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2009年 05月 31日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

これから開店する本屋さんで、弊社の本を扱ってくださる予定のお店を順次ご紹介しております。お近くにお越しの際はどうぞお立ち寄りください。

09年6月11日(木)
フタバ図書アルパーク店:図書500坪 
広島市西区草津南4-7-1 アルパーク北棟2F
アルパークは広島市西部地区最大を誇る商業施設。ここの新館としてオープンする「北棟」の2Fに、DVD/CDセルレンタルとカフェを含む1600坪の大型複合店として出店。「北棟」ではすでにシネコンなどが4月下旬にオープンしています。フタバ図書チェーンとしては50店舗目となるようです。

09年7月中旬
ジュンク堂書店難波店:1,300坪
大阪市浪速区湊町1丁目 マルイト難波ビルB1/3F
既存店のリニューアルではありません。大阪シティエアターミナル(OCAT)に隣接して7月にオープンする予定のマルイト難波ビル(地下1階地上31階)に、2フロア(B1および3F)展開で出店。同ビルでは食品スーパー(ライフ)やホームセンター(ダイキ)のほか、上層階(21-31F)にホテル(モントレ・グラスミア)が開業予定。4-6Fが駐車場、7-20Fがオフィスと聞きます。スーパーとホームセンターは1-2Fに入居するのでしょうね。現行の「難波店」はこの新難波店の開店にあわせ、「千日前店」と改称するとのこと。OCAT内5Fの丸善に強力なライバルが出現することになります。※6月6日追記:tadassanさんのご指摘により、B1-3Fの4フロアをスーパーおよびホームセンターと共有するのでは、という私の理解に誤りがあることが分かりましたので、上記コメントをアップデートしました。tadassanさんありがとうございました。
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by urag | 2009-05-31 22:21 | 販売情報 | Trackback | Comments(4)
2009年 05月 25日

トークセッション:「文化政治」は、もう終わったのか……?@ジュンク堂新宿店

◎トークセッション:「文化政治」は、もう終わったのか……?

日時:09年6月26日(金)、18:300~
会場:ジュンク堂書店新宿店 8階カフェ
料金:1,000円(1ドリンクつき)
受付:ジュンク堂書店新宿店7Fカウンターにて。電話予約は03-5363-1300まで。

09年6月中旬に松籟社から刊行される、市田良彦+ポール・ギルロイ+本橋哲也著/小笠原博毅編『黒い大西洋(ブラック・アトランティック)と知識人の現在』の出版記念イベント。同書では各著者がそれぞれの手がかりから、ポール・ギルロイの『ブラック・アトランティック』(月曜社)を読み解き、「文化」についての先鋭な議論が繰り広げられている。今回のトークセッションでは、本書の著者の一人である市田良彦と、『ブラック・アトランティック』の訳者の一人である上野俊哉をゲストスピーカーに招く。まず市田から、『ブラック・アトランティック』を、どういった手がかりをもとに、いかに読み解いたかが明かされる。対する上野は、市田への応答とあわせ、『ブラック・アトランティック』や今後紹介されるギルロイ氏の著作の重要性とインパクトについて語る予定。司会は本書編者の小笠原博毅。皆様のお越しをお待ちしております。

《講師紹介》
市田良彦(いちだ・よしひこ):1957年生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科教授。主な著書に『ランシエール』(白水社)、『闘争の思考』(平凡社)など。訳書にルイ・アルチュセール『哲学・政治著作集』(全2巻、共訳、藤原書店)、ポール・ヴィリリオ『速度と政治』(平凡社)などがある。

上野俊哉(うえの・としや):1962年生まれ。和光大学表現学部教授。主な著書に、『ディアスポラの思考』(筑摩書房)、『アーバン・トライバル・スタディーズ』(月曜社)など。訳書にポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』(共訳、月曜社)などがある。

《司会》
小笠原博毅(おがさわら・ひろき):1968年生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。主な著書に『サッカーの詩学と政治学』(共著、人文書院)、『よくわかるメディア・スタディーズ』(共著、ミネルヴァ書房)など。訳書にジェームス・プロクター『スチュアート・ホール』(青土社)などがある。

***
松籟社ウェブサイト「近刊のご案内」より

『黒い大西洋と知識人の現在』
市田良彦/ポール・ギルロイ/本橋哲也 著、小笠原博毅 編

2009年6月刊行予定
ジャンル:哲学・思想・社会学

『ブラック・アトランティック』の著者として知られ、カルチュラル・スタディーズやアフリカン・アメリカン研究をフィールドに、その独自のディアスポラ理論によって、近代〈知〉のパースペクティヴをラディカルに批判し、その刷新と組み替えに取り組んできたポール・ギルロイ。ジャック・ランシエールを手がかりとしながら、ブルースを「プロレタリアの夜」のうたとして聴き込み、解釈体系化された文化から引き剥がそうとする市田良彦。そして、ポストコロニアル批評が単なる翻訳産業によってパッケージ化された言葉の商品ではなく、世界を現実的に生きるための手段であることを訴え続けてきた本橋哲也。

本書には、この3者をパネリストに迎えて2007年10月神戸大学で開催された国際シンポジウム「ポストコロニアル世界と〈知識人〉──『黒い大西洋』からの声」の模様を収録。フロアで繰り広げられた「文化」をめぐる先鋭的な議論へと、読者をいざないます。
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by urag | 2009-05-25 16:40 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2009年 05月 25日

近刊チェック《知の近未来》:09年5月25日

先々月の話の続きをしなければならない。丸善、図書館流通センター(TRC)、ジュンク堂書店を次々に傘下におさめた大日本印刷(DNP)は、今月初旬に主婦の友社の筆頭株主となり、さらに中旬にはブックオフの筆頭株主にもなった。さすがに音羽(講談社)と一ツ橋(小学館・集英社)も黙過できなかったのだろうか(それとも出来レース?)、同様にブックオフの株主となったが、音羽や一ツ橋とDNPの関係が良好なのか緊張を孕んでいるのか、実際のところ外部からははっきりとは見えにくい。ただ、はっきりしているのは、来月には小学館と丸善の常務二名がブックオフの社外取締役になり、さらにDNPから社外監査役に就く人物がいるということだ。

09年5月13日付の「新文化」ニュースフラッシュの記事「講談社、小学館、集英社とDNPグループがブックオフ株式約30%を取得へ」によれば、ブックオフの株式取得の目的は、「二次流通も含めた出版業界全体の協力・共存関係を構築し、業界の持続的な成長を実現させていくため」とされている。いっぽう、千葉トーハン会総会の席上で、トーハンの山崎厚男社長は「ブックオフ株問題に言及し、懸念を示した」という(「文化通信」速報版、09年5月19日)。

それはそうだろう。トーハンは責任販売制を強力に推進しようとしている矢先であり、出版社の返品を減らし、新刊書店のマージンを増やすという大義を掲げているところへ、ほかならぬトーハンの大株主である講談社と小学館が、新刊書店の仮想敵と言っていいブックオフに手を伸ばしたのである。仁義を重んじるより現実への対応を選ぶという大手出版社の姿勢は取次マンたちにとっては想定内のことだったろうが、DNPの尋常ならざるな「勢力拡大」の影はもはや取次に手が届く一歩手前のところまで来ている。

今後のいくつかの可能性を概観してみよう。

DNP傘下となった主婦の友社はトーハンの大株主の一員である。ここでさらにDNPがトーハンの株式をさらに取得したい場合、旺文社、文藝春秋、新潮社、学習研究社あたりが持っているトーハンの株を狙うことがありえるかもしれない。だが、音羽と一ツ橋はまだDNPと対等でいたいはずだから、DNPが大手取次に手を出すのを黙って見ているはずはないだろう。実際のところ、DNPの初期目標は「天下三分の計」の達成にあるのかもしれない。音羽、一ツ橋、DNPで業界を動かす、という計画(そしてその計画の第一歩はブックオフを起点にしてすでに踏み出されただろう)。加えて三者のなかでも第一の強国たらんとするならば、DNPに今後必要なのは、「さらにもう一社、大手版元(上記の4社のような、あるいはどうせなら新聞やテレビメディアの関連企業系版元?)を飲み込むこと」と、「出版流通に大きなインパクトを起こしうる取次と手を組むこと」、この二点になるだろう。根回しはもうとっくに始まっているか、終わっているのかもしれない。

ブックオフの佐藤弘志社長は、5月22日の決算説明会でこう述べたそうだ。「公式の協議はまだ行っていないが、当社としては昨年から展開を始めた自由価格本コーナーの拡大などを期待する。これまでの実績では、半額の中古本より棚当りの売上げがよい」(「新文化」ニュースフラッシュ5月22日付「「自由価格本、拡大したい」ブックオフ・佐藤社長」)。別の記事では(「日経MJ」09年5月15日付「ブックオフ株取得、業界の異端児を容認も難しい舵取り」)、「株主となる大手出版社からも仕入れられれば「取引に及び腰だった他の出版社へも波及するのでは」(ブックオフの佐藤弘志社長)と期待」しているとも報道されている。

実際に自由価格本として承認する版元の数が増加し、さらに実店舗だけでなくブックオフオンラインでも自由価格本コーナーができたらどうなるのだろう。TRC傘下のオンライン書店bk1では時折自由価格本も扱ってきたわけなので、同じDNPグループの書店としてありえない話でもない。しかし、ブックオフオンラインに新刊を供給していると聞く太洋社にしてみれば、自由価格本のオンラインでの拡販は新刊販売を阻害しかねないから、面白い話ではないだろう。あるいはブックオフオンラインとbk1が商品調達ラインを統合するとしたらどうだろう。太洋社はbk1にも新刊を供給している。となると、あとは太洋社が新古書とりわけ自由価格本の扱いに積極的に乗り出せば、DNPや大手版元にとっては「御あつらえ向き」ということになろうか。大手取次のトーハンが融通を利かせないならば、中堅の太洋社がこの役割を担って他社を出し抜けるかもしれない。

あるいは、自由価格本専門流通の大阪屋商事(中堅取次・大阪屋の子会社)もろとも、DNPが大阪屋を飲み込み、結果的に、大阪屋と提携を深めつつある栗田をも飲み込む、という可能性はあるだろうか。ジュンク堂書店の多くは大阪屋帳合だし、大阪屋は取次第三位の地位にあるから、業界への影響力の及ぼし方としては悪くない。しかしやはり、そう簡単にDNPの新勢力の伸張を旧勢力である大手版元や二大取次(日販、トーハン)が許すはずはない。DNPが取次を傘下にしたいと思っているかどうか、そもそもその余裕が果たしてDNPにあるかどうかも、はっきりと断定できない。ただ、一般論として言えば、長引く出版不況は、業界再編を狙う勢力にとっては背中を押す時代の追い風としてまだまだ作用し続けるのではないか、とも思う。

補足1。ブックオフは再販指定解除の承認を版元から受け取った商品のみ、実店舗で現在販売しているが、これは「出版社から直接仕入れた」と報道されている(「日経MJ」09年4月17日付「自由価格本広がる、ブックオフなど出版社に「接近」、「時限再販」普及にらむ」)。しかし昨秋にはこうも報道されていた。「取次会社が書店からの返本で在庫として抱えている既刊本を仕入れて販売する」(「NIKKEI NET」08年9月4日付「ブックオフ「自由価格本」を販売、定価の半値に」)。この二つではかなりルートが異なるが、後者は諸般の事情で表向きは断念したものと思われる。その検証は後日に譲るほかない。

補足2。出版社にとっては自由価格販売は過剰在庫処分の切り札になるが、再販を解除するということは、一物二価を避けるために当該商品を早々に絶版にすることと表裏一体であらざるをえない。そうなると、自転車操業にますます歯止めがかからなくなる怖れがあるだろう。「もったいない」という大義のために、再販制の弾力的運用はいっそう図々しく正当化されかねない。出版事業が、予測しきれない偶然性にかける一種のギャンブル的側面を否定できないものだとは言え、本当に「もったいない」と問いかけるべきタイミングは、本を作った後ではなくて、作る前の前提の段階において存在するはずなのだが。

……さて、来月の新刊で気になったのは以下の書目である。

09年6月
01日『漱石 ホラー傑作選』長尾剛編 PHP文庫 580円
05日『格差が遺伝する!』三浦展 宝島SUGOI文庫 480円
10日『林達夫芸術論集』高橋英夫編 講談社文芸文庫 1470円  
10日『藤原道長「御堂関白記」(中)全現代語訳』倉本一宏 講談社学術文庫 1418円
10日『魔法昔話の研究:口承文芸学とは何か』V・プロップ 講談社学術文庫 1260円
10日『緑の資本論』中沢新一 ちくま学芸文庫 945円
10日『ゲームの理論と経済行動(2)』ノイマンほか ちくま学芸文庫 1680円
10日『シカゴ裏世界 貧困の経済学』ヴェンカテッシュ 日経BP出版センター 2940円
10日『萌えて☆覚える哲学入門』造事務所 大和書房 1470円
10日『沖縄戦 強制された「集団自決」』林博史 吉川弘文館 1890円
11日『道徳の系譜学』ニーチェ/中山元訳 光文社古典新訳文庫 未定
15日『賤民の異神と芸能:山人・浮浪人・非人』谷川健一 河出書房新社 2940円
16日『ポオ評論集』八木敏雄編訳 岩波文庫 735円
16日『創造者』ボルヘス/鼓直訳 岩波文庫 588円
16日『自由への道(1)』サルトル/海老坂武訳 岩波文庫 798円
17日『とけゆく地球』ジェームズ・バローグ 日経BP出版センター 1680円
17日『ムンダネウム』ル・コルビュジエ/ポール・オトレ 筑摩書房 2625円
19日『絶望裁判:平成「凶悪事件&異常犯罪」傍聴ファイル』中尾幸司 小学館 1575円
19日『わたし、麻原彰晃の娘です』桜のりか 徳間書店 1470円
22日『日本赤軍私史:パレスチナと共に』重信房子 河出書房新社 2625円
25日『御堂関白記藤原道長の日記』繁田信一編 角川ソフィア文庫 740円
25日『インターネットが死ぬ日』J・ジットレイン ハヤカワ新書juice 1400円
26日『一九八四年〔新訳版〕』オーウェル/高橋和久訳 ハヤカワepi文庫 903円

プロップ『魔法昔話の研究』(斎藤君子訳、講談社学術文庫)は、せりか書房から83年に刊行されていた『魔法昔話の起源』の文庫化のようだ【追記:書名は似ていたけれど、『研究』は『起源』の文庫化ではなかった。『研究』は『口承文芸と現実』の改訳&再編集版だった】。ロシアの民話研究の大家ウラジーミル・プロップ(1895-1970)の著作の文庫化は初めて。単独著の翻訳は上記のほか、これまでに以下の書目が刊行されている。『ロシアの祭り』(大木伸一訳、岩崎美術社、1966年)、『民話の形態学』(大木伸一訳、白馬書房、1972年)、『口承文芸と現実』(斎藤君子訳、三弥井書店、1978年)、『ロシア昔話』(斎藤君子訳、せりか書房、1986年)、『昔話の形態学』(北岡誠司+福田美智代訳、白馬書房〔水声社〕、1987年)。

スディール・ヴェンカテッシュ『シカゴ裏世界 貧困の経済学』(日経BP出版センター)は、彼のベストセラー『ヤバい社会学:一日だけのギャング・リーダー』(望月衛訳、東洋経済新報社、09年1月)に続く、日本語訳第二弾。ヴェンカテッシュはインド生まれの社会学者で、現在コロンビア大学教授。『ヤバい社会学』は、彼がシカゴの麻薬売人ギャングとともに過ごした日々を綴った赤裸々なノンフィクションだ。近刊の『シカゴ裏社会』ではやはりシカゴの貧困エリアにおける非合法地下経済を体当たりで取材し検証しているようだ。

ニーチェ『道徳の系譜学』(中山元訳、光文社古典新訳文庫)は、同文庫の『善悪の彼岸』に続く中山元新訳のニーチェ第二弾。中山さんの猛烈な生産力には本当に頭が下がる。このほかの今月の新訳ものは、上記の中ではオーウェル『一九八四年』とサルトル『自由への道』ということになるだろう。ボルヘス『創造者』は国書刊行会のものが親本と見た。八木敏雄訳『ポオ評論集』は『黄金虫・アッシャー家の崩壊』『ユリイカ』に続く、八木訳ポオ作品の岩波文庫第三弾。なおポーの新訳については、新潮文庫から先月、今月と、巽孝之訳で『ポー短編集』ゴシック編とミステリ編の全二巻が出ているのは周知の通りだ。

発売日未詳だが、6月新刊には以下の書目も見える。

『ワーキングプア時代』山田昌弘 文藝春秋 1400円
『デモクラシー以後』エマニュエル・トッド 藤原書店 3360円
『図説 20世紀テクノロジーと大衆文化』原克 柏書房 5040円
『ニンファ・モデルナ』G・ディディ=ユベルマン 平凡社 2500円
『美と倫理』キルケゴール 飯島宗孝+濱田恂子訳 未知谷 3000円
『1968』上下巻 小熊英二 新曜社 各7000円

なんといっても、小熊英二の新著に注目だろう。前著『民主と愛国』刊行からはや六年、次回作を心待ちにしていた読者は多いのではないか。五月末刊行と予告されていたが、少々刊行が伸びている様子。目次詳細は新曜社ウェブサイトで確認できる。

最後に、予定通りであれば月内に刊行される近刊の中から、二点のみ触れておこう。5月25日発売:マリオ・タッディ『ダ・ヴィンチが発明したロボット!――ダ・ヴィンチの謎を解く世紀の発見!』松井貴子訳、二見書房、3500円。5月28日発売:ミシェル・ヴィヴィオルカ『差異――アイデンティティと文化の政治学』宮島喬+森千香子訳、法政大学出版局、3000円。後者はシリーズ「サピエンティア」09巻。フランスの社会学者ヴィヴィオルカ(1946-)は近年ようやく訳書が出始めたから、日本での知名度は低いのかもしれないが、その重要性は知名度に完全に反比例していると言っていい。近刊の『差異』は、『レイシズムの変貌』(森千香子訳、明石書店、07年11月)、『暴力』(田川光照訳、新評論、07年11月)に続く三冊目の訳書になる。近接する研究領域でアルベール・メンミ(1920-)の著作が日本では半世紀前から訳されているのと比べると出版格差があったが、解消されることを期待したい。

さて、私は今回で「[本]のメルマガ」を卒業するけれど、この「近刊チェック」は今後も拙ブログ(ウラゲツ☆ブログ)で続けていくつもりだ。たまにブログを覗いてくださると嬉しい。メルマガの思い出はたくさんある。十年間というもの、けっして平坦な道のりではなかった。メルマガ読者と同人に、深い深いお礼を申し上げたい。そのほかに一言だけ許されるなら、「[本]のメルマガ」は今後いっそう読者とのダイレクトで密な交流を実践していってほしい。それが唯一の心残りでもある。「[本]のメルマガ」は情報誌ではなくて、少なくとも私の中では、運動体としての媒介作用を夢見ていたから。これまでに媒介しえたことの成果を今は語らない。明日の「[本]のメルマガ」を創るのは、読者のあなたであって欲しい。
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by urag | 2009-05-25 15:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback(1) | Comments(2)
2009年 05月 23日

高祖岩三郎×廣瀬純トークセッション@紀伊國屋書店新宿本店

◎高祖岩三郎×廣瀬純トークセッション「資本主義からの脱出――アナキズムとアサンブレア」

日時:2009年6月7日(日)16時~18時(予定)開場15時30分~
場所:紀伊國屋書店新宿本店9階特設会場
定員:30名(入場無料、お申し込み先着順)
※整理券等は発行しません。会場まで直接お越しください。
※当日混雑する場合は立見になる可能性もございますので予めご了承ください。
お申し込み先:紀伊国屋書店新宿本店5F人文書カウンター、またはお電話にて(03-3354-0131代表)。

内容:2009年3月以降、資本主義からの〈脱出〉を明確に見据えた理論書が立て続けに刊行された。その代表的なものとしては以下がある。

 ・高祖岩三郎『新しいアナキズムの系譜学』(河出書房新社)
 ・廣瀬純+コレクティボ・シトゥアシオネス『闘争のアサンブレア』(月曜社) 
 ・ジョン・ホロウェイ『権力を取らずに世界を変える』(同時代社)
 ・デヴィッド・グレーバー『資本主義後の世界のために』(以文社)
 ・廣瀬純『シネキャピタル』(洛北出版)……
 
 こうした趣旨をもつ書籍の出版ラッシュを目の当たりにすると、多くの人は2008年に起きた金融危機に端を発した一時的な現象だと考えるかもしれない。

 しかし、実際は、この十数年間地下的に広がってきた、ネオリベラル体制への全世界的な反対運動が練り上げた「知」が、ようやくこの日本でも――これまでの「理論」をラディカルに書き換える形で――成果として現れた、その最初の現象であり、また上記の本のすべてが金融危機以前に書かれ(企画され)、今日の状況をすでに「予示」もしていた。

 また、それぞれの論者の主張を注意深く見れば、「労働からの解放」(廣瀬)や「地球意志」(高祖)、もしくは「人間経済」(グレーバー)、はたまた「新たな社会的主役」(コレクティボ・シトゥアシオネス)といった、共通点も多く、かつ魅惑的な「資本主義後の世界」を見据えた概念が乱れ飛んでいるのが分かる。

 このセッションでは、金融危機のはるか前から、北米や欧州そして南米で起こっていた新しい運動をいち早く日本に紹介し、かつ自身も先鋭的な理論家として活躍中の高祖岩三郎氏と廣瀬純氏を招き、この危機的な世界の「豊かさ」を知り、「図々しく生きぬく」ための知恵を学ぶ。

【講師紹介】
高祖岩三郎:1970年渡米。批評誌『VOL』コレクティヴ。著書に『ニューヨーク烈伝』『流体都市を構築せよ!』(共に青土社)、『新しいアナキズムの系譜学』(河出書房新社)がある。
廣瀬純:1971年東京生。仏・映画批評誌『VERTIGO』編集委員。著書に『闘争の最小回路』(人文書院)、『闘争のアサンブレア』(共著、月曜社)、『シネキャピタル』(洛北出版)などがある。
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by urag | 2009-05-23 12:24 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2009年 05月 20日

Gauri Viswanathan 氏講演会@京大22日、東大26日

弊社より刊行予定の『カルチュラル・スタディーズ・リーダー(仮)』に論文が収録予定の著者、ガウリ・ヴィシュワナータンさんの来日公演についてお知らせします。京大の講演会では弊社より著書『暴力と証し』が来週発売予定のヘント・デ・ヴリースさんも、コメンテーターとして出席されます。

◎Gauri Viswanathan 氏講演会

日時:2009年5月22日(金) 17:00~19:00
場所:京都大学人文科学研究所本館二階大会議室 〔京都大学本部キャンパス内 (市バス「京大正門前」)〕

主催:京都大学人文科学研究所・人文学国際研究センター
共催:日本南アジア学会・定例研究会(関西)

問い合わせ:京都大学人文科学研究所事務室総務係
〒606-8501京都市左京区吉田本町 TEL075-753-6904

プログラム
【講演】17:00~18:00
ガウリ・ヴィシュワナータン(コロンビア大学教授)「オカルトの伝達:文学的モダニズムにおけるポスト宗教時代の宗教」("Occult Transmissions: Religion after Religion in Literary Modernism") 
※講演は英語で行われます。

【ディスカッション】18:00~19:00
ディスカッサント:三原芳秋(同志社大学言語文化教育研究センター)/藤倉達郎(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)/Hent de Vries(ジョンズ・ホプキンス大学教授)

司会:田辺明生(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
コーディネーター:磯前順一(国際日本文化研究センター)

講師プロフィール
ガウリ・ヴィシュワナータン(Gauri Viswanathan)氏の専攻は英文学・比較文学。コロンビア大学教授。教育・宗教・文化、19世紀のイギリスおよび植民地のカルチュラルスタディーズ、近代諸学問の歴史などについて幅広く出版している。主著には、Masks of Conquest: Literary Study and British Rule in India (Columbia, 1989; Oxford, 1998) や Outside the Fold: Conversion, Modernity, and Belief (Princeton, 1998) がある。Outside the Fold では米国比較文学会のハリー・レヴィン賞、米国近代言語学会のジェームス・ラッセル・ローウェル賞、アジア研究学会のアーナンダ・クーマラスワーミー賞を受賞した。編著には、Power, Politics, and Culture: Interviews with Edward W. Said (Vintage, 2001)および ARIEL: A Review of English Literature (2000) "Institutionalizing English Studies: The Postcolonial/Postindependence Challenge" (特集号)がある。近代のオカルティズムについてであり、ポスト世俗主義時代にふさわしいオルタナティブな宗教史を書こうとしている。

講演予告
本講演では、オカルティズムを、ポスト宗教的で、信仰と無信仰のあいだにあり、またオーソドックスな信心深い社会における諸約束事と無神論的で懐疑的で合理的な社会における正反対の衝動とのあいだにあるものとして描写する。

***

ガウリ・ヴィシュワナータン (Gauri Viswanathan) 氏講演会

日時:2009年5月26日(火) 18:00~20:30
会場:東京大学駒場キャンパス 18号館4階コラボレーション・ルーム1
地図: http://www.c.u-tokyo.ac.jp/access/index.html

講演:Gauri Viswanathan (Columbia University) "Magical Mathematics and Modernity: The Editing of S. Ramanujan's Education"

司会: 本橋哲也、 粟屋利江
ディスカッサント: 小林英里、 井坂理穂

ガウリ・ヴィシュワナータン(Gauri Viswanathan)氏:コロンビア大学の英文学・比較文学学科の教授。 専門は、 教育、 宗教、 文化、 19世紀のイギリスや植民地のカルチュラルスタディーズ、 近代諸学の歴史など。 主著に、 Masks of Conquest: Literary Study and British Rule in India (Columbia University Press, 1989); Outside the Fold: Conversion, Modernity, and Belief(Princeton University Press,1998) がある。 イギリスのインドにおける植民地支配を、 英文学や改宗問題などの新たな視点から分析した研究は、 幅広い分野の研究者に参照されている。

講演予告
植民地期にイギリス人数学者によって 「発見」 された著名なインド人数学者ラーマヌジャンを題材としながら、 植民地支配と教育の問題が論じられる予定である。

※植民地支配下のインドにおける教育・文学・政治をめぐって~ゴウリ・ヴィシュワナータンさん東京セミナーのご案内

『征服の仮面』等の著作で、そしてまた故エドワード・サイードの盟友としても著名なコロンビア大学教授ゴウリ・ヴィシュワナータンさんが、初来日され、東京でセミナーを行ないます。主催は<カルチュラル・スタディーズ翻訳フォーラム>、<南インド学会>、<東京外語大南インド文学科研>の共催ですが、参加は自由で無料です。

5月26日(火) 18:00 東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1 (司会進行:本橋哲也)
 (1)講演: Gauri Viswanathan, "Magical Mathematics and Modernity: The Editing of S. Ramanujan's Education"
 (2)コメント: 井坂理穂(南インド学会、東京大学)、小林英理(カルチュラル・スタディーズ翻訳フォーラム、中京大学)
 (3)全体討論
 20:30より懇親会を予定しています。

英国の植民地支配、インド文学、カルチュラル・スタディーズという歴史、文学、批評理論の出会う機会でもあり、小規模のセミナーですので、貴重な意見交換ができると思います。どうぞ奮ってご参加ください。
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by urag | 2009-05-20 19:31 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2009年 05月 18日

注目新刊:古典篇

◎注目新刊【古典編】

生物の驚異的な形
エルンスト・ヘッケル:著 小畠郁生:日本語版監修 戸田裕之:訳
河出書房新社 09年4月 本体2,800円 A4変型判並製144頁 ISBN978-4-309-25224-7
■内容(帯文&版元ウェブ紹介より):太古の原生生物から無脊椎動物、植物から動物まで……なぜ自然界はこんなにも美しいのか? アール・ヌーヴォーに影響を与え、ヨーロッパ中で100年以上愛されてきた、ドイツの博物学者ヘッケルの《芸術的な生物画集》、待望の刊行! 系統発生は個体発生を繰り返すという「生物発生原則」を主張し、系統樹を初めて発案し、ダーウィンの進化論を強力に支持したドイツの博物学者エルンスト・ヘッケル(1834-1919)。画家を志したこともあるヘッケルが、対象性と秩序をテーマに描いた本書は、ヘッケルの思想を表す集大成となっている。また、その息を呑むような美しさから、アール・ヌーヴォーやユーゲントシュティールといった20世紀初頭の芸術や建築にも大きな影響を与えた。放散虫や珪藻類、植物などの精緻な100枚の図版が、見たこともなかったような生物の「かたち」の世界へと読者をいざなう。リヒャルト・ハートマン:序文/オラフ・ブライトバッハ+イレネウス・アイブル-アイベスフェルト:解説。荒俣宏氏推薦「生物学者も芸術家も建築家もびっくりした生きものの「かたち」のひみつ。進化論学者ヘッケルが、美の進化をも発見した!」
●とにかく「美しい」の一言です。人によってはグロテスクで苦手、という反応もあるかもしれませんが、生物のかたちと色の法則性に迫るその繊細で写実的な絵筆は、公刊から百年以上経った今も、見る者を圧倒し、生物の美の再発見へといざないます。ダーウィン『種の起原』新訳が朝倉書店より刊行され、ゲーテの『形態学論集』全二巻(植物篇動物篇)がちくま学芸文庫から刊行された昨今、芸術書と理工書とを大胆に結ぶ、「かたち」(そして広義の「デザイン」)というテーマが、書店さんの売場でもっとクローズアップされると良いなと思います。

プリニウス博物誌 植物篇植物薬剤篇
大槻真一郎:責任編集
八坂書房 09年4月 本体各7,800円 菊判上製632頁/576頁 ISBN978-4-89694-931-5/932-2 
■版元紹介文【プリニウス博物誌[全2巻]】:博物学史上不変の世界的名著より、植物に関する部分をラテン語原典より翻訳。植物誌、言語、文化、歴史、民俗各方面におよぶ豊富な訳注を付す。〈植物篇〉では約600種、〈植物薬剤篇〉では約1200種もの植物を記載する。
■版元紹介文【植物篇】:内容 地中海世界を中心にペルシア、アラビア、インドをも含む地域に生育する植物約600種を収録。性状や栽培法はもとより、食用、薬用、酒、香料、木材などへの利用法を、神話・伝説・歴史にもふれながら詳述する壮大な植物誌。
■版元紹介文【植物薬剤篇】:内容 野菜、草花、果物、樹木、穀物など約1200種におよぶ植物を、様々な病気に効く医薬として、また染料、洗剤、毒薬、媚薬などとして網羅した、古代薬物知識の集大成。記載の薬効は6000種以上におよび、その製法と処方が詳述される。
●94年に初版が刊行されて以来、久しぶりの新装版です。この機会に買っておかない手はありません。プリニウスの大著『博物誌』全37巻はかつて、中野定雄さんらによる全訳(英訳からの重訳)が雄山閣出版より1986年に全三巻本(セット定価45,000円)で刊行されていましたが、現在は品切。八坂書房版はラテン語からの初訳になります。植物篇は『博物誌』の第12巻から第19巻、植物薬剤篇は第20巻から第27巻にあたります。植物篇のあとがきでは、『博物誌』の宝石篇が某出版社で刊行予定、と予告されていましたが、未刊の様子。
●帯文に引用されている澁澤龍彦『私のプリニウス』からの一節:「プリニウスが扱っている領域は天文地理から動植物や鉱物、さらには技術や芸術をふくめた人間の文化にまでおよんでおり、なかでも植物や動物の薬品としての効能や利用法に多くの巻があてられているのは、魔術と未分化の状態にあった当時の科学のなかで占めていた薬物学の重要性を示すものだろう」。『私のプリニウス』は河出文庫版などで読むことができます。
●『プリニウス書簡集』(講談社学術文庫)の著者プリニウス(小プリニウス)は、『博物学』の著者プリニウス(大プリニウス)の甥にあたります。別人です。

女の平和
アリストパーネス:著 オーブリー・ビアズリー:挿絵 佐藤雅彦:訳
論創社 09年5月 本体2,000円 四六判上製256頁 ISBN978-4-8460-0950-2
■帯文より:豊雛挿し絵を伴って待望の新訳刊行! いま、なが~い歴史的な使命を終えて息もたえだえな男たちに代わって、女の時代がやってきた。
■版元紹介文より:2400年の時空を超えて「セックス・ボイコット」を呼びかける、古代ギリシャの反戦喜劇。待望の新訳刊行!
■訳者あとがきより:「『女の平和』は、今から2400年以上もまえの紀元前411年に、古代ギリシアの都市国家アテーナイで上演されました。そして2003年。馬鹿げた戦争をくい止めるために何かできないかと考えた人々が全世界に呼びかけて、いっせいに古代ギリシアの反戦喜劇『女の平和』の朗読会を行いました。その規模は59か国、1000か所以上に及び、史上最大の朗読会になりました。リトアニアではビルデ・ヴェイサイテ議員が「対イラク戦争を支持する男とセックスするのはやめましょう!」と宣言しました」。
●訳者の佐藤さん(1957-)は、翻訳家でありジャーナリストでいらっしゃいます。著書には『現代医学の大逆説』(工学社、2000年)や『徹底暴露!! イラクの侵略とホンネと嘘』(鹿砦社、2004年)などがあります。アリストパネスの劇作『女の平和(リューシストラテー)』の日本語訳は、高津春繁さん(こうづ・はるしげ:1908-1973)の訳でしか読めませんでした(岩波文庫、ちくま文庫など)。じつに半世紀ぶりの新訳となります。佐藤さんの訳は現代語訳と言ってよく、物語がかなり身近に感じられるようになっています。冒頭部分を高津訳と対比させてみましょう。

【高津訳】(岩波文庫『女の平和』7-8頁/ちくま文庫『ギリシア悲劇II アリストパネス(下)』133頁)
リューシストラテー:ほんにお酒の神様のお社に呼ばれたか、パーンか愛の女神のコーリアスさまか、ゲネテュリスさまのお社にだったら手太鼓の群れのため通行さえできないところなのにねえ。ところが今はたった一人の女の人さえここにいやしない。と思ったら、ほらあそこにご近所の女〔ひと〕がやって来たわ。カロニーケーさん、ご機嫌よう。
カロニーケー:ご機嫌よう、リューシストラテーさん。どうしたの、苦虫面〔にがむしづら〕はおよしなさいよ、ねえ。瞋恚〔いかり〕のなまじりなんてのはあんたには似合わないわよ。
リューシストラテー:だって、カロニーケーさん、あたしは胸の中が煮えくりかえる、そしてわたしたち婦人のために心を痛めているのよ、だってね、男たちの考えではあたしたちは悪賢い悪党だってさ。
カロニーケー:だってほんとうにそうよ。

【佐藤訳】
リューシストラテー:どうしちゃったんだろ。お酒の神様バッコスさまのところで無礼講の酒盛りがあるとか、愛の女神のアプロディーテーさまや、そのまたお付きのゲネテュリスの神さまや、みだらな牧神パーンさまのところで、酔っぱらい放題ややり放題のパーティでもあれば、もうこのへんは人出がすごくて、手太鼓〔タンバリン〕なんかを叩いてはしゃぎまわるものだから、歩くことだってできないのにねえ。……なのに、きょうはこんなに待っても、人っこひとり、きやしない。と、思ったら、ようやくひとりやってきました。ご近所のカロニーケーさんだよ。こんにちは、若奥様!
カロニーケー:おはよう、リューシストラテーさん。けど、どうしたの? そんな浮かない顔しちゃってさ。そんなしかめっ面は、あなたには似合わないわよ。
リューシストラテー:だってカロニーケーさん、あたしはもう腹が立つやら悲しいやらで……。おなじ女として、あたしゃ、もう……。なんせ男どもが、あたしらのことを小ずるいとか悪賢い、さんざんなことを言ってるじゃない。
カロニーケー:だけど本当なんだもん、しょうがないじゃない。

本当はこの後段を引用したほうが、ストーリー的にも面白いですし、佐藤訳の工夫が伝わるのですが、それは皆様読んでのお楽しみということで。長く読みつがれている高津訳ももちろん悪くないのですが、より若い世代には佐藤訳のほうが親しみやすいかもしれません。ビアズリーの挿絵より、訳文のインパクトの方が勝ってます。

ソクラテスの弁明 関西弁訳
プラトン:著 北口裕康:訳
PARCO出版 09年5月 本体1,200円 B6判変型上製160頁 ISBN:978-4-89194-798-9
■帯文+版元紹介文よりより:これって落語? それとも哲学? これまで難解と思われ敬遠されがちだったこの哲学書が、関西弁に訳すことで、目から鱗が落ちるほど読みやすくなりました! 生きることの意味、善と悪、国家と法、死のとらえ方……賢人ソクラテスのメッセージが生きた言葉として、いま私たちに届きます。
●訳者の北口さん(1965-)は「システム&デザインカンパニー、株式会社一八八の社長」さんとのこと。もちろん関西人でなくても読めます。幾度も訳されてきたこの古典を、居酒屋でオッサン同士が繰り広げるああでもないこうでもない話、のように新鮮に読める。ひょっとすると、この一冊は、これまで碩学たちの翻訳で読まれてきた本書の印象を一気にひっくり返すくらいのインパクトがあるかもしれない。ドイツ文学者の池内紀さんがカントの『永遠平和のために』を一昨年新訳して集英社から出版したとき、カントにこれまでにない親しみを感じながら読むことができたことを思い出します。
●私の拙い持論ですが、やはり新訳は、専門家や学者ではない人々の手になるもののほうが、訳者がより一般読者に近い場所から原典と格闘した分だけ、いっそう親しみやすいものになると思います。むろん専門家や学者の仕事は立派ですが、編集者はそうした権威を必ずしも全面的に信頼しているわけではありません。むしろ、権威を突き崩す(ないし突き放して相対化する)作業を編集の仕事に組みこむものだと思います。たしかに専門家や学者ではない人々による翻訳が認められることはそう多くありませんが、読者はアカデミズムの評価とは無関係に「良いものは良い」と主張する権利があります。北口訳は日本におけるプラトンの翻訳史上、記念すべき試みだと私は断言しておきたいと思います。

賽の一振りは断じて偶然を廃することはないだろう
原稿と校正刷 フランソワーズ・モレルによる出版と考察
ステファヌ・マラルメ:著 柏倉康夫:訳
行路社 09年3月 本体6,000円 A5判変型並製函入200頁 ISBN978-4-87534-416-2
●A5判変型と書きましたが、私の勝手な判断です。B4よりは小さく、A5よりは一回り大きいサイズです。つまり、一昨年、パリのLa Table Rondeからナンバリング入りで刊行された原書と同じサイズ。原稿および校正刷の写真版を含む厳密な資料本であり、モレルによる詳細な注釈本です。惜しむらくは、柏倉先生の訳詩のみを「通し」で印刷している頁がないことです。研究書としてはつつましいあり方で好感が持てますが、思潮社版秋山澄夫訳『骰子一擲』のようには訳文のみを味わうという読み方ができず、少しもどかしい気がします。しかし、本書は間違いなく「お宝」です。品切になって古書にでもなろうものなら、いずれ高額本になるでしょう。Un coup de Désが大好きで、マラルメももちろん大好きだ!という方は買っておいて損はないと思います。
●組版担当に「内浦亨」さんのお名前が。冬弓舎代表の内浦さんですよね。良い仕事なさってます。
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by urag | 2009-05-18 03:04 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(7)
2009年 05月 15日

09年6月上旬新刊:デュットマン『思惟の記憶』

a0018105_18332312.jpg2009年6月5日→12日取次搬入予定 【人文・哲学・現代思想】

思惟の記憶――ハイデガーとアドルノについての試論
アレクサンダー・ガルシア・デュットマン:著 大竹弘二:訳
A5判上製416頁 本体4,800円 ISBN978-4-901477-47-5

古代ギリシア以来の哲学の創設をめぐるハイデガーの思惟と、アウシュヴィッツ以後の哲学の罪責をめぐるアドルノの思考。これらふたつの思想は歴史とどう向き合い、いかに出来事を名づけたか。両者との果敢な対決を通じて20世紀ドイツ哲学の限界を検証する試み。「正真正銘もっとも重要な草分け的書物」(ハーマッハー)の、待望の完訳。

アレクサンダー・ガルシア・デュットマン(Alexander García Düttmann):1961年バルセロナ生まれ。哲学者。ロンドン大学ゴールドスミス校視覚文化学科教授。主な著書に、1989年『贈与された言葉』、1991年『思惟の記憶』(本書)、1993年『エイズとの不和』(月曜社刊行予定)、1996年『この世界のすべての言葉と沈黙において愛とは何か』、1997年『諸文化のはざまで』、1999年『友たちと敵たち』(『友愛と敵対』大竹弘二・清水一浩訳、月曜社、2002年)、2000年『芸術の終焉=目的』、2004年『この通り――アドルノ『ミニマ・モラリア』への哲学的注釈』、2004年『誇張の哲学』、2005 年『痕跡を抹消せよ』、2007 年『ヴィスコンティ――肉と血における洞察』、2008 年『デリダと私』などがある。

大竹弘二(おおたけ・こうじ):1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。現在、南山大学外国語学部准教授。共訳書にアレクサンダー・ガルシア・デュットマン『友愛と敵対――絶対的なものの政治学』(清水一浩との共訳、月曜社、2002年)がある。
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by urag | 2009-05-15 19:48 | 近刊情報 | Trackback | Comments(2)
2009年 05月 07日

09年5月下旬刊、暴力論叢書4『暴力と証し』(著者来日情報あり)

a0018105_17423837.jpg2009年5月22日取次搬入予定 【ジャンル:人文・哲学・現代思想】

『暴力と証し――キルケゴール的省察』 〔暴力論叢書4〕
ヘント・デ・ヴリース:著 河合孝昭:訳
46判並製312頁 本体2,500円 ISBN978-4-901477-46-8

旧約聖書におけるアブラハムの供犠と証しを倫理と宗教の両面から考察しつつ、〈暴力批判〉と〈責任の逆説〉を根源的に分析。オランダ哲学の新境地が、デリダ以後の問いを深化させる。暴力論叢書第四弾。本邦初訳。

人文科学に携わっている者で、厄介な問題を抱えた近現代を理解することに真剣な関心を抱いている者であれば誰でも、最大の興味をもって読むことができるはずである。[タラル・アサド]

理知的な複雑性と強度をもって波紋を投げかける書。[ジュディス・バトラー]

哲学におけるもっとも困難な問題を取り上げている。豊穣かつ有益で、きわめて重要な書。ただ読むのではなく、繰り返し読むことが求められる。[ヒラリー・パットナム]

ヘント・デ・ヴリース(Hent de Vries):1958年生まれ。オランダの哲学者。現在、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学人文学教授。著書に『極小神学――アドルノとレヴィナスにおける世俗理性批判』(ドイツ語版:1989年、英語版:2005年)、『哲学と〈宗教への転回〉』(英語版:1999年)、『宗教と暴力――カントからデリダにいたる哲学的諸展望』(英語版:2002年)などがある。09年5月23日~25日、日文研の招聘により初来日する。

河合孝昭(かわい・たかあき):1969年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程(哲学専攻)単位取得退学。2000年にパリ第10大学にてDEAを取得。大学非常勤講師。著訳書に『仏蘭西の思想と倫理』(共著、行路社、2001年)、エマニュエル・レヴィナス『実存の発見』(共訳、法政大学出版局、1996年)などがある。

◎著者初来日記念イベント

■国際シンポジウム:京都学派と「近代の超克」‐近代性、帝国、普遍性

開催日: 平成21年5月23日~24日
会場: 国際日本文化研究センター
※このシンポジウムはすでに満席のため、参加受付が終了しています。

第一日目5月23日
9:00-9:10 所長挨拶: 猪木武徳 (日文研)
9:10-10:00 趣旨説明: 磯前順一(日文研)「近代の超克」と京都学派‐近代性の多様性

1 .「近代の超克」と京都学派‐近代性の多様性
10:00-11:00 報告:James Heisig (南山大学) 西谷啓治と「近代の超克」
11:00-12:00 報告:藤田正勝(京都大学)「近代の超克」の思想喪失―近代とその超克をめぐる対立
12:00-12:30 コメント:Gauri Viswanathan (Columbia University)
12:30-13:30 討議

2 .三木清と帝国の哲学‐普遍性の探究
14:30-15:30 報告:酒井直樹(Cornell University) 三木清と帝国の哲学‐普遍性の探究
15:30-16:30 報告:Harry Harootunian (New York University)三木清と資本主義の超克‐日常性と普遍性
16:30-17:00 コメント:Hent de Vries (Johns Hopkins University)
17:00-18:00 討議

第二日目5月24日
9:00-10:00 報告: 孫歌(中国社会科学院) 「近代の超克」と「中国革命」‐戦後日本思想史における二つのモメント

3.「近代の超克」と「世界史の哲学」‐帝国主義
10:00-11:00 報告:鈴木貞美(日文研) アジアにおける近代の超克
11:00-12:00 報告:金哲 (延世大学校) 朝鮮半島における近代の超克
12:00-12:30 コメント:孫歌(中国社会科学院)
12:30-13:30 討議

4 .西洋近代という経験
14:30-15:15 発議:近代性から Gauri Viswanathan
15:15-16:00 発議:普遍性から Hent de Vries
16:00-16:30 コメント:稲賀繁美(日文研)
16:30-18:00 討議

■同志社大学・一神教学際研究センター 公開講演会 →中止になりました。

日時:2009年5月26日(火)14:00-17:45 →中止になりました。
会場:同志社大学今出川キャンパス 神学館礼拝堂
地図:http://www.doshisha.ac.jp/access/ima_campus.html
京都駅からの道順:京都市営地下鉄烏丸線国際会館行きに乗車、今出川駅で下車。3番出口を出て右へ50mほどのところに西門があります。

【プログラム/スケジュール】
テーマ:ポスト世俗主義時代における普遍的価値の追求──宗教の可能性 A Quest for the Universal Values in the Post-secular Age: Possibilities of Religion

講師:ヘント・デ・ヴリース(ジョンホプキンス大学 教授)
コメンテーター:酒井直樹(コーネル大学 教授)/磯前順一(国際日本文化研究センター准教授)
司会:小原克博(同志社大学 教授)

14:00-14:05 趣旨説明(司会者)
14:05-15:35 基調講演:ヘント・デ・ヴリース
15:35-15:45 休 憩
15:45-16:00 コメント:酒井直樹
16:00-16:15 コメント:磯前順一
16:15-17:45 質疑応答


→講演会は新型インフルエンザへの配慮のため、中止になりました。

主催:同志社大学 一神教学際研究センター(CISMOR)
〒602-8580 京都市上京区今出川通烏丸東入 Tel: 075(251)3726 Fax: 075(251)3092
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by urag | 2009-05-07 17:44 | 近刊情報 | Trackback | Comments(2)