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2005年 07月 07日

ハイデッガー全集第65巻「哲学への寄与論稿」

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私はハイデゲリアンではありませんが、ハイデガーの哲学には常に深い敬意を抱いてきました。ハイデガーの政治的失敗には別の印象を持っていますが、彼が20世紀最高の哲学者の一人であることは、私には疑いえないことなのです。

創文社版「ハイデッガー全集」全102巻(翻訳刊行中)は比較的に高額である上、買切版元の商品であるため、書店店頭に置かれることは稀ですが、非常にもったいないことです。こんなにも豊穣な思索の海へといざなってくれる思想家は、現代ではそう多くいるものではありません。

ハイデッガー全集 第65巻 (第35回配本)
哲学への寄与論稿 (性起から〔性起について〕)
Beitraege zur Philosophie (Vom Ereignis)
大橋良介+秋富克哉+ハルトムート・ブフナー=訳
創文社 A5判上製カバー装604頁 本体8,500円 ISBN4-423-19644-1

先月刊行された上記書、第65巻「哲学への寄与論稿 (性起から〔性起について〕)」は、『存在と時間』と並ぶハイデガーの最重要書であると言われているそうです。たしかに一度読み始めると底なし沼のように引きずり込まれる知的魅惑に溢れています。

版元による本書の紹介文は以下の通りです――「ハイデッガーの思索のいわゆる「転回」(ケーレ)と呼ばれる事態が進行していた1936-38年の時期に、生前の公刊を意図することなく書き記された覚書であり、もう一つの主著と称されているものの、本邦初訳である。ハイデッガーの思索に訪れる閃きの跡をただ黙々と記し続けた、281の断片的考察の集積である。このテキストは、ゆっくり読まれることを要求する。」

創文社版では「存在 Sein」はすべて「有」と訳されています。以下の引用における有は存在と読みかえていただいて差し支えないと思います。同様に、「有るもの Seiende」は「存在者」と。

なお、Daseinは「現存在」と「現有」とに訳し分けられています。「存在 Sein」のより原初的な概念としてのSeynは本書では「有」に傍点を付したものとなっています。以下の引用では、Seynは仮に〈有〉とします。

「しかし何ゆえの決断なのか。それは、〈有〉それ自体の最も深い根拠からなおもわずかに、有るものの救済が生じるからである。それは西洋の法則と委託を正当化しつつ護ることとしての救済である。それはそうでなければならないのか。どの程度までなおもそのような仕方だけでの救済なのか。それは危険が極度に高まっており、そこでは到るところ根を奪われることがあるからであり、もっと宿命的なことであるが、この根を奪われることがすでに自らを覆蔽しようとしているからである ― 没歴史性の開始がすでにそこにある。

決断は静かに下される。〔心を閉ざした〕決心Beschlussとしてではなく、〔胸襟を開いた〕覚悟性Entschlossenheitとしてである。これはすでに真理を基づけ、言い換えると、有るものを創り変え、かくして創造する決断であり、ないしは麻痺させることである。

しかしなぜ、いかにして、この決断の準備なのか。

破壊と根を奪われることに対する闘争は、準備における最初の歩みにすぎない。それは本来的な決断空間への近さへの歩みである。」 ――以上、110頁より。

「最も恐るべき歓喜は、ある神が死ぬことでなければならない。人間だけが死に直面して立つという際立った特徴を「持っている」が、それは、人間が〈有〉の中に内的に緊迫して立っているからである。つまり、死は〈有〉の最高の証書〔である〕。」 ――246頁。

「別の元初では、性起の転回の裂き開く働きを持った〈真中〉、そういう〈真中〉へと跳躍し、そのようにして〈現〉をその基づけに関して知りつつ ― 問いつつ ― 型を整えて準備することが肝心である。

われわれは、有るものを、他の有るものからの説明や導出によっては決して把握することができない。有るものは、ただ〈有〉の真理の内における基づけからのみ知ることができる。

しかし、人間がこの真理の内へと突き進むことはいかに稀であることか。人間はいかに容易に、また迅速に、有るものと折り合い、そのようにして有の自性を剥奪されたままであることか。〈有〉の真理は無くてもすむという見かけは、いかに強要的であることか。」 ――247頁。

「拒絶は贈与の最高の貴位であり、自らを覆蔵することの根本動向である。自らを覆蔵することの開放性は、〈有〉の真理の根源的な本質を形成する。このようにしてのみ、〈有〉は訝しくさせることそれ自体となり、最後の神の傍過の静けさとなる。」 ――440頁。

「しかし最後の神、それは神を貶めることではないだろうか、否、端的な冒涜そのものではないだろうか。しかし、もし最後の神が次のような理由からそのように名付けられなければならないとすれば、どうだろうか。すなわち、最終的に神々についての決定を神々のもとに、かつ神々のあいだにもたらし、そのようにして神の本質の唯一性の本質〔現成〕を最高のものへと高める、という理由からである。」 ――440-441頁。

抜き出せばきりがなく、下線を引くと、ほとんど全文に色が付いてしまうほどです。新聞雑誌の書評委員からはほとんど全くマークされることのない新刊なのでしょうが、とてつもない書物なのです、これは本当に。(H)
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by urag | 2005-07-07 23:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback(1) | Comments(0)
2005年 07月 06日

マラブー新刊2冊、脳とヘーゲル

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明日、七夕の夜7時より、飯田橋の東京日仏学院内エスパス・イマージュにて、カトリーヌ・マラブーさんの来日イベント、ラウンド・テーブル「哲学の使命」(藤本一勇氏との対話)が開催されます。司会は『ヘーゲルの未来』の翻訳者である西山雄二さん。西山さんは小社(月曜社)の『ブランショ政治論集』の共訳者でもあります。入場無料、同時通訳付き。

ラウンド・テーブルの内容は、サイトの紹介によれば、以下の通りです。

何故、どのようにして哲学者になるのか。哲学を教えたり、伝えたり、哲学に生きる力を与えたり、さらには他の哲学者のものを訳したりというようなことをさせるのはどのような動機や欲求なのだろうか。大学、知的伝統も全く異なる経歴を持ち、ジャック・デリダの仕事に深い親しみを共有する二人の思想家がこうした問題に答える。

このサイトに掲載されているマラブーさんのお顔、どこかで見たことがあるような気がしてなりません。……綾小路? ちがうちがうそういうオチを書きたいんじゃないってば。ああ思い出せない。(H)
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by urag | 2005-07-06 23:56 | 本のコンシェルジュ | Trackback(1) | Comments(3)
2005年 07月 04日

竹内書店版『ブランショ著作集』全9巻――計画と推移

故・安原顕氏(1939-2003)が季刊「パイデイア」誌の編集人をつとめていたころの竹内書店で、『ブランショ著作集』全9巻が60年代末に企画されたことがありました。結局は頓挫してしまったのですが、その経過を追ってみましょう。

1968年4月25日、季刊誌「パイデイア」創刊。創刊号の特集名は「構造主義とは何か」でした。発行人は竹内博。印刷は奈良県天理市の(株)天理時報社。発行発売元である(株)竹内書店は当時、書籍出版のほか、洋書輸入販売、和書販売などの事業を展開しており、北青山2丁目に本社を置き、中央区八重洲5丁目の興銀ビル内の「興銀売店」と、大阪東区高麗橋5丁目45の興銀ビル別館内に「大阪営業所」を有していました。

1968年7月15日、第2号発行。特集名は「映像とは何か」。発行人と印刷所は変わらず。

1968年10月25日、第3号発行。特集名は「変革の演劇――オフ・オフ・ブロードウェイ」。発行人と印刷所は変わらず。

1969年2月10日、第4号発行。特集名は「ヌーヴォー・ロマンの可能性」。発行人と印刷所は変わらず。本号より、編集人・安原顕の名前がクレジットされます。装丁や本文レイアウトも一新。表紙・本文レイアウトが「杉浦康平」、目次カットが池田満寿夫によって担当されています。この4号の巻末に挟み込まれている「竹内書店愛読者カード」に、『ブランショ著作集』全9巻の予告が載っているのです。

曰く、「興味をお持ちの書籍に○印をおつけ下さい(当社続刊) ブランショ著作集(全九巻) ゴダール全集(全四巻) デュラス戯曲全集(全二巻) ピンター戯曲全集(全二巻) 現代アメリカ戯曲全集(全二巻) E・カッシラー 象徴形式の哲学(全三巻)」。大々的な予告というよりは、ほんの一行情報です。

1969年5月15日(奥付では30日)、第5号発行。特集名は「瓦解と創造――革命の中のアメリカ」。発行人、印刷所、編集人は変わらず。表紙・本文・目次レイアウトは杉浦康平、目次カットは野中ユリ、本文カットは辻修平。ここでも「愛読者カード」に、ブランショ著作集(全九巻)とあります。

1969年8月30日、第6号発行。特集名は「シュルレアリスムと革命」。発行人、印刷所、編集人は変わらず。表紙・本文・目次レイアウトは杉浦康平。目次カットは加納光於。本文カットは辻修平。この号では、ブランショのエッセイ「好きなだけ書きつづけたまえ」が菅野昭正訳で掲載され、巻末の「編集後記」にて唐突に以下のような告知が掲載されます。

「小社ではかねてより「ブランショ著作集」を企画進行してまいりましたが、周知のようにブランショの著作の大部分はすでに版権切れのため、単行本のかたちで各社が出版することも可能であり、小社の予告以後にも主要作品のいくつかが他社より刊行されることになりました。もちろんこの場合、訳者を変えて数種の訳書を出すことも可能ですが、小社では、このような状況下にあって敢えて「著作集」を刊行することは、読者にとっても、また出版界にとっても、必ずしも意義のあることではないと考えます。今までこの企画を熱烈に支持してくださった読者の皆様はもちろん、われわれスタッフにとっても残念でなりませんが、このような事情で今回この企画は断念せざるをえなくなりました。深くお詫びいたします。」

当時すでに刊行されていたブランショの著書には次のようなものがありました。

1958年9月「焔の文学」重信常喜訳、紀伊國屋書店
1962年10月「文学空間」粟津則雄+出口裕弘訳、現代思潮社
1964年8月「ラスコオの野獣 〔「世界詩論大系(1)現代フランス詩論大系」所収〕」篠沢秀夫訳、思潮社
1966年1月「待つこと忘れること」平井照敏訳、思潮社
1966年12月「謎の男トマ 〔「現代フランス文学13人集(4)」所収〕」菅野昭正訳、新潮社
1967年8月「アミナダブ 〔「世界文学全集(26)グラック/ブランショ」所収〕」清水徹訳、集英社
1968年7月「カフカ論」粟津則雄訳、筑摩書房
1968年9月「来るべき書物」粟津則雄訳、現代思潮社

そしてこのあとに1969年2月発行の「パイデイア」第4号で「ブランショ著作集」全9巻の予告が出ます。企画を断念することを発表したのが、同1969年8月発行の第6号。全9巻の内訳がどのようなものだったのかはわかりません。「パイデイア」には詳細は出ていませんし、予告された当時に刊行された竹内書店の単行本『新しい小説・新しい詩』フーコーほか著の裏広告にも出てきません。当時、竹内書店が投げ込み広告を作成していたかどうかは調べ切れませんでした。ちなみにそのあと数年間で刊行されたブランショ本は以下の通りです。

1969年10月「虚構の言語」重信常喜+橋口守人訳、紀伊國屋書店
1970年4月「ロートレアモンとサド」小浜俊郎訳、国文社
1970年12月「至高者」天沢退二郎訳、筑摩書房
1971年2月「最後の人/期待 忘却」豊崎光一訳、白水社
1971年4月「死の宣告 〔併録「牧歌」「窮極の言葉」〕」三輪秀彦訳、河出書房新社
1973年6月「至高者」篠沢秀夫訳、現代思潮社

そんなわけで、全9巻の内訳は色々な推測が成り立ちます。おそらくは1968年までに刊行されたブランショの著書をほぼ網羅的に翻訳出版しようとしたのでしょうが、本当のところは関係者しか知らないことなのでしょう。

さて、ご承知のように、「パイデイア」誌では第7号でブランショを特集します。まず第6号の「編集後記」には次のように書かれていました。

「次号は「ブランショ特集」の予定です。「ブランショ著作集」をご期待下さった方々が、また別の意味で楽しんで下されば幸いです。」

第7号は季刊の予定からいえば、1969年秋号となるはずでしたが、実際に刊行されたのは、1970年春号としてでした。編集人は安原顕氏ではなく、鈴木道子氏に替わっています。

1970年3月15日、第7号発行。特集名は「モーリス・ブランショ」。国内雑誌ではじめてのブランショ特集で、ブランショ自身から寄稿があった画期的な特集でした。同時にこの号からジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」の翻訳連載が開始されます。発行人、印刷所、表紙・本文・目次レイアウト、本文カットは変わらず。目次カットは高松次郎。

注目の「編集後記」ですが、以下のようになっています。

「第七号「モーリス・ブランショ特集」をようやくお送りできることになりました。種々の原因により発行が非常に遅れましたことをお詫びいたします。したがって一九六九年秋号・冬号は抜けることになりましたが、悪しからずご了承下さい。(中略)前号にも書きましたように、小社の企画しておりました「ブランショ著作集」は残念ながら断念せざるを得なくなりました。今号の特集は、そのような事情のもとに初めて個人特集号を行なったわけです。」

さらに末尾には、安原氏の退社のことが書いてあります。

「なお、『パイデイア』創刊以来編集人をつとめてきた安原が退社のため、今号より編集責任者が変わりましたが、一同今後とも『パイデイア』の充実をはかってゆきたいと考えております〔……〕。」

このあと、第8号(1970年8月5日発行)が「特集=ジョルジュ・バタイユ」編集人鈴木道子、第9号(1970年12月30日発行で「秋+冬」号となっている)が「特集=ヌーヴェル・クリティック」編集人鈴木道子、第10号(1971年6月15日発行だが「春」号となっている)が「特集=シンボル・錬金術」編集人鈴木道子、第11号(1972年2月1日発行)が「特集=〈思想史〉を超えて――ミシェル・フーコー」編集人中野幹隆、と続きます。

第11号の「編集後記」によれば、「次号から装いも新たに(年五回発行)文学と思想にあいわたる空間に、いっそう巨きな軌跡を刻みたい」とあります。個人的な感想ですが、おそらく「パイデイア」誌のピークは、造本的にも内容的にも、フーコーの特別寄稿を掲載したこの第11号にあったように思います。その後、1973年1月の第16号をもって終刊となりました。

なお、第7号のブランショ特集と第8号のバタイユ特集は、それらの一部ずつがのちに再編集されて、『バタイユ・ブランショ研究』として書籍化され、1972年10月20日に竹内書店から発行されました。

今回のご報告はとりあえずこの辺で。(H)
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by urag | 2005-07-04 22:00 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2005年 07月 03日

今週の注目新刊(第11回:05年7月3日)

今週はなんだか岩波さんの本を複数取り上げています。私事ですが十数年前、大学生の時に岩波の入社試験に応募したことがあります。岩波が公募を再開した最初の年だったような記憶があります。見事に筆記で落ちました。

***

基盤としての情動――フラクタル感情論理の構想
ルック・チオンピ(1929-)著 山岸洋+野間俊一+菅原圭悟+松本雅彦訳
学樹書院 本体5000円 4-906502-29-6
●『感情論理』(原82年、訳94年、学樹書院)に続く、日本語訳第二弾がついに出ました。帯文には「『感情論理』の発表から20余年を経て、大胆な構想のもとに結実した精神の科学の新たなパラダイム」とあります。精神医学、心理学、哲学、教育学、システム理論、オートポイエーシスといった諸領域を横断するチオンピの最新成果です。ちなみに『感情論理』は品切重版未定だそうで。

現出の本質(上・下)
ミシェル・アンリ(1922-2002)著 北村晋+阿部文彦訳
法政大学出版局 本体各6600円 4-588-00813-7 4-588-00814-5
●版元の紹介文を抜粋します。「現代フランスの現象学を代表するミシェル・アンリの主著、待望の完訳。ハイデガーによる形而上学批判の影響のもとに新たな現象学的存在論を展開し、古代ギリシアからハイデガーに至る西洋哲学を「存在論的一元論」として批判的に捉え直すとともに、アンリ独自の「内在」概念の内に根源的な現出の本質を見出し、その具体的な啓示を「情感性」として規定する試み。「遅れて正当な評価」を得たレヴィナス思想と同様に、「いぜんとして知られざる傑作」(ティエット)、「長きにわたって孤立無援」(ジャニコー)の書として評されてきた、現象学の現出論的展開の古典的名著」。ティエットというのは誰でしょうね。ひょっとしてグザヴィエ・ティリエットのことかな。

フィヒテ全集(15)現代の根本特徴/幸いなる生への導き
フィヒテ著 柴田隆行+量義治訳
晢書房 本体8000円 4-915922-44-8
●以下は既刊情報です。

1995年01月「第6巻:自然法論:知識学の原理による自然法の基礎/カントの『永遠平和のために』論評」藤沢賢一郎ほか訳(ISBN:4-915922-35-9)
1995年01月「第19巻:ベルリン大学哲学講義(1):知識学概要/意識の事実/知識学」藤沢賢一郎訳(ISBN:4-915922-48-0)
1997年02月「第4巻:初期知識学」隈元忠敬ほか訳(ISBN:4-915922-33-2)
1997年09月「第2巻:初期政治論」井戸慶治+田村一郎訳(ISBN:4-915922-31-6)
1998年10月「第22巻:教育論・大学論・学者論」 隈元忠敬ほか訳(ISBN:4-915922-51-0)
1999年10月「第7巻:イェーナ時代後期の知識学」鈴木琢真+千田義光+藤沢賢一郎訳(ISBN:4-915922-36-7)
2000年09月「第9巻:道徳論の体系」忽那敬三+高田純+藤沢賢一郎訳(ISBN:4-915922-38-3)
2001年07月「第20巻:ベルリン大学哲学講義(2)」隈元忠敬訳(ISBN:4-915922-49-9)
2002年06月「第23巻:ベルリン大学哲学講義(3):知識学1811年/知識学1813年春の講義/知識学1814年/関連書簡・日記」隈元忠敬訳(ISBN:4-915922-52-9)
2004年12月「第13巻:一八〇四年の「知識学」」山口祐弘訳(ISBN:4-915922-42-1)

マルクス・コレクション(1)デモクリトスの自然哲学とエピクロスの自然哲学の差異/ヘーゲル法哲学批判序説/ユダヤ人問題によせて/経済学・哲学草稿
カール・マルクス著 中山 元+三島 憲一+徳永 恂+村岡 晋一訳
筑摩書房 本体3000円 4-480-40111-3
●全7巻。既刊情報は以下の通りです。

2005年01月「第4巻:資本論第1巻(上)」今村仁司+三島憲一+鈴木直訳(ISBN:4480401148)
2005年01月「第5巻:資本論第1巻(下)」今村仁司+三島憲一+鈴木直訳(ISBN:4480401156)
2005年03月「第3巻:ルイ・ボナパルトのブリュメ-ル一八日/経済学批判要綱「序説」「資本制生産に先行する諸形態」/経済学批判「序言」/資本論第一巻初版第一章」横張誠+木前利秋+今村仁司訳(ISBN:448040113X)

西田幾多郎――永遠に読み返される哲学
河出書房新社 本体1500円 4-309-74002-2
●没後60年ということで西田幾多郎(1870-1945)がますます見直されつつあるようです。小泉義之と檜垣立哉の対談「西田から「哲学」を再開するために」のほか、「はじめての読者のための西田哲学入門」と銘打ち、上田閑照、小林敏明、藤沢周、合田正人、などの論考およびエッセイ、田中小実昌の小説「なやまない」を収録。西田自身の論考「知と愛」「場所」「私と汝」などを抄録アンソロジーで併録しています。

ちょうど岩波書店でも、「新版 西田幾多郎全集」の第17巻「日記 I」が発売され、さらに、「岩波全書セレクション」という復刊シリーズで、『哲学の根本問題――行為の世界』4-00-021861-1、『哲学の根本問題続編――弁証法的世界』4-00-021862-Xなどが刊行されはじめています。

ギーター・サール――バガヴァッドギーターの神髄/インド思想入門
A.ヴィディヤーランカール著 長谷川澄夫訳
東方出版 本体2000円 4-88591-947-9
●帯には「サンスクリットの原典で読む神の歌150篇」とあり、ガンジーの言葉「ギーターによって常に私は平安を得た」という言葉を紹介しています。原典併記らしいです。

対訳 地球憲法第九条
チャールズ・M・オーバビー著 国弘正雄訳
たちばな出版 本体2000円 4-8133-1885-1
●「日本国憲法第9条」の英訳版です。「世界平和のための名誉ある73語」と銘打たれています。97年刊の増補版。


守中高明著
岩波書店 本体1300円 4-00-027010-9
●第II期「思考のフロンティア」全13巻からの1冊。法の起源、法と暴力、法と倫理などの問題系をめぐり、ベンヤミン、デリダ、アガンベンなどの思考を通して、法を生きるわれわれの正義のありかを考える論考とのことです。

メディア危機
金子勝(1952-)+アンドリュー・デウィット著
日本放送出版協会 本体920円 4-14-091031-3
●版元の紹介文によれば「歪んだ戦争報道、根拠薄弱な経済回復論、全てを善悪に還元するお粗末な二分法…迷走する日米の報道を徹底批判。不正確な情報を見抜くためのリテラシー獲得法や、この不透明な時代において客観的かつ批判的な思考をいかに養うかという普遍的な問題にまで論及する」とのこと。NHK問題には触れてるのかな?

ルネサンスの工学者たち――レオナルド・ダ・ヴィンチの方法試論
ベルトラン・ジル(1920-80)著 山田慶児訳
以文社 本体4700円 4-7531-0241-6
●版元の紹介文によれば、「ギリシア・ビサンツ・ローマ・アラブを経てイタリア・ルネサンスに至る技術の壮大な歴史を、写本と残されたデッサンから克明に跡付けた貴重な研究」。

思想としての日本近代建築
八束はじめ(1948-)著
岩波書店 本体4000円 4-00-023407-2
●建築と国家の「近代」をめぐって、政治学、歴史学、文学等の文献を渉猟しつつ検証。基本書ということで。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-07-03 00:03 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 06月 26日

今週の注目新刊(第10回:05年6月26日)

さて今週からTRCの「週刊新刊情報」は書籍の選択のみに利用することにしました。詳しい書誌情報は、版元各社のウェブサイトや各種オンライン書店をご参照くださいませ。

***

ニュー・インペリアリズム
デヴィッド・ハーヴェイ(1935-)著 本橋哲也訳
青木書店 本体2800円 4-250-20517-7
●ハーヴェイはどんどん訳されて欲しいですね、「希望の空間」2000年とか「資本の空間」2001年とか。おそらくどこかの版元さんがすでにお進めになっているのでしょうけれども。

グローバリゼーションの倫理学
ピーター・シンガー著 山内友三郎+樫則章監訳
昭和堂 本体2300円 4-8122-0521-2
●One World(2002年刊)の翻訳。原題をそのまま活かしたほうがよかった気もしますが。「グローバリゼーションの倫理学」というのは原著では副題です。

魂の民主主義――北米先住民・アメリカ建国・日本国憲法
星川淳(1952-)著
築地書館 本体1500円 4-8067-1309-0

一市民の反抗――良心の声に従う自由と権利
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1817-1862)著 山口晃訳
文遊社 本体1500円 4-89257-045-1
●版元情報によれば、英語原文も併録とのこと。文遊社さんでは8月上旬にボリス・ヴィアンの『サン=ジェルマン=デ=プレ入門』(浜本正文訳、4-89257-046-X)も刊行予定だそうです。初版はリブロポート(廃業)から95年に刊行されていましたが、現在まではどちらかといえば値段の下がりにくい部類の古書でした。

ニュー・アメリカニズム――米文学思想史の物語学〔増補新版〕
巽孝之(1955-)著
青土社 本体2600円 4-7917-6196-0
●版元の紹介文によれば、「フーコー、デリダ、ド=マンの理論を再検討し、新歴史主義(ニュー・ヒストリシズム)以後の視野から、従来の文学史、文化史を覆した名著。「9・11以後」を踏まえた新論文を増補」。

わたしたちの脳をどうするか――ニューロサイエンスとグローバル資本主義
カトリーヌ・マラブー(1959-)著 桑田光平+増田文一朗訳
春秋社 本体2100円 4-393-32223-1
●まもなく来日(2005年7月)。未来社からは『ヘーゲルの未来』が翻訳出版されます。

世界業界地図――グローバルな産業の動きがわかる〔2005年版〕
富士グローバルネットワーク監修
新紀元社 本体1300円 4-7753-0392-9
●版元の宣伝文によれば、「全世界の産業の動きを図版、チャートによって、容易に把握が可能。世界における日本企業の実力も比較できる、ビジネスマン必携の1冊です。金融、IT・情報通信、機会、素材、エネルギー、メディア、流通等、世界の産業、約40分野が図解で体系的に理解できます!」とのこと。これは便利そうですね。ビジネス書に置かれるんでしょうが、むしろ人文書でネグリ+ハート『〈帝国〉』以文社、クライン『ブランドなんか、いらない』はまの出版などの反グロ本の隣に置かれて欲しい本ですね。

哲学者エディプス――ヨーロッパ的思考の根源
ジャン=ジョセフ・クロード・グー(1943-)著 内藤雅文訳
法政大学出版局 本体3300円 4-588-00820-X
●98年、新曜社刊『言語の金使い―文学と経済学におけるリアリズムの解体』土田知則訳、以来の翻訳になりますでしょうか。新曜社の本では著者名表記は「ジャン=ジョゼフ・グー」。フランス語のつづりでは、Jean‐Joseph Goux です。もっと翻訳されていてもふしぎではない研究者なのですが、なかなか出ません。

サルトルの世紀
ベルナール=アンリ・レヴィ(1948-)著 石崎晴己監訳 沢田直+三宅京子+黒川学訳
藤原書店 本体5500円 4-89434-458-0
●2005年はサルトル生誕百周年ということでフランス本国では盛り上がっているそうです。

世紀の恋人――ボーヴォワールとサルトル
クローディーヌ・セール=モンテーユ(1949-)著 門田真知子+南知子訳
藤原書店 本体2400円 4-89434-459-9

ピレボス
プラトン著 山田道夫訳
京都大学学術出版会 本体3200円 4-87698-160-4
●現在、岩波書店版「プラトン全集」が再刊配本中ですが、京大の「古典叢書」の新訳ももちろんマストバイです。

善の研究――実在と自己
西田幾多郎+香山リカ著
哲学書房 本体2400円 4-88679-211-1
●初版単行本は「能動知性 intellectus actu」叢書第5巻として2000年刊。今回「哲学選書 collection nous」第2巻へスイッチ。ちなみに「哲学選書」第1巻はパノフスキーの「〈象徴形式〉としての遠近法」2003年刊(初版単行本は1993年刊)。

医学と哲学の対話――生-病-死をめぐる21世紀へのコンテクスト
ディートリヒ・フォン・エンゲルハルト+ハインリッヒ・シッパーゲス著 藤森英之訳
創造出版 本体2500円 4-88158-298-4
●フォン・エンゲルハルトさんの著書ではほかに、『啓蒙主義から実証主義に至るまでの自然科学の歴史意識』(岩波哲男ほか訳、理想社、2003年、ISBN:4650105315) が訳されています。シッパーゲスさんには『中世の患者』 (山岸洋訳、人文書院、1993年、ISBN:4409510312)、『中世の医学――治療と養生の文化史』(大橋博司+浜中淑彦訳、人文書院、1998年)という名著もあります。『ビンゲンのヒルデガルト――中世女性神秘家の生涯と思想』(熊田陽一郎+戸口日出夫訳、教文館、2002年、ISBN:4764234025)では「シッペルゲス」と表記されています。 どれもこれも購入しておいて損はない研究書です。

「聖ヒエロニムス」図像研究――一聖者表現のさまざまなかたちと意味
久保尋二著
すぐ書房 本体3500円 4-88068-302-7
●99年に平凡社から刊行された『宮廷人レオナルド・ダ・ヴィンチ』以来の単行本でしょうか。この本も基本書と呼べる成果に違いありません。

噫無情――レ・ミゼラブル 前篇
ヴィクトル・ユゴー原作 黒岩涙香訳
はる書房 本体2500円 4-89984-060-8
●歴史的名作翻訳を旧漢字、総ルビで順次発掘刊行するという「世界名作名訳シリーズ」のスタート。まずは黒岩涙香訳『噫無情(ああむじょう)』前編と後編を刊行。このあとは、上田萬年訳『新譯伊蘇普(新訳イソップ)物語』(上下巻)、黒岩涙香訳『岩窟王(がんくつおう)』(前編・中編・後編)と続く予定とのこと。

河童伝承大事典
和田寛(1935-)編
岩田書院 本体9500円 4-87294-385-6
書肆アクセスに掲載されていた紹介文によれば、「全国北海道から沖縄までの河童伝承を網羅した、763頁、データは5400余りにものぼる壮大なスケール(本のボリュームも合わせて!)の大事典」とのこと。

不知火・人魂・狐火
神田左京著
中公文庫BIBLIO 本体1048円 4-12-204545-2
●初版単行本は筑摩書房から92年に発行。

奇怪動物百科
ジョン・アシュトン著 高橋宣勝訳 早川書房
ハヤカワ文庫 本体740円 4-15-050299-4
●初版単行本は博品社(廃業)から92年に発行。

生物から見た世界
ユクスキュル著 クリサート図 日高敏隆+羽田節子訳
岩波文庫 本体660円 4-00-339431-3
●ロングセラーだった思索社版1973年刊の改訂文庫化ではありますが、「意味の理論」やアドルフ・ポルトマン「新しい生物学の開拓者」、トゥーレ・フォン・ユクルキュル「環境世界の研究」は収録していません。つまり、思索社版第一部の「動物と人間の環境世界への散歩」の改訂のみです。文庫化するにあたって、Umwelt は「環境世界」から「環世界」へと改訳されています。『生命の劇場』(博品社)もどこかが文庫化しないのかなあ。愛読書なので、ウチ(月曜社)で復刊したいくらいです。いい本なんだけどなあ。

はじまりのレーニン
中沢新一著
岩波現代文庫 本体1100円 4-00-600148-7
●初版単行本は岩波書店で94年、増補されて同社の「同時代ライブラリー」から98年、そして05年に文庫化という流れ。

***

以上です。目を瞠ったのが『河童伝承大事典』。本当にすごいですね。(H)
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by urag | 2005-06-26 23:41 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 06月 19日

今週の注目新刊(第9回:05年6月19日)

a0018105_5445086.jpg他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

***

★今週の注目文庫

幸福について――人生論
ショーペンハウアー著 橋本文夫訳
新潮文庫(新潮社) 本体514円 タテ16cm 365p
4-10-203301-7 / 2005.06.
●かつてこんなにも清々しいカバーが、ショーペンハウアーの文庫本にあったでしょうか(冒頭の書影をご参照)? ありえません、以前はあんなにも地味だったのに。これでは中学生まで買いそうな気がします(褒めているんです)。でもショーペンハウアーって毒舌だし、ちょいと危険なところもあるのに。ま、いいのかな、若人がたまに「毒書」するのも。さて本書はご存知の通り、ショーペンハウアーの『パレルガ・ウント・パラリポメナ(余禄と補遺)』第一巻に収録された「処世術のための箴言集」を訳したものです。同名の文庫がかつて角川文庫でもありましたが、角川文庫版の『幸福について』は石井正+石井立訳。これまで岩波文庫やその他で出ていた『知性について』『自殺について』『読書について』『女について』『自然について』『藝術について』『みずから考えること』といった本はすべて『パレルガ』から抽出したもの。『幸福について』はそうした中でも一番厚い本です。ちなみに『パレルガ』の全容を知るためには、白水社版の全集を買わねばなりません。

★今週の注目単行本

エステティカ――イタリアの美学クローチェ&パレイゾン
クローチェ+パレイゾン著 山田忠彰編訳 山田忠彰+訳
ナカニシヤ出版 本体2400円 タテ20cm 224p
4-88848-922-X / 2005.05.
■イタリアの美学・哲学界を代表する思想家の美学論考の対比。20世紀イタリア美学の展開を鮮やかに描写し、美学的・芸術的思索の核心に触れる。クローチェの「美学入門」と論文、パレイゾンの2つの論文を合わせて編訳。
●これは大注目というか、思わず拍手ですね。ルイジ・パレイゾン(1918-1991)の日本語訳で読めるのは、晃洋書房の「現代哲学の根本問題」シリーズの第4巻『藝術哲学の根本問題』(1978年)に収録された一論文「美の観想と形式の算出」くらいでしょうか。これは1955年の『国際哲学雑誌』第31号にフランス語で発表された"Contemplation du beau et production de formes"の、佐々木健一氏による日本語訳です。パレイゾンはイタリア美学界の大御所で、弟子筋には、かのウンベルト・エーコやジャンニ・ヴァッティモらがいます。佐々木さんの紹介によれば、パレイゾンの主著の一つ『美学――形成の理論』(1954年刊、未訳)に対して、ヴァッティモは「イタリア美学のクローチェ以後の時代とも呼びうるものを拓き、この時代の欧米の美学思想の中で最も生き生きとした流れとの対話へと、我々の文化を導いていった」と大きく評価しているそうです。

イタリアの美学思想の現在と言えば、エーコやアガンベンが日本では有名なわけですが、その前にパレイゾンがいて、さらにその前にベネデット・クローチェ(1866-1952)がいることを忘れるわけにはいきません。いきませんが、パレイゾンは翻訳がほとんど皆無だったし、クローチェの大著『美学』も翻訳本はもう半世紀以上前の話で古書店か大きな図書館でしか手に取れません(1921年に鵜沼直訳で中央出版社から『美の哲学』、1930年に長谷川誠也+大槻憲二 訳で春秋社の「世界大思想全集」第1期第46巻として刊行、後者はゆまに書房が1998年に「世界言語学名著選集」の第1巻として復刊していますが、一般読者向けと言うよりは、図書館や研究室向けです。本体15,000円、ISBN4-89714-407-8)。
ちなみにクローチェの『美学』はいずれ新訳(しかも完訳)が出ると耳にしたことがあります。

日本とちがってイタリアの場合、美学というのは伝統ある一大分野であると言えるのではないかと思います。ある意味、個別の哲学科目よりもずっと包摂的で、大きく諸学を横断する根本的で革新的な分野として、存在し続けているように見えます。先のエーコやアガンベンだけでなく、哲学者のヴァッティモやカッチャーリ、建築学者のタフーリ(1935-1994)もやはり横断的な美学的教養を当たり前のように持っています。イタリアでは美学が「生きている」のだと思います。

さて、長いコメントになってしまいましたが、最後に肝心の本書『エステティカ』の収録論文について。版元のナカニシヤ出版による紹介ページで公開されている本書の目次は以下の通りです。

I ベネデット・クローチェ

美学入門
第一章 「芸術とは何か」
第二章 芸術に関する偏見
第三章 精神と人間社会における芸術の位置
第四章 芸術批評と芸術史

創造としての芸術と形成としての創造

II ルイージ・パレイゾン

クローチェ美学における解釈の概念
一 クローチェ美学の際だった点
二 翻訳としての演劇的上演
三 追想としての音楽的演奏
四 「演奏」を芸術全体へと広げる必然性
五 ドラマ上演の必然性の基礎としてのその完全性
六 演劇的上演における忠実さと自由さ
七 音楽的演奏の多様性と相違
八 作品の唯一性と演奏の多様性
九 演奏される作品への必然的関連というクローチェの概念
十 作品の無限な解釈可能性というクローチェの新しい概念

人格の哲学
一 人格の理論としての哲学
二 哲学の歴史性と人格性
三 解釈の認識論
四 形成性の理論

訳者解説
あとがき
事項索引
人名索引

G8――G8ってナンですか?
ノーム・チョムスキー+スーザン・ジョージほか著 氷上春奈訳
ブーマー発行 トランスワールドジャパン発売 本体1400円 タテ19cm 238p
4-925112-48-1 / 2005.07.
■G8が世界を支配していいのだろうか? ノーム・チョムスキー、スーザン・ジョージといった時代をリードする作家や学者たちが、G8のネオリベラリズムを指摘し、世界が抱える様々な問題に対するG8の姿勢を議論する。
●人文社会系の本を愛読している読者にはあまりなじみのない発行・発売元かもしれませんが、トランスワールドジャパンと言えば、雑誌版元として名が通っています。スノボやスケボ関係のものや、ストリートカルチャー雑誌「WARP」など、色々と刊行しています。最近では読み聞かせ用の絵本の分野にも進出。ユニークですよね。

チョムスキーの名前はさいきんこうした人文社会系とはいままであまり関係がなかった版元から刊行された本で見かけるようになってきました。たとえばFOILが刊行した『「映画 日本国憲法」読本』とか。FOILはリトルモアの創業社長さんが「独立」して始められた出版社です。この読本では、ジョン・ダワー、ノーム・チョムスキー、ベアテ・シロタ・ゴードン、チャルマーズ・ジョンソン、日高六郎、ハン・ホングのインタビューが読めます。リトルモアでは3年前にドキュメンタリー映画「チョムスキー 9.11」と連動した書籍『ノーム・チョムスキー』ISBN4-89815-081-0が発売されていますから、FOILでチョムスキー関連書が出るのはふしぎではないのですが。

国家とはなにか
萱野稔人(1970-)著
以文社 本体2600円 タテ20cm 283p
4-7531-0242-4 / 2005.06.
■国家が存在し、活動する固有の原理とは何か。「国家は暴力に関わる一つの運動である」。この明解な視点から現代思想の蓄積をフルに動員し、国家概念に果敢に挑む。次世代を担う国家論の展開。著者は1970年生まれ。パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科21世紀COE「共生のための国際哲学交流センター」研究拠点形成特任研究員等。
●担当編集者は、「批評空間」誌第三期の編集部から、同誌の廃刊後に青土社「現代思想」誌に移られて2004年8月号「いまなぜ国家か」などを担当し、その後、以文社に移籍されたMさん。Mさんのキャリアで初めての担当単行本になるわけだろうと推察します。同じく本書『国家とはなにか』が処女単行本となる萱野さんは、上記の「いまなぜ国家か」特集号のメインである柄谷行人さんのインタビュー「資本・国家・宗教・ネーション」の聞き手を務められており、冒頭の写真に写っている、坊主頭に細い眼鏡、胸元のボタンを大胆にはだけた白いシャツ姿がまず私の目に焼きついたのでした。

今回の本は「現代思想」誌に発表された論文を全面的に大幅加筆して成ったもので、ほぼ書き下ろしといってもいいようです。書名はイカメシイですが、けっこう読みやすく、面倒な議論に聞こえがちな「国家論」の位相を何とか読者に伝えようという苦心のあとが伺えます。たとえば酒井隆史さんや渋谷望さん、道場親信さんらの著書を読んできた方なら、本書はまず購入されていることでしょう。ネグリ+ハートの『〈帝国〉』(以文社)を購入された方にもお奨めです。

萱野さんを「現代思想」誌編集長の池上善彦さんに紹介したのは酒井さんだそうで、萱野さんは「あとがき」で酒井さんの『自由論』(青土社)や『暴力の哲学』(河出書房新社)と本書『国家とはなにか』は「おおくの点で議論を共有して」いるので、併読を、と記しています。帯文に「次世代を担う国家論の展開」とありますが、まさにその第一歩が記されたのでしょう。萱野さんの今後、そして担当編集者のMさんの今後の活躍に注目です。

自然との和解への道(上)
クラウス・マイヤー=アービッヒ(1930-)著 山内広隆訳
みすず書房 本体2800円 タテ20cm 285,13p
4-622-08163-6 / 2005.06.
■環境先進国ドイツの環境哲学とは何か。人間がその駆動力である「自然的共世界」の実現へ向けて、自然科学・哲学・政治を根本から見直す記念碑的労作。実践的(=政治的)自然哲学を提唱する。著者は1936年ハンブルグ生まれ。哲学博士。現在、エッセン大学名誉教授。著書に「未来のための学問-生態学的かつ社会的責任における全体論的思惟」などがある。
●みすず書房のシリーズ「エコロジーの思想」第二弾。第一弾は昨秋刊行された『環境の思想家たち(上)古代‐近代編』ジョイ・A・パルマー編、須藤自由児訳、ISBN4-622-08161-X。一見地味なシリーズですが、中味はなかなかのもの。今後も注目したいですね。出版社による第二弾の本の紹介文は以下の通り。

「この著作の根本思想は、ひとつの命題、《人間の外にある自然は、われわれの自然的共世界(Mitwelt)である》に要約できる」(「日本語版への序文」より) 。環境先進国ドイツにおける、本格的な環境哲学を紹介するはじめての本である。著者マイヤー=アービッヒは、エッセン大学で教鞭を執ってきた哲学者であるのみならず、マックス・プランク研究所で量子力学を研究した物理学者でもあり、ドイツ連邦議会のエネルギー政策審議会の一員として、またハンブルク市の大臣として、環境政策の政治決定にもたずさわってきた。本書においてはじめて、「実践的(=政治的)自然哲学」が提唱される。適切な自然理解と環境政策を統合する人間の行為を問うのが、実践的自然哲学である。そのためにアービッヒはまず、従来の受け身的な環境政策を批判し、自然を自然自身のために配慮する新たな環境保護立法を提案する。そして、真理への問いに開かれたプラトン以来の討議的政治と、理性的行為のうちに自然の意図をみるカントの倫理を継承し、自然の秩序に適った産業経済を可能にする科学技術を模索する。 人間もまた自然的共世界の一部である自然中心主義的世界像へ向けて、自然科学・哲学・政治を根本から問いなおす記念碑的労作の完訳、上巻。シリーズ《エコロジーの思想》第二弾。

ル・コルビュジエのインド
彰国社編 北田英治写真
彰国社 本体2381円 タテ24cm 160p
4-395-24102-6 / 2005.06.
■ル・コルビュジエはインドを23回訪れた。撮り下ろし写真と現地座談会を核に、彼の残した庁舎、議事堂、住宅などの建築を紹介する、ル・コルビュジエ再発見の旅の記録。

悟りへの階梯――チベット仏教の原典『菩提道次第論』
ツォンカパ著 ツルティム・ケサン訳 藤仲孝司訳
UNIO発行 星雲社発売 本体2800円 タテ21cm 415p
4-7952-8890-9 / 2005.06.
■チベット最高の仏教者ツォンカパによる、ブッダの心髄を伝えるインド大乗仏教の集大成。チベット仏教最大の原典であり、ダライラマ法王の講話の典拠ともなった大乗の理論と実践の精髄を全訳。

猫神様の散歩道
八岩まどか(1955-)著
青弓社 本体1600円 タテ19cm 204p
4-7872-3244-4 / 2005.06.
■お産や商売繁盛の猫神信仰、身の毛がよだつ化け猫伝説、招き猫に眠り猫…。全国60カ所の神社仏閣や祠を訪ね歩き、猫の神秘の力とそれに魅入られた人々の心性を余すところなく描く。著者は『旅の手帖』などで温泉ライターとして活躍。著書に「温泉と日本人」「混浴宣言」などがある。

乗馬の歴史――起源と馬術論の変遷
エティエンヌ・ソレル著 吉川晶造+鎌田博夫訳
恒星社厚生閣 本体4300円 タテ22cm 474p
4-7699-1020-7 / 2005.06.
■人類がはじめて馬に跨った日から今日までの馬との関係史。化石、絵画、彫刻、年代、地域、種族や部族間の争い、馬術やその達人、流派、獣医学、国家、軍隊、馬術学校、スポーツなど、さまざまな視点を通して論述する。
●こういう基本図書は重要。大著ですが、ぜひ購読したいです。

花田清輝集
花田清輝(1909-1974)著
影書房 本体2200円 タテ20cm 240p
4-87714-331-9 / 2005.06.
■小説・戯曲・記録文学・評論等、幅広いジャンルで仕事をした戦後文学者13名のエッセイを選んで刊行するシリーズ「戦後文学エッセイ選」の第1巻。「花田清輝全集」を底本として、敗戦前に執筆したものまで、全25篇を収録。
●同シリーズの第8巻『木下順二集』4-87714-332-7が同時発売されています。シリーズの全容は版元である影書房のこちらのページをご覧ください。いちおう全巻構成だけ転記しておきますと、以下の通りになります。

1:花田清輝集(既刊)
2:長谷川四郎集
3:埴谷雄高集
4:竹内好集
5:武田泰淳集
6:杉浦明平集
7:富士正晴集
8:木下順二集(既刊)
9:野間宏集
10:島尾敏雄集
11:堀田善衞集
12:上野英信集
13:井上光晴集

昭和初年の『ユリシーズ』
川口喬一(1932-)著
みすず書房 本体3600円 タテ20cm 292p
4-622-07146-0 / 2005.06.
■「ユリシーズ」本邦初の翻訳、出版は一つの事件であった。伊藤整vs小林秀雄、第一書房と岩波文庫の合戦、猥褻と検閲等、文壇の域を超えた本を巡る熾烈なドラマ、文化的・社会的事件を詳細に描く。
●川口喬一先生には『「ユリシーズ」演義』 (1994年、研究社出版)という大著がすでにおありですが今回の本は、また格別に面白そうですね。読んでない内から断言してしまいますが、面白くないわけがありません。各紙の書評にもきっと取り上げられることでしょう。

タンタンとエルジェの秘密
セルジュ・ティスロン(1948-)著 青山勝+中村史子訳
人文書院 本体2800円 タテ22cm 199p
4-409-18001-0 / 2005.06.
■わたしたちの時代の夢想と熱望が凝縮された現代の神話「タンタンの冒険旅行」。謎につつまれた作品の魅力とエルジェの創作力学を、ホームズのように鮮やかに解き明かす。著者は精神科医、精神分析家。さまざまな機関で臨床に携わりつつ、パリ第7大学等で教鞭も取る。著書に「明るい部屋の謎」「恥」など。
●ティスロンと言えば、2001年に二冊の翻訳が続けて刊行され注目を浴びました。『恥―社会関係の精神分析』大谷尚文+津島孝仁訳、法政大学出版局、2001年3月、ISBN: 4588007165。そして、『明るい部屋の謎―写真と無意識』青山勝訳、人文書院、2001年8月、ISBN: 4409030647です。後者はいわずもがなのロラン・バルトの写真論『明るい部屋』(みすず書房)を論じた秀逸な本ですが、今回の新刊はなんとコミック論ですよ。ティスロンの本をまとめて置いている本屋さんは早々ないですね。これで三冊目なのですから、そろそろまとめてもいいはず。心理学書や芸術書の棚よりは、バルトのそばでディディ=ユベルマンとかと一緒にしておくのがいいような気がします。バルトのそばにはジュネットやクリステヴァやルジュンヌらの本があり、トドロフやバフチン、そしてロシアフォルマリズム系の本があるだろうと思いますが、そろそろ再整理する必要があるでしょうね。

まめおやじ――原始式教育入門
友沢ミミヨ著
パロル舎 本体1200円 18×19cm 70p
4-89419-036-2 / 2005.06.
■むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おばあさんがまめをあけると、なかからかわいいまめのようなあかちゃんが産まれました-。抱腹絶倒、うごめくまめ宇宙! 『TV Bros』連載。
●子持ちにとってはもう「あるある」的共感の連続。というか大車輪。笑いをこらえながら読んでいましたが、私の場合、「あにょにょ」の回で思い切り吹き出さずにはいられませんでした。巻末のインタビューも話題の飛び具合が子供らしくていい。友沢さんの育児愛と観察眼に脱帽。

***

以上、今週は全部で1247点の新刊の中から、単行本12点、文庫1点を選びました。(H)
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by urag | 2005-06-19 23:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback(1) | Comments(0)
2005年 06月 13日

ダニエル・ヘラー-ローゼン著『エコラリアス――言語の忘却について』

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アガンベンの英訳者として知られている俊英ダニエル・ヘラー-ローゼンDaniel Heller-Roazenの第2作『エコラリアス――言語の忘却について(Echolalias: On Forgetting of Language)』がゾーン・ブックスの1冊として今春刊行されました。第1作『運命の女神の様々な顔――『薔薇物語』と偶然性の詩学』は2003年にジョンズ・ホプキンス大学出版から出版されています。

エコラリアスとは何でしょうか。ラテン語でechoは山彦、laliaはお喋りのことですが、心理学で言う「エコラリア」は、反響的言語模倣、つまり他人の言葉の無意識的な反復を意味します。簡単に言うと「オウム返し」のこと。ヘラー-ローゼンの関心は、前作もそうでしたが、言語や言語活動に向けられています。

個々人の次元であれ、共同体の次元であれ、そこには言語活動の持続と消滅がある。人間は言語を持つ動物であるわけですが、言語は失われることもある、という点に著者は注目しています。

それぞれ短い21の章からなる『エコラリアス』では、習得することも出来れば喪失することもある言語と言語活動の諸相――発話、書記、記憶、忘却――について、古今東西の様々なテクストを召喚しつつ論じています。一つの言葉の衰退は新しい言葉の台頭と背中合わせであり、言語の変遷は文学や哲学や芸術の創造の源泉でもあると言うのです。

ユダヤ思想、アラビア文学、中世の神学と文学、構造主義言語学やフロイトの失語論、現代文学まで、幅広い文献の渉猟にうならされますが、なぜか、アガンベンの著書が参考文献には載っていません。しかし、彼の哲学がアガンベンの影響下にあることは事実でしょう。『エコラリアス』における断章形式的な体裁は、アガンベンの好むそれを思い出させます。

それにしてもなぜカバーが「牛」なのか? ヒントは本書第13章「書く牛」にあります。オヴィディウスの『変身物語』における逸話――美女イオをさらったゼウスが細君のヘラに見つかりそうになって、イオを牝牛に変えてしまう、というあの神話が取り上げられます。

ちなみに前作『運命の女神の様々な顔』については、アガンベンは次のように絶賛しています。「ダニエル・ヘラー-ローゼンの見事な著書は、理論的な慧眼と批評的な感受性の理想型であり、哲学と文献学的言語学が、古典作品の全く新しい読解のためにいかに協働できるのかを鮮やかに証明している」と。

ヘラー-ローゼンは現在、プリンストン大学で比較文学を講じています。英米語はもちろんのこと、フランス語、イタリア語、ドイツ語、古フランス語、古プロヴァンス語、ラテン語、古典ギリシア語、聖書ヘブライ語、アラビア語に堪能だとか。すごいですね。学内の彼の紹介ページはこちらです。(H)
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by urag | 2005-06-13 23:13 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 06月 12日

今週の注目新刊(第8回:05年6月12日)

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

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アースダイバー
中沢新一(1950-)著
講談社 本体1800円 タテ21cm 252p
4-06-212851-9 / 2005.05.
■縄文地図を片手に、東京の風景が一変する散歩の革命へ! 見たこともない野生の東京が立ち上がる。ママチャリに乗った「アースダイバー式」東京散歩へ。折込アースダイビング・マップ付き。『週刊現代』連載をまとめる。
●「ダイヴ」する、という実践用語は、中沢さんにとって昔からのキーワード。標的(ターゲット)との距離感が中沢さんの場合はきわめて「官能的」。それが読み手に対し、蠱惑的に作用するのではないかと思います。

カール・シュミットと現代
臼井隆一郎編
沖積舎 本体6800円 タテ20cm 438p
4-8060-3045-7 / 2005.06.
■極めて多面的な相貌を有する現代屈指の思想家カール・シュミットについて論じた、2003年に東京大学総合文化研究科で開催されたDESK(東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究室)主催の国際シンポジウムの成果をまとめる。 DESKの刊行案内によれば、本書の目次は以下の通り。

Ⅰ 秩序
「決定と至高性」アレクサンダー・ガルシア・デュットマン 小森謙一郎訳
「レヴィヤタン解剖—イメージ・表象・身体」田中純
「カール・シュミットと終末論」長尾龍一

Ⅱ 政治
「国際関係論の理論家としてのカール・シュミット」ハラルド・クラインシュミット 川喜田敦子訳
「構成的権力論と反ユダヤ主義—力と法をめぐるシュミットとスピノザの邂逅」柴田寿子
「シュミットの正戦論批判再考」古賀敬太

Ⅲ 例外
「内戦:政治的絶対—シュミットとホッブズ」山田広昭
「法の外」ギル・アニジャール 藤岡俊博訳
「シュミットとアーレントのあいだ—もしくは敵なき例外状況」増田一夫

Ⅳ 神話
「ノモスとネメシス—シュミットとバッハオーフェン 文献学的関心から」臼井隆一郎
「名-乗る—カール・シュミットにおける名の理論に向けて」トーマス・シェスタク 磯忍訳
「救済を詩的言語に求めて—カール・シュミットと文学」ガブリエレ・シュトウンプ 臼井隆一郎訳

特別寄稿
「シュ・ダオリンによるシュミットの批判的受容」松平徳仁
「ラクー=ラバルト/カール・シュミットあるいは反復されるドイツ」大宮勘一郎

●ついに刊行ですね。先ごろ当ブログへのお問い合わせのあったデュットマン氏の講演論文も収録。

ポンペ化学書――日本最初の化学講義録
ポンペ(1829-1908)述 芝哲夫訳
化学同人 本体5000円 タテ22cm 202,26p
4-7598-0997-X / 2005.06.
■オランダ人軍医ポンペは、日本の化学の黎明期に絶大なる影響を与えたといわれている。2000年に発見された、ポンペによる日本最初の化学の講義録「朋百舎密書」を翻訳。日本の化学史上きわめて貴重な資料。欧文タイトル:Pompe scheikunde. 著者のポンペは南オランダ(現ベルギー)生まれの軍医で、幕末の日本に高い水準の西洋医学をもたらした。
●当時のオランダは日本に色々な学術文化を与えてくれました。「蘭学事始」だけではないわけです。2000年になってから講義録が発見されたというのがすごい。

地球の歴史を読みとく――ライエル「地質学原理」抄訳
ライエル著 大久保雅弘訳著
古今書院 本体4700円 タテ23cm 256p
4-7722-5100-6 / 2005.06.
■地質学の古典であるライエル著「地質学原理」を抄訳。3巻にわかれた合計1200ページの大著を約4分の1に縮約し、コメントを付して紹介する。巻末に原著の目次を収録。版元さんの紹介ページによれば、目次は以下の通り。

序 章: 三枚の巻頭図は語る -斉一主義の着想と証拠
第1章: 地球には長い歴史があった -地質時代を発見するまで
第2章: 時代とともに気候は変わる -いまよりも暖かかったころ
第3章: 地表の姿を変える水の流れ -河川の侵食と堆積作用
第4章: 陸地をけずる海水のはたらき -海の侵食と堆積作用
第5章: 大地を動かした根源は火成作用である -地球発展の原動力
第6章: 地震の痕跡あれこれ -知られていた液状化現象
第7章: 変異する生きものたち -生物界におこった変化
第8章: 生物の拡散と死後の埋没 -地理上の広がりと環境の変化
第9章: 珊瑚礁の土台は海底火山か -画期的な成因論の草分け
第10章: 第三紀をたずねる旅 -標準層序の確立
第11章: 年代区分の尺度は貝化石である -標準化石は経験の産物
第12章: 後期鮮新世の代表はエトナ火山だ -火山の構造
第13章: 前期鮮新世の地層と火山岩 -鮮新世を二分する
第14章: ヨーロッパの中新世の地層 -拡大した海域を追って
第15章: 始新世は盆地形成からはじまる -パリー盆地の層序
第16章: 第二紀およびそれ以前の地層 -未調査地域が多すぎる
第17章: 第一紀の内成岩とその役割 -深成作用と地殻変動
付 録: 原著の目次

●ダーウィン進化論に大きな影響を与えたという、イギリスのチャールズ・ライエル卿(1797-1875)による『地質学原理Principles of Geology』全3巻(1830-1832)の抄訳。ライエル卿自身は、進化論を認めなかったらしい。

司書――宝番か餌番か
ゴットフリート・ロスト(1931-)著 石丸昭二訳
白水社 本体2800円 タテ20cm 230,15p
4-560-00791-8 / 2005.06.
■書物の収集はいかに権勢や富と深く関わっていたか――純然たる図書館史に終らず、著者の豊富な逸話と図版、機知と諧謔を交えて「一筋縄でいかぬ職業」司書の過去と現在を語る。1994年刊の新装復刊。著者は1931年ライプツィヒ生まれ。19歳で旧東独国立図書館の臨時職員となり、後に学術司書の資格、哲学博士の学位を取得。東西ドイツ統合に伴い「ドイツ図書館」の館長となる。
●図書館と国家政策、典籍蒐集と「スノビズム資本主義」。書棚の闇は深いのですね。


★注目の新書・文庫

方法叙説
ルネ・デカルト(1596-1650)著 三宅徳嘉+小池健男訳 養老孟司解説
白水社(白水Uブックス1082) 本体680円 タテ18cm 148p
4-560-72082-7 / 2005.06.
■すべての先入観を排し既成の知識を徹底して疑ったとき、「そう考えている私は何かでなければならない」という確固たる原理の発見。全近代思想の原点となった名著。1991年刊「方法叙説/省察」から「方法叙説」を抜き出す。
●養老さん解説というのがミソ。養老さんとデカルトの「相性」は抜群でしょう。これまでたびたび言及されています。簡潔でわかりやすく、スピード感もあって知的に高密度な養老さんの文体が多くの読者を惹きつけているのは、納得できることです。

人間不平等起原論 社会契約論
ルソー著 小林善彦+井上幸治訳
中央公論新社(中公クラシックスW43) 本体1600円 タテ18cm 428p
4-12-160079-7 / 2005.06.
■ルソーには近代の全てがあるといわれる。大革命の先駆をなした詩人思想家の2つの代表的民主主義理論。
●中公クラシックスは大好きです。でもクラシックスで改訂するからといって、「世界の名著」や「日本の名著」のバックス版は切らさないでほしかった。これ切実な願い。

象は世界最大の昆虫である――ガレッティ先生失言録
ガレッティ(1750-1828)述 池内紀編訳
白水社(白水Uブックス1079) 本体900円 タテ18cm 218p
4-560-07379-1 / 2005.06.
■「水は沸騰すると気体になる。凍ると立体になる」「カエサルはいまわのきわの直後に死んだ」 18世紀末から19世紀初頭のドイツの高校で教壇に立っていた名物教授が残した、想像を絶する「名」失言の数々。1992年刊の再刊。著者のガレッティはドイツ・アルテンブルク生まれ。ゲッティンゲン大学で法律・地理・歴史を学ぶ。ゴータ・ギムナージウム教授。引退後は著作執筆に励んだ。
●同じ訳者による『リヒテンベルク先生の控え帖』(平凡社ライブラリー)と一緒に愉しんでみましょう。一方は天才の警句、他方は凡才の駄弁?

命に値段がつく日――所得格差医療
色平哲郎(1960-)+山岡淳一郎著
中央公論新社(中公新書ラクレ181) 本体760円 タテ18cm 216p 
4-12-150181-0 / 2005.06.
■患者の満足を忘れていないか? 「医療の市場化」が日本に導入されようとしている。過疎の村で奮闘する異色の医師が、それがもたらす「所得格差医療」に警鐘を鳴らすとともに、公平な医療とは何かを鋭く問いかける。著者の色平哲郎氏は1960年神奈川県生まれ。長野県南佐久郡南相木村診療所長、内科医。
●「医療機構そのものが健康に対する主要な脅威になりつつある」とイリイチは『脱病院化社会』(1976年、日本語訳は1979年、晶文社)に書いて、医療万能幻想を糾し、一方でアリエスは『死を前にした人間』(1977年、日本語訳は1990年、みすず書房)において「もはや社会全体の中に死の場所は一カ所しかない。病院がそれである」と書いて、死を我が物にできなくなってきている現代人の倒錯を指摘しました。そして今や私たちは……。

声と現象
ジャック・デリダ著 林好雄訳
筑摩書房(ちくま学芸文庫) 本体1300円 タテ15cm 334p
4-480-08922-5 / 2005.06.
●本書については先般も取り上げました。原著1998年第2版の翻訳です。

不屈のために――階層・監視社会をめぐるキーワード
斎藤貴男著
筑摩書房(ちくま文庫) 本体740円 タテ15cm 302p
4-480-42093-2 / 2005.06.
■「日本人を騙す39の言葉」(青春出版社、2003年刊)の改題。
●岩波新書の「安心のファシズム」刊行以来、ますます読者層が拡大されてきた観のある斉藤さんの旧著の文庫化です。

絵本徒然草(上・下)
吉田兼好=原著 橋本治(1948-)=文 田中靖夫=絵
河出書房新社(河出文庫) 本体各720円 タテ15cm 上:271p 下:285p
上:4-309-40747-1 下:4-309-40748-X / 2005.06. 
■「桃尻語訳枕草子」で古典の現代語訳の全く新しい地平を切り拓いた著者が、中世古典の定番「徒然草」に挑む。名づけて「退屈ノート」。訳文に加えて傑作な註を付し、鬼才田中靖夫の絵を添えた新古典絵巻。
●日本の学校教育ではだいたい中学生の時分から「徒然草」を学ぶわけですが、そもそも「徒然草」の魅力は少なくとも35歳を過ぎたオジサンやオバサンになってからじゃないとわからないと思いますよ、私の実感としては。同じく河出文庫の佐藤春夫による現代語訳「徒然草」もとてもいい本です。

***
以上、今回は1122点の新刊のなかから、単行本5冊、新書・文庫7冊を選びました。(H)
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by urag | 2005-06-12 23:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 06月 09日

デリダ『声と現象』新訳がついに出ました

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クリックすると大きな画像をご覧になれます。

ジャック・デリダ(1930-2004)の初期代表作『声と現象』の新訳がついに、ちくま学芸文庫の一冊として刊行されました。駿河台大学教授の林好雄さんによる翻訳です。理想社から1970年に刊行された高橋允昭訳が原著初版本(1967年)に準拠しているのに対し、新訳ではデリダ自身によって訂正された第二版(1998年)を底本としています。

理想社版には、付論として、ジュリア・クリステヴァ(1941-)の5つの質問に対するデリダの回答論文「記号学と書記学」が併録されています。クリステヴァは、1967年にデリダが立て続けに上梓した『エクリチュールと差異』(法政大学出版局)、『グラマトロジーについて』(現代思潮新社)、『声と現象』の三冊が、記号学に対して「深刻な」重要性を有しており、学問全般に関する新しい考察空間を開きつつある、と高く評価したのでした。

この、クリステヴァとデリダの誌上対談は、のちに『ポジシオン』(高橋允昭訳、青土社)に収められます。もっとも、理想社版『声と現象』に併録された日本語訳は、「社会科学情報」誌の1968年第3号に掲載された初出論文をもとにしていますので、クリステヴァによる貴重な「前口上」が付されているのですが、『ポジシオン』ではこの「前口上」はカットされています。

なお、クリステヴァが『セメイオチケ』(せりか書房)で華々しくデビューするのは、この誌上対談の翌年である、1969年です。彼女はまだ20代でした。クリステヴァの妹である音楽記号学者のイヴァンカ・ストイアノヴァ(1945-)がデビュー作『身振り・テクスト・音楽』(部分訳あり)を刊行するのは、それよりもっとあとで、1978年。

懐に余裕のある方は、ぜひ、PUFから刊行されている『声と現象』の原書も購入してみてください。ちなみに、上の写真に映っているのは訂正される前の1993年版です。(H)
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by urag | 2005-06-09 23:44 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 06月 05日

今週の注目新刊(第7回:05年6月5日)

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

今週、もっとも食指が動いたのは、ラカンと孫歌さんの新刊です。それ以外にも、中味に目を通しておきたい新刊を同時に掲げます。

***

無意識の形成物(上)
ジャック・ラカン(1901-1981)著 ジャック=アラン・ミレール編 佐々木孝次+原和之+川崎惣一訳
岩波書店 本体5000円 タテ22cm 366p
4-00-023410-2 / 2005.05.
■「精神分析を言語という礎の上に改めて据える」という目標に向け、フロイトの著作を読み直したラカンが、独自の概念装置の上にその成果を結晶させたセミネール第5巻。上巻は「機知のフロイト的諸構造」「去勢の論理」を収録。
●セミネールが着実に翻訳刊行されているのは喜ぶべきことですが、『エクリ』の新訳の噂や、拾遺論文集『他のエクリ』(2001年、スイユ社)の翻訳はどの版元でどうなっているのでしょうか。気になります。

迫り来る革命――レーニンを繰り返す
スラヴォイ・ジジェク(1949-)著 長原豊訳
岩波書店 本体3200円 タテ20cm 326p
4-00-023652-0 / 2005.05.
■現代社会の状況を批判的に捉え、資本主義の新展開にいまだ対峙しうるレーニンの可能性を能動的に説く。稀代の論客による痛烈な現代社会批判。
●飽きたわけではないのですが、ジジェクの訳書をもはや急いで買い求めようとしていない自分がいます。

レーニンの言語
ヴィクトル・シクロフスキイ+ボリス・エイヘンバウム+レフ・ヤクビンスキイ+ユーリイ・トゥイニャーノフ+ボリス・カザンスキイ+ボリス・トマシェフスキイ著 桑野隆訳
水声社 本体2500円 タテ22cm 233p
4-89176-555-0 / 2005.06.
■三一書房1975年刊の改訳。叢書「記号学的実践」第22巻。
●水声社さんは私にとってひとつのモデル版元さんです。長く読み継がれるだろう良書をたくさん出しておられますし、実験的な新刊もあります。わが社もこちらのようにコンテンツの厚みを増していけたらなあと思います。

竹内好という問い
孫歌(1955-)著
岩波書店 本体3600円 タテ20cm 321p
4-00-023764-0 / 2005.05.
■10年におよぶ竹内好との思想的格闘の記録。魯迅を最も深いところでつかんだ竹内の思想実践を、いま新たにアジアの思想遺産として学び直し、その作業を通じて普遍的な思考営為への展望を切り開く。著者は1955年中国生まれ。中国社会科学院文学研究所研究員。著書に「アジアを語ることのジレンマ」ほか。
●竹内好の再評価というのはここしばらく続いていますが、昨今の中日関係の困難な局面を考えるとき、孫歌さんの研究はかならず参照しておきたい成果です。一度お目にかかったことがありますが、素朴でお話しやすいお人柄でした。なお、3年前に刊行された女史の著書の書誌情報は以下の通りです。

アジアを語ることのジレンマ――知の共同空間を求めて
孫歌著
岩波書店 本体2600円 タテ20cm 256p
4-00-022008-X / 2002.06.
■日中からアジアへ、政治化された言説空間の束縛をどうとらえたらよいか。日中間の歴史問題の磁場にたち、知識人同士の知的対話の試行錯誤を通して、アジアという共通の思考空間が開けていく、葛藤と省察の記録。

自由は進化する
ダニエル・C・デネット(1942-)著 山形浩生訳
NTT出版 本体2800円 タテ20cm 478p
4-7571-6012-7 / 2005.06.
■「自由意志」って何だろう? この哲学上の難問を唯物論・進化論的に説明し、人間を魂の呪縛から解放する本。自由意志の進化を原子レベルから説き起こし、同時に自由意志と関連した責任の問題についても一定の解答を提示する。著者は現在、タフツ大学教授、同認知科学研究センター所長。
●山形さんの訳ということで、こなれた文章が期待できます。大著ですね。

自然界と人間の運命
K.ローレンツ(1903-1989)著 谷口茂訳
新思索社 本体4800円 タテ22cm 514p
4-7835-0232-3 / 2005.06.
■進化現象の記述と解釈、および現在と未来の人間の生存の諸問題を取り扱った論文を集めてまとめた、ローレンツ行動学の集大成。進化論と行動学の総合を行い、人間理解へのアプローチを確立したローレンツの論考二編を収める。(1)進化論と行動をめぐって、(2)生存の諸問題をめぐって。思索社1990年刊新装版に続く再装版。 著者は73年ノーベル賞医学生理学賞受賞。
●古典ということで。恥ずかしながら「再装版」という言葉ははじめて目にしました。これはTRC側がデータ登録した業界的なテクニカル・タームなんでしょうね。

エミリー・デュ・シャトレとマリー・ラヴワジエ――18世紀フランスのジェンダーと科学
川島慶子(1959-)著
東京大学出版会 本体2800円 タテ20cm 249,18p
4-13-060303-5 / 2005.05.
■18世紀フランスの前半と後半を生きた二人の女性を、ジェンダーと科学という視点から再評価する。科学者共同体(科学愛好者のネットワーク)と女性との関係に注目して論じる。著者は名古屋工業大学工学部助教授。研究テーマは科学史、女性史。
●イヴリン・フォックス・ケラー女史の著書を読んできた読者ならば、この新刊にもピンと来るはず。ジェンダーと科学、というテーマは、大型書店ならばきちんと棚をつくっておいて欲しいところです。

一七世紀科学革命
ジョン・ヘンリー著 東慎一郎訳
岩波書店 本体2500円 タテ20cm 169,66p
4-00-027095-8 / 2005.05.
■自然認識の構造変動を「革命」と捉える意味を考察し、近代科学形成の社会的・文化的・知的要因を概観する。
●シリーズ「ヨーロッパ史入門」全10冊のうちの6冊目ですね。6月末には『ロシア革命1900-1927』ロバート・サーヴィス著、中嶋毅訳が刊行される予定。

石の思い出
A.E.フェルスマン(1883-1945)著 堀秀道訳
草思社 本体1700円 タテ20cm 205p
4-7942-1414-6 / 2005.06.
■ロシアの高名な鉱物学者フェルスマンの名著『石の思い出』は少年時代からの鉱物にまつわる思い出を詩的な文章でつづった鉱物エッセイである。コラ半島のユージアル石からオルスクの碧玉まで、19の珍しい話を集めている。ロシアの自然を描いた珠玉のエッセイとして、また鉱物入門書としても楽しめる本書を、新訳で贈る。
●理論社1956年刊「石の思いで」の新訳とのことですが、なぜいま刊行なのか、未調査です。草思社さんは販売の仕掛けがうまい出版社さんですから、何か理由があるはずだと考えてしまうのですが。

海の生物資源――生命は海でどう変動しているか
渡辺良朗編
東海大学出版会 本体3600円 タテ22cm 436p
4-486-01688-2 / 2005.05.
■東京大学海洋研究所のシリーズ「海洋生命系のダイナミクス」第4巻。海洋生命系の変動は人類に何をもたらすか? 自然変動する海洋生物資源の生態を理解し、資源再生産の場である海洋環境保全、それぞれの種の生態にあった資源の利用方法を考える、現代海洋生命科学の集大成。
●海洋資源全般がいま熱い視線を集めています。生物然り、ガス然り。このアンソロジーでは前者を学べます。読まねばなりますまい。

エネルギー・環境キーワード辞典
日本エネルギー学会編
コロナ社 本体8000円 タテ19cm 480,31p
4-339-06608-7 / 2005.06.
■エネルギーと環境に関するキーワードを約2700語に厳選、50音順に解説するとともに、18のカテゴリーに分類。小分類ごとに集められた用語から関連する掲載用語を検索することができ、それぞれの分類の相互関係が分かる。分野別用語一覧付。
●天然資源、エネルギー、環境をめぐる諸問題は、繰り替えすまでもなく現代人にとって大きな課題です。辞典をざっとサーフィンしていくだけでも何かを得られるのではないかと思います。

アラム語-日本語単語集(シリア語付き)
飯島紀編著
国際語学社 本体2500円 タテ19cm 166,22p
4-87731-256-0 / 2005.05.
■イエス・キリストの日常使用言語であり、アッシリア帝国、ペルシャ帝国時代にペルシャ、アッカド、カナーン、エジプトまで使用されていた国際公共語であるアラム語の単語集。カタカナ読みと日本語訳に加え、シリア語も併記。単語で辿る古代の歴史ロマン第1巻。編著者はオリエント学会会員。著書に「ハンムラビ法典直訳」「日本語-セム語族比較辞典」などがある。
●古典語の学習は重要です。キリスト教にとってアラム語の重要性は言うまでもありません。そういえば、映画「パッション」も全編アラム語なのでしたっけね。

本づくりの厨房から
秋田公士(1945-)著
出版メディアパル 本体1500円 タテ19cm 148,2p
4-902251-86-8 / 2005.06.
■出版社に勤務する著者が、本づくりの周辺や思いを綴る。ポイント、白いページ、DTP、帯のいのち、活版時代の文字コード、デジタル世界の職人などをテーマに取り上げる。2003年に私家版として刊行されたものの再刊。著者は1945年神奈川県生まれ。法政大学文学部卒業。法政大学出版局勤務。
●叢書ウニベルシタスをよく手にとっておられる読者なら、秋田さんのお名前はしばしば目にしていることと思います。人文系書籍編集者を目指す若い方にお奨めします。

モダン古書案内――昭和カルチャーの万華鏡「古くて新しい」本のたのしみ
マーブルトロン発行 中央公論新社発売
本体1400円 タテ19cm 123p
4-12-390096-8 / 2005.05.
■昭和モダンに触れられる古書の世界を紹介。作家からニューウェーブ古書店主まで、頑固に、そして愛情たっぷりに推薦する。2002年刊の改訂版。便利な東京・京都古書街マップと最新オンライン古書店ガイド付き。
●初版本を知らなかったのはお恥ずかしい話で。昨今は若い人が古書店を開業する例が増えてきましたよね。共感できる店作りに出会う機会が増えました。とても嬉しいことです。

***
以上、今回は1360点の新刊のなかから、単行本14冊を選びました。(H)
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by urag | 2005-06-05 00:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)