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2014年 09月 28日

2014年10月の注目近刊書

★今回は来月刊行予定の近刊書の中から注目の本(再刊書も含む)をピックアップします。全部はさすがに買えませんが、チェックはしなければなりません。あとあとになって「え、そんな本があったっけ!」ということにならないようにしたいと思います。

◎2014年10月の注目新刊(価格は税別)

01日『アル・ゴア 未来を語る――世界を動かす6つの要因』アル・ゴア著、枝廣淳子監訳、中小路佳代子訳、角川マガジンズ、1800円
04日『夜想#カフカの読みかた』山村浩二ほか著、ステュディオ・パラボリカ、1500円
06日『ドイツ団体法論 第1巻 ドイツゲノッセンシャフト法史 第2分冊』オットー・フォン・ギールケ著、庄子良男訳、信山社、14,000円
07日『出版人に聞く(15)鈴木書店の成長と衰退』小泉孝一著、論創社、1,600円
07日『宮廷人の閑話――中世ラテン綺譚集〔De Nugis Curialium〕』ウォルター・マップ著、瀬谷幸男訳、論創社、5,500円
08日『現代哲学』バートランド・ラッセル著、高村夏輝訳、ちくま学芸文庫、1,600円
08日『解釈としての社会批判』マイケル・ウォルツァー著、大川正彦+川本隆史訳、ちくま学芸文庫、1,200円
08日『精神と自然――ワイル講演録』ヘルマン・ワイル著、ピーター・ペジック編、岡村浩訳、ちくま学芸文庫、1,600円
08日『梁塵秘抄』植木朝子編訳、ちくま学芸文庫、1,300円
08日『真剣に話しましょう――小熊英二対談集』小熊英二ほか著、新曜社、2,400円
09日『吉本隆明全集〈4〉1952-1957』晶文社、6,400円
10日『経済学41の巨人――古典から現代まで』日本経済新聞社編、日本経済新聞出版社、2,400円
10日『新装版 雪の結晶――小さな神秘の世界』ケン・リブレクト著、矢野真千子訳、河出書房新社、1,600円
10日『江戸の性語辞典』永井義男著、朝日新書、760円
10日『わが半生』W・チャーチル著、中公クラシックス、2,500円
10日『貧困の哲学(上)』ピエール=ジョセフ・プルードン著、斉藤悦則訳、平凡社ライブラリー、1800円
10日『新装版 初期ギリシア哲学』ジョン・バーネット著、西川亮訳、以文社、7,000円
10日『平等の方法』ジャック・ランシエール著、市田良彦ほか訳、航思社、3,400円
10日『ワードマップ 現代アメリカ――日米比較のなかで読む』渡辺靖編、新曜社、2,400円

★まずは10日まで。不覚にも第1分冊が今月発売されていたのを見逃していたのが、ギールケ(1841-1921)の主著『ドイツ団体法論』(全4巻)の第1巻『ドイツゲノッセンシャフト法史』(原書1868年刊、日本語訳全4分冊予定、信山社)。初版部数はそう多くはないと思われるので、もたもたしないで購入しておかねばなりません。庄子良男(しょうじ・よしお:1943-)先生は東北学院大学教授、千葉大学教授、筑波大学大学院教授、早稲田大学大学院教授を経て、2007年より駿河台大学法科大学院教授。大著への途方もない挑戦に圧倒されます。一方『吉本隆明全集』は順調に第3回配本。こちらも全集を編むという途方もない挑戦が続きます。


13日『革命のつくり方――台湾ひまわり運動:対向運動の創造性』港千尋著、インスクリプト、2,200円
14日『吉本隆明の経済学』中沢新一編著、筑摩選書、1,800円
14日『「知の技法」入門』小林康夫+大澤真幸著、河出書房新社、1,500円
14日『美しい知の遺産 世界の図書館』ジェームズ・W・P・キャンベル著、ウィル・プライス写真、桂英史監修、河出書房新社、8,800円
15日『こんにちは、ユダヤ人です』ロジャー・パルバース+四方田犬彦著、河出ブックス、1,600円
15日『何を怖れる――フェミニズムを生きた女たち』松井久子編、岩波書店、1,400円
16日『ノイマン・ゲーデル・チューリング』高橋昌一郎著、筑摩選書、1,600円
16日『快楽について』ロレンツォ・ヴァッラ著、近藤恒一訳、岩波文庫、1,200円
16日『ノストラダムス 予言集』P・ブランダムール著、高田勇・伊藤進編訳、岩波書店(岩波人文書セレクション)、3,000円
17日『学生よ〔1848年革命前夜の講義録〕〈新版〉』ジュール・ミシュレ著、大野一道訳、藤原書店、2,700円
17日『自然主義と宗教の間――哲学論集』ユルゲン・ハーバーマス著、庄司信ほか訳、法政大学出版局(叢書・ウニベルシタス)、4,800円
20日『本の底力――ネット・ウェブ時代に本を読む』高橋文夫著、新曜社、1,600円

★次に20日まで。中沢さん、四方田さん、小林さん、大澤さん、港さんといった1950年から1960年までに生まれ、ニューアカ・ブームを含む黄金の80年代を経てかれこれ30年から40年近く第一線を走っておられる先達が揃って新刊を上梓されます。少しジャンルは異なりますが、高橋昌一郎さんも世代的に一緒です。70年代生まれの若手にとっては師匠にあたる世代で、世間的に言えばいわゆる「グランドジェネレーション」にあたります。この世代をビジネス・ターゲットにする大手小売は存在しても、本屋さんはないですね。割と真剣な話、文化戦略としてGG向けの複合書店をイオンが作ったらいいのに。

★話は変わりますが、千代田区内幸町のジュンク堂書店プレスセンター店で来たる11月1日から2日に、「ジュンク堂に住んでみる」モニターツアーが行われる予定ですね。参加できるのは3組6名まで。18歳以上が対象で参加費は無料。最低1冊の書籍か雑誌を買ってくれとのことです。9月30日まで募集中で応募多数なら抽選。なんと大胆な企画でしょうか。詳細情報とお申し込みはこちら。静まり返った夜の店内はけっこう寒そう。防寒対策をしっかりして、背の高い書棚に囲まれながら新刊の『美しい知の遺産 世界の図書館』などを眺めるのはいかがでしょうか。


21日『高野山』松長有慶著、岩波新書、880円
21日『ケルト紋様の幾何学』アダム・テットロウ著、山田美明訳、創元社(アルケミスト双書)、1,200円
22日『沖縄の傷という回路』新城郁夫著、岩波書店、本体2,600円
22日『オルフェウスの声――詩とナチュラル・ヒストリー』エリザベス・シューエル著、高山宏訳、白水社(異貌の人文学)、6,000円
22日『かたちの理由――自然のもの、人工のもの、様々なかたちの成り立ちを知る』クリストファー・ウィリアムズ著、小竹由加里+梶浦真美訳、ビー・エヌ・エヌ新社、2,200円
23日『神なき宗教――「自由」と「平等」をいかに守るか』ロナルド・ドゥオーキン著、森村進訳、筑摩書房、2,100円
24日『啓蒙思想2.0――政治・経済・生活を正気に戻すために』ジョセフ・ヒース著、栗原百代訳、NTT出版、3,000円
24日『知識欲の誕生』アラン・コルバン著、築山和也訳、藤原書店、2,000円
24日『フランクフルト学派――ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ』細見和之著、中公新書、840円
24日『マルブランシュ――認識をめぐる争いと光の形而上学』依田義右著、ぷねうま舎、8,000円
25日『菜根譚』湯浅邦弘著、角川ソフィア文庫(ビギナーズ・クラシックス)、800円
25日『いと高き貧しさ』ジョルジョ・アガンベン著、上村忠男+太田綾子訳、みすず書房、4,600円
29日『デリダ伝』ブノワ・ペータース著、原宏之+大森晋輔訳、白水社、10,000円
30日『サルトル読本』澤田直編、法政大学出版局、3,600円
30日『生そのものの政治学――二十一世紀の生物医学、権力、主体性』ニコラス・ローズ著、檜垣立哉監訳、法政大学出版局(叢書・ウニベルシタス)、5,200円
30日『われわれが生きている現実――技術・芸術・修辞学』ハンス・ブルーメンベルク著、村井則夫訳、法政大学出版局(叢書・ウニベルシタス)、2,900円
30日『アドラシオン――キリスト教的西洋の脱構築』ジャン=リュック・ナンシー著、メランベルジェ眞紀訳、新評論、2,700円
30日『68年5月とその後――反乱の記憶・表象・現在』クリスティン・ロス著、箱田徹訳、航思社、3,800円
31日『現代の経済思想』橋本努編、勁草書房、5,500円
31日『必要の理論』L・ドイヨル+I・ゴフ著、馬嶋裕+山森亮監訳、勁草書房、3,500円

★最後に30日まで。シューエル、ドゥオーキン、コルバン、アガンベン、『デリダ伝』、ブルーメンベルク、ナンシー、等々とめくるめく怒涛の新刊攻勢です。上記7冊を買うと税別でも3万円を超えますから(消費税8%が重いこと!ましてや10%なんて・・・)、給料日以降に実際に刊行されているかどうか確認しつつ、読みたい順番も考えつつ購入、といったところでしょうか。アガンベンと言えば、10月下旬刊行予定で、アレックス・マリー『ジョルジョ・アガンベン』(高桑和巳訳、青土社、2,400円)も予定されています。なんと、シリーズ「現代思想ガイドブック」の約8年ぶりの新刊です。2006年12月刊行の、ニコラス・ロイル『ジャック・デリダ』(田崎英明訳)で日本語版は完結したものと思っていましたが、この先どんなラインナップが続くのでしょうか。
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by urag | 2014-09-28 23:56 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 26日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2014年10月8日(水)開店
KANEIRI STANDARD STORE:??坪
岩手県盛岡市盛岡駅前通1番44号 盛岡駅ビル・フェザン フェザンテラス1F
トーハン帳合。弊社へのご発注は芸術書主要書目でした。運営主体の「株式会社金入」七代目社長、金入健雄さんのフェイスブックでの公開情報によれば、盛岡駅ビル・フェザンの駐車場一階にオープン予定とのことで、「東北のスタンダードな良きもの、暮らしとデザイン、アートをテーマに、民芸・工芸品、食、日用品から書籍からステーショナリーからインテリアまでセレクトしていきます。この地でより良く暮らすにはどうしたら良いかを考えながら、土地に根ざした文化とクリエイティビティ、その両面にインスピレーションを感じて頂けるような空間を目指して。サイズは仙台八戸の倍くらいでして、店内意匠はずっと憧れておりました心の師匠様にお願いさせて頂いております。それはもうめっちゃかっこいいので、そこに沢山の良き品がこれでもかと並ぶと思うと自分でも超どきどきしております」とのことです。

駐車場1Fというのはフェザンテラスの1Fのことで、現在テラスの1Fではファッション雑貨を扱う「ドゥ・エ・ドゥ」、ライフスタイルグッズを扱う「スボルメ」、ライフスタイルグッズを扱い、カフェ・レストランを併設させた「SHINSEIDO TOUCH」が展開中ですが、カネイリの新店舗はスボルメとSHINSEIDO TOUCHのあいだのスペースに入店するようです。

「店内には、一面だけののギャラリー壁もあります。壁はWALL1と名付けました。新たな取り組みとして1wall,1tohokuをテーマに企画展の運営を行い、東北スタンダードや各地のプロジェクトとも連携しながら東北の豊かな暮らしと固有の文化を発信していきます。最初の企画からずっとやりたかった心から尊敬する兄貴の企画でございます」とのことです。
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by urag | 2014-09-26 13:43 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 22日

重版出来:ボワ+クラウス『アンフォルム』3刷

ボワ+クラウス『アンフォルム』の3刷ができあがりました。

一方、アガンベン『到来する共同体』は品切で、重版準備中です。
重版出来予定はもう少し先になるかと思います。

+++

1年前の弊社はこんな本を出していました。

◎2013年9月12日発売:松本俊夫『逸脱の映像――拡張・変容・実験精神』金子遊編、本体3,600円
書評1⇒風間正氏書評(「neoneo web」2013年10月25日付「ブックレビュー」欄)
書評2⇒近藤亮介氏短評(「美術手帖」2013年12月号「INFORMATION BOOK」欄)
書評3⇒内藤誠氏書評「最先端の映像についての論考」(「キネマ旬報」2013年12月上旬号「映画・書評」欄)

◎2013年8月8日発売:エルンスト・ユンガー『労働者』本体2,800円、叢書エクリチュールの冒険第5回配本
書評1⇒ナガタ氏書評「労働という概念が放棄されたあとの現実を、読者の目に映す」(「Book News」2013年8月24日付)
書評2⇒初見基氏書評「いまだにアクチュアルな問題提起――ヴァイマル期ドイツのもっとも重要にして問題的な著作のひとつ」(「週刊読書人」2013年10月4日号)
書評3⇒大竹弘二氏書評(「社会思想史研究」第38号、2014年9月)

◎2013年7月8日発売:竹田賢一『地表に蠢く音楽ども』本体3,800円
書評1⇒無記名氏短評(「アイデア」誌360号(2013年8月10日発売)「インフォメーション&ブック」欄)
書評2⇒松山晋也氏書評「批評軸にブレはなく、本質はシンプルなヒューマニズム」(「ミュージック・マガジン」誌2013年9月号(8月20日発売)「ランダム・アクセス」欄)
書評3⇒陣野俊史氏書評「ジャズやロックの先端で世界を語る」(「週刊朝日」2013年9月13日号「週刊図書館」欄)
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by urag | 2014-09-22 16:20 | 重版情報 | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 21日

注目新刊:ダヴィド=メナール『ドゥルーズと精神分析』河出書房新社、ほか

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ドゥルーズと精神分析
モニク・ダヴィド=メナール(Monique David-Ménard, 1947-)著 財津理訳
河出書房新社 2014年9月 本体4,300円 46判上製316頁 ISBN978-4-309-24672-7

帯文より:ドゥルーズは精神分析の同伴者なのか。ドゥルーズはフロイト/ラカンをどう受け止めたのか。その錯綜した関係を明快に論じながら、ドゥルーズ哲学の秘められた可能性に、精神分析の根本的立場から極限においてせまるドゥルーズ論の新たな古典。『差異と反復』の訳者による達意の翻訳。
版元紹介文より:ドゥルーズと精神分析の関係について本格的に論じた唯一の研究書として紹介が待ち望まれてきた名著をドゥルーズ紹介の第一人者として知られる財津理が翻訳。ドゥルーズ読解が根底から変わる。

目次:
プロローグ ドゥルーズは精神分析家の同伴者か
I 臨床と哲学
II マゾヒズム礼賛、快の概念に対する批判
III 反復の哲学
IV 器官なき身体――精神分析に対する批判か、精神分析の放棄か
V 生成として離接的総合
VI 無限の哲学――概念を創造することは、「カオスを無限な速度で循環すること」だろうか
VII 無限なき離接的総合――精神分析における転移
VIII カントと否定的なもの
結論 精神分析の哲学的地勢
訳者あとがき

★まもなく発売。版元さんの公式情報では発売日が9月25日となっていますので、おそらく早ければ明日以降に店頭に並び始めるのではないかと思われます。『普遍の構築――カント、サド、そしてラカン』(川崎惣一訳、せりか書房、2001年)からはや13年、ようやく訳書第2弾の登場です。原書は、Deleuze et la psychanalyse(PUF, 2005)です。2005年のうちに3刷に達したという話題書ですが、訳者によれば「ざっと読んでわかるほど生易しい本ではな」く、「文章がたいへん長く複雑」だとのことで、翻訳のご苦労が忍ばれます。著者の不正確な引用の指摘も含め、訳注では文献指示を多数補われています。本書では『差異と反復』『マゾッホとサド』などのドゥルーズの著作が読み解かれています。また、ドゥルーズとデリダの違いが分析される(83-84頁)こともあれば、バディウによるドゥルーズ理解への批判(196頁以下)もあり、あるいはグレッグ・ランバート(Gregg Lambert, 1961-)による『ジル・ドゥルーズの非哲学』(2002年)のような英語圏での若手によるドゥルーズ研究への論及もあって(163-164頁)、興味深いです。帯の背に「ドゥルーズ論の新たな古典」と謳われている通り、本書はドゥルーズと精神分析との「あいだ」を考える上で欠かせない文献ではないかと思われます。

★河出書房新社さんの来月新刊で気になるものの中に、10月14日発売の次の2点があります。『「知の技法」入門』(小林康夫・大澤真幸著、本体1,500円、ISBN 978-4-309-24677-2)、『美しい知の遺産 世界の図書館』(ジェームズ・W・P・キャンベル著、ウィル・プライス写真、桂英史監修、本体8,800円、ISBN978-4-309-25555-2)。『「知の技法」入門』は、90年代の人文書のベストセラーのひとつである『知の技法――東京大学教養学部「基礎演習」テキスト』(小林康夫・船曳建夫編、東京大学出版会、1994年、ISBN978-4-13-003305-3)の刊行から実に20年ぶりに放たれる新刊です。大澤さんは「知の~」シリーズには寄稿されていませんが、『思考術』(河出ブックス、2013年12月)がヒットした大澤さんと、若手研究者を長年育成されてきた小林さんによる、プラクティカルなアドバイスが読めるのではないかと思います。『美しい知の遺産 世界の図書館』は版元紹介文によれば「古代メソポタミアから現代日本の最新図書館まで、5400年にわたる絢爛豪華な「知」の世界史を、写真図版300点、掲載図書館数188館で総観する決定版。オールカラー豪華本」とのこと。図書館好きにはたまらない本になりそうです。


文字の霊力――杉浦康平デザインの言葉
杉浦康平著
工作舎 2014年9月 本体2,800円 A5判変型並製300頁 ISBN978-4-87502-459-0

帯文より:漢字と身体の記憶・・・印す文字、祀る文字・・・壽時爛漫、変幻する文字・・・「手」文字の象・・・。【対談】松岡正剛さんと・・・「文字を巡って――漢字からクレオール文字まで」
版元紹介文より:日本語タイポグラフィに大きな影響を与え続けた杉浦康平。その真骨頂たる「文字」をテーマにエッセイ・論考を収録。松岡正剛との対話では、白川静の漢字学から文字のクレオール化まで、文字の可能性が縦横無尽に語られる。

★まもなく発売。明日22日取次搬入の新刊です。2010年の『多主語的なアジア』、2011年の『アジアの音・光・夢幻』に続く、「杉浦康平 デザインの言葉」シリーズの第3弾です。目次詳細はこちらをご覧ください。第1章「「文字」を巡って――漢字からクレオール文字まで」は『武蔵野美術』誌1999年夏号に掲載されたものの再録。第2、3、5章は『ひと』誌(太郎次郎社)での91~92年の連載「漢字のカタチ」をまとめたものです。第4章は工作舎さんの月報「土星紀」での91~94年の連載から収録されています。あとがきに曰く「既発表の文章を集めたものなのだが、入念な見直しを繰り返し、図版もより適切なものに差し替えないと気がすま」なかったことを明かしておられます。本書のアートディレクションは杉浦さんご本人によるものです。一冊の書物がそのまま一つの異界であるような造本は、杉浦さんならではのものです。書物が時間と空間を冒険しうる仮想現実であることを杉浦さんほど教えて下さるデザイナーはいないと思います。文字の豊饒な世界への魅力的な招待状である本書はきっと多くの読者を魅了することでしょう。工作舎さんでは10月には松岡さんの著書『にほんとニッポン――読みとばし日本文化譜』を刊行予定とのことです。杉浦さんと松岡さんのトークイベントやブックフェアも企画中だそうで、楽しみです。


◎今月の文庫新刊より

宗教生活の基本形態――オーストラリアにおけるトーテム体系(上)』エミール・デュルケーム著、山崎亮訳、ちくま学芸文庫、2014年9月、本体1,500円、544頁、ISBN978-4-480-09621-0
宗教生活の基本形態――オーストラリアにおけるトーテム体系(下)』エミール・デュルケーム著、山崎亮訳、ちくま学芸文庫、2014年9月、本体1,500円、512頁、ISBN978-4-480-09622-7
公衆とその諸問題――現代政治の基礎』ジョン・デューイ著、阿部齊訳、ちくま学芸文庫、2014年9月、本体1,300円、320頁、ISBN978-4-480-09606-7
三国志演義(一)』井波律子訳、講談社学術文庫、2014年9月、本体1,750円、704頁、ISBN978-4-06-292257-9
「私小説」を読む』蓮實重彦著、講談社文芸文庫、2014年9月、本体1,600円、336頁、ISBN978-4-06-290234-2
ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説』マルクス著、中山元訳、光文社古典新訳文庫、2014年9月、本体1,400円、562頁、ISBN978-4-334-75298-9
文学とは何か――現代批評理論への招待(下)』テリー・イーグルトン著、大橋洋一訳、岩波文庫、本体840円、342頁、ISBN978-4-00-372042-4

★まず、ちくま学術文庫です。『宗教生活の基本形態』全二巻は文庫オリジナルの新訳です。既訳には、古野清人訳『宗教生活の原初形態』(上下巻、岩波文庫、1941~42年初版;1975年改訳版)があります。岩波版で「原初的信念」と訳されていた語は新訳で「基本的信念」、旧訳での「固有のトーテム的信念」は新訳で「本来的にトーテム的な信念」となっています。訳語の選択についてや原書各版の異同については下巻の巻末所収の訳者解説で説明されています。『公衆とその諸問題』は、『現代政治の基礎――公衆とその諸問題』(みすず書房、1969年)の文庫化です。訳者は10年前に逝去されており、文庫版解説を書かれた宇野重規さんと編集部との判断で、訳語の一部を近年通用の術語に置き換えるなど若干の訂正を施されています。「デューイはアソシエーションと習慣による社会の変革、そしてその結果生まれる新たな社会的組織化による公衆の再生に、民主主義の可能性を見ようとしたのである。「もっと民主主義を」と説いたデューイの政治思想の輝きは、21世紀の今日ますます明らかになっているのではなかろうか」と宇野さんは書かれています。なお、ちくま学芸文庫の10月8日発売の新刊は以下の通りです。バートランド・ラッセル『現代哲学』高村夏輝訳、ヘルマン・ワイル『精神と自然――ワイル講演録』ピーター・ペジック編/岡村浩訳、『梁塵秘抄』植木朝子編訳、マイケル・ウォルツァー『解釈としての社会批判』大川正彦・川本隆史訳、トーマス・カスーリス『神道』衣笠正晃訳/守屋友江監訳。ウォルツァーの文庫本が出るのは初めてですね。

★次に、講談社学術文庫と講談社文芸文庫です。井波訳『三国志演義』は、2002~2003年に刊行された『三国志演義』(全7巻、ちくま文庫)を全4巻に再構成したもの。これだけのコンテンツがいつから品切だったのか驚きますが、よりコンパクトな巻数になって再刊されるのは実に喜ばしいことです。ちなみに村上知行訳『金瓶梅』(全4巻、ちくま文庫、1999~2000年)は第三書館から全一巻愛蔵版として2006年に再刊され、駒田信二訳『水滸伝』(全8巻、ちくま文庫、2005~2006年)は講談社文庫から一度ちくま文庫にスイッチされたあと、今年また講談社文庫からKindle版が再刊されています。『「私小説」を読む』は、同名の親本(中央公論社、1985年)の文庫化。編集部の附記によれば「明らかな誤記、誤植と思われる箇所は正しましたが、原則として底本に従い、多少ルビを加え」たとのことです。文庫化にあたって巻末には著者による「「私小説」の一語は、あくまで「わたくし小説」と発音されねばならない」と、作家の小野正嗣さんによる解説「「私小説」を文字通りに読む」が収められ、年賦と著書目録が添えられています。講談社学術文庫の10月10日発売新刊には『三国志演義(二)』井波律子訳、高田珠樹『ハイデガー 存在の歴史』、ヴィクトール・E・フランクル『生きがい喪失の悩み』中村友太郎訳、などがあります。意外ですが、フランクルが文庫で出るのはこれが初めてになります。

★続いて、光文社古典新訳文庫です。同文庫でのマルクスの新訳は長谷川宏訳『経済学・哲学草稿』(2010年)、森田成也訳『賃労働と資本/賃金・価格・利潤』(2014年4月)に続き3冊目。中山さんによるマルクス新訳は『資本論――経済学批判 第1巻』(全4巻、日経BPクラシックス、2011~2012年)に続く第2弾です。本書の半分以上は中山さんによる長編解説で、ゆうに文庫1冊分の分量があります。中山さんは目下、同文庫でカントの『判断力批判』を手掛けておられるのだろうと思います。同文庫の10月新刊は、フローベール『感情教育(上)』太田浩一訳とのことです。さらに続刊予定には、アラン『芸術についての二十講』長谷川宏訳、などが上がっています。

★最後に、岩波文庫です。イーグルトン『文学とは何か』は全2巻完結です。カヴァー紹介文に曰く「下巻では20世紀後半の多様な批評を解説する。ポスト構造主義、精神分析批評に加えて、ポストコロニアル批評、新歴史主義、カルチュラル・スタディーズ、フェミニズム批評など1990年代以降に展開した文学、言論をめぐる動向を手際よく整理する。理論への入門のみならず理論からの脱却をも視野に入れた画期的な書」と。上巻ではカヴァーにエリオット、ハイデガー、ソシュールの顔写真が使われていましたが、下巻はバルト、ラカン、フロイトの三人です。訳者あとがきの「文庫版のためのあとがき」で、大橋さんは本書を凌ぐ書物が未だ出現していないと指摘し、20世紀の人文思想の優れた入門書である、と評価されるとともに、「理論の時代」について端的に解説されています。おとなしい(?)書名とはうらはらに、本書が縦走横断する地平は訳者が指摘するように古典化されないアクチュアリティを今なお放射しています。10月16日発売の岩波文庫新刊は、ロレンツォ・ヴァッラ『快楽について』近藤恒一訳、ロバート・A・ダール『ポリアーキー』、ナディン・ゴーディマ『ジャンプ 他十一篇』柳沢由美子訳、森鴎外『椋鳥通信(上)』池内紀編注、『太平記(二)』兵藤裕己校注、の5点です。ヴァッラの訳書がまさか1年のうちに2冊も(1冊目は『「コンスタンティヌスの寄進状」を論ず』高橋薫訳、水声社、2014年4月)出ることになるとは誰が予想できたでしょうか。


◎平凡社さんの新刊より

台湾現代史――二・二八事件をめぐる歴史の再記憶』何義麟著、平凡社、2014年9月、本体2,800円、4-6判上製280頁、ISBN978-4-582-41110-2
持続可能な社会をめざして――「未来」をつくるESD』飯吉厚夫・稲崎一郎・福井弘道編、平凡社、2014年9月、A5判並製199頁、ISBN978-4-582-45004-0
ツイン・タイム・トラベル――イザベラ・バードの旅の世界』金坂清則著、平凡社、2014年9月、本体3,600円、A4判上製160頁、ISBN978-4-582-27812-5
やねのいえ』手塚貴晴・手塚由比著、平凡社、2014年9月、本体2,000円、A4変判上製40頁、ISBN978-4-582-83672-1

★まずは発売済の新刊から。『台湾現代史』は国立台北教育大学の何(か)副教授による、『二・二八事件――「台湾人」形成のエスノポリティクス』(東京大学出版会、2003年)に続く最新著です。二・二八事件とは、「1947年2月28日から3月中旬にかけて台湾人と政府側との間に発生した衝突事件」で、台湾全島へと広がった反政府暴動の結果、大陸からの増援を受けた政府が知的エリートを含む民間人を厳しく弾圧し多数の死者が出たものです。これによって戦前からの台湾出身者である「本省人」と、戦後中国から渡ってきたいわゆる「外省人」との深刻な対立が生じたといいます。この事件をめぐる歴史認識問題はこんにちも続いているそうで、著者は「馬政府の政策は中国との結びつきを強化し、「祖国」に対する期待感を醸し出しているが、その期待に背き自主性が奪われ期待が不満や反発に変われば、「第二の二・二八事件」が起こる可能性が高い」(11頁)と危惧しています。中台関係や台湾社会を理解する上で重要な文献ではないかと思います。

★『持続可能な社会をめざして』は巻頭の「はじめに」によれば、2015年に日本で開催される「ESDの10年の世界大会」と中部大学開学50周年を記念して刊行される論文集です。ESDというのは「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Developement)」のことで、日本が国連に提案して採択されたものです。環境、天然資源、経済、防災、健康、自治等の様々な次元を絡め合わせた問題系から、現代人に襲いかかるグローバルリスクへの対処法を探求し教育に活かすというのが本書の大きな主題のようです。こうした大きな問題系の中で出版社や書店が為しうる役割を想像しながら読みたい本です。

★次にまもなく発売の新刊です。『ツイン・タイム・トラベル』はイザベラ・バードの旅程を写真で辿る本で、2004年からこの10年間、日英各地で行われてきた写真展がついに写真集として結実したものです。旅路の地図と美麗な写真群を眺めていると、書名の通り、イザベラのかつての足跡をこんにち辿り直す心地がします。世界旅行への憧憬に襲われること間違いなしのたいへん魅力的な写真集で、特に現在リタイアして第二の人生を送る方々にうってつけのプレゼントになるのではないかと思います。『やねのいえ』は「くうねるところにすむところ」シリーズの第35弾(平凡社さんでの再開から数えて第10弾目)です。版元紹介文に曰く「屋根の上で遊びたいご飯が食べたい。突飛な希望を建築家が実現させた「やねの家」は屋根の上と下の生活を同時に楽しむことができる」。屋根の上は空に繋がっていて開放感がある心地よい空間。大人も子供も楽しい、見晴らしがよくて風を感じる空間。素敵ですね。

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by urag | 2014-09-21 23:55 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 16日

「社会思想史研究」第38号に『労働者』の詳細な書評

弊社出版物への書評やブックフェア、著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

★川合全弘さん(訳書:ユンガー『追悼の政治』、同『労働者』)
★大竹弘二さん(訳書:デュットマン『思惟の記憶』、共訳:同『友愛と敵対』)
まもなく発売となる社会思想史学会さんの年報「社会思想史研究」第38号(藤原書店発売、9月24日配本)に、ユンガー『労働者』の書評が掲載されました。評者は南山大学准教授の大竹弘二さんです。「かねてから多くの人々の興味を惹きつけてきた著作でありながら長く邦訳が存在しなかった本書がようやく日本語で出版されたことは、ユンガーの思想の全体像を明らかにするのに大きく貢献し、なお手つかずの部分が多い日本のユンガー研究の本格的な端緒を開くことが期待される。訳文は独特の概念や晦渋な文章が平易に訳されて」いる、と評していただきました。同書評では現代におけるユンガーの再評価の星座が示されており、難解をもって鳴る『労働者』の思想圏が明快に解きほぐされており、非常に啓発的です。なお、同号には蔭山宏『崩壊の経験――現代ドイツ政治思想講義』(慶應義塾大学出版会、2013年)への川合さんによる書評も掲載されています。

★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『瀆神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、編訳:パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『瀆神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
柏書房さんのウェブマガジン「ARCANA MUNDI(アルカーナムンディ)」にて今月連載が開始となった波戸岡景太さんによる「隠喩としてのホロコースト」の第1回「極限状態の「からだ」――吉田修一『パーク・ライフ』」(2014年9月11日付)において、アガンベンさんの『アウシュヴィッツの残りのもの』が論及されています。「証言と注釈。語り得ぬものを考えていくために、それは確かに有効な手段だ。これから始まる連載の中で、私もまた、物語世界に暮らす「ごく普通の人間」の証言に耳を傾けていこうと思う」とお書きになっておられます。

『アウシュヴィッツの残りのもの』の共訳者でいらっしゃる上村忠男さんは来月、アガンベンさんの『ホモ・サケル』シリーズの第4巻第1分冊としてネリ・ポッツァから2011年に刊行された『いと高き貧しさ――修道院の規則と生の形式〔Altissima povertà: Regole monastiche e forma di vita. Homo sacer IV, 1〕』の共訳書をみすず書房さんから上梓されます。『いと高き貧しさ』は太田綾子さんとの共訳書で、2014年10月24日発行予定、本体4,600円です。

★大谷能生さん(著書:『貧しい音楽』)
★間章さん(著書:『間章著作集』全3巻)
★須川善行さん(編者:『間章著作集』全3巻)
2014年8月30日(土)18:00より、吉祥寺のSound Café dzumi(サウンドカフェ・ズミ)にて「デレク・ベイリーを聴く会」の第6回「70年代の音源[4]」が、大谷能生さんを特別ゲストに迎えて開催されました。モデレーターのお一人、工作舎編集部の石原剛一郎さんが同舎ウェブサイトにてリポート記事を書かれておられます。『間章著作集』もご紹介いただいたようです。今月末に行われる「デレク・ベイリーを聴く会 」第7回「70年代の音源[5]」は、『間章著作集』の編集人を務められた須川善行さんがゲストです。2014年9月27日(土)18:00より吉祥寺・ズミにて、ドリンク付入場料:1500円で先着20名につき事前予約が必要です。

★廣瀬純さん(著書:『絶望論』、共著:『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共著:ネグリ『芸術とマルチチュード』
フランスの映画監督フィリップ・ガレル(Philippe Garrel, 1948-)の最新作『ジェラシー』が9月下旬に公開されることに伴い開催される下記のトークイベントに御出演されます。聞き手は「boid」誌を主宰する樋口泰人さんで、今般「boid」誌では『フィリップ・ガレル読本』を出版されました。『ガレル読本』は「『ジェラシー』をめぐるフィリップ・ガレル最新インタヴュー、青山真治(映画監督)による特別寄稿エッセイ、ガレル映画音楽論、生い立ちと映画作法を解明するキーワード集、関連人物紹介、作品解説ほか」収録とのことです。ちなみに廣瀬さんは寄稿されていません。定価1,500円+税。

廣瀬純、フィリップ・ガレルを語る

場所:ジュンク堂書店 池袋本店 4F喫茶
日時:2014年09月30日(火)19:30~
出演:廣瀬純(現代思想・映画批評家)
聞き手:樋口泰人(boid主宰)

内容:ゴダールとウォーホルに映画を学び、歌姫ニコとともにアンダーグラウンド映画を牽引した孤高の映画作家。わずか16歳で処女作を撮り、神童と呼ばれた男、フィリップ・ガレル。愛と芸術に生きるフランスの映画作家の最新作『ジェラシー』が、9月27日よりいよいよ日本公開されます。その公開に合わせて、ガレル入門書でもあり『ジェラシー』のパンフレットともなっている『フィリップ・ガレル読本』が刊行されました。その刊行を記念して、常に独自の切り口で世界を切り取り、我々を唖然とさせつつ、新たな運動をそこに作り出す哲学者、思想家、廣瀬純がフィリップ・ガレルとガレルが生きてきた時代を語ります。

★ドリーン・マッシーさん(著書:『空間のために』)
今年5月にミネルヴァ書房さんから刊行されたニール・スミス『ジェントリフィケーションと報復都市――新たなる都市のフロンティア』(原口剛訳)の刊行を記念し、今月1日からジュンク堂書店難波店さんでブックフェア「都市の未来」が9月30日まで開催されています。原口さんが選書された約30点のなかにの社会書売場の棚8にて、弊社3月刊のドリーン・マッシー『空間のために』(森正人・伊澤高志訳)が選出されています。原口さんによる選書コメントは以下の通りです。皆様のご来店をお待ちしております。

「現代を代表する地理学者、ドリーン・マッシーの待望の邦訳。マッシーは、ハーヴェイとの長らくの論争でも知られる。ハーヴェイがタワービルのような高みをもつ首尾一貫した理論を構築するのに対し、マッシーはそのような理論から漏れ落ちる要素――差異や他者性、軌跡や異種混淆性――をこそ拾い上げ、しなやかに組み上げていく。なかでも彼女がこだわるのは、「場所」という概念だ。たとえば「場所を開く」といっても、資本の投下に対して開くのと、厄介な他者に対して開くのとでは、話はまったく違ってくる。とするならば、場所はどのような場合に、誰に対して開かれるべきか、あるいは閉じられるべきなのか。そのような繊細な議論のひとつひとつをていねいに論じながら、彼女は「グローバルなもの」に到達しようと試みる。あまりに視野が狭くなってしまった私たちの地図を塗り替えるためにも、欠かせない一冊」。

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by urag | 2014-09-16 13:05 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 14日

注目新刊:カルターリ『西欧古代神話図像大鑑[続篇]』八坂書房、ほか

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西欧古代神話図像大鑑[続篇]――東洋・新世界篇/本文補註/図版一覧
ヴィンチェンツォ・カルターリ著 ロレンツォ・ピニョリア増補 大橋喜之訳
八坂書房 2014年9月 本体4,800円 菊判上製440頁 ISBN978-4-89694-176-0

帯文より:拡大する西欧の万神殿に映り込む、日本の神仏、そして安土城の幻影・・・。ルネサンス以降、変容を重ねつつ読み継がれた神話概説書の代表的古典の、後代の増補部分をまとめた[続編]。ギリシア・ローマ神話を扱う正篇への補註のほか、日本の神仏、さらには安土城の一部を奇蹟的に描きとどめたとされる東洋・新世界篇など、バロック期の増補を完全収録。新図版100点余。正続両篇の図版を網羅し、全体の通覧に便利な[図版一覧]を併録!

★発売済。16世紀イタリアの文人ヴィンチェンツォ・カルターリによる『西欧古代神話図像大鑑――全訳『古人たちの神々の姿について』』(大橋喜之訳、八坂書房、2012年9月)の続篇です。いずれもロレンツォ・ピニョリアによるもので、「読者への序」、『古人たちの神々の姿について』の第二部「東西インドの神々」、同書への本文補注と追補を収めています。前作がカルターリによる正篇の全訳、今回のが17世紀前半にピニョリアによって編まれた新版で増補された部分=続篇の全訳というわけです。訳者による解題「ロレンツォ・ピニョリア版――変身する書物」のほか、付録としてイエズス会士の枢機卿アンリ・ド・ルバック(リュバックとも)による『仏教』(Aspects du bouddhisme, 1951)の抄訳(第13章「阿弥陀進行と往昔の宣教師たち」)と、ピニョリア版の図版一覧が併載されています。日本の仏像や神像の木図版は簡潔かつ素朴な転写で、少し西欧的なテイストが入っているもののおおよそは正確です。大橋さんの解説によれば、日本の神仏像が図版でヨーロッパで紹介されたのは本書が初めてになるそうです。ヨーロッパの神々とともに紹介されるそれらの図像の来歴に胸が躍ります。


新版アリストテレス全集(15)ニコマコス倫理学
神崎繁訳
岩波書店 2014年8月 本体6,000円 A5判上製函入536頁 ISBN978-4-00-092785-7

版元紹介文より:「徳」というソクラテス・プラトン以来の概念を周到に組み立てなおし、「倫理学」という一つの分野を創設した本書は、後世に多大の影響を及ぼしたのみならず、例えば行為論や道徳心理学の発想の源泉として、現代に哲学する人々に依然として読まれ議論され続けている。「人間的な事柄をめぐる哲学」の生き生きとした豊かな達成。

★発売済。新版全集第6回配本です。アリストテレスの3つの倫理学書「ニコマコス倫理学」「エウデモス倫理学」「大道徳学」(「大道徳学」は真作ではないとされることがあります)のうち、最大にして最重要である「ニコマコス倫理学」はこれまでも幾度となく翻訳されており、現在入手可能なものの中でも、本書のほかに高田三郎訳(『ニコマコス倫理学』上下巻、岩波文庫、1971年)や、朴一功訳(『ニコマコス倫理学』(京都大学学術出版会、2002年)があります。高田訳はもともと河出書房版「アリストテレス全集」や同社の「世界の大思想」シリーズに繰り返し収められていたものです。ちなみに岩波版旧全集では加藤信朗訳(第13巻、1973年)でしたが、こちらは文庫にはスイッチされていません。今回の新訳版は本全集の共編者であり、『西洋哲学史』(全4巻、講談社選書メチエ、2011~2012年)の責任編集を熊野純彦さんや鈴木泉さんとつとめられた神崎さんです。西洋史において体系的にまとめられた初めての倫理学書である「ニコマコス~」は、もともとは講義形式のもので、3つの倫理学書はそれぞれ独立した作品というよりは、内容や構成において重複する部分があります。神崎さんによる懇切な解説や「三倫理学書の対照表」がこの古典をあらためて理解する上で非常に参考になります。アリストテレスと現代人は時間的に非常に隔たった存在同士ですが、幸福、善、徳、責任、正義、友愛といったテーマは現代においてもなお滅びることはありません。「今日でも依然として「現役」の古典」と神崎さんが評しておられる通りで、社会人こそひもとくべき名著です。月報には岩田靖夫さんによる「アリストテレスの自然観からの視覚」と、加藤節さんによる「アリストテレスの影――近代哲学者との分岐と交錯と」を読むことができます。次回配本は11月、第2巻「分析論前書 分析論後書」です。


随想集
ベーコン著 
中公クラシックス 2014年9月 本体1,850円 新書判並製388頁 ISBN978-4-12-160150-6

帯文より:スコラ哲学流の演繹法を現実に即して帰納法に大転換した近代イギリス知の成果。経験論の源流。

★発売済。凡例によれば中公バックス版『世界の名著25 ベーコン』(1979年)所収の『随想集』をもとに編集したもの。「誤字脱字を補い、読みやすさをはかるために適宜に句読点、あるいは改行を施した」とのことです。『世界の名著』でのフランシス・ベーコン(1561-1626)の巻(函入上製版では第20巻で1970年刊)には「随筆集」「学問の発達」「ニュー・アトランティス」が収められていました。親本巻頭には責任編集を担当された福原麟太郎さんによる「ベーコンの生涯と思想」が併載されていましたが、今回のクラシックス版では一之瀬正樹さんによる解説「経験論の源流――ベーコン哲学から広がりいづる眺望」が巻頭に置かれています。1597年に初版が刊行された『随筆集』の日本語訳は本書のほかに、神吉三郎訳『ベーコン随筆集』(岩波文庫、1935年)や、渡辺義雄訳『ベーコン随想集』(岩波文庫、1983年)などがあります。成田訳『随筆集』は『世界の名著』シリーズに収録される前には、角川文庫(1968年)で刊行されたことがあります。「真理について」から「噂について(未完)まで59篇のエッセイが収められており、人間と社会をめぐる明快な論説が展開されています。人生経験と生活に根ざした知のありようは、数百年を経た今なお読み継がれて私たちを啓発してくれます。


◎日本教文社さんのデジタル・オンデマンド版新刊より

ユング著作集1 人間のタイプ』カール・グスターフ・ユング著、高橋義孝訳、日本教文社、2014年8月、本体2,500円、A5判並製326頁、ISBN978-4-531-02651-7 
ユング著作集4 人間心理と宗教』カール・グスターフ・ユング著、浜川祥枝訳、日本教文社、2014年8月、本体2,500円、A5判並製328頁、ISBN978-4-531-02654-8
W・ジェイムズ著作集1 心理学について――教師と学生に語る』ウィリアム・ジェイムズ著、大坪重明訳、日本教文社、2014年8月、本体2,700円、A5判並製358頁、ISBN978-4-531-02621-0
W・ジェイムズ著作集6 多元的宇宙』ウィリアム・ジェイムズ著、吉田夏彦訳、日本教文社、2014年8月、本体2,400円、A5判並製306頁、ISBN978-4-531-02626-5

★発売済。「世界屈指の心の思想家たち(エマソン、カーライル、ウイリアム・ジェイムズ、フロイド、ユング)の著作をオンデマンドで順次復刊」するという日本教文社さんのデジタル・オンデマンド・シリーズが始まっています。初回は上記4点のほか、『フロイド選集3 続精神分析入門』古沢平作訳、『フロイド選集17 自らを語る』懸田克躬訳、『エマソン選集5 美について』斎藤光訳、『エマソン選集6 代表的人間像』酒本雅之訳、『カーライル選集2 英雄と英雄崇拝』入江勇起男訳を加え、合計9点を復刊。巻末には月報も印刷されており、旧版の復刊ではありますが、古書の劣化を考えると買い直しておきたいシリーズとなっています。紙のカバーは付されておらず、その変わり透明なビニールカバーが掛けられています。このオンデマンド企画のラインナップは全42巻とも47冊とも記載されていますが(47点の候補があってそのうち42点を復刊するという意味なのでしょうか)、版元さんでは現在読者からの「早期復刊希望」のリクエストをウェブサイトで募集されています。順番はともかく、エマソン、カーライル、ジェイムズ、フロイド、ユングのそれぞれの選集を全冊復刊していただいても構わない気がします。

★電子書籍が少しずつ普及するに伴ってのことでしょうか、紙媒体でも徐々に名著の復刊があちこちで行われているのを見かけます。ここ最近では、清水書院さんの「Century Books 人と思想」シリーズの多数の新装版、ミネルヴァ書房さんの「ミネルヴァ・アーカイブズ」シリーズの新刊でピーター・ゲイの『自由の科学――ヨーロッパ啓蒙思想の社会史』(全2巻、中川久定ほか訳)、みすず書房さんの「始まりの本」シリーズの新刊ではホッファー『波止場日記』(森達也さんによる新しい解説付き)、金剛出版さんのPOD版新刊で安永浩『ファントム空間論』などが立て続けに発売されています。今後ますます復刊が充実すると良いなと思います。
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by urag | 2014-09-14 17:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 09日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2014年10月8日(水)開店
コーチャンフォー若葉台店:図書1000坪、レンタルセル270坪、その他630坪
東京都稲城市若葉台2-9-2
日販帳合。弊社へのご発注は芸術書少々、人文書少々。京王線若葉台駅の北側、若葉台公園の向かいの都道18号線沿いに単体店舗としてオープン予定。書籍雑誌販売、CDおよびDVDのレンタルセルのほか、文具売場やカフェを併設。株式会社リラィアブルが運営する複合書店チェーン「コーチャンフォー」はこれまで北海道で6店舗を展開していましたが、7店舗目で東京に進出。1000坪ともなれば専門書も置かざるを得ないはずですが、他社(ジュンク堂や丸善)に比べれば発注が微々たるものであるのは、北海道の同チェーンでもさしてお世話になっていないせいかと思われます。

+++

弊社本が展開されているフェアではないのですが、興味深い催事をご紹介します。リーディングスタイル株式会社が運営するブックカフェ、ソリッド・アンド・リキッド(町田マルイ6F)で今月1日からブックフェア「あなたを癒す70の処方本 Bibliotherapy」が開催されています。このフェアは「眠りが浅い」「気持ちが塞ぎ気味」等、70の症状別に「効能のある」文庫本をセレクトし、オリジナルデザインの薬袋に「効能書き」と一緒に同封して販売するもの。お客様に本との偶然の出会いをお届けする意図から、薬袋の中身の本がどんなものかは開けてみるまで分からない「覆面フェア」となっています。薬袋がズラリと並ぶ店頭には70の症状と効能書きのPOPが飾られ、ブックリスト小冊子が無料で配布されています。オリオンパピルスと合同で10月30日まで開催予定です。

リーディングスタイルさんがプロデュースする覆面文庫フェアは、「あなたと同じ日に生まれた著名人の本」を並べた「BIRTHDAY BUNKO」フェア(2014年4月7日~6月11日)、そして現在もソリッド・アンド・リキッドで継続展開中の「飾り窓から」フェアに続いて、今回の「ビブリオセラピー」が第三弾です。「飾り窓から」は、文庫本をクラフト紙に包み、裏表紙に記載されている紹介文のみが見えるように窓を作って販売するという試みです。自分用でもプレゼント用に購入しても面白いですね。
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by urag | 2014-09-09 15:17 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 07日

注目新刊:『総統はヒップスター』共和国新刊3点目、ほか

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◎共和国さんの新刊3点目はけっこう攻めてる「毀誉褒貶の問題作」

総統はヒップスター
ジェイムズ・カー+アルチャ・クマール著 波戸岡景太訳
共和国 2014年9月 本体2,000円 A4変判並製160頁 ISBN978-4-907986-02-5

カヴァー紹介文より:ヒップでロハスな草食系メガネ男子のヒトラーが、ゲッベルスやゲーリングを従えて世界征服……? 『帰ってきたヒトラー』に先駆けて、アメリカ、ドイツで話題騒然となったブラックなカルトコミックにして、21世紀の「わが闘争」、ついに邦訳刊行! あなたはこのヒトラーを笑えますか?

推薦文(巽孝之/慶應義塾大学教授):「こんなヒトラー見たことない! だが、カー&クマールは必ずしも突飛なだけではない。彼らには透徹した歴史的洞察がある。読み終わったときには誰もが、これこそわれらが同時代人ヒトラーであることを確信しているだろう」。

★共和国さんの出版第二弾(三作目)です。2014年9月16日頃発売の新刊。版元さんのフェイスブックによれば「来週末12日に全国の書店に発送、早ければ翌日から店頭に並びます。「ナチス本なんて……」と言わずに、どうか笑ってお買い上げください!」とのことです。装釘は宗利淳一さん。原書は、Hipster Hitler(Feral House, 2012)です。ヒトラーの人生をパロディで弄り倒した作品で、帯文にある通り「ヒップでロハスな草食系メガネ男子」としてヒトラーを現代風に描いているために必然的に生じてくるある種の親しみやすさを笑っていいのか悪いのか、吹き出しつつもひきつるという微妙な味わいがある本です。共和国のSさんによれば本書に対する「毀誉褒貶」はさまざまあるそうで、本書の訳者あとがきでも、イスラエルやアメリカでの受け取られ方とドイツでのそれとでは違いがあることが紹介されています。昭和天皇も登場しますが、作者のターゲットはそこではないのでごく薄い描写です。平凡な一隣人としてヒトラーを蘇らせたスレスレの問題作を創業間もないこの時期に市場にぶつけてくるあたり、やはり共和国さんはただものではありません。


◎ヴィトゲンシュタインの「切れ者であるがゆえに孤独」な感じがひしひしと伝わる

超訳 ヴィトゲンシュタインの言葉
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン著 白取春彦編訳
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2014年8月 四六判上製272頁 ISBN978-4-7993-1542-2

帯文より:きみの生き方が、世界そのものだ。 20世紀最高の哲学者、人生に新しい地平を切り拓く言葉。

★発売済。『超訳 ニーチェの言葉』(2010年)、『超訳 ニーチェの言葉 II』(2012年)に続く、白取さんによる超訳本最新作。いわゆる「超訳」ブームについては賛否が色々とあるわけですが、どんなに辛口に見るにせよ、ニーチェにしても今回のヴィトゲンシュタインにしてもそれぞれ全集や文庫が他社から出ていますから、語録としての超訳本をきっかけにさらに全訳へ読者が進んでくれるそのきっかけになれば存在意義は充分にあるのではないでしょうか。90年代を代表するベストセラー哲学書であるゴルデルの『ソフィーの世界』(NHK出版、1995年;新装版2分冊、2011年)では読者の読了率が高くはなかったこともあってソフィー本が売れてもさらにそこからプラトンやカントの販売に繋がることはほぼありませんでした。しかし超訳本は哲学者の膨大な著作群の中からそのエッセンスとなる断片を抜き出しテーマ別に並べ替えたものであり、順を追って読まなければならないものではないし、読了のハードルも高くありません。むしろ、こんなふうに親しみやすく接することができる機会を、全集を出している出版社や研究者こそが作らねばならなかったのかもしれません。

★哲学的思惟が(すべてではないにせよ)机上の空論ではなく人生をよりよく生きる実践に根差したものでもあることを再確認させてくれたという意味で、哲学思想書への読者の関心の「底上げ」に超訳本が一定の役割を果たしえただろうことは喜ばしい成果ではないでしょうか。ただ、一筋縄でいかないのは、ニーチェにせよヴィトゲンシュタインにせよ相当の切れ者であったがために、彼らの言葉を参考以上のものとして自らもその思惟を引き継いで実践しようという読者は、哲学者の苦悩をもなぞらざるをえなくなるということです。彼らの人生が波乱に満ちたものでした。ニーチェは狂気のうちに死に、ヴィトゲンシュタインは幾度となく人生をやり直した果てに病に倒れました。個人的なことを言えば、私はヴィトゲンシュタインが大好きで、学生時代に一番最初に興味を持った西洋の哲学者が彼でした。『論理哲学論考』は数式が出てくるとたちまち分からなくなるのでしたが、それ以外の言葉は哲学の歴史やルールを知らなくてもダイレクトに胸に響いてくる力がありました。その後、彼の様々な著作やその新訳を読み続けて今に至り、『ヴィトゲンシュタインの言葉』をひもとくと、あらためて新鮮な感動が蘇るとともに、新しい発見もありました。そしてじわじわと「彼のように考えていたらきっと周囲からは面倒くさがられるだろうな、孤独だろうな」という思いもこみ上げてきました。

★世界をより正確に理解したいがために考えに考え抜いた結果、彼は一つの境地に達したと思います。その境地からすれば、現実世界の曖昧さというものは一種堪えがたい苦痛に思えるのではないかと感じるのです。とことん考えぬいた地平はすでに平凡な常識人のスタートラインからかなり離れた場所であり、すでにそこは充分に孤独な展望台でした。そこから眺めた人間界は呆れかえるほどいいかげんで猥雑で混乱していたでしょう。哲学者は超人的で孤高な悲劇の存在になりたかったわけではありません。ただ、突き詰めて考えた結果、猥雑で混乱した現実に違和感を覚え、生きにくさを感じることもあったろうと推測できます。感性が鋭い人間にとってはこの世界は堪えがたいもので、一瞬たりとも息を継ぐことができない地獄かもしれません。少し大げさすぎるでしょうか。ヴィトゲンシュタインの言葉はネガティヴにもポジティヴにも読むことができます。訳者にせよ版元にせよネガティヴに読んでもらうために本書を作ったわけではないと思いますけれど、光あるところに陰があると気づく読者もきっといることでしょう。

★余談ですが、こうした語録はバインドされた書籍の形態だけではなく、かるたのようにバラバラなカードの形態にするのもいいのではないかと感じました。ニーチェかるたやヴィトゲンシュタインかるたがあってもいいような気がします。


◎平凡社さんの新刊より

バーブル『バーブル・ナーマ――ムガル帝国創設者の回想録(1)』間野英二訳注、東洋文庫、2014年9月、本体3,000円、全書判上製370頁、ISBN978-4-582-80853-7
柿沼裕朋編『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』平凡社、2014年9月、本体2,000円、A5判上製192頁、ISBN978-4-582-20677-7

★『バーブル・ナーマ』全三巻の初回配本第一巻はまもなく発売。東洋文庫第853巻です。凡例および解題によれば同書は「15世紀後半、シルクロードの中心地である中央アジアにティムール朝の王子として生まれ、アフガニスタンを経て、16世紀前半のインドにムガル朝を創設したザヒールッ・ディーン・ムハンマド・バーブル(1483-1530)が、母語のチャガタイ・テュルク語で著した回想録ないし自叙伝『バーブル・ナーマ』の日本語訳であり、絶版となっている間野英二『バーブル・ナーマの研究Ⅲ訳注』(松香堂、1998年)の改訂新版である」とのことです。第一巻は中央アジア・フェルガーナでの1493年から1503年にかけての出来事が記されています。さらに「訳注」「略称、訳注引用文献一覧」「解題」「系図(ティムール朝、モグーリスタン・ハン国、ムガル朝)」、術語解説」「バーブル略年譜」を収録。第二巻ではアフガニスタン・カーブル時代、第三巻ではインド・ヒンドゥスタン時代が描かれます。王様の回想録というと軽く聞こえるかもしれませんが実際の記述にはそれ以上の厚みがあり、第一級の歴史書であるという印象が強いです。訳者もこう書いています。「内陸アジア出身の君主自らが、その周囲に怒った諸事件や彼が活きた時代の諸状況を、自らの言葉で、的確無比の文体を用いて記した稀有の資料である。それゆえ、歴史研究のための資料の価値もまた絶大である」。東洋文庫の次回配本は来月10月、『論語集注3』です。

★『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』はまもなく発売。種村季弘さんの(1933-2004)没後10年の展覧会「種村季弘の眼 迷宮の美術家たち」(板橋区立美術館、2014年9月6日~10月19日)の公式図録です。版元紹介文に曰く「怪物タネムラの美術ラビリントス。ヤンセン、ベルメールから横尾忠則、四谷シモンまで130点を収録」。図版はすべてオールカラー(モノクロ作品はそのまま)で、絵画にせよ版画にせよ写真にせよ立体作品にせよ、夢魔の跳梁跋扈するめくるめき世界を堪能できます。これで2000円とは実にお値打ちです。編者は「はじめに」で「種村が文章を寄せた美術家たちの作品を、著書に繰り返し登場するキーワードによって章分けし、迷宮のような種村ワールドにわけ入っていく」と書いています。「種村季弘という迷宮」「夢の覗き箱」「没落とエロス」「魔術的身体」「顛倒の解剖学」「書物の祝祭――装丁の仕事」「奇想の展覧会――種村コレクション」の全7章です。種村さん自身のテクスト2篇「月の道化師――ゾンネンシュターン」「甲虫のいる病院」も併催されています。展覧会の概要は以下の通りです。

◆20世紀検証シリーズ No.4「種村季弘の眼 迷宮の美術家たち

会期:2014年9月6日(土)~10月19日(日)
会場:板橋区立美術館
 開館時間:9:30~17:00 (入館は16:30まで)
 休館日:月曜日(ただし9/15、10/13は祝日のため開館し、翌日休館)
観覧料:一般650円 高校・大学生450円 小・中学生200円
※65歳以上の方は半額割引(325円、要証明書)あり。土曜日は小・中・高校生は無料で観覧できます。20名以上団体割引、障がい者割引(要証明書)あり。

監修:柿沼裕朋
主催:板橋区立美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
協賛:ライオン、清水建設、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜、日本テレビ放送網
助成:公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
協力:スパンアートギャラリー
展覧会図録:『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』平凡社、2014年9月6日刊行予定

展示点数:油彩・水彩・版画・写真・彫刻など、約160点。出品作品は予告なく変更になる場合があります。 

内容:種村季弘(たねむらすえひろ/1933年~2004年)は池袋に生まれ、板橋区の東京都立北園高等学校を経て、東京大学文学部に学んだドイツ文学者です。彼は、1966年にグスタフ・ルネ・ホッケの『迷宮としての世界』(矢川澄子と共訳)の翻訳をもって、日本でのマニエリスムブームの火付け役となりました。その後、博覧強記ぶりを遺憾なく発揮し、エロティシズム、錬金術、吸血鬼など、様々なジャンルを横断して、批評活動を行います。美術批評では、「月の道化師 ゾンネンシュターン」「カール・コーラップ 魔法の国の建築家」などと題して、当時馴染みの薄かったドイツ語圏の作家たちを精力的に紹介しました。また、画家の井上洋介、赤瀬川原平、舞踏家の土方巽をはじめ、種村が共感を覚えた日本の芸術家に対しても積極的に文章を寄せました。それらは、いずれも種村ならではの鋭い鑑識眼に貫かれています。本展は、国内外から作品を集め、種村季弘の眼を通して創造された美術の迷宮を「夢の覗き箱」「没落とエロス」「魔術的身体」「顛倒の解剖学」など、7つのキーワードで辿る初の試みです。

主な出品作品:マックス・エルンスト《ニンフ・エコー》新潟市美術館、桑原弘明《Scope「詩人の椅子」》種村季弘旧蔵、フリードリッヒ・シュレーダー=ゾンネンシュターン《おんどりのいる形而上学》浅川コレクション(足利市立美術館寄託)、《土方巽舞踏公演〈土方巽と日本人−肉体の叛乱〉8ミリフィルム映像》(撮影:中村宏)NPO法人舞踏創造資源、カール・ハイデルバッハ《二体の人形》個人蔵、ホルスト・ヤンセン《ミリー》個人蔵、井上洋介《食事A》刈谷市美術館蔵、エルンスト・フックス《サミュエルの娘》個人蔵、カール・コーラップ《頭》個人蔵、エーリヒ・ブラウアー《かぐわしき夜》新潟市美術館、美濃瓢吾《花下臨終図Ⅰ》個人蔵ほか。四谷シモン《シモンドール》、秋山祐徳太子《父の肖像》個人蔵、トーナス・カボチャラダムス《バオバブが生えたかぼちゃの方舟》個人蔵は初公開です。

関連イベント:会期中は、舞踊パフォーマンス、記念講演会、ギャラリートークを開催いたします。

◆舞踏パフォーマンス&レクチャー「種村季弘の方へ」
とき:9月13日(土)午後2時より30分程度
出演:大野慶人(舞踏家)
2F展示室ロビーにて、申込不要、当日展覧会観覧料のみ必要、先着100名、当日会場へ直接お集りください。

◆鼎談「怪人タネムラスエヒロを語る」
とき:9月20日(土)午後3時より90分程度
講師:秋山祐徳太子(美術家、本展出品作家)、美濃瓢吾(画家、本展出品作家)、種村品麻(種村季弘・子息、スパンアートギャラリー)
当館1F講義室にて、申込不要、聴講無料、先着100名、当日直接会場へお越しください。

◆講演会「種村季弘のマニエリスム 迷宮としての書物」
とき:10月4日(土)午後3時より90分程度
講師:巖谷國士(フランス文学者・美術批評家)
当館1F講義室にて、申込不要、聴講無料、先着100名、当日直接会場へお越しください。

◆ギャラリートーク
とき:9月7日(日)、21日(日)、27日(土)、10月11日(土)午後2時より
担当学芸員が展示室を参加者と一緒にめぐりながら作品や作家についてお話しいたします。いずれも午後2時より50分程度、申込不要、観覧料のみ、当日直接2階展示室ロビーへお越しください。


◎2014年上半期、特に6月の注目新刊拾遺

いつかまとめて言及しようと思っていてなかなか機会がなかった既刊書について以下に列記します。

カール・フォン・リンネの地域誌――『スコーネ旅行』に描かれた自然・経済・文化』塚田秀雄訳著、古今書院、2014年5月、本体6000円、ISBN978-4-7722-9005-0
『ニーチェの心理学的業績』ルートヴィッヒ・クラーゲス著、柴田収一・平澤伸一・吉増克實訳、うぶすな書院、2014年6月、本体3200円、ISBN978-4-90047-030-9
聖ヒルデガルトの病因と治療』ヒルデガルト・フォン・ビンゲン著、プリシラ・トゥループ英訳、臼田夜半訳、ポット出版、2014年6月、本体6900円、ISBN978-4-7808-0208-5
『死者』とその周辺』ジョルジュ・バタイユ著、吉田裕訳、書肆山田、2014年6月、本体2800円、ISBN978-4-87995-897-6
脱成長(ダウンシフト)のとき――人間らしい時間をとりもどすために』セルジュ・ラトゥーシュ+ディディエ・アルパジェス著、佐藤直樹・佐藤薫訳、未來社、2014年6月、本体1800円、ISBN978-4-624-01191-8
人種・国民・階級――「民族」という曖昧なアイデンティティ』エティエンヌ・バリバール+イマニュエル・ウォーラーステイン著、若森章孝・岡田光正・須田文明・奥西達也訳、唯学書房、2014年6月、本体4500円、ISBN978-4-902225-87-7

『カール・フォン・リンネの地域誌』は、リンネ(Carl von Linné, 1707-1778)の『スコーネ旅行』(1971年)の翻訳に、長編の論考「『スコーネ旅行』の内外」を併載したものです。帯文はこうです。「博物学者、近代的な植物分類学の祖として世に知られるリンネが、スウェーデン南端のスコーネへの調査旅行で記録した生活、文化と経済。英訳もされていない貴重な文献を徹底して解明する」。リンネは日本ではその昔「林娜」と表記されて19世紀後半には著書が紹介された長い歴史を有していますが、原典の翻訳は少ないので、たいへん貴重な成果ではないでしょうか。

『ニーチェの心理学的業績』は、1926年に公刊されたDie Psychologischen Errungenschaften Nietschesを1958年第三版に基づいて訳出したものです。本書で言われる心理学はクラーゲスの性格学に照らされた探究としてのそれであり、そのニーチェ論はハイデガーやレーヴィットのものとは異なる独自の展望を有しています。巻末にはニーチェの著作からの引用索引が付されています。訳者あとがきによれば、訳者陣はクラーゲスの最晩年作『心情学の源としての言葉』の翻訳に取りかかっておられるそうです。

『聖ヒルデガルトの病因と治療』は、トゥループによる英訳第二版(2008年)に基づく重訳。帯文に曰く「『フィジカ』(単純医学の書)と対をなすホリスティック医学の古典『病因と治療』(複合医学の書)、ついに本邦初訳」。『フィジカ』は同じくトゥループによる英訳版に基づく重訳が、『聖ヒルデガルトの医学と自然学』(井村宏次監訳、聖ヒルデガルト研究会、2002年;新装版、2005年)として刊行されています。『病因と治療』は医学書とは言っても、宇宙論や神学を含む特異なもので、非常に興味深いです。

『『死者』とその周辺』は、バタイユの小説「死者」の2004年に刊行されたプレイヤード版に基づいた新訳です。「死者」に関連する2作品「ジュリー」「ルイ三〇世の墓」、そして「アンリ・パリゾへの手紙」(1947年3月25日付)が初訳されています。巻末の訳者によつ長編解説は「死を死者のものに」と題されています。「死者」の既訳には、67年のポヴェール版を底本とした伊東守男訳(『バタイユ著作集(4)死者/空の青み』所収、1971年)と、64年のアルルの風版を底本とした生田耕作訳(『死者』奢灞都館、1972年;『マダム・エドワルダ』所収、角川文庫、1976年)があります。吉田さん訳による書肆山田でのバタイユ本はこれで5冊目になりますが、93年に刊行された『聖女たち』だけは第二版が2002年に出ています。初版と第二版との違いを特記しますと、まず印刷が活版からオフセットに変わり、本文組が変更されたことと、訳者解説が少しばかり改訂されたことです。本文は仔細に渡って照合したわけではありませんが、訳者解説には「見直しをした」等の文言は加えられていません。

『脱成長(ダウンシフト)のとき』は、Le temps de la décroissance(Le Bord de l'eau, 2012)の全訳。もともとは2010年に刊行された原著が改訂されたのが2012年版です。ですます調で訳されていて柔らかく、好感がもてます。さらに折々に「ポイント」として主張の要旨が囲み罫で強調されているので、議論も理解しやすくなっています。進歩の名のもとに経済成長を強引に持続させてきたことのツケが全世界的に露呈しつつあるこんにち、幻想からの脱出を促してくれるコンパクトな名著です。

『人種・国民・階級』は、大村書店版『人種・国民・階級――揺らぐアイデンティティ』(1995年;新装版1997年)の訳文を大幅に見直し、新たに若森さんの解説「資本主義世界経済と国民、人種主義、移民現象──『人種・国民・階級』唯学書房版に寄せて」を加えたいわば決定版。すでに旧版2点を持っている方も買い直した方が良いと思われます。版元サイトでは「民族差別、ヘイトスピーチの問題がクローズアップされる今日の東アジアにおいて切実に必要とされる視点であろう」と宣伝されています。

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by urag | 2014-09-07 22:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2014年 09月 05日

パブリシティ情報:『戦争の教室』『影像の詩学』

弊社7月刊『戦争の教室』の紹介記事や書評が各紙で配信されています。毎日小学生新聞「15歳のニュース」2014年8月2日(土)付の記事「この夏は「戦争の教室」で話し合おう」では編者代表の松本彩子さんのインタヴューが顔写真付きで掲載されており、本書からの抜粋も引用されています。また8月15日には、共同通信の配信で地方紙各紙に「戦争再考本――消える原体験 学びに道:重い記憶刻み、受け継ぐ」と題した記事が掲載され、「戦争の多面性を浮き彫りにした〔・・・〕多様な戦争像をいかに自分に引きつけるかを考えたい」と評していただきました。この記事では『戦争の教室』のほかに、宇吹暁『ヒロシマ戦後史』岩波書店、熊谷奈緒子『慰安婦問題』ちくま新書、水野剛也『「自由の国」の報道統制』吉川弘文館、も取り上げられています。

また「週刊読書人」2014年8月29日号では、作家・澤地久枝さんと武蔵野大学教授・永田浩三さん、毎日新聞記者・䑓宏士さん、「週刊読書人」社員・山﨑曜子さんの4氏による座談会「語り継ぐ戦争、受け継ぐ記憶――『戦争の教室』(月曜社)刊行を機に」が1~2面に掲載されています。4氏はいずれも『戦争の教室』の寄稿者で、それぞれ30年代生まれ、50年代生まれ、60年代生まれ、80年代生まれと世代は様々です。座談会を締めくくるにあたって澤地さんは「この本をきっかけに、若い人の中でまず身内のお年寄りから戦争体験を聞いてみよう、という気持ちが波紋のように広がってくれればいいですね」と発言し、編者の一人でもある䑓さんは「議論する時の素材になってくれればうれしいです」と続けていらっしゃいます。

一方「図書新聞」9月6日号(3173号)では、弊社4月刊の青木敦子『影像の詩学』に対する書評「シラーの戯曲がもつ建築的な輪郭が浮かび上がる――シャープな哲学的概念によって構築される議論」が掲載されました。評者は立教大学教授の坂本貴志さんです。「青木氏の議論では、哲学的な用語を用いた、ときに数学的な印象を与える論証が行われるけれども、それはドイツの18世紀の文学を読み解いていくための必然的は手続きではある。〔・・・〕シャープな哲学的概念によって構築される議論の中でこそ、シラーの戯曲がもつ建築的な輪郭が明瞭に」なる、と評していただきました。

なお、同紙同号では、弊社刊『ソドム』の共訳者である馬場智一さんが、同じく共訳者の渡名喜庸哲さんが寄稿されたレヴィナスをめぐる論集『顔とその彼方』(知泉書館)に対する書評「倫理の思想家の彼方へ――レヴィナス思想のたえず更新される現代性を展開する、最前線の研究とシンポジウムのドキュメント」を執筆されています。
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by urag | 2014-09-05 15:16 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2014年 09月 04日

10月上旬刊:森山大道エッセイ集『通過者の視線』

2014年10月8日取次搬入予定 *芸術/写真

通過者の視線
森山大道著
月曜社 2014年10月 本体1,800円、46判(タテ190ミリ×ヨコ125ミリ)並製288頁、ISBN:978-4-86503-018-1

内容:最新写真論/エッセイ集。「ぼくが50年という時を掛けて覚えた唯一のカメラワークとは〝通過者の視線〟に他ならない」。スナップへのこだわり、銀塩かデジタルか、白黒かカラーか、スランプ時代を語った深瀬昌久氏との対話など、半世紀にわたる写真家としての実践をめぐる思考と葛藤を跡づける。単行本未収録の写真論やエッセイなど全29編。『もうひとつの国へ』(朝日新聞出版、2008年)所収の9編を含む。白黒写真50点余収載。

アマゾン・ジャパンでのご予約はこちらからどうぞ。

森山大道(もりやま・だいどう)1938年生まれ。最近の作品集に、『実験室からの眺め』(河出書房新社、2013年4月)、『Daido Moriyama 1965~』(上田義彦編、赤々舎、2013年6月)、『パリ+』(月曜社、2013年10月)、『記録 25号』(Akio Nagasawa Publishing、2014年)、『終わらない旅 北/南』(2分冊、Akio Nagasawa Publishing、2014年)など。

★【特報】名作『新宿』の決定版がついに11月初旬近刊!森山大道写真集『ニュー新宿』B5判上製752頁、Wトーン、本体予価8,800円。後日改めてご案内いたします。
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by urag | 2014-09-04 19:40 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)