「ほっ」と。キャンペーン

<   2012年 08月 ( 13 )   > この月の画像一覧


2012年 08月 31日

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍

a0018105_22584419.jpg

a0018105_2259106.jpg

★川田喜久治さん(写真集:『地図』)
作品展「2011 - phenomena」が以下の通り開催されます。2011年3月11日以降に撮影された作品群です。入場無料。また、作品展にあわせ、川田さんと東京都写真美術館専門調査員で写真史家の金子隆一さんによるスライド・レクチャーも開催されます。こちらは参加費500円。

◎「2011 - phenomena
期間:2012年9月4日~10月31日
場所:フォト・ギャラリー・インターナショナル(JR田町駅東口より徒歩10分;港区芝4-12-32)

川田喜久治 x 金子隆一スライド・レクチャー
日時:2012 年 10 月 26 日(金)18:00〜
会場:フォト・ギャラリー・インターナショナル
定員:25 名
参加費:500 円(当日お支払い下さい)
お申し込み方法:イベントタイトルのリンク先をご確認ください。


a0018105_22593770.jpg

★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、『アウシュヴィッツの残りのもの』共訳、同『涜神』共訳、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』共訳、パーチ『関係主義的現象学への道』編訳、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』編訳)
今月、弊社刊『到来する共同体』のほかに以下の訳書1点、共訳書1点を上梓されました。内容詳細は書名のリンク先をご参照ください。

自伝
ジャンバッティスタ・ヴィーコ著 上村忠男訳
平凡社ライブラリー 2012年8月 本体1,500円 HL判並製360頁 ISBN978-4-582-76768-1
帯文より:ヴィーコとはなにものか? 18世紀、不如意な暮らしの中で、近代的な〈知の地平〉を根底から批判する思考をどのようにつくりあげていったのか。自ら語る哲学的自伝!

※ヴィーコ自伝の翻訳は、『ヴィーコ自叙伝』(福鎌忠恕訳、法政大学出版局、1990年)、『ヴィーコ自叙伝』(西本晃二訳、みすず書房、1991年)に続き、本書で3冊目になります。また、上村さんによるヴィーコの翻訳は、『学問の方法』(共訳、岩波文庫、1987年)『イタリア人の太古の知恵』(法政大学出版局、1988年)、『新しい学』(全三巻、法政大学出版局、2007-2008年)に続いて、本書が4点目になります。

弱い思考
ジャンニ・ヴァッティモ/ピエル・アルド・ロヴァッティ編著 上村忠男/山田忠彰/金山準/土肥秀行訳
法政大学出版局 2012年8月 本体4,000円 四六判上製380頁 ISBN978-4-588-00977-8
帯文より:暴力性をともなう形而上学(強い思考)との決別。エーコなど、現代イタリアの思想家11名による論集。世界的に影響を与えた哲学アンソロジー、ついに刊行。

※ジャンニ・ヴァッティモ(1936-)、ピエル・アルド・ロヴァッティ(1942-)、ウンベルト・エーコ(1932-)、ジャンニ・カルキア(1947-2000)、アレッサンドロ・ダル・ラーゴ(1947-)、マウリツィオ・フェッラーリス(1956-)、レオナルド・アモローゾ(1952-)、ディエーゴ・マルコーニ(1947-)、ジャンピエロ・コモッリ(1950-)、フィリッポ・コスタ(1924-)、フランコ・クレスピ(1930-)など、哲学者、美学者、作家、社会学者ら11名による高名な論集(1983年刊)。哲学界だけでなく、芸術や建築にも影響を与えたポストモダン思想の重要なランドマークです。


a0018105_230442.jpg

★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
2006年『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3篇』、2010-2012年『純粋理性批判』全7巻に続く、光文社古典新訳文庫での中山訳カント、第三弾が発売されました。

道徳形而上学の基礎づけ
カント著 中山元訳
光文社古典新訳文庫 2012年8月 本体1,067円 文庫判並製416頁 ISBN978-4-334-75252-1
カバー裏紹介文より:「君は、みずからの人格と他のすべての人格のうちに存在する人間性を、いつでも、同時に目的として使用しなければならず、いかなる場合にもたんに手段として使用してはならない」。多くの実例をあげて道徳の原理を考察する本書は、きわめて現代的であり、いまこそ読まれるべき書である。

※光文社古典新訳文庫で中山さんはフロイトの訳書3点、ルソーの訳書2点、ニーチェの訳書2点をすでに上梓されています。これに加えて、日経BPクラシックスでウェーバーやマルクスの翻訳も手がけておられます。


★ジャン=ジャック・ルソー(著書:ウェブ連載「化学教程」)
白水社さんの新シリーズ「白水iクラシックス」内の「ルソー・コレクション」の第3弾『政治』が発売されました。同コレクションは白水社の『ルソー全集』からの改訳再編集版。第1弾は『起源』(4月)、第2弾『文明』(5月)でした。

政治
ジャン=ジャック・ルソー著 遅塚忠躬・永見文雄訳 川出良枝選・解説
白水社 2012年8月 本体2,600円 四六判並製252頁 ISBN978-4-560-09603-1
帯文より:生誕三百年!「立法者ルソー」の実像。『コルシカ国制案』『ポーランド統治論』を収録。理想と現実をつなぐ「都市の論理」。

※選者の川出さんによる巻末解説は「一国をどのように改革するか──政治の現場におけるルソー」です。同シリーズではあと、来月(9月)下旬刊行で、佐々木康之訳『孤独』の巻が刊行されます。この最終巻には『孤独な散歩者の夢想』と『マルゼルブ租税法院院長への四通の手紙』が収録されるとのことです。なお、同じく来月の光文社古典新訳文庫の新刊でも『孤独な散歩者の夢想』(永田千奈訳、中山元解説)が発売されるそうです。さらに、同文庫の来月新刊ではプラトン『ソクラテスの弁明』が納富信留さん訳で出るとのことです。
[PR]

by urag | 2012-08-31 23:00 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 30日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2012年9月27日(木)リニューアルオープン
丸善名古屋栄店:850坪(図書700坪;文具150坪)
愛知県名古屋市中区栄3-3-1 丸栄 6-7F
帳合はN。弊社へのご発注は人文書、芸術書、文芸書の主力商品。さる6月24日に閉店した同名書店(675坪)の移転増床リニューアルオープンです。経営主体であるジュンク堂書店の代表取締役社長、工藤恭孝さんのお名前がある挨拶状によれば、書籍雑誌の蔵書は旧店舗の倍になるとのことです。

2012年10月1日(月)オープン
ヴィレッジヴァンガード京都五条店:55坪(うち図書20坪;その他は雑貨・CDなど)
京都府京都市右京区西院追分待ち25-1 イオンモール京都五条 3F
帳合はO。弊社へのご発注は芸術書主力商品の平積分。イオンモール京都五条(旧イオンモール京都ハナ)の3Fはフードコード、レストラン街のほか、大垣書店イオンモール京都五条店がすでにありますが、ヴィレッジヴァンガードは雑貨主体のため、こうした半競合状態が可能なのですね。

2012年10月下旬オープン
蔦屋書店ひたちなか店:1900坪(図書1,000坪;レンタル・セル150坪;その他615坪)
茨城県ひたちなか市新光町30-4 
帳合はN。弊社へのご発注は森山大道写真集、芸術書主力商品、文芸書少々。ファッションクルーズニューポートひたちなか、ジョイフル本田、TOHOシネマズに隣接し、書籍・雑誌・コミックの販売のほか、DVD・CDのレンタル・セル、「その他」の売場というのは文具を扱うようです。2011年8月開店の「前橋みなみモール店」(群馬県前橋市、1650坪;図書900坪)、2012年3月開店の「フォレオ菖蒲店」(埼玉県久喜市、2300坪;図書1000坪)に続く、株式会社トップカルチャーの大型複合店の3店舗目になります。2店舗の前例に倣うなら、売場のその他615坪というのは、文具雑貨のほか、ゲーム、カフェの三者の合計かと思われます。トップカルチャーの代表取締役社長、清水秀雄さんのお名前がある挨拶状によれば、「リアル店舗だから実現できる、新たな商品との出逢い、共通の趣味をもった仲間との出逢い、新たな価値観との出逢い、など出逢いの場の提供を行って参ります」とのことです。
[PR]

by urag | 2012-08-30 15:07 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 26日

今月の注目近刊と新刊:石川幹人『超心理学』など

a0018105_241569.jpg

超心理学――封印された超常現象の科学
石川幹人(いしかわ・まさと)著
紀伊國屋書店 2012年8月 本体2,800円 46判上製388頁 ISBN978-4-314-01098-6

帯文より:これは科学である。テレパシー、透視、念力などの解明を目指す学問の第一人者による、渾身の書き下ろし。

版元紹介文より:超心理学という学問の現状と、科学的手法で研究されているもののアカデミズムで受け入れられない実態を、第一人者が解説する。テレパシーや透視などの現象の解明を目指す超心理学という学問は、正統的な科学の手法で研究されているものの、科学者たちからオカルト扱いされ、まともにとりあわれず「封印」されてしまう。日本における超心理学の第一人者が、その研究内容や成果などを詳細に解説するとともに、正しくても理解されない実態を明らかにし、科学のあるべき姿を問う。

版元紹介文(その2)より「超心理学=オカルト」と一蹴する前に! テレパシー、透視、念力などの解明を目指す超心理学は、正統的な科学の手法で研究されているものの、科学者たちからオカルト扱いされ、まともにとりあわれることなく「封印」されてきた。130年の歴史をもつ学問分野でありながら、日本にはアカデミックポストがないため、数少ない研究者のほとんどは、プライベートの時間に自費で研究しているのが現状だ。世界にも超心理学者は数百名存在するのみで、絶滅危惧学問ともいえる。本書は、日本における第一人者が、その研究内容や成果を詳細に解説するものであるとともに、学問として受けいれられてこなかった背景を明らかにし、科学のあるべき姿を問いなおす「科学論」でもある。著者渾身の書き下ろし。「用語集」「統計分析の基礎」「読書ガイド」など、付録も充実。(装丁 松田行正+日向麻梨子)

目次:
序章
 予知かそれとも偶然か/超心理学協会/デューク大学とJ・B・ラインの研究/ライン研究センター/本書の構成
第I部 超心理学の実態
 第1章 テレパシーの証拠をつかんだ
  ガンツフェルト模擬実験/厳密なガンツフェルト実験の成果/不遇な「現代のガリレオ」
 第2章 米軍の超能力スパイ作戦
  マクモニーグルの遠隔視実験/スターゲイト・プロジェクト/遠隔視実験を改良した透視実験/ガンツフェルト実験とのちがい/スターゲイト・プロジェクトの幕引き
 第3章 超能力の実在をめぐる懐疑論争
  トンデモ超能力対談/かたくなな否定論者/超心理学の不祥事/厳密化する超心理学
第II部 封印する社会とメディア
 第4章 奇術師たちのアリーナ
  ホットリーディング/奇術師 VS 奇術師/私の来歴/超心理現象に興味をもつ人
 第5章 能力者と称する人々
  ナターシャの人体透視/御船千鶴子の千里眼事件/能力者研究の背景/「自分には超能力があります!」/職業欄はエスパー
 第6章 マスメディアの光と影
  ドラマの科学監修/能力者へのインタビュー/大衆の受容と排除/心理学より工学だ/マスメディアは両刃の剣/演出かやらせか
第III部 封印は破られるか
 第7章 心の法則をもとめて
  東洋的な問い/ヒツジ・ヤギ効果/ESPの発揮を高める要因/超心理学の実験者効果/超心理現象は無意識のうちに起きる/内観報告による心理分析
 第8章 予知――物理学への挑戦
  未来は予感できる/予知も透視のひとつか/透視の焦点化/簡単に実施できる予感実験
 第9章 意識に共鳴する機械
  感情エージェントが笑う/乱数発生器によるミクロPK実験/地球意識プロジェクト/下降効果のとらえにくさ/超心理現象の情報システム理論
 第10章 霊魂仮説について考える
  霊魂という万能仮説/懐疑論者が一目おく超心理現象/霊魂は肉体の死後も存続するのか/霊魂仮説から超心理発揮仮説へ/詰めこみ理論から拡がり理論へ
 終章
  物理学者とのオカルト対談/オカルト論議は信念論争/封印構造の認知的側面/封印は解かれるか
あとがき
付録――「用語集」「統計分析の基礎」「読書ガイド」
索引

★28日取次搬入予定。いわゆる入門書というよりは、超心理学の歴史的挑戦と社会的地位をめぐる様々な困難をありのまま描いたごく真面目なリポートであり、奇想天外な超常現象のエピソードを期待している読者向きではありません。本書にあるのはお気楽な暇つぶしや娯楽ではなく真剣な探究なので、様々な科学実験に欠かせない真剣さや真面目さゆえに生じてくる退屈はむしろ相応しいものですらあります。これは、本書が面白くないと言っているのではありません。学問的地道さと真摯さの本当の奥ゆきは、一見すると退屈かもしれない細やかな分析や検証の積み重ねにこそあるということを本書は繰り返し教えてくれるのです。

★著者は一般企業での人工知能研究や政府系シンクタンクなどを経て、97年より明治大学で教鞭をとっています。認知情報論や科学基礎論が専門で、日本における超心理学の第一人者です。第10章では著者が受け持った市民講座の様子とその変遷が紹介されています。最初は多様かつ多数の受講者が押し寄せたものの、真面目にやればやるほど受講者が減り、やがて定員割れで閉講になったそうです。超能力や霊魂という言葉に反応する人は多くても、その実直な分析や検証という「科学的実践」までには興味を持てない人が多いのかもしれません。本書の最後にはこう書かれています。「現役の超心理学者は現在、世界に数百名ほどしか存在せず、学問分野として風前の灯火だ」(333頁)。

★しかしながら、容易に解明できなかったり、等閑視されたりする未知の領域へ果敢に挑みつづける超心理学はけっして無駄でも無用でもなく、困難だからこそ面白いし、大事なのですね。不当なまでに無視されたり歪められたりするからこそ、光をあてつづけるべきなわけです。誰かが担わなければならない貴重な仕事だと思います。帯文に引用されたウィリアム・ジェイムズの言葉が素敵です。「我々が手さぐりしている暗闇がいかに大きいか理解すること。我々の出発点になった自然科学の前提は暫定的なものであり、改定可能なのだということを忘れてはならない」(『心理学の諸原理』1890年より)。巻末には用語解説や文献案内が付されおり、不案内な読者は、関連書が存外に多いことに驚くかもしれません。

a0018105_244921.jpg

フリードリヒ・ハイエク
ラニー・エーベンシュタイン(Lanny〔Alan O.〕 Ebenstein)著 田総恵子訳
春秋社 2012年8月 本体3,500円 四六判上製512頁 ISBN978-4-393-62184-4

帯文より:没後20年、世界はようやくハイエクに追いついた! 戦争と社会主義の20世紀を駆け抜けた経済思想家の生涯と交遊を余すことなく描ききった傑作ノンフィクション。

版元紹介文より:ミルトン・フリードマンの伝記でも話題になったジャーナリスト、ラニー・エーベンシュタインによる、経済学者・思想家フリードリヒ・フォン・ハイエク(1899-1992)の伝記です。複数の国を移住した平凡ならぬ実人生、人文・社会・自然科学を横断しながら深められた自由主義思想、そして、社会主義と戦争に吹き荒れた20世紀の歴史、この三つを交差させながら描いた本書は、ハイエクファンのみならず、多くの方々に、歴史と現在が深くつながっていることを教えてくれる一冊です。

原書:Friedrich Hayek: A Biography, St. Martin's Press, 2001.

目次:
序文
第1部 戦争 1899-1931
 第1章 家族
 第2章 第一次世界大戦
 第3章 ウィーン大学
 第4章 ニューヨーク
 第5章 ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス
第2部 イギリス 1931-1939
 第6章 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
 第7章 ライオネル・ロビンス
 第8章 ジョン・メイナード・ケインズ
 第9章 貨幣と景気変動
 第10章 資本について
 第11章 国際金本位制
 第12章 社会主義経済計算論争
 第13章 経済学、知識、情報
第3部 ケンブリッジ 1940-1949
 第14章 理性の乱用と衰退
 第15章 方法論について
 第16章 『隷属への道』
 第17章 有名人になる
 第18章 モンペルラン協会
 第19章 心理学
 第20章 カール・ポパー
第4部 アメリカ 1950-1962
 第21章 シカゴ大学
 第22章 シカゴ学派
 第23章 社会思想委員会
 第24章 ジョン・スチュアート・ミル
 第25章 『自由の条件』
 第26章 ハイエクの影響力
第5部 フライブルク 1962-1974
 第27章 『法と立法と自由』
 第28章 自由と法
 第29章 マルクス、進化、ユートピア
 第30章 政府と道徳
 第31章 思想史家として
 第32章 ザルツブルク時代
第6部 ノーベル賞 1974-1992
 第33章 栄誉
 第34章 ミルトン・フリードマン
 第35章 後期の貨幣観
 第36章 経済問題研究所
 第37章 マーガレット・サッチャー
 第38章 おじいちゃん
 第39章 『致命的な思いあがり』
 第40章 ノイシュティフト・アム・ヴァルド墓地
 第41章 「普遍的平和の秩序」
後記
謝辞
関連年表
原注
人名索引

★発売済。著者はカリフォルニア大学で教鞭も執っているジャーナリストで、既訳書には『最強の経済学者ミルトン・フリードマン』(大野一訳、日経BP社、2008年)があります。「ネオリベ」の唱導者と目されることもあるハイエクの実像は、さほど単純ではありません。ハイエク理論の研究書はこれまで数多く出版されていますが、人間ハイエクを知るためには本書から学ぶものが多そうです。おそらく日本初となる、本格的な伝記の翻訳ではないでしょうか。たとえば第38章ではヘビースモーカーだったハイエクがパイプをやめてかぎタバコを愛するようになったエピソードが紹介されています。銘柄は、ロンドンの「フリボーグ&トレイヤー」の「ドクター・ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス・ミックス」。どうでもいいような情報などではなくて、伝記の醍醐味はこうした細部にあると思います。クレスゲ+ウェナー編『ハイエク、ハイエクを語る』(嶋津格訳、名古屋大学出版会、2000年)とともにじっくり読みたい本です。


時間・労働・支配―─マルクス理論の新地平
モイシェ・ポストン(Moishe Postone, 1942-)著 白井聡+野尻英一監訳
筑摩書房 2012年8月 本体6,000円 A5判上製688頁 ISBN978-4-480-86722-3

帯文より:近代=資本主義への〈社会理論〉の応答。マルクス理論の、新たなる古典の誕生。グローバルな経済危機を招来し、絶えざる世界変容を駆動する資本主義=近代。その深層構造を明らかにし、従来のマルクス理論を刷新する〈社会理論〉の金字塔!

本書より:二〇世紀の大規模な歴史的変容が示唆するのは、マルクスの資本主義=近代に対する批判といま一度、出会い直すことの重要性である。本書において展開されるマルクスの批判理論に対するアプローチは、資本主義の深層構造を、伝統的なマルクス主義の資本主義批判とは根本的に異なる仕方で再概念化するものである。

推薦文:こんなに「豊かな社会」に、どうして、忙し過ぎて余裕のない人と、仕事がなくて貧しい人しか、いないのか? そのからくりを知りたい人は、本書を繙こう。鍵は……抽象的時間と抽象的労働。――大澤真幸

原書:Time, Labor, and Social Domination, Cambridge University Press, 1993.

目次:
日本の読者へ
謝辞
凡例
第一部 伝統的マルクス主義への批判
 第一章 マルクスの資本主義批判を再考する
  1 イントロダクション
  2 『経済学批判要綱』――マルクスにおける資本主義とその超克の概念を再考する
 第二章 伝統的マルクス主義の諸前提
  1 価値と労働
  2 リカードとマルクス
  3 「労働」・富・社会的構成
  4 労働に立脚した社会批判
  5 労働と全体性――ヘーゲルとマルクス
 第三章 伝統的マルクス主義の限界と《批判理論》の悲観論への転回
  1 批判と矛盾
  2 フリードリッヒ・ポロックと「政治的なものの優越」
  3 ポロックのテーゼの前提とジレンマ
  4 マックス・ホルクハイマーの悲観論への転回
第二部 商品――マルクスによる批判の再構築へ向けて
 第四章 抽象的労働
  1 カテゴリーの再解釈への諸条件
  2 マルクスによる批判の歴史的に規定された性格
  3 抽象的労働
  4 抽象的労働と社会的媒介
  5 抽象的労働と疎外
  6 抽象的労働と物神性
  7 社会的諸関係・労働・自然
  8 労働と道具的行為
  9 抽象的かつ実質的な全体性
 第五章 抽象的時間
  1 価値量
  2 抽象的時間と社会的必要性/必然性
  3 価値と物質的富
  4 抽象的時間
  5 社会的媒介の諸形態と意識の諸形態
第六章 ハーバーマスのマルクス批判
  1 初期ハーバーマスのマルクス批判
  2 『コミュニケーション的行為の理論』とマルクス
第三部 資本――マルクスの批判の再構築へ向けて
 第七章 資本の理論に向かって
  1 貨幣
  2 資本
  3 ブルジョワ市民社会批判
  4 生産の領域
 第八章 労働と時間の弁証法
  1 内在的動態性
  2 抽象的時間と歴史的時間
  3 変容と再構成の弁証法
 第九章 生涯の軌道
  1 剰余価値と「経済成長」
  2 資本主義の動態性と階級
  3 生産と価値増殖
  4 実質的な全体性
 第十章 結論的考察

訳者解説
主要参考文献
索引(事項/人名)

★発売済。著者はシカゴ大学教授でマルクス研究者として著名ですが、実に著書が翻訳されるのは今回が初めて。2008年夏に来日講演したことが、本訳書の誕生の機縁となっているようです。資本主義批判の大部な理論書で、マルクスの『要綱』や『資本論』をまったく読んだことがない読者にはハードルが高いかもしれませんが、予備知識の有無を抜きにして、まずは本書の懇切な「訳者解説」を読んでからただちに本論に挑んでもまったく構わないのだと思います。あるいはすでにネグリやハーヴェイなどをひもといてみたことのある読者は、彼らと異なるポストンのマルクス理解に興味がわくでしょう。担当編集者のIさんは本書を次のように紹介してくださいました。「マルクス理論を再解釈することによって、資本主義=近代の深層構造を解析し、その原理的な超克の可能性をする一書です」と。ポストン流の「甦るマルクス」のインパクトは、じわじわと読書人に浸透していくことでしょう。装幀はさいきんルディネスコ『ラカン、すべてに抗って』(河出書房新社、2012年7月)を手掛けられている佐々木暁さんによるもの。今回のデザインも繊細かつ力強く、美しいですね。
[PR]

by urag | 2012-08-26 23:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 21日

本日より順次店頭販売開始:アガンベン『到来する共同体』

昨日8月20日取次搬入済、本日21日以降、書店店頭での販売が順次開始となる弊社新刊、ジョルジョ・アガンベン『到来する共同体』をご紹介します。hontoでは今日現在「24時間」以内の発送、amazonにも在庫があります。

到来する共同体
ジョルジョ・アガンベン著 上村忠男訳
月曜社 2012年8月 本体1,800円 B6変型判上製160頁 ISBN978-4-901477-97-0

内容:バタイユ、ブランショ、ナンシーが投げかけた共同体の(不)可能性への問いを、アガンベンは再定礎する。古代から現代まで、哲学から文学までを縦走横断し、存在と倫理、単独者と救済などの諸関門を経巡って、問いは深められていく。アガンベンの政治哲学の鍵となる代表作、ついに翻訳なる。来たるべき民主主義のために街路へ出て、戦車と対峙しようとするすべての人々のもとへ。「叢書・エクリチュールの冒険」第3回配本。

推薦のことば:
イタリア現代思想の旗手ジョルジョ・アガンベンは私が近年出会ったなかでもっとも繊細で資料調査の行き届いた書き手の一人だ。ヴァルター・ベンヤミンを連想させるその著作はエレガントで快活であり――いささか使い古された言いかたではあるが――まったく革命的だ。―アヴィタル・ロネル

アガンベンのテクストは、同一性と普遍性の両方を超えて作動する一種の言語的属性としての共同体をめぐる貴重な哲学的省察である。博識で議論は広大な範囲に及びながらも警句的な軽やかさを具えた彼の著作は、タルムードやプラトン、スピノザ、ハイデガー、ニーチェ、ウィトゲンシュタインらの思想のうちに見てとることのできるもっとも将来性豊かな多義性を前面に押し出して、人間とは取り返しのつかなさを身上とする歴史の内部にあっての偶発的で共同的な「存在」であることを公言する。このたえず移動と分裂を重ねていく仕事は、存在論的思想におけるもっともダイナミックなものをして、思考することのもっともむずかしいものに影響が及ぶよう導いていく。現代における社会性の諸形態がそれである。―ジュディス・バトラー

『到来する共同体』が試みているのは、共同体の名のもとで使用可能ないかなる概念をも超えた共同体を示そうとすることである。それは本質の共同体、もろもろの現実存在の集合体ではない。つまりそれはまさしく、政治的同一性によっても宗教的同一性によってももはやつかみ取ることのできないものなのだ。それ以下の何ものでもないのである。―ジャン=リュック・ナンシー

原書: La comunità che viene, Bollati Boringhieri, 2001.

目次:
1 なんであれかまわないもの
2 リンボから
3 見本
4 生起
5 個体化の原理
6 くつろぎ
7 マネリエス
8 悪魔的なもの
9 バートルビー
10 取り返しがつかないもの
11 倫理
12 ディム・ストッキング
13 光背
14 偽名
15 階級のない社会
16 外
17 同名異義語
18 シェキナー
19 天安門
取り返しがつかないもの
 I
 II
 III
二〇〇一年の傍注――夜のティックーン
訳者あとがき

著者:ジョルジョ・アガンベン(Giorgio AGAMBEN)
1942年ローマ生まれ。イタリアの哲学者。著書に、1970年『中味のない人間』(岡田温司・岡部宗吉・多賀健太郎訳、人文書院、2002年)、1977年『スタンツェ』(岡田温司訳、ありな書房、1998年;ちくま学芸文庫、2008年)、1978年/2001年『幼児期と歴史』(上村忠男訳、岩波書店、2007年)、1982年/1989年『言葉と死』(上村忠男訳、筑摩書房、2009年)、1990年/2001年『到来する共同体』(上村忠男訳、月曜社、2012年、本書)、1993年『バートルビー』(高桑和巳訳、月曜社、2005年)、1995年『ホモ・サケル』(高桑和巳訳、以文社、2003年)、1996年/2010年『イタリア的カテゴリー』(岡田温司監訳、みすず書房、2010年)、1996年『人権の彼方に』(高桑和巳訳、以文社、2000年)、1998年『アウシュヴィッツの残りのもの』(上村忠男・廣石正和訳、月曜社、2001年)、2000年『残りの時』(上村忠男訳、岩波書店、2005年)、2002年『開かれ』(岡田温司・多賀健太郎訳、人文書院、2004年;平凡社ライブラリー、2011年)、2003年『例外状態』(上村忠男・中村勝己訳、未來社、2007年)、2005年『涜神』(上村忠男・堤康徳訳、月曜社、2005年)、2005年『思考の潜勢力』(高桑和巳訳、月曜社、2009年)、2007年『王国と栄光』(高桑和巳訳、青土社、2010年)、2008年『事物のしるし』(岡田温司・岡本源太訳、筑摩書房、2011年)、2009年『裸性』(岡田温司・栗原俊英訳、平凡社、2012年)などがある。

訳者:上村忠男(うえむら・ただお)
1941年兵庫県生まれ。思想史家。著書に、『ヴィーコの懐疑』(みすず書房、1988年)、『歴史家と母たち』(未來社、1994年)、『ヘテロトピアの思考』(未來社、1996年)、『バロック人ヴィーコ』(みすず書房、1998年)、『歴史的理性の批判のために』(岩波書店、2002年)、『超越と横断』(未來社、2002年)、『グラムシ 獄舎の思想』(青土社、2005年)、『韓国の若い友への手紙』(岩波書店、2006年)、『無調のアンサンブル』(未來社、2007年)、『現代イタリアの思想をよむ』(平凡社ライブラリー、2009年)、『ヴィーコ』(中公新書、2009年)、『知の棘』(岩波書店、2010年)、『カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まってしまった』を読む』(平凡社、2010年)、『ヘテロトピア通信』(みすず書房、2012年)などがある。訳書に、G・C・スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』(共訳、月曜社、2003年)、エンツォ・パーチ『関係主義的現象学への道』(編訳、月曜社、2011年)、スパヴェンタ/クローチェ/ジェンティーレ『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』(編訳、月曜社、2012年)のほか、ヴィーコ、クローチェ、グラムシ、プラーツ、エーコ、ネグリ、ヴァッティモ、ギンズブルグ、アガンベンなど多数。

★同書は1990年にエイウディ社から初版が出ていますが、今回弊社で翻訳したのは、2001年に数頁の「傍注」を追加してボラーティ・ボーリンギエリ社から刊行された新版です。本書の造本について一言ご説明しますと、ひまわり色の本文紙に墨のインクで刷っています。見た目のシンプルさを重視したいため、帯は付しません。ひまわり色と墨色のみでまとめたかったので、カバーの裏地(というかもともとの紙の色)もひまわり色で、花切もスピンは黒、表紙も黒です。ただし表紙に載っている書名や著者名、社名は銀色。
a0018105_1855919.jpg

a0018105_17534160.jpg

a0018105_1754340.jpg


★これまでに各社より刊行されている現代思想系の共同体論を以下にご紹介します。
ジャン=リュック・ナンシー『無為の共同体――哲学を問い直す分有の思考』西谷修・安原伸一朗訳、以文社、2001年6月
モーリス・ブランショ『明かしえぬ共同体』西谷修訳、ちくま学芸文庫、1997年6月a0018105_17505682.jpg

上記の元版と親本が以下になります。
ナンシー『無為の共同体――バタイユの恍惚から』西谷修訳、朝日出版社、ポストモダン叢書第一期第七巻、1985年5月
ブランショ『明しえぬ共同体』西谷修訳、朝日出版社、ポストモダン叢書第一期第三巻、1984年10月
a0018105_17513461.jpg

アルフォンソ・リンギス『何も共有していない者たちの共同体』野谷啓二訳、洛北出版、2006年2月
田崎英明『無能な者たちの共同体』未來社、2007年12月
a0018105_17515737.jpg

さらに、2001年版の「傍注」で触れられている思想集団「ティックーン(ティクーンとも)」については、以下の書籍をご参照ください。
不可視委員会『来たるべき蜂起』(『来たるべき蜂起』翻訳委員会訳)、彩流社、2010年5月
『来たるべき蜂起』翻訳委員会+ティクーン『反-装置論――新しいラッダイト的直観の到来』以文社、2012年7月
a0018105_17522589.jpg

なお、思想集団「ティックーン」や上記2書については、『到来する共同体』の訳者である上村忠男さんが月刊「みすず」で連載中の「ヘテロトピア通信」において、10月号、11月号と連続して言及される予定です。また、上村さんは今月、ヴィーコ『自伝』(平凡社ライブラリー)、ヴァッティモ+ロヴァッティ編著『弱い思考』(共訳、法政大学出版局)なども上梓されていますが、こちらは近日、別途ご紹介する予定です。
[PR]

by urag | 2012-08-21 17:54 | 人文書既刊 | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 20日

本日スタート:二宮隆洋さん追悼フェア@ブックファースト青葉台店

2012年4月15日、60歳の若さで永眠された名編集者、二宮隆洋さんを追悼するブックフェアが本日、ブックファースト青葉台店で始まりました。フェアの商品を6000円以上お買い上げのお客様、先着20名様に、先月都内某所で行われた「偲ぶ会」で配布されたカラー冊子が進呈されます。二宮さんが手掛けられた書籍がカラー写真で紹介され、二宮さん自身がお書きになった文章も収録されています。中村鐡太郎さんが編集構成を担当されたこの冊子は本当にレアなものですので、二宮さんの名前をよく目にされてきた読者の方はぜひとも入手してご覧になってください。どれほど二宮さんが素晴らしい編集者だったかがよく分かると思います。

◎親密なる秘義 ―編集者二宮隆洋の仕事 1977-2012―
期間:2012年8月20日~9月30日(予定)
展開場所:ブックファースト青葉台店 4Fカフェ横コーナー
展開内容:二宮隆洋(1951-2012)さんが編集・企画した書籍、ならびに蔵書を400点余りを展開。
特典:フェア書目を税込で合計6,000円以上お買い上げの方に、当フェア企画の元となった特製カラー冊子を贈呈(先着20部)。

a0018105_20552766.jpg

[PR]

by urag | 2012-08-20 20:57 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 18日

2012年8月の注目新刊:「アイデア」日本オルタナ出版史特集号など

アイデア No.354(2012.9) 《特集》:日本オルタナ出版史 1923-1945——―ほんとうに美しい本
誠文堂新光社 2012年8月 本体2,829円 A4変型判並製200頁 ISSN0019-1299
  
版元紹介文より:関東大震災(1923年9月1日)と敗戦(1945年8月15日)。日本人の精神史に強い影響を与えた二つの出来事に挟まれた時代は、日本における近代出版の青春期でもあった。時代を駆け抜けたインディペンデントでオルタナティヴな出版人たちの可能性を出版の未来へとつなぐ総力特集。

内容:
自由民権運動家の最後……宮武外骨
アナーキスティック・ポーノグラファーズ……伊藤竹酔、坂本篤、梅原北明、竹内道之助
出版者としてのサンボリスト/モダニスト詩人の肖像……北原鉄雄、長谷川巳之吉、春山行夫、平井功、岩佐東一郎
コスモポリタニズム‒ジャポニズム往還……田丸卓郎、福原信三、岡村祐之、上村益郎
空想的社会主義あるいは民衆的工芸運動……柳宗悦、寿岳文章、西川満、山崎斌
フレンチ‒ジャーマン純粋病患者たち……江川正之、草野貞之、野田誠三、山本武夫
趣味人・好事家・蒐集狂コミュニティ……神代種亮、斎藤昌三、岩本和三郎、廣瀬千香
限定本のハード・コア……五十沢二郎、秋朱之介、平井博、志茂太郎、森谷均

★発売済。構成と文は、元「ユリイカ」編集長の郡淳一郎さん。郡さんらしい、非常に密度の濃い特集号で、異彩を放った才気溢れる出版人たちの足跡と彼らがつくった貴重な美しい出版物を惜しげもなくカラー写真で満載する、めくるめきビブリオマニアの世界となっています。なぜこうも先人のつくった書物は素晴らしいのか。ただただその魅力に打たれます。内容サンプルは誌名のリンク先でご覧になれます。
a0018105_23102068.jpg


文学におけるマニエリスム――言語錬金術ならびに秘教的組み合わせ術
グスタフ・ルネ・ホッケ著 種村季弘訳
平凡社ライブラリー 2012年8月 本体2,200円 HL判並製704頁 ISBN978-4-582-76769-8

帯文より:異形にかがやく精神史の〈常数〉。美術史の局所から解放された概念〈マニエリスム〉の文学における展開の諸相と本体とを膨大な事例を引証してとらえる圧倒的な書物!『迷宮としての世界』姉妹編。解説=高山宏

カバー裏紹介文より:文学におけるマニエリスムの展開の諸相とその本体を、ヨーロッパ世界の膨大な作品のうちに追い求め、レトリックや文体論、神秘主義や錬金術、その他多種多様な領域を精神史的洞窟学が探査するとき、解体し断片化する世界と時代の別の光学が立ち現れる。美術史的〈常数〉にまで鍛造した鬼才ホッケの、種村季弘翻訳になるこの圧倒的書物、待望の再刊!『迷宮としての世界』姉妹篇。

原書:Manierismus in der Litetratur: Sprach-Alchimie und esoterische Kombinationskunst, Hamburg, 1959.

目次:
序《ヨーロッパ文学におけるマニエリスム》
ドイツ語版刊行者(エルネスト・グラッシ)の註

第一部 魔術的文字
 緒言 変則的なものの伝統のために
 1 ヨーロッパの隠れた緊張の場
 2 言語的二重生活
 3 変則詩
 4 組み合わせ術(アルス・コンビナトリア)
 5 魔術的詭弁
第二部 形象のなかの世界
 6 隠喩至上主義(メタフォリスムス)
 7 魔神の呪縛(ソフィスム・マジック)
 8 ゴンゴリスモ、マニリズモ、プレシオジテ
 9 シェイクスピアの変形(デフォルマチオン)
 10 形象の機知
 11 ドイツの理性芸術
第三部 異-修辞学と綺想主義
 12 錬金術と言葉の魔術
 13 意識的なまやかし
 14 効果のメカニズム
 15 美の公式
 16 マニエリスムの綱領起草者たち
 17 謎術としての寓意画法
第四部 芸術的虚構としての人間
 18 音楽主義
 19 ジェスアルド・ダ・ヴェノーサからストラヴィンスキーまで
 20 音楽のカバラ学
 21 ダイダロスとディオニュソス
 22 マニエリスム的演劇
 23 迷路小説
 24 叙事詩的怪物
結論部 マニエリスム的テーマとしての人間
 25 神性の夜の側
 26 白い神秘主義と黒い神秘主義
 27 決疑論と放縦主義
 28 神の発明家
 29 十字の徴(シグヌーム・クルシス)

付録 ヨーロッパの綺想体――ミニチュア・アンソロジー
 I スペイン/II イタリア/III フランス/IV 英国/V アメリカ合衆国/VI ロシア/VII ドイツ


著者紹介
文献解題
訳者あとがき

解説 風流(みやび)たる花と我思(あれも)ふ――『文学におけるマニエリスム』に(高山宏)
人名索引・事項索引 

★発売済。親本は1971年に現代思潮社(現:現代思潮新社)から刊行された二巻本。ライブラリー化にあたって全一巻となったのが嬉しいですね。しかも親本同様に、索引がついています。本書と対をなす『迷宮としての世界――マニエリスム美術』(種村季弘・矢川澄子訳、美術出版社、1966年)が、岩波文庫二巻本になったのが昨年(上巻)と一昨年(下巻)。全一巻だったらいいのに、という思いはともかくとして、『迷宮としての世界』の親本は函入本で、そこにかの三島由紀夫による「未聞の世界ひらく」という讃辞が印刷されていて、造本も美しく、60年代から70年代にかけての美術出版社や現代思潮社の素晴らしい知的冒険ぶりを思うと、やはり「昔はよかった」と慨嘆せざるをえません(時代が違うのですから今がダメだというつもりはまったくありません)がそれもまた措くとして、ともあれホッケが文庫で読めるんですから、それはそれで実に喜ばしく、あとは「ほかにもホッケの品切本があるんだし、どんどん文庫化されないかな」と期待するのでした。『文学におけるマニエリスム』はこの分野の基本中の基本図書であり、後進たちに多大な影響を与え続けてきた偉大なるタネ本です。ゴチャゴチャ考えずに即、買う。これが正解。
a0018105_23142980.jpg


デモクラシーの世界史
ベンジャミン・イサカーン+スティーヴン・ストックウェル編 猪口孝日本版監修 田口未和訳
東洋書林 2012年8月 本体3,800円 A5判上製332頁 ISBN978-4-88721-803-1

カバーソデ紹介文より:先史時代のギリシア都市国家に伝播した異文化からの共同体統治モデル、中世のイスラーム社会や北欧における驚異的な合議制・選挙制、植民地主義勢力とインディアンやアボリジニによる土着民主主義との相互関係、家父長制や偏見の下に封じ込められていた現代中東の挿話、そして代議制に取って代わる権力監視メカニズムの新しい流れ――悉知のものと思われてきた民主主義へのさらなる補完を試み、来たるべき〈デモクラティア〉像を詳察する!!

版元紹介文より:比較的日の浅い考えと思われがちな民主主義が、実は古代ギリシア以前の中東やインド、中国、イスラムが栄えた中世ヨーロッパにとっての暗黒時代、アイスランド、ベニス、アフリカの部族社会、オーストラリアなどでも確立されていたこと、また、現代においては市民の草の根運動の結果から発展してゆく過程などを確認する。民主主義の歴史や今後の行方を考える上で極めて重要な示唆に富むばかりでなく、調査・研究においても有益な情報となる一冊。

原書:The Secret History of Democracy, Palgrave Macmillan. 2011.

目次:
序――民主主義と歴史
第1部 アテナイ以前の民主主義
 第1章 「原始民主制」の何がそれほど「原始的」なのか?――古代オリエントとアテナイの比較(ベンジャミン・イサカーン)
 第2章 フェニキアの初期民衆政治とギリシアの都市国家(スティーヴン・ストックウェル)
 第3章 古代インドの共和国と議事民主制度(スティーヴン・ムールバーガー)
 第4章 中国の民主主義を掘り起こす(ポーリン・キーティング)
第2部 <暗黒時代>の民主主義
 第5章 ヴェールに隠れたイスラーム民主制度史(モハマド・アブダッラ+ハリム・ラネ)
 第6章 理想と願望――中世アイスランドの民主主義と法制度(パトリシア・ピレス・ボーローザ)
 第7章 初期ヴェネツィア共和国の民主文化(スティーヴン・ストックウェル)
第3部 土着民主主義と植民地主義
 第8章 アフリカの土着民主主義――ウガンダのバガンダ族(イマキュレート・キッツァ)
 第9章 自主独立のハンターたち――カナダのメティ社会に関する考察(フィリップ・ペイン)
 第10章 アボリジニのオーストラリアと民主主義――古い伝統、新しい課題(ラリッサ・ベーレント)
 第11章 ポスト・アパルトヘイト先史――南アフリカのケープ植民地における非人種差別的民主主義(1853-1936)(ホッピー・フライ)
第4部 現代民主主義の新たな潮流
 第12章 民主主義の誕生――中東の民主的対話における女性の役割(K・ルイザ・ガンドルフォ)
 第13章 イラクのストリート――ポスト・フセインの抗議運動と民主主義(ベンジャミン・イサカーン)
 第14章 監視民主主義?(ジョン・キーン)
結――民主主義の歴史を民主化する

 監修者あとがき――新しい〈民主主義の物語〉のために
 参考文献
 索引

★23日取次搬入予定。帯文にある、本書に寄せられた賛辞は以下の通り。「山積する21世紀の諸問題を前にして、いかなる政治制度が有効なのか……本書はその疑問に応え、人類のもつ創造性への希望を与えてくれる」(ジョン・マーコフ、ピッツバーグ大学名誉教授)。「古今の知られざる〈民主主義のルーツ〉と〈疑似民主制〉について語り、政治史へのより深い理解と再考を促す、魅力的で信頼に足る啓蒙的論集」(クルト・ラーフラウプ、ブラウン大学名誉教授)。大量の政治家と官僚を生み出して国民を翻弄している、わが国の不健全な議会制民主主義を思う時、世界史をひともくことは大きな意義があると言えるでしょう。真の「民主化」への道のりが遠くとも、「真の」民主化が矛盾に満ちた幻想でしかなくても、「共に生きること」の可能性はそこに賭けられているのですから。
a0018105_2354944.jpg

[PR]

by urag | 2012-08-18 23:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 12日

2012年8月の注目新刊近刊:ガタリ『精神病院と社会のはざまで』ほか

a0018105_20593443.jpg

精神病院と社会のはざまで——分析的実践と社会的実践の交差路
フェッリックス・ガタリ著 杉村昌昭訳
水声社 2012年8月 本体2,500円 四六判上製本文192頁+図版8頁 ISBN978-4-89176-916-1

帯文より:精神の領土へ! ギリシャのレロス島から、フランスのラボルド精神病院へ——―。稀代の哲学者の原点を知るための、もっともコンパクトなガイダンス。ガタリ自身の日記、盟友ジャン・ウリによる追悼文、貴重な写真などをモンタージュする。

原書:De Leros à La Borde, Éditions Lignes, 2012.

目次:
 本書の成り立ちについて(ステファヌ・ナドー)
 フェリックス・ガタリの思い出(マリー・ドゥピュセ)
レロス島日記
精神の基地としてのラボルド
 フェリックスのために(ジャン・ウリ)
 フェリックス・ガタリと制度論的精神療法――制度と主観性をめぐって(杉村昌昭)
 訳者あとがき

★8月20日頃発売予定。「レロス島日記」は1989年9月から10月にかけてのガタリの日記。デドカネソス諸島のトルコにほど近い、人口九千人の小さな島「レロス島」にある精神業者の収容施設や、アテネのダフニ病院への訪問とその前段が記されています。かの収容施設は「千二百人の病者が閉じ込められ〔…〕看護師も精神科医もいない正真正銘の強制収容所」(52頁)で、「ギリシャ中からもっとも重症の患者を集めた掃き溜め」になっており、会いに来る家族はなく(67頁)、「施設の規模にしては明らかに過剰な」千人もの職員がいて、ただ「番人をしているだけ」で多額の予算が職員手当に吸収されている(64頁)有り様でした。中の様子は「二十年前のフランスの精神病院の大半とまったく同じ」で、「剃り上げられた頭、長年にわたる孤独と苦悩で消え入りそうな顔、まるで幻影のような人々をたくさん見てきた。身につけているのは、強制収容所と同じ、ほとんど肉体を覆っているとは言えないような、袋のような一様の衣服である」(69頁)とガタリは書きとめています。なお、本書にはジョゼフィーヌ・ガタリが撮影した七葉の白黒写真が収録されています。

★ガタリはレロス島の「監獄-病院」(69頁)の女性部門、男性部門、こども部門を巡回し、「ぞっとする感じはあるが、ジャーナリズムが書きたてるような死の収容所ではない」(73頁)ことを発見するものの、「いずれにしろ、ひどい状態で」「こうした環境で死を待つしかない」(70頁)患者たちのことを、「彼らは人間であって、野獣ではない!」(71頁)と思いやっています。「集合的施設はなんらかの仕方で国家的・官僚的ヒエラルキーから解放しなければならない。このヒエラルキー構造こそ集合的施設が機能不全を起こしている第一の原因なのである」(54頁)。「精神病院をどうするかという問題は、単に精神的な事象の専門家だけの問題ではない。それは「社会体」全体にかかわる価値と倫理の次元にかかわる問題である」(57頁)。「レロス島の真のスキャンダルは、われわれの社会が社会的領域でなにかを刷新する力を奪い取られているということである」(77頁)。

★続いて訪れたダフニ病院は千九百人の病者を抱え、十六のサービス部門や三十三ものパビリオン(病棟)があり、百三十五人の医師(精神科医はそのうち四十五人)がいるものの、その九割は一日二時間病院を訪れるだけ(81頁)という状況でした。特にひどいのは第十一パビリオンで、「実におぞましいところだった。「人間」と呼ぶのがためらわれるような姿をした九十五人の人間が、ぐるぐるまわりながら、うなり声をあげていた。何人かは全裸で、鎖で縛られている者もいた……そのぎっしりと詰め込まれた光景は筆舌に尽くしがたいものであった」(83頁)といいます。

★「精神の基地としてのラボルド」(原題は直訳すると「レロス島からラボルドへ」)は1980年代末にブラジルで行われた講演のために執筆されたテクストで、ガタリ自身の「制度論的精神療法の実践を自伝的な形態をとりながら紹介したもの」とナドーは解説しています。日記と講演原稿をはさむようにして、ガタリの友人の作家ドゥピュセ女史の回想録と、ガタリの師でありラボルド病院の同僚であるウリの追悼文が配されています。訳者の杉村さんによる解説はもともと『現代思想』に発表されたものの改訂版です。杉村さんも言及されていますが、医学書院から先般刊行された田村尚子写真集『ソローニュの森で』にはラボルド病院の写真と訪問記が収められているので、ガタリの講演原稿とともにご覧になることをお薦めします。

a0018105_210542.jpg

この熾烈なる無力を(アナレクタ4)
佐々木中著
河出書房新社 2012年8月 本体2,400円 46判上製312頁 ISBN978-4-309-24599-7

帯文より:われわれがわれわれを、変えなければならない。われわれの、この世界を。」精緻かつ徹底的な古井由吉論、思考の深度をあらわにする京都講演。藝術と政治を問う極度な緊張から、不意の笑顔と共にゆるやかに歩む対話篇まで。この上なく俊敏なフットワークを示す、待望の最新刊。

★8月21日発売予定と版元サイトでは告知されていますが、河出さんの場合はだいたいその二日前に取次搬入されていますから、お盆休み明けの16日に取次搬入なのかもしれません。佐々木さんの「書いたことと語ったこと」を集成した拾遺余録たる「アナレクタ」シリーズの第4弾です。2011年と2012年の対談、鼎談、インタヴュー、講演、論考や小文など15篇が収められており、シリーズで最大のヴォリュームとなっています。半分以上は「語ったもの」で、まさにここ一年半の間に佐々木さんが様々な人的交差で見せたフットワークの一端です。書名にもなっているのは、2011年11月17日の福岡講演「変革へ、この熾烈なる無力を」です。注記によればこのテクストは「ブックオカ2011での講演内容を中心に、その前後一カ月程度の講義などでの発言をまとめたもの」とのことです。佐々木さんはこう語ります。「文学は無力である。しかし、文学は勝利する。簡単ですね。ツェランも、レヴィナスも、シュルツも、ただ、偉大な本を書いたんです。あの過酷な日々の最中に、またその後に。そういうことです。それは、まだやれる。だから無駄ではないし、無意味ではないと言ったのです」(118頁)。

★ブックオカ2011の翌月、12月8日に京都精華大学で行った講演の要約である「「われらの正気を生き延びる道を教えよ」を要約する二十一の基本的な註記」にはこうあります。「一、震災における無力は、特権的に美や芸術のものだけではない。ありとあらゆることが無力であった。その熾烈な無力こそに、なしうることがある」(123頁)。「二一、われわれは、強靭に作られたことを証明せねばならない。諸君にできることは何か、それは藝術作品を作ることだ。〔…〕文学や芸術が無力などというような駄弁を弄している暇はない筈だ。われわれは素晴らしく「製造」されたということを証明しなければならない。われわれを作った人たちが間違いではなかったことを、われわれはわれわれの作品に於て証明しなければならない。この災厄の日々のなかで、まったく何も出来なかったわけではないことを」(137頁)。

★なお、河出書房新社さんでは来月、ついにフーコー『知の考古学』の42年ぶりの新訳を河出文庫の一冊として発売されます。訳者は慎改康之さん。9月6日発売です。


Practice for a Revolution
坂口恭平=歌とギター、装画と作文
ZERO CENTER/土曜社 2012年8月 本体1,500円 紙ジャケット装CD(135×135 mm、見開き)全11曲(43分42秒) ISBN978-4-9905587-5-8 品番zhtsss-000

版元紹介文より:「建てない建築家」がつむぐ、手ざわりある音のたてもの。毎日の暮らしで、元気を出したいとき、やさしく慰められたいとき、あなたのスピーカーからいつでも総理大臣・坂口恭平が歌います。大杉栄が1923年にパリのラ・サンテ監獄から娘・魔子にささげた詩にのせて歌う、アコースティック・グルーヴの奇跡の名曲《魔子よ魔子よ》も収録。ヒップホップネイティブの詩人が歌う YouTube 時代のフォーキー・ソウルの傑作がここに誕生――。

収録曲:
01.新政府ラジオのテーマ(作詞・作曲:坂口恭平)
02.魔子よ魔子よ(作詞:大杉栄・坂口恭平、作曲:坂口恭平)◆
03.Train-Train(作詞・作曲:真島昌利)
04.雨の椅子(作詞・作曲:坂口恭平)
05.Anokoe(作詞・作曲:坂口恭平)◆
06.オモレダラ(作詞・作曲:坂口恭平)
07.虹(作詞・作曲:石野卓球)◆
08.生理的に大好き Part.3(作詞:MINT、作曲:M・Hiroishi)◆
09.Hot Cake(作詞・作曲:S.L.A.C.K.)◆
10.Gee(作詞・作曲:イー・トライブ、日本語詞:中村彼方)◆
11.牛深ハイヤ(熊本民謡)

★8月8日発売済。CDタイトルのリンク先のYouTubeにて◆の視聴ができます(販売店一覧もリンク先で確認できます)。今年五月に上梓された『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書)が話題を呼んでいる坂口恭平さんによる音楽アルバムです。録音・マスタリング・楽器コーディネイトは塚田耕司さん。録音は2012年6月22日と7月1日に行われました。ジャケットの中には、坂口恭平さんによる「生きのびるための歌」(1400字)、本人による全曲解説、ドローイングポスターが付いています。

★土曜社さんは今月25日、新シリーズ「プロジェクト・シンジケート叢書」の第一弾、ソロスほか著『混乱の本質――叛逆するリアル 民主主義・移民・宗教・債務危機』(徳川家広訳、ISBN978-4-9905587-4-1)を刊行される予定とのことです。詳しくは書名のリンク先をご覧ください。
http://www.doyosha.com/8-25発売-ソロスほか-混乱の本質/

a0018105_211291.jpg

共同研究 転向3 戦中篇 上
思想の科学研究会編
東洋文庫(平凡社) 本体3,300円 全書判上製500頁 ISBN978-4-582-80824-7

帯文より:1937年以降の日中戦争の拡大に伴う翼賛体制をなしくずし的な「偽装転向」と捉え、自由主義者も含めた新たな転向像を提示する(全6巻の3)。

共同研究 転向4 戦中篇 下
思想の科学研究会編
東洋文庫(平凡社) 本体3,200円 全書判上製464頁 ISBN978-4-582-80825-4

帯文より:哲学・宗教・文学者に及ぶ転向像によって転向を日本思想史上の問題として再設定、戦後転向論へと架橋する(全6巻の4、成田龍一「解説」を付す)。

★発売済。「戦前篇」上下巻は今年2月に刊行されています。今回の「戦中篇」上下巻では昭和15年前後の自由主義者たちや急進主義者たちが扱われており、第4巻の巻末には成田龍一さんによる「解説2『共同研究 転向』の刊行とその反響」が収録されています。東洋文庫の次回配本は来月9月、『ユースフとズライハ』となっています。

★なお、今月、平凡社さんではシリーズ「イタリア現代思想」の第二弾、マリオ・ペルニオーラ『無機的なもののセックスアピール』(岡田温司・鯖江秀樹・蘆田裕史訳、ISBN978-4-582-70343-6)を発売する予定とのことです。

a0018105_2115384.jpg

《日本の思想》講義――ネット時代に、丸山眞男を熟読する
仲正昌樹著
作品社 2012年8月 本体1,800円 46判並製336頁 ISBN978-4-86182-396-1

帯文より:破滅する政治、蔓延する無責任、加速するイメージ支配……そして、“なんでも”「2.0」でいいのか? 戦後の古典を、今一度紐解き、なぜ、この国では、「熟議」「公共性」「自由」「正義」「民主主義」などが、本当の“意味”で根付かないのか?を徹底分析、<思想する>ことを鍛える集中授業!

帯文(背・裏表紙)より:混濁の世だからこそ<思想する>ことを鍛える!「サンデル」ごっこの大流行、安易な「決断主義」の横行、AKB48ブームと単純な「民主主義の限界」論、橋下徹と小沢一郎という「キャラ立ち」、終わりなき「立ち位置」戦争、ツイッター、ブログ、「ネ申」信仰……、3・11以降の“決められない”、“機能不全”、“思考停止”状態のなかで、私たちの日常に潜む《思想》の通奏低音を解剖し、じっくりと落ち着いて、そのダメさを析出、そして<思想する>こととは何か?を、いま真剣に考えてみる。

前書きより:〝政治思想系論壇〟で実際に行われているのは、霞ヶ関支配、五五年体制の遺産、利益誘導型政治、日米安保、新自由主義、親米保守vs.反米保守、女系天皇の是非、政治でのネットの活用、小沢神話、特捜の暴走……といった、一見具体的なテーマをめぐる、かなり漠然とした二項対立論争である。対立している二つの陣営が、それぞれどういう内的原理に基づいて価値判断しているのかはっきりしないまま〝論争〟し、何となく終わるので、政治哲学的に深まっていくことがない。少し異なったテーマになると、どこかで見た様なパターンの対立が――それまでの議論の成果を踏まえて深化することがないまま――何となく繰り返される。/それが、丸山が『日本の思想』で「思想的座標軸の欠如」あるいは「無構造の伝統」と呼んでいるものである。(11-12頁)

後書きより:一冊本を読むか、一回人の話を聞いただけで、すぐに納得できて、即効で実践できるような〝哲学〟は、「哲学」ではない。しかし、そういう〝実装可能な〟ものでないと〝哲学〟でないと言いたがる人たちがいる。多分、人生訓のようなものを含んだ何かのマニュアルか、運動団体のマニフェストのようなものに、〝哲学〟というタイトルが付いていたのを見て、勘違いしたんだろう。勘違い人間がネット上で集まって、〝クラスター〟ができれば、それが真実になってしまう。/こういう状況は、丸山が危惧していた、「する」論理の不健全な増殖の最終形態であるような気がする。(313頁)

目次:
[前書き]丸山の〝お説教〟をもう一度聞く――「3・11」後、民主主義ははたして〝限界〟なのだろうか?と思う人々へ
[講義] 第1回 「新しい」思想という病――「なんでも2・0」、「キャラ・立ち位置」、「人脈関係」という幻想
[講義] 第2回 「國體」という呪縛――無構造性、あるいは無限責任
[講義] 第3回 フィクションとしての制度――「法」や「社会契約」をベタに受けとらない
[講義] 第4回 物神化、そしてナマな現実を抽象化するということ
[講義] 第5回 無構造性、タコツボ、イメージ支配――ネット社会で「日本の思想」という〝病〟を考える 
[講義] 第6回 〈『である』ことと『する』ということ〉を深読みしてみる
[後書き]〝即効性〟の思想など、ない
丸山眞男と戦後日本思想を知るために、これだけは最低限読んでおいたほうがいいブックガイド 
年表 

★発売済。巻頭におかれた編集部の注記によれば「本書は、紀伊國屋書店で行った「トークセッション 仲正昌樹とともに考える〈日本の思想〉全6回 仲正昌樹が『日本の思想』の伝統と限界、閉鎖性、そして「ダメさ」を徹底的に語る」と題した連続講義の内容をもとに、大幅に書き直し、適宜見出しを入れて区切る形で編集したものである」とのことです。それぞれの講義の冒頭には丸山眞男著『日本の思想』(岩波新書、1961年)からの引用が記され、丸山の論考を出発点に、明治以後の日本思想史を振り返るとともに現代の社会問題にも切り込んでいきます。講義の最後には質疑応答が収録されています。「会場からの質問も、講義内容に即したものを、編集しなおし収録した」とのことです。丸山の『日本の思想』は今なお入手可能な新書ですので、併読をお勧めします。本書の刊行を記念して、著者による講演会が以下の通り予定されています。

2012年の丸山真男――ネット時代で《日本の思想》はどうなる?

日時:2012年8月29日(水)19:00開演
場所:紀伊國屋書店新宿本店 8F イベントスペース
※参加は無料ですが、ご参加予約申込が必要となります。店頭にてご予約いただくか、新宿本店3F直通電話03-3354-5703までお電話ください。定員になり次第、受付終了いたします。
※問い合わせ・ご予約:新宿本店3階売場 電話03-3354-5703

内容:「≪日本の思想≫講義」(作品社)の刊行を記念して著者の仲正昌樹氏の講演会を開催。丸山真男は、「日本の思想」の深層構造を解明しながら、戦後民主主義の在り方についても積極的に発言しました。彼の言論活動は、「学者」への社会的期待に支えられていました。しかし、ツイッターやブログ、白熱教室ブームなどで、「知」の平板化が進む現代日本では、丸山的学者は影響力を発揮しにくくなっています。ネット社会における「学問」の可能性を考えます。
[PR]

by urag | 2012-08-12 21:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 07日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2012年8月31日(金)オープン
東京堂書店東中野店:図書100坪+カフェ20坪
東京都中野区東中野4-4 アトレヴィ東中野 3F
帳合はT。弊社へのご発注は文芸書最新刊一点のみ。6月29日に開店したソヨカふじみ野店に続く新規店です。取次の出品依頼書に付された「概況」によれば、「神田本店のノウハウを活かし、セレクトコーナーや作家さんセレクト棚を設け、カフェと連動した売場作り」をするとのことです。

+++

一方、閉店情報です。丸善丸の内本店4Fの、「松丸本舗」が9月末で閉店になることは、松岡正剛さんが先月twitterで明らかにされましたし、先般「読売新聞」2012年8月3日記事「実験的書店「松丸本舗」 9月で閉店」でも報道されましたので、皆さんご存知かと思います。あれだけ話題になり、一昨年にムック『松岡正剛の書棚――松丸本舗の挑戦』(中央公論新社、2010年)も出ましたのに、とても残念です。松岡さんの「編集工学研究所」は丸善の組織図を見る限りでは今なおグループ企業の一員ですが、松丸本舗の存続については丸善と同様に丸善CHIホールディングス傘下である「丸善書店」および「ジュンク堂書店」の社長である工藤恭孝さんとお話し合いになったご様子ですね。「捲土重来を期す」と松岡さんは記されています。

+++

ところでここ一週間でもっとも度肝を抜かれたニュースは「新文化」2012年8月6日付記事「丸善書店の上位3店舗、トーハンから日販に帳合変更」です。丸善丸の内本店、日本橋店、ラゾーナ川崎店が、9月1日よりトーハンから日販に帳合変更するというのです。この3店舗は丸善(社名を正確に言えば丸善書店)の売上げ上位3店で、年商約100億円だそうです。お茶の水店のコミック売場や「9月27日に移転リニューアルする名古屋栄店もすべて日販になる」ばかりでなく、「ジュンク堂書店が運営するビッグウィルの8店舗、年商約20億円分もトーハンから大阪屋に変更される」とのことです。

DNPグループとトーハンの「対立」は、2010年2月にTRCがトーハンから日販に帳合変更したことで表面化したと業界では見られています。これによって売上約130億円が日販に移りました(「新文化」2009年12月15日記事「TRC、主帳合取次を日販に変更」)。その後、2012年6月にトーハンは明屋書店チェーンの筆頭株主になり、日販からトーハンへ帳合変更することによってチェーンの売上約168億が移ることになります(「新文化」2012年6月7日記事「トーハン、明屋書店と資本・業務提携」)。すると今度は文教堂書店が今月から18店舗でトーハンから日販へ帳合変更(「文化通信」2012年7月11日付記事「文教堂書店、18店舗の取引取次変更へ」)。これが年商40億円分です。そしてさらに今回、100億円規模の帳合変更でトーハンに追い打ちがかかることになります。「新文化」によれば、丸善書店の岡充孝副社長は「トーハンの新体制には反対してきた。信頼関係が損なわれたため、しばらくは距離をおきたい」と話しているとのこと。いわゆるこの「新体制」には講談社の野間省伸社長も不満を持っていて、トーハンの社外監査役をお辞めになっているほどです。

いったい何が起きているのか、一般読者の方には分かりづらいかもしれませんが、「新体制」については「月刊FACTA」2012年7月4日配信記事「「トーハンの上瀧天皇」82歳退任の舞台裏」などをご覧になると良いかもしれません。院政への批判はともかく、このところ版元営業マンにとっては楽天のkobo発売よりもずっとこれらの帳合変更のニュースの方が重かったように思います。なぜなら「これだけで事態が収まる気がしない」から。当然ながら、帳合変更によって、一方の取次の売上が落ちますし、新刊配本にも影響が出てくるはずです。常備出荷をしている版元は度重なる伝票切替に困惑してもいますが、はるか上空で起きている出来事になすすべもありません。いよいよ業界再編劇は佳境を迎えつつあるのかもしれません。
[PR]

by urag | 2012-08-07 18:57 | 販売情報 | Trackback | Comments(2)
2012年 08月 05日

2012年8月の注目新刊や重版:田村尚子『ソローニュの森』など

a0018105_21484398.jpg

ソローニュの森
田村尚子=写真・文
医学書院 2012年8月 本体2,600円 B5変判132頁 ISBN978-4-260-01662-9
帯文より:遠くから、背後から、好奇心と軽蔑、そして無関心な眼。パリから2時間。森の中にひっそりと佇む古い城館。ラ・ボルド病院では誰が患者なのか。曖昧で濃密な時間の流れに、一人の日本人女性が辿り着いた。

版元紹介文より:ケアの感触、曖昧な日常。思想家フェリックス・ガタリが終生関わったことで知られるラ・ボルド精神病院。世界中から取材者が集まるこの病院内を、一人の若い日本人女性が自由に撮影することを許された。彼女の震える眼が掬い取ったのは、患者とスタッフの間を流れる緩やかな時間。それは《フランスのべてるの家》ともいうべき、やさしい手触りを残す。ルポやドキュメンタリーとは一線を画した、ページをめくるたびに深呼吸ができる写真集。

著者コメント:ジャン・ウリ院長との京都での出会いがきっかけで、フランスのラ・ボルド病院にときおり出掛けては、患者さんと過ごしていました。そこで見つめてきた時間の流れを、写真と短い文章に凝縮させることができたように思います。長く丁寧なやりとりを経て出来上がったこの写真集の存在そのものが、病院の中で行われている様々なやりとりと「場の空気感」を具現化できる、もうひとつの扉になったら嬉しいです。

★発売済。シリーズ「ケアをひらく」の新刊です。田村尚子さんの写真集は、『Voice』(青幻舎、2004年)、『attitude』(青幻舎、2012年7月)に続く三作目。先月刊行された前作は日本の俳優やミュージシャン15人を撮ったものでしたが、本作ではラ・ボルド精神科病院 Clinique de La Borde が撮影の舞台になっています。ラ・ボルドを撮影した写真にはかつて『精神の管理社会をどう越えるか――制度論的精神療法の現場から』(杉村昌明・三脇康生・村澤真保呂編訳、松籟社、2000年、現在品切)に収録された市川信也さんによる一連の白黒写真「ラボルド病院私景」があります。現在は残念ながら品切となっているこの本には、田村さんがラ・ボルドに出向くきっかけをつくった人物、すなわち病院創設者のジャン・ウリ(Jean Oury: 1924-)のインタビュー「ラボルドで考えてきたこと」のほか、ラ・ボルドにかかわってきた弟子のフェリックス・ガタリや、師のフランソワ・トスケルらのインタビューも掲載されていました。

★『ソローニュの森』はカラー写真のためか、以前白黒で見た時の印象とはずいぶん異なっています。とてもヴィヴィッドで、光に満ちており、被写体に向ける写真家の温かい注視を感じます。病院に似つかわしくない自然なぬくもりを感じるのは、ひとつにはラ・ボルドが「患者を管理する収容施設」ではないからでしょうけれど、田村さんのそうした視線が作品に浸透しているからでもあるでしょう。ラ・ボルド病院で実践されている“制度論的精神療法”について杉村昌昭さんはこう書いています。「医師、看護人、指導員、患者が互いに協力し合いながら、日々の生活を構築していく開放的共同作業」(『精神の管理社会をどう越えるか』22頁)である、と。田村さんはこう書いています。「ラ・ボルドは目に見える境界を引かない。実際に壁もないし、ドアに鍵もない。守衛さんもいなければ、ここにいる皆が私服だ。ただ精神病院であることには違いない。なのに、どうしてか懐かしく、また戻ってこようと思う」(110頁)。

★また、田村さんはウリさんへの手紙でこう告白しています。「ラ・ボルドからパリに戻ったとき、私はなぜか「社会の檻の中に戻ってしまった」と感じたのです。/初めてのラ・ボルドは、病院というよりもひとつの国のようでした。人々が押し出されてしまった世界とはまったく違う「時間」が流れ、そこには違う「眼=触れること」が照らし出されてくることがあったように思います」(40頁)。『ソローニュの森』では田村さんのラ・ボルド体験が写真だけでなく率直な言葉でも綴られていて、読者は田村さんの感情の揺れ動きや様々な発見を共有できます。

★美しい造本はcozfishの祖父江慎さんと小川あずささんによるもの。本書の目次詳細と序文は書名のリンク先の版元サイトでご覧いただけます。


a0018105_2149195.jpg

生きのびるためのデザイン
ヴィクター・パパネック(Victor Papanek: 1923-1998)=著 阿部公正=訳
晶文社 1974年8月 本体3,000円 A5判上製276頁 ISBN978-4-7949-5901-0
版元紹介文より:デザインを、安易な消費者神話の上にあぐらをかいた専門家たちの手にまかせきってはならない。人びとが本当に必要としているものへの綜合的なアプローチによって、空きかんラジオから人力自動車まで、パパネックは、豊かな思考と実験に支えられたかつてない生態学的デザインを追求する。世界的反響を呼んだ・パパネック理論・の待望の完訳。

原書:Design for the Real World: Human Ecology and Social Change, Pantheon Books, 1971.

目次:
まえがき
第一部 デザイン、その現状
 1 デザインとは何か?:デザインの定義と機能複合体
 2 集団殺害:職業としてのインダストリアル・デザインの歴史
 3 高貴な俗物の神話:デザイン、〈美術〉、工芸
 4 〈自分でやる〔ドゥー・イット・ユアセルフ〕〉式の殺人:デザイナーの社会的、道徳的責任
 5 現代のクリネックス文化:廃物化、長持ち、価格
 6 いんちき薬売りとサリドマイド:豊かな社会のマス・レジャーといんちき流行品
第二部 デザイン、その可能性
 7 わけのある反乱:創造性対同調性
 8 努力もしないでデザインに成功する法
 9 知識の木――生体工学〔バイオニクス〕:生物学的原形〔プロトタイプ〕の人工系デザインへの適用
 10 人目をひくようなはでな浪費――デザインと環境:環境汚染、混み合い、飢餓、およびデザインされた環境
 11 ネオン・ブラックボード:デザイナーの教育と統合デザイン・チームの構成
 12 生き残りのためのデザインとデザインによる生き残り:われわれのなしうること
文献目録
訳者あとがき

★重版出来(22刷)。事前受注分の注文出荷で、8月2日取次搬入済とのことです。フランク・ロイド・ライトの弟子であるパパネックによる本書は、デザイン論の現代的古典であり、基本書。第1章の書き出しはこうです。「人はだれでもデザイナーである。ほとんどどんな時でも、われわれのすることはすべてデザインだ。デザインは人間の活動の基礎だからである。ある行為を、望ましい予知できる目標へ向けて計画し、整えるということが、デザインのプロセスの本質である。デザインを孤立化して考えること、あるいは物自体とみることは、、生の根源的な母体としてのデザインの本質的価値をそこなうことである。叙事詩をつくること、壁画を描くこと、傑作を描くこと、コンチェルトを作曲すること、それらはデザインである。だが、机のひき出しを掃除し整理することも、埋伏歯を抜くことも、アップルパイを焼くことも、田舎野球の組み合わせを決めることも、子供を教育することも、すべてデザインである。/デザインとは、意味ある秩序状態〔オーダー〕をつくり出すために意識的に努力することである」(1頁)。この汎デザイン論は、外山滋比古さんの『エディターシップ』や、松岡正剛さんの『知の編集工学』に見ることができる汎編集論に繋がる見解だと思います。

★帯文はgreenz.jp編集長の兼松佳宏(1979-)さん。本書を「ソーシャルデザインを語る上で欠かせない一冊」と位置づけ、「パパネックは強い切迫感を持って、デザインという行為の社会的責任に自覚的になるよう促します」と評しておられます。まさにその通りで、本書は70年代アメリカのカウンターカルチャーが持っていた批判的精神というものを共有しているように思います。それは、巻末の見事な文献目録におけるパパネックの知的目配りを見るにつけ実感できることです。この訳書は74年刊のため、中には翻訳が出たり文庫化されたりした書目も散見されますが、品切も多く、時代の移り変わりを感じます。しかし、本書が今もそうであるように、文献目録にある本は今なお熟読すべき基本的文献ばかりで、古書も新刊もあわせてこの目録を書棚に網羅的に再現すれば、いまだかつて見たことのない「デザイン書」棚が出現するでしょう。パパネックは目録の冒頭にこう書き記しています。「私は、デザインに関する本を書くにあたって、諸分野を集めた総合的なアプローチ、すなわちマルティ=ディシプリナリーなアプローチをとったので、文献目録の作成にあたっても、これがマルティ=ディシプリナリーなものとなるように努めた。したがって、未来の予測、環境、大衆文化、デザインに関する書とともに、生態学(エコロジー)、動物行動学(エソロジー)、経済学、生物学、計画、心理学、文学、文化人類学、政治学、行動科学に関する書もあげておいた」(i頁)。

★文献目録は12のパートで構成されています。1)構造、自然、デザイン。2)デザインと環境。3)デザインと未来。4)生態系に関する研究とデザイン。5)人間工学とデザイン。6)形態、知覚、創造性、その他の関連領域。7)大衆文化、社会的圧力に関する諸問題とデザイン。8)デザインと他の文化現象。9)デザイナーその他による個人的見解の表明。10)デザインの背景。11)デザインの実際とデザインの哲学。12)インダストリアル・デザイン。前述した通り、品切も多いですが、まだ入手可能な本もあります。品切なのはたとえば1)の先頭に掲げられたクリストファー・アレグザンダーのNotes on the Synthesis of Formで、これはパパネックの訳書刊行から4年後に『形の合成に関するノート』(稲葉武司訳、鹿島出版会、1978年)として刊行されました。言わずと知れた基本的文献ですが、現在は入手できないのが残念です。いっぽう11)の中にはモホリ=ナギ『ザ・ニュー・ヴィジョン』(大森忠行訳、ダヴィッド社、1967年)が挙げられており、この訳書は幸いなことに今なお入手可能です。A5判の本なのに1600円というお値打ち価格。

a0018105_21505943.jpg

a0018105_221255.jpg

★いささか脱線しますが、この目録を見ていると色んな思いに駆られます。多数の書目が挙がっている7)にある、セオドア・ローザク『対抗文化の思想』(ダイヤモンド社、1972年)や、ヴァンス・パッカード『浪費をつくり出す人々』(ダイヤモンド社、1961年)など、古びない名作を目にして、「ダイヤモンド社さんがドラッカーの『マネジメント』2巻本を刊行したのが1974年。2008年に新訳で3巻本を出してるんだから、ドラッカー以外の著者もリバイバルさせたらいいのに」と思ってしまいます。今回『生きのびるためのデザイン』を重版された晶文社さんも、パパネック自身の既刊書『人間のためのデザイン』は品切だったりしますので、なんとかしてこちらも続けて重版していただきたいですね。

◎ヴィクター・パパネック(Victor Papanek: 1923-1998)既訳書

1998年03月『地球のためのデザイン――建築とデザインにおける生態学と倫理学』大島俊三・村上太佳子・城崎照彦訳、鹿島出版会
1985年11月『人間のためのデザイン』阿部公正・和爾祥隆訳、晶文社
1974年08月『生きのびるためのデザイン』阿部公正訳、晶文社

★なお、晶文社さんは、朝日出版社、学芸出版社、英治出版、春秋社、羽鳥書店との合同企画で「デザインの力で、新しい未来を作る!!」と題したソーシャルデザイン関連書フェアを全国各地で展開されてきました。フェア名のリンク先で、各書店での実績などを載せたまとめサイトをご覧になれます。

★さて、晶文社さんは本書と同じく8月2日に、次の新刊も取次搬入されていますので、一言ご紹介します。AKIRA(アキラ:1959-)さんによる、ニューヨークを舞台にした新作小説『ケチャップ』です。書名のリンク先で、ロバート・ハリスさん、田口ランディさん、ヴィレッジヴァンガード下北沢次長・長谷川朗さんなどから送られた讃辞を見ることができます。同書の刊行を記念して、今月1日から紀伊國屋書店新宿本店の3階精神世界フロアでは『ケチャップ』のための書き下ろしデッサンの展示や、直販ルートのみだったCDを並べたブックフェアが開催されており、さらに今週末には以下のトークイベント&サイン会が予定されています。

◎『ケチャップ』刊行記念トークショー&サイン会

日時:2012年8月11日(土)19時~(開場18時30分)
会場:ヴィレッジヴァンガード下北沢
出演:AKIRA ゲスト:雨宮処凛
定員:50名
入場:無料
※定員に達した場合は入場をお断りさせていただく場合がございます。
※事前に『ケチャップ』をヴィレッジヴァンガード下北沢の店頭(営業時間10時~24時)にて購入していただいたお客様にイベント参加券をお配りしています。
※また遠方のお客様につきましては、購入予約という形で、書籍と参加券をお取り置きいたします。晶文社へのお電話(電話03-3518-4940、月~金、9時30分~17時30分)にて承ります。なお、本をご購入いただくのは晶文社からではなく、あくまでヴィレッジヴァンガード下北沢店さんからになります。
[PR]

by urag | 2012-08-05 21:41 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 08月 04日

青土社『現代思想』40周年フェア@リブロ池袋店ほか

◎『現代思想』刊行40周年記念フェア ~雑誌『現代思想』が歩んだ40年~

2012年7月17日(火)からリブロ池袋店書籍館カルトグラフィアにて「『現代思想』創刊40周年記念 雑誌『現代思想』の歩んだ40年」フェアが開催されています。「店頭にはこの40年を外観できる年表を展示し、同時に関連書籍を並べ、創刊40周年を迎えた『現代思想』を中心にこの40年の出来事と本を見渡せるフェアになってます」とのこと。さらに、店頭では特別冊子を無料配布。1973年創刊号から2012年現在までの特集名と、『現代思想』の寄稿者の先生方からのコメントが掲載されています。先生方にとってもっとも印象的だった特集号についても言及あり。フェアは池袋店のほかにも、リブロ福岡天神店、町田店、吉祥寺店で同時開催中です。吉祥寺店はバックナンバーのみの展開とのこと。

青土社営業部さんからのメッセージは以下の通り。「小誌『現代思想』は現代社会にアンテナをめぐらし、現場の声に耳を傾け、その課題を思想として論じ続けて、おかげさまで40周年。1973年から今日まで続いたことをとても嬉しく思います。読者のみなさまに一冊でも多く手にとっていただき、こういう声があると広げることを目指して日々営業を続けております。一度関連書籍を集めたフェアで『現代思想』がすごく売れたときは、営業としてこれほどやりがいのある仕事はないものと嬉しくなり、同時にもっと広めなければという使命感にも似た気持ちをおぼえました。これからも『現代思想』は続きます。みなさま引き続きをよろしくお願い申し上げます」。営業部さんからいただいた店頭写真も以下に掲載します。

※池袋店の様子
a0018105_1031677.jpg

a0018105_10313753.jpg

a0018105_10321061.jpg

a0018105_10323560.jpg

a0018105_1033257.jpg

a0018105_10332782.jpg

a0018105_1033454.jpg


※福岡天神店の様子
a0018105_10344675.jpg


※町田店の様子
a0018105_10353146.jpg


※吉祥寺店の様子
a0018105_10352976.jpg


また、関連イベントが以下のように予定されています。

◎大澤真幸先生×成田龍一先生トークイベント ~雑誌『現代思想』の歩んだ40年~

内容:雑誌『現代思想』(青土社)の創刊40周年を記念して、『現代思想』に寄稿していただいている大澤真幸さん、成田龍一さんをお招きして、トークイベントを開催します。お二人が活躍をはじめた80年代を出発点として、ご自身が寄稿された論考についてお話いただくとともに、当時の思想の潮流、そしてその潮流からこぼれ落ちたものを思想として論じ続けてきた『現代思想』の試みの軌跡を、時々の社会状況、思想状況との関わりのなかで議論していただきます。

日時:2012年8月18日(土) 午後7時~
会場:西武池袋本店別館9階池袋コミュニティ・カレッジ20番教室
定員:70名
参加チケット:1000円(税込)
チケット販売場所:西武池袋本店書籍館地下1階リブロリファレンスカウンター
お問合せ:リブロ池袋本店 03-5949-2910
[PR]

by urag | 2012-08-04 10:36 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)