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カテゴリ:雑談( 463 )


2017年 11月 01日

メモ(29)

「新文化」2017年11月1日付記事「丸善ジュンク堂書店、工藤恭孝社長と岡充孝副社長が辞任」に曰く「10月25日に行われた臨時株主総会および取締役会で承認され、11月1日に発表した。両氏は取締役を退任してそれぞれ会長、副会長に、同社取締役だった嶋崎富士雄氏(文教堂グループホールディングス社長)も退任した。中川清貴取締役が社長に、大越久成取締役が常務に昇任、岡山好和氏、五味英隆氏、杉本昌嗣氏が取締役に新任。監査役だった野村育弘氏も取締役に就いた」と。

「文化通信」2017年11月1日付記事「丸善ジュンク堂書店、工藤社長が退任」では「新社長に就任した中川取締役はDNPの常務執行役員。このほか、大越久成取締役が常務取締役に就任、岡山好和営業本部長、野村育弘監査役、五味英隆氏が取締役に新任した。ジュンク堂書店を1976年に創業して以来、トップとしてジュンク堂を率いてきた工藤氏は経営の第1線から退くことになる」と。

「新文化」記事では続けて「11月1日付で東日本営業部と西日本営業部を新設。池袋本店の中村洋司店長と京都本店の西川仁店長が両部の部長を兼務する。/丸善ジュンク堂書店営業本部のもとで店舗運営を担う(株)淳久堂書店においても同日付で、工藤社長と岡副社長が退任した。中川清貴氏が新社長に就任。また、毛利聡、中村洋司、西川仁、船木照道、杉本昌嗣の5氏が取締役に新任した」とあります。

岡さんのコメントは以下の通り。「2014年度から赤字決算を続けていました。決算期は1月で、株主総会は従来4月に行っていますが、こういうことは早い方がよいと思いました」(「新文化」)。「昨期までの厳しい売上、利益状況から脱し、黒字化への道筋に目処がつきつつあります。が、創業期からの現体制は、全国90店舗を数える会社の規模からみても、もはや限界であるのは明らかです。さらなる会社発展のためには、次世代の体制作りが急務であろうと考えました。また好機でもあろうと思います」(「文化通信」)。

2014年は大阪屋が新会社へ以降した年で、その翌年(2015年)には栗田出版販売が民事再生法適用申請、翌々年(2016年)には太洋社が倒産し、大阪屋と栗田が統合しました。今回の退任劇は、DNP傘下書店である丸善、ジュンク堂、文教堂のみが抱える問題ではなく、どの書店でもここ3年間は正念場だったと言えます。潮目とも言うべき象徴的な変化であり、本年末から来年にかけてさらなる変動が現れるものと想像できます。一言で言えば、合理化による負の嵐です。従業員の支えきれる限界を超えた時、いかなる組織でも瓦解が始まります。

マチナカ書店だけでなくチェーン書店も減少し、書店への大量配本に売上を頼っているタイプの版元や、そうした取引先を抱える取次は、配本先を確保できずに経営が脆弱になるでしょう。そのあおりを食らって、印刷製本会社は減少するでしょうし、製造と流通のインフラがやせ細れば、中小版元はいよいよ不安定な状況に陥る可能性が増します。ひるがえってパターン配本への依存度が高いタイプの書店は、取次や版元の弱体化の影響を受けて方向性を失うでしょう。出版業界での雇用はますます流動的になり、労働環境は今以上にブラック化するものと思われます。うまく逃げ切って勤め上げた世代とそうでない世代の格差はいよいよ深刻になり、業界の現状にそぐわない政治力学的な議論がいたずらに交わされて、言論そのものも空転するでしょう。

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【11月2日追記】コメント欄だけでなくメールでもご感想やご意見を頂戴しています。御礼申し上げます。あえて書かずにいたことを図らずも補足しなければならなくなる機会を得ることは、幸運とも不運とも言えるでしょうか。

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【11月6日追記】個人投資家で作家の山本一郎さんのオフィシャルブログの11月2日付エントリー「新聞や出版などメディア業界の「先の読めなさ」と「購買活動の仕組み」について」を、知人から紹介されました。

山本さんは「丸善ジュンク堂の一報も、また一歩、出版という紙に情報を印刷して売って回収するというモデルが崩壊している、ということ」と指摘され、「新聞業界よりも先に鬼籍に入りそうな出版業界は、版元も取次も本屋もそう遠くない未来に死ぬ運命にあります。これはもう、仕方のないことです。それでも、特殊な分野、価値のある情報を束ねて適切な価格で日本人に対して売っていくというサイクルは、あくまでこの「紙に印刷する本で情報を流通させるというビジネス」において破綻しているのであって、必要となるものはバリューとプレファレンスです。ニッチでもお金を払ってくれる誰にどのくらい愛されるのかが見えてくれば、転換していくビジネスの先も予想がつくようになります」とお書きになっておられます。

山本さんのご意見には大筋のところ異論はありません。ゆえにここからは、山本さんのように「破綻」を見ることができる方についてではなく、認めたくない方々とも一緒に生きていかねばならない出版業界の難しさについてほんの少し書きたいと思います。

何とか会社を生き延びさせなければならないという至上命題を抱えている経営者はともかくとして、出版界の現場では「もうとっくに破綻している」と冷静に状況を分析されている方も多いだろうと想像します。状況を悪くしているのは、そうした現場の諦めや手詰まり感というよりも、適切に絶望することのできない人々による都合の良い、場当たり的な振る舞いではないか、と思わなくもありません。「適切に絶望すること」は「座して死を待つこと」ではありません。出版界が寄る辺なき状況に陥っているのは、共有すべき(再)スタートラインをすでに失っているからです。私企業間の利害の一致をふんわりした希望で包んで飲み込もうとしても、所詮無理があります。知人は私に「なぜもっとはっきりと書かないのか」と尋ねましたが、今はまだ、察していただける方にのみ語りかけるしかありません。

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by urag | 2017-11-01 17:31 | 雑談 | Trackback | Comments(3)
2017年 10月 12日

メモ(28)

「文化通信」2017年10月9日付1面トップ記事は「取次へのバックオーダー終了で直取引開始は少数」という非常に興味深い内容だったのですが、なぜか同通信ウェブサイトのトップページの総合欄では見出しが載っていません。12日付「アマゾンジャパン、Kindle最上位機種発表」は無料で全文を読める記事になっていますが、出版業界にとってより重要なのはKindleよりも直取引問題ではないかと思われ、未掲載の理由がよく分かりません。8月17日付有料記事「版元ドットコム アマゾン「バックオーダー終了」で調査 直取引が41%余に増加」との関係から言っても、今回の10月9日付記事は重要です。

「取次へのバックオーダー終了で直取引開始は少数」は1面と8面に掲載されており、アマゾンジャパンにおける年間売上上位100社に対して文化通信社が行なったアンケートの結果(36社から回答あり)が集計されています。同記事は「出版社の規模が大きくなると直接取引を行う割合が低くなっているようだ」と分析しており、先般の版元ドットコムさんのアンケート結果も含めて、おおよそ予想通りの内容とはなっています。つまり、売上上位100社の本は当然ながら一般のリアル書店でも売れており、アマゾンだけを特別に優遇する理由はないのですが、小零細版元の場合、リアル書店での扱いが少ないですから、相対的にアマゾンの売上比率が高くなり、否応なく直取引に乗り出さざるをえないわけです。

興味深いのは8面にある、直取引しない理由の数々でした。いずれも首肯できる内容で、アマゾンさんは版元からこう見られているんだということをもっと細やかに分析して対応を考えるべきなのではないかと思う理由ばかりです。こうした記事こそ文化通信さんには無料記事で公開していただきたいなあと切実に感じます。そうすればもっと公的に議論する材料が増えます。いま業界に必要なのは、腹蔵なく「リアルな話」を交わすことであり、できることとできないことをしっかりと腑分けして、できることの可能性を伸ばしつつ、できないことをどう乗り越えるか、ということだと思います。

「日本経済新聞」2017年10月6日付有料記事「大廃業時代の足音 中小「後継未定」127万社」に書かれてある状況は、出版界でも変わりません。曰く「中小企業の廃業が増えている。後継者難から会社をたたむケースが多く、廃業する会社のおよそ5割が経常黒字という異様な状況だ。2025年に6割以上の経営者が70歳を超えるが、経済産業省の分析では現状で中小127万社で後継者不在の状態にある。優良技術の伝承へ事業承継を急がないと、日本の産業基盤は劣化する。「大廃業時代」を防ぐ手立てはあるか」と(以下、無料登録で全文読めます)。

私の住む街の地元商店街では今年2店舗の新刊書店が廃業しましたが、いずれも原因は高齢による事業継続の困難さでした。あまり明るみになってはいませんが、高齢化の波は出版社にも押し寄せていて、後継者がおらず遠からず廃業せざるをえないだろう版元もそこかしこに存在しています。継続的に出版活動している約2000社のうち、7割が従業員10名以下の小規模会社だとも聞きます。我が身を振り返っても見て言えるのは、つまり、おおよそ半数以上の版元が10~20年以内に激減する危険があると予想してもけっして大げさではない、ということです。こうした緩慢な死滅を逃れるためには、出版界を挙げて議論し対応していくのが理想ではありますが、この業界はその多様性ゆえに、利害が一致するのはせいぜい債権者集会の出席率くらいで、誰もが納得しうる条件下での団結は非常に困難であるように思えます。文化の一端を担う社会的な役割があるにもかかわらず、営利を目的とした私企業の雑多な集団であるために、情報公開して公的に議論することすら難しいのです。

それでも全体として必要なのは、若い世代が出版社や書店を開業したり事業承継しうる余地を常に作り続けることではなかろうかと感じます。取次さんが書店さんを傘下に収めるのにも限界があり、出版社がリストラを続けるのにも限界があります。出版社が廃業する場合、つらいことの一つに、出版物を引き受けてくれる他社がいない限り、全点全冊を破棄しなければならないというものがあります。例えばすでに2020年に解散することを公表しておられ創文社さんの商品はどうなるのでしょうか。ハイデッガー全集(刊行中)や、神学大全(完結)はどうなるのでしょう。同社の2016年9月付の挨拶文「読者の皆様へ」によれば、「新刊書籍は2017年3月まで刊行し、それ以降、2020年までは書籍の販売のみを継続いたします」とあります。すでに新刊刊行停止から半年経過しているのです。このように廃業まで数年かけることを約束しうるのはむしろ誠実な少数派であり、こうはならずいつの間にか倒れる会社が大半であることは周知の通りです。

先日のゲンロン・カフェ(10月4日)の質疑応答において「やめたい人とやりたい人の事業承継のマッチングができないものか」とお話しし、質問者の方が興味を示して下さったのは幸いでした。こうした困難さに立ち向かうことが大事であると思われてなりません。

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10月16日追記:上記のような「街ナカ書店」や、小零細自営業版元の廃業危機とは別に、チェーン店はチェーン店でスリム化を推進しています。たとえば、「ASCII.jp」2017年10月16日付、O.D.A.氏記名記事「TSUTAYAが最近やたら閉店している件について――背景にあるのは「BtoB型事業」への業態シフト」では、昨今の大量閉店が次のように分析されています。

「閉店する店舗を見てみると、大都市圏に比較的簡単にアクセスできる住宅の駅近くに立地する店が相当多いことがわかります。ここから導かれるのはこれらの閉店は不採算店の整理ということだけではなく、もう経営側としては今の「ご近所のTSUTAYA」形態の未来に希望を持っていないのではないかという推測。〔・・・〕現在CCCが推進している図書館の運営委託、代官山・湘南や枚方のT-SITEや蔦屋書店、二子玉川の蔦屋家電等の業態は、〔・・・〕いずれもが滞在型の施設です。/会社や学校の帰りについでに寄ってもらっては小銭をちゃりんちゃりん稼ぐのではなく、わざわざそのために来てもらう滞在型の施設で1人頭の消費金額・消費時間を最大化する方向。言い換えれば「ケ」のビジネスから「ハレ」のビジネスへのシフトが今まさに実行されている最中であるということでしょう」。

少し補足しますと、この「ハレ」ビジネスが成功しうるかどうかについてはすでに懐疑的な評価や分析が出版界では散見されます。確かに「「ハレ」のビジネスへのシフトが今まさに実行されている最中」ではあるものの、CCCがシフトに乗りだせた背景には、他社にはないグループの経営的基盤があります。ですから、他社がまねをしても成功するというものではなく、蔦屋型の複合化とは別の、多様な次世代型書店像もまた、追求する必要性があると言えそうです。CCCは「蔦屋書店」は全国のあちこちに作り、紀伊國屋書店やMJを向こうに回して、書店業界の覇権を目指しておられるはずですが、人材確保に苦慮されているようにお見受けします。

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10月23日追記:事業承継について。これははっきり書いておかねばなりませんが、主観的に言えば、小零細の出版事業は誰かに継いでもらえる仕事だとはあまり思えないというのが本音です。ですから先日の日経記事はあまり驚くに値しませんし、事業承継の困難さも理解できます。ほとんどの場合「一代限り」にしかならないのが現実ではないでしょうか。しかしそれでもなお、出版事業の持続性について問うことは重要だと思います。

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by urag | 2017-10-12 18:22 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 09月 19日

メモ(27)

アマゾンが「返品可否の確認」と題した何やらとても抽象的な返品依頼を突如としてメールで送りつけてきました。送信日は、よりによって、今般の「バックオーダー中止以後の概況」についての説明会で提示された直取引をめぐる新条件の、有効期限最終日の日没どきです。非常に嫌なタイミングとしか言いようがありません。

出版社としては次のような反応が当然出てきます。

1)仕入れた取次へ返品すべき。日販か大阪屋栗田か、返品先が不明瞭では了解できない。
2)返品理由が曖昧。長らく不稼働、の「長らく」の基準が示されておらず、アマゾンの需要予測自体がそもそも疑問になってくる。
3)以上のことを問い合わせようにも、メアドと部署名だけで、担当者名も電話やFAXなどの連絡先も何も書いていないのは非常識。
4)回答期限まで3~4営業日しかないのは一方的過ぎる。
5)バックオーダー中止と同じく、このやり方※は版元には「恫喝」に見えがち。

※このやり方・・・アマゾンのメール文中にある「返品不可商品とお返事いただいた銘柄については、弊社では今後返品できない銘柄としてシステムにて認識いたします。その場合、対象銘柄における今後の取り扱い方法や在庫数量について変更する可能性がございます」というくだり【追記:分かりやすく言えば「返品不可なら在庫を持たなくなるかもね」という圧力】。ベンダーセントラルを利用している版元は1点ずつ返品可能かどうかきちんと登録しているわけなので、それをいちいち勝手にアマゾン側が上書きしていくとややこしいことになります。【追記:さる筋の情報によれば、ベンダーセントラルで登録してある返品の可不可は、実際には役に立っていないようです。つまり、版元がアマゾンに登録した属性よりも、現実に適用されるのは取次さんのルール(より正確に言えば「取次=版元」間の取り決め)である、と。考えてみれば当たり前ですね、アマゾンと取引しているのは版元でなく取次なのですから。】

こうしたメールでの返品依頼をこの先アマゾンは、定期的に行なうと宣言しています。このやり方は嫌がらせにしかならないですし、まったくの逆効果だと思います。これは直取引しない版元へのプレッシャーなのでしょうか。それとも取次さんの、アマゾンとの関係がいっそう悪くなっているのでしょうか。

そもそも1)に関して、アマゾンがその細かすぎる発注方法の副作用として、個別の商品についてどこの取次さんから仕入れたのか、分からなくなっているとしたら、恐ろしい話です。この件では取次さんに問い合わせをすでに入れており、一定の解釈(そもそも別会社なので説明は不可能)を聞きました。が、なによりアマゾン側が丁寧に説明すべきなのにこの有様では先が思いやられます。

アマゾンさんのとある上席の方から当ブログをご覧になっていると説明会の席上ではっきりご挨拶いただいたのでこの際申し上げますが、私が説明会後に貴社からいただくはずになっていた配布資料の完全版(数値が出ていない箇所を修正したもの)はいまだに届きません。その資料がないと、貴社の説明会で言われていた「計算」ができず、取引新条件について検証することができないのにもかかわらず、です。それなのに、資料を寄こさない代わりに返品依頼書ですか。貴社が出版社の問い合わせについて猛烈にレスポンスが遅く、満足のいく回答率も低いことはこの業界ではとても有名です(その原因がどこにあるのかははっきりとお伝えしたはずです)。他書店ではできるような「普通の」対応がまったくできておられないのは実に残念です。

今回の件も特に難しい案件ではなく版元は(買切版元でない限り)「普通に」返品入帳できる話なのに、様々な不備のせいで「アマゾンがまた変なこと始めたよ」といううんざりした反応しか引き起こしていないのは、どうにも不合理な話ではないでしょうか。簡単な話をわざわざ難しくしていらっしゃる。

アマゾンがただちにやるべきなのは次のことです。

1)どの銘柄をどの取次から何冊返品するのかきちんと明示すること。
2)返品理由を明快に説明すること。
3)電話で話せる「正式な担当者名と責任者名」を記載すること。
4)メールでの一方的な回答期限の設定はやめること。
5)出版業界の慣例を無視したやり方は反発しか招かないと知ること。

どうしてこんな当たり前のことがアマゾンにはできないのか、理解に苦しみます。説明会で会うスタッフや上席の皆さんのさほど悪くない印象と、こうした圧迫的通告を機械的に繰り返すこととの間のイメージギャップが大きいのも、理解できません。

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「Forbes Japan」ビジネス欄2017年9月20日付、Parmy Olson氏記名記事「トイザらスを破滅させた「アマゾンとの10年契約」」(編集=上田裕資氏)が興味深いです。

「世間がドットコムバブルに沸いた2000年、アマゾンとトイザらスは10年契約を結んだ。これはアマゾン上でトイザらスが唯一の玩具の販売業者となる契約で、トイザらスの公式サイトをクリックするとアマゾン内のトイザらス専用ページに飛ぶ仕掛けになっていた。/この取り組みは当初、アマゾンとトイザらスの両社にメリットをもたらすと見られていた。しかし、アマゾンはその後、トイザらスが十分な商品を確保できていないことを理由に、他の玩具業者らをサイトに招き入れ始めた」。

「十分な商品を確保できていないことを理由に」というのがミソですね。日本でも聞いたことあるような気がします、これに似たセリフ。さらに記事に曰く「書店のBordersも同じ過ちを犯した。Bordersも2001年にアマゾンにオンライン販売を任せる契約を結び、2008年に契約を終了したが、その間にウェブのビジネスをアマゾンに奪われた。アナリストは「彼らは未来を譲り渡してしまった」と述べた」。怖い話です。本当に。

こうした記事を参照しつつ言えば、日本でアマゾンと版元との直取引成約数がいまひとつ伸びていかないらしい最大の理由は、「アマゾンは信頼できる相手なのか分からない」という点にあるのではないか、というのが私の意見です。キンドル・アンリミテッドの件で出版社と揉めたり、某マンガ家さんの作品の配信停止や無料配信で提訴されたり、といった出来事に共通しているのは、「アマゾンはいつも事前通告なしに勝手をやり始める」ということです。これは単なる印象論ではありません。バックオーダー停止問題にしてもそうです。大方の版元に対して、根回しなしで準備もゼロの没交渉ぶりが目立つので、あのさ、こうなるなら最初からちゃんと話し合っておこうよ、とその都度突っ込まれているわけです。

今回の返品問題についてはアマゾンさんからはまだ何も続報はありませんが、取次さんや版元他社さんから様々な情報をいただいて、私自身もようやく少しずつ整理できてきました。「在庫の健全化」というアマゾンさんの一言の裏にどれほどの現実があるか。その全貌はとても掴みづらいのですけれども、アマゾンさん、お互いが信頼し合う上で大事なのは、出版社や取次さんとどれほど「具体的な正しい情報を適切に共有」できるかどうかではないでしょうか。

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【2017年10月3日追記】ようやくメディア事業本部書籍事業企画本部さんから過日の説明会で配布された書類の不備をただしたものがメールで届きました。担当者名なし。チーム制でやっているからなのでしょうけれど、こちらに対しては名指しで来るのに自分は名乗らない。しかも対応が劇的に遅い。もし版元からの対応が遅かったらそれだけでも問題になるのに、アマゾンさんは自分のやることにどこまで甘いんでしょうね。実に腹立たしいですし、情けないです。今さらもらっても取引条件の有効期限はとっくの昔に終わってますから、せめて「不手際があったので有効期限を延長する」などの配慮が欲しいところですが、そんなことは一言も書かれていません。だめだこりゃ。ほんとうにダメだ。このかんも、アマゾンマーケティングサービスからは頻繁に「はじめてよ、はじめようよ」メールが届き、ベンダーシステムからは年末商戦期のプロモーションについて案内が届きます。とにかく版元からお金を吸い上げたくてたまらない、という印象しかないです。ようするに版元との交渉がまったく一元化されていない。てんでんばらばらにやってるだけ。悲しいです。こうした版元の不満をフィードバックしてくださればいいのですけど、繰り返すんですよね、何度も。辛いです。

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by urag | 2017-09-19 12:48 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 07月 28日

メモ(26)

アマゾン・ジャパンが日販や版元に申し立てている「引当率」の根拠がいかに(版元にとっては)ずさんなものかが分かる証言がここ最近改めて出始めています。某版元営業さんのツイートによれば「アマゾンより「貴社欠品状況と日販引当率をお知らせします」というメールがくるようになったけど、100点ばかりあげられている「需要高カート落ち商品リスト」の内容が、すべて旧版やVANでも品切れにしているものなんだが。日販に補充しろといわれてもな」と。

こうしたメールはまだ弊社には届いていませんが、他社さんからも同様の感想を聞いています。メールでお知らせが来るということは、おそらくベンダーセントラルに登録している版元を中心に、順次送っているのだと思われます。アマゾンはバックオーダー発注停止に伴う説明会の折に、数字を羅列しただけでまったく具体的な書名を挙げていない引当率のデータを版元に提示し、混乱した印象しか与えてきませんでした。さすがに各方面から突っ込みが入ったのか、ようやくカート落ち問題に関連して具体的な書名のリストを版元に送り始めた、ということでしょうか。

し・か・し、欠品の内容たるや、旧版や品切本ばかりというわけです。そんなのをカウントしていたらそりゃ引当率は下がりますよ。開いた口がふさがらない。実際このことは以前から版元サイドからは疑問視されてきました。これと同じことを2年前にもアマゾンはやらかしているのです。

2016年の夏、栗田が民事再生法適用を申請した後に行われた版元への「増売セミナー」で、アマゾンは販売機会欠損率ワースト30の書目リストを版元に提示しています。その昔当ブログでも明かしたかと記憶しますが、弊社に提示されたリストではワースト30のうち、25点は普通に送品できている本でワーストでも何でもなく無理やりリストアップされているものでした。そして、残りの5点は版元品切本だったのです。こんな馬鹿馬鹿しいことをいつまでアマゾンは続けるのでしょうね。

こうした品切本や旧版まで含めてアマゾンは日販に在庫しろ、と言っている(に等しい)のでしょうから、無茶にもほどがあります。日販さんはもっと怒っていいはずです。だって本当に無茶苦茶なんだから。アマゾンの発注方法に合理性を感じないなら、はっきりとそう内外に説明すべきです。

先述の版元営業マンさんはこうもお書きになっています。「取次の在庫ステータス22と32はアマゾンからの発注がでないって書いてるけど、もしかしてVAN関係なく、フル発注して引当率下げてるんじゃ?って疑いたくなる。欠品率で品切れ商品の無駄データを送ってくるぐらいなら、引き当て不能だった書籍のデータが欲しいわ。それちゃんと補充するから」。フル発注疑惑、これですね。引当不能書目が何だったか、それをきちんとアマゾンが版元に直接提示し確認できれば、問題はすぐに解決できるはずです。なぜそれをやらないのか。

直取引の有無に関係なく、アマゾンは版元に直接、在庫確認や発注を行えばいいのです。それだけでもずいぶんと混乱は収まるはずです。e託最優先思想から脱却しない限り、アマゾンの「すぐに調達、すべてを調達」というミッションは達成されようがありません。

別の版元さんからはこんな声も聞かれました。「絶版本をKINDLEかPODにしろと言われるが、改訂前のものを商品化して何の意味があるのか」。まったくその通りで、もう本当に椅子から転げ落ちそうになりますね。絶版本の中身を精査しないままで「すべてを調達する!」と言われても、そんなアバウトすぎる需要予測には、版元にとっては何の意味もありません。

アマゾンは毎日全単品の需要予測を独自に算出していると言っていますが、その需要予測にどんな要素が組み込まれているか、版元に開示するつもりはなさそうです。しかし、調達率や引当率を上げるためには、アマゾンの需要予測の精度がそもそも問題になってくるわけで、そこを精確にメーカーである版元に説明できなければどうしようもありません。なぜ旧版や年度落ち本が必要なのか、非常に興味深いので、その理由をぜひ詳しく教えて欲しい(こうした問いかけに既視感を覚えるのは・・・ツタヤ図書館のせいですね)。

アマ「くれよ」、版元「ないよ」、アマ「欲しいんだよ」、版元「なんでだよ」、アマ「売れる見込みがあるからだよ」、版元「どこかだよ」、これの繰り返しですよ、今のままでは(コント「アマゾンくん」)。

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一方ではこんなこともあります。あくまでも寓話です。

版元「この本はよく売れているからもっと在庫してもらった方がいいと思うんだけど」
アマ「そういうことは取次さんに相談してください」
版元「・・・(回りくどいわ~)」
版元「取次さん、そういうことなんでアマゾンさんに在庫してもらった方が」
取次「発注するしないはアマゾンさん次第なんで」
版元「・・・(これ以上どうしろっていうんだよ)」
アマ「e託(直取引)もご検討ください、バックオーダー止めるんで」
版元「はあ?(正気かよ)」
アマ「・・・(在庫なくなった)」
版元「・・・(やっぱりな。あとはアマゾンの発注待ちか)」
版元「・・・(カートが落ちると2~3週間は復活しないんだよな)」
取次「・・・(うちの倉庫だって扱える物量の限界はあるよ)」
アマ「10月に藤井寺FCと八王子FCを稼働させるよ」
版元「・・・(中小版元の本を在庫してくれるのか?)」
アマ「・・・」
取次「うちも在庫点数を増やすべく頑張ってますんで」
版元「・・・(MD契約してないから取次に何を何冊在庫してもらってるかわからん)」
版元「・・・(昔っからカート落ちって版元品切と勘違いされるんだよな)」
著者「出版社さん、なんでアマゾンで扱ってもらえないの?」
版元「はあ、扱ってもらえるかどうかはアマゾンの判断なんです」
著者「アマゾンさん、なんで?」
アマ「当社の需要予測に基づいています」
お客「出版社ではもう品切なんですか」
版元「ありますよ、全国の書店さんでご注文いただけます」
お客「本屋さん、この本欲しいです」
書店「取り寄せになるので多少時間かかります」
お客「・・・(早く欲しいのに)」
お客「出版社さん、アマゾンで買えないんですけど」
版元「かくかくしかじかの本屋さんでは在庫しているようですよ」
お客「考えてみます(アマゾンなら送料無料ですぐ届くのに)」
版元「・・・(なにかとアマゾンアマゾンって言われてかなわんな)」
運送「当日配送キツイわ、撤退したい」
アマ「・・・(代替をちゃんと探してあるもんね)」
お客「デリバリープロバイダから荷物届かない」
アマ「・・・(米英ではさらなる施策を試行錯誤してるし将来日本でも)」
新聞「配送トラブルが生じていると言われているが?」
アマ「現在は解消しています」
デリ「・・・(正直無理だわ)」

例えば今日現在、弊社5月刊『鉄砲百合の射程距離』(内田美紗=俳句、森山大道=写真)はアマゾンでは「通常1~4週間以内に発送します」と表示されています。「honto」では1~3日以内に出荷との表示。本書は弊社銘柄中、いまもっとも客注が多い書目で、おそらくアマゾンでも在庫すればそれなりに堅調に動くでしょう。ちなみに同書は版元在庫ありなので、もしアマゾンさんが弊社に直接発注を出してくれれば、午前中の受注で翌営業日、午後の受注で翌々営業日に取次搬入可能です。取次が在庫を持っていない場合でも取寄せ発注を出すよりかは多少は時短になると思うのですけれども。

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by urag | 2017-07-28 10:59 | 雑談 | Trackback | Comments(2)
2017年 07月 25日

メモ(25)

「DIAMOND online」2017年7月25日付、須賀彩子(ダイヤモンドZAi編集部)氏記名記事「ヤマトがアマゾンに1.7倍の運賃値上げと総量抑制を要請、ヤマ場は9月」によれば、ヤマト運輸はアマゾン・ジャパンの宅配便数の4分の3を担っており、残り4分の1は日本郵便だと言います。記事ではアマゾンからの荷物の平均単価はヤマトの運賃表の4割程度であり、「これは2013年に佐川急便が利益が出ないとしてアマゾンの仕事から撤退したときの価格に等しい」と。ヤマトは値上げを要求し、さらに現在引き受けている宅配便のうち20%前後の荷物は引き受けられないとも伝えていると言います。詳しくは同記事をお読みください。コメント欄付のヤフーニュース版はこちら

記事によれば「アマゾンは、自前で物流網を築くとしているが、「そんなにすぐにはできない。4~5年は要するだろう」(物流関係者)という」。時間がかかるだろうことは明白ではありますが、アマゾンはそこまでは待てないでしょうから、何かしらの手を打つだろうと思われます。とはいえ、中小の運送会社にいくら頼ったところで・・・という各方面の嘆き節はしばらくは収まらないでしょう。自動運転やドローンによる配送が実現するのも、この日本では近い将来、とまではなかなか思えません。

直取引を開始している版元や検討している版元からすでに様々な「ボヤキ」が聞こえてくる昨今、とうとうバックオーダー発注停止から1ヶ月が経とうとしています。版元によっては日販の売上がどの程度変化しているかを見極めて、アマゾンとの直取引の是非を考えざるをえないでしょう。実際のところアマゾンが検討すべきなのは、直取引に固執しないもう一つの回路を作っておくことではないかと思います。すなわち、版元への直発注です。普通の書店ではやっていることをアマゾンがやらないのはなぜか。結局版元が納品するのは日販にであって、そこからアマゾンに届くまでの時間を何とかして短くしたいなら、手っ取り早いのはやはり直取引だ、ということだからでしょう。

しかし、日販との取引の積み重ねがある大方の版元にとっては、信義上、簡単に直取引に乗り換えられるものではありません。加えて、そもそもアマゾンが取引先として信頼に足る相手なのかどうか、版元には根強い不信感があります。その不信感は版元が一方的に抱いている偏見などではなく、アマゾン自身が引き起こしているものです。そのことにそろそろアマゾンは気づくべきです。なぜ緑風出版、水声社、晩成書房が今なお出荷停止をしているのか。学生への割引販売は大学生協でもやっていますから、学生が安く買える状況に文句を言いたいわけではないだろうと思います。そうではなく、アマゾンはおおむね、版元への事前相談なしに大事なことを決めてしまい、それについて版元と真摯に協議する姿勢が見られなかった。そこが一番の問題なのではないでしょうか。「アマゾンはいずれ再販制を無視して本の安売りを始めるに違いない」と疑われても仕方ない態度しか見せてこなかった、という版元にとっての「現実」に対して、アマゾン自身が何かしらの反省をしているようには残念ながら見えません。「それは誤解だ」と平然と言ってのけている内は、版元との距離感は縮まりようがないでしょう。

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バックオーダー発注停止から1ヶ月経とうとしている今、不思議なのは、アマゾンが在庫を持っていない商品についても買い物カゴがまだついている、ということです。いわゆる「カート落ち」になっておらず、取寄せ表示になっています。「通常9~14日以内に発送します」「通常1~4週間以内に発送します」「通常2~4週間以内に発送します」「通常1~2か月以内に発送します」だけでなく、「一時的に在庫切れ、入荷時期は未定」と表示していても、買い物カゴがついているケースを7月半ばまで見かけました。これはおかしい。取寄せはしないんじゃないの? 取寄せ発注しないのに在庫復活は無理でしょう。お客様とトラブルになりかねないではないですか。ところが25日現在、弊社本の場合、取り寄せはむしろ減って、1冊でも在庫しよう、と努力しているように見えます(それでもまだ取寄せ表示の銘柄が数点残っています)。

アマゾンにとってもカート落ちは怖いのだと見えます。それはそうでしょう。今のままアマゾンが発注をやめていれば、直取引版元以外で、日販ともMD契約をしていない版元の銘柄は間違いなくガンガン「カート落ち」します。驚いてしまうのは、「ロングテール喪失」のリスクというごく当たり前の展開を、アマゾンがさほど真剣には考えてこなかったらしいことです(アマゾンへの「誤解」が解ければ、出版社は直取引に応じるはずだ、という期待も、今となっては甘すぎました)。日販経由のバックオーダー短冊は止まったものの、日販のウェブブックセンターへの発注は止めていないのではないかと私は想像しています。そうでなければ、弊社銘柄の在庫の復活は説明できません。

とはいえ、今後どうなるのかは今しばし観察する必要があります。カート落ちが発生した場合、弊社がお客様にお薦めしたいのは、hontoとMJB(丸善、ジュンク堂、文教堂の店頭在庫)からの購入です。アマゾンしか通販の選択肢がないわけではない、というごくごく当たり前の事実をもう一度見直す必要があります。

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by urag | 2017-07-25 10:50 | 雑談 | Trackback | Comments(2)
2017年 07月 19日

メモ(24)

すでに読まれた方も多いと想像しますが、「ねとらぼ」2017年7月16日付の九条誠一さんによる記名記事「Amazon“デリバリープロバイダ”問題、ヤマト撤退で現場は破綻寸前 「遅延が出て当たり前」「8時に出勤して終業は28時」」には戦慄を禁じえません。この記事では、デリバリープロバイダで配送業務に携わっているAさんと、Amazonの倉庫配送拠点であるFC(フルフィルメントセンター)で働くBさんの証言を紹介しています。すべての発言が重要なので出版業界人はぜひとも全文を読む必要がありますが、業界人が想像していた通りの現実に対する強烈な裏打ちとなる発言を一つずつ取り上げたいと思います。

まずAさん。「デリバリーステーションに所属している社員は、8時に出社して終業は28時というのが基本的な労働時間です。そのようなセンターが高品質なサービスを提供できるわけがありません。〔・・・〕大手企業でさえ撤退するような事業を、地域の中規模運送会社が行うのはやはり無理があります。今の運営は遅配ありきの運用であって、決して利用者のためにはなっていません」。

次にBさん。「Amazon自体はめちゃくちゃもうけているのに、そのAmazonを支えている会社はこんなに苦しい思いをしているのかと。ネット通販=配送料無料、注文すればすぐ届くのが当たり前……こういうイメージを創り上げてしまったことが、今回のような事態を招いてしまったのだと思います。しかし、Amazonとしてはそのイメージこそがブランド力ともいえるので、なかなか手放せないところなのでしょう」。

この記事のヤフーニュース版にはすでに5000近いコメントが寄せられていますが、トップコメントの一つにこんな声がありました。「もうAmazonはAmazonロジスティクスみたいな感じで専用の物流会社使ったほうが良いんじゃないかな?/物流の仕組みはあまり詳しくないからよく分からないんだけど。。」。実に正論です。ただ、アウトソーシングできるものはする、という姿勢を常としているように見えるアマゾンが一から物流会社を作ることは難しいのではないか、という見方が業界内にはあります。

「ねとらぼ」記事が言及している「はてな匿名ダイアリー」の2017年7月9日付エントリー「デリバリープロパイダの中の者だが人手不足で配送の現場はもうヤバイ」は、Aさんと同じくデリバリープロバイダの従業員さんの投稿ですが、これは匿名出版人の投稿「【再掲】アマゾンの「バックオーダー発注」廃止は、正味戦争の宣戦」と同様に、出版界を大いに震撼させている必読記事です。

従業員氏はこう証言しています。「皆さんはクロネコヤマトしか知らない人も多いですから、配送=日時通り届いて当たり前。不備があっても逐一、電話連絡があって当たり前…と思っていますよね。/残念ながら、それはヤマトだからこそ出来る芸当で、一般的な配送業者には真似出来ません。/ヤマトは、社員の教育、配送オペレーション、拠点の数まで全て完璧で、配送においてヤマトの横に出るものはいません」。「「時給300円で人を雇いまくれ。Amazonの荷物で稼ぐぞ!」/「ヤマトが逃げた今、うちらにスポットライトが当たり始めた」/等、社長は今の状況を喜んでいるようですが、現場は手取り12万(自爆あり)で休み無し14時間肉体労働、限界がもう来ています。疲弊しています」。

印象がとても悪いと感じるのは、こうした状況を恐らくは把握しているであろうにも関わらず、アマゾン・ジャパンのトップが対外的には次のように発言していることです。「配送遅延は実際に発生していたが、現在は解消した。まだスムーズになっていないところを直し、再発を防止したい」(「ITmediaビジネスオンライン」7月10日付、青柳美帆子氏記名記事「Amazon「プライムデー」、配送は「数カ月前から準備」」より、記者会見でのジャスパー・チャン社長の発言)。これはテレビニュースにもなっているのでご覧になった方もおられるかと推察しますが、「解消した」などとなぜ言えるのでしょうか。「そうした事実はない」が決まり文句の昨今の悪徳政治家かと見まごう発言に、利用者だけでなく、出版人も驚愕しています。もっと別の言い方はできなかったのでしょうか。いったいチャン社長は誰に向って「解消した」と宣言しているのか。

「弁護士ドットコムNEWS」7月11日付記事「アマゾンプライムデー、ドライバーたちは戦々恐々…「多くてさばけない」配達ミスも」では都内でプライムナウ(対象エリアでの買物が1時間以内に届くプライム会員向けサービス)の配送を担当する男性や、アマゾン利用客の主婦、ヤマト運輸のセールスドライバー、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』や『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』の著者・横田増生さんらに取材しています。ここでも上記の記事で書かれていることを再度事実確認できます。ヤフーニュース版でのコップコメントにはこんな声があります。「普通の消費者だが、最近、アマゾンを使うとき、配送業者のことを一瞬考えるようになった。そろそろ考えて使いませんか。皆さん」。この言葉に尽きる気がします。

デリバリープロバイダ関連の記事では以下の配信に注目が集まっていることは周知の通りです。

先の青柳氏の記事でも指摘されている「消費者の「アマゾン離れ」を引き起こしかねない状況となっている」ことに対して、アマゾンが下請けへの無茶振りではなく自社で解決すると決めて根本的な対応を講じない限り、客もメーカーも現実的に「アマゾン離れ」へと傾かざるをえなくなるでしょう。アマゾンだけに頼る買い方や売り方から、複数の他の通販サイトを使い分ける選択の時代への変化の萌芽が表れつつあるように見えます。この件はアマゾンでのカート落ち問題と併せて、後日再度言及するつもりです。

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なお米国のアマゾン・コムにおける物流の現在を追った記事には以下のものがあります。米国版「WIRED」2017年7月11日付、Davey Alba氏記名記事「The Humans Making Amazon Prime Day Possible」の日本語訳版「アマゾンの「プライムデー」は、人力なくして成り立たない──配送の現場を支える人々に迫った」(2017年7月15日配信)。

また、英国アマゾンで始まったドローン配送サーヴィス「Prime Air」についての記事には以下のものがあります。英国版「WIRED」2016年12月14日付、Matt Burgess氏記名記事「Amazon has made its first Prime Air drone delivery in the UK」の日本語訳版「アマゾン、ついに「ドローン配送」を実施:英国で」(2016年12月14日配信)。

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by urag | 2017-07-19 09:11 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 07月 03日

メモ(23)

「文化通信」2017年7月3日付記事「アマゾン、取次へのバックオーダー6月末で全面停止」によれば「アマゾン・ジャパンは本紙取材に対し、かねて出版社や取次に告知していた通り6月30日で日本出版販売(日販)へのバックオーダーを停止することを明らかにした。一方、出版社には取次との流通改善で対応しようと…」(以下有料)。業界全体にとって重要な内容なので、これはできれば無料で公開していただきたかったですが、同日付の紙媒体1面記事を参考に私が気になったポイントをまとめておくと次のようになります。

1)バックオーダー停止は出版社2000社以上に通知し、合計35回の説明会に520社超が参加。直取引である「e託」への申し込みは駆け込みで増加したものの成約数は未公表。
2)期日通り6月30日いっぱいで日販にも大阪屋栗田にもバックオーダーの発注を停止。
3)すでにシステム接続が完了している大村紙業京葉流通倉庫河出興産工藤出版サービスのほか、主要倉庫業者4社とEDIの準備を進め、7月~9月には稼働予定。

全文詳細はぜひ7月3日付の紙媒体の「文化通信」をご覧ください。一番気になるのは1)の直取引の成約数や、3)のEDI準備中の倉庫業者4社です。ここに切り込んでいく他のメディアがあったらよいのですが。1)については小零細の版元が多いのでしょう。そう推測できる理由については「メモ(22)」の後半で述べました。

なお、「新文化」2017年6月30日付の記事には「京葉流通倉庫、今冬までに販売サイト開設」というのもあって、「物流・倉庫業を手がける京葉流通倉庫(埼玉・戸田市)が今秋から冬にかけて、取引のある出版社約50社の本を対象に、直接読者に販売するウェブサイトを立ち上げる。京葉流通倉庫が発送や代金回収を担うという」と報じられています。出版業界の発展にはロジスティクスの進化が欠かせないわけですが、今後は倉庫業者の動向に注目が集まりそうです。

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バックオーダー終了に伴う「カート落ち」によってアマゾンはロングテールの一部を失うことになります。それを見越したリアル書店の店員さんの中には「アマゾンでは売っていませんが、ウチでは売ってます」と宣伝しようとお考えになっている方もおられるようです。そうした試みを当ブログでは応援していきたいと思います。

ところで「カート落ち以後の社会」で、本を探している人々にとってもっとも強力なツールのひとつは、オンライン書店「honto」になるでしょう。「honto」では単品ページごとに、ジュンク堂、丸善、文教堂といったDNPグループ内のリアル書店の店頭在庫が一覧で表示されます。○が3冊以上あり、△が1~2冊あり、×が在庫なしです。アマゾンは全国に大小10か所の物流拠点(FC:フルフィルメントセンター)があり、膨大な商品点数を在庫していますが、ジュンク堂、丸善、文教堂の三大チェーンの全店舗を合わせた在庫数も相当なものになります。

そのため、アマゾンでカート落ちしている本も「honto」で探すことができます。それどころか、版元品切本すらよく見つかります。今のところ店頭在庫を買うためには「honto」経由で取り置きを依頼するか、店舗に電話して代引で取寄せるか、どちらかになります。私の場合、版元品切になった単行本から文庫まで、全国のジュンク堂、丸善、文教堂から代引で折々に購入しています。送料と代引手数料がかかりますが、往復交通費とは比べ物にならない微々たる金額です。アマゾンをはじめとするネット書店の「即出荷、送料無料」に慣れてしまうとつい目が向かなくなってしまうのかもしれませんが、カート落ちしている本や版元品切本を新本で探すなら「honto」で検索、というのは今や常識です。

「honto」自体の「24時間」在庫点数はアマゾンに比べれば物足りませんが、重要なのはリアル店舗の在庫を探せる、ということなのです。これはアマゾンではできないことです。当ブログのエントリー「ジュンク堂のネットストアHONでは支店の在庫が分かりますよ」は2010年の古いエントリーにもかかわらずいまだにアクセスがあります。「新文化」2017年5月17日付記事「日販の平林彰社長、業界3者の在庫「見える化」と「出荷確約」態勢に意欲」によれば、「今年7月に出版社と日販、書店の在庫情報を共有できるネットワークを構築したうえ、「見える化」と「出荷確約」した流通を目指す考えを打ち出した」とのことでしたが、業界三者以上に「見える化」を欲しているのは読者です。全国書店の店頭在庫の横断検索が読者にできるようになれば、ずいぶん便利になるはずです。ちなみに「NAVERまとめ」には「在庫検索可能なリアル書店一覧」というリストがあります。

出版社が時折経験することに「版元品切本で探している読者が多いのに書店から返品依頼が入る」というものがあります。不思議なことと言うべきか当たり前と言うべきか、他店で売れていようが版元で重版していようが、別の書店では1冊も売れていないということがままあります。さらには「こんな貴重な本がよく残ってたな」と唸ってしまう返品依頼もあったりします。当然のことながら、そういう本は返品されたが最後、そのお店に再出荷できることはありません。つまり、読者が血眼になって探しているかもしれない本を「まったく売れない」と嘆いている本屋さんもいらっしゃるわけです。このミスマッチをいいかげんに何とかしなくてはならないのではないか。版元にせよ書店にせよ取次にせよ、在庫の「見える化」は読者の利益であるべきです。

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明敏なる諸先輩や同輩からの示唆によって、出版物流の危機について理解を深めるためには次の二つの新聞記事の閲覧が必須、と知りました。

1)「文化通信」2017年5月1日付インタビュー記事「抜本的な解決に向けて取次(取協)と出版社(雑協)の協議がスタート――2010年から相次ぎ業者が撤退、出版輸送はどうなるか」では、日販専務取締役安西浩和さん(取協「発売日・輸送対策委員会」副委員長)とトーハン専務取締役・川上浩明さん(同委員長)の発言が読めます。厳しい状況がひしひしと伝わってきます。

見出しを抜き出してみると以下のようになります。「トーハンは7年で9社が撤退」「荷主に労働環境改善要求も」「輸送のバリエーションが増加」「幹線担う大手も撤退の動き」「配送が止まる事態も」「平均積載率は5割程度」「自助努力して運送会社と交渉」「業量は日によって2倍に」「休配13日で法の範囲内に」「新聞配送の活用を実験」「最低運賃保証でコスト圧迫」「出版社の協力金と運賃のギャップ開く」「書籍だけ運ぶのは無理」「受益者負担考える時期に」「いまの構造全体に」「秋から年末にかけ方向性」「業界四者での取り組みも必要に」。業界四者というのは、出版社、取次、書店の従来の三者に加え、輸配送業者を含めたものです。おそらくはここに倉庫業者の視点も必要になるものと予想されます。

このほかの大きな見出しには次のものがありました。「労働環境、安全の問題も背景に(安西副委員長)」「輸送網の維持が販売会社最大の課題(川上委員長)」「販売への悪影響ないように検討する(安西副委員長)」「自助努力のうえで、問題解決図りたい(川上委員長)」。全文を熟読しておくべき非常に重要な記事です。なお同記事については、「東スポweb」内の渡辺学氏(法務広報室長)によるブログ「ニュースのフリマ」2017年5月9日付エントリー「出版界でも深刻な配送問題」に言及があります。

2)「日本経済産業新聞」2017年6月30日~7月5日付の亀井慶一さんによる連載記事「よくわかる出版物流」(全5回)もタイムリーなまとめ記事です。各回の見出しは以下の通り。「書店数、10年で25%減」「アマゾン、取次会社と対立」「雑誌不振 取次の再編加速」「雑誌返品率 4割超える」「配送会社、相次ぐ撤退」。この連載に関連する記事として、同新聞では2027年5月5日付の大阪経済部・荒尾智洋氏記名記事「出版物流、荷物減っても配送負担が増す理由」があります。

これらの記事を参考にして常識的に考えると、雑誌配送網にまったく頼らない書籍配送網というのは考えにくく、配送網の維持のための取次や運送会社の自助努力が限界点を越える場合には、送品返品送料について出版社や書店が今以上の負担をするか、それが無理なら順次配送網を小さくするか、どちらかしかないように思われます。後者の場合、配本先から外れる書店が主に地方で出てくるということを意味しており、配本先が多くないと採算が取れない出版社の経営も打撃を受けます。

そうした背景と呼応するかのように、「日本経済新聞」2017年7月1日付記事「日販、グループ書店1割閉鎖へ」では以下のように報じられています。「出版取次大手の日本出版販売(日販)はグループ書店の最大1割を閉鎖する。対象は約25店で、2018年3月期中に閉鎖する。出版市場が縮小するなか、経営が苦しくなった書店をグループに取り込んできたが、黒字化が見込めない店舗は閉店に踏み切る」(以下、要登録)と。日販傘下の書店チェーンにはリブロやあゆみBOOKSをはじめとする書店があり、トーハンでも傘下書店にはブックファーストなどがあります。これまでも閉店作業は粛々と進められてきましたが、さらに店舗数が絞られていくことになるのでしょう。

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by urag | 2017-07-03 19:48 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 23日

メモ(22)

「週刊東洋経済Plus」2017年6月24日号特集「アマゾン膨張――追い詰められる日本企業」が興味深いです。

東洋経済記者・広瀬泰之氏記名記事「「直取引」拡大の衝撃――問われる出版社の選択」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)でアマゾンジャパン・メディア事業本部統括事業本部長村井良二さん曰く「読者が本を読みたいタイミングでお届けするのがいちばん重要。日販には長期で売れるロングテール商材を中心に在庫を増やすほか、バックオーダーの納期短縮を求めてきたが、われわれが求める水準に達さなかった」。→日販経由から版元直取引に変われば色々なことが解決する、というのはなかば幻想にすぎません。

すれ違う両者の言い分――日販 vs. アマゾン」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)で日販常務取締役大河内充さん曰く「アマゾンのバックオーダー発注は当社の売り上げ全体から見るとごくわずかだ。今回の件はかなり大きく報道されたが、「それほど大きな話なのか」とも感じる」。→アマゾンの揺さぶり戦略。

「数字への執着が尋常でなかった」――元アマゾン社員座談会」(無料会員登録で全文閲覧可能)で元アマゾン社員・飲料食品部門バイヤー中山雄介さん曰く「社内では“Good intentions don't work.”という言葉が使われていました。意志の力には頼るなというジェフ・ベゾスCEOのメッセージです。どんな業務でも属人的にならず、メカニズムを作るという徹底した哲学が浸透しています。ベゾス氏は人の意志のみならず、知能さえ信用していないのかもしれません。トークだけが上手な営業タイプの人は向かない会社でしょうね」。→むしろトークが上手な営業タイプがいないことが弱点だと思います。人的交流力に乏しい背景にこうした非人間的理念がある、と。

Interview|まだまだ社員を増やし「プライム」を強化する」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)でアマゾンジャパン社長ジャスパー・チャンさん曰く「今後も現状の価格水準を維持しながら、プライムサービスの充実化を図っていく」。→ヤマトが音を上げたら小さな他社に乗り換え、それもダメなら一般人も動員しますよと。取次が音を上げたら出版社に球を投げ、それでもダメなら(著者と直接?)。

聞き手・本誌長瀧菜摘氏「Interview|アマゾン米国幹部に直撃――「非プライム会員はありえない選択だ」」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)でアマゾンコム・デジタルミュージック事業部担当副社長スティーブ・ブームさん曰く「日本はまだストリーミングサービスが普及しておらず、楽曲を提供するアーティストが欧米に比べ圧倒的に少ないことが課題だ。アマゾンがあらゆる面のハードルを下げ、先頭に立ち市場を広げていきたい」。→破壊的創造と言えば聞こえはいいですけどね。

このほか、特集INDEXからのリンクで「ヤマト 剣が峰の値上げ交渉」「出品者たちの困惑――最安値要請で公取が調査」「AWSの磁力――大手企業が続々採用」「アマゾンはどう使われているか――本誌アンケートでわかった!」「シアトル本社の全貌――新社屋「THE SPHERES」は完成間近」「世界最強企業へ突き進む異次元の成長戦略――米アマゾン最前線」「驚異の金融ビジネス――商流の把握で自由自在」など興味深い記事が並びます。

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「毎日新聞」2017年6月29日付、広瀬登・棚部秀行氏記名記事「出版社との直接取引拡大 アマゾン流に揺れる出版流通」はリード文のみが無料閲覧可能で、記事本文は無料登録で読めます。「ネット通販大手のアマゾンジャパンが書籍販売を巡り、6月末で出版取り次ぎ大手・日本出版販売(日販)との一部取引をやめる。これまでは日販に在庫のない本は日販を通じて出版社から取り寄せていたが、今後は出版社との直接取引を拡大する構えだ。「お客様に早く本を届けるため」と主張するアマゾンに対し、出版業界の一部は「本音は取り次ぎと書店を排除し業界を支配する狙いでは」と疑心暗鬼を深める」。

出版協が今月中旬に開催したバックオーダー発注停止問題の勉強会の取材に始まり、出版社の反応や、日販ネット営業部・上原清一部長のコメント、アマゾンジャパン・メディア事業本部・村井良二統括事業本部長と種茂正彦事業企画本部長のコメントが掲載されています。ポイントは次の三点です。1)アマゾンのペースに引きずり込まれることへの警戒心を見せる大手版元幹部の発言。2)「通告以降、日販には中小の出版社から相談が相次いでいる」件。3)商品調達のスピードと確実性の重要性を指摘するアマゾン。

アマゾンのロングテールにおいて商品調達のスピードアップを求められる版元は大手であるというよりむしろ小零細でしょうか。リアル書店の扱い店舗数が限られている小零細は確かに日販帳合におけるアマゾンの売上比率が高いかもしれません。また、小零細は日販との結びつきが弱く、条件面でも厚遇されているわけではないので、アマゾンの支払条件が魅力的に見えているかもしれません。さらに小零細はVANを導入していない版元も多く、アマゾンとしても調達に苦しんでいたことでしょう。

ただし、そもそもアマゾンとの直取引に応じることは日販との取引に制限を加えることになり、いくつかの問題が出ています。まず第一に、信義上の困難という問題。日販と距離を置かざるをえないような挙措は今後の取引において悪影響を及ぼす可能性があります。第二に、日販での売上減少という問題。アマゾン分の売上が減ることによって日販との取引額が減り、その分を回復することが難しいかもしれません。第三に、日販での返品率の問題。アマゾンによって押し下げられていた返品率が上昇するかもしれず、日販との条件改定に直結しかねません。

それでもアマゾンとの直取引を選択しうるかどうか、というのは実際のところ選択が難しいです。どれくらいの数の出版社が直取引を選択するのかに注目が集まっていますが、それを調査し報道するマスコミがあるのでしょうか。7月3日(火)からの「変化」に注視したいと思います。

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「日経BizGate」2017年6月27日付、松岡真宏・山手剛人氏記名記事「ヤマトの「宅急便」が“崩壊”した本当の理由」は、「未払い残業代や運賃引き上げといった話は本来、個々の企業の労務問題や企業間契約にまつわる、いわばミクロな話であるということだ。それらが決着したところで、宅配問題の根底にある「構造」には少しもメスが入らないのである」とし、結論としては「注意深く張り巡らされてきたはずのヤマト運輸の宅配網の先端部分において、現場の宅配ドライバーの努力だけでは処理できないレベルの問題が発生している現在の状況は、異常な交通渋滞に等しい。それは、これまでとは異なる構造や経路を持つネットワークを再構築することでしか解決できないのではないだろうか」というもの。いささか唐突で抽象的な終わり方ですが、これは両氏の著書『宅配がなくなる日――同時性解消の社会論』(日本経済新聞出版社、2017年6月)の第1部「なぜ、ヤマト、三越伊勢丹はつまずいたのか」の第1章「宅配ネットワークが崩壊した本当の理由」からの抜粋なので仕方ありません。同書の目次を列記しておきますが、興味深いワードが並んでいます。

第1部 なぜ、ヤマト、三越伊勢丹はつまずいたのか
 第1章 宅配ネットワークが崩壊した本当の理由
 第2章 三越伊勢丹を揺さぶった時空価値競争
第2部 同時性解消と時間資本主義
 第3章 同時性解消のインパクト――コミュニケーションから生産性へ
 第4章 時間の効率化・快適化と同時性
 第5章 空間シェアリングと時間価値
第3部 近未来流通と同時性
 第6章 アマゾンが仕掛ける3つの刺客
 第7章 人間に残るもの
 第8章 それでも人は移動する
 第9章 人間の希少性が高まる時代

同記事のヤフー版コメント欄には興味深い投稿が並んでおり必見です。なお記事中にはこんな言葉があります。「ヤマト運輸が総量規制を行っても、処理能力を超えるEC、ネット通販利用者の増加という構造変化の流れは止められない。ヤマト運輸よりも大手EC企業に対する交渉力が弱い中堅以下の宅配業者にお鉢が回るだけだろう」。実際にそうなりつつあることは、「日本経済新聞」2017年6月22日付記事「アマゾン、独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み」でも明らかです。アマゾンは版元との直取引も増やしているわけなので、インプット(仕入)もアウトプット(出荷)も共に細分化していくことになるのでしょうが、果たしてアマゾンは物流の品質を保持しきれるのでしょうか。版元にしても配送業者にせよ、中小零細を取り込んでいけば、日販やヤマトと違って取引先の倒産数も必然的に増えるでしょう。中小零細と結ぶことはかえってアマゾンに不安定性をもたらすことになるのではないか、と危ぶまれます。

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by urag | 2017-06-23 15:38 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 22日

メモ(21)

ヤマト運輸と決裂しそうな雲行きによって、アマゾン・ジャパンの周辺では様々な変化が玉突のように連鎖しています。以下に取り上げる個人運送事業者の囲い込みもそうですし、今月で終了予定の日販へのバックオーダーの件も、業界内では連鎖の中に見る向きがあります(アメリカ本社へのアピール)。なお、バックオーダーの発注終了および版元直取引の慫慂については、予定では本日がアマゾン側の説明会の最終日です。ちなみに昨日は太洋社の債権者集会の第三回目でした。破産債権に対する配当は10月~11月頃の予定と聞いています。12月に計算報告集会が行われ、太洋社の件はようやく終結することになります。

「日本経済新聞」2017年6月22日付記事「アマゾン、独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み」によれば、「インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)が独自の配送網の構築に乗り出すことが分かった。注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者を2020年までに首都圏で1万人確保する。ヤマト運輸が撤退する方向のため、代替策を模索していた。大手運送会社の下請けとして繁忙期に業務が集中しがちな個人事業者の活用が通年で進み、運転手不足の緩和につながる可能性がある」(以下閲覧には要登録)。

ポイントは「注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者」というところ。「メモ(16)」でも言及した、例の「所沢納品センター」も当日配送が売りです。「アマゾンジャパン(東京・目黒)は、出版取次を介さない出版社との直接取引を広げる。自ら出版社の倉庫から本や雑誌を集め、沖縄を除く全国で発売日当日に消費者の自宅に届けるサービスを今秋までに始める。アマゾンによる直接取引が浸透すれば、取次や書店の店頭を経ない販売が拡大。書籍流通の流れが変わる節目になりそうだ。/埼玉県所沢市に1月、設立した「アマゾン納品センター」を直接取引専用の物流拠点として使う」(「日本経済新聞」2017年3月22日付記事「アマゾン、本を直接集配 発売日に消費者へ――取次・書店介さず」)。私は「取次を出し抜くレヴェルの「アマゾン最優遇」を版元や倉庫会社から勝ち取れるでしょうか」と書いたわけですが、アマゾン最優遇へと傾きつつある出版社に対して、取次さんや書店さんはどうお感じになるでしょうか。

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「日経新聞」と同様の記事には、「朝日新聞」2017年6月22日付、奥田貫氏記名記事「アマゾン、「当日配送」維持へ独自網強化 ヤマト縮小で」があります。曰く「通販大手のアマゾンが、「当日配送」ができる独自配送網の拡大に乗り出していることが分かった。宅配最大手のヤマト運輸が人手不足から当日配送を縮小しており、アマゾンはこれまで東京都心の一部で使っていた独自配送網を強化することで、サービスの維持を図る考えとみられる。/今月上旬から、新たに中堅物流会社の「丸和運輸機関」(埼玉県)に当日配送を委託し始めた。23区内の一部から始め、委託するエリアを首都圏に拡大していくとみられる。丸和はこれまで、ネットスーパーの配達などを手がけてきたが、当日配送を含めた宅配事業を大幅に拡大する方針だ」云々。同記事のヤフーニュース版ではコメント欄に興味深い投稿が並んでいます。「結局下請にブラックが増えるだけ」という指摘は、大方の業界人が抱く懸念ではないかと思います。

また、より詳細な記事としては、「DIAMOND online」2017年6月21日付、週刊ダイヤモンド編集部・柳澤里佳氏記名記事「ヤマトが撤退したアマゾン当日配達「争奪戦」の裏側」があります。丸和運輸機関が宅配事業の「桃太郎便」を強化していることを、和佐見勝社長への聴き取りなどから示しています。「5月、軽ワゴンを新車でなんと1万台発注。年内に3500台が納品予定だ。中古車も500台ほど手当てした。「〔・・・〕今がチャンス。ネット通販が伸び盛りの中、大手が運ばない当日配達の荷物を誰が運ぶかで、下克上が始まった」(和佐見社長)と鼻息は荒い」と。

さらに記事ではこうも報じられています。「近年、企業の物流業務を一括して請け負うサードパーティーロジスティクス、通称「3PL」企業がインターネット通販大手と組み、宅配に手を広げているのだ。/中でも注目されるのが、アマゾンと地域限定で提携する配達業者、通称「デリバリープロバイダ」で、丸和もこれに参画した。/先行者はアマゾンと二人三脚で急成長している。例えばアマゾンの倉庫業務や宅配が売上高の7割を占めるファイズは2013年に創業し、わずか4年で上場を果たした。他にはTMGやSBS即配サポートなどが取引を拡大中だ。/後発の丸和は、生協や大手ネットスーパーの宅配を長年手掛けてきたノウハウを生かし、接客の質で差別化を図る。「早く、丁寧に運べば、大逆転も狙える」(和佐見社長)」。

接客の質で差別化を図る、というのは重要です。というのも、アマゾン・ジャパンが利用している「デリバリープロバイダ」については、ウェブで目にする購入者からの評価には、ヤマト運輸に比してまだまだ厳しいものがあるものからです。「バズプラスニュース」2016年8月9日付、yamashiro氏記名記事「【激怒】不満爆発! Amazonの配送業者「デリバリープロバイダ」をできるだけ避ける方法――デリバリープロバイダが不評」や、「NAVERまとめ」2016年8月10日更新「【デリバリープロバイダ】Amazonの“TMG便”がひどいらしい・・・【届かない】」。残念ながらこれらは過去の話とは言えません。「デリバリープロバイダ」よりも、ヤマト運輸への信頼感が強いのが現状ではないでしょうか。ヤマトが当日配送から撤退となれば、「デリバリープロバイダ」側のサービスが向上しない限り、混乱は続きますし、アマゾンへの悪評も消えないでしょう。

先述の「DIAMOND online」の記事では次のような指摘もなされています。「「アマゾンに食いつぶされてたまるか」と拒絶反応を示す企業もある。「最初は頼み込まれて始めても、力関係は早晩変わるはず」(3PL企業幹部)。〔・・・〕アマゾンは宅配大手と同じように新興勢とも荷物1個当たりの成果支払いを要望。一方、新興勢からすれば、当日配達は再配達が多く、燃料費も人件費も掛かるので、料金を保証してほしい。水面下では、こうした攻防が繰り広げられている。〔・・・〕そして最大のネックは、やはり人手だ。すでに物流倉庫ではアジア系の労働力が欠かせない。外国人労働者が宅配ドライバーになる日も近いかもしれない」。3PL幹部の本音は小零細出版社の本音でもあります。色々と嫌な予感がしますが、同記事のヤフーニュース版のコメント欄も非常に興味深いです。例えば「犠牲者になる対象が変わっただけだよ。物流業はマンパワー以外手段はない。魔法があるなら大手はとっくに使っている」との声。まったく同感です。

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「日本経済新聞」では本日、加藤貴行氏・栗原健太氏記名によるこんな記事も配信しています。「アマゾンの荷物、一般人が運ぶ時代」によれば「アマゾンジャパン(東京・目黒)が日本国内で独自に配送網を構築することになった。アマゾンは個人事業者を活用し、宅配便首位ヤマト運輸を事実上中抜きする。実は親会社の米アマゾン・ドット・コムの目線はもっと先にある。究極の姿は、時間のある一般人に委託したり、ロボットを使ったりする手法だ。アマゾンが世界の物流のあり方を変えようとするなか、欧米企業も対応を進めている」(以下要登録)。記事では米国で2015年から始まっている、個人に宅配を委託する事業「アマゾンフレックス」や、2016年に英国で始めたドローンによる自動配達試験「アマゾン・プライム・エアー」のほか、目下アマゾンが研究中のとある技術、またドイツのダイムラーの「危機感」にも言及しており、必読です。

このほか参考すべき記事には「ITmedia NEWS」2017年6月17日付記事「Amazon、一般人に荷物運びを依頼? 新アプリ開発中か:外出のついでにAmazonの荷物を運んで小遣い稼ぎ──こんなことができるようになるかもしれない」があります。「日経新聞」が参照している「Wall Street Journal」の記事について触れたものです。曰く「Amazon社内で「On My Way」と呼ばれているというこのサービスは、「配達のクラウドソーシング」だ。都市部の小売業者に依頼して荷物を集積しておき、一般人はどこかへ行くついでに荷物を配達する仕組みになるようだ。こうした仕組みを実現するモバイルアプリを開発中という」。

この「On My Way」をめぐる同様の記事には、「TCトピックス」」6月17日付、Jordan Crook氏記名記事「Amazonが一般人が商品配送に参加できるアプリを開発中との情報」や、「ITpro」6月17日付、小久保重信氏記名記事「Amazon、一般の人が商品を配達する新たな仕組み「On My Way」計画中」があります。前者では「WSJの記事によれば、On My Wayプロジェクト〔への〕参加者はこうしたロッカーやAmazonの商品を預かるコンビニなどでパッケージをピックアップし、最終目的へ届けるのだろうという」と。 後者では「Wall Street Journalによると、Amazonがこの計画を実現させれば、同社は「クラウドソース・デリバリー」と呼ばれる、一時的な契約職員を使った配達サービス事業に参入することになる。ただし、この分野では大手運送業者などと競合する規模でサービスを展開した企業はまだない」と紹介されています。

画期的とも言える一方で、様々な配送トラブルが見込まれることは否応ないように感じます。

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アマゾン・ジャパンの書籍事業本部による「商品調達および帳合取次との取引変更に関する説明会」についてごく簡単に書いておきます。この説明会の内容は「confidential」と銘打たれていましたから詳細には言及しませんが、いつも通りのご高説でアマゾン側から見た論理としてはたいへん筋の通った話でした。むろんそこに取次や出版社の視点をさしはさむ余地はなく、その意味ではツッコミどころ満載ではありました。

本日6月22日付の「新文化」では1面に「日販「在庫見える化」「出荷確約」を推進/「アマゾン問題」をどう捉えるか」が掲載されています。リードはこうです。「アマゾンジャパン(以下、アマゾン)が日販へのバックオーダー発注を終了すると発表してから約2カ月が経過した。アマゾンは説明会を繰り返し行い、出版社に直接取引を推奨しているが、日販との関係を鑑みていまだ結論を出せない出版社も少なくない。この問題解決には「日販の在庫拡充」か「出版社の直接取引」の2択しかないというアマゾンの主張を、日販はどう受け止めているのか。日販の安西浩和専務と大河内充常務に話を聞いた。(聞き手=本紙・丸島基和)」。

アマゾンの説明会を聞いた印象では、彼らは日販のこれまでの労苦を多としつつも「限界がある」と見ており、私の印象で言えば、完全に日販を見限っている様子が窺えました。また、アマゾンの皆さんは各種マスコミやネットでアマゾンがどう批評されているかを逐一チェックされているとのことで、内心の苛立ちを隠さないお話しぶりでした。スタッフの皆さんはそうしたアマゾン批評を見ても、立場上一切リプライを返せないのでしょう。その辺はもっと風通しが良くなってもいいのではないか。

そもそも業界関係者がネットでアマゾンに物申している背景には、アマゾンに直言したとしてもこれといった「話し合い」にはならないという、繰り返されてきた悲しい現実があります。彼らは良くも悪くもチームワークで対応するため、一対一の関係でとことん話し合うという企業風土がないように見えます。さらに、アマゾンの方針から外れる案件にはどんな種類の問い合わせであれまったく答えようとしない合理主義というものが徹底されているようにも見受けます。要するに出版社にとってはそもそも人的コミュニケーションが取りづらい相手なのです。そうじゃないよ、誤解だよ、交流できるよ、というアマゾン内部の方がいるとしたら、ぜひ直接話を聞いてみたいものです。

一言で言えば、アマゾンの説明会は不愉快なものでした。アマゾンの言いようは総じて日販に対して否定的なニュアンスがあり、「新文化」記事で紹介されているような日販側の言い分とは相容れないように思えました。以前私は「このままでは日販は言われっぱなしだ」と書きましたが、実際にその通りになっていました。彼らが掲げる「お客様第一主義」という御旗には、日販の苦労も、出版社の思いも、ヤマト運輸のそれと同様、残念ながら届かないと思います。大したイノベーションですよ、まったく。

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by urag | 2017-06-22 10:40 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 07日

メモ(20)

さいきん多くの反響を呼んでいるらしい風刺動画の原作はMoby & The Void Pacific Choirの楽曲「Are You Lost In The World Like Me?」(こちらは昨年10月に公開され500万回以上再生されており、公式動画を下段に掲出します)で、アニメーターはSteve Cuttsさん。風刺画の名手です。自然と人間の関係性を題材にした動画作品「MAN」も公式から掲出しておきます。






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by urag | 2017-06-07 12:34 | 雑談 | Trackback | Comments(0)