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カテゴリ:雑談( 450 )


2017年 05月 22日

メモ(18)

「文化通信」2017年5月22日付記事「アマゾンジャパン「バックオーダー」終了で出版社2000社余に説明会」で報道されている通り、今般のアマゾン通知についての出版社への説明会が先週から始まっています。曰く「4月21日に「バックオーダー発注」の終了を決定。同24日から、同社売り上げランキング上位20社ほどを書籍事業企画本部・種茂正彦本部長が直接訪問し、それ以外の上位50社ほどにも担当窓口などから説明を実施。/同28日には同社が年間1冊以上販売した出版社として登録されている約2500社から、出版社がアマゾンサイトの商品登録などを行う「ベンダーセントラル」の利用出版社と、名簿などで住所が確認できる出版社約2000社にメールもしくは郵送で通知送った。これに加え5月15日から説明会を開始。上位約600社には5月、それ以降についても順次案内している」。

弊社に届いているのは4月28日付のメール「重要なお知らせ:商品調達および帳合取次との取引に関する変更について」(アマゾンジャパン合同会社書籍事業部購買統括部)と、その後封書で届いた同名の書類で、後者ではここ3年間の日販経由取寄注文高(月次)一覧や、欠品率、リードタイム、日販での引当率を月次で数値化したもう一つの一覧と、全28頁のカラーパンフレット「Amazon.co.jp和書ストアの仕組み」が添えられています。カラーパンフの詳細については今は脇に置きます。おおざっぱに言えば「現状よりも直取引の方が売上を伸ばせるよ」という内容ですが、なんだまたそれの繰り返しかと呆れるのではなく、熟読が必要であることは言うまでもありません。

二枚の一覧について言えば数字だけ見せられても書名が分からないので中身の分析のしようがないです。そもそも一覧表をどうやって見るべきなのか、その「見方」がどこにもまとめられていません(せめて用語については「パンフの××頁を参照」とか書いてくれればいいのに)。これだけ送られてもただちに「アマゾンと直取引しなければ」とはなりにくいのではないかと想像します。アマゾンの考え方がこれでは伝わりませんし(アマゾン側としては説明したいことはパンフで尽きている、と言いたいのだろうことはよく伝わりますが)、こうした書類だけを機械的に送ってくるスタンスがいったいどういうものなのか理解に苦しみます。まあ分からなかったら電話してよ、パンフもよく読んでね、ということなのでしょうが、経験的に言えば電話したって分かりっこない感じがします。アマゾンは出版社が知りたいパンフ以外の情報のすべてを公開することまではできないでしょうから。

むしろ日販さんがこれらの「欠品率、リードタイム、引当率」について出版社に説明できることがあれば、日販さんと出版社との連携が強まるだろうと思います。アマゾンの説明会だけでは、日販は「言われっぱなし」になるのがオチです。対抗して説明会を持つというのも立場上難しいのかもしれませんけれども、日販にも出版社に説明するチャンスがあるべきではないかと思います。「新文化」5月17日付記事「日販の平林彰社長、業界3者の在庫「見える化」と「出荷確約」態勢に意欲」によれば、「5月16日、東京・水道橋の東京ドームホテルで行われた「2017年度日販懇話会」の挨拶のなかで、〔・・・〕今年7月に出版社と日販、書店の在庫情報を共有できるネットワークを構築したうえ、「見える化」と「出荷確約」した流通を目指す考えを打ち出した。また、12月には王子流通センターにweb-Bookセンターを統合する計画を発表した。「1冊を丁寧に売る構造に変え、少部数・少ロットで成立する出版流通モデルを志向していく」と話した」とのことですが、この手の懇話会が案内されるのは限られた出版社です。

この2017年度日販懇話会の様子については日販の本日付ニュースリリースで紹介されています。平林社長の冒頭挨拶で2016年度の売上高概況報告(概算)が次の通りあったと書かれています。「書籍・開発品の売上高が前年より若干上昇し、返品率も改善傾向にあるものの、雑誌の売上高は引き続き減少傾向にある〔・・・〕。さらに、書店や取次の経営を支える非正規雇用労働者の賃金上昇や、出版流通を支える運送会社におけるトラック運転手の高齢化や運賃収入減少といった輸配送問題が業界への逆風になっている〔・・・〕。/こうした状況を改善するには、大量生産・大量販売の構造から、1冊を丁寧に売ることができる構造へと、出版産業を変革していく必要がある〔・・・〕。日販が目指すSCM〔サプライ・チェーン・マネジメント〕の姿として、「見える化」と「確約」を掲げ、書店・出版社・日販の在庫の連携に取り組んでいく〔・・・〕」。

話を戻しますが、先の「文化通信」記事ではこうも書かれていました。「これだけ多くの出版社を対象に説明会を開くことについて種茂本部長は、「この決断については特定のところにだけお話しするというわけにはいかないと判断している。誤解や不安を払拭しなければならないと思っているので、できるだけ説明の機会をたくさん設けて、説明に伺いたいと思っている」と述べる」。バックオーダーの発注が終わる6月30日までに説明会が間に合うのは上位600社のみなのかどうか、今は分かりません。弊社が600位までには入っているかどうかもまた、微妙なところです(ちなみにアマゾンの2015年1年間での「和書および雑誌部門出版社別年間売上ランキング」は「新文化」2016年2月1日付記事「アマゾンJ、出版社別年間1位はKADOKAWA」にてPDFを見ることができます。参考までに、「新文化」では紀伊國屋書店の「2016年出版社別売上ベスト100社〈修正版〉」もPDFで公開されています。

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by urag | 2017-05-22 18:29 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 07日

メモ(17)

アマゾンの版元直取引宣言が取次を含む業界再編の強力なトリガーになるのではないかと「メモ(16)」で予想しました。トリガーとまで言わなくとも、対外的な大義とはなりうるわけです。アマゾンに対するヤマト運輸の対応のように。そして連鎖の始まりともなりえます。他の宅配業者が値上げや業態転換へと進んだように。「日販=大阪屋栗田=日教販=出版共同流通」というまとまりと「トーハン=中央社=協和出版」というまとまりがそれぞれ一体化へと向かう可能性は以前からあったわけですが、いよいよ統合が加速するかもしれず、その要となるのはまず、日販と大阪屋栗田の関係性ではないかと思われます(とはいえ、取次とその株主である大手版元は少なからず同床異夢の関係にあるように見えて複雑です)。「新文化」の過去記事に今後の業界再編に繋がるヒントが隠されているかもしれません。

2017年4月5日付記事「大阪屋栗田、服部達也氏が代表取締役副社長に」に曰く「4月1日、取締役会を行い、役員人事を決議した。服部取締役が代表取締役副社長執行役員に就いた。事業構造改革担当、マーケティング推進室、企画管理本部、リーディングスタイルを管掌する」。大阪屋栗田の筆頭株主が楽天なのは周知の通り。服部さんは楽天出身。

2017年4月19日付記事「大阪屋栗田、初のPB商品を販売」に曰く「4月下旬から、同社初のPB商品『DATE CHECK‐マスキングテープ』の販売を開始する。同社では「読書タイプ」と「日付タイプ」の2種類を用意。〔・・・〕同商品は同社と取引のある書店で展開する。参考希望小売価格は340円」。書籍ではなく文具だというのがミソ。昨今は書店さんでも文具売場を新設するお店が多いのは周知の通りです。日販やトーハンも文具は扱っていますし、かつて太洋社も2009年から輸入文具を扱っていたことがあり、好評だったと聞いたことがあります。

2017年4月25日付記事「トーハン、今秋から3種ポイントカードに対応」に曰く「楽天、NTTドコモ、ロイヤリティ マーケティングの3社と業務提携し、今秋から書店店頭で「楽天スーパーポイント」「dポイント」「Ponta」の各種カードに対応するサービスを開始する。来店者はいずれかのポイントカードを選択して、ポイント付与やポイントを使用することができる」と。それにしても、出版業界がポイントを実質的値引と批判をしていたのは今となっては昔の話、といった感が否めません。書協・出版再販研究委員会2004年3月11日見解「ポイントカードは値引き/ポイントカード制に関する「公取委の見解」等の経緯」、出版協2013年8月28日声明「ポイントカードによる値引き販売に反対します――読者、書店、取次店、出版社の皆様へ」。

同記事に続けて曰く「トーハンでは共通ポイント化にあたって、新POSレジを開発。その価格は従来のPOSと同額に抑えられているため、取引書店は追加負担なしで新POSに入れ替えて「共通ポイント機能」を導入することができる」と。楽天は先述の通り大阪屋栗田の筆頭株主であり、大阪屋栗田は日販との協力関係を深めている一方で、日販の対抗勢力であるトーハンともお付き合いをするということで、やや込み入った構図。日販はCCCとの連携が強いため、Tポイントとの競合を嫌ったかたちでしょうか。本件については私は版元営業マンのnishiyanさんの分析に同感です。

ちなみにアマゾンに対抗意識があるのは紀伊國屋書店だけではなく、CCCもおそらくはそうではないかと思われます。「東洋経済オンライン」2017年4月5日付、杉本りうこ記者記名記事「TSUTAYAが不振出版社を買い続ける狙い――徳間書店の買収で目指すは書店の「ユニクロ」」によれば「3月31日、東京都内のホテルで開かれたCCCの社員ミーティング。グループ傘下の多くの社員が一堂に会する恒例の年次会合の場で、増田氏は「SPA(製造小売業)をやらなければアマゾンには勝てない」と語ったという。〔・・・〕SPAとはユニクロのファーストリテイリングのように、小売業が川上の製造分野まで手がけ、オリジナル商品を開発する経営モデルだ。つまり増田氏はCCC系列の店舗で扱う商品・サービスを、自ら開発しようと考えているのだ。/徳間書店側も「自社から良質なコンテンツをCCCに提供し、出版やライツビジネスなどの事業を拡大する」(業務管理部)と東洋経済の取材に回答しており、今後はアニメなどエンタメ関連の雑誌・書籍や関連グッズを、グループ向けのオリジナル商材として開発するとみられる。/ネット通販のアマゾンが圧倒的な品ぞろえによるロングテールを強みとするのに対し、増田氏は「アマゾンにはない、ここにしかない」というオリジナル性で差別化を図ろうと考えているのだ」。徳間書店が、と考えるよりも、SPAそのものに注目すべきかと思われます。これは書店と出版社の未来が一体化や強い製販同盟へと行き着くかどうか、という問いへとつながります。少なくとも紀伊國屋書店や丸善のような、書店部門と出版部門を兼ね備えた会社の来し方を見る限り、それは簡単ではありません(しかし、今まではそうだったけれど、とも言えるのかもしれません)。「強度の経営統治」と「編集の自由」はしばしば相容れない価値観の尺度を持っているからです。平たく言えば、カネ儲けと文化創造は必ずしも一致しないのです。折り合いの付け方によって、出てくる結果は異なってきます。

いずれにせよ、ここでの私の解釈は表層を撫でたものに過ぎません。深層はいつだって、もっと複雑怪奇です。一見分かりやすいように感じても、事実は小説よりも奇なり、という展開が今後も待ち受けているのでしょう。

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「はてな匿名ダイアリー」2017年5月7日付エントリー「アマゾンの「バックオーダー発注」廃止は、正味戦争の宣戦布告である」は、同業者にはとても共感できる鋭い記事で、すでに多くの反響が寄せられています。特に次の点は版元営業マンであれば必ずぶち当たる疑問です。

「実際にこの十数年、定番書であっても同じアイテムの「バックオーダー発注」の短冊が数週間に一度、同じ日に何枚も「市川13,6,4、小田原9,5,2、堺20,7、鳥栖6,5,2」というようにまわってきて、その前後でアマゾンで品切になり、回復まで10日間というような事態が繰り返されてきた。/ベンダーセントラルを見ると、受注は多少の波はあれどコンスタントであり、アマゾン自身の「需要予測」もおおむね頷ける値になっている。しかし、発注だけがすさまじく間歇的なのだ。/最初は倉庫の入荷オペレーションのためかと考えていた。しかし、倉庫が各地に増えた現在では、各倉庫の発注時期をずらせば、品切を回避できるはず。アマゾンの優秀な人たちがそれに気づかないはずはないが、折に触れてその点は提案してきた。/「発注時期を倉庫毎にずらせませんか」「バックオーダーの発注を版元に直接送りませんか」/しかし、そのたびに返ってくる返事は「当社独自の計算にもとづき、在庫量・発注時期は最適なかたちでおこなわれています」「流通にご不満がある場合は、e託契約をご検討ください」だった」。

「複数の出版社でこの問題を訴えようにも「e託契約」も「パートナー契約」も、すべて明細は秘密保持契約(NDA)の向こう側にあり、その訴訟リスクが情報共有と連帯を阻む。今回、筆者が匿名で書かざるを得ないのもそのためだ」。

アマゾンはこの筆者を特定しようとするでしょうか。私はこの筆者にむしろ感謝したいですし、こうした問題提起が広く公的に議論されることを望みたいです。アマゾンは直取引先が増えていることをなんとかアピールしたいようですが、「メモ(16)」で書いた通り、それには限界があるというのが私の予想です。アマゾンと同じ土俵に乗る必要はない、と判断した出版社をアマゾンが説得することはほぼ不可能でしょう。あと、この際アマゾンに言っておきます。版元に電話を掛けてくるなら、掛けてくる人間にちゃんと部署名くらい与えてあげなさいよ。

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アマゾンの直取引宣言問題は、ヤマト運輸とアマゾンとの関係性の変化を背景にしていると見ている業界人はそれなりに多いと思われます。ヤマトのドライバー経験があるという物流ライターの二階堂運人さんが「東洋経済オンライン」に寄せられた5月12日付記事「ヤマト元社員が訴える「宅配現場」本当の疲弊――未払い残業代を払い値上げしても解決しない」は、今回の問題の背景を考える上で必読ではないかと思われます。

送料無料の功罪を思うに、これは通販を気安く使えるようになる起爆剤とはなったわけですが、利用者の意識において「商品を運ぶ距離」「運ぶ手間」「それらを担う人力」への想像力が薄れてしまった感は否めません。ここでも問題なのは「中間の省略」です。中間者は実際のところけっして省略しつくすことができません。著者と読者だけの、神と私だけの世界があるわけではないのです。そんなごく当たり前のことが想像できなくなるリスクがここにはあるのではないでしょうか。

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by urag | 2017-05-07 22:45 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 03月 14日

メモ(15)

「NHKニュース」2017年3月12日1時39分付動画記事「TSUTAYA展開の会社 徳間書店を傘下に入れる方針固める」に曰く「関係者によりますと、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブは、子会社のカルチュア・エンタテインメントを通じて、「徳間書店」の議決権のある株式のおよそ96%を取得する方針を固めました。/カルチュア・コンビニエンス・クラブは、すでに子会社を通じて徳間書店の議決権のある株式のおよそ15%を持っていて、さらに保有する株式を議決権付きに転換するなどして、今月中にも徳間書店を傘下に入れることにしています」と。さらに「今回、徳間書店を傘下に入れることで、出版事業を強化し、そのコンテンツやノウハウを書店の店作りや電子書籍の配信などに活用する狙いがあるものと見られ、厳しい経営環境にある出版業界の新たな動きとして注目を集めそうです」とも報じられています。

「ORICON NEWS」3月14日11時9分付記事「CCC、「徳間書店を子会社化」報道にコメント」などが報じているようにCCCは広報より「本日の一部報道に関するお知らせ」として「本日、一部報道機関において、CCCグループのカルチュア・エンタテインメント株式会社が出版社の株式を取得し子会社化するという報道がなされておりますが、当社が発表したものではございません。/今後、開示すべき事実が決定した場合は、お知らせいたします」とコメントを出していますが、以後各紙からも報道が出ている状況です。

関連記事には以下のものがあります。

「産経ニュース」3月14日11時23分付記事「ツタヤ親会社が徳間書店を買収へ 出版やコンテンツ増強、96%出資で子会社化
「日本経済新聞」3月14日11時29分付記事「CCC、徳間書店を買収へ 数億円追加出資
「時事通信」3月14日12時54分付記事「TSUTAYA、徳間書店を子会社化=出版事業強化
「TBSニュース」3月14日14時16分更新動画記事「TSUTAYA運営会社、徳間書店を傘下に

「日本著者販促センター」のウェブサイトに転載されている「新文化」紙発表による、「丸善ジュンク堂書店 2016年 出版社別 売上げ ベスト 300」では、徳間書店は40位(前年度31位)で、同紙発表の、「2016年 紀伊國屋書店 出版社別 売上ベスト300社」では34位(前年度30位)で、下降気味とはいえ、ベスト50位以内に入る大出版社です。以前当ブログでも確認した通り、CCCの傘下版元にはCCCメディアハウスや美術出版社、ネコ・パブリッシング、復刊ドットコム、光村推古書院などがあり、今後もますます増えていくのかもしれませんし、書店、取次、版元、IT企業、印刷会社、等々を巻き込んだ、上位企業をターゲットにした業界再編が進むのかもしれません。

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2017年3月18日付追記:「Business Journal」2017年3月18日付、ジャーナリストの日向咲嗣氏による記名記事「ツタヤ図書館、ダミー本3万5千冊に巨額税金…CCC経営のカフェ&新刊書店入居」は痛烈。ホンモノの本よりダミー本(「ダミーで見た目だけを整えて集客するためのインテリア」)、国の補助金、800メートルしか離れていない場所に中央図書館、駅ビル開発ありき、傲慢な市議会、「公共性を無視した指定管理の典型」。・・・この手の図書館に違和感を抱く出版人がますます増えそうな予感です。

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2017年3月30日追記:「朝日新聞」2017年3月30日付、黒田健朗氏記名記事「「ツタヤ図書館」批判の投書、市幹部らが投稿者宅を訪問」(ヤフーニュース版)によれば、「佐賀県の武雄市図書館に関して、市民が市の施策を批判する投書を新聞〔佐賀新聞3月4日付〕にしたところ、「事実誤認」があるとして市幹部らが投稿者や家族を訪問した。市議会一般質問でも市議が投稿者を個人情報を交えて批判。こうした直接の働きかけについて「圧力になりかねない」「反論は紙面ですべきだ」という指摘がでている」と。

記事によれば市こども教育部は「内容の数カ所が市の見解と異なり「事実誤認」だと判断。3月6日に水町直久理事ら3人が男性宅を訪れた。男性は「一部説明不足や数字の誤りはあったが、自分の主張に間違いはない」などと話したという。翌7日には諸岡隆裕・こども教育部長が男性の家族の職場に行き、投稿内容について説明した」。さらに「9日の市議会一般質問では、山口昌宏市議〔自民党〕が投書を「あることないこと書いてある」と批判。市側に対応などをただした。山口市議は男性を名字で挙げたうえで、家族について職業や、仕事柄、市図書館にも縁があることに触れ、「そういう中でこの投稿は通常ありえない」「当たり前のことを書かないで、皆さん方に迷惑をかけている」などと男性を批判した」と。

市職員が男性の自宅のみならず、男性の家族の職場に出向くというのは異常です。さらに市議が名指しで議会で一般市民の個人情報をあげつらって批判するのも異常。武雄市では「例の」樋渡啓祐元市長が「反対者に対する過剰な攻撃性」を指摘された過去があり、こうした市や市議会による市民の口封じはまったく不名誉の上塗りでしかありません。出版社はちゃんと見てますよ、これからも。

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by urag | 2017-03-14 15:37 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 02月 10日

メモ(13)

東京商工リサーチの2017年2月10日付「TSR速報」によれば、老舗の地図取次である日本地図共販株式会社(江戸川区南葛西3-9-20、設立1946年7月、資本金9600万円)が本日2月10日、東京地裁へ破産を申請したとのこと。負債総額は14億6304万円(平成28年9月期決算時点)。売上のピークは平成9年9月期の109億9065万円。その後、ピーク時の約3分の1まで落ち込んでいた、と。「得意先書店の大手取次への帳合変更の流れは止まらず〔・・・〕最近になって複数の出版社が当社に対する出荷を停止し、事業の継続が困難になっていた」と報じられています。

「文化通信」2月10日付記事「日本地図共販、自己破産を申請」では「近年は減収基調にあり、営業段階から毎期赤字計上が続いていた。〔・・・〕この間、営業所の閉鎖を実施するなど立て直しに努めていたが、今年初めに出版社への支払ができず、大手取引先出版社が相次いで出荷を取りやめたことで破産申請に至った」と。一般読者にはあまりなじみがない会社かもしれませんが、出版業界にとっては無視できないニュースです。

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by urag | 2017-02-10 17:42 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 11日

メモ(12)

昨年末は岩波ブックセンター信山社さんの破産による閉店がニュースになりましたが、破産や倒産ではなくても書店さんの閉店というものは版元にとっては半ば日常的に経験する不可避の出来事です。たいていは返品依頼であったり、電話やFAXが不通だったりということで初めて閉店を知るケースが多く、すべての書店さんに最後のご挨拶ができるわけではありません。寂しいですがその後どこで何をされているのか存じ上げない書店員さんも多数いらっしゃいます。

リーディングスタイルが手がけるsolid & liquid TENJIN(大阪屋栗田帳合、2014年11月28日開店)は、今週末(2017年1月15日)で閉店とのこと(公式ブログ12月28日付エントリー「【お知らせ】solidandliquidTENJIN閉店のお知らせ。」)。また、ふたば書房チェーンの複合店、FUTABA+京都マルイ店(日販帳合、2011年4月27日開店)は今月末(1月31日)で閉店と(京都マルイによる2016年12月1日付告知「6F 【FUTABA+京都マルイ店】閉店のお知らせ 」)。

前者の紹介記事は、「Y氏は暇人」の2015年3月13日付エントリー「【天神】イムズのsolid&liquid TENJINというブックカフェが良い感じだ!」や、デザイン会社「BULANCO」さんのウェブマガジン「swings」の2015年9月14日付記事「本屋の枠に収まらない「solid & liquid」で本との出会いを楽しむ」をご参照ください。

後者の店頭写真や、店長の清野さんへのインタヴューは、デザイン会社「フィールド」さんによる約半年前(2015年8月8日付)の記事「お世話になり図鑑 vol.01 ふたば書房 FUTABA+京都マルイ店」をご覧ください。

閉店理由はそれぞれ個別具体的にあるものと思いますが、上記2店のような、読者へのアプローチにおいて比較的に新しいタイプの「複合型書店」が撤退するというのは、この業界の厳しさを想像させる、と言うべきでしょうか。ポスト「複合型書店」のヴィジョンがここしばらく業界に求められてきている、とも言えるのかもしれません。

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by urag | 2017-01-11 13:12 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 15日

メモ(11)

未来屋書店の2016年12月15日付ニュースリリース「雑貨と本のライフスタイルストア『TODAY’s LIFE 仙台』12/16 オープン」によれば、「イオングループの株式会社未来屋書店(本社:千葉市美浜区、以下 未来屋書店)は、全国初出店となる雑貨と本の新業態店舗「TODAY's LIFE」の1号店「TODAY's LIFE 仙台」を仙台フォーラス(仙台市青葉区)地下1Fに2016年12月16日オープンします」とのこと。

「TODAY's LIFE」は、大阪屋栗田系列の株式会社マルノウチリーディングスタイルのプロデュースによる「新しいかたちの雑貨と本のライフスタイル提案型ブックストア」だそうで、「マルノウチリーディングスタイルのエッセンスと、未来屋書店のノウハウを組み合わせた独自の切り口やテーマ、仙台「初」「発」にこだわった品揃えと組合せで、仙台にこれまで無かった日々の暮らしに身近な本との関わり方を提案します」と謳われています。
 
TODAY's LIFE 仙台(トゥデイズライフセンダイ:宮城県仙台市青葉区一番町3-11-15 仙台フォーラスB1F;電話022-212-6061)は売場面積61.86坪で、雑貨文具約3,000点と書籍雑誌約10,000点を扱います。営業時間は10:00から20:30まで。同店の特徴は次のようにアピールされています。

「“今日を大切にすることが素敵な明日につながる。豊かな今日の暮らしを支えていくお店”をコンセプトに、20代~30代の女性をメインターゲットにした、ライフスタイル提案型ブックストアとして、「マルノウチリーディングスタイル」が東京で発信する最先端カルチャーと仙台の地域性を組み合わせ、仙台「初」「発」にこだわった雑貨と本の品揃えやフェア企画を展開してきます」。「同じ「今日」がないように、「TODAY's LIFE 仙台」には決まった「棚」はありません。これまでの書店や書店と文具雑貨の複合店の基本である「ジャンル別」、「定番の棚」、「フェアを展開する棚」といった考え方は持たずに、毎月、さまざまな切り口やテーマと品揃え、販売手法で「新しい棚」をつくり、お店のレイアウトも棚の位置ごと変化します。その時々のトレンドや「マルノウチリーディングスタイル」と「TODAY's LIFE 仙台」が発信するライフスタイルでお店全体が常に変化します」。

さらにVI(ヴィジュアルアイデンティティ)へのこだわりとして以下のような説明があります。「お客さまが感じる印象は視覚的要素が大部分を占めます。「TODAY's LIFE仙台」は視覚的感性にもこだわります。ロゴやシンボルマーク、店内演出物、ショッパーなどのVI(ヴィジュアルアイデンティティ)はグラフィックデザイナーの宮添浩司氏が担当。「TODAY's LIFE仙台」の世界観をスタイリッシュに表現すると共に、デザインを活用したオリジナルグッズなども展開予定です」。

仙台初の試みとして、リーディングスタイル系列店ではお馴染みの「バースデイ文庫」「ビブリオセラピー」のほか、「ZERO JAPAN コーヒードリッパー限定色(3色のうちいすれか)&カフェマグ・ギフトセット」を展開予定だそうです。

同リリースを元にした記事に、「文化通信」12月15日付有料記事「未来屋書店、リーディングスタイルのプロデュースで新業態店舗」や、「Infoseek 楽天 NEWS」12月15日付「DreamNews」配信記事「イオングループの未来屋書店、マルノウチリーディングスタイルのポロデュースで全国初の新業態店舗「TODAY's LIFE」を仙台に出店。 2016年12月16日オープン」があります。

リーディングスタイルは、日本紙パルプ商事株式会社の子会社「株式会社リーディングポートJP」が出店した複合店「BOWL」(ららぽーと富士見、ららぽーと海老名)でも中心的役割を担ってきましたし、ポスト・ヴィレヴァン型のモール内複合店を模索したい既存チェーンにとっては力を借りたい会社でしょう。今後もこうした試みはまだまだ増えていくものと思われます。

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by urag | 2016-12-15 18:53 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 07日

メモ(10)

「businessnewsline」2016年12月6日付、Harry Martin氏記名記事「Amazon: レジのないスーパー「Amazon Go」を発表・客は商品を取って持ち帰るだけでOK」によれば、米アマゾンはスーパーマーケット「Amazon Go」を来年から店舗展開すると5日に発表したとのこと。「スーパー内に入る際に、客は自分が持っているスマートフォンで認証を行う必要があるが、一旦認証手続きが済んでしまえば、面倒なレジの手間は必要なく、店内に並んでいる商品に関しては手に取るだけで、自動的にコンピュータービジョンで自動認識を行うことで清算手続きが完了してしまう」といいます。さらに以下のような特徴がある、報じられています。

・いったん手に取ったものでも棚に戻せば、買ったことにはならない。
・清算のためにレジに並ぶ必要がないため、他のスーパーに比べて手軽に、かつ迅速に買物を済ませることができる。
・レジ担当の従業員を雇う必要がなくなるため、人件費の大幅な削減が可能。
・手に取るだけで清算が完了するので、万引被害をゼロにすることも可能。

リンク先の記事では動画「Introducing Amazon Go and the world’s most advanced shopping technology」もご覧になれます。コンピュータ・ヴィジョン、ディープラーニング・アルゴリズム、センサー・フュージョン、といった技術を駆使したこの方式をアマゾンでは「Just Walk Out Technology」と呼んでいます。従業員がますます不要となる小売店の進化には呆然とするほかありません。Amazon Goは来年の早い時期にシアトルの7thアヴェニューで開店するようです。なお、米アマゾンは同じくシアトルのユニヴァーシティ・ヴィレッジに約1年前(2015年11月3日)、リアル書店「Amazon Books」を開店させていることは周知の通り。こちらでの支払い方法はレジでのクレジットカード払いのみ(「ニュースウォーカー」2016年2月9日付記事「米シアトル「Amazon Books」で体験するリアル書店の未来形」参照)。リアル書店でもAmazon Goのようなコンピュータ・ヴィジョンが将来的に可能になるなら画期的なことですが、スーパーと違って書店は1冊ずつしか店頭に置いていない商品が大半なので、勝手が違うかもしれません。

ちなみにAmazon Booksでは「レジ支払時にPrime会員になるよう勧誘されるとのこと。結果、レジ客はPrime会員となって値引き価格で購入するか、拒否して定価で購入するかの選択が迫られるようになったという」と「hon.jp DayWatch」2016年11月2日付記事「米Amazonのリアル書店「Amazon Books」、レジ支払時にPrime会員勧誘活動を開始、非会員だと定価でしか買えないように」で伝えられています。この記事は米国の電子書籍ニュースサイト「The Digital Reader」11月1日付、ネイト・ホッフェルダー氏記名記事「Amazon is Now Charging Non-Prime Member Customers List Price in Its Bookstores」を参照したもの。開店当時と違って、会員でない客にとってはネットで購入するより実店舗で買った方が本の値段が高くなる、という理解で良いかと思われます。この種の囲い込みは功を奏するのでしょうか。

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関連記事には以下のものもあります。

「日本経済新聞」2016年12月7日付記事「アマゾン、実店舗へGO AIで自動会計」では、スーパーではなく「コンビニエンスストア事業」とされています。曰く「米シアトル中心部の初号店で社員を対象にした試験を始めており、17年1月に一般向けに開店する。総菜や生鮮品をそろえる。「アマゾン・ゴー」のブランドで米国の他の大都市にも出店する。/店舗ではセンサーやカメラを駆使し、来店客が手に取ったり、棚に戻したりした商品とその数をAIが認識する。会計はアマゾンの口座から自動で引き落とされる。商品を持ってそのまま退店できる。これらはアマゾンのAI開発部隊が培ってきた技術だ。店舗への商品の配送では、ネット通販での経験を生かす」と。記事では「アマゾンが社員向けに開設したコンビニ店舗(米シアトル)」という写真も掲載されています。

この記事を元にした論説に、「投信1」の2016年12月7日付ニュース解説「アマゾンのコンビニ参入は日本の小売にとって脅威か――セルフレジと購買履歴にプラスアルファが必要!?」があります。「原理的に言えば、実店舗でカメラも含めて行動管理をされるとなると、「購買した」モノだけでなく「購買しようとした」モノも履歴が残されることになるかもしれません。/入店の時点から一挙手一投足がカメラで管理されていて、しかも自分のIDが入店時点からわかってしまっているとなると、気軽にお店に行くのは気が引けるかもしれません。アマゾンがこうしたデータを収集するのか、どう活用・管理するのかは注目です」。このアマゾンの試みが日本にも将来的に入ってくるとしたら、某企業のポイントカード事業に優る顧客情報蒐集になりそうですね。また同解説にはアマゾンの未来について次のように予想しています。「個人個人の購買履歴に基づいてモノづくりの領域に入っていくことでしょう。アマゾンでは既に一部の商品でSPA化が試みられていますが、まだ発展途上と言えそうです。しかし、いずれ小売から製造小売りに移行する時が来ると思います。/その時には本当に他社が手に負えないほど強力な事業になっているのではないでしょうか」。出版社がアマゾンに呑み込まれ、下請けとして本を作ることが常態化する時代も来るでしょうか。直取引をしている版元はそれなりの数に上りますし、アマゾン限定のノヴェルティ付き商品もありますから、もうすでにその時代は始まっているのかもしれませんが。

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「日刊工業新聞ニュースイッチ」2016年12月6日付記事「「Amazon Go」は共同冷蔵庫。今後はマンションやオフィスにも?――コンビニ型の実店舗を開設、その可能性」において日刊工業新聞社ソーシャルプロデューサーの土田智憲さんは「別名、共同冷蔵庫と言っても良いですね。ものを補充する物流の仕組みをつくって、コストを落とすことが可能ならば、もっと小さい単位でのタワーマンションや、オフィスビルへの導入もできてしまいそう。入店時点で、アカウントが把握され、導線や商品を迷った形跡もトレースできてしまいそうで、今までのPOS以上に、情報が緻密になるのでしょうね」のコメントされています。ありていに言って監視社会化がさらに進むといったところかと思います。様々な課題(防犯など)があるとはいえ、こうした技術の進化は日本のコンビニ業界も取り入れることになるのだろうなと想像しています。

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by urag | 2016-12-07 12:33 | 雑談 | Trackback | Comments(4)
2016年 11月 29日

メモ(9)

「日本経済新聞」2016年11月28日付記事「紙離れでも積極投資 凸版印刷100億円、神戸新聞は輪転機」に曰く「人口減や電子媒体の普及による「紙離れ」が進むなか、印刷会社や新聞社が積極投資に打って出る。凸版印刷は28日、雑誌や書籍の印刷を手掛ける川口工場(埼玉県川口市)での約100億円の設備投資を発表。〔・・・〕最新鋭の印刷機械を手に入れて業務を効率化、収益基盤を固める狙いだ。/凸版印刷が川口工場で導入するのは、高速オフセット輪転印刷機など。このほど延べ床面積1万7722平方メートルの新棟を建設。これまで全国に点在していた印刷・製本の設備を集約するという。新しい生産ラインは12月から稼働する予定だ。/最新型の印刷機を導入することで、これまで受注してきた雑誌などに加え、印刷数が数百から数千と少ない自費出版の書籍や高価な学術書の印刷にも機動的に対応する。幅広い印刷需要を掘り起こすことで、「紙離れ」に対抗する」と。

大手のやること以外はなかなか記事になりにくいのかもしれませんが、中規模印刷所でもこうした投資をし、縮小する市場規模の中での生き残りを賭けている会社があります。撤退する会社があれば、事業拡大を目指す会社もある、と。凸版印刷が「印刷数が数百から数千と少ない自費出版の書籍や高価な学術書の印刷にも機動的に対応する」というのは、大手版元の事情を如実に表していると想像できます。ことこの少部数出版の分野においては凸版が中小印刷会社と価格競争ができるのかどうかはよく分かりませんが、中小版元にまで凸版から営業がかかることはないような気がします。
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by urag | 2016-11-29 12:46 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 28日

メモ(8)

東京商工リサーチの「TSR速報」2016年11月28日付によれば、岩波ブックセンターを経営する(有)信山社が破産開始決定と。「設立平成12年8月、資本金300万円、故柴田信代表)は11月25日、東京地裁から破産開始決定を受けた。〔・・・〕負債は現在調査中。/東京・神田神保町で(株)岩波書店発行の書籍販売を中心とした「岩波ブックセンター」を経営していた(岩波書店との資本関係は無い)。人文・社会科学系の専門書、新書、文庫をはじめ岩波書店が刊行する書籍の大部分を取り扱っていることで広く知られ、多くの書店が集中する神保町界隈でもランドマーク的な存在として知名度を有していた。/しかし、28年10月に代表の柴田取締役会長が急逝。事業継続が困難となり11月23日より店舗営業を休業し、動向が注目されていた」と。

帝国データバンクの11月28日付「倒産速報」では、負債1億2732万円(債権者約28名)と伝えられ、「2000年(平成12年)8月に設立された専門書店運営業者。神田神保町にて「岩波ブックセンター」を運営していた。岩波書店と直接的な資本関係はないものの、岩波書店発行の歴史、文芸、政治、哲学、宗教、心理などの人文・社会科学系専門書を取り揃え、岩波書店が刊行する新刊本、流通している既刊本はすべて取り扱っていることを最大の強みとしていた。/しかし、出版不況下で慢性的な業績低迷が続き、毎期欠損計上を余儀なくされていた。財務体質は脆弱で、債務超過の状態を脱することが出来なかった」と報じています。

人文書業界にとってはけっして小さくないニュースです。取次は大阪屋栗田で、旧栗田の帳合店でした。大阪屋栗田と言えば、関東の流通拠点であるOKC(埼玉県戸田市氷川町3-4-15)とOKC第二物流センター(戸田市美女木1271-3;元「太洋社戸田流通センター」)を年内で閉鎖し、年明けから埼玉県川口市本蓮1-14-1の日の出運輸倉庫の1Fと3Fに「大阪屋栗田関東流通センター」を開所することになったばかり。2拠点分の物流をどうやって日の出倉庫に統合できるのか部外者には想像がつかないなか、大阪屋栗田が支えていくと宣言しているはずだった街ナカ書店のひとつである岩波ブックセンターが破産というのは、旧栗田帳合の書店さんへの取次の対応が思いやられ、さらに11月18日には株式会社出版物共同流通センターが解散したこともあり(「文化通信」2016年10月13日付記事「共同集品の出版物共同流通センターが解散へ」)、年末という区切りだけにいささか嫌な流れを感じるところではあります。また、岩波ブックセンターは店頭在庫の何割かが岩波書店の本や文庫、新書、ブックレット、雑誌だったのでしょうし、資本関係がないとはいえ、岩波書店との付き合いがどんなものだったのか、推理しようとする向きもあるようです。

【2017年2月追記:なお、大阪屋栗田の西の物流拠点は「関西流通センター」(旧称:川西流通センター)で、現在は兵庫県川西市久代3-6-1に所在する「プロロジスパーク」内1F、南バースs21に入居。川西流通センター時代(2016年2月22日に本格稼働:日書連「全国書店新聞」H28年3月1日号記事「大阪屋、新栗田出版販売を発足/統合会社は「大阪屋栗田」に」参照)には取次側は公式ウェブサイトの「会社概要」欄では「プロロジスパーク」ではなく「楽天フルフィルメントセンター川西」という名称で記載しており、そこの1Fおよび4Fに入居しているとあります。プロロジスが楽天専用物流施設「プロロジスパーク川西」を竣工式したのは2013年11月です。プロロジスの2013年11月22日付プレスリリース「プロロジス、兵庫県川西市で楽天専用物流施設「プロロジスパーク川西」の竣工式を挙行」をご参照ください。発注書を辿ってみると、2017年1月5日付発注書では宛名紙が「川西流通センター」、1月12日付発注書では宛名紙が「関西流通センター」と変わっています。大雑把に言えば、関東流通センターの開設にあわせて西側の拠点も2017年年明けから改称したということでしょう。さらに遡ると、川西流通センターが関西ブックシティを経由せずに自ら搬入口となったのは2016年5月からで、5月の発注書では大阪屋栗田の公式ウェブサイトでの記載「楽天フルフィルメントセンター川西」と異なり、最初から「プロロジスパーク」と記載しています。ちなみに大阪屋栗田の筆頭株主が楽天であることは周知の通りです。】

関連記事は以下の通り。「新文化」2016年11月28日付記事「岩波ブックセンター信山社が破産」に曰く「10月に柴田会長が急逝したことで事業継続が困難となり、11月23日から店舗を休業していた。同28日には、関係者らが店内の整理にあたっていた。白井潤子社長の姿もあったが、関係者に遮られ直接声を聞くことはできなかった」と。店内を整理する様子を窓の外から写した写真が何とも言えず物悲しいです。同紙11月22日付記事「柴田信氏の「お別れの会」、400人超が参列」。同紙11月14日付記事「大阪屋栗田、OKCの2拠点を統合」。

ちなみに版元の信山社出版株式会社さんはまったくの別会社で無関係であり、有限会社信山社との資本関係もないと聞いています。

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柴田信さんについては「東京新聞」2016年11月10日付夕刊社会面の記事「岩波ブックセンター会長 故柴田信さん 本愛した「神保町の顔」 21日にお別れの会」で手短かにまとめられています。

「J-CASTニュース」11月28日付記事「「岩波ブックセンター」運営会社が破産 神保町の名所「とても寂しい」」ではツイッターでの反響も拾われています。色々な声はあると思いますが、この記事配信後のツイートで個人的に胸にズキンと来たのは@lalalacozyさんのつぶやき「残念というのは容易いけれど、そう嘆く人の何割が最近岩波ブックセンターに足を運び購入したのだろう。本を買わなくなった我々が潰したのだ」、でした。

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「OKC 戸田」で検索すると比較的上位に掲出される某ブログ記事に戦慄を覚えました。怖い話なのでリンクできません。

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信山社関連記事。「読売新聞」11月28日付記事「岩波ブックセンター経営、信山社が破産手続き」、「毎日新聞」11月28日付「岩波ブックセンター 経営の信山社が倒産」、「時事通信」11月28日配信「神保町の信山社破産=「岩波ブックセンター」経営」などはごく簡単な報道。「朝日新聞」11月29日付記事「岩波中心の書店、運営社破産」は有料記事につき全文は読めませんが、ヤフーニュース版11月28日付記事「岩波ブックセンターの運営会社破産 「専門書の専門店」」と類似する内容かと推察されます。曰く「岩波書店や東京商工リサーチによると、岩波ブックセンターは1981年、岩波ホールに隣接する岩波書店アネックスに入居。当時は岩波の関連会社が運営していたが、2000年に岩波とは資本関係のない信山社が引き継いだ。同店のホームページでは「硬派出版社の新刊本・既刊本にこれだけ出会える書店は、他に例はない」とするなど「専門書の専門店」として知られてきたが、・・・」と。

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岩波ブックセンターのサイトトップにはごく簡単な「ご案内」が掲出されています。曰く「誠に勝手ながら、岩波ブックセンターは平成28年11月25日をもちまして閉店させていただきます。長年のご愛顧、まことに有り難うございました。岩波ブックセンター(有)信山社」。

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名古屋の榮進堂書店さんが自己破産との報。1965年の創業の地「星ヶ丘」から昨年11月に東山公園駅付近に「EiShiNDo BOOK FOREST」として移転されたばかりでした。店舗には愛知工業大学八草店、同大自由が丘店、雑貨を扱うSindy’s Doorアピタ上野店、同アピタ名張店がありました。「新文化」2016年12月8日付記事「榮進堂書店、自己破産申請へ」に曰く「榮進堂書店(資本金1200万円、名古屋・千種区、青木俊暁代表)は12月5日、事業を停止。〔・・・〕帝国データバンクによると、2000年初頭には売上高約20億円をあげていたが、16年6月期には4億6000万円にまで落ち込み、4年連続の赤字決算となっていたという。負債は約7億円」と。記事には明記されていませんが大阪屋栗田帳合と聞いています。

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by urag | 2016-11-28 17:16 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 17日

メモ(7)

「Yahoo!ニュース」2016年11月16日配信の三橋正邦さん(1961生:ライター/Yahoo!ニュース編集部)による記事「リアル書店は消えるのか、模索する現場の本音」では、工藤恭孝さん(丸善ジュンク堂代表取締役)、友田雄介さん(アマゾンジャパン合同会社Kindle事業本部コンテンツ事業部事業本部長)、内沢信介さん(TSUTAYA BOOK部部長)、田島直行さん(蔦屋書店事業本部本部長)、上林裕也さん(ヴィレッジヴァンガード書籍・コミック統括バイヤー)の四氏のインタヴューを読むことができます。多忙を極める各氏に取材された手間は相当なものだったろうと推察されます。業界人必読かと。

読んでみて思うのは、どなたの意見もそれぞれ納得できるものでそれぞれの会社の理念というものが如実に現れていると感じるものの、それぞれの発言の背景にある経験を推測すると、実際のところかなりお互いに「通じ合わない」別の言語で話しているのかもしれない、ということです。世代的に見て、工藤さんが一番上の世代で、その次が友田さん、さらにその下の世代が内沢さん、田島さん、上林さんになるかと想像します。一番下の世代の三氏が30代だとすれば、彼らが業界に入った時にはすでに出版不況が進行していたでしょう。

友田さんは三氏より上の世代でしょうけれども、別のインタヴュー記事(「ダ・ヴィンチニュース」2012年11月21日付「まつもとあつしのそれゆけ!電子書籍【第22回】Kindleとうとう国内サービス開始! アマゾン ジャパンの中の人に素朴な疑問を聞いてみた」)では「1994年、早稲田大学大学院理工学研究科卒業。住友商事(株)、ヤフー(株)を経て、2005年アマゾン ジャパン(株)入社。コンテンツ開発統括部長として書籍の立ち読みサービス「なか見! 検索」立ち上げ後、書籍事業本部長を歴任。2011年9月より現職」となっていますから、三氏と経験則はあまり変わらないかもしれません。つまり、出版不況がじわじわと始まっていく90年代前半の過渡期を業界人としては体験されていないはずです。

工藤さんについてはウィキペディアで立項されていて「工藤 恭孝(くどう やすたか、1950年3月20日 - )は、兵庫県生まれの経営者・実業家。ジュンク堂書店の創業者で、株式会社丸善ジュンク堂書店の代表取締役社長。父はキクヤ図書販売の経営者だった工藤淳。/兵庫県立兵庫高等学校を経て、1972年に立命館大学法学部を卒業後[1]、実父の工藤淳が経営していたキクヤ図書販売に入社。その後1976年に独立し、株式会社ジュンク堂書店の立ち上げと同時に代表取締役社長に就任、神戸市三宮にジュンク堂書店1号店をオープンした」とある通り、業界が絶好調だった時もどんどん下降していったここ20年のこともご存知です。

業界の歴史を知っているか知っていないか、というのはプラスに働くこともマイナスに働くこともあるわけで、一概にどちらがいいとは言えませんが、経験はしていなくても知っておいた方がいいことは確かな気がします。なぜかと言えば人間は忘れっぽい動物であり、何度でも失敗を繰り返すからです。失敗すること自体が悪いというよりは、歴史に学ばないことは賢明ではない、と。とはいえ、絶対に正しい史観というものがあるのではなく、唯一の歴史があるのでもなく、誰もが何かしらのかたちで自らの立場の相対性を甘受しなければならないわけで、歴史を学んだり共有しようとすることには困難さが常に付きまといます。また、特定の歴史やしがらみから自由な場所でこそ暴力的な刷新や破壊的な創造が可能なのだ、とも言いうるでしょう。

そんなわけで、(様々な)歴史を知らない者はどんなにか洗練を装っても野蛮であり、(それぞれの)歴史を知る者はその相対性のうちに囚われる危険がある、と。一方で、野蛮な新参者や異なる世界観を持つ者にできることがあれば、他方では臆病な知恵者にしかできないこともある。私が言いたいのは、業界人は案外、壮大なディスコミュニケーションの中でそれぞれの仕事をしているのではないか、ということです。ディスコミュニケーションが存在するのを認めないことこそが本当の野蛮であり、同質化の暴力ではないかと思うのです。ではそれぞれが勝手にやるしかないのか、というと、そうではない気がします。同質化の暴力を常に警戒しつつも、業界人が会社組織やそれぞれの立場などの垣根を越えてともに意見を交わし、互いの経験に敬意を払い、業界外ともつながり合って(ここが一番それぞれの会社にとって大事ではあるのですが)、出版という世界の社会性を耕していくことが重要だろうと思います。社会性は他者や外部の存在なしには成立しません。私たちはおそらく、どんなにか混乱に見舞われて苦しんでいても、純粋かつ完全な単体よりは不純で不完全な群体であるほかはないのですが、群体のまま争っていたところで本当の意味での共生は果たせないのではないでしょうか。個の不可能なる止揚。綺麗事ではあっても(あるいは危険と隣り合わせでも)、それが真実ではないかと思います。

ちなみに内沢さんは三年前、カルチュア・コンビニエンス・クラブTSUTAYAカンパニー商品本部商品・調達部BOOKユニット運営支援チームチームリーダーでいらっしゃった時に、同社広報担当の高橋祐太さんと一緒にインタヴューに応じておられます。「CNET JAPAN」2013年3月27日付、編集部加納恵氏記名記事「リアル書店で売上1位--TSUTAYAがこだわる書店のあり方とこれから」。上記記事と合わせて読んでおきたいと思います。
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by urag | 2016-11-17 13:48 | 雑談 | Trackback | Comments(0)