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2011年 10月 30日

2011年10月~11月の注目新刊

◆「未知谷」さんから今月、ヨハン・ゲオルク・ピンゼルの彫刻作品写真集『ピンゼル』が発売されました。ピンゼル(Jan Jerzy Pinzel, Johann Georg Pinsel:1707?-1761?)は18世紀半ばにウクライナ(旧ポーランド・リトアニア共和国)で活躍した彫刻家で、本書では図版97点が収録されています。その個性的で美しい作品群は1960年代に、本書の編者である美術史家のボリス・ヴォズニツキ(1926-)により蒐集され修復されました。あれほどの名作でありながら、驚くべきことに、日本では本書が初めての作品集になるのですね。それどころか、世界的にもほとんど前例がなく、2008年にウクライナの出版社Hrani-Tが刊行した『Іоанн Георг Пінзель : Перетворення : скульптура』(ISBN9789662923346)を数える程度のようです。ウェブサイト「ウクライナへようこそ」に掲載された関連記事「ピンゼル、18世紀の謎の彫刻家」(英文)などをご参照ください。「未知谷」さんは今年で創業21年。最初に出版されたのは1991年10月、ヘーゲル『法権利の哲学』とサド『ジュスチーヌ物語又は美徳の不幸』の2点の新訳で、読書界に鮮烈な印象を刻印されました。『ピンゼル』は同社の「刊行20年」記念企画です。同社では今月、パウル・シェーアバルトの『虫けらの群霊』という訳書も発売されました。スズキコージさんが挿絵と装幀を手掛けられており、シェーアバルトによる奇譚もさることながら、造本も強烈なヴィジュアルになっています。

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◆「未來社」さんは今年、創業60周年を迎えられ、記念として来月(2011年11月)には西谷能英社長の『出版文化再生――あらためて本の力を考える』と社史『ある軌跡』60年版を刊行されます。『出版文化再生』はPR誌「未来」の連載「未来の窓」をテーマ別に再構成した大著(A5判540頁)。連載は1997年3月号から15年にわたって掲載され、このたび11月号の176回目をもって最終回を迎えました。まさか連載が終わるとは思いもよらず、びっくりしました。社史『ある軌跡』は非売品ですが、希望者は直接購入が可能になると聞いています。現在「未來社60周年ブックフェア」が、紀伊國屋書店札幌本店、丸善丸の内本店で開催されており、11月1日からは紀伊國屋書店新宿本店でもスタートするそうです。

◆「青土社」さんの月刊誌「現代思想」は、池上善彦さんのあとをついで新編集長となった栗原一樹さんの体制下で、先週発売された11月号「ポスト3・11のエコロジー」をもって1周年を迎えられました。偉大な先達のあとで看板を背負っていくというのはたいへんな苦労だと拝察します。11月号には弊社刊『初期ストア哲学における非物体的な理論』の訳者・江川隆男さんの論考「気象とパトス――〈分裂分析的地図作成法〉 の観点から」や、弊社近刊『カヴァイエス研究』の著者・近藤和敬さんが司会を務める討議「生存のエコロジー」(中村桂子+遠藤彰+大村敬一+近藤和敬)などが掲載されています。個人的には村澤真保呂+ステファン・ナドー「「腸の哲学」序説」をたいへん興味深く拝読しました。いくつかのきっかけがあって何年か前から蛇神について集中的に勉強していた折、ユングの『クンダリニー・ヨーガの心理学』(創元社、2004年)や、福土審さんの『内臓感覚――脳と腸の不思議な関係』(NHKブックス、2007年)を読んで、「内なる蛇」について自分なりに考えてきたので、この『腸の哲学』(単行本は洛北出版さんより刊行予定)には非常に惹かれるものがあります。なお11月号に掲載された青土社さんの「今月の新刊」によれば、中村朝子さんの個人全訳『パウル・ツェラン全詩集』全3巻の新訂版が遠からず刊行されるようです。

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◆江藤淳(1932-1999)さんの生誕80周年を目前にして、2冊の本が中央公論新社さんから発売されました。『文学と非文学の倫理』と『江藤淳1960』です。前者は60年代から80年年代にかけて計五回発表された、江藤さんと吉本隆明さんの対談。「編集後記」によれば、「いずれの対談もそれぞれの単著に収録されているが、共著の対談集としてすべてを網羅するのは初めて」とのことです。全五回の初出をご参考までに掲げておくと、「文学と思想」(「文藝」66年1月号)、「文学と思想の原点」(「文藝」70年8月号)、「勝海舟をめぐって」(勁草書房版『勝海舟全集 第14巻』70年10月刊)、「現代文学の倫理」(「海」82年4月号)、「文学と非文学の倫理」(「文藝」88年冬季号)。後者はアンソロジー集。中央公論編集部による特別編集版で、版元紹介文によれば「安保闘争ドキュメント、大江健三郎論を中心に、批評家・江藤淳の政治と文学に焦点を当てるポレミカルなアンソロジー。吉本隆明、石原慎太郎のインタビュー、柄谷行人・福田和也対談など」。再録ではない新しいコンテンツは吉本隆明さんのインタビュー「江藤さんについて」と、石原慎太郎さんのインタビュー「江藤は評論家になるしかなかった」、の2篇。江藤さんの人となりを知る上で非常に興味深い同時代の証言です。本アンソロジーの「編集後記」には「本書は批評という闘争を生きた人間の精神のドキュメントである」とありますが、まさに若い世代にとって格好の導入部となる一書ではないでしょうか。

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★「ミシマ社」さんの創業5周年の佳節に、代表の三島邦弘さんの『計画と無計画のあいだに――「自由が丘のほがらかな出版社」の話』が河出書房新社さんから刊行されました。同業者の体験談というのは酒の席ならいざ知らず、文字になったものを読むのは「同時代ゆえに鏡のように怖い」という感覚があるのですが、担当編集者のAさんに薦められて現在拝読中です。また、朝日出版社さんから刊行された國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』も拝読中です。大著『スピノザの方法』(みすず書房、2011年)に続く著書第2弾。担当編集者のAさんは、河出のAさんと同様、私が尊敬してやまない大先輩です。2人のAさんのお仕事から私がどんなことを学んできたか、書き出すときりがありません。2冊の新刊のこと、そして2人のAさんのことはいつかまた書きたいと思います。なお、三島さんと國分さんの本のそれぞれの刊行記念として、以下のイベントが予定されています。

11月2日(水)ヌワラエリヤ
三島邦弘×村井光夫(ナナロク社)「このインディー出版社が熱い!

11月12日(土)ミシマ社京都オフィス
三島邦弘×尾原史和(プランクトン)「寺子屋ミシマ社 特別編

11月20日(日)オリオン書房ノルテ店
三島邦弘×島田潤一郎(夏葉社)「本をつくる 出版社をつくる

11月5日(土)リブロ池袋本店 
國分功一郎×千葉雅也「〈人間であること〉の再設定――世界、環世界、社会

11月19日(土)ジュンク堂新宿店 
國分功一郎×白井聡「贅沢、浪費、マルクス!――新しい「自由の王国」に向かって

11月25日(金)ビブリオテック 
國分功一郎特別ゼミナール「いかにして自らに快楽を与えるか?

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by urag | 2011-10-30 23:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 28日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2011年10月25日(火)オープン
文教堂書店新札幌DUO店:250坪(図書200坪;文具50坪)
北海道札幌市厚別区中央2条5-6-2 DUO1 4F
帳合はN。弊社へのご発注は写真集主力商品。今月(2011年10月)2日までは「丸善ら・があーる新札幌DUO店」が営業。同じDNPグループからの後継店となります。

2011年11月12日(土)リニューアルオープン
ジュンク堂書店仙台店:570坪
宮城県仙台市青葉区中央3-6-1 仙台TRビル B1F
帳合はT。弊社へのご発注は芸術書と文芸書を少々。先日、新生「仙台イービーンズ店」(1200坪)のご紹介の折に書きましたが、震災により、旧イービーンズ店はしばらく休業し、一部をTRビルに移転して「仙台店」として営業。この「仙台店」が増床リニューアルされることになったわけです。この旧「仙台店」からは新生「イービーンズ店」に専門書が移管されると聞いていましたが、新「仙台店」でもまったく専門書売場がなくなるというわけでもないようです。新「仙台店」は文芸、文庫、芸術書が中心とのことですが、ジュンク堂さんの挨拶状では、人文・社会・教育・理工・PCなども商品構成の内に含まれています。「仙台ロフト店」ではコミック・実用・児童書を拡張するとのことですが、490坪あるお店ですので、新「仙台店」と同様に、文芸・文庫・芸術書もやはり商品構成に含まれています。

仙台市内は丸善や紀伊國屋書店、あゆみブックスなどが競合する激戦区なので、ジュンク堂が支店を2店舗から3店舗に増やすというのは思い切った決断だと思います。
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by urag | 2011-10-28 16:29 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 28日

書影公開:近日発売、サンドラール『パリ南西東北』

ブレーズ・サンドラール『パリ南西東北』(昼間賢訳、本体2,600円)の書影を公開します。取次搬入日は当初の10月20日から遅れて、11月1日となりました。11月2日以降順次、書店店頭に並び始めます。置いてありそうな本屋さんについてのお尋ねは、コメント欄からもお寄せいただけます。よろしくお願いいたします。

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by urag | 2011-10-28 15:42 | 近刊情報 | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 25日

まもなく発売:佐々木中『砕かれた大地に、ひとつの場処を(アナレクタ3)』

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砕かれた大地に、ひとつの場処を(アナレクタ3)
佐々木中(1973-)著
河出書房新社 2011年10月 本体2,000円 46判上製248頁 ISBN978-4-309-24564-5

帯文より:「何という恥辱か。この恥辱はあがなわなければならない。」テクストを繊細に紡ぎ出す手仕事から、震災を経て革命と民主制の根源的な問いへ。狂熱とユーモアを同時に携えた、統治の〈藝術〉〔アルス〕をめぐる強靭かつ寛容なる思考の轍。震災直後の発言を集成!

目次:【 】内は初出情報。初掲載などの特記は帯に記載されたもの。
明視が目廢〔めし〕いる【『すばる』2011年2月号】
胸打たれて絶句する他ない抵抗と闘争の継続――中井久夫『日本の医者』を読む【「図書新聞」2011年1月15日】
文学と藝術(対談|磯崎憲一郎×佐々木中)【初掲載;2011年1月15日、朝日カルチャーセンター新宿教室】
政治とは「論証」 雄弁の技藝〔アート〕が必要【「朝日新聞」2011年1月26日朝刊】
紀伊國屋じんぶん大賞2010 受賞の辞【2011年1月15日】
私の本は安易な希望の書ではない【「サンデー毎日」2011年1月30日】
これは〈文学〉ではない――Absolute/Self Rrfference twin-engine(対談|円城塔×佐々木中)【初掲載;2011年2月5日、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店】
「夜の底で耳を澄ます」(二〇一一年二月六日、京都Mediashopにおける講演)を要約する十二の基本的な註記【初掲載】
書きながら考える【初掲載;2011年2月14日、朝日カルチャーセンター新宿教室における朝吹真理子氏との対談より、佐々木中氏の発言のみ収録】
反時代的であることを恐れるな(対談|安藤礼二×佐々木中)【初掲載;2011年2月24日、三省堂書店神田神保町本店】
ATARU SASAKI Philosopher, Novelist【「みる花椿」2011年5月号】
「思想」を語る(対談|佐藤江梨子×佐々木中)【「VOGUE JAPAN」2011年4月号】
それでも「何故」を生きる――中島敦「悟浄出世」「悟浄歎異」【「本の時間」2011年4月号】
ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル 春の推薦図書特集!【初活字化;「TBSライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」2011年3月19日収録】
砕かれた大地に、ひとつの場処を――紀伊國屋じんぶん大賞2010受賞記念講演「前夜はいま」の記録【2011年4月15日、紀伊國屋サザンシアター・第81回紀伊國屋サザンセミナー】
屈辱ではなく恥辱を――革命と民主制について――二〇一一年四月二八日、地下大学での発言【再編集完全版;2011年4月28日、素人の乱12号店】


★「アナレクタ」シリーズ第三集。河出さんの公式情報では10月27日発売となっていますので、早いところではおそらく今日明日あたりから書店店頭に並び始めるのではないかと思われます。2011年に発表されたテクスト、対談、インタビュー、講演録などが収録されています。佐々木さんの息遣いをより近くに感じるのはやはり各種対談。朝吹さんとの対談は佐々木さんの発言のみを収録しており、当日聴講した方にしか空白(つまり朝吹さんの発言)を正確には埋められないでしょうけれど、これはこれで空想する余地があって面白いです。サトエリさんとの対談はなぜか佐々木さんが相手を下の名前で呼び捨てにしていて「このスケベめ」と嫉妬できるのもまた味わいというもの(これは悪口じゃないですよ)。……安藤さんとの対談での言及では「佐藤江梨子さん」とお呼びになっておられますけど(という補足はどうでもいいか)。ちなみに安藤さんとの対談の最後で、佐々木さんがドゥルーズの仕事を「古いものとの新しい関係を創った」と端的に評価していらっしゃいますが、それは佐々木さん自身の仕事にも当てはまると私は思っています。出版業もまた「古いものとの新しい関係を創る」仕事であり続けたいものです。

★「文藝」誌2011年秋号で発表されていた小説第二作目『しあわせだったころしたように』の単行本は11月8日発売予定。市川真人さんとの対談「小説を書くことは、誰でもない誰かになる冒険だ」は、「文藝」誌2011年冬号に掲載されています。
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by urag | 2011-10-25 23:39 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 23日

2011年10月の注目新刊

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文化人類学
松村圭一郎(1975-)著
人文書院 2011年10月 本体1,800円 4-6判並製228頁 ISBN978-4-409-00107-3

帯文より:人類学の夢と情熱を伝える希望への30冊。

目次:(本書に記載されている版元名を追加)
第1部 人類学の確立
モーガン『古代社会』岩波文庫
フレイザー『初版 金枝篇』ちくま学芸文庫
マリノフスキー『西太平洋の遠洋航海者』講談社学術文庫
モース『贈与論』ちくま学芸文庫
ベネディクト『文化の型』講談社学術文庫
ミード『サモアの思春期』蒼樹書房

第2部 人類学理論の深化
ファース『価値と組織化』早稲田大学出版部
レヴィ=ストロース『野生の思考』みすず書房
ダグラス『汚穢と禁忌』ちくま学芸文庫
サーリンズ『石器時代の経済学』法政大学出版局
ベイトソン『精神の生態学』新思索社
ブルデュ『実践感覚』みすず書房
ゴドリエ『観念と物質』法政大学出版局

第3部 民族誌の名作
エヴァンズ=プリチャード『アザンデ人の世界』みすず書房
リーチ『高地ビルマの政治体系』弘文堂
ルイス『貧困の文化』ちくま学芸文庫
ターンブル『ブリンジ・ヌガク』筑摩書房
ギアツ『ヌガラ』みすず書房
スミス、ウィスウェル『須恵村の女たち』御茶の水書房

第4部 批判と実験の時代
クラパンザーノ『精霊と結婚した男』紀伊國屋書店
フェルド『鳥になった少年』平凡社
マーカス、フィッシャー『文化批判としての人類学』紀伊國屋書店
クリフォード、マーカス編『文化を書く』紀伊國屋書店
ロサルド『文化と真実』日本エディタースクール出版部
 
第5部 新世紀の人類学へ
ラトゥール『虚構の近代』新評論
レイヴ、ウェンガー『状況に埋め込まれた学習』産業図書
ラビノー『PCRの誕生』みすず書房
アパデュライ『さまよえる近代』平凡社
アサド『世俗の形成』みすず書房
グレーバー『価値の人類学理論に向けて』以文社(近刊)

★「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」の最新刊です。明日24日取次搬入。次回配本は伊藤恭彦『政治哲学』を予定。第5部が特に興味深いですね。理系と文系が出会う領域はなかなか人文書売場に置かれませんし、人類学の応用的成果も棚ではなかなか取り込みきれていませんから、本書に挙げられた30冊とその参考文献をチェックすれば、棚の構成に益するところがあるのではないかと思います。

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釜ヶ崎のススメ
原口剛(1976-)+稲田七海(1975-)+白波瀬達也(1979-)+平川隆啓(1979-)編著
洛北出版 2011年10月 本体2,400円 四六判並製400頁 ISBN978-4-903127-14-9

帯文より:日雇い労働者のまち、福祉のまち、観光のまち……このまちから学ぶ、生き抜くための方法。

目次:
序章 釜ヶ崎という地名(原口剛)
イラスト 釜ヶ崎、いまむかし(ありむら潜)
第1章 建設日雇い労働者になる(渡辺拓也)
コラム 「子」――この子たちがいるから日本は大丈夫(荘保共子)
第2章 釜ヶ崎の日雇い労働者はどのように働いているのか(能川泰治)
コラム 「音」――トタン(SHINGO★西成)
第3章 釜ヶ崎の住まい(平川隆啓)
地図のススメ (1)~(6) (水内俊雄)
第4章 釜ヶ崎の歴史はこうして始まった(加藤政洋)
第5章 ドヤと日雇い労働者の生活(吉村智博)
コラム 「酒」――しんどさ、酒、のぞみ(村松由起夫)
第6章 日雇い労働者のまちの五〇年(海老一郎)
コラム 「老」――釜ヶ崎の葬儀と納骨問題――Sさんという日雇い労働者の生き様を通して(川浪剛)
第7章 騒乱のまち、釜ヶ崎(原口剛)
コラム 「信」――〈ボランティア(善意)〉への戒め――〈愛する〉ことよりも〈大切にする〉ことを(本田哲郎)
第8章 失業の嵐のなかで(松繁逸夫)
第9章 釜ヶ崎の「生きづらさ」と宗教(白波瀬達也)
コラム 「芸」――いのちと表現(原田麻以)
第10章 変わりゆくまちと福祉の揺らぎ(稲田七海)
第11章 外国人旅行者が集い憩うまち、釜ヶ崎へ(松村嘉久)
ひきだしのなかの釜ヶ崎(水野阿修羅)
年表で見るまち
索引

★洛北さんが出す本なのですから、「釜ヶ崎」「あいりん」「西成」といった名前にまつわる面白半分の都市伝説の本などではありえません。一人歩きする伝説の断片的情報に対する解毒剤として本書をお薦めします。とは言っても、ありのままの現実にはもちろん厳しい側面もあるわけなので、その意味では本書はこの街の美化や漂白や無毒化を目指すことなく、地域に住む人々の生きざまの歴史を掬い取ろうとする試みなのです。この本自体に鼓動や熱を感じます。書き手や編集者に誘われて、読者もまた街角に立っているような読後感があります。

★折しも今月は、井上理津子(1955-)著『さいごの色街飛田』(筑摩書房、ISBN978-4-480-81831-7)が刊行され、酒井隆史(1965-)著『通天閣――新・日本資本主義発達史』(青土社、ISBN978-4-7917-6628-4)もまもなく発売と聞きますから、「大阪フェア」を企画する書店さんもいらっしゃるかもしれませんね。弊社の森山大道写真集『大阪+』は残念ながら品切。


白人の歴史
ネル・アーヴィン・ペインター著 越智道雄訳
東洋書林 2011年10月 本体4,800円 A5判上製504頁 ISBN978-4-88721-794-2

帯文より:「黒人女性が書いた人種論」――そんなステレオタイプの言葉で本書の真価を掬い取ることはできない。有史時代の美から出発し、優生学、進化論、奴隷・移民問題を呑みこみながら、ホワイト・アメリカンという茫漠たる疑問符の果てを照射する「人種なる概念」の形成史。世界はなぜ規定され、どう切り分けられてきたのか?

目次:
第1章 ギリシア人とスキタイ人
第2章 ローマ人、ケルト人、ガリア人、そしてゲルマン人
第3章 白人奴隷
第4章 理想の美女としての白人奴隷
第5章 科学としての白人の美貌概念
第6章 ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハ、白人を「カフカス人」と命名
第7章 ジェルメーヌ・ド・スタールのドイツ学習
第8章 初期のアメリカ白人観察記
第9章 最初の移民ラッシュ
第10章 ラルフ・ウォールドー・エマスン
第11章 イギリス的特性、あるいは『英国の印象』
第12章 アメリカ白人の歴史のおけるエマスン
第13章 人類学のアメリカ学派
第14章 アメリカ白人の範疇、再び拡大す
第15章 ウィリアム・Z・リプリーと「ヨーロッパ諸人種」
第16章 フランツ・ボアズ、異議申し立てる
第17章 ローズヴェルト、ロス、そして人種的自殺
第18章 退行的家系の発見
第19章 退行的家系から断種へ
第20章 新移民の知能検査
第21章 大いなる不安
第22章 人種の坩堝は挫折か?
第23章 人類社会学――異人種の科学
第24章 人種の科学への論駁
第25章 新たな白人種政治
第26章 アメリカ白人の範疇、三度拡大す
第27章 黒人の民族自決主義と「ホワイト・エスニック」
第28章 アメリカ白人の範疇、四度目の拡大
訳者あとがき
原註
参考文献
図版出典
索引

★人種の視点から見たアメリカ史の大著です。昨春、ノートンから刊行されたものの訳書。著者はプリンストン大学名誉教授であり、米国史の専門家です。本書を「こんにち」の米国の状況に沿ってどう読むかについては、訳者の越智先生が詳しくあとがきで示唆されており、有益です。弊社刊、ポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』もあわせてお薦めします。
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by urag | 2011-10-23 21:16 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 17日

平凡社さんの10月新刊2点

平凡社さんの今月の新刊の中から本日発売ともなく発売となる、計二点をご紹介します。

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西郷信綱著作集 第6巻 文学史と文学理論I 詩の発生 
平凡社 2011年10月 本体9000円 A5判上製504頁 ISBN978-4-582-35710-3
帯文より:文学は、詩は、いかに発生したのか? 発生期に即して詩の本質を探りあてながら、文学にとっての古代の意味を見定め、文学史の視座を測定する、西郷古典学の凝集と飛躍!『増補 詩の発生』と関連論文を収録。解説=龍澤武

全9巻のうち、折り返しとなる第5回配本です。平凡社さんのtwitterを拝見する限りで推測すると、本日が発売日なのではないかと思います。『増補 詩の発生――文学における原始・古代の意味』のほか、「柿本人麿ノート」「宮廷女流文学の開花」「国引き考」など9篇が収められています。月報には、松本昌次さん、風巻融さん、日暮聖さんが寄稿。次回配本(第6回)は来年1月予定、第二巻です。

◎西郷信綱著作集(全9巻)
第1巻「記紀神話・古代研究I 古事記の世界」本体9000円、2010年12月刊(第1回配本)、ISBN978-4-582-35705-9 解説=三浦佑之
第2巻「記紀神話・古代研究II 古代人と夢」次回配本
第3巻「記紀神話・古代研究III 古代論集」本体9000円、2011年06月刊(第4回配本)、ISBN978-4-582-35707-3 解説=大隅和雄
第4巻「詩論と詩学I 萬葉私記・古代の声」本体9000円、2011年02月刊(第2回配本)、ISBN978-4-582-35708-0 解説=阪下圭八
第5巻「詩論と詩学II 梁塵秘抄・斎藤茂吉」未刊
第6巻「文学史と文学理論I 詩の発生」本体9000円、2011年10月(第5回配本)、ISBN978-4-582-35710-3 解説=龍澤武 
第7巻「文学史と文学理論II 日本古代文学史」本体9000円、2011年04月刊(第3回配本)、ISBN978-4-582-35711-0 解説=秋山虔
第8巻「文学史と文学理論III 古典の影」未刊
第9巻「初期論考・雑纂」未刊

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インドの驚異譚1 10世紀〈海のアジア〉の説話集
ブズルク・ブン・シャフリヤール著 家島彦一訳
平凡社 2011年10月 本体3200円 全書判上製470頁 ISBN978-4-582-80813-1
帯文より:インド洋世界で活躍したムスリム航海者が蒐集した驚異(アジャーイブ)に満ちた162の説話をアラビア語写本から世界で初めて翻訳。イスラーム海域交流史の第一級の史料。第1巻は82話までと解説を付す。

東洋文庫の第813弾。全2巻予定。間もなく発売開始です。船乗りたちが集めた説話のためか、人魚や巨大魚、化け蟹、島ほどもある大亀、巨鳥、大蛇、海上での怪奇現象などエピソードが満載。いずれもシンプルな伝説なので、現代の読者を怖がらせるようなものではありませんが、話し手によっては当時はかなりの恐怖心を聞く者に呼び起こしたことでしょう。次回配本は11月、『ウラル・バトゥル』が予告されています。

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また、平凡社さんでは今月、岡田温司『アガンベン読解』(本体2400円、四六判224頁、ISBN978-4-582-70341-2)や、アドルノ+ホルクハイマー『ゾチオロギカ』(三光長治+市村仁+藤野寛訳、本体3200円、四六判352頁、ISBN978-4-582-70276-7)も刊行される予定のようです。版元紹介文によれば、前者は「9のキータームからラディカルな思想の核心に肉迫、政治的・美学的側面を総合的に論じる」もの。後者は「戦後、アメリカ亡命から帰国したアドルノとホルクハイマーが、ドイツ観念論哲学の伝統と、アメリカ流の実証主義と精神分析との批判的統合、新たな社会学の可能性を論じる」。かつてイザラ書房さんからも、同名の訳書(アドルノ『ゾチオロギカ――社会学の弁証法』三光長治+市村仁訳、イザラ書房、1970年)が出ていましたね。イザラ版ではアドルノの論文全6編のみを訳出していましたが、今回の平凡社版ではホルクハイマーの6篇をも収録して完訳本を出すのだろうと推測できます。【10月18日追記:平凡社さんからいただいた情報によれば、『アガンベン読解』と『ゾチオロギカ』は11月刊行に延期となったそうです。】
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by urag | 2011-10-17 23:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 17日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

2011年11月18日(金)リニューアル・オープン
ジュンク堂書店仙台イービーンズ店:図書1200坪
宮城県仙台市青葉区中央4-1-1 仙台駅前イービーンズ
帳合はT。弊社へのご発注は芸術書メイン商品と文芸書を少々。二次発注が今後来るのかもしれない。ジュンク堂の工藤会長と岡社長のお名前が記された挨拶状によれば、概況は以下の通り。東日本大震災での被災により休業していた「イービーンズ」が耐震改修工事を経て来月リニューアルオープンの予定。テナントであるジュンク堂は900坪から1200坪へ増床して再出店します。なお、震災後に仙台TRビル(ヤマダ電機)の地下1階に移転したジュンク堂書店仙台店では今後「一般書を中心とした品揃えに変更し、専門書ジャンルについてはイービーンズ店へ移管し展開する」とのことです。仙台でのジュンク堂の展開を再整理すると、「仙台ロフト店はコミック・児童書・実用書を中心としたファッショナブルな女性向けの店舗」になり、「仙台TRビルの仙台店は文芸・文庫・芸術などを中心とした一般書店」になり、「仙台イービーンズ店は地域最大の専門書を中心とした総合書店に生まれ変わ」る、ということです。同一市内に三店舗というのはジュンク堂で初めてのことではないかと思います。

2011年11月18日(金)オープン
リブロ福岡天神店:330坪
福岡県福岡市中央区天神2-5-35 岩田屋本店本館7階
帳合はN。弊社へのご発注は芸術書の売れ筋1点を平積用に。もう一点は人文書で開店フェア用にとご発注をいただきましたが、品切で出荷できず。リブロの新着情報によれば、同店のショップコンセプトは「本の広場で、世界と出会う」。「こだわりの品揃と上質なサービスで、リブロの次世代モデルとなるような店舗を創り、天神に集まる高感度で好奇心旺盛な読者・お客様に「最も愛される書店」を目指してまいります」とのことです。掲げられた5点の特色は以下の通り。

・九州一の絵本ゾーン「わむぱむ」
・ジャンル越境の独自編集で現代を表現する「Cartographia(カルトグラフィア)」
・デザインされたカジュアルライフを提案する本と雑貨の「Atelier Nouveau(アトリエ・ヌーヴォー)」
・新鮮な情報を随時発信するデジタルサイネージ「LIBRO Vision(リブロ・ヴィジョン)」
・経験豊富な専門スタッフ「コンシェルジュ」によるご案内サービス

「読売新聞」2011年9月22日付の記事「天神・岩田屋に「リブロ」、8年ぶり復活」によれば、「リブロは2003年9月に岩田屋から撤退しており、8年ぶりの復活となる。店名は「リブロ福岡天神店」で、店舗面積は1095平方メートル。〔…〕天神地区では1990年代以降、百貨店などに大型書店の進出が続いたが、競争激化を受けて相次いで撤退した」とあります。店舗面積を換算すると約330坪。大きさからすると、専門書を充実させるというところまではいかないかもしれませんが、その分、上記の特色にある通り、分野横断的な棚編集でコンパクトにまとめるということなのでしょう。1000坪超の大型店戦略との差別化として、重要だと思います。

【2011年10月25日追記】追加発注で、弊社人文書、芸術書、文芸書の主力商品24点をご注文いただきました。うち2点は品切で出荷できず。

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このほか、2011年10月21日(金)に「BIBLIOPHILIC & bookunion新宿」がオープンすると聞いています。発注があったかどうか未確認ですが〔追記:後日ご発注いただいたことを知りました〕、おそらく帳合はTyだろうと思います〔追記:後日Tyで間違いないと聞きました〕。「BIBLIOPHILIC」というのは、内沼晋太郎さんプロデュースと聞く「本のある生活を楽しむための読書グッズを提供するブランド」。これと、書籍販売専門のbookunionが合体した店舗が、ディスクユニオン新宿中古センターと同じフロアにオープンするとのことです。なお、bookunionの9月度の書籍販売ベスト10には、弊社7月刊の大里俊晴『ガセネタの荒野』が9位にランクインしたとのお知らせがありました。ありがたく、嬉しいです。
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by urag | 2011-10-17 16:45 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 16日

2011年9月~10月の注目新刊

9月は、出版界にとって秋の商戦のピークです。そのせいか、ここ最近までに、注目新刊が続々と刊行されておりますね。そのごくごく一部をかいつまんでみても、以下の書目が目にとまります。
『ゼロ年代の想像力』宇野常寛著、ハヤカワ文庫JA
『ポアンカレ予想』ジョージ・スピーロ著、ハヤカワ文庫NF
『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』マイケル・サンデル著、鬼澤忍訳、ハヤカワ文庫NF、11月24日発売予定
『純粋理性批判(6)』カント著、中山元訳、光文社古典新訳文庫
『ある革命家の思い出(上)』クロポトキン著、高杉一郎訳、平凡社ライブラリー
『開かれ――人間と動物』ジョルジョ・アガンベン著、岡田温司ほか訳、平凡社ライブラリー
『ナショナリズムは悪なのか――新・現代思想講義』萱野稔人著、NHK出版新書
『西洋哲学史(1)「ある」の衝撃からはじまる』神崎繁+熊野純彦+鈴木泉=責任編集、講談社選書メチエ
『大いなる神秘の鍵――エノク、アブラハム、ヘルメス・トリスメギストス、ソロモンによる』エリファス・レヴィ著、鈴木啓司訳、人文書院
『監視スタディーズ――「見ること」「見られること」の社会理論』デイヴィッド・ライアン著、田島泰彦ほか訳、岩波書店
『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』上下巻、ナオミ・クライン著、幾島幸子ほか訳、岩波書店
『ロールズ政治哲学史講義』全2巻、ジョン・ロールズ著、サミュエル・フリーマン編、齋藤純一ほか訳、岩波書店
『言説、形象』ジャン=フランソワ・リオタール著、合田正人監修、三浦直希訳、法政大学出版局
『コペルニクス的宇宙の生成(3)』ハンス・ブルーメンベルク著、座小田豊ほか訳、法政大学出版局
『哲学者の使命と責任』ジャンニ・ヴァッティモ著、上村忠男訳、法政大学出版局
『ニグロとして生きる――エメ・セゼールとの対話』エメ・セゼール著、フランソワーズ・ヴェルジェス聞き手、立花英裕ほか訳、法政大学出版局
正直なところ、己の経済力が追随しないのですね。素晴らしい本の数々に嬉しくもあり、悲しくもあり。ともあれ、上記に挙げていない書目の中から、いくつか特記しておきます。

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〈資本論〉入門
デヴィッド・ハーヴェイ(1935-)著 森田成也・中村好孝訳  
作品社 2011年9月 本体2,800円 46判上製549頁 ISBN978-4-86182-345-9
原書:A Companion to Marx's Capital, Verso Books, 2010.
帯文より:世界的なマルクス・ブームを巻き起こしているハーヴェイ教授の最も世界で読まれている入門書! グローバル経済を読み解く『資本論』の広大な世界へ!

一昔前のハーヴェイは地理学者としての成果である都市論や空間論がよく翻訳されていましたが、ここ最近はネオリベ批判、帝国批判など、彼のマルクス主義理論家としてのもっとも躍動的な部分が注目されていますね。作品社さんではこれまで彼の『新自由主義――その歴史的展開と現在』を出版されていますが、今回の『〈資本論〉入門』に続き、年内に『資本の謎』、来春に『コスモポリタニズム』を刊行する予定だそうです。

さらに作品社さんの近刊予定では以下の書目も告知されています。
『戦略の工場――レーニンを超えるレーニン』アントニオ・ネグリ著、中村勝巳ほか訳
『脱原発「異論」』市田良彦+王寺賢太+小泉義之+絓秀実+長原豊
『わが音楽的人生』バーンスタイン著、岡野弁訳
『純粋理性批判』カント著、熊野純彦訳
『危機とサバイバル』ジャック・アタリ著、林昌宏訳
『人間の終わり』ジグムント・バウマン著、高橋良輔訳
『枕詞の研究』三浦茂久著
『ヴァーグナー試論』アドルノ著、高橋順一訳

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震災に負けない古書ふみくら
佐藤周一(1948-)著
論創社 2011年9月 本体1,600円 46判並製190頁 ISBN978-4-8460-1074-4
帯文より:著者の出版人人生は取次でのバイトから始まった。その後、図書館資料整備センター、学校図書サービス(現TRC)、アリス館牧新社、平凡社出版販売へと本のこだわりは続き・・・郡山商店街に郷土史中心の古書ふみくらが誕生する。古い絵葉書のなかに福島の近代史が見える。
あとがきより:これからの古本業界先行きは不透明である。東北では震災を機にやめる書店も増えてきている。只、本は売れなくなったと嘆いても前には進まない。バブル時に売れたことは忘れないと前には進まない。売り場所が少なくなったと嘆くより、これから何を売るのかの算段をした方が少しでも前に進める。/この世界には、先人が残してくれた数百年の蓄積がある。形の有る物だけが本では無いはずだ。売る物を発掘しよう。古本屋という大半が零細企業でも、志は大きく持っていれば、少しは未来が開けるのではないかと、いつも自分に言い聞かせている。古本屋には時代を繋ぐ大きな役割もまだ残っている。(186-187頁)

小田光雄さん(1951-)のインタビューによる貴重なシリーズ「出版人に聞く」の第6弾です。小田さんの「出版状況クロニクル41(2011年9月1日~9月30日)」には、以下のように記されています。「シリーズは〈6〉として佐藤周一の『震災に負けない古書ふみくら』が9月下旬に出て、〈7〉として菊池明郎の『営業と経営から見た筑摩書房』が続く。また〈9〉として鈴木書店の元仕入部長小泉孝一の『鈴木書店の成長と衰退(仮題)』もインタビューを終えた。初めて語られる人文社会書専門取次の歴史であり、ご期待下さい。/先月のみすず書房の小尾俊人に続いて、今月は婦人画報社の本吉敏男、草思社の加瀬昌男、出版ニュース社の鈴木徹造の3人が鬼籍に入った。戦後の出版人が次々と亡くなっていく。/「出版人に聞く」シリーズも、古老にインタビューを広げていく方針をとるべきかもしれない」。この方針に心から賛同したいと思います。私たちのようなまだまだ若造の世代の出版人にとって、出版界のベテランの諸先輩のお話はかけがえのない証言と智慧に満ちています。特に引退された方々にはお話を伺いに行く機会もないですから、シリーズのますますの発展が私たち後進の者のいっそうの励みになるだろうと思います。

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アルノルト+ザルム『ベルリン 地下都市の歴史』(中村康之訳、東洋書林、2011年9月)は、『パリ 地下都市の歴史』(2009年9月)、『ニューヨーク 地下都市の歴史』(2011年7月)に続く、「メトロポリスの地底史」第三弾。今回は池内紀さんが解説を書かれています。パリやニューヨークに比べるとベルリンの地下都市はまだ若い印象がありますが、その分、モダニズムすら感じさせる空間ではあり、帯文に「伝説の「総統地下壕」はいかにして造られたか」とある通り、本書ではナチスの建築遺産の歴史をも振り返ることができます。

管啓次郎『コロンブスの犬』(河出文庫、2011年10月)は、1989年に弘文堂から刊行された著者の処女作の文庫化。より詳しく言うと、親本から「アラバマのチャイナグローヴ」と「対話によるエスノグラフィ」を削除し、港千尋さんの写真を随所に付したもの。本書の親本が刊行される前年、管さんはホノルルでジル・ラプージュの『赤道地帯』を翻訳されており、ご自身のデビュー作が大いに影響を受けたことを「文庫版あとがき」で明かされています。ただ、親本は当時「反響はまったくなかった」とのこと。ではつまらない本なのかというとまったくそうではなく、処女作特有の色あせない若々しさと瑞々しさ、そして読者を魅了する自由で開放されたヴァイブレーションを有する実に素敵なブラジル旅行記です。

『現代思想』2011年臨時増刊号「総特集=宮本常一――生活へのまなざし」は、没後30年に合わせたものでしょうね。影書房の松本昌次さんの談話「雑誌『民話』のことなど――宮本常一を読み継ぐために」が歴史的証言として特に興味深かったです。岩田重則さんの論考「宮本常一とクロポトキン」にも強い関心を持ちました。巻頭に佐野真一さんのエッセイ「「三・一一」以後――宮本常一を学ぶとき」は、題名だけ見ると、先の震災と民俗学者がどうつながるのか、つい身構えてしまいますが、やはり宮本さんのリヴァイヴァルの先達、さりげなく読者を宮本さんに寄り添わせてくれる温かい筆遣いでした。宮本さんと岡本太郎さん、深沢七郎さんの鼎談「残酷ということ――『日本残酷物語』を中心に」はもともと『民話』18号(1960年3月)に掲載されたもので、このたび再録されています。
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by urag | 2011-10-16 23:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 16日

土曜社の新刊第二弾、大杉栄『自叙伝』が好評発売中

土曜社さんの新刊第二弾、大杉栄『自叙伝』が先月ついに発売され、好評を博していると聞きます。同社では今春(2011年4月)、大杉栄『日本脱出記』を出版し、話題を呼びました。希代のアナキストのリヴァイヴァルに一役買ったこの本は重版するに至っています。この処女出版と同様、今回も、著者の甥にあたる大杉豊さんが略年譜や解説を手掛けておられます。『自叙伝』は大杉36歳の作(『日本脱出記』は38歳の絶筆)。かの有名な「上弦でありません」のエピソードはこの『自叙伝』に詳しいです。それにしても大杉栄はよく「刺され」ます。16歳の折には同期生に刺され、31歳の折にはとある女性に寝しなを刺されています。どちらも浅からぬ傷ですが、それを告白する大杉の筆はじつにあっけらかんとしたもの。カバーに「アナーキーな青春記の名著」と書かれていますが、まさにその通りです。破天荒で赤裸々で、長所も短所もすべて、読者を惹きつけてやみません。巻末の広告によれば、大杉の『獄中記』が2012年春に刊行予定とのことです。予価は『日本脱出記』『自叙伝』と同じく、本体952円。同社のブログではこの二作を置く書店さんの店頭写真やレポートがあり、ちょっとした書店巡りが楽しめます。現在217店舗で取り扱いがあるとか。小規模出版社にとってみれば、これはたいへんな営業努力です。

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by urag | 2011-10-16 21:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 15日

平凡社・中央公論新社・朝日出版社在庫僅少本フェア@紀伊國屋書店新宿本店

◎これで最後!?平凡社・中央公論新社+朝日出版社在庫僅少本フェア

紀伊國屋書店新宿本店にて現在好評開催中の「平凡社・中央公論新社在庫僅少本フェア」に、本日(2011年10月15日)から朝日出版社の僅少本も加わりました!3社ともに、「これが最後」になるかもしれない掘り出し物の貴重な品揃え。この機会是非、お見逃しなく!(「今こそ!人文書宣言」第24弾)

■場所:紀伊國屋書店新宿本店5階 人文書売場A階段前平台G20
■会期:開催中~10月31日(月)
■お問合せ:紀伊國屋書店新宿本店5階 03-3354-5700(直通)

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by urag | 2011-10-15 20:26 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)