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2008年 09月 30日

注目新刊:フェリックス・ガタリ『カフカの夢分析』水声社

a0018105_5522271.jpgカフカの夢分析
フェリックス・ガタリ(1930-1992):著 ステファヌ・ナドー(1969-):編註 杉村昌昭:訳
水声社 08年9月 46判上製カバー装162頁 ISBN878-4-89176-694-8

■帯文より:それは予知夢か、あるいは悪夢だったのか? 現代思想最大の異端児ガタリが遺した、カフカ論およびカフカ映画のシナリオ断片をコンパクトに集成。65の夢に導かれた新たなカフカが、いま、ここから〈起動〉する。カフカ/ガタリ機械の誕生。

■目次:
日本語版への序文 (ナドー)
フランス語版への序文 (ナドー)
第一章 カフカの六十五の夢
第二章 カフカ――「過程〔プロセ〕」と「手法〔プロセデ〕」
第三章 カフカバンド
第四章 カフカ映画のためのプロジェクト
編註 (ナドー)
訳者あとがき

■原書:"Soixante-cinq rêves de Franz Kafka", Nouvelles Éditions Lignes, 2007.

★第二章は既訳書『闘走機械』(杉村昌昭監訳、松籟社、96年)にも収録されており、今回改訳したとのことです。

★ナドーの「日本語版への序文」がたいへん印象的です。ドゥルーズ/ガタリの共同作業がドゥルーズ中心に評価される場合が一般的にあるという事態について疑義を呈しています。全文を引用したいほどですが、それは叶いません。序文の最後に、ナドーがなぜこの本を編んだのかが書かれています。特に印象的なので、そこだけ抜書きします。

「ニーチェと同様に、フェリックス・ガタリは、あなたの個人性を失わせる個人性を持った人間のひとりだからである。控えめに言っているのでも、迎合的に言っているのでもない。というのは、これは、あなたがあなたそのものになるという運動を経て、したがって、あなたがあなたの個人性をもっと強力に肯定することによって生じる喪失だからである。ガタリは、あなたがあなたの潜勢力を表現することを可能にする――あなたが同等の潜勢力を持っていさえすれば――人間なのである。このチャンスを、ドゥルーズはつかみ取ったのだ。私自身もまた」(15頁)。

★編者のナドーは、小児精神科医で、ガタリの『アンチ・オイディプス草稿』(05年、未訳)の編纂者でもあります。訳者の杉村さんは最近、ガタリ『三つのエコロジー』の改訳版を平凡社ライブラリーから上梓したばかり。

★本書の関連書にドゥルーズ/ガタリの共著『カフカ――マイナー文学のために』(宇波彰・岩田行一訳、法政大学出版局、78年)があります(写真左)。単なる作品研究でも評論でも哲学でもない、非常に自由なスタイルの思考でカフカを〈読解=起動〉させています。そのスピードと自由度ゆえに、カフカの愛読者はたいていはおいてけぼりを食らうでしょうが、たとえ本書が読めなくても悩むことはないと思います。ドゥルーズ/ガタリを読む際は、まず最初は「考え込むな、感じろ!」という心得でいるのが案外正解のような気がします。
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by urag | 2008-09-30 05:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 30日

注目新刊:エマニュエル・レヴィナス『困難な自由』国文社

a0018105_4493646.jpg困難な自由――ユダヤ教についての試論
エマニュエル・レヴィナス:著 内田樹:訳
国文社 08年9月 本体4000円 四六判上製カバー装394頁 ISBN978-4-7720-0524-1

帯文&版元紹介文より:第二次世界大戦直後、東欧のユダヤ人共同体がほぼ全滅し、同化の進んだ西欧のユダヤ人たちも自失状態の中で「ユダヤ人であること」に積極的な理由を見いだせずにいたまさにその時、「今ここでユダヤ人であることの意味とは何か?」という問いに、正面から哲学者レヴィナスが正面から応えようとした論文集。待望の完訳。

★本書の底本は、抄訳版(国文社、1985年)と同じく、1963年版です。訳者あとがきに「遠からず他の出版社から出るはずの76年版の全訳」という記述があります。76年版というのは、1976年に刊行された著者自身による校訂版のことで、63年版に収録された論文のうち8篇が削除され(今回の63年全訳版ではこの8篇も訳出)、入れ替わりに10篇が追加されています。

★内田さんは訳者あとがきで「このような名著については複数の翻訳が平行して存在することはよいことだと思う」とお書きになっています。個人的に私も同感です。むろん、出版人の一般的な立場からすれば、他社と重複するのは商売上の競合でありデメリットもなくはないですが、一読者として言えば、複数の翻訳を比べ読むのは非常に興味深いことですし、原文解釈への大きなステップにもなります(なお、76年版は弊社から出るのではありません)。

★内田さんは同じく訳者あとがきで、著者と会った時の思い出を感動的な筆致で次のように綴られています。「書物を通じて構築した人物像と、実際に身近に接した人物とでは立体感に千里の隔たりがあるというのはほんとうである。わたし自身、レヴィナス先生と会うまで、その「倫理」なるものが観念的な構築物ではないかという一抹の不安をぬぐえずにいた。けれども、レヴィナス先生との出会いはわたしのなかにある不安を一掃した。この人の語るすべての言葉は、思考の深層から、その経験の沖積土から湧き上がってきたものだということをわたしはそのとき確信したのである」(389頁)。

★本書の目次は以下の通りです。85年の抄訳版に収録されていた論文には◆印を付します。むろん、今回出版された完訳版は、抄訳版を改訳していますから、論文の訳題は必ずしも同じではありません。抄訳版での訳題が異なる場合は◆印のあとに記すようにしました。抄訳版には完訳版で同定できない二篇の論文が収録されています。第一部の「ユダヤ主義」と、第四部の「「二つの世界のあいだで」――フランツ・ローゼンツヴァイクの道」です。これらは原書初版63年版ではなくておそらく原書改訂版76年版以降の収録作でしょうか。前者の初出は71年の百科事典、後者は59年の講演かと。さらに言えば、63年版と76年版の「署名/自署」は内容が(改訂されていて)異なるのですが、抄訳版と完訳版のそれらも異なっています。つまり、抄訳版は初版63年版を底本としているのではなくて(抄訳版の訳者あとがきにはそう書いてあるものの)、改訂版76年版の抄訳なのではないかとも推測できるかもしれません。しかしそれぞれの原書と訳文を仔細に付き合わせたわけではありませんし、万が一上記の推測通りであったとしても、もはや時効かと思います。なお、76年版において削除された8篇については▲印を付します。

まえがき
第一部 悲愴の彼方
 倫理と霊性 ◆
 成人の宗教 ◆成年者の宗教
 パリサイ人は不在 ◆
 ユダヤ教と女性的なるもの ◆ユダヤ教と女性的なもの
 レオン・ブランシュヴィックの日記
 西欧的存在
 身分証明書
 聖櫃とミイラ
第二部 注解 ◆註解
 メシア的テクスト ◆
第三部 論争
 場所とユートピア ◆
 エドモン・フレグ『さまよえるユダヤ人が語るイエス』の新版
 スピノザ裁判
 人格かそれとも予表か ◆位格と予示
 イスラエルへの声 ◆
 『聖書』に反対するシモーヌ・ヴェイユ ◆シモーヌ・ヴェイユ、反聖書
 神よりもトーラーを愛す ◆神よりもトーラを愛す
 同罪刑法 ◆
 シュトルートホーフについて
 忍耐の美徳 ◆
第四部 開放 ◆開口
 今日のユダヤ思想 ◆今日のユダヤ教思想
 宗教と寛容
 イスラエルと普遍救済説 ◆イスラエルと普遍救済論
 一神教と言語
 ユダヤ教とキリスト教の友愛
第五部 大いなる賭け
 ジュネーヴ一九五五年の精神について ▲
 語る自由
 原則と顔 ▲
 中ソ論争と弁証法 ▲
第六部 隔絶
 ユダヤ教と現代
 イスラエル国とイスラエルの宗教
 歴史の意味
 明と暗
 ハイデガー、ガガーリン、そしてわたしたち
 独占的に
第七部 この場所で、今
 いかにしてユダヤ教は可能か?
 西欧におけるユダヤ教育の現実的問題 ▲
 今日の同化
 私人のユダヤ教 ▲
 ユダヤ人教育についての省察
 十年の教育 ▲
 青年の運動 ▲
 ヘブライ的ユマニスムのために
 ユダヤ教の高等教育がわたしたちには必要なわけ ▲
第八部 署名 ◆自署
 署名 ◆自署
訳者あとがき

a0018105_3314348.jpg★内田樹さんがお訳しになったレヴィナスのユダヤ教論は本書のほかに『タルムード四講話』(87年)と『タルムード新五講話――神聖から聖潔へ』(90年)があって、どちらも国文社から刊行されています。国文社ウェブサイトによれば、前者は残念ながら品切のようですが、後者は在庫ありとなっています。
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by urag | 2008-09-30 04:22 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 30日

ブックフェアじんぶんや「紀伊國屋書店と新宿」Vol.2

◎じんぶんや第44講「紀伊國屋書店と新宿」Vol.2 「〈熱き時代〉の新宿、新宿の〈いま〉」   

期間:2008年9月16日(火)~11月30日(日)
本店会場:紀伊國屋書店 新宿本店3階・5階(じんぶんやコーナー含)・6階
地図⇒ http://www.kinokuniya.co.jp/04f/d03/tokyo/01.htm
南店会場:紀伊國屋書店 新宿南店3階・5階・6階
地図⇒ http://www.kinokuniya.co.jp/04f/d03/tokyo/02.htm
※会期は売場によって若干異なります。
     
書店挨拶文より:
この度、紀伊國屋書店では、昭和二年の創業以来、店を構える「新宿」という街の「場の力」に改めて迫るブックフェアを開催いたします。Vol.1 「モダン都市文化」(08年7月7日~8月7日)はご好評のうちに無事終了し、今回は第二弾となります。新宿本店・南店を横断する本企画、<いま>の新宿、紀伊國屋書店だからこそ可能となったトピックも目白押しです。

a0018105_1541390.jpg★<熱き時代>の新宿、新宿の<いま>トピックス★

1.「じんぶんや」小冊子特別版を、限定2,000部で店頭配布いたします!
寄稿者:本間健彦・田家秀樹・唐十郎・若松孝二・宇野亜喜良・四谷シモン・秋山祐徳太子・赤瀬川原平・森山大道・中平穂積・菊池成孔・吉田豪・平沢剛・鴻上尚史・マキノノゾミ・横内謙介

※小冊子エッセイはフェア特設ブログでも掲載中!ご覧下さい。
⇒ http://booklog.kinokuniya.co.jp/jinbunya42/

2.上記寄稿者の著作、ほか新宿文化関連書籍を、60-70年代の新宿、また現在の新宿をテーマに、各フロア独自の切り口で展開!

3.「わめぞ」(早稲田・目白・雑司が谷の古書店街)による60-70年代刊行古書約200点の販売を、新宿本店5階にて行います!

4.『田辺茂一と新宿文化の担い手たち』(1995年新宿歴史博物館で開催の特別展図録)を限定復刻しました!フェアにて歴史博物館のほか人気刊行物も同時販売致します。

***
a0018105_2131430.jpg
宇野亜喜良さんデザイン「AQUIRAX」のグッズを期間限定で取り扱い中。

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小冊子ご寄稿者の著作やDVDを中心に、60~70年代の新宿文化にまつわる書籍を展開中。奥のフェア台では「わめぞ」(早稲田・目白・雑司が谷の古書店街)の古本を販売。売れ行き絶好調です!

a0018105_2152459.jpg
開館20周年を迎えた新宿歴史博物館の人気刊行物を販売中。


***

【書店員の皆様へ】

当ブログでは、弊社の出版物を活用してくださっているブックフェアの積極的な告知を心がけております。未紹介のフェアはまだまだたくさんあると思います。よろしければフェアの開催情報をEメール(アドレスは弊社ウェブサイトに明記してあります)でお知らせ下さい。フェア名、実施期間、売場名、フェアの趣旨説明などは必ず書き添えてください。売場の写真を添えていただけるとフェアの様子が分かってたいへん嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

また、ブックフェアでなくても、売場自体を宣伝したい、開店したので宣伝したい、という場合の告知でも構いません。条件は「弊社の本を扱っていること」ですが、弊社の本が置いていない場合でも、当方が「これは面白い」と判断したお店の紹介はできます。新刊書店だけではなく、古書店さんや図書館さんでも紹介します。

個人の方で「こんな面白いフェアがありますよ」という投稿も歓迎したいですが、店内を撮影する場合は、撮影とウェブ公開の了解をお店からきちんと得てくださいね。
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by urag | 2008-09-30 02:17 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 26日

近刊チェック《知の近未来》:08年9月25日

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■「近刊チェック《知の近未来》」/ 五月
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野村ホールディングスが米証券業界第四位だったリーマン・ブラザーズのアジア・太平洋部門と欧州部門を買収し、三菱UFJフィナンシャル・グループが同業界第二位のモルガン・スタンレーの筆頭株主になる見通しである。ネットではこれを「日本復活の兆し」と見る人々がいるが、街を見渡せば不景気の秋風が吹きすさんでいるのは事実で、経済にも、政治にも、制度にも、社会にも、先行き不透明感と不安感が募るのは否めない。ぼやくだけの中年に成り下がったらしい大人たちが疲労困憊でぞろぞろ歩いている。おや、その中に自分もいるじゃないか。

そうした世相を反映してか、世間ではいわゆる「自己啓発」系のビジネス書が溢れかえっている。こうしたら成功する、ああやったら儲かる。正直うんざりである。ゲームを選ぶか、自己責任を選ぶか。しんどいなあ。

さて、いくらぼやいても仕方ない。新刊の膨大な奔流の中に戻らねばならない。今月末から来月に刊行される各社の新刊で気になったタイトルは、以下の通りだった。

08年9月
26日『図書館 愛書家の楽園』アルベルト・マングェル 白水社 3,570円
26日『監獄ビジネス――グローバリズムと産獄複合体』アンジェラ・デイヴィス 岩波書店 2,415円
26日『聖地感覚』鎌田東二 角川学芸出版 2,000円
27日『廃墟ディズカバリー』小林哲郎 アスペクト 2,310円
29日『倉庫――消えゆく港の倉庫 ヨコハマ・ヨコスカ』安川千秋写真 ワールドフォトプレス 2,730円
29日『小林多喜二と蟹工船』河出書房新社 1,575円
30日『野性のアノマリー――スピノザにおける力能と権力』アントニオ・ネグリ 作品社 6,090円
30日『アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?』スーザン・ジョージ 作品社 2,520円
30日『日本古代の月信仰と再生思想』三浦茂久 作品社 4,830円

08年10月
01日『シネマ1*運動イメージ』ジル・ドゥルーズ 3,990円
01日『コスモス』ラズロ+カリバン 講談社 1,785円
08日『コールハースは語る』レム・コールハース+ハンス・ウルリッヒ・オブリスト 筑摩書房 1,785円
08日『ボン書店の幻―─モダニズム出版社の光と影』内堀弘 ちくま文庫 998円
08日『茂木健一郎の脳科学講義』茂木健一郎+歌田明弘 ちくま文庫 714円
08日『縄文人追跡』小林達雄 ちくま文庫 756円
08日『つげ義春コレクション――ねじ式/夜が掴む』つげ義春 ちくま文庫 798円
08日『ちくま日本文学(025)折口信夫』折口信夫 ちくま文庫 924円
08日『孫(びん)兵法―─もうひとつの「孫子」』金谷治訳 ちくま学芸文庫 1,155円
09日『神楽感覚――環太平洋モンゴロイドユニットの音楽世界』細野晴臣+鎌田東二 2,520円
09日『エコ・ロゴス――存在と食について』雑賀恵子 人文書院 2,500円
10日『臨床哲学の知――臨床としての精神病理学のために』木村敏 洋泉社 2,310円
10日『チョムスキー、アメリカを叱る』ノーム・チョムスキー NTT出版 1,680円
16日『マリリン・モンローの最期を知る男』ミシェル・シュネデール 河出書房新社 2,625円
17日『もっとも美しい対称性』イアン・スチュアート 日経BP社 2,730円
20日『サイボーグ・フィロソフィー』高橋透 NTT出版 2,520円
20日『脳と心』ジャン=ピエール・シャンジュー+ポール・リクール みすず書房 4,725円
22日『賭博/偶然の哲学』檜垣立哉 河出書房新社 1,575円
24日『正義で地球は救えない』池田清彦+養老孟司 新潮社 1,050円
24日『光の場、電子の海――量子場理論への道』吉田伸夫 新潮選書 1,260円
24日『奇想遺産(2)世界のとんでも建築物語』鈴木博之ほか 新潮社 2,940円
29日『新宗教の本』島田裕巳+藤巻一保+豊嶋泰國 学習研究社 1,365円

08年11月
15日『「幻」の日本爆撃計画』アラン・アームストロング 日本経済新聞出版 2,100円
20日『夢と精神病』アンリ・エー みすず書房 4,200円
20日『神話論理(IV-1)裸の人(1)』クロード・レヴィ=ストロース みすず書房 8,925円

九月の新刊ではまず、明日発売の白水社の図書館本が魅力的だ。版元の説明によれば本書は「古代アレクサンドリア図書館、ネモ船長の図書室、ヒトラーの蔵書、ボルヘスの自宅の書棚など、古今東西の実在あるいは架空の図書館を通して、書物と人の物語を縦横無尽に語る」とのこと。実在だけでなく、架空の図書館を語るというのがいい。本好きの人間は、誰しも心の中に、架空の「憧れの図書館」像を持っているものではなかろうか。ユートピアとしての図書館。

『小林多喜二と蟹工船』は、「KAWADE道の手帖」シリーズの一冊。『蟹工船』ブームの影響で、日本共産党に一万人入党したというニュースには誰もが驚いたことだろう。寄稿者は浅尾大輔、雨宮処凜、青山七恵、ECD、小森陽一、島村輝、日高昭二など。「多喜二アンソロジー」「プロレタリア文学選」なども併録。見逃せない類書は以下の新刊。来月中旬にアルファベータから幸徳秋水と堺利彦の共訳版のマルクス『共産党宣言』が復刊されるとのこと。四六判112頁定価945円。これまで繰り返し翻訳されてきた古典で、90年代以降も、93年に太田出版から金塚貞文訳『共産主義者宣言』があり、今年三月にも、三島憲一と鈴木直の共訳で「コミュニスト宣言」(『マルクス・コレクション(2)』所収、筑摩書房)が刊行されている。

次に注目したいのは、九月末に刊行刊行される、作品社の新刊三点。ネグリとジョージの新刊については、作品社のご好意で序文をこの号〔「[本]のメルマガ」334号〕に掲載することができたので、そちらをご覧いただきたい。ネグリのどこまでも前向きな活力と、ジョージの容赦ない真実暴露の眼力は、凡百の自己啓発書にまさる。同社がつい先日刊行したジャック・アタリの『21世紀の歴史』は某ビジネス街でたいへんよく売れているそうだ。願わくばネグリやジョージの新刊も読まれてほしいものである。なお、作品社からは来日するはずだったネグリの講演集『ネグリ 幻の日本講演』が刊行予定であることはこれまでも取り上げてきたが、担当編集者氏によれば「年内には必ず出る」とのことだ。

私の古巣だからと言って贔屓するわけではない。同社三点目の三浦氏の新刊も素晴らしい。宗教学者の鎌田東二氏は次のように絶賛している。

「八百万の神」と呼ばれる日本の神々の中で、もっとも謎めいた隠された神は「月神」である。どの段階化で、月の神は「日の神」に取って代わられ、隠蔽され、その位置を奪われた。本書は、そんな記紀神話以前の「月信仰」の初源形態を、丹念な文献の考証と大胆な推理と論理展開により浮かび上がらせ、古代史研究にコペルニクス的転換を迫って激震を走らせ論議の嵐を巻き起こす問題作である。八百万の神々の体系は再考(再興)・再生されなければならないのである。

『古代日本の月信仰と再生思想』の版元紹介文にはこうある。「原始、アマテラスは〈太陽〉ではなく〈月〉だった。アマテラス=「太陽神」神話の形成される以前、古代世界を支配したのは太陰暦であり月であった。万葉集を初めとする古代資料の精緻な解読を通し、歪められた古代世界の実像を明らかにする画期的労作」。三浦氏は1934年生まれの研究者。愛知県一宮町の元教育委員で、本書が著書第一作となるようだ。遅まきのデビュー? いや、年齢は問題ではない。なかなか挑戦的な内容だと思うがどうだろう。

本書の推薦者鎌田氏にも近刊がある。明日発売の『聖地感覚』(角川学芸出版)と、来月九日発売の細野晴臣氏との対談集『神楽感覚』(作品社)である。前者はひょっとすると、柏書房より近刊のはずだった『聖なる場所の感覚――イジゲンヘノタビ』のことかもしれない(國學院大学ウェブサイトの講義シラバスには「『聖地感覚』柏書房、2008年」とあるから、ほぼ間違いなさそうだ)。後者は細野晴臣と即興演奏集団「環太平洋モンゴロイドユニット」によるDVD「おひらきまつり奉納演奏(71分)」が付属している。楽しみだ。

十月ではなんといっても一日発売のドゥルーズ『シネマ1』だ。本書の発売により、ドゥルーズの著作は原著未公刊の講義録群を除き、すべて翻訳されたことになる。十月はさらに、筑摩書房の単行本と文庫のラインナップがいい。

また、人文書院からまもなく刊行される雑賀恵子さんの新刊は、今週青土社から発売されたばかりの処女作『空腹について』に続く、単独著第二弾だ。PR誌「未来」に05年から07年にかけて連載された「Sein und Essen」を書籍化するもの。比較文学研究者の西成彦さんが以下の推薦文を寄せている。「他者の死にとりまかれて生きる私たち。死骸をむさぼる私たち。古典的、宮沢賢治的な問いを〈エコ〉の時代にあらためて問い直す、不断の思考の実践」。なお、連載第三回は独立して加筆され、『空腹について』に収められている。

発売日不詳だが、十月の新刊予定には以下の書目もある。

08年10月
『真理の場所/真理の名前』エティエンヌ・バリバール 法政大学出版局 2,415円
『フンボルト――地球学の開祖』ダグラス・ボッティング 東洋書林 5,040円
『創造性の宇宙――創世記から情報空間へ』港千尋+永原康史監修 工作舎 1,890円
『日本の書物への感謝』四方田犬彦 岩波書店 2,415円
『戦争の日本史(3)蝦夷と東北戦争』鈴木拓也 吉川弘文館 2,625円
『聖母像の到来』若桑みどり 青土社 3,570円
『われら瑕疵ある者たち――反「資本」論のために』長原豊 青土社 2,940円
『異端の人物像』テリー・イーグルトン 青土社 3,990円
『リズム・サイエンス [CD付]』P・D・ミラー(DJスプーキー) 青土社 2,520円
『千のムジカ』平井玄 青土社 価格未定
『ヨーロッパ世紀末の芸術論』ホフマンスタール 青土社 価格未定
『マヤ文明の興亡』J・エリック+S・トンプソン 新評論 4,725円
『エリアーデ自身を語る――迷宮の試煉』ミルチャ・エリアーデ 作品社 2,625円
『英雄が語るトロイア戦争』ピロストラトス 平凡社ライブラリー 1,365円
『ローマ建国以来の歴史(1)伝承から歴史へ』リウィウス 京都大学学術出版会 3,197円

ボッティングの定評あるフンボルト伝に注目。アレクサンダー・フォン・フンボルト(1769-1859)はドイツの博物学者で探検家(言語学者のヴィルヘルム・フォン・フンボルトは彼の兄)。近代地理学の祖と仰がれている。かのダーウィンは「フンボルトの著書を読んで自分の人生の方向が決まった」と述べた。著書の日本語訳に『新大陸赤道地方紀行』全三巻(大野英二郎+荒木善太訳、「17・18世紀大旅行記叢書」第二期第九~十一巻、岩波書店、2001年)がある。主著は博物学の古典である大作『コスモス』。『コスモス』の内容については、たとえば久我勝利『知の分類史』(中公文庫ラクレ、07年1月)の76頁以下に簡単な解説がある。

十月は青土社の書目が粒揃いだ。長原氏の単独著は89年の『天皇制国家と農民――合意形成の組織論』(日本経済評論社)以来であり、約20年ぶりの新刊ということになる。なお、『天皇制国家と農民』は現在オンデマンド版が入手可能である。


◎五月(ごがつ):某出版社取締役。近刊情報をご提供は ggt0711【アットマーク】gmail.com までお願いします。
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by urag | 2008-09-26 01:31 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 22日

注目新刊:アガサンスキー『性の政治学』産業図書

a0018105_225517.jpg性の政治学
シルヴィアンヌ・アガサンスキー(Sylviane Agacinski, 1945-):著 丸岡高弘:訳
産業図書 08年9月 本体2,800円 46判上製272頁 ISBN978-4-7828-0165-9

■版元紹介文より:男性と女性が異なった性に属しているという事実を無視すると、必然的に男性中心主義の罠におちいってしまう。男性と女性の差異は自然に根拠をもっている。しかし社会の中でこの差異にどのような意味をあたえるかは交渉によって決定するしかない。だから「性の政治学」が必要なのである。

■原書:"Politique des Sexes", 1998/2001, Seuil.

■目次:
混成性(ミクシテ)にかんする補足〔第二版序文〕
前書き
差異
 人間の二元性
 差異のさまざまな表現
 自由と生殖能力
 男性的普遍性
親子関係
 アイデンティティと同性愛
 二重の起源
 プラトン対アリストテレス
政治
 戦争か政治か
 フランスにおける性的解放と旧弊さ
 平等
 男女同数制(パリテ)
訳者あとがき
人名索引

★写真の通りオビなしの本です。オビに慣れすぎてしまっている現代人にとってはやや素っ気ない感じですね。弊社でもオビなし本を作ったとき、「オビがありません」とお客様からお電話をいただくことがありました。それはさておき、アガサンスキーの本邦初訳本です。彼女の著作の日本語訳は、論文単位では『Anyplace』(NTT出版)での発表などがありますが、単独著の翻訳は初めて。デリダ以後のフランス現代思想を代表する哲学者の重鎮の一人で、社会科学高等研究院(EHESS)教授です。

★父親はポーランド移民。ドゥルーズのもとで学び、キルケゴール論で哲学者デビュー。デリダらとともに国際哲学コレージュの創設に関わり、創設後ほどない1984年には、ジャック・デリダとの間に「ダニエル」という名前の息子が生まれます。94年には政治家のリオネル・ジョスパンと結婚(ジョスパンは97年から02年、フランス首相を務めました)。

★アガサンズキーの著書には、78年『私語――ゼーレン・キルケゴールの思想と死』、94年『自我中心主義批判――他者の問い』、96年『ヴォリューム――建築における哲学と政治』、97年『性の政治学』(上記新刊)、00年『時の渡し守――近代性と郷愁』、02年『中断された日記――2002年1月25日~5月25日』、07年『性の形而上学』、07年『アンガージュマン』などがあります。

★ちなみにデリダと彼の寡婦であるマルグリットさん(旧姓オクチュリエ)は精神分析家との間に、「ピエール」と「ジャン」という二人の息子がいます(つまりデリダにはあわせて三人の息子がいるわけです)。前者は詩人で浩瀚なオッカム研究の書を博論で書いているピエール・アルフェリ。現在、デリダの遺族は遺稿管理の件でカリフォルニア大学と係争中と聞きます。詳しくはこちらの記事をご覧下さい。

★やや脱線しましたが、『性の政治学』はアガサンスキーが強く主張してきたパリテ(男女同数制:フランスにおいて議員数を男女同数と定める制度)の思想的根拠について詳しく書いたものだと言えます。「前書き」の書き出しはこうです、「こんなに本を書く意欲がたかまったことはなかった。わたしはなにもかんがえず、やりかけの仕事もほうりだしてとりかかった。まるで個人的な必要性にせまられたみたいに」(31頁)。彼女の論敵となったのは、政治家ロベール・バダンテールとその妻でフェミニズム思想家エリザベート・バダンテールでした。バダンテールによるアガサンスキー批判は『迷走フェミニズム』(新曜社、06年)で読むことができます。パリテ論争については、検索エンジンで引っかかってくる各種サイトをご覧下さい。

★「売春」について討論するアガサンスキーさんの動画

対論の相手は、保守的論調の『性の混乱』を昨年出版して話題を呼んだミシェル・シュネーデル。日本ではグールド論やプルースト論が翻訳されています。眼つきが怖い。
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by urag | 2008-09-22 22:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 22日

注目新刊一覧:08年8月4日~9月19日

08年8月4日から08年9月19日までの新刊で、いままでブログで取り上げ切れなかった書目を一挙にまとめてみました(いくつか言及済みのものあります)。ながーいリストですみません。それぞれの本に少なくとも一言ずつコメントを付したかったのですが、もっと長い投稿になってしまうので残念ながら断念。なお、価格はすべて本体価格です。

■古典系文庫
荘子 岸陽子訳 徳間文庫 952円
恋愛指南:アルス・アマトリア オウィディウス著 沓掛良彦訳 岩波文庫 560円
人間不平等起源論 ルソー著 中山元訳 光文社古典新訳文庫 743円
社会契約論/ジュネーヴ草稿 ルソー著 中山元訳 光文社古典新訳文庫 933円
ツァラトゥストラかく語りき ニーチェ原作 バラエティ・アートワークス企画・漫画 まんがで読破:イースト・プレス 552円
怠ける権利 ポール・ラファルグ著 田淵晉也訳 平凡社ライブラリー1,200円
新編 現代の君主 アントニオ・グラムシ著 上村忠男編訳 ちくま学芸文庫 1,500円
完全版 知恵の七柱(1) T・E・ロレンス著 J・ウィルソン編 田隅恒生訳 東洋文庫:平凡社 3,000円

回教概論 大川周明著 ちくま学芸文庫 1,000円
国体論及び純正社会主義〈抄〉 北一輝著 近藤秀樹編 中公クラシックス 1,800円
堕落論・日本文化私観 他二十二篇 坂口安吾著 岩波文庫 700円

■哲学・思想・社会
三つのエコロジー フェリックス・ガタリ著 杉村昌昭訳 平凡社ライブラリー 1,000円
ミシェル・フーコー講義集成(8)生政治の誕生 慎改康之訳 筑摩書房 5,500円
わたしは花火師です:フーコーは語る ミシェル・フーコー著 中山元訳 ちくま学芸文庫 1,000円
水と夢:物質的想像力試論 ガストン・バシュラール著 及川馥訳 法政大学出版局 4,200円
カインのポリティック:ルネ・ジラールとの対話 ルネ・ジラール+ドメーニカ・マッツ著 内藤雅文訳 法政大学出版局 5,000円
21世紀の歴史:未来の人類から見た世界 ジャック・アタリ1943-著 林昌宏訳 作品社 2,400円
彼女たち:性愛の歓びと苦しみ J-B・ポンタリス著 辻由美訳 みすず書房 2,600円

哲学の歴史 別巻 哲学と哲学史 中央公論新社 3,500円
ローマの名言一日一言:古の英知に心を磨く 渡部昇一編 致知出版社 1,143円
オッカム「七巻本自由討論集」註解(3) 渋谷克美訳注 知泉書館 5,000円
スピノザ入門 ピエール=フランソワ・モロー著 松田克進ほか訳 文庫クセジュ:白水社 1,050円
ライプニッツ 酒井潔著 清水書院 850円
カントの読み方 中島義道著 ちくま新書 700円
フッサール:傍観者の十字路 岡山敬二1970-著 白水社 2,800円
「かたち」の哲学 加藤尚武著 岩波現代文庫 1,100円
時間の正体:デジャブ・因果論・量子論 郡司ペギオ‐幸夫著 講談社選書メチエ 1,700円

異端信仰 G・R・エヴァンズ著 木寺廉太訳 教文館 1,600円
十八世紀叢書(10)秘教の言葉 サン=マルタンほか著 今野喜和人ほか訳 国書刊行会 9,500円
シュタイナー心経 シュタイナー著 西川隆範訳著 風濤社 2,000円
現代語訳 歎異抄 親鸞述 水野聡訳 PHPエディターズ・グループ 1,200円
宗教学の名著30 島薗進著 ちくま新書 820円

セレンディピティー:言語と愚行 ウンベルト・エコ著 谷口伊兵衛訳 而立書房 2,500円
自然と言語 ノーム・チョムスキー著 アドリアナ・ベレッティほか編 大石正幸ほか訳 研究社 2,800円
言葉の暴力:「よけいなもの」の言語学 ジャン=ジャック・ルセルクル1946-著 岸正樹訳 法政大学出版局 5,200円
金田一京助と日本語の近代 安田 敏朗1968-著 平凡社新書 880円

初版 ルイ・ボナパルトのブリュメール18日 カール・マルクス著 植村邦彦訳 柄谷行人付論 平凡社ライブラリー 1,500円
共通価値:文明の衝突を超えて シセラ・ボク著 小野原雅夫監訳 宮川弘美訳 法政大学出版局 2,500円
ナショナリズムの超克:グローバル時代の世界政治経済学 ウルリッヒ・ベック1944-著 島村賢一訳 NTT出版 3,800円
後期近代の眩暈:排除から過剰包摂へ ジョック・ヤング著 木下ちがやほか訳 青土社 2,800円
収奪のポリティックス:アラブ・パレスチナ論集成1969-1994 エドワード・W・サイード著 川田潤ほか訳 NTT出版 4,800円
イスラーム原理主義の「道しるべ」:発禁“アルカイダの教本”全訳+解説 サイイド・クトゥブ1906-1966著 岡島稔ほか訳・解説 第三書館 1,800円
沖縄/暴力論 西谷修・仲里効編 未來社 2,400円
貧困・開発・紛争:グローバル/ローカルの相互作用 幡谷則子+下川雅嗣編 上智大学出版 1,900円
カトリーナが洗い流せなかった貧困のアメリカ:格差社会で起きた最悪の災害 マイケル・エリック・ダイソン著 藤永康政訳 ブルース・インターアクションズ 2,800円
どうするオバマ? 失せろブッシュ! マイケル・ムーア著 夏目大訳 青志社 1,400円
新装版 シモン・ボリーバル:ラテンアメリカ解放者の人と思想 ホセ・ルイス・サルセド=バスタルド著 水野一監訳 春秋社 4,800円
増補版 希望の声:アラン・クレメンツとの対話 アウンサンスーチー著 大石幹夫訳 岩波書店 2,300円

素人の乱 松本哉・二木信編 河出書房新社 1,600円 978-4-309-24447-1
経済倫理=あなたは、なに主義? 橋本努1967-著 講談社選書メチエ 1,600円
生活保護が危ない:「最後のセーフティーネット」はいま 産経新聞大阪社会部著 扶桑社新書 760円
へんな判決 のり・たまみ著 ポプラ社 857円

■歴史・民俗
山の神:易・五行と日本の原始蛇信仰 吉野裕子著 講談社学術文庫 900円
蓬莱山と扶桑樹:日本文化の古層の探究 岡本健一1937-著 思文閣出版 5,500円
沈黙の神々(2) 佐藤洋二郎著 松柏社 1,600円

昭和天皇 第1部 日露戦争と乃木希典の死 福田和也1960-著 文藝春秋 1,619円
昭和天皇 第2部 英国王室と関東大震災 福田和也著 文藝春秋 1,714円
天皇の玉音放送 小森陽一著 朝日文庫 1,000円
63年目の攻撃目標:元B29搭乗員飛行記録 ハーセル・リード・バーン著 藤本文昭訳 創風社 1,800円
ペリリュー・沖縄戦記 ユージン・B・スレッジ著 伊藤真+曽田和子訳 講談社学術文庫 1,400円
一九四五年夏はりま:相生事件を追う こちまさこ著 北星社 2,300円

天災日記:鹿島龍蔵と関東大震災 武村雅之1952-編著 鹿島出版会 1,800円
流行性感冒:「スペイン風邪」大流行の記録 内務省衛生局編 東洋文庫 3,000円
病が語る日本史 酒井シヅ著 講談社学術文庫 1,050円
日本の金 彌永芳子著 東海大学出版会 2,800円
不許可写真 草森紳一著 文春新書 900円

新版 知られざるインド独立闘争:A・M・ナイル回想録 A・M・ナイル1905-1990著 河合伸訳 風濤社 2,800円
モスクワ攻防1941:戦時下の都市と住民 ロドリク・ブレースウェート著 川上洸訳 白水社 3,600円
ニューヨークのガラス 市田幸治1936-著 里文出版 1,600円
図説 不潔の歴史 キャスリン・アシェンバーグ著 鎌田彷月訳 原書房 3,200円
先史時代と心の進化 コリン・レンフルー1937-著 溝口孝司監訳 小林朋則訳 ランダムハウス講談社 2,300円

■辞書
世界のことば・辞書の辞典 ヨーロッパ編 石井米雄1929-編 三省堂 3,200円
世界のことば・辞書の辞典 アジア編 石井米雄編 三省堂 3,200円
外国映画原作事典 日外アソシエーツ 12,000円
外国地名よみかた辞典 日外アソシエーツ 12,000円
建築論事典 日本建築学会編 彰国社 3,200円
幻想図書事典 山北篤監修 新紀元社 2,600円
奇談異聞辞典 柴田宵曲編 ちくま学芸文庫 2,200円

■科学
生命と食 福岡伸一著 岩波ブックレット 480円
アストロバイオロジー:宇宙が語る〈生命の起源〉 小林憲正1954-著 岩波科学ライブラリー 1,300円
生命誌 2007 vol.53-56 生る 中村桂子編集 JT生命誌研究館 1,524円
バイオフィリア:人間と生物の絆 E・O・ウィルソン著 狩野秀之訳 ちくま学芸文庫 1,100円
宇宙創成はじめの3分間 S・ワインバーグ著 小尾信彌訳 ちくま学芸文庫 1,200円
ホーキング宇宙の始まりと終わり:私たちの未来 スティーヴン・W・ホーキング著 向井国昭監訳 倉田真木訳 青志社 1,500円
胎児の脳老人の脳:知能の発達から老化まで アルベルト・オリヴェリオ+アンナ・オリヴェリオ・フェッラーリス著 川本英明訳 創元社 2,300円
ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト:最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅 ニール・シュービン著 垂水雄二訳 早川書房 2,000円
スマリヤン先生のブール代数入門:嘘つきパズル・パラドックス・論理の花咲く庭園 R・スマリヤン著 川辺治之訳 共立出版 2,500円

なぜ風は吹くのか:気候変動の歴史と地球温暖化 マッシス・レヴィ著 望月重ほか訳 鹿島出版会 2,400円
環境活動家のウソ八百 リッカルド・カショーリ+アントニオ・ガスパリ著 草皆伸子訳 新書y:洋泉社 760円
水はめぐる:もしも地球がひとつの井戸だったら ロシェル・ストラウス作 ローズマリー・ウッズ絵 的場容子訳 汐文社 1,800円
千年前の人類を襲った大温暖化:文明を崩壊させた気候大変動 ブライアン・フェイガン著 東郷えりか訳 河出書房新社 2,400円

■芸術
実体への旅:1760年~1840年における美術、科学、自然と絵入り旅行記 バーバラ・M・スタフォード著 高山宏訳 産業図書 8,000円
幽霊名画集:全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション 辻惟雄監修 ちくま学芸文庫 1,500円
日本の図像:鳥獣虫魚 榊原吉郎解説 ピエ・ブックス 3,800円
ルシアン・フロイド セバスチャン・スミー著 チバ・イチコ訳 タッシェン・ジャパン 1,500円
もうひとつの国へ 森山大道著 朝日新聞出版 2,600円
Slowly Down the River:往にし方の三峡をめぐる旅 小川康博1968-写真 クレオ 2,800円
廃電車レクイエム:昭和の空地にあった不思議なのりもの 丸田祥三著 岩波書店 1,800円
増補新訂版 60年代街角で見たクルマたち ヨーロッパ車編 浅井貞彦写真 高島鎮雄監修 三樹書房 2,400円
アニメはいかに夢を見るか:『スカイ・クロラ』制作現場から 押井守編著 岩波書店 1,600円
東京アートサイト:東京でいま注目のアートに出会える厳選サイト ギャップ・ジャパン 1,900円
生とデザイン 向井周太郎著 中公文庫 1,143円

■文芸
レウキッペとクレイトポン アキレウス・タティオス著 中谷彩一郎訳 西洋古典叢書:京都大学学術出版会 3,100円
ペソア詩集 澤田直訳編 思潮社 1,165円
プラハ カフカの街 エマヌエル・フリンタ1923-1975著 ヤン・ルカス写真 阿部賢一訳 成文社 2,400円
カフカ・セレクション(2)運動/拘束 平野嘉彦編 柴田翔訳 ちくま文庫
寄宿生テルレスの混乱 ムージル著 丘沢静也訳 光文社古典新訳文庫 705円
火を熾す ジャック・ロンドン著 柴田元幸訳 スイッチ・パブリッシング 2,100円
箱に入った男 アントン・P・チェーホフ作 イリーナ・ザトゥロフスカヤ絵 中村喜和訳 未知谷 2,000円
ダダ追想 ルイ・アラゴン1897-1982著 マルク・ダシー編 川上勉訳 萌書房 2,800円
天使の蝶 プリーモ・レーヴィ著 関口英子訳 光文社古典新訳文庫 724円
完全版 時計じかけのオレンジ アントニイ・バージェス著 乾信一郎訳 ハヤカワepi文庫 740円
ディファレンス・エンジン(上下)ウィリアム・ギブスン+ブルース・スターリング著 黒丸尚訳 ハヤカワ文庫 各840円

江戸川乱歩短篇集 千葉俊二編 岩波文庫 800円
復刻 江戸川乱歩全集(12)大暗室・地獄風景・指環 江戸川乱歩著 沖積舎 3,000円
立原道造・堀辰雄翻訳集:林檎みのる頃・窓 岩波文庫 660円
八ケ岳挽歌:随想八ケ岳 続 山口耀久著 平凡社ライブラリー 1,500円

■読書・業界
著作権保護期間:延長は文化を振興するか? 田中辰雄+林紘一郎編著 勁草書房 3,000円 
本棚(2)ヒヨコ舎編 アスペクト 1,700円
文化大革命の記憶と忘却:回想録の出版にみる記憶の個人化と共同化 福岡愛子著 新曜社 4,400円
伝説の日中文化サロン上海・内山書店 太田尚樹著 平凡社新書 740円
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by urag | 2008-09-22 03:43 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 19日

注目近刊:ホッブズ『市民論』京都大学学術出版会

来月(08年10月)15日頃、ホッブズの『市民論』(1642年)が京大出版会から発売されるそうです。これまでに部分訳はありましたが、待望の完訳です。ホッブズの主著は言わずと知れた『リヴァイアサン』(1651年)ですが、彼の哲学体系三部作は、『市民論』と『物体論』(1655年)、『人間論』(1658年)の三作です。その第一作がついに読めるようになります。今年の人文書業界における「事件」とも言うべき注目書です。「近代社会思想コレクション」というのはシリーズ名だと思いますが、一発目にホッブズがくるわけなので、以後の書目にも期待大ですね。

・・・実は弊社もシリーズ「古典転生」の続刊予定でホッブズの「市民論」をエントリーさせているのをブレイエの本の裏広告でご覧になった方もいらっしゃると思いますが、弊社のものはもう少し時間がかかりそうです。

市民論 (近代社会思想コレクション1)
トマス・ホッブズ:著 本田裕志:訳
京都大学学術出版会 本体3,900円 四六判上製458頁 ISBN978-4-87698-753-5

■版元紹介文より:本書は、トマス・ホッブズ(1588-1679)の主著のひとつ『市民論(De Cive)』の全訳で、最新のラテン語版を底本とし、直接に日本語に訳したものである。『市民論』はこれまで邦訳に恵まれなかったが、近代自然法思想の成立と展開を正確に理解するためにも、またホッブズ自身の政治思想の形成を知るためにも、本書の読解は重要な意味をもっている。
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by urag | 2008-09-19 23:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 19日

注目近刊:山形浩生訳『服従の心理』河出書房新社

アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラム(Stanley Milgram, 1933-1984)の『服従の心理』は、いわゆる「アイヒマン実験」の実録本で、かつて岸田秀さんの訳で1975年に河出書房新社から刊行され、その後1980年と1995年にも再刊された現代の古典です。しばらく品切状態が続いていて、アマゾン・マーケットプレイスなどでは一万円以上の高額で古書が販売されていました。復刊が待望されていた本ですが、山形浩生さんの新訳が遠からず刊行されるようです。河出さんでは10月までの刊行書目はすでに決まっているようなので、11月以降の刊行ではないかと推察します。たいへん楽しみです。

服従の心理
スタンレー・ミルグラム:著 山形浩生:訳
河出書房新社 本体3,500円 46判336頁 ISBN978-4-309-24454-9

■版元紹介文より:ふつうの人の心には〈悪〉がひそむのか? 権威のもとでは信じられないほど残酷なことを誰もがやってしまう――それを実証し世界を震撼させた、通称アイヒマン実験。心理学史上に燦然と輝く名著、山形浩生による新訳決定版!
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by urag | 2008-09-19 22:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 17日

今週の注目新刊:ド・フォントネ『動物たちの沈黙』彩流社

動物たちの沈黙――《動物性》をめぐる哲学試論
エリザベート・ド・フォントネ:著 石田和男・小幡谷友二・早川文敏:訳
彩流社 08年9月 本体7,000円 A5判上製798頁 ISBN978-4-7791-1338-3

■帯文:《動物性》という観点から、約2500年にもわたる西洋思想史の断面を見事に切り取ってみせた画期的大著。
■原書:Le Silence des bêtes. La philosophie à l’épreuve de l’animalité, Paris, Fayard, 1999.

■著者:エリザベート・ド・フォントネ(Elisabeth de Fontenay, 1934-)哲学者。『マルクスのユダヤ的フィギュール』(1973年)、『ディドロあるいは魔法の唯物論』(1986年)、『プルタルコス「動物論三篇」における強者の論理』(1992年)、『千と一つのお祭り――宗教についての小講和』(2005年)、『まったくの別問題――ジャン=フランソワ・リオタールへの質問』(2006年)、『動物があなたを眺めるとき』(2006年)、『人類を攻撃せずに――動物問題についての考察』(2008年)など。

■訳者:
石田和男(1948-)横浜薬科大学講師。
小幡谷友二(1969-)中央大学、明治学院大学、立正大学非常勤講師。
早川文敏(1971-)京都産業大学、同志社大学、同志社女子大学非常勤講師。

★本日08年9月17日店頭発売開始。ド・フォントネは論文では翻訳がありましたが、単独著の日本語訳は本書が初めてです。親族をアウシュヴィッツ強制収容所で亡くしたと聞くド・フォントネは、「ユダヤ」を自らの研究の中核に置いてきた哲学者で、ショアー記憶財団のショアー教育委員会理事長を務められています。レヴィナスやデリダらに続く、20世紀フランスのユダヤ系知識人を代表する一人です。今回の新刊はまだ私は入手していませんが、上記リンク先の版元ドットコムさんから購入できますので、どうぞご利用ください。カード決済も可。

★補足情報:動物論はフランス現代思想における大きなトピックです。97年夏にスリジー=ラ=サルで開催されたデリダをめぐる大きなコロックも、主題は動物論でした(論文集『自伝的動物――ジャック・デリダの周辺』1999年、ガリレ刊を参照)。デリダが"L'animal que je suis"を発表したのはこの時です。参加者はジャン=リュック・ナンシー、フィリップ・ラクー=ラバルト、マルク・フロマン=ムーリス、ペーター・サンディ、マリ=ルイーズ・マレ、トマス・デュトイト(デュトワ)、ニコラス・ロイル、ヘント・デ・ヴリース、アキラ・ミズタ・リピット(リピット水田堯)、等々。ド・フォントネは出席していませんが、このコロックが国内外で大きな思想的インパクトを持っていたのは確かだろうと思います。この時のラクー=ラバルトの発表「忠実さ」は、郷原佳以さんの訳で、先日刊行された「現代詩手帖特集版2008:ブランショ生誕100年」に収録されています。

***

08年9月22日追記:

a0018105_0433921.jpg★入手しました。カバーが本体より短い!とビビッていたら仕様でした。天の部分からのぞいている青い部分が本体です。印象的な装丁は宗利淳一さんによるもの。弊社でもお世話になっているデザイナーさんです。論創社さんの「ドイツ現代戯曲選」シリーズの装丁など、素晴らしいですよね。

★さて本書の魅力は、古代から現代までの西洋思想史を博捜するその展望の広さなのですが、それを伝えるには目次を転記するのが一番だろうと思います。しかし実際のところ、目次自体も本書のボリュームに比して、細かく長大なので、全20部構成の各部各章においてフィーチャーされている思想家たちを列記することで代えさせてください。序文、第1部、第20部は特にフィーチャーされている人物がいないので、それ以外の各部について記します。重複している名前もありますが、そのままを転記しています。

■目次:
序文
第一部:動物の無-言への歩み
第二部:仲介者たち
 ホフマンスタール/ドゥルーズ/フローベール/レヴィ=ストロース
第三部:変身と輪廻
 オウィディウス/ソクラテス以前の哲学者たち、そしてプラトン/プロティノス
第四部:さかさまの人間主義
 アリストテレス/ストア派/エピクロス派、ストア派/ルクレティウス
第五部:人間性の侵犯
 オルペウス教徒、キュニコス派、ピュタゴラス派/ポルピュリオス/プルタルコス/
第六部:ギリシア的な優しさ
 テオプラストス/プルタルコス/テオプラストス、プルタルコス/アレクサンドリアのフィロン/懐疑主義者
第七部:生贄の時代
 モース、バタイユ/古代ギリシア人/ユダヤ教
第八部:子羊の勝利
 キリスト教/クローデル、ブロワ
第九部:噛み合わない論争
 アウグスティヌス/デカルト/マルブランシュ/ベール
第一〇部:錯乱と夢
 ベーコン/ブージャン、デカルト、ライプニッツ/レペ、コンディヤック、ラ・メトリ、ルソー
第一一部:さまざまな境界
 モンテーニュ/シャロン/ガッサンディ、ラ・フォンテーヌ、ベルニエ/ロック/ライプニッツ
第一二部:ああ! でも人間は、人間はだね……
 ヒューム/ビュフォン/コンディヤック/ディドロ、モーペルチュイ/ラ・メトリ、エルヴェシウス
第一三部:苦しみと思考
 ブリエ/ルロワ/マンデヴィル、ルソー/メリエ/ヴォルテール
第一四部:再確立
 ルソー/ヘルダー/カント/フィヒテ/ヘーゲル
第一五部:似たものによる実験
 クロード・ベルナール/ダーウィン
第一六部:本来の意味と比喩的な意味
 ショーペンハウアー/ニーチェ/ミシュレ
第一七部:動物は世界をもっているか?
 フッサール/メルロ=ポンティ/ハイデガー
第一八部:存在あるいは他社の彼方に
 レヴィナス、ラヴァーター/アール、リシール、フランク、デリダ、ダストゥール/デリダ/デリダ
第一九部:重苦しい気分
 アドルノ、ホルクハイマー/デーブリーン、シンガー、グロスマン、プリモ・レヴィ
第二〇部:眠れる森の動物たち
訳者あとがき
人名索引
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by urag | 2008-09-17 23:47 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 09月 16日

工作舎さんが編集者を募集中、応募締切08年10月末

版元の工作舎さんが編集者を募集されています。「30歳くらいまでの編集者求む。仕事内容は、書籍の企画・編集およびクライアントから受注した販促ツールやパンフレットなどのページ物の企画・編集制作。08年10月31日締切」とのことです。
詳細は右記をご覧下さい→ http://www.kousakusha.co.jp/recruit.html
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by urag | 2008-09-16 18:25 | 雑談 | Trackback | Comments(0)