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カテゴリ:雑談( 459 )


2017年 07月 25日

メモ(25)

「DIAMOND online」2017年7月25日付、須賀彩子(ダイヤモンドZAi編集部)氏記名記事「ヤマトがアマゾンに1.7倍の運賃値上げと総量抑制を要請、ヤマ場は9月」によれば、ヤマト運輸はアマゾン・ジャパンの宅配便数の4分の3を担っており、残り4分の1は日本郵便だと言います。記事ではアマゾンからの荷物の平均単価はヤマトの運賃表の4割程度であり、「これは2013年に佐川急便が利益が出ないとしてアマゾンの仕事から撤退したときの価格に等しい」と。ヤマトは値上げを要求し、さらに現在引き受けている宅配便のうち20%前後の荷物は引き受けられないとも伝えていると言います。詳しくは同記事をお読みください。コメント欄付のヤフーニュース版はこちら

記事によれば「アマゾンは、自前で物流網を築くとしているが、「そんなにすぐにはできない。4~5年は要するだろう」(物流関係者)という」。時間がかかるだろうことは明白ではありますが、アマゾンはそこまでは待てないでしょうから、何かしらの手を打つだろうと思われます。とはいえ、中小の運送会社にいくら頼ったところで・・・という各方面の嘆き節はしばらくは収まらないでしょう。自動運転やドローンによる配送が実現するのも、この日本では近い将来、とまではなかなか思えません。

直取引を開始している版元や検討している版元からすでに様々な「ボヤキ」が聞こえてくる昨今、とうとうバックオーダー発注停止から1ヶ月が経とうとしています。版元によっては日販の売上がどの程度変化しているかを見極めて、アマゾンとの直取引の是非を考えざるをえないでしょう。実際のところアマゾンが検討すべきなのは、直取引に固執しないもう一つの回路を作っておくことではないかと思います。すなわち、版元への直発注です。普通の書店ではやっていることをアマゾンがやらないのはなぜか。結局版元が納品するのは日販にであって、そこからアマゾンに届くまでの時間を何とかして短くしたいなら、手っ取り早いのはやはり直取引だ、ということだからでしょう。

しかし、日販との取引の積み重ねがある大方の版元にとっては、信義上、簡単に直取引に乗り換えられるものではありません。加えて、そもそもアマゾンが取引先として信頼に足る相手なのかどうか、版元には根強い不信感があります。その不信感は版元が一方的に抱いている偏見などではなく、アマゾン自身が引き起こしているものです。そのことにそろそろアマゾンは気づくべきです。なぜ緑風出版、水声社、晩成書房が今なお出荷停止をしているのか。学生への割引販売は大学生協でもやっていますから、学生が安く買える状況に文句を言いたいわけではないだろうと思います。そうではなく、アマゾンはおおむね、版元への事前相談なしに大事なことを決めてしまい、それについて版元と真摯に協議する姿勢が見られなかった。そこが一番の問題なのではないでしょうか。「アマゾンはいずれ再販制を無視して本の安売りを始めるに違いない」と疑われても仕方ない態度しか見せてこなかった、という版元にとっての「現実」に対して、アマゾン自身が何かしらの反省をしているようには残念ながら見えません。「それは誤解だ」と平然と言ってのけている内は、版元との距離感は縮まりようがないでしょう。

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バックオーダー発注停止から1ヶ月経とうとしている今、不思議なのは、アマゾンが在庫を持っていない商品についても買い物カゴがまだついている、ということです。いわゆる「カート落ち」になっておらず、取寄せ表示になっています。「通常9~14日以内に発送します」「通常1~4週間以内に発送します」「通常2~4週間以内に発送します」「通常1~2か月以内に発送します」だけでなく、「一時的に在庫切れ、入荷時期は未定」と表示していても、買い物カゴがついているケースを7月半ばまで見かけました。これはおかしい。取寄せはしないんじゃないの? 取寄せ発注しないのに在庫復活は無理でしょう。お客様とトラブルになりかねないではないですか。ところが25日現在、弊社本の場合、取り寄せはむしろ減って、1冊でも在庫しよう、と努力しているように見えます(それでもまだ取寄せ表示の銘柄が数点残っています)。

アマゾンにとってもカート落ちは怖いのだと見えます。それはそうでしょう。今のままアマゾンが発注をやめていれば、直取引版元以外で、日販ともMD契約をしていない版元の銘柄は間違いなくガンガン「カート落ち」します。驚いてしまうのは、「ロングテール喪失」のリスクというごく当たり前の展開を、アマゾンがさほど真剣には考えてこなかったらしいことです(アマゾンへの「誤解」が解ければ、出版社は直取引に応じるはずだ、という期待も、今となっては甘すぎました)。日販経由のバックオーダー短冊は止まったものの、日販のウェブブックセンターへの発注は止めていないのではないかと私は想像しています。そうでなければ、弊社銘柄の在庫の復活は説明できません。

とはいえ、今後どうなるのかは今しばし観察する必要があります。カート落ちが発生した場合、弊社がお客様にお薦めしたいのは、hontoとMJB(丸善、ジュンク堂、文教堂の店頭在庫)からの購入です。アマゾンしか通販の選択肢がないわけではない、というごくごく当たり前の事実をもう一度見直す必要があります。

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by urag | 2017-07-25 10:50 | 雑談 | Trackback | Comments(1)
2017年 07月 19日

メモ(24)

すでに読まれた方も多いと想像しますが、「ねとらぼ」2017年7月16日付の九条誠一さんによる記名記事「Amazon“デリバリープロバイダ”問題、ヤマト撤退で現場は破綻寸前 「遅延が出て当たり前」「8時に出勤して終業は28時」」には戦慄を禁じえません。この記事では、デリバリープロバイダで配送業務に携わっているAさんと、Amazonの倉庫配送拠点であるFC(フルフィルメントセンター)で働くBさんの証言を紹介しています。すべての発言が重要なので出版業界人はぜひとも全文を読む必要がありますが、業界人が想像していた通りの現実に対する強烈な裏打ちとなる発言を一つずつ取り上げたいと思います。

まずAさん。「デリバリーステーションに所属している社員は、8時に出社して終業は28時というのが基本的な労働時間です。そのようなセンターが高品質なサービスを提供できるわけがありません。〔・・・〕大手企業でさえ撤退するような事業を、地域の中規模運送会社が行うのはやはり無理があります。今の運営は遅配ありきの運用であって、決して利用者のためにはなっていません」。

次にBさん。「Amazon自体はめちゃくちゃもうけているのに、そのAmazonを支えている会社はこんなに苦しい思いをしているのかと。ネット通販=配送料無料、注文すればすぐ届くのが当たり前……こういうイメージを創り上げてしまったことが、今回のような事態を招いてしまったのだと思います。しかし、Amazonとしてはそのイメージこそがブランド力ともいえるので、なかなか手放せないところなのでしょう」。

この記事のヤフーニュース版にはすでに5000近いコメントが寄せられていますが、トップコメントの一つにこんな声がありました。「もうAmazonはAmazonロジスティクスみたいな感じで専用の物流会社使ったほうが良いんじゃないかな?/物流の仕組みはあまり詳しくないからよく分からないんだけど。。」。実に正論です。ただ、アウトソーシングできるものはする、という姿勢を常としているように見えるアマゾンが一から物流会社を作ることは難しいのではないか、という見方が業界内にはあります。

「ねとらぼ」記事が言及している「はてな匿名ダイアリー」の2017年7月9日付エントリー「デリバリープロパイダの中の者だが人手不足で配送の現場はもうヤバイ」は、Aさんと同じくデリバリープロバイダの従業員さんの投稿ですが、これは匿名出版人の投稿「【再掲】アマゾンの「バックオーダー発注」廃止は、正味戦争の宣戦」と同様に、出版界を大いに震撼させている必読記事です。

従業員氏はこう証言しています。「皆さんはクロネコヤマトしか知らない人も多いですから、配送=日時通り届いて当たり前。不備があっても逐一、電話連絡があって当たり前…と思っていますよね。/残念ながら、それはヤマトだからこそ出来る芸当で、一般的な配送業者には真似出来ません。/ヤマトは、社員の教育、配送オペレーション、拠点の数まで全て完璧で、配送においてヤマトの横に出るものはいません」。「「時給300円で人を雇いまくれ。Amazonの荷物で稼ぐぞ!」/「ヤマトが逃げた今、うちらにスポットライトが当たり始めた」/等、社長は今の状況を喜んでいるようですが、現場は手取り12万(自爆あり)で休み無し14時間肉体労働、限界がもう来ています。疲弊しています」。

印象がとても悪いと感じるのは、こうした状況を恐らくは把握しているであろうにも関わらず、アマゾン・ジャパンのトップが対外的には次のように発言していることです。「配送遅延は実際に発生していたが、現在は解消した。まだスムーズになっていないところを直し、再発を防止したい」(「ITmediaビジネスオンライン」7月10日付、青柳美帆子氏記名記事「Amazon「プライムデー」、配送は「数カ月前から準備」」より、記者会見でのジャスパー・チャン社長の発言)。これはテレビニュースにもなっているのでご覧になった方もおられるかと推察しますが、「解消した」などとなぜ言えるのでしょうか。「そうした事実はない」が決まり文句の昨今の悪徳政治家かと見まごう発言に、利用者だけでなく、出版人も驚愕しています。もっと別の言い方はできなかったのでしょうか。いったいチャン社長は誰に向って「解消した」と宣言しているのか。

「弁護士ドットコムNEWS」7月11日付記事「アマゾンプライムデー、ドライバーたちは戦々恐々…「多くてさばけない」配達ミスも」では都内でプライムナウ(対象エリアでの買物が1時間以内に届くプライム会員向けサービス)の配送を担当する男性や、アマゾン利用客の主婦、ヤマト運輸のセールスドライバー、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』や『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』の著者・横田増生さんらに取材しています。ここでも上記の記事で書かれていることを再度事実確認できます。ヤフーニュース版でのコップコメントにはこんな声があります。「普通の消費者だが、最近、アマゾンを使うとき、配送業者のことを一瞬考えるようになった。そろそろ考えて使いませんか。皆さん」。この言葉に尽きる気がします。

デリバリープロバイダ関連の記事では以下の配信に注目が集まっていることは周知の通りです。

先の青柳氏の記事でも指摘されている「消費者の「アマゾン離れ」を引き起こしかねない状況となっている」ことに対して、アマゾンが下請けへの無茶振りではなく自社で解決すると決めて根本的な対応を講じない限り、客もメーカーも現実的に「アマゾン離れ」へと傾かざるをえなくなるでしょう。アマゾンだけに頼る買い方や売り方から、複数の他の通販サイトを使い分ける選択の時代への変化の萌芽が表れつつあるように見えます。この件はアマゾンでのカート落ち問題と併せて、後日再度言及するつもりです。

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なお米国のアマゾン・コムにおける物流の現在を追った記事には以下のものがあります。米国版「WIRED」2017年7月11日付、Davey Alba氏記名記事「The Humans Making Amazon Prime Day Possible」の日本語訳版「アマゾンの「プライムデー」は、人力なくして成り立たない──配送の現場を支える人々に迫った」(2017年7月15日配信)。

また、英国アマゾンで始まったドローン配送サーヴィス「Prime Air」についての記事には以下のものがあります。英国版「WIRED」2016年12月14日付、Matt Burgess氏記名記事「Amazon has made its first Prime Air drone delivery in the UK」の日本語訳版「アマゾン、ついに「ドローン配送」を実施:英国で」(2016年12月14日配信)。

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by urag | 2017-07-19 09:11 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 07月 03日

メモ(23)

「文化通信」2017年7月3日付記事「アマゾン、取次へのバックオーダー6月末で全面停止」によれば「アマゾン・ジャパンは本紙取材に対し、かねて出版社や取次に告知していた通り6月30日で日本出版販売(日販)へのバックオーダーを停止することを明らかにした。一方、出版社には取次との流通改善で対応しようと…」(以下有料)。業界全体にとって重要な内容なので、これはできれば無料で公開していただきたかったですが、同日付の紙媒体1面記事を参考に私が気になったポイントをまとめておくと次のようになります。

1)バックオーダー停止は出版社2000社以上に通知し、合計35回の説明会に520社超が参加。直取引である「e託」への申し込みは駆け込みで増加したものの成約数は未公表。
2)期日通り6月30日いっぱいで日販にも大阪屋栗田にもバックオーダーの発注を停止。
3)すでにシステム接続が完了している大村紙業京葉流通倉庫河出興産工藤出版サービスのほか、主要倉庫業者4社とEDIの準備を進め、7月~9月には稼働予定。

全文詳細はぜひ7月3日付の紙媒体の「文化通信」をご覧ください。一番気になるのは1)の直取引の成約数や、3)のEDI準備中の倉庫業者4社です。ここに切り込んでいく他のメディアがあったらよいのですが。1)については小零細の版元が多いのでしょう。そう推測できる理由については「メモ(22)」の後半で述べました。

なお、「新文化」2017年6月30日付の記事には「京葉流通倉庫、今冬までに販売サイト開設」というのもあって、「物流・倉庫業を手がける京葉流通倉庫(埼玉・戸田市)が今秋から冬にかけて、取引のある出版社約50社の本を対象に、直接読者に販売するウェブサイトを立ち上げる。京葉流通倉庫が発送や代金回収を担うという」と報じられています。出版業界の発展にはロジスティクスの進化が欠かせないわけですが、今後は倉庫業者の動向に注目が集まりそうです。

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バックオーダー終了に伴う「カート落ち」によってアマゾンはロングテールの一部を失うことになります。それを見越したリアル書店の店員さんの中には「アマゾンでは売っていませんが、ウチでは売ってます」と宣伝しようとお考えになっている方もおられるようです。そうした試みを当ブログでは応援していきたいと思います。

ところで「カート落ち以後の社会」で、本を探している人々にとってもっとも強力なツールのひとつは、オンライン書店「honto」になるでしょう。「honto」では単品ページごとに、ジュンク堂、丸善、文教堂といったDNPグループ内のリアル書店の店頭在庫が一覧で表示されます。○が3冊以上あり、△が1~2冊あり、×が在庫なしです。アマゾンは全国に大小10か所の物流拠点(FC:フルフィルメントセンター)があり、膨大な商品点数を在庫していますが、ジュンク堂、丸善、文教堂の三大チェーンの全店舗を合わせた在庫数も相当なものになります。

そのため、アマゾンでカート落ちしている本も「honto」で探すことができます。それどころか、版元品切本すらよく見つかります。今のところ店頭在庫を買うためには「honto」経由で取り置きを依頼するか、店舗に電話して代引で取寄せるか、どちらかになります。私の場合、版元品切になった単行本から文庫まで、全国のジュンク堂、丸善、文教堂から代引で折々に購入しています。送料と代引手数料がかかりますが、往復交通費とは比べ物にならない微々たる金額です。アマゾンをはじめとするネット書店の「即出荷、送料無料」に慣れてしまうとつい目が向かなくなってしまうのかもしれませんが、カート落ちしている本や版元品切本を新本で探すなら「honto」で検索、というのは今や常識です。

「honto」自体の「24時間」在庫点数はアマゾンに比べれば物足りませんが、重要なのはリアル店舗の在庫を探せる、ということなのです。これはアマゾンではできないことです。当ブログのエントリー「ジュンク堂のネットストアHONでは支店の在庫が分かりますよ」は2010年の古いエントリーにもかかわらずいまだにアクセスがあります。「新文化」2017年5月17日付記事「日販の平林彰社長、業界3者の在庫「見える化」と「出荷確約」態勢に意欲」によれば、「今年7月に出版社と日販、書店の在庫情報を共有できるネットワークを構築したうえ、「見える化」と「出荷確約」した流通を目指す考えを打ち出した」とのことでしたが、業界三者以上に「見える化」を欲しているのは読者です。全国書店の店頭在庫の横断検索が読者にできるようになれば、ずいぶん便利になるはずです。ちなみに「NAVERまとめ」には「在庫検索可能なリアル書店一覧」というリストがあります。

出版社が時折経験することに「版元品切本で探している読者が多いのに書店から返品依頼が入る」というものがあります。不思議なことと言うべきか当たり前と言うべきか、他店で売れていようが版元で重版していようが、別の書店では1冊も売れていないということがままあります。さらには「こんな貴重な本がよく残ってたな」と唸ってしまう返品依頼もあったりします。当然のことながら、そういう本は返品されたが最後、そのお店に再出荷できることはありません。つまり、読者が血眼になって探しているかもしれない本を「まったく売れない」と嘆いている本屋さんもいらっしゃるわけです。このミスマッチをいいかげんに何とかしなくてはならないのではないか。版元にせよ書店にせよ取次にせよ、在庫の「見える化」は読者の利益であるべきです。

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明敏なる諸先輩や同輩からの示唆によって、出版物流の危機について理解を深めるためには次の二つの新聞記事の閲覧が必須、と知りました。

1)「文化通信」2017年5月1日付インタビュー記事「抜本的な解決に向けて取次(取協)と出版社(雑協)の協議がスタート――2010年から相次ぎ業者が撤退、出版輸送はどうなるか」では、日販専務取締役安西浩和さん(取協「発売日・輸送対策委員会」副委員長)とトーハン専務取締役・川上浩明さん(同委員長)の発言が読めます。厳しい状況がひしひしと伝わってきます。

見出しを抜き出してみると以下のようになります。「トーハンは7年で9社が撤退」「荷主に労働環境改善要求も」「輸送のバリエーションが増加」「幹線担う大手も撤退の動き」「配送が止まる事態も」「平均積載率は5割程度」「自助努力して運送会社と交渉」「業量は日によって2倍に」「休配13日で法の範囲内に」「新聞配送の活用を実験」「最低運賃保証でコスト圧迫」「出版社の協力金と運賃のギャップ開く」「書籍だけ運ぶのは無理」「受益者負担考える時期に」「いまの構造全体に」「秋から年末にかけ方向性」「業界四者での取り組みも必要に」。業界四者というのは、出版社、取次、書店の従来の三者に加え、輸配送業者を含めたものです。おそらくはここに倉庫業者の視点も必要になるものと予想されます。

このほかの大きな見出しには次のものがありました。「労働環境、安全の問題も背景に(安西副委員長)」「輸送網の維持が販売会社最大の課題(川上委員長)」「販売への悪影響ないように検討する(安西副委員長)」「自助努力のうえで、問題解決図りたい(川上委員長)」。全文を熟読しておくべき非常に重要な記事です。なお同記事については、「東スポweb」内の渡辺学氏(法務広報室長)によるブログ「ニュースのフリマ」2017年5月9日付エントリー「出版界でも深刻な配送問題」に言及があります。

2)「日本経済産業新聞」2017年6月30日~7月5日付の亀井慶一さんによる連載記事「よくわかる出版物流」(全5回)もタイムリーなまとめ記事です。各回の見出しは以下の通り。「書店数、10年で25%減」「アマゾン、取次会社と対立」「雑誌不振 取次の再編加速」「雑誌返品率 4割超える」「配送会社、相次ぐ撤退」。この連載に関連する記事として、同新聞では2027年5月5日付の大阪経済部・荒尾智洋氏記名記事「出版物流、荷物減っても配送負担が増す理由」があります。

これらの記事を参考にして常識的に考えると、雑誌配送網にまったく頼らない書籍配送網というのは考えにくく、配送網の維持のための取次や運送会社の自助努力が限界点を越える場合には、送品返品送料について出版社や書店が今以上の負担をするか、それが無理なら順次配送網を小さくするか、どちらかしかないように思われます。後者の場合、配本先から外れる書店が主に地方で出てくるということを意味しており、配本先が多くないと採算が取れない出版社の経営も打撃を受けます。

そうした背景と呼応するかのように、「日本経済新聞」2017年7月1日付記事「日販、グループ書店1割閉鎖へ」では以下のように報じられています。「出版取次大手の日本出版販売(日販)はグループ書店の最大1割を閉鎖する。対象は約25店で、2018年3月期中に閉鎖する。出版市場が縮小するなか、経営が苦しくなった書店をグループに取り込んできたが、黒字化が見込めない店舗は閉店に踏み切る」(以下、要登録)と。日販傘下の書店チェーンにはリブロやあゆみBOOKSをはじめとする書店があり、トーハンでも傘下書店にはブックファーストなどがあります。これまでも閉店作業は粛々と進められてきましたが、さらに店舗数が絞られていくことになるのでしょう。

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by urag | 2017-07-03 19:48 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 23日

メモ(22)

「週刊東洋経済Plus」2017年6月24日号特集「アマゾン膨張――追い詰められる日本企業」が興味深いです。

東洋経済記者・広瀬泰之氏記名記事「「直取引」拡大の衝撃――問われる出版社の選択」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)でアマゾンジャパン・メディア事業本部統括事業本部長村井良二さん曰く「読者が本を読みたいタイミングでお届けするのがいちばん重要。日販には長期で売れるロングテール商材を中心に在庫を増やすほか、バックオーダーの納期短縮を求めてきたが、われわれが求める水準に達さなかった」。→日販経由から版元直取引に変われば色々なことが解決する、というのはなかば幻想にすぎません。

すれ違う両者の言い分――日販 vs. アマゾン」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)で日販常務取締役大河内充さん曰く「アマゾンのバックオーダー発注は当社の売り上げ全体から見るとごくわずかだ。今回の件はかなり大きく報道されたが、「それほど大きな話なのか」とも感じる」。→アマゾンの揺さぶり戦略。

「数字への執着が尋常でなかった」――元アマゾン社員座談会」(無料会員登録で全文閲覧可能)で元アマゾン社員・飲料食品部門バイヤー中山雄介さん曰く「社内では“Good intentions don't work.”という言葉が使われていました。意志の力には頼るなというジェフ・ベゾスCEOのメッセージです。どんな業務でも属人的にならず、メカニズムを作るという徹底した哲学が浸透しています。ベゾス氏は人の意志のみならず、知能さえ信用していないのかもしれません。トークだけが上手な営業タイプの人は向かない会社でしょうね」。→むしろトークが上手な営業タイプがいないことが弱点だと思います。人的交流力に乏しい背景にこうした非人間的理念がある、と。

Interview|まだまだ社員を増やし「プライム」を強化する」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)でアマゾンジャパン社長ジャスパー・チャンさん曰く「今後も現状の価格水準を維持しながら、プライムサービスの充実化を図っていく」。→ヤマトが音を上げたら小さな他社に乗り換え、それもダメなら一般人も動員しますよと。取次が音を上げたら出版社に球を投げ、それでもダメなら(著者と直接?)。

聞き手・本誌長瀧菜摘氏「Interview|アマゾン米国幹部に直撃――「非プライム会員はありえない選択だ」」(途中まで無料で閲覧できます。全文は有料会員のみ)でアマゾンコム・デジタルミュージック事業部担当副社長スティーブ・ブームさん曰く「日本はまだストリーミングサービスが普及しておらず、楽曲を提供するアーティストが欧米に比べ圧倒的に少ないことが課題だ。アマゾンがあらゆる面のハードルを下げ、先頭に立ち市場を広げていきたい」。→破壊的創造と言えば聞こえはいいですけどね。

このほか、特集INDEXからのリンクで「ヤマト 剣が峰の値上げ交渉」「出品者たちの困惑――最安値要請で公取が調査」「AWSの磁力――大手企業が続々採用」「アマゾンはどう使われているか――本誌アンケートでわかった!」「シアトル本社の全貌――新社屋「THE SPHERES」は完成間近」「世界最強企業へ突き進む異次元の成長戦略――米アマゾン最前線」「驚異の金融ビジネス――商流の把握で自由自在」など興味深い記事が並びます。

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「毎日新聞」2017年6月29日付、広瀬登・棚部秀行氏記名記事「出版社との直接取引拡大 アマゾン流に揺れる出版流通」はリード文のみが無料閲覧可能で、記事本文は無料登録で読めます。「ネット通販大手のアマゾンジャパンが書籍販売を巡り、6月末で出版取り次ぎ大手・日本出版販売(日販)との一部取引をやめる。これまでは日販に在庫のない本は日販を通じて出版社から取り寄せていたが、今後は出版社との直接取引を拡大する構えだ。「お客様に早く本を届けるため」と主張するアマゾンに対し、出版業界の一部は「本音は取り次ぎと書店を排除し業界を支配する狙いでは」と疑心暗鬼を深める」。

出版協が今月中旬に開催したバックオーダー発注停止問題の勉強会の取材に始まり、出版社の反応や、日販ネット営業部・上原清一部長のコメント、アマゾンジャパン・メディア事業本部・村井良二統括事業本部長と種茂正彦事業企画本部長のコメントが掲載されています。ポイントは次の三点です。1)アマゾンのペースに引きずり込まれることへの警戒心を見せる大手版元幹部の発言。2)「通告以降、日販には中小の出版社から相談が相次いでいる」件。3)商品調達のスピードと確実性の重要性を指摘するアマゾン。

アマゾンのロングテールにおいて商品調達のスピードアップを求められる版元は大手であるというよりむしろ小零細でしょうか。リアル書店の扱い店舗数が限られている小零細は確かに日販帳合におけるアマゾンの売上比率が高いかもしれません。また、小零細は日販との結びつきが弱く、条件面でも厚遇されているわけではないので、アマゾンの支払条件が魅力的に見えているかもしれません。さらに小零細はVANを導入していない版元も多く、アマゾンとしても調達に苦しんでいたことでしょう。

ただし、そもそもアマゾンとの直取引に応じることは日販との取引に制限を加えることになり、いくつかの問題が出ています。まず第一に、信義上の困難という問題。日販と距離を置かざるをえないような挙措は今後の取引において悪影響を及ぼす可能性があります。第二に、日販での売上減少という問題。アマゾン分の売上が減ることによって日販との取引額が減り、その分を回復することが難しいかもしれません。第三に、日販での返品率の問題。アマゾンによって押し下げられていた返品率が上昇するかもしれず、日販との条件改定に直結しかねません。

それでもアマゾンとの直取引を選択しうるかどうか、というのは実際のところ選択が難しいです。どれくらいの数の出版社が直取引を選択するのかに注目が集まっていますが、それを調査し報道するマスコミがあるのでしょうか。7月3日(火)からの「変化」に注視したいと思います。

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「日経BizGate」2017年6月27日付、松岡真宏・山手剛人氏記名記事「ヤマトの「宅急便」が“崩壊”した本当の理由」は、「未払い残業代や運賃引き上げといった話は本来、個々の企業の労務問題や企業間契約にまつわる、いわばミクロな話であるということだ。それらが決着したところで、宅配問題の根底にある「構造」には少しもメスが入らないのである」とし、結論としては「注意深く張り巡らされてきたはずのヤマト運輸の宅配網の先端部分において、現場の宅配ドライバーの努力だけでは処理できないレベルの問題が発生している現在の状況は、異常な交通渋滞に等しい。それは、これまでとは異なる構造や経路を持つネットワークを再構築することでしか解決できないのではないだろうか」というもの。いささか唐突で抽象的な終わり方ですが、これは両氏の著書『宅配がなくなる日――同時性解消の社会論』(日本経済新聞出版社、2017年6月)の第1部「なぜ、ヤマト、三越伊勢丹はつまずいたのか」の第1章「宅配ネットワークが崩壊した本当の理由」からの抜粋なので仕方ありません。同書の目次を列記しておきますが、興味深いワードが並んでいます。

第1部 なぜ、ヤマト、三越伊勢丹はつまずいたのか
 第1章 宅配ネットワークが崩壊した本当の理由
 第2章 三越伊勢丹を揺さぶった時空価値競争
第2部 同時性解消と時間資本主義
 第3章 同時性解消のインパクト――コミュニケーションから生産性へ
 第4章 時間の効率化・快適化と同時性
 第5章 空間シェアリングと時間価値
第3部 近未来流通と同時性
 第6章 アマゾンが仕掛ける3つの刺客
 第7章 人間に残るもの
 第8章 それでも人は移動する
 第9章 人間の希少性が高まる時代

同記事のヤフー版コメント欄には興味深い投稿が並んでおり必見です。なお記事中にはこんな言葉があります。「ヤマト運輸が総量規制を行っても、処理能力を超えるEC、ネット通販利用者の増加という構造変化の流れは止められない。ヤマト運輸よりも大手EC企業に対する交渉力が弱い中堅以下の宅配業者にお鉢が回るだけだろう」。実際にそうなりつつあることは、「日本経済新聞」2017年6月22日付記事「アマゾン、独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み」でも明らかです。アマゾンは版元との直取引も増やしているわけなので、インプット(仕入)もアウトプット(出荷)も共に細分化していくことになるのでしょうが、果たしてアマゾンは物流の品質を保持しきれるのでしょうか。版元にしても配送業者にせよ、中小零細を取り込んでいけば、日販やヤマトと違って取引先の倒産数も必然的に増えるでしょう。中小零細と結ぶことはかえってアマゾンに不安定性をもたらすことになるのではないか、と危ぶまれます。

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by urag | 2017-06-23 15:38 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 22日

メモ(21)

ヤマト運輸と決裂しそうな雲行きによって、アマゾン・ジャパンの周辺では様々な変化が玉突のように連鎖しています。以下に取り上げる個人運送事業者の囲い込みもそうですし、今月で終了予定の日販へのバックオーダーの件も、業界内では連鎖の中に見る向きがあります(アメリカ本社へのアピール)。なお、バックオーダーの発注終了および版元直取引の慫慂については、予定では本日がアマゾン側の説明会の最終日です。ちなみに昨日は太洋社の債権者集会の第三回目でした。破産債権に対する配当は10月~11月頃の予定と聞いています。12月に計算報告集会が行われ、太洋社の件はようやく終結することになります。

「日本経済新聞」2017年6月22日付記事「アマゾン、独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み」によれば、「インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)が独自の配送網の構築に乗り出すことが分かった。注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者を2020年までに首都圏で1万人確保する。ヤマト運輸が撤退する方向のため、代替策を模索していた。大手運送会社の下請けとして繁忙期に業務が集中しがちな個人事業者の活用が通年で進み、運転手不足の緩和につながる可能性がある」(以下閲覧には要登録)。

ポイントは「注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者」というところ。「メモ(16)」でも言及した、例の「所沢納品センター」も当日配送が売りです。「アマゾンジャパン(東京・目黒)は、出版取次を介さない出版社との直接取引を広げる。自ら出版社の倉庫から本や雑誌を集め、沖縄を除く全国で発売日当日に消費者の自宅に届けるサービスを今秋までに始める。アマゾンによる直接取引が浸透すれば、取次や書店の店頭を経ない販売が拡大。書籍流通の流れが変わる節目になりそうだ。/埼玉県所沢市に1月、設立した「アマゾン納品センター」を直接取引専用の物流拠点として使う」(「日本経済新聞」2017年3月22日付記事「アマゾン、本を直接集配 発売日に消費者へ――取次・書店介さず」)。私は「取次を出し抜くレヴェルの「アマゾン最優遇」を版元や倉庫会社から勝ち取れるでしょうか」と書いたわけですが、アマゾン最優遇へと傾きつつある出版社に対して、取次さんや書店さんはどうお感じになるでしょうか。

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「日経新聞」と同様の記事には、「朝日新聞」2017年6月22日付、奥田貫氏記名記事「アマゾン、「当日配送」維持へ独自網強化 ヤマト縮小で」があります。曰く「通販大手のアマゾンが、「当日配送」ができる独自配送網の拡大に乗り出していることが分かった。宅配最大手のヤマト運輸が人手不足から当日配送を縮小しており、アマゾンはこれまで東京都心の一部で使っていた独自配送網を強化することで、サービスの維持を図る考えとみられる。/今月上旬から、新たに中堅物流会社の「丸和運輸機関」(埼玉県)に当日配送を委託し始めた。23区内の一部から始め、委託するエリアを首都圏に拡大していくとみられる。丸和はこれまで、ネットスーパーの配達などを手がけてきたが、当日配送を含めた宅配事業を大幅に拡大する方針だ」云々。同記事のヤフーニュース版ではコメント欄に興味深い投稿が並んでいます。「結局下請にブラックが増えるだけ」という指摘は、大方の業界人が抱く懸念ではないかと思います。

また、より詳細な記事としては、「DIAMOND online」2017年6月21日付、週刊ダイヤモンド編集部・柳澤里佳氏記名記事「ヤマトが撤退したアマゾン当日配達「争奪戦」の裏側」があります。丸和運輸機関が宅配事業の「桃太郎便」を強化していることを、和佐見勝社長への聴き取りなどから示しています。「5月、軽ワゴンを新車でなんと1万台発注。年内に3500台が納品予定だ。中古車も500台ほど手当てした。「〔・・・〕今がチャンス。ネット通販が伸び盛りの中、大手が運ばない当日配達の荷物を誰が運ぶかで、下克上が始まった」(和佐見社長)と鼻息は荒い」と。

さらに記事ではこうも報じられています。「近年、企業の物流業務を一括して請け負うサードパーティーロジスティクス、通称「3PL」企業がインターネット通販大手と組み、宅配に手を広げているのだ。/中でも注目されるのが、アマゾンと地域限定で提携する配達業者、通称「デリバリープロバイダ」で、丸和もこれに参画した。/先行者はアマゾンと二人三脚で急成長している。例えばアマゾンの倉庫業務や宅配が売上高の7割を占めるファイズは2013年に創業し、わずか4年で上場を果たした。他にはTMGやSBS即配サポートなどが取引を拡大中だ。/後発の丸和は、生協や大手ネットスーパーの宅配を長年手掛けてきたノウハウを生かし、接客の質で差別化を図る。「早く、丁寧に運べば、大逆転も狙える」(和佐見社長)」。

接客の質で差別化を図る、というのは重要です。というのも、アマゾン・ジャパンが利用している「デリバリープロバイダ」については、ウェブで目にする購入者からの評価には、ヤマト運輸に比してまだまだ厳しいものがあるものからです。「バズプラスニュース」2016年8月9日付、yamashiro氏記名記事「【激怒】不満爆発! Amazonの配送業者「デリバリープロバイダ」をできるだけ避ける方法――デリバリープロバイダが不評」や、「NAVERまとめ」2016年8月10日更新「【デリバリープロバイダ】Amazonの“TMG便”がひどいらしい・・・【届かない】」。残念ながらこれらは過去の話とは言えません。「デリバリープロバイダ」よりも、ヤマト運輸への信頼感が強いのが現状ではないでしょうか。ヤマトが当日配送から撤退となれば、「デリバリープロバイダ」側のサービスが向上しない限り、混乱は続きますし、アマゾンへの悪評も消えないでしょう。

先述の「DIAMOND online」の記事では次のような指摘もなされています。「「アマゾンに食いつぶされてたまるか」と拒絶反応を示す企業もある。「最初は頼み込まれて始めても、力関係は早晩変わるはず」(3PL企業幹部)。〔・・・〕アマゾンは宅配大手と同じように新興勢とも荷物1個当たりの成果支払いを要望。一方、新興勢からすれば、当日配達は再配達が多く、燃料費も人件費も掛かるので、料金を保証してほしい。水面下では、こうした攻防が繰り広げられている。〔・・・〕そして最大のネックは、やはり人手だ。すでに物流倉庫ではアジア系の労働力が欠かせない。外国人労働者が宅配ドライバーになる日も近いかもしれない」。3PL幹部の本音は小零細出版社の本音でもあります。色々と嫌な予感がしますが、同記事のヤフーニュース版のコメント欄も非常に興味深いです。例えば「犠牲者になる対象が変わっただけだよ。物流業はマンパワー以外手段はない。魔法があるなら大手はとっくに使っている」との声。まったく同感です。

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「日本経済新聞」では本日、加藤貴行氏・栗原健太氏記名によるこんな記事も配信しています。「アマゾンの荷物、一般人が運ぶ時代」によれば「アマゾンジャパン(東京・目黒)が日本国内で独自に配送網を構築することになった。アマゾンは個人事業者を活用し、宅配便首位ヤマト運輸を事実上中抜きする。実は親会社の米アマゾン・ドット・コムの目線はもっと先にある。究極の姿は、時間のある一般人に委託したり、ロボットを使ったりする手法だ。アマゾンが世界の物流のあり方を変えようとするなか、欧米企業も対応を進めている」(以下要登録)。記事では米国で2015年から始まっている、個人に宅配を委託する事業「アマゾンフレックス」や、2016年に英国で始めたドローンによる自動配達試験「アマゾン・プライム・エアー」のほか、目下アマゾンが研究中のとある技術、またドイツのダイムラーの「危機感」にも言及しており、必読です。

このほか参考すべき記事には「ITmedia NEWS」2017年6月17日付記事「Amazon、一般人に荷物運びを依頼? 新アプリ開発中か:外出のついでにAmazonの荷物を運んで小遣い稼ぎ──こんなことができるようになるかもしれない」があります。「日経新聞」が参照している「Wall Street Journal」の記事について触れたものです。曰く「Amazon社内で「On My Way」と呼ばれているというこのサービスは、「配達のクラウドソーシング」だ。都市部の小売業者に依頼して荷物を集積しておき、一般人はどこかへ行くついでに荷物を配達する仕組みになるようだ。こうした仕組みを実現するモバイルアプリを開発中という」。

この「On My Way」をめぐる同様の記事には、「TCトピックス」」6月17日付、Jordan Crook氏記名記事「Amazonが一般人が商品配送に参加できるアプリを開発中との情報」や、「ITpro」6月17日付、小久保重信氏記名記事「Amazon、一般の人が商品を配達する新たな仕組み「On My Way」計画中」があります。前者では「WSJの記事によれば、On My Wayプロジェクト〔への〕参加者はこうしたロッカーやAmazonの商品を預かるコンビニなどでパッケージをピックアップし、最終目的へ届けるのだろうという」と。 後者では「Wall Street Journalによると、Amazonがこの計画を実現させれば、同社は「クラウドソース・デリバリー」と呼ばれる、一時的な契約職員を使った配達サービス事業に参入することになる。ただし、この分野では大手運送業者などと競合する規模でサービスを展開した企業はまだない」と紹介されています。

画期的とも言える一方で、様々な配送トラブルが見込まれることは否応ないように感じます。

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アマゾン・ジャパンの書籍事業本部による「商品調達および帳合取次との取引変更に関する説明会」についてごく簡単に書いておきます。この説明会の内容は「confidential」と銘打たれていましたから詳細には言及しませんが、いつも通りのご高説でアマゾン側から見た論理としてはたいへん筋の通った話でした。むろんそこに取次や出版社の視点をさしはさむ余地はなく、その意味ではツッコミどころ満載ではありました。

本日6月22日付の「新文化」では1面に「日販「在庫見える化」「出荷確約」を推進/「アマゾン問題」をどう捉えるか」が掲載されています。リードはこうです。「アマゾンジャパン(以下、アマゾン)が日販へのバックオーダー発注を終了すると発表してから約2カ月が経過した。アマゾンは説明会を繰り返し行い、出版社に直接取引を推奨しているが、日販との関係を鑑みていまだ結論を出せない出版社も少なくない。この問題解決には「日販の在庫拡充」か「出版社の直接取引」の2択しかないというアマゾンの主張を、日販はどう受け止めているのか。日販の安西浩和専務と大河内充常務に話を聞いた。(聞き手=本紙・丸島基和)」。

アマゾンの説明会を聞いた印象では、彼らは日販のこれまでの労苦を多としつつも「限界がある」と見ており、私の印象で言えば、完全に日販を見限っている様子が窺えました。また、アマゾンの皆さんは各種マスコミやネットでアマゾンがどう批評されているかを逐一チェックされているとのことで、内心の苛立ちを隠さないお話しぶりでした。スタッフの皆さんはそうしたアマゾン批評を見ても、立場上一切リプライを返せないのでしょう。その辺はもっと風通しが良くなってもいいのではないか。

そもそも業界関係者がネットでアマゾンに物申している背景には、アマゾンに直言したとしてもこれといった「話し合い」にはならないという、繰り返されてきた悲しい現実があります。彼らは良くも悪くもチームワークで対応するため、一対一の関係でとことん話し合うという企業風土がないように見えます。さらに、アマゾンの方針から外れる案件にはどんな種類の問い合わせであれまったく答えようとしない合理主義というものが徹底されているようにも見受けます。要するに出版社にとってはそもそも人的コミュニケーションが取りづらい相手なのです。そうじゃないよ、誤解だよ、交流できるよ、というアマゾン内部の方がいるとしたら、ぜひ直接話を聞いてみたいものです。

一言で言えば、アマゾンの説明会は不愉快なものでした。アマゾンの言いようは総じて日販に対して否定的なニュアンスがあり、「新文化」記事で紹介されているような日販側の言い分とは相容れないように思えました。以前私は「このままでは日販は言われっぱなしだ」と書きましたが、実際にその通りになっていました。彼らが掲げる「お客様第一主義」という御旗には、日販の苦労も、出版社の思いも、ヤマト運輸のそれと同様、残念ながら届かないと思います。大したイノベーションですよ、まったく。

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by urag | 2017-06-22 10:40 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 07日

メモ(20)

さいきん多くの反響を呼んでいるらしい風刺動画の原作はMoby & The Void Pacific Choirの楽曲「Are You Lost In The World Like Me?」(こちらは昨年10月に公開され500万回以上再生されており、公式動画を下段に掲出します)で、アニメーターはSteve Cuttsさん。風刺画の名手です。自然と人間の関係性を題材にした動画作品「MAN」も公式から掲出しておきます。






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by urag | 2017-06-07 12:34 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 01日

メモ(19)

武久出版株式会社さんの2017年05月31日付プレスリリース「図書新聞の発行」に衝撃を受けました。「2017年6月1日より、週刊書評紙『図書新聞』の発行が武久出版株式会社に移管武久出版株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:加藤啓・菅原秀宣)は、2017年6月1日付で株式会社図書新聞からの移管を受けて、以降、週刊書評紙『図書新聞』の刊行・発売をいたします。〔・・・〕創業以来六〇余年、一貫して知のトレンドを練り続け、ラジカリズムに徹した辛口の本格批評をお届けしてきました。武久出版は、この灯を絶やすことなく伝えつつ、日本の知および出版のなりわいに資するべく、『図書新聞』の一層のブラッシュアップを図っていく所存です」と。

書評紙と言えば「図書新聞」さんと「週刊読書人」が有名ですが、自社経営が困難となる時代にもはや突入していたのだと見るべきでしょうか。仄聞するところによると、株式会社図書新聞は今後、書籍事業のみとなるようです。

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by urag | 2017-06-01 01:51 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 22日

メモ(18)

「文化通信」2017年5月22日付記事「アマゾンジャパン「バックオーダー」終了で出版社2000社余に説明会」で報道されている通り、今般のアマゾン通知についての出版社への説明会が先週から始まっています。曰く「4月21日に「バックオーダー発注」の終了を決定。同24日から、同社売り上げランキング上位20社ほどを書籍事業企画本部・種茂正彦本部長が直接訪問し、それ以外の上位50社ほどにも担当窓口などから説明を実施。/同28日には同社が年間1冊以上販売した出版社として登録されている約2500社から、出版社がアマゾンサイトの商品登録などを行う「ベンダーセントラル」の利用出版社と、名簿などで住所が確認できる出版社約2000社にメールもしくは郵送で通知送った。これに加え5月15日から説明会を開始。上位約600社には5月、それ以降についても順次案内している」。

弊社に届いているのは4月28日付のメール「重要なお知らせ:商品調達および帳合取次との取引に関する変更について」(アマゾンジャパン合同会社書籍事業部購買統括部)と、その後封書で届いた同名の書類で、後者ではここ3年間の日販経由取寄注文高(月次)一覧や、欠品率、リードタイム、日販での引当率を月次で数値化したもう一つの一覧と、全28頁のカラーパンフレット「Amazon.co.jp和書ストアの仕組み」が添えられています。カラーパンフの詳細については今は脇に置きます。おおざっぱに言えば「現状よりも直取引の方が売上を伸ばせるよ」という内容ですが、なんだまたそれの繰り返しかと呆れるのではなく、熟読が必要であることは言うまでもありません。

二枚の一覧について言えば数字だけ見せられても書名が分からないので中身の分析のしようがないです。そもそも一覧表をどうやって見るべきなのか、その「見方」がどこにもまとめられていません(せめて用語については「パンフの××頁を参照」とか書いてくれればいいのに)。これだけ送られてもただちに「アマゾンと直取引しなければ」とはなりにくいのではないかと想像します。アマゾンの考え方がこれでは伝わりませんし(アマゾン側としては説明したいことはパンフで尽きている、と言いたいのだろうことはよく伝わりますが)、こうした書類だけを機械的に送ってくるスタンスがいったいどういうものなのか理解に苦しみます。まあ分からなかったら電話してよ、パンフもよく読んでね、ということなのでしょうが、経験的に言えば電話したって分かりっこない感じがします。アマゾンは出版社が知りたいパンフ以外の情報のすべてを公開することまではできないでしょうから。

むしろ日販さんがこれらの「欠品率、リードタイム、引当率」について出版社に説明できることがあれば、日販さんと出版社との連携が強まるだろうと思います。アマゾンの説明会だけでは、日販は「言われっぱなし」になるのがオチです。対抗して説明会を持つというのも立場上難しいのかもしれませんけれども、日販にも出版社に説明するチャンスがあるべきではないかと思います。「新文化」5月17日付記事「日販の平林彰社長、業界3者の在庫「見える化」と「出荷確約」態勢に意欲」によれば、「5月16日、東京・水道橋の東京ドームホテルで行われた「2017年度日販懇話会」の挨拶のなかで、〔・・・〕今年7月に出版社と日販、書店の在庫情報を共有できるネットワークを構築したうえ、「見える化」と「出荷確約」した流通を目指す考えを打ち出した。また、12月には王子流通センターにweb-Bookセンターを統合する計画を発表した。「1冊を丁寧に売る構造に変え、少部数・少ロットで成立する出版流通モデルを志向していく」と話した」とのことですが、この手の懇話会が案内されるのは限られた出版社です。

この2017年度日販懇話会の様子については日販の本日付ニュースリリースで紹介されています。平林社長の冒頭挨拶で2016年度の売上高概況報告(概算)が次の通りあったと書かれています。「書籍・開発品の売上高が前年より若干上昇し、返品率も改善傾向にあるものの、雑誌の売上高は引き続き減少傾向にある〔・・・〕。さらに、書店や取次の経営を支える非正規雇用労働者の賃金上昇や、出版流通を支える運送会社におけるトラック運転手の高齢化や運賃収入減少といった輸配送問題が業界への逆風になっている〔・・・〕。/こうした状況を改善するには、大量生産・大量販売の構造から、1冊を丁寧に売ることができる構造へと、出版産業を変革していく必要がある〔・・・〕。日販が目指すSCM〔サプライ・チェーン・マネジメント〕の姿として、「見える化」と「確約」を掲げ、書店・出版社・日販の在庫の連携に取り組んでいく〔・・・〕」。

話を戻しますが、先の「文化通信」記事ではこうも書かれていました。「これだけ多くの出版社を対象に説明会を開くことについて種茂本部長は、「この決断については特定のところにだけお話しするというわけにはいかないと判断している。誤解や不安を払拭しなければならないと思っているので、できるだけ説明の機会をたくさん設けて、説明に伺いたいと思っている」と述べる」。バックオーダーの発注が終わる6月30日までに説明会が間に合うのは上位600社のみなのかどうか、今は分かりません。弊社が600位までには入っているかどうかもまた、微妙なところです(ちなみにアマゾンの2015年1年間での「和書および雑誌部門出版社別年間売上ランキング」は「新文化」2016年2月1日付記事「アマゾンJ、出版社別年間1位はKADOKAWA」にてPDFを見ることができます。参考までに、「新文化」では紀伊國屋書店の「2016年出版社別売上ベスト100社〈修正版〉」もPDFで公開されています。

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by urag | 2017-05-22 18:29 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 07日

メモ(17)

アマゾンの版元直取引宣言が取次を含む業界再編の強力なトリガーになるのではないかと「メモ(16)」で予想しました。トリガーとまで言わなくとも、対外的な大義とはなりうるわけです。アマゾンに対するヤマト運輸の対応のように。そして連鎖の始まりともなりえます。他の宅配業者が値上げや業態転換へと進んだように。「日販=大阪屋栗田=日教販=出版共同流通」というまとまりと「トーハン=中央社=協和出版」というまとまりがそれぞれ一体化へと向かう可能性は以前からあったわけですが、いよいよ統合が加速するかもしれず、その要となるのはまず、日販と大阪屋栗田の関係性ではないかと思われます(とはいえ、取次とその株主である大手版元は少なからず同床異夢の関係にあるように見えて複雑です)。「新文化」の過去記事に今後の業界再編に繋がるヒントが隠されているかもしれません。

2017年4月5日付記事「大阪屋栗田、服部達也氏が代表取締役副社長に」に曰く「4月1日、取締役会を行い、役員人事を決議した。服部取締役が代表取締役副社長執行役員に就いた。事業構造改革担当、マーケティング推進室、企画管理本部、リーディングスタイルを管掌する」。大阪屋栗田の筆頭株主が楽天なのは周知の通り。服部さんは楽天出身。

2017年4月19日付記事「大阪屋栗田、初のPB商品を販売」に曰く「4月下旬から、同社初のPB商品『DATE CHECK‐マスキングテープ』の販売を開始する。同社では「読書タイプ」と「日付タイプ」の2種類を用意。〔・・・〕同商品は同社と取引のある書店で展開する。参考希望小売価格は340円」。書籍ではなく文具だというのがミソ。昨今は書店さんでも文具売場を新設するお店が多いのは周知の通りです。日販やトーハンも文具は扱っていますし、かつて太洋社も2009年から輸入文具を扱っていたことがあり、好評だったと聞いたことがあります。

2017年4月25日付記事「トーハン、今秋から3種ポイントカードに対応」に曰く「楽天、NTTドコモ、ロイヤリティ マーケティングの3社と業務提携し、今秋から書店店頭で「楽天スーパーポイント」「dポイント」「Ponta」の各種カードに対応するサービスを開始する。来店者はいずれかのポイントカードを選択して、ポイント付与やポイントを使用することができる」と。それにしても、出版業界がポイントを実質的値引と批判をしていたのは今となっては昔の話、といった感が否めません。書協・出版再販研究委員会2004年3月11日見解「ポイントカードは値引き/ポイントカード制に関する「公取委の見解」等の経緯」、出版協2013年8月28日声明「ポイントカードによる値引き販売に反対します――読者、書店、取次店、出版社の皆様へ」。

同記事に続けて曰く「トーハンでは共通ポイント化にあたって、新POSレジを開発。その価格は従来のPOSと同額に抑えられているため、取引書店は追加負担なしで新POSに入れ替えて「共通ポイント機能」を導入することができる」と。楽天は先述の通り大阪屋栗田の筆頭株主であり、大阪屋栗田は日販との協力関係を深めている一方で、日販の対抗勢力であるトーハンともお付き合いをするということで、やや込み入った構図。日販はCCCとの連携が強いため、Tポイントとの競合を嫌ったかたちでしょうか。本件については私は版元営業マンのnishiyanさんの分析に同感です。

ちなみにアマゾンに対抗意識があるのは紀伊國屋書店だけではなく、CCCもおそらくはそうではないかと思われます。「東洋経済オンライン」2017年4月5日付、杉本りうこ記者記名記事「TSUTAYAが不振出版社を買い続ける狙い――徳間書店の買収で目指すは書店の「ユニクロ」」によれば「3月31日、東京都内のホテルで開かれたCCCの社員ミーティング。グループ傘下の多くの社員が一堂に会する恒例の年次会合の場で、増田氏は「SPA(製造小売業)をやらなければアマゾンには勝てない」と語ったという。〔・・・〕SPAとはユニクロのファーストリテイリングのように、小売業が川上の製造分野まで手がけ、オリジナル商品を開発する経営モデルだ。つまり増田氏はCCC系列の店舗で扱う商品・サービスを、自ら開発しようと考えているのだ。/徳間書店側も「自社から良質なコンテンツをCCCに提供し、出版やライツビジネスなどの事業を拡大する」(業務管理部)と東洋経済の取材に回答しており、今後はアニメなどエンタメ関連の雑誌・書籍や関連グッズを、グループ向けのオリジナル商材として開発するとみられる。/ネット通販のアマゾンが圧倒的な品ぞろえによるロングテールを強みとするのに対し、増田氏は「アマゾンにはない、ここにしかない」というオリジナル性で差別化を図ろうと考えているのだ」。徳間書店が、と考えるよりも、SPAそのものに注目すべきかと思われます。これは書店と出版社の未来が一体化や強い製販同盟へと行き着くかどうか、という問いへとつながります。少なくとも紀伊國屋書店や丸善のような、書店部門と出版部門を兼ね備えた会社の来し方を見る限り、それは簡単ではありません(しかし、今まではそうだったけれど、とも言えるのかもしれません)。「強度の経営統治」と「編集の自由」はしばしば相容れない価値観の尺度を持っているからです。平たく言えば、カネ儲けと文化創造は必ずしも一致しないのです。折り合いの付け方によって、出てくる結果は異なってきます。

いずれにせよ、ここでの私の解釈は表層を撫でたものに過ぎません。深層はいつだって、もっと複雑怪奇です。一見分かりやすいように感じても、事実は小説よりも奇なり、という展開が今後も待ち受けているのでしょう。

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「はてな匿名ダイアリー」2017年5月7日付エントリー「アマゾンの「バックオーダー発注」廃止は、正味戦争の宣戦布告である」は、同業者にはとても共感できる鋭い記事で、すでに多くの反響が寄せられています。特に次の点は版元営業マンであれば必ずぶち当たる疑問です。

「実際にこの十数年、定番書であっても同じアイテムの「バックオーダー発注」の短冊が数週間に一度、同じ日に何枚も「市川13,6,4、小田原9,5,2、堺20,7、鳥栖6,5,2」というようにまわってきて、その前後でアマゾンで品切になり、回復まで10日間というような事態が繰り返されてきた。/ベンダーセントラルを見ると、受注は多少の波はあれどコンスタントであり、アマゾン自身の「需要予測」もおおむね頷ける値になっている。しかし、発注だけがすさまじく間歇的なのだ。/最初は倉庫の入荷オペレーションのためかと考えていた。しかし、倉庫が各地に増えた現在では、各倉庫の発注時期をずらせば、品切を回避できるはず。アマゾンの優秀な人たちがそれに気づかないはずはないが、折に触れてその点は提案してきた。/「発注時期を倉庫毎にずらせませんか」「バックオーダーの発注を版元に直接送りませんか」/しかし、そのたびに返ってくる返事は「当社独自の計算にもとづき、在庫量・発注時期は最適なかたちでおこなわれています」「流通にご不満がある場合は、e託契約をご検討ください」だった」。

「複数の出版社でこの問題を訴えようにも「e託契約」も「パートナー契約」も、すべて明細は秘密保持契約(NDA)の向こう側にあり、その訴訟リスクが情報共有と連帯を阻む。今回、筆者が匿名で書かざるを得ないのもそのためだ」。

アマゾンはこの筆者を特定しようとするでしょうか。私はこの筆者にむしろ感謝したいですし、こうした問題提起が広く公的に議論されることを望みたいです。アマゾンは直取引先が増えていることをなんとかアピールしたいようですが、「メモ(16)」で書いた通り、それには限界があるというのが私の予想です。アマゾンと同じ土俵に乗る必要はない、と判断した出版社をアマゾンが説得することはほぼ不可能でしょう。あと、この際アマゾンに言っておきます。版元に電話を掛けてくるなら、掛けてくる人間にちゃんと部署名くらい与えてあげなさいよ。

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アマゾンの直取引宣言問題は、ヤマト運輸とアマゾンとの関係性の変化を背景にしていると見ている業界人はそれなりに多いと思われます。ヤマトのドライバー経験があるという物流ライターの二階堂運人さんが「東洋経済オンライン」に寄せられた5月12日付記事「ヤマト元社員が訴える「宅配現場」本当の疲弊――未払い残業代を払い値上げしても解決しない」は、今回の問題の背景を考える上で必読ではないかと思われます。

送料無料の功罪を思うに、これは通販を気安く使えるようになる起爆剤とはなったわけですが、利用者の意識において「商品を運ぶ距離」「運ぶ手間」「それらを担う人力」への想像力が薄れてしまった感は否めません。ここでも問題なのは「中間の省略」です。中間者は実際のところけっして省略しつくすことができません。著者と読者だけの、神と私だけの世界があるわけではないのです。そんなごく当たり前のことが想像できなくなるリスクがここにはあるのではないでしょうか。

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by urag | 2017-05-07 22:45 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
2017年 04月 28日

メモ(16)

故桑原武夫先生のご遺族が京都市に寄贈した蔵書1万421冊を一昨年、市右京中央図書館副館長だった女性職員(57歳、生涯学習部部長から課長補佐へ降任)が廃棄していた件の無残さは言うまでもありません(毎日新聞京都新聞その1その2読売新聞日本経済新聞朝日新聞)。おそらく蔵書家の多くはそもそも以前から図書館への寄贈に懐疑的だったはずですが、それを念押しする一例となってしまいました。

目下、出版業界をざわつかせているのは、「7月1日問題」です。版元営業の「記述師文庫堂」さんのツイートや、ひつじ書房のM社長のfacebookでの投稿をご参照ください。アマゾンから日販に日々飛んでいるバックオーダー(既刊書補充発注)の終了予定が6月30日なのです。この件については留意すべきことがドミノ式に増えていくため、まとめるのがしんどいのですが、しいてまとめると以下のようになります。

1)日販※がロングテールの在庫を抱えるのは現実的に無理では。
 ※納期短縮を懸命に推進してきたウェブブックセンターへのさらなる負担増大はリスキー。
 ※取次最大手と言えども王子RCのほかに巨大物流倉庫を一社単独で新設することは想像できない。
2)大阪屋栗田※がバックオーダーを支えきるのも無理では。
 ※現在でも日販で調達できない分の発注は大阪屋栗田に飛んでいる。
 ※アマゾン通達のQ&Aでは大阪屋栗田経由ではなく版元直取引の検討をと促している。
3)版元すべて※がアマゾンと一挙的に直取引になる可能性は低いのでは。
 ※継続的な出版活動をしているいわゆる「アクティブ」状態にあると思われる約2000社が想定される。
 ※そのほとんどは小零細企業。ヤマトや佐川が運賃値上げするのに、アマゾンの各拠点への分散小口納品などできません。
4)トーハン※がバックオーダーを引き受ける可能性も低いのではないか。
 ※大阪屋や日販がさんざんアマゾンに振り回されるのを見てきたわけで。
 ※現在でもコミックと雑誌の、アマゾンへの調達を担当。

アマゾンもずいぶんとスレスレなカードを切ったものだ、というのが営業マンたちが囁き合っている本音です。また、本件はロングテールを維持するためのキックバック要求や、運賃上昇に伴う取引条件の改定、などが今後アジェンダ化する可能性と必然的に隣り合わせになっています。栗田や太洋社に続いてここでも問題なのは物流という足腰がすっかり弱くなっている現状です。ようするに今回のアマゾン通達は出版業界をなぎ払うかもしれない嵐がすぐそこまで近づいていることを意味しているわけです。

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ようやく「文化通信」の記事が出ました。「アマゾンジャパン、日販非在庫品の取り寄せ発注を終了へ」(2017年4月28日付)に曰く「アマゾンジャパンは4月28日、日本出版販売(日販)が非在庫書籍を出版社から取り寄せる「日販バックオーダー発注」を6月30日で終了することを、出版社に通知した。これにより、一時的に売上機会減少のリスクがあるとしながら、出版社に対して同社との直接取引による商品供給を検討するよう求めている」。

「記述師文庫堂」さんが指摘している通り、在庫ステータス11番(在庫あり)以外の引当率が低いのは当たり前なのです。それを日販のせいにするのは無理があります。たとえば22番(重版中)や32番(版元品切)、33番(品切重版未定)はそもそも版元に商品がないのですから、版元と直取引したって引当率が上がるはずはありません。大取次にガチで無茶振りをするような会社を相手に、どの出版社が喜んで直取引をするというのでしょうか。最大手の講談社に対してすら電子書籍の取り扱いで酷い仕打ちをしているのが周知の事実なのに。一時的な売上機会減少のリスクどころではなく、ロングテール喪失の危険すらあるのに。

アマゾンがここまで直取引を推してくるのは、ここ数年来の相次ぐ取次危機にたいするリスクヘッジの側面もあるとはいえ、実際にアマゾンが目論んでいるほどには直取引が増えていないという現実の裏返しなのかもしれません。いきなり流通の蛇口を締めるようなことをするのではなく、「北風と太陽」の寓話を思い出してほしいところです。

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「新文化」でも記事が出ました。2017年5月1日付「アマゾンジャパン、日販非在庫書籍取寄せ発注を6月30日で終了」。ちなみにアマゾン・ジャパン合同会社の「物流輸送企画事業部」の仕事の一端は求人情報から垣間見ることができます。

思い出すべき記事その1として、「日本経済新聞」2017年3月22日付「アマゾン、本を直接集配 発売日に消費者へ」があります。曰く「アマゾンジャパン(東京・目黒)は、出版取次を介さない出版社との直接取引を広げる。自ら出版社の倉庫から本や雑誌を集め、沖縄を除く全国で発売日当日に消費者の自宅に届けるサービスを今秋までに始める。アマゾンによる直接取引が浸透すれば、取次や書店の店頭を経ない販売が拡大。書籍流通の流れが変わる節目になりそうだ。/埼玉県所沢市に1月、設立した「アマゾン納品センター」を直接取引専用の物流拠点として使う」。これは「アマゾンが用意したトラックが出版各社の倉庫に集荷に回る」というシステム。出版社から商品を委託されている倉庫会社に目を付けたのは非常に良い着眼点ではあります。これに相当の自信を持っているようですが果たして、取次を出し抜くレヴェルの「アマゾン最優遇」を版元や倉庫会社から勝ち取れるでしょうか。

思い出すべき記事その2は「東洋経済オンライン」2014年12月19日付、山田俊浩編集長記名記事「アマゾンは、なぜ出版社を「格付け」するのか――チャン社長「ぜひともビジョンを共有したい」」です。リード文に曰く「世界最大のネット通販サイトであるアマゾンは、日本でも矢継ぎ早に新しい取り組みを進めている。2014年は、出品者への融資、受け取り拠点やカスタマーサービスセンターの強化、アマゾン限定商品の拡充などを推進した。/一方、「出版業界」という狭い分野に限ると、軋轢が高まった年でもある。2014年春、同社は電子書籍のキンドルについて、一方的に「優遇マーケティングプログラム」を設定。契約を結ばない出版社を「ベーシック」、契約を結んだ出版社を品揃え、マージンなどにより「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」に格付け。格付けが高い出版社に対して集中的にマーケティング支援を行う形に切り替えた。/通常の書籍についても、アマゾンでの売り上げをチェックできるように無料で提供していた「ベンダーセントラル」を有料に切り替えた。こうしたアマゾンのやり方に多くの出版社の経営者が、危機感を覚えている」。

この「アマゾン納品センター(所沢)」と「優遇マーケティングプログラム」がアマゾンの武器なわけです。後者をめぐっては以下のような「事件」が過去にあったのを思い出される方もいらっしゃるかと思います。「サイゾーpremium」2015年7月31日付、佐伯雄大氏記名記事「出版社6社が書店に謀反!? アマゾンと安売り契約で紀伊國屋書店が大激怒!」に曰く「取次関係者は言う。「この一件は、完全に出版社の勇み足ですね。この6社はすべてアマゾンと優遇マーケティングの契約をしている会社です。〔・・・〕紀伊國屋さんが各社を呼びつけたのも、出版社がアマゾン一社を優遇するような流れにくさびを打ちたかったのでしょうね」」。

多くの版元が「アマゾン納品センター(所沢)」と「優遇マーケティングプログラム」に侵食されてしまったら、日販や紀伊國屋書店やCCCは対抗できるでしょうか。アマゾンは、直取引や優遇マーケティングプログラムに応じない版元の商品がカート落ちすることも厭わない道を、積極的に選んだわけです。

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ジャスパー・チャン氏は先に掲げた「東洋経済オンライン」のインタヴュー記事でこう述べています。「もっとも重要な点は、私たちの考えは読者と著者を重視しているということです。アマゾンを含めて、それ以外の者はすべてミドルマン(中間業者)にすぎません。もちろん出版社もミドルマンです。/著者と読者をより効率的につなぎ、読者が求めているものをきちんと届けていくためにはどうしたらいいか、ということを考える点で、アマゾンと出版社はビジョンを共有できるはずです」。

チャン氏がどれほど出版社の仕事を理解しておられるのかはこの記事からは判然としませんが、出版社を平凡な仲介者だとみなす限り、出版社とヴィジョンを共有することは無理である気がします。出版社がどれほど著者や訳者の仕事に協力し介入しているか、作品が出版されるまでのたくさんの隠れた工程を担い、さらに関連会社と連携しているか、そこを知らないままでは、出版社がただのミドルマンなどでは「ない」ことは理解できないでしょう(そしてまたアマゾン自身もただのミドルマンでは終われない責任を有しているはずです)。その点をちゃんと掘り下げて見ているのか見ていないのかわからない会社がはたして本当に著者をも大切にできるでしょうか?

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出版取次の「名状しがたいシステム担当のようなもの」でいらっしゃるというTKK8637Fさんが拙エントリーをご参照された上で次のように興味深いツイートを残してくださいました。「取次の立場から言わせていただきたいのはVANステータスちゃんと管理してない版元さんですよ。ステータス分かんない状況で取り寄せ発注したけど回答NGっていうケースが引当率下げてる。」と。TKK8637Fさんの率直なコメントに感謝します。

業界向けにまず整理しておくと出版社には、出版VANを導入している会社とそうでない会社がありますね。VANを導入していない会社のうち、取次にメールでステータス情報を提供している会社とそうでない会社がある。TKK8637Fさんが言及されているのは、「ステータスが分からない状況」とのことですから、VANを導入しておらず、取次にステータス情報も流していない版元のケースかと想像します。この手の版元が取次さんの取引出版社のうち何割を占めるのかが分からないので、「引当率を下げている」という断定の数字的根拠がどこにあるのかは窺えないものの、「ステータス情報の提供とメンテナンス」が現実問題として存在することには同意できます。

出版社目線でこの件を見つめ直すとまず、零細出版社のように出版規模が小さい場合、費用の点からVANのシステムを導入するには至りません。ただし、アマゾンなどのオンライン書店を意識している版元は取次にメールで在庫ステータス情報を送らねばならなくなる必然性があるわけで、弊社の場合はメールで提供しています。いっぽう、オンライン書店をさほど意識していない版元というのもあるでしょう。それが意図的なものなのかどうか、どんな事情があるのか、理由は様々なはずです。なかにはおそらく取次への在庫ステータス情報の提供先窓口や、情報提供そのものについてすら知らない版元が存在するであろうことが想像できます。これは意識が低いという単純な括り方で批判して済むものではありません。零細出版社の仕事環境は実に様々ですし、正直に言えば取次さんサイドの啓発活動が充分とも私には思えない。「ステータスが分からないけれども取り寄せ発注をしたところ在庫なしや出荷不可と分かる」場合、それぞれにどういった背景や事情があるのか、もう少し細部を観察するべきではないかと思います。

ちなみにメールで提供している版元が新刊を出した場合、新刊(を含めた刊行書目一覧)の最新ステータスを提供するまでは、ステータスが空欄になるか、それとも自動的に在庫ありにされるか、取次さんによって説明がまちまちなのには閉口したことがあります。どこの取次とは言いませんが、版元とのやりとりが面倒で仕方ないといった態度の方もいますね。TKK8637Fさんにとってご面倒でないならばこの件をもう少し掘り下げて意見交換したいところです、できれば実名で。

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「共同通信」2017年5月1日付記事「アマゾン、出版社と直接取引強化――日販への発注一部中止へ」に曰く「アマゾンで一時的に品切れの本が増えるなど、読者への影響が出る可能性もある。/日販広報室は「現時点ではコメントできない」としている」。

「日本経済新聞」2017年5月2日付記事「アマゾン、出版と直接取引 一部書籍、取次の日販介さず」に曰く「出版社との直接取引を拡大するアマゾンの動きが加速しそうだ」。「専用のトラックが出版社の倉庫から書籍を集めて全国の専用倉庫に運び、沖縄を除く地域で発売日当日に消費者に届けるサービスを今秋までに始める計画だ」。さりげなく「発売日当日に消費者に届けるサービス」と書かれていますが、この場合ターゲットは新刊となるわけで。

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「Net IB News」5月2日付、深水央氏記名記事「「日販飛ばし」で加速する旧世代出版ビジネスの解体」はやや粗い内容で扱いに注意を要します。

1)「ネット通販最大手のアマゾンジャパンは、今年6月から一部の既刊書籍の取り扱いについて、出版取次最大手の日本出版販売(日販)を通さず、直接出版社と取引する。」
→7月から、ではないでしょうか。

2)「出版流通では卸にあたる出版取次は、書籍の印刷部数(生産量)を決める」
→取次配本部数をあてにして初版部数を決める版元もいるかもしれませんが、いずれにせよ印刷部数を決めるのは取次ではなく出版社です。

3)「この「金融機能」を当てにして、経営の苦しい中小出版社は自転車操業でなんとかやりくりを続けているのが実態だ。出版社は印刷した書籍を取次に納品すると、商品の代金をいったん全額受け取ることができる」。
→新刊委託納品分が翌月に丸々入金されるのは中小版元ではなく、一部の特権的な大手版元のみ。中小版元はまず委託納品後に委託手数料を徴収(控除)され、6か月後に納品額から返品額を差し引いた金額が確定されてようやく7か月後もしくは8か月後に入金されます。刷って撒いた分が丸々入金される特払いによって自転車操業を続けているのは中小版元ではなく、むしろ大版元だと言うべきでしょう。

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「文化通信」5月2日付記事「日販、アマゾンの「バックオーダー発注終了」で見解」によれば、日販は5月2日、次のような見解を発表したとのこと。「これまで日販では、Amazon様と目標を共有し、出版社様のご協力もいただきながら、取り寄せ調達のスピードアップに関する改善努力を続けて参りました。/そうした中、今回Amazon様の一方的な通告を受けたことは、大変遺憾に思います。弊社を経由した出版社様からの取り寄せ調達は、Amazon様にも効果があると信じております。/今回のお申し入れのままでは、出版社様の取引の選択が狭められ、対応ができない社が出ることも懸念されます。引き続き出版社様とも改善に関するお話しをさせていただき、継続できることを希望しております。/弊社にとっても急な申し出のため、今後の対応についてはAmazon様と協議させていただければと考えております」。

今回の記事は、一気に噴出した版元の不安と、日販への懸念の昂進に配慮して発信したものと思われます。実際のところアマゾンが前言を撤回することはないでしょうけれども、今回の圧力を快く思わない版元が増えることが必至であるのもまた事実で、日販経由という選択肢を残しておいた方が現実的だとすら言えます。たとえアマゾンが版元の商品を預かる倉庫会社に集品に行くとしても、アマゾンが要求しているような取次を出し抜く最優先シフトは倉庫会社の作業単価を押し上げるだけで、アマゾンのために高い単価を支払ってまで直取引に応じうるのは、倉庫を利用している版元の一部に留まらざるをえないでしょう。倉庫に集品にいけば版元を一網打尽にできるなどともしアマゾンが考えているなら、それはきわどい賭けとなります。また直取引に応じたとしてもアマゾンによる版元カースト制度に組み込まれるだけで、とても対等な関係が築けるとは思えません。

日販としても版元が離れていくことは売上減少につながるため、そう簡単にアマゾンの言いなりになることはできませんし、事実、アマゾンへの版元の不信感が高まっている現在、状況が日販に有利に働く可能性もまだ残されています。今回のアマゾンのアクションによって、取次再編の回転が早まる可能性すらあります。つまり、アマゾン包囲網が形成される契機ともなりうるわけです。

今回の一件は広くマスコミの関心をも惹いているようで、驚いたことに日販の応答をめぐっては「サンスポ」にすら記事が出ています。5月2日付記事「アマゾンの一部発注中止に日販「一方的で遺憾」」。この記事によれば、日販は文化通信だけでなく共同通信宛にもコメントを送っているようです。

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by urag | 2017-04-28 20:11 | 雑談 | Trackback | Comments(3)