ウラゲツ☆ブログ

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2012年 10月 31日

ビラフランカのカスティ

日テレ「笑ってコラえて」2012年10月31日(水)放送で紹介された、スペインの「カスティ(カステイェールス:人間の塔)」2012年10月タラゴサ大会。緑のシャツが目印のビラフランカのクラブによる「2人8段」(数え方についてはこちらのサイトをご覧ください)の塔はクラブにとって初めてデスカレガット(解体)まで成功した偉業でした。その一部始終の動画はこちら。塔の頂上を造るポムデダルト役のうち、一番上に登るエンセネータ役の子供が片手を高く上げてカレガット(築塔)が成功。その時の観衆の大歓声と、デスカレガット完遂後の歓喜の人波。すごいですね。

別の角度から見た映像(1:45-3:33)やビラフランカの他の種目、そしてこの大会でのバリス(赤いシャツ)など他のクラブの競技を含むまとめ映像は以下になります。


また、カスティが組みあがっていく途中から絶妙のタイミングで鳴り始める勇壮な音楽をうまく活かした、カスティの紹介動画が以下のものです。ビラフランカのトロンク役でよく見かける二人の男性のうち、上の二つの動画では顔が見えづらかった男性の方が、この動画の最後で良い表情を見せてくれます。それにしてもなぜカステイェールスはなぜこんなにも私たちの胸を打つのでしょうか。


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by urag | 2012-10-31 21:45 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 31日

好評開催中&近日オープン:森山大道写真展一覧

現在最新作写真集『モノクローム』が絶賛発売中の森山大道さんの、国内外の写真展をご紹介します。ロンドンのテート・モダンで開催中の「ウィリアム・クライン/森山大道」二人展を企画されたサイモン・ベーカー(テート・モダン「写真/国際芸術」キュレーター)さんから、『モノクローム』について次のようなコメントをいただいています。「『モノクローム』をテート・ショップで購入しました。これは傑作です。この本にはとてもたくさんの見事な写真が収録されていて、大道さんの数々の写真集の中でも最高の部類に間違いなく入ると思います」。写真はテート・ショップの森山本のコーナーです。
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なお、『モノクローム』のサイン本が、来週より東京堂書店神保町本店と、アセンス心斎橋で販売開始になります。数に限りがありますので、売り切れの際はご了承ください。

WilliamKlein + DaidoMoriyama

会期:2012年10月10日~2013年1月20日
会場:Tate Modern(Bankside, London, SE1 9TG, UK)
料金:£12.70, concessions available

レセプション会場の様子(写真2枚)
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森山大道 Mesh展

会期:2012年10月20日~11月11日 11:00-20:00  
場所:GUCCI新宿(新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル)
料金:入場無料・会期中無休

内容:10月20日より、グッチ新宿3階イベントスペースにて、世界的に著名なフォトグラファー 森山大道氏による「Mesh」展を開催。本展を開催するにあたり森山氏が選んだのは、シルクスクリーン作品の展示です。数多くの森山作品の中からグッチをイメージする作品を森山氏がセレクトし、100x150cmの大型キャンバスにシルクスクリーンで表現した作品は圧倒的な物質感があり、通常の写真作品とは違った魅力を放ちます。また、新宿通りに面した8mにおよぶウィンドウにも3作品を展示し、11月3・4・11日には、森山氏が本展で用いているシルクスクリーン技法のワークショップを開催します。

シルクスクリーン ワークショップ

日時:2012年11月3日(祝)、4日(日)、11(日)11:00 - 19:00 (各日最終受付18:00)
料金:8000円(予約制 ※先着順)
申込:http://imamagazine.jp/news/daido-mesh/


DAIDO MORIYAMA “SHINJUKU”――PHOTO EXHIBITION AT STUSSY / 森山大道「新宿」写真展

会場:ステューシー大阪・南チャプト(大阪市中央区西心斎橋1-7-9)
日時:2012年11月03日(土)~11月18日(日)
協力:森山写真財団/リコーフォトギャラリーRING CUBE/月曜社

内容:「新宿」らしい路地裏を新たな拠点の一つとしてチャプトの移転リニューアルを果たした事を機に、「新宿」を独自の視点で切り取った作品をこれまで数多く発表してきた写真家・森山大道氏とコラボレーションする事が決定。創業以降、あらゆるカウンターカルチャーをその背景としながら「Tシャツ」を媒体としてアートを発信し続けてきた西海岸生まれのクロージングブランドSTUSSYと、路上から世界へ通ずる前衛的な作品を撮り続けている森山大道氏の異色二者がタッグを組み、「新宿」を名題としたTシャツのリリースと写真展を開催する。東京、福岡、大阪を巡回する今回の写真展ではコラボレーションのキーワードとなった「新宿」を題材とした様々なモノクロ作品や未発表含むカラー作品に加え、1973年に森山氏が「新宿25時」と題して記録していた映像作品をインスタレーションとして上映する予定となっている。

東京・新宿チャプト 9月22日(土)~10月08日(月)→終了
福岡・福岡チャプト 10月13日(土)~10月28日(日)→終了
大阪・南チャプト 11月03日(土)~11月18日(日)

※参考動画「オープニングレセプション@ステューシー新宿チャプト/森山氏インタビュー


森山大道 Daido Moriyama LABYRINTH

日時:2012年9月28日(金)~11月11日(日)11:00-19:00/会期中無休
会場:BLD GALLERY(ビーエルディーギャラリー)東京都中央区銀座2丁目4番9号 SPP 銀座ビル8F
電話:03-5524-3903

内容:本作「LABYRINTH(ラビリンス)」は森山の長い作家生活の中で撮影したネガをコラージュし、新たなコンタクトシートを制作してプリントした新作です。通常コンタクトシートとは、フィルム現像後に大きく引き伸ばすカットを選ぶため、全カットを密着してプリントするものですが、「LABYRINTH(ラビリンス)」のコンタクトシートは、今まで撮影した全てのネガの中から森山自身が選択し再構成したもので、一枚のシートの中に60年代から2000年代までのネガが混在するものもあります。撮影年代に関わらずどのカットも等価に扱うことに対し、森山は「自分の押してきたシャッターの一枚一枚は全て同じ意味を持ち、区別はない」と言います。そして、このコンタクトシートの制作にあたり、否応なくこれまで撮影したフィルム全てを見返すことによって自身の活動の道のりを振り返り、「LABYRINTH(迷宮)」というタイトルに命名しました。名作と知られる作品の前後のカットはもちろんのこと、未公開のカットが大半を占める本作は、森山の今までの人生の集大成であり、これら総体によって森山作品は語られるべきでしょう。本展にあわせ、写真集『LABYRINTH』も刊行されます。是非ご期待ください。

☆森山大道『LABYRINTH
出版:Akio Nagasawa Publishing
刊行:2012年
価格:8,400円(税込、展覧会特別価格)
※特別価格8,400円は【2012年11月11日ご注文分】まで。以降は12,600円(税込)となります。
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by urag | 2012-10-31 15:22 | 森山大道 | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 29日

注目新刊:各種再刊、復刊、文庫化、第二版など

★先週ついに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 全記録全集』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 全記録全集』が再刊されましたね。初回特典はついていませんけれど、この『全記録全集』の造本はエヴァのファンならずとも注目してしまう美しいもので、あの恐るべきヴォリュームがたったの1万円とか1万数千円で買えると言うのは他の分野ではとうていありえないことです。いかんせん大型本なので場所を取りますが、なくならないうちに買っておいた方がいいです。

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ノンセンスの領域
エリザベス・シューエル(Elizabeth Sewell, 1919-2001)著 高山宏訳
白水社 2012年10月 本体5,800円 四六判上製438頁 ISBN978-4-560-08302-4

帯文より:本当は怖ろしいノンセンスの世界。『不思議の国のアリス』やエドワード・リアの戯詩は厳格なゲームの規則に支配されている。分析的知によって人間と世界を引き裂くノンセンスの正体を明らかにした名著。関連エッセー2篇を併録した決定版。

カバーソデ紹介文より:ノンセンスはけっしてでたらめで無秩序な世界ではない。ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』やエドワード・リアの戯詩は、日常とはかけ離れてはいるが、むしろ遥かに厳密な固有の論理をもっている。そこでは言葉遊びのルールがすべてを決定し、その厳格な支配の下、人間もなにもかもが単なる〈もの〉、一個の記号と化す。行きつく先は〈人間〉と〈世界〉が決定的に分断された終末状況である。一般に笑いの文学とされるノンセンスの徹底分析を通して、近代の分析的知性がノンセンス・ゲームへと自閉していく危険をあばき、救済への途をさぐる、いまなお刺激的なノンセンス論の決定版。

訳者解説より:シューエル版「ノンセンス大全」は1910年代から60年代にかけての「近代」の終末状況から生まれてきたものに相違なく、たしかに『ノンセンスの領域』の後半部の冴えに冴えた細かな分析の与える知的スリルもさることながら、まずこの大きな「近代」の黙示録としてのパースベクティヴのゆえに、今後あまたノンセンス論が出てこようともこの書が凌駕されるなどという事は決してない。

原書:The Field of Nonsense, Chatto and Windus, 1952.

★発売済。サイファー『文学とテクノロジー』に続く、シリーズ「高山宏セレクション〈異貌の人文学〉」の第二弾です。親本は河出書房新社、1980年11月刊。親本に付録として収録されていたシューエルの論文「ノンセンス詩人としてのルイス・キャロルとT・S・エリオット」と巻末の訳者解説はそのまま再録されており、今回の復刊にあたっては第二の付録としてシューエルの論文「ルイス・キャロルの作品と現代世界にみるノンセンス・システム」と、訳者による書き下ろしの新解説「アルス・ポエティカの閃光」が追加されています。編集担当は今回も藤原編集室さんです。

★今回の復刊にあたって、大文字で始まるNonsenseはゴシック体でノンセンスと表記し、心・知性・精神などと訳し分けられていたmindはすべてカタカナ語でマインドと表記を改めたとのことです。「二十一世紀初めを彩る"Philosophy of mind"の先駆書の一冊、と思ってもらいたい一心だから」(428頁)と高山さんは綴っておられます。

★シリーズの続刊予定ですが、シューエルの『オルペウスの声』(1960年)が高山さんの翻訳、M・H・ニコルソン『ピープスの日記と新科学』が浜口稔さんの翻訳で予告されています。また、ホッケの名著では、平凡社ライブラリーより復刊された『文学におけるマニエリスム』に代わって、『絶望と確信』(種村季弘訳、朝日出版社、1977年)がリストアップされています。


重層的な非決定へ 新装版
吉本隆明著
大和書房 2012年10月 本体3,200円 4-6判上製600頁 ISBN978-4-479-39233-0

帯文より:思想は時代を超える。コム・デ・ギャルソン、小林秀雄、中上健次、ビートたけし、「E.T.」――。文学、ファッション、TV番組、あらゆる文化を語った画期的論考が待望の復刊!

推薦文:文化が多様なら、批評は自在でなければならない。吉本隆明の至高の境地。(橋爪大三郎)

★発売済。オビには「新装復刻版」、奥付には「新装版」と記されています。親本は同版元より85年9月に刊行されています。ニューアカ・ブームの後半に出版されたもので、吉本さんの80年代の様々な文章と発言が収録されています。吉本さんはニューアカ・ブームに与した知識人ではないものの、本書の書名ともなっているテクストの背景である、埴谷雄高さんちとのいわゆる「コム・デ・ギャルソン論争」などを振り返ると、やはりあの時代の空気を吉本さんもまた、「ハイカルチャー/マスカルチャー/サブカルチャー」の分け隔てなく吸っていたのだと感じます。その意味で、今こそ「吉本隆明の80年代」というものを、冷静に振り返ることができるようになる気がします。

★旧版のカバーでは書名と著者名の「上に」、「定価=2,200円」と大きく印刷されていて、こういう体裁は空前絶後だと思うのですが、これは菊地信義さんによるデザインでした。今回の新装版は旧版よりいっそうミニマルな装丁で、鈴木成一デザイン室さんが担当されています。背から見ると、帯はあえて何も印刷せず真っ白になっていて、書名と著者名、版元名が墨色のグラデーションの中に浮かび上がっています。とても美しいです。


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天体による永遠
オーギュスト・ブランキ著 浜本正文訳
岩波文庫 2012年10月 本体660円 文庫判並製216頁 ISBN978-4-00-342251-9

カバー紹介文より:19世紀稀代の革命家ブランキ(1805-1881)は、パリ・コミューン勃発の前日に逮捕される。トーロー要塞幽閉中に書かれた最後の著作が本書である。それは革命論ではなく、宇宙の無限から人間を考察したものだった。想像力を広大な宇宙に飛翔させ、そこでブランキが見たものは? ベンヤミンを震撼させたペシミズムの深淵。

目次:
I 宇宙――無限
II 無際限
III 星々との限りない距離
IV 天体の物理的組成
V ラプラスの宇宙生成論に対する所見――彗星
VI 世界の起源
VII 宇宙の分析と総合
VIII エピローグ
〈付録〉ブランキ監獄年表
〈訳者解説〉ブランキからニーチェへ、ベンヤミンへ
〈解説付録〉アバンスール「幽閉者の解放」について
訳者あとがき

★発売済。原著刊行は1872年。親本(写真左)は雁思社、1985年6月。親本は1972年に刊行された『武装蜂起教範、天体による永遠、その他のテキスト』を底本にしており、ミゲル・アバンスールとヴァランタン・プロスによるテキスト校訂上の編者注、アバンスールによる解説「幽閉者の解放」や、原著出版当時のジャーナリズムの反響が訳出されていたほか、付録として「『天体による永遠』の第二版用プラン」や、ブランキ研究家のモーリス・ドマンジェ(1888-1978)の紹介と「ブランキ監獄年表」を付し、さらに巻頭には口絵としてブランキとその妻の肖像画や、ブランキが幽閉されたトーロー要塞の絵、初版本や手稿の写真、「ブランキと19世紀」と題された略年表が掲載されています。そして、河野健二さんによる「天文学と革命」という序文も併録されているため、古書店でお目にかかったら購入しておくのがいいかもしれません。

★今回の文庫化にあたっては、分かりやすい訳文になるように見直したとのことです。まさかブランキが文庫で読めるようになるとは思いもしませんでした。なお、ブランキの訳書には本書のほかに、『革命論集』(加藤晴康訳、上下巻、現代思潮社、1967-68年;改訂増補版、全一巻、彩流社、1991年)があります。こちらも現在品切なので、岩波書店さんが文庫化に乗り出してくださることを期待しましょう。


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常用字解 [第二版] 
白川静著
平凡社 2012年10月 本体3,000円 四六判上製函入816頁 ISBN978-4-582-12810-9

帯文より:基本を学ぼう、漢字の世界。平成22年11月内閣告示「常用漢字表」に対応。196字を追加して、全2136字の常用漢字を、平易に解説! 待望の第二版。

★発売済。中・高生に向けて書かれた入門字典『常用字解』(2003年刊)の増補版です。一つひとつの漢字の成り立ちと意味を教えてくれます。成り立ちについては学校で習わないことの方がたぶん多いかと思いますので、その分、本書のインパクトが絶大です。例えば、「謹啓」や「謹呈」など、仕事で良く使う「謹」の字はこう解説されています。つくりの「きん」の字は「飢饉に関係のある字である。〔…〕「きん」は飢饉のとき、「さい」(神への祈りの文である祝詞を入れる器の形)を頭上に載せた巫祝(神に仕える人)が前に両手を交叉して縛られ、火で焼き殺される形である。このとき雨を求めてつつしんで神に祈る言葉が謹で、「つつしむ」という意味がある。謹慎して神の怒りを鎮めることを願うという意味である」。手を交叉して縛られ、というくだりは思わず黒沢清監督の映画作品「CURE」(1997年)を彷彿とさせる怖さがありますね。すべての漢字の起源が怖いわけではありませんが、遙か昔の呪術的な世界の名残があることに気づかされます。


亡命者たちのハリウッド――歴史と映画史の結節点
吉田広明著
作品社 2012年10月 本体4,600円 A5判上製432頁 ISBN978-4-86182-406-7

帯文より:亡命という経験は、彼らの映画に何をもたらしたのか。彼らの到来が、世界の映画に与えた変化とは何なのか。30年代にナチスから逃れたフリッツ・ラング、ダグラス・サーク、ロバート・シオドマク、50年代に赤狩りでアメリカを逐われたエドワード・ドミトリク、ジョン・ベリー、サイ・エンドフィールド、ジョゼフ・ロージー、60~70年代に共産圏東欧から亡命したミロス・フォアマン、ロマン・ポランスキー。その生涯と作品。

まえがきより:三〇年代は、スタジオ・システムが円滑に機能し始めた、いわゆる古典期の劈頭であり、優れたアメリカ映画が生み出され始めた時期、五〇年代は、スタジオ・システムが崩壊し、古典期が終焉する時期、六〇~七〇年代はアメリカ映画にとって模索の時代であり、また、今日にまで至るアメリカ映画の新たな体制が形作られ始めた時期である。(中略)こうした時代には、たとえば移民といったような自身の意志による移動とは位相を異にする、強制力のようなものが働いている。時代そのものを前に動かすために働く力、それが人を弾き飛ばす。移民ではなく、亡命者を取り上げる、という選択の中には、そうした時代の強制力を見る、という意味がある。

目次:
まえがき
第一部 ナチス・ドイツからの亡命
 序論 ヨーロッパとアメリカの葛藤――「文化」から「産業」へ
 第一章 フリッツ・ラングとダグラス・サーク――メディアとしての映画作家
 第二章 ロバート・シオドマク――逆境こそわが故郷
第二部 反共アメリカからの亡命
 序論 アメリカとヨーロッパの葛藤――「産業」から「文化」へ
 第一章 エドワード・ドミトリク――生き埋めの男
 第二章 ジョン・ペリーとサイ・エンドフィールド――亡命の二重の意味
 第三章 ジョゼフ・ロージー――オールタイム・エグザイル
第三部 共産圏東欧からの亡命
 序論 映画の世界的平準化
 第一章 ミロス・フォアマン――世界的な「新しい波」に乗って
 第二章 ロマン・ポランスキー――「亡命」の新たな意味に向けて
あとがき
作品名・人名索引

★発売済。20世紀はある意味で「亡命者の世紀」であり、期せずして生まれた移動と交流が文化を豊かにしたことは歴史上否定しがたいことではないかと思います。映画の世界におけるその機微を教えてくれるのが本書です。本書の刊行を記念して、以下のトークイベントが行われるとのことです。

亡命×ノワール――滝本誠×吉田広明トークショー

日時:2012年11月17日(土)15:00~17:00
会場:ビブリオテック B2F (渋谷区千駄ヶ谷3-54‐2)
料金:1,500円、当日精算
予約:電話03-3408-9482またはメールbiblio@superedition.co.jpにて受付。
定員:80名
※イベント一週間前から当日(11/10-17)のキャンセルはキャンセル料1,500円が発生します。

内容:フィルム・ノワールの陰鬱な世界観、その暗さの魅惑を語ると共に、フィルム・ノワールの持つ政治性を、その作り手である亡命者を通して考える。

★映画評論、映画研究ではここしばらく、ジャン・ルイ・シェフェール『映画を見に行く普通の男――映画の夜の戦争』(丹生谷貴志訳、現代思潮新社、2012年5月)、アラン・ベルガラ『六〇年代ゴダール―─神話と現場』(奥村昭夫 訳、筑摩書房、2012年9月)や、ニコル・ブルネーズ『映画の前衛とは何か』(須藤健太郎訳、現代思潮新社、2012年10月)など注目作が続いていますね。ブルネーズさんは来月来日され、各所で講演を予定されています。詳しくは版元ウェブサイトのお知らせ「11月 『映画の前衛とは何か』の著者ニコル・ブルネーズ氏来日」をご覧ください。


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物語 哲学の歴史――自分と世界を考えるために
伊藤邦武著
中公新書 2012年10月 本体900円 新書判並製344頁 ISBN978-4-12-102187-8

カバーソデ紹介文より:哲学とは何だろうか――。人間が世界と向き合い、自分の生の意味を顧みるとき、哲学は生まれた。古代から二一世紀の現代まで、人間は何を思考し、その精神の営為はどのような歴史を辿ってきたのだろうか。本書は、その歴史を「魂の哲学」から「意識の哲学」「言語の哲学」を経て、「生命の哲学」へと展開する一つのストーリーとして描く。ヘーゲル、シュペングラー、ローティの歴史哲学を超えた、新しい哲学史への招待。

目次:
まえがき
序章 哲学史のストーリー
第一章 魂の哲学――古代・中世
 1 「魂」という原理
 2 アテナイの哲学――プラトンとアリストテレス
 3 地中海の哲学
第二章 意識の哲学――近代
 1 科学革命の時代――デカルトの登場
 2 心身問題
 3 経験論と超越論的観念論の立場
第三章 言語の哲学――二〇世紀
 1 論理学の革命
 2 ケンブリッジから
 3 アメリカへ
第四章 生命の哲学――二一世紀へ向けて
 1 生の哲学
 2 ジェイムズとベルクソン
 3 エコロジカルな心の哲学

あとがき
人名索引

★発売済。著者の既刊書にははパースやジェイムズの訳書および研究書があるほか、経済学者ケインズの哲学的側面を考察した本もあります。中公新書では『経済学の哲学――19世紀経済思想とラスキン』を昨秋上梓されています。今回の新著では古代から現代、現在へ至る哲学史の流れが、魂~意識~言語~生命というキーワードの変遷の中に捉えられ、読みやすい通史に仕上がっています。

★中公新書は1962年11月に創刊されて以来、今月で50周年を迎えるとのことで、全国主要書店でフェアが展開されていると聞きます。今月は5点の新刊を刊行し、古典的名作から新定番までを紹介する「ここから始める中公新書」と題したミニフェアを展開。来月は、中公新書の担当編集者や営業マンが寄せる推薦コメントをPOPにしてフェアをさらに拡大展開するようです。見逃せないのが、創刊50周年記念で無料配布されている「中公新書総解説目録」。1962年から2012年10月までに刊行した2189点すべての既刊を網羅した保存版で、巻頭には三つのエッセイ――加藤秀俊「創刊のこころ」、小林標「中公新書とホラティウスの関係」、安野光雅「バス停はほんの少し動いた」が収録されています。品切絶版書目もすべて載っているので、資料的価値が高いです。店頭で見つけたら迷わずゲットしてみて下さい。
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by urag | 2012-10-29 00:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 26日

「週刊読書人」にアガンベン『到来する共同体』の書評

「週刊読書人」2012年10月26日号の4面に、弊社8月刊のジョルジョ・アガンベン『到来する共同体』(上村忠男訳)の書評「政治哲学の領域に踏み込む――詩と政治の蝶番として」が掲載されました。評者は弊社3月刊『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』の著者でもある岡山大学准教授の岡本源太さんです。

「矢継ぎ早に発表される「ホモ・サケル・プロジェクト」の重厚な成果ばかりに眼を奪われがちな現在、アガンベンがはじめて明示的に共同体の問題に向き合った本書が邦訳されたことは、大きな意義を持っている。〔…〕美学/詩学こそがアガンベンを政治哲学へと導いたのであり、両者は別のものではない。〔…〕本書は、その詩と政治の蝶番である。〔…〕政治とは些末な事物にこそ、細部にこそ宿るものだろう。本書はその意味で、小著とはいえ細部まで読まれるべき書物である」と評していただきました。岡本さん、ありがとうございました!

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by urag | 2012-10-26 16:28 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 23日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2012年11月16日(金)再開オープン
あゆみブックス仙台一番町店:書籍140坪、雑誌30坪、その他30坪
宮城県仙台市青葉区一番町4-5-13
2010年12月10日にN帳合でサンシャインビルの1Fに約200坪で開店以来、積極的に人文書も扱って下さっていた仙台一番町店さんでしたが、翌春の東日本大震災で被災され、その後ずっと休業されていました。しかしついに来月、再開オープンを果たされるとのことで発注がぽつぽつ入り始めています。現在は工事中で、グーグルのストリートビューでもそれが確認できます。完成次第の再スタートなので、工事の進み具合によっては開店日が延期になることもあるようです。すでに営業再開している仙台店仙台青葉通り店とあわせ、あゆみブックスの仙台での全三店舗が揃うことになります。

このほか詳細未詳ですが、11月開店と聞く、くまざわ書店鶴見店(横浜市鶴見区)さんと、くまざわ書店鷲宮店(埼玉県久喜市)さんから単品のご発注をいただいています(いずれもT帳合)。前者は11月1日オープン予定の、JR鶴見駅の新しい駅ビル「シァル鶴見」の5F「眼睛小径(がんぜいこみち)」に入居する店舗のことだろうと思います。後者は11月下旬オープン予定の大型SC「アリオ鷲宮」内に出店する店舗だと思われます。久喜市内では、ショッピングモール「フォレオ菖蒲」内に1,000坪の蔦屋書店が今春オープンし、隣接する「モラージュ菖蒲」は2008年のオープンで、3Fにくまざわ書店系列の700坪のACADEMIAが既存店として営業されてきました。くまざわ書店アリオ鷲宮店さんもおそらく数百坪の規模でしょうから、なかなか厳しい競争になるのではないでしょうか。

+++

いっぽう閉店情報です。あおい書店新宿店が9月5日に閉店、同じくあおい書店博多本店が10月14日に閉店になりました。入居先との契約の都合でしょうか。あおい書店のウェブサイトでは新規店舗用の物件を募集していますから、好条件の立地は今後も探していかれるのでしょう。

そして、すでにtwitterで大きな話題になりつつありますが、某ナショナルチェーンの関西圏の某一番店が入居ビルの建て替えによりあと三カ月ほどで閉店するという情報が流れ始めています(少し前から業界内でも噂が広まっていました)。業界紙や書店サイドで公式なリリースが出ていませんから店名を記すのが憚られますけれども、これは多くの専門書版元にとっては大きな痛手にならざるをえず、かなりショックです。

最後に、先般少し書いた取次の帳合変更戦争についての続報です。文教堂の12店舗が11月1日よりトーハンから日販へ帳合変更になるとの通知が版元各社に届いています。うち1店舗は太洋社から日販への帳合変更(函館テーオー店)です。また、「新文化」10月1日付ニュースフラッシュ「こまつ書店、太洋社からトーハンへ帳合変更」では「10月1日から寿町本店と堀川町店の2店、11月1日から桜田店と西田店、鈴川店の3店が切り替わる。7月5日開店の東根店はすでにトーハン帳合で開店」と報道されており、最近では同じく「新文化」10月18日付ニュースフラッシュ「喜久屋書店5店、トーハンに帳合変更」によると、「太洋社と取引きする喜久屋書店の5店が12月1日付でトーハンに帳合を変更する。対象店は小樽店、ザ・本屋さん、高岡店(漫画館)、阿倍野店(漫画館、子ども館)、熊本店。売場面積は計約3500坪にのぼる」とのことです。トーハンと日販のあいだの大規模帳合変更合戦が彼らより規模の小さい太洋社にまで飛び火している状況で、いくら自由競争とは言ってもこの状況はいささか残酷ではないでしょうか。
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by urag | 2012-10-23 12:02 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 21日

注目新刊:『現代思想』臨時増刊号総特集=チューリング、ほか

現代思想 2012年11月臨時増刊号 総特集=チューリング
青土社 2012年10月 本体1,238円 A5判並製222頁 ISBN978-4-7917-1252-6

★発売済。アラン・チューリング(Alan Mathison Turing, 1912-1954)の生誕百周年記念特集です。6月に発売された、日本評論社の月刊誌「数学セミナー 2012年7月号609号」でも、「チューリング生誕100年」と題した特集が組まれていました。今回の「現代思想」の特集号では、新井紀子さんと安西祐一郎さんによる討議「理性は計算可能である?――チューリング生誕100年に際して」のほか、円城塔「姿を求めて」、西垣通「思考機械へのむなしい呼びかけ」、郡司ペギオ幸夫「チューリングのバイオロジカルな拡張」、ドミニク・チェン「コミュニケーションの発生と継承」など、12篇が寄稿されています。また、チューリング自身のテクストとしては、「計算機械と知能」(高橋昌一郎訳、8-38頁;"Computing Machinery and Intelligence", 1950)、「解ける問題と解けない問題」(田中一之訳、40-57頁;Solvable and Unsolvable Problems, 1954)の二篇が掲載されています。前者には既訳があります(「コンピュータと知能」西垣通訳、『思想としてのパソコン』西垣通編著訳、NTT出版、1997年、91-126頁)。なお、本号の表紙には「シリーズ・現代思想の数学者たち」と記されていて、おそらく今回がそのシリーズ第一回になるのだろうと思います。シリーズについては編集後記にも特に説明はありません。

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★さて、続いては、今月下旬から来月にかけての近刊書の中から注目の書目を以下に挙げます。

2012年10月*単行本・叢書選書・新書・文庫
23日『重層的な非決定へ〈新装復刻版〉』吉本隆明著、大和書房、3,360円
24日『ゾンビ経済学――なぜ破綻した経済理論が幅を利かせているのか』ジョン・クイギン著、山形浩生訳、筑摩書房、2,730円
24日『ノンセンスの領域』エリザベス・シューエル著、高山宏訳、白水社、6,090円
25日『アダムとイヴ――語り継がれる「中心の神話」』岡田温司著、中公新書、840円
25日『創られたスサノオ神話』山口博著、中公叢書、2,100円
26日『神を哲学した中世――ヨーロッパ精神の源流』八木雄二著、新潮選書、1,470円
29日『社会運動の戸惑い――フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』山口智美・斉藤正美・荻上チキ著、勁草書房、2,940円
30日『最初の人間』アルベール・カミュ著、大久保敏彦訳、新潮文庫、662円
31日『批評時空間』佐々木敦著、新潮社、2,100円

2012年11月*文庫
06日『周防大島昔話集』宮本常一著、河出文庫、798円
07日『江戸奇談怪談集』須永朝彦訳、ちくま学芸文庫、1,785円
07日『レ・ミゼラブル(1)』ユゴー著、西永良成訳、ちくま文庫(全5巻予定)、998円
07日『世界幻想文学大全(1)幻想文学入門』東雅夫編、ちくま文庫、861円
07日『世界幻想文学大全(2)怪奇小説精華』東雅夫編、ちくま文庫、1,260円
07日『民主主義の革命――ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』ラクラウ&ムフ著、千葉真・西永亮訳、ちくま学芸文庫、1,575円
07日『発展する地域 衰退する地域――国の経済から地域の経済へ』ジェーン・ジェイコブズ著、中村達也訳、ちくま学芸文庫、1,575円
08日『物質のすべては光――現代物理学が明かす、力と質量の起源』フランク・ウィルチェック著、吉田三知世訳、ハヤカワ文庫NF、924円
14日『新井白石「読史余論」現代語訳』横井清訳、講談社学術文庫、1,155円
16日『内乱――パルサリア(上)』ルーカーヌス著、大西英文訳、岩波文庫(全二巻)、882円
16日『偶然性の問題』九鬼周造著、岩波文庫、1,197円
16日『「尖閣問題」とは何か』豊下楢彦著、岩波現代文庫、1,071円
23日『心と他者』野矢茂樹著、中公文庫、900円

2012年11月*単行本・選書
05日『ビザンティン四福音書写本挿絵の研究』瀧口美香著、創元社、8,400円
09日『希望の原理(1)』エルンスト・ブロッホ著、山下肇ほか訳、白水iクラシックス(全六巻)、3,990円
12日『子供の哲学――産まれるものとしての身体』檜垣立哉著、講談社選書メチエ、1,575円
16日『哲学の起源』柄谷行人著、岩波書店、2,205円
22日『灰野敬二の世界』河出書房新社、2,940円
25日『月の向こう側――日本について』レヴィ=ストロース著、川田順造訳、中央公論新社、1,890円
下旬『「鎖国」と資本主義』川勝平太著、藤原書店、3,780円

2012年12月*文庫
04日『男おひとりさま道』上野千鶴子著、文春文庫、590円

★カミュ『最初の人間』は死後30年以上経った94年に刊行された未刊の遺作で自伝的長編小説。96年に新潮社から大久保敏彦さんによる訳書が出て、今回ようやく文庫化。単行本が文庫化されるスピードが非常に早くなったここ20年の中では非常に遅い例です。佐々木敦さんの『批評時空間』は月刊誌『新潮』での連載をまとめたもの。ちくま文庫のユゴー『レ・ミゼラブル』は西永良成さんによる新訳で全五巻予定。西永先生はフランス文学の古典作品では4年前にデュマ・フィス『椿姫』(光文社古典新訳文庫、2008年)をお訳しになっています。

★ラクラウ&ムフ『民主主義の革命――ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』は以前『ラディカルな政治は可能か?――ヘゲモニーと政治』という書名で予告されていたもの。二人の共著書はこれまで1985年のHegemony and Socialist Strategyが『ポスト・マルクス主義と政治――根源的民主主義のために』(山崎カヲル・石沢武訳、大村書店、1992/2000年)として翻訳されていましたが、今回の文庫新刊の原書が何なのかは訳題からはよく分かりません。ただ、二人の共著はあまりなく、近年ではドイツ語版オリジナル論集と思しき1998年のHegemonie und radikale Demokratie: Zur Dekonstruktion des Marxismusくらいしか思い浮かびませんから、ひょっとすると今回の訳書は日本語版オリジナル論文集なのかもしれません。【2012年10月31日追記:筑摩書房編集部さんより本書はHegemony and Socialist Strategyの第二版の新訳であることを教えていただきました。】

★ジェイコブズ『発展する地域 衰退する地域』は書名と訳者名から推測するに、『都市の経済学――発展と衰退のダイナミクス』(TBSブリタニカ、1986年)の文庫化ではないかと思われます。ジェイコブズの著書の文庫化は本書が初めてではなく『市場の倫理 統治の倫理』(香西泰訳、日経ビジネス人文庫、2003年)という先例がありますが、長らく品切で、親本である単行本より高額になることがままあるのが残念です。

★ルーカーヌス『内乱』は京都大学学術出版会の「西洋古典叢書」でも刊行予告がありましたが、岩波版が先行するということなのでしょう。全二巻予定。ルーカーヌス(ルカーヌス、あるいはルカヌスとも表記されます)は古代ローマの哲学者セネカ(小セネカ)同様、暴君ネロの命令で25歳にして自決を余儀なくされた人物で、セネカの甥にあたり(大セネカにとっては孫)、叔父の薫陶を受けた若き才人でした。『内乱(パルサリア)』は彼の主著になります。

★ブロッホ『希望の原理』は廉価版全6巻を毎月1冊ずつ刊行していくもののようです。分厚い全3巻本を持っている読者もとりあえずは押さえておかざるをえないでしょうね。個人的には白水社さんには『ニーチェ全集』第一期および第二期全巻をuブックスあたりで再刊してくださらないかなあと念願しています。もっと言えば、白水社さんには小学館さんや平凡社さんのような「ライブラリー」を創設していただいた方が販売戦略としては書店さんに喜ばれる気がします。

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★最後に注目のブックフェアです。今年年末で活動休止されることとなった自然科学書の版元「どうぶつ社」さんのフェアが、ジュンク堂書店池袋本店7Fカウンター(エレベーター)前で12月10日まで開催されています。「どうぶつ社」さんの刊行物をショーケースに入れて陳列するととともに、在庫がある書籍をカウンター前の大きな平台いっぱいに展開しています。「どうぶつ社の36年」と題した小冊子が無料配布されていて、1976年から2011年までの刊行物が、新聞記事などとともに年表風に紹介されています。ぜひたくさんの方々に見ていただきたいフェアです。
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by urag | 2012-10-21 22:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 17日

11月中旬発売予定新刊:ショラル・ショルカル『エコ資本主義批判:持続可能社会と体制選択』

2012年11月7日取次搬入予定 *人文・社会思想

エコ資本主義批判――持続可能社会と体制選択
ショラル・ショルカル著 森川剛光訳
月曜社 2012年11月 本体3,200円 46判(133x190mm)並製376頁 ISBN978-4-901477-70-3

経済成長という幻想からの秩序ある撤退を――。過去の社会主義の道徳的退廃とともに、資本主義的現実と妥協した現在のエコロジストたちをも痛烈に批判する本書は、自然環境と人間社会を破壊する〈開発と搾取〉に支えられた成長神話との訣別を私たちに促し、〈持続可能な世界〉へと向かうための新しいヴィジョンを提示する。本邦初訳。

原書Die nachhaltige Gesellschaft: Eine kritische Analyse der Systemalternativen, Rotpunktverlag, 2001.

ショラル・ショルカル(Saral Sarkar)1936年インド生まれ。コルカタ大学人文学部卒業。1982年の西ドイツ・ケルンへの移住後、政治経済批評家・社会運動家として活動。同年に草創期の「緑の党」に加入するも1987年に離党し、その後は1997年の反グローバリズム運動団体ATTACの立ち上げに参加した。現在も活発に著述・講演活動をおこなっている。エコフェミニズムの旗手マリア・ミース(Maria Mies, 1938-)の伴侶である。ショルカルの著作が邦訳されるのは今回が初めてとなる。

森川剛光(もりかわ・たけみつ)1969年生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。現在、ルツェルン大学(スイス)私講師。訳書に、アルミン・ナセヒ+ゲルト・ノルマン編『ブルデューとルーマン――理論比較の試み』(新泉社、2006年)がある。

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by urag | 2012-10-17 14:18 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 14日

注目新刊:イブン・シーナー『魂について』、ほか

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魂について――治癒の書 自然学第六篇
イブン・シーナー著 木下雄介訳
知泉書館 2012年10月 本体6,500円 A5判上製386頁 ISBN978-4-86285-141-3

カバー裏紹介文より:イブン・シーナー(980-1037)により、11世紀初頭にアラビア語で書かれた『治癒の書』は、論理学や自然学、数学、形而上学など多くの学問分野を体系的に論じた大部の著作である。イスラーム哲学史上、決定的に重要な作品であるが、主に自然学と形而上学が12世紀から13世紀にかけてラテン語訳され、ヨーロッパの思想界にも多大な影響を与えた。そのうち『魂について』は50の写本が残っている。/本書で扱われる魂の議論は、アリストテレスやアレクサンドリア学派の影響を受けて自然学と形而上学の二分野にまたがり、肉体とのつながりは自然学で扱い、死後の魂は形而上学に分担されている。アリストテレスは知性の不滅性については深くは言及しなかったが、イブン・シーナーは魂論の根底にその不滅性を据えて、非物質的知性が死後も個体として存続するアリストテレスを否定した。/『魂について』が哲学史に与えた論点として、空中人間論、肉的感覚論、評定力、預言論、能動知性論などがある。なかでも内的感覚論は受容されたが、能動知性は激しい批判を受けて、抽象的認識論や直感的認識の理論に結実した。12、13世紀における西洋の文化発展はギリシア語、アラビア語、ヘブライ語の翻訳によるところが大きい。『魂について』における見解がアリストテレスの意見とされたり、アリストテレスの魂論になくてイブン・シーナーの魂論に付加された論点など、多くの研究課題が残されている。その意味で本訳業は学界にとっても記念碑的な業績になろう。

★発売済。イブン・シーナーによる『治癒の書』の自然学部門第六部「魂について」のアラビア語原典からの翻訳です。巻頭には山内志朗さんによる解説「イブン・シーナー『魂について』をめぐる思想史的地図」が置かれています。目次詳細は書名のリンク先の版元サイトでご覧いただけます。イブン・シーナーあるいはアヴィセンナの著書の翻訳には以下のものがあります。

1981年11月「医学典範」五十嵐一訳、『科学の名著(8)イブン・スィーナー』所収、朝日出版社
1998年10月『アヴィセンナ「医学の歌」』志田信男訳、草風館
2000年12月「救済の書」小林春夫訳、 『中世思想原典集成(11)イスラーム哲学』所収、平凡社
2010年09月『アヴィセンナ『医学典範』日本語訳』檜學・新家博・檜晶訳、第三書館
2012年10月『魂について――治癒の書 自然学第六篇』木下雄介訳、知泉書館

五十嵐訳「医学典範」は、第一巻第一部「医学の定義とその自然的主題について」の翻訳。解説によれば、シリーズ本の制約のため抄訳となったが、「翻訳作業は続行中であり、いずれも近い将来シリーズとは別の形で、少なくとも第一巻の『医学概論』相対が刊行される予定である」(70頁)と約しておられました。しかしご存知の通り五十嵐さんはその十年後に勤務先の大学構内で刺殺されます。その二年前に『東方の医と知――イブン・スィーナー研究』(講談社、1989年)を上梓されたばかりでした。

『治癒の書』と並行して書かれた作品である『医学典範』はその後、第一巻の全訳が2010年に刊行されました。第三書館版の「序」では、五十嵐訳に触れたあとで「せめて第一巻の日本語全訳をと思い立って本書の企画を始めた」(iv頁)と説明されています。『医学の歌』は『医学典範』の要約版です。小林訳「救済の書」は、第二部「自然哲学」第六章「霊魂論」の翻訳。『救済の書』は『治癒の書』の縮約版とも言われることがあり、今回の『魂について』と対応関係にあります。もっとも、小林さんの解説によれば『救済の書』の成立事情を見ると単純に縮約版と断じることができるものではないようです(341頁以下参照)。なお、『魂について』の訳者の木下さんは『慶応義塾大学言語文化研究所紀要』にアヴィセンナ『形而上学』の翻訳を2008年より連載中とのことです。岩見隆さんとの共訳で、2012年3月の第43号には第4回が掲載されています。

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★知泉書館さんは2001年6月に設立された学術出版社です。社長の小山光夫さんは創文社の元編集者でいらっしゃいます。弊社の創業が2000年12月ですから、半年しか違わないものの、刊行点数は弊社より断然多いです。西洋の古典的名著の翻訳にも力を入れておられ、ここ二年間では以下の翻訳を発行されています。

2012年08月:『エックハルト ラテン語著作集 Ⅴ 小品集』中山善樹訳
2012年03月:トマス・アクィナス『在るものと本質について〔ラテン語対訳版〕』稲垣良典訳註
2012年01月:『デカルト全書簡集 第一巻(1619-1637)』山田弘明・吉田健太郎他訳
2011年04月:『エックハルト ラテン語著作集 Ⅳ 全56篇のラテン語説教集』中山善樹訳
2011年01月:『ニーチェ『古代レトリック講義』訳解』山口誠一訳著

★この中から2点だけ言及しておくと、トマスの『在るものと本質について』には、聖トマス『形而上学叙説――有と本質とに就いて』(高桑純夫訳、岩波文庫、1935年)という古い訳があって、1990年以降も少なくとも二度以上復刊されたことがあります。そのほかにも4種既訳があるのですが手ごろとは言えないだけに、斯界の重鎮である稲垣先生による新訳が出たことは読者にとって幸運と言えるでしょう。巻頭に長編解説「『在るものと本質について』における存在〔エッセ〕」が置かれ、訳文はラテン語原典との対訳になっています。山口誠一訳著『ニーチェ『古代レトリック講義』訳解』は抄訳ですが、第10~16章の中のレトリックの諸事例を省いただけなので、ニーチェ自身の議論は本書で十分追えます。巻末の解説「レトリックの哲学」では20世紀後半の欧米におけるニーチェのレトリック論研究の動向が一通り紹介されているのも読者にとって有益でした。山口さんは「あとがき」で、「ニーチェ批判版全集第二部門の多くの未邦訳テキストを邦訳してゆく研究体制は、我が国にはなく、ニーチェ研究の本格的展開の道はまったく前途遼遠である」と漏らしていらっしゃいます。批判版全集の第二部門(1982-1995年刊)には、バーゼル大学時代の講義草稿が収録されており、山口さんによる本書はその翻訳のさきがけになります(山口さん自身が語る翻訳への道のりは論文「ニーチェ像の変貌」に明らかです)。ニーチェの遺稿集は白水社版全集(第一期、第二期)で一部を読むことができますが、全部ではありません。公刊された本のニーチェと、遺稿集のニーチェ。日本人の多くは後者の全体像にまだ出会えていないのかもしれません。

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墨子
墨子著 森三樹三郎翻訳
ちくま学芸文庫 2012年10月 本体:1,100円 文庫判並製304頁 ISBN978-4-480-09490-2

カバー裏紹介文より:中国古代・春秋時代末期に興り、諸子百家の時代にあって儒家に比肩する勢力となった学団・墨家の学団。自己と同じようにすべての人を公平に愛す「兼愛」、侵攻戦争を否定して防衛技術を磨く「非攻」、身分の貴賎にかかわらず有能な人物を登用する「尚賢」など、その特異な思想は、秦漢以降の統一王朝時代に入ると、突如この世から消え失せてしまう。残されたテキスト群のうち、謎に包まれたその思想の真髄を伝える最重要部分を訳出したのが本書である。抜群の読みやすさと正確さで定評のある名訳に、明快な訳者解説を付す。待望の文庫化。【解説:湯浅邦弘】

★発売済。親本は『世界古典文学全集(19)諸子百家』(筑摩書房、1965年) 所収の同訳で、墨子の思想的根幹となるいわゆる十論を中心に訳出した抄訳です。入手しやすい「墨子」の翻訳解説書には、藪内清訳注(東洋文庫、1996年)、 和田武司訳(徳間書店「中国の思想(V)」、1996年)、浅野裕一訳著(講談社学術文庫、1998年)、山田琢著(明治書院「新書漢文大系(33)」、2007年)などがあります。酒見賢一さんの歴史小説『墨攻』(1991年)や、それを原作とした森秀樹さんによるコミック化(1992-1996年)、さらに映画化(日本では2007年公開)やそのノベライズ化(2006年)などによって、近年では読者層が新たに広まった感がありますが、さらに現在の日中の緊張関係と諸難局のさなかで「墨子」を読む価値はいっそう高まっているように思えます。

★現在、ちくま学芸文庫壮観20周年記念フェアが全国の主要書店で開催されています。特設サイトでは、先日ご紹介した「ちくま」10月号に掲載された鷲田清一さんのエッセイや、東浦和図書館の青山主事へのインタビュー、そして「思想の星座」のダイアグラム(マトリックス)2種を見ることができます。マトリックスはPDFが配布されています。また、フェアの店頭では「ちくま文庫/ちくま学芸文庫」の2012年版解説目録も配布されています。特に巻末の「品切れ一覧表」は要チェック。

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松丸本舗主義――奇蹟の本屋、3年間の挑戦。
松岡正剛著
青幻舎 2012年10月 本体1,800円 四六判並製536頁 ISBN 978-4-86152-362-5

帯文より:前人未到の実験書店はなぜ閉店になったのか! 初めてあかす松丸正剛の仕事術。閉店を惜しむ各界から寄せられたメッセージ43篇も掲載。

目次:
夢か幻か(福原義春)
第I章 松丸本舗の旋法――われわれは何に挑戦したのか(松岡正剛)
松丸本舗全体図
第II章 松丸本舗の全仕事――1074日・700棚・5万冊・65坪
 1 本屋のブランドをつくる
 2 本棚を編集工学する
 3 本と人をつなぐ
 4 目利きに学ぶ
 5 「ものがたり」を贈る
 6 共読の扉をひらく
第III章 気分は松丸本舗――各界から寄せられたメッセージ
第IV章 松丸本舗クロニクル――本だらけ、本仕込み、そして松「○」本舗
あとがき(松岡正剛)

★発売済。「松岡正剛が英知と哲学と汗と夢をつぎこんでつくった本屋」だった松丸本舗は、丸善丸の内本店4階に2009年10月23日に65坪でオープンし、先月末(2012年9月30日)に閉店しました。いくら三年契約とはいえ、日本最古の近代書店である丸善の矜持としてこの店舗を後世に残すべき「モデル」の一形態として採算度外視で「業界のために」保存してほしかったです。松丸本舗の濃密な「1074日間」を総括する本書には松岡さんによる書下ろしのほか、各界の識者43名がメッセージを寄稿。引用は控えますがプロデューサーの小城武彦さんもお書きになっていて閉店の理由についても説明があります。

★業界のために保存して欲しいモデルだったとはいえ、新しい本が続々と生まれ、古い本が消えていく書店はいわば「川」のようなもの。流れつづける「川」をそのまま保存することは不可能です。だから、大局的な大人の事情とは別に、閉店こそもっとも正しい選択だったのかもしれません。有終の美というものでしょう。しかし本書は「閉店記」ではなくて、「来たるべき書店」への準備ノートであることは間違いありません。記録というものは過去の写像ではなく、未来へのバトンなのです。


江戸の読書会――会読の思想史
前田勉著
平凡社選書 2012年10月 四六判上製392頁 ISBN978-4-582-84232-6

カバー裏紹介文より:読書会(=会読)は、江戸時代、伊藤仁斎、また荻生徂徠のもとで、儒学の学習のために本格的に始まった。それはすぐに広がり、私塾のみならず全国の藩校や昌平坂学問所で、また儒学にとどまらず蘭学でも国学でも採用された。各自の読みをもとに議論を闘わせる会読は、身分制社会のなかではきわめて特異な、参加者が対等な関係を結んで自由に競い合う場であり、他者を認め受け入れる試みであり、自ら困難な課題を設定しては乗り越える、喜びに満ちた「遊び」の空間でもあった。その会読の経験とそこで培われた精神こそ、読書会という枠を超えて、幕末の横議横行する志士たちを、明治初年、民権運動の学習結社を、近代国家を成り立たせる政治的な公共性を準備するものともなりえた。――具体的な事例をたどりながら会読の思想史をつむぐ、驚くべく新鮮な叙述!

目次:
はじめに
第一章 会読の形態と原理
第二章 会読の創始
第三章 蘭学と国学
第四章 藩校と私塾
第五章 会読の変貌
第六章 会読の終焉
おわりに

★まもなく発売。「読書会」は近年もブームが訪れていましたが、日本の近代が作られたその昔にも「会読」があり、その自由な言論と意見の共有が維新を育んだことを教えてくれるのが本書です。当時の読書会ブームの終焉の背景には「立身出世主義」による競争があったことを著者は指摘しており、色々と考えさせられます。先にご紹介した松丸本舗では「共読」(本を薦め合い、読み合い、評し合う読書形態)の可能性が追求されていましたが、立身出世や競争ではない読むことの喜びが「共」の字に込められているかもしれません。

★前田さんはこう書いています、「〔学問が立身出世に直結した結果、〕江戸時代の学問のもっていた遊戯性、あの『解体新書』翻訳に挑戦するような学問研究それ自体を楽しむ「遊び」がなくなってしまったのである。〔…〕学問(会読)のなかの競争は、経済的利害とかかわらないアゴーン(競争)としての遊びだったがゆえに、相互に討論し、勝ち負けを争うことができた。しかし、学問によって立身出世できる道が開かれ、〔…〕社会的権勢と経済的利益を獲得することができるようになったとき、換言すれば、お互いの利益にかかわらない遊びでなくなったとき、競争は熾烈となる。個々人は立身出世のため、より序列の上位をめざし、競争するようになるのである。そこでは、お互い「道理」を探究して対等に討論することも、同志の意識をもつこともなくなり、自分一人の立身出世を遂げるために、競争相手を出し抜く、秘かな読書に励むようになる。いわば科挙に合格するための受験勉強となるのである」(373-374頁)。会読の三原理は「討論による相互コミュニケーション性」「対等性」「結社性」だったと前田さんは教えてくれます。読書会の政治的ポテンシャルは侮れません。
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by urag | 2012-10-14 23:53 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 12日

取次搬入日確定&サンプル公開:森山大道写真集『モノクローム』

今年4月発売の『カラー』と同じく、2008年から2012年の4年間に東京を撮影した写真集となる『モノクローム』の、取次搬入日が決定しましたので、お知らせします。日販、大阪屋、栗田、太洋社が来週月曜日15日で、トーハンが16日(火)です。書店店頭に並びはじめるのは来週後半からかと思います。

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モノクローム
森山大道写真集
月曜社 2012年10月刊 本体4,600円 B5判(タテ257mm×ヨコ183mm)、ソフトカバー装312頁(ダブルトーン:190点)、ISBN978-4-901477-99-4

円熟という境地から遠く離れた、ストレートにして自在なフレーミング。2008年から2012年の4年にわたって撮り続けた東京を、白と黒=光と影に結晶させた最新作。装幀=大竹伸朗+小関学

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森山大道(もりやま・だいどう)1938年生まれ。最近の作品集に『Bye Bye Photograph』(講談社、2012年9月)、『カラー』(月曜社、2012年4月)などがある。2012年10月10日から2013年1月20日まで、ロンドンのテート・モダンで『カラー』を含む大規模な展覧会が予定されている(ウィリアム・クラインとの二人展)。

◎森山大道写真集*既刊書
『ハワイ』07年7月刊、本体6,000円
『にっぽん劇場』09年9月刊、本体3,200円
『何かへの旅』09年9月刊、本体3,600円
『オン・ザ・ロード』11年7月刊、本体2,800円
『カラー』12年4月刊、本体4,600円

品切書目
『新宿』02年8月刊
『NOVEMBRE』04年6月刊、フォトボックス限定1500部
『新宿+』06年11月刊
『大阪+』07年6月刊
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by urag | 2012-10-12 15:50 | 森山大道 | Trackback | Comments(0)
2012年 10月 09日

アイコンを変えました

幾度となく変遷してきた当ブログのアイコンでここしばらく使っていたオバケ画像は拾いものを加工したものでしたが、元ネタ(Ghostly International)があることをツイッターで教えてくださった方がいらしたので、使用を中止し、差し替えました。hさんありがとうございました。
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by urag | 2012-10-09 15:11 | ご挨拶 | Trackback | Comments(0)