ自体がひとつの散文詩でもあるような、とても美しい旅です。今福さんはこう綴っておられます。「ル・クレジオが本書で示したように、書くことが旅することであるなら、読むこともまた旅である。そして、その旅が未知のものであること、人跡未踏の極北への旅であることほど高揚することはない。読者がその旅の果てで出遭う氷山は、旅人が一人としておなじ者でない以上、無限定の姿をとって、私たちの言語的想像力の氷海を蒼黝い縞模様を描きながら揺れているだろう」(120頁)。

★ル・クレジオの2篇のテクストを受け取ったミショーがル・クレジオに書き送った手紙の一節が「訳者あとがき」で紹介されています。「こんな贈物を受けた詩作者がこれまでにいたでしょうか? ばつが悪いですし、身がすくみます。美しすぎる」(1978年12月22日付)。同じく「訳者あとがき」が教えるところでは、隔週書評紙「キャンゼーヌ・リテレール」168号(1973年7月刊)掲載の初出において、ミショーの「イニジ」を取り囲むようにしてル・クレジオのイニジ論は配置されていた、とのことです。想像するだけで胸が躍る、まるで宝島の地図のようなレイアウトです。

★訳者の中村さんはこう記しておられます。「この小著の魅力は、読書を通じて、時間的にも空間的にもへだたった、聖なる場所へと読み手を連れ出してくれるところにある」(136頁)。本書のような素敵な本を誰かから送られたら、おそらくミショーだけでなく、多くの読み手が嬉しくなるのではないかと思います。そんなわけで本書はプレゼントにぴったりの本なのです。


沖縄物産志――附・清国輸出日本水産図説
河原田盛美著 増田昭子編 高江洲昌哉・中野泰・中林広一校注
東洋文庫 2015年3月 本体3,100円 B6変型判函入380頁 ISBN978-4-582-80859-9

帯文より:明治に活躍した農水産学者の著作2冊を収録。『沖縄物産志』は明治初期の沖縄で実見した物産の記録。『清国輸出日本水産図説』は当時の中国に輸出した主な水産物を解説。ともに図入り。

★まもなく発売。平凡社さんの「東洋文庫」第859巻です。幕末~明治期の農学者、河原田盛美(かわらだ・もりはる/もりよし:1842-1914)による『沖縄物産志』(中林広一さんによる校訂、高江洲昌哉さんによる注釈、底本は国文学研究資料館所蔵の自筆原稿)と、『清国輸出日本水産図説』(中野泰さんによる校訂および注釈、底本は国立国会図書館所蔵本)を収め、巻末には校訂・注釈者の3氏に編者の増田昭子さんを加えた4氏による解説と、編者あとがきを併載しています。

★解説によれば『沖縄物産志』と『清国輸出日本水産図説』は、「河原田盛美が明治七年、在勤を命じられた琉球で見聞した物産記録と、加えて清国への日本水産物輸出の書である」(354頁)。さらに、これらが書かれた背景が次のように説明されています。「本書が書かれた明治十年代の日本は、明治政府が日本国家として国を整え始めた時期で、もっとも肝要なことは、アジアのなかにあって欧米列強の外圧に屈せず、独自の国家を築くことにあった。そのために強固な法治国家を作り、海外資本の流入を避け、日本の官・民業を育成、発展させて国力を富ますことであった。殖産興業を第一とした富国を目指していた時代であった。このような時代の要請が、海外で行われる万国博覧会に日本の物産を出品し、国力を示し、輸出産業増進を図ることであった。まさにその要請に応えるべきして著作・刊行された二つの書なのである」(同頁)。

★東洋文庫の次回配本は4月刊『乾浄筆譚――朝鮮燕行使の北京筆談録』とのことです。
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by urag | 2015-03-08 18:35 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)