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2011年 11月 28日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2011年12月22日(木)オープン
ジュンク堂書店松本店⇒丸善松本店:図書850坪・文具200坪
長野県松本市深志1-3-11 コングロM B1,1,2F
帳合はO。弊社へのご発注は人文書全点、音楽書全点、文芸書および芸術書の主力商品でした。ジュンク堂書店の代表取締役社長、岡充孝さんのお名前で出されている挨拶状によれば、「弊社がこれまで培ってきた経験を踏まえ、さらに進化した「立地に相応しい洗練された店」を目指すべく、今後とも努力を惜しまない所存」とのことです。JR松本駅周辺には駅ビル内の改造社書店や、松本パルコの地下1階にあるリブロ松本店などの新刊書店のほか、堅実な品揃えが魅力的な古書店、アガタ書房もありますね。ジュンク堂が入店するのは、井上百貨店本館に隣接する旧野口ビル(ベルモール25)。「信濃毎日新聞」2011年10月27日付記事「松本・旧野口ビルに書店大手ジュンク堂が入居へ 年内にも」にはこうあります。「工藤会長は「書店は街のインフラ。松本市街地の空洞化を防ぐ意味でも、人が常に出入りし、専門書が手に入る店舗にしたい」と説明。藤巻社長は「ビルを活用したい一心で入居をお願いし、応じてもらった。改修を急ぎ、クリスマスに開店が間に合うように全力を尽くす」としている」。工藤会長とは周知の通りジュンク堂書店の会長である工藤恭孝さんのこと。藤巻社長とはビルの所有者「富岡開発」の親会社であるエム・ケー・ケーの社長である藤巻好實さん。ジュンク堂の入店のために、空きビルを改修するわけで、なかなか大変な決意ではないでしょうか。

【2011円12月14日追記:「新文化」12月9日付記事「ジュンク堂書店、松本店を「丸善」で出店」によれば、ジュンク堂松本店は「丸善松本店」に店名を変更するとのことです。「丸善ブランドを前面に押しだす戦術」と報じられています。こういう使い分けはきっと、地元での評判などをもとに判断するのでしょうね。確かにその昔も、池袋店ができるまで、東京住まいの読者の大半はジュンク堂の名前を知らなかったかもしれません。なお、書店コードの変更はないそうです。】

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一方、閉店情報ですが、今月末でブックファーストルミネ新宿2店が閉店となるのには驚きました。数週間前、返品依頼の電話がかかってきた当日に早くもtwitterで情報が流れ始めていましたから、すでに皆さんもお聞きおよびのことでしょう。かつてここが青山ブックセンターだった頃、森山大道の高額写真集『新宿』(2002年)の実売数が3桁に至ったことがありました。その頃のことを思うと隔世の感があります。ルミネ側が「1にも本屋があるので、2つも要らない」という考えを持っていたと聞いています。同じくルミネ2内のヴィレッジヴァンガードが閉店したのが今年1月。あくまでも私の印象にすぎませんが、ベルクへの立ち退き要求ですとか、テナントへの容赦ない態度ですとか、どうもルミネ(JR東日本)のやり方というのはどこか高圧的に映りがちですねえ。
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by urag | 2011-11-28 00:28 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 27日

「週刊読書人」にパーチ『関係主義的現象学への道』書評

週刊読書人」2011年11月11日号に、弊社9月刊、エンツォ・パーチ『関係主義的現象学への道』の書評「哲学脳を活性化させる刺激剤――独自の思想的地平を切り拓く」が掲載されました。評者は日本女子大教授の山田忠彰先生です。「パーチに独自なのは、世界・社会の関係性への徹底した目配りと、晩年のフッサール現象学を援用しつつも、それをさらに進めた、歴史的レーベンスヴェルト(生活世界)の構造把握である。歴史に絶対性も完結性も拒否し、開かれてある態度としての関係を注視するこの哲学は、現今のヴァッティモらの「弱い思考」の先取りの面をもつともいえよう。/わが国のイタリア哲学・思想研究の領袖たる訳者による訳文はさすがに熟れて読みやすく、本書は哲学脳を活性化させる刺激剤だとみられよう」と評していただきました。山田先生、まことにありがとうございました。

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by urag | 2011-11-27 23:12 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 26日

注目新刊:マーク・ボイル『ぼくはお金を使わずに生きることにした』

ぼくはお金を使わずに生きることにした
マーク・ボイル(1979-)著 吉田奈緒子訳
紀伊國屋書店 2011年11月 本体1,700円 46判並製288頁 ISBN978-4-314-01087-0

帯文より:この実験で証明したいのは、お金がなくても「生き延びられること」ではなく「豊かに暮らせること」だ。――イギリスで1年間、お金を一切使わずに生活する実験をした29歳の若者がメディアで紹介されるや、世界中から取材が殺到し、大きな反響を呼んだ。貨幣経済を根源から問い直し、真の「幸福」とは、「自由」とは何かを問いかけてくる、現代の『森の生活』。

帯文(裏表紙)より:「食」と「エネルギー」を自給して生きる。著者は、不用品交換で入手したトレーラーハウスに太陽光発電パネルをとりつけて暮らし、半自給自足の生活を営む。手作りのロケットストーブで調理し、石鹸や歯磨き粉などの生活用品は、植物、廃材などから手作りしている。衣類はリサイクルを活用し、移動手段は自転車。彼の主宰するフリーエコノミー・コミュニティのウェブサイトには、160カ国34,834人が参加し、461,766種類のスキル、95,088個の道具、554か所の空間を分かち合っている(2011年10月末現在)。

原書:The Moneyless Man: A Year of Freeconomic Living, Oneworld, 2010.

★本日11月26日、国際無買デーを記念して刊行された新刊です。取次搬入はおとといの24日(木)ですから、すでに店頭に並べはじめた大型書店さんもあることでしょう。無買デーというならそもそもこの本も買えないじゃないか、と笑う人もいるかもしれませんが、無買デーというのは「余計なモノを買わない日」ですから、本書は買っても構わないわけです。無買デー・ネットワークの日本語サイトはこちら

★この『ぼくはお金を使わずに生きることにした』という本、私にとって今年もっとも惹きこまれた本のひとつになりそうです。面白くて、考えさせられます。震災や不況や政治不信や外交問題などで「ボロボロ」だと言ってもおかしくない今の日本、暗くならざるをえない毎日に、「ひとつの可能性の光」を見せてくれた気がします。担当編集者のAさんによれば、本書は「究極の節約生活の本ではありません。著者は、自然と共にある生活から消費社会を見つめ直し、「分かち合い(シェア)」をベースにした新しい社会のあり方を提案、人間同士の絆とコミュニティの再生をめざしています」とのこと。この本の内容は書名の通り、「お金を使わずに暮らす」実験を一年間行った記録。実際には二年半続けたそうです。それほど、この実験は素晴らしかったわけです。

★少し長くなりますが、著者がこの実験を始めることになった考えを引用してみます。「ある晩、親友のドーンと話していて、搾取工場、環境破壊、工場畜産、資源争奪戦争などの世界的な問題に話題がおよんだ。ぼくらの一生をかけて取りくむべきは、はたしてどの問題だろうか。かといって、自分たちにたいした貢献ができると思っていたわけではない。ぼくらは、汚染された大海の中の二匹の小魚にすぎない。だが、まさにその晩、ぼくは気づいたのだ。病んでいる地球のこれらの諸症状が、それまで考えていたように互いに無関係ではなくて、ある大きな原因を共有しているということに。その原因とは、消費者と消費される物との間の断絶である。われわれが皆、食べ物を自分で育てなくてはならなかったら、その三分の一を無駄にするなんてことは(これはイギリスで現に起きていることだ)しないだろう。机や椅子を自分で作らなければならなかったら、部屋の模様がえをしたとたんに捨ててしまったりはしないだろう。目抜き通りの店で気に入った服も、武装兵士に監視されながら布地を裁断する子どもの表情を見ることができたら、買う気が失せることだろう。豚の屠畜処理の現場を見ることができたなら、ほとんどの人がベーコンサンドイッチを食べるのをやめるだろう。飲み水を自力できれいにしなければならないとしたら、まさかその中にウンコはしないだろう。/心の底から破壊を好む人間はいない。他人に苦痛を与えて喜ぶ人など、そうそうお目にかかるものではない。それなのに、無意識に行っている日常的な買い物は、ずいぶんと破壊的である。なぜか。ほとんどの人が、みずから生産する側に立たされることはおろか、そうした衝撃的な生産過程を目にすることもなければ、商品の生産者と顔を合わすこともないからだ。ニュースメディアやインターネット上で実態の一端をかいま見る機会はあっても、その効果はたかが知れている。光ファイバーケーブルという感情フィルターを通すと、衝撃は大幅に減殺されてしまう。/こういう結論に達したぼくは、消費者と消費される物との極端な断絶を可能にしたものは何だろうかと思案した。たどり着いた答えはごく単純だ。「お金」という道具が生まれたその瞬間から、すべてが変わったのだ。最初はすばらしいアイデアだと思われたし、世界中の99.9%の人々は今でもそう信じている。問題は、お金がどう変わったかと、お金が何を可能にしたかだ。お金のせいで、自分たちが消費する物とも、自分たちが使用する製品の作り手とも、完全に無関係でいられるようになってしまった。消費者と消費される物との断絶は、お金が出現してからこのかた広がる一方であり、今日の金融システムの複雑さによって、ますます拍車がかかっている。こうした現実からぼくらの目をそらすために、周到なマーケティングキャンペーンがしかけられる。莫大な予算が投じられるだけあって、成果は上々だ」(17-18頁)。

★実験開始前の著者は強気なようでどこか弱気です。半年前から準備を始めるものの、お金を使わずに生活することがいかに大変かに気づき、後悔したり逃げ出したくなったりするのですが、一年間やってみた結果、元の生活に戻りたくない、とまで思うようになります。そこまで生活が楽だったかというとそうでもありません。自給自活の苦労話は本書を読んでもらって楽しんでいただくとして、彼は病気をすることもなくむしろ心身ともに至極健康に過ごしたのでした。読後の感動を胸に抱きつつも、家族のことを考えると、俺もやるぞ、とは簡単に言えないわけですが、本書がもらたす示唆の数々は、ひょっとすると、私の、そして誰かの生活のターニングポイントになるかもしれません。本書のカバーソデにはガンジーのこんな言葉が印刷されています。「世界を変えたければ、まず自分がその変化になりなさい」。著者が行った自給自活とは外界と断絶した場所でサバイバルすることなのではなく、自然と人、人と人との付き合い方を仕切り直す実践です。特に後者で重要なのは「分かち合い」の精神であるとされます。著者はその効用を述べつつこう書きます。「世界中いたるところで日常的な人づきあいがもっと和やかにならないかぎり、本当の平和が訪れることはない。全体とは細部からできているのだから」(30頁)。本書に対する賛否は当然あるでしょうが、読まずに批判的に見るのはもったいないです。軽快な筆致で読みやすい本ですし、ぜひ通読をお薦めします。

★ちなみにアメリカ市場では昨日がいわゆる「ブラックフライデー」で、クリスマス商戦の始まりなのですね。AFP通信の記事「狂乱気味のブラックフライデー、催涙スプレーや強盗事件も 米国」が紹介するニューヨーカーの言葉はこうです、「まったくひどい消費主義のかたまりだよ。せっかくの感謝祭の祝日が『買い倒れの日』になっている」。クリスマス商戦と言えば、2ちゃんねるで「クリスマス商戦 Amazonの倉庫が大変なことになってる」と盛り上がっていたことが「ガジェット速報」で伝られています。そこでは日本のアマゾンの倉庫で働く人々の苦労話が読めます。速報で掲載されている写真はイギリスの「デイリーメイル」紙が伝えているアマゾンの流通倉庫の風景。ブラックフライデーと週明けの月曜日は一年間でもっともオンラインショッピングが繁盛する日なのだとか。

★本書の著者もこう書いています。「米国のスーパーマーケットでは2008年、殺気だった客がバーゲン開始を待ちきれずに店内へなだれこみ、下敷きになった男性従業員が死亡した。ここイギリスでも、2005年の大型家具店開店時に同じような事故が起きている。開店記念の目玉商品を探す客たちに押したおされて何人かが負傷した。サウジアラビアでは2004年に、「バーゲンハント」の名のもとに3人が死亡、16人が負傷している。ついに人間は、いくばくかの金を節約するために他人を踏み殺すようにまでなってしまったのか」(259-260頁)。

★著者は現在、本書の印税(なんと14カ国で刊行されているのだとか)をもとに、フリーエコノミーのコミュニティ「カネナシ村」をつくろうとしているのだそうです。紀伊國屋書店さんの月刊PR誌「スクリプタ」の12月15日号では、坂口恭平さん、毛利嘉孝さん、大貫妙子さんの書評が掲載予定とのこと。その一部を以下にご紹介します。

坂口恭平さん(建築家/作家)――文明批判でありながら、まだ誰も気付いていない可能性を掘り当てる大冒険としても読める多層的な本だ。
毛利嘉孝さん(社会学者)――単に「お金を使わない」というだけではなく、広い意味での思想の実践であり、新しい経済の試みである。

お二人はtwitterでもこうつぶやかれています。zhtsss 坂口恭平さん「紀伊國屋書店のPR誌にて書評を書いたイギリスのブリストルで0円生活を一年間実践したマーク・ボイル氏の著作「ぼくはお金を使わずに生きることにした」って本がそろそろ発売されますが、この人たちが実行しているフリーエコノミーには大きな可能性が詰め込まれていると思ってます」。mouri 毛利嘉孝さん「マーク・ボイルの『ぼくはお金を使わずに生きることにした』(紀伊國屋書店)の 書評を書いた。一切お金を使わずにブリストル郊外で暮らした30歳男性の話。と書くと自給自足の山中生活みたいだがそうではない。結構都市にも出てるし、フェスティヴァルなんかも組織している。むしろ面白いのは、フリーエコノミーのインフラと情報網と理論が、きちんと出来上がりつつあること。全くお金を使わないのは難しくてもいろいろと応用可能ではないか。そもそもすごく楽しそうなのがいい」。

★本書の刊行を記念し、ブックフェア「なんでもお金で買えると思うなよ」が現在、リブロ池袋本店、戸田書店静岡本店、ジュンク堂書店藤沢店、紀伊國屋書店札幌本店、同玉川高島屋店、同横浜みなとみらい店で行われているそうです。ご興味を持たれた書店さんには、30点のブックリストやフェアパネル(A4サイズ、A3サイズ)の提供が可能だそうですので、紀伊國屋書店出版部さんまで問い合わせてみてください。

★なお、紀伊國屋書店出版部さんと言えば、パトリック・シャモワゾーの大著『カリブ海偽典――最期の身ぶりによる聖書的物語』(2010年12月刊)で、訳者の塚本昌則さんが先月発表の日本翻訳文化賞を見事受賞されましたよね。「読売新聞」2011年4月11日に掲載された都甲幸治さんによる書評では「本書に登場する女性たちの魅力的なことと言ったらない。悪霊と闘う女漁師、同時に男性でも女性でもある教師たち。彼女たちの強さと優しさは、賑にぎやかなおしゃべりとダンスに満ちたクレオール文学の最良の部分である。常に柔らかくあること。感覚を閉じてしまわないこと。固い心を持つ僕らにとって、本書は有難い貴重な飲み物のようだ」と評されていました。『カリブ海偽典』は文学作品、『ぼくはお金を使わずに生きることにした』はドキュメンタリーですが、どちらも読者の心をほぐし、新しい視野を与えてくれる素晴らしい本ですね。

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by urag | 2011-11-26 22:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 24日

2011年12月中旬新刊:近藤和敬『構造と生成 I』

2011年12月13日取次搬入予定 *人文・哲学

構造と生成 I カヴァイエス研究
近藤和敬:著
A5判上製264頁 本体3,600円 ISBN978-4-901477-89-5

数理哲学者としてフランス・エピステモロジーの礎を築き、ナチス占領期にレジスタンスの闘士として銃殺されたジャン・カヴァイエス(1903-1944)。彼の先駆的業績をその〈概念の哲学〉のうちに見出し、現代的再評価への扉を開く、俊英による渾身の力作。本邦初の本格的モノグラフ。シリーズ「古典転生」第5回配本(本巻第4巻)

目次:
はしがき
序論 「操作」というテーマについて
第1章 カヴァイエスの哲学史解釈と操作概念
第2章 ブラウアーの直観主義と操作概念
第3章 ヒルベルトの公理的方法と概念の哲学
第4章 操作と概念の弁証論的生成
第5章 真理の経験と現象する知性としての数学
第6章 概念の哲学とモノの認識論
結論 「概念の哲学」の未来に向けて
文献表

引用文献一覧
あとがき

近藤和敬(こんどう・かずのり):1979年生まれ。2008年、大阪大学人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(人間科学)。龍谷大学非常勤講師。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター招聘研究員。共著:『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社、2008年)、『エピステモロジーの現在』(慶應義塾大学出版会、2008年)、『生権力論の現在』(勁草書房、2011年)、『VOL 05 エピステモロジー』(以文社、2011年)。訳書:ジャン・カヴァイエス『構造と生成II――論理学と学知の理論について』(月曜社、近刊)。

【2011年11月26日書影追加】a0018105_1165043.jpg


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著者続刊予定

『構造と生成 II 論理学と学知の理論について』
ジャン・カヴァイエス著 近藤和敬訳
フランス現代思想の方法論的基盤として、同時代だけでなく次世代にも大きな影響を及ぼした代表作(1947年)、待望の完訳。「進展は実質的であり、あるいは特異な諸本質のあいだにある。そしてその進展の駆動力は、それぞれの特異な本質の乗り越えの要求である。学知の理論をあたえるのは、意識の哲学ではなく、概念の哲学である。産出的必然性とは、活動性の必然性ではなく、弁証論の必然性なのである」。

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シリーズ「古典転生」既刊書

初期ストア哲学における非物体的なものの理論
エミール・ブレイエ
近代以降の唯物論とは異なるストア哲学の生物学的唯物論が提示する、存在と出来事を包括する自然哲学を考察した古典的名著(1908年)。訳者長篇解題「出来事と自然哲学――非歴史性のストア主義について」。江川隆男訳。第1回配本(本巻1)。本体3400円

ミクロコスモス――初期近代精神史研究 第1集
平井浩=編
初期近代(15-18世紀)の多様な豊かさと深さを解明する、分野横断的な精神史研究誌の誕生。第1集では、8本の多彩な論考や3本の動向紹介のほか、ゴルトアマーやフィチーノの翻訳を収める。第2回配本(別巻1)。本体3000円(2011年11月現在、版元品切、重版準備中)

具体的なものへ――二十世紀哲学史試論
ジャン・ヴァール
ジェイムズ、ホワイトヘッド、マルセル……20 世紀前半の哲学史に大きな足跡を刻んだ三者を論じ、現代思想が〈具体的なものへ〉向かう思考の運動として始まったことを明らかにする先見の書(1932年)。水野浩二訳。第3回配本(本巻2)。本体3800円

関係主義的現象学への道
エンツォ・パーチ
現象学、マルクス主義、実存哲学――これらはパーチにおいて関係主義という展望のもとに合流する。20世紀イタリア思想における、時間・歴史・実存・労働をめぐる知られざる哲学の水脈を明らかにする一書。上村忠男編訳。第4回配本(本巻3)。本体3200円

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シリーズ続刊予定
ジャン・カヴァイエス『構造と生成 II 論理学と学知の理論について』近藤和敬訳
上村忠男編訳『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学――スパヴェンタ、クローチェ、ジェンティーレ』
岡本源太『ジョルダーノ・ブルーノの哲学――生の多様性へ』

シリーズ連動企画ウェブ連載
ジャン-ジャック・ルソー『化学教程』淵田仁+飯田賢穂訳
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by urag | 2011-11-24 06:59 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 20日

2011年11月中旬~下旬刊行の注目新刊

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ガイドツアー 複雑系の世界――サンタフェ研究所講義ノートから
メラニー・ミッチェル著 高橋洋訳 
紀伊國屋書店 2011年12月 本体3,200円 46判上製576頁 ISBN978-4-314-01089-4 

原書: Complexity: A Guided Tour, Oxford University Press, 2009.

帯文より:ヒトの脳に存在する何兆ものニューロンという「物質」は、いかに「意識」のような複雑な現象を生みだすのか? 免疫系、インターネット、国際経済、ヒトのゲノム――これらが自己組織化する構造を導いているものは何か? 一匹では単純に振る舞うアリが、グループを形成すると、ある目的のために統率された集団行動がとれるのはなぜか? 第一線の研究者を案内人として、その広大で魅力的な世界を訪ね巡る、本格的入門書。

推薦:「複雑系理論の基礎を学ぶのによい本はないかという質問を、ここ何年か受け続けてきたが、ついに答えが手に入った。「このメラニー・ミッチェルの本を読みなさい」それが答えだ! 本書は明瞭で分かりやすい。また複雑系科学を支持する者に対してばかりでなく、それに疑いを持つ者にも公正である。優れた解説者でもある第一線の科学者によって書かれたこの本は、このエキサイティングな分野について学ぶ最良のものだ」(スティーヴン・ストロガッツ、コーネル大学教授〔応用数学〕、著書『SYNC――なぜ自然はシンクロしたがるのか』早川書房、2005年)。

目次:
第1部 背景と歴史
 第1章 複雑性とは何か?
 第2章 力学、カオス、そして予測
 第3章 情報
 第4章 計算
 第5章 進化
 第6章 初歩の遺伝学
 第7章 複雑性の定義と測定基準
第2部 コンピューター上の生命とその進化
 第8章 自己複製するコンピュータープログラム
 第9章 遺伝的アルゴリズム
第3部 拡張される計算
 第10章 セル・オートマトン、生命、そして万能計算
 第11章 粒子による計算
 第12章 生物系における情報処理
 第13章 コンピューター上で類推を実現する
 第14章 コンピューターモデリングの展望
第4部 ネットワーク思考
 第15章 ネットワークの科学
 第16章 現実世界へのネットワークサイエンスの適用
 第17章 スケーリングの謎
 第18章 複雑化する進化の理論
第5部 結論
 第19章 複雑性の科学の過去と未来

訳者あとがき
図版クレジット
参考文献
原注 
索引

★今週24日(木)取次搬入と聞いています。最速の場合、25日から書店店頭に並び始めるはずです。著者メラニー・ミッチェルは、ポートランド州立大学教授で、サンタフェ研究所客員教授でもあり、専門はコンピュータサイエンスです。既訳書に『遺伝的アルゴリズムの方法』(伊庭斉志監訳、東京電機大学出版局、1997年)があります。師匠はかのダグラス・ホフスタッター。人工知能研究の古典的名著『ゲーデル、エッシャー、バッハ』(白揚社、1985年/2005年)をはじめ、『マインズ・アイ』(上下巻、TBSブリタニカ、1984年/1992年)、『メタマジック・ゲーム』(白揚社、1990年/2005年)などの著書があるあの偉大な、知の越境者です。ほかならぬそのホフスタッター(と、ジョン・ホランド)に捧げられたミッチェル女史の最新著『ガイドツアー 複雑系の世界』は、複雑系研究の発祥地であるサンタフェ研究所での、一般聴衆を対象にした講義が元となっています。刊行された2009年にはアマゾン・コム科学書ベスト10のうちに数えられ、翌2010年は英国王立協会推薦科学図書に選ばれ、さらに同年、ファイ・ベータ・カッパ・クラブ(全米優等学生友愛会)科学図書賞を受賞しています。ミッチェル女史の単独著はこれまで3冊しかありませんが、そのうちの2冊が訳されているわけで(未訳なのはホフスタッターの指導のもとで開発したソフト「コピーキャット」について書かれた1993年の著書Analogy-Making as Perception)、著作数の多寡によってではなく、内容によって評価されている優秀な研究者なわけです。

★「訳者あとがき」では、文系の読者にもぜひ読んでもらいたい本である、と推薦されています。複雑系の研究は文系を含む多岐にわたる分野で用いられていますから、確かに文理を問わない必読書ですね。本書では、物理学、生物学、疫学、社会学、政治学、コンピュータサイエンスでの例を読むことができますが、ほかにも、神経科学、経済学、生態学、気象学、医学にも適用されつつあるとのことです。複雑系を扱う本が日本で一般読者にも読まれるようになったのは、1996年に新潮社から刊行された、サイエンス・ジャーナリストのM・ミッチェル・ワールドロップによるベストセラー『複雑系――生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』(2000年に刊行され現在は品切の新潮文庫版〔写真右〕では副題は「科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち」)が最初ではないかと思います。複雑系というキーワードが書名に入っている本はそれなりにあるのですが、先端科学の難解さゆえか、入門書は多くはありませんでした。それだけに、ミッチェル女史の「ガイドツアー」は、まさに待望の新刊です。彼女は本書の末尾でこう書いています、「主流科学から定義のはっきりしない未踏の領域に分け入ることによって、被るかもしれない失敗や非難をいとわずに挑戦する意欲と、冒険的な知的精神が必要」(497頁)だと。複雑系科学のわくわくするような面白さが、こうした姿勢に端的に表れているように感じます。もともと専門家向けに書かれている本ではありませんし、文系の読者であってもヴァレラやカウフマン、プリゴジンなどに挑戦してきた方などは特に、本書は苦にならないだろうと思います。広くお薦めしたい新刊です。


脱原発「異論」
市田良彦・王寺賢太・小泉義之・すが秀実・長原豊著
作品社 2011年11月 本体1,800円 A5判並製216頁 ISBN978-4-86182-355-8

帯文より:「3・11」以降の思想的・運動的状況を総括して、議論なきまま「脱原発」に流れ行く風潮に異論を呈し、射程はるかな資本主義批判の視座を提示する、5人の論客による、過激にしてまっとうな討論!

すが秀実「あとがき」より:本書で出されている諸「異論」は、決して、現在の多様な反原発運動や、それを準備・組織してきた、あるいは、直接的には無関係な、これまでのさまざまな運動の存在を単純に斥けるものではない。また、今後の運動を、一意的に方向づけようとしているわけでもない。われわれは、運動し組織してきた者を基本的に尊敬しているし、今後もそうであろう。また、われわれ自身、何らかの「現場」に向かうことが、三・一一以前からもあったし、これからもあるだろう。ただ、繰り返せば、小泉も討議で言っているように、議論の「厚み」と「蓄積」が、運動と組織には必要だと考えているということである。そのために、われわれのあいだの討議も、相互の「異論」の交差となっているはずである。

目次:
吶喊〔とっかん〕と屈託――「座談会」を呼びかけるために(長原豊)
第I部 座談会
 基調報告(市田良彦)
 座談会(市田良彦×王寺賢太×小泉義之×すが秀実×長原豊)
  反原発の現在と過去
   反原発・脱原発の内実
   反原発という「大きな物語」
   マルチチュードは出現するのか/したのか
   左翼文化は継承されるか
   脱原発はコンセンサスか
   反原発か脱原発か
   反原発はラディカル・デモクラシー?
   原発労働者の組織化
   自己権力による現闘本部の設置
  反原発と社会運動
   吉本『「反核」異論』を読む(1)社会主義の理想化
   吉本『「反核」異論』を読む(2)第三世界論の欠如
   脱原発とエコロジー
   エコロジーとニューエイジ
   吉本『「反核」異論』を読む(3)反核と反原発
  反原発と復興の展望
   非常事態と戦争機械
   例外状態とガンに対する戦争
   超管理・相互監視・優生思想のスウェーデン・モデル
   災害ユートピアは出現したか
   セキュリティを敵に回した戦い
   リスク社会論・保険概念の失効
   セキュリティvs自由
   人質にとられた命と健康
   絶対的自由と共産主義
  反原発から反資本主義へ
第II部 論考
 震災、原発、右往左往(王寺賢太)
 「どれだけ」に縛られる人生(小泉義之)
 「太陽の塔」を廃炉せよ(すが秀実)
 ノマドでいるために――原則的な、あまりに原則的な(長原豊)
あとがき(すが秀実)

★先週後半に発売になったばかりの新刊です。そのイカツイ書名にたじろがずに読んでみれば、実に興味深い本です。露悪的に言えば「サヨクのオッサンたちがなにやら長時間アツく放談してる」ということなのかもしれませんが、オッサンたちの言うこともたまにはじっくり聞いてみるもんだぜ、と強く言わねばなりません。議論の底に一貫して流れている主張は「反資本主義」です。そのために今まで体を張り、筆を執ってきたポスト団塊の世代4人から溢れる気迫。そしてなぜかお一人だけ団塊ジュニアの王寺さんが参加していることで、後続世代からの補足が担保できているかもしれません。

★編集担当は文芸書を幅広く手掛けるAさん。そして航思社のOさんのお名前が見えます。Oさんと言えばかつてA出版社やA書店にいらっしゃった方ですね(イニシャルじゃ全然分からないか)。航思社という会社の名前は初めて知りましたが、創業が今夏(2011年7月)で、書籍の企画・出版・販売、組版・校閲などを請負っておられるようです。所在地やその他から推察するに5年前に廃業されたアテネ書房さんと同じ住所で運営されていらっしゃるご様子※。アテネ書房の元従業員のN(Y)さんや、先述のOさんなど、複数の方でお仕事をされているようです。N(Y)さんもまた、Oさんと同じくA書店(アテネ書房ではありません)にお勤めでした。A書店で何が起きたのか、ご存知の方はご存知でしょう。航思社さんは10年代の出版社として今後ますます活躍の場を広げられるに違いありません。

※【追記:2011年11月23日】航思社さんが「アテネ書房さんと同じ住所」というのは私の勘違いだったようです。航思社さんのご指摘によれば、「アテネ書房の住所は本郷1-1-1で、航思社(本郷1-25-28)とは異なっているけれど、ウェブではとりあえずの連絡先として航思社のものを記した」とのことでした。訂正させていただきます。
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by urag | 2011-11-20 23:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 14日

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍

先日の哲学・思想編に続きまして、芸術・文芸編です。

★森山大道さん(写真集:『新宿』『NOVEMBRE』『新宿+』『大阪+』『ハワイ』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『On the Road』)
デビュー作『にっぽん劇場写真帖』が講談社から新装復刊されました。親本は1968年に室町書房より刊行されたもので、1995年に新潮社から復刊されたことがあります。

にっぽん劇場写真帖
写真:森山大道
文:寺山修司
講談社 2011年10月 本体2,600円 新書判285頁 ISBN978-4-06-217434-3

版元紹介文にあるように、本書は「写真・森山大道×文・寺山修司という二人の才能がぶつかり合った森山大道の伝説的デビュー写真集」です。同書と同じく新書版で刊行された講談社さんの森山写真集には以下のものがあります。親本ないし先行する版も書き添えておきます。『A HUNTER 狩人』(2011年6月/中央公論社1972年)、『71 NEW YORK』(2011年2月/PPP Editions, 2002)、『NAKAJI』(2010年1月/『仲治への旅』蒼穹社1987年)、『Sao Paulo』(2009年10月/タカイシイギャラリー+月曜社2008年)、『BEUNOS AIRES』(2009年7月/講談社2005年)、『Light & Shadow 光と影』(2009年4月/冬樹社1982年)。また、以下の展覧会がビームス・ジャパン新宿のB GALLERYにて明日から開催されます。トークショーも予定されています。

◎森山大道展「PAPERBACK'S/DAIDO MORIYAMA
日程:2011年11月15日(火)~12月4日(日)11:00~20:00 ※会期中無休、12/1(木)~4(日)のみ11:00~20:30
場所:B GALLERY(ビームス・ジャパン新宿、6F)
入場料:無料

◎トークショー「森山大道 トークショー」
ゲスト:町口覚(デザイナー)/仲本剛(写真集プロデューサー)
日時:2011年11月27日(日)15:00~16:30
場所:B GALLERY(ビームス・ジャパン新宿、6F)
予約定員制:先着30名様、ご予約はB GALLERY(電話03-5368-7309)まで


★菱田雄介さん(写真集:『ある日、』PLACE M)
飯沢耕太郎さんとの共著『アフターマス』がNTT出版より刊行されました。菱田さんが震災後にSPBSより緊急出版された写真集『hope/TOHOKU』も収録されています。

アフターマス――震災後の写真
飯沢耕太郎+菱田雄介著
NTT出版 2011年10月 本体2,200円 A5判155頁 ISBN978-4-7571-7045-2
帯文より:記録すること、記憶すること。10年後、100年後の東北へ。アフターマスは終わらない。写真家たちの仕事も終わらない。撮り続け、プリントし、さまざまな媒体に発表していく行為もずっと続いていく。


★大友良英さん(著書:『ENSEMBLES』)
8月15日に開催された福島での野外フェスをめぐるドキュメンタリー『クロニクルFUKUSHIMA』が青土社より刊行されています。

クロニクルFUKUSHIMA
大友良英著(共著:宇川直宏、遠藤ミチロウ、木村真三、坂本龍一、丹治博志・智恵子・宏大、森彰一郎、和合亮一)
青土社 2011年9月 本体1,600円 四六判326頁 ISBN978-4-7917-6627-7
帯文より:未来は自分たちの手で切り拓く。放射能が降り積もった故郷・福島で、ポジティブな未来図を描いてゆくために、音楽家・大友良英が「福島をあきらめない」仲間たちとその可能性を語り合った魂の記録。対話と日記でたどる3.11の絶望から8.15の奇跡まで。新しいFUKUSHIMAがはじまる。

また、今週16日に予定されているニューヨーク大学での福島をめぐる講演や、17日から始まるニューヨークでの「without record」展などについては、大友さんのブログ「JAMJAM日記」2011年11月14日付のエントリー「without records in New York」をご参照ください。


★大里俊晴さん(著書:『マイナー音楽のために』『ガセネタの荒野』)
今月(2011年11月)23日発売のCD+DVD BOX「タカラネタンチョトタカイネ」を記念して以下のイベントが開催されます。

◎大里俊晴三回忌&CD+DVD BOX発売記念「第五回公魚企画 マイナー音楽祭2011
日時:2011年11月18日(金)19:00開場/19:30開演
会場:UPLINK FACTORY(東京渋谷)
料金:¥1,800(ドリンク付き/予約できます)※UPLINK会員は¥1,600(1ドリンク付)
ゲスト:ECD、AYUO、工藤冬里、園田佐登志、竹田賢一、ジュネほか
司会・企画:公魚(ポチョ☆ムキンコ[高橋智子]、柿野ぱち子[渡邊未帆])
協力:米本電音研究所
予約方法は上記リンク先に記載されています。


★本橋哲也さん(訳書:スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
新著『深読みミュージカル』が青土社から刊行されました。

深読みミュージカル―― 歌う家族、愛する身体
本橋哲也著
青土社 2011年10月 本体2,200円 四六判300頁 ISBN978-4-7917-6624-6
帯文より:未来を切りひらく歌とドラマの力。『サウンド・オブ・ミュージック』『ジーザス・クライスト・スーパースター』から『ライオン・キング』まで。代表的名作の魅力を現代文化の力学のなかで読み解く、愛と知と葛藤の本格的ミュージカル論。


★西山雄二さん(訳書:『ブランショ政治論集』、デリダ『条件なき大学』)
西山さんが監督されたドキュメンタリー映画『哲学への権利』の上映会の記録や、参加された国際会議の報告などが以下の通りアップされています

2011/10/28-30 国際会議「フクシマ以降の人文学」
この国際会議では、本橋哲也さんや廣瀬純さん、今福龍太さんなど、弊社出版物の著訳者の方々が参加されました。

2011/10/29 ロンドン大学バーベック・カレッジ
上記国際会議の第二部で『哲学への権利』が上映され、酒井直樹さん、コスタス・ドゥージナスさん、ゴーリ・ヴィシュワナタンさんなどが出席。コメンテーターは宮﨑裕助さん。

2011/10/31 ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ
国際会議の翌日に別会場で開催された上映会の様子です。アレクサンダー・ガルシア・デュットマンさんや宮﨑裕助さんが、西山さんとともに登壇され、発言されています。

2011/11/4 オックスフォード大学訪問記
国際会議後の旅の記録ですが、教育現場(修士課程)のリポートもあります。

イギリスの書店巡りなど
ロンドンとオックスフォードの本屋さんの紹介記事。ウォーターストーン書店、フォイルズ書店、ドーント書店、オックスフォード大学出版売店、ブラックウェル書店など。シャーロック・ホームズ博物館や、キングストン・カレッジでのロドルフ・ガシェさんの講演会へのコメントもあり。ちなみに弊社ではロドルフ・ガシェさんのオリジナル論文集を近く「エクリチュールの冒険」第二回配本として刊行する予定です。


★レーモン・クノーさん(著書:『オディール』)
先月(2011年10月)より、水声社さんから「クノー・コレクション」が刊行開始になっています。第1回配本は、久保昭博訳『地下鉄のザジ』(第10巻)と、本邦初訳となる中島万紀子訳『サリー・マーラ全集』(第11巻)。全13巻の詳細は以下の通りです。刊行記念イベントも現在計画中だそうです。

第1巻『はまむぎ』久保昭博訳
第2巻『最後の日々』宮川明子訳
第3巻『リモンの子どもたち』塩塚秀一郎訳
第4巻『きびしい冬』鈴木雅生訳
第5巻『わが友ピエロ』菅野昭正訳
第6巻『ルイユから遠くはなれて』三ツ堀広一郎訳
第7巻『文体練習』松島征ほか訳
第8巻『聖グラングラン祭』渡邊一民訳 第二回配本
第9巻『人生の日曜日』芳川泰久訳
第10巻『地下鉄のザジ』久保昭博訳 第一回配本
第11巻『サーリ・マーラ全集』中島万紀子訳 第一回配本
第12巻『青い花』新島進訳
第13巻『イカロスの飛行』石川清子訳

なお、第二回配本は先月28日発売済、第8巻『聖グラングラン祭』。毎月1点ずつ刊行予定だそうです。『聖グラングラン祭』の巻末広告によると、第三回配本は第2巻『最後の日々』宮川明子訳。宮川さんは弊社のクノー『オディール』の訳者でもあります。

『レーモン・クノー・コレクション』全巻を今年年末(2011年12月31日)までに予約すると「もれなく非売品のレーモン・クノー『100兆の詩篇』をプレゼント」とのこと。これはすごい。この非売品は「1行ずつバラバラに組み合わせることができる10篇のソネ(14行詩)で、つまり10の14乗=100兆通りの組み合わせが可能な、一冊あれば一生涯楽しめること請け合いの、クノーファン必携・垂涎の作品です。詳しくは内容見本をご覧のうえ、付属の応募ハガキにてご予約下さい」と告知されています。

弊社ではクノーのエッセイ集を今後刊行する予定です。詳細が決まり次第、お知らせいたします。

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by urag | 2011-11-14 11:34 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 11日

11.11.11.11., Urara, Naha

本日2011年11月11日午前11時に、那覇市は牧志公設市場のお向かいに「市場の古本屋 ウララ」が開店しました。店主は人文書業界では有名なUさん。J堂書店池袋店で長らく人文書担当を務められ、その後、同書店那覇店でオープニングスタッフとして人文書売場を担当されていました。twitterではどなたかが「東大卒クールビューティー孤高のアナーキスト」と紹介されていましたね。ここまできらびやか(?)なプロフィールだと、Uさんを知らない方は、なんだか近寄りがたい女傑が店の奥にどーんと腕を組んで身構えているんじゃないか、等々と想像されると思うのですが、そんなことはないです。クールには見えるかもしれませんけど、シャイで繊細で、誠実な方です。Uさんは「「ウララ」は狭いながらに2つの部屋に分かれています。広いほうが沖縄本のコーナー、狭いほうは文芸、思想、芸術などいろいろあります。特にアナーキズムに力をいれているわけではありません。何かお探しの場合は、お声がけください」とつぶやいておられます。

店舗はつい先日まで「日本一狭い古本屋」として営業していた「とくふく堂」さんです。私も6年前に「頑張れ! 極狭書店とくふく堂(那覇市)」などとエラそうな記事を書いたことがありました。まさかそのとくふく堂さんの後釜に、自分の見知っている書店員さんが入るとは想像もできませんでした。開店までの経緯はウララ公式ブログに書かれています。また、外観についてはREVEALさんのブログの11月7日付エントリー「ざっくりとした1週間!」などをご覧ください。新しい看板を取り付けている模様の写真が載っています。

今夜は22時から金城小町さんのライブが開催。「椅子はほとんどなく、室内でもありません。路上ライブのつもりでお越しください。入場は無料です。本も見ていただけたら幸いです」とのことです。また、「13日の日曜日は、本をお買い上げのお客様に小さなお菓子をさしあげる企画があります」とも。東京は冷たい雨が降っていますが、市場前は清々しい息吹に満ちた風が吹いているに違いありません。
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by urag | 2011-11-11 16:26 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 07日

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍

弊社出版物の著者や訳者の方々の最近のご本についてご紹介します。まずは哲学・思想系から。ネグリにせよ、アガンベンにせよ、ヴァッティモにせよ、イタリア現代思想がこのところ続いています。後日、文学・芸術系のご紹介もアップします。

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★アントニオ・ネグリさん(『芸術とマルチチュード』著者)
水声社よりまもなく『スピノザとわたしたち』が発売されます。

スピノザとわたしたち
アントニオ・ネグリ著 信友建志訳
水声社 2011年11月 本体2500円 46判上製214頁 ISBN978-4-89176-855-3

帯文より:この現代を《スピノザ的》に組成せよ! スピノザという異形の運命に立ち戻り、その批判的/転覆的意味、および彼によって先取りされた《共》の哲学を、現代思想に布置するための最もラディカルなガイダンス。訳者によるアクチュアルな解説を付す。

原著:Spinoza et nous, traduit de l'italien par Judith Revel, Galilee, 2010.

目次:
序章 スピノザとわたしたち
第一章 スピノザ――内在性と民主制の異端
第二章 力能と存在論――ハイデッガーかスピノザか
第三章 スピノザ政治思想の展開におけるマルチチュードと個別性
第四章 スピノザ――情動の社会学

「成功への希望は反乱の傾向を生じさせる」(信友建志)

『転覆的スピノザ』(未訳、イタリア語原著1992年Pellicani刊)以降に書かれたテクスト四篇を収録。巻末の訳者解説によれば、序章第一節は『野生のアノマリー』「日本語版への序文」と内容が重複し、第二章は部分的に「スピノザの反近代」(『別冊情況 68年のスピノザ』)と重複しているとのことです。現時点では本書のイタリア語版は刊行されていません。ネグリはスピノザについて長年繰り返し論じています。それはたとえ哲学論文でも、内容は私たち現代人への「呼びかけ」であり、ひとつひとつを政治的パンフレットとして読み直すこともできます。ネグリからの再三の呼び掛けの努力によって、彼のオルタナティヴな政治哲学の読者層がじわじわと広がりつつあることは喜ばしいことに思えます。

ネグリさんの訳書は今後、青土社から『政治家デカルト』、作品社から『戦略の工場――レーニンを超えるレーニン』が刊行予定と予告されています。なお、『スピノザとわたしたち』の担当編集者Sさんは先月、柿谷浩一編『日本原発小説集』というアンソロジーも担当されています。現在では「入手困難」という5篇の作品を収録(井上光晴「西海原子力発電所」、清水義範「放射能がいっぱい」、豊田有恒「隣りの風車」、野坂昭如「乱離骨灰鬼胎草」、平石貴樹「虹のカマクーラ」)。巻末には今年『福島原発人災記――安全神話を騙った人々』(現代書館、4月)と『原発と原爆――「核」の戦後精神史』(河出ブックス、8月)を上梓された 川村湊さんの解説「原発小説論序説」が収録されています。

水声社ではつい最近、『完訳版サド全集』(全11巻)の第4回配本となる第6巻『恋の罪、壮烈悲惨物語』(私市保彦・橋本到訳)を発売されました。なんと、実に13年ぶりの配本。また、先月から「レーモン・クノー・コレクション」を刊行開始されましたが、弊社でもクノーは刊行していますので、また別の機会にあらためてご紹介します。


★ジョルジョ・アガンベンさん(『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』著者)
平凡社さんから先月と今月、立て続けに新刊が出ています。先月は『開かれ――人間と動物』(岡田温司・多賀健太郎訳)が平凡社ライブラリーで刊行され、今月は単行本で『裸性』(岡田温司・栗原俊英訳)が発売予定。前者は周知の通り、同社から2004年に刊行された単行本の文庫化で、今回あらたにライブラリー版の訳者あとがきが追加されています。後者はタイトルから推察して2009年にノッテテンポから刊行されたものの翻訳。待望のシリーズ「イタリア現代思想」の第1回配本。上記2点をいずれも翻訳されている岡田温司さんの『アガンベン読解』も今月発売予定。岡田さんは今月、ナツメ社から刊行された新刊『「聖書」と「神話」の象徴図鑑――西洋美術のシンボルを読み解く』を監修されており、さらに18日発売の岩波新書で著書『デスマスク』も刊行されます。


★上村忠男さん(アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』共訳者、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』共訳者、パーチ『関係主義的現象学への道』編訳者)
法政大学出版局さんより先月、訳書が刊行されました。ジャンニ・ヴァッティモの初の単著訳となる『哲学者の使命と責任』です。

哲学者の使命と責任
ジャンニ・ヴァッティモ(Gianni Vattimo: 1936-)著 上村忠男訳
法政大学出版局 2011年10月 本体2800円 四六判上製200頁 ISBN978-4-588-00965-5

帯文より:哲学にはなすべきことがたくさんある。イタリアの碩学ヴァッティモによる思想エッセイ。哲学は即効性こそないにしても、長い目で見れば社会の変革に寄与しうるはずであり、それも哲学の負うべき責任のひとつだと主張。彼が「弱い思考」を提唱するに至る経緯とその意義を論じたダゴスティーニの解説付き。 

原著:Vocazione e responsabilità del filosofo, Il Nuovo Melangolo, 2000.

目次は長くなるので、上記の書名にリンクを張ってある版元サイトの単品ページをご参照ください。それにしてもヴァッティモほどの有名な哲学者の訳書がこれまでなかったというのは意外ではあります。その昔、未來社のポイエーシス叢書の刊行予定でデリダとヴァッティモの共編著『宗教について』がエントリーされていた時期もありました。今回の新刊の帯文にもある「弱い思考」というのは哲学だけでなく建築論などにも影響を与えている重要な思潮です。法政大学出版局ではその原典となるヴァッティモ+ロヴァッティ編『弱い思考』(原著は83年フェルトゥリネッリ刊)を刊行予定で、『哲学者の使命と責任』に予告が載っています。

弱い思考
G・ヴァッティモ+P・A・ロヴァッティ編
上村忠男+山田忠彰+金山準+土肥秀行訳

目次:
弁証法、差異、弱い思考 (ヴァッティモ)
経験の過程でのさまざまな変容 (ロヴァッティ)
反ポルフュリオス (U・エーコ)
現象を称えて (G・カルキア)
弱さの倫理 (A・ダル・ラーゴ)
「懐疑派」の衰退 (M・フェッラーリス)
ハイデッガーにおけるlucus a (non) lucendoとしての開かれ=空き地 (L・アモローゾ)
ウィトゲンシュタインと空回りする車輪 (D・マルコーニ)
雪国に「城」が静かにあらわれるとき (G・コモッリ)
フランツ・カフカのアイデンティティなき人間 (F・コスタ)
社会の基盤および計画の欠如 (F・クレスピ)

ご覧の通り、興味深い論考がズラリと並んでいます。この中の何人かは、平凡社さんの「イタリア現代思想」にも登場するのではないかと予想できそうです。なお、弊社では、上村さんの編訳による『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学――スパヴェンタ・クローチェ・ジェンティーレ』を刊行予定であり、さらに未來社の「西谷社長日録」(2011年10月28日付)によれば、上村忠男監訳・イタリア思想史の会訳『イタリア版《マルクス主義の危機》論争――ラブリオーラ、クローチェ、ジェンティーレ、ソレル』という企画が進行しているようです。

それにしてもここしばらくの法政大学出版局の新刊のラインナップはすごいですね。9月にバーナード・クリック、ルーマン、リオタール、エメ・セゼールときて、10月には上記の『哲学者の使命と責任』のほかに、ハンス・ブルーメンベルク『コペルニクス的宇宙の生成(III)』(座小田豊+後藤嘉也+小熊正久訳)や、シモーヌ・ヴェイユ『前キリスト教的直観――甦るギリシア』(今村純子訳)が出ましたし、11月はエティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック『動物論――デカルトとビュフォン氏の見解に関する批判的考察を踏まえた、動物の基本的諸能力を解明する試み』(古茂田宏訳)が出て、ムーア『倫理学』などが新装復刊され、12月にはついにヒュームの『人間本性論(2)情念について』(石川徹+中釜浩一+伊勢俊彦訳)や、イヴォン・ベラヴァル『ライプニッツのデカルト批判(上)』(岡部英男+伊豆藏好美訳)が発売予定だそうです。

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★中山元さん(ブランショ『書物の不在』訳者)
全7巻の新訳、カント『純粋理性批判』の第6巻が9月に光文社古典新訳文庫で刊行され、いよいよ完結が近づいてきました。これまでの刊行ペースを踏襲するとすれば、最終巻となる第7巻は来年1月に刊行されるはずです。『純理』の新訳としては今月、作品社より熊野純彦訳全1巻がついに刊行されます。また、e-honや7ネットの予告では、中山さんの次なる新訳本として「日経BPクラシック」シリーズより『資本論――経済学批判 第一巻』が全4分冊が今月刊行開始となっています。まず第1巻が28日に発売。底本はマルクス生前の1867年4月に唯一刊行された第1巻とのこと。

なお、光文社古典新訳文庫の11月新刊にはプラトン『メノン――徳について』(渡辺邦夫訳)が予告されています。昨年12月に刊行された中澤務訳『プロタゴラス――あるソフィストとの対話』に続く、プラトン新訳第二弾ですね。今後も新訳が続いてほしいと念願しています。
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by urag | 2011-11-07 15:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 06日

まもなく発売:2011年11月新刊より

大森荘蔵セレクション 
大森荘蔵著 飯田隆・丹治信春・野家啓一・野矢茂樹編
平凡社ライブラリー 2011年11月 本体1700円 HL判並製496頁 ISBN978-4-582-76748-3

帯文より:哲学するとはこういうことだ! 物も過去も、じかに立ち現れる――戦後日本の最もオリジナルな哲学=大森哲学の、最強の編者による、最良の入門アンソロジー。巻末に4人の解説座談会!
カバー紹介文より:私たちが見ているのは、物からの刺激が脳に作用して出来上がった「像」ではない。物はじかに立ち現われているのだ。――この国の戦後が持つことのできた最もオリジナルな哲学、対面する者に考えることを挑発してやまない強靭な思考、哲学とは歌うものではなく語るものだとした平明かつ鮮やかな文章――そのもとで学んだ四人の哲学者が、大森哲学のエッセンスを、その思考の軌跡を鮮明に示す論考を編む。最良のアンソロジー!

目次:【 】内は初出ないし初収単行本
はじめに(野家啓一)
I
夢まぼろし 【流れとよどみ】
記憶について 【流れとよどみ】
真実の百面相 【流れとよどみ】
心の中 【流れとよどみ】
ロボットの申し分 【流れとよどみ】
夢みる脳、夢られる脳 【流れとよどみ】

II
哲学的知見の性格 【講座哲学大系(1)哲学そのもの】
他我の問題と言語 【哲学雑誌第83巻755号】
言語と集合 【言語・知覚・世界】
決定論の論理と、自由 【言語・知覚・世界】
知覚の因果説検討 【言語・知覚・世界】
知覚風景と科学的世界 【言語・知覚・世界】

III
ことだま論――言葉と「もの‐ごと」 【物と心】
科学の罠 【物と心】
虚想の公認を求めて 【物と心】

IV
過去の制作 【時間と自我】
ホーリズムと他我問題 【時間と自我】
脳と意識の無関係 【時間と存在】
時は流れず――時間と運動の無縁 【時は流れず】
「後の祭り」を祈る――過去は物語り 【時は流れず】
自分と出会う――意識こそ人と世界を隔てる元凶 【朝日新聞96年11月12日】

初出・所収単著・底本
解説座談会――大森哲学の魅力を語る(飯田隆・丹治信春・野家啓一・野矢茂樹)
大森荘蔵主要著作

★今週木曜日10日取次搬入と聞いています。戦後の日本哲学界を代表する巨人、大森荘蔵(1921-1997)さんの著書の、初めてのハンディなアンソロジー集です。これまでに刊行されている文庫では、単独著では『知の構築とその呪縛』(ちくま学芸文庫、1994年)、対談では『対談 日本語を考える』(大野晋ほか、中公文庫、2002年)や『音を視る、時を聴く』(坂本龍一、ちくま学芸文庫、2007年)、翻訳では『青色本』(ウィトゲンシュタイン、ちくま学芸文庫、2010年)があります。今回のアンソロジーは岩波版『大森荘蔵著作集』全10巻を底本とし、この哲学者の主要著作からエッセンスとなるテクスト群を一冊に集めています。編者を務めるのは大森さんの弟子にあたる四名の先生方。野家さんは「はじめに」と第IV部の前口上、丹治さんは第I部の前口上、飯田さんは第II部の前口上、野矢さんは第III部の前口上を、それぞれ書かれています。解説座談会は話が師をめぐるものだからでしょうか、皆さんの言及を拝読していると、青年のような生き生きした感じと、弟子同士の考え方の違いと、師の享年に少し近づいていく実感のような印象が混ざった空気が感じられて、まさにその様子が大森さんの存在の「大きさ」を想像させて興味深いです。

★私は収録論文中では「ことだま論」に強く惹かれます。「すべての立ち現われはひとしく「存在」する。夢も幻も思い違いも空想も、その立ち現われは現実と同等の資格で「存在」する」。〔…〕そしてこの〔立ち現われの〕組織は固定したものではなく、絶えず再編成され絶えず揺動するものである。この組織は「真理」や「実在」の観点から組織された組織ではなく、生きるために賭けられた実践的組織であり、この生きんがための組織が「真理」とか「実在」とか呼ばれるのである。真理や実在によって生きるのではなく、生き方の中で真理や実在が選別的に定義されるのである。その定義はそれゆえ気まぐれや知的興味からなされる定義ではなく、命を賭け、生活がかかった定義なのである。だから、生き方が変れば真理や実在も変りうる」(293-294頁)。おそらく出版という営みは、そうした賭け(様々な賭け)がぶつかり合う文化戦争なのではないかと私は思うのです。

★平凡社ライブラリーでは、本書と同時にクロポトキン『ある革命家の思い出(下)』(高杉一郎訳)が発売されます。周知のように本書は岩波文庫から上下巻で刊行されていましたが、現在は品切重版未定。ライブラリー版では下巻にロシア文化研究の重鎮である中村喜和さんによる解説が付されています。 今後のライブラリーの哲学系続刊予定の中にはさらに目を瞠るような書目があります。内輪話で耳にしただけなので公開できませんが、古典ものであるとだけ書いておきます。すごく楽しみ。

★また、まもなく発売となる同社の東洋文庫の最新刊は坂井弘紀訳『ウラル・バトゥル――バシュコルト英雄叙事詩』になります。「ウラル・バトゥル(勇士ウラル)」はロシア連邦・ウラル地方のテュルク系民族バシュコルト(バシキール)に伝わる英雄叙事詩です。訳者解説によれば、この叙事詩の「主要なテーマは「死との戦い」である。ウラルは、死を倒し、永久の命をもたらす「命の泉」を手にするための旅に出る。死と戦うことは可能か、死から逃れ、永遠に生きることはできるか、生きることの意味とは何かを問う」とのことです。本書では「ウラル・バトゥル」の異本や、「イゼルとヤユク」「アクブザト」などの作品も収録されています。なお東洋文庫ではこれまで、テュルクの口承文芸作品は『ナスレッディン・ホジャ物語』『マナス』『デデ・コルクトの書』が刊行されています。東洋文庫の次回配本は来月12月、『インドの驚異譚(2)』です。

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世界の探検大百科
英国王立地理学協会編  荒俣宏訳・日本語版監修 
東洋書林 2011年11月 本体15000円 B4変型判360頁 ISBN978-4-88721-795-9 

帯文より:そう、幾人もの越境者が人類史を塗り替えてきたのだ!
カバーソデ紹介文より:古代のヴァイキングやギリシア・ローマ時代のアレクサンドロス大王による大遠征、あるいはシルクロードを経由しての交易や大航海時代における東方・西方ルートの開拓、そして現代のエヴェレスト登山、海洋探査や宇宙ステーション構想といったテクノロジーの枠を極めた挑戦などの、人類が行ってきたありとあらゆる「探検旅行」をここに集大成!100組に迫る古今東西の探検隊の詳細を、180本超のコラム、およそ80点の経路図、約900点もの写真図版をもって、明解に紹介する。
推薦:「探検の真髄と現在性に迫る美麗な大著」(須藤健一・国立民族学博物館長)、「連綿と続く、人類の勇気と希望の歴史」(椎名誠・作家)。

★まもなく店頭発売開始。全頁カラーで非常に美しいです。原著は"Explorers: Great Tales of Adventure and Endurance"(Dorling Kindersley, 2010)。古今の「探検家たち」の足跡を紹介しています。北極や南極に挑んだ者も紹介されています。日本人は登場しませんがいずれの人物も興味深い人々です。ほとんどは男性で、女性はごく少数。冒険家というのはそれぞれに野望を持っています。未踏の地へとやむにやまれぬ情熱を傾けた人物もいれば、海賊もいましたし、残虐な征服者もいました。盛者必衰の移ろいの中で、世界がどんなふうに踏査されていったのかを見渡せる、感慨深い本です。

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営業と経営から見た筑摩書房
菊池明郎著
論創社 2011年11月 本体1600円 四六判並製204頁 ISBN978-4-8460-1077-5

帯文より:在籍40余年の著者が筑摩書房の軌跡を辿る。1971年に筑摩書房に入社した著者は、80年に更正会社として再スタートする際の営業幹部となり、99年には社長に就任する。営業も経営も、出版の大事な仕事なのだ。新しい出版理念として時限再販を提言する!!

★まもなく店頭発売開始。小田光雄さんによるインタビュー・シリーズ「出版人に聞く」の第7弾です。筑摩書房の会長である菊池明郎(きくち・あきお:1947-)さんの貴重な体験談が満載です。意外だったのは入社のエピソード。ICUの学生だった菊池さんは平凡出版(マガジンハウス)、文藝春秋、平凡社、筑摩書房の入社試験にすべて落ちて就職が決まらなかったところへ、筑摩に受かっていた別の人間が内定を蹴って欠員になったために採用されたのだとか。出版界に強い憧れがあったわけでもないそうで、そんな自分がいずれ社長になるとは思いもしなかった、と。70年代の営業部の様子も非常に興味深く、以後こんにちへと続く道のりは苦難と波乱に満ちています。私が生まれて間もない頃から業界に生きてこられたわけで、私のような下っ端にも丁寧に接して下さる菊池さんがどんな風に仕事をされてきたのか、本書で初めて知ることばかりなのでした。シリーズの中でもっとも親近感を覚えながら読むことができる本、という印象です。

★今春(2011年3月)、筑摩選書の新刊として二点同時発売された、和田芳恵『筑摩書房の三十年 1940-1970』(ISBN978-4-480-01515-0)と、永江朗『筑摩書房それからの四十年 1970-2010』(ISBN978-4-480-01517-4)はいわば「正史」ですが、本書はそこに盛り切れなかった話を掲載しています。この三冊は今年一緒に読まれるべきではないかと思います。さらに参考文献を挙げるとすれば、菊池さんと同様に社長を務められた編集者の柏原成光(1939-)さんの『本とわたしと筑摩書房』(パロル舎、2009年)、名物編集者の松田哲夫(1947-)さんの『編集狂時代』(本の雑誌社、1994年;新潮文庫、2004年)、名物営業マンの田中達治(1950-2007)さんの『どすこい出版流通――筑摩書房「蔵前新刊どすこい」営業部通信1999-2007』(ポット出版、2008年)などでしょうか。

★『営業と経営から見た筑摩書房』と一緒に写真に収めたのは、先月刊行された『本 TAKEO PAPER SHOW 2011』(株式会社竹尾編、平凡社刊)です。カバーに記載されている紹介文によれば「紙に定着された「物体としての本」の魅力を伝えるビジュアル・コンセプト・ブック。本と人との関わりをビジュアルで綴る「人間と本」。識者78名が選んだ本と、エッセイ78本。紙の本の未来と、本のデザインの可能性を展望する」と。毎年開催されているTAKEO PAPER SHOWですが、今年は震災の影響で10月20日から11月4日までの間にひらかれました。書店店頭でもブックフェアが展開されており、現在も続行中。こちらで最新情報を確認できます。昨年は「電子書籍元年」などと騒がれましたが、来年はいよいよアマゾンがキンドル・ファイアをひっさげて日本で電子書籍販売を本格展開しそうな勢いです。そんな中で「物体としての本」「紙の本」について問いを掘り下げてみることは、出版人にとって非常に身近で重要なことです。このコンセプト・ブックは背を見ると三冊の本に見えますが、実際に開いてみると一冊の本としてくっついています。弊社発売の『表象』のデザインを手掛けられている東京ピストルの加藤賢策さんや、弊社刊『ブラジルのホモ・ルーデンス』の著者である今福龍太さんも寄稿されています。

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by urag | 2011-11-06 23:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)