ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ

<   2012年 01月 ( 11 )   > この月の画像一覧


2012年 01月 30日

2012年1月の注目復刊など

読書人にとって「絶版のない世界」は理想です。電子書籍時代が本格化すればそれが到来するかと言えば、しかし、そんな簡単なものではありません。品切になって久しい書目を出版社は苦心して復刊に漕ぎつけようとしますが、本が出版された経緯というのは一冊ずつ異なりますから、どれもこれも復刊できるという単純なものではないのです。水面下でいかに出版社がもがいているか、その実態はなかなか見えにくいところではあります。比較的に世間様にも御承知いただいているはずの事業としては、人文系の版元8社が毎年行っている「書物復権」があります。現在「第16回」がリクエスト募集中。こうした「共同一括復刊」のほかに、通常の毎月の新刊でも再刊や復刊は色々な形態で出ています。ごく最近発売されたその一部をご紹介します。

a0018105_133291.jpg


渡辺慧(1910-1993):著
河出書房新社 2012年1月 本体2,500円 46上製368頁 ISBN978-4-309-24573-7
帯文より:時間の不可逆性はなぜ生じるのか? ド・ブロイ、ハイゼルベルク、ボーアに、師事・親交した量子力学の輝ける巨星による「時間論」の金字塔! 「理論的僥倖と呼ぶべき読書体験であり、まさに、天啓にうたれたような感動であった」(大澤真幸・解説より)。
本文より:アインシュタインの相対性理論が、時間の観念に革命をもたらしたことは周知のことである。また量子理論が因果律の理解を変革することを余儀なくせしめたことも知られている。しかし、この量子理論が時間の問題に関して全く新しい観点をひきおこしつつあることを知るものは少ない。それは確かに相対性理論がもたらした革命より遙かに深刻な哲学的影響を伴う革命であるのだが。

★発売済。初版は74年刊。今回、大澤真幸さんの18頁にわたる解説「明日の日の出を祈る神官/「死」を否定するアインシュタイン」を冒頭に付した復刻新版が刊行されました。創業125年である昨年から開始された名著復刊事業「KAWADEルネサンス」の一環です。


西郷信綱著作集(2)記紀神話・古代研究II 古代人と夢 
西郷信綱:著
平凡社 2012年1月 本体9,000円 A5判上製函入452頁 ISBN978-4-582-35706-6
帯文より:古代人にとって、世界はどんな構造をしていたか? 「夢」を回路に、忘れていた今を想い出すように古代人の世界連関を探った傑作『古代人と夢』、生と死、大地、魂、王権をめぐる姉妹編『古代人と死』を収録。

★発売済。第6回配本です。『古代人と夢』は初版が1972年刊の平凡社選書で、93年に平凡社ライブラリーの記念すべき1冊目として再刊されています(解説=市村弘正)。『古代人と死』は初版が99年刊の平凡社選書、2008年に平凡社ライブラリーで再刊されています(解説=大隅和雄)。

◎西郷信綱著作集(全9巻)
第1巻「記紀神話・古代研究I 古事記の世界」本体9000円、2010年12月刊(第1回配本)、ISBN978-4-582-35705-9 解説=三浦佑之
第2巻「記紀神話・古代研究II 古代人と夢」2012年1月刊(第6回配本)、ISBN978-4-582-35706-6 解説=磯前順一
第3巻「記紀神話・古代研究III 古代論集」本体9000円、2011年06月刊(第4回配本)、ISBN978-4-582-35707-3 解説=大隅和雄
第4巻「詩論と詩学I 萬葉私記・古代の声」本体9000円、2011年02月刊(第2回配本)、ISBN978-4-582-35708-0 解説=阪下圭八
第5巻「詩論と詩学II 梁塵秘抄・斎藤茂吉」次回(第7回配本)、2012年4月予定
第6巻「文学史と文学理論I 詩の発生」本体9000円、2011年10月(第5回配本)、ISBN978-4-582-35710-3 解説=龍澤武
第7巻「文学史と文学理論II 日本古代文学史」本体9000円、2011年04月刊(第3回配本)、ISBN978-4-582-35711-0 解説=秋山虔
第8巻「文学史と文学理論III 古典の影」未刊
第9巻「初期論考・雑纂」未刊


a0018105_161448.jpg

ジェローム神父
マルキ・ド・サド:著、澁澤龍彦:訳、会田誠:絵
平凡社ライブラリー 2012年1月 本体1,400円 HL判上製128頁 ISBN978-4-582-76754-4
版元案内文より:トリエステ、ナポリ、パレルモ──若い娘や少女たちに悪の姦計が迫る。〈サディズム〉の語源・サド侯爵の禁断の物語が、澁澤龍彦の名訳と、現代美術を震撼させる会田誠の幻想の絵巻で甦る。

★発売済。画壇の最先端と澁澤の文学世界との見事なハイブリッドと美しい造本で、ゼロ年代の新たな書物のキュレーションの地平を開いたあの「ホラー・ドラコニア少女小説集成」が、平凡社ライブラリーになって帰ってきました。しかも、同ライブラリーの「Offシリーズ」の一部でしか見たことがなかったハードカバーの上製本です。親本は2003年。澁澤のエッセイ「異常と正常」は親本と同様、巻末に収録。ライブラリー化にあたって、さらに巻末に二篇の新規エッセイが収められています。「会田誠をめぐって」と銘打たれた、ミヅマアートギャラリーの三潴末雄さんによる「現代文明の闇を見つめる確信犯」と、責任編集者の高丘卓さんによる解題「澁澤龍彦航海記――船出まで」です。親本では別刷の「月報」に、美術史家の山下裕二さんによる「貴族と俗衆――澁澤龍彦と会田誠の挿絵をめぐって」と、高丘さんの編集後記「高丘親分出帆顛末記」が掲載されていました。親本の順番と同様に、来月は『菊燈台』(澁澤龍彦:著、山口晃:絵)がライブラリー化第二弾として発売されるそうです。なお、3月のライブラリー新刊としては、ベルクソン『精神のエネルギー』も予告が出ています。

◎ホラー・ドラコニア少女小説集成
1 『ジェローム神父』サド:著、澁澤龍彦:訳、会田誠:絵、2003年9月;平凡社ライブラリー、2012年1月。
2 『菊燈台』澁澤龍彦:著、山口晃:絵、2003年11月;平凡社ライブラリー、2012年2月予定。
3 『淫蕩学校』サド:著、澁澤龍彦:訳、町田久美:絵、2004年1月。
4 『狐媚記』澁澤龍彦:著、鴻池朋子:絵、2004年3月。
5 『獏園』澁澤龍彦:著、山口晃:絵、2004年5月。


心理学的類型
ユング:著、吉村博次:訳
中公クラシックス、2012年1月、本体1,550円、新書判並製224頁、ISBN978-4-12-160131-5
帯文より:主体と客体、意識と無意識、内向型と外向型・・・。心的なはたらきの分析。

★発売済。親本は中公バックス版『世界の名著(76)ユング フロム』(1979年)。さらに遡ると、同巻は函入ハードカバー版『世界の名著』では「続14」巻(1974年)でした。「世界の名著」ではユングの「心理学的類型」抄訳と、フロムの「正気の社会」のカップリングでした。ユングは序言、第4章、第10章、むすび、を訳出した抄訳。今回のクラシックス版では巻頭に19頁にわたる河合俊雄さんによる解説が付されています。同書の完訳版としては、『心理学的類型』(全2巻、佐藤正樹・高橋義孝ほか訳、人文書院、1986年6月-87年7月)と『タイプ論』(林道義訳、1987年5月、みすず書房)があります。前者は品切ですが、ここしばらくのあいだ人文書院さんが進めてきた「ユング・コレクション」の復刊の中には残念ながらまだ入っていません。中公クラシックスは今年で創刊10周年だそうです。長く続いてほしいと切に願っています。
[PR]

by urag | 2012-01-30 01:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 29日

まもなく発売:2012年1月第5週~2月第1週の新刊2点

a0018105_22513250.jpg

陰謀のスペクタクル――〈覚醒〉をめぐる映画論的考察
吉本光宏(1961-)著 
以文社 2012年2月 本体2,500円 46判上製288頁 ISBN978-4-7531-0298-3 
帯文より:なぜ陰謀論は消えないのか? 陰謀論の限界と可能性を原理的=映画論的に考察し、「シニシズムの物語」の戦略を徹底的に読み砕く。映画・アメリカ・民主主義・市場への根源的分析から「闘争の時代」の幕開けを告げる、新たなる時代の批評の誕生。
本文より:どれだけ批判され、それだけ冷淡にあしらわれても陰謀論が消滅しないのは、陰謀論に内在するユートピア的契機のためである。〔…〕陰謀があるから覚醒しなければならないのではない。覚醒への欲求が高まり集団的に共有されることで、陰謀の幻影が立ち現われるのだ。(118頁)

目次:
序にかえて
1 陰謀とイメージ
  陰謀論とはなにか
  イメージの陰謀
  冷戦と陰謀
  二元論の崩壊
  陰謀と市場
  市場の不可視性
  冷戦から新自由主義へ――陰謀論映画は何を隠蔽するのか
  陰謀論と覚醒
2 陰謀装置としての映画
  催眠術と覚醒体験
  映画と覚醒――アメリカン・ドリームの終焉
  陰謀と不気味なもの
  陰謀の空間
  監視空間と主体
  反復と覚醒
  覚醒という事件と映画の両義性
3 陰謀・メディア・民主主義
  自由・民主主義の矛盾
  フランク・キャプラと陰謀論映画
  議会制民主主義の限界
  金融危機とアメリカの狂気
  暗い時代
  仮面の告白
  「冷笑」でもなく「熱狂」でもなく
おわりに 「われわれ」はどこへ向かうのか
あとがき

★1月30日(月)取次搬入であろう新刊です。『イメージの帝国/映画の終り』(以文社、2007年)に続く単独著第二弾。著者は現在、早稲田大学国際学術院教授。担当編集Mさんによるご紹介文によれば、本書は「認識装置としての映画と陰謀論的な言説の“類似性”をシャープに分析し、陰謀論の磁場のなかにあるいくつかの映画作品の「核」にあたる要素を“哲学的”に探究した」もの。「新旧映画作品の分析を通して、現代の“民主主義体制(批判)の困難さ”を浮き彫りにするべく」執筆された、「きわめて現在的な政治哲学批評」ともなっているとのことです。「序にかえて」にはこうあります、「本書は大きく分けて、次の三つの問題と取り組むことを目的に書かれている。一つ目として、陰謀論とはなにかという問題。次に映画というメディアと陰謀論のあいだに存在する親和性を、どのように理解することができるのかという問い。そして最後に、映画が陰謀論の主題系をどう扱い、その結果なにを生みだしてきたのかという問いである」(16頁)。陰謀論を議論する上で参照されているテクストは、アメリカの政治学者リチャード・ホフスタッター Richard Hofstadter(1916-1970)による「アメリカ政治のパラノイド・スタイル The Paranoid Style in American Politics」という60年代半ばの論文です。この論文によれば「陰謀論は陰謀を「われわれ」の偉大な文化的伝統や生活様式、さらに民族そのものを破壊しようとする邪悪な策略として糾弾する。「われわれ」を「われわれ」たらしめる基本的価値観そのものを攻撃し、「われわれ」=アメリカという共同体のアイデンティティの根幹を陰謀は揺さぶるがゆえに、徹底的にその全容を明らかにし、打破しなければならないというのが、陰謀論の主張であるといわれる。陰謀論が想定する敵とは、具体的には社会主義や共産主義、国際主義やコスモポリタニズム、それらを支える政治家、活動家、知識人など、アメリカの資本主義を攻撃し、伝統的なアメリカの美徳を破壊しようとする組織や人間、さらに思想である。そして陰謀論の主体が自らに与える使命とは、こうした敵を打ち破ることで、失われつつある徹底した個人主義と資本主義的自由競争を回復することにあるとホフスタッターはいう」(18-19頁)。

★取り上げられる映画は、オリヴァー・ストーン「JFK」(1991年)、アラン・J・パクラ「パララックス・ビュー」(1974年)、フランク・キャプラ「スミス都へ行く」(1939年)、クリストファー・ノーラン「ダークナイト」(2008年)、同「インセプション」(2010年)など多数。本書が映画論に留まらず、担当編集者のMさんが言う通り「きわめて現在的な政治哲学批評」にもなっているのは、例えば次のような文章の中に見て取ることができるように思います。少し長くなりますが、省略せずに引用します。「陰謀論を執拗に攻撃する論者たちも、逆に積極的に評価する論者たちも、自分たちこそが覚醒していると信じているという点において、それほど大きな違いはない。両者に共通する恐怖の対象、それは覚醒した状態ではなく、目覚める瞬間、覚醒という事件である。自分たちはすでに覚醒していると疑わない反陰謀論者たちにとって、他の「覚醒せよ」と扇動する言説はすべていかがわしいということになる。自分たちが得体の知れない外部の力から完全に自由ではないにもかかわらず、「自由意思」に従って行動していると信じている間抜けな存在であると認めることが、反陰謀論者にとって耐え難い屈辱であることは言うまでもない。一方、陰謀論肯定論者たちはといえば、陰謀論を信じる言説のなか、逆説的に〈覚醒〉という主題を抑圧することで、覚醒した者たちとしての自分たちの立ち位置と自律性を確保しようとする。しかし、陰謀論をことさら批判する言説も、そして逆に肯定する言説においても、その政治的有効性は限られている。なぜなら権力が本当に恐れているもの、それは「覚醒状態」にいる人民ではないからだ。それどころか、「覚醒状態」こそ、権力にとって必要不可欠なフィクションである。人民に自分たちは覚醒をしていると思い込ませることはイデオロギーの重要な機能の一つであり、「覚醒状態」を作り出すことによって、権力はその支配を維持し強化することができる。権力は覚醒している人民を好むのであって、いまだに覚醒していない人民や、「覚醒状態」に安住することができない人民ほど、権力にとって厄介な存在はないだろう」(186-187頁)。ここで言う覚醒が「隠された真実を知った」と思いこむ状態のことを指しているとすれば、私たちは自身に「隠された真実とは本当に存在するのだろうか」と問い続けなければなりません。「覚醒状態が権力の支配にとってもっとも有効なイリュージョンであるとすれば、繰り返し覚醒し続けることによってしか、覚醒の罠から逃れる方法はない。もちろん越境の運動に最終的な到達点は存在せず、フレームの外部にあるのも絶対的に解放された空間ではなく、新たなフレームに取り囲まれた別の空間である」(187-188頁)と吉本さんは論じ、「境界を越えることの快楽と不可能性によって根源的に特徴づけられているのがほかでもない、メディアとしての映画なのだ。〔…〕陰謀を可能にするテクノロジーでありながら、陰謀のメカニズムを可視化することのできるテクノロジーでもある映画」(188頁)と書いておられます。こうした論点はこんにちの社会の色々な場面に応用可能な、重要な鍵であると感じました。

★ホフスタッター以後の「陰謀論」の変遷を考えると、来月刊行になる次の新刊に興味をそそられる方もいらっしゃるかもしれません。辻隆太朗『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』(講談社現代新書、2012年2月)。版元案内文によれば、本書の内容は以下の通りです。「フランス革命はフリーメーソンの仕業? ユダヤ人の世界支配計画書『プロトコル』? 関東大震災も東日本大震災も人工地震?……「邪悪な誰かが世界を操っている」というロジックに潜む心性を読む」。著者の辻さんは昨年刊行された『情報時代のオウム真理教』(井上順孝責任編集、宗教情報リサーチセンター編、春秋社、2011年7月)に「オウム真理教と陰謀論」という論文を寄稿されています。


魚は痛みを感じるか?
ヴィクトリア・ブレイスウェイト著 高橋洋訳
紀伊國屋書店 2012年2月 本体2,000円 46判上製262頁 ISBN978-4-314-01093-1
版元プレスリリースより:痛みとは何か? 魚がそれを感じるとはどういうことか? そしてわれわれは、魚とどのようにつきあえばよいのか? 魚類学者である著者は、痛みの認知構造などを明らかにしたうえで、魚の「意識」というやっかいな領域にも足を踏み入れ、数々の調査と自らの実験結果などから「魚は痛みを感じている」と結論します。本書の後半では、その結論を受けて、動物福祉の観点から、釣りや漁業、鑑賞魚などにおける人間の魚への対し方が考察されます。本書は、決して「魚を保護しなければならない」、「魚を食べてはいけない」、「スポーツフィッシングなどやめるべきだ」と声高に主張する本ではありません。科学的根拠に基づいたニュートラルな視点から、すっきりと論理立て、わかりやすく解説する著者の主張は、「魚の福祉」という難題を読者に提示します。

目次:
第1章 問題提起
 パンドラの箱を開ける/動物実験/コウモリであるとはどのようなことか/魚に特異な感覚/魚の脳と生理過程/魚の受難/釣り、漁業、養殖の問題/五つの自由/「魚の福祉」は可能か?

第2章 痛みとは何か? なぜ痛むのか?
 痛みの起源/痛みをどうとらえるか?/選択実験/ヒトはいかに痛みを感じるか?/侵害受容/損傷への対応/痛みと意識

第3章 ハチの針と酢――魚が痛みを知覚する証拠
 魚の痛みの調査研究計画/魚の神経/神経と侵害受容体をさぐる/実験と結果/大きな反響/マスは痛みを感じている?/各国での研究成果

第4章 いったい魚は苦しむのか?
 「意識」という問題/意識の三つのカテゴリー/魚の空間認知能力――アクセス意識の調査実験/驚異のメンタルマッピング――フリルフィンゴビーの例/どっちが強い?――シクリッドの例/現象意識の探究:感覚力/魚の脳/客観的な情動、主観的な情動/魚の自己意識とは何か?/ウツボとハタの連携/魚は痛みを感じている

第5章 どこに線を引けるのか?
 哺乳類の感覚/生物の階層という考え方/無脊椎動物は痛みを感じるか?/ヤドカリによる実験/甲殻類の情動?/タコ、イカの情動?/不明瞭な線引き

第6章 なぜこれまで魚の痛みは問われなかったのか?
 魚類の誕生/「緑の革命」から「青の革命」へ/釣りの倫理的な問題/動物の権利/ピーター・シンガー『動物の解放』の功績/動物保護運動

第7章 未来を見据えて
 魚の養殖/魚の実験の難しさ/ガイドライン制定の困難/釣り針にかかった魚/キャッチアンドリリースの倫理/釣りにおける魚の福祉の実践/観賞魚に対する倫理/海洋での漁法の倫理/屠殺方法の再検討/よりよき未来への分岐点

訳者あとがき
参考文献/索引

★2月1日(水)取次搬入の新刊です。書店店頭には2日以降に順次並び始めると思われます。著者のヴィクトリア・ブレイスウェイトさんはアメリカのペンシルバニア州立大学教授で、生物学・魚類学を専攻されています。「オックスフォード大学博士号(動物行動学)を取得後、魚類の認知や行動の調査研究を行なう。2003年に鱒の痛みの知覚についての共同研究がイギリスで大きな話題を呼び、テレビ・新聞などの取材が殺到する。2006年、彼女の魚類生物学への貢献に対して、イギリス諸島漁業学会から賞を授与されている」とのことです。

★「本書の木的な、魚の痛みに関する議論の裏づけになる科学的な成果を、一般読者の目の届くところに示すことだ。事実と論拠を誰の目にも明らかにすること、それが本書の目的であり、それ以外の私的な意図はない」(17頁)と著者は書いています。「魚が痛みを感じるかどうかについて問うことは、既存の考え方への挑戦であり、パンドラの箱を開けるにも等しい。この問いを発するやいなや、広大な未知の領域が出現するのだ。倫理的な観点からみた場合、どの動物を保護すべきだろうか? 魚には意識があるのか? どこに線を引くべきなのか? 魚は鳥類やほ乳類と同列に扱われるべきか? それともロブスターやイカやミミズと一緒に分類されるべきか?」(19-20頁)。「魚は苦痛を経験すると認めることで、魚に対する私たちの考え方は変わり、またさまざまな面で私たちの行動のあり方もやがてはかわっていくだろう。だが、どのように行動すべきかとなると、現在のところ多くが明確になっていない。そのような未知の領域を探求する際には、知識、教育、オープンな心構えが最良の案内役になることは確かであろう」(243頁)。

★担当編集者のIさんから『魚は痛みを感じるか?』のオススメ関連書を教えていただきました。
『動物たちの心の世界 新装版』マリアン・ドーキンス著、長野敬訳、青土社、2005年。
『コウモリであるとはどのようなことか』トマス・ネーゲル著、永井均訳、勁草書房、1989年。
『ダンゴムシに心はあるのか――新しい心の科学』森山徹著、PHPサイエンス・ワールド新書、2011年4月。
『イカの心を探る――知の世界に生きる海の霊長類』池田譲著、NHKブックス、2011年6月。
『動物感覚――アニマル・マインドを読み解く』T・グランディン+C・ジョンソン著、中尾ゆかり訳、NHK出版、2006年。
『動物の解放 改訂版』ピーター・シンガー著、戸田清訳、人文書院、2011年5月。
『動物からの倫理学入門』伊勢田哲治著、名古屋大学出版会、2008年。
『銀むつクライシス――「金を生む魚」の乱獲と壊れゆく海』G・ブルース・ネクト著、杉浦茂樹訳、早川書房、2008年。
『魚のいない海』Ph・キュリー+Y・ミズレー著、勝川俊雄監訳、NTT出版、2009年。
『飽食の海――世界からsushiが消える日』チャールズ・クローバー著、脇山真木訳、岩波書店、2006年。

以下は私の個人的な文献参照メモです。 

『動物の命は人間より軽いのか――世界最先端の動物保護思想』マーク・ベコフ著、藤原英司+辺見栄訳、中央公論新社、2005年。
『沈黙の海――最後の食用魚を求めて』 イサベラ・ロヴィーン著、佐藤吉宗訳、新評論、2009年。
『海辺 生命のふるさと』レイチェル・カーソン著、上遠恵子訳、平河出版社、1987年。
『われらをめぐる海』レイチェル・カースン著、日下実男訳、ハヤカワ文庫、1977年。
『成長の限界――ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』ドネラ・H・メドウズほか著、大来佐武郎監訳、ダイヤモンド社、1979年。
『限界を超えて――生きるための選択』ドネラ・H・メドウズほか著、松橋隆治訳、村井昌子訳、ダイヤモンド社、1992年。
『エントロピーの法則――地球の環境破壊を救う英知 改訂新版』ジェレミー・リフキン著、竹内均訳、祥伝社、1990年。
『誰が世界を変えるのか――ソーシャルイノベーションはここから始まる』ウェストリー+ツィンマーマン+パットン著、東出顕子訳、英治出版、2008年。
『地球の論点――現実的な環境主義者のマニフェスト』スチュアート・ブランド著、仙名紀訳、英治出版、2011年6月。
[PR]

by urag | 2012-01-29 22:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2012年 01月 27日

2月下旬発売予定:上村忠男編訳『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』

2012年2月下旬発売予定【ジャンル:人文・哲学】

ヘーゲル弁証法とイタリア哲学
上村忠男:編訳
A5判上製304頁 本体3,800円 ISBN978-4-901477-91-8

19世紀におけるナポリ・ヘーゲル派の異才スパヴェンタ(1817-1883)による弁証法を〈改革〉する試みと、それに対する20世紀のクローチェ、ジェンティーレの応答を収める。イタリアでのヘーゲル受容の百年におけるもっとも重要な一幕を再現するアンソロジー。シリーズ「古典転生」第6回配本(本巻第6巻)

収録論文
ヘーゲル論理学の最初のカテゴリー (ベルトランド・スパヴェンタ)
区別されたものの連関と対立するものの弁証法 (ベネデット・クローチェ)
変成の概念とヘーゲル主義 (ベネデット・クローチェ)
ヘーゲル弁証法の改革とB・スパヴェンタ (ジョヴァンニ・ジェンティーレ)
ヘーゲルと弁証法の起源 (ベネデット・クローチェ)
[付録]ヘーゲル論理学の「失われた弁証法」をめぐって (上村忠男)

上村忠男(うえむら・ただお:1941-):思想史家。近著に『ヴィーコ』(中公新書、2009年)、『知の棘』(岩波書店、2010年)、『カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まってしまった』を読む』(平凡社ライブラリー、2010年)など。編訳書にベネデット・クローチェ『クローチェ政治哲学論集』(法政大学出版局、1986年)、アントニオ・グラムシ『知識人と権力』(みすず書房、1999年)、『国民革命幻想――デ・サンクティスからグラムシへ』(未來社、2000年)、アントニオ・グラムシ『新編 現代の君主』(ちくま学芸文庫、2008年)、ベネデット・クローチェ『ヴィーコの哲学』(未來社、2011年)などがある。
[PR]

by urag | 2012-01-27 21:18 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 24日

近藤和敬選書「概念の哲学」フェア@ジュンク堂新宿店

近藤和敬『構造と生成Ⅰカヴァイエス研究』の刊行を記念して、ジュンク堂書店新宿店で以下の通りブックフェアが開催されています。

◎近藤和敬選書「概念の哲学」フェア

日時:2012年1月23日(日)~
場所:ジュンク堂書店新宿店 7F 人文思想・哲学コーナー

フェア棚の全体像。一番手前の棚一本が「概念の哲学」フェアです。約30点を選書人である近藤さんのコメント付きで展開。お隣は山本達也さん選書「ポスト世俗と向き合うために――『宗教概念の彼方へ』(法蔵館、2011年)」フェアです。
a0018105_12494623.jpg


フェアの看板。直下の棚最上段には、プラトン『国家』、デカルト『省察』、上野修さんのスピノザ入門、スピノザ『エティカ』、カント『純粋理性批判』、マルクス『ドイツ・イデオロギー』。
a0018105_12502392.jpg


二段目には近藤さんによる、フェアにあたっての挨拶文とデビュー作『カヴァイエス研究』、そして「真理の生成」を連載中の『現代思想』誌。三段目は、バシュラール『適応合理主義』、金森修さんの編著書3点、近藤さんが責任編集に携わっている『VOL』のエピステモロジー特集号、ラカン『エクリ』、フーコー『狂気の歴史』。a0018105_12504625.jpg


近藤さんの挨拶文とデビュー作『カヴァイエス研究』のアップ。a0018105_12511142.jpg


四段目は、アルチュセール『哲学・政治著作集』、今村仁司さんのアルチュセール論、ドゥルーズ『差異と反復』、ドゥルーズ/ガタリ『哲学とは何か』、グランジェ『哲学的認識のために』。五段目は、ニーチェ『権力への意志』、ラトゥール『虚構の近代』、ハーマッハー『他自律』、フッサール『論理学研究』、ヒルベルト『幾何学基礎論』。六段目は『田辺元哲学選』2点、ハイデガー『存在と時間』、バタイユ『非-知』、郡司ペギオ-幸夫『生きていることの科学』、マックレーン『数学――その形式と機能』。a0018105_12514658.jpg

ブックリストは現時点では配布されていないようですので、フェア終了後に当ブログでご紹介しようかなと考えております。なお、ジュンク堂書店新宿店さんは入居している三越の閉店に伴い、3月いっぱいで撤退。残念でなりません。
[PR]

by urag | 2012-01-24 12:52 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 23日

本日取次搬入:ガシェ『いまだない世界を求めて』

叢書「エクリチュールの冒険」第二回配本、ロドルフ・ガシェ『いまだない世界を求めて』、本日23日取次搬入です。明日より順次、書店店頭での発売開始となります。近刊予告の際に書きましたが、本書はあさぎ色(水色と緑色の中間色)の本文紙に濃緑のインクで刷りました。カバーの書名は銀箔。見た目のシンプルさを重視したいため、帯は付しません。写真を撮ってみましたが、ちょっと分かりにくいですかね。

a0018105_14211892.jpg

a0018105_14223547.jpg


◎叢書「エクリチュールの冒険」既刊書
2007年09月【第一回配本】『書物の不在 初版』モーリス・ブランショ著、中山元訳、絶版
2009年02月『書物の不在 第二版』モーリス・ブランショ著、中山元訳、本体2,500円、ISBN:978-4-901477-44-4
2012年01月【第二回配本】『いまだない世界を求めて』ロドルフ・ガシェ著、吉国浩哉訳、本体3,000円、ISBN:978-4-901477-90-1
[PR]

by urag | 2012-01-23 14:22 | 人文書既刊 | Trackback | Comments(2)
2012年 01月 22日

まもなく発売:平凡社さんの1月新刊

★今月発売予定の平凡社さんの新刊から何点かご紹介します。

a0018105_23502375.jpg

ゾチオロギカ――フランクフルト学派の社会学論集
M・ホルクハイマー+Th・W・アドルノ著三光長治+市村仁+藤野寛訳
平凡社 2012年1月 本体3800円 四六判上製392頁 ISBN978-4-582-70276-7
帯文より:『啓蒙の弁証法』に次ぐアドルノとホルクハイマーの第2の共著。アメリカ亡命からドイツに帰国した二人が、ドイツ哲学とアメリカ社会学を批判的に結合し、新たな社会哲学の課題を提示する。

目次:
序文
社会学と哲学(1959年、ホルクハイマー)
イデオロギーと行為(1951年、ホルクハイマー)◇
文化と管理(1960年、アドルノ)◎
偏見について(1961年、ホルクハイマー)
修正された精神分析(1952年、アドルノ)◎
ショーペンハウアーと社会(1955年、ホルクハイマー)◇
ショーペンハウアーの現代的意義(1961年、ホルクハイマー)◇
二番煎じの迷信(1959年、アドルノ)◎
半教養の理論(1959年、アドルノ)◎
理性の概念によせて(1952年、ホルクハイマー)◇
社会学と経験的研究(1957年、アドルノ)◎
社会学のカテゴリーとしての静学と動学(1961年、アドルノ)◎
原注/訳注
解説 アメリカ合衆国・社会学・啓蒙――戦後のアドルノ/ホルクハイマー(藤野寛)
アドルノ小論「思想の音楽」――あとがきに代えて(三光長治)

★原書は1962年刊、Sociologica II: Reden und Vorträgeです。アドルノの論考6篇のみ(◎印)を訳出したのが、『ゾチオロギカ――社会学の弁証法』(三光長治+市村仁訳、イザラ書房、1970年)でした。実に40年以上の歳月を経て、ホルクハイマーの論考もともに訳出した新版が刊行されました。ただし、ホルクハイマーの「文化批判としての哲学」と「責任と(大学での)勉学」の二篇は割愛されています。また、ホルクハイマーの論考のうち、◇印を付したものには既訳があります。本書の執筆・刊行時の著者について、また、本書の意義については訳者解説論文に詳しいです。ちなみにSociologica Iは、ホルクハイマー55歳記念の論集で、アドルノ、ベンヤミン、ベッテルハイムなどが寄稿したものだそうです。

a0018105_23511879.jpg

メタボリズム・トリップ 
チャーリー・コールハース(1977-)著
平凡社 2012年1月 本体3200円 A4変型判並製112頁 ISBN978-4-582-27790-6
版元紹介文より:丹下健三、菊竹清訓、黒川紀章、槇文彦ら戦後建築のスターが設計し、今も新陳代謝を続ける「生きたメタボリズム建築」を、レム・コールハースの娘が新鮮な視点で撮影したオールカラー写真集。
「はじめに」より:これらのイメージと物語は、私が10の建築物を2週間で見てまわった旅の記録である。簡単に言うならば、旅の目的は、上を目指す果てしない野心の記念碑であり、新しい世界についての見取り図であったこれらの建築物が、どのように使われ、どのように月日を重ねたかを目録にすることだった。何が残り、何が失われ、そして何が起きたか、設計者がどうしても予想することのできなかったものを見ることだった。

★まもなく刊行されるはずの大著『プロジェクト・ジャパン――メタボリズムは語る』(レム・コールハース+ウルリッヒ・オブリスト著、太田佳代子編)の姉妹編とも言うべきドキュメントです。10箇所を見聞した際の様子が綴られ、老朽化もそのままに写真に写し取っています。中でも象徴的な建造物は、1972年に造られた「中銀カプセルタワービル」でしょうか。黒川紀章の代表作でもあるこのビルは今なお個性を発散させており、老朽化すら何か美しい時の刻印のように思えます。朽ちていく奇妙な建築群はノスタルジックですが、チャーリーの「外からの視線」は回顧ではなくむしろ「今」を如実に切り取って見せてくれたような気がします。


ペテルブルグのバレリーナ――クシェシンスカヤの回想録
マチルダ・F・クシェシンスカヤ(1872-1971)著 関口紘一監修 森瑠依子訳
平凡社 2012年1月 本体3500円 A5判上製376頁 ISBN978-4-582-83483-3
帯文より:プリマ・バレリーナ・アッソルータが語るロシアバレエの1世紀。プティパ、チャイコフスキー、ディアギレフ、ニジンスキーらと同時代を生き、ロマノフ朝の華やかな宮廷生活、ロシア革命期の動乱、パリでの亡命生活を生き延びた女性による時代の証言。

★原著は1960年にパリで刊行されています。その華やかで波乱に満ちた人生はまるで長篇映画のようです。プリマ・バレリーナ・アッソルータの称号を得たバレリーナは数えるほどしかいませんが、さらに彼女の場合「マリー・ロマノフスキー=クラシンスキー女公爵」としての地位も得ています。彼女が愛息ヴォーワとともに映っている貴重な動画を以下に添えます。



くらしのこよみ――七十二の季節と旬をたのしむ歳時記
うつくしいくらしかた研究所=編
平凡社 2012年1月 本体2980円 B6判並製456頁 ISBN978-4-582-41508-7
帯文より:日本には72の季節がある。スマートフォンやiPadで15万ダウンロードを記録した人気アプリが、本になりました。東風解凍、桃始笑、土潤溽暑、楓蔦黄……うつくしい日本の季節をあらわす「七十二候」の言葉たちを中心に、ビジュアル、俳句、旬の食べ物、行事をお届けします。

★帯文には「ひとりに一冊」とも謳っているのですが、確かに本書は、「くらしのこよみ」アプリがいかに人気があるか、そのわけをはっきりと分からせてくれるとても素敵な本です。「歳時記」というとなんとなく若い人には「年寄りの好み」のように映るかもしれませんけれども、本書を手にとってよくよく中を眺めてみれば絶対に欲しくなりますし、日本の風土の素朴な豊かさがじわっと沁みてきて、巻末の「うつくしいくらしかた宣言」に素直に同意したくなるはずです。「うつくしいくらしかた研究所」というのは、平凡社さんと電通が運営されているそうです。なるほど、実に巧い打ち出し方だなと感心しました。

★なお「東洋文庫」の今月発売済の新刊は富士川英郎『江戸後期の詩人たち』。ここで言う「詩」とは「漢詩」のことで、約50人の略伝と代表作を紹介しています。来月の配本は『ラーマーヤナ 1』。かつて東洋文庫では80年代に岩本裕訳『ラーマーヤナ』が全二巻で出ていましたが、このたび新訳が成るようです。

a0018105_2352488.jpg

[PR]

by urag | 2012-01-22 23:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 22日

熊野純彦訳『純粋理性批判』全一巻、ついに発売!

純粋理性批判
イマヌエル・カント著 熊野純彦訳
作品社 2012年1月 本体8,000円 A5判上製函入866頁 ISBN978-4-86182-358-9
帯文より:理性の働きとその限界を明確にし、近代哲学の源泉となったカントの主著。厳密な校訂とわかりやすさを両立する待望の新訳。
本文より:ひとが学びうるのは、ただ哲学することのみである。すなわち、理性の才能を、その普遍的原理を遵守しながら、目のまえにある或る種の試行にそくして訓練することだけである。それでもつねに留保されているものがある。そのようなこころみ自身をその源泉について探求し、確証し、あるいは拒否する、理性の権利なのである。

★第三週発売済。底本はマイナー社の哲学文庫版(シュミット版)。中山元訳『純理』全7巻(光文社古典新訳文庫)が完結したのとほぼ同時期の、新訳全一巻本の刊行です。税込8,400円は高い、とお思いになる方もおられるかもしれませんが、光文社古典新訳文庫版を全巻揃えても6,739円はしますし、以文社版単行本全二巻では17,850円、岩波版全集三巻本では定価で買えたとして18,690円です。今回の作品社版がいかに奮闘しているかは一目瞭然で、菊池信義さんの装丁による美麗な函と上製本はまさに「愛蔵版」と呼ぶにふさわしいものです。全一巻というと相当細かい字で詰め込んでいるのだろうな、と思われるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。なにより、原書通りに全一巻で読めるというのは、河出書房新社版(高峯一愚訳)以来絶えていたことなので、非常に嬉しいです。熊野さんはこれまでレーヴィット『共同存在の現象学』や、レヴィナス『全体性と無限』(いずれも岩波文庫)などの訳書を手掛けておられます。翻訳については寡作なほうかもしれませんが、非常に慎重かつ細心の心配りに徹される研究者として、人文業界から信頼の厚い方です。光文社版を読破された方は、今度はこの作品社版でもう一度最初から読み直されると、より理解が深まることでしょう。また、光文社版を読んでいる途中の方も、作品社版を同時に読み比べることによって、思わぬ発見が必ずあるだろうと思います。

a0018105_18085.jpg

[PR]

by urag | 2012-01-22 01:08 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 21日

2012年1月の注目新刊など

a0018105_23565877.jpg

コナン・ドイル書簡集
ダニエル・スタシャワー+ジョン・レレンバーグ+チャールズ・フォーリー編 日暮雅通訳
東洋書林 2012年1月 本体6,000円 A5判上製738頁 ISBN978-4-88721-796-6
帯文より:「さてワトスン、次はわれらが創造主(クリエイター)氏の分析(プロファイル)といこうじゃないか!」 MWA賞受賞の大著、再び! 本邦初公開の膨大な手紙と当時を物語る貴重な写真・図版を駆使して、シャーロッキアン垂涎の秘話の数々がここに明かされる。創作の背後に潜む稀代の作家の深い内省を鮮やかに編纂し、彷徨える精神の軌跡をたどった、待望の続・正伝!!
カバーソデ紹介文より:サー・アーサー・コナン・ドイルの生涯は、自身の冒険小説を凌ぐほどの波乱に満ちたものだった。大英図書館をはじめとする各有力機関と、遺族からの全面的な協力を得て編まれた本書によって、読者はこれまでにない彼の様々な姿を知ることになるだろう。“母(マム)”の小さな息子、東奔西走する若き家長、二人の妻を等しく想う夫、子を失い哀しむ父――ここに初めて、ベイカー・ストリートの陰に隠れていた作家自身が、自らの生み出したどの人物よりも際立つ等身大の存在として姿を現すのである。

目次:
ドイル家の家系図
はじめに
1*少年時代(1867-1876)
2*医学生時代(1876-1882)
3*ドクターとしての奮闘(1882-1884)
4*牡蠣の殻をこじ開ける(1884-1890)
5*"シャーロック・ホームズ物語の著者"(1891-1893)
6*ホームズと決別する(1894-1896)
7*田舎暮らし(1896-1898)
8*南アフリカの戦争(1899-1900)
9*政治と名誉(1900-1902)
10*ハインドヘッド最後の日々(1903-1907)
11*ウィンドルシャム、そして戦争の勃発(1907-1914)
12*世界大戦(1914-1918)
13*最後の活動(1918-1920)
エピロローグ*コナン・ドイル、最後の十年
謝辞/訳者あとがき/索引

★1月23日取次搬入とのことですので、翌日の24日(火)より順次、書店店頭発売となるはずです。原書は"Arthur Conan Doyle: A Life in Letters"(2007)。本書の編者スタシャワーと訳者の日暮さんは、一年前に刊行された『コナン・ドイル伝』の著者と訳者で、この『ドイル伝』と『書簡集』はいずれもMWA賞(アメリカ・ミステリ作家クラブ賞=エドガー賞)を受賞しています。「訳者あとがき」に曰く、この『書簡集』は「これまで未公開だった第一級の一次資料である〔…〕。過去の資料では知られていなかった事実が数多く見られるほか、二次資料の真偽のほどを確認する手立てにもなる」。大英図書館所収の、60年以上未公開だった千通にのぼる書簡から約600通をこの『書簡集』に収録しているとのことです。


現代思想の20年
池上善彦(1956-)著  
以文社 2012年1月 本体2,500円 四六判上製357頁 ISBN978-4-7531-0297-6
帯文より:世紀をまたいだ時代の道しるべ。冷戦終焉の直後から大震災の直前まで、世紀をまたぎ『現代思想』に毎月書き続けられた編集後記。世界の哲学・思想の最先端から政治・社会・文化の現状に鋭く斬りこみ、ネオリベラリズムにいち早く警鐘を鳴らし、「他者」「マイノリティ」の声に耳を澄ませながら新しい理論、運動、文化を次々に導入した旺盛にしてスリリングな活動の軌跡。

★第三週発売済。月刊誌『現代思想』の名物編集者だった著者が1992年2月号から2010年12月号まで書いた「編集後記」をまとめたもの。巻頭に書き下ろしの「はじめに」が添えられ、巻末には岩崎稔さんによる「この本を手に取るひとのために」が置かれています。池上さんが編集長だったのは1993年1月号から2010年12月号まで。歴代最長の長さです。現在はフリー。フリーになった最初の年である2011年を振り返って池上さんが選書したブックフェア「思想史的大転換期としての2011年――池上善彦選・これからの時代を生き抜くための2011年必読人文書+α」が、紀伊國屋書店新宿本店5階A階段横壁棚にて、本日1月21日より2月29日まで開催されています。池上さんの特別寄稿「世界史に参入する」を収録した「紀伊國屋じんぶん大賞2011」特製小冊子は、2月上旬より配布開始予定とのことです。


a0018105_23581151.jpg

身ぶりと言葉』アンドレ・ルロワ=グーラン(1911-1986)著、荒木亨訳、ちくま学芸文庫、2012年1月、本体2,000円、688頁、ISBN978-4-480-09430-8
ニーチェの手紙』茂木健一郎編・解説、塚越敏+眞田収一郎訳、ちくま学芸文庫、2012年1月、本体950円、320頁、ISBN978-4-480-09429-2
権力と支配』マックス・ウェーバー(1884-1920)著、濱嶋朗訳、講談社学術文庫、2012年1月、本体1,100円、355頁、ISBN978-4-06-292091-9
国家と革命』レーニン(1870-1924)著、角田安正訳、講談社学術文庫、2011年12月、本体960円、289頁、ISBN978-4-06-292090-2

★ここ最近の文庫新刊では、「この一冊がぼくを変えた」という松岡正剛さんの推薦文がびしっと決まっているルロワ=グーランの『身ぶりと言葉』をまず買い逃すわけにはいかないと思います。文庫の割に2000円と高価ですが、親本(新潮社、1973年)も長らく古書価が高かったですし、ちくま学芸文庫で今まで刊行された文化人類学系の本の平均的寿命を考えると、早めに購入しておくに越したことはありません。先月は、レヴィ=ストロースの『アスディワル武勲詩』も文庫化されました。意外なことにレヴィ=ストロースは『悲しき南回帰線』(上下巻、講談社文庫、1979年;講談社学術文庫、1985年)以来ずっと文庫化がありませんでした。

★『ニーチェの手紙』は、ちくま学芸文庫版『ニーチェ全集』の別巻1と2に収録された『ニーチェ書簡集』と、E・プファイファー編『ニーチェ・レー・ルー』(未知谷、1999年)から新たに編み直されたものです。文庫版全集の別巻全4巻(書簡集、詩集、『生成の無垢』)は以前から既刊書広告欄に特記されなくなっていましたが、『ニーチェの手紙』が出たということは、再刊される可能性がいっそう小さくなってしまうのでしょうか。茂木さんは「あとがき」の冒頭でこう書かれています、「ニーチェの肉声が聞こえてくる手紙を読んでいると、生きる勇気をもらえるように思う」と。また、こうも書かれています、「『ツァラトゥストラ』の中に、印象的な場面がある。喉の奥を蛇に噛まれた男が、横たわっている。ところが、男は、その蛇を紙きって立ち上がる。すると、男の目が、まるで太陽のように、らんらんと輝き始めるのだ。/その男こそが、「超人」である。喉の奥に噛みついていた蛇は、私たちを取り囲む現実の象徴である。現実がどんなものであれ、それを受け入れた時に、「永劫回帰」の中で、「今、ここ」が輝き始めるのだ。/だとしたら、私たちは、みな、ささやかなる「超人」となり得るのではないか。それぞれの孤独の中で、ちっぽけな自分の人生の「今、ここ」を笑って引き受けて」(308頁)。茂木さんは「超人」を「たとえ自分の能力が乏しくても、環境に恵まれていなくても、それを従容として受け入れ、その中で「今、ここ」を生きる、そんな人を指す」ととらえておられます。

★来月刊行予定のちくま学芸文庫やちくま新書では以下の書目が目に留まりました。

『フンボルト 自然の諸相―─熱帯自然の絵画的記述』アレクサンダー・フォン・フンボルト著、木村直司訳、ちくま学芸文庫、2012年2月8日、本体1,300円、352頁、ISBN978-4-480-09436-0
『ゴダール 映画史(全)』ジャン=リュック・ゴダール著、奥村昭夫訳、ちくま学芸文庫、2012年2月8日、本体2,300円、720頁、ISBN978-4-480-09431-5
『ニーチェ』ミシェル・オンフレイ著、マクシミリアン・ル・ロイ画、國分功一郎訳、ちくま学芸文庫、本体1,300円、176頁、ISBN978-4-480-09438-4
『日本思想史新論―─プラグマティズムからナショナリズムへ』中野剛志著、ちくま新書、2012年2月6日、本体780円、240頁、ISBN978-4-480-06654-1

ゲーテの『色彩論』や『形態学論集』『地質学論集』などを地道に翻訳され続けてきた木村先生が今度はフンボルトを手掛けられるようで感動ものです。また、親本では全二巻だった『ゴダール/映画史』(1982年)が文庫では全一冊で読めるというのも素晴らしいですね。

★ウェーバー『権力と支配』は親本が1967年に有斐閣より刊行され、その際に付録として収録されていた講演録「社会主義」は1980年に講談社学術文庫から改訳版が刊行されています。有斐閣版は1954年にみすず書房から刊行された『権力と支配』の改訳改訂版です。今回の文庫化にあたっては巻末に訳者による「あとがき」と、橋本努さんによる「解説」が付されています。カリスマと官僚のはざまに揺れる政治の混迷期を生きる現代人にとってもっとも有効な古典の再刊ではないかと思います。本書を含むウェーバーの遺稿『経済と社会』の内容構成については橋本さんのウェブサイトのこちらをご参照ください。

★レーニン『国家と革命』の親本は2001年にちくま学芸文庫で刊行されたオリジナル新訳版。「学術文庫版訳者あとがき」によれば、再度原文と照合し、手直しをしたとのことです。学術文庫版ではさらに巻末に白井聡さんによる解説「われわれにとっての『国家と革命』」が収録されています。先月刊行されたこのレーニン本と、今月のウェーバー本を手掛けた編集者は同じ方で、精力的なお仕事振りが伺えます。ちくま学芸文庫から他社文庫に移る前例にはたとえばオクタビオ・パス『弓と竪琴』(現在は岩波文庫)などがありましたね。逆に講談社学術文庫からちくま学芸文庫へのスイッチの前例にはレヴィナス『実存から実存者へ』などがありました。どこの文庫で出されるにせよ、絶版本が再度日の目を見るというのは嬉しいことです。

★来月刊行予定の講談社学術文庫や講談社文庫、選書メチエ、現代新書では以下の書目が目に留まりました。

『生命の劇場』ユクスキュル著、入江重吉+寺井俊正訳、講談社学術文庫、2012年2月10日、本体1,000円
『ルネサンスの神秘思想』伊藤博明著、講談社学術文庫、2012年2月10日、本体1,300円
『エクソシストとの対話』島村奈津著、講談社文庫、2012年2月10日、本体760円
『ギリシア正教 東方の智』久松英二著、講談社選書メチエ、2012年2月10日、本体1,600円
『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』辻隆太朗著、講談社現代新書、2012年2月17日、価格未定

ユクスキュルの名著は今はなき博品社が1995年に出版したものでしたが、今まで文庫化されなかったのが不思議なくらいでした。
[PR]

by urag | 2012-01-21 23:55 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 18日

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍

a0018105_1742661.jpg

◆中山元さん(ブランショ『書物の不在』訳者)

カント『純粋理性批判』の新訳を全7巻で完結されました。すごいですね! 現在中山さんはマルクス『資本論』第一巻第四版の新訳(日経BPクラシックス、全4分冊)を刊行中ですので、当面はカントの次なる新訳は読めないのかもしれませんが、やっぱり『実践理性批判』『判断力批判』の新訳は読みたいですよね。

純粋理性批判 7
カント著 中山元訳
光文社古典新訳文庫 2012年1月 361頁 ISBN978-4-334-75243-9
帯文より:カント哲学の最高峰を踏破。全7巻ついに完結!『純粋理性批判』の課題であった存在の領域、「あるもの」の認識からはなれて、当為の領域、「あるべし」の認識へ。最高善と「恩寵の王国」の思想をもとに、カントは理性の道徳的な使用へと考察を向ける。
カバー紹介文より:「わたしたちは神が命じたから、道徳的に行動する義務があると考えるべきではない。わたしたちは、道徳的に行為すべきことを、みずから〈内的な〉義務として考えるからこそ、こうした法則が神の命令とみなされるようになったのである。」最難関の書物をついに完全読解する!


◆廣瀬純さん(『闘争のアサンブレア』共著者、ヴィルノ『マルチチュードの文法』訳者、ネグリ『芸術とマルチチュード』共訳者)

「週刊金曜日」での連載が単行本になって河出書房新社さんより発売されます。本日取次搬入と聞きますので、明日以降順次店頭発売開始かと。また、千駄ヶ谷の「ビブリオテック」にて、刊行記念のトークイベントが行われます。

蜂起とともに愛がはじまる――思想/政治のための32章
廣瀬純著
河出書房新社 2012年1月 本体1,800円 46判並製216頁 ISBN 978-4-309-24574-4
帯文より:世界を破壊する思想入門。大地と民衆がふるえあがる現在に最もラディカルな思想と実践と表現の交点から「叛乱の叛乱」を招き寄せる俊英の疾走する思考。ドゥルーズ、フーコー、バディウ、アガンベン、ネグリ、ゴダール、イーストウッド、ベンヤミン、ベルイマン、ヴィルノ、ペソア……。

◎廣瀬純連続講座「Ainsi s'insurgent les amoureux(こうして恋人たちは蜂起する)

日時:第1回=2012年2月11日(土、祝)/第2回=2012年3月3日(土)15:00~17:00(14:30開場)※各トークショー単独予約も可能
会場:Bibliothèque(ビブリオテック、東京都渋谷区千駄ヶ谷3-54-2)

参加費:1,500円(当日精算・各1回につき)
予約制:電話(03-3408-9482、火~土曜12:00~20:00/日、祝日12:00~19:00)または、メール(biblio@superedition.co.jp)にて、メール受付の場合は、件名「2/11、3/3(どちらかまたは両日)廣瀬氏講義希望」・お名前・電話番号・参加人数、をお知らせ下さい。おって返信メールで予約完了をお知らせいたします。50名様になり次第締切り。

「ある国が長い衰退期を経て昏睡あるいは崩壊状態に陥った場合、その救済をやむなく何らかの革命運動に見出すということはあり得ぬことではない。しかしそうした運動はそれ自体で直接、救済となるわけではない。特定の理念や傾向を担うものという資格で救済となるわけではないのだ。革命運動に救済的な何かがあるとすれば、それはまさに最もそう思えないもの、すなわち、それがもたらすアナーキー、それが生み出す暴力的混乱なのだ」(フェルナンド・ペソア「革命的偏見」1919年)。

第1回「Insurrection et cinema(蜂起と映画)」――映画作家ジャン=リュック・ゴダール曰く「今日もなお、作る権利のある映画を作ることのほうが、生きる権利のある生を生きることよりも、幾分かは容易であるように思われる。」 健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が問題なのではもちろんない。革命への権利、革命を生きる権利が問題なのでもない。蜂起への権利、蜂起を生きる権利が問題なのであり、文学者モーリス・ブランショが「文学と死ぬ権利」を語った際の、その「死ぬ権利」、すなわち、死を生きる権利が問題なのだ。「私は死を恐れていません。死を直視するときに引き起こされる感覚はアナキストのそれであり、既存の社会のあり方を脅かすものなのです」(ヴェルナー・シュレーター)。

第2回「Zeichen unter uns...(徴〔しるし〕は至る所に......)」――ミシェル・フーコー『監獄の誕生』からフリッツ・ラング『M』、オーソン・ウェルズ『オセロ』を経て、マノエル・デ・オリヴェイラ『メフィストの誘い』へ。すなわち、「顔をもたない敵」を日常生活のただなかに書き込む企てから、イアーゴの囁き、聖書配布人の知らせ(シャルル=フェルディナン・ラミュ)を経て、「説明不在の光のなかいっぱいに広がる記号の横溢」へ。要するに、「三面記事」がいかにして蜂起を準備するまでに至るのか。「世界が作られたのは、我々がそれについて考えを巡らすためではなく、共感をもってそれを見るためだ。愛することは永遠の無垢であるが、唯一の無垢とは思考しないということなのだ」(ペソア)。


◆渡邊未帆さん(大里俊晴『マイナー音楽のために』『ガセネタの荒野』企画者)

TOKYO MXテレビの平日夕方の番組「5時に夢中」のコーナー「装丁ジャンケン」(2012年1月12日放送)に出演され、『ガセネタの荒野』についてアピールしてくださいました。ジャンケンのお相手は、神保町の古書店「ブック・ダイバー」さんでした。なお念のため申し上げますと、渡邊さんは「弊社の編集者」ではありません。弊社のむさくるしい編集者に代わって御出演いただけたのでした。渡邊さん、ありがとうございました!
[PR]

by urag | 2012-01-18 17:05 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 12日

本日取次搬入:『政治哲学』、人文書院ブックガイドシリーズより

a0018105_22175851.jpg

政治哲学
伊藤恭彦(1961-)著
人文書院 2012年1月 本体1,800円 4-6判並製200頁 ISBN978-4-409-00108-0 

帯文より:正義とは何か、権力とは何か、「正しさ」と「力」の根源を問う30冊。

★ブックガイドシリーズ「基本の30冊」第8弾。本日取次搬入ですから、明日以後順次店頭発売となるでしょう。一昨年のサンデル・ブームなどを契機に近年ますます注目が高まっている「政治哲学」。本屋さんでは政治の棚にまとめるのか、哲学の棚にまとめるのか、なかなか決めにくい分野ではあります。その基本書を紹介する便利なブックガイドがタイミング良く刊行されました。目次に書誌情報を足したものを以下に転記しておきます。

第1部 政治とは何か――政治・権力・自由
 丸山眞男『政治の世界』岩波書店、1995年
 マキアヴェッリ『君主論』岩波文庫、1998年
 ウェーバー『職業としての政治』岩波文庫、1980年
 フーコー『監獄の誕生』新潮社、1977年
 ミル『自由論』岩波文庫、1971年
 フロム『自由からの逃走』東京創元社、1951年

第2部 政治と規範――正義・善・法
 アリストテレス『ニコマコス倫理学』岩波文庫、1971年
 ロールズ『正義論』紀伊國屋書店、2010年
 サンデル『リベラリズムと正義の限界』勁草書房、2009年
 イェーリング『権利のための闘争』岩波文庫、1982年
 ヌスバウム『感情と法』慶應義塾大学出版会、2010年
 デリダ『法の力』法政大学出版局、1999年

第3部 デモクラシーと政治の場
 ルソー『社会契約論』岩波文庫、1954年
 シュムペーター『資本主義・社会主義・民主主義』東洋経済新報社、1995年
 フィシュキン『人々の声が響き合うとき』早川書房、2011年
 ムフ『政治的なるものの再興』日本経済評論社、1998年
 ミラー『ナショナリティについて』風行社、2007年
 ハーヴェイ『都市と社会的不平等』日本ブリタニカ、1980年

第4部 現代の政治争点――財・アイデンティティ・戦争・環境
 ノジック『アナーキー・国家・ユートピア』木鐸社、1995年
 マーフィー、ネーゲル『税と正義』名古屋大学出版会、2006年
 キムリッカ『多文化時代の市民権』晃洋書房、1998年
 バトラー『ジェンダー・トラブル』青土社、1999年
 ウォルツァー『正しい戦争と不正な戦争』風行社、2008年
 カント『永遠平和のために』岩波文庫、1985年
 シンガー『動物の解放』人文書院、2011年
 キャリコット『地球の洞察』みすず書房、2009年

第5部 国境を越える政治――グローバリゼーションと地球政治の可能性
 キケロー『義務について』岩波書店、1999年
 マルクス『共産党宣言』岩波文庫、1951年
 ベイツ『国際秩序と正義』岩波書店、1989年
 尾崎行雄『わが遺言』尾崎行雄記念財団、2004年

★著者はさらに「はじめに」で三冊の入門書を挙げています。ミラー『政治哲学』(岩波書店、2005年)、スウィフト『政治哲学への招待』(風行社、2011年)、ウルフ『政治哲学入門』(晃洋書房、2000年)。ブックガイドシリーズの続刊予定には、吉村和真+ジャクリーヌ・ベルント編『マンガ・スタディーズ』などがあります。また版元ウェブサイトでは、ジャック・ドンズロ『都市が壊れるとき――郊外の危機に対応できるのはどのような政治』(宇城輝人訳)などが近刊予告に載っています。


狼が連れだって走る月
管啓次郎(1958-)著
河出文庫 2012年1月 本体1,200円 352頁 ISBN978-4-309-41127-9

カバー紹介文より:旅の可能性を考えない定住者は現実を変える力はなく、定住の意味を知らない放浪者は頽廃に沈むだろう――旅の倫理と野生の哲学を探究する詩人思想家の不滅の名著。土地の精霊を先人たちの言葉と彷徨とともに呼び覚ましながら、砂漠と狼たちを讃える輝かしく美しい詩と思考の奇蹟。序文「あの夜の心の旅」よしもとばなな。

★発売済。親本は1994年5月に筑摩書房から刊行されました。昨秋の『コロンブスの犬』に続く、文庫化第二弾です。訳書の文庫化はこれまでにもありましたが、管さん自身の著書の文庫は今のところ河出文庫でしか読めません。序文を書かれたよしもとばななさんは『狼が連れだって走る月』を病院のベッドで読み、「自由の風が心に久々に入ってきた」と回想されています。「旅とはなんだろう、旅では生々しく自分に出会う。自分の体の限界、知識の限界、人生の有限性を思い知る。そのことはちゃんとこの本の中に書いてあった」(11頁)。そして、管さんはこう書いています、「世界とは、さまざまな時間の多層的な流れ、時間どうしの戦いだ。/どの時間を逃れ、どの時間にすべりこむか。/その渡りだけがきみの旅を定義する」(86頁)。本書はまるで旅そのもの。読書はすなわち旅をすること。

★今月発売の河出文庫には、上記書のほかに久生十蘭短篇集『十蘭レトリカ』や、ミルグラム『服従の心理』があります。後者の親本は2008年11月に刊行された山形浩生さんによる新訳。早くも文庫で入手できるようになったのが嬉しいですね。また、河出書房新社さんの今月の単行本には以下のものがあります。

18日発売『図説 錬金術』吉村正和著(ふくろうの本)
20日発売『蜂起とともに愛がはじまる――思想/政治のための32章』廣瀬純著
24日発売『夢の賜物』スーザン・ソンタグ著/木幡和枝訳
26日発売『ナチスの知識人部隊』クリスティアン・アングラオ著/吉田春美訳

廣瀬さんの本は確か「週刊金曜日」誌の連載ですね。ソンタグの小説家デビュー作もいよいよ刊行。楽しみです。
[PR]

by urag | 2012-01-12 22:18 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)