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2013年 03月 31日

注目の新刊:ナンシー『眠りの落下』イリス舎、ほか

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眠りの落下
ジャン=リュック・ナンシー(Jean-Luc Nancy, 1940-)著 吉田晴海訳
イリス舎 2013年1月 本体1800円 A5判並製100頁 ISBN978-4-990336-3-7

原書:Tombe de sommeil, Galilée, 2007.

★発売済。奥付では1月刊となっていますが、書店への流通が始まったのは先週あたりからのようです。初版は1000部で、カバーはなく、ペーパーバックの感覚です。市場へのディストリビューションを一手に引き受けているのは「ツバメ出版流通」さん。かのJRCさんから独立した本の目利き川人寧幸さんが昨夏(2012年8月22日)に設立された「芸術、思想、文学を中心とした書籍を取り扱う小取次」です。取り扱っている版元は現在15社ですが、どちらもたいへん個性的な出版社ばかりで、まるで宝石箱のような取次さんです。書店さんへの営業代行も行っておられ、本書『眠りの落下』の書店向け注文書にはこんな宣伝文句が載っていました。

「あなたが眠っているとき、そこで眠っているのは誰なのか? そこは、いったいどこなのか? どのようにしてわれわれは眠るのか。そもそも何が眠っているのか。われわれが眠っているとき、われわれは、何と共に眠っているのか。眠り、...はたして、その問いは可能なのか......ジャン=リュック・ナンシーが不可能な問いをどのように追い詰めて行くのか、彼の足跡を辿りながら、文字通り、迷宮の中へと足を踏み入れて行く、体感する一冊である」。

イリス舎さんは、同舎の公式ウェブサイトの「会社概要」によれば「私たちの会社は、創設されたばかりの出版と翻訳の会社です。フランス語・英語の翻訳のご用命がございましたら、お問い合わせ下さい。場所:東京都立川市」とのこと。『眠りの落下』の奥付では所在地は茨城県結城市となっています。吉田さんによる訳者あとがきから推察するに、吉田さんご自身が出版事業そのものに関わっておられる御様子です。吉田晴海さんはナンシーの『水と火』(現代企画室、2009年)や『世界の創造』(大西雅一郎共訳、現代企画室、2003年12月)、ラクー=ラバルト『メタフラシス』(高橋透との共訳、未來社、2003年10月)などの翻訳を手掛けておられます。『世界の創造』と『メタフラシス』では「吉田はるみ」という記載になっています。肩書は「フランス語翻訳者」で、詩人、作家でもいらっしゃいます。散文集に『青の物語』(新風舎、1997年)があります。

★ISBNから辿ってみると、イリス舎さんは2009年9月に桜さくら『らいふわーく』を刊行されています。これの書名記号が「1」。同年12月に吉田晴海さん自身の詩と散文を収めた『火の言葉』が出版され、これの書名記号が「2」。そして今回のナンシーの訳書が「3」です。なお、イリス舎さんの本は同舎からの直販も可能で、同舎ウェブサイトの「お問い合わせ頁」から申し込めます。メール便の場合は送料無料で、代引きの場合は手数料315円が別途かかるとのことです。


殺す理由――なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか
リチャード・E・ルーベンスタイン(Richard E. Rubenstein, 1938-)著 小沢千重子訳
紀伊國屋書店 2013年3月 本体2,500円 四六判上製352頁 ISBN978-4-314-01106-8

帯文より:愛国心・共同体意識・孤高のヒーロー像・自衛の概念・開戦事由のレトリック――戦争が常態化する国アメリカの歴史から集団暴力が道徳的に正当化されてきた文化・社会的要因を探る。イラク戦争から10年――戦争は「最後の手段」か? ほかに道はないのか?

原書:Reasons to Kill: Why Americans Choose War, Bloomsbury Press, 2010.

目次:
はじめに
第一章 なぜ、私たちは戦争を選ぶのか
第二章 自衛の変質
第三章 悪魔を倒せ――人道的介入と道徳的十字軍
第四章 「愛せよ、しからずんば去れ」――愛国者と反対者
第五章 戦争は最後の手段か? 平和プロセスと国家の名誉
終わりに――より明晰に戦争を考察するための五つの方法
謝辞
訳者あとがき
年表

参考文献
人名索引

★発売済。『中世の覚醒――アリストテレス再発見から知の革命へ』(小沢千重子訳、紀伊國屋書店、2008年)に続く翻訳第二弾です。一見、既訳書の内容からすると今度の新刊は同じ著者が書いたものとは想像できないのですが、ご専門は「国際紛争解決」の研究なので、むしろ今回の本のほうが本職に近いわけです。担当編集者のOさんからいただいたプレスリリースでは本書はこう紹介されています。

「1831年にトクヴィルが描いたアメリカ人像は総じて対外戦争を忌避する「平和愛好者」だった。しかし以後のアメリカは対インディアン闘争や外国への軍事介入などを繰り返し、国外での軍事力の行使は第2次大戦以降だけでも150回にも及ぶ。本書では、国民が開戦を受け容れてきた歴史をたどり、開戦事由の欺瞞を衝くとともに、アメリカ人特有の市民宗教ともいうべき愛国心、共同体意識、孤高のヒーロー像をあぶりだし、さらには反戦運動の系譜から、著者自身の専門である「紛争解決」の歴史・実績へと結ぶ。イラク戦争開戦から10年、アメリカの対外戦争を是認し追随してきた日本で、あらためて読まれるべき硬質なアメリカ論であり戦争論」。

★「アメリカの対外戦争を是認し追随してきた日本で、あらためて読まれるべき」というのが耳に痛いですね。今般日本では近隣諸国との間のいわゆる領土問題がますます熱を帯びてきており、戦争の一歩手前と言ってもおかしくありません。憲法改正と再軍備化によるアメリカからの「自立」への機運が高まる一方、国内での排外主義的勢力の伸長を背景に、アメリカとの更なる同盟強化が期待されているようにも見えます。こんにちまさに私たちが学ぶべきなのは「戦争」の歴史であり、そのメンタリティの分析です。その意味で本書はまさに時宜を得た出版で、軍事大国アメリカの戦争観を知ることができます。

★ルーベンスタインはこう書きます。「実際、日本軍のパール・ハーバー攻撃はただそれだけで、アメリカ政府が10万人以上の日本人と日系アメリカ人を第二次世界大戦が終わるまで各地の収容所に強制収容する充分な動機となった。万一わが国がふたたび好戦的イスラーム主義者の本格的な攻撃を受けるようなことがあったら、国内外の「潜在的なテロリスト」(すなわちムスリム)すべてに対する報復を国民が要求するであろうことは想像にかたくない。アメリカはこうした暴力の連鎖が生じないよう戦争を「科学的に」コントロールできるという考え方は、大きな悲劇を育む不遜なものとしか私には思えない。戦争はけっして、テロリズムに対処する最良の方法ではないのだ」(127頁)。

★この文面のいくつかの固有名詞を「北朝鮮」に変え、「在日朝鮮人」と変えたならば、私たちの国でも起こりうる出来事の相貌がたちまち現れてきます。ルーベンスタインは本書の「結び」で「より明晰に戦争を考察するための五つの方法」を明かしています。「五つの方法」とは「戦争が常態化することを受け入れない」、「自衛について冷静かつ戦略的に考察する」、「「邪悪な敵」と道徳的十字軍について厳しく問いただす」、「愛国的アピールを分析する――国民浄化キャンペーンに抵抗する」、「主戦論者に彼らの利害を開示せよと要求する」、というものです。それぞれの詳細についてはぜひ本書を手にとっていただければと思います。


経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える
ダニエル・コーエン(Daniel Cohen, 1953-)著 林昌宏訳
作品社 2013年3月 本体2,200円 46判上製316頁 ISBN978-4-86182-429-6

帯文より:ヨーロッパを代表する経済学者による、欧州で『銃・病原菌・鉄』を超えるベストセラー! 経済が、文明や社会をいかに創ってきたか? そして21世紀、資本主義と人類はどうなるのか? 世界15カ国で翻訳刊行。

帯文(裏)より:「経済学」というコンパスを使った、世界史・人類文明史への壮大なる旅――。経済が、いかに文明や社会を創ってきたのか? 古代文明の人類初のグローバリゼーションから、現在のグローバル経済へ。1930年代の世界大恐慌から、2009年の世界金融危機へ。古代中華帝国から、現代中国へ……。アダム・スミス、マルサス、リカード、マルクス、シュムペーター、コンドラチェフ、ケインズ、ハイエク……、経済学の巨匠たちとともに、人類の過去と未来を旅し、21世紀世界が直面する課題の答えを探る。「間違いなく21世紀を生きる人類の必読書である。その面白さは、『銃・病原菌・鉄』を超える傑作である!」(「ル・モンド」紙)。

原書:La Prospérité du vice: Une introduction (inquiète) à l'économie, Albin Michel, 2009.

目次:
[序文]人類を支配してきた経済の法則とその教訓――経済学の巨匠たちとともに人類史を旅する
第I部 なぜ西洋が経済発展したのか?――経済成長という“悪徳の栄え”の法則と教訓
 第1章 文明と経済の起源
 第2章 停滞の中世から奇跡の近代へ
 第3章 マルサスの法則
 第4章 解き放たれたプロメーテウス
 第5章 永続する経済成長
第II部 繰り返される経済的繁栄と危機――戦争と平和/競争と恐慌の時代の法則と教訓
 第6章 世界戦争の経済的帰結――ドイツに別の選択肢はあったのか?
 第7章 史上初の世界恐慌
 第8章 高度経済成長は、私たちを幸せにしたのか?
 第9章 福祉国家の誕生と終焉
 第10章 戦争と平和の経済学
第III部 グローバル化/サイバー化する経済と社会――二十一世紀を動かす新たな法則とは?
 第11章 復興する中国とインド
 第12章 歴史の終焉と文明の衝突
 第13章 二十一世紀資本主義とエコロジー
 第14章 新たな世界を襲った金融危機
 第15章 非物質的な資本主義と経済法則
[おわりに]人類史上初となる時代への突入――求められる思考法の転換
訳者あとがき

★発売済。原書名は直訳すると「悪徳の栄え――(不安になる)経済学入門」。著者はエコール・ノルマル・シュペリウールの経済学部教授です。本書は『迷走する資本主義――ポスト産業社会についての3つのレッスン』(林昌宏訳、新泉社、2009年)に続く翻訳第二弾。かつて「朝日新聞」2012年1月18日付朝刊の「オピニオン」欄にはインタビュー記事「経済成長という麻薬」が載っており、その鋭い舌鋒をご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。「訳者あとがき」によれば、著者は本書の構想について訳者にこう話したそうです。「経済理論を紹介しながら人類史を振り返るという『ソフィーの世界』のような本を書いているところなんだ」と。なるほど、本書は経済の視点から世界史をおさらいする上で、勉強し直したい多くの社会人にとって役に立つ入門書となるに違いありません。

★歴史を振り返り、現在の「ニュー・エコノミー」について分析する著者が最後に出す、人類にとって必要な発想の転換は実に明確です。地球の限界を知り、世界が無限ではないことを知ることです。明確ではあるけれども果たしてそれが可能かどうかは著者にとっても私たちにとっても確実ではありません。コーエンの言う「ヨーロッパが18世紀以降にたどってきた道筋を、精神的には逆方向に走破」すること(301頁)という示唆はしかし、けっして反進歩主義でも、後退でもありません。永遠に続くはずのない経済成長、戦争や環境破壊によって無理やり延長させられる偽りの豊かさ、そういったものに私たち現代人は本当は気づいているはずなのです。

★なお、著者の最新著は2012年に刊行された『ホモ・エコノミクス』という本で遠からず翻訳も出るようです。訳者の林さんは「経済成長と人々の幸福観の関係について、ローマ時代から現在の先進国及び新興国にける人々の幸福観を、経済学だけでなく、政治、哲学、宗教、コミュニケーション、テクノロジーを通じて、つぶさに検証している」とのことです。
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by urag | 2013-03-31 23:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 31日

注目の新訳と復刊:バフチン『ドストエフスキーの創作の問題』など

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ドストエフスキーの創作の問題――付:より大胆に可能性を利用せよ
ミハイル・バフチン著 桑野隆訳
平凡社ライブラリー 2013年3月 本体1,500円 HL判並製384頁 ISBN978-4-582-76783-4

帯文より:バフチン・ドストエフスキー論の初志〔オリジナル〕。筆を矯めざるを得なかった増補改訂版(『ドストエフスキーの詩学の問題』)よりも、初版は率直かつ理路鮮明に言語論・ポリフォニー論を語る。バフチン思想の核心部を明らかにする待望の本邦初訳。

カバー裏紹介文より:原語はつねに他者の言葉への応答としてある――独自の言語理論・文学論は、ドストエフスキー作品を場にポリフォニー論という結晶をもった。カーニヴァル論などを加えただけでなく、編集部の要求などにより変更され、『詩学の問題』と改題された増補改訂版ではなく、そのオリジナル版『創作の問題』こそ、バフチンの理論の革新がより率直に鮮明に語られる。待望の初訳!

★発売済。バフチン特有のポリフォニー論やカーニヴァル論が展開されているドストエフスキー論はこれまで、増補改訂版(1963年)が二度翻訳されてきました。今回の新訳は増補改訂版ではなく、初版本(1929年)の本邦初訳になります。初版本にはカーニヴァル論がありません。また、増補改訂版では出版社による書き直し依頼があったため、初版本はバフチンの当初の構想にいっそう近いものだと言えると思います。初版本と増補改訂版の違いについては、桑野先生による「訳者解説」で簡潔にまとめられています。なお、今回の訳書では、1970年に「新世界(ノーヴイ・ミール)」誌に掲載された論文「より大胆に可能性を利用せよ」が付録として訳出されています。

★御参考までに、今回の初版本の初訳をAとし、増補改訂版の翻訳2種、すなわち、新谷敬三郎訳『ドストエフスキー論――創作方法の諸問題』(冬樹社、1968年;第二版1974年)をB、望月哲男・鈴木淳一訳『ドストエフスキーの詩学』(ちくま学芸文庫、1995年)をCとして、目次を以下に比較して掲載します。

【A】序
【B】はしがき
【C】著者より

【A】第一部 ドストエフスキーのポリフォニー小説(問題提起)

【A】第一章 ドストエフスキーの創作の基本的特徴と、批評文献におけるその解明
【B】第一章 ドストエフスキイのポリフォニイ小説と従来の批評
【C】第一章 ドストエフスキーのポリフォニー小説および従来の批評におけるその解釈

【A】第二章 ドストエフスキーにおける主人公
【B】第二章 主人公と作者との関係
【C】第二章 ドストエフスキーの創作における主人公および主人公に対する作者の位置

【A】第三章 ドストエフスキーにおけるイデー
【B】第三章 ドストエフスキイのイデエ
【C】第三章 ドストエフスキーのイデエ

【A】第四章 ドストエフスキーの作品における冒険的プロットの機能
【B】第四章 ジャンル、題材構成上の特徴
【C】第四章 ドストエフスキーの作品のジャンルおよびプロット構成の諸特徴

【A】第二部 ドストエフスキーにおける言葉(文体論の試み)
【B】第五章 ドストエフスキイの言葉
【C】第五章 ドストエフスキーの言葉

【A】第一章 散文の言葉の類型。ドストエフスキーにおける言葉
【B】1 散文の言葉の型とドストエフスキイの言葉
【C】1 散文の言葉の諸タイプ――ドストエフスキーの言葉

【A】第二章 ドストエフスキーの中篇小説における主人公のモノローグ的言葉と語りの言葉
【B】2 中篇小説の主人公の独白の言葉と叙述の言葉
【C】2 ドストエフスキーの中編小説における主人公のモノローグ的言葉と叙述の言葉

【A】第三章 ドストエフスキーの長篇小説における主人公の言葉と語りの言葉
【B】3 長篇小説の主人公の言葉と叙述の言葉
【C】3 ドストエフスキーの長編小説における主人公の言葉と叙述の言葉

【A】第四章 ドストエフスキーにおける対話
【B】4 ドストエフスキイの対話
【C】4 ドストエフスキーの対話

【A】結語
【B】結び
【C】結語

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カント「視霊者の夢」
イマヌエル・カント著 金森誠也訳
講談社学術文庫 2013年3月 本体680円 A6判並製174頁 ISBN978-4-06-292161-9

帯文より:〈心霊現象〉に哲学者が挑む。霊界は空想家がでっち上げた楽園である――。哲学者として「霊魂」への見解を示し、『純粋理性批判』へのステップとなった重要著作を初めて文庫化。解説=三浦雅士

カバー裏紹介文より:理性によって認識できないものは、形而上学の対象になりうるか――。哲学者カントが、同時代の神秘思想家スヴェーデンボリの「視霊現象」を徹底的に検証。当時高い世評を得ていた霊能者へのシニカルかつ鋭利な批判を通して、人間の「霊魂」に対する哲学者としての見解を示す。『純粋理性批判』に至るステップとなった、重要著作。

目次:
訳者まえがき
詳述する前に、きわめてわずかなことしか約束しないまえがき
第一部 独断編
 第一章 好き勝手に解きほぐしたりあるいは断ち切ることができる混乱した形而上学的な糸の結び目
 第二章 霊界との連帯を開くための隠秘哲学の断片
 第三章 反カバラ。霊界との共同体をとりこわそうとする通俗哲学の断片
 第四章 第一部の全考察からの理論的結論
第二部 歴史編
 第一章 それが本当かどうかは読者の皆さんの随意の探究にお委せする一つの物語
 第二章 夢想家の有頂天になった霊界旅行
 第三章 本論文全体の実践的結末
参考資料1 『神秘な天体』(抜粋)――エマニュエル・スヴェーデンボリ
参考資料2 シャルロッテ・フォン・クノープロッホ嬢への手紙――イマヌエル・カント
訳者あとがき
学術文庫版の訳者あとがき
解説 批評家の夢(三浦雅士)

★発売済。奥付前頁の特記によれば本書は「1991年に論創社より刊行された『霊界と哲学の対話――カントとスヴェーデンボリ』(金森誠也編訳)所収の「視霊者の夢」その他を文庫化したもの」とのことです。実際に親本と比べてみると、まず冒頭の「訳者まえがき」は、末尾に署名された日付が文庫版でも親本と同じままであり、本書のイントロとしての大筋は同じなですが、省略や書き直しが見られます。親本ではそのあとに置かれたスヴェーデンボリ『神秘な天体』(抜粋)とカントの「シャルロッテ・フォン・クノープロッホ嬢への手紙」は、文庫版では巻末の参考資料となっています。続いて親本、文庫版ともにカントが1766年に公刊した『形而上学の夢によって解釈された視霊者の夢』の翻訳です。親本ではその後に「同時代人の批評」と題し、約70頁を割いて、15編のテクストが収められています。以下に詳述します。

『形而上学の講義』(抜萃・1) イマヌエル・カント
『形而上学の講義』(抜萃・2) イマヌエル・カント
モーゼス・メンデルスゾーンあての手紙 ヨーハン・ゲオルク・ハーマン
モーゼス・メンデルスゾーンあての手紙・1 イマヌエル・カント
モーゼス・メンデルスゾーンあての手紙・2 イマヌエル・カント
『視霊者の夢』の批評 モーゼス・メンデルスゾーン
『視霊者の夢』の批評 ヨーハン・ゴットフリート・ヘルダー
ホランドあての手紙 ヨーハン・ハインリッヒ・ランベルト
『夢の批評』 コーハン・ゲオルク・ハインリッヒ・フェダー
スヴェーデンボリあての手紙 フリードリッヒ・クリストフ・オエティンガー
「キリストの大司教職についての会話」から フリードリッヒ・クリストフ・オエティンガー
『宗教と全神学への完全な入門』(抜萃) ハインリッヒ・ヴィルヘルム・クレム
イマヌエル・カントへの手紙 ヒエロニムス・ゴットフリート・ヴィルケス
「スヴェーデンボリが夢想家の一人だということはすでにはっきりきまったことなのかどうなのかをしらべる試み 匿名氏
『イマヌエル・カントの生涯と性格の叙述』(抜萃) ルートヴィッヒ・エルンスト・ボロフスキー

★「学術文庫版の訳者あとがき」で金森先生は、「今回は私が前書で訳出した多くの参考資料のうち、最も重要と思われる二件のみを取り上げたため、かえって、本書が、軽快、簡便な読みやすい書物になった」と記されています。むろん、上記の15編の明細を見てがぜん興味が沸いてくる読者もいらっしゃると思いますので、親本はまた別の価値があると言えるでしょう。当時は2000円ぽっきりの本でしたが、現在古書では倍以上の値段がついています。なお、『視霊者の夢』は1922年(大正11年)4月に小川義章訳がロゴス社より「ロゴス叢書」の第一弾(記載通りに書くと第一編)『視霊者の夢(形而上学の夢により説明されたる)』として初訳が刊行されています。この初訳本では1794年の論文「萬有の終局」の翻訳も併録されています。なお、ロゴス叢書では、第二編がニイチェ『反基督――一切價値の轉換』(平山良吉譯、1922年10月)、第三編がクーリー『社會組織』(井上吉次郎譯、1922年11月)、第四編がボロウスキー『イムマヌエル・カントの生涯と性格』(兒玉達童譯、1923年3月)と続きます。

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絶望と確信――20世紀末の芸術と文学のために
グスタフ・ルネ・ホッケ(Gustav René Hocke, 1908-1985)著 種村季弘訳
白水社 2013年3月 本体6,000円 四六判上製446頁 ISBN978-4-560-08303-1

帯文より:危機の時代を超えて。現代マニエリスム論。〈絶望〉と〈確信〉の間で揺れる世界舞台の上で、人間はどのような役を演じるのか。『迷宮としての世界』『文学におけるマニエリスム』に続く、ホッケ・マニエリスム論の総決算ともいうべき警世の書。解説=高山宏

★発売済。「《知的巨人》の選書で贈る、名著復刊と初訳」を謳ったシリーズ「高山宏セレクション〈異貌の人文学〉」の第三弾。巻末の特記によれば本書は「『絶望と確信』(種村季弘訳、朝日出版社、1977年刊)の再刊です。なお、再刊に際して固有名詞の一部修訂、原綴の追加などを行なっています」とのこと。巻末の高山さんの解説は「「不安を持つ能力(ちから)」──マニエリスムの普遍人間学」(405-420頁)。そのなかでこんな予告が明かされています。「生前の氏[種村氏]との様々な口約束のこともあって、畏友原研二氏にお願いして、ホッケに一番近い仕事をしているジョン・ノイバウアー、ホルスト・ブレーデカンプ、エルネスト・グラッシ邦訳計画の重要な一貫としてホッケ・マニエリスム四部作(?!)最後のこの大作[『ネオ・マニエリスム』1975年]の邦訳を進めてもらっているところである」。なんとも待ち遠しいことです。昨今『迷宮としての世界』は岩波文庫で、『文学におけるマニエリスム』は平凡社ライブラリーで再刊されました。今回の『絶望と確信』の再刊で、ホッケの品切本は紀行小説『マグナ・グラエキア』(種村季弘訳、平凡社、1996年)を除き、すべて再刊されたことになります。
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by urag | 2013-03-31 21:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 26日

4月末発売予定新刊:廣瀬純『絶望論――革命的になることについて』

2013年4月30日取次搬入予定 *思想/社会

絶望論――革命的になることについて
廣瀬純著
月曜社 2013年4月 本体1,600円 46判(タテ190ミリ×ヨコ128ミリ)並製224頁 ISBN:978-4-86503-000-6

「絶望を作り出しそれに強いられて逃走線を描出する、革命の不可能性を作り出しそれに強いられて革命的になる、人民の欠如を作り出しそれに強いられて来るべき人民に呼びかける」。創造的に生きるためになぜ《絶望》しなければならないのか? 《革命的になる》とは、どういうことなのか? 気鋭の論客が、ドゥルーズとゴダールを読解しながら、講演形式で問う、いまこの世界に必要なこと。装画=中原昌也

本書より:『絶望論』というタイトルのもとで「革命的になることについて」論じる本書は、デモの無力を産出するこのデモ、おのれの無力を自ら創出するこれらの人々を眼前にして、彼らに触発されて、彼らの無力の力に強いられて、構想され執筆されたものである。本書のすべては、彼らに導かれて次のようなドゥルーズの一節を再読することから始まった。「我々にはひとつのエチカ、ひとつの信が必要なのだ。そう聞いたら愚か者たちは笑うだろう。しかし、我々に必要なのは何か別のものを信じることではなく、この世界を信じること、つまり、愚か者たちもその一部をなしているこの世界を信じることなのだ」。

目次:

ドゥルーズ、革命的になること――不可能性の壁を屹立させ、逃走線を描出せよ
明解な世界に曖昧なフィルムを対峙させよ――ゴダール『中国女』をめぐって  
絶望が個に返されている 対談 緒方正人+廣瀬純  
あとがき  


廣瀬純(ひろせ・じゅん):1971年生まれ、龍谷大准教授。パリ第3大学博士課程中退。専門は映画論、現代思想。著書に、『美味しい料理の哲学』(河出書房新社、2005年)、『闘争の最小回路』(人文書院、2006年)、『シネキャピタル』(洛北出版、2009年)、『蜂起とともに愛がはじまる』(河出書房新社、2012年)。コレクティボ・シトゥアシオネスとの共著に『闘争のアサンブレア』(月曜社、2009年)。訳書にヴィルノ『マルチチュードの文法』(月曜社、2004年)、ネグリ『芸術とマルチチュード』(月曜社、2007年)など。
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by urag | 2013-03-26 11:43 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 25日

近藤和敬さんの連載「真理の生成」が単行本『数学的経験の哲学』に

弊社出版物の著者や訳者の皆さんの最近のご活躍をご紹介します。

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★郷原佳以さん(共訳書:『ブランショ政治論集』)
先月、以下の共訳書を上梓されました。郷原さんは「散種」(461-591頁)を担当されています。目次詳細は、書名のリンク先でご確認いただけます。

散種
ジャック・デリダ著 藤本一勇+立花史+郷原佳以訳
法政大学出版局 2013年2月 本体5,800円 四六判上製652頁 ISBN978-4-588-00989-1

帯文より:初期代表作、待望の全訳。『グラマトロジーについて』『エクリチュールと差異』『哲学の余白』と並ぶデリダの初期代表作、ついに全訳! 〈書物〉の円環を破砕する「書物外」、ロゴスの真理を転覆させるパルマコン(薬=毒)としてのエクリチュール論「プラトンのパルマケイアー」、マラルメの詩学に形而上学の脱構築を見出す「二重の会」、ソレルスのテクスト機械に接ぎ木する「散種」の四篇が織りなす、書物ならざる書物の到来。


★大竹弘二さん(訳書:A・ガルシア・デュットマン『思惟の記憶』、共訳書:A・ガルシア・デュットマン『友愛と敵対』)
今月発売されたカール・シュミット『政治思想論集』の文庫版の巻末に付された解説「カール・シュミットにおける幾つかの思考モチーフ」(189-204頁)を執筆されました。

政治思想論集
カール・シュミット著 服部平治+宮本盛太郎訳
ちくま学芸文庫 2013年3月 本体1,100円 文庫判並製208頁 ISBN978-4-480-09529-9

カバー裏紹介文より:20世紀を揺るがした政治哲学の巨人が、法、権力、国家理性などの基本概念や、自由主義批判、決断理論、例外状態論などの主要テーマに取り組んだ7篇の論考。神も自然も凌駕しつつある現代の人間にとって、権力とはいったい何に由来し、その限界はどこにあるのか? はたしてそれは善なのか、悪なのか? こうした問いの根源に立ち戻り、一人の若者を相手に生の言葉できわめて平明に語った貴重な対話も収録。さらに「政治理論とロマン主義」では、代表的論文「政治的ロマン主義」の核心を凝縮した議論を展開。再解釈が進められるその思想に新たな光をあてる珠玉の論文集。解説=大竹弘二

目次:
「まえがき」にかえて(編訳者)
法・国家・個人――『国家の価値と個人の意義』緒言(1914年、抄訳)
政治理論とロマン主義(1921年)
フリードリヒ・マイネッケの『国家理性の理念』に寄せて(1926年)
ドイツにおける全体国家の発展(1933年)
現代国家の権力状況(1933年)
ナチス法治国(1935年、抄訳)
権力並びに権力者への道についての対話(1954年)
解説「カール・シュミットにおける幾つかの思考モチーフ」(大竹弘二)

※本書は1974年に社会思想社より刊行された『政治思想論集』に収録されたシュミットの6篇の論文を抜き出し、月刊誌「未来」1985年10月号に翻訳掲載されたシュミットの論考「ドイツにおける全体国家の発展」を足して文庫化したものです。社会思想社の親本に収録されていた二篇のシュミット論、ハンス・クルパ「カール・シュミットの「政治的なるもの」の理論」と、杉本幹夫「カール・シュミットにおける規範主義と決定主義」は再録されていません。

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★西山雄二さん(共訳書:『ブランショ政治論集』、デリダ『条件なき大学』)
先月刊行された『NARASIA Q』第2号(特集=ラーニング・タイフーン――大学の風・文化の風)に西山さんへのインタヴュー「越境する「学びの場」」(16-20頁)が掲載されています。また今月、編著書『人文学と制度』を上梓されました。

人文学と制度
西山雄二編
未來社 2013年3月 本体3,200円 四六判並製422頁 ISBN978-4-624-01190-1

帯文より:人文学の〈制度/場〉への問い。学問が有意性・適切性の審級にさらされ、経済主義的論理への応答を求められる現代において、世界の人文学者はなにを考え、いかなる未来を描くのか。社会的制度としての大学を根源的に問い、さらなる哲学の実践を提示する充実の論集。

※目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。本書は西山さんが2009年に編まれた『哲学と大学』(未來社)の続篇になるとのことです。『人文学と制度』では西山さんは序論「人文学と制度」(7-40頁)、第二部「哲学と大学」に収められた論考「哲学への権利と制度への愛」(280-305頁)、第三部「人文学の研究教育制度」に収められた紹介記事「亡命大学――ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ」(379-382)と、同じく第三部に収められた宮崎裕助さんとの共同記事「哲学の危機と抵抗――イギリス・ミドルセックス大学哲学科」(406-409頁)の執筆も担当されています。

※『NARASIA Q』は奈良県が年4回発行する「東アジア情報誌」で、雑誌コードやISBNはなく、価格表示もないことから、純粋な広報誌のようです。企画編集は編集工学研究所で、総合監修は松岡正剛さん、制作は丸善出版と記載されています。


★宮崎裕助さん(共訳書:ド・マン『盲目と洞察』)
宮崎さんは上述書『人文学と制度』の第一部「人文学と制度」に「ヒューマニズムなきヒューマニティーズ――サイード、フーコー、人文学のディアスポラ」(43-69頁)という論考を寄せておられるほか、前述の通り、西山雄二さんとの共同記事「哲学の危機と抵抗――イギリス・ミドルセックス大学哲学科」を執筆されています。また、同書のデュットマンさんの論文「婉曲語法、大学、不服従」の翻訳も手掛けられています。


★アレクサンダー・ガルシア・デュットマンさん(著書:『友愛と敵対』『思惟の記憶』)
完全版が未発表だった論考「婉曲語法、大学、不服従」(261-279頁)が、宮崎裕助さんの翻訳で、上述書『人文学と制度』の第二部「哲学と大学」に収録されています。また、宮崎=西山共同記事「哲学の危機と抵抗――イギリス・ミドルセックス大学哲学科」内ではデュットマンさんが2010年5月19日にICA(インスティテュート・オヴ・コンテンポラリー・アーツ)で行われた抗議イベント「誰が哲学を恐れているのか」での発表が引用され紹介されています。


★近藤和敬さん(著書:『構造と生成(I)カヴァイエス研究』)
月刊誌「現代思想」での連載「真理の生成」が単行本化されました。

数学的経験の哲学――エピステモロジーの冒険
近藤和敬著
青土社 2013年3月刊 本体2,800円 四六判上製446頁 ISBN978-4-7917-6692-5

帯文より:問題を解くことだけが数学なのか? 現代数学の核心に見出される生命の創造的な力。 そして、そこからさらに非生命までをも包含する自然・宇宙の次元へ――。いまふたたび脚光をあびる「エピステモロジー」(科学認識論)が、ドゥルーズらの「内在の哲学」と接続される。人間知性の根源をめぐって、まったくあたらしい世界観を切り開く、注目の俊英による哲学の旅。

※目次詳細はこちらでご覧いただけます。近藤さんの翻訳によるジャン・カヴァイエス『論理学と学知の理論について』は目下編集作業中です。
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by urag | 2013-03-25 19:03 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 24日

注目の新刊と既刊:ニールセン『オープンサイエンス革命』ほか

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オープンサイエンス革命
マイケル・ニールセン(Michael Nielsen, 1974-)著  高橋洋訳
紀伊國屋書店 2013年3月 本体2,200円 46判上製400頁 ISBN978-4-314-01104-4

帯文より:チェスの王者vsオンライン集合知、ギャラクシー・ズー、ポリマス・プロジェクト、フォールド・イット、リナックス、ウィキペディア、学術論文のオープンアクセス、ヒトゲノムプロジェクト……全世界の知が結集・共有され、発展に向かう――インターネットの出現で科学の営みは劇的に変わりつつある。オンラインネットワークを基盤とした新時代の科学へのマニフェスト。Open science now!

帯文(裏)より:
◎チェスの王者がネット上に集まったアマチュアたちと戦った「カスパロフ vs ワールド」 
◎アマチュア天文家たちが未知の銀河系調査に携わることができる「ギャラクシー・ズー」 
◎数学者たちがオンラインで協力して問題解決に挑む「ポリマス・プロジェクト」 
◎パズルゲーム愛好家たちがたんぱく質の折りたたみ構造を解析する「フォールド・イット」 
◎リナックス、ウィキペディア、グーグル・インフルトレンド、学術論文のオープンアクセス化、ヒトゲノムプロジェクトなど、豊富な具体例を挙げながら、現状の科学の問題点や、オンライン上で協力して科学の問題を解決する「オープンサイエンス」実現への課題を解説し、その将来を展望する。

本書への評価:
「科学の進展に注目し続けてきた著者は、インターネットを活用した新たなタイプの科学を概観するとともに、今後の変化についての洞察に満ちたアイデアを提示した。読み物としておもしろく、かつ示唆に富んだ一冊だ」(カール・ジンマー:『進化――生命のたどる道』著者)。
「本書はネットワークがいかに科学の発見方法を革新するかについて解説したものだ。手放しで推薦できる」(タイラー・コーエン:『大停滞』著者)。

原書:Reinventing Discovery: The New Era of Networked Science, Princeton University Press, 2011.

目次:
第1章 発見を再び発明する
【第1部】集合知の有効活用
 第2章 オンラインツールは私たちを賢くする
 第3章 専門家の注意を効率良く誘導する
 第4章 オンラインコラボレーションの成功条件
 第5章 集合知の可能性と限界
【第2部】ネットワーク化された科学
 第6章 世界中の知を掘り起こす
 第7章 科学の民主化
 第8章 オープンサイエンスの課題
 第9章 オープンサイエンスの必要性
補足説明――ポリマス・プロジェクトによって解決された課題
推薦図書と関連情報――さらにオープンサイエンスを考えるために
謝辞/訳者あとがき/参考文献/原注/索引

★今週水曜日、2013年3月27日取次搬入の新刊です。著者のマイケル・ニールセン(Michael Nielsen, 1974-)は、アメリカの理論物理学者であり、プログラマー。量子コンピュータ研究のパイオニアであり、量子テレポーテーションの実験を最初に行なった研究者の一人。かのロスアラモス研究所に在籍したこともあるそうです。既訳書にアンザック・チュアン(チャンとも)との共著『量子コンピュータと量子通信』(全三巻、木村達也訳、オーム社、2004-2005年)があります。そんな著者の現在の研究テーマである「オープンサイエンス」について、これまでの数々の成功例や失敗例の歴史をまとめ、未来を展望したのが本書です。

★訳者あとがきの言葉を借りると本書は、「1990年代以来急激な成長を遂げているインターネットを基盤とするオンライン科学プロジェクトの発展によって、技術的、制度的な面で、科学がどのように変わりつつあるかが解説」されています。各章で扱われるその発展の鍵とは、まず第2章と第3章では「オンラインプロジェクトに参加する不特定のメンバーの注意と専門知識を、集合知として活用できるよう効率よく誘導する「注意のアーキテクチャー」の構築」です。第4章は「モジュール化、再利用など、成功したオンラインコラボレーションに共通してみられるパターン」。第5章では「コラボレーションが成功する条件としての共有プラクシス」。第6章では「データのオープン化(「データウェブ」の実現)、およびそれにともなって発生する厖大なオンラインデータから意味を掘り起こす「データドリブン・インテリジェンス」の構築」。第7章では「科学の民主化」。第8章と第9章では「オープン化を妨げている現行制度(発表した論文の数を基準に研究者の業績を評価するあり方など)をどう変えていくべきかという実践的な問題」が書かれています。なお、著者による2011年3月のTEDx講演「Open science now!」も目下の彼の研究テーマである「オープンサイエンス」について語ったものです。

★特に第8章と第9章で扱われている「オープン化を妨げる現行制度の障壁」は、出版人にとっても大きな問題で、一業界の問題という以上の政治的転換が必要だと思われてなりません。オンラインネットワークの恩恵を日々感じてきた出版人に何ができるのか、可能性が大きいだけに、本書への興味は尽きません。

★編集担当者はIさん。紀伊國屋書店新宿本店で人文書を長く扱われた後に出版部に移られ、主に科学系の読みもので注目すべき新刊を連発してきた方です。先月ちょうど、西垣通さんの『集合知とは何か――ネット時代の「知」のゆくえ』(中公新書、2013年2月)が発売されたばかりなので、本書は科学書売場だけでなく、人文書売場でも話題を呼びそうです。Iさんからご推薦のあった本書の関連書のリストを下段に掲げます。

◎『オープンサイエンス革命』関連書

集合知とは何か――ネット時代の「知」のゆくえ』西垣通著
みんな集まれ!――ネットワークが世界を動かす』クレイ・シャーキー著、岩下慶一訳
「みんなの意見」は案外正しい』ジェームズ・スロウィッキー著、小高尚子訳
CODE version 2.0』ローレンス・レッシグ著、山形浩生訳
Free culture――いかに巨大メディアが法をつかって創造性や文化をコントロールするか』ローレンス・レッシグ著、山形浩生訳
フリーソフトウェアと自由な社会――Richard M. Stallmanエッセイ集』リチャード・ストールマン著、長尾高弘訳
ウィキペディア・レボリューション――史上最大の百科事典はいかにして生まれたか』アンドリュー・リー著、千葉敏生訳
ウェブ進化論――本当の大変化はこれから始まる』梅田望夫著
ウェブで学ぶ――オープンエデュケーションと知の革命』梅田望夫著

★ところで3月28日(木)午前10時に、紀伊國屋書店のインターネットサービス「BookWeb」、「BookWebPlus」が統合されて、新サービス「紀伊國屋書店ウェブストア」が開始されますね。個人的にはかつて同チェーンのリアル店舗全店の在庫状況が商品の単品ページで一望できるようなかつての仕様がぜひ復活してほしいです。M&J同様に、それによってリアル店舗の在庫を無駄なく活用できるはずですから。店舗ごとにしか在庫を調べられないのは、まったくのナンセンスなんだと私は何度でも言いたいです。


人間理解からの教育
ルドルフ・シュタイナー著 西川隆範訳
ちくま学芸文庫 2013年3月 本体1,200円 文庫判並製288頁 ISBN978-4-480-09531-2

帯文より:みずみずしい心を育む、シュタイナー教育の知恵と実践。

カバー裏紹介文より:子どもの丈夫な身体と、みずみずしい心と、明晰な頭脳を育てよう――シュタイナーの教育では、人間の一生全体を視野に入れ、子どもの自然な成長に沿って、それにふさわしい能力を伸ばそうとする。そして、自分たちの目標が実現できるように手助けする。本書はシュタイナーが独自の教育について語った最期の教育講座の講義録。子どもたちの教育で、最も重要なことが、短くわかりやすくまとめられており、シュタイナー・カレッジの教育養成コースで最初に読むべき一冊として推薦されている。子どもたちの未来への歩みの可能性を提示する、シュタイナー教育論のすばらしい入門書。解説=子安美智子

★発売済。親本は1996年、筑摩書房刊。シュタイナーの邦訳書はたくさんありますが、文庫で読めるのはちくま学芸文庫とちくま文庫だけ。『人間理解からの教育』は11冊目の文庫です。本書は1924年の夏の講義録で、イギリスにシュタイナー学校を設立する人々のために行われたものです。ごく簡単にですが、シュタイナーならではのオイリュトミーについても位置付けがなされています。訳者あとがきによれば、本書は「シュタイナーがおこなった最期の教育講座であり、シュタイナー教育の全体像が具体的かつ平明に述べられているので、シュタイナー・カレッジ(アメリカ)の教育養成コースでは本書を最初に読むべき一冊として推薦している」とのことです。なお、解説者の子安美智子さんはかつて『ミュンヘンの小学生』(中公新書、1975年)で、シュタイナー学校を紹介されています。

◎文庫で読むシュタイナー
1998年01月『神秘学概論』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2000年07月『神智学』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2001年10月『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2002年07月『自由の哲学』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2004年07月『オカルト生理学』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2004年12月『魂のこよみ』高橋巖訳、ちくま文庫
2005年05月『治療教育講義』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2006年08月『シュタイナーの死者の書』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2007年10月『人智学・心智学・霊智学』高橋巖訳、ちくま学芸文庫
2010年10月『シュタイナー経済学講座――国民経済から世界経済へ』西川隆範訳、ちくま学芸文庫
2013年03月『人間理解からの教育』西川隆範訳、ちくま学芸文庫

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完訳 日本奥地紀行4 東京―関西―伊勢 日本の国政
イザベラ・バード著 金坂清則訳注
東洋文庫 2013年3月 本体3,200円 全書判上製448頁 ISBN978-4-582-80833-9

帯文より:北海道から東京に戻り、バードは今度は関西・伊勢へ。簡略本で省かれた重要な部分。東京、伊勢神宮、神道に関する覚え書3篇を含む。総索引を付す。従来の読みをあらためる訳注書、全4巻完結。

★まもなく発売。完訳にして訳注の充実により、決定版と呼ぶにふさわしい新訳の完結です。訳者あとがきでは、先行する時岡訳について「省いてはならない省略を行っているため、原著二巻本の全容を知ることができないし、少なくともこの旅行記の翻訳にあっては不可欠な「記述の綿密な裏付け作業」を欠くために、バードが正確を旨として記していることが読者に伝わってこないどころか不正確になっている」と惜しんでおられます。また、自らの新訳については「旅行記を読むとは、その基になった旅を読み、旅する人を読み、旅した場所・地域を読み、旅した時代を読むことである、という自説に立脚し、読者が明確に理解できる訳文にしようとし、そのためにしかるべき訳注を付した意義だけは認められると考える」(427頁)と述懐されています。その徹底した「読む」姿勢に学ぶならば、本書は訳注の隅々にまで目を通し、読む者もまたあらためてバードの旅程の全体像と細部に想いを馳せることが必要かと思います。


共同研究 転向6 戦後篇 下
思想の科学研究会編
東洋文庫 本体3,200円 全書判上製490頁 ISBN978-4-582-80832-2

帯文より:ポスト「戦後」の時代は「転向」を超える自由と変革の思想を生み出せるのか。転向論をめぐる共同討議、人物略伝、年表、文献解題などを完備し、全6巻完結。

★まもなく発売。全6巻の完結です。第1巻が刊行されたのは2012年2月でした。「3.11」を境にして、日本の思想状況は政治の変遷の中でいよいよ明瞭化を余儀なくされており、知識人は淘汰されつつあるように見えます。今後はますます保守も革新も自らの透明化=公共化を目指すことになり、目下進行しつつある太平洋極東地域をめぐるすさまじい冷戦(軍事活動、資源戦争、領土紛争)のプレッシャーから、その「現実」に対して何かしらの諜報論や防衛論を有することなしに平和を語ることはいっそう困難になるでしょう。ネットに氾濫する様々な情報も含めたオープン・ソース・インテリジェンスの資質は、知識人のみならず国民一般にすら必要とされる時代が来ています。ラディカルな理想から撤退し「転向」を余儀なくされる事態は、いままさに現代社会でも進行していることです。〔理想から〕撤退するか、〔理想に〕引き籠るか、の二択ではない反戦論が可能なのかどうか、私たちは歴史から、「転向」論全6巻から、学び直さねばならないと思います。

★東洋文庫の次回配本は2013年4月刊、『新訳 ラーマーヤナ』第5巻です。
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by urag | 2013-03-24 23:37 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 19日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2013年3月21日(木)オープン
アンジェビュロー丸の内店:??坪
東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE 4F
帳合は日販。弊社へのご発注は芸術書と文芸書を少々。まもなく開店のKITTEでは同フロアに大阪屋さんの子会社「リーディングスタイル」の初出店のブックカフェ「マルノウチリーディングスタイル」(150坪、うち書籍40坪)さんもオープンされるので、アンジェさんは雑貨に特化するのかと思いきや、書籍も少々扱われるご様子です。若干かぶりますね。


2013年4月1日(月)リニューアルオープン
京都大学生協ブックセンタールネ:図書100坪、その他はレンタルセルなど。
京都府京都市左京区吉田泉殿町 京都大学内 西部会館
帳合は日販。弊社へのご発注は人文書を少々。2012年8月から今月いっぱいまで耐震工事のため仮店舗での営業だったルネがリニューアルします。以前は150坪でしたが、リニューアル後は100坪。大学生協としては東大生協駒場書籍部や本郷書籍部と並んで人文書が売れる店舗で、縮小が残念ではあるものの、活気が戻ると良いなと思います。


2013年4月18日(木)オープン
大垣書店神戸ハーバーランドumie店:650坪(図書460坪、その他はAVセル、カフェ、雑貨など)
兵庫県神戸市中央区東川崎長1丁目 umie NORTH MALL 5F
トーハン帳合。弊社へのご発注は人文書少々。JR神戸駅の東側(神戸港側)に位置する観光地「神戸ハーバーランド」が内の「Ha・Re」「キャナルガーデン」「モザイク」などが大型ショッピングセンター「umie」として来月リニューアルし、その北モール(旧Ha・Re)の5階に出店。現「モザイクガーデン」は全国で4カ所目となる「アンパンマン子どもミュージアム」に生まれ変わり。ファミリー層の集客が期待できるとのことです。大垣書店さんの出品依頼状では、27店舗目の支店であること、「書籍、CD、雑貨販売とカフェスペースとの融合で、店舗コンセプトの「ミナトで過ごす家族の時間、やすらぎの空間を掲げ、従来の書店とは違う売場を演出」するとのことです。


+++

一方閉店情報です。流水書房青山店さんが昨年末で閉店されていたことに遅まきながら先月気づきました。文芸書の目利きだったAさんは今どちらにいらっしゃるのでしょう。
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by urag | 2013-03-19 15:28 | 販売情報 | Trackback | Comments(2)
2013年 03月 17日

注目新刊と既刊:「imago」誌三たびの復刊はフランクル特集

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現代思想 2013年4月臨時増刊号 imago 総特集=ヴィクトール・E・フランクル――それでも人生にイエスと言うために
青土社 2013年3月 本体1,429円 A5判並製262頁 ISBN978-4-7917-1259-5

★明日18日発売。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。2011年9月臨時増刊号「東日本大震災と 〈こころ〉 のゆくえ」や、2012年12月臨時増刊号「いじめ」などで幾度となく緊急復刊されてきた「imago」誌ですが、今回は「緊急復刊」の文字はありません。東日本大震災のあとにフランクルがいっそう読まれるようになったと聞きますが、それを受けて、大震災2周年のために企画されたものかと推察します。フランクルの新訳は「実存分析と時代の問題」(1946年12月の講演)、「山の体験と意味の経験」(1987年の講演)、「意味喪失の時代における教育の使命」(1969年、國學院大学での講演)の三本です。討議は三本収録されています。池田香代子×姜尚中「フランクルから現代を問い直す」、諸富祥彦×森川すいめい「絶望した魂に届く言葉とは」、入江杏×若松英輔「悲しみの彼方にあるもの――フランクルの言葉と思想」。

★「現代思想」4月号は特集「就活のリアル」で今月27日発売予定。5月増刊号は総特集「東松照明(仮)」で4月12日発売予定とのことです。


現代デザイン事典 2013年版 
勝井三雄+田中一光+向井周太郎=監修 伊東順二+柏木博=編集委員
平凡社 2013年3月 本体3,400円 B5変型判並製312頁 ISBN978-4-582-12932-8

帯文より:エキスパートによる〈思考〉と〈実践〉。特集「エネルギーシフト」。思考を変え、行動を変え、生活を変えるデザイン。

帯文(裏)より:デザイン25分野800項目を収録。第一線で活躍中のクリエイター70余名による体験的・実践的な記述。【巻頭特集】エネルギーシフト/【クローズアップ】デザインの歴史から現代的課題まで11本/【資料】デザイン賞受賞作品の紹介、デザイン人名録、ブックガイド、学校案内など最新の基本情報を網羅/【図版】カラー650点。

★発売済。文理をまたぐ基幹的な知として、また、その知を産業と制度と都市の構造設計と分かつことなく把握する包括的な技術=工学として、長い年月をかけて自らを革新してきた一大分野「デザイン」。デザインを抜きにして私たちの生活も社会も考えることはできません。よって、あらゆる書棚にはその分野の根本となる原論=設計図=アーキテクチャとしての「デザイン」書が存在しなければならないし、系統樹のようにその「デザイン」の幹から様々な学問や技術の枝葉末節が派生していくのであれば、デザインのデザイン、つまり、原デザインとでも言うべき次元がなければなりません。この原デザインの形態学〔モルフォロジー〕を動かすのが理知〔ヌース〕であれ、自然であれ、神であれ、この源流から全方位へと放射状に書棚は展開するのであって、帰納的に遡及した先に「動かすもの」もしくはデミウルゴスが中心において擬制的に発見されるのではありません。なぜならデミウルゴスは球体全体に充満しているからです。汎神論もしくはプレーローマ。書店は系統樹の姿を模してもいいはずで、あるいは放射状のパッサージュを内部に抱える球体であってもよく、DNAのように二重螺旋の円環、大蛇ウロボロスでもあってもいいわけです。

★私たちは無意識のうちにデザインの周囲をくるくる回ったり横切ったりします。『現代デザイン事典』は現代人の身体と知覚と生を下支えする情報インフラにおける転位と運動を測量するもので、ある意味でこれ以上に拡張効果を持つ「必読書」は存在しないのです。


キャプテン・クック――世紀の大航海者
フランク・マクリン著 日暮雅通訳
東洋書林 2013年3月 本体4,500円 A5判上製592頁 ISBN978-4-88721-809-3

帯文より:貴族社会を横目に最新科学を呑み込み、大洋を経巡り、陸を測り、憑かれたように「領」を規定しつづけた海の男。ヨーロソ! 地球3周に船出した、烈々たる彷徨者の伝記!!

カバーソデ紹介文より:厳然とした階級社会のなか、腕と才能のみを頼りに名高い探検家へと駆け上がったキャプテン・ジェイムズ・クックの決定的評伝。極貧の生い立ちと徒弟時代、海軍測量士として頭角を現した後の二度にわたる世界周航でつかんだ栄光、博物学の偉人たちとの邂逅と反目、そして三度目の航海で迎える酷薄な最期までの五十年を、一個の十八世紀人の細密な肖像として圧倒的ボリュームでつづる。

原書:Captain Cook: Master of the Seas, Yale University Press, 2011.

目次:
第1章 ヨークシャーの徒弟
第2章 七年戦争
第3章 ニューファンドランド島の地図製作
第4章 太平洋での挑戦
第5章 タヒチとの初めての接触
第6章 快楽(キュテラ)の島
第7章 オーストラレイシアでの苦難
第8章 故国へ向かって
第9章 南極大陸
第10章 トンガ人とマオリ人
第11章 太平洋の制覇
第12章 失われた地平線――南方大陸
第13章 最後の航海
第14章 最後のタヒチ
第15章 幻想を追って――北西航路
第16章 ハワイの悪夢
第17章 ケアラケクア浜の悲劇
終わりに
附記
訳者あとがき
原注
索引

★発売済。イギリス海軍の士官で地図作製者のジェームズ・クック(James Cook, 1728年10月27日~1779年2月14日)の名前を知らない人はおそらくいないだろうと思います。彼の航海日誌は『クック 太平洋探検』(全6巻、岩波文庫、2004~2005年)で読むことができますし、クックの名を冠した本は様々あるのですが、本格的な伝記となると類書はさほど多くはないようです。航海日誌の編纂者であるJ・C・ビーグルホールによる大著『キャプテン ジェイムス・クックの生涯』(佐藤皓三訳、成文堂書店、1998年)がこれまでクック伝の定番として知られてきました。今回のマクリン本の訳者によれば、長い年月を経て様々な研究書が出たことを踏まえて「さらに生き生きとした筆致で、資料や証拠、クックのキャラクターをさらに深く読みこんでいる」と評判なのが本書『キャプテン・クック』なのだそうです。ナポレオンやユングなどの伝記を手掛けてきたマクリンの描写力は確かで、映像的に彷彿とさせる見事なものです。なお、似た名前の著者アリステア・マクリーンに『キャプテン・クックの航海』(越智道雄訳、早川書房、1982年)という本があって、こちらは小説です。


新約聖書・ヘレニズム 原典資料集
大貫隆+筒井賢治=編訳
東京大学出版会 2013年2月 本体3,600円 A5判並製368頁 ISBN978-4-13-012450-8

版元紹介文より:新約聖書の記述を、その背景をなすヘレニズム世界の一次資料に照らし合わせることで、社会史・宗教史・文化史の観点からより深く理解できる資料集。新約とその他の文献・一次資料の関係性、あるいは新約の独自性を理解するために選ばれた176の事例を紹介。近年めざましく進んだヘレニズム文化圏に関する原典資料邦訳の成果を取り入れるとともに、『エピダウロス碑文集』『ギリシア語魔術パピルス』『コプト語魔術パピルス』など未邦訳の碑文・文書からも、多くの記述を本邦初の原典訳で収録。詳細な出典一覧、著者・著作解説を巻末に収録し、文献レファレンス用途にも対応した、聖書や西洋古代世界を具体的に知るための絶好の一冊。

★発売済。「新約の記述を、関連するヘレニズムの原典と照らし合わせる」という地道な作業の成果が本書です。これまで同出版会では『西洋古代史料集』(古山正人ほか編訳、1987年;第2版2002年)や、『哲学 原典資料集』(山本巍ほか著、1993年)といった資料集を刊行されており、いずれもロングセラーとなっています。先行する類書である『原典新約時代史――ギリシヤ、ローマ、エジプト、ユダヤの史料による』(蛭沼寿雄ほか著、山本書店、1976年)はすでに絶版のため、こうした「まとめ本」が出たのはありがたいことです。既訳書からの引用だけでなく新訳もあるようで、重訳ながらマンダ教の聖典『ギンザー』(大貫隆さんの『グノーシスの神話』でもおなじみ)や、ユダヤ教の『バビロニア・タルムード』の断片も読めます。ところでライブや三貴より出版されてきたタルムードの原典訳がいつか市販版も出て欲しいと思っているのは私の妄想に過ぎないでしょうか。

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by urag | 2013-03-17 18:24 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 15日

4月上旬発売予定:『表象07:アニメーションのマルチ・ユニヴァース』

2013年4月上旬発売予定

表象07 アニメーションのマルチ・ユニヴァース
表象文化論学会=発行 月曜社=発売
2013年4月 本体1,800円 A5判並製312頁 ISBN978-4-901477-67-3

近年ますますプレゼンスを高めつつある商業アニメーションを再考するとともに、非商業作品が切り拓いてきた地平を紹介。世界各地で様々なかたちで勃興し、それぞれに必然性を持ちつつも互いに交わることのない複数の小宇宙として存在するアニメーションの史的生成を、エイゼンシュテインのディズニー論からこんにちに至る系譜の中で読み解く。

【巻頭言】
翻訳の人類学、事始め(岡田温司)

【特集】アニメーションのマルチ・ユニヴァース
イントロダクション(土居伸彰)
対談『アニメ・マシーン』から考える(トマス・ラマール+石岡良二/門林岳史=司会)
インタビュー「交わらぬはずの視線が交わるとき……」(ユーリ・ノルシュテイン/土居伸彰=聞き手)
アメリカの初期アニメイティッド・カートゥーンの「立体感」(細馬宏通)
アニメーションの定義――ノーマン・マクラレンからの手紙(ジョルジュ・シフィアノスによるイントロダクションつき)(土居伸彰=訳)
ロトショップの文脈――コンピュータによるロトスコーピングとアニメーション美学(ポール・ワード/土居伸彰=訳)
ミッキーマウス、ユートピア、ヴァルター・ベンヤミン(『ハリウッド・フラットランズ――アニメーション、批評理論、アヴァンギャルド』より)(エスター・レスリー/城丸美香=訳)
ディズニー(抄訳)(セルゲイ・エイゼンシュテイン/今井隆介=訳)

【論文】
「動き」の美学――小津安二郎に対するエルンスト・ルビッチの影響(滝浪佑紀)
テクスト、情動、動物性――ジャン・ルノワールとルイ・ジュヴェの演技論をめぐって(角井誠)
象形文字としての身体――マラルメ、ニジンスキー、アルトーにおける運動イメージ概念をめぐって(堀切克洋)
〈絵筆を持つ私〉と〈絵画芸術〉の表象――一六世紀イタリアにおけるS・アングィッソーラのセルフ・イメージをめぐって(喜多村明里)
誰が破壊、修復、展示を恐れるのか?――バーネット・ニューマン論争とヴァンダリズム(田口かおり)

【書評】
無限に可塑的なる生――岡本源太『ジョルダーノ・ブルーノの哲学――生の多様性へ』書評(星野太)
絵画と近代化の徴――石谷治寛『幻視とレアリスム――クールベからピサロへ、近代フランス絵画の再考』書評(飛嶋隆信)
絵画―書物―文学 ブルーノ・シュルツを蘇らせるために――加藤有子『ブルーノ・シュルツ――目から手へ』書評(沼野充義)
複数形の時間――阿部賢一『複数形のプラハ』書評(田中純)
非-メロドラマ的力――御園生涼子『映画と国民国家――1930年代松竹メロドラマ映画』書評(木下千花)
「弁証法なき啓蒙」の賭け――大橋完太郎『ディドロの唯物論――群れと変容の哲学』書評(岡田温司)
テクストとしての廃墟としての建築――小澤京子『都市の解剖学』書評(高山宏)
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by urag | 2013-03-15 13:45 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 11日

一年前の月曜社とシリーズ刊行予定

一年前の月曜社の「直近三カ月」の出版物は以下の通りでした。

◎12年2月17日発売:上村忠男編訳『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』本体3,800円、シリーズ「古典転生」第6回配本(本巻6)。

◎12年1月24日発売:ロドルフ・ガシェ『いまだない世界を求めて』本体3,000円、叢書「エクリチュールの冒険」第2回配本。
紹介記事1⇒ナガタ氏記名記事「芸術作品の根源とは何なのか」(「本が好き!BOOKニュース」2012年2月16日付)

◎11年12月15日発売:近藤和敬『構造と生成 I カヴァイエス研究』本体3,600円、シリーズ「古典転生」第5回配本(本巻4)。
短評1⇒金森修氏選評(「みすず」2012年1-2月合併号「読書アンケート」)
短評2⇒十川幸司氏選評(「みすず」2012年1-2月合併号「読書アンケート」)
書評1⇒福島聡氏書評(「書標」2012年2月号)
書評2⇒森元斎氏書評「哲学のお化け図鑑に名前が載る日」(「図書新聞」2012年3月3日号)
書評3⇒原田雅樹氏書評「日本初の研究書――「概念の哲学」を導入した思想家」(「週刊読書人」2012年4月13日号)

シリーズ「古典転生」の次回配本は、ジャン・カヴァイエス『論理学と学知の理論』近藤和敬訳、の予定です。同書は『構造と生成』の第II巻になります。叢書「エクリチュールの冒険」の次回配本は、エルンスト・ユンガー『労働者』川合全弘訳、の予定です。「芸術論叢書」の次回配本は、リピット水田堯『原子の光(影の光学)』の予定です。詳細が決まり次第、当ブログにてお知らせいたします。
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by urag | 2013-03-11 17:01 | 人文書既刊 | Trackback | Comments(0)
2013年 03月 11日

「書標」2013年3月号に『エコ資本主義批判』の書評

ジュンク堂書店さんの月刊書評誌「書標」2013年3月号に、弊社11月刊行のショルカル『エコ資本主義批判』の書評が掲載されました。評者「フ」さんはご存じ、ジュンク堂書店難波店の福嶋聡店長です。また、この書評を機に、恒例の「店長の一押し!」フェアで同書を扱ってくださることになりました。福嶋さん、ありがとうございました!
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by urag | 2013-03-11 16:45 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)