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2014年 03月 30日

2014年4月の注目単行本と文庫本

増税前、年度末、新学期・・・慌ただしい日々です。これでは楽しいエイプリル・フールも準備できたものではありません。3月いっぱいまでの注目新刊はまたあらためてご紹介するとしまして、今回は来月の注目新刊(単行本と文庫本)を列記します。

◎2014年4月注目単行本新刊(新書を含む)

01日『レヴィナス著作集1 捕囚手帳ほか未刊著作』ロドルフ・カラン+カトリーヌ・シャリエ監修, 三浦直希ほか訳、法政大学出版局
03日『グローバルな複雑性』ジョン・アーリ著、吉原直樹監訳、法政大学出版局
04日『規則の力――ウィトゲンシュタインと必然性の発明』ジャック・ブーヴレス著、中川大・村上友一訳、法政大学出版局
05日『絵入簡訳 源氏物語(三)』小林千草・千草子著、平凡社
07日『行動の構造』上下巻、滝浦静雄・木田元訳、加國尚志解説、みすず書房(始まりの本)
07日『この道、一方通行』ヴァルター・ベンヤミン著、 細見和之訳、みすず書房(始まりの本)
09日『ジジェク、革命を語る――不可能なことを求めよ』スラヴォイ・ジジェク著、中山徹訳、青土社
09日『マーニー教』ニコラス・J・ベーカー=ブライアン著、青木健訳、青土社
10日『電子戦の技術 拡充編』デビッド・アダミーほか著、河東晴ほか訳、東京電機大学出版局
17日『上野千鶴子の選憲論』 上野千鶴子著、集英社新書
18日『第一ポップ時代』ハル・フォスター著、中野勉訳、河出書房新社
18日『道徳感情論』アダム・スミス著、村井章子・北川知子訳、日経BPクラシックス
19日『新訳ベルクソン全集5 精神のエネルギー』アンリ・ベルクソン著、竹内信夫訳、白水社
21日『ジャッキー・デリダの墓』鵜飼哲著、みすず書房
22日『こころは体につられて(下)』スーザン・ソンタグ著、デイヴィッド・リーフ編、木幡和枝訳、河出書房新社
22日『バルテュス』クロード・ロワ著、與謝野文子訳、河出書房新社
24日『新版アリストテレス全集3 トポス論/ソフィスト的論駁について』岩波書店
24日『デザインの自然学――自然・芸術・建築におけるプロポーション〔新・新版〕』ジョージ・トーチ著、多木浩二訳、青土社
25日『増補版 承認をめぐる闘争――社会的コンフクトの道徳的文法』アクセル・ホネット著、山本啓・直江清隆訳、法政大学出版局
27日『レヴィ=ストロース』カトリーヌ・クレマン著、塚本昌則訳、白水社(文庫クセジュ)
28日『文芸誌編集実記』寺田博著、河出書房新社

『レヴィナス著作集』は全三巻予定の第1巻。版元さんの紹介文によれば「戦前から戦後期に書かれた哲学的な覚え書きや小説作品、講演原稿などの未刊テクスト群を集成する著作集、待望の邦訳刊行! 初巻には、捕虜収容所時代の手帳や論考をはじめ、『全体性と無限』準備期の哲学雑記を収録」とのこと。リクールによる『別様に―エマニュエル・レヴィナスの『存在するとは別様に、または存在の彼方へ』を読む』(関根小織訳、現代思潮新社)や、合田正人編『顔とその彼方――レヴィナス『全体性と無限』のプリズム』(知泉書館)が刊行されたばかりで、レヴィナス関連の新刊がにぎわいを見せています。

竹内信夫さんの個人全訳である白水社版『新訳ベルクソン全集』は全7巻+別巻1構成で、来月は第5回配本の第5巻が刊行。残るは第6巻『道徳と宗教の二つの源泉』、第7巻『思考と動くもの』、別巻「人名・書名索引,用語解説集」となります。岩波版『新版アリストテレス全集』は早くも第4回配本。旧版全集では「トポス論/ソフィスト的論駁について」は、第2巻「トピカ/詭弁論駁論」として収録。

今年はデリダ没後10年ということで、鵜飼さんが単著のデリダ論を上梓されます。ジャッキーというのはデリダの愛称ではなくて親が名付けた本名。本書に続いて今年は何点かデリダの訳書も刊行されるようです。『デザインの自然学』は、ハンガリーに生まれ米国で活躍した建築家にしてデザイナーのGyörgy Dóczi(1909-1995) の主著『The power of limits: proportional harmonies in nature, art, and architecture』(Shambhala Publications, 1981)の訳書の再刊かと思われます。初訳は1994年刊、新装版が1997年に出て、さらに新版が1999年に刊行されたロングセラーです。英語読みのジョージは、ハンガリー語では「ギョールギュ」に近い音になるかと思います。

さ来月、5月上旬と聞きますが、いよいよ、ジャン=クロード・レーベンシュテイン『猫の音楽――半音階的幻想曲』(森元庸介訳、勁草書房)が刊行されるようです。


◎2014年4月注目文庫本新刊

01日『私訳 歎異抄(仮)』五木寛之著、PHP文庫
05日『遺伝子の川』リチャード・ドーキンス著、垂水雄二訳、草思社文庫
09日『パスカル 数学論文集』ブレーズ・パスカル著、原亨吉訳、ちくま学芸文庫
09日『列島の歴史を語る』網野善彦著、ちくま学芸文庫
09日『資本主義から市民主義へ』岩井克人著、三浦雅士聞き手、ちくま学芸文庫
09日『総天然色 廃墟本remix』中田薫著、中筋純写真、ちくま文庫
10日『賃労働と資本/賃金・価格・利潤』マルクス著、森田成也訳、光文社古典新訳文庫
10日『インタヴューズ』全2巻、クリストファー・シルヴェスター著、新庄哲夫訳、文春学藝ライブラリー
11日『デカルト哲学』小泉義之著、講談社学術文庫
11日『わたしの哲学入門』木田元著、講談社学術文庫
11日『イザベラ・バードの旅『日本奥地紀行』を読む』宮本常一著、講談社学術文庫
11日『密教とマンダラ』頼富本宏著、講談社学術文庫
16日『宗教座談』内村鑑三著、岩波文庫
23日『ここにないもの』野矢茂樹著、中公文庫
23日『ケネディ演説集』高村暢児編、中公文庫
23日『13日間 キューバ危機回顧録』ロバート・ケネディ著、 毎日新聞社外信部訳、中公文庫

驚くべきことに光文社古典新訳文庫では5月新刊に、スピノザ『神学・政治論』(全2巻、吉田量彦訳)が予告されています。版元さんの紹介文に曰く、「本書でスピノザは、聖書のすべてを絶対的真理とする神学者たち批判し、哲学と神学を分離し、思想・言論・表現の自由を確立しようする。『エチカ』と並ぶスピノザの主著を、画期的に読みやすい訳文と豊富な訳注、詳細な解説で読む。待望の新訳!」とのことです。これを端緒にしてスピノザの新訳文庫が増えていくと素晴らしいですね。
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by urag | 2014-03-30 00:28 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 28日

英国文化関連の注目新刊:スチュアート・ホールとバンクシー、など

弊社出版物の著作者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

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★上野俊哉さん(著書:『アーバン・トライバル・スタディーズ』、共訳書:ギルロイ『ブラック・アトランティック』)
★清水知子さん(著書:『文化と暴力』、共訳書:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』)
★毛利嘉孝さん(著書:『文化=政治』、共訳書:クリフォード『ルーツ』、ギルロイ『ブラック・アトランティック』)
★ポール・ギルロイさん(著書:『ブラック・アトランティック』)
青土社さんの月刊誌『現代思想』の、1998年3月臨時増刊号「総特集=ステュアート・ホール――カルチュラル・スタディーズのフロント」がこのたび2014年4月臨時増刊号「総特集=スチュアート・ホール[増補新版]」として生まれ変わりました。旧版で収録された論考やインタビューに加え、増補新版では、上野俊哉+小笠原博毅+清水知子の三氏による討議「亀裂と軋轢からの思考」や、タリク・アリによる追悼文「思考し、意見を戦わせ、そして行動を開始せよ――変革を求める者たちへのスチュアート・ホールからのメッセージ」(稲垣健志訳)、そしてホールへのインタビュー「ホームの居心地、場違いな心地」(L・バック聞き手、栢木清吾訳)が新たに加わっています。

旧版にはほかにも、上野俊哉さんの論考「ディアスポラとノマド――「保証なき主体」をめぐって」、毛利嘉孝さんの論考「インディペンダント・インタヴェンシャン――ホールの七〇年代」、そしてポール・ギルロイさんの論考「英国のカルチュラル・スタディーズとアイデンティティの落とし穴」(毛利嘉孝訳)が掲載されており、これらは新版にも再録されています。

さらに、毛利嘉孝さんはこのほかにも以下の2点の新刊に関わられているほか、まもなくせりか書房より発売予定の論集『アフター・テレビジョン・スタディーズ』の編者を伊藤守さんとともに務められています。

BANKSY'S BRISTOL:HOME SWEET HOME
スティーヴ・ライト(Steve Wright)著 小倉利丸・鈴木沓子・毛利嘉孝=訳・解説
作品社 2014年3月 本体2,800円 B5判並製6+126+2+48頁 ISBN978-4-86182-353-4

帯文より:彼は、何を主張し、どのように描いてきたのか? バンクシーと昔からの仲間たちによる世界で唯一の“非公式”ガイドブック! ストリート・グラフィティの天才、“芸術的テロリスト”謎の覆面作家《バンクシー》の初めて明かされる実像! 消失した初期作品から代表作まで166作品+友人・仲間たちの証言+作品解説+本人インタヴュー収録。【付】バンクシー・幻のインタヴュー+バンクシー作品年表+“ブリストル・サウンド”アルバムTop20

目次:
イントロ
ブリストル・ビート
バンクシーって誰?
レイヴの頂点
アーティストの仕事現場
匿名の規則
アート作品をつくること
ホーム・スウィート・ホーム
物語は続く・・・
バンクシー年譜
付録
 ギフトショップを通り抜けるとその先に出口が・・・(毛利嘉孝)
 バンクシーへのインタビュー:「グラフィティは、民主主義で、“リアル”なアートだ」(2003年秋、ロンドンにて)
 2003年ロンドンと“バンクシー”という現象(鈴木沓子)
 ブリストルという街(飯島直樹:DISC SHOP ZERO)
   1.そのサウンドのグラフィティ
   2.ブリストル・サウンド人脈マップ
 “ブリストル・サウンド”アルバムTop20(飯島直樹:DISC SHOP ZERO)
 所有に抗する自由の空間(小倉利丸)
 本文の訳注
 ブリストル市街図


白川昌生 ダダ、ダダ、ダ――地域に生きる想像☆の力
水声社 2014年3月 本体2,500円 A4判並製200頁 ISBN978-4-8010-0035-3

アーツ前橋にて2014年3月15日(土)から2014年6月15日(日)まで開催される展覧会「白川昌生 ダダ、ダダ、ダ 地域に生きる想像☆の力」の公式カタログ。

目次:
序文(住友文彦)
赤城山のふもとに生きる(白川昌生)
作品解説
 地域に生きる想像の力(住友文彦)
 マイナー芸術のために(毛利嘉孝)
 マース券と握手する手――未来からありがとう(森野榮一)
 幻想〔キマイラ〕 アジアを離れヨーロッパへ――更新された「あいまいさ」(アストリッド・ハンダ=ガニャール)
白川昌生を語る(冨井大裕×藤井光×中崎透)
日本現代美術序説――その端緒的覚書(白川昌生)
年譜
著作解題

◎関連イベント:記念対談 白川昌生x毛利嘉孝x住友文彦
 
日時:2014年5月4日(日)午後2時より午後4時まで
会場:アーツ前橋 1Fスタジオ
※参加無料、ただし本展の観覧券の半券が必要です。

また、本展カタログの発売と同時に以下の新刊が発売されています。美術のありようを問う本書は、多くの箇所で出版に置き換えて受けとめる必要があると感じました。贈与としての出版。出版そのものが芸術であるような未来。

贈与としての美術
白川昌生(しらかわ・よしお:1948-)著
水声文庫(水声社) 2014年3月 本体2,500円 46判上製224頁 ISBN978-4-8010-0036-0

帯文より:美術が《商品》であるとともに、未来への《贈与》であることを、未開社会における《クラ交換》、モースの『贈与論』、シュタイナーの経済理論等に拠りながら力強く主張しつつ、美術のみならず、政治・経済・文化のすべてが、社会そのものが、《芸術》であるような未来へ向けて、現在の腐朽した美術の在り方を根柢から問い直す。

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by urag | 2014-03-28 20:24 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 26日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2014年4月20日(日)オープン予定
ブルックリンパーラー大阪店:??坪
所在地未詳
日本雑誌販売帳合。弊社にはトーハン経由で文芸書を数点ご発注いただきました。発注書だけで案内文がないので、出店する場所の詳細はよく分かりません。ブルックリンパーラーは株式会社ブルーノートジャパンが運営する「食、本、音楽が融合した新しいタイプのカフェ&ダイニングバー」で、これまでに新宿店と博多店がオープンしています。弊社では昨秋、系列店の「Blue books Cafe静岡店」に出品しました。その時も同じことを書きましたが、ブルックリンパーラーの求人広告を見る限りでは、図書販売のスタッフは募集していないので、本は売り物ではなく閲覧用だろうと思っていたのですが、「Blue books Cafe静岡店」のウェブサイトを見る限り、本の紹介コーナーがあることから推察して、販売していると見るのが正しいようです。

+++

このほかにも、案内状のない発注短冊だけの新規店さんのご発注は小口のものが複数軒ありましたが、取次経由の出品で印象に残っているのは、青山BCの閉店後に入居されたふたば書房丸ビル店さんと、4月4日に呉服町タワー1階へ移転リニューアルオープンするすみや静岡本店さんくらいです。いずれも芸術書をご発注。

直取引では、アマナアマナホールディングスさんの写真雑誌「IMA」のコンセプトストア「IMA CONCEPT STORE」が3月15日(土)、東京・六本木のAXISビル内3階にオープンする際、芸術書のご発注を頂戴しました。「IMA CONCEPT STORE」は、写真集などを扱うブックショップに、ギャラリーとカフェが併設されています。

いっぽう閉店情報ですが、啓文堂書店神田駅前店が1月11日に閉店しました。また、ブックファースト梅田店が2月28日に惜しまれつつ閉店。報道にある通り、入居する新阪急ビルの建て替え工事が閉店理由です。テナントとして出店している書店にはこうした閉店はつきものです。昨年11月にすでに報道があった岡山ビブレの閉店に伴い、A館2-3Fに入居している ジュンク堂書店岡山店が閉店するようです。これで、岡山市北区での紀伊國屋書店クレド岡山店とジュンク堂書店岡山店の頂上決戦はいったん終結します。岡山ビブレの閉店は道路を挟んだ真向かいにイオンモール岡山が11月にオープンするためです。こちらにどんな書店が入店するのかはまだ不明ですが、イオンモールの最近の戦略から考えて、デベロッパー側のニーズに見合った複合タイプの新しいスタイルの書店が求められているはずだろうと思われます。

つまり、図書販売のみの従来の書店さんは少しずつ減っていき、他業種の越境的資本参入も含めたプラスアルファの要素を持った次世代書店が増えていくのかもしれません。では出版社も新しいビジネスモデルを掲げる次世代出版社が他業種からの参入も含め増えるでしょうか。それを想像するとき、コンテンツを作ることと売ることは今まで以上に相補性や対称性を失うかもしれないと思えてきます。コンテンツを販売するチャンネルが多様化してきていても、コンテンツを創造するチャンネルはさほど増えてはいないのではないかというのが率直な感想です。創造のビジネス回路が飽和状態にあるとも言えるかもしれませんが、この飽和状態は新しいものが生まれ続けている過程と平衡関係にあって、まるでジャグジーの泡のようです。泡はどんどんつぶれて死んでいくので、インフレーションを起こしているように見えながらも実際には市場の脈動を破ってまで氾濫しうるような大きなイベントはまずほとんどないのです。だとすれば、コンテンツを死や死蔵から常時再起動できる無限編集の仕組み(再生魔法?)の開発がこの先の出版界の課題となるでしょうか。細部の接続と切断、組み換えとケミストリーによるgeneral intellect(一般知性)の誕生、もしくは知の相転移(の夢)。
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by urag | 2014-03-26 23:16 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 22日

注目新刊:グリロ『メキシコ麻薬戦争』現代企画室、ほか

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メキシコ麻薬戦争――アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱
ヨアン・グリロ著 山本昭代訳
現代企画室 2014年3月 本体2,200円 4-6判並製420頁 ISBN978-4-7738-1404-0

帯文より:グローバル化社会の影にひそむ不条理な日常。米国人のあくなき需要を満たすため、米墨国境を越える末端価格300億ドルもの麻薬。幾重にも張りめぐらされた密輸人のネットワーク。警察と癒着したカルテル間の抗争とおびただしい死者。軍隊並みの装備で国家権力に対抗するパラミリタリー。麻薬王たちの豪奢な暮らし。10 代で「殺し屋」となり、たった85ドルで殺人を請け負う少年たち……
帯文(裏)より:メキシコとアメリカの歴史的な関係を背景に、近年のグローバル化と新自由主義の進展のひずみの中で急拡大した「メキシコ麻薬戦争」の内実を、綿密な調査に基づき明らかにするルポルタージュ。米墨国境地帯で麻薬取引と暴力に依存して生きる「ナルコ(麻薬密輸人)」たちに密着し、犯罪者たちの生活や文化、彼らを取り巻く凄惨な暴力の実態を明らかにすると同時に、世界各地で注目されている「麻薬合法化」の議論など、問題解決に向けた方向性も指ししめす。

目次:
第1章 ゴースト――イントロダクション
Part I 歴史
第2章 ケシ――麻薬生産の黎明期
第3章 ヒッピー――第一次麻薬ブーム
第4章 カルテル――メキシコ麻薬組織の形成
第5章 麻薬王たち――三大カルテルの時代
第6章 政権移行――高まる戦争の足音
第7章 戦国時代――カルデロンの「麻薬戦争」
Part II 内臓
第8章 運び屋――麻薬密輸とマネー・ロンダリング
第9章 殺し屋――殺人という仕事
第10章 文化――マフィアの音楽・映画
第11章 信仰――ギャングの宗教
第12章 犯罪的蜂起――体制に挑む暴力
Part III 運命
第13章 捜査――スパイと裏切り
第14章 拡大――国際化する組織犯罪
第15章 多様化――犯罪の多角化
第16章 平和――麻薬戦争終結への道
謝辞
参考文献
訳者あとがき

★発売済。原書は、El Narco: Inside Mexico's Criminal Insurgency(Bloomsbury Press, 2011)です。著者のグリロはイギリス出身のジャーナリスト。命の危険に曝されながら10年間に渡って取材した成果である本書は彼のデビュー作で、複数の麻薬組織が跋扈するメキシコにおける、凄惨な報復合戦の続く内戦の実態に多角的に迫った衝撃作です。訳者あとがきによれば、原書は大著のため、「記述が詳しすぎて日本の読者にはかえってわかりにくい部分を中心に簡略化」したとのことです。また、「猟奇的とも思えるような残虐行為に関する記述は、一般の日本人読者に配慮して大幅に省略や短縮している」とも断っておられます。それでもなお、本書が描き出す、麻薬をめぐって延々と続いていく負のスパイラルは、日本人読者には地獄そのもののように映るのではないかと思います。日本ではほとんど報道されない深い闇を教えてくれる恐ろしい本です。


TTT――トラのトリオのトラウマトロジー
ギジェルモ・カブレラ・インファンテ(Guillermo Cabrera Infante, 1929-2005)著 寺尾隆吉(1971-)訳
現代企画室 2014年2月 本体3,600円 4-6判上製608頁 ISBN978-4-7738-1405-7

帯文より:1958年、革命前夜のハバナを舞台にした、キューバの鬼才、カブレラ・インファンテの翻訳不可能な怪作、遂に「超訳」なる! 【警告】真っ黒なページも、連続して登場する真っ白なページも、ひらがなを多用してたどたどしく書かれた手紙も、その中の誤字も、反転している文字も、すべてが作家が意図した「表現」です。印刷ミスだ、乱丁だ、誤植が多いと言って、返品なさらないでください。
帯文(裏)より:エル・ベダードと呼ばれる3ブロックほどの「夜も眠らぬ」歓楽街。そこには、外国人観光客、知識人、ポン引き、娼婦などが蝟集する。多くの極貧労働者によって購われた特権階級の遊び場にオマージュを捧げることで、作家は何を言おうとしたのだろうか?

★発売済。シリーズ「セルバンテス賞コレクション」の最新刊です。原書は、1965年、キューバ生まれの著者が数え年で36歳の折に原稿を完成させ、ロンドンへ移住してすぐの1967年に刊行した、Tres tristes tigresです。原意は「三頭の寂しい虎」。訳者あとがきによれば底本は「初めてノーカットで出版された1990年のビブリオテカ・アヤークチョ版」とのことです。帯の「警告」文にある通り、本書は視覚的に特殊な頁を含み、中でも本書の真ん中あたりの「いくつかの新事実」の章では真っ白な頁が続いたかと思えば、文字が全部左右反転した頁や、微妙に綴りを弄られた固有名詞の羅列が続き、めまいを起こさせます。騒ぎが収まったかと思われた後段でも「バッハ騒ぎ」の「譜面」ではゲシュタルト崩壊に襲われるかもしれません。ちなみに本書の発表後、著者はジョイスの『ダブリン市民』のスペイン語訳を依頼されたそうです。


疎外と反逆――ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話
寺尾隆吉訳
水声社 2014年3月 本体1,800円 46判上製176頁 ISBN978-4-8010-0023-0

帯文(裏)より:厳密な理論派で文学への熱い情熱を隠さないM・バルガス・ジョサと、辛辣な知性から諧謔的ユーモアを繰り出すG・ガルシア・マルケス、現代ラテンアメリカ作家の頂点2人による若かりし頃の貴重な対談。バルガス・ジョサによるガルシア・マルケス論の白眉「アラカタカからマコンドへ」、文学への誠実な態度が垣間みえる「バルガス・ジョサへのインタビュー」を収録。
推薦文:ラテンアメリカ小説の稀代の語り部らが、自作の秘密を明かす。(鼓直)

★まもなく発売。「ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話」(1967年)、バルガス・ジョサによるガルシア・マルケス論「アラカタカからマコンドへ」(1969年)、エレナ・ポニアトウスカによる「バルガス・ジョサへのインタビュー」(1965年)を一冊にまとめた日本語版オリジナルのアンソロジーです。小さな本ですが、非常に濃密な内容です(それにしてもほとんど同時期に『TTT』のような翻訳不可能とされてきた作品とともにこうした重要なアンソロジーを手掛けられる寺尾さんの精力的なご活躍には目を瞠るばかりです)。ガルシア・マルケス(1928-)とバルガス・ジョサ(1936-)の二人の作家観の差異が見え隠れするような印象的なくだりを「対話」から引用しておきます。

ガルシア・マルケス:つまり、あなたの見解では、『百年の孤独』であれ、他の作家の作品であれ、読者がラテンアメリカの政治的・社会的現実を理解するための手引きとなりうる、というわけですか?
バルガス・ジョサ:私の考えでは、あらゆるすぐれた文学は、作者の意図に関わらず、避けがたく進歩的性格を持つものです。例えば、ボルヘスのように、保守的な、完全に反動的なメンタリティを持つ作家でも、創作においては保守的でも反動的でもないでしょう。彼の署名する愚かしい声明文を除けば、ボルヘスの作品には、社会や歴史への反動的姿勢を示すものなど何もないし、固定化された世界観とでも言うのか、ファシズムとか帝国主義とか、彼が称賛するイデオロギーを肯定するものは見当たらないでしょう。違いますか・・・?
ガルシア・マルケス:それはそうでしょう、自分の信条からも逃避するような作家なのですから・・・
バルガス・ジョサ:偉大な作家というのは、たとえ反動的な思想の持ち主であれ、自らの信条から逃避することで、現実のありのままの姿を描き出そうとするものでしょう。現実自体が反動的だということはないでしょうし・・・
ガルシア・マルケス:いや、我々は自分の信条から逃げるようなことはしていませんよ。例えば、私が小説のなかで描いたバナナ農園の悲劇は、私の信念に沿う形で提示されています。私が明らかに労働者の側に立っているでしょう。違いますか? だから、私の考えでは、作家の大きな政治的貢献とは、自らの信条や現実世界に背を向けることではなく、作品を通して読者が、自国の、さらには大陸全体の政治的・社会的現実をより深く理解できるよう努めることです。それは意味のある重要な仕事だし、それこそ作家の政治的機能だと思いますよ。というか、作家の機能はそれ以外にないでしょう。もちろん、一市民としてなら、作家は特定の政治思想に与してかまわない、というか、与するべきです。作家にはそれなりの影響力があるのだから、それを行使して政治的役割を果たすのは当然です。


ハンナ・アーレント――「戦争の世紀」を生きた政治哲学者
矢野久美子著
中公新書 2014年3月 本体820円 新書判上製256頁 ISBN978-4-12-102257-8

カバーソデ紹介文より:『全体主義の起原』『人間の条件』などで知られる政治哲学者ハンナ・アーレント(1906-1975)。未曽有の破局の世紀を生き抜いた彼女は、全体主義と対決し、「悪の陳腐さ」を問い、公共性を求めつづけた。ユダヤ人としての出自、ハイデガーとの出会いとヤスパースによる薫陶、ナチ台頭後の亡命生活、アイヒマン論争――。幾多のドラマに彩られた生涯と、強靭でラディカルな思考の軌跡を、繊細な筆致によって克明に描き出す。

目次:
まえがき
第1章 哲学と詩への目覚め 1906-33年
 I 子供時代
 II マールブルクとハイデルベルクでの学生生活
 III ナチス前夜
第2章 亡命の時代 1933-41年
 I パリ
 II 収容所体験とベンヤミンとの別れ
第3章 ニューヨークのユダヤ人難民 1941-51年
 I 難民として
 II 人類にたいする犯罪
 III 『全体主義の起原』
第4章 1950年代の日々
 I ヨーロッパ再訪
 II アメリカでの友人たち
 III 『人間の条件』
第5章 世界への義務
 I アメリカ社会
 II レッシングをとおして
 III アイヒマン論争
第6章 思考と政治
 I 「論争」以後
 II 暗い時代
 III 「はじまり」を残して
あとがき
主要参考文献
ハンナ・アーレント略年譜

★まもなく発売。アーレントは近年ますます著書や書簡集などの翻訳が充実してきており、持続的な再評価の波が続いています。ただ、アーレントについての研究書は複数見かけても入門書が少なく、さらに言えば新書のようなハンディな形態では仲正昌樹さんの『今こそアーレントを読み直す』(講談社現代新書、2012年)しかなかったのは不思議でした。そんななか、アーレントの翻訳に長年携わり、ご自身でも『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』(みすず書房、2002年)を上梓されたことのある矢野さんがアーレントの生涯と思想をコンパクトにまとめてくださったのは読書界にとって非常にありがたいことです。彼女の起伏に富んだ人生、数々の友情と決裂、孤高を畏れない発言の数々はいずれも印象的です。いくつもの困難に襲われながらも生き延び、いくつもの別れを繰り返しながらも生き抜いた彼女はしかし必ずしも孤独ではありませんでした。彼女の生涯を思う時、人は「誠実さとは何か」という問いに真摯に向き合わざるをえないのではないでしょうか。


脳の中の時間旅行――なぜ時間はワープするのか
クラウディア・ハモンド著 渡会圭子訳
インターシフト発行 合同出版発売 2014年3月 本体2,100円 46判上製304頁 ISBN978-4-7726-9539-8

帯文より:時間の不思議から、時間操縦術まで、数々の賞を受賞した著者が明かす。心のミステリーは時間が鍵を握っている! 年間ベストブック!(英国心理学協会 ポピュラーサイエンス部門)
帯文(裏より):「時間」の謎を解き明かす決定版! 脳の中に「時計」がある? うつになると、時間がゆがむ。言語は、時間の感じ方を変える? 時間が動く派、自分が動く派。ホリデー・パラドックスって? 時間の流れを変えるコツ。

★まもなく発売。原書は、Time Warped: Unlocking the Mysteries of Time Perception(Canongate Books, 2012)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ポピュラーサイエンス(一般向けの科学読みもの)の分野で話題作を続々と出版されているインターソフトさんの最新刊です。本書は時計で計測できる時間についてではなく、「頭の中の時間(マインド・タイム)」について書かれている興味深い本です。集中しているときは長く感じ、ぼんやり過ごすとあっという間に流れ去る時間。あるいは逆に、熱中していると時間の経過を忘れ、ぼうっとしているといつまでも流れ去らない時間。こうした誰にでもある時間のワープ(ゆがみ)の感覚は単なる錯覚ではなく、その感覚を脳が生み出していることを本書は教え、その仕組みを明かしていきます。「将来への展望をもとに決断をするとき、どのくらい正しい判断ができているか不安を感じたことがあるなら、第5章を読んでみるといいかもしれない。事故にあって時間が止まった感覚を経験したことがある人なら、第1章を読めばその理由がわかるだろう。時間がたつのがどんどん速くなっている、あるいは世界中で大きなニュースになった事件を、いつも実際より一年か二年前のこととして記憶しているという人なら、第3章がぴったりだ」(15頁)。読み進めるほどに「まじか」と感心しっぱなしで、時間の秘密を誰かに教えたくなる本です。マインド・タイムをコントロールできるかどうかが、時間と人生を操れるかどうかの鍵なわけです。書店さんでは本来、理工書売場で本書を扱われるのだと思いますが、ビジネス書や人文書でもヒットする予感がします。


現代デザイン事典 2014年版
勝井三雄・田中一光・向井周太朗監修 伊東順二・柏木博編集委員
平凡社 2014年3月 本体3,400円 B5変型判並製324頁 ISBN978-4-582-12933-5

帯文より:エキスパートによる〈思考〉と〈実践〉。特集=「〈弱い〉デザイン」。転換期に求められる多様なあり方。
帯文(裏)より:デザイン25分野800項目を収録。第一線で活躍中のクリエイター70余名による体験的・実践的な記述。【巻頭特集】「弱い」デザイン。【クローズアップ】デザインの歴史から現代的課題まで11本。【コラム】デザインを考える24本。【資料】デザイン賞受賞作品の紹介、デザイン人名録、ブックガイド、学校案内など最新の基本情報を網羅。カラー図版650点。

★まもなく発売。1986年に発刊以来、豊富な情報量と多数のカラー図版でデザインの現在を収集し続けてきた定番書目の最新版です。巻頭特集は「〈弱い〉デザイン」。現代の古典的論集『弱い思考』(法政大学出版局、2012年)が翻訳出版されている現在、「強さ」を凌ぐ「弱さ」の効用が見直される機運が高まっている気がします。ちなみに2011年度版の巻頭特集は「KOGEI(工芸)」、2012年度版は「兆しのデザイン」、2013年年度は「エネルギーシフト」でした。眺めているだけでも自分の創造力がアップするような気がする、感性が磨かれるハンドブックです。
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by urag | 2014-03-22 00:34 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 18日

最近の版元品切および在庫僅少本

最近版元品切および在庫僅少になった書目をお知らせします。

◎品切重版未定:モーリス・ブランショ『書物の不在 第二版』、遠藤水城編『曽根裕|Perfect Moment
◎在庫僅少:エルンスト・ユンガー『パリ日記

書店さんの店頭ではまだ在庫がありますので、ご購入希望のお客様は、たとえばMARUZEN&ジュンク堂書店さんのサイトなどで在庫をご確認いただけたら幸いです。

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昨年末から一年前までの月曜社の出版活動はこんな感じでした。

◎2013年3月28日発売新刊:花代写真集『ベルリン』本体3,600円。

◎2013年3月6日重版出来:ポール・ド・マン『盲目と洞察』2刷

◎2013年1月29日発売新刊:『間章著作集(1)時代の未明から来たるべきものへ』本体4,600円。
書評1⇒高野直生氏短評(「intoxicate」102号、2013年2月20日発行)
書評2⇒ナガタ氏書評「伝説的ジャズ評論家の著作集が復刊!その闘争の軌跡を読み解く」(「Book news」2013年02月21日付)。

◎2012年11月7日発売新刊:ショラル・ショルカル『エコ資本主義批判――持続可能社会と体制選択』本体3,200円
書評1⇒フ氏書評(「書標」2013年3月号
書評2⇒小倉利丸氏書評「実現可能なエコ社会主義とは――長期の社会転換をめざして」(「週刊読書人」2013年5月17日号)
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by urag | 2014-03-18 17:32 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 17日

4月11日発売予定新刊:青木敦子『影像の詩学』

2013年4月11日取次搬入予定 *人文・哲学・ドイツ文学

影像の詩学――シラー『ヴァレンシュタイン』と一義性の思考
青木敦子=著
月曜社 2013年4月 本体3,500円 A5判上製256頁 ISBN978-4-86503-014-3

自律は自由と平等の輝かしい理想を人間に授けるとともに、残酷な宿命への覚醒をももたらす。カント哲学を批判的に継承したシラーは、その一帰結を戯曲『ヴァレンシュタイン』で克明に描いた。栄光の絶頂にある将軍を襲う無気味な影たち。自身に従えていたはずの近しいものたちが次々と裏切りのシルエットへと反転し、ついには将軍を死へと追いやる。その暗い表象の諸徴候を細やかに読み解き、シラー研究を新局面へといざなう力作。【シリーズ・古典転生】第10回配本(本巻9)!

目次:
序章
 影
 シルエットの魅惑
 畸形化するシルエット
第一章 不在とシルエット
 色と音の世界
 「影の国」
 自己組織化
 メタモルフォーゼ
 存在と不在
第二章 習慣と平俗なもの
 枢軸の独白
 習慣の恐怖
 『潜水夫』と『手袋』
 「本当に怖ろしいもの」
第三章 世界の暗い感情と占星術
 シラー豹変
 妖精たちの世界と「宿命の種蒔き」
 明るい木星の子
 「運命の領分」と「人間の領分」
 占星術の放棄
第四章 鏡としてのマクス
 架空の人物
 反射光学器としての鏡
 倫理的規範としての鏡
 歪曲する鏡
 砕け散る鏡
 まやかしの鏡
 ナルキッソス
 鏡の裂け目
 マクスとオクタヴィオ
第五章 ギリシャ的な運命とカント的な自由
 ギリシャへの接近
 「すでに生じてしまったかもしれない」
 自由意志の影
 『イビュクスの鶴』
 ギリシャ的な運命とカント的な自由
第六章 史的真実と詩的真実
 歴史上のヴァレンシュタイン
 ヴァレンシュタインの不幸
 「歴史より歴史的」
 史的真実と詩的真実
 ランケとシラー
 歴史とシルエット
終章 アナロギアから一義性へ
 アナロギアからの切断
 存在の一義性
 一義性の論理と悲劇
あとがき
参考文献
索引(人名・作品/シラー作品/事項)

青木敦子(あおき・あつこ)1957年、熊本県生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒業。学習院大学大学院博士課程修了。文学博士(名古屋大学)。現在は、学習院大学、明治大学非常勤講師。著書に『シラーの「非」劇――アナロギアのアポリアと認識論的切断』(哲学書房、2005年)。主な論文に、Die Struktur der doppelten Wiederholung in Schillers Fiesco (Zeitschrift für Literaturwissenschaft und Linguistik, Verlag J. B. Metzler, Stuttgart 2001), Die Abwesenheit des Protagonisten und sein Schattenbild in Wallensteins Lager von Friedrich Schiller (Convivium, Germanistisches Jahrbuch Polen, Deutscher Akademischer Aus tauschdienst, Bonn 2010) などがある。
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by urag | 2014-03-17 10:31 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 16日

注目新刊:佐々木力『東京大学学問論』作品社、ほか

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東京大学学問論――学道の劣化
佐々木力著
作品社 2014年3月 本体2,600円 46判上製vii,358,10頁 ISBN978-4-86182-475-3

帯文より:斜陽の帝国=東大再生は可能か?! 近代日本の「国家貴族」養成所=東京大学は受験生のあこがれの的。だが、その国際的評価は低い。時の政府の「御用学者」を務め、原子力発電推進の中心的機構にして、異論を排除してきたこの大学に未来はあるのか。独立行政法人化以降、劣化の加速する東大内部の惨状を自身の処分事件と絡めて摘出する警醒と鼓舞のための書き下ろし。

目次:
序文
第一章 東日本大震災後の“国難”状況の中、衰退の局面を迎えている日本の高等教育
第二章 「国家貴族」養成所としての東京大学――世界の大学の中の東大とその国策的あり方
第三章 国立大学教員処分頻発とその実態
第四章 原子力技術の国策的担い手としての東京大学
第五章 未来の日本の高等学問のために
あとがき(折原浩)
著者跋文
索引(人名・事項)

★発売済。13日(木)に取次搬入済です。序文の言葉を借りると本書は「東大における学問の在り方を問う書物」で、「私自身が東大で経験したことをもってアプローチ」したものです。佐々木さんはかつて『学問論――ポストモダニズムに抗して』(東京大学出版会、1997年)という近代以後の日本における学問のありようを批判的に考察するご著書を上梓されていますが、今回の新著ではご自身の体験に照らした東大のありようを問うておられます。「あとがき」を寄せられた折原浩さんはこう書いておられます。「本書は、佐々木氏が、近年、東大当局から受けた「セクハラ」容疑による停職処分と、その後、2010年の定年退職時にまでおよぶ、研究指導権の剥奪ともいうべき処遇について、氏みずから事実経過を明らかにし、研究と教育の機関でふたたびこうしたことが起きないように、との願いを籠めて、執筆された」(338頁)。

★佐々木さんは序文でこうも書かれています、「読者は、一読したあとで、このような話が現実に起こるはずはない、との感懐をあるいは抱くやもしれぬ。まったくそうではない。現実に起こったことである。そうであるがゆえに、私は拙著をものしたのである。まさしく事実は小説より奇なり、なのである」(9頁)。「国立大学法人のもとで、いかに安易に教員の処分がなされているか」(8頁)を赤裸々に綴った本書は、内容的にかなり重いため、具体的な報告に移る特に第三章第二節以後(123頁以降)は、繊細な読者にとってはとても心臓に悪い内容になっています。佐々木さんに降りかかる出来事はまったく奇妙で、学内政治の異様な姿に部外者は唖然とするはずです。佐々木さんは続く第四章で原子力問題と東大の関係についても鋭く切り込んでおられ、さらに第五章では学問研究と教育の再生について論じられています。学問の場における「フロネーシス/プルーデンティア」(賢慮)の欠如を問う(279頁)本書は、折原さんがかつて公刊された『大衆化する大学院―一個別事例にみる研究指導と学位認定』(未來社、2006年)とともに、忘却すべきでない歴史として残っていくものと思われます。


フーコーの美学――生と芸術のあいだで
武田宙也(たけだ・ひろなり:1980‐)著
人文書院 2014年3月 本体3,800円 4-6判上製316頁 ISBN978-4-409-03082-0

帯文より:フーコー思想の全体を「生と美学」の観点から、内在的に一貫したものとして読み解く。他なる生存のあり方へ――美学的な思考に潜む、硬直的な生への対抗。

★まもなく発売(17日取次搬入)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者が2012年に京都大学に提出した博士論文(主査は篠原資明さん)に加筆修正したものとのことです。序論の言葉を借りると、本書は「「生存の美学」というフーコー晩年のコンセプト、また、それにまつわる一種の主体論から出発して、彼の思想全体を捉え直そうと試みるもの」(13頁)で、「「生」と「芸術」との関わりという観点から従来のフーコー像を刷新すること」(18頁)を最終的な目標に設定されています。「それは、「生存の美学」という概念から出発して、フーコーの思想そのものを「倫理的なもの(生)」と「感性的なもの(芸術)」とのあいだに位置する、ひとつの「美学」として提示することになるだろう。また、その際にわれわれは、「外」という概念を、この二つの領域に関わるものとして捉え、それぞれの領域における外の様態を探究する。言い換えるならば、本書は、この二つの領域が、フーコーの思想のなかで「外」という概念を軸にして重なり合うことを、また、この重なり合いにこそフーコー思想の本質が表れていることを示すものである」(18-19頁)。本書では「生存の美学」はひとつの「外の美学」として位置づけられています(242頁)。

★「他なる生存のあり方」を生涯にわたって追究した(277頁)と著者が分析するフーコーは、かつてこう語ったそうです。「ひとは、現在の自分と異なったものになるために書くのです」。これは1984年のインタヴュー「ある情念のアルケオロジー」での発言で、『ミシェル・フーコー思想集成(X)』(筑摩書房、2002年)所収の既訳ではこう訳されていました。「人はまず、自分がそうであるのとは違ったものになるために書くのです。書くという行為を通して、自分の存在様態を修正しようという狙いがあるわけです」(63-64頁)。「書くことのかくも深き欲望」(ホラティウス)とは、変容への欲望なのかもしれません。


◎河出書房新社さんの新刊より

君の悲しみが美しいから僕は手紙を書いた』若松英輔著、河出書房新社、2014年3月、本体1,500円、46判上製160頁、ISBN978-4-309-02272-7
半自叙伝』古井由吉著、河出書房新社、2014年3月、本体1,700円、46判上製200頁、ISBN978-4-309-02257-4

★『君の悲しみが美しいから僕は手紙を書いた』は、NHK社会部が運営するサイト「こころフォト」や毎日新聞で若い人びとに宛てて書いた手紙をきっかけに、その続きを書き下ろして一冊としたものです。若松さんならではの柔らかい言葉で死者への慈しみや、悲しみのふちにある人への思いが綴られています。「悲しみを忌み嫌う時代、その意味を問うことのない時代は、悲しみだけでなく、勇気をも見失っているのかもしれない。悲しみが勇気を生むことを現代は、どうして忘れてしまったんだろう。/深く悲しんだ人に、輝くような勇気が宿っているのを、ぼくはこれまでに何度か見たことがある。彼らは多くを語らない。でも、そうした人々との出会いによって人生は大きく変化してきたように思うんだ」(101頁)。

★『半自叙伝』は河出さんから刊行された二つの作品集に掲載された、80年代前半版の巻末「創作ノート」や、2012年版月報の「自伝」をまとめ、最後に書き下ろし一篇「もう半分だけ」を加えた一冊です。「それにしても、「半自叙伝」とはおかしな表題である。すでに七十歳を超えていたのだから、「五分の四自叙伝」とすればよさそうなもの、そんな名称はないのだろう。年齢はともあれ、自叙伝のようなものを物する境地にはまだ至っていないという意になるか。これからの自叙伝を試みることはないと思われる」(「もう半分だけ」187頁)。ご自身の職業については、こう振り返っておられます。「見た事と見なかったはずの事との境が私にあってはとかく揺らぐ。あるいは、その境が揺らぐ時、何かを思い出しかけているような気分になる。そんな癖〔へき〕を抱えこんだ人間がよりにもよって小説、つまり過去を記述することを職とするというのも、何かとむずかしいことだ」(194頁)。

★河出さんの来月新刊には、クロード・ロワによる評伝『バルテュス』(與謝野文子訳)や、5人の美術家(ハミルトン、リキテンスタイン、ウォーホル、リヒター、ルシェ)を論じたハル・フォスターによる『第一ポップ時代』(中野勉訳)、スーザン・ソンタグの1969年から80年までの日記『こころは体につられて』(下巻、デイヴィッド・リーフ編、木幡和枝訳)、塩澤幸登『編集の砦』などが予定されています。塩澤さんは昨年6月刊『雑誌の王様――評伝・清水達夫と平凡出版とマガジンハウス』という著書を河出さんから上梓されています。『編集の砦』は、河出さんの紹介によれば、「平凡出版=マガジンハウスの雑誌づくりを具体的に活写し、木滑良久の編集思想に迫る」とのこと。木滑良久(きなめり・よしひさ:1930-)さんはマガジンハウス取締役最高顧問。つい最近ご紹介しましたが、今月は椎根和さんによる回想録『銀座Hanako物語――バブルを駆けた雑誌の2000日』(紀伊國屋書店)も刊行されており、マガジンハウスについての新刊が連続しています。


◎平凡社さんの新刊より

物数寄考――骨董と葛藤』松原知生著、平凡社、2014年3月、本体3,800円、A5判上製394頁、ISBN978-4-582-26808-9
新版 韓国 朝鮮を知る事典』伊藤亜人・大村益夫・高崎宗司・武田幸男・吉田光男・梶村秀樹監修、平凡社、2014年3月、本体7,000円、A5判上製714頁、ISBN978-4-582-12647-1
新民説』梁啓超著、高嶋航訳注、東洋文庫(846)、2014年3月、本体3,300円、B6変型判上製函入528頁、ISBN978-4-582-80846-9
世説新語3』劉義慶著、井波律子訳注、東洋文庫(847)、2014年3月、本体3,100円、B6変型判上製函入416頁、ISBN978-4-582-80847-6

★『物数寄考』は発売済。帯文はこうです。「「おもしろいもの」には抗えない。川端康成、小林秀雄、青柳瑞穂、安東次男、つげ義春、杉本博司──古物に憑かれし者たちの悶々。古美術愛好の本質を超越的な断言や印象批評的な情語ではなく一箇の感性論として語る、気鋭の美術史家による意欲的な一書」。主に「西南大学国際文化論集」に寄稿されてきた諸論考に加筆し、書き下ろしの「終章」を加えたものです。別冊付録として、著者と現代美術家の杉本博司さんと映画監督の中村佑子さんによる2段組28頁もの鼎談「アートの起源〔はじまり〕/杉本博司」が挟みこまれています。「本書は、倦み疲れることなく骨董に憑かれ続けた作家たちが生み出したテクストとイメージの分析を通じて、この葛藤の現場、誘引と反発の地場へと接近する試み」(14頁)と著者は「はじめに」に書いています。ご本人も骨董の愛好家で、自ら貧数寄(びんすき)と評しておられます。なお著者はストイキツァの訳書を複数冊ものしておられます。

★『新版 韓国 朝鮮を知る事典』はまもなく発売。旧版は『朝鮮を知る事典』(初版1986年;新訂増補版2000年)でした。大幅な書き換えや項目の入れ替えを行い、項目数は初版の約1.5倍となる1902項に増加し、執筆者も146名からさらに30数名増えたとのことです。図版159点、巻末には索引が付され、資料編には〈年表〉〈文献案内〉〈関連サイト案内〉〈世界遺産〉が掲載されています。「テーマ別の項目ガイド」という三折の投げ込みが付されています。

★『新民説』はまもなく発売。帯文に曰く「病夫となった中国をどう改革すべきか? 亡命地日本に在って、中国の民族独立と国民国家の実現のために民を新たにする「道徳革命」を説き、東アジアの近代思想史に輝く、若き梁啓超(1873-1929)の中国近代精神革命の書」。1902年から4年間、自らが創刊した雑誌で発表し、1907年に単著としてまとめたもので、中国のあるべき姿を果敢に主張しています。「私が思うに、禍をもたらすかどうかは外の問題ではなく、内の問題である」(20頁)と訴え、「民が弱ければ国は弱く、民が強ければ国は強い」との思いから伝統文化を磨くとともに進取の精神をも鍛えることを主張します。共産党独裁以前の興味深い国家理想像を垣間見ることができます。

★『世説新語3』はまもなく発売。全5巻中の第3巻です。帯文に曰く「魏の始祖曹操、竹林七賢の阮籍から書聖王羲之、画聖顧愷之まで、全1120条のエピソードで、640人余りの登場人物が語り出す。魏晋の時代の精神史を伝える、多様なる機智の宝庫」。「賞誉第八」から「豪爽第十三」までを収録しています。「天使から友人や知人にいたるまで、その誤りをいさめ忠告した逸話」を収めたという「規箴第十」が特に興味深く、それぞれドラマの一シーンを見ているかのような印象があります。東洋文庫の次回配本は4月、『朝鮮開化派思想選集』と予告されています。
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by urag | 2014-03-16 21:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 14日

4月10日発売予定:『表象08』特集=ポストメディウム映像のゆくえ

2013年4月10日取次搬入予定 *人文・芸術

表象08――ポストメディウム映像のゆくえ
表象文化論学会=発行 月曜社=発売
2013年4月 本体1,800円 A5判並製256頁 ISBN978-4-86503-013-6

映画館が映像を体験する特権的な場を提供していた時代がとうに過ぎ去り、いたるところで──携帯電話やタブレットPCで、美術館やギャラリーで、乗り物やレストラン、都市景観のなかで──映像が体験され、「消費」されるようになった現在。本特集は、美術批評家ロザリンド・クラウスなどが近年提唱しているポストメディウム概念を手引きとして、このように映像が飽和した状況を包括的・批判的に論じる。領域を横断して作用するポストメディウム概念の雑食的な生産性に眼を向け、映像メディウムが内側から解体していく契機を捉える試み。

目次
◆【巻頭言】
「すべての芸術は音楽の状態を憧れる」、再考(岡田温司)

◆【特集】ポストメディウム映像のゆくえ
メディウムのかなたへ──序にかえて(門林岳史)
共同討議:ポストメディウム理論と映像の現在(加治屋健司+北野圭介+堀潤之+前川修+門林岳史)
メディウムの再発明(ロザリンド・E・クラウス/星野太訳)
多義性の摘出──実験映像におけるポストメディウム論の有用性(阪本裕文)
ポストメディア時代に向けて(フェリックス・ガタリ/門林岳史訳)
三十五年後――「見出せないテクスト」再考(レイモン・ベルール/堀潤之訳)
ベルールの反時代的考察――「三十五年後――「見出せないテクスト」再考」の余白に(堀潤之)

◆【小特集】ドゥルーズの時代
共同討議:『ドゥルーズの哲学原理』と『動きすぎてはいけない』(國分功一郎+千葉雅也+堀千晶+佐藤嘉幸)

◆【投稿論文】
包含、屈折、反響――ドナルド・ジャッドのパースペクティヴ(荒川徹)
生起、移行、翻訳――あるいはポール・ド・マンのイデオロギー批判(吉国浩哉)
「瞬間」に耳を澄ますこと――モーリス・ブランショにおける声楽的概念としての「歌」(高山花子)
ケージから離れて――クリスチャン・ウォルフと間隙の作法(久保田翠)

◆【書評】
「形式」と「形姿」のはざまで――石田圭子『美学から政治へ――モダニズムの詩人とファシズム』書評(竹峰義和)
想起のインフラストラクチャー――香川檀『想起のかたち――記憶アートの歴史意識』書評(松浦寿夫)
マンガの両義性(反映論/表現論)の析出――杉本章吾『岡崎京子論――少女マンガ・都市・メディア』書評(夏目房之介)
「同じもの」を見るということ――田中祐理子『科学と表象――「病原菌」の歴史』書評(橋本一径)
サスペンス映画の論理と倫理――三浦哲哉『サスペンス映画史』書評(野崎歓)
「敗戦後」と「近代以降」のあいだ:晩期前衛時代の日本美術を鳥瞰する歴史史料の英訳選集を吟味する――『From Postwar to Postmodern: Art in Japan 1945-1989』書評(稲賀繁美)
ドストエフスキーは預言者ではなく〈ミディアム〉の作家――番場俊『ドストエフスキーと小説の問い』書評(桑野隆)
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by urag | 2014-03-14 10:47 | 表象文化論学会 | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 13日

本日搬入新刊:デリダ=シクスー、吉本全集、カルージュ新訳

弊社出版物の著訳者の皆様の最近の御活躍をご紹介します。

★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
★郷原佳以さん(共訳:『ブランショ政治論集』)
1998年にガリレから刊行された『Voiles』の訳書がついに刊行されました。本日取次搬入と聞いていますので、週明けから順次書店店頭で発売開始になるものと思われます。シクスーの短いテクスト「サヴォワール」、デリダのテクスト「蚕――他なるヴェールに刺さった(無)視点」、そして訳者の郷原さんは解説「「蚕」、あるいは、脱構築の告白」を書かれています。カバーと挿絵に使われているドローイングはエルネスト・ピニョン-エルネストによるものです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

ヴェール
エレーヌ・シクスー/ジャック・デリダ著 郷原佳以訳
みすず書房 2014年3月 本体4,000円 A5変型判(タテ200mm×ヨコ148mm)208頁 ISBN978-4-622-07811-1

カバー裏紹介文より:ともにアルジェリアに生まれ育ち、生涯の特別な友である二人が、ヴェールについて、自伝的・遺言的に応答を交わした。まずシクスーが、短いテクスト「サヴォワール」で口火を切る。強度の近視の女が手術を受け、はじめて「目で世界に触れる」。奇蹟の瞬間に訪れたものとは何か。続いてデリダが「サヴォワール」を受けて、卓抜した論を展開する。ブエノス・アイレス、サンティアゴ、サンパウロ……飛行機の中で、二人の人物がひたすら語り合う。ヴェールとタリートについて、技術と自然について、審判について、そして真理について。鍵となるのが、テクストの表題である「蚕」だ。自らの分泌物で自らを隠し、変成を遂げるこの小さな虫は、伝統的真理概念に潜り込み、密やかに真理の糸を産出する。〈その成熟はただ一回しか起こらないが、それがかつてそうであったところのものになるために、与えられた時間をすべて要求するだろう。私はけっして、あなた方にそれを物語ることはないだろう。〉 性的差異の論理を根本から書き換え、デリダの到達点を告げる、恐るべきエクリチュール。


★アントニオ・ネグリさん(著書:『芸術とマルチチュード』)
★毛利嘉孝さん(著書:『文化=政治』、共訳:クリフォード『ルーツ』、ギルロイ『ブラック・アトランティック』)
昨年来日したネグリさんの講演が一冊にまとまりました(発売済)。三章構成で、第I章は、2013年4月12日に国際文化会館岩崎小彌太記念ホールで行われたシンポジウムでのネグリさんの講演とそれに対する姜尚中さんの応答、そしてお二人の対談(通訳は三浦信孝さん)が収録されています。第II章は同年4月6日に日本学術会議大講堂で行われたシンポジウムでのネグリさんの講演と、それに対する市田さん、上野さん、毛利さんの応答を収めています。厳密に言えば、ここまでの四氏の応答は、当日口頭発表されたものを書き起こしたものではなくて、原稿を圧縮したものではないかと思われます。第III章はすべて書き下ろしで、ネグリさんによる「アベノミクスと『風立ちぬ』」のほか、白井さんと大澤さんの論考を収めています。ネグリさんのエッセイは彼のパートナーであるジュディット・ルヴェルさんによるイタリア語からのフランス語訳が底本です。宮崎駿さんの『風立ちぬ』はごく簡単に触れられているに過ぎないので、念のため注意を喚起しておきたいと思います。

ネグリ、日本と向き合う
アントニオ・ネグリ+市田良彦+伊藤守+上野千鶴子+大澤真幸+姜尚中+白井聡+毛利嘉孝著 三浦信孝訳
NHK出版新書 2013年3月 本体820円 新書判240頁 ISBN978-4-14-088430-0

カバーソデ紹介文より:2013年、ついに来日を果たしたアントニオ・ネグリ。彼は、3・11後の日本をどう見たのか? 原発問題・領土問題・アベノミクスなど日本の課題、米国・EU・中国・南米など現代の世界情勢、日本におけるマルチチュードの可能性について、率直に語る。日本を代表する知識人によるネグリへの〈応答〉も多数収録。世界有数の知性と日本の知性がぶつかりあう刺激的な一冊!

目次:
序 アントニオ・ネグリの現在(伊藤守)
I 「東アジアのなかの日本」と向き合う
 グローバリゼーションの地政学(アントニオ・ネグリ/三浦信孝訳)
 応答 東アジアの「冷戦」と「熱戦」(姜尚中)
 対話 東アジアのナショナリズムとリージョナリズム(アントニオ・ネグリ×姜尚中)
II 「3・11後の日本」と向き合う
 3・11後の日本いおけるマルチチュードと権力(アントニオ・ネグリ/三浦信孝訳)
 応答1 「社会的なもの」の行方(市田良彦)
 応答2 日本のマルチチュード(上野千鶴子)
 応答3 3・11以降の反原発運動にみる政治と文化(毛利嘉孝)
III 原発危機からアベノミクスまで、「日本の現在」と向き合う
 アベノミクスと『風立ちぬ』――日本から帰って考えたいくつかのこと(アントニオ・ネグリ/三浦信孝訳)
 「原子力-主権国家体制」の行方(白井聡)
 絶対的民主主義への道はどこに?(大澤真幸)

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本日13日に取次搬入となる新刊には注目書が2点あります。弊社関係の著者ではありませんけれども、ご紹介します。都内の超大型書店でしたら早ければ明日には並び始めると思いますが、多くの書店さんでは週明け以降の店頭発売になると思われます。どうしても早く、誰よりも早く買いたいんだ、という方は版元さんにお電話されるか、紀伊國屋書店新宿本店もしくは八重洲ブックセンター本店に問い合わせると良いかもしれません。

吉本隆明全集(6)1959-1961
晶文社 2014年3月 本体6,500円 A5変型判712頁 ISBN978-4-7949-7106-7

帯文より:長く深い時間の射程で考えつづけた思想家の全貌と軌跡。60年安保を挟む「戦後世代の政治思想」「擬制の終焉」などの政治思想評論、作家論、エッセイ群と詩を収める。

★本日取次搬入の新刊です。待望の『吉本隆明全集』(全38巻、別巻1)の第一回配本です。A5判より天地が10ミリほど短く、手になじむ大きさです。帯は二重に巻いてあり、写真の帯の下には収録作品とその引用、そして今後の刊行予定などが記してあるもう一枚の帯があります。表紙は茶色のクロス装に墨箔で書名や版元名を捺し、白いシンプルなカバーをかけたままでも取っても書架に映える美しさです。単行本未収録2篇(「腐食しない思想をもて されば希望は諸君のうちにある」1960.4.25;「感想――『銀行員の詩集』」1960.11)を収め、政治の時代へと向かう1960年前後の吉本さんの歩みを、評論や詩など多様な作品群から一望できます。月報は全8頁、高橋源一郎さんの「産み落とされた日」と、ハルノ宵子さんの「父の手」の2篇のエッセイが収められています。なお、全集の刊行を記念して全国主要書店でブックフェアが予定されているほか、ゴールデン・ウィークには以下のイベントが行われます。

トークセッション“吉本隆明のDNAをどう受け継ぐか”
出演:中沢新一×内田樹×茂木健一郎×宇野常寛
スペシャルゲスト:よしもとばなな

日時:2014年5月1日(木) 19:00開演(18:30開場)~21:00終演
会場:新宿・紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4F)
料金:1,800円(全席指定・税込)
前売:キノチケットカウンター(紀伊國屋書店新宿本店5F 受付時間10:00~18:30)
電話予約:紀伊國屋ホール03-3354-0141(受付時間10:00~18:30)
主催:紀伊國屋書店、晶文社

※3月17日(月)より、チケット発売・電話予約受付。
※10歳未満のお子様はご入場いただけません。
※イベント当日に全巻を予約されたお客様に特典として吉本隆明さんの特製ポートレートを進呈します(後日発送)。
※全集刊行記念ブックフェアを人文書売場にて開催予定です。

内容:詩、文学から政治、哲学、宗教、国家、共同体、心的現象、言語、家族、性愛、さらにはテレビ、マンガなどのサブカルチャーまで、およそ人間がかかわるあらゆる分野のことがらについて考え抜いた吉本さんの膨大なお仕事から、いまわたしたちが学べることは何か。中沢新一氏、内田樹氏、茂木健一郎氏、宇野常寛氏という異なる世代の4人のパネリストに、それぞれの吉本体験を振り返ってもらいつつ、そのDNAをどう次世代へ引継ぐのか、大いに語っていただきます。

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《新訳》独身者機械
ミシェル・カルージュ著 新島進訳
東洋書林 2014年3月 本体3,600円  A5判上製320頁 ISBN978-4-88721-816-1

帯文より:デュシャン=カフカから発火する性愛と死の〈装置〉論を、ルーセル、ジャリ他が磨ぎ澄ました不朽の尖鋭文学の鏡面上に乱反射させた、唯一者による〈シュルレアリスムの実践〉! 無限の平面球形図を象る眼と思考の表象光学が、仮想現実と人造人間を体験する世紀を迎えた今、新たに解き放たれる。
推薦文(高山宏):愛の挫折がうむ異様絢爛の機械幻想――現代文学で最強の衝撃力あるテーマに初めてという強度と偉大な射程で肉薄した永遠の名作再び。マルセル・デュシャン伝説のオブジェ〈大ガラス〉を強烈焦点にロマン派からモダニズムへと前代未聞の一大系譜が形成されるのを前にただ呆然。深層心理学、神話学、文学の結託が火花を散らした1950年代に始まったテマチック(主題)批評の破壊力は千年紀が改まった今なお、いや今こそ読む者を圧倒する!

★本日取次搬入の新刊です。伝説的書物が新訳で再刊されました。初訳本は高山宏さんと森永徹さんの共訳で1991年にありな書房から『独身者の機械――未来のイヴ、さえも・・・』として刊行されました。今回の新訳本では、高山さんご自身が推薦文を寄せておられます。目次詳細はこちらをご覧ください。ちなみに旧訳では高山さんの解題は「永遠に新しいシュルレアリスムの実践」と題されていました。今回の新訳では新島さんによる解説「ミシェル・カルージュと独身者機械」が巻末に収められています。人形や機械など、人間以外の対象に寄せられる独身者の愛情というのは、現代社会の分析でも新たに援用できるテーマだと思います。美しい図版の数々とともに堪能して下さい。

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by urag | 2014-03-13 14:42 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 03月 10日

取次搬入日確定&書影公開&来日情報:マッシー『空間のために』

弊社3月新刊『空間のために』の取次搬入日が決定しましたのでお知らせします。日販、トーハン、大阪屋、栗田、太洋社、いずれも2014年3月14日です。書店店頭には週明けの17日以降に並び始めるのではないかと思われます。人文書売場、社会書売場など、書店さんによって展開される売場が異なるはずですので、在庫がどのお店のどの売場にあるか、事前にお電話などで調べていただくのがいいかもしれません。

書影と目次詳細も併せて公開いたします。カバーはごくシンプルに、白地に墨色の箔押しで書名と著者名を記載しています。一緒に写したのは、既訳書『空間的分業――イギリス経済社会のリストラクチャリング』(富樫幸一・松橋公治監訳、古今書院、2000年、現在品切)です。また、以前ご紹介した大阪での講演に加え、東京での二講演についても新たにご紹介します。

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空間のために
ドリーン・マッシー著 森正人+伊澤高志訳
月曜社 2014年3月 本体3,600円 46判(縦190mm×横130mm×厚さ25mm)並製440頁 ISBN:978-4-86503-012-9

内容:グローバリゼーションと排外主義は、なぜ共存しうるのか? 時間を変化の次元として、そして空間を静的な次元として取り扱う西洋的な思考の伝統に異を唱え、ベルクソンや構造主義、ドゥルーズやデリダなどの時間/空間理解を批判的に検討するなかで、多様な歴史の軌跡の相互作用から構成され続けるものとして空間を理論化。そのことを通じて、新自由主義的グローバリゼーションの現在を、場所をめぐる政治(先住民たちによる土地への権利主張、領土的なものをめぐる攻撃的排他主義、等々)を徹底的に考察する、新たなる地理学。

原著:For Space, London: Sage, 2005.

目次:
謝辞  
第一部 舞台設定  
 三つの熟慮  
第一章 はじまりのための命題  
第二部  見込みのない関連性  
第二章 空間/表象  
 (科学への信頼? 1)  
第三章 共時性の監獄  
 構造主義の「空間」  
 構造主義以後  
第四章 脱構築の水平性  
第五章 空間の中の生 
第三部 空間的な複数の時間に生きる?
第六章 近代性の歴史を空間化する
 (科学への信頼? 2)
 (知の生産の地理の数々 1)――表象、再び
第七章 瞬間性/深さのなさ  
第八章 非空間的なグローバリゼーション  
第九章 (通俗的な見解とは反対に)空間は時間によっては滅ぼされえない  
第一〇章 新たなるもののための諸要素  
第四部 新たな方向づけ
第一一章 空間の諸断面  
 地図のせいで失敗する  
 空間の偶然性  
 旅する想像力  
 (科学への信頼? 3)
第一二章 場所のとらえどころのなさ  
 移住する岩たち  
 場所という出来事  
 (知の生産の地理の数々 2)――知の生産の場所  
第五部 空間的なものの関係論的政治学  
第一三章 〈ともに投げ込まれていること〉――場所という出来事の政治学  
第一四章 空間と場所の原則などない  
 アマゾンの心臓部を線引きする  
第一五章 〈時間-空間〉をつくることと〈時間-空間〉をめぐって抗争すること  
原註  
訳註
訳者解説 ポスト人間中心主義の空間(森正人)  
参考文献
索引


ドリーン・マッシー Doreen Massey:1944年、マンチェスター生まれ。社会学、地理学。オープン・ユニヴァーシティ名誉教授。現在も同大学の研究プロジェクトに関わる。1994年のVictoria Medal(英国王立地理学会)受賞など専門分野での受賞歴多数。邦訳書に『空間的分業――イギリス経済社会のリストラクチャリング』(富樫幸一・松橋公治監訳、古今書院、2000年)。最新刊はWorld City(Polity, 2010)です。

森正人:三重大学人文学部准教授。著書に、『四国遍路の近現代――「モダン遍路」から「癒しの旅」まで』(創元社、2005年)、『昭和旅行誌――雑誌「旅」を読む』(中央公論新社、2010年)。

伊澤高志:立正大学専任講師。英文学専攻。共訳書に、トニー・ジャット『失われた二〇世紀』(NTT出版、2011年)。

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◎著者来日情報

◆人文地理学会第280回例会:グローバル時代における「場所」――ドリーン・マッシーを迎えて
日時:2014年3月21日(金・祝) 14:30~17:00
会場:大阪市立大学梅田サテライト(大阪市北区梅田1-2-2-500 大阪駅第2ビル6階)創造都市研究科大講義室(101教室)
交通:北新地駅(JR東西線)より1分、大阪駅(JR東海道線ほか)・梅田駅(阪急・阪神)・西梅田駅・東梅田駅(大阪市営地下鉄)より約5分

趣旨:ますます互いに結びつけられるようになっているグローバル空間の文脈において、場所は政治的に保守的な避難所であり本質化された根拠地として、政治的議論の中で絶え間なく動員されています。多くの場合、閉じられたもの、真正なるものとしての「場所」は、その外側の「空間」から明確に分離されています。しかしこの場所と空間の間の単純な区分を拒否したらどうなるでしょうか。場所の多様な声と空間性の難問に向き合ってきたドリーン・マッシー氏を迎えて、場所と空間の関係的、存在論的理解について考えます。

発表者:Doreen Massey(Emeritus Professor of Geography at the Open University)
タイトル:Repositioning place in a global age

一般来聴歓迎・参加費無料
連絡先:上杉和央(京都府立大学) E-mail:kuesugi[at]kpu.ac.jp([at]を@に変換してご利用ください)


◆ドリーン・マッシー講演「グローバリゼーション、ジェンダー、空間、場所

日時:2014年3月26日(水)14:00~17:00
会場:お茶の水女子大学(東京都文京区大塚2-1-1)文教育学部1号館 大会議室

講義テーマ:Globalisation, Gender, Space & Place 「グローバリゼーション、ジェンダー、空間、場所」
講師:Doreen Massey ドリーン・マッシー(英国、オープンユニヴァーシティ名誉教授)
討論者:
松川誠一(東京学芸大学准教授、専門=ジェンダー研究、労働研究、ケア経済論)
太田麻希子(お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科研究員、専門=人文地理学、ジェンダー研究、フィリピン地域研究)

参加申込:資料の準備のため、参加を希望される方は、下記まで申し込んでください。
人間文化創成科学研究科教授 熊谷圭知 kumagai.keichi(あっとまーく)ocha.ac.jp

共催:お茶の水女子大学グローバル文化学環、大学院ジェンダー学際研究専攻、ジェンダー研究センター


◆ドリーン・マッシー教授特別講演「Geography and Politics

日時:2014年3月27日(木)15時~16時30分
場所:国士舘大学(東京都世田谷区世田谷4-28-1)34号館B棟第1会場
主催:日本地理学会

講演者紹介:マッシー氏は,イギリスのオープンユニバーシティ名誉教授で,国際的に活躍している地理学者です.代表作に『空間的分業』(富樫幸一・松橋公治訳,古今書院,2000年刊),「権力の幾何学と進歩的な場所感覚」(加藤政洋訳,思想933,2002)等があります.近年の研究はグローバリズム研究,都市研究,ジェンダー研究,空間に対する哲学的研究,自然/環境研究,政治研究などの分野に拡がっており,学際的な注目を集めています.
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by urag | 2014-03-10 17:34 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)