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2014年 11月 30日

注目新刊:ガタリ『リトルネロ』みすず書房、など

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◎ガタリ生前最後の「詩的自伝」

リトルネロ
フェリックス・ガタリ著 宇野邦一・松本潤一郎訳
みすず書房 2014年11月 本体4,800円 A5判上製184頁 ISBN978-4-622-07825-8

カヴァー裏紹介文より:「ポルト=ジョワの丘陵地帯のほうへ、ポールと自転車で。詩節、林檎。群れ、リエカ。誘拐。北斎、ベゴニア。いつもいっしょだったあの歳月の後。別離という試練はカールを茫然自失させ、余裕もなく立ち直ることもできず、彼は現実に直面するしかなかった。ある神秘的遺産を除いて。けっして宗教ではない。けっして超越性ではない。ひび割れた内在性、まったく未熟でもある。それはいつも何かの役に立つだろう。自己と宇宙の征服。ヴィクトールの死の代償として鋳固められた魔術的全能。彼はついに何がなんでもベルナデットに対する愛を強めることになった。そこにどれほど距離があろうと。だが他者、第三者が木霊し、侵入し、痛みを与える。ジョフレーがいつもいたるところにいる。カオスモーズの指針。…」/ジル・ドゥルーズいわく、「なんと感動的で不思議なテクストでしょう、幼少期、芸術、思考が混じりあっている。まるでフェリックスが戻ってきたような、あるいはむしろ、いつもここにいたかのようです」。1992年、死の直前に書きあげられたカオスミックな詩的自伝。157の断章からなる「さえずり機械」にして、みずから提唱した「リトルネロ分析」の試み。デュイゾンのガタリ邸で1984年に実施されたインタビュー「分裂分析のほうへ」を付す。

目次:
リトルネロ (宇野邦一・松本潤一郎訳)
付録 分裂分析のほうへ (宇野邦一訳・聞き手)
解説 ガタリ、リトルネロ、プルースト (宇野邦一)
訳者あとがき

★発売済。原書は、Ritournelles (Lume, 2007)です。原書では手のひらサイズの小さな本でしたが、訳書では大きさも厚さも倍以上になり立派な仕上がりです。単語の羅列が多く、言葉遊びを含み、非常に感性的で詩的な著作であるため、フランス語での朗読には向いているでしょうが、日本語に移しかえるのは相当に難しかっただろうことが想像できます。実際「訳者あとがき」では苦労されたことが綴られています。もともとの原稿は5倍も長いものだったようです。呪文とも暗号ともつかない言葉の粒子が157回の驟雨となって繰り返し(リトルネロ=リフレイン)、読者を襲います。

★解説で宇野さんはこう説明されています。「『リトルネロ』は、大部分が名詞、固有名、あるいは名詞どめの文章からなり、リズムの面からていねいに調律されている。日々の出来事、よみがえる記憶、夢、悪夢、出会い、性愛、旅、政治活動、さまざまな都市、風景が描かれているが、それらの記述はきわめて簡略で、リズム(リトルネロ)のほうが優先しているので、しばしば何が語られているのか不可解である。〔…〕『リトルネロ』にはジョイス的な言語実験の反響とジョイスへのオマージュがたしかに含まれている」(155頁)。

★付録の「分裂分析のほうへ」はもともと『現代思想』1984年9月臨時増刊号「総特集ドゥルーズ=ガタリ」に「スキゾ分析の方へ」と題して掲載されたインタヴューですが、巻末注記によれば「再録にあたり録音テープを再聴し正確を期すとともに訳語も一部改めている」とのことです。同臨時増刊号には宇野邦一さんに宛てられたドゥルーズによる1984年7月25日付の手紙が「いかに複数で書いたか」と題され掲載されていて、こんな印象的な言葉があります。「フェリックスからの衝撃によって、私は奇妙な概念たちが住む未知の領土にやってきたという印象をもった。この本〔『千のプラトー』〕は私を幸福にし、私にとって決して汲めどもつきぬものになった」(臨時増刊号、11頁)。

★みすず書房さんの続刊予定には以下の書目があります。

12月08日『21世紀の資本』トマ・ピケティ著、山形浩生・守岡桜・森本正史訳、本体5,500円、ISBN978-4-622-07876-0
12月22日『哲学への権利 1』ジャック・デリダ著、西山雄二・馬場智一・立花史訳、本体5,600円、ISBN978-4-622-07874-6
01月23日『形式論理学と超越論的論理学』エトムント・フッサール著、立松弘孝訳、本体7,000円、ISBN978-4-622-07850-0

ピケティの新刊はビジネス人文書の年末商戦における台風の目です。すでに電子書籍で先月、「週刊東洋経済eビジネス新書」No.76として『トマ・ピケティ『21世紀の資本論』を30分で理解する!』(池田信夫/平松さわみほか著)が発売されており、まもなく竹信三恵子『ピケティ入門――『21世紀の資本』の読み方』(金曜日、12月8日発売予定)、『現代思想 2015年1月臨時増刊号 ピケティ『21世紀の資本』を読む――格差と貧困の新理論』(青土社、12月12日発売予定)がみすずの新刊と前後にして来月発売されます。さらには来年年頭には、フランスの「リベラシオン」紙でのピケティの連載をまとめた『トマ・ピケティの新・資本論』(村井章子訳、日経BP社、2015年1月23日)も刊行されます。興味深いのはトマ・ピケティ(Thomas Piketty)は1971年生まれということで、日本で言うと東浩紀さんや門倉貴史さん、北田暁大さん、森川嘉一郎さん、西山雄二さん、廣瀬純さん、矢部史郎さん、山本貴光さんをはじめ、同い年がそれなりの人数いるのです。ピケティを中心に経済学書フェアをやるのは普通すぎるので、あるいは71年繋がりでリストを組んでみるのもいいかもしれません。

このほかのみすず書房さんの近刊としては、ハンナ・アーレント『活動的生』(森一郎訳、本体6,500円、ISBN978-4-622-07880-7)が1月19日刊で予告が出ていましたが、近刊情報のページからいったん下げられたようなので、現在発売日調整中といったところかと思われます。周知の通り『活動的生』は『人間の条件』のドイツ語版です。


◎山本貴光さんの雑誌連載が書籍化

山本貴光『文体の科学』新潮社、2014年11月、本体1,900円、ISBN978-4-10-336771-0

★季刊誌『考える人』の連載「文体百般――ことばのスタイルこそ思考のスタイルである」(2011年冬号~2013年春号)を改稿し単行本化したものです。帯文はこうです。「電子時代の文章読本。文体は人なり。長短、配置、読む速度・・・目的と媒体が、最適な文体を自ら選びとった。古代ギリシャの哲学対話から、聖書、法律、数式、広告、批評、文学、ツイッターまで。理と知と情が綾なす言葉と人との関係を徹底解読する」。「あとがき」で山本さんは「デジタル装置が広く使われるようになってきて、改めてものを読んだり書いたりすることについて考え直すきっかけを与えられた〔・・・〕。そうした状況を前にして、「文体」に目を向けてみる必要がありそうだと思った」(267頁)と書かれています。本書は出版人や書店人が直面している常日頃の課題への意識を深めるための見事な啓発書となっています。

★本文での様々な書物への言及はビブリオフィルの快楽を垣間見せてくれます。また、細かい文字で2段組みになっている巻末の「参考文献・映像」も見逃せません。本書の文献案内に記載されている書目はだいたい全部見知っているし現物に触れたこともある、と言える方は相当な読書家だろうと思います。私はここでレオ・シュピッツァーの『言語学と文学史――文体論事始』(塩田勉訳、国際文献印刷社、2012年、ISBN978-4-902590-22-7)を見つけて泣きそうになりました。こんな重要な本にまったく気づいていなかったなんて、人文書に関わる出版人として恥ずかしいかぎりです。どういうわけかリアル書店の店頭在庫を調べようとしてもヒットしません(版元サイトやアマゾンなど、ネットでは購入可能)。2年前には果たして店頭に並んでいたのでしょうか。まったく山本さんの探求力には脱帽です。


◎藤原書店さんの新刊より

ジャック・ル=ゴフ『ヨーロッパは中世に誕生したのか?』菅沼潤訳、藤原書店、2014年11月、本体4,800円、ISBN978-4-86578-001-7
石牟礼道子『不知火おとめ――若き日の作品集1945-1947』藤原書店、2014年11月、本体2,400円、ISBN978-4-89434-996-4

★2点とも発売済。『ヨーロッパは中世に誕生したのか?』の原書は英仏独西伊の5か国で共同出版された、L'Europe est-elle née au Moyen-Âge ? (Seuil, 2003)です。帯文に曰く「アナール派を代表する中世史の最高権威が、4世紀から15世紀に至る「中世」10世紀間に、古代ギリシア・ローマ、キリスト教、労働の三区分などの諸要素を血肉化しながら、自己認識として、そして地理的境界としての「ヨーロッパ」が生みだされるダイナミックな過程の全体像を明快に描く、ヨーロッパ成立史の決定版」。著者は残念ながら今年4月1日に亡くなっています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。特に第五章「都市と大学の「黄金期」ヨーロッパ――十三世紀」の第III節「教育と大学の成功」はこの世紀の知識人たちを概観する上で役に立ちます。この節についてもう少し読みたいという方は、ル=ゴフの初めての訳書である『中世の知識人――アベラールからエラスムスへ』(柏木英彦・三上朝造、岩波新書、1977年)をひもとかれると良いと思います。絶版本ではありますが、古書での入手はさほど難しくない方です。

★『不知火おとめ』は未発表処女作を含む初期作品集です。帯文によれば「16歳から20歳の期間に書かれた未完歌集『虹のくに』、代用教員だった敗戦前後の日々を綴る「錬成所日記」、尊敬する師宛ての手紙、短篇小説・エッセイほかを収録」。著者は「あとがき」で「十代のとき書いたものが、本になるとは思わなかった」と述懐しておられます。小説第一作となる「不知火をとめ」(1947年7月3日)、習作ノートと思しい「ひとりごと」(1946年12月11日~1947年7月20日)、恩師への手紙「徳永康起先生へ」(1946年1月15日~7月21日)、これらが本書で初めて活字化されたものです。終戦前後に書かれた「錬成所日記」の抑制された生々しさが印象深いです。巻頭には著者の若い頃の写真の数々が掲載されています。

★藤原書店さんの12月新刊には、アラン・コルバン『身体はどのように変わってきたか――16世紀から現代まで』(小倉孝誠・鷲見洋一・岑村傑訳、ISBN978-4-89434-999-5)が予告されています。コルバンのこの本がISBNの出版社記号「89434」での最後の本であり、ル=ゴフでは新しい記号「86578」が使用されています。


◎既刊書&近刊書より

ロナルド・ドゥオーキン『神なき宗教――「自由」と「平等」をいかに守るか』森村進訳、筑摩書房、2014年10月、本体2,100円、ISBN978-4-480-84725-6

★『神なき宗教』は先月発売。原書は、Religion without God (Harvard University Press, October 2013)で、2013年2月14日に亡くなったドゥオーキンの遺作です。2011年12月にスイスのベルン大学で行った「アインシュタイン講義」に基づき、闘病の中で若干の改訂を行ったものだそうです。帯文(裏表紙側)はこうです。「宗教上の理由で兵役を拒否する人と、自らの信念に基づいて徴兵に応じない人に、裁判官は同等の判決を下すことができるだろうか? 信仰者の兵役が免除されて、無神論者にはそれが許されないとするならば、法の下の「平等」は、いかに守られるのか? 宗教という難題を前にして、法に正解はあるのか? 法哲学の巨人が、対立の根底に横たわる問いに挑む」。巻末には訳者解説「ドゥオーキンと「神なき宗教」」、トマス・スキャンロンによる「ロナルド・ドゥオーキンをしのぶ言葉」(2013年10月2日付)、人名索引と事項索引が付されています。

★目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。世界各地で様々な宗派の原理主義が台頭しているこんにち、宗教をめぐる諸問題は避けて通れない問題です。本書は有神論と無神論の対立的構図を乗り越えようとする試みで、リチャード・ドーキンスのベストセラー『神は妄想である』(垂水雄二訳、早川書房、2007年)が示したような脱宗教の方向性とは違う道筋を志向しています。キーワードのひとつは「宗教的無神論」です。その中にはスピノザやアインシュタイン、カール・セーガンらが数えられていますし、もっと興味深いことには、パウル・ティリッヒを宗教的有神論者であると同時に宗教的無神論者でもあると評価しています(47頁参照)。ここはもう少しドゥオーキンの解釈を詳しく読みたかったところですが、今となっては本書に示された鍵を手に各自がティリッヒの著作に立ち返って思索するしかありません。例えば本書で引用されている「「人格神」の問題」(『ティリッヒ著作集(10)出会い――自伝と交友』所収、白水社、1978年)から読み始めてみるのが良いと思われます。

★『神なき宗教』のほかのこれまで言及していなかった既刊書と近刊書についていくつか備忘録を記しておきます。まず10月刊では:

ハンス・ブルーメンベルク『われわれが生きている現実――技術・芸術・修辞学』村井則夫訳、法政大学出版局、2014年10月、本体2,900円、ISBN978-4-588-01019-4

があり、11月刊では:

S・フロイト『フロイト技法論集』藤山直樹編監訳、坂井俊之・鈴木菜実子編訳、岩崎学術出版社、2014年11月、本体3,000円、ISBN978-4-7533-1082-1
アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』山上浩嗣・宮下志朗訳、白水社、2014年11月、本体1,600円、ISBN978-4-560-02581-9
ジョン・マーフィー/リチャード・ローティ『プラグマティズム入門――パースからデイヴィドソンまで』高頭直樹訳、勁草書房、2014年11月、本体3,200円、ISBN978-4-326-15433-3

といった注目新刊がありましたが、残念ながら未購読。『フロイト技法論集』は「精神分析における夢解釈の取り扱い」1911年、「転移の力動」1912年、「精神分析を実践する医師への勧め」1912年、「治療の開始について(精神分析技法に関するさらなる勧めⅠ」1913年、「想起すること、反復すること、ワークスルーすること(精神分析技法に関するさらなる勧めⅡ」1914年、「転移性恋愛についての観察(精神分析技法に関するさらなる勧めⅢ」1915年、「精神分析治療中の誤った再認識(「すでに話した」)について」1914年、「終わりのある分析と終わりのない分析」1937年、「分析における構成」1937年、の9篇の新訳を収めています。新訳の意図については書名のリンク先の「監訳者あとがきより抜粋」をご覧ください。岩波版全集への失望感が率直に綴られています。

なお、法政大学出版局さんの12月新刊では:

12月10日『現代革命の新たな考察』エルネスト・ラクラウ著、山本圭訳、本体4,200円、ISBN978-4-588-01020-0
12月16日『知恵と女性性――コジェーヴとシュトラウスにおける科学・政治・宗教』ロラン・ビバール著、堅田研一訳、本体6,200円、ISBN978-4-588-01021-7
12月22日『イメージとしての女性――文化史および文学史における「女性的なるもの」の呈示形式』ジルヴィア・ボーヴェンシェン著、渡邉洋子・田邊玲子訳、本体4,800円、ISBN978-4-588-01022-4

といった注目新刊が目白押しです。ボーヴェンシェンは待望の本邦初訳です。弊社より刊行しているアレクサンダー・ガルシア・デュットマンの本をお読みになった方はボーヴェンシェンが重要な参照項になっていることをご記憶かと思います。
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by urag | 2014-11-30 23:18 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 28日

「思想」2014年第12号「10年後のジャック・デリダ」、ほか

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★西山雄二さん(訳書:デリダ『条件なき大学』、共訳:『ブランショ政治論集』)
★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』)
★佐藤嘉幸さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★リピット水田堯さん(著書:『原子の光(影の光学)』)
★柿並良佑さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
★渡名喜庸哲さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)

岩波書店さんの月刊誌「思想」2014年第12号(no.1088)の特集「10年後のジャック・デリダ」に論考やインタヴュー等が掲載されています。

まずデリダさんに関しては、二篇のテクスト「アメリカ独立宣言」(宮﨑裕助訳) と「新造語,新~主義,ポスト~主義,寄生およびその他の小さな地震現象についての,いくつかの声明と自明の理」(吉松覚訳)をはじめ、アントワーヌ・ド・ベックさんとティエリー・ジュスさんによるインタヴュー「ジャック・デリダ 映画とその亡霊たち」(堀潤之訳)、そしてラクー=ラバルトさんやナンシーさんとの討議「ジャック・デリダ,フィリップ・ラクー=ラバルト,ジャン=リュック・ナンシーの対話」(渡名喜庸哲訳) が掲載されています。

鵜飼、西山、宮﨑の各氏は國分功一郎さんとともに座談会「10年後のジャック・デリダ」に参加されており、宮﨑さんは論文「国家創設のパフォーマティヴと署名の政治――ジャック・デリダの「アメリカ独立宣言」論」を寄稿され、西山さんは論文「世界の終わりの後で――晩年のジャック・デリダの黙示録的語調について」と、カトリーヌ・マラブーさんの論考「グラマトロジーと可塑性」の翻訳を担当されています。

佐藤嘉幸さんは論文「立憲デモクラシーの危機と例外状態――デリダ,アガンベン,ベンヤミン,シュミットと「亡霊の回帰」」、リピット水田堯さんは論文「さらに剰余の愛――ジャック・デリダによるエコーポイエーシスと漂泊のナルシシズム」(小澤京子訳)、柿並良佑さんは論文「哲学の再描――デリダ/ナンシー,消え去る線を描いて」を寄稿されています。


★加治屋健司さん(共訳:クラウス+ボワ『アンフォルム』)

今月発売された『photographers' gallery press』第12号の特集「爆心地の写真――1945-1952」に論文「紙の上の観光──『LIVING HIROSHIMA』と広島の国際観光地化」を寄稿されています。『LIVING HIROSHIMA』というのは広島県観光協会が1949年に発行した写真集で、林重男や菊池俊吉による1945年10月の写真のほか、菊池のほか木村伊兵衛、大木実ら旧東方社の写真家による写真で構成された、被爆後の広島を伝える貴重な歴史資料です。


★本橋哲也さん(共訳:スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)

『ディアスポラの知識人』などの著書が日本でも翻訳されている、香港生まれで現在は米国デューク大学教授のレイ・チョウ(Rey Chow, 1957-)さんが2006年にデューク大学出版からThe Age of the World Target: Self-Referentiality in War, Theory, and Comparative Workを刊行され、本橋さんは今月その完訳書『標的とされた世界――戦争、理論、文化をめぐる考察』(法政大学出版局、2014年11月)を上梓されました。「世界が標的となる時代──原子爆弾、他者性、地域研究」「言及性への介入、あるいはポスト構造主義の外部」「文学研究における比較という古くて新しい問題──ポストヨーロッパという視点」の三章構成に序論「アメリカ合州国におけるヨーロッパ発の理論」を付した1冊です。本書はハリー・ハルトゥーニアンに捧げられています。
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by urag | 2014-11-28 16:40 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 24日

注目新刊:『来るべき経済学のために』人文書院、ほか

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◎人文書院さんの新刊より

橘木俊詔・根井雅弘『来るべき経済学のために』(人文書院、2014年11月、ISBN978-4-409-24100-4)
マンリー・P・ホール『新版 象徴哲学大系 II 秘密の博物誌』(大沼忠弘・山田耕士・吉村正和訳、人文書院、2014年11月、ISBN978-4-409-03083-7)

『来るべき経済学のために』は発売済。労働経済学者の橘木さんと経済思想史家の根井さんによるざっくばらんな対話篇です。門外漢でも楽しく読める本で、日本における経済学の今昔話だけでなく大学教育の問題に切り込んでいく批判的な視座が眼を惹きます。『新版 象徴哲学大系 II 秘密の博物誌』は発売済。図版をカラーに差替え本文を新組にした新版の第2巻です。前半ではピュタゴラスの数学・天文学・音楽論・色彩論が論究され、後半では動植物・鉱物等の象徴学が展開されます。第3巻『カバラと薔薇十字団』は来年1月刊行予定。


◎紀伊國屋書店さんの新刊より

フランス・ドゥ・ヴァール『道徳性の起源――ボノボが教えてくれること』(柴田裕之訳、紀伊國屋書店、2014年11月、ISBN978-4-314-01125-9)
田辺茂一著『わが町・新宿』(紀伊國屋書店、2014年11月、ISBN978-4-314-01124-2)

『道徳性の起源』は発売済。原書はThe Bonobo and the Atheist: In Search of Humanism Among the Primates (W. W. Norton & Company, 2013)です。ボノボの生態研究を通じて宗教的なトップダウンの道徳性ではなく無神論的なボトムアップの道徳性を見つめた好著。『わが町新宿』はまもなく発売。紀伊國屋書店創業者による回想録の復刊です。親本は1976年にサンケイ出版より刊行され、1981年に旺文社文庫で再刊(もともとは新聞連載)。1967年の同書店創業40年に寄せられた28名のエッセイを巻末付録として収録しています。解説は坪内祐三さん。商人として、また文化人として存分にとんがっていた書店人がいた時代の証言です。


◎中央公論新社さんの新刊より

アマンダ・リプリー『世界教育戦争――優秀な子供をいかに生み出すか』(北和丈訳、中央公論新社、2014年11月、ISBN978-4-12-004661-2)
原彬久編『岸信介証言録』(中公文庫、2014年11月、ISBN978-4-12-206041-8)
木下長宏『カラー版 ゴッホ〈自画像〉紀行』(中公新書、2014年11月、ISBN978-4-12-102292-9)

『世界教育戦争』は発売済。原書はThe Smartest Kids in the World: And How They Got That Way (Simon & Schuster, 2013)です。フィンランド、韓国、ポーランドに留学したアメリカ人生徒に密着したドキュメント。参加国の教育実態をそれぞれユートピア型、圧力鍋型、変容型として考察しています。リプリーの訳書は『生き残る判断 生き残れない行動』(岡真知子訳、光文社、2009年)に続く2冊目。『岸信介証言録』は発売済。毎日新聞社より2003年に刊行された本の文庫化。加除訂正を行い、人名等の注記を大幅に増やしたとのこと。言うまでもありませんが、岸は安倍晋三首相の祖父です。『カラー版 ゴッホ〈自画像〉紀行』はゴッホが数多く残した自画像の制作過程に迫る力作。自画像全点がカラーで収録されているのがミソ。



◎作品社さんの新刊より

三宅芳夫・菊池恵介編『[共同研究]近代世界システムと新自由主義グローバリズム――資本主義は持続可能か?』(作品社、2014年11月、ISBN978-4-86182-504-0)
三田誠広『偉大な罪人の生涯――続・カラマーゾフの兄弟』(作品社、2014年11月、ISBN978-4-86182-506-4)

『[共同研究]近代世界システムと新自由主義グローバリズム』は発売済。序論によれば、「新自由主義グローバリズム」への批判的視座に立って、現在進行形のそれを長期の資本主義システムのひとつの局面として捉え直す討議と論考を集成したもの。近代世界システムを考察する上での基礎文献の懇切な紹介があるのが書店員さんにとっても有益かと思われます。『偉大な罪人の生涯』は副題にも明らかなようにドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の続編を構想するという不可能な領域へと大胆に踏み込んだ長篇小説。すでに三冊の「小説によるドストエフスキー論」を上梓しておられる三田さんは作家の霊が憑依したかのように「筆はひとりでに動いて一気に書き上げ」たそうです。なお作品社さんでは来年1月から『川村湊自選集』(全5巻)を刊行されるとのこと。


◎水声社さんの新刊より

河村彩『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』(水声社、2014年11月、ISBN978-4-8010-0076-6)
『小島信夫短篇集成(2)アメリカン・スクール/無限後退』(水声社、2014年12月、ISBN978-4-8010-0062-9)
エリック・ファーユ『みどりの国 滞在日記』(三野博司訳、水声社、2014年12月、ISBN978-4-8010-0077-3)
川崎公平『黒沢清と〈断続〉の映画』(水声社、2014年12月、ISBN978-4-8010-0072-8)
真武真喜子・神山亮子・沢山遼・野田吉郎・森啓輔『高松次郎を読む』(水声社、2014年12月、ISBN978-4-8010-0074-2)
長尾天『イヴ・タンギー――アーチの増殖』(水声社、2014年12月、ISBN978-4-8010-0075-9)

河村彩(かわむら・あや:1979-)、川崎公平(かわさき・こうへい:1979-)、長尾天(ながお・たかし:1980-)の各氏による書籍は博士論文を改稿したもの。それぞれ特徴ある研究対象を選んでおり刺激的。河村さんと長夫さんの本は発売済。まもなく発売となる川崎さんの黒沢清論には弊社刊、リピット水田堯『原子の光(影の光学)』が論究されており、嬉しい限りです。『小島信夫短篇集成(2)』は発売済。第3回配本で、1954年から56年までの26作を収録。月報は伊藤氏貴、松本潤一郎、猪俣和也の三氏のエッセイを掲載。次回配本は第3巻「愛の完結/異郷の道化師」。『みどりの国 滞在日記』は発売済。フランス人作家ファーユによる日本滞在記。原書は今年2月に刊行されたばかりのMalgré Fukushima (José Corti, 2014)です。直訳すると「フクシマにもかかわらず」。巻末に訳者による著者インタビュー「エリック・ファーユ、日本を語る」が収録されています。『高松次郎を読む』は発売済。98年に死去した現代美術家の作品をめぐって60年代から2000年代にかけて、宮川淳や寺山修司らによって書かれた批評28篇が収められた資料価値のある論集です。水声社さんでは高松さんの著書『世界拡大計画』『不在への問い』を2003年に刊行されています。

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by urag | 2014-11-24 21:56 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(4)
2014年 11月 22日

森山大道サイン本およびサイン会

弊社今月新刊の森山大道写真集『ニュー新宿』のサイン本が本日、ブックファーストルミネ新宿店(ルミネ1の5F)に入荷します。新宿駅周辺では紀伊國屋書店新宿本店に続いて2軒目の扱いになります。在庫の有無はお店にご確認下さい。

また、本日14時から15時まで、銀座のAKIO NAGASAWA Galleryにて森山大道さんのサイン会が催されます。「新刊の「ニュー新宿」「記録」27号他を取り揃えて皆様のお越しをお待ちしております」とのこと。数少ないサイン会の機会なので、当日のお知らせになりますがご紹介します。
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by urag | 2014-11-22 12:38 | 森山大道 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 21日

いよいよ近日発売:デリダ講義録『獣と主権者[I]』白水社

弊社出版物でお世話になっております著訳者の先生方の最近のご活躍をご紹介します。

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★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
★鵜飼哲さん(共訳:ジュネ『公然たる敵』)
★西山雄二さん(訳書:デリダ『条件なき大学』、共訳:『ブランショ政治論集』)
★郷原佳以さん(共訳:『ブランショ政治論集』)
★高桑和巳さん(訳書:アガンベン『バートルビー』、共訳:クラウス+ボワ『アンフォルム』)
★佐藤嘉幸さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』、同『権力の心的な生』
★馬場智一さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)

ジャック・デリダさんの没後十年となる今年、これまでに『ヴェール』(エレーヌ・シクスー共著、郷原佳以訳、みすず書房、2014年3月)が刊行され、今月は『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』(マリー=ルイーズ・マレ編、鵜飼哲訳、筑摩書房、2014年11月)が発売されました。後者は、弊社が6月に刊行したニコラス・ロイル『デリダと文学』(中井亜佐子・吉田裕訳、月曜社、2014年6月)所収の来日講演録「詩・動物性・デリダ」でも大きく取り上げられているデリダさんの有名な講演です。

そしていよいよ『ジャック・デリダ講義録 獣と主権者[I]』(西山雄二・郷原佳以・亀井大輔・佐藤朋子訳、白水社、2014年11月)が近日発売となります。白水社さんの創立百周年記念出版と銘打たれており、11月27日(木)取次搬入だそうです。たいへん立派な大冊に眼を瞠るばかりです。帯文に曰く「哲学者デリダによる「動物-政治論」の到達点! 狼、狐、獅子、子羊、蛇、鷲……多種多様な動物をとりあげながら、獣と主権者の古典的対立を脱構築的に読みかえ、主権概念の伝統的な規定を問いなおしてゆく。著者晩年の政治-哲学的思索の白眉」と。第I巻には、2001年12月12日に行われた第1回から2002年3月27日に行われた第13回までの講義が収録されています。巻末には「ジャック・デリダ講義一覧」があり、白水社さんやみすず書房さんでの続刊予定が掲載されています。

白水社さんでの続刊には『獣と主権者[II]』(西山雄二・佐藤嘉幸・荒金直人・亀井大輔訳)や、『死刑[I]』(高桑和巳訳)が上がっています。西山雄二さんは9月に勁草書房さんから『カタストロフィと人文学』という論文集を編まれています。本書では西山さんは表題作となる序論を書かれているほか、ミシェル・ドゥギーのテクスト「マグニチュード」(寺本成彦さんとの共訳)、ジャン=リュック・ナンシーのインタビュー「「フクシマ」という名を通じて思考すること」、ジゼル・ベルクマン「日本の東北地方における思考の動揺」(寺本弘子さんとの共訳)の3篇をお訳しになっておられます。

西山さんらとともに『獣と主権者[II]』の共訳者をおつとめの佐藤嘉幸さんは弊社より2008年にジュディス・バトラー『自分自身を説明すること』を清水知子さんとの共訳で出版されておられますが、同書は好評によりおかげさまで今月(11月7日)、4刷を数えました。佐藤さんは西山さんらとともに、11月26日発売となる月刊『思想』12月号(特集=10年後のジャック・デリダ」に寄稿されていますが、この特集号については後日ご紹介します。

『死刑[I]』を手掛けられる高桑和巳さんは『獣と主権者[I]』の巻頭におかれた、トマ・デュトワ、ペギー・カムフ、ミシェル・リス、マリー=ルイーズ・マレ、ジネット・ミショーの連名による序言を西山さんとともにお訳しになられています。高桑さんは今月、アレックス・マリー『ジョルジョ・アガンベン』(高桑和巳訳、青土社、2014年11月)を上梓されています。この本の読書案内によれば、高桑さんはアガンベンさんのイメージ論集『ニンファ――その他のイメージ論』(仮題)を慶應義塾大学出版会さんから刊行されるご予定です。同名の原書は2007年に刊行されていますが、この論集は日本語版独自編集の特別版とのことです。

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なお、白水社さんでは12月刊行予定として、ブノワ・ペータース『デリダ伝』(原宏之・大森晋輔訳)を予告されています。800頁もの大作です。

一方、みすず書房さんでは12月22日発行予定として、ジャック・デリダ『哲学への権利 1』(西山雄二・馬場智一・立花史訳、みすず書房、2014年12月)を予告されておられます。ここでも西山さんが訳者として活躍されています。

周知の通り、本日から三連休いっぱいまで、早稲田大学で「ジャック・デリダ没後10年シンポジウム」が開催されます。詳しくは脱構築研究会さんのウェブサイトをご覧ください。
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by urag | 2014-11-21 14:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 20日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2014年11月29日(土)開店
かもめブックス:約41坪(うち半分が書店、その他はカフェ、ギャラリー)
東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビル 1F
栗田帳合。弊社へのご発注は人文書数点。神楽坂の文鳥堂書店本店が今春(2014年4月5日)閉店したのを惜しんで、なんと校正・校閲の専門会社である鴎来堂さんが同じ場所で本屋を開業されます。町の本屋さんの閉店がごくありふれた風景となっている昨今、眼を瞠る試みです。聞くところによると某チェーンのベテラン書店員さんがこちらに移籍されるとのことで、むしろ版元営業マン界隈ではその方が抜ける本屋さんの今後が心配になったりしているようです(それだけ信頼感のある方だという意味です)。

同店のプレスリリースによれば「書店従来の新刊を優遇した売場作りとは異なる〈レコメンド/感動を伝える〉〈リマインド/感動を想起させる〉を意識した売場を作っていきます」とのこと。2015年には同ビル2Fにコミック専門フロアを開店予定だとか。また本屋に併設されているカフェ「WEEKENDERS COFFEE All Right」では生ビールや毎月入れ替わる地ビールも提供されるとのことで、トークイベントやフードイベントの開催が可能となるスペースとして宣伝されています。また、書店内のギャラリー「ondo kagurazaka」では「本の刊行に合わせた展示やカフェでのイベントと連動した企画展示の開催が可能」とのことです。

開店までの作業の様子は同店のブログに詳しいです。ご苦労されている反面、じつに楽しそうです。


2014年12月5日(金)開店
喜久屋書店仙台店:490坪
宮城県仙台市青葉区中央4-1-1 イービーンズ 5・6F
トーハン帳合。弊社へのご発注は人文書数点。イービーンズには3Fおよび5~7Fにジュンク堂書店仙台本店(トーハン帳合)が入っていましたが先月10月29日に閉店(ジュンク堂ウェブサイトのお知らせはこちら。「河北新報」10月11日付報道はこちら)。震災以後、ジュンク堂は仙台ロフト店、イービーンズの仙台本店、そしてLABI仙台の地下1Fに仙台TR店の3店舗を展開し、いくらなんでも多すぎるのではと版元を内心ヒヤヒヤさせていましたが、結果的に残念ながら2店舗は撤退し(仙台ロフト店は本店の少し前の8月31日に閉店)、仙台TR店(トーハン帳合)を残すのみとなりました。DNP傘下のCHIグループ(丸善CHIホールディングス)としては同じく仙台駅前の商圏に丸善仙台アエル店(日販帳合)が営業中です。そうして今後は、イービーンズの8Fで営業していた、グループ外ながら兄弟関係と言っていいであろう喜久屋書店漫画館仙台店(300坪)をジュンク堂が退店した5・6Fに移し、総合書店としてオープンするというわけです。

つまり、大きく見れば単なるジュンク堂の撤退ではなく、他チェーンで後を継ぐ、というわけでしょうか。ジュンク堂が撤退した仙台ロフトの7Fには現在はやはりDNP傘下の文教堂JOY(animega B's Hobby)仙台ロフト店が開店しています。・・・とはいえ、正直に言えば夏から秋にかけて連続でジュンク堂が仙台から撤退したことに対しての出版界の第一印象はあまりよくないようです。出店から閉店まで、経営の意図がさほど伝わってこないのです。もう少し丁寧に経緯を対外的に説明されてもよかったのではないでしょうか。現場で働く皆さんにとっても、こういう目まぐるしい動きはいささか戸惑うところがあったかもしれないと想像しています。

DNP傘下の株式会社文教堂グループホールディングスでは先月末に文教堂書店渋谷店を閉店させています。駅前のお店なので不採算店とは思えませんでしたが、実際はどうなのでしょう。ネームバリューがある好立地の書店さんでも整理されていく時代になったというべきなのか、それともごく当たり前に、様々な事情次第で本屋さんがなくなっていく、その日常的一例にすぎないのか、あるいは書店激戦区ではいよいよお店が淘汰されていくということなのか。

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品切につき出品できませんでしたが、今月は京都造形芸術大学の「D&DEPARTMENT KYOTO」分の発注がありました。トーハン帳合で、2014年11月29日(土)開店予定。紀伊國屋書店京都営業部さんが商品調達のサポートをされているようですね。そういえば同店の発注があったトーハン京都支店からは国会図書館関西館での原装保存用の既刊書籍の発注も同時期にありました。

国会図書館が今春(2014年4月24日)発表した「原装のまま保存するための複本の収集を開始しました」というお知らせによると、「当館では、我が国の出版文化を後世に伝承することを目的として、出版文化史上、あるいは造本・装丁上意義があり、将来に示唆を与えると考えられる国内刊行図書を、函・カバー等の外装を含めた原装のままで保存するため、複本としての収集を開始しました。これらは、日本書籍出版協会及び日本印刷産業連合会が毎年主催する「造本装幀コンクール」出品作品のうち、同コンクール事務局からご寄贈いただけたもの、または、当館において購入したものです。なお、これらの資料は、原則として、公共的性格を有する各種展示会への貸出しでのみご利用いただくことができます」と。

この「「造本装幀コンクール」出品作品のうち」という文言が気になります。コンクール出品作品からしか保存対象を選ばないのかどうか気になったので、本件を国会図書館東京本館に問い合わせたところ、「コンクール出品作品」のみから選択するとのご回答でした。コンクールに出品されない本の中にもたくさん素晴らしい造本の書籍はあるというのに、いったい血税を使ってこの選択方法しかないのはいかがなものか、彼らの言う「出版文化史」はコンクールの中にしかないとでも言うのか、と天を仰いだ今日この頃です。

国会図書館にも色々事情はあるのでしょうし、予算や人員の限界もあるのでしょう。しかし、たとえばつい先日発売された『アイデア(367)日本オルタナ文学誌 1945-1969 戦後・活字・韻律』(誠文堂新光社、2014年11月号)で、郡淳一郎さんが戦後日本出版史における「社内装丁・編集装丁」の系譜を辿ったような作業は、「コンクールから選抜する」作業とはほとんど無縁のもので、郡さんのような探究例を国会図書館は見逃すべきではありません。あえて申し上げますが、国史や正史の一部として「出版文化史」なるものがあるのではないことは自明です。雑多で多様で、時として相矛盾する細部を有する文化史への接近は容易ならざるものです。

国会図書館さんの今後のますますの努力に期待しつつ、今回は、コンクール出品作のみから選択するという方法には明らかな瑕疵があるように思う(要するに手抜きに見える)、と一出版人として苦言を呈する次第です。
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by urag | 2014-11-20 17:07 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 19日

森山大道写真集『ニュー新宿』サイン本

森山大道写真集『ニュー新宿』のサイン本が、紀伊國屋書店新宿本店7F芸術書売場、NADiff a/p/a/r/t(渋谷区恵比寿)、NADiff modern(渋谷文化村B1)、NADiff contemporary(東京都現代美術館1F)、NADiff aichi(愛知芸術文化センターB2)で販売されています。以下は紀伊國屋書店さんでの森山さんのサイン風景です。

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サイン本の在庫の有無は各店舗へお問い合わせください。サイン本を扱っていただける書店さんは今後も何店舗か増える予定ですので、順次お知らせいたします。ちなみにNADiff a/p/a/r/tさんでは2002年版『新宿』刊行時のポスター2種を少量ですが扱っていただいています。古いものなので、コンディションは店頭で確かめていただくのがよさそうです。

なお、オンラインでのサイン本販売がナディッフさんで行われています。『ニュー新宿』だけでなく先月新刊のエッセイ集『通過者の視線』のサイン本もまだ在庫があるようです。
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by urag | 2014-11-19 11:59 | 森山大道 | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 18日

12月中旬新刊:ブランショ『謎の男トマ 1941年初版』

2014年12月12日取次搬入予定 *フランス文学・思想

謎の男トマ 1941年初版
モーリス・ブランショ著 門間広明訳
月曜社 2014年12月 本体2,800円 46判並製328頁 ISBN978-4-86503-020-4

アマゾン・ジャパンにて予約受付中です。

作者の死から2年後の2005年に復刻された幻のデビュー作『謎の男トマ』1941年初版本の新訳(初版の半分以下に縮められた新版は1950年刊行)。ピエール・マドールによる序文の初訳を付す。小説であると同時にブランショの思想的出発点を刻んだ問題作がここに復活する。

【叢書・エクリチュールの冒険、第8回配本】本書の造本について:青みがかった白色の本文紙に濃紺のインクで刷り、ダークブラウンの見返しと表紙でくるみました。カバーは白い羊皮紙に文字のみでシンプルにまとめ、欧語原題には金の箔押しを施しました。

目次:
漂流物の回帰(ピエール・マドール)
謎の男トマ
 I, II, III, IV, V, VI, VII, VIII, IX, X, XI, XII, XIII, XIV, XV.
 訳註
訳者あとがき

原書:THOMAS L’OBSCUR, Première version, 1941, Éditions Gallimard, Paris, 1941/2005.

モーリス・ブランショ(Maurice Blanchot, 1907-2003):フランスの作家・思想家。1941年のデビュー作『謎の男トマ』初版本には篠沢秀雄訳(『謎のトマ』中央公論新社、2012年)がある。同書の1950年の新版には菅野昭正訳(『現代フランス文学13人集(4)』所収、新潮社、1966年;『筑摩世界文学大系(82)』所収、筑摩書房、1982年;『ブランショ小説選』所収、書肆心水、2005年)がある。月曜社ではブランショの批評作『問われる知識人』(安原伸一朗訳、2002年)、『ブランショ政治論集1958–1993』(安原伸一朗ほか訳、2005年)、『書物の不在』(中山元訳、2007年;第二版、2009年)を刊行している。

門間広明(もんま・ひろあき):1976年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士課程満期退学。現在早稲田大学非常勤講師。訳書にアントワーヌ・ヴォロディーヌ『無力な天使たち』(共訳、国書刊行会、2012年)がある。
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by urag | 2014-11-18 11:15 | 近刊情報 | Trackback | Comments(2)
2014年 11月 16日

注目文庫新刊:2014年11月~12月

◎2014年11月文庫新刊より(価格は税別本体)

06日『隠された神々――古代信仰と陰陽五行』吉野裕子著、河出文庫、800円
07日『それをお金で買いますか――市場主義の限界』マイケル・サンデル著、鬼澤忍訳、早川文庫、800円
10日『貧困の哲学(下)』ピエール=ジョゼフ・プルードン著、斉藤悦則訳、平凡社ライブラリー、2000円
10日『工場日記』シモーヌ・ヴェイユ著、田辺保訳、ちくま学芸文庫、1200円
10日『卵のように軽やかに――サティによるサティ』エリック・サティ著、秋山邦晴・岩佐哲男編訳、ちくま学芸文庫、1300円
11日『三国志演義(三)』井波律子訳、講談社学術文庫、1700円
14日『マラルメ詩集』渡辺守章訳、岩波文庫、1200円
14日『人生処方詩集』エーリヒ・ケストナー作、小松太郎訳、岩波文庫、720円
14日『言語変化という問題――共時態、通時態、歴史』E・コセリウ著、田中克彦訳、岩波文庫、1020円

『隠された神々』(講談社現代新書、1975年;人文書院、1992年)の巻末に付された安田喜憲さんによる文庫版解説「吉野裕子先生のアニミズム」に曰く「「安田さん注連縄は蛇よ!」。この吉野裕子先生の一言によって、私の研究者としての人生は大きく変わった」」(228頁)と。吉野さんの『蛇』(法政大学出版局、1979年;講談社学術文庫、1999年)や『日本人の死生観――蛇信仰の視座から』(講談社現代新書、1982年;人文書院、1995年)、『山の神――易・五行と日本の原始蛇信仰』(人文書院、1989年;講談社学術文庫、2008年)といった著書に親しんできた読者としては誰しも「注連縄は蛇よ!」と語りかけられた心地がし、なるほど蛇か!と得心した経験があるのではないでしょうか。私もその一人です。世界各地に存在する古典的象徴としての蛇には実に興味深いものがあります。あくまでも私見に過ぎませんが、クンダリニーは蛇であり、腸もまた蛇だと考えています。

『それをお金で買いますか』は2012年刊の同書単行本の文庫化。親本にはなかった「訳者あとがき」が「2014年10月」との日付で新たに付されています。特に改訳改稿については言及されていませんが、この文庫本を決定版と見て良いと思われます。

『貧困の哲学(下)』が実現したのは、巻末の訳者解説によれば植村邦彦さんが訳者の斉藤さんを平凡社に紹介したことによるものだとか。植村さんは周知の通り、マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日――初版』(太田出版、1996年;平凡社ライブラリー、2008年)の訳者でいらっしゃいます。斉藤さんによる今回の初訳は日本語として読みやすく、プルードンの語り口は魅力的で活き活きとしています。本書が日本語で読めるようになった幸運を喜ばすにはいられません。

『工場日記』(講談社文庫、1972年;講談社学術文庫、1986年)は目次のあとに置かれた編集部の特記によれば、日記部分は明朝体、それに付されたメモはゴシック体と立て分けたほか、現行版原書に準じて順番を入れ替えた箇所があり、編集部による補足を亀甲括弧で括って加えた箇所もあるそうです。訳者補足も亀甲なので、どれが編集部によって新しく加えられたものなのかをどうしても知りたい読者は本書の底本である講談社学術文庫版に当たるのがよさそうです。

『卵のように軽やかに』は筑摩叢書(1992年)からの文庫化。巻末には共編訳者の秋山邦晴(1929-1996)さんのパートナーでいらっしゃる高橋アキさんがエッセイ「オンフルールへの旅」を寄稿されています。旅先での思いがけない「発見」のエピソードが心温まります。

『三国志演義(三)』は帯文に「劉備、関羽、張飛死す! 激動の「三国時代」は新局面に突入!」とあって迫力十分。六十一回から九十回までが収録されています。来月発売の第四巻で全巻完結です。

『マラルメ詩集』は岩波文庫では鈴木信太郎訳(1963年)以来の新訳。鈴木訳はもともと戦後まもない時期に創元社で刊行され、創元文庫(1952年)でも発売された歴史的なものだったので、新訳文庫が期待されていたところでした(ちなみに他の文庫版マラルメ詩集としては秋山澄夫訳が角川文庫より1953年に刊行されていましたが、80年代の「名著コレクション」でも創刊40周年特別企画「リバイバル・コレクション」でも再刊されませんでした)。今回の新訳版は帯文を浅田彰さんが書かれています。「マラルメの詩が、リーダブルな日本語となって、いま蘇る。これは事件だ」。確かに筑摩書房版『マラルメ全集』の最終回配本で第一巻『詩・イジチュール』が2010年に刊行された折はしばらく新訳は出ないだろうと想像できただけに、そのたった4年後に文庫で新訳が読めるとは思いもしませんでした。翻訳の経緯については「あとがき」に詳しく書かれています。今回の新訳ではまずドマン版(1899年)『ステファヌ・マラルメ詩集』が第I部に収められ、第II部は『詩集』に収録されていない8篇を「拾遺詩篇」として収め、第III部に未定稿「半獣神変容/エロディアード詩群」を収めています。こうなると『イジチュール』や『賽の一振り』も文庫で読めたらと夢を見たくなりますね。

『人生処方詩集』(創元社、1952年;角川文庫、1966年;ちくま文庫、1988年)がついに岩波文庫に入りました。同書は昨春、飯吉光夫さんによる新訳正続編が思潮社さんからも刊行されています。ケストナーといえば『人生処方詩集』をお訳しになった小松さんによる既訳がある『ファビアン』が今月、丘沢静也さんの新訳でみすず書房さんからまもなく刊行されますし、『飛ぶ教室』の池内紀さんによる新訳も月末に新潮文庫で発売になります。没後40年も子どもから大人までケストナーは愛されています。

『言語変化という問題』は版元解散により幻の書となっている『うつりゆくこそことばなれ――サンクロニー・ディアクロニー・ヒストリア』(田中克彦・かめいたかし訳、クロノス、1981年)の驚愕の文庫化です。文庫化にあたって巻末解説が2本付されています。コセリウの出身地ルーマニアの言語学者エマ・タマヤヌ-モリタさんによる「E・コセリウ――その人間像」と、田中克彦さんによる「この訳書のなりたちについて」です。田中さんはそこでこう書かれています。「これこそは、私が長い間見出せなかった、ソシュールの共時言語学という、出口なしの袋小路からの脱出のヒントを与えてくれる、おそるべき革命の書であると覚った。それはたとえていえば、雷に打たれたような思いであった」(423頁)。コセリウの訳書は三修社版『コセリウ言語学選集』全4巻を始め複数存在していましたが、現在は『一般言語学入門〔第二版〕』(下宮忠雄訳、三修社、2003年)のほか今回の文庫1点のみです。今こそ読み直すべき好機です。

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◎2014年12月文庫新刊より(価格は税込)

01日『ロックフェラー回顧録〔上・下〕』デイヴィッド・ロックフェラー著、楡井浩一訳、新潮文庫、853円/810円
01日『飛ぶ教室』エーリヒ・ケストナー著、池内紀訳、新潮文庫、497円
01日『賢者の贈りもの――O・ヘンリー傑作選I』O・ヘンリー著、小川高義訳、新潮文庫、497円
04日『イタリア共産党讃歌』塩野七生著、文春学藝ライブラリー、1447円
04日『国家とは何か』福田恆存著、文春学藝ライブラリー、1458円
05日『リヴァイアサン(1)』ホッブズ著、角田安正訳、光文社古典新訳文庫、価格未定
05日『感情教育(下)』フローベール著、光文社古典新訳文庫、価格未定
08日『言説の領界』ミシェル・フーコー著、慎改康之訳、河出文庫、1296円
10日『宮沢賢治のオノマトペ集』宮沢賢治著、杉田淳子編、栗原敦監修、ちくま文庫、950円
10日『新宿駅最後の小さなお店ベルク――個人店が生き残るには?』井野朋也著、柄谷行人解説、吉田戦車解説、ちくま文庫、799円
10日『法の概念 第3版』H・L・A・ハート著、長谷部恭男訳、ちくま学芸文庫、1620円
12日『三国志演義(4)』井波律子著、講談社学術文庫、1836円
12日『奇跡を考える――科学と宗教』村上陽一郎著、講談社学術文庫、778円
12日『全国妖怪事典』千葉幹夫編、講談社学術文庫、1080円
12日『テンプル騎士団』篠田雄次郎著、講談社学術文庫、842円
12日『歴代日本銀行総裁論――日本金融政策史の研究』吉野俊彦著、1544円
12日『ジャーナリストの生理学』バルザック著、鹿島茂訳・解説、講談社学術文庫、1134円
16日『テアイテトス』プラトン著、田中美知太郎訳、岩波文庫、972円
16日『ビヒモス』ホッブズ著、山田園子訳、岩波文庫、1102円

なんといっても来月はホッブスの『リヴァイアサン』新訳と、姉妹篇の『ヒビモス』初訳が出るというのが一番のニュースですね。『テアイテトス』は旧版(1966年)も田中さん訳なのでどこが違うのかと思ったところ、「岩波版プラトン全集を底本にして読みやすく改版」とのこと。「テアイテトス」所収の全集版第2巻は1980年刊(当時の価格は3700円とお値打ち)ですから、アップデート版であるということですね。そろそろ同書の渡辺邦夫訳(ちくま学芸文庫、2004年)が再刊されると嬉しいのですけれども。ベルク本の文庫化で柄谷さんの解説がつくというのも楽しみです。
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by urag | 2014-11-16 23:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 12日

搬入日決定&書影公開:森山大道写真集『ニュー新宿』

弊社今月新刊の森山大道写真集『ニュー新宿』の取次搬入日が決定しましたのでお知らせします。日販、トーハン、大阪屋、栗田、太洋社、すべて2014年11月14日(月)です。当初の予定より数日遅れております。書店さんの店頭に並び始めるのは週明け半ば過ぎ、19日以降かと思われます。

書影も公開いたします。B5判上製本で、サイズを詳しく書きますと、タテ266mm、ヨコ195mm、ツカ45mmです。重さは1970gとずっしり重いです。カヴァー書名はブラックの箔押し。サイン本がいくつかの書店さんの店頭に並ぶ予定ですが、詳細は後日当ブログにてお知らせいたします。

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by urag | 2014-11-12 15:47 | 森山大道 | Trackback | Comments(0)