ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ

カテゴリ:本のコンシェルジュ( 921 )


2006年 02月 07日

「自遊人」3月号は神保町特集

a0018105_1851647.jpg隔月刊の「自遊人」の06年3月号は、神田神保町の特集。今回の特集号で面白いのは、古本屋だけでなく、喫茶店や飲食店を丁寧に取材しているところ。ご存知の通り、神保町にはシブくて年季の入った喫茶店や飲食店があちこちにあります。神保町に通う用事がない人はほとんど知らない店ばかりかもしれません。でも今回の特集を読んだら、きっと行きたくなりますよ。美味しいコーヒーとか、ナポリタンとか、大盛りカレーとか、絶品の蕎麦や天婦羅とか。食い物目当てで神保町に行くのもいいなあ、と思えてきます。遠方よりいらっしゃる方は、同特集号で紹介されている山の上ホテルをご利用になってください。綴じ込み付録で、「神田神保町古書店全145軒完全ポケットガイド」がついています。神保町界隈には、出版社も数多くあります。編集者や営業マンが街角のそこここにたくさんウロウロしてますよ。(H)
[PR]

by urag | 2006-02-07 18:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2006年 02月 06日

「現代思想」2月臨時増刊号:フランス暴動――階級社会の行方

a0018105_20163177.jpg月刊誌「現代思想」2月臨時増刊号は、「総特集=フランス暴動――階級社会の行方」です。海外の論調をふんだんに取り入れているだけでなく、国内の研究者によるリポートや作家・識者によるエッセイなどを掲載し、とても充実しています。

弊社刊行のヴィルノ本の訳者である廣瀬純さんも寄稿されており、同じくアガンベン本の訳者である堤康徳さんがネグリの論文を訳されています。今日現在、青土社さんのサイトで目次が見れないので、以下に転記します。論文の副題や訳者名が省略されていますがご勘弁を。

■討議
フランス暴動をどう見るか (鵜飼哲+平野千果子+森千香子+なすび)

■フランスから
危ないぞ、共和国! (E・バリバール+F・ベンスラマほか)
裸の共和国の古ぼけた新しい服 (Y・ムーリエ・ブータン)
若者たちが政治のなかに入ってきた (F・ブラン)
日々の屈辱 (A・バディウ)
母さんとやれよ! (J・ボードリヤール)
遠くから (E・グリッサン+P・シャモワゾー)

■何が起こったのか
フランス郊外 (コリン・コバヤシ)
仲間よ、安らかにくたばれ (稲葉奈々子)
論理的な暴動とマルチチュディネスクなコギト (市田良彦)
眼下の第三世界 (増田一夫)

■郊外と若者
仮設避暑地の陽光 (堀江敏幸)
ラップと暴動 (陣野俊史)
炎に浮かぶ言葉 (森千香子)
メディアと「都市暴力」 (鶴巻泉子)
フランスの若者の暴動とマスメディア (重光哲明)
郊外と〈第三世界〉の拡大 (萱野稔人)
国民再生は郊外から始まる (昼間賢)

■移民のフランス
フランス暴動は他人事ではない (梁石日)
誰でもが政治をしなければならない、誰でもが政治をすることができる…… (櫻本陽一)
鏡としてのマイノリティ (鈴木則夫)
軍都の時空の中で (東琢磨)

■暴動とは何か
しかし革命までは時間がある (T・ネグリ)
フランスにおける暴力についてのいくつかの非PC的省察 (S・ジジェク)
彼らは「何人かの野蛮なインディアンに過ぎない」のか? (廣瀬純)
北関東ノクターン (平井玄)
暴徒の背後に女がいる (矢部史郎)
暴「動」の張力 (桜井大造)

***

編集人の池上善彦さんは編集後記で石母田正の言葉を引いています、「大きな民衆運動はそれが突然に起こる場合であってもその背後にはかならず長い民衆の伝統がつみさかねられている」。梁石日さんは、「フランス暴動は他人事には思えない」と書いています。これは軽々しい政治意識やシンパシーによるものではないのです。なぜ彼がそう書いたのか、皆さんもぜひ本書を手にとって味読していただければと思います。

以上です。(H)
[PR]

by urag | 2006-02-06 20:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2006年 02月 05日

今週の注目新刊(第37回:06年2月5日)

今週の注目はパッション屋良です。ファンです。あ、新刊と関係ありません。

***

アクシデント 事故と文明
ポール・ヴィリリオ(1932-)著 / 小林正巳訳 / 青土社 / ¥1,995

■帯文より:文明は事故を発明する。安全システムの欠陥のみが、原発事故・航空機墜落・テロなどの大惨事を誘発するのではない。技術文明は常に新しい事故を発明する。テクノロジーに原罪のように予め蓄積された未知なる災禍の種子が、不可避的に突如炸裂する……。事故とは何かを根源から問う、全く新しい文明論。

■目次

第一部
 1 事故の発明
 2 事故というテーゼ
 3 事故博物館
 4 事故の未来
 5 期待の地平
 6 未知数
第二部
 7 公共的情動
 8 原罪的事故
 9 走行圏
文献
訳者あとがき

■原書:"L'accident originel", 2005, Galilee.

●第一部を構成する1~6はもともと、2002年11月29日から2003年3月30日にパリのカルティエ財団で開催された、事故をテーマにしたヴィリリオによる美術展「Ce qui arrive (Unknown Quantity)」のカタログにも掲載されていたテクスト群。財団で発行していたフランス語版の同カタログは残念ながらもう入手できませんが、テームズ・アンド・ハドソンから刊行されている英語版("Unknown Quantity")はまだ手に入ります。なお同名(Ce qui arrive 〔いま起こりつつあること〕)のヴィリリオの著書がありますが、これは美術展とは別物でこちらは『自殺へ向かう世界』としてNTT出版から2003年に翻訳刊行されています。

●美術展「Ce qui arrive」については、季刊誌「インターコニュニケーション」44号(2003年春号)の巻頭カラーページで塚原史さんによる紹介が掲載されています。

●その昔――1989年3月21日に放映されたTV番組に、NHKスペシャル「事故の博物館」というのがありました。RADICAL TVのお二人(原田大三郎さんと庄野晴彦さん)、そして浅田彰さんが手がけられた見事な番組でしたが、ここで理論的に援用されていたのはほかならぬヴィリリオでした。

●1988年11月4日号の「朝日ジャーナル」に掲載されたヴィリリオと浅田彰さんの対談「「事故の博物館」のために」をまずご参照ください。この対談は浅田さんの対談本『「歴史の終わり」と世紀末の世界』(小学館、1994年3月)に収録され、のちに本書は『「歴史の終わり」を超えて』と改題されて中公文庫の一冊になっています。

●TV番組「事故の博物館」については、ペヨトル工房の雑誌「ur (ウル)」no.1(特集=ハイパー・アート)に掲載された、浅田彰「〈事故の博物館〉の舞台裏」、原田大三郎(聞き手=今野裕一)「事故の博物館」、庄野晴彦(聞き手=今野裕一)「デスクトップ・ヴィデオの可能性」などをご参照ください。

●さらに、RADICAL TVと浅田彰さん、そしてヴィリリオのつながりの一端を見るためには、季刊誌「GS」5号(UPU、1987年4月)の特集「TV進化論」をご参照ください。1985年9月15日に筑波科学博会場のSONY JUMBOTRONで上映された「TV WAR」(音楽=坂本龍一)や、1986年9月12日26:00-6:25にフジテレビで放映された「TVEV BROADCAST」などの様子がわかります。

●『アクシデント』の原題"L'accident originel"は今回の訳書では「原罪的事故」と訳されているようですが、先の浅田/ヴィリリオ対談では「根源的アクシデント」と訳されていました。ヴィリリオは1986年に同名の論文を発表しており、これは鈴木圭介さんの訳で「GS」4号:特集=戦争機械(UPU、1986年12月)に「根源的アクシデント」として掲載されています。この「GS」4号にはヴィリリオの論文が複数掲載されています。この特集号は700頁もあって、内容がたいへん素晴らしく、戸田ツトムさんの組版造本もものすごくインパクトが強いです。私にとって、学生時代からの宝物の一冊。

●こうして列記すると関連書や資料が分散していて、なおかつ絶版書もあるので、これらが一冊にまとまっていたら便利なんだけれどもなあと若い読者は思うかもしれません。私にとって80年代後半は、浅田彰さんに象徴されるような日本の現代思想の若き知識人たちが活動的に世界と渉りあっているさまが様々なメディアを通じて見ることができた、実に輝かしく若々しい時代だったように思います。ノスタルジーですね。ごく普通の若い人にはポカーンな話かも。

●『アクシデント』はこれまでのヴィリリオの技術社会論の「総まとめ」のような手頃な本です。売れて当然だし、売れて欲しい本です。科学技術の悪用を善悪の観点から論じるのではなくて、もともと科学技術には「事故」が内在しているものなのだと喝破したのがヴィリリオだと思います。これは事故が内在しているのだから何が起こっても仕方ないよね、という議論ではありません。

●何が善で何が悪かという議論の堂々巡りから一歩出て、人間の持つ知識の無垢や無謬性を根本的に疑うことから始めねばならない、ということだと思います。ヴィリリオは熱心なカトリック信徒です。彼の批判精神や懐疑はそこに源泉を持っているとも言えそうです。

●弊社は今度、ヴィリリオの初期(70年代)作のひとつである『民衆的防衛とエコロジー闘争』を刊行します。私はヴィリリオの大ファンで、『純粋戦争』(UPU、1987年12月)の頃から愛読しているので、とてもうれしいです。『純粋戦争』は古い本ですが、内容的には今なお刺激的。若い読者の方が読んでくださるならば、復刊のために頑張っちゃおうかな。97年版のあとがきを追加して。

エクラ/ブーレーズ――響き合う言葉と音楽
ピエール・ブーレーズ(1925-)著 / 青土社 / ¥3,570
■帯文より:音楽・思想・文学を横断する夢の競演。音楽界最後の巨星ピエール・ブーレーズを中心に、現代フランスを代表する思想家・文学者・芸術家が集って交わされた“輝き”に満ちた言葉と思索。ドゥルーズ、ブルデュー、リオタール、ベジャール、ビュトール、メシアンら錚々たる寄稿者たちの問いかけにブーレーズが応答。今日の文化創造をめぐる諸テーマを論じ尽くす。20世紀音楽そして西欧現代芸術の総決算。
●つべこべ言わずに購読しておく本ですね。

辞書の政治学――ことばの規範とはなにか
安田敏朗(1968-)著 / 平凡社 / ¥2,940
■帯文より:文明国標準としての辞書、国民統合の象徴、戦後国語教育……「私の辞書論」を超えて、辞書と批判的につきあうための基礎作業。ことばは誰のものか、ひとはなぜ辞書を引くのか。
●これもつべこべ言わず購読すべき本かと。

批判感覚の再生――ポストモダン保守の呪縛に抗して
藤本一勇著 / 白沢社 / ¥1,890
■帯文より:狂った保守主義から戦う民主主義へ。グローバル化時代のイデオロギーを撃つ!
●藤本さんの第一論文集ということになるのでしょうか→現物を拝見したところ意欲的な書き下ろし作でした。「近代以後の人間社会が蓄積してきた社会関係・社会構築における最低限の遺産確認」を意図されていらっしゃいます。こんにちもっとも再確認し勉強しておきたい、「民主主義」をめぐる数々の論題を真摯に取り上げておられます。社会全体において健全な「左」が弱体化し風化しつつあるように見えるこんにち、藤本さんの存在は多くの後進にとって勇気と励ましを与えてくれるでしょう。

聖堂の現象学――プルーストの『失われた時を求めて』にみる
黒岩俊介著 / 中央公論美術出版 / ¥9,450
■版元紹介文より:小説という言語媒体を通して、時と空間を超越することによって、プルーストは自らの内面世界に、回想と記憶の大聖堂を構築する。本書は彼の『失われた時を求めて』に登場する聖堂を取り上げ、その建築体験の描写から建築的事象の本質を捉えようとした俊英の意欲作である。

アタナシオス神学の研究
関川泰寛著 / 教文館 / ¥7,875
■版元紹介文より:キリスト論と三位一体論の歴史に不滅の足跡を残したアタナシオスの神学を様々な角度から論じ、その全体像を明らかにする。
●正統と異端の長い論争史において、アタナシオスの功績は「正統信仰の父」「教会の柱石」として賞賛されています。異端を学ぶほうが好きな私ですが、当然正統も勉強せねばなりません。

世界エロティシズム文学 第1巻「『Bibliotheca curiosa et erotica 世界珍書解題」
島村輝監修 / ゆまに書房 / ¥11,550
●図書館向け、研究者向けの復刻本です。「世界エロティシズム文学」全三巻。私は第1巻が欲しいです。

●版元による紹介によれば、この全三巻は「モダニズム期におけるエロティシズム文学の紹介文献として貴重な、『Bibliotheca curiosa et erotica(世界珍書解題)』『世界好色文学史』を復刻」したもの。以下、版元の書誌情報を再整理してみます。

第1巻 『Bibliotheca curiosa et erotica 世界珍書解題』
本体11,000円/ISBN4-8433-2052-8
ベルハルト・シュテルン=シュザナ著・佐々謙自訳『Bibliotheca curiosa et erotica』は、もともと昭和3年にグロテスク社から刊行された本で、のちに『世界珍書解題』と改題して昭和5年に日本蒐癖家協会より再刊されました。原著は1921年ウィーン刊。カサノヴァ、ボッカチオ、アレティノ、レチフ、サドなど、著者の収集したエロティシズム文学の稀覯本264冊の書誌解題だそうです。

第2巻 『世界好色文学史(1)』
本体40,000円/ISBN4-8433-2053-6
第3巻 『世界好色文学史』2
本体45,000円/ISBN4-8433-2054-4
佐々謙自編著『世界好色文学史』は、昭和4年に文芸市場社から全2冊で刊行されたもので、第2巻の共編者には梅原北明と酒井潔が名を連ねています。 日本で初めて海外文学(ギリシャ・ローマ・ドイツ・フランス・ロシア)をエロティシズムの観点から体系的に記述した著書として知られるそうです。こっちは高額なので、簡単には手が出ません。

脳のなかの倫理――脳倫理学序説
マイケル・S.ガザニガ〔著〕 / 紀伊国屋書店 / ¥1,890
■帯文より:脳科学の未来は人間に何をもたらすか? 記憶を良くし、「賢い」脳を創り、脳のなかの思想や信条が覗かれる時代が間近に迫る、その是非を問う脳倫理学、遂に日本上陸。
●ここしばらくずーっと「脳科学」はブームですから、本書の売上も期待できそうですね。ガザニガの既訳書は以下の通りですが、ほとんど品切絶版。嗚呼。

『二つの脳と一つの心――左右の半球と認知』(ジョゼフ・E・レドゥーとの共著/柏原恵龍ほか訳/ミネルヴァ書房/80年7月)
『社会的脳――心のネットワークの発見』(杉下守弘訳/青土社/87年12月)
『マインド・マターズ――心と脳の最新科学』(田中孝顕訳/きこ書房/91年8月)

***

以上です。(H)
[PR]

by urag | 2006-02-05 18:11 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2006年 02月 04日

美しいデザイン、美しい書物、をめぐる三つの特集

a0018105_19161861.jpg
写真左:奇数月刊アイデア」2006年第1号(通巻314号
毎号斬新なグラフィック・デザインとタイポグラフィで読者を楽しませてくれるアメリカの雑誌「エミグレ」の歴史がメイン特集。第二特集では、ペンギン・ブックスの古典叢書「グレート・アイデアズ」のカバーデザインを一挙掲載。刺激受けまくりです。巻末には綴込で、大竹伸朗さんのオリジナル・ポスター〈2nd impact〉が。このポスター作品は「連載」のかたちをとっており、今回は第16回。すごくかっこいいです。

写真中央:隔月刊デザインの現場」2006年2月号(通巻145号
特集は「デザインを読む!ブックガイド300」。内容は以下の通りでとても充実しています。本でたどるデザイン史(世界編・日本編)/はじめに(理論・思想・プロダクト・タイポグラフィ・印刷・素材と加工・色彩)/デザイナーを読み解く――モリソン、マーリ、杉浦康平ほか/デザインの幅を広げる54冊(社会・政治・経済・心理・教育・環境・建築・カルチャー・ジェンダー)/絶版本――復刻希望のお宝本。文系理系アート系を横断する大テーマとしての「デザイン」。今回の特集をもとに、書店さんではブックフェアをやってもらえたら読者は非常にうれしいかも。

写真右:月刊エスクァイア日本版」2006年第3号(通巻222号)
特集は「一生大切にしたい、美しい本230冊」。こちらはデザ現と違って、国内外の本屋さんや出版社の取材がメイン。主な記事は、吉岡徳仁、ロンドンにてアートブックに出会う(テート・モダン・ショップ、デザイン・ミュージアムほか)/スイス発世界着のつくり手たち(ラーズ・ミュラー社、ニエヴェス社、スカロ社)/都築響一、台湾へ行く/僕らが愛してやまない50冊の美しい本たち/あなたの本棚、見せてください(ホンマタカシほか)/現代アーティストがインスパイアされる本/ビジュアルブックに精通した書店24(東京・神奈川・京都・大阪)。ホンマタカシさんの本棚に弊社の『新宿』があるのを見て思わず頬が緩みます。

***

「エスクァイア」誌のアート系24書店の冒頭を飾った写真は、内沼さんがやっている「エンカウンター」。実にかっこいいです。24店舗がどこなのか、皆さんも興味があるでしょう。紹介記事や店内写真はぜひ「エスクァイア」誌を買っていただくとして、お店の名前だけ列記します。

東京および神奈川:パージナ/アートバードブックス/オン・ザンデーズ/アート アンド ブックス/ナディッフ本店/ハックネット代官山店/リムアート/TSUTAYA TOKYO ROPPONGI/ユトレヒト/ボヘミアンズ ギルド/ブックピックオーケストラ ブックルーム エンカウンター/プロジェット

大阪および京都:コロンボ/イトヘン/アンジェ ラヴィサント/コピーライト/カフェアンドブックス ビブリオテーク/カロ ブックショップ アンド カフェ/カフェ ビブリオチック ハロー!/シンビ/メディアショップ/プリンツ/スフェラ・アーカイヴ/恵文社一乗寺店

大方はウェブサイトがありますが、リンクははりません。まずは「エスクァイア」誌を買ってくださいまし。(H)
[PR]

by urag | 2006-02-04 20:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2006年 01月 29日

今週の注目新刊(第36回:06年1月29日)

花粉症+風邪。グロッキーです。

***

アメリカ建国とイロコイ民主制
ドナルド・A・グリンデ・Jr.ほか著 / 星川淳訳 / みすず書房 / ¥5,880
■帯文より:独立革命、合衆国憲法に刻印された「自由の手本」先住民社会の驚くべき影響。歴史の闇に埋もれた文化的転移、世界史的実験のプロセスを、一時史料から立証する「もうひとつのアメリカ建国史」。

アメリカ人であるとはどういうことか――歴史的自己省察の試み
M・ウォルツァー著 / ミネルヴァ書房 / ¥3,360

サイボーグ化する私とネットワーク化する世界
ウィリアム・J・ミッチェル著 / NTT出版 / ¥3,780
■原書:Me++ : The Cyborg Self and the Networked City
■帯文より:変貌するユビキタス時代の情報社会論。

イメージ・リテラシー工場――フランスの新しい美術鑑賞法
ジャン=クロード・フォザほか著 / フィルムアート社 / ¥3,360

ルーマン 法と正義のパラドクス――12頭目のラクダの返還をめぐって
G・トイプナー編 / ミネルヴァ書房 / ¥4,200

「アジア的価値」とリベラル・デモクラシー
ダニエル・A・ベル著 / 風行社 / ¥3,885

ナチズムの歴史思想――現代政治の理念と実践
フランク=ロタール・クロル著 / 柏書房 / ¥5,460

ひとつの土地にふたつの民――ユダヤ‐アラブ問題によせて
マルティン・ブーバー著 / 合田正人訳 / みすず書房 / ¥5,775
●版元紹介文より:「マハトマ・ガンディーへの書簡」をはじめとする、1918年から1965年までに発表された論考66篇。

私をブンガクに連れてって
芳川泰久著 / せりか書房 / ¥2,310
■版元紹介文より:カフカの『審判』の主人公のように、ある日呼び出され、文学とは無縁な、さまざまな場所に連行される。カマボコ博物館、メイドカフェ、裁判所、山奥のダム、皇居、オートレース場――文学から消えてしまった〈リアル〉に遭遇したいと願う、痛快な批評のアクロバット。

晶子とシャネル
山田登世子著 / 勁草書房 / ¥2,310
●与謝野晶子とココ・シャネルを「魂の姉妹」として見立て、視えざるコレスポンダンスを日仏近代史のうちに再構成するもの、のようです。

サド侯爵――新たなる肖像
シャンタル・トマ著 / 三交社 / ¥3,675
●トマはフランスの作家で女性文化史研究家。これまでに軽いエッセイ本と小説の既訳書あり。

未知なるものへの生成――ベルクソン生命哲学
守永直幹著 / 春秋社 / ¥3,675
●渾身のベルクソン論。

ことばの意味とは何か――字義主義からコンテクスト主義へ
フランソワ・レカナティ著 / 新曜社 / ¥3,990
■帯文より:ことばの意味は文そのものに宿るのか?それとも文脈に抱かれた発話行為から生まれるのか?分析哲学界・言語哲学界を二分してきた大論争に終止符を打つ希薄の力作。
●レカナティはヨーロッパ分析哲学会の設立者の1人。会長を務めたこともある。

哲学体系
スピノーザ著 / 小尾範治訳 / 一穂社 / ¥4,515
●ふるーい岩波文庫の復刻シリーズからの一点。旧版からの復刻のため、一部の印刷の読みにくさもそのまま。 名著/古典籍文庫というシリーズだそうです。およそ図書館向けの商品なのでしょうが、こういう商売もありうるのか、と関心。

ドン・ジョヴァンニ 音楽的エロスについて
ゼーレン・キルケゴール〔著〕 / 白水社 / ¥998

新版 図書館の発見
前川恒雄著 / 日本放送出版協会 / ¥966

ゲイの民俗学
礫川全次編 / 批評社 / ¥4,725
●礫川さんの「民俗学」史料シリーズは好事家にはたまらない世界かも。

図説 天使百科事典
ローズマリ・エレン・グィリー著 / 原書房 / ¥6,090
●類書はあまたありますが、グスタフ・デイヴィッドスンの高名な本『天使辞典』(創元社、2004)が出て、 もはや打ち止めかと思いましたが、まだまだのようです。

ネクロノミコン――アルハザードの放浪
ドナルド・タイスン著 / 大瀧啓裕訳 / 学研 / ¥2,625
●ギリシア語訳者やラテン語重訳者の序文まで付いて、本文もヴォリュームがあって、かなりがんばって「創作」しています。途方もない作業だったでしょう。徒労を厭わない作家タイスンに戦慄すら覚えます。大瀧先生の訳文もいい感じです。

***

以上です。(H)
[PR]

by urag | 2006-01-29 19:00 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2006年 01月 26日

洛北出版よりリンギス『何も共有していない者たちの共同体』

a0018105_1912353.jpg何も共有していない者たちの共同体
アルフォンソ・リンギス(1933-)=著、野谷啓二(1956-)=訳、
洛北出版、本体2600円、ISBN4-903127-02-8

●すべての「クズ共」のために。どこから来たか、ではない。なにができるか、でもない。私たちと何も共有するもののない人々の死が、私たちと関係しているのではないか、という実感をこんにちますます持ちつつある現代人のために。人種的つながりも、言語も、宗教も、経済的な利害関係もない人々、そこに生まれる未聞の共同体へ。堀田義太郎(1974-)と田崎英明(1960-)による二篇の解説付。序文立ち読みはこちら

●ついに刊行されました!私が大好きな本が日本語でも読めるようになりました。装丁もとても綺麗です。Lingoさんというお名前のデザイナーの方。本書は洛北出版さんに直接注文すれば、郵便振替による代金後払いで、送料も振込手数料も無料。ぜひご利用ください。

●これで次には、アガンベンの"The Coming Community"が訳されれば一読者としては言うことなしです。

●洛北出版さんの次の新刊は、浅野俊哉著『スピノザ 共同性のポリティクス』だそうです。今春刊行予定。さらに続刊予定として、マサオ・ミヨシさんの自伝やルディネスコの本がエントリーしているとのことです。前者は原書を翻訳したものとかではなくて、本書自体がオリジナル版だそうですよ。楽しみですね。(H)
[PR]

by urag | 2006-01-26 01:33 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2006年 01月 25日

2005年を振り返りつつ、下半期のベスト新刊10点を挙げる(下)

「[本]のメルマガ」1月25日付238号に寄せた拙稿を転載します。
---------------------------------------------------------------------
■「ユートピアの探求」/五月
---------------------------------------------------------------------
【2005年を振り返りつつ、下半期のベスト新刊10点を挙げる(下)】

かつて都内のとある中堅書店の人文書売場にNさんという定年間近の女性社員の方がいた。何年か前に惜しまれつつ引退されたけれども、Nさんは版元営業マンを常に刺激してくださる素晴らしい書店人だった。

とにかく好奇心旺盛。広い人脈と情報網をつかって、いつも新しい話題を仕入れていた。営業マンの扱いも上手くて、いつのまにかNさんに「課題」を与えられる。営業マンのルーティンワークに「プラスアルファ」の工夫を積極的に求める方で、こちらがボヤボヤしていると「もっとしっかり勉強なさい!」とたしなめられたものだ。

売場に活用できそうな自分なりの本のネタを常時更新しておき、書店さんに提供することに喜びを覚える性分の私は幸い、「勉強しなさい」と一喝されたことはなかったが、自分自身の母親より年上のNさんの「書店員魂」には多くのことを学んだ。

店内リニューアルに伴い、人文書棚が減らされるかもしれない危機にも、Nさんは粘り強く自分の売場を守り抜いた。ある時Nさんはこう言った、「人文書棚からは時代が良く見えるのよね」と。

流行の移り変わりの激しいビジネス書や実用書よりも、時代の深層に届くまなざしを人文書は提供してくれる。そうNさんは見ていたのだった。日々移り変わりゆく様々な社会現象にも、歴史や文化の背景がある。時間の堆積層に分け入っていこうとするまなざしがある本たちを、Nさんは人文書売場の最大の武器と考えていた。

ニュース番組の短い時間の中ではとうてい説明しきれない、文化の諸相における複雑で長期的な利害関係の生成に迫る鍵を、人文書棚で読者に提供する。時代を見抜く目を養おう。売場から時代と本を眺め続けてきた経験豊かなNさんならではの勘が、そこには働いていたはずだ。

私は2005年下半期で印象に残った本をピックアップしていきながら、自分が拾っていく本が、そうした時間の堆積層を掘り下げていく強靭な知性によって書かれたものが多いことに気づいて、Nさんのことを思い出していた。

知覚の宙吊り――注意、スペクタクル、近代文化
ジョナサン・クレーリー著 岡田温司監訳 石谷治寛+大木美智子+橋本梓訳
平凡社 05年8月 本体7,200円 A5判554頁 ISBN4-582-70257-0

ティツィアーノの諸問題――純粋絵画とイコノロジーへの眺望
エルヴィン・パノフスキー著 織田春樹訳
言叢社 05年8月 本体7,600円 A5判316+131+29頁 ISBN4-86209-003-6

美の歴史
ウンベルト・エーコ編著 植松靖夫監訳 川野美也子訳
東洋書林 05年11月 本体価格8,000円 A4変形判439頁 ISBN4-88721-704-8

自然の占有――ミュージアム、蒐集、そして初期近代イタリアの科学文化
ポーラ・フィンドレン著 伊藤博明+石井朗訳
ありな書房 05年11月 本体8,800円 A5判782頁 ISBN4-7566-0588-5

世界の読解可能性
ハンス・ブルーメンベルク著 山本尤+伊藤秀一訳
法政大学出版局 05年11月 本体5,500円 46判449+44頁 ISBN4-588-00831-5

残存するイメージ――アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン著 竹内孝宏+水野千依訳
人文書院 05年12月 本体9,800円 A5判770頁 ISBN4-409-10020-3

こうして見ると、美術史や文化史、思想史といった分野で今年は収穫が多かったのかなと思う。上半期でも、やはりこの分野が目立っていた。シャーマ『風景と記憶』河出書房新社、『グリーンバーグ批評選集』勁草書房、ザクスル+ウィトカウアー『英国美術と地中海世界』勉誠出版、『ディドロ「百科全書」産業・技術図版集』朝倉書店、などである。

いずれも素晴らしい書籍で、おおかた高額書ではあるけれども、購読して損はない。強いてこの中からさらに絞り込むと、ヴィジュアルを楽しみたい読者は『美の歴史』がお奨めである。古代から現代までの「美」のかたちの変遷を、大判の全頁フルカラーで見せてくれる。時代ごとの古典的テキストの膨大な引用も楽しい。これで8,000円というのは驚異的なコストパフォーマンスだ。

活字中心で楽しむ読者には、『自然の占有』をお奨めしたい。本書では、西欧文明において、全世界をくまなく理解し支配したいという人間の飽くなき欲望が博物学や博物館を誕生させ、どのように成長させていったかを追っている。本書の舞台となる16世紀後半からの百年間における、アルドロヴァンディやキルヒャーのような一種過剰な知の探究者らの驚異的な著書群からの図版が多数収録されていて、人間の想像力の逞しさに圧倒される。

本書に触発されて様々なことに思いが及んだ。世界を掌握したいという欲望は時代とともに変異し肥大し続けて怪物化し、それによって今やこの星が衰滅しようとさえしている。けれどもその怪物も当時は自然の脅威に打ち勝ちつつある人間の誇らしげな探究心から生まれたものだったのだろう。

探究の喜びと快活さと冒険心がやがて自らを滅ぼしかねない怪物となる。つづめて言うと詰まらない警句にしかならないが、それは別にフィンドレンの教えではない。ただ、こうした豊穣な歴史書を読む際には、過去がこうであったのだろうと示唆しているのだな、とだけ読むのでは足りない。

怪物にもまた、誕生時の希望の痕跡が残っており、歴史をひもとくことは、世界が別様でもありうるかもしれない可能性の源泉を検証することにほかならないのだ。私たちはタイムマシンがなくとも、過去を眼光鋭く省みることによって現在を変えることができる。

書店員のNさんはひょっとするとそうしたすべを知っていたのかもしれない。知識の森(あるいは海)に分け入り、過ぎ去った物事のうちにも未来を変えうるヒントがあることを、読者とともに分かち合いたかったのかもしれない。

過ぎ去ったことはすべてもう現在に関係のないことで、だから過去に固執しても仕方がない――もちろん、そんなわけはない。むしろ、私たちはあまりにも過去に学ばないまま、何度も同じ過ちを繰り返しながら過ごしているのではないだろうか。

書物は過去のものではない。頁が開かれ文字が読まれ、文章が読み手の意識に流れ込んでくる時、書物は常に新しい現在を獲得する。それが今しがた書かれたものであれ、千年前に書かれたものであれ、書物は個々の読者において常に真新しい存在として生まれ変わる。……

先月の記事で3点の本を掲げ、今回はここまで6点を挙げた。最後の1点は次の書物である。

センス・オブ・ウォールデン
スタンリー・カベル(1926-)著 斎藤直子訳
法政大学出版局 05年10月 本体2,800円 46判244頁 ISBN4-588-00833-1

『ウォールデン』とは言うまでもなく、ソローの名著『森の生活』のことである。カベルが上記書でソローやエマソンに言及するとき、そこには懐かしくも新しい二人の死者がたえず雄弁に語りかけ、ふいに沈黙を置いて去る。読むことにおける注意深さについて、カベルは大胆かつ繊細である。こう読まねばならないというのではない。ただ、無数の道がある中にも光と影があり、読むことは読む者の生きざまそのものなのだ。


◎五月(ごがつ):本誌25日号編集同人。http://urag.exblog.jp
[PR]

by urag | 2006-01-25 23:45 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2006年 01月 22日

今週の注目新刊(第35回:06年1月22日)

先週後半あたりから軽い風邪が抜けないままで、嫌な感じです。軽いのですがだるい。頭痛と咽喉の痛み。背中や肩の凝りが辛いです。

今週は辞典類で見るべきものがいくつかあります。

ユダヤ大事典
ユダヤ大事典編纂委員会編 / 荒地出版社 / ¥2,520

音の百科事典
音の百科事典編集委員会編 / 丸善 / ¥24,150

日本古代史大辞典
上田正昭監修・編集 / 大和書房 / ¥29,400

二つ目と三つ目もぜひ購読したいところですが、この値段では簡単には手が出ません。

***

そのたびごとにただ一つ、世界の終焉 I
ジャック・デリダ著 / 岩波書店 / ¥3,570
●弔文の集成ですね。

サルトル
梅木達郎著 / 日本放送出版協会 / ¥1,050
●昨年逝去された仏文学研究者による最後の本。

初期ヘーゲル哲学の軌跡
ヘーゲル著 寄川条路編訳 / ナカニシヤ出版 / ¥2,730
●帯文によれば、「フランクフルト期からハイデルベルク期までの、ヘーゲルの断片集・講義録・書評の本邦初訳を含む」ものだそうです。

食の歴史 1
J‐L・フランドランほか編 / 藤原書店 / ¥6,300
●食から西洋文明を見る。全三巻の壮大な通史となるようです。

ヨーロピアン・ドリーム
ジェレミー・リフキン著 / 日本放送出版協会 / ¥2,940
●帯文に曰く「もはやアメリカン・ドリームは輝きを失ってしまった。民族国家の概念を超えたネットワークを構築するEU。環境の保護、平穏な社会、真に豊かな生活を実現する理想社会がここにある」。これまで数々の話題作を世に送り出してきたリフキン。多岐にわたる問題を扱ってきたせいか、彼の本が本屋さんで一まとまりになっているのはあまり見かけません。

知識人の責任
ノーム・チョムスキー著 / 青弓社 / ¥2,730
●上野俊哉さんも寄稿されています。目次は以下の通り。
第1部 知識人の責任 ノーム・チョムスキー
 第1章 知識人と学校についての考察 清水知子訳
 第2章 知識人の責任 浅見克彦訳
 第3章 抵抗について 野々村文宏訳
 第4章 「抵抗について」の補遺 野々村文宏訳
第2部 「知識人」という文体
 第1章 普遍的知識人の現在 浅見克彦
 第2章 チョムスキー、知識人の十字路 上野俊哉
 第3章 音の不服従、映像の不服従 野々村文宏
あとがき 浅見克彦

ネット社会の未来像
宮台真司ほか著 / 春秋社 / ¥1,680

面白いほどよくわかるフロイトの精神分析
立木康介監修 / 日本文芸社 / ¥1,575

ヴァチカン・アカデミーの生命倫理
秋葉悦子訳著 / 知泉書館 / ¥4,200

芸術の条件 近代美学の境界
小田部胤久著 / 東京大学出版会 / ¥5,460
●『象徴の美学』(東京大学出版会、95年1月)、『芸術の逆説:近代美学の成立』(東京大学出版会、 01年11月)に続く、第三作。

さすらい姫考
小林とし子著 / 笠間書院 / ¥1,995

ジェラール・ド・ネルヴァル
田村毅著 / 東京大学出版会 / ¥9,660

イリアス
アレッサンドロ・バリッコ著 / 白水社 / ¥2,100
●著名作家による古典の「小説化」だそうです。

プロセス・アイ
茂木健一郎著 / 徳間書店 / ¥1,890
●小説です。小林秀雄賞受賞第一作とのこと。

わが同時代人の歴史 第1巻
ヴラジーミル・ガラクチオーノヴィチ・コロレンコ著 / 文芸社 / ¥2,415
●自費出版なのでしょうか。地道な翻訳者の方がいらしたものです。

***

★今週の注目文庫、新書(値段は税込)

全体性と無限(下)
E・レヴィナス著 / 熊野純彦訳 / 岩波文庫 / 903円
●訳者解説に曰く「合田氏の訳は、この国におけるレヴィナス受容の方向を決定づけた訳業であり、今回の拙訳の作業にあっても絶えず参照し、多くを学んでいる。訳註のいくつかには、氏の研究成果をそのまま活用させて頂いたものもある」とのことです。

チベット遠征 改版
S・ヘディン著 / 金子民雄訳 / 中公文庫BIBLIO / 1,050円
●中公文庫BIBLIOはいいシリーズですよね。

人間の安全保障
A・セン著 / 東郷えりか訳 / 集英社新書 / 714円
●センの新書はこれで二冊目。

日中一〇〇年史 二つの近代を問い直す
丸川哲史著 / 光文社新書 / 798円

***

以上です。(H)
[PR]

by urag | 2006-01-22 18:47 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(4)
2006年 01月 21日

ジル・ドゥルーズを知らない世代

センター試験の日は毎年雪が降っているような気がします。昨日、ドゥルーズ関連書について書きながら、もう没後十年を過ぎたのか、とあらためて感慨深くなりました。ドゥルーズが自宅アパルトマンから飛び降り自殺をしたニュースを聞いたのは、私が哲学書房でほんの短い間勉強させてもらっていた時でした。電話で会社に一報が入り、受話器を置いた中野さんからその事実を聞いたのでした。

今日センター試験を受けた人々はもちろん、現在大学生の方々は十年前は小中学生。ドゥルーズの死のニュースなどおそらく記憶にない世代でしょうし、ドゥルーズという哲学者自体を知らなくても不思議ではない。「フランス現代思想」の輝かしい星座もまったく知らないかもしれません。

院生の方々は別として、現在20代の社会人の方々も、ドゥルーズやフランス現代思想を知らないのがごく普通なことかもしれない。私が思想系の本を出版するときに一番読んでもらいたいのはまさに20代の方々なわけですが、そのうちで月曜社の本はごく僅かな人数にしか届いていないのかもしれない。当然そうしたことを考えざるを得ません。

私は別にそうした時代の移り変わりを嘆こうとは思いません。ただ、バックグラウンドの違いを超えて、若い読者の皆さんに何を届けるべきか、何を届けたいのか、いつも悩んでいます。悩んでいるからこそ、色々なアイデアも浮かんでくる。むしろ悩み足りないかもしれないことを、もっと恐れなければならないのかもしれない、と思っています。(H)
[PR]

by urag | 2006-01-21 20:28 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(6)
2006年 01月 20日

没後十年のドゥルーズ論集とアルバム

二日遅れの投稿ですが、1月18日はジル・ドゥルーズ(1925-1995)の誕生日でした。生きていれば81歳ですか。パリに生まれ、パリに死んだドゥルーズ。昨年11月4日は没後十年ということで、河出さんが「道の手帖」シリーズでガイドブックを編まれたりしました

フランスでも11月にいくつか回顧的な書籍が出ましたが、中でも下記写真の2点は印象的でした。
a0018105_2221402.jpg
Deleuze épars: approches et portraits
Hermann Éditeurs des Science et des Arts, ISBN2-7056-6487-4, 35 euros.

本書はAndré BernoldとRichard Pinhasの編纂になるアンソロジーです。Pinhasさんと言えば、約四年前にドゥルーズの幻の著書『マルクスの偉大さ』について取材させていただいたことを思い出します。

本書の目次は以下の通りです。

"Présentation" André Bernold, Richard Pinhas
"Les différences parallèles. Deleuze et Derrida" Jean-Luc Nancy
"Un mysticisme athée" René Schérer
"Deleuze-Sartre: pistes" Jeannette Colombel
"Images-Deleuze" Roger-Pol Droit
"L'invitation" Pascale Criton
"Deleuze dos à dos et de face" Jean Pierre Faye
"Comment peut-on être deleuzien ?" Arnaud Villani
"L'empirisme comme apéritif (une persistance de Deleuze)" Philippe Choulet
"Mauvaises fréquentations" Richard Zrehen
"Le rêve de la Vallée des Reines" Raymond Bellour
"Locus Altus" Jean-Claude Dumoncel
"Deleuze millénaire, ou Au-delà du tombeau" Charles J. Stivale
"Pays de danseurs, et de rythmes boiteux" Jérôme Cler
"Dialogue entre Hylas et Philonous sur Geer van Velde" André Bernold
"Bibliographie raisonnée de Gilles Deleuze, 1953-2003" Timothy S. Murphy
"Théorie des multiplicités chez Bergson" Extraits en fac-similé d'une conférence de Gilles Deleuze

なかなか充実していると思います。随所にドゥルーズの写真(大半はHélène Banbergerか、Marie-Laure de Deckerによる撮影)がちりばめられ、本書の中ほどには、Simon Hantaïのタブローがカラーで掲載されています。目次にある通り、巻末ではドゥルーズの肉筆原稿を見ることができます。とても勢いのある筆遣いです。思考のスピードに追いつこうとして飛ぶように書いている感じ。

なお、本書に掲載されている写真はほぼ、ポンピドゥー・センター出版部より刊行された以下のアルバム本でも見れます。

Deleuze, un album
Éditions du centre Pompidou, ISBN2-84426-294-5, 19.90 euros.

幼少の頃から晩年までをざっと見通すことができ、日本の読者にはほとんどが初見の写真になるかと思います。友人とともにくつろいでいる場面や家族との写真などのごく私的なものが目立つせいか、タイムマシンに乗って、ごく間近で彼の生涯を見つめるかのような感覚になる、とても良いアルバムだと思います。

満員の教室で、大きな身振りで講義している場面なども印象的です。私は本書でクレール・パルネさんのお顔を初めて見ました。1975年の写真。とても綺麗な女性です。折々に映っているドゥルーズ夫人のファニーさんも素敵な方ですね。

本書には以下の二つのテクストも含まれています。

"Seules les images..." Dominique Païni
"Signaux pour Gilles Deleuze" Hubert Damisch

アマゾン・フランスでは両方をセットに見立てて販促していますが、まさに両方購入して損はないのではないかと思います。ぜひ皆様もどうぞ。(H)
[PR]

by urag | 2006-01-20 21:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)