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2008年 07月 31日

洋販倒産、青山BCはブックオフの支援で民事再生へ

業界紙「新文化」の08年7月31日付け速報記事「洋販が破産手続き開始の申立て、洋販ブックサービスはブックオフ支援で民事再生へ」によれば、「洋販(日本洋書販売株式会社)が資金繰りの悪化により今日付で破産手続き開始の申立てをしたこと、これに伴い洋販ブックサービスは東京地裁に民事再生開始の申立てを行い、同日付で弁済禁止の保全処分及び監督命令の発令を受けた」そうです。

洋販ブックサービス傘下には、青山ブックセンターや流水書房があります。記事には「洋販ブックサービスが、「お詫びとお知らせ」(民事再生手続開始申立について)と題した文書を出版社など債権者に送付」とありますが、直取引が多少あった弊社にはまだ届いていないし、他社情報でもまだ届いていない会社があるようです。

さらに記事によれば、「民事再生にあたっては現在、ブックオフコーポレーションがスポンサーとして支援する意向を示しているという。債権者説明会は8月6日午後1時、東京・渋谷区代々木1-28-25(TEL03-5304-2071)のTKP代々木ビジネスセンター1号館で行われる」とのこと。ブックオフが支援する意向とのことで驚いています。いよいよ新刊を扱うリアル店舗事業にも本格的に進軍開始ということでしょうか(ブックオフはネットでは新刊をすでに扱っています)。

青山BCは2004年に運営母体の株式会社ボードが破綻。引き継いだ洋販ブックサービスも今回破綻。次の担い手がブックオフだったとして、どこまで支えられるのか、どこまで現状維持できるのか、未知数です。

ちなみに洋販は国内の洋書取次最大手で、傘下書店にランダムウォークがあります。洋販が倒産となれば、ランダムウォークも閉店ということになるのかなと思います。いっぽう青山BCと流水書房は当面、営業継続。青山BCは来月に、毎年恒例の「ブックフェス」を開催予定です。

洋販および洋販ブックサービスは、ともに「インターカルチュラルグループ(ICG)」傘下。今回の事案により、実質的にICGは解体となるのでしょうか。洋販の不調は業界にここ最近知れ渡っていましたが、残念でなりません。
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by urag | 2008-07-31 14:07 | 雑談 | Trackback | Comments(2)
2008年 07月 27日

【公開版】今週の注目新刊(第8回[第157回]:08年7月27日)

◎今週の注目新刊

ダルフールの通訳――ジェノサイドの目撃者
ダウド・ハリ:著 山内あゆ子:訳
ランダムハウス講談社 08年7月 1,890円 46判270頁 ISBN978-4-270-00388-6
■版元紹介文より:アフリカ北部スーダン――250万人以上が家を失い、30万人以上が殺害され、いまだ解決の目処さえたたぬ民族浄化問題「ダルフール紛争」。なぜこんなことが起きたのか?故郷ダルフールとそこに暮らす人々を愛するがゆえに、辛く苦しいその物語を世界に伝えることを、その身に課した男の心揺さぶる真実の記録。

虚構の「近代」――科学人類学は警告する
ブルーノ・ラトゥール(1947-):著 川村久美子:訳
新評論 08年8月 3,360円 A5判324頁 ISBN978-4-7948-0759-5
■帯文+版元紹介文より:かつて私たちが近代人であったことは一度もない。われわれは自然科学と社会科学の「分離」を近代の特徴と見なしてきた。しかし〈世界〉は両者の「混合」でしか成立しえない現実を歩んできた。近代人の自己認識の虚構性とは。先鋭的分析に基づく危機の処方箋。
★ブルーノ・ラトゥール既訳書:『科学論の実在――パンドラの希望』(川崎勝+平川秀幸:訳、産業図書、07年4月)、『科学が作られているとき――人類学的考察』(川崎勝+高田紀代志:訳、産業図書、99年3月)、『細菌と戦うパストゥール』岸田るり子+和田美智子:訳、偕成社文庫、88年11月)。

コペルニクスの仕掛人――中世を終わらせた男
デニス・ダニエルソン:著 田中靖夫:訳
東洋書林 08年7月 3,360円 46判333頁 ISBN978-4-88721-748-5
■帯文より:地球は太陽のまわりを回転している――。今では常識とされる太陽系の構造を理論立てたコペルニクスの天球回転論は、後に世界を大きく揺さぶることになる。しかし25歳の若き数学者レティクス(1514-1574)と、コペルニクスが出会わなければ科学革命は起きえなかったかもしれない。では、レティクスとは、いかなる人物だったのか? これまで謎とされてきた影の仕掛人」の正体を明らかにする。初の本格評伝。
★魅力的な語り口で好感度が高く、面白く読めます。ニコラウス・コペルニクス(1473-1543)の地動説の書「天球回転論」には二つの訳書があります。『コペルニクス・天球回転論』(高橋憲一訳、みすず書房、93年12月)、『天体の回転について』(矢島祐利訳、岩波文庫、53年5月)。ちなみにここ数年で翻訳出版された研究書には以下のものがあります。『誰も読まなかったコペルニクス――科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険』(オーウェン・ギンガリッチ著、柴田裕之訳、早川書房、05年9月)、『コペルニクス的宇宙の生成(1)』(ハンス・ブルーメンベルク著、後藤嘉也ほか訳、法政大学出版局、02年12月)。

***

◎以前、「近刊チェック《知の近未来》」で取り上げたことがある書目で、発売になったもの。

『フロイトのイタリア――旅・芸術・精神分析』岡田温司:著 平凡社 3,990円
『歴史の交差点に立って』孫歌:著 日本経済評論社 2,100円
『妖精学大全』井村君江:著 東京書籍 8,190円
『書店の未来をデザインする』本の学校:編 唯学書房 2,310円
『イーハトーブ温泉学』岡村民夫:著 みすず書房 3,360円

※再度強調しておきますが、岡田さんのこのところの新刊刊行ペースがすごいです。6月には『イタリア現代思想への招待』(講談社選書メチエ)と『肖像のエニグマ――新たなイメージ論に向けて』(岩波書店)。


◎実に粒揃いな青土社の新刊と近刊。9月近刊には★印を付けています。

『オリエンタル・ジプシー――音・踊り・ざわめき』関口義人:著 2,730円
『新しい貧困――労働、消費主義、ニュープア』ジグムント・バウマン:著 伊藤茂:訳 2,520円
『壁画洞窟の音――旧石器時代・音楽の源流をゆく 新発見の旅』土取利行:著 2,310円
『後期近代の眩暈――排除から過剰包摂へ』ジョック・ヤング:著 木下ちがやほか:訳 2,940円★
『要塞都市LA〔増補新版〕』マイク・デイヴィス:著 村山敏勝+日比野啓:訳 3,570円★

※ジョック・ヤング(1942-)の訳書は、昨年に洛北出版から刊行され大きな反響を呼んだ『排除型社会――後期近代における犯罪・雇用・差異』(青木秀男+伊藤泰郎+岸政彦+村澤真保呂訳)に続く第二弾。今度の近刊は昨年刊行された"The Vertigo of Late Modernity"の翻訳だろうと思います。


◎その他、気になった単行本。

『ガブリシ』スズキ・コージ:作 ブッキング 1,680円
『誰の上にも青空はある』HABU:写真・文 ヴィレッジブックス 1,260円
『定本和の色事典』内田広由紀:著 視覚デザイン研究所 3,360円
『鉱物図鑑――美しい石のサイエンス』青木正博:著 誠文堂新光社 2,940円
『人形見』伽羅:著 たかはし・じゅんいち:写真 木耳社 08年7月 5,250円
『〔完全版〕水木しげる妖怪原画集――妖鬼化(5)中部-2』Softgarage 08年7月 3,000円
『神学大全 第33/34冊 第3部 第31問題-第37問題』トマス・アクィナス:著 稲垣良典:訳 創文社 5,250円
『建築家の果たす役割』レンゾ・ピアノ+安藤忠雄:著 NHK出版 998円
『遠きにありてつくるもの――日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』細川周平:著 みすず書房 5,460円
『心的現象論本論』吉本隆明:著 文化科学高等研究院出版局:発行 星雲社:発売 8,400円
『現代フロイト読本(2)』西園昌久:監修 北山修:編集代表 みすず書房 3,780円
『細胞の意思――〈自発性の源〉を見つめる』団まりな(1940-):著 NHKブックス 1,019円
『日本猟奇史 大正・昭和篇』富岡直方:著 国書刊行会 2,415円
『アメリカの雑誌ビジネス』 桑名淳二:著 風濤社 3,150円
『環 vol.34 2008Summer 特集:多民族国家中国の試練』藤原書店 3,360円
『季刊d/SIGN no.16 特集:廃墟と建築』中谷礼仁:特集監修 太田出版 1,785円

※アクィナス『神学大全』の完訳がいつになるのか気になります。1960年5月から刊行され、全45巻のうち、35点は刊行されました。一年で三冊出た年もありますが、数年に一冊しか出ない時もありました。一年に一冊ないし二冊出せたとして、あと早くて5年から10年はかかることになります。
※『現代フロイト読本(2)』の内容についての版元の説明は以下の通り。「ジークムント・フロイト(1856-1939)が残した二百余におよぶ著作のなかから重要著作を精選し、論文/著作成立の背景、その後の理論・概念の発展をフロイトの個人史・精神分析史との関わりから解説し、精神分析体系のダイナミズムに迫る。第2巻は『精神分析入門』(1916-17)から『防衛過程における自我の分裂』(1940)まで。対象喪失の意味を問い、自我の概念の提示、死の本能の考察から宗教論へ、人生と思索の関連が見えてくる」。


◎注目の文庫

『竹取物語〔改版〕』星新一:訳 角川文庫 460円
『百億の星と千億の生命』カール・セーガン:著 滋賀陽子+松田良一:訳 新潮文庫 700円
『ダライ・ラマ「死の謎」を説く』ダライ・ラマ:著 角川ソフィア文庫 780円
『ゲリラ戦争――キューバ革命軍の戦略・戦術〔新訳〕』チェ・ゲバラ:著 甲斐美都里:訳 中公文庫 740円


◎小林多喜二!

蟹工船
小林多喜二:著 雨宮処凛:解説 野崎六助:解題・注記
金曜日 08年7月 1,365円 46判190頁 ISBN978-4-906605-44-6

小林多喜二名作集「近代日本の貧困」
祥伝社新書 08年7月 819円 新書判336頁 ISBN978-4-396-11122-9
■収録作品:「オルグ」「地区の人々」「残されるもの」「疵」「失業貨車」「山本巡査」「銀行の話」など全10編。

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◎先週分で書ききれなかった書目。

『「生きづらさ」について――貧困、アイデンティティ、ナショナリズム』雨宮処凛+萱野稔人:著 光文社新書 798円
『パール判決を問い直す――「日本無罪論」の真相』中島岳志+西部邁:著 講談社現代新書 735円
『昭和とは何であったか――反哲学的読書論』子安宣邦:著 藤原書店 3,360円
『抵抗の同時代史――軍事化とネオリベラリズムに抗して』道場親信(1967-):著 人文書院 2,940円
『中国臓器市場』城山英巳(1969-):著 新潮社 1,470円
『折り返し点 1997-2008』宮崎駿(1941-):著 岩波書店 2,835円
『日本家系・系図大事典』奥富敬之:著 東京堂出版 12,600円
『古典ユダヤ教事典』長窪専三:著 教文館 18,900円
『新錬金術入門』大槻真一郎(1926-):著 ガイアブックス:発行 産調出版:発売 1,260円
『モラリア(1)』プルタルコス:著 瀬口昌久:訳 京都大学学術出版会 3,570円
『小さな哲学史』アラン:著 橋本由美子:訳 みすず書房 2,940円
『ガラス蜘蛛』モーリス・メーテルリンク:著 高尾歩:訳 工作舎 1,890円
『ユリイカ』ポオ:著 八木敏雄:訳 岩波文庫 588円
『セビーリャの理髪師』ボーマルシェ:著 鈴木康司:訳 岩波文庫 525円
『イタリア映画史入門 1905-2003』ジャン・ピエロ・ブルネッタ:著 川本英明:訳 6,090円
『どすこい出版流通――筑摩書房「蔵前新刊どすこい」営業部通信1999-2007』田中達治(1950-2007):著 ポット出版 1,890円
『酷道をゆく(2)日本全国の「酷い国道」をまだまだ走る!!』イカロス出版 1,680円

※スターダストプロモーションが“文庫+写真集”の新ブランドSDP Bunko「文学日和~晴れたらいいな」を立ち上げました。SDPの発表によれば、「第1弾シリーズとして夏帆(宮沢賢治『注文の多い料理店』)、山下リオ(夏目漱石『こころ』)、岡本杏理(樋口一葉『たけくらべ』)、早見あかり(芥川龍之介『蜘蛛の糸』を7月20日に同時発売。それぞれ表紙と巻頭グラビア8ページを飾っている。第2弾は9月27日に発売予定。第5弾までのシリーズ全20作まで刊行予定」とのこと。そうくるか~。価格も400~500円とたいへんお値打ち。これじゃあつい買っちゃうじゃないか! ずるいぞ! なんなんだこの夏帆ちゃんの横顔の可愛さは! 思わずニヤけちゃうじゃないか! 花が似合うあかりちゃん、海辺のリオちゃん、物思い顔の杏理ちゃん、こういうのは若い読者よりおじさんを悶絶させることになるんだろうな。反則だ! ……いや、究極の販促か。少女系だけじゃなくて、少年系もそのうち出すのだろうか。
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by urag | 2008-07-27 03:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback(2) | Comments(0)
2008年 07月 26日

近刊チェック《知の近未来》:08年7月25日

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■「近刊チェック《知の近未来》」/ 五月
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さいきんパソコンの調子が悪いのか、セキュリティソフトとその他の更新済みソフトが競合しているのか、動作が遅い。癪に障って強制終了を連発しようものならますます事態が悪くなるので、パソコンの傍らに雑誌を置いて、処理待ちの際にぱらぱらめくる。以前からカミングアウトしていることだけれども、私は誠文堂新光社の隔月デザイン誌『アイデア』の愛読者なので、最新号をめくっては近刊の造本に思いを馳せたりする。

傍らに置いているのは『アイデア』だけではなくて、最近思わず食い入るように読んだのは、月刊から隔月刊へとリニューアルされたアジア太平洋資料センター(PARC)の雑誌『オルタ』である。リニューアル創刊号となる08年7-8月号は「徹底特集=世界食糧危機」となっていて、粒揃いの記事が並ぶ。

http://www.parc-jp.org/alter/index.html

『オルタ』は編集担当の細野秀太郎さんが営業・宣伝・広告営業・発送・販売管理をたった一人で兼ねているそうで、苦労が偲ばれるが、一人で作られたものだからこそ誌面の流れに一貫した配慮の個性が感じられる。一部800円。基本的に直接購読が中心のようで、販売店を現在募集中とのことだ。人文社会系のしかるべき売場に欠かせないコンテンツであると保証できる。次号の特集は「1995年」だそうだ。

ちなみにリニューアル創刊号の裏表紙は、松本哉『貧乏人の逆襲』(筑摩書房)の全面広告で、思わず吹き出してしまう。「格差社会に反乱を起こし、貧乏人が勝手に生きるための前代未聞の生活術」と謳われた同書は、最近私が読んだ本の中で、とりわけ大笑いさせてもらった痛快な本だ。大笑いと言っても、馬鹿にしているのではなくて、その逆である。

生き辛い世の中で、人生の選択がますます難しくなっている昨今、この本は通常の常識人だったら思いもしないようなブレイクスルーを超低速で(しかし時折は電光石火の如く速く)次々と繰り出す。土俵にしがみつかなくてもいい、私たちはもっと自由に生きることができる。松本のように生きるかどうかは別として、世間のしがらみを笑い飛ばし、心と魂を解放する準備運動へと、この本は読者を導いてくれるだろう。

以下にピックアップした来月刊行予定の本の中には、松本の次の新刊も含まれている。

08年08月
06日 アントニオ・グラムシ『新編 現代の君主』ちくま学芸文庫 1575円
06日 辻惟雄:監修『幽霊名画集』ちくま学芸文庫 1575円
06日 大川周明『回教概論』ちくま学芸文庫 1050円
06日 富士正晴:訳『現代語訳 江戸怪異草子』河出文庫 693円
06日 ジル・ドゥルーズ『ニーチェと哲学』河出文庫 1575円
07日 松本哉+二木信:編『素人の乱』河出書房新社 1575円
07日 ダライ・ラマ『平和のために今できること』ダイヤモンド社 1260円
08日 ペマ・ギャルポ+石平『ならずもの国家中国の本性』ワック 980円
12日 M・オンフレ『哲学者、怒りに炎上す。』河出書房新社 1575円
20日 信原幸弘+原塑:編『脳神経倫理学の展望』勁草書房 3308円
20日 加藤尚武『「かたち」の哲学』岩波現代文庫 1155円
20日 高杉一郎『わたしのスターリン体験』岩波現代文庫 1155円
20日 宇沢弘文『ケインズ「一般理論」を読む』岩波現代文庫 1260円
20日 オウィディウス『恋愛指南 アルス・アマトリア』岩波文庫 903円
20日 『立原道造・堀辰雄翻訳集 林檎みのる頃・窓』岩波文庫 693円
20日 千葉俊二:編『江戸川乱歩短篇集』岩波文庫 840円
22日 福沢諭吉『新版 福翁自伝』角川文庫ソフィア 860円
25日 河合隼雄『とりかへばや、男と女』新潮選書 1260円
下旬 瀬名秀明:編著『サイエンス・イマジネーション』NTT出版 3150円

河出書房新社の案内文によれば、『素人の乱』は、「前史からとんでもない1号店オープン、俺のチャリ返せデモ、PSE法反対デモなどを経て、杉並区議選=高円寺一揆とその後まで、総勢30名以上の証言と文章によって、噂の「素人の乱」の全軌跡をはじめてたどった注目の一冊」となっている。『貧乏人の逆襲』では語り手は松本哉一人だったけれども、今度の新刊は彼周辺の人々が証言を寄せているわけで、松本への熾烈なツッコミと賛辞が期待できて、面白そうである。

ドゥルーズの『ニーチェと哲学』は江川隆男による新訳。初訳は足立和浩訳で国文社から刊行されている。河出書房新社ではさらに、江川による新訳で、クレール・パルネとドゥルーズの対談本『対話』を8月以降に単行本で刊行するそうだ。同書はかつて田村毅訳『ドゥルーズの思想』として、大修館書店から刊行されていた。今回28年ぶりの新訳となるが、同原書の96年版にはドゥルーズの最後の論文「内在:一つの生……」の未発表の続編である断章「現働的なものと潜在的なもの」が収録されており、今回の新訳本ではむろんこの断章も訳出されることだろう。

チベット騒乱や北京オリンピックが影響しているのだろうが、ここ数ヶ月で、ペマ・ギャルポの新刊が矢継ぎ早に刊行されている。6月には『中国が隠し続けるチベットの真実――仏教文化とチベット民族が消滅する日』(扶桑社新書)、今月には『北京五輪後のバブル崩壊――鍵を握る三つの顔』(あ・うん)が刊行されている。さらに来月には上記『ならずもの国家中国の本性』だけでなく、『日本人が知らなかったチベットの真実(仮)』(海竜社)という本も発売予定のようだ。つい最近、雲南省昆明で連続バス爆破テロが起きていることもあり、日本のマスコミは北京オリンピックへの政治的な関心をますます深めつつあるように見える。書店のオリンピック・コーナーにも政治系の本を置いておくとたぶん売れるだろう。

発売日不詳だが、8月の新刊予定には以下の書目もある。

ロレンス:著/ウィルソン:編『完全版 知恵の七柱 1』東洋文庫 3150円
丹生谷哲一『増補 検非違使』平凡社ライブラリー 1785円
ポール・ラファルグ『怠ける権利』平凡社ライブラリー 1260円
石元泰博『めぐりあう色とかたち』平凡社 4410円
ヴィクトル・ストイキッツァ『影の歴史』平凡社 4830円
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『ニンファ・モデルナ』平凡社 2,625円
ルイ・アルチュセール『精神分析講義』作品社 2310円
アントニオ・ネグリ『野生のアノマリー』作品社 3150円
エドワード・サイード『収奪のポリティックス』NTT出版 5250円
ジェンキンズ+トライマン『マルコムX事典』雄松堂出版 10500円
立岩真也『良い死』筑摩書房 2940円
赤塚若樹『シュヴァンクマイエルとチェコ・アート』未知谷 2940円
乾淑子:編『戦争のある暮らし』水声社 3150円
多田克己:編『妖怪画本・狂歌百物語』国書刊行会 3990円
松本昌次『わたしの戦後出版史』トランスビュー 2940円

ロレンス『知恵の七柱』は東洋文庫に全三巻の訳書があるけれども、版元(平凡社)の説明によればこれは「著者自身が原稿を25%ほど削った簡約版」だったそうで、このたび完全版を全五巻の新訳本として刊行するとのこと。一方、同社のライブラリーで再刊されるラファルグ『怠ける権利』(親本は人文書院より72年刊で、長らく絶版だった)はまさに時宜を得たもので、版元の紹介文にも気合が入っている。

曰く「「労働」の神格化をあざけり倒し、「1日最長3時間労働」を提唱。120年以上も前にマルクスの娘婿が発した批判の矢が、〈今〉を深々と射抜く。「売られた食欲」等収録。プレカリアートも必読!」と。もし10年前に再刊されていたら、「プレカリアート必読」という謳い文句はなかっただろう。松本哉の『貧乏人の逆襲』や近刊書『素人の乱』と一緒に購読されることをお奨めしたい。小林多喜二『蟹工船』がもし本当に売れているならば、文芸書売場でも、松本やラファルグを置けばいい。さらに、毛利嘉孝『はじめてのDiY』(ブルースインターアクションズ)があればもっと盛り上がるだろうし、太田出版から刊行されている名著二点、マルクス『共産主義者宣言』や平井玄『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』もあったらいい。青土社から発売されたばかりのジグムント・バウマン『新しい貧困』も啓発的だ。バウマンはこんなことを書いている。

「「食客」や「詐欺師」、「失業手当中毒」に対する度重なるキャンペーンや、「失業の危険をおかして」よりよい賃金を求めている人々への再三の警告……生きるための労働という普遍的な規範を破ることが、今日もかつてと同じく貧困の重要な原因であり、貧困の解消策を失業者を労働市場に連れ戻すことに求めなければならないという、頑強な主張……公共政策のフォークロアの中で、労働者は、商品としてのみ、同様に商品化された生存手段へのアクセスの権利を主張しうる」(伊藤茂訳、210頁)。

バウマンが分析する情況は、もちろん日本にも存在する。文芸書、社会書、人文書を横断する「プレカリアート」棚が全国の書店において生成される機は熟しつつあると言えるだろう。新しい「政治の季節」が訪れつつある。

腐敗した官僚国家日本への限りない失望が、一部マスコミによってますます煽られる近隣諸国への憎悪としての排外主義やプチナショナリズムとあいまって、かつての右翼/左翼の二項分類では説明できない複合的なメンタリティが、この「季節」のなかで人々のあいだに出現しつつあるように見える。右も左もなく、絶望と怨嗟、そして僅かな希望と連帯への希求がせめぎあい、誰もが他人を信じきれず、社会に安心できず、恐怖を抱かずにはおれないような日々をなんとかしのいでいる。誰もが誰かにとってモンスターでありうる世界。一部マスコミはいっそう深刻に書き立てる。その不安の戦略は、いったい誰がいつ頼んだものなのか。電通の戦略十訓※は死んでいないのか? まったくうんざりだ。

サイードの『収奪のポリティックス』は副題が「アラブ・パレスチナ論集成1969-1994」となっている。みすず書房より刊行されている『オスロからイラクへ――戦争とプロパガンダ2000-2003』のいわば前史を確認できることになろう。なお、『収奪のポリティックス』を刊行するNTT出版では9月に、ウルリッヒ・ベック『ナショナリズムの超克――グローバル時代の世界政治経済学』を刊行する予定と聞く。

最後に、7月予定と聞いていたが、まだ未刊らしい書目の中から気になる本をピックアップする。
[7月27日追記:★印の書籍は記事配信後に発売を確認できた。]

ジェイムズ・ガードナー『バイオコスム(仮)』白揚社 3675円
ブルーメンベルク『コペルニクス的宇宙の生成 2』法政大学出版局 5,250円
上田昌文+渡部麻衣子:編『エンハンスメント論争』社会評論社 2835円
伊藤哲夫+水田一征『哲学者の語る建築』中央公論美術出版 2940円
マイケル・イグナティエフ『ライツ・レヴォリューション』風行社 2310円★
ルイーズ・エンゲルス『反核シスター』緑風出版 1890円
本の学校:編『書店の未来をデザインする』唯学書房 2310円★

『エンハンスメント論争』の副題は「身体・精神の増強と先端技術」。版元の案内文は以下の通り。「人間はどこまで人間を改造できるのか。ヒトゲノムの解析、人工授精、人工知能、遺伝子治療、美容整形、向精神薬、スマート・ドラック、成長ホルモン剤。生命科学、先端技術の発展は、人間の身体や精神に対する技術介入の可能性を急速に拡大させた。それはどこまで許されるのか? 最新の現状をめぐる多様な議論を集大成」。

先行する関連書には、生命環境倫理ドイツ情報センター編『エンハンスメント――バイオテクノロジーによる人間改造と倫理』(知泉書館、07年11月)や、町田宗鳳+島薗進編『人間改造論――生命操作は幸福をもたらすのか?』(新曜社、07年9月)などがある。私が勤務する月曜社が発売元となっている年刊誌『表象』の第二号「特集=ポストヒューマン」にも関連する議論が掲載されているので、ぜひご参照いただきたい。

たまには自社本の宣伝もさせてもらおう。8月8日発売予定で、ジュディス・バトラーの『自分自身を説明すること――倫理的暴力の批判』がそれである。シリーズ「暴力論叢書」の第三弾だ。詳しい案内は拙ブログに書いてある。ではまた来月。

※電通十訓 http://d.hatena.ne.jp/keyword/%c5%c5%c4%cc%bd%bd%b7%b1


◎五月(ごがつ):某出版社取締役。近刊情報をご提供は ggt0711【アットマーク】gmail.com までお願いします。
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by urag | 2008-07-26 03:56 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(5)
2008年 07月 22日

ブックフェア「思索する私たち~現代思想のゆくえ」@八重洲BC本店

a0018105_16381863.jpg東京駅前の八重洲ブックセンター本店4F人文書売場で、先週からブックフェア「思索する私たち~現代思想のゆくえ」が開催されています。8月12日(火)まで。弊社からは、『文化=政治』『書物の不在』といった品切本を含む人文系書籍の全点を出品しています。大型チェーン店で全点をフェアに使っていただくのは初めてで、とても嬉しいです。暑い日々が続きますが、皆様のお越しをお待ちしております。
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by urag | 2008-07-22 16:39 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
2008年 07月 21日

【公開版】今週の注目新刊(第7回[第156回]:08年7月20日)

自爆テロ
タラル・アサド:著 茢田真司:訳 磯前順一:解説
青土社 08年8月 2,520円 46判262頁 ISBN978-4-7917-6427-3
■版元紹介文より:「西洋/イスラーム」「文明/野蛮」「テロ/正しい戦争」……。自爆テロをめぐる議論は固定化された枠組みに囚われ、思考停止に陥っている。越境の思想家アサドが「文明の衝突」や 「正しい」戦争といった従来の議論を超えて、新たな時代の文明論を切り開く。
★タラル・アサド既訳書:『宗教の系譜――キリスト教とイスラムにおける権力の根拠と訓練』(中村圭志:訳、岩波書店、04年1月)、『世俗の形成――キリスト教、イスラム、近代』(中村圭志:訳、みすず書房、06年3月)、共編『宗教を語りなおす――近代的カテゴリーの再考』(磯前順一:共編、みすず書房、06年7月)。
★上記共編書には、アサドの論文「比較宗教学の古典を読む」のほか、酒井直樹「西洋と比較」、スチュアート・ホール「ジャマイカの宗教イデオロギーと社会運動」、ハリー・ハルトゥーニアン「記憶、喪、国民道徳」、磯前順一「死とノスタルジア」などの論考が収録されています。
★関連する注目新刊に以下があります。アミール・ミール『ジハード戦士真実の顔――パキスタン発=国際テロネットワークの内側』(津守滋+津守京子:訳、作品社、08年7月)。

グリム兄弟 メルヘン論集
ヤーコプ・グリム+ヴィルヘルム・グリム:著 高木昌史+高木万里子:編訳
法政大学出版局 08年7月 2,835円 46判226頁 ISBN978-4-588-00891-7
■収録論文:「古い伝説の一致について」(ヤーコプ)/「伝説と詩および歴史との関係についての考察」(ヤーコプ)/「民衆詩の収集に関する回状」(ヤーコプ)/「昔話の本質」(ヴィルヘルム)/「伝説の本質」(ヤーコプ)/「動物寓話の本質」(ヤーコプ)/「妖精案内」(ヴィルヘルム)/「アイルランド南部の妖精伝説と伝承」(ヴィルヘルム)/「スコットランド高地人の俗信と祝祭娯楽」(ヴィルヘルム)/「短編物語、昔話および伝説におけるシェイクスピアの典拠」(ヴィルヘルム)/「パンチャ・タントラ」(ヴィルヘルム)/「「ペンタメローネ」〈バジーレ〉」(ヤーコプ)/「ペロー童話集」(ヴィルヘルム)/「イギリス、スコットランド、アイルランド」(ヴィルヘルム)/「ロシアの昔話}(ヤーコプ)/「スペインの昔話」(ヴィルヘルム)。
★先行する論文集には『ドイツ・ロマン派全集(15)グリム兄弟』(国書刊行会、1989年4月)があります。収録作は以下の通り。「メルヒェン集――エーレンブルク稿」(ヤーコプ+ヴィルヘルム)/「自叙伝」「ヴィルヘルム追悼講演」「言語の起源について」「法の内なるポエジー」(以上、ヤーコプ)/「古代ドイツ文学の成立とその北欧文学との関係について」(ヴィルヘルム)。

シニェポンジュ
ジャック・デリダ(1930-2004):著 梶田裕:訳
法政大学出版局 08年7月 3,150円 46判267頁 ISBN978-4-588-00892-4
★2008年1月以降のデリダ新刊:2月『哲学の余白(下)』(法政大学出版局)/3月『条件なき大学』(月曜社)/4月『言葉を撮る――デリダ/映画/自伝』(サファー・ファティとの共著、青土社))/近刊『ならず者たち』(みすず書房)。
★2008年1月以降のデリダ論:5月『哲学の〈声〉――デリダのオースティン批判論駁』(スタンリー・カヴェル:著、春秋社)/6月『デリダ』(ジェフ・コリンズ:著、ちくま学芸文庫)、7月『デリダを読む』(ペネロペ・ドイッチャー:著、富士書店)。
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by urag | 2008-07-21 03:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 07月 16日

08年8月8日発売予定:ジュディス・バトラー『自分自身を説明すること』

a0018105_16164770.jpg◎08年8月8日発売予定新刊 【人文・哲学思想】

自分自身を説明すること――倫理的暴力の批判
ジュディス・バトラー:著 佐藤嘉幸+清水知子:訳
税込定価2625円 46判並製カバー装288頁 ISBN978-4-901477-42-0

内容:他者との関わり合いにおいて主体は形作られ、他者への責任=応答可能性において主体は自らを変革する。道徳が暴力に陥る危険性を問い質し、普遍性の押し付けによって個性を圧殺する倫理的暴力の論理に抗いつつ、危機の時代に「私」と「あなた」を結び直して希望の隘路を辿る、剣呑な哲学。暴力論叢書第三弾刊行!

目次◆第一章:自分自身の説明[呼びかけの光景/フーコー的主体/ポスト・ヘーゲル的問い /「あなたは誰か」]◆第二章:倫理的暴力に抗して[判断の限界/精神分析/「私」と「あなた」]◆第三章:責任=応答可能性[ラプランシュとレヴィナス――他者の優位/間になることをめぐるアドルノ/彼自身を批判的に説明するフーコー]◆訳者解説:「倫理」への転回

原著:”Giving an account of oneself”, by Judith Butler, 2005, New York: Fordham University Press.

***
『自分自身を説明すること』推薦文

アドルノとレヴィナスについての驚くほどオリジナルな解釈のなかで、ジュディス・バトラーは、倫理の問題が道徳的自己と暴力との共犯関係に不可避的に取り組まざるをえないことを説得的に示している。剏造的な再解釈の諸前提を提示しつつ、本書は、これら二人の著者についての議論、彼らの未来への遺贈が、ある意味で始まったばかりであることを示している。バトラーは、人間情念の最も残酷で最も破壊的な部分に対抗し、それを別の方向へと導くために哲学的知性の最大の力と悦びを結集する点で、真にスピノザ的精神において著述している。見事な議論とすばらしい文章によって、『自分自身を説明すること』は、現代の文化と政治を考える哲学者と学生にとって必ずや古典となり、必読書となるだろう。―—ヘント・デ・ヴリーズ(ジョンズ・ホプキンス大学)

アイデンティティと責任=応答可能性との交差をめぐる力強い探究である『自分自身を説明すること』は、私たちの時代の最も重要な思想家たち—アドルノ、フーコー、レヴィナス、ラプランシュ—と対話する最良のジュディス・バトラーを見せてくれる。これらの思想家が異議を申し立てようとする社会的、道徳的規範との関係でのみ現れる、アイデンティティの問題と対峙しつつ、バトラーは、自己理解の諸限界—―それは私たちを人間にしてくれる—との関係から、責任=応答可能性を再考しようとするのである。―—ジョナサン・カラー(コーネル大学)

『自分自身を説明すること』においてジュディス・バトラーは、自己認識を切望する際にさえ放棄され、耐え忍ばれ、経験されねばならないものとは何かと問うている。彼女は、人間の個体化に伴う衰弱について、大胆な仕方で探究を続けているのである。そこから彼女が示唆するのは次のようなことだ。つまり、自己意識の絶頂とは、洞察には危険が伴っており、知覚には裂け目があり、判断には根拠が乏しいことを自己について認識する点にある、と。本書は、勇気ある思想家による、勇敢な書物である。――—ヘイドン・ホワイト(カリフォルニア大学/スタンフォード大学)

***
著者:ジュディス・バトラー(Judith Butler)カリフォルニア大学バークレー校、修辞学・比較文学科教授。訳書に以下のものがある。『ジェンダー・トラブル』(竹村和子訳、青土社、1999 年)、『アンティゴネーの主張』(竹村和子訳、青土社、2002 年)、『触発する言葉』(竹村和子訳、岩波書店、2004 年)、『生のあやうさ』(本橋哲也訳、以文社、2007 年)。共著:『偶発性・ヘゲモニー・普遍性』(エルネスト・ラクラウおよびスラヴォイ・ジジェクとの共著、竹村和子+村山敏勝訳、青土社、2002 年)、『国家を歌うのは誰か』(ガヤトリ・C・スピヴァクとの共著、竹村和子訳、岩波書店、2008 年)。

訳者:佐藤嘉幸(さとう・よしゆき)京都大学大学院経済学研究科博士課程修了後、パリ第十大学大学院にて博士号(哲学)取得。現在、筑波大学大学院人文社会科学研究科専任講師。著書に『権力と抵抗―—フーコー、ドゥルーズ、デリダ、アルチュセール』(人文書院、近刊[2008 年])、共著に『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社、2008 年)などがある。

訳者:清水知子(しみず・ともこ)筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科修了。博士(文学)。現在、筑波大学大学院人文社会科学研究科専任講師。共著に『越える文化、交錯する境界—―トランス・アジアを翔るメディア文化』(山川出版社、2004 年)、『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社、2008 年)、訳書にスラヴォイ・ジジェク『ジジェク自身によるジジェク』(河出書房新社、2005 年)などがある。

***
■暴力論叢書

現代における〈暴力〉の多様なる位相と変容に迫る! デリダ=ハーバーマス以後の現代思想の最前線で活躍する重要思想家たちの星座を出現させるアクチュアルなシリーズ。初訳の思想家によるオリジナル論集多数。

破壊と拡散 〔暴力論叢書1〕
サミュエル・ウェーバー(1940-):著 野内聡(1971-):訳
05年11月 2520円 46判並製232頁 ISBN4-901477-20-X
戦争のスペクタクル化が進行する〈9.11〉以後の現代における政治的暴力の動態を分析。フロイト論文「戦争と死に関する同時代的なもの」の新訳を付す。松葉祥一氏評「アイデンティティと暴力および戦争との関係について、スリリングな議論を展開」。

他自律――多文化主義批判のために 〔暴力論叢書2〕
ヴェルナー・ハーマッハー(1948-):著 増田靖彦(1967-):訳
07年11月 2310円 46判並製200頁 ISBN978-4-901477-37-6
文化融合主義ではない多文化主義と、無条件に開かれた民主主義を展望する果敢な試み。十川幸司氏評「著者のアフォーマティヴという概念は、長年停滞している言語行為論をさらに先に進めるアイデアとなりうる」。

続刊予定
ヘント・デ・ヴリーズ
ピーター・フェンヴズ
ルイ・サラ=モランス
アレクサンダー・ガルシア・デュットマン
ジャコブ・ロゴザンスキー
ロドルフ・ガシェ
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by urag | 2008-07-16 16:02 | 近刊情報 | Trackback(1) | Comments(0)
2008年 07月 13日

【公開版】今週の注目新刊(第6回[第155回]:08年7月13日)

◎今週の三冊

聖なる幾何学――すべてのものに隠された法則を解読する
スティーヴン・スキナー:著 松浦俊輔:監訳
ランダムハウス講談社 08年7月 2,520円 B5変型判160頁 ISBN978-4-270-00327-5
■帯文より:我々はまだ宇宙についてわずかなことしか知らない。自然、音楽、美術、芸術――すべてのものの背後には隠された秩序が存在していた……。
★自然と人工物の両者に通底する「かたち」の美と聖性を幅広く渉猟し、分野ごとに簡潔に解説した、オールカラーの本。コンパクトにまとまっています。

個人化社会
ジグムント・バウマン(1925-):著 澤井敦+菅野博史+鈴木智之:訳
青弓社 08年7月 5,250円 A5判355頁 ISBN978-4-7872-3288-5
■版元紹介文より:高度に情報化されて個々人の選択と責任が重視される現代社会を生き抜く人々のありようを「個人化」という視角から読み解き、家族や宗教、貧困、労働、自由、愛、セックス、暴力など多様な素材をもとに、流動性が高まり不安定で不確実な社会状況を透視する。
★新シリーズ「ソシオロジー選書」第一巻。

民主主義への憎悪
ジャック・ランシエール:著 松葉祥一:訳
インスクリプト 08年7月 2,940円 四六判244頁 ISBN978-4-900997-18-9
■版元紹介文より:民主主義への新たな憎悪のイデオロギー――個人主義を標榜する行き過ぎた平等が社会と国家を蝕み、統治を揺るがせる――を分析し、この憎悪が寡頭制の支配と資本の支配を隠蔽することを暴きつつ、新自由主義的体制に抗する政治=デモスの係争を露出させんとするランシエール政治哲学のアクチュアルな展開。市場原理主義に対して公的領域の拡大を、不平等の拡大に対して平等を前提とする政治を訴え、現状批判に理論的基盤を与える待望のテクスト。2005年来日時の講演およびランシエール論を含む全著作・論文書誌、訳者解説を併録。
★ランシエール既訳書:単著『不和あるいは了解なき了解――政治の哲学は可能か』 (松葉祥一+大森秀臣+藤江成夫:訳、インスクリプト、05年4月)。共著『資本論を読む』(アルチュセール+バリバール+マシュレー+エスタブレ:共著、ちくま学芸文庫、96-97年)。
★ランシエール続刊予定:『沈黙する言葉』『美学における居心地の悪さについて』(以上、インスクリプト)、『イメージの運命』(平凡社)。
★出色のランシエール論:市田良彦『ランシエール――新〈音楽の哲学〉』(白水社、07年8月)。


◎今週のニュース

★『ドイツ表現派 1920年代の旅』(冬青社)は、北井一夫(1944-)さんによる「ドイツ表現派建築」の写真集。 北井さんは、伝統ある「木村伊兵衛写真賞」の第一回受賞者で、ドキュメンタリー写真の大家。JR中野駅下車徒歩12分のギャラリー冬青にて、今月いっぱいまで同書の写真展が開催中。

★キューバの元議長カストロの演説集が発売。『思想は武器に勝る――フィデル・カストロ自選最新演説集2003-2006年』(白野降雨訳、VIENT発行、現代書館発売)。引退後に日本で刊行された関連書は、2点の回顧録『少年フィデル』(柳原孝敦監訳、トランスワールドジャパン、07年10月)と『チェ・ゲバラの記憶』(柳原孝敦監訳、トランスワールドジャパン、08年5月)、そして雑誌特集『現代思想』08年5月臨時増刊号(総特集=フィデル・カストロ)。

★名著再刊!

*重版→
仮説社より、ギルバート『磁石〈および電気〉論』(板倉聖宣:訳・解説)。

*新装版→
法政大学出版局より、エルンスト・マッハを2点『認識の分析』と『時間と空間』。
鹿島出版会より、ギーディオン『機械化の文化史』とフラー+マークス『バックミンスター・フラーのダイマキシオンの世界』。

*普及版→
文化科学高等研究院出版局(星雲社発売)より、吉本隆明『心的現象論本論』。A5判2段組541頁、限定2000部、税込8,400円。

*文庫化→
ちくま学芸文庫より、アーサー・ケストラー『ヨハネス・ケプラー――近代宇宙観の夜明け』(親本:河出書房新社)。
講談社学術文庫より、ティルベリのゲルウァシウス『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』(親本:青土社)、ルース・ベネディクト『文化の型』(親本:社会思想社)、『ゴンチャローフ日本渡航記』(親本:雄松堂書店)。
講談社文芸文庫より、田村隆一『インド酔夢行』(親本:日本交通公社出版事業局→集英社文庫)。
ハルキ文庫より、ダライ・ラマ14世テンジン・ギャツォ『世界平和のために』(親本:『幸せに生きるために』角川春樹事務所)。

*選書化→
平凡社ライブラリーより、ハイデッガー『芸術作品の根源〔増補改訂版〕』(親本:平凡社)。
東洋文庫より、アーネスト・サトウ編著『明治日本旅行案内 東京近郊編』(親本:平凡社)。
中公クラシックスより、モンテスキュー『ローマ盛衰原因論』(親本:中央公論新社)。

*新訳→
ちくま文庫より、平野嘉彦編『カフカ・セレクション』全三巻刊行開始。第一巻「時空/認知』平野嘉彦訳を発売。収録作品は、「掟の問題について」「村医者」「万里の長城が築かれたとき」「あるたたかいの記」など34篇。続刊は、9月刊の第二巻「運動/拘束」柴田翔訳、11月刊の第三巻「異形/寓意」浅井健二郎訳。
イースト・プレスより、マキアヴェッリ『君主論――ビジネスで役立つ人心掌握の智恵150』。副題の通り、150の格言にまとめたもの。訳者の野田恭子さんは、同社よりバルタザール・グラシアンの以下の2点の本も手がけています。『賢く生きる智恵』(07年9月)、『本当に役立つ「人生の智恵」ノート』(08年4月)。
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by urag | 2008-07-13 23:18 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2008年 07月 08日

新規開店情報:月曜社の本を置いてくださる予定の本屋さん

これから開店する本屋さんで、弊社の本を扱ってくださる予定のお店を順次ご紹介しております。お近くにお越しの際はどうぞお立ち寄りください。

08年7月22日(火)
啓文堂神田駅前店:300坪
東京都千代田区神田鍛治町2-6-1 堀内ビルディング1F
※JR神田駅東口、中央通り向かいに路面店として出店。営業時間は9時から22時で、ターゲットは駅利用の通勤客および大手町界隈の30代~50代のオフィスワーカーとのこと。文庫、新書、ビジネス書、コンピュータ書、語学書、雑誌に重点。ターゲットから考えれば、開店は9時ではなく8時がよかったのではという気がしないでもありません。

08年7月25日(金)
戸田書店青森店:350坪
青森県青森市大字浜田字玉川196-11
※JR青森駅より約3キロにオープンするイオン系のショッピングモール「アプレ103」内に、独立型テナントとして出店。青森県下最大の書店になるとのこと。
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by urag | 2008-07-08 11:35 | 販売情報 | Trackback | Comments(0)
2008年 07月 07日

「週刊新潮」7月10日号に『洲之内徹文学集成』書評

「週刊新潮」08年7月10日号の、福田和也さん連載「闘う時評」第305回は「『洲之内徹文学集成』の刺激」と題し、弊社刊『洲之内徹文学集成』を取り上げてくださっています。見開き二頁、四段組の長文です。福田さん、ありがとうございました。

「洲之内徹の、『気まぐれ美術館』以外の文業を総てあるめた『洲之内徹文学集成』がこのほど発刊されました。芥川賞、横光利一賞などの候補に何度かなったことがある洲之内の小説は、『洲之内徹小説全集』として昭和五十八年に東京白川書院から刊行されていますが、古本市場でも入手困難になっていますし、文芸評論や美術関係のエッセイについては『おいてけぼり』に集約されていますけれど、それ以外のエッセイは再活字化されていなかったので、『集成』の刊行は、洲之内ファンのみならず、プロレタリア文学や戦争文学、戦後文壇史などに興味をもつ者には、見逃すことができません」。

「感心したのは、末尾に付された「解説ノート」がとても丁寧かつ周到なこと。洲之内の簡単な略伝にはじまり、各篇について、初出との異同や、書かれた時の洲之内の境遇、掲載誌では他にどのような記事、小説が載っていたか、他の洲之内作品のテーマやモチーフとの関連などが書かれています」。

「やはり興味をひかれるのは、昭和十三年から二十一年までの中国滞在中の文章です。特務機関員として八路軍の掃討戦に参加し、捕虜の尋問などに参加した洲之内の小説は、日本の戦争文学の最高峰に位置するものですが、同時にその凄惨さ、無情さにおいて、読者を拒んでもいます」。
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by urag | 2008-07-07 13:33 | 広告・書評 | Trackback | Comments(0)
2008年 07月 06日

【公開版】今週の注目新刊(第5回[第154回]:08年7月6日)

ドゥルーズ キーワード89
芳川泰久(1951-)+堀千晶(1981-):著
せりか書房 08年7月 2,100円 四六判並製266頁 ISBN978-4-7967-0283-6
■版元紹介文より:「欲望」「戦争機械」「器官なき身体」「ノマド」など哲学・文学批評・美学・倫理・政治哲学の諸領域を横断する89の基本概念を簡潔・明快に解説したドゥルーズ哲学への最良の入門書(詳細なビブリオグラフィを付す)。
★『ドゥルーズ――没後10年、入門のために』(河出書房新社、05年10月)、『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社、08年1月)などに続く、十周忌以後の注目のドゥルーズ論。フランス現代思想の中でも、とりわけドゥルーズを研究している日本人の層は、他の思想家に比べて厚いのではないでしょうか。昨年1月には、フランスのラルマッタン社から、白仁高志(1956-)さんの博士論文『ドゥルーズと内在の哲学』が刊行されています。

議論好きなインド人――対話と異端の歴史が紡ぐ多文化世界
アマルティア・セン(1933-):著 佐藤宏+粟屋利江:訳
明石書店 08年7月 3,990円 46判686頁 ISBN978-4-7503-2795-2
■帯文より:神秘主義でも、宗教原理主義でも、核兵器でも、IT産業や暗算力でもない、3000年の歴史に探る民主主義の水脈。ノーベル経済学賞受賞者が解き明かす真に学ぶべきインド。
★センの訳書の中で一番の大著が、彼の専門の厚生経済学ではなく、インド文化論だというのが面白いですね。アジアにおける多文化主義を考える上で、日本人にとっても啓発的な文献であると評価されるようになるのではないかと思います。

新宿駅最後の小さなお店ベルク――個人店が生き残るには?
井野朋也(1960-):著
ブルース・インターアクションズ 08年7月 1,680円 46判並製259頁 
ISBN978-4-86020-277-4
■版元紹介文より:新宿駅徒歩15秒、日本一の立地にあるインディーズ・カフェ「ベルク」。 「新宿」らしさを残しつつ、時代とともに変化し、サバイブしてきた店の歴史とチェーン店にはない創意工夫、ユニークな経営術が、この一冊で全てわかる。個人店がどのように生き残るかのヒントも満載。外食業コンサルタント押野見喜八郎による解説「個人店に必要なフィロソフィ」付き。
★かなり赤裸々にざっくばらんに舞台裏が書かれていて、思わず引き込まれる本です。理不尽な立ち退き要請に対峙する「現在」に言及した最終章には釘付けになります。井野さんの柔らかだけれど芯のある筆運びが実に魅力的です。帯文にある久住昌之さんの「ずっとずっとここにあって欲しい」という言葉が胸に沁みます。

***

◎今週の「別腹」

★今週は「古典」ものに収穫多し。
★まず西洋古典では、田川建三さんの驚異の個人訳『新約聖書』の第一巻「マルコ福音書/マタイ福音書」(作品社)、阿刀田高さんの『プルタークの物語』(上巻、潮出版社)。田川版『新約聖書』は07年8月の第三巻「パウロ書簡 その1」に続く第二回配本。阿刀田版「英雄伝」は月刊誌『潮』の連載を単行本化したもの。
★続いて東洋古典では、徳間文庫「中国の思想」シリーズの『老子・列子』(奥平卓:訳/大村益夫:訳)と、同文庫の『陽根譚――中国性史』(土屋英明:編訳)。さらに河出文庫では、『現代語訳 雨月物語・春雨物語』(上田秋成1734-1809:著、円地文子:訳)。同文庫では85年に水木しげるさんのイラスト付の『水木しげるの雨月物語』が刊行されていて、二点一緒に買っても千円ちょっとです。
★最後に軍略ものでは、『新陰流軍学「訓閲集」』(上泉信綱1508-1582:伝、赤羽根大介:校訂、スキージャーナル)と、『クラウゼヴィッツのナポレオン戦争従軍記』(クラウゼヴィッツ1780-1831:著、金森誠也:訳、ビイング・ネット・プレス)。前者は版元紹介文によれば、「日本最初の兵法書『訓閲集』を初めて公開。ここには、戦陣の組み方、太刀・槍の使い方、馬上での戦い方、武器・武具、城の攻め方・守り方、さらには築城法、吉凶の知り方、諜報つまりスパイ活動の方法まで、戦国時代の戦いに関するすべてが具体的に描かれている」とのことです。こちらで立ち読み可能。後者の訳者である金森誠也さんは自著『「霊界」の研究――プラトン、カントが考えた「死後の世界」』(PHP文庫、親本は同社06年刊『人間は霊界を知り得るか』)が発売されたばかりです。

★マックス・ウェーバーをめぐる羽入=折原論争に新展開です。羽入辰郎(1953-)さんがついに沈黙を破って500頁以上の大冊『学問とは何か――『マックス・ヴェーバーの犯罪』その後』を刊行。論争のきっかけとなった羽入本は『マックス・ヴェーバーの犯罪――『倫理』論文における資料操作の詐術と「知的誠実性」の崩壊』(ミネルヴァ書房、02年9月)。折原浩(1935-)さんによる批判は『ヴェーバー学のすすめ』(未來社、03年11月)。同氏の羽入批判の関連書は『大衆化する大学院――一個別事例にみる研究指導と学位認定』(未來社、06年10月)。なお、羽入さんは上記二点の間に、PHP新書で『マックス・ヴェーバーの哀しみ――一生を母親に貪り喰われた男』(07年11月)を刊行されています。

★自伝『スターリンとヒットラーの軛のもとで――二つの全体主義』(林晶:訳、ミネルヴァ書房)が翻訳されたマルガレーテ・ブーバー=ノイマン(1901-1989)は、ナチス強制収容所のサバイバー。訳書に『カフカの恋人ミレナ』(平凡社ライブラリー、93年11月)、『第三の平和』(全二巻、共同出版社、1954年)があります。

★人文書院の「叢書文化研究」第六弾は、太田好信(1954-)さんの『亡霊としての歴史――痕跡と驚きから文化人類学を考える』。同叢書のこれまでの既刊書は以下の通り。
01年2月:太田好信『民族誌的近代への介入――文化を語る権利は誰にあるのか』
01年3月:古谷嘉章『異種混淆の近代と人類学――ラテンアメリカのコンタクト・ゾーンから』
03年1月:ジェイムズ・クリフォード『文化の窮状――二十世紀の民族誌、文学、芸術』
04年5月:川橋範子『混在するめぐみ――ポストコロニアル時代の宗教とフェミニズム』
04年12月:ジェイムズ・クリフォード『人類学の周縁から――対談集』
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by urag | 2008-07-06 02:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)