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2012年 02月 29日

「世界を編集する――書物、書棚から文化まで」改訂版

ソフトバンククリエイティブさんのメルマガ「ビジスタニュース」2009年7月22日号に寄稿した拙文「世界を編集する――書物、書棚から文化まで」の改訂版が同ニュースのブログにて本日公開されました。ご高覧いただけたら幸いです。
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by urag | 2012-02-29 20:54 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 27日

注目新刊:2012年2月下旬の単行本

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イメージの前で――美術史の目的への問い
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(1953-)著 江澤健一郎訳
法政大学出版局 本体4,600円 四六判上製496頁 ISBN978-4-588-00971-6
帯文より:「徴候」とはなにか? ルネッサンス期以降、学問としての美術史はいかなる知の言説として確立されたのか。ヴァザーリによる人文主義的美術史の発明から、パノフスキー的イコノロジーの成立にいたる美学の歴史を、表象の裂け目に現れるフロイト的「徴候」への眼差しを通じて批判的に解体する“美術史の脱構築”。バタイユやヴァールブルクを継承し、独自のイメージ人類学を実践する注目の美術史家の初期代表作。

原書:Devant l'image: Question posée aux fins d'une histoire de l'art, Minuit, 1990.

★発売済。「訳者あとがき」での解説をお借りすると「その多作な著書のなかでも、本書は明らかに初期の代表作といえる書物である。なぜならここでディディ=ユベルマンは、美術史家として美術史の基盤そのものを問い、新たな美術史の構築へと歩みを進めたからである。〔…〕本書は、同じ年に出版された『フラ・アンジェリコ』(1990年)の姉妹編であり、そちらが実践編であるとしたら、こちらは理論編である。そして本書の刊行から十年を隔てて『時間の前で』(2000年)という続編が上梓されている。ディディ=ユベルマンは、この続編においては、ヴァルター・ベンヤミン、カール・アインシュタイン、アビ・ヴァールブルクらの思想を参照しながら、イメージと時間の問題を問いつめている。この続編は、ぜひとも本書とともに読まれるべきであろう」(458頁)とのことです。

★ディディ=ユベルマンの続刊予定には、前述の『時間の前で――美術史とイメージのアナクロニズム』(小野康男+三小田祥久訳、法政大学出版局)や、原著2002年刊『ニンファ・モデルナ――落ちゆくドレープについての試論』(森元庸介訳、平凡社)などがあります。今度もどんどん訳されていくだろうと思います。御参考までに既訳書を以下に掲げます。

◎ディディ=ユベルマン既訳書(原著刊行年/訳書刊行年)
1982年/1990年『アウラ・ヒステリカ――パリ精神病院の写真図像集』谷川多佳子+和田ゆりえ訳、リブロポート
1993年/1995年『ジャコメッティ――キューブと顔』石井直志訳、PARCO出版
1990年/2001年『フラ・アンジェリコ 神秘神学と絵画表現』寺田光徳+平岡洋子訳、平凡社
1999年/2002年『ヴィーナスを開く――裸体、夢、残酷』宮下志朗+森元庸介訳、白水社
2002年/2005年『残存するイメージ――アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間』竹内孝宏+水野千依訳、人文書院
2003年/2006年『イメージ、それでもなお――アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真』橋本一径訳、平凡社
1990年/2012年『イメージの前で――美術史の目的への問い』江澤健一郎訳、法政大学出版局


Ex-formation 半熟 
原研哉(1958-)+武蔵野美術大学原研哉ゼミ著
平凡社 2012年2月 本体1,700円 B6判並製160頁 ISBN978-4-582-62052-8
帯文より:「半熟社会」の申し子となれ!「半熟」とは未完成を肯定的に見ようとすること――。テントウ虫の文様パターン、「もののあわれ」の時間、謎のUFO写真……。すべてが変動するこの「半熟」の時代のなかで、ゼロ地点から世界を見つめ直すことのできる、知性と感性を鍛えるための11のレッスン集。

★24日取次搬入済。情報デザインをめぐって毎年異なるテーマを通じ、世界を“未知化”する(Ex-formation)という原研哉ゼミの卒業制作記録集の第7弾です。原さんは巻頭のPROLOGUE「半熟社会の申し子となれ」の中でこんな風に語りかけています。「何にでもどこにでも可能性がある。これまではむしろ採算性の悪いと考えられていた事業にも、可能性が生まれることもある。〔…〕そこに誰もまねのできない価値を生み出す可能性さえあるなら、それを磨いて育てていくことで、そこに豊かさの資源を見いだすことができる。そういう時代を迎えているのである。/僕らが続けてきたものの見方のトレーニングは、まさにそういう状況の中で、ものの価値を見定めていく技術なのである。「知ってる、知ってる」と、高をくくって世間を見ることをやめ、あらゆることに対して「いかにそれを知らないか」を把握していく姿勢こそ、変動の世にあって、次の時代の趨勢を見通していく知性なのである」。3・11の影響で卒業式も謝恩パーティも取りやめになったことから、原さんはこの前書きで卒業生たちにそう語りかけます。原さんがムサビに着任されたのが2003年4月。その翌年度から始まった、卒業年次の学生さんたちとの共同研究「Ex-formation」は3・11によってひとつの節目を迎えたのかもしれないと思えました。ちなみに、2011年度の「Ex-formation」のテーマは「空気」でした。

◎「Ex-formation」既刊書
2010年度『Ex-formation 半熟』2012年3月、B6判160頁、本体1,700円
2009年度『Ex-formation 女』2011年02月、平凡社、B6変型判160頁、本体1,500円
2008年度『Ex-formation はだか』2010年01月、平凡社、B6変型判160頁、本体1,500円
2007年度『Ex-formation 植物』2008年11月、平凡社、四六変型判176頁、品切
2006年度『Ex-formation 皺』2007年10月、中央公論新社、B5判192頁、本体3,200円
2005年度『Ex-formation RESORT』2006年08月、中央公論新社、B5判256頁、本体3,600円
2004年度『Ex-formation 四万十川』2005年11月、中央公論新社、B5判248頁、本体2,900円

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現代ドイツ思想講義
仲正昌樹(1963-)著
作品社 2012年2月 本体1,800円 46判並製352頁 ISBN978-4-86182-382-4
帯文より:ハイデガー、フランクフルト学派から、ポストモダン以降まで。資本主義を根底から批判し、近代の本質を暴露した思考の最前線を、《危機の時代》の中で再び召還する。

目次:
[講義]第1回 ハイデガーからフランクフルト学派まで
[講義]第2回 実際に『啓蒙の弁証法』を読んでみる。1
[講義]第3回 実際に『啓蒙の弁証法』を読んでみる。2
[講義]第4回 実際に『啓蒙の弁証法』を読んでみる。3
[講義]第5回 フランクフルト第二世代──公共性をめぐる思想
[講義]第6回 ポストモダン以降
後書きに代えて──現代ドイツ思想史の“魅力”
ドイツ現代思想をもう少しだけ真面目に勉強したいというやや奇特な人のためのブックガイド
もっと奇特な人のためのブックガイド
年表
現代ドイツ思想相関図

★ブックファースト新宿店で2010年5月から11月にかけて行われたトークイベント「仲正昌樹の書店出張講座〈第一期〉入門現代ドイツ思想」(全6回)に加筆したもの。仲正さんはこれまでに『集中講義!日本の現代思想――ポストモダンとは何だったのか』(NHKブックス、2006年)や、『集中講義!アメリカ現代思想――リベラリズムの冒険』(NHKブックス、2008年)といった現代思想入門を書き、三省堂書店神保町本店やブックファースト新宿店など、本を売る現場で一般読者を相手に講義をしてこられました。その精力的なお仕事には驚くばかりです。本書の「後書きに代えて」によれば、仲正さんは昨年より、カール・シュミットを読む連続講座を某所で行っておられるとのことです。


100の思考実験――あなたはどこまで考えられるか
ジュリアン・バジーニ著 向井和美訳
紀伊國屋書店 2012年3月 本体1,800円 46判並製408頁 ISBN978-4-314-01091-7
帯文より:これは「読む」本ではありません。「考える」本です。身体と脳、生命倫理、言語、宗教、芸術、格差……「ハーバード白熱教室」で取り上げられたトロッコ問題(「列車の暴走で40人が死にそうなとき、5人だけ死ぬほうにレバーを切り替えられるとしたらどうするか?」)をはじめ、哲学・倫理学の100の難問があなたを揺さぶります。
帯文(裏)より:19カ国で翻訳された、イギリス発ロングセラー!「読んでいて思わず引きこまれる。知的で愉快で、型破り。巧みでセンスのよい構成。誰かと議論したいのに、相手が見当たらないとき、繰り返し手に取りたくなる本だ」(Sunday Herald)。「楽しんでできる頭の体操」(London Review of Books)。「何度も考えることこそ、明敏で切れ味のよい本書の意図するところだ」(Sunday Times)。「この本はさながら、道徳哲学の“数独”である。身動きできない地下鉄の中でも、“思考実験”のどれかに取り組めば、たちまち通勤地獄から抜け出せる」(New Statesman)。

原書:The Pig That Wants to Be Eaten (And 99 Other Thought Experiments), Granta Books, 2005.

★3月1日発売とのこと。著者のジュリアン・バジーニもしくはバッジーニ(Julian Baggini)は、イギリスの哲学誌「The Philosophers’Magazine」の編集長。雑誌や新聞記事の執筆、テレビへの出演など、哲学をわかりやすく解説する仕事にとりくんでいるそうです。共著書に『哲学の道具箱』(共立出版、2007年)や『倫理学の道具箱』(共立出版、2012年)、共編著書に『哲学者は何を考えているのか』(春秋社、2006年)があります。

★本書の原題「食べられることを望む豚」は、第5問に出てきます。元ネタはSF作家ダグラス・アダムス『宇宙の果てのレストラン』(河出文庫、2005年)だそうです。本書では元ネタに使われるのは哲学書ばかりではなく、たまに小説だったり映画だったりします。特にSF作品が好んで使用されています。

★帯にも引かれているトロッコ問題は、イギリスの哲学者フィリッパ・フット(Philippa Ruth Foot〔旧姓Bosanquet〕:1920-2010)によるもの。本書『100の思考実験』では17番目に出てくる思考実験です。もちろん本書は邦訳副題にある通り、読者に「あなたはどこまで考えられるか」と問いかけている本なので、トロッコ問題への最終回答は載っていません。思考実験においては答えがあるのではなく、どのような選択肢が発生するかをこっちから見たりあっちから見たりして、考える力をつけるというのが目的なわけです。ですから、本書は出勤するのが苦痛でたまらない時には、答えのない状態のせいで余計に人生が嫌になるかもしれないので電車内で読まない方がいいかもしれませんが、自己啓発本や教訓本など、答えが溢れている本にはもう飽きあきしたという方にはちょうどいいサプリメントになるだろうと思います。

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共同研究 転向1 戦前篇 上 
思想の科学研究会編
東洋文庫(平凡社) 2012年2月 本体3,000円 全書判上製394頁 ISBN978-4-582-80817-9
帯文より:戦争を思想の敗北とし、「転向」という負の経験を基軸に戦後思想の新生を志した、鶴見俊輔を中心とした若き俊英たちの共同研究(全6巻の1)。

共同研究 転向2 戦前篇 下 
思想の科学研究会編
東洋文庫(平凡社) 2012年2月 本体3,000円 全書判上製368頁 ISBN978-4-582-80818-6
帯文より:「転向」を倫理でなく歴史的な思想の課題とし、独自の方法で思想史研究そのものを新たな思想探究とした実践の記録(全6巻の2、成田龍一「解説」を付す)。

★24日取次搬入。親本は同社より1978年に刊行された改訂増補版全3巻(初版は1959-1962年刊全3巻)。東洋文庫に編入されるにあたり、各巻を2分冊にし、合計全6巻となります。版元ウェブサイトでの紹介文にはこうあります、「1954年から8年間にわたって共同研究という新たな方法で行われた「転向」を軸とした日本近代思想研究の金字塔。「転向」を裁くのではなく、日本近代思想の自己批判として行われた共同研究の成果。第1巻は、佐野・鍋山を中心とし戦前期前半を扱う。第2巻は、亀井勝一郎、埴谷雄高、三木清ら文学・哲学者を中心とした戦前期後半」。第2巻の巻末には解説1「『共同研究 転向』発刊まで――転向研究の時代」が収録されています。成田龍一さんによるもので、今後2分冊ごとに、もしくは各篇ごとに解説2、解説3と続いていくものと思います。

★続刊は第3巻と第4巻が「戦中篇」上下、第5巻が「戦後」篇、第6巻が「討論・資料」篇です。世界大戦での敗戦を受けて自ら「変化」せざるをえなかった知識人の群像をもう一度本書によって学ぶことは、今後この国で起こるかもしれない何かしらの転機による「風向きの変化」に備える上で大きな教訓となるかもしれません。

★東洋文庫の次回配本は3月、『完訳 日本奥地紀行(1)』です。完訳と謳っているということは、1880年刊初版2巻本の新訳ということかと推測できます。平凡社ではこれまで、1885年版の高梨健吉さんによる訳書を東洋文庫(1973年)と平凡社ライブラリー(2000年)で刊行しています。1880年版の既訳には『イザベラ・バードの日本紀行』(上下巻、時岡敬子訳、講談社学術文庫、2008年)があります。
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by urag | 2012-02-27 02:13 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 26日

ラプラス『天体力学概論』の訳書が刊行開始

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ラプラスの天体力学論(1)
ピエール=シモン・ラプラス(Pierre-Simon Laplace: 1749-1827)著 竹下貞雄(1933-)訳
大学教育出版 2012年2月 本体3,800円 B5判上製292頁 ISBN978-4-86429-120-0
版元紹介文より:フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスの『天体力学』は5巻16編からなり、1799年から1825年にわたって出版された大著である。本書はそれを完全に日本語訳したものである。第1巻では、ニュートンやケプラーの運動法則を解析的に説明する。

★2月10日発売済。ラプラスの大著『天体力学概論 Traité de mécanique céleste』の訳書が刊行開始になりました。訳書では第1巻では第1部「天体の運動と形状に関する一般理論」のうち、第1編「釣り合いと運動の一般法則」全8章と、第2編「万有引力と天体の重心の運動とに関する法則について」全8章が収められています。原著で1800頁を超える大作なので完訳まで相当時間がかかるように思いますが、まさに快挙というべき第一歩です。B5判という大型本なので、文庫と比べると大きいですね。地球と月がはるか彼方の太陽からの光を受ける美しい図像で飾られた、荘厳な存在感のあるカバーです。

★訳者の竹下貞雄さんは、立命館大学理工学部の教授を長年務められ、著書に『砂の液状化に関する実験的研究』(かもがわ出版、1998年)などがあります。2009年に退職されてからは翻訳業に従事されており、大学教育出版から刊行された訳書には、ジョゼフ・フーリエ『熱の解析的理論』(ガストン・ダルブー編、竹下貞雄訳、大学教育出版、2005年)や、アポッロニオス『円錐曲線論』(ポール・ヴェル・エック仏訳、竹下貞雄和訳、大学教育出版、2009年)があります。地道なお仕事に深い敬意を抱くばかりです。

★ラプラスの翻訳はこれまでに確率論(Essai philosophique sur les probabilités, 1814)が幾度となく訳されてきました。

伊藤徳之助訳『蓋然性の哲学的考察』(岩波書店、1931年)
平野次郎訳『偶然の解析――確率の哲学』(創元社、1950年)
樋口順四郎訳「確率についての哲学的試論」(抄訳、『世界の名著(65)現代の科学(I)』所収、中央公論社、1973年)
伊藤清+樋口順四郎訳・解説『確率論――確率の解析的理論』(共立出版、1986年)、
内井惣七訳『確率の哲学的試論』(岩波文庫、1997年)

★太陽系の起源を説いたいわゆる「カント=ラプラスの星雲説」で参照されるラプラスの著作は、『天体力学概論』の3年前、1796年に刊行された『宇宙体系の解説 Exposition du système du monde』(未訳)で、カントの著作は1755年の『天界の一般自然史と理論 Allgemeine Naturgeschichte und Theorie des Himmels』になります。カントの著作の翻訳には以下があります。

荒木俊馬訳『宇宙論――天界の一般自然誌と理論』(恒星社厚生閣、1952年)
高峯一愚訳「天界の一般自然史と理論」(『カント全集(10)自然の形而上学』所収、理想社、1966年)
宮武昭訳「天界の一般自然史と理論」(『カント全集(2)前批判期論集(II)』(岩波書店、2000年)
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by urag | 2012-02-26 15:28 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 24日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2012年3月17日(土)オープン
あゆみBOOKS荻窪店:図書60坪
東京都杉並区荻窪5-30-6 福村産業ビル 1F
帳合はN。弊社へのご発注は芸術書および文芸書の主要商品と人文書少々。弊社は刊行点数の比率から言えば人文書メインの版元なので、こうしたご発注はまた違った現実を発見する良いきっかけになります。今回出店の荻窪店はチェーン15店舗目の直営店。JR「荻窪」駅南口から至近の商店街にあるインターナショナルヨガセンターの荻窪スタジオ(先週より北口にてリニューアルオープン)の跡地かと思います。書籍40坪、雑誌20坪というコンパクトな店構えの中に弊社のような零細出版社の本も置いて下さるということでたいへん光栄です。

+++

話は変わりますが、取次の栗田出版販売さんが本社を板橋区内から九段下寄りの神保町に移転することを先週仕入窓口で知ってやや驚いています。ちょうどその日の業界紙「新文化」(2012年2月13日付)の記事「栗田、3月12日に本社を神保町に移転」では、「新本社の住所は東京都千代田区神田神保町3-25住友神保町ビルの6・7・8階の3フロア。6階部分は約半分を占有。現在、板橋区東坂下で活動している営業部や仕入部、総務部、システム部など全機能が一斉に移転」と報じられています。6Fはブックサービスで、書籍仕入れは7Fになると聞いています。

かつて栗田は仕入の窓口業務を後楽園や飯田橋付近のビルの一室を借りてやっていた時代がありましたが、ここ十数年ほど板橋本社に戻していました。版元にとって主要取次の見本回りのルートは江戸川橋(大阪屋、太洋社、トーハン)と御茶ノ水の周辺(日販)になりますから、一社だけ遠い栗田への見本出しでは人手を使うのではなく、宅配便などでの対応が増えていたと思います。傍目から見て、栗田にとって版元との関係構築にはあまりプラスになっていなかった印象があります。近年、大阪屋との提携で新刊や注文の搬入口を戸田のOKC(大阪屋と栗田の共同出資による物流センター)に統合しており、新刊の搬入日を大阪屋と揃えなければなりませんから、大阪屋東京本部から遠くない場所に仕入窓口があったほうがよかったわけです。本社ビルの売却がどれくらいの利益になるのか分かりませんが、移転は色々な意味で必然かもしれません。

移転先案内図
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栗田板橋本社
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OKC
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by urag | 2012-02-24 22:25 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 24日

「図書新聞」に『カヴァイエス研究』の書評

図書新聞」2012年3月3日号に、昨年末弊社刊『構造と生成(I)カヴァイエス研究』(近藤和敬著)の書評が掲載されました。「哲学のお化け図鑑に名前が載る日――さらなる「概念の哲学」のプログラムの射程を推し量る」と題された記事で、評者は森元斎さんです。

「フランスの哲学のお化け図鑑があるとしたら「ジャン・カヴァイエスと概念の哲学」は見開きで載ると思う。〔…数学の生成を見事に表現する〕カヴァイエスの手つきを忠実に辿る著者は、デカルトやライプニッツ、そしてカントといった哲学者だけでなく、ヒルベルトやブラウアーといった数学者のカヴァイエス的読解もまとめている。さらには同時代のカヴァイエス研究者との戦いを通じて、学知の証明という手法を内在性の哲学の観点からカヴァイエスに寄り添った仕方で明瞭に提出してくれている。最後に、カヴァイエスの問題圏に乗りながらもさらなる概念の哲学プログラムの射程を推し量ろうとする。このとき、モノという一見素朴に見えながらもきわめて難解な議論へと突入していく。〔…〕著者の模索は『現代思想』での連載のように、カヴァイエスを離れつつも、やはりカヴァイエスの哲学の手つきそのものに忠実になりながら、思考を展開しているように思われる。/「ジャン・カヴァイエスと概念の哲学」はようやく日本の哲学のお化け図鑑にも載るかもしれない」と評していただきました。森さん、ありがとうございました。

『カヴァイエス研究』を中心としたブックフェアが、著者の近藤さんによる選書で、ジュンク堂書店新宿店ジュンク堂書店難波店で開催中です。なお、「図書新聞」同号より、ジョン・ホロウェイとマイケル・ハートの「往復書簡」の連載が始まっています。訳者は高祖岩三郎さんです。この連載はいずれ書籍化するのでしょうね。

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なお、まもなく発売となる新刊『歴史としての3・11』で、近藤さん、森さん、そして高祖さんの最新論考を読むことができます。

歴史としての3・11
河出書房新社編集部編
河出書房新社 2012年2月 本体1,600円 A5判並製208頁 ISBN 978-4-309-24582-9
帯文より:3・11から一年、何が終わり、何がはじまりつつあるのか、そして激動の世界の中で震災と原発は何をつきつけているのか。思想の課題を問い返すために。

目次:
石牟礼道子×藤原新也「滅びと再生が始まる」
中井久夫「時おくれの情報と向き合って」
色川大吉「東日本大震災から何が変わったか考える」
関曠野「脱原発の戦略とは何か――歴史的展望」
合田正人「ガルゲン・フモール?」
酒井隆史「「しがみつく者たち」に」
渋谷望「壊乱的社会費用――尊厳、あるいは原発¡Ya Basta!」
マニュエル・ヤン「負債資本主義時代における黙示録と踊る死者のコモンズ」
樫村愛子「移行対象としての「地震鯰」と「見せかけの現実的なもの」の世界」
富田克也×相沢虎之助「風景のメルトダウン――原発とドン・キホーテ」
神山修一「福島のダブルバインド」
鬼頭秀一「二〇世紀型技術の終焉と新しい時代の環境の倫理」
江川隆男「虚偽としての〈原発-意志〉――意志ほど愚鈍(判断力のない)なものはない」
米虫正巳「徴と出来事」
森元斎「連帯する衒いなきダンディズムのほうへ、「まじめ」に」
近藤和敬「「学門の自由」について――科学認識論の観点から」
高祖岩三郎「放射能と情報戦争の乱気流〔タービュランス〕の中で」
『来たるべき蜂起』翻訳委員会「反原発の社会戦争」

★本書は『思想としての3・11』(2011年6月)の続編。弊社2006年刊、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』の訳者である江川隆男さんの論文も収録されています。『思想としての3・11』と『歴史としての3・11』のいずれにも寄稿されているのは、江川さん、中井さん、高祖さん、『来たるべき蜂起』翻訳委員会さんです。

★また、江川さん、近藤さん、森さん、合田さん、米虫さんは昨年、『現代思想』2011年11月号「ポスト3・11のエコロジー」に寄稿されており、中井さんと樫村さんはまもなく発売の『現代思想』2012年3月号「大震災は終わらない」に寄稿されています。『思想としての3・11』および『歴史としての3・11』と併せてお読みになるといっそう興味深いと思います。

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by urag | 2012-02-24 18:50 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 22日

まもなく発売:『プロジェクト・ジャパン』平凡社より

プロジェクト・ジャパン――メタボリズムは語る…
レム・コールハース+ハンス・ウルリッヒ・オブリスト=著 太田佳代子+J・ウェストコット+AMO=編
平凡社 2012年2月 本体7,600円 B5変型判並製720頁 ISBN978-4-582-54438-1
版元紹介文より:再評価が高まる戦後日本の建築運動「メタボリズム」。世界的建築家&キュレーターが当事者への取材と豊富な図版によってその全貌と可能性を示す、質量ともに圧倒的なドキュメンタリー。

★今週金曜日24日取次搬入の新刊。平凡社さんのtwitter情報によれば「地域・店舗により異なりますが25~27日頃から店頭に並びます」とのことです。さらに、昨日(2月21日)から、代官山の蔦屋書店にて独占先行発売しているそうです。まあすごい本ですよとにかく。このボリューム、この密度、この造本、何をとっても、本書を超える新刊は今年はもう無理かもしれないと思うほど。日本語版7,600円というのは、タッシェンの原書60ドル(米アマゾンだと約38ドルですが)に比べても、英米語の商圏の広さを考えればものすごく頑張ってると思います。

★この本は愛書家ならずとも絶対中身を見ないといけません。見ずにはおけませんよ。でも見るだけじゃなくて、買ったほうがいいです。手元に置いて、何度も読み返したくなりますから。あんまり興奮して書くとかえって逆効果かもしれませんので、この辺でやめておきますけれど。戦後の日本を振り返る上でも特筆すべき「歴史」の証言資料集だと思います。傑作です。図版を多用した、この手の凝ったレイアウトの本は、アルファベットが漢字仮名交じりに組み換わると台無しになるケースがあるのですが、この日本語版はその点にかなり気を使っていて、まったく見劣りしないというのもすごいです。関係者の皆さんの努力に敬意を表する次第です。
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by urag | 2012-02-22 20:08 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 20日

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍

◆近藤和敬さん(『構造と生成(I)カヴァイエス研究』著者)
ジュンク堂書店難波店の人文書エンド台で展開中の福島聡店長によるフェア「店長の一押し!」で、『カヴァイエス研究』を中心に近藤さんが選書した本が並んでいます。フェア名は「真理の生成? 近藤和敬『カヴァイエス研究』」。2月中旬から3月上旬まで開催されます。写真にある店長の張り紙はこちらでPDFをご覧になれます。
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◆郷原佳以さん(『ブランショ政治論集』共訳者)
◆渡名喜庸哲さん(サラ-モランス『ソドム』共訳者)
「現代思想」2012年3月臨時増刊号「レヴィナス」に寄稿されています。郷原さんは論考「「顔」と芸術作品の非-起源」(285-299頁)を執筆され、渡名喜さんはジェラール・ベンスーサン「レヴィナスと政治の問い」の翻訳(238-251頁)と、巻末の研究・文献ガイド「新しくレヴィナスを読むために」のうち、「政治」と「多様な読解に向けて」の二項を執筆されています。

なお渡名喜さんは昨年11月に共訳書を上梓されています。ジャン=ピエール・ルゴフ『ポスト全体主義時代の民主主義』(渡名喜庸哲+中村督訳、青灯社、2011年)です。渡名喜さんのご紹介によれば、「全体主義から68年を経て、マネジメント、グローバリゼーションに至るフランスの戦後の知的状況の変遷について批判的な考察を行うもの」とのことです。
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◆森山大道さん(『新宿』『NOVEMBRE』『新宿+』『大阪+』『ハワイ』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『オン・ザ・ロード』写真家)
ICP(International Center of Photography)主宰の2012年「インフィニティ賞」の「Lifetime Achievement」部門で森山さんが受賞されます。また、少し先になりますが、ロンドンのテートモダンで今年の10月10日から2013年1月27日まで森山さんの展覧会が開かれます。なお、ここしばらくネット上で噂が飛び交っている森山さんの最新作写真集『カラー』ですが、弊社より4月に発売予定です。詳細は後日発表いたします。
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by urag | 2012-02-20 18:40 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 20日

訪問者数累計100万人を超えました

本日午後18:00過ぎ、当ブログへの累計訪問者数が100万人を突破しました。2004年5月6日に開設以来、ご高覧いただいている皆々様には本当にお世話になりました。こういう時ってどうしたらいいんでしょうか。読者プレゼントとか。オフ会とか。ニコニコでチャンネル開設するとか。何をすれば皆さんに喜んでいただけるのでしょう。ともかく、これからもがんばります。どうぞよろしくお願いいたします。
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<訪問者とアクセス数の違い> エキサイトブログヘルプより
訪問者数(UU):一定期間に複数回訪問した人も1人とカウントします。1人が5ページ見たら、訪問者数は1。この数値のことをUU(ユニークユーザー)数といいます。
アクセス数(PV):単純にそのページが表示された回数です。1人が5ページ見たら、アクセス数は5になります。この数値のことをPV(ページビュー)といいます。
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by urag | 2012-02-20 18:15 | ご挨拶 | Trackback | Comments(2)
2012年 02月 19日

注目新刊:2012年2月の単行本と新書

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《非常事態》を生きる――金融危機後の社会学
ジグムント・バウマン(1925-)+チットラーリ・ロヴィローザ=マドラーゾ著 高橋良輔+高澤洋志+山田陽訳
作品社 2012年3月 本体2,500円 46判上製356頁 ISBN978-4-86182-364-0
帯文(表)より:〈危機〉は私たちをどこへ連れていくのか? 資本主義の破局、民主主義の不能、国家の破綻、貧困の拡大、科学技術の暴走、宗教とテロ、未来なき次世代……。“知の巨人”が、経済、社会、人口などの具体的なデータに基づき危機の深層と未来へのヴィジョンを語る。
帯文(裏)より:“最後の知の巨人”(ガーディアン紙)が危機後を展望する。いま、おきている危機は、人類史上、これまでほかのどんな文明も経験したことがないほど困難で重大な出来事を人々にもたらしている。未曾有の環境危機、空前のレベルに達した世界の貧困、膨れ上がる人口過剰、無謀な科学技術の発達、従来の諸制度・道徳・政治システムの衰退など、いまだ進行中のグローバル金融危機がもたらしたものの意味を読み解き、ますます液状化・不安定化・不透明化していく人類と世界の未来を語り尽くす。

原書:Living on borrowed time: Conversations with Citali Rovirosa-madrazo, Polity Press, 2010.

目次:
はじめに 崩壊に向かう社会?―― ジグムントバウマンとは何者なのか?/なぜ、いま、ジグムント・バウマンなのか?
第一部 液状化していく政治経済構造
 対談1〔テーマ:資本主義〕金融・信用危機
 対談2〔テーマ:福祉国家〕経済のグローバル化時代における福祉国家とは?
 対談3〔テーマ:民主主義と主権〕いわゆる「国家」とは何か?
第二部 人間なるものの行方
 対談4〔テーマ:ジェノサイド〕モダニティ、ポスト・モダニティ、ジェノサイド
 対談5〔テーマ:人口問題〕人口、そして廃棄された生の生産と再生産
 対談6〔テーマ:原理主義〕世俗的原理主義と宗教的原理主義の抗争
 対談7〔テーマ:科学/技術〕遺伝情報を書き込む
 対談8〔テーマ:世代/ロスジェネ〕ユートピア、愛情、もしくはロスト・ジェネレーション
原注
訳者解題 固体的近代(ソリッド・モダン)の終焉と新たな大恐慌の到来
《非常事態》を生きるためのキーワード
『《非常事態》を生きる』を読むためのブックガイド

★一昨日17日(金)取次搬入とのことですので、早いところでは昨日から書店店頭に並び始めているはずです。メキシコ在住のジャーナリストであり社会学者のロヴィローザ=マドラーゾを聞き手に、目次にある8つのテーマをめぐって縦横に語っています。対談のため、今までのバウマンの著書の中で一番読みやすくなっているだけでなく、バウマン社会学の広大な射程を鳥瞰するのに適した最新の入門編とも言えます。巻末にはキーワード解説やブックガイドがあり、書店さんがミニコーナーないしミニフェアを作りたいときにはすぐに使える情報となっています。なお、バウマンの著書は昨年末にも一冊、『コラテラル・ダメージ――グローバル時代の巻き添え被害』(伊藤茂訳、青土社、2011年12月)が発売されたばかりです。

★作品社さんの2月新刊のうち、人文書は上記1点のほか、次のものがあります。デヴィッド・ハーヴェイ『資本の〈謎〉――世界金融恐慌と21世紀資本主義』森田成也+大屋定晴+中村好孝+新井田智幸訳、発売済。仲正昌樹『現代ドイツ思想講義』近日発売予定。


大杉栄――日本で最も自由だった男
河出書房新社 2012年2月 本体1,600円 A5判並製192頁 ISBN978-4-309-74044-7

目次:
大杉栄の言葉
特別対談 鎌田慧×中森明夫「今こそ大杉の精神を想起せよ」
ロング・インタビュー
 大杉豊「大杉栄はいつも、人間本来のあり方を提起する」(聞き手=栗原康)
 加藤登紀子「誰からも支配されない自由を希求するために」
エッセイ
 瀬戸内寂聴「大杉栄と自由恋愛」
 宮崎学「大杉栄ならどうしただろうか?」
 ECD「さようなら大杉栄」
 角岡伸彦「半ば同感、半ば反感」
 佐野眞一「主役を食うバイプレイヤー」
 雨宮処凛「恋と革命に生きるのさ」
 豊田剛(土曜社)「大杉栄のずるい本屋」
 鈴木邦男「大杉が見た自由な空」
論考
 武田徹「大杉に寝取られた男の素顔」
 宇波彰「大杉栄とベルクソン」
 倉数茂「「物語」への権利」
 星野太「崇高なる共同体――大杉栄の「生の哲学」とフランス生命主義
大杉栄の記憶
 伊藤野枝「夫婦生活」
 内田魯庵「最後の大杉」
 清沢洌「甘粕と大杉の対話」
 中浜哲「杉よ! 眼の男よ!」
大杉栄アンソロジー
労働運動の精神/自我の棄脱/生の拡充/思索人/政府の道具ども/奴隷根性論/鎖工場/奴隷と町奴
大杉栄主著解題(文=栗原康)
大杉栄略年譜(編=大杉豊)

★「道の手帖」最新刊です。22日(水)発売と版元サイトでは告知されていましたから、実際は明日以降店頭に並び始めるだろうと思います。対談、インタビュー、エッセイのどれをとっても面白いですし、随所にちりばめられた大杉の言葉は輝いています。なぜいま大杉が愛されるのか、なぜこの現代にアナキズムが注目を浴びるのか、本書は時代の空気を如実に示してくれていると思います。土曜社さんの『日本脱出記』『自叙伝』を読んだ方には特にお薦めします。


レジスタンス女性の手記
アニエス・アンベール著 石橋正孝訳
東洋書林 2012年2月 本体3,800円 46判上製330頁 ISBN978-4-88721-797-3
帯文より:「パリ市民は早くも抵抗を始めている……ここで心は決まった!!」 1946年の初版以来、数多の歴史家に参照されて今や古典的資料となった、抵抗運動の草創期を語る貴重な証言! 地下新聞の発行、逮捕、仏国内の刑務所における拘禁を経て、ヒトラーの徒刑場での抑留、ナチス崩壊後の残党摘発活動に至るまでの反ファシズム闘争の日々を活写する。

原書:Notre guerre: souvenirs de Résistance, Editions Emile Paul Frères, 1946.

★今週発売予定の新刊です。著者のアニエス・アンベール(Agnès Humbert: 1896-1963)は、フランスの美術史家であり民族誌学者。第二次世界大戦のさなか、「人類博物館ネットワーク」の一員としてナチスへの抵抗運動を行い、地下新聞「レジスタンス」の発行に関わったかどで政治犯として逮捕されて抑留されます。本書はその生々しい記録と言うべき日記で、1940年6月から1945年6月までの彼女の戦いを濃密に伝えています。巻末に収録されたジュリアン・ブランによる「解説」を借りてより詳しく説明すると、本書を構成する全10章のうち、レジスタンス活動中だった1940年6月から41年4月13日までが当時の日記の再録で、これらが最初の2章になります。その後41年4月15日に逮捕されてから45年4月にアメリカ軍によって解放されるまでの抑留期間の記録となる7章分は後日の回想で、最後の第10章が再開された日記の再録です。抑留中は記憶だけが頼りでしたが、途中、1942年2月の裁判の折には、デカルトの本の余白に覚書を書きつけることができたそうです。本書は射殺され、拷問され、空襲で死んだ仲間たちに捧げられています。


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市田良彦『革命論――マルチチュードの政治哲学序説』平凡社新書、2012年2月、ISBN978-4-582-85627-9
辻隆太郎『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』講談社現代新書、2012年2月、ISBN978-4-06-288146-3
中田力『日本古代史を科学する』PHP新書、2012年2月、ISBN978-4-569-80235-0

★今月刊行された新書のなかで特に印象的な3点です。市田さんの『革命論』は昨今の政治哲学の「流行」への違和感の表明から出発し、アガンベン、アルチュセール、ネグリ、デリダ派、アルチュセール、バディウ、スピノザ、ドゥルーズ、マトゥロン、フーコーなどをひもときつつ、倫理と革命を根本的に再審する政治哲学へと踏み出されています。辻さんの『世界の陰謀論を読み解く』は、副題にある通り、ユダヤ、フリーメーソン、イルミナティをめぐる陰謀論の歴史的発展と日本への輸入情況について解明し、本場アメリカでの陰謀論の最前線や、東日本大震災後の日本におけるデマにも分析のメスをふるっています。巷間に溢れかえっている流言や噂の数々をどう理解したらいいか、本書を読めば大筋で整理できるだろうと思います。中田さんの『日本古代史を科学する』はあの名著『脳の中の水分子』の著者による異色の古代史考で、『魏志倭人伝』や『古事記』『日本書紀』を読み解き、邪馬台国の「所在地」や神武王朝以来の「万世一系」、Y染色体が示す日本人の「ルーツ」などについて論じておられます。いかに受け止めるにせよ、中田さんの印象が変わる本のようです。
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by urag | 2012-02-19 23:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 02月 18日

注目文庫新刊:2012年2~3月

★今月来月の文庫本新刊の中から気になる書目を抜き出します。

◎2012年2月
2月1日 草思社文庫『銃・病原菌・鉄(上・下)―― 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳
2月8日 ちくま学芸文庫『「伝える」ことと「伝わる」こと――中井久夫コレクション』中井久夫
2月8日 ちくま学芸文庫『ゴダール 映画史(全)』ジャン=リュック・ゴダール/奥村昭夫訳
2月8日 ちくま学芸文庫『フンボルト 自然の諸相─―熱帯自然の絵画的記述』アレクサンダー・フォン・フンボルト/木村直司訳
2月8日 ちくま学芸文庫『ニーチェ――自由を求めた生涯』ミシェル・オンフレ原作/マクシミリアン・ル・ロワ画/國分功一郎訳
2月9日 ハヤカワ文庫『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上・下)』マイケル・サンデル/NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム+小林正弥+杉田晶子訳
2月10日 講談社学術文庫『藤原行成「権記」全現代語訳(下)』倉本一宏
2月10日 講談社学術文庫『ルネサンスの神秘思想』伊藤博明
2月10日 講談社学術文庫『生命の劇場』ヤーコプ・フォン・ユクスキュル/入江重吉+寺井俊正訳
2月10日 平凡社ライブラリー『菊燈台』澁澤龍彦/山口晃絵
2月10日 平凡社ライブラリー『新版 蔦屋重三郎』鈴木俊幸
2月10日 平凡社ライブラリー『精神のエネルギー』アンリ・ベルクソン/原章二訳
2月14日 光文社古典新訳文庫『メノン――徳〔アレテー〕について』プラトン/渡辺邦夫訳
2月14日 光文社古典新訳文庫『悪霊 別巻――「スタヴローギンの告白」異稿』ドストエフスキー/亀山郁夫訳
2月15日 講談社文庫『エクソシストとの対話』島村奈津
2月16日 岩波現代文庫『「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用』アラン・ソーカル+ジャン・ブリクモン/田崎晴明+大野克嗣+堀茂樹訳
2月16日 岩波現代文庫『帝国と国民』山内昌之
2月16日 岩波現代文庫『「国語」という思想――近代日本の言語認識』イ・ヨンスク
2月16日 岩波現代文庫『増補  自己と超越――禅・人・ことば』入矢義高
2月16日 岩波文庫『日本倫理思想史(四)』和辻哲郎 ※全四巻完結
2月16日 岩波文庫『流刑』パヴェーゼ/河島英昭訳
2月16日 岩波文庫『フランス・プロテスタントの反乱――カミザール戦争の記録』ガヴァリエ/二宮フサ訳
2月16日 岩波文庫『丘』ジャン・ジオノ/山本省訳
2月25日 中公文庫『聴衆の誕生――ポスト・モダン時代の音楽文化』渡辺裕
2月25日 中公文庫『海賊列伝――歴史を駆け抜けた海の冒険者たち(上・下)』チャールズ・ジョンソン/朝比奈一郎訳
2月25日 角川ソフィア文庫『春秋左氏伝』安本博
2月25日 角川文庫(海外)『緋色の研究』コナン・ドイル/駒月雅子訳

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★ゴダール『映画史』は親本では二分冊だっただけに文庫化で合本は嬉しいですね。値段は驚きの2300円(税別)。かの『言海』(2200円)を上回り、ひょっとしてちくま学芸文庫で一番高価な書目になったのでしょうか。先月のルロワ=グーラン『身ぶりと言葉』(2100円)もそうでしたが、文庫本がついに二千円を超える時代になってきましたね。

★フンボルト『自然の諸相』の訳者は、これまで学芸文庫でゲーテの『色彩論』や『形態学論集』『地質学論集』『スイス紀行』などを手掛けられてきた木村直司先生。その地道で堅実な持続力にはただただ敬服するばかりです。博物学者であり探検家のアレクサンダー・フォン・フンボルト(1769-1859)の著書の既訳には、「17・18世紀大旅行記叢書」第二期の『新大陸赤道地方紀行』(全三巻、大野英二郎+荒木善太訳、岩波書店、2001-2003年)があるのみです。

★伊藤博明『ルネサンスの神秘思想』は、『神々の再生――ルネサンスの神秘思想』(東京書籍、1996年)の文庫化。巻頭に置かれた「講談社学術文庫版によせて」では三人の編集者に謝辞が寄せられています。「原著を編集していただいた関正則さんには、あらためて深く感謝申し上げたい。文庫化にあたっては二宮隆洋さんにお世話になり、実務は講談社の園部雅一さんに担当していただいた」。関正則さんは著者の伊藤さんと同い年で1955年生まれ。親本が刊行された96年に東京書籍を退職され、翌年よりこんにちに至るまで平凡社にお勤めでいらっしゃいます。二宮隆洋さんは1951年生まれで、私の記憶が正しければ関さんが平凡社に移籍される少し前に同社を退職され、その後フリーランスの編集者としてちくま学芸文庫や中央公論新社「哲学の歴史」などに助力されてきました。園部雅一さんはは講談社でこれまでに中沢新一さんの『アースダイバー』や、昨年5月に学術文庫で刊行され異例の売れ行きだったという寺田寅彦『天災と国防』などを担当されています。『ルネサンスの神秘思想』が要所で凄腕編集者に支えられてきたことが分かりますね。

★『菊燈台』は「ホラー・ドラコニア 少女小説集成」シリーズのライブラリー化第2弾。小さいサイズになってもやはり雰囲気のある本で、親本を持っている私のような読者も思わず手が伸びます。特にこの巻は、山口晃さんによる挿絵がこの『菊燈台』のための描き下ろしなので、特別な印象が強いです。巻末に新たに加えられたのは、「山口晃をめぐって」と銘打たれた三潴末雄さんによる「国民的画家のもうひとつの天才」と、高丘卓さんによる解題「澁澤龍彦航海記――ホログラム装置」です。来月配本は『狐媚記』(澁澤龍彦/鴻池朋子絵)。

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★ユクスキュル『生命の劇場』は博品社より1995年に刊行された単行本の文庫化。本作はユクスキュル(1864-1944)の遺稿で原題は「全能なる生命」です。博品社は「Documenta historiae naturalium」や「日本の名山」などの素晴らしいシリーズなどを擁していた出版社でしたが92年から99年まで出版活動を続けた後に解散されました。刊行物は自由価格本でジュンク堂書店など一部の書店で今なお扱われていますけれども、さすがに書目は少なくなっています。『生命の劇場』はいつ文庫化されてもおかしくない名作でした。ユクスキュルとゲオルク・クリサートの共著『生物から見た世界』の新訳が岩波文庫で出たのが2005年で、こちらも、思索社版旧訳の刊行年(1973年)から数えると「ようやく」といった感が強かったですね。日本語で読めるユクスキュルの著作はこのほか、思索社版『生物から見た世界』(現在は新思索社の新装版)に収録されている「意味の理論」などがあります。これらはユクスキュル(1864-1944)の著書のほんの一部であり、まだ多数は未訳のままなのが残念です。

★ベルクソン『精神のエネルギー』は新訳。同書の既訳にはこれまでに白水社版『ベルグソン全集』第5巻(渡辺秀訳、1965年)や、レグルス文庫版(宇波彰訳、1992年)があります。現在刊行中の白水社個人全訳版『ベルクソン全集』(竹内信夫訳)でも第5巻として刊行予定です。今回の新訳本の「訳者あとがき」を拝読すると、原さんは本書の続編である『思考と動き』(従来の訳では『思想と動くもの』)の新訳も手掛けて下さるのではないかと期待したくなります。

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★渡辺邦夫訳『メノン』は光文社古典新訳文庫では『プロタゴラス――あるソフィストとの対話』(中澤務訳、2010年)に続く、プラトン新訳の第2弾です。同対話編の既訳は文庫本では岩波文庫版(藤沢令夫訳、1994年)があります。そういえば『プロタゴラス』の岩波文庫版(1988年)も藤沢訳です。今回の『メノン』新訳を手掛けた渡辺さんはちくま学芸文庫より『テアイテトス』(2004年)を上梓されています。こちらは現在品切。なお、新訳『メノン』の巻末に掲載されている古典新訳文庫の続刊予定に、ワイルド『サロメ』の平野啓一郎訳が登場しました。まだ何カ月か先のようですが、楽しみです。

★サンデル『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上・下)』は、早川書房では『これからの「正義」の話をしよう』(2011年11月)に続く、サンデルの文庫化第2弾(他社本も合わせると、『公共哲学』ちくま学芸文庫も含め3点目)。ハヤカワ文庫版『これからの~』の巻末に特別付録として収録されたサンデルの最新刊『それをお金で買いますか――市場主義の限界』(鬼澤忍訳)の序章「市場と道徳」が、今回の文庫版『ハーバード~』の下巻巻末にも併録されています。『それをお金で~』は5月に単行本発売予定。この近刊書の内容は『ハーバード~』の帯では以下のように紹介されています。「私たちは、あらゆるものが売買される時代に生きている。だが今やこの「市場主義」は、教育、医療、政治、家族など、本来ふさわしくない領域にまで及んでいるのではないか? 暴走する市場主義から「善き生」を守るために、私たちにできることは?」と。ちょうど本日NHK総合テレビでは夜9時から10時13分まで特番「マイケル・サンデル 究極の選択――「お金で買えるもの買えないもの」」が放映されました。サンデル教授はNHKではすっかりおなじみの存在になりましたね。


◎2012年3月
3月7日 ちくま学芸文庫『ルーベンス回想』ヤーコプ・ブルクハルト/新井靖一訳
3月7日 ちくま学芸文庫『イメージの歴史』若桑みどり
3月7日 ちくま学芸文庫『同時代史』タキトゥス/國原吉之助訳
3月7日 ちくま学芸文庫『現代数学の考え方』イアン・スチュアート/芹沢正三訳
3月7日 ちくま学芸文庫『鈴木大拙の仏教』鈴木大拙/守屋友江編訳
3月9日 平凡社ライブラリー『政治と思想 1960-2011』柄谷行人
3月9日 平凡社ライブラリー『科学的精神の形成』ガストン・バシュラール
3月9日 平凡社ライブラリー『狐媚記』澁澤龍彦/鴻池朋子絵
3月10日 講談社文芸文庫『アレゴリーの織物』川村二郎
3月13日 講談社学術文庫『近代日本思想の肖像』大澤真幸
3月13日 講談社学術文庫『雇用、利子、お金の一般理論』ジョン・メイナード・ケインズ/ジョン・リチャード/ポール・クルーグマン序文/山形浩生訳
3月13日 講談社学術文庫『西洋中世の罪と罰――亡霊の社会史』阿部謹也
3月16日 岩波現代文庫『田辺元・野上弥生子往復書簡(上・下)』竹田篤司+宇田健編
3月16日 岩波現代文庫『評伝 今西錦司』本田靖春
3月16日 岩波文庫『祭りの夜』パヴェーゼ/河島英昭訳
3月16日 岩波文庫『フィレンツェ史(上)』マキァヴェッリ/齊藤寛海訳
3月16日 岩波文庫『善の研究』西田幾多郎
3月24日 角川ソフィア文庫『世界神話事典――世界の神々の誕生』大林太良+伊藤清司+吉田敦彦+松村一男編
3月24日 角川ソフィア文庫『世界神話事典――創世神話と英雄伝説』大林太良+伊藤清司+吉田敦彦+松村一男編
3月24日 角川ソフィア文庫『詩経・楚辞』牧角悦子
3月24日 角川ソフィア文庫『精神分析入門(上・下)』フロイト/安田徳太郎+安田一郎訳
3月28日 新潮文庫『無限の網――草間彌生自伝』草間彌生

★平凡社ライブラリーのバシュラールは新訳なのか、あるいは既訳の文庫化なのかは未詳です。既訳には『科学的精神の形成――客観的認識の精神分析のために』(及川馥+小井戸光彦訳、国文社、1975年) があります。バシュラールの文庫本はこれまですべてちくま学芸文庫から刊行されてきました。

04年12月『夢想の詩学』及川馥訳
02年10月『空間の詩学』岩村行雄訳
02年01月『新しい科学的精神』関根克彦訳
99年08月『夢みる権利』渋沢孝輔訳

恐ろしいことに、『空間の詩学』以外は品切。親本を持っているからと買わずに油断していると痛い目にあいます。筑摩書房さんにおかれましてはぜひ岩波文庫同様に春秋の年2回に復刊をイベント化してくださることを熱望してやみません。無謀なことを言えば、もし私がもう一社、出版社を興すとしたら、品切絶版文庫の再刊復刊(紙と電子版の両方)に特化した文庫専門版元をつくります。投資されるべき有意義な文化事業だと常々思うのですけどね。

★岩波文庫の『善の研究』は1979年第48刷改版以来のリニューアルになるようです。これまでは下村寅太郎さんの解説が巻末に収められていましたが、今度の改版では注解と解説を藤田正勝さんが担当されるとのことです。かつて私が買った頃(87年第59刷)は消費税導入前で450円でした。それが2008年には760円。今度の改版では840円。時代の移り変わりのなかで物価上昇はやむをえませんが、すでに著作権フリーとなっている本書がもう二度と500円以内には戻れないのでしょうか。今度の改版の注解を、小坂国継全注釈版(講談社学術文庫、2006年、本体1100円)と読み比べてみたいと思います。
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by urag | 2012-02-18 00:10 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)