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2011年 12月 31日

ブックフェア「《情況を読む@新宿VOL.41》」@紀伊國屋書店新宿本店

◎《情況を読む@新宿VOL.41》「いろんな人がいろんな事を言っていて、でも、結局、自分で考えるしかないんだろうなと思った。

場所:紀伊國屋書店新宿本店3F震災関連書特設コーナー(棚番号A-71、72)
会期:開催中~2012年1/15(日)(予定)
お問合せ:紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-0131

内容:日々うつりゆく「情況=いま」を、ある視点(テーマ)で切り取って、「今だからこそ読みたい」本をあつめる紀伊國屋書店新宿本店の常設ブックフェア「情況を読む」。今回は「公」「近代」「実存と他者」「資本制」「水俣病」「オウム」「主権者と社会」といった問題領域ごとに、セレクト。

★選書人は本店仕入課の大籔宏一さん。人文社会書業界で知らぬ者はいないカリスマ書店員さんです。問題領域「実存と他者」で、弊社の書籍3点(ジュディス・バトラー『自分自身を説明すること――倫理的暴力の批判』、ヘント・デ・ヴリース『暴力と証し――キルケゴール的省察』、エンツォ・パーチ『関係主義的現象学への道』)が選ばれています。特にご注目いただいているパーチの本については「人間主義から関係主義へ――この着想はあらゆる視座において有効であるだろう」との選書コメントをいただきました。

★また、新宿本店5Fの哲学思想フェア台では「美学から政治へ――アガンベンとイタリア現代思想」が本日まで開催。アガンベン、カッチャーリ、エスポジト、ネグリ、フランコ・ベラルディ、マラッツィ、ヴィルノ、ラッツァラート、マリアローザ・ダラ・コスタ、ラブリオラ、クローチェ、グラムシ、ボッビオ、パーチ、エーコ、ヴァッティモ、ペルニオーラ、ガリンベルティ、ギンズブルグ、トラヴェルソ、プラーツ、などの本が、弊社刊行書籍も含め一堂に会しています。選書人は人文書担当の藤本浩介さん。もともとは雑誌売場で活躍されていた方ですが、人文書売場に異動されてからも続々と啓発的なブックフェアを企画されています。5~6月「現代思想ビギナーズvol.1 文庫・新書・選書で学ぶ『現代思想』」 、6~7月「現代思想ビギナーズvol.2 文庫・新書・選書で学ぶ『古代・中世・近代哲学』~ソクラテスからヘーゲルまで~」、8~9月「現代思想ビギナーズvol.3 文庫・新書・選書で学ぶ『言語・論理・科学哲学』~ソシュールからドーキンスまで~」 、9~10月「思想のニュー・ジェネレーション――73~85年生まれ/現代思想の牽引者たち」など。最近、哲学思想書担当から教育書担当に異動されましたが、きっと今後も素晴らしいフェアを企画し続けてくださることでしょう。

★今年も一年間、多くの書店さんにお世話になりました。本当にありがとうございました。写真左は、ブックファースト新宿店の人文書担当Tさんよりいただいた「2012年卓上カレンダー」。使い終わった月は左端を切り取って栞として使えるというもの。今月初旬に、店頭で2000円以上お買い上げのお客様にプレゼントされていました。写真右は、東京堂書店神田本店の3F人文書担当・三浦亮太さんが不定期発行しておられるフリーペーパー「三階 sanguaï」第四号です。手の平サイズの紙袋に、毎号両面にびっしりと細かい字で硬派な評論が印刷された紙片が入っており、今回は「ノート1(丹生谷貴志「鏡の魔、或いは砂浜の上の痕跡 en mode sans fin...」のための)」と「ノート2(大友真志写真集『GRACE ISLANDS』をめぐって)」が掲載されています。三浦さんは都内の人文書担当でトップレベルの筆力を持った目利きです。

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★最後の写真は、紀伊國屋書店梅田本店の3課担当Tさんが新刊のご発注の際にFAXにそえて下さった「ウラゲツ」マーク。あまりに嬉しかったので、Tさんにお願いして転載を許していただきました。Tさん、ありがとうございます。

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by urag | 2011-12-31 18:46 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 31日

2011年に月曜社が出版した本

今年一年の皆様のご愛顧に深く御礼申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。2010年のまとめを昨年末忘れていたようなので、併せて掲載します。

◎2011年に出版した本

自社発行
1月:イヴ=アラン・ボワ+ロザリンド・E・クラウス『アンフォルム――無形なものの事典』加治屋健司+近藤學+高桑和巳訳、「芸術論叢書」第1巻【美術批評】
1月:遠藤水城編著『曽根裕|Perfect Moment』【現代アート・美術批評】
1月:中平卓馬『都市 風景 図鑑』【写真】
3月:ジャン・ジュネ『公然たる敵』アルベール・ディシィ編、鵜飼哲・梅木達郎・根岸徹郎・岑村傑訳【フランス文学・政治評論】
6月:エルンスト・ユンガー『パリ日記』山本尤訳【ドイツ文学・日記】
7月:森山大道『森山大道 オン・ザ・ロード』【写真】
7月:大里俊晴『ガセネタの荒野』【音楽・小説】
9月:エンツォ・パーチ『関係主義的現象学への道』上村忠男編訳、シリーズ「古典転生」本巻3【イタリア哲学】
11月:ブレーズ・サンドラール『パリ南西東北』昼間賢【フランス文学】
12月:近藤和敬『構造と生成(I)カヴァイエス研究』、シリーズ「古典転生」本巻4【フランス哲学】

自社重版
1月:ドアノー『不完全なレンズで』2刷
2月:アガンベン『バートルビー』3刷
2月:バトラー『自分自身を説明すること』3刷
5月:ボワ+クラウス『アンフォルム』2刷

ウェブコンテンツ
6月~:ルソー『化学教程』淵田仁+飯田賢穂訳【フランス哲学】

発売元請負
4月:『表象05:ネゴシエーションとしてのアート』表象文化論学会発行【人文・思想】

以上、自社本10点、ウェブコンテンツ1点、発売元請負1点でした。


◎2010年に出版した本

自社発行
2月:平井浩編『ミクロコスモス――初期近代精神史研究 第1集』【西欧思想史・文化史】
3月:ジャン・ヴァール『具体的なものへ――二十世紀哲学史試論』シリーズ「古典転生」本巻3【フランス哲学】
5月:ルイ・サラ-モランス『ソドム――法哲学への銘』馬場智一+柿並良佑+渡名喜庸哲訳、「暴力論叢書」第5巻【フランス現代思想】
6月:尾﨑大輔『ポートレート』【写真】
9月:ロベール・ドアノー『不完全なレンズで』堀江敏幸訳【写真・随筆】
11月:大里俊晴『マイナー音楽のために』【音楽評論】

自社重版
8月:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』6刷
8月:ヴァール『具体的なものへ』2刷

ウェブコンテンツ
1月~9月:大竹昭子「森山大道のOn the Road」全19回

発売元請負
4月:『表象04:パフォーマンスの多様体――エンボディメントの思想』表象文化論学会発行【人文・思想】

以上、自社本6点、ウェブコンテンツ1点、発売元請負1点でした。
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by urag | 2011-12-31 16:20 | ご挨拶 | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 26日

1月下旬新刊:ガシェ『いまだない世界を求めて』

シリーズ「エクリチュールの冒険」第2回配本!【本書の造本について:あさぎ色の本文紙に濃緑のインクで刷りました。カバーの書名は銀箔。見た目のシンプルさを重視したいため、帯は付しません。】

2012年1月23日取次搬入予定 *人文・哲学

いまだない世界を求めて
ロドルフ・ガシェ著 吉国浩哉訳
46判並製256頁 本体3,000円 ISBN978-4-901477-90-1

本邦初訳、日本版オリジナル論集。ハイデッガー、レーヴィット、デリダを読み解き、美学、政治哲学、倫理学の問いへと現象学的思考を解き放つ。ヴェテランの半生を詳しく振り返るロング・インタビューを付し、知られざるその思想的境位を明かす。

目次:
日本語版序文
作品、現実性、形態――ハイデッガー『芸術作品の根源』に関する覚書
信仰の残余――カール・レーヴィットによる世俗化の概念について
責任、この奇妙なる概念
インタヴュー 思考の密度――ヨーロッパ、アメリカ、脱構築
訳者解説 逆説的な境界――ロドルフ・ガシェ導入のために
訳者あとがき

ロドルフ・ガシェ(Rodolphe Gasché):1938年ルクセンブルク生まれ。哲学者、文芸学者。ベルリン自由大学で博士号取得(哲学)。現在、ニューヨーク州立大学バッファロー校比較文学科教授。英語圏におけるデリダ研究の第一人者として知られる。著書に『ハイブリッドな学問――クロード・レヴィ–ストロースの構造主義およびエミール・デュルケームにおける学問の概念を変異させるために』(1973年)、『ジョルジュ・バタイユの哲学における体系と隠喩』(1978年)、『鏡の裏箔――デリダと反省の哲学』(1986年)、『差異の発明――デリダについて』(1994年)、『読むことのワイルド・カード――ポール・ド・マンについて』(1998年)、『極小のものについて――関係という概念の研究』(1999年)、『形式の理念――カント美学の再考』(2003 年)、『思索の名誉――批判、理論、哲学』(2006年)、『見解とインタヴュー――アメリカにおける「脱構築」について』
(2007年)、『ヨーロッパ、あるいは無限の責務――ある哲学的概念の研究』(2008年)などがある。

吉国浩哉(よしくに・ひろき):1972年広島県生まれ。2002年、東京大学大学院英文科修士課程修了。2010年、ニューヨーク州立大学バッファロー校英文科博士課程にて博士号取得。現在、昭和女子大学英語コミュニケーション学科専任講師。専攻はアメリカ文学。論文に「唯物論者の祈り――『ヘンリー・アダムズの教育』について」(『ストラータ』17 号、2003 年)、翻訳にKojin Karatani, “Revolution and Repetition” (Umbr(a), Utopia, 2008)などがある。
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by urag | 2011-12-26 18:05 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 25日

ベンヤミン『来たるべき哲学のプログラム』が約20年ぶりに新装復刊

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来たるべき哲学のプログラム
ヴァルター・ベンヤミン(1892-1940)著 道籏泰三訳
晶文社 2011年12月 本体2,600円 四六判上製392頁 ISBN978-4-7949-6773-2

帯文より:言語・認識・歴史に対する基本的な考え方が芽生える、最初期遺稿群。変奏され深化してゆく若きベンヤミンの思考の軌跡。ベンヤミン思想の源流。
版元紹介文より:ベンヤミンがフライブルク大学に入学したのは20歳のとき。その後、27歳で博士号を取得するが、教授資格申請論文「ドイツ悲劇の根源」がフランクフルト大学で拒否され、32歳でアカデミズムへの道が閉ざされてしまう。この時期のベンヤミンの論考には、のちの漂浪と亡命の時期のものに比べ、絶対的なものをつかみとろうとする観念論的・形而上学的な傾向がひときわ目立っている。崩壊と構築が同時進行するめくるめく思考のダイナミズム――処女作『若さの形而上学』はじめ、ベンヤミンが20代に書きのこした知られざるエッセイ・断章を集成した必読の書。

目次:

 若さの形而上学
 ヘルダーリンの二つの詩
 来たるべき哲学のプログラム
 歴史劇の問題

 経験と認識
 事象の科学的記述について
 無限の課題(1)
 無限の課題(2)
 知覚の問題について
 志向の諸段階
 知の種類
 個別科学と哲学
 真理と諸真理 認識と諸認識
 認識理論
 認識におけるジンボールの使用
 フンボルト
 言語と論理学
 言葉・名・記号(1)
 言葉・名・記号(2)
 言葉の骸骨(1)
 言葉の骸骨(2)
 謎かけと秘密
 類比性と親縁性
 類似したものについての試論
 悲劇とギリシャ悲劇における言語の意味
 悲劇とギリシャ悲劇
 『オイディプス』あるいは理性の神話
 ソクラテス
 古代の人間の幸福
 中世について
 道徳世界における時間の意味
 後期ロマン派・歴史学派の歴史哲学
 歴史の種類
 神と歴史
 宗教としての資本主義
 神学的・政治的断章
 アゲシラウス・サンタンデル
訳者解説 若きベンヤミンの思考の軌跡
新装再版にあたって

★初版(写真左)は1992年12月刊。このたび約20年ぶりに新装復刊(写真右)されました。もうそんなに時間が経っていたのかとびっくりします。本書は訳者の道籏泰三さんが「ベンヤミンの初期遺稿群のなかから認識論・言語哲学・歴史哲学にかかわるものを独自に編纂」(「新装再版にあたって」より)したもので、「ベンヤミンの二十歳代のころの〔…〕論考」であり、「いずれも生前には印刷されなかった遺稿ばかりで、翻訳の底本として用いたのは、ほとんどが、ズーアカンプ版ベンヤミン全集(Walter Benjamin: Gesammelte Schriften, 7 Bände, herausggegeben von Rolf Tiedemann und Hermann Schweppenhäuser. Suhrkamp Verlag, 1972-1989)の第II・1巻に「形而上学的・歴史哲学的研究」として分類されている比較的完結した論文類と、第VI巻に「言語哲学・認識批判」ならびに「歴史哲学・歴史学・政治学」として分類されている断片群」(「訳者解説」より)です。

★晶文社さんでこれまで刊行されてきたヴァルター・ベンヤミンの著書は以下の通りです。うち、在庫のあるものは◎、在庫僅少は▲で示します。在庫僅少本はこちらでチェックできます。

ヴァルター・ベンヤミン著作集 全15巻
『(1)暴力批判論』高原宏平+野村修編、1969年。
『(2)複製技術時代における芸術作品』佐々木基一編、1970年/晶文社クラシックス版1999年、定価1995円◎
『(3)言語と社会』久野収+佐藤康彦編、1981年。
『(4)ドイツ・ロマン主義』大峯顕+高木久雄編、1970年。
『(5)ゲーテ 親和力』高木久雄編、1972年、定価1631円▲
『(6)ボードレール』川村二郎+野村修編、1970年/新編増補版1975年。
『(7)文学の危機』高木久雄編、1969年、定価1733円▲
『(8)シュルレアリスム』針生一郎編、1981年、定価1631円▲
『(9)ブレヒト』石黒英男編、1971年、定価1937円▲
『(10)一方通交路』幅健志+山本雅昭編、1979年。
『(11)都市の肖像』川村二郎編、1975年。
『(12)ベルリンの幼年時代』小寺昭次郎編、1971年。
『(13)新しい天使』野村修編、1979年。
『(14)書簡集 I 1910-1923』野村修編、1975年。
『(15)書簡集 II 1929-1940』野村修編、1972年。

単行本
『教育としての遊び』丘沢静也訳、1981年。
『モスクワの冬』藤川芳朗訳、1982年。
『ドイツの人びと』丘沢静也訳、1984年。
『子どものための文化史』小寺昭次郎+野村修訳、1988年(→平凡社ライブラリー版、2008年)
『陶酔論』飯吉光夫訳、1992年、定価2548円▲
『来たるべき哲学のプログラム』道籏泰三訳、1992年初版/2011年新装版、定価2730円◎
『ベンヤミン/アドルノ往復書簡1928-1940』ヘンリ・ローニツ編、野村修訳、1996年。

★晶文社さんが日本におけるベンヤミン受容史において、決定的な役割を果たされてきたことは疑いようがありません。現在品切になっているものも再編集で合本していいものはして、再刊してくださるといいですね。なお、ちくま学芸文庫の『ベンヤミン・コレクション』は昨年まで5巻が刊行されていますが、第6巻「断片の運動」が続刊予定であると聞いています。
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by urag | 2011-12-25 21:22 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 23日

「未知との遭遇」&「『暇と退屈の倫理学』から歩き出す」フェア@紀伊國屋書店新宿本店

現在「紀伊國屋じんぶん大賞2011」の第一弾「人文書でふりかえる2011年~2011年に5階人文書売場で売れた本をあつめました」フェアが好評開催中の紀伊國屋書店新宿本店の5F人文書売場で、以下の通り二つのブックフェアが併催されています。なお、「紀伊國屋じんぶん大賞2011」のアンケート募集期間は1月3日まで。「続々FAX頂いています。皆様のご応募、お待ちしております」とのことです。

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◎【じんぶんや第76講】 佐々木敦選「未知との遭遇 ―本物の思考を開始するために―

紀伊國屋書店新宿本店5階の月がわりブックフェア「じんぶんや」、今月の選者は佐々木敦さんです。『ニッポンの思想』(講談社新書)の「続編」と位置付けられる今月新刊『未知との遭遇――無限のセカイと有限のワタシ』(筑摩書房)をテーマに、エッセイと選書コメントをお寄せ頂きました。

場所:紀伊國屋書店新宿本店 5Fカウンター前
会期:2011年12月16日(金)~1月中旬
お問合せ:紀伊國屋書店新宿本店5階 03-3354-5700

未知との遭遇――無限のセカイと有限のワタシ
佐々木敦著
筑摩書房 2011年12月 本体1,800円 46判336頁 ISBN978-4-480-84298-5
内容:オタク的感性が普遍化したゼロ年代、そして今、ネット的セカイが完成した。ポジティヴな「生き方」はいかにして可能か。情報科学からポップカルチャーまでを総動員、この世界と、一度きりの生を肯定するための哲学的「自己刷新」本。

目次:
はじめに
一日目 無限のセカイと有限のワタシ
 A面 世界の果て?
 B面 おたくからオタクへ
二日目 タイムマシンにお願い
 A面 偶然について
 B面 運命について
三日目 UNKNOWNMIX!
 A面 不可能世界論
 B面 未知との遭遇
あとがき


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◎【今こそ!人文書宣言 第25弾】 國分功一郎選「 『暇と退屈の倫理学』から歩き出す

紀伊國屋書店新宿本店5階の常設ブックフェアコーナー「今こそ!人文書宣言」。記念すべき第25弾は『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社)が大きな反響を呼んでいる國分功一郎さんセレクトによるブックフェアです。題して「『暇と退屈の倫理学』から歩き出す」。同書の思考を深め、さらにその先へと向かうための本をお選びいただきました。選書コメントはこちら

場所:紀伊國屋書店新宿本店 5Fエレベーター横壁棚
会期:2011年12月10日(土)~2012年1月20日(金)
お問合せ: 紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-5700(5階直通)

暇と退屈の倫理学
國分功一郎著
朝日出版社 2011年10月 本体1,800円 四六判並製402頁 ISBN978-4-25500613-0
版元内容紹介文:朝日新聞やニューヨークタイムズのインタビューで注目を浴びる気鋭のスピノザ研究者が、「3.11以降の生き方」を問う。潑剌と、明るく、根拠をもって「よりよい社会」を目指す論客のデビュー。何をしてもいいのに、何もすることがない。だから、没頭したい、打ち込みたい……。でも、ほんとうに大切なのは、自分らしく、自分だけの生き方のルールを見つけること。

目次:
まえがき
序章 「好きなこと」とは何か?
第一章 暇と退屈の原理論──ウサギ狩りに行く人は本当は何が欲しいのか?
第二章 暇と退屈の系譜学──人間はいつから退屈しているのか?
第三章 暇と退屈の経済史──なぜ“ひまじん”が尊敬されてきたのか?
第四章 暇と退屈の疎外論──贅沢とは何か?
第五章 暇と退屈の哲学──そもそも退屈とは何か?
第六章 暇と退屈の人間学──トカゲの世界をのぞくことは可能か?
第七章 暇と退屈の倫理学──決断することは人間の証しか?
結論
あとがき

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by urag | 2011-12-23 14:31 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 18日

ラカンが待望の文庫化!『二人であることの病い』講談社学術文庫

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二人であることの病い――パラノイアと言語
ジャック・ラカン著 宮本忠雄+関忠盛訳
講談社学術文庫 2011年12月 本体720円 A6判並製185頁 ISBN978-4-06-292089-6
帯文より:巨人の思想の原点に触れる。「症例エメ」他、読み易い初期論文5篇を収録!!
カバー紹介文より:フロイト精神分析を構造主義的に発展させ、20世紀の思想潮流にあって、確固たる地位を占めたラカン。本書は、ラカン最初期の1930年代に発表された五篇の論考を収録。「症例エメ」「《吹き込まれた》手記」「パラノイア性犯罪の動機」の三篇は、症例報告の記録性があり、明澄ですらある。現代思想の巨人の哲学の出発点を探るための必読書である。
訳者まえがきより:フランスの伝統的な精神医学のほか、ヤスパース、クレッチマー、フロイトなど、ドイツ語圏の文献を盛んに読んでおり、精神分析よりは現象学の明晰さに親和性を感じていた跡が論文にも窺えて、それゆえ、後年の、ラディカルなフロイト主義者としてのあのラカンには辟易する人でも、興味をもって読みとおしていただけるものと期待している。

目次:
症例エメ
《吹き込まれた》手記――スキゾグラフィー
パラノイア性犯罪の動機――パパン姉妹の犯罪
様式の問題――およびパラノイア性体験形式についての精神医学的考想
家族複合の病理

★ラカンの著書の初めての文庫化です。古い分類で言えば、20世紀フランス構造主義の日本受容においてもっとも際立っていた四名(レヴィ-ストロース、アルチュセール、ラカン、バルト)の中で唯一、著書の文庫本が今までなかったのはラカンだけでした。その意味では、世紀が変わり10年代に入ってようやく文庫化されるというのは実に遙かな道のりでした。いまなおラカンの講義録(セミネール)が刊行中で、完結がまだいっこうに見えないことを考えると、今世紀においてもラカンの影響力というのは隠然と続いていくのかもしれません。

先週発売された文庫の親本は朝日出版社、1984年6月刊(写真左)。「ポストモダン叢書」の第一期第一巻。85年の2刷までは初版と同じカバー。87年6月の3刷でカバー新装(写真真中)。今回の文庫化にあたっては特に加筆訂正はなし。訳者のお二方がなくなっているためかと思われます。編集部による若干の補足は巻頭の「訳者まえがき」での書誌情報についてのもの。

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まずひとつは、『人格との関係からみたパラノイア性精神病』(原著1932年刊)についてのもので、「近い将来には完全なかたちの翻訳を出版できるものと見込んでいる」という一文のあとに亀甲カッコで「1987年刊。2011年現在絶版」と補足してあります。ラカンの学位論文となるこの著作は朝日出版社より1987年4月に函入本で出版され(写真真中)、1993年5月に2刷(新装版、カバーオビ装、写真左)が刊行されました。訳者は『二人であることの病い』と同じく、宮本・関の両先生。

もうひとつは、『二人であることの病い』に収録された「家族複合の病理」と対になる「複合、家族心理学の具体的要因」(ともに『フランス百科事典』第8巻「精神生活」(H・ワロン編、1938年)についての補足です。「両編併せて「家族」という大きなセクションを構成している。訳者としてはこちらも訳出して本書に掲載する予定だったが、時間と分量などの関係からやむなく分離し、これだけで別の一巻をつくることになった。近々出版の予定なので、本書と合わせてお読みいただけるとありがたい」という記述の後の亀甲カッコで、「1986年刊。2011年現在絶版」と補足してあります。これは、哲学書房より1986年6月に刊行された『家族複合』(写真右)のことで、この本では『二人であることの病い』の「家族複合の病理」(「家族」第II章)が再録されて、序論「家族制度」と第I章「複合、家族心理学の具体的要因」とともに、「家族」の項目全体が読めるようになっています。この本もまた、宮本・関の両先生による翻訳です。

ちなみに「絶版」というのはおおむね発行元のみが宣言できる「再刊予定なし」という状態のこと。発行元によっては「絶版」という言葉はけっして使用せず、あくまでも再刊の含みを持たせた「品切重版未定」という表現を使います。一方で、長期間にわたって市場在庫がない場合にも「絶版」とみなされることがあります。ただし、この「長期間」がいったいどれくらいの長さなのか、明確な業界基準はありません。

編集部の補足は最後にもうひとつ。「「症例エメ」を除く論考の原文はhttp://aejcpp.free.fr/lacan/texteslacan.htmなどで参照することができます」というもの。「まえがき」の欄外に編集部註として記載されています。

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ところで、『エクリ』(全三巻、弘文社)や『セミネール』(岩波書店、刊行中)を除くと、これまでに刊行されたラカンの著書で長期品切になっているのは『ディスクール』(佐々木孝次+市村卓彦訳、弘文社、1985年7月、写真右)と、『テレヴィジオン』(藤田博史+片山文保訳、青土社、1992年7月、写真真中)です。前者は1971年4月21日の弘文堂での談話「東京におけるディスクール――ラカン思想とは何か」と、1970年6月および11月にフランス・キュルチュール放送で放送されたインタビュー「ラジオフォニー――ラカン思想の基本概念」(質問者はロベール・ジョルジャンとルネ・ファラベ)の二本立て。後者は1974年3月9日と16日の二回にわたってフランス国営放送で放映されたインタビュー「精神分析」(質問者はジャック-アラン・ミレール)を活字化したものの翻訳。「ラジオフォニー」や「テレヴィジオン」はその後、『エクリ』や『セミネール』の原書版元スイユから2001年に出版された『他のエクリ Autres écrits』(写真左)に収録されたので、『他のエクリ』全体が翻訳されるまでは再刊されそうにありませんね。
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by urag | 2011-12-18 21:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 15日

ついに発売!ユング『ヴィジョン・セミナー』、創元社より

本日2011年12月15日取次搬入とのことです。C・G・ユング『ヴィジョン・セミナー』(C・ダグラス編、ISBN978-4-422-11516-0)はかの『赤の書』と同様に門外不出だったもので、ユングが1930年から34年の5年間にわたって行ったセミナーの記録。美麗なセットケース入りの3分冊(本文2冊+注1冊)。A5判上製で、本文がトータル1500頁を超える大冊です。カラー口絵39頁を含みます。注は原注と訳注あわせて160頁。定価が税込29,400円のところ、2012年6月30日まで特価26,250円。お高い本ですが、買うっきゃない!のです。店頭販売する書店さんについては創元社さんの営業部までお尋ねください、とのことです。

輸送函
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『赤の書』と比べてこんなサイズです
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中身のセットケース。美しい!
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セットケースの中身の三分冊の写真については、創元社さんのこちらのツイートをご覧ください。
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by urag | 2011-12-15 17:31 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 15日

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍

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★ジョルジョ・アガンベンさん(『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』著者)
さる九月に、イタリアのヴィチェンツァに所在する出版社ネリ・ポッツァから「ホモ・サケル」第四部第一分冊となる『至高の貧しさ――修道院の規律と生のかたち』が刊行されました(Altissima povertà: Regole monastiche e forma di vita, Neri Pozza, 2011)。同書は早くも同月にフランス語訳が出版されています(De la très haute pauvreté: Règles et forme de vie, Rivages, 2011)。ジョエル・ゲローJoël Gayraudによる仏訳。「ホモ・サケル」シリーズでは『例外状態』や『言語の秘跡』を訳しています。ここでシリーズについてもう一度おさらいします。

◎アガンベン「ホモ・サケル」シリーズ

第一部:1995年『ホモ・サケル――主権権力と剥き出しの生』(高桑和巳訳、以文社、2003年)
第二部第一分冊:2003年『例外状態』(上村忠男・中村勝己訳、未來社、2007年)
第二部第二分冊:2007年『王国と栄光──オイコノミアと統治の神学的系譜学のために』(高桑和巳訳、青土社、2010年)
第二部第三分冊:2008年『言語の秘蹟――宣誓の考古学』(未訳)
第三部:1998年『アウシュヴィッツの残りのもの――アルシーヴと証人』(上村忠男・廣石正和訳、月曜社、2001年)
第四部第一分冊:2011年『至高の貧しさ――修道院の規律と生のかたち』(未訳)

第一分冊ということは、二分冊以降もあるということで、アガンベンの新たな一歩と言えそうです。一方、平凡社さんから近刊予告が出ていた、岡田温司さんの『アガンベン読解』がついに本日取次搬入になりました。明日以降、順次店頭発売となるはずです。

アガンベン読解 Leggere Agamben
岡田温司著
平凡社 2011年11月 本体2,400円 46判上製218頁 ISBN978-4-582-70341-2
帯文より:二人のアガンベン――イタリア現代思想への格好の入門書。特有の思考スタイルを大胆かつ繊細に分析しながら、政治と言語の両極を綜合的に論じる冒険的な試み。

目次:
はじめに
1 潜勢力 potenza
2 閾 soglia
3 身振り gesto
4 瀆聖 profanazione
5 無為 inoperosità
6 共同体 comunità
7 メシア messia
8 声 voce
9 註釈 glossa
愛の哲学、哲学の愛――あとがきに代えて
参考文献
事項索引
人名索引

昨年、エファ・ゴイレン『アガンベン入門』(岩崎稔+大澤俊朗訳、岩波書店、2010年1月)という本が出ましたが、日本人の書いた入門書は初めてになります。岡田さんは3年前にも『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ、2008年6月)という優れた入門書を出されており、その中でアガンベンについても論じていらっしゃいます。今回の本は9つのキータームからアガンベンを懇切丁寧に読み解くというもので、本書をもって日本におけるアガンベン受容のひとつのピークとみなすことができるだろうと思います。帯文にある「二人のアガンベン」というのは、「はじめに」で書かれている次の言葉を念頭に入れて理解するといいかもしれません。「アガンベンにとって、政治と詩学、あるいは政治と言語の問題はけっして分離されえないもので、たがいに交差し合っているのである。このことを否定的に捉えるなら、アガンベンの政治学はレトリックを弄しているばかりでいかなる実効性も欠くと判断されるだろうし、他方、その詩学はいたずらに政治に浸食されている、ということになるのかもしれない。この批判を全面的に否定することは不可能であるし、またその必要もない。重要なのは、政治と言語が絡み合う場、あるいは場なき場であり、メビウスの帯のような両者の絡み合いの様態である。アガンベンの思考の照準は、ほかでもなくその不可能な空間に向けられているのである」(12頁)。ゴイレンの入門書はアガンベンをもっぱら政治哲学者として理解しようとしており、ワトキンの『文学的アガンベン』(2010年刊、未訳)は文学論にあえて留まって理解しようとしている、と岡田さんは指摘します(11-12頁)。「だが、両者は切り離すことができないし、また切り離されてはならない」(12頁)というのが岡田さんの確信であり、この態度は長年アガンベンを読み、翻訳してきた研究者ならではの公平なものだと思います。

「あとがき」には翻訳シリーズ「イタリア現代思想」の予告が書かれており、「アガンベンの『裸性』をはじめ、カッチャーリの刺激的なアドルフ・ロース論、ポスト・ヒューマンの哲学・美学に先鞭をつけたペルニオーラの『無機的なもののセックス・アピール』、待望久しいヴァッティモの『透明なる社会』、生政治と免疫の哲学者エスピジトの仕事など」が刊行予定だそうです。平凡社さんの営業部情報によれば、第一回配本となる『裸性』(岡田温司・栗原俊英訳)の発売は来年2月ないし3月とのことです。なお、岡田さんは先月、岩波新書で『デスマスク』という新刊も上梓されており、すでに「日経新聞」や「サンデー毎日」で取り上げられて話題を呼んでいます。


★上村忠男さん(アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』共訳者、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』共訳者、パーチ『関係主義的現象学への道』編訳者)
★廣石正和さん(アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』共訳者)
平凡社さんより今月、お二人の共訳書がライブラリー化されました。親本は95年に同社の「叢書ヨーロッパ」の第一回配本として刊行されたもので、98年には3刷を数えました。今回の再刊にあたって「平凡社ライブラリー版 訳者あとがき」が加えられ、「固有名を中心に何カ所か訂正」したと特記されています。

完全言語の探求
ウンベルト・エーコ著 上村忠男+廣石正和訳
平凡社ライブラリー 2011年12月 本体1,900円 HL判552頁 ISBN978-4-582-76750-6
帯文より:〈完全言語〉の夢想〔ユートピア〕をめぐるヨーロッパ思想史! バベルの塔以前の単一の祖語、完全なる言語を求める運動に、どれほど多彩な理説が動員され、どれほどのものがそこから生み出されたか。
カバー紹介文より:ヨーロッパ各地で、現代の国民語のもとになった俗語が擡頭しはじめた時代、バベル以前、多言語状態以前の単一の祖語「アダムの言語」への復帰、あるいは〈完全言語〉の再建への探求が始まる。そこに投入される、さまざまな理説、我々にも親しい哲学者や思想家を含む多彩な人々の情熱、百科全書やコンピュータ言語、またエスペラントなどにも行きつくその多様な道筋を、練達の筆で見事にさばき描き切るエーコの傑作思想史! 待望のライブラリー化!

目次:
緒言(ジャック・ルゴフ)
日本語版によせて(ジャック・ルゴフ)

第一章 アダムから「言語の混乱へ」
第二章 カバラーの汎記号論
第三章 ダンテの完全言語
第四章 ライムンドゥス・ルルスの「大いなる術」
第五章 単一起源仮説と複数の祖語
第六章 近代文化におけるカバラー主義とルルス主義
第七章 像からなる完全言語
第八章 魔術的言語
第九章 ポリグラフィー
第十章 アプリオリな哲学的言語
第十一章 ジョージ・ダルガーノ
第十二章 ジョン・ウィルキンズ
第十三章 フランシス・ロドウィック
第十四章 ライプニッツから『百科全書』へ
第十五章 啓蒙主義から今日にいたるまでの哲学的言語
第十六章 国際的補助言語
第十七章 結論
訳者あとがき
平凡社ライブラリー版 訳者あとがき
文献一覧
索引

目次を一瞥するだけでご想像いただけると思いますが、エーコの博識ぶりがいかんなく発揮されている瞠目の書です。親本は4000円を超える本でしたから、半額以下になって非常にお得ですね。
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by urag | 2011-12-15 17:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 14日

明日より店頭発売開始:近藤和敬『構造と生成I』

◎書店様へ

近藤和敬『構造と生成 I カヴァイエス研究』ISBN978-4-901477-89-5の新刊配本は最終的に以下の通りとなりましたので、書店様にお知らせいたします。

12月14日(水)取次新刊口搬入:大阪屋、栗田出版販売、太洋社。
12月15日(木)取次注文口搬入:日販、トーハン。

大阪屋、栗田出版販売、太洋社は通常の新刊配本です。日販とトーハンは事前受注が期限内に新刊配本ラインを組む冊数に至らなかったため、注文口へ「返品条件付出荷」となりました。

◎読者の皆様へ

近藤和敬『構造と生成 I カヴァイエス研究』(シリーズ・古典転生、第5回配本・本巻4)は、明日から一部大型書店で店頭発売開始となりますが、店舗によっては着店が来週以降になる場合がございます。配本店につきましては、弊社営業部までお尋ねください。当エントリーのコメント欄からもお尋ねいただけます。オンライン書店ではbk1、アマゾン、セブンネットショッピングなど、順次取り扱い開始となります。
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by urag | 2011-12-14 16:55 | 人文書既刊 | Trackback | Comments(0)
2011年 12月 11日

まもなく発売:2011年12月新刊より

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世界史の中のフクシマ――ナガサキから世界へ
陣野俊史(1961-)著
河出ブックス 2011年12月 本体1,300円 B6判並製208頁 ISBN978-4-309-62438-9
帯文より:言葉なき人々の声のために――苦しみをこえる思想をさぐる。ナガサキの悲劇と世界の新しい動きの交点においてフクシマは何を問うのか。
カバー紹介文より:3・11以降、われらに残された希望はあるのか。ヒロシマ・ナガサキの体験を問い返しながら、アラブからロンドンまでの世界史的スケールの中に2011年の苦悩を刻印する渾身の力編。

目次:
はじめに
第1章 ナガサキから
第2章 フクシマへ
第3章 言葉なき人の声を代弁する――狐火インタビュー
第4章 尊厳を傷つけられた人々
あとがき

★13日発売と告知されていますが、週末から書店店頭に並び始めているようです。「できることは少ないと思っていた」という書き出しで始まり、「残された者は、生きている限り、やり続けなければ、と思う」という一文で終わる本書は、批評家である陣野さんの体温を感じることができる素晴らしい本です。陣野さんは長崎県出身。第一章は長崎の原爆投下について。医者であり作家であり被爆者である永井隆さんの著書『長崎の鐘』を手掛かりに、考察を進めます。第二章は福島の原発事故について。福島出身の古川日出男の『聖家族』や、橋爪健「死の灰は天を覆う」、大江健三郎「アトミック・エイジの守護神」、井上光晴『西海原子力発電所』などを読み解き、「文学サイドから」(8頁)問題に切り込みます。第3章は福島出身のラッパー「狐火」さんへのインタビュー。第4章は、中東や欧米、日本でも起きた「デモ」について考察。帯に記載されている「あとがき」からの引用をご紹介しますと、「私たちこそが「99%」なのだ。誇りや尊厳を毀損され、沸々とした怒りを抱えている存在、indignésなのだ。きっとそうだとは思っていた。自分がその外部にいるとは思っていなかった。余計な断りを入れておくと、ここで私の言う「indigné」は経済力とは関係ない。いわゆる「格差問題」とは別の、尊厳の問題として、私はここまで書いてきたつもりだ。そして福島第一原子力発電所の未曾有の事故以後、民意が脱原発へ傾いているにもかかわらず、「再稼働」に踏み切る(しかも同年12月には定期検査に入って再び運転を停止する以上、「再稼働」だけが目的であり、既成事実の積み上げが狙い)「1%」の、その狂気はどうやら本物らしい。なんとかしなくちゃ。そのために、この本を書いた」(200-201頁)。

★河出書房新社さんは今月27日に、TwitNoNukes編『デモいこ!』を発売予定。A5判64頁で本体700円という身軽な本で、弊社刊『文化=政治』著者・毛利嘉孝さんらが寄稿しています。


フェルメールとスピノザ――〈永遠〉の公式
ジャン=クレ・マルタン(Jean-Clet Martin, 1958-)著 杉村昌昭訳
以文社 2011年12月 本体1,800円 46判上製108頁 ISBN978-4-7531-0296-9
帯文より:フェルメールの描いた『天文学者』のモデルはスピノザである。〈永遠〉の観念をめぐる極上の思想サスペンス。画家と哲学者の出会い、そして〈永遠〉の創造。二人の秘められた共通性に肉薄する。

原書:Bréviare de l'éternite: Vermeer et Spinoza, Leo Scheer, 2011.

★15日発売と聞いています。ヨハネス・フェルメールとバルフ・デ・スピノザはともに1632年、アムステルダム生まれ。フェルメールが1668年に描いた『天文学者』(本書のカバーや口絵で掲載)のモデルはスピノザである、とマルタンは断言します。確かにスピノザの自画像(こちらも図版掲載されています)と、「天文学者」は似ています。担当編集者のMさんからのご紹介によれば本書は「フェルメールとスピノザの、おそらく実際にあったであろう“出会い”を証明せんとする、大変スリリングな“哲学書”」とのこと。単なるモデルと画家の関係ではなく、思想的な共通性もあったとするのが本書の興味深いところです。原著の裏表紙には次のような一節があります、「彼らの作品の核心には、ものの形態や様式に対する捉え方の類縁性、あるいはものを見る視線における奥深い親近性がある、とマルタンは主張する。無限の属性で構成された唯一の実体というスピノザ的な神の観念が、フェルメールの代表的な絵画のひとつ『天文学者』における地球を無数の明かりで照らし出す光線に対応する」(訳者あとがきに訳出、100頁)。訳者は本書をこう評しています、「かつて「ゴッホ論」(拙訳『物のまなざし』2001年、大村書店刊)で披瀝されたマルタン独自の哲学的絵画読解の技法が、ここではフェルメールの作品を素材にしながら、よりいっそうの腕の冴えを見せている。〔…〕本書は小冊子ながら、スピノザ好きの哲学愛好家にとっても、フェルメール好きの美術愛好家にとっても、格別の興味をそそる濃密な記述にあふれている」(103-104頁)。


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東京湾の魚類 
河野博監修 加納光樹+横尾俊博編
平凡社 2011年12月 本体3,200円 A5変型判並製376頁 ISBN978-4-582-54243-1

帯文より:江戸前の魚たちのすべてがわかる。300種以上の魚類を、20年にわたる調査データとカラー写真で解説。東京湾に出現する魚類737種の一覧リスト付き。
版元紹介文より:「江戸前」と呼ばれた東京湾は、多様な海洋環境を擁し、魚類の種数も多く、仔稚魚のゆりかごともなっている。約350種の魚類の紹介と、チリモン(チリメンモンスター)、釣り、漁業、透明標本などトピックスも満載。

★まもなく店頭発売開始です。カラー図鑑好きで東京住まいの私にとってはたまらなく魅力的な一冊。コンパクトな見た目とは裏腹にズッシリ重い(全頁コート紙でフルカラー印刷だからでしょうか)のに盛り上がり、頁をめくっては盛り上がり、「えっ、ラブカって東京湾にいるの?」などと喜んでいます。ウィトゲンシュタインとのコラボ本(『透明な沈黙』青志社)で人文系でも有名になった透明標本などの写真も収録。今年は創元社さんの『世界で一番美しい花粉図鑑』でも盛り上がりましたが、動物にせよ植物にせよ、かたちの世界というのは実に神秘的で美しいですね。「自然が創り出す美しいパターン」をめぐるフィリップ・ボールによる三部作の既刊二冊『かたち』『流れ』(ともに早川書房)もまた、今年の収穫でした。

★平凡社さんの12月新刊は実に多彩です。上記の『東京湾の魚類』のほかにまもなく発売となるのは、松原正毅『カザフ遊牧民の移動――アルタイ山脈からトルコへ 1934-1953』は、社会人類学の重鎮による畢生の大作で「遊牧から見た20世紀ユーラシア史」(帯文より)と銘打たれています。アルタイ山脈からトルコに至る約2万キロにも及ぶカザフ遊牧民の苦難に満ちた移動と難民化の実態、遊牧生活の消滅過程を辿ります。また、最近発売になった新刊には吉田一彦編『変貌する聖徳太子――日本人は聖徳太子をどのように信仰してきたか』、ブズルク・ブン・シャフリヤール『インドの驚異譚――10世紀〈海のアジア〉の説話集(2)』(家島彦一訳、東洋文庫)があります。前者は三部構成(「信仰の対象になった「聖徳太子」」「進化する聖徳太子信仰」「民衆へと広がる聖徳太子信仰の展開」)で、序論と併せ10本の論考と、3本のコラムが収められており、くだんの信仰発展史を伝記や絵画から解明しています。後者は162の説話の内、後半80話と用語集・索引を収録するもので、全2巻完結となります。東洋文庫の来月配本は『江戸後期の詩人たち』『共同研究 転向 戦前篇I』の2点だそうです。

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by urag | 2011-12-11 23:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)