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2006年 03月 31日

エスポジト三部作

a0018105_19465025.jpg先日、講談社の新雑誌「RATIO」についてご紹介しました。「イタリア現代思想の最前線」という連載が開始され、ロベルト・エスポジト(1950-)の論文「生政治、免疫、共同体」と、ジョルジョ・アガンベン(1942-)の論文「人間の仕事」(月曜社より刊行予定の『思考の潜勢力』に収録)、そして岡田温司(1954-)さんによる解説「イタリア現代思想への招待」を読むことができました。

ロベルト・エスポジトの論文に題名に掲げられている「生政治」「免疫」「共同体」といったキーワードは、彼の三部作に対応しています。すなわち、「ビオス」「イムニタス」「コムニタス」です。これらの三部作はいずれも未訳。刊行の順番としては以下の通りになります。

"Communitas: Origine e destino della comunità", 1998 (2006).
"Immunitas: Protezione e negazione della vita", 2002.
"Bíos: Biopolitioca e filosofia", 2004.

版元はすべてエイナウディ。トリノの名門出版社です。日本で言えば岩波書店のような存在でしょうか。ただ、名門といえども、話題の本をずっと切らさずに重版し続けるかというとそうではありません。第一作『コムニタス:共同体の起源と未来〔=運命〕』は今年一月に増補新版が刊行されるまで品切れでしたし、第二作『イムニタス:生〔命〕の保護と否定』は品切れのままです(いずれは新版が出るでしょうけれど)。そんなわけで、第三作『ビオス:生政治と哲学』しか入手できないという一時期がありました。

『コムニタス』はすでに各国語で翻訳されていて、フランス語訳版(2000年にPUFより刊行)には、ジャン=リュック・ナンシーによる序論、"Conloquium"が付されています。これが話題になったせいでしょうか、フランス現代思想に詳しい方がエスポジトに注目する例が増えているように思います。

2003年に刊行されたブラジルポルトガル語訳版では、このナンシーの序論が一緒に訳出されていました。今年刊行されたイタリア語の増補新版では、この序論が「逆輸入」されることはなく、巻末に補論として「ニヒリズムと共同体」という論考が加えられています。もし将来的に『コムニタス』が日本語で読めるようになるならば、ナンシーの論考も付録に収めてもらいたいですね。

エスポジトの著書の日本語訳は、1986年に芸立出版から刊行された、堺慎介(1930-)さん訳の『政治の理論と歴史の理論――マキァヴェリとヴィーコ』(ISBN4-87466-042-8)のみです。本書は1980年にリグォーリから出版された"La politica e la storia: Machiavelli e Vico"の翻訳。「RATIO」誌を通じて、エスポジトに興味を持ちはじめた読者は、それなりの人数がいるかもしれませんから、ぜひこの三部作は翻訳されて欲しいです。どなたかおやりになりませんか。

なお、この三部作について「イタリア現代思想への招待」で達意の解説を書かれた岡田温司さんは、平凡社から今月、『芸術(アルス)と生政治(ビオス)――現代思想の問題圏』(ISBN4-582-70261-9)と題した新著を刊行される予定です。たいへん楽しみですね。
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by urag | 2006-03-31 17:54 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(4)
2006年 03月 30日

「[本]のメルマガ」ナンシー来日記念号を配信しました

本日、「[本]のメルマガ」の臨時増刊号として、「ジャン=リュック・ナンシー来日記念特集号」を配信しました。ナンシーは今回の来日で、4月12日から19日まで東京と京都で講演会や討論会に出席します。来日にあわせて二つの訳書『私に触れるな』(未来社)と『イメージの奥底で』(以文社)が刊行されますが、メルマガ特集号では『私に~』の日本語版序文と、『イメージの~』の訳者二氏による対談をお読みいただけます。ナンシーの来日は約十年ぶり。たいへん楽しみです。
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by urag | 2006-03-30 19:14 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2006年 03月 29日

長谷川訳ヘーゲルは『精神哲学』が最後に

在野の哲学者である長谷川宏さんによるヘーゲルの訳書『精神哲学――哲学の集大成・要綱 第三部』が作品社より刊行されました。a0018105_20555085.jpg

精神哲学――哲学の集大成・要綱 第三部
ヘーゲル著 長谷川宏(1940-)訳
作品社 06年3月刊 本体4,600円 A5判上製434頁 ISBN:4-86182-074-X

■帯文より:ヘーゲルの代表作『エンチクロペディー』第三部。『精神現象学』と『法哲学要綱』が要約され、死後出版された講義録『歴史哲学講義』『美学講義』『宗教哲学講義』『哲学史講義』の要点が収録された、ヘーゲルの壮大な哲学体系の精髄。感動の新訳で甦るヘーゲル哲学の全貌。

●本書をもって、長谷川さんはヘーゲルの翻訳にいったん区切りをつける心積もりのようです。「訳者あとがき」にこう書いてあります、「わたしのヘーゲル翻訳の仕事は、この本をもって終止符を打つことにしたい。四、五年前から日本の文化と精神に対する関心が高まり、その研究に多くの時間を割きたいと思うからだ」と。

●長谷川さんの最初のヘーゲル訳が刊行されたのは14年前でした。河出書房新社から『哲学史講義』全三巻が刊行されたのを皮切りに、作品社から『美学講義』全三巻、『精神現象学』、『法哲学講義』、『哲学の集大成・要綱』全三巻が刊行され、『歴史哲学講義』が岩波文庫で出ています。「哲学を専門としない人たちのため」に練成された平易な訳文は絶賛をもって広く迎えられ、高額な哲学書にもかかわらず版を重ねています。

●とくに『精神現象学』は久しぶりの新訳ということもあり、非常に良く売れました。当時私は作品社の営業部に所属していました。バリバリに硬派な学術書が本屋さんで売れていくのを目の当たりにしたことは、後にも先にもこれが私の業界経験で最後になるのではないかというほどでした。

●いっぽうで、長谷川さんの訳業に嫉妬する人々の振る舞いについても目にすることができたのは、非常にいい経験でした。長谷川訳にどう接するのか、誰がどう評価し批判しているのかを見ていくと、まるでリトマス試験紙の実験を見ているような気がしたものでした。論壇だの、アカデミズムだの、研究者の縄張り意識だの、といった諸権威はいっそう疑わしく思えました。在野の偉大さ。

●長谷川訳のヘーゲルをもっと読みたいと思う読者もいることでしょう。おそらく気長に待っていれば、やがて機が熟して、またいつの日か本屋さんで出会えることもあるかもしれません。長谷川訳ヘーゲルを手がけてきた編集者の高木有さんの陰の功績にも感謝しつつ、その日まで訳書の数々を読み返し続けましょう。そして同時に、来るべき日本精神史研究の成果もまた、待つことにしましょう。
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by urag | 2006-03-29 20:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(5)
2006年 03月 29日

古書店主人と文学研究者

絶望書店主人と小谷野敦さんとの間のやりとりに昨日来新展開があったようです。いやはや・・・これはこの先ひょっとすると本当に、もう少し大きな事態に発展するのかもしれません。
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by urag | 2006-03-29 11:21 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2006年 03月 29日

ご訪問者数10万人突破!

昨日(3月28日)の日中に、当ブログへののべ訪問者数が10万人を超えました。とても嬉しいです。ありがとうございます!これを励みにいっそう精進します。

日頃の感謝をこめて、私が日々どれくらい仕事に打ち込んでいるのか、その姿を皆様にお見せしたいと思います。こちらをご覧ください(大音量&猛毒注意!職場や他人の耳目がある場所での閲覧は避けましょう。ヘッドフォン推奨)。

※なお、弊社とリンク先のウェブサイトは実際は一切関係ありませんし、リンク先の不適切な発言の数々について私は全く支持しません。また、心身が消耗している方はいっそう不愉快になる可能性がありますので、ご覧にならないほうがいいかもしれません。多少の毒を飲んでも自分を見失わない方だけ、どうぞ。字幕のつけ方がある意味天才的。かのコミュニティの特徴を良く表現できているんじゃないかと思います。
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by urag | 2006-03-29 00:16 | ご挨拶 | Trackback | Comments(4)
2006年 03月 28日

花見日和あるいは「ブログ型」人間って何じゃい

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都下では今週が花見日和でしょうか。飲み過ぎ、食べ過ぎにご注意。ところで「共同通信」の報道によれば、民間の研究機関である財団法人社会経済生産性本部が毎年恒例で発表しているらしい「新入社員の特徴」が、今年は「ブログ型」である、とのことです。

「表面上は従順だがさまざまな思いを秘め、時にインターネット上の日記を通じ大胆な自己主張をする」、「ネットワーク力」はあるけれど、「寂しがり屋で人とつながりたがり、認めてもらいたい欲求が強」くて、思いを「パソコンに打ち込むだけの傾向」があると、おおよそのところは分析しているようです。どこか若者をバカにしているような気がするんですが。

この社会経済生産性本部の理事・監事・評議員の顔ぶれや、組織の変遷と構成を見てみると、何て言ったらいいのでしょうか、日本経済の表舞台の役者が揃っていますね。彼らは毎年自分たちの「生産性運動」の目標を掲げています。今年(H18)は「卓越経営の実現」、「次世代育成と新しい労使関係の確立」、「政治改革による新しい国づくりの推進」の三つだそうです。詳細については「活動目標」のページをご覧になってください。

この団体が半世紀前に採択した「生産性三原則」というのがあります。「雇用の確保・拡大」、「労使の協力・協議」、「成果の公正分配」、の三つです。これらの三原則が戦後の日本経済においていかに「機能」してきたかをつぶさに検証するのは興味深いことでしょう。私はこの三原則を眺めていると寒気がしてきます。
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by urag | 2006-03-28 20:40 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2006年 03月 27日

今週の注目新刊(第44回:06年3月26日)

いま、哲学とはなにか
小林康夫(1950-)編
未来社 06年3月刊 ¥2,100 46判250頁  ISBN:4624011716
●「UTCP叢書」の第一弾。UTCPというのは「共生のための国際哲学交流センター」のことで、東京大学の「21世紀COE(Center of Excellence)」の拠点のひとつ。何のことやらさっぱり分からない、という方はそれぞれのリンク先をご覧ください。
●今回の論集に寄稿しているのは19人。弊社が懇意にさせてもらっているアレクサンダー・ガルシア・デュットマン教授(ロンドン大学ゴールドスミス校)も「閃きそして情熱」と題した一文を寄せています。目次はこちら
●19人の名前を列記しておくと:坂部恵、萱野稔人、アレクサンダー・ガルシア・デュットマン、染谷昌義、森田團、中島隆博、末木文美士、イアン・トムソン、蟹池陽一、野矢茂樹、ラリー・ヒックマン、門脇俊介、宮崎裕助、北川東子、アンドリュー・フィーンバーグ、斎藤直子、高橋哲哉、ジョエル・トラヴァール、小林康夫、の各氏。なかなか面白そうですね。

芸術人類学
中沢新一(1950-)著
みすず書房 06年3月刊 ¥2,940 46判400頁 ISBN:4622071894
■版元紹介文より:『カイエ・ソバージュ』全五巻や『アースダイバー』で到達した「対称性の知性」をさらに発展させ、レヴィ=ストロースの構造人類学とジョルジュ・バタイユの非知の思想を横断的につないでゆく未曾有の試み。
●みすずさんらしからぬ装丁ですが、インパクト十分。書名もビシっとキマっています。書き下ろしかと思いきや初出一覧がありますからそうではないようで。それはともかくとして、中沢さんは今週土曜日(06年4月1日)に多摩美術大学内に新設される「芸術人類学研究所」の初代所長に就任されます。いわば本書はその「開闢の書」と言っていいでしょう。

言語学とジェンダー論への問い――丁寧さとはなにか
サラ・ミルズ著 熊谷滋子訳
明石書店 06年3月刊 ¥4,158 46判360頁 ISBN:4750322784
■版元紹介文より:「敬語」のみならず、「丁寧さ」「礼儀正しさ」「マナー」の面から分析した、「ポライトネス理論」。人間社会における言語行動と権力関係を、フェミニズムの視点で解き明かす。
■原書:"Gender and Politeness" by Sara Mills, 2003, Cambridge University Press.
●ミルズの本邦初訳本。遠からず、青土社の「現代思想ガイドブック」シリーズからも、酒井隆史さん訳で『ミシェル・フーコー』が刊行されるでしょう。彼女の著書の中でもっとも読まれている本がこのフーコー入門。最新刊は今月Manchester University Pressから刊行された"Gender and Colonial Space"です。

人形愛の精神分析
藤田博史(1955-)著
青土社 06年3月刊 ¥2,310 46判195頁 ISBN:4791762592

まな板
石村眞一(1949-)著
法政大学出版局 063月刊 ¥3,360 46判349+7頁 ISBN:4588213210
■版元紹介文より:各地のフィールド調査の成果と考古・文献・絵画・写真資料を駆使してまな板の素材、形態、構造、使用法を分類し、その推移を編年的に明らかにする。また、アジアとヨーロッパの各地で使用されるまな板を比較検討するとともに、ハレとケの両面にわたり食文化を支えてきた日本のまな板の変化過程を跡づけ、今後の展望を考察する。
●「ものと人間の文化史」シリーズの第132巻。 ところで、同シリーズの『イチョウ』(今野敏雄著、05年11月刊)が「販売停止」になったようだ。2月4日付けの同局の「お詫び」ページを見ると、「弊局刊『イチョウ』は、一部写真を「無断転載」致しました。関係各位にお詫び申し上げます。本書は以後、販売を停止させていただきます。ご購入いただきました皆様には、恐縮ですが、受取人払いでご返送頂き次第ご返金致します」とのこと。

苗字と名前の歴史
坂田聡(1953-)著
吉川弘文館 06年3月刊 46判199頁 ¥1,785 ISBN:4642056114
●「歴史文化ライブラリー」の第211巻。

裏社会の日本史
フィリップ・ポンス(1942-)著 安永愛訳
筑摩書房 06年3月刊 ¥4,515 A5判416頁 ISBN:4480857826
●著者は『ル・モンド』紙の東京支局長。単行本は92年に筑摩書房から刊行された『江戸から東京へ――町人文化と庶民文化』(神谷幹夫訳)以来。

スペイン三千年の歴史
アントニオ・ドミンゲス・オルティス著 立石博高訳
昭和堂 06年3月刊 ¥6,300 A5判439+9頁 ISBN:4812206049
●先月下旬に大月書店より刊行されたヒュー・トーマスの『黄金の川――スペイン帝国の興隆』 (岡部広治監訳、林大訳、税込15,750円、ISBN:4-272-53040-2)と同様、 読み応えのある大冊に違いありません。

球体写真二元論――私の写真哲学
細江英公(1933-)著
窓社 06年3月刊 ¥3,150 46判239頁 ISBN:4896250761
■版元紹介文より:細江英公自伝三部作完結。未公開写真を含む150余点の作品をコンパクトに一挙に収録した巨匠の仕事の全容を俯瞰する決定版――その写真から、豊穣な作家魂と写真哲学が見えてくる!
●自伝三部作というのは、窓社から刊行されている『ざっくばらんに話そう――私の写真観』 、『なんでもやってみよう――私の写真史』の2点と、今回刊行された新刊をあわせた3点。約一年前には写真集『鎌鼬』が青幻舎から復刻されて話題になりましたね。

世界の珍蘭奇蘭大図鑑――ミステリアスオーキッド
齊藤亀三(1947-)著
誠文堂新光社 06年3月刊 ¥3,990 46倍判160頁 ISBN:4416406029
■版元紹介文より:世界に広がるランの自生地を探検し、撮影された希少なランの写真500点を掲載。虫の顔をもつランや吸血コウモリの顔にみえるランなど珍ランを含めた原種ランを厳選。
●不思議です、綺麗です、傑作です。「世界各地に分布する野生ランの原種の中から285属474種を厳選」とのこと。

ブックデザイン
ワークスコーポレーション 06年3月刊 ¥2,500 B5判296頁 ISBN:4948759864
■版元紹介文より:装丁・造本・デザインに関する専門誌『BOOK DESIGN』を復刻。人気連載「現代装丁史を探る」の未収録だったパートを新たに収録しました。これを読めばブックデザインのことが全てわかります!
●月刊「DTPWORLD」の別冊「BOOK DESIGN」のvol.1とvol.2を合本したもの。発行元のウェブストアで購入すると、先着200名にアジール・デザイン特製のオリジナルポストカードがついてくるようだ。

トリシャ・ブラウン――思考というモーション
岡崎乾二郎(1955-)監修
ときの忘れもの 06年3月刊 ¥2,500 A5版112頁 ISBN:4-9903005-0-5
■版元紹介文より:トリシャ・ブラウン(1936-)のダンスやコレオグラフィーの実験精神、コラボレーションに息づく前衛芸術性、それらを透徹するドローイングの魅力を鮮やかに伝えるカタログ・ブック。
■執筆者:トリシャ・ブラウン、スティーヴ・パクストン、マース・カニングハム、ウィリアム・フォーサイス、ジョナス・メカス、中谷芙ニ子、石井達朗、岡崎乾二郎、黒沢美香、岡田利規。
●発行発売元の「ときの忘れもの」さんは南青山三丁目に所在するギャラリー。最寄駅は地下鉄銀座線の外苑前駅。現在、同ギャラリーではトリシャ・ブラウンのドローイング展を4月8日(土)まで開催中。開廊時間は12:00-19:00、日月祝日はお休み。
●ギャラリーが出版活動もやっているというのはほかにもスカイドアさんなどの例があります。ちなみに朝日出版社さんから先に刊行された岡崎さんと松浦寿夫さんの対談本『絵画の準備を!』は売行快調と聞いています。皆さんはもうお読みになりましたよね。 
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by urag | 2006-03-27 00:41 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2006年 03月 26日

twilight

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夕空に春は花ひらき
数限りなく薔薇は咲き おだやかに
金色の世界は光を放つ。おお私を引きさらえ
深紅の雲よ! その高みに消えよかし

ヘルダーリン「夕べの幻想」川村二郎訳、岩波文庫版『ヘルダーリン詩集』2002年刊、34頁。


・・・twilightといえば、テレビドラマ版「電車男」のオープニングでELOのこの名曲が流れてきた時には、私はある意味ショックでした。私は「電車男」のことは嫌いではありません。初めてネット上で顛末を一気読みした時には、何とも言えないイイ話に涙が出ました。

でも、私にとって中学高校時代の青春の思い出であるELOの名曲の数々の中でも一番好きだったこの曲が、世間的には「あ、これって電車男のだよね」と印象付けられてしまうのは嫌だ。ELOはELO、エレクトリック・ライト・オーケストラとオタクの世界とは、私の中では全然別のものなのです。

ですから、鮮やかな夕焼けを望んだ胸の内にprologue~twilightが流れてくるとき、それに覆いかぶさるようにして日本全国からの「キター」の映像が時折脳裏にじわっと浮かんでくる、混乱した自分――ついつい自身の邪魔をしてしまう意地悪な自分※――が癪なのです。ま、そんなことはどうでもいいか。ヘルダーリンの引用のあとに書くことじゃないな。うん。

※――懐かしい「ぼのぼの」に仮託して言えば「恐い考えになってしまった」という、意識の思いがけない地すべり的「流れ」。
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by urag | 2006-03-26 23:55 | 雑談 | Trackback | Comments(4)
2006年 03月 25日

ある意味アート。shredderとかnetdisasterとか。

その昔こんな遊びをして私はなんだか癒されたのでしたけれど、今回の体験はある意味アーティスティック。体験済みの人にとっては懐かしいかも。まずここでlocationの欄に任意のURLを入力。ウラゲツのでもいいですし、あなたのブログのURLでもいい。そして、キーボードのエンターキーを押してください。すると・・・おやまあ。どことなくブロードウェイ・ブギウギ(・・・っぽく見えるときもある?)。
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by urag | 2006-03-25 21:52 | 雑談 | Trackback | Comments(2)
2006年 03月 24日

アマゾンの版元直取引が本格化

「新文化」「文化通信」などの業界紙によれば、アマゾン・ジャパンは「出版社から商品を委託条件で直接預かる「e託販売サービス」を近く開始する」ようです。

これは「24時間以内に発送」できる商品を増やすことが目的だそうです。アマゾンはこれまでも、「AMP(アマゾン・マーケット・プレイス)に出品しませんか」と版元に打診してきた経緯があります。AMPに参加する際にかかる手数料やら発送の手間やら何やらを考えるとさほどおいしい話ではなく、弊社の場合は結局ペンディングになったままでした。ほぼ同様の判断をした他社版元さんもいらっしゃることでしょう。

それを今度は年会費9450円を払ってくれれば品を預かるというのです。AMPで「プロマーチャント登録」をした場合に毎月支払わねばならない金額と比べて、この会費は格安です。また、AMPでは本が売れたらコミッションとして一冊あたり定価のほにゃらら%(高い)を徴収されますけれども、今回の直接委託制ではアマゾンの取り分を何%に設定しているのか、興味深いところです。※

 ※業界紙の続報によれば、「年間20冊を正味60%程度で」預かるとのこと。[06年3月29日]

直接委託制に参加すると、リアルタイムの販売データを提供してもらえるそうです。なるほど、大手書店チェーンから販売データをもらうためにそれなりの金額を支払っている版元が多く存在するのですから、アマゾンが提示している契約内容はひとつのモデルケースになるでしょう。

いずれにしても、あの手この手で版元との直取引を模索してきたアマゾンはいよいよ本腰を入れて版元を取り込もうとしているわけです、取次をすっとばして。取次がどう思っているかは知りませんが、今までAMPでプロマーチャント登録をした版元にしてみれば今回の直接委託制は「なんじゃそりゃ」というあたりでしょう。これまで支払ってきた手数料の差額を返せ、とも言いたくなるだろうことは、想像に難くありません。

「24時間以内に発送」可能な商品を増やせば、客はおそらく喜ぶでしょう。顧客満足度を追求するためには、流通の円滑化や効率化や迅速化の邪魔になったり足かせになったりするような「旧態」を、どんどん不要のものとしなければなりません。なるほどそれはビジネスとしては正しい。

アマゾンが業界の旧態に挑戦しているところには見るべきものがあるとは思います。ただ、業界全体の課題として、この先、「フェアで合理的な取引」という看板を掲げてどの勢力がどんな論理を持ち出してくるのかについては、よくよく見極めなければならない、とも思っています。

アマゾンの話ではなくあくまでも一般論として述べますが、私は「顧客満足度」という大義の陰に潜むある種の胡散臭さを忘れたくありません。大義の美名のもとに何をやっても取引先との「力関係の範囲内」で正当化されてしまう危険性が、そもそも市場においては常に充満しているし、実際に力ずくの正当化が横行している。私はそうしたビジネスが本当の意味で「フェア」だとは思いません。現代における公正という概念の虚しさ。

***

・・・話は分かりますが、「国民一人当たりの借金」に関するニュースについて、最後に一言。

ちょうど二年前、日本の借金は約670兆円で、国民一人当たりに換算すると約525万円でした。それが今では国全体で約813兆円、国民一人当たりでは637万円になってしまいました。これが貯金だったらものすごい利率で歓喜雀躍といったところですが、いかんせん借金なのです。

格差増大社会がますます進展し、一方では高級車や高級マンションが売れ、他方では借金苦で自殺する人が増えています。私たちの未来はますますすさんでいくような気がしてなりません。そんなとき出版人は、書店人は何ができるでしょうか。出版社への就職を希望しているあなたなら、どんなことを考えますか。
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by urag | 2006-03-24 17:59 | 雑談 | Trackback(1) | Comments(0)