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カテゴリ:本のコンシェルジュ( 868 )


2005年 08月 21日

必読新書!ルクール『科学哲学』文庫クセジュ

フランス現代思想に興味を持っている編集者や読者、また、大書店の哲学思想書の担当者にとって必読書となる新刊が文庫クセジュの一冊として刊行されました。文庫といってもクセジュの場合、新書ですけれども。

科学哲学
ドミニック・ルクール(1944-)著 沢崎壮宏(1971-)+竹中利彦(1971-)+三宅岳史(1972-)訳
文庫クセジュ(白水社) 2005年8月刊 本体951円 新書判164+19頁 ISBN4-560-50891-7

■カバーの紹介文より:ウィーン学団やバシュラールを経てクワインやハッキングへと至る科学哲学は、サイエンスの目的と方法をめぐる探求である。本書は、学説史を詳しく解説しながら、ヨーロッパや英米の伝統が合流する将来を展望してゆく。フランス科学哲学界を代表するルクールによる、わかりやすい入門書。

■原書:"La philosophie des sciences" par Dominique Lecourt, PUF, 2001.

■ルクールの既訳書:『ポパーとウィトゲンシュタイン――ウィーン学団・論理実証主義再考』野崎次郎訳 国文社 1992年7月刊 A5判上製390頁カバー装 ISBN4-7720-0358-4
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●ルクールの著書の日本語訳はこれでようやく二冊目です。バシュラールの『科学認識論』(白水社)の編者でもあります。その活躍は国際的に知られているはずですが、不当に訳書の少ない学者の一人だと言えます。カンギレムとアルチュセールの弟子筋にあたります。

●本書『科学哲学』が必読書であるのは、フランス現代思想においては「科学哲学」の知的貢献が根本的な次元に及んでいるからです。フランスのみならず、独墺の論理実証主義や英米の分析哲学などにおいても、「科学哲学」的アプローチは根本的なものでした。科学の科学であり哲学の哲学であって両者を統合的に基礎付けようとする「科学哲学」はいわば、学問そのものの根源的な方法論と基礎付けについて反省を促すのですね。

●20世紀後半の「フランス現代思想」を代表する人物として日本で知られているのは、ごく大雑把に言って、ドゥルーズ、フーコー、デリダの三名ですが、彼らを学問的に陶冶したものに二つの潮流がありました。「哲学史」と、「科学哲学」(より狭義では「科学認識論(エピステモロジー)」)です。三人の教養と方法論は、この二つの連綿たる潮流からくみ上げられ、あるいは鍛え上げられたものだと言って差し支えないと思います。

●哲学史家系列には、ゲルー、グイエ、ラクロワ、コジェーヴ、アルキエ、イポリット、ロディス=レヴィス、シャトレ、フィロネンコらがおり、科学哲学系列には、バシュラール、カヴァイエス、カンギレム、グランジェ、ダゴニェ、シモンドン、アトラン、プティトーらがいます。どちらにも股をかけた人物に、コイレやドゥサンティ、モラン、ヴィユマン(あるいはヴュイユマン)、セール、スタンジェールといった人々を数え上げてもいいかもしれません。もとより十分な言及ではありませんが、話の本筋ではないですから切り上げます。

●ドゥルーズやフーコー、デリダが言及・参照したり、献辞や感謝の念を捧げたりしている相手が誰かを見ていけば、哲学史家と科学哲学者が織り成す星座が見えてくると思います。

●科学哲学、わけても科学認識論(エピステモロジー)は、人文科学を革新しようとする人々によって大いに活用されました。たとえばアルチュセールは次のように告白しています。「知の諸作品を読むにあたって、かつてのバシュラールやカヴァイエス、今日のカンギレムやフーコーのような巨匠たちにわれわれを結びつけている、明白なあるいはひそやかな負債(・・・)」(『資本論を読む』バリバールとの共著、権寧+神戸仁彦訳、合同出版、1974年、17頁)。

●『科学哲学』の著者ルクールは、1965年から1970年にかけてエコール・ノルマル・シュペリウールでアルチュセールに師事していました。ルクールの著書には、バシュラール論やカンギレムやフーコーを扱ったものがある一方で、レーニン、ルイセンコ、ボグダーノフらについての研究書もあります。ルクールの存在は、科学哲学の本流であるバシュラールと、哲学史研究の異端的革新者であるアルチュセールという、この二人の学問的恩恵のハイブリッドであるわけです。

●フーコーについて一言述べなければなりません。フーコーはいわゆるエピステモロジストでもなければ、哲学史家でもありませんでした。彼にはカンギレムやイポリットらとの親密な交友がありましたが、フーコーの探究は非常に独創的だったので、エピステモロジーの枠組みにも哲学史の枠組みにも収まりきらなかったのです。〈逸脱しつつ賦活する〉力が彼にはありました。

●大書店の哲学思想棚において、フランス・エピステモロジーや科学哲学がどのような知の網目の内に位置づけられるか、悩んできた書店員さんも多いかもしれません。金森修さんの『フランス科学認識論の系譜――カンギレム、ダコニェ、フーコー』(勁草書房、1994年)や、同氏による『サイエンス・ウォーズ』 (東京大学出版会、2000年)、『ワードマップ現代科学論――科学をとらえ直そう』(新曜社、2000年)などを読むとその面白さが分かってくると思うのですが、もっと手軽な本を本屋さんの現場担当者レベルでは必要としていたのではないでしょうか。

●さらに、金森さんの一連の啓蒙活動が、村上陽一郎さんの『科学の現在を問う』(講談社現代新書、2000年)や佐々木力さんの『科学論入門』(岩波新書、1996年)、戸田山和久さんの『科学哲学の冒険――サイエンスの目的と方法をさぐる』(NHKブックス、2005年) などの啓蒙書とどう接続され、あるいは境界づけられていくのか、ということも気になるはずですし、また、養老孟司さんの「本籍」だった科学哲学コーナーがひょっとしたらもっと面白いものなのではないかと見直し始めた書店員さんもいらっしゃることでしょう。

●そうした本たちのつながりを認識して書棚を再構成するためには、やはりそれぞれの啓蒙書にざっとでも目を通しておくのが肝要なのですが、そうそう時間がないというのが本当のところだと思います。ルクールの『科学哲学』は、これ一冊をきっちり読めば、ひょっとしたら大きな見取り図を与えてくれるかもしれません。

●『科学哲学』をそれでもきっちり読まない人のための、ズルい活用法を書いておきます。まずは、目次を眺めてください。キーワードやキーパーソンがちりばめられています。脳裏に焼き付けておきたいところです。次に巻末へ飛んで、訳者あとがきを読みます。本書のおおよその位置づけがわかるはずです。あとがきのうしろには「原著者による読書案内」と、章ごとの「参考文献」があります。これを見て、どの本を在庫していて、どの本が品切か、どの本を一度も見たことがないかをチェックしてください。その際、気になるキーワードや章はチラチラと本文を覗き見します。最後に、人名索引を眺めて、ルクールが誰に頻繁に言及しているか、そして誰に言及していないかを確認します。

●たとえばそこにはドゥルーズもデリダもいません。ルクールが科学哲学を語る際に、彼らは必要がなかったのです。しかしドゥルーズの『差異と反復』やガタリとの共著である『アンチ・オイディプス』『千のプラトー』『哲学とは何か』(いずれも河出書房新社)には科学哲学の彼らなりの導入があり、デリダの『「フッサール幾何学の起源」への序文』(青土社)や、未訳のアトラン論や『マルクスの亡霊たち』をひもとくとき、そこにはデリダの射程内での科学哲学への示唆や、アルチュセールとの対話が含まれているのだと思います。いずれにしろ、ルクールとの「流儀」が異なるのです。

●文庫クセジュはたいてい新書売場にあるので、人文書売場の担当者がチェックしていないケースがあると思うのですが、クセジュをはじめ、新書は人文書にとって宝の山です。編集者にせよ読者にせよ、書店員にせよ、この宝の山を活用しない手はありません。山の中には当然、粒の小さいものや壊れているものも含まれていますが、積極的に発掘するべきです。

●文庫クセジュの現在入手可能な書目の中で、どれを買っておくべきか、どれを発掘するべきかという話もしたいのですが、長くなるのでまた次回にします。

●最後に、上記の写真で、『科学哲学』の隣に移っているクセジュは、ジル=ガストン・グランジェ(1920-)の『理性』山村直資訳、1956年11月刊です。フランス・エピステモロジーの重鎮の著書がこの時期に翻訳されていたというのは、クセジュならではのことです。残念ながらとうの昔に絶版。私の場合、現物を古書市場で発見するまで10年以上かかりました。古書というのは、刊行50年以内であれば、長くても数年以内、さらに遅くても5年探せば出てくるものなのですが、こうした新書は「読み捨て」られるものなのか、なかなかの稀覯書です。だからと言って、高騰はしてもらいたくない本です。

●『理性』はたしかに一部の訳語や表現が妥当的ではなくなった箇所もありますが、読書を疎外するほどのものではまったくなく、白水社さんにはぜひクセジュの絶版書の中から復刊書目を選抜して欲しいなと思います。『科学哲学』の編集を担当されたのは白水社の若き大黒柱である和久田賴男さんですから、目利きの仕事をするのは訳もないことです。

●グランジェの日本語訳書第二弾は『理性』から40年後の1996年、ようやく『哲学的認識のために』(植木哲也訳、法政大学出版局)が刊行されます。さらにそこから10年が経とうとしていますが、次の日本語訳があるのかどうか、気配すら見えません。もったいないことです。

●なお、最後に、『科学哲学』を補完するかたちでひもといておいたほうがいいように思う本に、ドゥルーズの弟子であるエリック・アリエズ(1957-)の唯一の日本語訳著書である『ブックマップ・現代フランス哲学』(毬藻充訳、松籟社、1999年)があることを申し添えます。参考文献はこのほかにも色々ありますが、情報量という点では、やはり本書ははずせません。

***

TRCの「週刊新刊案内」の更新がお盆で休みのため、「今週の注目新刊」はお休みいたします。ブックポータルが本当に完全閉鎖になるのか、それとも「週刊新刊案内」だけはなんとか残してくれるのか(無理なんだろうけど)、カウントダウンが始まっています。(H)
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by urag | 2005-08-21 02:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback(3) | Comments(0)
2005年 08月 20日

リンギス日本語訳第二弾!『異邦の身体』

異邦の身体
アルフォンソ・リンギス(1933-)著 松本潤一郎(1974-)+笹田恭史(1969-)+杉本隆久(1975-)訳
河出書房新社 2005年8月刊 本体価格3500円 46判上製354頁カバー装 ISBN4-309-24347-9

■原書:"Foreign Bodies" by Alphonso Lingis, Routledge, 1994.

■帯文より:旅する哲学者リンギスの主著。同時代の思想家たちを横断しながら、多様な方法によって切り開く身体論の異邦な展望。

■本文より:他者の眼に触れられて空洞化した誰かの眼、その光り輝く暗がりを通じて、光と夜が宇宙空間から呼びかける。オルガスムの熱情とナンセンスが、夜の鳥と虫たちの、概念も文法もない情熱的な声に応答する。私たちの身体を静かに漂い落ちてゆく死んだ皮膚の薄片が、すばらしいミクロの世界の腐植土に着地する。分泌物や毒素の中で、眼に見えない存在が互いを探し求め、抱擁する。

■既訳書:『汝の敵を愛せ["Dangerous Emotions". University of California Press, 2000]』中村裕子(1965-)訳 田崎英明(1960-)解説 洛北出版(発行) 松籟社(発売) 2004年9月刊 46上製318頁カバー装 ISBN4-87984-801-8

●日本語訳単行本の第二弾になります。リンギスの魅力は、現象学的思考と詩的エクリチュールの融合にあると私は思います。哲学的でありながらきわめて叙情的な、味わい深いエッセイの数々。そこには、他なるものとの出会いが刻印されています。「旅する哲学者」という称号が、たしかに彼にはふさわしいです。彼の著書が日本の読書界に知られるようになったのはごく最近ですが、翻訳される前からファンがいました。今後、ますます増えることでしょう。

●『異邦の身体』はどこから読み始めてもいい本ですが、たとえば、第5章「照応への強要」は、三島由紀夫の『太陽と鉄』(中公文庫)をとりあげています。「苦痛を共有する共同体」、「死へと開かれた共同体」といったキーワードのもとに、リンギスが三島をどう読んでいるか、興味をそそる一篇です。

●リンギスはメルロ=ポンティやレヴィナスの著書の英訳者でもあります。メルロ=ポンティが構想した「非哲学」を積極的に実践し、レヴィナスの切り開いた倫理学の可能性の地平をジェンダーや異他なるものたちへのまなざしのもとにいっそう遠くまで拓いていったリンギスの功績には、実に大きなものがあるのではないかと私は思います。

●ジェンダーやセクシャリティに対するリンギスのまなざしは独特のものです。『異邦の身体』序文において、彼は次のように書きます。

●「伝統的に「彼(he)」という代名詞は、性やジェンダーを明確にせず、ただ個人を指し示すものとして用いられてきた。文法的には「彼」は無徴の名辞、「彼女(she)」は有徴の名辞と見なされてきた。修辞学上「彼」は男性として徴づけられており、この用法においては女性的なものが無視されている、とフェミニストの書き手は論じてきた。彼(女)たちが促進してきたのは文法上、修辞学上の改革であり、その場合「彼」は男性として徴づけられ、「彼女」は女性として徴づけられる。」

●引用続き(本文では段落がかわって)「しかし個人とはたんに男性や女性であるだけではない。再生産を司る器官が機能不全であったり、それを欠落させていたりする、両性具有的、性横断的、シャム双生児的なものでもある。彼(女)たちはたんに男性ないし女性であるだけではなく、ジェンダー横断的、多数ジェンダー的、非ジェンダー的であり、サイボーグであり、狼人間であり、天使である。彼(女)たちがつくりあげてきたのは、動物、両性具有的有機体、植物、川、機械、精霊、死といったものとともに、種を横断して自らの組織化と官能性を結合させうるような記号論と文化なのだ。「彼」が男性として徴づけられ、「彼女」が女性として徴づけられるような新たな用法が促進されたなら、このような諸個人はすべて傷つけられ、沈黙を強いられてしまう。彼(女)たちを「彼(女)たち」であるがままにしておこう。」引用終り。

●リンギスの言う「フォーリン・ボディーズ」というのは、ジェンダー的身体論のバイナリズム(二項対立観/二元論)から疎外される異他なるものたちを忘却したり無視したりしないこと、をきっと意図しているのでしょう。

●ちなみにリンギスの著書の表紙を飾り、あるいは本文に挿入されている写真の数々は、彼自身が旅の途上で撮ったものです。アーティスティックなものではありませんが、他者との出会いの純粋な喜びや驚き、戸惑いを写し撮っている、印象深い写真群だと思います。
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●遠からず、洛北出版より『何も共有していない者たちの共同体』The Community of Those Who Have Nothing in Common (Indiana University Press, 1994)が翻訳出版される予定です。リンギスはこの『何も共有していない者たちの共同体』の序文で、次のように述べています。「こんにち明らかに私たちは、ますます次のような確信を深めてはいないだろうか? つまり、いかなる共通した民族的類縁性も、言語も、宗教も、経済的利害も持たないような人々の死に、まさに私たち自身が関わりをもっているのではないか、と」。私はこの文章を今まで何度か引用してきました。他者との関わりの自覚を促す彼の言葉は、ヴィリリオの言う「純粋戦争」が常態と化した現代世界において、よくよく噛み締めるべきものではなかろうかと私は思います。

●拙い私訳では申し訳ないので、興味をもたれた方は、洛北出版さんが今週より公開している同書序文の全訳をどうぞご覧下さい。
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by urag | 2005-08-20 13:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 08月 14日

今週の注目新刊(第17回:05年8月14日)

TRCの書誌データにおいて書影が1435号から、小さい画像のみになりました。大きな書影はありません。カバーに何が書いてあるのか、あるいは何が写っているのか、小さなサイズでは明瞭には確認できません。不便です。

***

ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う
日野晃(1948-)+押切伸一(1961-)著
白水社 本体1800円 252頁 4-560-03594-6
■帯文より:FEEL&CONNECT. 世界屈指の振付家に「新しいダンス」を提示したのは、日本人武道家だった! 素顔のフォーサイスが挑む、7日間のワークショップ。そこではいったい何が行なわれ、何が生まれたのか? 巻末付録:「身体を存在させる」ためのトレーニング。
■目次より:

第1日 フォーサイス、即興の極意に触れる
第2日 フォーサイス、胸骨の操作を学ぶ
第3日 フォーサイス、自宅に日野晃を招く
第4日 フォーサイス、達人の技に感嘆する
休日 プライベート・レッスン
第5日 フォーサイス、「留守」を任せる
第6日 フォーサイス、武道の技に燃える
第7日 フォーサイス、最終日に閃く

●フォーサイス(1949-)の関連書はあまり多くありません。浅田彰監修による『フォーサイス1999』(NTT出版、1999年)くらいです。著書の翻訳単行本もないので、不思議と言えば不思議。


タバカレラ――スペインたばこ専売史1636-1998
フランシスコ・コミン・コミン+パブロ・マーティン・アセニャ編 林屋永吉監修 たばこ総合研究センター
山愛書院(発行) 星雲社(発売) 本体28571円  503頁 4-434-06540-8
●スペインにおけるたばこ専売制の全史、だそうです。図書館向けなんでしょうが、高価な本ですね。
●財団法人たばこ総合研究センターは雑誌『』の発行元でもあることは皆様ご存知の通り。雑誌や書籍などの出版事業を、文化・広報活動の重要な「公共的」支柱にしている団体の中でも、たばこ総合研究センターは珍しく今なお「思想系」のパトロネージュを続けています。傍目にはこうしたパトロネージュは非常に頼もしく、うらやましく見えます。


ロラン・バルト著作集(4) 記号学への夢
ロラン・バルト(1915-1980)著 塚本昌則(1959-)訳
みすず書房 本体5200円  402頁 4-622-08114-8
■帯文より:演劇や「神話」の批評から転じ、衣服や映画や食物など、さまざまな対象を分析しうる知的道具に目くるめく興奮をおぼえた、バルトの1960年代とは? 記号学を求める美しき冒険の軌跡、全52篇。
●第六回配本。80年代の日本の知的流行においては、バルトの方法論は「記号学」ではなく、「記号論」と呼ばれていました。セミオロジーとセミオティクスの混同はいつからどのようにして始まったのでしょうか。かつて別冊宝島の一冊として刊行されたベストセラー『わかりたいあなたのための現代思想入門』(1984年)では、SF評論家の志賀隆生さんが「記号論という新しい波」というパートを担当されており、そこにはこうした注が見えます。

「記号学はソシュールの企てから生まれた。記号論という用語は現代的手法としてはパースによってもちいられた。現代の記号論はソシュールの記号学の計画を再びとりあげ、社会生活の内部における記号の生を研究しようとする。記号学→仏sémiologie 記号論→仏sémiotique」

実はこの箇所を除くと、志賀氏はほとんど「混同」していません。むしろやむを得ず、巷間に広まった「商業的」とも言える語法である「記号論」をごくわずかな箇所にだけ採用している感じです。おそらく編集サイドの要望だったのではないかとさえ思います。日本におけるこの混同の小史は、トリヴィアルな話題ではありますが、興味深くもあります。


***

★今週の注目文庫・ライブラリー

見るということ
ジョン・バージャー(1926-)著 飯沢耕太郎監修 笠原美智子訳
ちくま学芸文庫(筑摩書房) 本体1300円 274頁 4-480-08930-6
■帯文より:生と藝術の行間を読み、「見る」ことの本質をえぐる、気鋭の写真・美術評論。
●1993年に白水社より刊行された単行本の文庫化。バージャー(1926-)はロンドン生まれの作家で、フランスはアルプス地方の小村に長く住んでいる。美術評論や美術史の仕事が日本では早くから知られているが、小説も一冊だけ(『G.』)、翻訳されている。『見るということ』のほかの既訳書は以下の通り。

『ピカソ――その成功と失敗』奥村三舟訳、雄渾社、1966年。
『芸術と革命――エルンスト・ニェイズヴェースヌイとソ連における芸術家の役割』奥村三舟訳、雄渾社、1970年。
『G.』栗原行雄訳、新潮社、1975年。
『イメージ――視覚とメディア』伊藤俊治訳、PARCO出版局、1986年。※"Ways of Seeing"の日本語訳。
イメジのとらえ方』松村昌家+大井浩二編注、英宝社、1988年。※"Ways of Seeing"のペリカン版原書をそのまま複刻したもの。


シュルレアリスムと性
グザヴィエル・ゴーチエ(1942-)著 J・B・ポンタリス序 三好郁朗訳
平凡社ライブラリー(平凡社) 本体1900円 413頁+図版16p頁 4-582-76547-5
■帯文より:抜きがたい男根主義。エロスの破壊力に賭けた革命思想の矛盾。
■版元紹介文より:自由と愛を求めたシュルレアリスムはエロスの破壊力に賭けたが、その苦闘とは裏腹に、結局は革命に失敗する。その原因を抜きがたい男根主義と喝破した名著。
●1974年に朝日出版社より刊行された単行本のライブラリー化。彼女(ゴーチエ)の既訳書には、ほかにマルグリット・デュラスとの対話編で『語る女たち』(田中倫郎訳、河出書房新社、1975年)がある。


ボードレールと私
西脇順三郎著
講談社文芸文庫(講談社) 本体1400円 282頁 4-06-198414-4
■帯文より:永遠なるアヴァンギャルド。
■版元紹介文より:戦前の新詩運動のなかで生み出された画期的な処女詩論「超現実主義詩論」から、晩年の詩的自伝ともいえる随想「ボードレールと私」まで、ボードレールの与えた影響とその変容を軸に、代表的詩論4篇を精選。詩的言語により経験生活を超克し、芸術のための芸術を追究してきた、偉大なる学殖詩人・西脇順三郎。そのアヴァン・ギャルドとしての革新的な試みの背景を理解するための貴重な1冊。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-08-14 21:45 | 本のコンシェルジュ | Trackback(2) | Comments(0)
2005年 08月 07日

今週の注目新刊(第16回:05年8月7日)

予告によれば、私が毎週チェックしているTRCブックポータル内の「週刊新刊案内」はそろそろサービスを停止することになっています。「週刊新刊案内」の便利さと重要性は6月21日のエントリー記事でもおおまかに書きました。

私はサービス停止が非常に不満ですが、TRCに対して直接意見したりはしていません。意見したからといって聞き入れるような相手ではないとどこか思っていて、先方のことを信頼しきれないのです。「週刊新刊案内」は重要です。現時点においては、サービスの後継が告知されているbk1では、種々の現実からその肩代わりが実質的につとまらないことをはっきり言わねばなりません。bk1が仕入れた書目のデータだけでは、決定的に物足りないのです。

今週は書誌情報詳細やコメントを省略していますが、ご勘弁を。TRC「週刊新刊案内」での選書に始まり、各版元HPや紀伊國屋書店BOOKWEB等での書誌情報の確認と収集、そしてコメントの執筆など、実は私の場合、作業に半日かかっています。週末や業務時間外の私的時間を割いてやっているのですが、時にはどうしても時間が足りません。

そんなわけで、皆様ぜひ、各出版社のウェブサイトをご訪問下さい。版元サイトがなかったり、あってもまだ新刊の情報がアップされていない場合は、紀伊國屋書店BOOKWEBなどをご利用下さい。紀伊國屋の場合、TRCやアマゾンなどと違って、書影は帯付のものです。これは意外と重要。帯には様々な情報が集約されているからです。帯を除いたカバーのみの画像では、どんな本なのか、よくわからないケースが多々ありますから。

***

イラク占領と核汚染
森住卓写真/文; 高文研; 2000円; 4-87498-347-2

見ることの塩:パレスチナ・セルビア紀行
四方田犬彦著; 作品社; 2400円; 4-86182-049-9

三十か月:ユダヤ人家族を守り抜いた恐怖と幸福の日々
シルト・ウォルターズ著; 富山房インターナショナル; 1500円; 4-902385-14-7

サラ・コフマン讃
F・コランほか著; 未知谷; 3000円; 4-89642-133-7

対話の回路:小熊英二対談集
小熊英二ほか著; 新曜社; 2800円; 4-7885-0958-X

無のグローバル化:拡大する消費社会と「存在」の喪失
ジョージ・リッツア著; 明石書店; 4500円; 4-7503-2158-3

世界ブランド企業黒書:人と地球を食い物にする多国籍企業
クラウス・ベルナー+ハンス・バイス著; 明石書店; 2800円; 4-7503-2140-0

労働相談裏現場リポート
金子雅臣著; 築地書館; 2000円; 4-8067-1313-9

エックハルトラテン語著作集(1):創世記註解/創世記比喩解
エックハルト著; 知泉書館; 8000円; 4-901654-50-0
●この本は3月に刊行された本ですが、TRCの登録が遅いこと。

セネカ哲学全集(1):倫理論集
セネカ著; 岩波書店; 8000円; 4-00-092631-4

ルキリウスへの手紙/モラル通信
セネカ著; 近代文芸社; 2800円; 4-7733-7271-0

カント全集(22):書簡 II
カント著; 岩波書店; 6200円; 4-00-092362-5

外科の歴史
W・J・ビショップ著; 時空出版; 3000円; 4-88267-037-2

脳のなかの幽霊、ふたたび:見えてきた心のしくみ
V・S・ラマチャンドラン著; 角川書店; 1500円; 4-04-791501-7

美術カタログ論:記録・記憶・言説
島本浣著; 三元社; 4800円; 4-88303-160-8

***

★注目のブックレット

破産者たちの中世
桜井英治著; 日本史リブレット(山川出版社); 800円; 4-634-54270-6

***

以上です。ところで、本日(7日)21:00より放映されたNHKスペシャルZONE:核と人間」は、前々日のTBS特番「ヒロシマ:あの時、原爆投下は止められた」とともに印象深いTV番組でした。「ZONE」では――私はこの単語からタルコフスキーの映画作品「ストーカー」をただちに思い出します――様々な書物が引用されていたのが印象的でした。その中のひとつに、ユダヤ人哲学者ギュンター・アンダースとエノラ・ゲイ号の気象観測員クロード・イーザリーの往復書簡集『良心の立入禁止区域』の引用がありました。日本語訳の本の紹介はありませんでした。

『ヒロシマわが罪と罰――原爆パイロットの苦悩の手紙』(ちくま文庫、1987年)がそれです。品切重版未定。このたび、ちくま文庫では創刊20周年記念の復刊リクエストを8月いっぱいまで受け付けています。まあ品切書目の多いこと! このなかに、上記の『ヒロシマわが罪と罰』も入っています。是が非でも復刊して欲しいですし、11月に復刊というのはそもそも遅い。改題するなりして、今こそ再刊すべきではないかと思います。(H)
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by urag | 2005-08-07 23:04 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 08月 02日

今週の注目新刊(第15回:05年8月1日)その2

選書は済んでいたのですが、公開が遅れました。ようやくです。

***

広島――記憶のポリティクス
米山リサ著 小沢弘明+小沢祥子+小田島勝浩訳
岩波書店 本体3300円 46判302頁 4-00-001935-X
■帯文より:被爆地と被爆者をめぐり、せめぎあう語りがひらく。平和の象徴“ヒロシマ”から、廃墟と蘇生の“広島”へ。
■版元紹介文より:戦後半世紀、核のカタストロフはどのように語り伝えられてきたか。広島という被爆都市の変遷、被爆者の語り部たちの語りの変容、コリアン被爆者をめぐる加害と被害のせめぎあい、原爆を投下した米国側の正当性のゆらぎなどをめぐって、反発し、浸透し、越境してゆく原爆の被害体験と加害体験の記憶の表象。
●単独著の日本語訳はこれで2点目。1点目は2003年11月に今回と同じく岩波書店から刊行された『暴力・戦争・リドレス――多文化主義のポリティクス』 でした。『広島』は米山さんの主著。待望の翻訳です。この夏にひもときたい一冊。なお、共著では、『天皇のページェント――近代日本の歴史民族誌から』 (タカシ・フジタニとの共著)が1994年11月に、NHKブックスの一冊として刊行されています。

戦争はいかに地球を破壊するか――最新兵器と生命の惑星
ロザリー・バーテル(1929-)著 中川慶子+稲岡美奈子+振津かつみ訳
緑風出版 本体3000円 46判413頁 4-8461-0507-5
■帯文より:劣化ウラン弾からスターウォーズまで、軍と最新兵器による、地球生態系への破滅的影響。
●カナダの科学者バーテルさんの既訳書には『放射能毒性事典』(渕脇耕一訳、技術と人間、1987年)があります。劣化ウラン弾が人体にいかに深刻な被害をもたらすか、真剣に勉強してみようと思う人ならば必ず彼女の名前に行き当たることになります。私にとっては、ヴァンダナ・シヴァ(1952-)、バーバラ・ドゥーデン(1942-)、イザベル・スタンジェール(1949-)と並んで、文字通りラディカルな科学技術批判の姿勢を学ぶことのできる稀有な思想家の一人です。

バナナ・ペーパー――持続する地球環境への提案
森島紘史(1944-)
鹿島出版会 本体1500円 A5判4+127頁 4-306-09377-8
■帯文より:バナナ・ペーパーが地球を救う、エコロジー・デザインの実践!バナナの香りを封入したバナナ・ペーパーも挿入。
■版元紹介文より:バナナの茎から紙をつくることで発展途上国に産業を興し、地球環境保全にもつながることを提唱する。バナナ・ペーパーの製法プロセスとその製品への展開の可能性を、豊富なイラストや写真で解説する。
■目次:


第1章:バナナを知る
 1-1 バナナの植生・形態・生産分布・生産量
 1-2 バナナと人間社会
 1-3 廃棄物バナナの茎の製紙技術
第2章:バナナによる自立
 2-1 熱帯の途上国、自立への道
 2-2  プロジェクトのもつ多面性-経済、教育、文化
 2-3 カリブ海諸島における事例
第3章:バナナのエコロジー・デザイン
 3-1 日本のプレゼンス――環境問題への取り組み
 3-2 バナナ紙とバナナ布
 3-3 未来に生きる環境教育


●著者の森島さんは多摩美大を出て、米国アート・センター・カレッジ・オブ・デザインを修了後、名古屋市立大学大学院芸術工学研究科教授、イタリアISIA大学客員教授、愛知県立芸術大学非常勤講師などをつとめておられるそうです。香りつきの本というのは今までもいろいろありましたが、学術書で香りつきというのは初めてではないかと思います。

ゴッドハズアドリーム――希望のビジョンで今を生きる
デズモンド・ツツ(1931-)著 和泉圭亮+和泉利子+和泉裕子訳
竹書房 本体1200円 A5判161頁 4-8124-2222-1
■帯文より:1984年度ノーベル平和賞に輝く、ツツ大主教最新刊。幸せになる勇気を持てます。あなたの未来の大切さをわかりやすく教えてくれる本です。
●ツツさんがこれまで説教やスピーチや著述で明らかにしてきた、彼自身の思想や信念をまとめた集大成だそうです。1996年に南アフリカ・ケープタウン大主教を退いたのち、マンデラ大統領のもとで真実和解委員会の委員長をつとめ、その後も北フロリダ大学客員研究員、国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ)の被害者信託基金理事として働いておられます。
●同性愛への差別を批判し、悪のテロリストという紋切り型のレッテルを拒絶し、戦争反対を主張してやまない彼は、現代において数少ない「信頼しうる宗教指導者」の一人だと私には思えます。ツツさんの既訳書には、『南アフリカに自由を――荒れ野に叫ぶ声』 (桃井健司訳、サイマル出版会、1986年)があります。

生命――この宇宙なるもの
フランシス・クリック(1916-2004)著 中村桂子(1936-)訳
新思索社 本体2500円 46判194頁 4-7835-0233-1
■帯文より:私たちはどこから来たのか。ノーベル賞受賞者、DNA構造の発見者である著者が、新パンスペルミア説(宇宙胚子説)を唱えて語る生命の起源と本性。これからの生命観、学問的方向を示す知的興奮の書。
●1989年刊増補新装版の、そのまた再装版だそうです。 ちょうど約一年前の2004年7月28日に死去したクリックは、DNAの二重らせん構造を発見した、イギリスの高名な生物学者です。
●既訳書には、『分子と人間』(玉木英彦訳、みすず書房、1970年)、『熱き探究の日々―― DNA二重らせん発見者の記録』(中村桂子訳、TBSブリカニカ、1989年)、『DNAに魂はあるか――驚異の仮説』(中原英臣訳、講談社、1995年) などがありますが、ぜんぶ絶版っていったいどゆこと?! 現代科学史上の最高峰に位置する人の本ですら、十年も経てば市場から消えるという苦々しい例のひとつです。

ヘブライ語-日本語単語集
飯田篤編著
国際語学社 本体2900円 46判217頁 4-87731-267-6
■版元紹介文より:ヘブライ語は1948年にイスラエル建国とともに300万人の公用語として復活した言語です。古代フェニキア語を引き継ぐセム・ハム語族の代表言語である古代ヘブライ語は、旧約聖書、死海文書、ユダヤ教古文書などに残されています。約3000語の日常頻出単語を掲載。明快な文法解説つき。シンプルで単語を気軽に引けるため、本書を傍らに古代文字の学習、趣味の探求が深まります。
●シリーズ「単語で辿る古代の歴史ロマン」の第二弾。第一弾は本年5月に刊行された『アラム語‐日本語単語集 シリア語付き』でした。語学マニアとまではいかなくとも、外国語、それも昔々の言葉に惹かれる読者は一定数いるはず。アラム語もヘブライ語ときたら次は何語でしょう。楽しみです。

アンデルセン童話集
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805-1875)著 ハリー・クラーク(1889-1931)絵 荒俣宏(1947-)訳
新書館 本体3800円 46判上製函入619頁 4-403-27003-4
■帯文より:荒俣宏が贈るもうひとつのアンデルセン。クラークの絵が悲哀と残酷を感動に変えます。
■版元紹介文より:アンデルセン生誕200年。彼の面白さのエッセンスを、異色の傑作24篇に集約。アイルランドの幻想画家ハリー・クラークの夢幻味あふれる挿画40点を収録(カラー多数)。
■収録作品:ほくち箱/大クラウスと小クラウス/おやゆび姫/旅の道連れ/皇帝の新しい服/幸福の長靴/丈夫なすずの兵隊/父さんのすることに間違いなし/コウノトリ/みにくいアヒルの子/ひつじ飼いの娘と煙突そうじ人/モミの木/豚飼い王子/雪の女王―七つの話からできている物語/夜なきうぐいす/マッチ売りの少女/妖精の丘/古い家/蝶/人魚姫/ワイルド・スワン/沼の王の娘/パラダイスの園/絵のない絵本
●近年はグリム童話が、本当は恐ろしい~とか、世界一残酷で美しい~とか、大人向きに色々出版されてきましたが、荒俣さんの趣向はそんなところにあるわけではありますまい。今回のアンデルセン本は洒脱な装丁と造本を見る限り、そう思います。ところで若い世代にとっては荒俣さんは「トリビアの泉」の人、なのでしょうか。

シェイクスピア・ザ・ベスト
シェイクスピア(1564-1616)原作 不知火プロダクション編 筒井正明監修
宙出版 本体1200円 A5判183頁 4-7767-9198-6
■帯文より:あらすじで、知る。あらすじでは伝わらない面白さが、ある。世界文学が誇る不朽の名作をマンガでいいとこ取り。
●なんだかよくわからない帯文ですが、本書は「マンガで読むから面白い!世界の名作シリーズ」の一冊。シェイクスピアはたしかに、活字で追っていると何だか大げさだったり、台詞回しが長ったらしかったり、もうどんどん飛ばし読みしたい気持ちになることがあるのも事実。で、マンガで読んじゃいましょう、というのは「ドラゴン桜」的方法論としてはアリ? きちんと活字で読むんだという方は、『ザ・シェークスピア――全戯曲[全原文+全訳]全一冊』改訂新版(坪内逍遙訳、第三書館)がお得。


★今週の注目文庫

エスコフィエ自伝――フランス料理の完成者
オーギュスト・エスコフィエ(1846-1935)著 大木吉甫訳
中公文庫BIBLIO (中央公論新社) 本体876円  273頁 4-12-204544-4
■帯文より:帝王の料理人か、料理の帝王か。ベル・エポックを担った史上、最も偉大なシェフの回想録。戦争捕虜をも体験した彼は芸術家、革命家、国際人であり、そしてユマニストであった。
■版元紹介文より:数々のメニューを考案、技法を体系化し、近代フランス料理の父と呼ばれるに至るまでの軌跡が自身の言葉で語られる。エスコフィエが近代フランス料理を確立するまでの過程を語った回想録。多くの名物料理の考案、女優サラ・ベルナール、英国王エドワード七世などのセレブとの華やかな交流の一方で、捕虜生活の体験から貧困を打破する策について著作を遺した。普仏戦争、ベル・エポック時代、第一次大戦と激動の世相を反映した知られざる逸話は、国際人としての見識に貫かれ、「いかなる時代にも料理人はどうあるべきか」というエスプリにあふれている。
●同朋舎出版から1992年に『エスコフィエの自伝』として出版されたものの改題文庫化です。
●既訳書には『エスコフィエ・フランス料理』柴田書店、『エスコフィエのメニューブック』柴田書店、『エスコフィエとともに一年を――料理長の手帖』木耳社、などがあります。
●BIBLIOシリーズは名著の再刊が多く、たいへん好感が持てるシリーズです。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-08-02 22:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 08月 01日

今週の注目新刊(第15回:05年7月31日)

一日遅れですみません。すみませんって誰に謝っているんでしょう。今回は大漁なので、二回に分けて投稿します。

調子がいいときは本が見えてくるし、悪いときには見えてこない。そんなもんです。ということは今回は調子がいいのかなあ。ここ一週間で、知的所有権や著作権、ハッキングや反著作権、作者や出版人、そして「批評」や「読書」……といった諸契機をめぐる啓発的な書籍があれこれ発売されています。こういう「豊漁」な、幸運な一週間もあるのです。……と言ったって以下に挙げる本を全部購入できるほど生活に余裕はありませんが。

***

ハッカー宣言
マッケンジー・ワーク著 金田智之訳
河出書房新社 本体2500円  46判248頁 4-309-24348-7
■帯文より:ドゥルーズ/ドゥボールから生まれた、知的所有権/情報をめぐる議論を一新させる最前線の思考。ハッカー階級とベクトル階級の闘争の時代がはじまる。
■版元紹介文より:いま、労働者階級にかわって登場したハッカー階級が、資本家にかわるベクトル主義階級と闘う新たな時代がきた。ドゥルーズ、ドゥボールの影響下にある新鋭が知的所有権をめぐる抗争を中心に空前の世界を描く。
●ドゥボールの『スペクタクルの社会』(ちくま学芸文庫)のように、短い断片から成る戦闘的でスピード感あふれる書物だ。断片の数は389篇。ハックすることの価値を哲学的に、社会思想的に探求している。たとえば実際に「ハッカー」だったケビン・ミトニックの著書『ジ・アート・オヴ・デセプション』(『欺術』ソフトバンクパブリッシング、2003年)でキーワードとなっている「社会工学」が、学者であるワークの描く新しい階級闘争と、リアル世界の諸問題においてどう交差しうるのかを考えてみるのは興味深いかもしれない。

表現の自由vs知的財産権――著作権が自由を殺す?
ケンブリュー・マクロード(1970-)著 田畑暁生訳
青土社 本体2800円  46判368+30頁 4-7917-6204-5
■帯文より:すべては企業のものになるのか。「表現の自由FREEDOM OF EXPRESSION」が登録商標になった!今やどんなものでも私有化できる――ことば、メロディから遺伝情報まで、著作権や特許を武器に、創作・研究の自由を圧迫する企業。ヒップホップ、サンプリングからフリーソフトウェアまで、コモンズ(共有)を求める人びと。インターネット時代の壮絶な闘い。

その音楽の〈作者〉とは誰か――リミックス・産業・著作権
増田聡(1971-)著
みすず書房 本体2800円  46判240+18頁 4-622-07125-8
■帯文より:つくり手と聴き手の境界領域を、細心の緻密さで分析、錯綜する音楽シーン理解への突破口を開く。「作者性」の核心を衝く、ポピュラー音楽文化論の最前線。
■版元紹介文より:クラブ・ミュージックの技術的基盤、音楽産業の構造変容、著作権の思想史を通じて、現代ポピュラー音楽の「作者性」の布置状況を明らかにした。ポストモダニストが声高に叫ぶ「作者の死」というスローガンを疑い、現実の「拡散する作者」の在り様へと肉薄する思考を提示する。

作家の誕生
アラン・ヴィアラ(1947-)著 塩川徹也監訳 辻部大介ほか訳
藤原書店 本体5500円  A5判427頁 4-89434-461-0
■帯文より:「職業作家」「商業出版」の誕生の歴史。アカデミーの創設、作品流通、出版権・著作権の確立、職業作家の登場、作家番付の慣例化など、17世紀フランスにおける「文学」という制度の成立を初めて全体として捉え、今日における「作家」や「文学」のあり方までをも再考させる、メディア論、出版論、文学論の「古典」的名著。作家、編集者、出版関係者、必読書!
●意外なことにヴィアラの訳書が出るのは今回が初めてのこと。本書をきっかけに、ヴィアラをもっと読みたいという読者が出てきそう。

ゲーテと出版者―― 一つの書籍出版文化史
ジークフリート・ウンゼルト(1924-2002)著 西山力也+坂巻隆裕+関根裕子訳
法政大学出版局 本体7800円  46判627+72頁(図版16頁) 4-588-00822-6
■帯文より:出版から見たゲーテの全生涯。「本」を介して向き合う著作者と出版者の赤裸々な人間関係、海賊出版の実態など18-19世紀の出版事情を豊富な資料から詳細に描き出すとともに、新たなゲーテ像を浮き彫りにする。 現代ドイツの著名な出版者ウンゼルトが、自己確認と自己練磨を試みた書籍出版史。
●著者のウンゼルトさんは、50年代後半に34歳でズーアカンプ社の社主となった出版人です。ドイツの大手名門出版社であるズーアカンプ社は、日本で言えば、さながら講談社と岩波書店が合体したような、それはそれは有名な出版社。上記のヴィアラさんの本とともに、本書はぜひとも読まねばなりますまい。しかし金欠自営業のポケットマネーではこの二冊を購入するのもなかなか難儀ではありますが。

ソフトアンドハード――ラジカル・ポップ・クリティック1995-2005
佐々木敦(1964-)著
太田出版 本体2800円  A5判380頁 4-87233-961-4
■帯文より:サヴァイヴァルせよ! 90年代から世紀末を挟んで00年代へ――。J-POP、コミック、小説、映画などなど、批評家・佐々木敦が縦横無尽に切りまくり、勇猛果敢に繋ぎまくる。
阿部和重、青山真治との対談、つんく♂、小室哲哉のインタビューも収録。
●『クイック・ジャパン』誌連載の単行本化。佐々木さんは思想系にも強くて、アクチュアリティと疾走感あふれるその批評活動には大いに刺激を受けてきました。もうずいぶん前から尊敬の念と共感と信頼を寄せてきたのですが、実際自分と4歳しか違わないわけで、ますます尊敬の念を深くするわけです。

(見えない)欲望へ向けて――クィア批評との対話
村山敏勝(1967-)著
人文書院 本体2800円  46判241頁 4-409-04075-8
■帯文より:「他人を感じたいという性的な欲望がなければ、そもそもなぜ書物など読むのか。めんどうな理論を学ぶのも、他者の思考を追体験したいという欲望のため以外、なにがあるのか。〈読む〉ことは快楽である。
■版元紹介文より:クィアとは、ゲイ/レズビアン運動のなかで使われはじめた言葉だが、多様で融通無碍なアイデンティティを含むもので、クィア批評はジェンダー、セクシャリティはもちろん、人種や民族、ポストコロニアル・ナショナリティなどをめぐり、アイデンティティを構築/脱構築するよう様々な言説について考える一端となるものである。本書は、英文学の正典を分析の対象とするとともにバトラー、ジジェクら精神分析の理論家の著作をも、そのレトリックのうえで分析し思想的往還を辿り、他に例をみない。第一部では、セジウィックのいうホモソーシャルな欲望を、英文学の古典を通じて探る。第二部は、同じく英文学の正典をとおして、プライヴァシーという概念装置を再考する。第三部は狭義の英文学から離れ、クィア批評と精神分析の思想的往還をおもに四人の批評家――ジジェク、バトラー、コプチェク、ベルサーニ――を読むことでたどっている。
●うまい帯文ですね。装丁もすばらしい。きっと間村俊一さんでしょう。しかも、題名がパーレン( )から始まっているというのが型破り。これまで先端的な海外の批評家たちの翻訳などでたびたびお見かけしてきた村山さんの、第一評論集ということになるのでしょうか。これは一目ぼれさせる本です。

文芸評論集
富岡幸一郎(1957-)著
アーツアンドクラフツ 本体2600円  46判230頁 4-901592-29-7
■帯文より:コトバの大量消費・大量生産が始まって久しく、「言葉への危機の自覚」なしの作品や、「言葉の力のリアリティも信じていない」思想の氾濫が日常化するいま、学問とは異なる、文学を批評する正統な評論集。作家論12編と、文学の現在を論じた書き下ろし1編を収録。
●題名も装丁も帯文も、或る意味、前述の村山さんの本とは真逆の演出になっています。まさに「正統派」。「デザイン、編集・制作、出版を行う総合プロデュースカンパニー」である有限会社アーツアンドクラフツさんは、平成2年に有限会社メディア・ファクトリーとして設立され、平成13年8月20日に現社名に変更したそうです。某リクルート系出版社と名前が同じだと面倒なことも多かったのでしょう。編集はいぶし銀的な本作りをされていらっしゃいますが、営業は若い方々が頑張っておられるご様子。

思想のケミストリー
大澤真幸(1958-)著
紀伊国屋書店 本体2000円  46判306頁 4-314-00983-7
■帯文より:大沢社会学がひきおこすスリリングな思想の化学反応! 初の思想家・作家論集。
■版元紹介文より:当代屈指の社会学者による、思想家論・作家論を集成。吉本隆明、柄谷行人、廣松渉、折口信夫、宮沢賢治、三島由紀夫、村上春樹……先達たちの思考の軌跡を明晰に整理し、なおかつその可能性と限界を引き受けながら、自らの思考に接続しつつさらなる射程を切り拓いてゆく。ときにアクロバティックに、ときにスリリングに展開する「大澤社会学」の真骨頂。
■目次より:

まえがきに代えて――哲学と文学を横断すること

第一部
〈ポストモダニスト〉吉本隆明
柄谷行人、予言の呪縛
原罪論――広松渉とともに
そう扎の無思想――竹内好のナショナリズム

第二部
明治の精神と心の自律性――漱石『こゝろ』講義
啄木を通した9・11以降――「時代閉塞」とは何か
ブルカニロ博士の消滅――賢治・大乗仏教・ファシズム
三島由紀夫、転生の破綻――『金閣寺』と『豊饒の海』
男はなぜ幼子を抱いたのか――埴谷雄高『死霊』論
村上春樹『アンダーグラウンド』は何を見ようとしたのか
世界を見る眼――村上春樹『アフターダーク』を読む

第三部
巫女の視点に立つこと
まれびと考―折口信夫『死者の書』から

あとがき

●本書が初めての思想家・作家論集になるとは! 意外な感じです。退屈で堅苦しい、一部の文芸批評や研究書(失礼)とは一線を画しています。「文学が現前させる〈特異性〉こそが〈普遍性〉への可能性を拓くのである」と大澤さんは「まえがき」でお書きになっています。

聖バルトロマイの皮――美術における言説と時間
チェーザレ・セグレ(1928-)著 甲斐教行訳
ありな書房 本体4000円  A5判206頁 4-7566-0587-7
■帯文より:時間の中を流れる言語芸術と、空間の中に展開する造形芸術との、この二つの異なる体系を、ひとつの宇宙として記述しうる記号学理論を構築する。
■版元紹介文より:時間の中を直線的に流れる言語芸術と、空間の中に展開する造形芸術。二つの異なる体系を共通の規則によって記述しうるような記号学理論の構築をめざして、言語学、論理学、図像解釈学の交錯する宇宙に、言語から美術への、美術から言語への転換可能性が問われる。言語で語られた物語や象徴が絵画に描かれるとき、文化的慣習の結合によって「統辞法」が成立し、美術批評家が絵画について言語で語るとき、美術固有のマチエールはレトリックの暗喩を通じて感官に訴えかける。
●著者セグレはイタリア生まれの言語学者。日本語初訳でしょうか。ありなさんの公式ウェブサイトはここ2年ほど更新されていないようなので、最新刊までの情報をご覧になりたい方は、版元ドットコムのありな書房のウェブページをご覧になるとよろしいかと思います。ありなさんの本は、発売直後の新刊を古書店で見かけるときがあります。内容的にも価格的にも、常習犯に万引きされやすい版元さんではあるのでしょう。

レヴィナスとブランショ――〈他者〉を揺るがす中性的なもの
上田和彦(1964-)著
水声社 本体4000円  A5判317頁 4-89176-554-2
■帯文より:不眠の夜にざわめく名のないもの……
■目次より:

第1部 「私」が存在することとは絶対的に他なるもの(「絶対的に他なるもの」の問いと「中性的な存在」;「中性的な存在」;文学と倫理)
第2部 「神」の呼びかけを揺るがす「アル」―「文学」(他者がもたらす「援助」;痕跡の両義性;「アル」の触発と忍耐)

●2002年に東京大学大学院人文社会系研究科に提出した博士課程論文を単行本化、とのことです。このテーマの基本文献の風格をすでに感じます。ところで水声社さんのサイトはいつ更新されるのでしょうか……。


★今週の注目「新装版」

行為としての読書――美的作用の理論
ヴォルフガング・イーザー著 轡田收訳
岩波書店 本体価格3600円 46判462頁 4-00-027133-4
■版元紹介文より:古典文学の主軸が〈調和〉にあるとすれば近代文学の基本傾向は〈否定性〉にある。この変化に伴って、作品に唯一永遠の意味を求める旧来の文学解釈はその有効性を失った。読書過程におけるテクストと読者との相互作用の関係を、詳細かつ理論的に解明・吟味し、文学研究における新たなパラダイムを提示する。
●「岩波モダンクラシックス」では、7月に本書を含め、計10点を刊行しました。価格はすべて本体価格(税別)です。

心・脳・科学
ジョン・サール著 2300円 4-00-027131-8

フランス歴史学革命――アナール学派1929-89年
ピーター・バーク著 2600円 4-00-027138-5

歴史学と精神分析――フロイトの方法的有効性
ピーター・ゲイ著 3200円 4-00-027139-3

旧世界と新世界――1492-1650
ジョン・H・エリオット著 2500円 4-00-027140-7

シャドウ・ワーク――生活のあり方を問う
イヴァン・イリイチ著 2800円 4-00-027134-2

ジェンダー――女と男の世界
イヴァン・イリイチ著 3600円 4-00-027135-0

人間の経済(1) 市場社会の虚構性
カール・ポランニー著 2800円 4-00-027136-9

人間の経済(2) 交易・貨幣および市場の出現
カール・ポランニー著 2800円 4-00-027137-7

うつの論理
ダニエル・ヴィドロシェ著 2600円 4-00-027132-6

岩波さんには過去の「良書遺産」がたくさんあります。このシリーズのような品切本の再生再刊はたいへん喜ばしいことです。しかしあえて申し上げたいのですが、「岩波モダンクラシックス」は品切がすでに多すぎです。同じ業界人としてはこうなる現実が分からないでもないですが、こうした品切本の再びの「量産」は結局、はからずも、岩波書店さんを殿様企業のように見せてしまっているだけなんじゃないかと、部外者ながら案じております。

***

以上です。ではまた明日。(H)
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by urag | 2005-08-01 19:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 07月 31日

輝かしきその書物、『リゾーム』

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『パイデイア』誌の総目次を作成され、続いて『GS』、『ルプレザンタシオン』、『批評空間』と次々補完されるご予定の山本貴光さんがやがて着手されるだろう伝説の月刊誌『エピステーメー』。その輝かしい一頁をめぐる支援です。aquiraxさんが日本語訳初版本のきちんとしたスキャン画像は提供されると思うので、私は、原本、日本語訳初版、復刻増補版を三つ並べてみました。

"RHIZOME: Introduction"
par Gilles DELEUZE et Félix GUATTARI,
1976, Paris: Les Éditions de Minuit.
※アランソンの印刷所Corbière et Jugainにて1976年2月に印刷。発売は3月だったようだ。

『エピステーメー:創刊二周年記念・十月臨時増刊号:リゾーム』
著者:G・ドゥルーズ/F・ガタリ
翻訳・編集:豊崎光一
発行日:昭和52年(1977年)10月10日
発行所:朝日出版社
編集者:中野幹隆
造本者:杉浦康平/鈴木一誌 (協力:長沢忠徳)
印刷所:凸版印刷株式会社
定価:600円
※巻末に、豊崎氏と中野氏の対談「翻訳から編集へ」を収録。

『リゾーム・・・・序』
著者:G・ドゥルーズ/F・ガタリ
翻訳・編集:豊崎光一
発行日:昭和62年(1987年)6月25日
発行所:朝日出版社
編集者:中野幹隆/赤井茂樹
造本者:杉浦康平/谷村彰彦 (協力:鈴木一誌)
印刷所:凸版印刷株式会社
定価:1200円
帯文(表1):80年代の思想シーンを規定したドゥルーズ・ガタリの戦闘的パンフレット、待望の覆刻・増補版『リゾーム・・・・序』。
帯文(表4):『リゾーム・・・・序』の最もコンスタントな欲望・動きの一つは、あらゆる全体性、統一性への、したがって文化への、永久的な反抗のそれだ。その爽快なアナルシー。「気狂いピエロ」のように。
※巻末に、豊崎氏と中野氏と赤井氏の対談「Dix ans aprés -- 十年後」を追補。

ご存知のようにこの『リゾーム』はやがて『千のプラトー』(原著1980年、日本語訳1994年)の序文として収録されますが、『リゾーム』単独でも十分すばらしいです。日本語版『リゾーム』は、ドゥルーズ/ガタリのテクストに加え、様々な著者の別のテクストや図版が引用され、精神分析関連の用語解説が付され、訳者による刺激的なまえがきと、訳者+編集者による対談を収めており、その卓抜な組版・造本デザインもあいまって、原書の強度をより増幅させています。

『リゾーム』という小冊子の持つポテンシャルをここまで化学的・カオス的に発展させたのは、他国語版では見られず、日本語版が唯一の例であるといっていいと思います。何年経っても古びません。いまなお読者を誘惑しうる「危険な」書物です。古書店で見つけたら迷わず購入されることをお奨めします。(H)
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by urag | 2005-07-31 02:41 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2005年 07月 26日

上半期和書ベスト10

本日配信の「[本]のメルマガ」220号で、私の独断と偏見による「上半期和書ベスト10」を発表しました。以下、転載です。

***

台風直撃のこの7月の終り頃には、毎年恒例の「上半期読書アンケート」が「週刊読書人」や「図書新聞」で発表される。ありがたいことに、東京堂書店神田本店の佐野店長が私の所属する月曜社から刊行した『ブランショ政治論集』を推してくださった。先日、所用でお店を訪れたところ、「いい本だよなあ」と賞賛の言葉を頂いた。業界人ならば知っているだろうが、佐野さんが本心から褒められるというのはめったにあることではない。通好みの本を作れた証左だ。もちろん通好みの本は他の書店ではバカ売れはしないけれど、目利きの本屋さんに大切に思ってもらえる本を作れたと感じることができるのは、しみじみと嬉しくなるものだ。

今年上半期、月曜社では以下の書籍を刊行した。

1月――『追悼の政治:忘れえぬ人々/総動員/平和』エルンスト・ユンガー=著、川合全弘=訳、四六判並製カバー装216頁、本体2,400円。

3月――『アーバン・トライバル・スタディーズ:パーティ、クラブ文化の社会学』上野俊哉=著、A5判並製カバー装296頁、本体2,500円。

3月――『地図〔新版〕』川田喜久治=写真、A5変型判上製函入190頁総観音開き+リーフレット、本体12,000円。

6月――『ブランショ政治論集:1958-1993』モーリス・ブランショ=著、安原伸一朗+西山雄二+郷原佳以=訳、46判並製カバー装390頁、本体3200円。

7月――『バートルビー:偶然性について[附:ハーマン・メルヴィル『バートルビー』]』ジョルジョ・アガンベン=著、高桑和巳=訳、46並製カバー装208頁、本体2400円(本書は今週店頭発売)。

どの本にも思い入れがあるので、これが一番というものはないが、強いて言えば、『地図〔新版〕』は全国で20店舗ほどの専門書店でのみ販売されており、皆さんの目に触れる機会が少ないかもしれないので、ひとこと説明しておきたい。本書は40年前に美術出版社から刊行されたもので、川田喜久治さんの第一写真集である。古書市場では異様にプレミアがついている本で、コンディションによっては、数百万円の値が付いたこともあるという怪物だ。広島の原爆ドームの壁のしみをはじめとする、戦争の記憶がこの写真集には沈殿している。

今回の新版は、収録作品や全頁観音開きという点は同じだが、装丁やリーフレットを一新した。初版本には初版本の良さや経年による変化があり、一方で印刷製本技術の変遷もあるので、厳密な意味での「復刻本」はあえて製作しなかった。経年の変化までを「再現」するわけにはいかないのだ。国内発売分の初版は1000部。幻の本で、好事家にしか手の届かない値段だっただけに、この新版はじっくり一冊ずつ販売していきたい。おそらく月曜社が新版を刊行したことをまだご存じない方がおられるだろうし、『地図』そのものを知らない方もいるだろう。そうした未来の読者のためにこの写真集はある。

他社版元からこの上半期に刊行された書籍のうち、私にとって「シャラポワならずとも思わずハーンと声の出る」書目ベスト10冊を以下に紹介したい。

◎05年1月

『探偵小説の哲学』
ジークフリート・クラカウアー=著、福本義憲=訳
法政大学出版局、本体2000円、46判172+2頁、ISBN4-588-00811-0
■帯文より:ベンヤミン『ドイツ悲劇の根源』とほぼ時を同じくして書かれ、アドルノに捧げられた探偵小説論。歴史的・現象学的な形象物をモザイクの素材として、合理的理性に支配された近代社会の哲学的・神学的アレゴリー画を描く。
●クラカウアー(1889-1966)が1925年に執筆したという古典的名著がついに翻訳。ベンヤミンに比べて、クラカウアーは不当に忘却されてしまっている観があるが、本書をきっかけに再読されていくといい。19世紀パリを描いた『天国と地獄――ジャック・オッフェンバックと同世代のパリ』(ちくま学芸文庫)が品切のままというのは寂しい。唯一の文庫版なのに。


◎05年2月

『風景と記憶』
サイモン・シャーマ=著、高山宏+栂正行=訳
河出書房新社、本体9500円、A5判738+32頁、ISBN4-309-25516-7
■帯文より:原初の森に分け入り、生と死の川をわたり、聖なる山々に登る――人間は風景をどのように見、創りあげてきたか。これまでの歴史学の手法をすべて捨て去り、大いなる小説を読む感動を与える風景論の名著、ついに刊行! 「内面を外界につなぎ、心の変化が風景の変容をもたらす。「歴史学のモーツァルト」サイモン・シャーマは、この学問をついに創造的瞑想の場につくりかえてしまった」(中沢新一)。
●内容も造本もとにかく圧倒的な書物。コロンビア大学教授のシャーマ(1945-)の既訳には『フランス革命の主役たち――臣民から市民へ』全三巻(栩木泰=訳、中央公論新社、1994年)がある。


◎05年3月

『形而上学と宗教についての対話』
ニコラ・マルブランシュ=著、井上竜介=訳
晃洋書房、本体4000円、菊判306+6頁、ISBN4-7710-1630-5
■版元紹介文より:スピノザ、ライプニッツに比肩する体系的思想家マルブランシュの透徹した思索の全体像が、生き生きした対話を通して示される。
●マルブランシュ(1638-1715)の日本語訳単行本は、竹内良知による『真理の探究』第一巻(創元社、1949年)以来、じつに半世紀ぶり! これは事件。


『ピエール・ベール伝』
ピエール・デ・メゾー著、野沢協=訳
法政大学出版局、本体6800円、菊判637+8頁、ISBN4-588-00816-1
■帯文より:フランス啓蒙思想に最大の武器庫を与えたピエール・ベールの古典的伝記。その研究の土台となり18世紀以来連綿として読み継がれてきた待望の書の完訳。詳細な訳註と懇切な解説を付し、謎の思想家の全体像が鮮明にされる。
●1978年から2004年にかけて刊行された野沢協訳『ピエール・ベール著作集』全8巻+補巻が完結したのも束の間、今度はデ・メゾー(1673-1745)による伝記も出版ということで、本当に野沢先生の持続力というのは「すごい」の一言。


『ユンガー=シュミット往復書簡:1930-1983』
エルンスト・ユンガー著、ヘルムート・キーゼル編、山本尤訳
法政大学出版局、本体6800円、A5判498+7頁、ISBN4-588-15039-1
■帯文より:作家として、法律家としてナチスの時代を先鋭に生きた二大知性の、飽くことなき知的好奇心に映し出された、時代を証言する、文学的・精神史的ドキュメント。
●高名な割には翻訳の少ないユンガー(1895-1998)、必読と目される割には品切絶版が少なくないシュミット(1888-1985)。戦火を別様に生きた、対照的なこの二人の思索の重要性は、今後も減じられることなく、ますます高まるに違いない。


◎05年4月

『グリーンバーグ批評選集』
クレメント・グリーンバーグ=著、藤枝晃雄=編訳
勁草書房、本体2800円、46判232+6頁、ISBN4-326-85185-6
■帯文より:マネによる自己批評性/ミディアムの刷新にはじまる、二次元性/色彩/空間の追求などを歴史的に位置づけ、マティス、ピカソ、そしてポロック等へ至る軌跡を示す。
●もう待望の待望の待望というくらい待望されつくしていた一冊だが、そもそもグリーンバーグ(1909-1994)の初訳となった『近代芸術と文化』(瀬木慎一=訳、紀伊國屋書店、1965年。評論集"Art and culture"の抄訳)は遥か昔に絶版、再評価の機運を醸した「批評空間」誌の臨時増刊号『モダニズムのハード・コア――現代美術批評の地平』(太田出版、1995年)も絶版、ということで、まあ何というか、こうした他社の前歴はともかく、勁草書房さんには頑張っていただきたいです。幸い売れ行き好調のようで。


『英国美術と地中海世界』
フリッツ・ザクスル+ルドルフ・ウィトカウアー著、鯨井秀伸訳
勉誠出版、本体15000円、B4判(タテ39cm×ヨコ27cm)214頁、ISBN4-585-00318-5
■版元紹介文より:平易に綴られたイメージの歴史地理学英国を舞台にしたヨーロッパの壮大なイメージの叙事詩。ザクスルとウィトカウアー共著になる名著の待望の初訳。
●ウォーバーグ(ヴァールブルグ)研究所発の偉大な成果のひとつ。大型本で高額だが、数年後には品切になるはず。古書にも流出しにくい書目だろうから、購入するなら今のうちだろう。


『インフォーマル』
セシル・バルモンド=著、金田充弘=日本語版監修、山形浩生=訳
TOTO出版、本体3600円、B6判393頁、ISBN:4-88706-249-4
■帯文より:インフォーマル、それは既成概念にとらわれない自由な発想から生まれる革新的な建築の生成手法。今最も注目を集める現代建築のコラボレーター、セシル・バルモンドの邦訳書がここに完成。「セシル・バルモンドという思想家=構造家の出現によって、初めて動的空間には生きた構成概念が与えられた。〈インフォーマル〉、それはル・コルビュジエの〈建築をめざして〉に取って代わり得る近代建築を超える建築のマニフェストである」(伊東豊雄)。
●コールハース(1944-)の「相棒」でもあるバルモンド(1943-)のこの本は、いわば小さな『S, M, X, XL』だ。様々な図版とテクストが入り乱れる、バルモンドの覚書のような「何か」。翻訳書は造本が美しいが、本文紙が厚いので、異様に読みにくく、めくりにくい。読者を拒絶しているかのような、そんな強情さも魅力のひとつかも。バルモンドの既訳書には『Number 9』(高橋啓=訳、飛鳥新社、1999年。名前の表記は「バーモンド」)があるものの、すでに絶版。数字をめぐる奇妙な本で、磯崎新さんが推薦文を書かれている。


◎05年6月

『ハイデッガー全集(65)哲学への寄与論稿(性起から〔性起について〕)』
大橋良介+秋富克哉+ハルトムート・ブフナー=訳
創文社、本体8500円、A5判604頁、ISBN4-423-19644-1
■版元紹介文より:ハイデッガーの思索のいわゆる「転回」(ケーレ)と呼ばれる事態が進行していた1936-38年の時期に、生前の公刊を意図することなく書き記された覚書であり、もう一つの主著と称されているものの、本邦初訳である。ハイデッガーの思索に訪れる閃きの跡をただ黙々と記し続けた、281の断片的考察の集積。訳語表(独和/和独)を付した。
●『存在と時間』と並ぶもうひとつの主著がついに日本語訳された。覚書という性格によるものか、非常に密度が濃い。断片とはいえ、それぞれは緊密な関係のうちにあって、読んでいるとハイデガー哲学の星座が見えてくるような気がしてくる。上半期のベストワンはこれ。


『ディドロ「百科全書」産業・技術図版集』
島尾永康=編・解説
朝倉書店、本体12000円、B5判386頁、ISBN4-254-10194-5
■版元紹介文より:啓蒙主義最大の記念碑『百科全書』の技術関係の図版約400を精選し、その意味と歴史を詳しく解説。
●眺めているだけでも楽しめる一冊。こういう本の出版はさすがに朝倉書店ならではの力技。


以上である。これら以外にも素晴らしい本は多数あるが、強いて我を通せば、上記のようになる。「週刊読書人」がウェブサイトで公開している「2005年上半期の収穫から」のエクセルファイルと重なるのは、『グリーンバーグ批評選集』くらいしかない。「図書新聞」のとはどう重なるかはまだ未確認だが、それでもやはり、あまり重複していない気がする。

こうした他社さんの重厚な本を励みに、後半戦も月曜社の出版活動に全力投球していきたい。[2005年7月25日]

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以上です。(H)

追記。「図書新聞」では『探偵小説の哲学』が取り上げられていることを確認しました。
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by urag | 2005-07-26 10:54 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 07月 24日

今週の注目新刊(第14回:05年7月24日)

ひとさまから夏風邪をもらってしまったようで、体が熱くて重いです。咽喉には刺すような痛みが続いています。世界水泳のシンクロ・ソロのドデュ(あるいはデデュー)さんの渾身の演技を見て、その二連覇という偉業に元気をもらい、かろうじて精神的に踏みとどまっている感じです。

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真理の探究――抜粋と注解
フロレンス・ナイチンゲール著 マイケル・D・カラブリアほか編著 竹内喜+菱沼裕子+助川尚子訳 小林章夫監訳
うぶすな書院 本体2800円 4-900470-18-X
■原題:Suggestions for Thought to Searchers after Religious Truth.
●クラーゲスや三木成夫の著書を積極的に刊行してきたうぶすな書院さんの、三年ぶりとなる新刊です。かの高名な看護士ナイチンゲールの非公開だった著書を要約し再編集したもので、彼女の宗教哲学が語られているとのこと。ナイチンゲールの著書については、うぶすな書院さんではこれまでに『看護覚え書』が刊行されています。

アドルフ・ヒトラーの青春――親友クビツェクの回想と証言
アウグスト・クビツェク(1888-1956)著 橘正樹訳
三交社 本体2800円 4-87919-159-0
■帯文より:『我が闘争』(上下巻:角川文庫)や『ヒトラーのテーブルトーク』(上下巻:三交社)と並んでヒトラー関連書に繰り返し登場する、若きアドルフの人間像を最もよく伝える《伝説的書》の完全邦訳。
■版元紹介文より:20世紀初頭、ドナウ河畔の都市リンツそして12の民族が混在する首都ウィーンで、若きヒトラーは何を見、何を感じ、何を決意したのか。希望の星・恐怖の的、政治家ヒトラーの「誕生」はいかにして準備されたのか。

目次:
第一部 リンツでの若き友情
 第1章 最初の出会い
 第2章 奇妙な友情
 第3章 若きヒトラーの肖像
 第4章 アドルフの母のこと
 第5章 アドルフの父のこと
 第6章 学校との決別
 第7章 心の恋人 ステファニー
 第8章 リヒャルト・ワーグナー狂い
 第9章 若き民族主義者
 第10章 スケッチ、絵画、建築
 第11章 決意とヴィジョン

第二部 ウィーンでの体験
 第12章 アドルフのウィーン行き
 第13章 母の死
 第14章 「グストル、一緒に来い!」
 第15章 シュトゥンパー通り二九番
 第16章 帝都ウィーン
 第17章 独学と読書
 第18章 宮廷歌劇場
 第19章 アドルフの自作オペラ
 第20章 移動帝国オーケストラ
 第21章 不本意な中断
 第22章 女性に対するアドルフの態度
 第23章 国会議事堂
 第24章 突然の破局

第三部
 エピローグ 総統兼帝国宰相アドルフ・ヒトラー

訳者あとがき 

●版元の紹介によれば、アウグスト・クビツェク(Augusut Kubizek)は1888年にオーストリアのリンツに生まれ、アドルフ・ヒトラーの青春時代の友人で、ウィーンの音楽院を卒業後、1914年からスロヴェニア地方の劇場指揮者だったそうです。第一次大戦後は、オーストリアのエファーディング市役所に勤務。とのこと。ヒトラーが生まれたのはクビツェクの翌年の1889年。ちなみにこの89年には哲学者のハイデガー、歴史家のトインビー、俳優のチャップリンが生まれています。

テロルを考える――イスラム主義と批判理論
スーザン・バック=モース著 村山敏勝(1967-)訳
みすず書房 本体2500円 4-622-07147-9
■版元紹介文より:アメリカにおけるベンヤミン、アドルノ研究の第一人者の、初の邦訳となる本書は、9・11同時多発テロの衝撃を直接の契機として書かれた。本書が語りかける「イスラム主義」とは、宗教的原理主義でも反米ナショナリズムでもなく、グローバルな民主主義の実践へ向けて、左翼の批判理論とも連帯できる政治言説であり、西洋の政治的規範のヘゲモニーに異議を唱える批判的言説である。「テロリストとテロリスト対策、どちらの暴力も否定するグローバルな公衆として、この事態に働きかけるために、過去のテロルを思考すること」。アメリカ安全保障国家による対テロリズム戦争に対抗するために、多様で、複数の中心をもち、異質な者どうしの議論に開かれたグローバルな公共圏に呼びかける、批判理論の最前線。
●ついにバック=モースさんの単行本初訳が出ました。これをきっかけに彼女のベンヤミン研究の白眉『見ることの弁証法』なども翻訳されていってほしいです。今回の本は小社近刊の「暴力論叢書」とも思想的に近しいので、読むのが楽しみです。

フィデル・カストロ20世紀最後の提言――グローバリゼーションと国際政治の現況
フィデル・カストロ述 デイビッド・ドイッチマン編 渡辺邦男訳
VIENT(発行) 現代書館(発売) 本体4200円 4-7684-8886-2
■版元紹介文より:20世紀最後の巨人フィデル・カストロキューバ首相が、1998年から2000年に行った演説を厳選し、十四章に構成した注目の書。資本主義社会に現われた危機を指摘し、キューバの現状を正直に述べつつ、地球人類の未来を説く名演説が感動を呼ぶ。
●VIENT(海風書房)さんはゲバラの伝記をはじめとする南米系の本などを刊行している出版社さんで、刊行点数は少ないながらも、非常に密度の高い活動を継続されています。

インド・ユダヤ人の光と闇――ザビエルと異端審問・離散とカースト
徳永恂(1929-)+小岸昭著
新曜社 本体2500円 4-7885-0954-7
■帯文より:大航海時代とザビエルらの世界布教がまきおこした全地球的規模の波動。文明の背後に伏流するキリスト教普遍主義やディアスポラの軌跡をインドの地に生きるユダヤ人たちの歴史から照らし出す。

目次:
序 --「エスタード・ダ・インディア」とユダヤ人の運命(小岸昭)
第一章 インドにおけるユダヤ人の問題(徳永恂)
第二章 「インドの使徒」ザビエルとユダヤ人(小岸昭)
第三章 インド・ユダヤ人のアイデンティティ(徳永恂)
第四章 コーチンのユダヤ人街から(小岸昭)
付録 ユダヤ人離散の軌跡(徳永恂)
あとがき(徳永恂)

イザベラ・バードのハワイ紀行
イザベラ・バード(1831-1904)著 近藤純夫訳
平凡社 本体2800円 4-582-83249-0
■帯文より:130年前のハワイ王国にタイムスリップ! キラウエアの火口、ワイピオの渓、マウナロア、ハレアカラ…イザベラの驚くべき冒険を通して、「常夏のエデンの島」の魅力とその実情を知る。
■版元紹介文より:『日本奥地紀行』で知られる女性旅行家の「旅」の原点。火山や激流に挑む驚くべき冒険の数々、先住民との交流や原生自然の貴重な記録が、1873年のハワイ王国にタイムスリップさせてくれる。

歴史年表大事典――まんが歴史にきざまれたできごと
ムロタニツネ象(1934-)まんが・年代暗記文 高埜利彦監修
くもん出版 本体1600円 4-7743-1038-7
■帯文より:まんがで歴史の流れがよくわかる! 国家の統一や政治の改革、文化の発展など、時代をゆるがし、歴史にきざみこまれたいくつものできごと。
■版元紹介文より:古代から現代まで、日本の、世界の歴史を変えたできごとをまんが化!縄文時代(約1万年前)からソ連の解体(1991年)まで、歴史を変えたできごとを、歴史まんがの第一人者の著者が描いたまんがで、楽しく、わかりやすく紹介します。取り上げたできごとは日本と世界を合わせて178項目。大化の改新や関ヶ原の戦い、フランス革命、2度の世界大戦など、それぞれのできごとを年代ごとに見開き2ページで解説。そのできごとが起こった背景や、それによって歴史がどのように変わったのかはもちろん、歴史の表舞台には出てこないさまざまなエピソードも満載。むずかしいと思われがちな歴史を、ときにはユーモラスに描きながら、教科書だけでは知ることができない歴史の一面まで手に取るようにわかります。すべてのできごとに著者オリジナルのゴロ合わせを掲載。できごとが起こった年代も楽しみながら覚えられます。また、主な登場人物の生きた期間や、できごとが起こった場所を示す歴史地図などの情報も充実。日本と世界を変えたできごとがよくわかり、1冊を通して読めば歴史の流れが見えてくる。初めて歴史に触れる子どもたちの入門書として最適な1冊です。

目次:
第1章 文明のおこりと日本の成り立ち
第2章 古代国家と東アジア
第3章 武家政治の成立と展開
第4章 世界の動きと武家政治の発展
第5章 近世社会の発展
第6章 近代ヨーロッパの発展と日本の開国
第7章 近代日本と国際社会
第8章 二度の世界大戦
第9章 戦後の日本と世界

●読者対象が「小中学生から」なので、「大事典」と銘打たれてはいますが、研究者向きではありません。しかし、大人にとっても、文字だけの入門書よりは、「小中学生向き」のマンガによる歴史の方が分かりやすいし、敷居が低くてとっつきやすいでしょう。そんなわけでむしろサラリーマン層を相手に売れるんじゃないかと思います。値段も安いです。菊判なので、少々かさばりますが、ビジネスバッグに入らないようなものではありません。

愛という廃墟
中筋純写真 田中昭二文
東邦出版 本体2300円 4-8094-0459-5
■帯文より:あなたと過ごした・・・・時の流れに置き去りにされた、ふたりの時間。あらかじめ失われたラブホテルの幻影。特別収録DVD田中昭二監督作品「欲望の光と影」。
●『廃墟、その光と影』に続く、廃墟紀行第二弾は、廃墟化した各地のラブホテルが題材。情念というものが物理的に痕跡として残存するならば、記録するのにまさに格好な対象ではあります。前作の内容の一部は「廃墟幻影」で雰囲気を覗き見することができます。

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★今週の注目ライブラリー、新書

乳母の力――歴史を支えた女たち
田端泰子著
歴史文化ライブラリー(吉川弘文館) 本体1700円 4-642-05595-9
■帯文より:〈乳母〉が歴史を動かした! 天皇、将軍、大名たちを支えたその実像! 春日局、比企尼、今参局、藤原兼子・・・。
■版元紹介文より:春日局、比企尼、今参局、藤原兼子ら歴史に名を残す乳母たち。血縁や姻戚関係が大切にされた中世において、天皇家や将軍家、戦国大名に仕え、財産の管理、授乳、後見役、政治権威の補強など、多大な影響力を持った〈乳母の力〉とは何だったのか。時代によって変化した乳母の役割と権勢を辿り、中世社会を陰で支え続けたその実像に鋭く迫る。

〈主な目次〉乳母の中世史―プロローグ/天皇家と公家の乳母(院政時代の乳母/天皇家の乳母―藤原兼子/他)/鎌倉将軍家の乳母(源家の乳母たち/源頼朝の乳母とその周辺/他)/南北朝・室町期の乳母(南北朝期の乳母の実態と乳母観/室町期の乳母/他)/戦国期の乳母/中世の乳母とは―エピローグ

ディアスポラ紀行――追放された者のまなざし
徐京植(1951-)著
岩波新書(岩波書店) 本体740円 4-00-430961-1
■版元紹介文より:生まれ育った土地から追い立てられ、離散を余儀なくされた人々とその末裔たち、ディアスポラ。自らもその一人である在日朝鮮人の著者が、韓国やヨーロッパへの旅の中で出会った出来事や芸術作品に、暴力と離散の痕跡を読み取ってゆく。ディアスポラを生み出した20世紀とは何であったのかを深く思索する紀行エッセイ。

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以上です。皆様も夏風邪にはご注意を・・・・。(H)
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by urag | 2005-07-24 22:23 | 本のコンシェルジュ | Trackback(1) | Comments(0)
2005年 07月 17日

今週の注目新刊(第13回:05年7月17日)

蒸し暑いですね。女子バレー(2005ワールドグランプリ)の戦果に一喜一憂している今日この頃です。仙台での決勝トーナメントでは悔しい結果が続きます。ブラジルにもキューバにも、勝てたかもしれなかったのに。残るは対中国戦。ブラジルを完封して今更ながらに上り調子の中国。見たいようで、見たくないような試合です。でも今回のメンツでは最後の試合ですから、見届けたいと思います。いや見れないかも。

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地球のなおし方――限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵
ドネラ・H・メドウズ+デニス・L・メドウズ著 枝広淳子著
ダイヤモンド社 本体1200円 4-478-87107-8
■版元の紹介文より:地球の温度は上がり続け、海水は上昇し、森林は傷つき、地球の砂漠化は進んでいる。崩壊を止めるには、人間の行動を変えるしかない。坂本龍一氏推薦書籍! これは、ぼくたち人間にとってだけではなく、地球にとって1、2を争うほど大事な本です――。
●ドネラ・メドウズ(1941-2001)さんと言えば、日本では例の「100人村」(『世界がもし100人の村だったら』2001年、マガジンハウス)のネタ元として近年では広く知られています。中高年の世代では『成長の限界』(1972年、ダイヤモンド社)の著者として、でしょうか。ちなみに刊行30年を経た最新版『成長の限界 人類の選択』(ISBN:4478871051)の翻訳が、この春にダイヤモンド社さんから刊行されています。

地球の歌
ベルンハルト・エドマイヤー撮影 アンジェリカ・ユング=ヒュッテル文 平石律子訳
ファイドン 本体6980円 4-902593-26-2
■中味のサンプルはこちらをご参照下さい。
●大判の迫力で、雄大で美しい大自然を写したフルカラーの写真集ですから、一目見たら忘れられません。私は某取次さんで、本書の見本回りをしているスタッフの方をお見かけした記憶があるのですが、仕入交渉ははかばかしく見えませんでした。取次さんにとっては洋書と同じという認識なんでしょうか。傍目には気の毒な気がしました。本書への私の個人的な関心は、モルフォロジー的観点からのものです。マクロな世界とミクロな世界における自然的形象の相似性、抽象絵画とミクロな世界の自然的形象の相似性などが関連してくる分野です。それはともかく、上記のメドウズさんの本と一緒に平積みされていてもいいんじゃないかと思います。

エドマイヤーさんの作品は、このほか、アルプス社さんから、『芸術としての地球』という高画像写真集CD-ROMが発売されています。税込3,990円のところ、アルプス社さんのオンラインショップでは3,570円で購入できるようですね。

ヘーゲルの未来――可塑性・時間性・弁証法
カトリーヌ・マラブー(1959-)著 西山雄二訳
未来社 本体4500円 4-624-01170-8
■版元の紹介文より:「歴史の終わり」を超えて、真新しい未来が到来する――。本書においてマラブーは、ヘーゲルの時間論を批判的に読解するハイデガー、ハイデガー哲学を批判的に継承するデリダといった複数の対話を潜在的に共鳴させることで、彼女自身の哲学の核心をなす「可塑性」の運動、すなわち、自ら形を与える-受け取るという時間的な塑造過程を見定めようとしている。
●現在来日中のマラブーさんの主著です。可塑性という概念については私自身おおいに注目しています。ドイツ観念論の系譜における、かたちFormの問題系がそこにはある。またしても私の関心の核であるモルフォロジーに触れてくるのです。

転回――或る非同一化的思考の試み
ウテ・グッツォーニ(1934-)著 小松光彦訳
慶応義塾大学出版会 本体3000円 4-7664-1184-6
■版元の紹介文より:その眼差しを転回せよ。主体性神話の桎梏を打破し、他者性へ開かれた倫理の胎動を告げる、先駆的思索の軌跡。ハイデガー、フィンクに師事し、ドイツ現代哲学を代表する女性哲学者グッツォーニによる魅力あふれる哲学エッセイ。セザンヌ最晩年の風景画、カントの遺稿、 などが論じられる。

目次:
はじめに
セザンヌ・ジュールダンの小屋──或るものと無との共演について
闇の中の光
オデュッセウスの理性とセイレーンの感性──意味と感覚
二人で在ることのこのはかりしれない幸せ(Cette immense fortune d’être deux)
〈間-時間〉試論──〈互いに共に在ること〉の時間性と各時性について
他者として存在すること
付録:セザンヌ・ジュールダンの小屋(図版)
訳者あとがき
原語索引

●版元さんがウェブで公開している目次にある「或るものと無」はあるいは「有るものと無」でしょうか。また「各時性」というのは「隔時性」とは違うのでしょうか。グッツォーニ(Guzzoni, Ute)さんは「ハイデガー最後の弟子」と紹介されていますね。フライブルク大学名誉教授でいらっしゃいます。これまでの日本語訳書には以下があります。

変革する思考 [原書名:Veränderndes Denken]
ウテ・グッツォーニ著 小松光彦訳
慶応義塾大学出版会 2000年7月刊 本体価格2,800円 46判209p ISBN:4766408152

住まうこととさすらうこと [原書名:Wohnen und Wandern]
ウーテ・グッツォーニ著 米田美智子訳
晃洋書房 2002年5月刊 本体価格1,900円 46判161p ISBN:4771013691

カブールの本屋――アフガニスタンのある家族の物語
アスネ・セイエルスタッド(1970-)著 江川紹子訳
イースト・プレス 本体1800円 4-87257-578-4
■版元の紹介文より:欧米に衝撃を与えたイスラム社会の現実! 女には、埃を食べ続ける人生しかないのか! タリバン政権崩壊後、カブールの書店主一家と出会い、その家族と生活を共にした白人ジャーナリスト。そこで彼女が目にしたものは――。世界で200万部を超えるベストセラー!
●著者のセイエルスタッドさんはノルウェーのオスロ在住の戦争特派員。2004年にEMMA(民族多文化メディア賞)受賞し、今秋来日予定だそうですが、洋販ウェブサイトに掲載された秦隆司さん(「アメリカン・ブックジャム」編集長)のレビューによれば取材先の一家から訴えられてもいたそうで。かの江川紹子さんが訳者だというのがポイント。

分裂共生論――グローバル社会を越えて
杉村昌昭(1945-)著
人文書院 本体2200円 4-409-04074-X
■帯文より:世界運動の新地平。ポストモダンからオルター・グローバリゼーションへ。21世紀の思想と運動の新たな結合。新自由主義的グローバリゼーションに抗する、ガタリ、ネグリ、ブルデュー、スーザン・ジョージを結び、現代思想のポテンシャルを社会の最前線へ着地させるスリリングな試み。“分裂”と“共生”のラディカルな接続。資本への統合を強制し加速するグローバル化のなかで、「生」の風景を変えることはいかにして可能か?
●人文書院さんのウェブサイトの更新が最近鈍いような気がするのは、きっと営業部さんが忙しいから。

僕の人生全て売ります
ジョン・フレイヤー(1972-)著 古谷直子訳
ブルース・インターアクションズ 本体1600円 4-86020-139-6
A5変型判(148mmX152mm)/ボール厚紙並製カバー装/224Pオールカラー
■版元の紹介文より:人生をリセットしたい、と思ったことはありませんか? 身の回りのモノを全てネット・オークションで売り、さらにその後の消息を訪ねて旅にでる、という奇想天外なプロジェクトの記録。自伝でもあり、旅行記でもあり、文化論でもあるこの記録は、私たちに問いかけています。私たちを取り巻いている物は、私たちにとって本当はどんな意味があるのだろうか、そして手放してしまったらどんなことが起きるのだろうか、と。オークションにかけられた商品一点一点に、カラー写真と、思い入れたっぷりの紹介文、さらに「その後の消息」も掲載(愛車ホンダで遠距離に住む落札者をトツゲキ訪問!)。オークションが進むほどにモノとモノ、人と人が(コミュニティのように)繋がってゆく展開には胸が熱くなります。
●内容の一部がこちらで見れます、小さくて見難いですが。楽しい奴だなあ。カバーには「全米映画化(検討中)!?」と「謳って」あります。大まかに言って「電車男」と同じジャンルのマーケティング戦略が成り立っている様子です。

チェコのマッチラベル
南陀楼綾繁(1967-)編著
ピエ・ブックス 本体2200円 4-89444-447-X
■版元の紹介文より:チェコで見つけた、あたたかなともしび、チェコのマッチラベルコレクション。 プラハで見つけた大切な1つの箱。中にはどこかなつかしい気持ちにさせるマッチラベルが…。その数々のデザインを当時のコレクター交流雑誌などの資料とともに一挙公開! 知られざるマッチラベルの世界で、あたたかなともしびを見つけて下さい。
●何と言っても南陀楼さんのコレクションですから。魅力があること間違いなし。ちなみに、小社から刊行している大竹伸朗さんの『UK77』にもマッチラベル・コレクションが載っているのは皆様ご承知の通り。大竹さんのスクラップ・ブックが欲しいと思ったのは私だけではないはず。

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★今週の注目新書、文庫

憲法力――いかに政治のことばを取り戻すか
大塚英志(1958-)著
角川oneテーマ(角川書店) 本体743円 4-04-710005-6
■帯文より:「国民」である前に「有権者」たれ。「憲法力」とは「ことば」への信頼である。「憲法」を裏切り続けることで、「ことば」を裏切り続けた政治に私たちから終止符を打つ方法とは。
■版元紹介文より:誰にでもわかる日本国憲法の入門解説書。改憲論がはびこる中、あえて護憲の立場から憲法を解説。よく改憲論者が口にする「押し付け憲法論」や「憲法悪文節」の根拠を徹底的に解きほぐし、日本国憲法の意味を問いただす。
●「~力」というのは「~整理術」「~のしかた」等に続く、昨今の新刊の題名のトレンドで、本書の場合、大塚さんご本人がそういう流行にあえて「乗った」のか、編集者との対話からそうなったのかはよく分かりませんが、ともかく、「いかに政治のことばを取り戻すか」という問題設定は非常に重要です。諸権力による言葉の簒奪に現代人は意識的に抵抗しなければなりません。

余談ですが、今回の選書過程で題名にびっくらこいたのは、香山リカ(1960-)さんの新刊『〈雅子さま〉はあなたと一緒に泣いている』(筑摩書房 本体1300円 ISBN:4-480-81644-5)です。雇用機会均等法第一世代、いわゆる「雅子さま世代」の女性たちというくくり方があるそうです。

ヘミングウェイの言葉
今村楯夫(1943-)著
新潮新書(新潮社) 本体680円 4-10-610126-2
■帯文より:男の人生はかくも甘美で苦い――今も輝きを放つ77の言葉。
■版元による紹介文より:「もしふたりが愛し合っていれば、そこにはハッピーエンドなどはない」「小説を書くときに作家は血の通った人間を創り出すのだ。人物ではなく人間を」など、ヘミングウェイが遺した言葉は今も魅力に富む。その数々を「人生」「異国・祖国」「自然」「楽しみ」「執筆」の五章に分けて収め、背景を鮮やかに読み解く。二十世紀を颯爽と駆け抜けた文学者の濃密な生涯がよみがえる一冊。著者は日本ヘミングウェイ協会会長。
●ヘミングウェイの男臭さは私は嫌いではありません。自分がオヤジ世代になるにつれ、彼の良さがだんだん沁みてくるような気がします。

イソクラテスの修辞学校――西欧的教養の源泉
広川洋一著
講談社学術文庫(講談社) 本体1100円 4-06-159718-3
■版元による紹介文より:イソクラテスの思想の真髄。「善き言論」は「善き思慮」のしるし。古代ギリシアの教養理念に一大潮流を形成したイソクラテス。プラトンらが教養の原理に数理諸学や哲学を置いたのに対し、彼は弁論・修辞学を対置し、教育を実践した。やがてイソクラテスを源泉とする修辞学的教養はローマ、ルネサンスと受け継がれ、遠く近世にまで多大な影響を及ぼすことになる。イソクラテスの理想と教育を生き生きと描いた好著。

目次:
1.序の章
2.イソクラテスの生涯
3.イソクラテスの学校
4.イソクラテスの教育
5.イソクラテスの教養理念
6.間奏の章――イソクラテスとプラトン――
7.イソクラテス学校とアカデメイア
8.イソクラテスの伝統――キケロから近代まで――

●岩波書店から1984年6月に刊行された単行本の文庫化。「善きもの」とは何か。それが問題です。 

レヴィ=ストロース講義――現代世界と人類学
C・レヴィ=ストロース(1908-)著 川田順造+渡辺公三訳
平凡社ライブラリー(平凡社) 本体1200円 4-582-76543-2
■版元による紹介文より:20世紀最良の思潮「構造主義」を拓いた碩学が、性・開発・神話的思考をキーワードに、21世紀世界が直面する諸問題を論じ、文化人類学の可能性をさし示した東京講演の全記録。解説=佐藤仁
●『現代世界と人類学』(サイマル出版会、1988年)の「抜粋」だそうで。なぜ抜粋なのかは未確認です。1986年の東京講演の全記録と質疑応答を収録。

現代建築のパースペクティブ――日本のポスト・ポストモダンを見て歩く
五十嵐太郎(1967-)著
光文社新書(光文社) 本体850円 4-334-03315-6
■帯文より:巨大インテリジェントビルから個人宅まで、「現代」を代表する建築の見方・愉しみ方を提案する。
■版元による紹介文より:現代建築とは何か。「現代」というのは移り変わるものだから、この言葉が発せられる時代によってその意味は変わるだろう。二一世紀初頭の段階でいうと、ポストモダン以降の建築といえるだろうか。ポスト・ポストモダン。つまり、にぎやかで派手なデザインからシンプルでミニマルなデザインへ。(中略)モダニズムとポストモダンをたたみこんだ、それを「オルタナティブ・モダン」といえないだろうか。(「プロローグ」より抜粋)

目次:
序 「現代」建築とは
第1章 東京建築を見る
 パビリオンとしてのブランド建築/六本木ヒルズ/大型開発/リノベーション
第2章 地方建築を見る
 エンタテインメント/横浜/名古屋/仙台/文化の場/慰霊の空間
第3章 住宅を訪問する
 住宅を見るということ/うさぎ小屋とうなぎの寝床/理系の家/文系の家/有名人の家/構成と形式/家族と住宅/みんなの家/集合住宅の行方
第4章 クルマから観察する
 ロードサイドシティの誕生/クルマをめぐる現代建築の視点/ジェットコースターとしての首都高/首都高と丹下健三/メディアのなかの首都高
第5章 日本の建築家たち
 いかにして日本の建築家は世界に羽ばたくのか/平坦な戦場に生きる遅れてきたものたち/東京のイギリス人・イタリア人/安藤忠雄の東京改造計画/木の建築に向かう安藤忠雄/この先の安藤と建築/見えない廃墟 丹下健三を悼む
中国建築の熱い風~あとがきにかえて
本書に登場するおもな建築物の索引

●建築は現代文化を読み解く上での格好の記号です。五十嵐太郎さんや森川嘉一郎さんといった新世代の建築評論家の方々の批評活動はいつも気になります。

星と伝説
野尻抱影(1885-1977)著 西村保史郎=絵
偕成社文庫(偕成社) 本体700円 4-03-550940-X
■版元の紹介文より:様々な民族の人々が大昔から生み出してきた星の伝説を、美しい挿絵と共にやさしく紹介。1961年初版のロングセラーを文庫化。
●小学生の頃読みふけった思い出の本です。本書は、中公文庫や中公文庫ワイド版(オンデマンド)で正・続篇がともに入手可能。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-07-17 23:04 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)