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2015年 02月 25日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2015年3月20日(金)開店予定
ブックスモア大館店:書籍雑誌594坪、文具100坪
秋田県大館市清水5-1-17
大阪屋帳合。弊社へのご発注はここ半年の新刊を中心に芸術書少々。奥羽本線「大館駅」より自転車で約5分(徒歩だと約20分)の郊外店です。取次からの出品依頼書や書店の挨拶状では住所が「清水5-17-1」と記載されているのですが、出品依頼書の地図と照合し、さらに、実在する番地の中から推察すれば、「清水5-1-17」の間違いかと思われます。

ブックスモアの経営主体である秋田トヨタ自動車さんの会長と、フランチャイザーのジュンク堂書店さんの社長の連名での挨拶状によれば、「業務提携先であるジュンク堂書店の全面協力を得て〔・・・〕什器レイアウト・選書・ジャンル構成・棚詰・研修に至るまでジュンク堂書店がこれまで培ってきた経験を踏まえ、さらに進化した「立地に相応しい洗練された店」を目指す」とのことです。

500坪超の書店さんですが、弊社商品はほとんど食い込めていません。書籍雑誌の部門構成比では美術芸術3%、人文教育3%、文芸3%で、メインはコミック19%、文庫13%、趣味実用13%、雑誌11%、学参8%(辞書や語学を足すと10%)、児童書8%ということで、弊社以外の専門書版元にとっても厳しい状況かもしれません。ロングセラーではなく、直近の話題書から選書されていることを見ても、ジュンク堂さんの最近の新店舗は「脱専門書」の傾向を強めているような印象があります(あくまでも印象です)。専門書版元にとっては「頼みの綱はジュンク堂」であるだけに、この傾向が強まれば、専門書の販売はいっそうネット書店に依存せざるをえなくなると思います。ロングテールを維持できるリアル書店が少ないのは事実です(書店だけに責任があるのではなく、出版社も取次も関わりあることです)。小部数専門出版の未来が「脱リアル書店」へと傾くのかどうかはいずれ鮮明になってくると思われます。


2015年4月10日(金)開店予定
ジュンク堂書店大泉学園店:255坪
東京都練馬区東大泉1-600 Grand Emio 3F
大阪屋帳合。弊社へのご発注は、上記FC店とほぼ同じ傾向で、ここ一年の新刊が中心の芸術書、人文書、文芸書をそれぞれ数点ずつです。長らく再開発され続けてきた西武池袋線「大泉学園駅」の周辺ですが、Grand Emio(グラン・エミオ)というのは西武鉄道株式会社と株式会社西武プロパティーズの連名による昨年12月24日付のプレスリリースによれば、施設の概要は以下の通りです。

「大泉学園駅北口地区市街地再開発組合が開発を進めている「リズモ大泉学園」の低層部分に新商業施設「Grand Emio(グランエミオ)大泉学園」を2015年4月にオープンいたします。今後、西武鉄道沿線の高いマーケットポテンシャルを有する駅における、より幅広い業種を集積する商業施設については「Grand Emio(グランエミオ)」として展開することで、地域の賑わいを創出するとともに、駅ナカ商業施設「Emio(エミオ)」とともに沿線の商業施設の認知度およびイメージを高め、沿線価値の向上を目指してまいります。〔・・・〕「グランエミオ大泉学園」は、大泉学園駅北口改札からペデストリアンデッキで直結し、地下1階から3階の4フロアで構成されています。「食」×「集い」×「文化」をテーマに、地下1階にはスーパーマーケット、1階にはカフェや生花、ペデストリアンデッキと接続する2階にはベーカリーやファッション、服飾・生活雑貨、3階にはレストランのほか大型書店や音楽教室など、バラエティ豊かな28店舗を導入します」。

現在、大泉学園駅周辺にはトーハン帳合の「くまざわ書店大泉学園店」があり、いまはなき駅前の英林堂(2013年8月閉店)や、2010年2月に閉店したNOS VOS by PARCO内にあったリブロを思い出すにつけ、あけすけに言えば書店さんが増えても苦戦するだけのような気がしないでもないです。とはいえ、弊社本を扱って下さる書店さんが、知り合いが多い地域にできるというのは嬉しいことです。私だったら、地元にもしジュンク堂ができるとなれば嬉しくてたまらないです。願わくば「新刊を店頭で見たよ」という声を掛けてもらえるようになるといいなと妄想しています。


2015年4月10日(金)開店予定
BOWLららぽーと富士見店:126坪(うち書籍35坪、ほか雑貨CDなど)
埼玉県富士見市山室1-1313 ららぽーと富士見 1F
大阪屋帳合。弊社へのご発注は人文書、芸術書、文芸書など棚用と平積用あわせて十数点。上記のブックスモアやジュンク堂より俄然多い点数坪数から考えて、この採用率の高さはただただありがたいの一言です。選書は大阪屋の子会社「リーディングスタイル」のKさんですが、書店の経営自体は、紙の大手専門商社である日本紙パルプ商事株式会社が昨秋、複合書店経営事業への参入のために設立された新会社「リーディングポートJP」が行います。Kさんが移籍されたというよりは、「リーディングポートJP」さんが経営する複合書店さんの選書や商品調達を「リーディングスタイル」さんが手伝っているということなのかなと想像しています。

「マルノウチリーディングスタイル」「ソリッドアンドリキッド」「niko and...」「スタンダードブックストア茶屋町」など、セレクトショップ(書籍雑誌+文具雑貨)+カフェのコンパクトな複合型書店での選書を続々と手掛けてきた「リーディングスタイル」さんの活躍の場はますます広がりつつあるようです。「BOWL」の概要については、日本紙パルプ商事株式会社の昨年12月3日付のプレスリリースにこうあります。

「「BOWL」は、同一テーマの本と雑貨を同じ棚に陳列したり、購入前の本をカフェスペースで軽食と共に試読いただくなど、既存の書店のスタイルにとらわれない取り組みで、訪れた方が本をじっくり選べる新しい形態の書店です。また、カフェスペースにつきましては、サイン会、トークショウ等のイベント会場としての貸し出しも予定しております」。

プレスリリースに記載されている「BOWL」のロゴ画像には「READING STYLE PROJECT FUJIMI」という文字が見えます。ちなみに「新文化」2014年9月4日付のニュースフラッシュによれば、「紙の商社が書店経営に参入するのは初めて」とのことでした。また、ららぽーと富士見の概要は、三井不動産の昨年12月3日付のプレスリリースによれば、以下の通りです。

「三井不動産株式会社は、2015年4月10日(金)に埼玉県富士見市の中心地に、敷地面積約152,000m2と東武東上線エリア最大級となるリージョナル型ショッピングセンター「三井ショッピングパーク ららぽーと富士見」を開業いたします。〔・・・〕来春開業する「ららぽーと富士見」は、満足度の高いワンストップショッピングを実現する293店舗の出店に加え、建物や敷地の中に留まらない、より地域と一体化した『ららぽーと』となります。さらに、当施設はエンターテインメント機能の充実や、コト消費とショッピングを融合させた「体感型店舗」を誘致するなど、今後の『ららぽーと』の目指す姿である、“人が集まる”から“人が交流する”新しい『ららぽーと』へと進化し、多様化するニーズや新たなライフスタイルに幅広く応えていきます。「ららぽーと富士見」コンセプト――当施設の周辺は住宅地化が進みつつも、緑豊かな自然も広がる、人々のさまざまな生活の営みが交差する場所です。そこで当施設は、「人・モノ・文化が交差する新拠点~CROSS PARK~」をコンセプトに、従来の“人が集まる”から、空間、コミュニティ、体験、ショッピングを通して“人が交流する”新たな『ららぽーと』を目指します」。

「コト消費とショッピングを融合させた「体感型店舗」を誘致」という点をもう少し詳しく見てみると、「Shopping is Entertainment」を実現する体感型店舗として数え挙げられているのは、家電店のノジマ、ペットショップのペットプラス、スポーツ用品店のスーパースポーツゼビオです。BOWLは、ベイクルーズ社による“ファッション×カフェ”「j.s. pancake café」とともに、「カフェスペースを充実させて、お一人でも居心地の良い空間を提供します」と紹介されています。

ららぽーと富士見の最寄駅は東武東上線の「鶴瀬駅」ですが、基本的に徒歩圏ではなく(歩くと30分以上かかります)、バスや車での利用がメインになります。県道334号を挟んで向かい側にあります。この立地が集客にどう影響するのか、オープンが楽しみです。


2015年4月16日(木)開店予定
紀伊國屋書店アミュプラザおおいた店:446坪(売場412坪、事務所32坪)
大分県大分市要町1-14 アミュプラザおおいた 4F
トーハン帳合。弊社へのご発注は直近の新刊1点。追加発注を期待したいです。紀伊國屋書店の専務さんのお名前がある挨拶状によれば、同店は「大分市に2店舗目となる新規店舗はJR大分駅の商業施設「アミュプラザおおいた」内への出店となります。現在大分は、100年に一度の規模で大分駅周辺の再開発を進めており、一昨年には市の複合文化交流施設であるホルトホールを駅南口にオープンし、また本年4月24日には駅の北側徒歩15分の場所に大分県立美術館をオープン予定です。そしてJR大分シティにより現在大分駅が回想され、ホテル、温浴施設、商業施設が一体となった新たな駅空間として4月16日に全面開業いたします。〔・・・〕今回の商品選定にあたりましては、〔・・・〕トーハン様による市場調査をもとに、弊社チェーンの鹿児島店のデータを活用し、売れ行き良好、かつ地元のニーズに応えられる商品を厳選いたしました」とのことです。
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by urag | 2015-02-25 17:38 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 22日

注目新刊:サルトル『家の馬鹿息子』第4巻、ほか

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◎サルトル『家の馬鹿息子』第4巻、新版『象徴哲学大系』第IV巻、など

家の馬鹿息子4――ギュスターヴ・フローベール論(1821年より1857年まで)』ジャン-ポール・サルトル著、鈴木道彦・海老坂武監訳、黒川学・坂井由加里・澤田直訳、人文書院、2015年2月、本体15,000円、A5判上製448頁、ISBN978-4-409-14066-6
新版 錬金術』マンリー・P・ホール著、大沼忠弘・山田耕士・吉村正和訳、人文書院、2015年2月、本体4,000円、A5判上製330頁、ISBN978-4-409-03086-8
うちあけ話』ポール・コンスタン著、藪崎利美訳、人文書院、2015年2月、本体2,000円、4-6判上製248頁、ISBN978-4-409-13037-7

★人文書院さんの新刊より3点ご紹介します。まず『家の馬鹿息子』第4巻はまもなく発売。23日(月)取次搬入と聞いています。「家」は「いえ」ではなく「うち」と読みます。既刊書の第1巻(82年、本体12,000円)、第2巻(88年、本体9,000円)、第3巻(2006年、本体15,000円)はすべて版元在庫あり。他の巻よりは頁数が少ないせいか、お高い印象がありますけれども、ほぼ10年前の既刊書より高額には設定していないというだけでも、版元が踏ん張って下さっていることが分かります。第4巻は第三部「エルベノンまたは最後の螺旋」のIIの最後までを収録。これで原書全3巻のうち、第2巻までが翻訳されたことになります。残るは原書第3巻が訳書第5巻として、最後の大冊として、いずれ刊行される予定だそうです。

★『新版 錬金術』もまもなく発売。25日頃取次搬入予定と聞いています。新版『象徴哲学大系』の第IV巻であり、これで全4巻完結となります。最終巻では錬金術師たちとその理論と実践が紹介され、なかでもローゼンクロイツ『化学の結婚』には単独の章を割いています。さらにキリスト教やイスラーム、アメリカ・インディアン(ママ)の神秘体系についても解説が試みられています。「ヘルメスのエメラルド表」をはじめ、カラー図版多数。巻末には全4巻を通じた参考文献や事項索引が付されています。人文書院さんでのホールの既訳書にはこのほか『フリーメーソンの失われた鍵』(吉村正和訳、1983年)や『人間――密儀の神殿』(大沼忠弘ほか訳、1982年)がありますが、現在は品切。ご興味がある方は古書店をお探しになってください。

★『うちあけ話』は発売済。1998年度のゴンクール賞を受賞した小説で、コンスタン(Paule Constant, 1944-)の作品が訳されるのは本書が初めてのようです。原書は、Confisdence pour confidence (Gallimard, 1998)で、フランスでは60万部を超えるロングセラーとのこと。帯文に曰く「仕事面では成功しながら、愛する人や家族にそっぽを向かれた女性たち。同じ屋根の下で一夜を明かすという偶然から、はからずも自分の弱点を認め、他者と向き合い、互いに胸の内をうちあけ合うことで自分の原点を見つめ直し、明日への活力を見出していこうとする女性たちの健気さと逞しさが、諷刺とユーモアたっぷりに描かれている」と。著者は「ポール」とカタカナで読むと男性かと勘違いしがちですが、女性です。彼女のこれまでの活躍については訳者あとがきに詳しいです。


◎神経犯罪学(ニューロクリミノロジー)の第一人者による包括的解説書、など

暴力の解剖学』エイドリアン・レイン著、高橋洋訳、紀伊國屋書店、2015年2月、本体3,500円、46判上製640頁、ISBN978-4-314-01126-6
原爆を盗め!』スティーヴ・シャンキン著、梶山あゆみ訳、紀伊國屋書店、2015年2月、本体1,900円、46判並製352頁、ISBN978-4-314-01127-3
論語集注4』朱熹著、土田健次郎訳注、東洋文庫、2015年2月、本体3,200円、B6変判函入494頁、ISBN978-4-582-80858-2
残影』桐谷美香著、鷹野隆大写真、平凡社、2015年2月、本体2,800円、B5変型判上製80頁、ISBN978-4-582-27818-7
近代の超克――その戦前・戦中・戦後』鈴木貞美著、作品社、2015年2月、本体4,200円、46判上製576頁、ISBN978-4-86182-524-8
銀幕の村――フランス映画の山里巡り』西出真一郎著、作品社、2015年2月、本体1,800円、46判上製216頁、ISBN978-4-86182-526-2

★まず、紀伊國屋書店さんの今月新刊より2点をご紹介します。『暴力の解剖学』『原爆を盗め!』、どちらもまもなく発売です。『暴力の解剖学』の原書は、The Anatomy of Violence: The Biological Roots of Crime (Pantheon, 2013)です。帯文には「犯罪研究は新時代に突入した!」と大書されています。エイドリアン・レインはペンシルベニア大学教授で、神経犯罪学(ニューロクリミノロジー)の開拓者です。訳者あとがきの文言を借りると、神経犯罪学とは「脳や自律神経系などの生物学的な構造や機能の欠如が、いかに反社会的性格を生み、ひいてはその人を犯罪に至らしめるのかを研究する学問分野」であり、本書はその包括的な解説本です。ロンブローゾの亡霊かと眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、いわゆるトンデモ本ではなく、著者は険しい道であることを知りつつも地道に研究を続けています。かのダマシオも「ありのままの事実が徹底的に精査されている。非常に貴重な一冊だ」と評価しているとのことです。本書は冒頭から、著者自身があやうく殺されかけた事件の生々しい描写から始まり、あっという間に読者を惹きこみます。「生物学は運命ではない。私たちは、公衆衛生の視点と組み合わされた、新時代の学際的な研究によって得られつつある一連の「バイオソーシャル」な知見を活用すれば、犯罪が起こる原因を解明できるはずだ」(26頁)という言葉に著者の探求心がよく表れているように思います。各紙誌の書評欄で取り上げられそうな、ヒットの予感がします。

★『原爆を盗め!』の原書は、Bomb: The Race to Build -and Steal- the World's Most Dangerous Weapon (Roaring Brook Press, 2012)です。帯文はこうです。「第二次大戦下、原爆開発競争のゴングが鳴った。米英の「マンハッタン計画」に天才科学者が集結し、その情報を盗もうとソ連のスパイが暗躍する。一方で、ヒトラーも原爆製作を進めていた。現在世界に1万6千発以上、私たちの時代を決定的に変えてしまった核兵器開発の知られざる物語」。かの「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙は本書を「歴史が「退屈」だと考えている若者の目を一気に覚まさせる、手に汗握るノンフィクション」と評したのだとか。なぜ「若者の目」なのかというと、訳者あとがきによれば本書はもともとヤングアダルト向けの本として出版されたのだそうで、確かに今時の映画のようにテンポよく読ませます。軍人と科学者とスパイと政治家が渦となって入り乱れ、読者の胸の鼓動もそれにあわせて高まるであろうその果てに、あの特異点が死神となって世界を突如覆い始めます。米軍による広島への原爆投下です。被爆の描写は日本語文献の引用が中心で英語圏の読者のショックを最小限に抑えるように配慮されているように思われますが、日本の読者の眼前に広がる闇はたとえようもなく暗いものです。科学者たちの後悔はすべて遅まきであり、哀れです。核戦争がすなわち世界の滅亡であることを著者は警告していますが、私たち現代人に欠けているのはそれを文字通りに受け取る想像力なのかもしれません。

★次に、平凡社さんの今月新刊より2点をご紹介します。『論語集注4』は発売済。全4巻完結です。第4巻には「憲問第十四」から「尭曰第二十」までを収めます。「訳注者あとがき」で土田先生は「この注釈書は数ある『論語』の注釈書の中でも獲得した読者数、及ぼした影響において冠絶した存在である。本書を抜きにして東アジアの近世の思想や文化は論じられない」と評しておられます。また、こうも書かれています。「『論語集注』は「集注」という書名が示すように注を集めたことを標榜していながら、実は朱子がかなり自分の解釈をもとにアレンジし、結果的には朱子の創作のようになっている書物なのである。朱子にとって重要だったのは、道学諸儒の説の忠実なトレースではなく、自分の信ずる道学流『論語』注釈を提出することであった」(487頁)。

★『残影』はまもなく発売。版元紹介文によれば本書は「現代美術家で花の造型をテーマに活躍する著者の作品集。室町時代の「たてはな」と桃山の「立花」を継承し、現代のいけばなを創作。撮影はいま注目の写真家・鷹野隆大による撮り下ろし」。一年前に同じく平凡社さんから刊行された『心像』に続く作品集です。どう表現したらいいのか、そぎ落とされた感じと艶めかしさを同時に感じる作品群がモノクロ写真で紹介されています。一瞥して通り過ぎてしまえるような素っ気なさがありながら、どうしても何度も見直してしまうことになるのは、触れれば壊れてしまいそうな静けさの中に凝縮された不穏な烈しさが押し包まれているからのように感じます。「境界線の花」と題された桐谷さんのテクストにはそうした印象を裏付けする言葉があるような気がしますが、引用はせずにおきます。読者一人ひとりが直接感じるべきものです。

★最後に、作品社さんの今月新刊より2点をご紹介します。『近代の超克』はまもなく発売。23日(月)ごろ取次搬入予定と聞いています。章立てを列記すると、序章「いま、何を問うべきか」、第一章「近代化と「近代の超克」思想」、第二章「日本の近代化と「近代の超克」」、第三章「「東亜協同体」論から「大東亜共栄圏」構想へ」、第四章「戦時期「近代の超克」をめぐる論議」、第五章「丸山真男の「近代の超克」論」、第六章「廣松渉による「近代の超克」」、第七章「「近代の超克」問題を立てなおす」、です。「私がライフ・ワークと思い定めた戦時期の「近代の超克」問題に、ようやく一応の決着をつけることができたと思う」と鈴木さんは「あとがき」で振り返っておられます。「それは19世紀イギリスに発する「近代の超克」思想が、マルクス主義諸派と生命原理主義諸潮流となって相克しながら国際的に展開したという構図のもとに、各国それぞれの動きを眺望し、かつ、その日本版を考えたときに、はじめてえられた結論である。その構図は、20世紀思潮史を総括し、かつ地球環境問題を課題として抱える21世紀に展望を拓くためにも有効と確信している」(517-518頁)。おそらく読者は本書巻末の人名索引と事項索引を立ち読みするだけでも圧倒されることと思いますが、本書全体の構造を押さえるうえではまず序章末尾(90~92頁)の「本書の構成」をご覧のうえ、現代社会に警鐘を鳴らす序章の先頭に戻られるのが良いかと思います。

★『銀幕の村』は発売済。帯文に曰く「田舎町で撮影された映画の舞台を訪ね歩き、作品を紹介しながら、長閑やかな村の風景、人々との交流、そして胸に浮かぶ貧しくも心豊かな戦中/戦後の日本の姿をあたたかい筆致で綴る、詩情に富んだフランス紀行。各地へのアクセスガイド付」。章立てと取り上げられている映画および地名は、書名のリンク先をご覧ください。「映画の舞台を訪ね歩く」というのは好きな作品なら誰もがやってみたくなることですが、海外が舞台ともなればなかなかできない贅沢です。行間に身を任せれば、想像の翼とともに読者の胸に旅情が沁みていく、素敵なフランス紀行です。中には回想の脱線もあります。16歳の少年に「先生は意外と有名なんですね」と言われた時の著者の顔を想像すると吹き出しそうになります。その少年は大学卒業後、編集者になったのだとか。
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by urag | 2015-02-22 01:46 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 19日

3月末発売予定:阿部将伸『存在とロゴス』

2015年3月27日取次搬入予定 *人文・哲学

存在とロゴス――初期ハイデガーにおけるアリストテレス解釈
阿部将伸:著
月曜社 2015年3月 本体3,700円 A5判上製404頁 ISBN978-4-86503-023-5

※ただいまアマゾン・ジャパンで予約受付中※

内容:20世紀後半の西欧哲学と人文諸科学に大きなインパクトを残したハイデガーの〈現前性批判〉とはいかなる思索の格闘であったか。アリストテレス哲学をめぐるハイデガーの大胆かつ緻密な〈現象学的解体〉を丹念に分析し、その知的射程を浮き彫りにする新鋭の挑戦。ギガントマキア(巨人の闘い)をめぐる終わりなき対話と対決! シリーズ「古典転生」第11回配本(本巻10)

目次:
序論 「存在とロゴス」という問題
本論 存在論の解体から構築へ
第一章 「アリストテレスの現象学的解体」とは何か
第二章 日常用語としてのウーシアーの意味射程
第三章 ソピアーとキーネーシスの根源的探究
第四章 「形式的告示」としての根本概念ウーシアー
第五章 「限界画定」から存在論の構築
結論
あとがき
参考文献
事項索引

本文より:たしかにハイデガーは、伝統的存在論が「現前性」や「被制作性」に導かれてきたことを批判する。しかしそれは、そのようなレッテルを貼って斥ければ伝統から逃れられるなどという単純な話ではない。その批判をたえず自ら自身へと向けなければならないことをハイデガー自身が痛烈に自覚していたからである。だからこそ、ハイデガー自身の存在論の背後にはつねにアリストテレス哲学を透かし見ることができる。伝統から逃れられるのは、伝統との対話と対決をそのつど行いつつ、各自が自らの実存を賭して存在論を遂行している合間だけなのである。

著者:阿部将伸(あべ・まさのぶ)1979年生まれ。2002年中央大学法学部法律学科卒業。2013年京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。現在、佛教大学などで非常勤講師を勤める。共著書に『哲学をはじめよう』(ナカニシヤ出版、2014年)、『ハイデガー読本』(法政大学出版局、2014年)がある。
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by urag | 2015-02-19 12:03 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 18日

アガンベン『ニンファ その他のイメージ論』慶應大学出版会

弊社出版物でお世話になっております著訳者の先生方の最近のご活躍をご紹介します。

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『思考の潜勢力』『瀆神』『到来する共同体』)
★高桑和巳さん((訳書:アガンベン『バートルビー』『思考の潜勢力』、共訳:クラウス+ボワ『アンフォルム』)
高桑和巳さん編訳によるアガンベンさんのイメージ論集成が慶應大学出版会さんより刊行されました。巻末の、高桑さんによる「アガンベンとイメージ――編訳者あとがきに代えて」には本書の構成についてこう紹介されています。「内容的にも分量的にも全体を代表すると見なしうる重要な論考「ニンファ」を冒頭に置き、本書全体への入り口とした。次いで部を改め、イメージ一般について論じている、もしくは舞踊や映画を通じてイメージを扱っているテクスト5本を置いた。さらに第三部として、個々の美術家(大半は二十世紀後半以降のイタリア在住の画家)をめぐって、あるいは絵画一般をめぐって書かれた、比較的短いテクスト14本を配置した」とのことです。目次詳細についてはこちらをご覧ください。

ニンファ その他のイメージ論
ジョルジョ・アガンベン著 高桑和巳編訳
慶應大学出版会 2015年2月 本体3,200円 四六判上製272頁 ISBN978-4-7664-2142-2

帯文より:先立つ人々の情念が遺した痕跡。重要論文「ニンファ」をはじめ、イメージ論、絵画論20篇を編訳者が独自に集成。イメージを問い求めるなかで、折りに触れて書き継がれてきた論考群からアガンベンの唱える美学・政治・倫理が浮き彫りになる。

第一部の「ニンファ」の底本は、Ninfe (Bollati Boringhieri, 2007)です。アガンベンさんのイメージ論集としては仏語版『イメージと記憶――イメージ・ダンス・映画』(2004年)が過去にありますが、高桑さんのあとがきによれば「本書は『イメージと記憶』を直接的な出発点にしているわけではないが、2004年版所収の全テクストを本書にもすべて(すでに他の論集〔『思考の潜勢力』〕に収められている3本を除いて)収録し、さらに未収録テクスト11本を新たに加えている」。日本語版オリジナル論集に高桑さんの懇切なあとがきを付した本書は、単行本未収録論文をまとめた『思考の潜勢力』(高桑和巳訳、月曜社、2009年)とともに、アガンベンさんの美学を語る上で不可欠の文献ではないかと思います。
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by urag | 2015-02-18 18:08 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 16日

紀伊國屋じんぶん大賞2015&連動フェア

紀伊國屋じんぶん大賞2015の結果が発表されました。東浩紀さんの『弱いつながり――検索ワードを探す旅』(幻冬舎)が大賞を受賞され、2位は石岡良治さんの『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、3位は加藤直樹さんの『九月、東京の路上で――1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』(ころから)でした。現在、紀伊國屋書店さんの47店舗(上記リンクで詳細をご確認いただけます)で、ブックフェア「紀伊國屋じんぶん大賞 2015────読者と選ぶ人文書ベスト30」が行われています(3月上旬まで)。フェアでは「読者と選んだ人文書ベスト30作品」が並べられ、記念小冊子が無料配布されています。

記念小冊子は、東浩紀さんの大賞受賞コメントと、ベスト30作品の読者推薦コメント、さらに、大澤聡さんと大澤真幸さんの特別対談 「人文と批評の再起動へ────『全体性』と『参照軸』が喪われた時代に」が掲載されています。東さんのコメントとベスト30の読者コメントは上記リンク先でも読めますが、W大澤の対談は小冊子でしか読めませんので、ぜひ入手されてみてください。

また、新宿本店3階では、特別対談を記念した、大澤聡さんと大澤真幸さんによる選書フェア 「『全体性』と『参照軸』が喪われた時代に────2014年の人文書を振り返る」と、東大院生有志による、「現代(いま)と戯れるための人文書」選書フェア「『現代(いま)』を動かす人文書────東大・研究者のタマゴが選ぶ50冊」が同時開催中とのことです。

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by urag | 2015-02-16 17:32 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 15日

注目新刊:ルクリュ『新世界地理』翻訳シリーズ、ほか

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◎ルクリュの主著『新世界地理』の初訳、順次刊行開始

東アジア――清帝国・朝鮮・日本(ルクリュの19世紀世界地理 第1期セレクション1)
エリゼ・ルクリュ著 柴田匡平訳
古今書院 2015年1月 本体20,000円 A5判上製函入832頁 ISBN978-4-7722-9006-7

★発売済。版元紹介文の文言を借りると、新シリーズ『ルクリュの19世紀世界地理』は「フランスの地理学者エリゼ・ルクリュ(1830-1905)が調査旅行や文献を駆使して書き上げた代表作『新世界地理――大地と人間』全19巻(1875-1894)を初邦訳。19世紀末の世界地理を詳細に記述し資料的価値大。ルクリュは近代地理学の祖のひとりであるカール・リッターの直弟子。本シリーズは、西欧型の文化や社会組織による影響を受ける以前の諸民族のありさまを中庸な観点から精細に記述しており、ドイツ語・英語に翻訳され当時のベストセラーとなった」というもの。

★同シリーズの「第1期セレクション」は年1回刊行予定で以下の全5巻の予定だそうです。ブラケット内[]は原著での巻次です。 

1[7]:東アジア――清帝国、朝鮮、日本
2[11]:北アフリカⅡ――トリポリタニア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、サハラ
3[16]:アメリカ合衆国
4[1]:南ヨーロッパ――ギリシャ、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、セルビアほか
5[8]:インドおよびインドシナ

★第一回配本として刊行される『東アジア』は、原著では1882年に刊行された第7巻にあたります。訳書巻頭では14頁にわたり、縮小版ながら地図をカラーで収録。巻末には索引が付されています。本文中にもモノクロ図版が多数ありますが、こちらは原寸再録を心がけたとのことです。『新世界地理』全19巻は仏語原書で1巻あたり約900頁ある大冊ばかりなので、訳書も当然大冊になります。今回の2万円というお値段は今後の売行次第でもし刊行部数が減らされるならばさらに高くなるでしょうから、このご時世に個人で揃えるのはたいへんですけれども、大著の翻訳にお一人で挑まれている柴田先生と出版社のご苦労に比べれば当然の対価かもしれません。

★ルクリュがその博捜と熱意によって描き出した19世紀の世界像は圧巻というほかありません。ルクリュは日本を「地球上で最も興味深い国のひとつ」と評しており、当時の情報流通量に起因する限界はあるとはいえ、健筆をふるって民族と文化、歴史、気候等について記述しています。日本のパートだけでも1冊になる分量があります。ちなみにこんにち書肆心水さんから再刊されているルクリュの『アナキスト地人論』は、『新世界地理』を書き終えたルクリュが人類と大地との調和的関係性にかんする自身の知見を端的に結論づけるために書いた『人類と大地』全4巻6分冊(1905-1908)の第1巻を石川三四郎が訳したものの復刊です。

★ルクリュは地理学者としてもアナキストとしてもこんにち再評価が高まっているように思われます。弊社でもわずかながらこの波に資する新刊企画を準備しています。


◎注目新刊:栗原康『学生に賃金を』、ガタリ『エコゾフィーとは何か』、など

学生に賃金を』栗原康著、新評論、2015年2月、四六判上製248頁、本体2,000円、ISBN978-4-7948-0995-7
エコゾフィーとは何か――ガタリが遺したもの』フェリックス・ガタリ著、杉村昌昭訳、青土社、2015年1月、四六判上製530頁、本体4,800円、ISBN978-4-7917-6848-6
ヒマラヤ探検史――地勢・文化から現代登山まで』フィリップ・パーカー編、ピーター・ヒラリー序文、藤原多伽夫訳、東洋書林、2015年2月、A5判上製354頁、本体4,500円、ISBN978-4-88721-820-8
日本の春画・艶本研究』石上阿希著、平凡社、2015年2月、A5判上製384頁、本体6,500円、ISBN978-4-582-66216-0
闇より黒い光のうたを――十五人の詩獣たち』河津聖恵著、藤原書店、2015年1月、四六変型判上製240頁、本体2,500円、ISBN978-4-86578-010-9

★栗原康『学生に賃金を』は発売済。『G8――サミット体制とはなにか』(以文社、2008年)、『大杉栄伝――永遠のアナキズム』(夜光社、2013年)に続く栗原さんの3冊目です。同姓同名に著名な生態学者の方がおられますが(1926-2006)、別人です。『学生に賃金を』の主張は端的に言えば大学無償化であり、かなりまじめに来し方を分析しつつも、堅苦しくなく、時折笑いを堪えるのがたいへんなほどユーモラスな筆致で読みやすく書かれています(先に笑いたい人は『大杉栄伝』同様、「おわりに」から読むと良いです)。同じ内容の企画を複数の新書版元に打診して断られたというのですが、本書を読めば担当者も「断らない方がよかったかも」と後悔するはずです。

★テイストとしては90年代の「だめ連」、ゼロ年代の「素人の乱(松本哉さん)」に連なる、「面白貧しいプロテスト系」の新しい顔というべき逸材が栗原さんです。「面白貧しい」というのはけっして悪口ではありません。貧しくても逞しく楽しく抵抗しつつ生きるその姿が多くの若い世代に勇気を与えてきた系譜というものがあります。清貧というのでもなく、あわよくば儲かりたい、できればモテたい、という要素があるのも自然体で良いところです。ちなみに栗原さんの場合はモテ欲よりも食欲の方が大きそうです。

★昨今、奨学金の返済が叶わず自己破産した40歳フリーター男性がニュースになりましたが、同じような苦境に置かれた人びとはまだいるでしょう。本論の末尾には「学生に賃金を! 学費も生活費も公費負担で! すべての失業者に学籍を!」と書きつけられています。そんな馬鹿な、という人もいるかもしれませんが、大学の意義と仕組みを見直す上で本書は重要な視点を私たちに示していると思います。

★ガタリ『エコゾフィーとは何か』は発売済。原書は、Qu'est-ce que l'écosophie ? (Ligne/IMEC, 2013)です。「編者のステファヌ・ナドーが、ガタリが主に晩年の5年間に書いた様々なテクストを〈エコゾフィー〉という新概念を基軸として結晶化するかたちで」(「訳者あとがき」)、論考、インタビュー、対談、エッセイなどを1冊にまとめたもので、「エコゾフィーのための論説」「エコゾフィーの実践」「精神的エコロジーに関する断章」「主観性の生産について」「社会的エコロジーと統合された世界資本主義」「メディアとポストメディアの時代」「環境エコロジーと戦争機械」の全7部構成となっています。本書の位置付けについては巻頭のナドーによる「"エコゾーフ"としてのフェリックス・ガタリ」で解説されています。晩年作『三つのエコロジー』(杉村昌昭訳、大村書店、1991年;平凡社ライブラリー、2008年)とともに、円熟期ガタリの思想の核であり鍵が示された玉手箱です。2013年に公刊された本が早くも日本語で読めるようになったのはさすが杉村先生ならではのことでありがたいです。美麗な装丁は菊地信義さんによるもの。ザラッとした手触りがたまりません。

★パーカー編『ヒマラヤ探検史』は発売済。原書は、Himalaya: The Exploration & Conquest of the Greatest Mountains on Earth (Conway, 2013)です。白銀の高峰を写したカヴァーの美しさに引きこまれますが、巻頭もカラー写真が13枚収録されており、その神々しさたるや息を飲むばかりです。しかしそこは人々を寄せつけない圧倒的に荒涼とした世界、死の空間でもあります。帯文に曰く本書はヒマラヤ山脈の「危険な容色に魅せられた人類による栄光と挫折に満ち満ちた挑戦の軌跡を、10人の研究者・アルピニストたちが描破」したもの。幕間のコラムや貴重な写真や地図など多彩な内容となっています。登頂の栄光の陰に多数の墓標なき犠牲者たちがいます。本書はその墓でもあると言えそうです。

★石上阿希『日本の春画・艶本研究』はまもなく発売。2008年に立命館大学に提出された博士論文がもとになっているとのことです。春画研究で博士号をとったのは日本初なのだそうで、当時京都新聞で報道されてもいました。「中国と日本春画」「上方の艶本」「上方と江戸をつなぐもの――祐信絵本と江戸艶本」「江戸の春画・艶本――見立ての表現をめぐって」「近現代の春画受容」の全5部構成。帯文に曰く「浮世絵や歌舞伎との関係、中国からの影響、近代の弾圧と復権など、「文化の結節点」としての春画を通観、図版100点以上収録」と。「あとがき」に書かれている研究の経緯を読むと、探究心の強さが引き寄せたのかもしれない幸運な出会いに恵まれておられ、著者その人への関心も強くなりそうです。石上阿希(いしがみ・あき)さんは1979年生まれで、現在は立命館大学の非常勤講師でいらっしゃいます。エッジの効いた美しい装丁は矢萩多聞さんによるもの。

★河津聖恵『闇より黒い光のうたを』は発売済。『環』誌での連載を加筆修正のうえ、関連するテクストを添えて1冊にまとめたものです。取り上げられる「詩獣」は、尹東柱、ツェラン、寺山修司、ロルカ、リルケ、石原吉郎、立原道造、ボードレール、ランボー、中原中也、金子みすゞ、石川啄木、宮沢賢治、小林多喜二、原民喜、の15名。著者は「プロローグ」でこう書いています。「すぐれた詩人とは、恐らく詩獣ともいうべき存在だろう。危機を感知し乗り越えるために、根源的な共鳴〔うた〕の次元で他者を求め、新たな共同性の匂いを嗅ぎ分ける獣。言い換えれば詩人とは、そのような獣性を顕現させ、人間の自由の可能性を身を挺し指し示す者である」(14頁)。著者が信じているように、私たち読者一人ひとりもまた、そうした獣性を秘めているからこそ詩を愛するのだと信じたいです。


◎作品社さんの新刊より:アタリの思想的淵源を示す大著、など

ユダヤ人、世界と貨幣――一神教と経済の4000年史』ジャック・アタリ著、的場昭弘訳、作品社、2015年2月、四六判上製672頁、ISBN978-4-86182-489-0
海の光のクレア』エドウィージ・ダンティカ著、佐川愛子訳、作品社、46判上製287頁、本体2,400円、ISBN978-4-86182-519-4
サッカー界の巨大な闇――八百長試合と違法賭博市場』ブレット・フォレスト著、堤理華訳、作品社、四六判上製312頁、本体1,800円、ISBN978-4-86182-508-8

★アタリ『ユダヤ人、世界と貨幣』は発売済。原書は、Les juifs, le monde et l'argent (Fayard, 2010)です。帯文に曰く「自身もユダヤ人であるジャック・アタリが、『21世紀の歴史』では、語り尽くせなかった壮大な人類史、そして資本主義の未来と歴史を語る待望の主著!」と。アマゾン・ジャパンで総合1位を取ったこともある怪物『21世紀の歴史――未来の人類から見た世界』(林昌宏訳、作品社、2008年)以後、アタリの著作は見通しづらい現代社会を生きるビジネスパーソンにとって必読の啓蒙書として受容されてきた観がありますが、今回の『ユダヤ人、世界と貨幣』はアタリの思想的源泉とも言うべきユダヤ文化を懇切に解説しており、賢しらな陰謀論系の本の壁に風穴を開ける快著となっています。『21世紀の歴史』における近未来のビジネスパーソンの指標「ノマド」の歴史的背景も本書で明らかにされています(本書では「ノマード」と表記)。ドゥルーズ/ガタリの言う「ノマド」とアタリのそれがどう違うのかも本書を読めば理解しやすいかもしれません。

★ダンティカ『海の光のクレア』は発売済。原書は、Claire of the Sea Light (Knopf, 2013)です。巻頭には著者による「日本の読者への手紙」が置かれています。「本書は、難しい選択についての物語です。そして、家族の話です――生まれ持った家族と、選び取った家族と。また、コミュニティの問題でもあります」(5頁)とダンティカは書いています。「訳者あとがき」によれば「本作品の基となっているのは、ダンティカが編集したHaiti Noir(『ハイチ・ノワール』)におさめられた短篇「海の光のクレア」である」とのこと。2010年1月にハイチを襲った震災より前に書かれた「スナップ写真のような」(『ハイチ・ノワール』まえがき)父娘の物語が震災後に大きく膨らんで本書となったそうです。最後の数ページは泣きながら読んだ、と訳者は明かしています。カヴァーには書名にぴったりの美しい月夜の海の写真が使われており、その上に銀箔で文字が載っています。夜空の濃紺に浮かんだ銀文字が少し読みにくいのですが(しかしそこがいい味を出しています)、光にかざせば反射の輝きによって見えるようになります。水崎真奈美さんによる装幀です。

★フォレスト『サッカー界の巨大な闇』は発売済。原書は、The Big Fix: The Hunt for the Match-Fixers Bringing Down Soccer (Harper Collins, 2014)です。帯文に曰く「巨大に成長した賭博市場と、その金に群がる犯罪組織の暗躍。全貌解明に挑んだ元FIFA保安部長と、実際に無数の八百長試合を演出した"仕掛人(フィクサー)"への綿密な取材をもとに、FIFAがひた隠すサッカー界の暗部に迫る」。フィクションかと勘違いしたくなるほど呆然とさせる生々しい不正の実態が暴かれています。悪い連中に取材した著者の命が狙われないかと危ぶまれるほどです。サッカー・ファンだけが読めばいい本というよりは、ファン以外でも知っておかなければならない犯罪の実録として銘記しておきたいと思います。本書で紹介されている、FIFAの初代保安部長が八百長王に送ったメールが印象的です。「わたしは国際的なスポーツに必要不可欠な高潔さをもたらそうと、優秀な人たちと懸命に仕事をしている。どうしても高潔さが必要なのだ。それはたいていの人よりも、きみのほうがよく知っていることだろうが」(230頁)。
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by urag | 2015-02-15 20:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 13日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2015年3月5日(木)開店予定
良品計画博多店:??坪
福岡県福岡市博多区住吉1-2-1 博多キャナルシティ 3F
大阪屋帳合。弊社へのご発注は写真集主力商品、芸術書と外国文学を少々。博多キャナルシティは最寄駅が地下鉄「祇園」駅で、かつて地下1階には福家書店がありましたが1年前(2014年1月13日)に閉店。取次の出品以来条によれば今回の良品計画博多店は、「MUJIキャナルシティ博多店」を改装しライフスタイル提案型売場の大きな目玉として書籍の販売を開始する、というものだそうです。書籍販売コーナーを新設するということなのでしょうから、坪数の記載はなく、店名も便宜上あてがわれたものだろうと思われます。ご発注の傾向と帳合から推察して、リーディングスタイルさんが関わっておられるような気がしていたのですが、そうではなく他社さんのようです。

2015年3月上旬開店予定
蔦屋書店茂原店:??坪
千葉県茂原市六ツ野八貫野2785-1 ライフガーデン茂原内
日販帳合。弊社へのご発注は写真集主力商品。外房線「茂原」駅下車徒歩13分の「ライフガーデン茂原」内の「スーパーカスミ」に隣接する複合書店としてオープンされるようです。書籍雑誌、文具雑貨、CD/DVDを扱う千葉最大級の複合書店(求人情報より)とのこと。運営はトップカルチャーさん。弊社へのご発注が小口のためか、開店の挨拶案内状や依頼書はなく短冊のみで、坪数や開店日が未詳です。
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by urag | 2015-02-13 10:28 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 10日

注目イベント:デリダ没後十年関連とピーター・ホルワード来日

弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

◆ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
◆西山雄二さん(訳書:デリダ『条件なき大学』、共訳:『ブランショ政治論集』)
◆佐藤嘉幸さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
◆宮崎裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』)
◆郷原佳以さん(共訳:『ブランショ政治論集』)
◆高桑和巳さん(訳書:アガンベン『バートルビー』『思考の潜勢力』、共訳:クラウス+ボワ『アンフォルム』)
◆中井亜佐子さん(共訳:ロイル『デリダと文学』)


★ジャック・デリダ没後十年関連イベント

◎「ジャック・デリダ──思考の勇気」映画上映+講演

日時:2015年02月20日(金) 18:00-
場所:日仏会館ホール(渋谷区恵比寿3丁目)
参加費:無料(定員120名、要事前登録)
予約:日仏会館ウェブサイトのトップページの「イベント参加登録」からアカウントを作成し、事前申し込みをお願いいたします。インターネットを利用していない方はファックス03-5424-1200または電話03-5424-1141にて参加登録をお願いいたします。

主催:日仏会館
協力:フランス著作権事務所

内容:昨年2014年は哲学者ジャック・デリダの没後10年にあたり、世界各地でシンポジウムが開催され、関連書籍が数多く刊行された。フランスのテレビ局アルテではちょうど命日の10月8日に、映像作家ヴィルジニー・リナールとデリダの伝記著者ブノワ・ペータースによるドキュメンタリー映画「ジャック・デリダ──思考の勇気」が放映された。デリダのテクストと関係者の証言(ジャン=リュック・ナンシー、アヴィタル・ロネル、エティエンヌ・バリバール、サミュエル・ウェーバー、フィリップ・ソレルス、エリザベト・ルーディネスコなど)が交互に引用され、貴重な資料映像が用いられている本作を通じて、私たちは脱構築の思想家のさまざまな顔をうかがい知ることができる。

ドキュメンタリー映画「ジャック・デリダ──思考の勇気」
"Jacques Derrida : Le courage de la pensée"
ヴィルジニー・リナール/ブノワ・ペータース製作
フランス、2014年、53分
フランス語、字幕なし

上映後の講演
藤本一勇(早稲田大学)
西山雄二(首都大学東京)
日本語、フランス語通訳なし


◎Workshop ジャック・デリダ『獣と主権者I』を読む

日時:2015年2月22日(日)13.00-18.00
場所:東京大学(駒場) 18号館4階コラボレーションルーム1
参加費:無料(事前予約不要)

主催:脱構築研究会

内容:ジャック・デリダの死後、講義録(全43巻)が続々と刊行されており、日本語訳の第一弾『獣と主権者I』が没後10年目の2014年に出版された。『獣と主権者I』では、主権者と獣という両極的な法外者が主題化され、ラ・フォンテーヌ、マキャベリ、ホッブズ、ルソー、シュミット、ヴァレリー、ラカン、ドゥルーズ、ロレンス、ツェラン、アガンベンらのテクストが参照され、狼、子羊、狐、獅子、蛇、猿、イルカ、象などの多種多様な動物とともに、人間─動物政治論が縦横無尽に展開される。デリダ講義録の日本語訳刊行を記念して実施される今回のワークショップは、翻訳者による各回の解説、識者によるコメント、デリダ研究者による討論で構成される。未読者も既読者も『獣と主権者I』の魅力に触れることができる、入門的かつ応用的なワークショップである。

13.00 趣旨説明:西山雄二(首都大学東京)
13.10-14.00 ​第1-3回 解説:​西山雄二/コメント:守中高明(早稲田大学)/​司会:増田一夫(東京大学)
14.00-14.50 ​第4-5回 ​解説:佐藤朋子(東京大学)/コメント:佐藤嘉幸(筑波大学)/司会:宮﨑裕助(新潟大学)
14.50-15.10 休憩
15.10-16.00 ​第6-9回 ​解説:郷原佳以(関東学院大学)/コメント:立花史(早稲田大学)/司会:西山雄二
16.00-16.50 ​第10-13回 ​解説:亀井大輔(立命館大学)/コメント:高桑和巳(慶應義塾大学)/司会:藤本一勇(早稲田大学)
16.50-17.10 休憩
17.10-18.00 総合討論​:増田一夫、藤本一勇、宮崎裕助/司会:西山​雄二


◎宮﨑裕助×東浩紀「デリダ研究の最前線

日時:2015年2月24日 (火) 19:00-21:00
会場:ゲンロンカフェ
料金:前売は2600円(1ドリンク付き)/ゲンロン友の会会員証または学生証の提示で2100円(1ドリンク付)

概要:昨年、没後10年を迎え、続々とシンポジウムが開かれ、関連書が刊行されたジャック・デリダ。ブノワ・ペータースによる決定版『デリダ伝』の邦訳も刊行され、今年1月22日には『現代思想』増刊号でデリダ特集が組まれます。そこでゲンロンでは、デリダ研究者でデリダ特集にも論文を寄せている宮﨑裕助さんをお招きし、かつて『存在論的、郵便的』で中期デリダ読解に独自の境地を切り開いた東浩紀を聞き手として、イベントを開催します。


ピーター・ホルワード (Peter Hallward) 来日講演会

主催:科研費基盤(B)プロジェクト「モダニズムの越境性/地域性――近代の時空間の再検討」(研究代表者:中井亜佐子)
共催:立命館大学大学院先端総合学術研究科
問合せ先:中井亜佐子(一橋大学大学院言語社会研究科)

◎「自己決定と政治的意志」
"Self-Determination and Political Will"

日時:2015年3月15日(日) 15:00~18:00
場所:一橋大学 東キャンパス国際研究館4階 大教室 (地図44番の建物)
Guest Speaker:ピーター・ホルワード(Peter Hallward)
コメント:佐藤嘉幸(筑波大学)
司会:中山徹(一橋大学大学院言語社会研究科教授)
使用言語:英語(日本語翻訳配布、質疑応答通訳あり)
その他:予約不要、入場無料


◎「ジル・ドゥルーズと政治」
"Politics after Deleuze: Immanence and Transcendence Revisited"

日時:2015年3月19日(木) 14:00~17:00
場所:立命館大学 衣笠キャンパス 創思館401・402
Guest Speaker:ピーター・ホルワード(Peter Hallward)
コメント:千葉雅也(立命館大学)/山森裕毅(大阪大学)
使用言語:英語(日本語翻訳配布、質疑応答通訳あり)
その他:予約不要、入場無料
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by urag | 2015-02-10 13:44 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 09日

堀之内出版より新しい思想誌『ニュクス』創刊!

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

◆ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
◆岡本源太さん(著書:『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』)
◆柿並良佑さん(共訳:L・サラ-モランス『ソドム』)
◆本橋哲也さん(共訳:G・Ch・スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
◆宮﨑裕助さん(共訳:P・ド・マン『盲目と洞察』)
◆清水知子さん(著書:『文化と暴力』、共訳:J・バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)


◎『ポッセ』誌の堀之内出版より新しい思想誌『ニュクス』が創刊

「新世代のための雇用問題総合誌」である『POSSE〔ポッセ〕』の発行元である堀之内出版さんが今月(2015年2月)、新しい思想誌『Νύξ〔ニュクス〕』を創刊されました。特集は「〈エコノミー〉概念の思想史――アリストテレスからピケティへ」と「現代ラカン派の理論展開」の二本立て。内容については誌名のリンク先をご覧ください。トマ・ピケティとエマニュエル・サエズの共著論文「不平等の長期的趨勢」(西亮太訳、120~139頁)をはじめ、読み応えのある論考が並んでいます。

佐々木雄大さんによる「創刊の辞」は版元ウェブサイトで読むことができます。そこで佐々木さんは「短期的な成果追求が重視される現在において、あえて古典的思考を継承することを目的とした「思想のための場」が、新たに生まれるべきではないか」と問いを投げかけ、「有用性とは別の観点から編集された媒体」の必要性を訴えられています。良い意味での「反時代性」を感じさせる姿勢ではないでしょうか。

弊社でお世話になっている著訳者の皆さんでは、アガンベンさんの論考の翻訳と解題を岡本源太さんが手掛けられ、J-L・ナンシーさんの『アドラシオン』(メランベルジェ眞紀訳、新評論、2014年)からの再録論文への解題と、ナンシーさんの別の論文の翻訳を柿並さんが手掛けられています。アガンベンさんの論文というのは、彼が共編した2000頁を越える大冊アンソロジー『天使:ヘブライ思想・キリスト教思想・イスラム思想』(エマヌエーレ・コッチャ共編、ネリ・ポッツァ、2009年)の巻頭におかれたイントロダクションで(原書11~21頁;「『天使』への序論」岡本源太訳、52-62頁)、岡本源太さんによる解題「ジョルジョ・アガンベン「『天使』への序論」を読むために」(64-68頁)が付されています。

柿並さんは「ジャン=リュック・ナンシーの「エコノミー」論――「経済〔エコノミー〕」(『アドラシオン』より)解題」(158~167頁)を寄稿されると同時に、柿並さんの質問に対するナンシーさんの回答「「救済のエコノミー」についての注記」(168~171頁)を訳出されています。

ここさいきん、他誌でも経済学関連の特集号が刊行されています。ピケティ関連書に加えて『ニュクス』創刊号や、『現代思想』2015年1月臨時増刊号「ピケティ『21世紀の資本』を読む――格差と貧困の新理論」、『現代思想』2015年3月臨時増刊号「宇沢弘文――人間のための経済」などがあります。ここにさらに堀之内出版さんの『POSSE』での好評連載をまとめた、市野川容孝・渋谷望編著『労働と思想』(堀之内出版、2015年1月、四六判並製512頁、本体3,500円、ISBN978-4-906708-56-7)や、今月下旬から来月上旬にかけて来日講演予定のマルクス研究者ミヒャエル・ハインリッヒさんの著書も堀之内出版さんから『『資本論』の新しい読み方――21世紀のマルクス入門』(明石英人ほか訳、堀之内出版、2014年)刊行されています。ピケティの売行きが好調な書店さんには堀之内出版さんの雑誌や既刊書をまとめるブックフェアが有効ではないかと思われます。

ちなみに『労働と思想』では、弊社がお世話になっている先生方による以下の論考を読むことができます。本橋哲也「【シェイクスピア】シェイクスピア演劇と労働の力学――「以降」の思想のために」(11~44頁)、宮﨑裕助「【デリダ】職業(プロフェッション)としての言語行為」(249~272頁)、清水知子「【ジジェク】二一世紀のコミュニズム――ベケット的なレーニンとともに」(453~481頁)。

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雑誌に関連してあと二つ新刊をご紹介します。

◎新しい版元「BLUE ART」が書籍第一弾を刊行

ひとつめ。芸術批評誌『ART CRITIQUE』の編集者の櫻井拓さんがBLUE ARTという出版社を立ちあげられ、書籍第一弾となる福士朋子『元祖FAXマンガ お絵描き少女☆ラッキーちゃん』を刊行されました。美術家の福士さんが1995年にFAXで配信を開始され、2003年からはご自身のウェブサイト「少女画帖」で連載中のマンガをまとめたもの。「ユーモラスでクリティカルに美術の世界を描き出す、美術家による4コママンガ」と帯文に謳われています。解説は美術批評家の林道郎さん。同書の刊行を記念し、恵比寿のNADiff a/p/a/r/tのウィンドウ・ギャラリーでは2月11日~3月29日に作品展示が行われ、2月20日(金)19~21時に著者の福士さんと解説を書かれた林さん、さらに美術家の豊嶋康子さんを交えたトークイベント「ラッキーちゃん、その可能性の周辺」が同店1F展開で行われる(入場無料・予約不要)とのことです。


◎まもなく発表「新書大賞2015」の大賞は増田寛也編著『地方消滅』

ふたつめ。手前味噌で恐縮ですが、毎年「中央公論」誌上で発表されている「新書大賞2015」に(今年も)参加させていただきました。まもなく2月10日発売予定の同誌3月号で発表され、私のコメントは「目利き29人が選ぶ2014年私のオススメ新書」でご覧いただけます。今年の大賞受賞作が増田寛也編著『地方消滅――東京一極集中が招く人口急減』(中公新書、2014年8月)であることはすでに告知されている通りですが、大賞の贈賞式と増田さんの記念講演が年2月19日 (木) 19時より八重洲ブックセンター本店8Fギャラリーにて行われます。参加費は無料、定員は80名(申込先着順)とのことです。
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by urag | 2015-02-09 00:00 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2015年 02月 08日

注目文庫新刊:佐々木中『仝』河出文庫、など

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◎佐々木中さんのベスト講義録『仝〔どう〕』が河出文庫より

仝――selected lectures 2009-2014
佐々木中著
河出文庫 2015年2月 本体900円 文庫判336頁 ISBN978-4-309-41351-8

カヴァー紹介文より:この災厄と恐慌と蜂起の日々に、佐々木中は動揺も沈みもしなかった。『アナレクタ・シリーズ』の四冊から筆者が単独で行った講演のみ再編集文庫化し、新たに二〇一四年秋に行われた講演「失敗せる革命よ知と熱狂を撒け」を付した、文字通りのヴェリー・ベスト。

目次:
自己の死をいかに死ぬか
喜び、われわれが居ない世界の――〈大学の夜〉の記録
「夜の底で耳を澄ます」(2011年2月6日、京都Mediashopにおける講演)を要約する十二の基本的な註記
砕かれた大地にひとつの場所を――紀伊國屋じんぶん大賞2010受賞記念講演「前夜はいま」の記録
屈辱ではなく恥辱を――革命と民主制について――2011年4月28日、地下大学での発言
変革へ、この熾烈なる無力を――2011年11月17日、福岡公演によるテクスト
「われらの正気を生き延びる道を教えよ」(2011年12月8日、京都精華大学における講演)を要約する二十一の基本的な註記
失敗せる革命よ知と熱狂を撒け――京都精華大学人文学部再編記念講演会「人文学の逆襲」の記録


★発売済。佐々木さんの諸講演が文庫化されました。書名については特に跋文には特に直接的な説明はありませんが、「仝」は「同」の異体字なので、たとえば「些細な語句の訂正以外は文言を変えなかった。それは許さるべきではない。そしてまた、それは必要ではなかった」というくだりから意図を読みとれるかもしれません。

★今回初収録となる講演「失敗せる革命よ知と熱狂を撒け」で佐々木さんはこう切り出します。「この題目〔大学側から与えられた「人文学の逆襲」〕は正しくありません。大学と人文知はそもそも敵対関係にあるのですから。少なくとも両者の結びつきは自明ではありません。〔・・・ルネサンス期の〕人文主義者であると目される人びとは、原則として大学に批判的でした。だから、大学において人文学が重要だ、大学において人文知は守らねばならぬ基礎であるという言説は、歴史的に間違っています」(270-271頁)。

★むろんこれで話が終わるわけではありません。帯文にある「カントになるか、さもなくば革命だ」という言葉はこの講演の末尾に出てくる結論部分です。なぜそう展開していくのかはネタバレせずおきますので、皆さんの楽しみになさってください。大学に、もしくは大学院に進学して何をするのか、迷っている若い読者の皆さんに本書をお薦めします。自分探しに役立つ手頃な啓発書という意味において、ではありません。「ガイド」してもらうことの幻想を捨てたうえで、なおかつ胸にともせる熱い何かを求めている読者こそが本書に価値を見いだせるのではないかと思います。


◎ウィトゲンシュタインの「白熱教室」――12月~3月の文庫新刊より

『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇――ケンブリッジ1939年』コーラ・ダイアモンド編、大谷弘・古田徹也訳、講談社学術文庫、2015年1月
『作用素環の数理――ノイマン・コレクション』J・フォン・ノイマン著、長田まりゑ編訳、岡安類・片山良一・長田尚訳、ちくま学芸文庫、2015年1月
『物と心』大森荘蔵著、青山拓央解説、ちくま学芸文庫、2015年1月
『観無量寿経』佐藤春夫訳、石田充之解説、ちくま学芸文庫、2015年1月
『召使心得 他四篇――スウィフト諷刺論集』ジョナサン・スウィフト著、原田範行編訳、平凡社ライブラリー、2015年1月
『三国志演義(四)』井波律子訳、講談社学術文庫、2014年12月
『ビヒモス』ホッブズ著、山田園子訳、岩波文庫、2014年12月
『法の概念 第3版』H・L・A・ハート著、長谷部恭男訳、ちくま学芸文庫、2014年12月

昨年末から念頭にかけて思わずうなった文庫新刊と言えば、年末は『ビヒモス』と『法の概念』、年始はウィトゲンシュタイン講義」第2弾と「ノイマン・コレクション」第2弾でした。ホッブズはこのところ新訳が立て続けに刊行されていて、12月には『リヴァイアサン』の新訳(全2巻予定、角田安正訳、光文社古典新訳文庫)が出ただけでなく、『ビヒモス』の初訳が出たのはなんともありがたいことでした。さらにハートのような、名著とはいえ文庫化など望むべくもないと信じて疑わなかった『法の概念』の新訳が出るとは。単行本としては、矢崎光圀訳でみすず書房より1976年に刊行されて以来ロングセラーを続け現在も入手可能(ただし在庫僅少)なだけに、余計に驚きが大きかったように思います。

『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇』はアリス・アンブローズ編『ウィトゲンシュタインの講義 ケンブリッジ1932-1935年』(野矢茂樹訳、講談社学術文庫、2013年10月)に続く文庫版講義録第2弾。しかも、初訳です。単行本ではなく最初から文庫で、という計らいが実に嬉しいです。帯文に「白熱講義」という謳い文句が踊り、脳内では勝手に「白熱教室」とつい変換してしまうわけですが、これはあながち大げさな連想ではありません。「数学の基礎」と聞くとつい身構えてしまいますが、敬遠する必要はありません。本書から伝わってくる本気と熱気に読者はたちまち惹きこまれるのではないかと思います。アラン・チューリングをはじめ、豪華な出席者とのやりとりも興味深いです。

『作用素環の数理』は『数理物理学の方法』(伊東恵一編訳、新井朝雄ほか訳、ちくま学芸文庫、2013年12月)に続く「ノイマン・コレクション」の第2弾です。論文「作用素環について」4篇と、晩年の講演「数学者」を併載しています。講演では数学をその経験的な起源から遠ざけることの危険について語られています。同書と同じく1月には、大森荘蔵さんの『物と心』(東京大学出版会、1976年)もちくま学芸文庫から刊行されています。近年、大森さんの著作が少しずつ文庫で読めるようになってきたことは素晴らしいことです。帯文にある通り、『物と心』は、「対象と表象、物と心といった二元論を否定し「立ち現われ一元論」を打ち立てた代表作」です。ウィトゲンシュタイン、フォン・ノイマン、大森といった第一級の知性が文庫で味わえるというこの贅沢さ。

『三国志演義(四)』はこれで全4巻が完結です。佐藤春夫訳『観無量寿経』の親本は法藏館より1957年に刊行されたもの。文庫化にあたって阿満利麿さんによる解説「「凡夫」のための経典『観無量寿経』」が新たに付されています。佐藤春夫は死後半世紀が経過したため、今後著作の再刊が増えていくのではないかと思われます。たとえば来月の岩波現代文庫では佐藤訳の『現代語訳 方丈記』が発売される予定。弊社でも別の本の復刊計画があるのですが、いずれご披露できれば幸いです。

『召使心得 他四篇』はライブラリー・オリジナルの新訳で、表題作のほか、「ビカースタフ文書」「ドレイピア書簡」「慎ましき提案」「淑女の化粧室」を収録。副題にある通りこれは諷刺論集なので、たとえば子供の貧困を社会的に解決するための残酷な打開策を披露した「慎ましき提案」は真に受けるととんでもないことになります。スウィフトがもし現代に生きていたら、きっと健筆をふるうでしょうが、「正しさ」にがんじがらめになった現代人のほとんどはもはや彼の皮肉を理解できないかもしれません。だからこそ今回の新訳は時宜にかなったものだと言えます。

財布が追いつかないためまだ購読していませんが、12月から2月8日現在の時点までの注目文庫新刊には以下のものがありました。文庫本は年々高額になっており、すべてを買い揃えるにはそれなりの財力と本を置く場所が必要です。本が贅沢品だとは言いたくありませんけれど、そうしたものになりつつあることは否定できないのでしょうか。

『奇跡を考える――科学と宗教』村上陽一郎著、講談社学術文庫、12月
『全国妖怪事典』千葉幹夫編、講談社学術文庫、12月
『テンプル騎士団』篠田雄次郎著、講談社学術文庫、12月
『ジャーナリストの生理学』バルザック著、鹿島茂訳、講談社学術文庫、12月
『怒りの葡萄〔新訳版〕』上下巻、ジョン・スタインベック著、黒原敏行訳、ハヤカワepi文庫、12月
『新宿駅最後の小さなお店ベルク――個人店が生き残るには?』井野朋也著、柄谷行人解説、吉田戦車解説、ちくま文庫、12月
『ヒトラーのウィーン』中島義道著、ちくま文庫、1月
『チベット旅行記(上)』河口慧海著、講談社学術文庫、1月
『フランケンシュタイン』メアリー・シェリー著、芹澤恵訳、新潮文庫、1月
『聖なる侵入〔新訳版〕』フィリップ・K・ディック著、山形浩生訳、ハヤカワ文庫SF、1月
『芸術論20講』アラン著、長谷川宏訳、光文社古典新訳文庫、1月
『楽しみと日々』プルースト著、岩崎力訳、岩波文庫、1月
『民主主義の本質と価値 他一篇』ハンス・ケルゼン著、長尾龍一・植田俊太郎訳、岩波文庫、1月
『新編 中国名詩選(上)』川合康三編訳、岩波文庫、1月
『世界史の構造』柄谷行人著、岩波現代文庫、1月
『さっさと不況を終わらせろ』ポール・クルーグマン著、山形浩生訳、ハヤカワ文庫NF、2月
『ヒーローを待っていても世界は変わらない』湯浅誠著、朝日文庫、2月

最後に、今月から来月にかけての文庫新刊を見ていきます。なんと言っても3点の新訳、バザンの主著『映画とは何か』、マクルーハン『メディアはマッサージである』、ヤスパース『われわれの戦争責任について』の刊行が楽しみです。

2月10日『チベット旅行記(下)』河口慧海著、講談社学術文庫
2月10日『最暗黒の東京』松原岩五郎著、講談社学術文庫
2月10日『差別感情の哲学』中島義道著、講談社学術文庫
2月10日『地名の研究』柳田國男著、講談社学術文庫
2月17日『映画とは何か(上)』アンドレ・バザン著、野崎歓ほか訳、岩波文庫
2月17日『新編 中国名詩選(中)』川合康三編訳、岩波文庫
2月17日『超国家主義の論理と心理 他八篇』丸山眞男著、古矢旬編、岩波文庫
2月20日『クラッシャージョウ12 美神の狂宴』高千穂遥著、ハヤカワ文庫JA
2月25日『ユートピアと性――オナイダ・コミュニティの複合婚実験』倉塚平著、中公文庫
2月25日『孟子』佐野大介訳著、角川ソフィア文庫
2月25日『チベットの先生』中沢新一著、角川ソフィア文庫
2月28日『大渦巻への落下・灯台――ポー短編集III SF&ファンタジー編』巽孝之訳、新潮文庫

3月04日『日本人の死生観――蛇・転生する祖先神』吉野裕子著、河出文庫
3月04日『メディアはマッサージである――影響の目録』マーシャル・マクルーハン+クエンティン・フィオーレ著、門林岳史訳、河出文庫
3月10日『素描 埴谷雄高を語る』講談社文芸文庫編、講談社文芸文庫
3月10日『科学哲学への招待』野家啓一著、ちくま学芸文庫
3月10日『知性の正しい導き方』ジョン・ロック著、下川潔訳、ちくま学芸文庫
3月10日『われわれの戦争責任について』カール・ヤスパース著、橋本文男訳、ちくま学芸文庫
3月12日『ぼくはいかにしてキリスト教徒になったのか』内村鑑三著、河野純治訳、光文社古典新訳文庫
3月17日『映画とは何か(下)』アンドレ・バザン著、野崎歓ほか訳、岩波文庫
3月17日『新編 中国名詩選(下)』川合康三編訳、岩波文庫
3月17日『D・G・ロセッティ作品集』南條竹則・松村伸一編訳、岩波文庫
3月17日『現代語訳 方丈記』佐藤春夫著、岩波現代文庫
3月17日『ファンタジーと言葉』アーシュラ・K・ル=グゥイン著、青木由紀子訳、岩波現代文庫
3月20日『色のない島へ――脳神経科医のミクロネシア探訪記』オリヴァー・サックス著、大庭紀雄・春日井晶子訳、ハヤカワ文庫NF
3月20日『新版 徒然草 現代語訳付き』兼好法師著、小川剛生訳、角川ソフィア文庫
3月28日『レッドアローとスターハウス――もうひとつの戦後思想史』原武史著、新潮文庫
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by urag | 2015-02-08 22:17 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)