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2014年 02月 28日

松本俊夫「薔薇の葬列」(1969年)上映@ラピュタ阿佐ヶ谷

弊社出版物の著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

★松本俊夫さん(著書『逸脱の映像』)
本日で終了となるキネカ大森での「薔薇の葬列」1969年/「修羅」1971年を見に行けない方に朗報です。ラピュタ阿佐ヶ谷が3月9日より「AVANTGARDE百花繚乱/挑発:ATGの時代」と題した特集上映会を開催されます。4月2日(水)~5日(土)の20:20からと、6日(日)~8日(火)の18:20から、「薔薇の葬列」が上映されます。料金等詳しくはイベント名のリンク先をご覧ください。

★馬場智一さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
青土社さんの月刊誌「現代思想」2014年3月号(特集「いまなぜ儒教か」)にご論考「儒教、ユダヤ教、哲学――1957年ティウムリリンヌ会議における今道友信とエマニュエル・レヴィナス」を寄稿されています(192-205頁)。50歳を越えたばかりのレヴィナスと30代半ばの今道さんが半世紀以上前のとある会議で共通の問題を論じ合ったことについて論究しておられ、たいへん興味深い内容となっています。

★大竹弘二さん(訳書:デュットマン『思惟の記憶』、共訳:デュットマン『友愛と敵対』)
太田出版さんの季刊誌「atプラス」19号(2014年2月)での特集「公開性と秘密」において、大竹弘二さんと國分功一郎さんの対談「主権を超えていく統治――国家の肥大症としての特定秘密保護法」が掲載されました(4-26頁)。周知の通り大竹さんは同誌の11号(2012年2月)より「公開性の根源」と題した連載を寄稿されており、19号にはその第9回「代表と民主主義」(136-150頁)が掲載されています。
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by urag | 2014-02-28 18:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 23日

注目新刊:岡田温司さんのイタリア現代思想入門と黙示録をめぐる表象文化論、ほか

風邪を引きまして頭がぼんやりしています。今回は省力モードで失礼します。

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◎岡田温司さんの最新著はイタリア現代思想入門と黙示録をめぐる表象文化論

イタリアン・セオリー』岡田温司著、中公叢書、2014年2月、本体1,800円、四六判並製272頁、ISBN978-4-12-004591-2
黙示録――イメージの源泉』岡田温司著、岩波新書、2014年2月、本体840円、新書判並製282頁、ISBN978-4-00-431472-1

『イタリアン・セオリー』は、『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ、2008年)に続く、岡田さんによるイタリア現代思想入門の第2弾。全10章のうち7本が各誌等で発表済みのもので、プロローグと3本が書き下ろし。アガンベン、エスポジト、カッチャーリ、タフーリ、ネグリなどが俎上にのせられています。プロローグで岡田さんは、イタリア現代思想のアクチュアリティについて3点指摘されています。曰く「第一に、「生政治」の思考を徹底的に突きつめたこと。近代における神学の「世俗化」という重要なテーマを、新たに積極的に議論の俎上に載せたこと。最後に、「否定の思考」に実践的に取り組んでいること、である。管見では、この三つ巴こそが「イタリアン・セオリー」の最大の特徴にほかならない」(4頁)。一方、『黙示録』は全6章建てで、前半がヨハネ黙示録を聖書のテクストから読み解き、後半が黙示録を題材にした美術作品(イメージ)から分析しています。目次はこちらをご覧ください。


◎岩波書店さんの新版『アリストテレス全集』第3回配本

アリストテレス全集(7)魂について/自然学小論集』岩波書店、2014年2月、本体6,000円、A5判上製函入iii,529,24頁、ISBN978-4-00-092777-2

「魂について」中畑正志訳、「自然学小論集」坂下浩司訳、「気息について」木原志乃訳を収録。岩波版旧全集では第6巻に「霊魂論」山本光雄訳、「自然学小論集」「気息について」(ともに副島民雄訳)が収められていました。周知の通り「魂について」すなわち「デ・アニマ」は日本語でも幾度となく訳されてきた重要書です。中畑訳「魂について」は2001年に京都大学学術出版会の「西洋古典叢書」から一度出版されておりますが、今回の新全集版刊行にあたり訳文には大幅に手を入れたとのことです。月報は稲垣良典さんによる「霊魂論の復権?」と、加藤尚武さんによる「私の同時代人アリストテレス」が収められています。次回配本は4月下旬、第3巻『トポス論/ソフィスト的論駁について』を予定しているとのことです。


◎ハイエク再評価を試みるナカニシヤ出版さんの論文集

ハイエクを読む』桂木隆夫編、ナカニシヤ出版、本体3,000円、四六判並製400頁、ISBN978-4-7795-0819-6

12本の論文から多角的にハイエク思想を検証した労作です。目次詳細は書名のリンクをご覧ください。ネオリベ批判の前提に立ってあらかじめ切り詰められた貧しいハイエク像ではない、慎重な思想的理解と検討が本書の持ち味です。編者の桂木さんはあとがきで本書の意図についてこう書いておられます。「右や左に振れる時代の風潮の背後にある問題関心、「市場はどのような秩序なのか」、「民主主義はどうあるべきか」、「ルールと社会正義の関係とは」について、ハイエクとその批判者たちの哲学的探求からなにかを学ぶこと」。春秋社版『ハイエク全集』とともにひもときたいです。


◎以文社さんの2014年2月新刊1点

日本を再発明する――時間、空間、ネーション』テッサ・モーリス=スズキ著、伊藤茂訳、以文社、本体2,800円、四六判上製308頁、ISBN978-4-7531-0319-5

原書はRe-inventing Japan: Time, Space, Nation(M.E. Sharpe, 1998)です。著作としては初訳本の『日本の経済思想』(原書1989年)に次ぐ時期のもので、『辺境から眺める』や『批判的想像力のために』より以前の本です。「日本語版への序文」で著者は「この本で取り組もうとした問題は、多くの点で、当時〔原著刊行当時〕以上に現在の状況にマッチしている」と書いています。より開かれた日本に向かう道と閉ざされた日本に向かう道の分岐点にこの国が立っており、現時点で「少なくとも政府レベルで」は後者の道を辿っていると指摘するとともに、本書の目的について「日本の中に存在するネーションや文化やアイデンティティに対する多様なアプローチの仕方、すなわち、多くの可能性をはらんだ未来への種をその中に宿している豊かで多様な思考の伝統にスポットを当てることにあった」と書いておられます。

★テッサ・モーリス=スズキ(Tessa Morris-Suzuki, 1951-)単独書既刊
1991年11月『日本の経済思想――江戸期から現代まで』藤井隆至訳、岩波書店;2010年10月、再刊
2000年07月『辺境から眺める――アイヌが経験する近代』大川正彦訳、みすず書房
2002年05月『批判的想像力のために――グローバル化時代の日本』平凡社;2013年02月、平凡社ライブラリー
2004年08月『過去は死なない――メディア・記憶・歴史』田代泰子訳、岩波書店
2004年10月『自由を耐え忍ぶ』辛島理人訳、岩波書店
2007年05月『北朝鮮へのエクソダス――「帰国事業」の影をたどる』田代泰子訳、朝日新聞社;2011年09月、朝日文庫
2007年09月『愛国心を考える』伊藤茂訳、岩波ブックレット
2012年05月『北朝鮮で考えたこと』田代泰子訳、集英社新書


◎平凡社さんの2014年2月新刊より3点

フクシマ以後の思想をもとめて――日韓の原発・基地・歴史を歩く』徐京植/高橋哲哉/韓洪九著、李昤京/金英丸/趙真慧訳、平凡社、2014年2月、2,800円、4-6上製328頁、ISBN978-4-582-70299-6
歴史と民俗 30』神奈川大学日本常民文化研究所編、平凡社、2014年02月、A5判並製300頁、ISBN978-4-582-45833-6
最後の恋人』残雪著、近藤直子訳、平凡社、2014年2月、本体2,900円、4-6判上製436頁、ISBN978-4-582-83646-2

『フクシマ以後の思想をもとめて』は、在日の思想家・日本の哲学者・韓国の歴史家の三氏が、2011年から2012年にかけて福島・陜川・ソウル・東京・済州島・沖縄で重ねてきた対話の記録です。徐さんは3・11以後の日本に台頭しつつあるファシズム勢力の台頭に警鐘を鳴らし、三氏は日韓問題について広範に論じ合っており、読み応えがあります。『歴史と民俗 30』は「渋沢敬三没後50年」特集と、「第16回常民文化研究講座」の記録「大津波と集落――三陸の集落に受け継がれるもの」の二本柱でたいへん充実しています。『最後の恋人』は残雪が2005年に発表した長篇小説「最后的情人」の日本語訳で、平凡社さんとしては、評論集『魂の城 カフカ解読』(近藤直子訳、2005年12月)、短篇集『かつて描かれたことのない境地』(近藤直子ほか訳、2013年07月)に続く、中国人作家残雪さんの訳書第3弾になります。


◎水声社さん2014年2月の新刊

『ジョルジュ・ペレック伝――言葉に明け暮れた生涯』デイヴィッド・ベロス著、酒詰治男訳、本体12,000円、A5判上製784頁、ISBN978-4-8010-0026-1
『対岸』フリオ・コルタサル著、寺尾隆吉訳、本体2,000円、46判上製184頁、ISBN978-4-89176-954-3
『友だちの本』ヘンリー・ミラー著、中村亨/本田康典/鈴木章能訳、本体4,000円、46判上製392頁、ISBN978-4-8010-0003-2
『シュタイナー教育基本指針I――誕生から三歳まで』ライナー・バツラフ/クライディア・マッキーン/イーナ・フォン・マッケンゼン/クライディア・グラー=ヴィティッヒ著、入間カイ訳、本体2,500円、46判上製240頁、ISBN978-4-8010-0022-3
『ベケットのアイルランド』川島健著、本体4,000円、A5判上製272頁、ISBN978-4-8010-0014-8

まずベロスのペレック伝は93年に刊行され95年に改訂版が出たものの翻訳。本文がA5判2段組で670頁もあり、あとの100頁強は註や索引などでぎっしり埋まっています。こういう大作をきっちり手掛ける水声社さんはやはりスゴい出版社です。『対岸』は「フィクションのエル・ドラード」シリーズの最新刊。コルタサルの30~40年代の短篇13篇を収録し、巻末には1963年のハバナでの講演「短編小説の諸相」が併録されています。コルタサルは今年2014年、生誕百年と没後30年を迎えます。『友だちの本』は、「ヘンリー・ミラー・コレクション」第2期の第2回配本(第14巻)で、ミラーの回想録です。「友だちの本」1976年、「ぼくの自転車、そのほかの友だち」1978年、「ジョーイ」「わが人生におけるほかの女性たち」ともに1979年、という回想録三部作です。『シュタイナー教育基本指針I』は、2010年にドイツ語で刊行された「子どもの時代-教育-健康/誕生から三歳までの子ども時代のためのヴァルドルフ教育基本方針」の訳書です。巻末には青山学院大学教授の今井重孝さんによる解説「本書の理解を深めるために」が添えられています。『ベケットのアイルランド』は著者が2007年に東大に提出した博士論文を大幅に書き換えたものです。本書の目的は序章で「ベケットのテクストを、アイルランドをめぐる様々な言説のなかに位置づけ分析することである」と記されています。ベケットが描くアイルランド像の変化を追って「現実のアイルランドの変化に重ね合わせること」が本書の方法だと紹介しておられます。

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by urag | 2014-02-23 18:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2014年 02月 21日

「週刊読書人」にサリス『翻訳について』の書評

「週刊読書人」2014年2月21日号に、弊社12月刊、ジョン・サリス『翻訳について』の書評「刺激的な哲学書――深い見識と粘り強い思考力が堪能できる一冊」が掲載されました。評者は明治大学専任講師の池田喬さんです。

「本書は、プラトン・現象学・美学研究、さらにプラトン解釈をめぐるデリダとの対話で知られるサリスの深い見識と粘り強い思考力が堪能できる一冊だ。(・・・)ラクー=ラバルトやデリダなどフランス現代思想の重要著作を翻訳してきた西山達也氏が、訳注や解説も通じて、サリスの提示する広大な翻訳の世界を料理する様も圧巻」と評していただきました。池田さん、ありがとうございました。
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by urag | 2014-02-21 22:20 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 18日

今週末開催:廣瀬純×宇野邦一「アントニオ・ネグリと現代思想」@M&J渋谷店、など

弊社出版物の著訳者の方々の最近のご活躍をご紹介します。

★廣瀬純さん(著書:『絶望論』、共著:コレクティボ・シトゥアシオネス『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共訳書:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
昨年末、青土社さんより上梓された『アントニオ・ネグリ――革命の哲学』の刊行を記念して、宇野邦一さんとの対談イベントが今週末行われます。

廣瀬純×宇野邦一「アントニオ・ネグリと現代思想」

日時:2014年2月22日(土) 開場18:00 開演18:30
場所:MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店 7階喫茶コーナー
定員:40名
料金:1000円(1ドリンク付)
予約・問合せ:MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(東急百貨店本店7F)電話:03-5456-2111

内容:廣瀬純『アントニオ・ネグリ――革命の哲学』(青土社)の刊行を記念して、著者である廣瀬純さんと、哲学者・文学研究者である宇野邦一さんをお招きして、トークイベントを開催いたします。本書『アントニオ・ネグリ』はネグリの日本初のモノグラフィであると同時に、彼の理論との接合や比較によって、ドゥルーズやフーコー、ランシエール、バディウ、バリバールなど、おもにフランスを中心とする現代政治哲学の布置をも批判的に浮かび上がらせました。そこで、今回、ひろく現代思想に通じているお二人をお招きして、〈マルチチュード〉などのネグリの諸概念、彼の政治思想におけるドゥルーズ=グァタリの位置づけなどに焦点を当て、ネグリの哲学を革命の理論として正面から見据えると同時に、より開かれた文脈で読み解くことを試みます。

+++

また、先日発表された紀伊國屋書店さんの「じんぶん大賞2013」では、ベスト30冊のうちの23位に、弊社が昨年1月に刊行した『間章著作集(Ⅰ)時代の未明から来たるべきものへ』が選出されました。皆様の温かいご投票に御礼申し上げます。大賞を取られたのが、弊社発売『表象』誌でもお世話になった千葉雅也さんの『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥル-ズと生成変化の哲学』(河出書房新社)でした。この受賞を記念して、以下のトークイベントが開催されるとのことです。

いとうせいこう×千葉雅也「想像する文学と哲学」――『キノベス!』『紀伊國屋じんぶん大賞』授賞式&トークイベント

日時:2014年2月26日(水) 18:00~表彰式(17:30開場)/18:30~トークイベント
会場:紀伊國屋サザンシアター (紀伊國屋書店新宿南店7F)
料金:1,000円 (税込・全席指定)
主催:紀伊國屋書店
協賛:河出書房新社

チケット前売:キノチケットカウンター (新宿本店5階/受付時間10:00~18:30)、紀伊國屋サザンシアター (新宿南店7階/受付時間10:00~18:30)
電話予約・問合せ:紀伊國屋サザンシアター 03-5361-3321 (10:00~18:30)

内容:この度、「キノベス!2014」第1位に選ばれましたいとうせいこうさんと、「紀伊國屋じんぶん大賞2013」に選ばれました千葉雅也さんによるトークイベントとサイン会を開催いたします。ヒップホップから文学まで、多彩なフィールドで1980年代から活動されてきたいとうせいこうさんと、ドゥルーズ研究で哲学界にさっそうと登場し、セクシュアリティからファッション、美術まで幅広く論じ脚光を浴びる新鋭・千葉雅也さん。たまたま、時を同じくして大賞を獲られたお二人ですが、この絶妙な顔合わせは必見です。「想像」はいかに語られるのか?――是非、生の舞台でお楽しみください。

※いとうせいこうさんと千葉雅也さんのトークイベントは18時30分より予定しております。18時30分以降のご来場も可能ですので、この機会是非、お見逃しなく! イベント終演後、いとうせいこう氏、千葉雅也氏によるサイン会を行います。当日、会場ロビーにて対象書籍をご購入の先着70名様に整理券を配布いたします。
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by urag | 2014-02-18 16:57 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 17日

本日取次搬入:スピヴァク『いくつもの声』人文書院、ほか

弊社出版物の著者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

★G・C・スピヴァクさん(著書『ポストコロニアル理性批判』)
一昨年、京都賞受賞により来日講演を四回行ったその講演録が一冊の本になりました。本日取次搬入の新刊です。篠原さんによる解説を版元さんのウェブサイトで読むことができます。

いくつもの声――ガヤトリ・C・スピヴァク日本講演集
ガヤトリ・C・スピヴァク著 星野俊也編 本橋哲也/篠原雅武訳
人文書院 2014年2月 本体1,800円 4-6判上製150頁 ISBN978-4-409-03081-3

帯文より:世界のあらゆる境界と時間を越え、名もなき人々の声がこだまする――スピヴァク思想の真髄を示す圧巻のスピーチ。

帯文(裏)より:2012年秋、スピヴァクは京都賞受賞を機に来日、各地で四つのスピーチをおこなった。世界的な思想家、教育者、社会活動家となったいま、あらためて自身の来歴と活動をふまえ、グローバル化における人文学的想像力や民主主義の再考などについて、時にやさしく、時に力強く私たちに呼びかける。

目次:
序文(星野俊也)
1 いくつもの声(2012年11月11日 国立京都国際会館)
2 翻訳という問い(2012年11月12日 国立京都国際会館)
3 グローバル化の限界を超える想像力(2012年11月14日 大阪大学)
4 国境のない世界(2012年11月16日 国際文化会館)
解説(篠原雅武)

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★松本俊夫さん(著書『逸脱の映像』)
『逸脱の映像』の刊行を記念して以下の作品上映が行われます。2月22日(土)最終回上映後に、映画文筆家の松崎健夫さんと『逸脱の映像』の編者金子遊さんのトークイベントが行われます。タイムテーブルや料金等の詳細はイベント名のリンク先をご確認ください。

松本俊夫・劇映画の世界「薔薇の葬列」1969年/「修羅」1971年
会場:キネカ大森(東京大森)
上映期間:2014年2月22日(土)~2月28日(金)


★竹田賢一さん(著書『地表に蠢く音楽ども』)
以下の通りライヴが行われます。詳細はイベント名のリンク先をご覧ください。

剰余価値分解工場2014
出演:大凶風呂敷(白石民夫、Cammisa Buerhaus[from New York])、後飯塚僚、山崎春美、工藤礼子、工藤冬里、鈴木健雄、高橋幾郎、竹田賢一
日時:2014年3月3日(月)20:00開演
会場:ラストワルツ(東京 渋谷)
料金:全席自由、前売¥2,500、当日¥2,800(税込、ドリンク別)
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by urag | 2014-02-17 11:40 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 16日

注目新刊:アタリ『危機とサバイバル』作品社

危機とサバイバル――21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉
ジャック・アタリ著 林昌宏訳
作品社 2014年2月 本体2,200円 46判上製292頁 ISBN978-4-86182-310-7

帯文より:予測される21世紀の混乱と危機への“サバイバル戦略”。個人/企業/国家が生き残るための原則とは? “ヨーロッパ最高の知性”がその知識と人生体験のすべてをもとに著したベストセラー。10年後、あなたは本当に生き残る気があるか?

原書:Survivre aux crises, Fayard, 2009.

目次:
[日本語版序文]日本は“21世紀の危機”をサバイバルできるか?
[序文]21世紀を襲う“危機”から“サバイバル”するために
  1 人類史の教訓から学ぶ“危機脱出”の条件
  2 サバイバルを考えるための六つの前提
  3 サバイバル戦略に必要な〈七つの原則〉
第I部 21世紀に予測される“危機”――歴史に学び、未来に備える
 第1章 時代を見通す目を養う
  1 今後10年の変化と危機を予測する
  2 人びとの精神やイデオロギーの進化
 第2章 危機の歴史から、未来を考える
  1 危機を見極めるための心構え
  2 危機の経験を忘れ去る前に
  3 今後10年に予測される危機
 第3章 サバイバル戦略
  1 “消極的な”戦略
  2 台頭しつつある“政治的戦略”
  3 人類史に学ぶ“サバイバル戦略”
第II部 21世紀を“サバイバル”するために――個人/企業/国家/人類のための〈七つの原則〉
 第4章 個人のサバイバル――あなたは本当に生き残る気があるのか?
  1 戦略的サバイバル=「超生命力」のために
  2 〈七つの原則〉の個人への応用
  3 〈七つの原則〉と自己の探求
 第5章 企業のサバイバル――危機に直面した際の企業経営とは?
  1 すべての従業員・関係会社がサバイバル手段を持つ必要がある
  2 〈七つの原則〉の企業への応用
  3 〈七つの原則〉を実践するためのアドバイザー
  4 経営者の能力と〈七つの原則〉
  5 未来の産業分野とサバイバル戦略
 第6章 国家のサバイバル――私たちの公的活動を再検討する
  1 〈七つの原則〉の国家への応用
  2 未来に生き残る国は?
  3 “中心都市”の未来
 第7章 人類のサバイバル――未来の歴史・未来の人類
  1 八回目の生命絶滅の危機
  2 〈七つの法則〉の人類への応用
訳者あとがき

★発売済。帯文が「あなたは生き残れるか」ではなく「あなたは生き残る気があるか」という問いかけになっているのが本書の特徴をよく表しています。可能性云々よりも、まず意志の有無が問われているのです。今回の新刊は、近年訳書が刊行されたアタリさんのどの本よりもプレゼンテーションが図式的にまとまっている印象があります。第I部で世界が向かう未来が大胆に予測され、第II部では21世紀の危機を乗り越えるサバイバルのための七つの原則と、その原則が適用できる四つの次元(個人・企業・国家・人類)について説明されます。この七つの原則と四つの次元との対応が本書のミソなので、概要を以下にまとめておきます。各次元の文言は、本書の目次から採ったものです。ディテールこそが重要ですから、興味を持たれた方はぜひ現物を手にとって著者のアドバイスを味わってください。

第1原則:自己の尊重
自らが自らの人生の主人公たれ。そして、生きる欲望を持ち、自己を尊重せよ。
 個人→本当に自分を愛しているか?
 企業→自社に対する尊敬の念を持っているか?
 国家→本当の「愛国心」とは?
 人類→人類の敵は人類自身である

第2原則:緊張感
20年先のビジョンを描き、常に限りある時間に対して〈緊張感〉を持て。
 個人→自己を見直すことから始まる毎日の革命
 企業→最も重要なものは「時間」である
 国家→歴史の尊重と将来世代の育成
 人類→「未来の歴史」という思考を持つこと

第3原則:共感力
味方を最大化させる「合理的利他主義」を持つために、〈共感力〉を養え。
 個人→共感する力が自己の世界観を変える
 企業→敵を知り、味方を作る
 国家→敵国/同盟国への情報調査と深い理解
 人類→地球環境に対する合理的利他精神

第4原則:レジリエンス
柔軟性に適応した者だけが、常に歴史を生き残る。〈レジリエンス〉を持て。
 個人→失敗を乗り越えてこそ新たなチャレンジができる
 企業→「想定外」を乗り越えるために
 国家→最後まで戦うための備え
 人類→世界的な共通材の保護

第5原則:独創性
“弱点”と“欠乏”こそが、自らの“力”となる。危機をチャンスに変えるための〈独創性〉を持て。
 個人→ストレスやうつ状態を突破する原動力
 企業→危機こそがチャンスである
 国家→資源の欠乏とイノベーション
 人類→危機は人類が進化するためのチャンス

第6原則:ユビキタス
あらゆる状況に適応できる〈ユビキタス〉な能力を持て。
 個人→一つだけのアイデンティティに満足しないノマド的能力
 企業→多分野への挑戦こそ存在意義と人材が問われる
 国家→多文化主義という戦略 
 人類→「未来の人類」を構想する

第7原則:革命的な思考力
危機的状況に対応できない自分自身に叛旗を翻す〈革命的な思考力〉を持て。
 個人→すべてのルールをひっくり返せ
 企業→「正当防衛」のためには何でもありである
 国家→自国を破壊する国際ルールの拒否
 人類→グローバル・ガバナンスと不服従者の決起

★日本に対しては「日本語版序文」の中で手厳しい警告を発しています。「膨張し続ける国家債務、止まらない人口減少と高齢化、社会やアイデンティティの崩壊、東アジア地域との不調和などが挙げられるだろう」(1頁)と冒頭で指摘し、特に人口減少と高齢化への対策としては5つの処方箋を与えています。その一つが移民受け入れで、「21世紀においては、活力のある優秀な外国人を引きつけるための受け入れ環境を整えた国家がサバイバルに成功する」(4頁)と強調しています。提案への賛否はあるにせよ、日本を外から眺めるとこう見えるのだという点は押さえておくべきかと思います。訳者あとがきには、本書に対する著者のこんな言葉が紹介されています。「この本は、私の知識と、私の人生体験のすべてをもとに現した自信作で、私の生き方の秘密を教えたものだ」。反感や猜疑心から読み始めるのも良し、本書は未来へのオープンで率直な問いかけとして、ビジネスマンのみならず広い読者層に思索のひとときを与えてくれることでしょう。

◎ジャック・アタリ(1943-)単独著既訳書

1983年06月『情報とエネルギーの人間科学――言葉と道具』平田清明/斉藤日出治訳、日本評論社
1984年05月『カニバリスムの秩序――生とは何か/死とは何か』金塚貞文訳、みすず書房;新装版、1994年11月
1985年09月『音楽/貨幣/雑音』金塚貞文訳、みすず書房;改題新装版『ノイズ――音楽/貨幣/雑音』、1995年07月;新装版、2006年12月;改版、2012年04月
1986年06月『時間の歴史』蔵持不三也訳、原書房
1994年03月『歴史の破壊 未来の略奪――キリスト教ヨーロッパの地球支配』斎藤広信訳、朝日新聞社;改題文庫版『1492――西欧文明の世界支配』ちくま学芸文庫、2009年12月
1994年07月『所有の歴史――本義にも転義にも』山内昶訳、法政大学出版局
1995年12月『ヨーロッパ未来の選択』磯村尚徳監訳、後藤淳一訳、原書房
1996年05月『ジャック・アタリの核という幻想』磯村尚徳監訳、後藤淳一 訳 原書房
1998年11月『まぼろしのインターネット』幸田礼雅訳、丸山学芸図書
1999年06月『21世紀事典』柏倉康夫/伴野文夫/萩野弘巳訳、産業図書
2001年12月『反グローバリズム――新しいユートピアとしての博愛』近藤健彦/瀬藤澄彦訳、彩流社
2008年08月『21世紀の歴史――未来の人類から見た世界』林昌宏訳、作品社
2009年09月『金融危機後の世界』林昌宏訳、作品社
2011年01月『国家債務危機――ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』林昌宏訳、作品社
2014年02月『危機とサバイバル――21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』林昌宏訳、作品社

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◎2014年3月の注目文庫新刊

06日『右翼と左翼はどう違う?』雨宮処凛著、河出文庫、680円
06日『宇宙と人間 七つのなぞ』湯川秀樹著、河出文庫、780円
06日『私のプリニウス』澁澤龍彦著、河出文庫、740円
10日『世間の人』鬼海弘雄著、ちくま文庫、1500円
10日『不測のいまを生き抜くために――終わりなき液状化世界からの44通の手紙』ジグムント・バウマン著、酒井邦秀訳、ちくま学芸文庫、1200円
10日『宗教生活の基本形態(上)オーストラリアにおけるトーテム体系』エミール・デュルケーム著、山崎亮訳、ちくま学芸文庫、1500円
11日『バルセロナ、秘数3』中沢新一著、講談社学術文庫、800円
11日『五十音引き中国語辞典』北浦藤郎/蘇英哲/鄭正浩編著、講談社学術文庫、2,750円
11日『柄谷行人インタヴューズ2002-2013』柄谷行人著、講談社文芸文庫、1800円
12日『三酔人経綸問答』中江兆民著、鶴ヶ谷真一訳、光文社古典新訳文庫、未定
14日『芥川龍之介随筆集』石割透編、岩波文庫、940円
25日『新版 発心集 現代語訳付き』上下巻、鴨長明著、浅見和彦/伊東玉美訳、角川ソフィア文庫、1200円/1120円
25日『告白』全三巻、アウグスティヌス著、中公文庫、各1500円
25日『ミクロコスモス(II)』中沢新一著、中公文庫、700円

※『柄谷行人インタヴューズ1977-2001』講談社文芸文庫が今月発売済、中沢新一『ミクロコスモス(I)』中公文庫は今月25日発売予定です。
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by urag | 2014-02-16 22:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 12日

大竹昭子「森山大道のOn the Road」番外講義編@沖縄県立博物館・美術館

「森山大道 終わらない旅 北/南」展の関連イベントとして2014年1月25日に沖縄県立博物館・美術館でおこなわれたシンポジウムでの大竹昭子さんの講演録を、「森山大道のOn the Road」番外講義編として月曜社ウェブサイトにて公開開始いたしました。
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by urag | 2014-02-12 12:18 | ウェブ限定コンテンツ | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 10日

本日発売:『中央公論』2014年3月号で発表「新書大賞2014」

本日2月10日発売の月刊誌「中央公論」2014年3月号で、「新書大賞2014」が発表されています。今年で7回目。166頁から197頁が割かれています。2013年に刊行された新書をランキング形式で顕彰するものです。記事構成ですが、まずは「新書通71人が厳選した『年間ベスト10』」が掲載されています。

1位はぶっちぎりの得票数で、藻谷浩介+NHK広島取材班『里山資本主義』(角川oneテーマ21)が選ばれました。2位は仁科邦男『犬の伊勢参り』(平凡社新書)、3位は堤未果『(株)貧困大国アメリカ』(岩波新書)です。4位から20位までは月刊誌現物をご覧になってください。私が推薦した本は一冊だけランクインしていました。

大賞の『里山資本主義』の内容紹介と選評に続いて藻谷康介さんのインタヴュー記事が掲載されています。そのあと、2位から20位までの内容紹介と選評で、さらに「惜しくもランク外ながら良書礼讃の熱き1票」のコーナー。ここで私の選評も登場します。まあだいたい毎年、私の投票はランキングとあまり絡んでいません。紀伊國屋書店のパブラインのデータを元にした「2013年新書売り上げベスト20」が次に紹介されますが、今年は良く売れた本と選ばれた本がさほど重なり合っていないのが面白いです。

最後は恒例の、宮崎哲弥さんと永江朗さんの対談で、今年は「安易な「デフレ本」と本物の新書を見分けよ――ますます混迷を極めた2013年の出版界」と厳しいタイトルがついています。お二人それぞれのベスト5も発表されています。今年は例年に比べて全般的に辛口の評価で、なぜかそういう時の方が溜飲が下がる心地がします。

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【2月11日追記】ちなみに同号では、会田弘継さんによるフランシス・フクヤマさんへのロング・インタヴューが載っていて、以下のような興味深いやり取りがありました(28頁)。このインタヴュー記事の最終節「思想遍歴と政治学の現状」の一部です。

――コーネル大学卒業後、イェール大学のポール・ド・マンのもとで学ばれましたね。転換ではありませんが、アラン・ブルームのもとでの研究からド・マンのコースに進んだ理由は?

フクヤマ:単なる流行からです。大学生だった1970年代の初めに、アメリカでフランスのポストモダニズムがブームになり、それが最先端の洗練された学問に映りました。19や20の若者は何も分かっていませんから・・・。

――それにしても、ブルームのもとで学んだ古典哲学とポストモダニズムのあいだには、何かつながりがあったのでは?

フクヤマ:そうですね、どちらのグループの学生も、テクストを読んで真剣にその解釈を試みていたという点ではつながりがあるでしょう。でも実質的には大きくかけ離れています。ポストモダニストたちは基本的にインテリのアナーキストで、真理や意味が見いだせるとは思っていません。彼らがやりたかったのは、テクストを脱構築してその著者たちが自ら何を言っているのか分かっていないことを示すこと。あまり生産的とは言えません。

――なるほど。でも古典哲学とポストモダニズムという二つのグループには共通点もあると考えられます。どちらも近代性について懐疑的ではないですか。

フクヤマ:さあ、どうでしょう。ポストモダニズムは、ある意味、特定の近代性に懐疑的でしたが、それはひどく変わった批評です。しかしまた、ある意味それは正しいとも言えます。政治哲学者レオ・シュトラウス(1899-1973)の近代性に対する解釈は、近代性はいわば自滅の道をたどってきたので、物事の理解を深めるには古典哲学に立ち戻らなければならないというものです。
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by urag | 2014-02-10 18:07 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 09日

注目新刊:市田良彦『存在論的政治』航思社、ほか

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存在論的政治――反乱・主体化・階級闘争
市田良彦著
航思社 2014年2月 本体4,200円 四六判上製572頁 ISBN978-4-906738-06-9

帯文より:21世紀の革命的唯物論のために。ネグリ、ランシエール、フーコーなど現代思想の最前線で、そして9.11、リーマンショック、世界各地の反乱、3.11などが生起するただなかで、生の最深部、〈下部構造〉からつむがれる政治哲学。『闘争の思考』以後20年にわたる闘争の軌跡。フランスの雑誌『マルチチュード』掲載の主要論文も所収。

★2月7日取次搬入済の新刊です。1998年から今日に至るまで各紙誌等で発表されてきた論考34編に新規の原稿「まえがき」を加えてまとめたものです。『マルチチュード(ミュルティテュード)』誌に寄稿した主要論文も1編ずつ当時の状況についての付記を添えて著者みずから翻訳されています(翻訳にあたっての加筆はなし)。書き下ろし作であるランシエール論やアルチュセール論や新書(革命論)を除いて、論文をまとめた既刊書はこれまで『闘争の思考』(平凡社、1993年)のみでしたから、今回の新刊でゼロ年代以後の市田さんの執筆活動のほぼ全幅を一望することが叶いました。

★書名に掲げられている「存在論的政治」について、市田さんはまえがきで次のように説明されています。「存在論的政治。すなわち、我々の生のあり方全般を深く拘束すると同時に、種別的にひとつの政治であることを手放さない政治」(1頁)。「存在論的政治は、万人の救済と転生を信じる一個の狂気である」(6頁)。本書の言う「存在論的」という語は、ハイデガーのそれや形而上学のそれではありません。ネグリやランシエール、バディウ、アルチューセールらを参照する唯物論的系譜のそれであり、マルクス-スピノザ主義の遺産を受け継ぐものです。

★同じくまえがきで市田さんはこう書かれています。「政治はドゥルーズの言い方を借用すれば、「愚か者たち idiots/bêtes」の領分である。愚かでなければ入っていけない領域としても、政治は存在論的に決定されている。(・・・)私には、存在論的政治とは愚かな凡庸化に抵抗してドゥルーズやフーコーに革命的潜勢力を回復させる哲学だ、とはまったく思えない。自分は愚かさから逃げることができると考える知者は愚かで浅はかだ、と彼らの哲学を含む存在論的政治が教えているように思えてならない。(・・・)スピノザにとっては、人間が愚かでなければ、理性的であれば、国家など生まれなかったし、必要ないのである」(5-6頁)。本書の第I部は「ネグリのほうへ」と題された卓抜なネグリ論集でもあり、140頁近いボリュームがあります。昨年末には青土社さんから廣瀬純さんの『アントニオ・ネグリ――革命の哲学』が刊行されています。立て続けに意欲的なネグリ論が出たわけですが、これは昨年特に新刊が多かったドゥルーズ論の「傍流」ではないことを強調したいと思います。


加入礼・儀式・秘密結社:神秘の誕生──加入礼の型についての試論
ミルチャ・エリアーデ著 前野佳彦訳
法政大学出版局 2014年1月 本体4,800円 四六判上製414頁 ISBN978-4-588-01006-4

帯文より:古来、人はいかに造られたか。母親との別離、孤独裡の隠棲、肉体的責苦と試練、冥府への下降と天上への上昇、そして死と再生――〈人格を造る〉加入礼儀式とその文化の意味を、諸大陸の事例に基づき探究。とくに未開-東洋の〈内面性〉ある加入礼文化の消滅を問い、成熟システムの欠如を逆照射する。

版元紹介文より:エリアーデ最大のライフ・ワーク――死と加入礼の内的連関の解明。本書は、その未完の研究の核心をなす、未開社会の社会構成における加入礼の基本構造・形態・本質の宗教史的探究である。とくに、未開‐東洋の〈内面性〉を顕在化させた加入礼的文化は、歴史時代には弱まり、今日ではほぼ消滅したことも、本書が提起する重要な問題であり、現代社会の〈成熟〉システムの欠如が逆照射される。

★発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。原書は、Initiation, rites, société secrètes: Naissances mystiques: Essai sur quelques types d'initiation(Gallimard, 1976)です。つまり、1959年に刊行された仏語版の改題第二版です。仏語版の前年に刊行された同書の英語版Birth and Rebirth(Harper, 1958)には既訳があります。堀一郎訳『生と再生――イニシエーションの宗教的意義』(東京大学出版会、1971年)です。英語版と仏語版の違いですが、今回の新刊の巻末に付された長文の訳者解説「〈ディオニュソス的なもの〉と加入礼」によれば、仏語第二版までで「増補改訂された部分は全体の一割程度であり、内容の本質的な変更ではなく、研究の自然な進展に伴うオーソドックスな意味での増補と考えて良い」とのことです。ただし本書は、もともとの講演から英語版、仏語版、仏語第二版へと至るその都度に表題が変更されており、こうした変遷があるのはこの加入礼研究のみだそうです。

★「「加入礼」はすべての真正な人間実存と共存関係にある。その理由は二つある。まず一方では、すべての真正な人間的生は、深層の危機、試練の数々、苦悶、事故の喪失と再獲得を、つまり「死と復活」を内包しているからである。そしてまた他方では、いかに充実した生存においても、すべての実存は、ある瞬間には失敗した実存としての相貌を露呈するものだからである。その際、彼がみずからの過去に対して下す道徳的な判断は問題とならない。むしろそこにあるのは、自己の天職を等閑〔なおざり〕にしてしまった、彼自身の内なる最良の者を裏切ってしまった、という混乱した感情である。こうした全体的な危機の瞬間には、ただ一つの希望のみが救いをもたらしてくれるように思える。もう一度人生を始めからやり直すことができるのだ、という希望のみが。これは要するに、新しい実存、蘇った、完全な、意義深い実存が夢見られる、ということを意味している。これはすべての人間の魂の基底に隠されている茫然たる欲望、宇宙の更新というモデルに従って自分を周期的に更新したいという欲望のことを言っているのではない。この全面的な危機の瞬間に人が夢見、希望することは、一つの決定的かつ全体的な更新を実現することであり、つまりは実存を変容させることのできる「革新〔レノヴァチオ〕」を成就することなのである。そしてすべての真正なる宗教的回心というものはこうした「革新」へと至る」(261-262頁)。

★確かに現代人の多くは宗教的なイニシエーション(加入礼)から縁遠くなっているのかもしれませんが、挫折と立ち直りの繰り返しが人生であるとするならば、エリアーデの研究はとても身近なものに感じられもするのではないでしょうか。なぜならば、人間は今なお、そしてこれからも、そもそも何かしらのイニシエーション(通過儀礼)を人生の節目でその都度必要としているはずだからです。エリアーデの宗教学的アプローチによる儀礼の個別研究は、一昨年文庫化されたアルノルト・ファン・ヘネップの概論『通過儀礼』(岩波文庫、2012年)での人類学的アプローチと併せて、人生に奥行きを与えるものの本質について教えてくれているような気がします。


ポルトガル日記1941-1945
ミルチャ・エリアーデ著 奥山倫明/木下登/宮下克子訳
作品社 2014年1月 本体4,200円 ISBN978-4-86182-464-7

帯文より:戦況の推移によってめまぐるしく変転する故国の運命、最愛の妻の病と死、学問的野心と溢れ出る創作意欲、性的生活の懊悩――。 第二次世界大戦という激動の時代に、歴史の大波に翻弄された東欧の小国ルーマニア、その不世出の一知識人が残した、精神と情念の彷徨の記録。

目次:
エリアーデ『ポルトガル日記』の時代背景(奥山倫明)
ポルトガル日記
 1941年
 1942年
 1943年
 1944年
 1945年
補遺
 I ポルトガルの印象
 II 先王カロル二世のリスボン滞在に関する覚え書き
 III 『サラザールとポルトガル革命』のための序文
 IV コルドバ日記(1944年10月)
あとがき――陶酔と絶望から転生へ(奥山倫明)

★発売済。今月は上述の『加入礼・儀式・秘密結社』と『聖と俗〈新装版〉』(ともに法政大学出版局)のほかに、エリアーデの新刊がもう一冊出ています。それが本書です。エリアーデの日記本としては周知の通りそのものズバリの『エリアーデ日記――旅と思索と人』(上下巻、石井忠厚訳、未來社、1984/1986年)が有名で、1945年9月から1969年2月までの日記を収めています。エリアーデの内省や時評、交友関係をありのままに記してあり、無類に面白いこともまた有名です。今回の『ポルトガル日記』はまさに未來社版『日記』の直前までの戦乱期の出来事を記したもので、まさに待望の出版です。この時期の体験は『エリアーデ回想(下)1937-1960年の回想:冬至の収穫』(石井忠厚訳、未來社、1990年)でも垣間見ることができますが、ディテールにせよ、息遣いにせよ、今回の『ポルトガル日記』はやはり別格のものです。エリアーデが戦争を、故国ルーマニアを、ロシアの脅威をどう見ていたのか、興味深い彼の本音を知ることができます。日本への原爆投下についても書いています。世界史年表と脇に置きながら読むといっそう味わいが増すかもしれません。美麗な造本装丁はミルキィ・イソベさんと林千穂さんによるものです。


文語訳 新約聖書  詩篇付
岩波文庫 2014年1月 本体1,512円 文庫判786頁 ISBN978-4-00-338033-8

カバーソデ紹介文より:「求(もと)めよ、然(さ)らば与(あた)へられん」「狭(せま)き門(もん)より入(い)れ」「太初(はじめ)に言(ことば)あり」…….聖典としての品格、簡潔にしてリズムのある文体で、日本のキリスト教界のみならず、思想、文学などの諸分野にも大きな影響を与えた、日本の聖書翻訳史上、最高の名訳。(解説=鈴木範久)

★発売済。文語訳新約聖書(1917年「大正改訳」版)と、詩篇(1888年明治訳)を併収したものです。総ルビなので、音読もしやすいです。昔から需要はあったはずなのにようやく今になって出てくれた、という印象があるのは、日本聖書協会が発行する小型版(=文庫サイズ)の『文語訳小型新約聖書詩篇附』があるにはあったものの、新刊書店では文庫売場で売られているわけではなかったからでしょうか。宗教書売場のキリスト教書棚よりはいっそう広いであろう雑多な客層が通過する文庫売場で様々な読者との新たな出会いが生まれているに違いありません。ちなみに「共同訳」の新約聖書は講談社学術文庫から1981年に刊行され版を重ねていましたけれど、1987年に「新共同訳」が完成していることもあってか、昨今では店頭で見かけにくくなっている気がします。


統辞構造論――付『言語理論の論理構造』序論
ノーム・チョムスキー著 福井直樹/辻子美保子訳
岩波文庫 2014年1月 本体1,140円 文庫判434頁 ISBN978-4-00-336951-7

カバー紹介文より:生成文法による言語研究の「革命」開始を告げる記念碑的著作。句構造や変換構造などの抽象的な言語学的レベル、言語の一般形式に関する理論、文法の単純性の概念などが、人間言語に対する深く透徹した洞察を与えることを立証する。併録の論考および訳者解説では本書の知的背景を詳細に説明し、その後の展開も概観する。

★発売済。チョムスキーの文庫本は、『生成文法の企て』(福井直樹/辻子美保子訳、岩波現代文庫、2011年8月)に続いてようやく二冊目です。1957年にオランダの出版社から刊行されたSyntactic Structuresの新訳です。底本には2002年の第二版を使用しています(初版と第二版の間に内容上の違いはないとのことです)が、ライトフットによる序論は省略されています。代わりに、『言語理論の論理構造 Logical Structure of Linguistic Theory』(1955年)の序論(1975年)の翻訳と、100頁近い長篇の訳者解説「「生成文法の企て」の原点――『統辞構造論』とその周辺」が収録されています。Syntactic Structuresには既訳書(勇康雄訳『文法の構造』研究社出版、1963年)がありますけれども、今となっては探しにくい古書だっただけに、ありがたいです。『言語理論の論理構造』序論は、本書の共訳者である福井直樹さんによる編訳書『チョムスキー 言語基礎論集』(岩波書店、2012年)にも収録されており、今回の文庫への収録にあたって訳文に「多少の改訂を加えた」とのことです。訳者あとがきには「『統辞構造論』とこの2つの論考〔序論と訳者解説〕を併せて読めば、現代生成文法誕生の事情はほぼ十全に把握することが出来ると思う」と本書の意義について書かれています。
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by urag | 2014-02-09 22:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2014年 02月 06日

写真展「森山大道 終わらない旅 北/南」@沖縄県立美術館、など

弊社出版物の著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

★森山大道さん(写真集:『新宿』『新宿+』『大阪+』『パリ+』『ハワイ』『NOVEMBRE』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『オン・ザ・ロード』『カラー』『モノクローム』)
先月下旬から沖縄県立美術館で写真展「森山大道 終わらない旅 北/南」が行われており、すでに行われたシンポジウム、ポートフォリオレビュー展覧会、ポートフォリオレビュー批評会、森山大道サイン会は盛況裡に終わったと聞いています。今後も展覧会は来月下旬まで行われ、アーティスト・トーク、ギャラリー・トーク、キュレーター・トークなどのイベントが予定されています。ジュンク堂書店那覇店では、3Fエスカレーター横フェア台にて「森山大道フェア」開催中と聞きます。

森山大道 終わらない旅 北/南 Daido Moriyama endless works N/S
会期:2014年1 月23 日(木)~3 月23 日(日)
時間:9:00~18:00(金・土は20:00まで)※展覧会入場は閉館30分前まで
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館、翌日休館)
会場:沖縄県立博物館・美術館 企画ギャラリー1・2
観覧料:一般 800 円(640 円)、高校・大学生 500 円(400 円)、小・中学生 300 円(240 円)
※()内は前売り及び20名以上の団体料金

展覧会概要:沖縄県立博物館・美術館では、2012年から2013年にかけてロンドンの国立現代美術館テート・モダンにおいて巨匠ウイリアム・クラインとの大規模な展覧会を開催し、国際的な注目を集める森山大道(1938-)の個展「森山大道 終わらない旅 北/南」を開催いたします。/森山は1938年に大阪府池田町に生まれ、グラフィックデザイナーを経て、写真家岩宮武二、細江英公らに師事したのち、1964年フリーランスの写真家となりました。1967年『カメラ毎日』に発表した《にっぽん劇場》などで日本写真批評家協会新人賞を受賞し、一躍時代の寵児となります。1968-69年には多木浩二、中平卓馬らによる先鋭的な写真同人誌『プロヴォーグ』に参加し、〈アレ・ブレ・ボケ〉と形容される荒々しい写真表現は、多くの模倣者を生み、さらに極限まで写真表現を突き詰めた問題作『写真よさようなら』(1972年)など、発表する写真集はどれも注目を集めました。/本展では50年にわたり現代写真に圧倒的な影響力を発揮した森山大道の写真の魅力と共に、最新作の「2013沖縄」と、40年前に撮影された「1974沖縄」の対比やそれら南の写真群と北の北海道の写真群の対比など、50年間一貫して路上のスナップ・ショットにこだわり続けた写真群は「写真とは何か?」という根源的な問いを私たちに投げかけます。

展示構成:
1章 起点 1964年――『無言劇』
2章 犬の記憶――『にっぽん劇場写真帖』『シミズイサム』『ヨコスカ』『狩人』『オンザロード』『何かへの旅』ほか 
3章 破壊と創造 1968年-70年代――『provoke』1968-69年、『写真よさようなら』『アクシデント』『COLOR』ほか 
4章 光を求めて 80年代――『光と影』ほか   
5章 終わらない旅 1974年-2013年――『新宿』『NORTHERN』『沖縄』   

主催:沖縄県立博物館・美術館
後援:沖縄県写真協会、沖縄写真連盟、(一財)沖縄観光コンベンションビューロー、NHK沖縄放送局、琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ放送、沖縄ケーブルネットワーク、エフエム沖縄、ラジオ沖縄、沖縄タイムス社、琉球新報社、タイフーンfm
特別協力:沖縄映像センター
協力:Akio Nagasawa Publishing、大和プレス、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、株式会社写真弘社、株式会社フレームマン、札幌宮の森美術館、森山大道写真財団

関連催事:

アーティスト・トーク(本展の当日有効の観覧券が必要です)
日時:3月2日(日)15:00~16:00 森山大道氏
会場:企画ギャラリー内

ギャラリー・トーク(本展の当日有効の観覧券が必要です)
日時:(1)2月8日(土)14:00~15:00 玉城惇博氏
日時:(2)3月9日(日)14:00~15:00 仲里 効氏
会場:企画ギャラリー内

本展担当学芸員によるキュレーター・トーク(本展の当日有効の観覧券が必要です)
日時:2月15日(土)11~12時 新里義和
会場:企画ギャラリー内




★柿並良佑さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
★宮﨑裕助さん(共訳:ド・マン『盲目と洞察』)
岩波書店の月刊誌「思想」2014年第2号(No.1078)で、柿並さんが論考「存在論は政治的か?」を寄稿されています。また、宮﨑さんが書評「限定的ミメーシスから全般的ミメーシスへ──ジャック・デリダ『散種』を読む」を寄せておられます。

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弊社出版物とは異なる話題ですが、業界の知人から来週月曜日に行われるイベントを教えてもらいました。「河合隼雄物語賞・学芸賞」記念講演会として河合隼雄財団主催で行われる、作家・小川洋子さんと、霊長類学者・山極寿一さんの公開対談です。絶賛予約受付中とのことです。

◎公開対談「森に描かれた物語を求めて――ゴリラとヒトが分かち合う物語」

登壇者:小川洋子(作家・河合隼雄物語賞選考委員)、山極寿一(京都大学教授・河合隼雄学芸賞選考委員)
日時:2014年2月10日(月)19時開演 (18時30分開場) 
会場:紀伊國屋サザンシアター(渋谷区千駄ヶ谷5-24-2 タカシマヤタイムズスクエア 紀伊國屋書店新宿南店7F 電話03-5361-3321)   
入場料:1,500円(全席指定)
チケット販売:イープラス(PC・モバイル共通) 
店頭販売:キノチケットカウンター(新宿東口 紀伊國屋書店新宿本店5F/10:00~18:30)
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by urag | 2014-02-06 14:04 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)