カテゴリ:本のコンシェルジュ( 848 )


2005年 06月 12日

今週の注目新刊(第8回:05年6月12日)

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

***

アースダイバー
中沢新一(1950-)著
講談社 本体1800円 タテ21cm 252p
4-06-212851-9 / 2005.05.
■縄文地図を片手に、東京の風景が一変する散歩の革命へ! 見たこともない野生の東京が立ち上がる。ママチャリに乗った「アースダイバー式」東京散歩へ。折込アースダイビング・マップ付き。『週刊現代』連載をまとめる。
●「ダイヴ」する、という実践用語は、中沢さんにとって昔からのキーワード。標的(ターゲット)との距離感が中沢さんの場合はきわめて「官能的」。それが読み手に対し、蠱惑的に作用するのではないかと思います。

カール・シュミットと現代
臼井隆一郎編
沖積舎 本体6800円 タテ20cm 438p
4-8060-3045-7 / 2005.06.
■極めて多面的な相貌を有する現代屈指の思想家カール・シュミットについて論じた、2003年に東京大学総合文化研究科で開催されたDESK(東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究室)主催の国際シンポジウムの成果をまとめる。 DESKの刊行案内によれば、本書の目次は以下の通り。

Ⅰ 秩序
「決定と至高性」アレクサンダー・ガルシア・デュットマン 小森謙一郎訳
「レヴィヤタン解剖—イメージ・表象・身体」田中純
「カール・シュミットと終末論」長尾龍一

Ⅱ 政治
「国際関係論の理論家としてのカール・シュミット」ハラルド・クラインシュミット 川喜田敦子訳
「構成的権力論と反ユダヤ主義—力と法をめぐるシュミットとスピノザの邂逅」柴田寿子
「シュミットの正戦論批判再考」古賀敬太

Ⅲ 例外
「内戦:政治的絶対—シュミットとホッブズ」山田広昭
「法の外」ギル・アニジャール 藤岡俊博訳
「シュミットとアーレントのあいだ—もしくは敵なき例外状況」増田一夫

Ⅳ 神話
「ノモスとネメシス—シュミットとバッハオーフェン 文献学的関心から」臼井隆一郎
「名-乗る—カール・シュミットにおける名の理論に向けて」トーマス・シェスタク 磯忍訳
「救済を詩的言語に求めて—カール・シュミットと文学」ガブリエレ・シュトウンプ 臼井隆一郎訳

特別寄稿
「シュ・ダオリンによるシュミットの批判的受容」松平徳仁
「ラクー=ラバルト/カール・シュミットあるいは反復されるドイツ」大宮勘一郎

●ついに刊行ですね。先ごろ当ブログへのお問い合わせのあったデュットマン氏の講演論文も収録。

ポンペ化学書――日本最初の化学講義録
ポンペ(1829-1908)述 芝哲夫訳
化学同人 本体5000円 タテ22cm 202,26p
4-7598-0997-X / 2005.06.
■オランダ人軍医ポンペは、日本の化学の黎明期に絶大なる影響を与えたといわれている。2000年に発見された、ポンペによる日本最初の化学の講義録「朋百舎密書」を翻訳。日本の化学史上きわめて貴重な資料。欧文タイトル:Pompe scheikunde. 著者のポンペは南オランダ(現ベルギー)生まれの軍医で、幕末の日本に高い水準の西洋医学をもたらした。
●当時のオランダは日本に色々な学術文化を与えてくれました。「蘭学事始」だけではないわけです。2000年になってから講義録が発見されたというのがすごい。

地球の歴史を読みとく――ライエル「地質学原理」抄訳
ライエル著 大久保雅弘訳著
古今書院 本体4700円 タテ23cm 256p
4-7722-5100-6 / 2005.06.
■地質学の古典であるライエル著「地質学原理」を抄訳。3巻にわかれた合計1200ページの大著を約4分の1に縮約し、コメントを付して紹介する。巻末に原著の目次を収録。版元さんの紹介ページによれば、目次は以下の通り。

序 章: 三枚の巻頭図は語る -斉一主義の着想と証拠
第1章: 地球には長い歴史があった -地質時代を発見するまで
第2章: 時代とともに気候は変わる -いまよりも暖かかったころ
第3章: 地表の姿を変える水の流れ -河川の侵食と堆積作用
第4章: 陸地をけずる海水のはたらき -海の侵食と堆積作用
第5章: 大地を動かした根源は火成作用である -地球発展の原動力
第6章: 地震の痕跡あれこれ -知られていた液状化現象
第7章: 変異する生きものたち -生物界におこった変化
第8章: 生物の拡散と死後の埋没 -地理上の広がりと環境の変化
第9章: 珊瑚礁の土台は海底火山か -画期的な成因論の草分け
第10章: 第三紀をたずねる旅 -標準層序の確立
第11章: 年代区分の尺度は貝化石である -標準化石は経験の産物
第12章: 後期鮮新世の代表はエトナ火山だ -火山の構造
第13章: 前期鮮新世の地層と火山岩 -鮮新世を二分する
第14章: ヨーロッパの中新世の地層 -拡大した海域を追って
第15章: 始新世は盆地形成からはじまる -パリー盆地の層序
第16章: 第二紀およびそれ以前の地層 -未調査地域が多すぎる
第17章: 第一紀の内成岩とその役割 -深成作用と地殻変動
付 録: 原著の目次

●ダーウィン進化論に大きな影響を与えたという、イギリスのチャールズ・ライエル卿(1797-1875)による『地質学原理Principles of Geology』全3巻(1830-1832)の抄訳。ライエル卿自身は、進化論を認めなかったらしい。

司書――宝番か餌番か
ゴットフリート・ロスト(1931-)著 石丸昭二訳
白水社 本体2800円 タテ20cm 230,15p
4-560-00791-8 / 2005.06.
■書物の収集はいかに権勢や富と深く関わっていたか――純然たる図書館史に終らず、著者の豊富な逸話と図版、機知と諧謔を交えて「一筋縄でいかぬ職業」司書の過去と現在を語る。1994年刊の新装復刊。著者は1931年ライプツィヒ生まれ。19歳で旧東独国立図書館の臨時職員となり、後に学術司書の資格、哲学博士の学位を取得。東西ドイツ統合に伴い「ドイツ図書館」の館長となる。
●図書館と国家政策、典籍蒐集と「スノビズム資本主義」。書棚の闇は深いのですね。


★注目の新書・文庫

方法叙説
ルネ・デカルト(1596-1650)著 三宅徳嘉+小池健男訳 養老孟司解説
白水社(白水Uブックス1082) 本体680円 タテ18cm 148p
4-560-72082-7 / 2005.06.
■すべての先入観を排し既成の知識を徹底して疑ったとき、「そう考えている私は何かでなければならない」という確固たる原理の発見。全近代思想の原点となった名著。1991年刊「方法叙説/省察」から「方法叙説」を抜き出す。
●養老さん解説というのがミソ。養老さんとデカルトの「相性」は抜群でしょう。これまでたびたび言及されています。簡潔でわかりやすく、スピード感もあって知的に高密度な養老さんの文体が多くの読者を惹きつけているのは、納得できることです。

人間不平等起原論 社会契約論
ルソー著 小林善彦+井上幸治訳
中央公論新社(中公クラシックスW43) 本体1600円 タテ18cm 428p
4-12-160079-7 / 2005.06.
■ルソーには近代の全てがあるといわれる。大革命の先駆をなした詩人思想家の2つの代表的民主主義理論。
●中公クラシックスは大好きです。でもクラシックスで改訂するからといって、「世界の名著」や「日本の名著」のバックス版は切らさないでほしかった。これ切実な願い。

象は世界最大の昆虫である――ガレッティ先生失言録
ガレッティ(1750-1828)述 池内紀編訳
白水社(白水Uブックス1079) 本体900円 タテ18cm 218p
4-560-07379-1 / 2005.06.
■「水は沸騰すると気体になる。凍ると立体になる」「カエサルはいまわのきわの直後に死んだ」 18世紀末から19世紀初頭のドイツの高校で教壇に立っていた名物教授が残した、想像を絶する「名」失言の数々。1992年刊の再刊。著者のガレッティはドイツ・アルテンブルク生まれ。ゲッティンゲン大学で法律・地理・歴史を学ぶ。ゴータ・ギムナージウム教授。引退後は著作執筆に励んだ。
●同じ訳者による『リヒテンベルク先生の控え帖』(平凡社ライブラリー)と一緒に愉しんでみましょう。一方は天才の警句、他方は凡才の駄弁?

命に値段がつく日――所得格差医療
色平哲郎(1960-)+山岡淳一郎著
中央公論新社(中公新書ラクレ181) 本体760円 タテ18cm 216p 
4-12-150181-0 / 2005.06.
■患者の満足を忘れていないか? 「医療の市場化」が日本に導入されようとしている。過疎の村で奮闘する異色の医師が、それがもたらす「所得格差医療」に警鐘を鳴らすとともに、公平な医療とは何かを鋭く問いかける。著者の色平哲郎氏は1960年神奈川県生まれ。長野県南佐久郡南相木村診療所長、内科医。
●「医療機構そのものが健康に対する主要な脅威になりつつある」とイリイチは『脱病院化社会』(1976年、日本語訳は1979年、晶文社)に書いて、医療万能幻想を糾し、一方でアリエスは『死を前にした人間』(1977年、日本語訳は1990年、みすず書房)において「もはや社会全体の中に死の場所は一カ所しかない。病院がそれである」と書いて、死を我が物にできなくなってきている現代人の倒錯を指摘しました。そして今や私たちは……。

声と現象
ジャック・デリダ著 林好雄訳
筑摩書房(ちくま学芸文庫) 本体1300円 タテ15cm 334p
4-480-08922-5 / 2005.06.
●本書については先般も取り上げました。原著1998年第2版の翻訳です。

不屈のために――階層・監視社会をめぐるキーワード
斎藤貴男著
筑摩書房(ちくま文庫) 本体740円 タテ15cm 302p
4-480-42093-2 / 2005.06.
■「日本人を騙す39の言葉」(青春出版社、2003年刊)の改題。
●岩波新書の「安心のファシズム」刊行以来、ますます読者層が拡大されてきた観のある斉藤さんの旧著の文庫化です。

絵本徒然草(上・下)
吉田兼好=原著 橋本治(1948-)=文 田中靖夫=絵
河出書房新社(河出文庫) 本体各720円 タテ15cm 上:271p 下:285p
上:4-309-40747-1 下:4-309-40748-X / 2005.06. 
■「桃尻語訳枕草子」で古典の現代語訳の全く新しい地平を切り拓いた著者が、中世古典の定番「徒然草」に挑む。名づけて「退屈ノート」。訳文に加えて傑作な註を付し、鬼才田中靖夫の絵を添えた新古典絵巻。
●日本の学校教育ではだいたい中学生の時分から「徒然草」を学ぶわけですが、そもそも「徒然草」の魅力は少なくとも35歳を過ぎたオジサンやオバサンになってからじゃないとわからないと思いますよ、私の実感としては。同じく河出文庫の佐藤春夫による現代語訳「徒然草」もとてもいい本です。

***
以上、今回は1122点の新刊のなかから、単行本5冊、新書・文庫7冊を選びました。(H)
[PR]

by urag | 2005-06-12 23:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 06月 09日

デリダ『声と現象』新訳がついに出ました

a0018105_241292.jpg

クリックすると大きな画像をご覧になれます。

ジャック・デリダ(1930-2004)の初期代表作『声と現象』の新訳がついに、ちくま学芸文庫の一冊として刊行されました。駿河台大学教授の林好雄さんによる翻訳です。理想社から1970年に刊行された高橋允昭訳が原著初版本(1967年)に準拠しているのに対し、新訳ではデリダ自身によって訂正された第二版(1998年)を底本としています。

理想社版には、付論として、ジュリア・クリステヴァ(1941-)の5つの質問に対するデリダの回答論文「記号学と書記学」が併録されています。クリステヴァは、1967年にデリダが立て続けに上梓した『エクリチュールと差異』(法政大学出版局)、『グラマトロジーについて』(現代思潮新社)、『声と現象』の三冊が、記号学に対して「深刻な」重要性を有しており、学問全般に関する新しい考察空間を開きつつある、と高く評価したのでした。

この、クリステヴァとデリダの誌上対談は、のちに『ポジシオン』(高橋允昭訳、青土社)に収められます。もっとも、理想社版『声と現象』に併録された日本語訳は、「社会科学情報」誌の1968年第3号に掲載された初出論文をもとにしていますので、クリステヴァによる貴重な「前口上」が付されているのですが、『ポジシオン』ではこの「前口上」はカットされています。

なお、クリステヴァが『セメイオチケ』(せりか書房)で華々しくデビューするのは、この誌上対談の翌年である、1969年です。彼女はまだ20代でした。クリステヴァの妹である音楽記号学者のイヴァンカ・ストイアノヴァ(1945-)がデビュー作『身振り・テクスト・音楽』(部分訳あり)を刊行するのは、それよりもっとあとで、1978年。

懐に余裕のある方は、ぜひ、PUFから刊行されている『声と現象』の原書も購入してみてください。ちなみに、上の写真に映っているのは訂正される前の1993年版です。(H)
[PR]

by urag | 2005-06-09 23:44 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 06月 05日

今週の注目新刊(第7回:05年6月5日)

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

今週、もっとも食指が動いたのは、ラカンと孫歌さんの新刊です。それ以外にも、中味に目を通しておきたい新刊を同時に掲げます。

***

無意識の形成物(上)
ジャック・ラカン(1901-1981)著 ジャック=アラン・ミレール編 佐々木孝次+原和之+川崎惣一訳
岩波書店 本体5000円 タテ22cm 366p
4-00-023410-2 / 2005.05.
■「精神分析を言語という礎の上に改めて据える」という目標に向け、フロイトの著作を読み直したラカンが、独自の概念装置の上にその成果を結晶させたセミネール第5巻。上巻は「機知のフロイト的諸構造」「去勢の論理」を収録。
●セミネールが着実に翻訳刊行されているのは喜ぶべきことですが、『エクリ』の新訳の噂や、拾遺論文集『他のエクリ』(2001年、スイユ社)の翻訳はどの版元でどうなっているのでしょうか。気になります。

迫り来る革命――レーニンを繰り返す
スラヴォイ・ジジェク(1949-)著 長原豊訳
岩波書店 本体3200円 タテ20cm 326p
4-00-023652-0 / 2005.05.
■現代社会の状況を批判的に捉え、資本主義の新展開にいまだ対峙しうるレーニンの可能性を能動的に説く。稀代の論客による痛烈な現代社会批判。
●飽きたわけではないのですが、ジジェクの訳書をもはや急いで買い求めようとしていない自分がいます。

レーニンの言語
ヴィクトル・シクロフスキイ+ボリス・エイヘンバウム+レフ・ヤクビンスキイ+ユーリイ・トゥイニャーノフ+ボリス・カザンスキイ+ボリス・トマシェフスキイ著 桑野隆訳
水声社 本体2500円 タテ22cm 233p
4-89176-555-0 / 2005.06.
■三一書房1975年刊の改訳。叢書「記号学的実践」第22巻。
●水声社さんは私にとってひとつのモデル版元さんです。長く読み継がれるだろう良書をたくさん出しておられますし、実験的な新刊もあります。わが社もこちらのようにコンテンツの厚みを増していけたらなあと思います。

竹内好という問い
孫歌(1955-)著
岩波書店 本体3600円 タテ20cm 321p
4-00-023764-0 / 2005.05.
■10年におよぶ竹内好との思想的格闘の記録。魯迅を最も深いところでつかんだ竹内の思想実践を、いま新たにアジアの思想遺産として学び直し、その作業を通じて普遍的な思考営為への展望を切り開く。著者は1955年中国生まれ。中国社会科学院文学研究所研究員。著書に「アジアを語ることのジレンマ」ほか。
●竹内好の再評価というのはここしばらく続いていますが、昨今の中日関係の困難な局面を考えるとき、孫歌さんの研究はかならず参照しておきたい成果です。一度お目にかかったことがありますが、素朴でお話しやすいお人柄でした。なお、3年前に刊行された女史の著書の書誌情報は以下の通りです。

アジアを語ることのジレンマ――知の共同空間を求めて
孫歌著
岩波書店 本体2600円 タテ20cm 256p
4-00-022008-X / 2002.06.
■日中からアジアへ、政治化された言説空間の束縛をどうとらえたらよいか。日中間の歴史問題の磁場にたち、知識人同士の知的対話の試行錯誤を通して、アジアという共通の思考空間が開けていく、葛藤と省察の記録。

自由は進化する
ダニエル・C・デネット(1942-)著 山形浩生訳
NTT出版 本体2800円 タテ20cm 478p
4-7571-6012-7 / 2005.06.
■「自由意志」って何だろう? この哲学上の難問を唯物論・進化論的に説明し、人間を魂の呪縛から解放する本。自由意志の進化を原子レベルから説き起こし、同時に自由意志と関連した責任の問題についても一定の解答を提示する。著者は現在、タフツ大学教授、同認知科学研究センター所長。
●山形さんの訳ということで、こなれた文章が期待できます。大著ですね。

自然界と人間の運命
K.ローレンツ(1903-1989)著 谷口茂訳
新思索社 本体4800円 タテ22cm 514p
4-7835-0232-3 / 2005.06.
■進化現象の記述と解釈、および現在と未来の人間の生存の諸問題を取り扱った論文を集めてまとめた、ローレンツ行動学の集大成。進化論と行動学の総合を行い、人間理解へのアプローチを確立したローレンツの論考二編を収める。(1)進化論と行動をめぐって、(2)生存の諸問題をめぐって。思索社1990年刊新装版に続く再装版。 著者は73年ノーベル賞医学生理学賞受賞。
●古典ということで。恥ずかしながら「再装版」という言葉ははじめて目にしました。これはTRC側がデータ登録した業界的なテクニカル・タームなんでしょうね。

エミリー・デュ・シャトレとマリー・ラヴワジエ――18世紀フランスのジェンダーと科学
川島慶子(1959-)著
東京大学出版会 本体2800円 タテ20cm 249,18p
4-13-060303-5 / 2005.05.
■18世紀フランスの前半と後半を生きた二人の女性を、ジェンダーと科学という視点から再評価する。科学者共同体(科学愛好者のネットワーク)と女性との関係に注目して論じる。著者は名古屋工業大学工学部助教授。研究テーマは科学史、女性史。
●イヴリン・フォックス・ケラー女史の著書を読んできた読者ならば、この新刊にもピンと来るはず。ジェンダーと科学、というテーマは、大型書店ならばきちんと棚をつくっておいて欲しいところです。

一七世紀科学革命
ジョン・ヘンリー著 東慎一郎訳
岩波書店 本体2500円 タテ20cm 169,66p
4-00-027095-8 / 2005.05.
■自然認識の構造変動を「革命」と捉える意味を考察し、近代科学形成の社会的・文化的・知的要因を概観する。
●シリーズ「ヨーロッパ史入門」全10冊のうちの6冊目ですね。6月末には『ロシア革命1900-1927』ロバート・サーヴィス著、中嶋毅訳が刊行される予定。

石の思い出
A.E.フェルスマン(1883-1945)著 堀秀道訳
草思社 本体1700円 タテ20cm 205p
4-7942-1414-6 / 2005.06.
■ロシアの高名な鉱物学者フェルスマンの名著『石の思い出』は少年時代からの鉱物にまつわる思い出を詩的な文章でつづった鉱物エッセイである。コラ半島のユージアル石からオルスクの碧玉まで、19の珍しい話を集めている。ロシアの自然を描いた珠玉のエッセイとして、また鉱物入門書としても楽しめる本書を、新訳で贈る。
●理論社1956年刊「石の思いで」の新訳とのことですが、なぜいま刊行なのか、未調査です。草思社さんは販売の仕掛けがうまい出版社さんですから、何か理由があるはずだと考えてしまうのですが。

海の生物資源――生命は海でどう変動しているか
渡辺良朗編
東海大学出版会 本体3600円 タテ22cm 436p
4-486-01688-2 / 2005.05.
■東京大学海洋研究所のシリーズ「海洋生命系のダイナミクス」第4巻。海洋生命系の変動は人類に何をもたらすか? 自然変動する海洋生物資源の生態を理解し、資源再生産の場である海洋環境保全、それぞれの種の生態にあった資源の利用方法を考える、現代海洋生命科学の集大成。
●海洋資源全般がいま熱い視線を集めています。生物然り、ガス然り。このアンソロジーでは前者を学べます。読まねばなりますまい。

エネルギー・環境キーワード辞典
日本エネルギー学会編
コロナ社 本体8000円 タテ19cm 480,31p
4-339-06608-7 / 2005.06.
■エネルギーと環境に関するキーワードを約2700語に厳選、50音順に解説するとともに、18のカテゴリーに分類。小分類ごとに集められた用語から関連する掲載用語を検索することができ、それぞれの分類の相互関係が分かる。分野別用語一覧付。
●天然資源、エネルギー、環境をめぐる諸問題は、繰り替えすまでもなく現代人にとって大きな課題です。辞典をざっとサーフィンしていくだけでも何かを得られるのではないかと思います。

アラム語-日本語単語集(シリア語付き)
飯島紀編著
国際語学社 本体2500円 タテ19cm 166,22p
4-87731-256-0 / 2005.05.
■イエス・キリストの日常使用言語であり、アッシリア帝国、ペルシャ帝国時代にペルシャ、アッカド、カナーン、エジプトまで使用されていた国際公共語であるアラム語の単語集。カタカナ読みと日本語訳に加え、シリア語も併記。単語で辿る古代の歴史ロマン第1巻。編著者はオリエント学会会員。著書に「ハンムラビ法典直訳」「日本語-セム語族比較辞典」などがある。
●古典語の学習は重要です。キリスト教にとってアラム語の重要性は言うまでもありません。そういえば、映画「パッション」も全編アラム語なのでしたっけね。

本づくりの厨房から
秋田公士(1945-)著
出版メディアパル 本体1500円 タテ19cm 148,2p
4-902251-86-8 / 2005.06.
■出版社に勤務する著者が、本づくりの周辺や思いを綴る。ポイント、白いページ、DTP、帯のいのち、活版時代の文字コード、デジタル世界の職人などをテーマに取り上げる。2003年に私家版として刊行されたものの再刊。著者は1945年神奈川県生まれ。法政大学文学部卒業。法政大学出版局勤務。
●叢書ウニベルシタスをよく手にとっておられる読者なら、秋田さんのお名前はしばしば目にしていることと思います。人文系書籍編集者を目指す若い方にお奨めします。

モダン古書案内――昭和カルチャーの万華鏡「古くて新しい」本のたのしみ
マーブルトロン発行 中央公論新社発売
本体1400円 タテ19cm 123p
4-12-390096-8 / 2005.05.
■昭和モダンに触れられる古書の世界を紹介。作家からニューウェーブ古書店主まで、頑固に、そして愛情たっぷりに推薦する。2002年刊の改訂版。便利な東京・京都古書街マップと最新オンライン古書店ガイド付き。
●初版本を知らなかったのはお恥ずかしい話で。昨今は若い人が古書店を開業する例が増えてきましたよね。共感できる店作りに出会う機会が増えました。とても嬉しいことです。

***
以上、今回は1360点の新刊のなかから、単行本14冊を選びました。(H)
[PR]

by urag | 2005-06-05 00:50 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 05月 29日

今週の注目新刊(第6回:05年5月29日)

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

今週、もっとも食指が動いたのは、『ライト=マンフォード往復書簡』とアルチュセール『再生産について』の2点ですが、それだけでは寂しいので、中味に目を通しておきたい新刊も同時に掲げます。点数が多くなってしまいました。

***

ライト=マンフォード往復書簡集――1926-1959
フランク・ロイド・ライト+ルイス・マンフォード著 B.B.ファイファー+R.ヴォトヴィッツ編 富岡義人訳
鹿島出版会 本体3300円 タテ20cm 457,19p
4-306-04452-1 / 2005.06.
■近代建築の真実を求めた建築家ライトと批評家マンフォード。20世紀アメリカ文化の根底を問い続けたふたつの情熱。その心と魂へと開いた扉である往復書簡集。
●これは大いに期待できます。建築論や都市論にとどまらない、広義の文明論になっているだろうと思われます。ふたりの知的交流がどんなものだったか、興味津々です。

エドマンド・ウィルソン批評集(1)社会・文明
エドマンド・ウィルソン(1895-1972)著 中村紘一+佐々木徹訳
みすず書房 本体3800円 タテ20cm 424,8p
4-622-07140-1 / 2005.05.
■20世紀アメリカが生んだ最高の百科全書的批評家・ウィルソン。そのジャーナリストとしての活動を年代順に精選して集成。比類なき知性の軌跡が今ここに甦る。1は社会・文明に関する批評を収録。
●こうしたいぶし銀のような出版企画は、みすず書房さんのみすず書房さんたる真骨頂を表していますよね。堂々たるものです。

石油の終焉――生活が変わる、社会が変わる、国際関係が変わる
ポール・ロバーツ著 久保恵美子訳
光文社 本体3000円 タテ20cm 546p
4-334-96181-9 / 2005.05.
■現代エネルギー社会の崩壊が始まる! 現代世界の動向、とくにアメリカの対外・国内政策のあり方を、エネルギー問題を軸に読み解き、望ましい未来を築くため、さらには人類が生き残るためには何が必要かを示す警告の書。著者ロバーツは、ビジネスおよび環境に関する問題を長年取材、経済、技術、環境の複雑な相互関係を追究しているジャーナリスト。
●現実問題として、現在の10~30代の世代にとっては、石油資源の枯渇はリアルに体験することになるだろう大きな危機です。大著ですが、読みたい本です。

女たちの絆
ドゥルシラ・コーネル(1950-)著 岡野八代+牟田和恵訳
みすず書房 本体3500円 タテ20cm 335,17p
4-622-07142-8 / 2005.05.
■ジェンダー概念の限界を超え、理想自我としてのフェミニズムを掲げる。現代思想書でありながら、母から娘へ、娘から母へ贈りたい、D.コーネル渾身の一冊。
●コーネルの著書は近年次々に翻訳されていますね。初来日時に講演を聴きに行きましたが、とても気さくな、素敵な「大人の女性」でした。

再生産について――イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置
ルイ・アルチュセール(1918-1990)著 西川長夫+伊吹浩一+大中一弥+今野晃+山家歩訳
平凡社 本体5800円 タテ22cm 473p
4-582-70256-2 / 2005.05.
■現代の思考に影響を与え続けてきた論文「イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置」。この抜粋元であり生前未刊だった草稿を邦訳。再生産論という本来のコンテクストの中に、初めてその全貌を現したイデオロギー論とは何か。
●本書については5月25日付の投稿でも触れました。

ポートレートで読むマルクス――写真帖と告白帖にみるカール・マルクスとその家族(上下)
大村泉(1948-)+窪俊一+V.フォミチョフ+R.ヘッカー編集
極東書店 セット価格11428円(分売不可) タテ25cm
2005.04.
■マルクスの家庭に伝わる2つのアルバムを紹介。上巻はアルバムオリジナルの全容を高解像度カメラで撮影した画像、下巻はアルバムの成立と伝承に関する書誌的解題等の資料を収録。CD-ROM付きのセット(セット価格14285円、分売不可)も同時発売。
極東書店さんは、海外の学術書、専門洋書、重要文献、資料などを輸入販売されている会社ですが、出版活動もされています。

フランス敗れたり
アンドレ・モーロワ(1885-1967)著 高野弥一郎訳
ウェッジ 本体1800円 タテ20cm 228p
4-900594-83-0 / 2005.05.
■文学者アンドレ・モーロワが、第二次大戦の緒戦でフランスがドイツ軍に瞬時に敗れた出来事を描き、敗北の真因に迫ったドキュメンタリー。日本の「今ここにある危機」をも照射する。昭和15年大観堂書店刊の再刊。
●こうした古い本の発掘には同業者として共感します。品切絶版のままにしておく、というのは、本を容易に「使い捨て」にする現代に特徴的な風潮だと思います。

老子〈全〉――自在に生きる81章
老子撰 王明校訂・訳
地湧社 本体1700円 タテ20cm 189p
4-88503-183-4 / 2005.05.
■2500年の時を越え、真理の響きがまっすぐに届く「道」の詩。中国語も日本語も母国語の詩人である著者だからできた、老子の「声」が聴こえる翻訳。時宜を得たテキスト。中国語併記。
●新しい現代語全訳ということで、注目です。

永平広録(中)
道元(1200-1253)著 石井恭二訓読・注釈・現代文訳
河出書房新社 本体5000円 タテ22cm 412p
4-309-71092-1 / 2005.05.
■二十代の若き入宋時代から晩年の永平寺時代までに書かれた道元の語録と筆録の一大集成。「正法眼蔵」とならぶ大著初の完璧な註釈付き現代文訳。中巻は、第五から第七を収録。
●元「現代思潮社」社主の石井さんが、「正法眼蔵」現代文訳に続いて世に問う、「甦る道元」です。精力的な文筆活動に圧倒されます。

『正法眼蔵』読解(10)
森本和夫(1927-)著
筑摩書房 本体4500円 タテ22cm 445p
4-480-75190-4 / 2005.05.
■日本文化史・仏教思想史上屈指の名著「正法眼蔵」。そこでは何が語られているのか。「正法眼蔵」の七十五巻本と十二巻本の全文を段落毎に掲げ読み解く。第10巻には別本なども収録。ちくま学芸文庫版の愛蔵版。
●こちらも力作。ついに完結でしょうか。ハードカバーと文庫本を平行して刊行するという姿勢も、非常に共感できるものでした。マルクス・セレクションもそうすればいいのになあ。

炉辺夜話――日本人のくらしと文化
宮本常一(1907-1981)著
河出書房新社 本体1800円 タテ20cm 211p
4-309-22429-6 / 2005.05.
■「旅する民俗学の巨人」宮本常一が語り遺した、宗教、信仰、離島の文化、戦後の食べ物の話など、失われた日本人の懐かしい生活と知恵。晩年の6つの講演を収めた講演録。
●再評価の機運著しいこの民俗学者の浩瀚な著作集は、あまり本屋さんでは見かけませんが未来社さんから刊行されています。既刊44巻。未完結です。

阿部謹也自伝
阿部謹也(1935-)著
新潮社 本体1700円 タテ20cm 349p
4-10-475901-5 / 2005.05.
■貧しさのなかで出会ったキリスト教。恩師から学んだ学問の意味。ヨーロッパと日本の差異の発見。ヨーロッパ中世研究の第一人者による、清冽、真摯な回想録。02年から04年まで、季刊『考える人』連載に加筆したもの。
●面白くないわけがない大学者の自伝です。来年あたりには早々に文庫化されている予感がするのは気のせいでしょうか。

イギリス・ルネサンス演劇集(1)
大井邦雄監修 小野正和+岡崎凉子訳
早稲田大学出版部 本体5000円 タテ21cm 309p
4-657-05514-3 / 2005.05.
■シェイクスピアをはじめ多くの劇作家が活躍したイギリス・ルネサンス時代の戯曲を本邦初訳で刊行。第1巻はリチャード・ブルーム「アンティポディス」、トマス・ヘイウッド「イギリスの旅人」を収録。02年刊の新装改訂版。

イギリス・ルネサンス演劇集(2)
大井邦雄監修 大井邦雄+山田英教+冬木ひろみ訳
早稲田大学出版部 本体5500円 タテ21cm 357p
4-657-05515-1 / 2005.05.
■シェイクスピアをはじめとする多くの劇作家が活躍したイギリス・ルネサンス時代の戯曲を本邦初訳で刊行。第2巻はジョン・フレッチャー/ウィリアム・シェイクスピア「二人の貴公子」ほか2作品を収録。02年刊の新装改訂版。
●シェイクスピアと同時代のイギリスの劇作家については一般にはほとんど知られていないでしょうね。勉強します。

メディア
エウリピデス作 山形治江訳
れんが書房新社 本体1200円 タテ20cm 109p
4-8462-0298-4 / 2005.05.
■王子イアソンは、王位返還の条件としてコルキスにある黄金羊毛の奪取を命じられる。コルキス王に命を狙われるが、王の娘メディアに救われて…。蜷川幸雄演出・大竹しのぶ主演の舞台のために、現代ギリシャ語訳から直接翻訳。
●現代語訳の日本語訳、ということで「重訳」なわけですが、それはそれで、古代ギリシア語からの日本語訳と対比しながら読む愉しみがあると思います。

歌唱芸術の手引き
ヨハン・フリードリヒ・アグリーコラ訳編 東川清一訳
春秋社 本体3200円 タテ22cm 319p
4-393-93018-5 / 2005.05.
■イタリア人声楽家トージが著した古典的名著を、バッハの高弟が註釈付きでドイツ語化した歴史的重要文献の完訳。バッハ演奏に欠かせない歌唱テクニックがつまった一冊。
●こうした古典を刊行される春秋社さんの懐の広さに感謝です。

古典ラテン語辞典
国原吉之助(1926-)著
大学書林 本体35000円 タテ22cm 926p
4-475-00156-0 / 2005.05.
■古ラテン語期と古典ラテン語期の作家や作品から採集した語彙を収録。附録には、「字母と発音」「名詞の格変化」「形容詞の変化と副詞」「代名詞の変化」「数詞」等も掲載する。
●外国語辞典の値段は、たいていマーケットを反映したものなのでしょうが、専門外の人間にとってはもうちょっと安いと嬉しいなあと思ったりするものなのですね。

カフカ=シンポジウム
クラウス・ヴァーゲンバッハ+マルコム・パスリー+ほか著 金森誠也訳
吉夏社 本体2500円 タテ20cm 254p
4-907758-13-8 / 2005.05.
■新しいカフカ研究に大きく貢献した重要研究。今なお、数多くの謎を残しているカフカの作品とその背景。本書は、実際の草稿や印刷物などに従いながら、作品中に秘められた意図、現実世界との関連、全作品の成立時期、生前の全発表物、同時代人の評価などを、実証的に詳述していく五人の指導的カフカ研究者による意欲的試み。原著は一九六五年刊行。

吉夏社さんの公式ウェブサイトの書誌情報によれば、執筆者略歴と目次は以下の通り。

執筆者
○クラウス・ヴァーゲンバッハ Klaus Wagenbach
ベルリン生まれ。出版業に関わるかたわら、フランクフルト大学などで、ドイツ文学や哲学を学ぶ。一九六四年にクラウス・ヴァーゲンバッハ書店を設立。ブロート版カフカ全集の編集者の一人。主な著書に『フランツ・カフカ』『若き日のカフカ』『カフカのプラハ』などがある。
○マルコム・パスリー Malcolm Pasley
元オックスフォード大学文学部教授。カフカの草稿の管理人。新改訂版カフカ全集の編集者の一人。
○ユルゲン・ボルン Jurgen Born
ヴッパータール大学プラハ・ドイツ語文学研究所所長。ブロート版カフカ全集、および新改訂版カフカ全集の編集者の一人。
○パウル・ラーベ Paul Raabe
オルデンブルク生まれ。哲学博士。ドイツ文学ならびに図書館学の権威として知られている。著作としては、図書館史、文献資料収集史に関するものが多く、またカフカを含むドイツ表現主義運動についてのいくつかの重要な研究がある。
○ルートヴィヒ・ディーツ Ludwig Dietz
文献学者。二種類ある「ある戦いの記録」の草稿を併記した『並列版・ある戦いの記録』をブロートと共に編集した。

目次  
本書について
フランツ・カフカとフランツ・ブライ――再発見されたカフカの書評(パウル・ラーベ)
カフカにおける三つの文学的神秘化(マルコム・パスリー)
 『十一人の息子』
 『家父の気がかり』
 『鉱山の来客』
カフカ全作品の成立時期(マルコム・パスリー/クラウス・ヴァーゲンバッハ)
 年代記
 付録――八冊の青色の八つ折り版ノートの記述、順序、執筆時期
 成立時期一覧
一九二四年までのカフカの印刷物(ルートヴィヒ・ディーツ)
フランツ・カフカと批評家たち
 『観察』
 『火夫』
 『変身』
 『判決』
 『流刑地にて』
 『田舎医者』
カフカの城はどこにあったのか?(クラウス・ヴァーゲンバッハ)
長篇小説『城』の章区分について
訳者あとがき

●カフカ研究の基本書ですね。カフカが好きな私としては見逃せません。

カレル・チャペック童話全集
カレル・チャペック(1890-1938)著 田才益夫訳
青土社 本体2200円 タテ20cm 395p
4-7917-6190-1 / 2005.06.
■郵便局のコルババさん、名探偵シドニー・ホール、王女さまの猫ユーラなど、魅力たっぷりの主人公たちが、原作チェコ語から直接ダイナミックに蘇った。モダンそして爽快な感性で綴られたチャペック・ファンタジーの集大成。
●おお、全1巻本ですよ。お値段も手ごろですね。

***
以上、今回は1507点の新刊のなかから、単行本19冊を選びました。(H)
[PR]

by urag | 2005-05-29 23:15 | 本のコンシェルジュ | Trackback(1) | Comments(0)
2005年 05月 26日

森開社再開! "L'EVOCATION"誌、創刊

a0018105_23473869.jpg

L’ÉVOCATION. Vol.I

目次内容(旧字・正字・異体字で再現できていないものがある)

白鳥友彦 「モロオ頌」
土屋和之譯 「ジュウル・ルフェヴル=ドゥミエ散文詩集(抄)」
小野夕馥翻案 「ポオ禮讚」
竹田善四郎 「遙かな実在 〈リラダンの夢〉」
辻野久憲 「熱帶の追憶」
白鳥環 「壽(ことぶき)」

奥付記載

発行所:森開社
編集兼発行人:小野夕馥

東京都東久留米市***** (個人情報に準じるものと判断し、伏せます)
電話:****** (個人情報に準じるものと判断し、伏せます)
印刷所:オオイシファーム 大石幸人
発行日:2005年5月15日 300部発行
¥600(税込)

補足情報
1)タテ277mm×ヨコ193mm、全31頁、アンカット、未製本。
2)奥付にはナンバリングが付されている。
3)雑誌コードやISBNは無し。
4)奥付頁にある次号予告は以下の通り。

詩・白鳥友彦/白鳥環/訳詩・土屋和之/小野夕馥 ほか
ヴィリエ・ド・リラダン小特集/翻訳/評論/書誌 ほか

5)奥付頁にある著者紹介で予告されている近刊は以下の通り。

白鳥友彦:ピエール・ルイス詩集『女』制作進行中、近日刊行。
土屋和之:『仏蘭西小浪漫派詩人抄』(仮題)刊行予定。
小野夕馥:今秋『リラダンはどのように我国に紹介されてきたか』小部数初稿刊行。
白鳥環:『白鳥環詩集』(仮題)今秋刊行予定。

6)L’ÉVOCATION取り扱い店(確認できた限りにつき極めて不完全)

ですぺら
古書肆マルドロール
田村書店
丸善丸の内本店2F外国文学売場

7)森開社とは

小野夕(小野夕馥)氏によって1973年に設立された伝説的な出版社。フランス文学を中心に優れた訳書や研究書、詩集、雑誌(「森」や「LA FORÊT (ラフォーレ)」)などを瀟洒な造本で小部数生産するのを常とし、熱烈なコレクターやファンを獲得している。80年代後半以後、しばらく新刊がなく休止状態にあった(ようだ)が、当誌L’ÉVOCATIONをもって活動再開と見える。2005年5月19日には赤坂のモルトバー「ですぺら」にて、創刊を祝う会が催された。事件である。

以上です。(H)
[PR]

by urag | 2005-05-26 23:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(1)
2005年 05月 25日

アルチュセール「イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置」

5月25日配信のメールマガジン「[本]のメルマガ」214号に寄稿した拙文(連載「ユートピアの探求」)より抜粋します。

***

先月のことだったと記憶しているが、ある日の仕事帰りに、旭屋書店池袋店の哲学書コーナーで興味深い本を見つけた。『アルチュセールの〈イデオロギー〉論』(三交社)の新装版である。アルチュセールの論文「イデオロギーと国家のイデオロギー装置」、本書をプロデュースした文化科学高等研究員のジェネラル・ディレクターである山本哲士の論文「アルチュセールのプラチック論」、アルチュセール論文の訳者である柳内隆の論文「アルチュセールの解読」、以上の三部構成の本である。初版は1993年。今回の新装版は初版第五刷にあたる。

興味深いと書いたのにはわけがある。特筆すべきはその装丁である。白色の半透明紙をカバーに使い、書籍本体の表紙や背の文字がぼんやりと透かし見えるようになっている。上品ではあるが、営業的に言えば、書名や版元名がはっきり見えないという時点でかぎりなくアウトに近い。流通上の必要性のため、裏側にはバーコードやISBNを印刷してあるが、そのほかにはこのトレーシング・ペーパーに似たこのカバーには何も印刷されていない。

書籍本体の表紙はかなり厚みのある特殊紙を使用している上に、背と表紙および裏表紙のあいだのミゾがないために、非常に開きにくい本になっている。この厚紙に箔押しで、空色の書名や墨色の出版社名などが印字されている。書名を囲む罫は空押し加工だ。いったいなぜこんなに凝った、挑戦的な装丁にしたのだろう、としげしげ眺めていると、背に「SBB」というアルファベットが印字されている。

はて、「SBB」とは何か。奥付裏にこんな説明があった。

「本書第五刷は、株式会社エス・ビー・ビーの「SBB良書復刊支援企画」の援助を得て増刷したものです。」

そのあとにはこの「SBB良書復刊支援企画」についての説明がある。

「本企画は、文化・学術の進展に少なくない意義をもちながら、さまざまな出版事情から再刊・増刷が困難となっている書籍について出版費用を援助し、社会的な貢献を果たしていくことを目的としています。また本企画は、消費社会の進展とともに衰退してきた「文化としての造本・装幀」の再生・発展に寄与していくことをも目的としており、本企画による再刊・増刷にあたっては、できる限り現在の流通や消費の動向にとらわれない観点からの造本・装幀を試みています。」

なるほど、その意気やよし。私は初版本を持っていたが、即決で本書を購入した。実用性からすればちょっと不器用な点もないわけではないが、こういう「突っ走った」感じの造本を見ると、つい読者として「受けて立」ちたくなる。帰宅してから株式会社エス・ビー・ビーについてインターネットで調べるが、どんな会社なのかははっきりわからない。三交社から『職人』という書籍が刊行されており、これの編者になっているのが「エス・ビー・ビー」である。ただ、こちらが前述の株式会社と同じなのかはよくわからない。

また、高額な資料系の書籍を発行しているSBB出版会という出版社があるが、こちらが当該株式会社とかかわりがあるのかは未確認である。この出版会で刊行している資料書籍を編集しているのは、近現代資料刊行会といい、ウェブサイトもある。http://www.kingendai.com/

このサイトのトップページに掲載されている「歴史研究-人文・社会科学再興のために(近現代資料刊行会の出版活動)」を読んでみると、先の「良書復刊支援企画」と一脈通じる記述が目に付く。いわく、「良質な資料を利用しやすい形で提供し、研究環境の向上に貢献することを出版の意義と認識し活動を続けています」等云々と。

いずれにせよ、SBB良書復刊支援企画は、第三者が利用を申請できるような形態の、継続的な「公的事業」であるわけではないらしいことは推察できる。

ところで、三交社の『アルチュセールの〈イデオロギー〉論』の今回の復刊ははからずもタイミングがよかった。というのもちょうど翌月(つまり今月)、平凡社から、アルチュセールの『再生産について』がついに刊行されたのである。『再生産について』はアルチュセールの論文「イデオロギーと国家のイデオロギー装置」(新訳では「イデオロギー装置」は「イデオロギー諸装置」となる)の源流である、膨大な草稿を書籍化したものだ。

今回の草稿の訳者の筆頭は西川長夫さんである。周知のとおり、西川さんはかつて、1975年に福村出版から『国家とイデオロギー』と題して当該論文の日本語訳を公刊している(初出はさらに遡り、『思想』誌の72年8-9月号)。論文に出てくるキーワードに「実践」という訳語があり、今回の草稿本でも「実践」と訳されているのだが、この訳語について、先の三交社の『〈イデオロギー〉論』の中で山本哲士さんは疑義を呈し、原語をカタカナ表記した「プラチック」を採用している(柳内隆さんもやはり異議を唱えているが、山本氏のスタンスとは微妙に異なり、カタカナのルビを振った上で複数の訳語に訳し分けている)。

西川さんは今回の『再生産について』の訳者解説で、そうした異議があることに言及しながら、それでもなお「実践」と訳した理由を簡単に述べておられる。読書の愉しみを削ぐことになりかねないので、ここでは引用を控えるが、これらふたつの書籍は、同時に購読しておいて損はない。いわば兄弟関係にあるわけで、ぜひ両方の購入をお奨めしたい。

***

『再生産について――イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置』ルイ・アルチュセール=著、西川長夫+伊吹浩一+大中一彌+今野晃+山家歩=訳、平凡社=刊、本体価格5800円、ISBN4-582-70256-2
内容:アルチュセールのイデオロギー論の全貌! 現代の思考に、多方面にわたる巨大な影響を与えつづけてきた論文「イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置」。本一冊分の草稿から抜粋してつくりあげられたこの論文は、同時に、長く誤解にさらされてきたものである。論文発表後も手を入れられながら、生前ついに公刊されなかったその草稿によって、アルチュセールのイデオロギー論、イデオロギー装置論が、再生産論という本来のコンテクストのなかで、いま、ようやく、その十全なる姿を現す。待望の日本語訳決定版。巻末にエティエンヌ・バリバールによる論考「アルチュセールと「国家のイデオロギー諸装置」」を収録。

『アルチュセールの〈イデオロギー〉論』ルイ・アルチュセール=著、柳内隆=訳・解説、山本哲士=解説、三交社=刊、本体価格2233円、ISBN4-87919-113-2
内容:アルチュセールの論文「イデオロギーと国家のイデオロギー装置」、本書をプロデュースした文化科学高等研究員のジェネラル・ディレクターである山本哲士の論文「アルチュセールのプラチック論」、アルチュセール論文の訳者である柳内隆の論文「アルチュセールの解読」、以上の三部構成。初版は1993年。今回の新装版は初版第五刷にあたる。
[PR]

by urag | 2005-05-25 02:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2005年 05月 22日

今週の注目新刊(第5回:05年5月22日)

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんや版元さんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

***

英国美術と地中海世界
フリッツ・ザクスル+ルドルフ・ウィトカウアー著 鯨井秀伸訳
勉誠出版 本体15000円 タテ39cm 214p
4-585-00318-5 / 2005.04.
■英国を舞台とした全ヨーロッパを背景とする地中海世界の影響を跡付けるもので、イメージのライフサイクルをその研究主題とした、ウォーバーグ研究所の1948年までのほとんどすべての研究業績の集大成。
●サイズをご覧いただけたらお分かりになると思いますが、デカい本です。高額だしなあ、などとつべこべ言わずに購入しておくべき古典的基本図書です。

ルネサンスの哲学――ライプチヒ大学哲学史講義
エルンスト・ブロッホ著 古川千家+原千史訳
白水社 本体2600円 タテ20cm 229, 3p.
4-560-02449-9 / 2005.05.
■「ルネサンスとは人間の脳裏に未だ浮かんだことのないものの新生である」 自然を発見し限界突破を試みる10余名の先人を軸にすえ、特異な時代の意味を問う。極大と極小を同時に見据えるブロッホ哲学の原像。
●ブロッホの翻訳書は畢生の大著である『希望の原理』(白水社)をふくめ、すでに数多くありますが、未訳本はまだまだ多くあります。その意味においてだけでなく、ブロッホの思想的本質は、本来的に「来たるべき哲学者」であり続ける点に存すると思います。

正義の他者――実践哲学論集
アクセル・ホネット(1949-)著 加藤泰史+日暮雅夫+ほか訳
法政大学出版局 本体4800円 タテ20cm 399, 50p
4-588-00793-9 / 2005.05.
■実践哲学の相違する領域において何が正義の「他者」と言われうるのか。社会哲学・道徳哲学・政治哲学それぞれの体系的課題を独自の承認論を展開させて分析、正義の原理とその「他者」との関わりに新たな照明を当てる。叢書ウニベルシタス(793)。
●これまでの翻訳書も法政大学出版局の叢書ウニベルシタスから刊行されています。1992年『権力の批判――批判的社会理論の新たな地平』、2003年『承認をめぐる闘争――社会的コンフリクトの道徳的文法』。売れる売れないではなく、継続的に一人一人の著者や研究者と付き合っていくという法政さんの姿勢には見習うべきものがあります。たとえば、ドイツの文明史家であるハンス-ペーター・デュルやノルベルト・エリアス、フランスの哲学者ミシェル・セールやジョルジュ・カンギレムなどは、ほとんど法政さんが手がけられたものです。売れないと見るや二度とその著者の本は出さなくなるような日和見的出版社よりかはずっと良心的だと言えます。

離脱・発言・忠誠――企業・組織・国家における衰退への反応
A.O.ハーシュマン(1915-)著 矢野修一訳
ミネルヴァ書房 本体3500円 タテ22cm 212, 8p
4-623-04374-6 / 2005.06.
■人間の社会的行為の三類型を剔出したグランド・セオリーの改訳新版。経済学と政治学の対話の試みであるとともに、新古典派の市場主義原理によって切り裂かれつつある公共性復権の手がかりを与える現代社会科学の古典。MINERVA人文・社会科学叢書(99)。
●初版本は『組織社会の論理構造 : 退出・告発・ロイヤルティ』アルバート・O・ハーシュマン著、三浦隆之 (1945-)訳、ミネルヴァ書房、1975年、タテ22cm、198, 2p、当時の定価1600円。

モダニティと自己アイデンティティ――後期近代における自己と社会
アンソニー・ギデンズ著 秋吉美都+安藤太郎+筒井淳也訳
ハーベスト社 本体2800円 タテ21cm 299, 12p
4-938551-74-8 / 2005.04.
■モダニティの顕著な性格の一つである、グローバル化する力と個人的性向という二つの極の強くなっていく相互結合の特徴を分析し、それについて考えるための概念的語彙を提供する。
ハーベスト社さんは地道に社会科学系の基本図書を出版を続けておられる出版社さんです。この「地道」というのがどんなにかたいへんな事業であることか。

南アフリカでのサッティヤーグラハの歴史(2)非暴力不服従運動の展開
M.K.ガーンディー著 田中敏雄訳注
平凡社 本体2600円 タテ18cm 276p
4-582-80738-0 / 2005.05.
■南アフリカのインド人社会のために誕生し展開された非暴力不服従運動。やがてインド独立へと向かう運動の精神と実際。
●東洋文庫第738巻。全2巻完結です。第1巻の副題は「非暴力不服従運動の展開」でした。

魔術と狂気
酒井明夫(1950-)著
勉誠出版 本体2000円 タテ20cm 243p
4-585-05271-2 / 2005.05.
■古代における魔術的治療者の役割と意味、ルネッサンスの魔術師・自然哲学者の足跡、変身と憑依の系譜、魔術と狂気の類縁性などを検討しつつ、歴史から見た「狂気」の本質に迫る。著者は、岩手医科大学神経精神科教授。専門領域は精神医学史、医学哲学、文化精神医学、総合病院精神医学など。
●シリーズ「精神科医からのメッセージ 」の一冊。勉誠出版さんの書籍紹介ページによれば、本書の内容と目次は以下の通りです。大いに興味をそそられます。

内容紹介・解説:
西欧には、古代ギリシャの時代から、変身や魔女など狂気と深いかかわりを持つ魔術的事象が存在し、それとともに、呪文や秘薬など魔術的癒しの業も伝えられてきた。ここでは、超自然的モデルと、精神医学的モデルの双方から、古代における魔術的治療者の役割と意味、ルネッサンスの魔術師・自然哲学者の足跡、変身と憑依の系譜、魔術と狂気の類縁性などを検討しつつ、「歴史から見た狂気とは何か」に迫る。

目次:

第一章 メランプスの物語
メランプス伝説/預言者にして医師/薬と浄め/神と人間のメランプス
第二章 変身の病理
履歴としての変身/リュカントロピア/悪魔とリュカントロピア/レジナルド・スコットの反論/変身の意味
第三章 コルネリウス・アグリッパの肖像
アグリッパの生涯/アグリッパの著作について/アグリッパと狂気/フロル(furor)/恍惚状態(Raptus)/アグリッパと魔女裁判/魔術師アグリッパ/アグリッパとは何だったのか?
第四章 魔術と狂気
「ヒポクラテス」とガレノス/魔術師(マゴス)と呼ばれた人々/魔術の効能/非合理なるもの

バフチンと文化理論
ケン・ハーシュコップ+デイヴィッド・シェパード編著 宍戸通庸訳
松柏社 本体4000円 タテ22cm 377p
4-7754-0072-X / 2005.05.
■記号論者の先駆け、ロシアの文学者、 ミハエル・バフチンの思想の全貌に迫る一冊。
詩学、文芸評論に多大なる影響をあたえ、生成する対話 を軸に、ドストエフスキーとラブレーを読み解き、テクストの〈ポリフォニー〉に着目するバフチンの新たな側面に迫る、11名の俊英による論文集。執筆者:ニコライ・パンコフ、グレアム・ペチイ、クレア・ウィルズ、ブライアン・プール、ナンシー・グレイジナー、トニー・クローリー、アン・ジェファーソン、テリー・イーグルトン、キャロル・アドラム。
●叢書「言語科学の冒険」第24巻。バフチンといえば、水声社さんから1999年より刊行中の『ミハイル・バフチン全著作』はぜひ完結してほしいと切に願っています。それにしても、新時代社さんから刊行されていた『ミハイル・バフチン著作集』全8巻が絶版になっているのはかえずがえすももったいないことだと思います。ちくま学芸文庫さんあたりが文庫化してくださらないのかなあ、と妄想。

【今週の文庫編】

弁論家について(上)
キケロー著 大西英文訳
岩波書店(岩波文庫) 本体800円 タテ15cm 394p
4-00-336114-8 / 2005.05.
■ローマ最高の弁論家キケロー(前106─前43)が、既存の弁論術を批判し、実践弁論の復権、哲学と弁論の再結合を説く。〈人間的教養〉の勧めである本書は、ヨーロッパ的精神の一大指導理念たる〈ヒューマニズム〉の形成にも大きな影響を与えた。自らの理念に忠実に生き、それに殉じた一つの偉大な精神の金字塔。(全2冊)
●わが国の国会議員全員の必読書に指定したいと思います。

法学講義
アダム・スミス(1723-1790)著 水田洋(1919-)訳
岩波書店(岩波文庫) 本体1100円 タテ15cm 522p
4-00-341058-0 / 2005.05.
■スミスは、道徳哲学、経済学、法学の三部作によって、産業革命期のイギリス近代社会の構造を道徳哲学(あるいは社会哲学)の体系として提示しようとした。前二者については「道徳感情論」「国富論」として結実したが、法学については未刊のまま没。本書はグラスゴウ大学の道徳哲学教授として行なった法学講義の筆記録。
●1947年に日本評論社より刊行された『グラスゴウ大学講議』高島善哉 (1904-1990) +水田洋訳、タテ22cm、488ページの改訳と思われます。この、高島先生との共訳書が、水田先生にとっての、スミスの初めての翻訳単行本だと思います。以後、半世紀以上の長きにわたって、水田先生のスミス翻訳書は刊行され続けています。

『国富論草稿』日本評論社(世界古典文庫・ 第86巻)、1948年、タテ15cm、190ページ。
『世界大思想全集(第2期第3巻)国富論』河出書房新社、1961年、タテ19cm、290ページ。水田洋監訳、岩波文庫版全4巻、2000年-2001年。
『道徳感情論』筑摩書房、1973年、タテ23cm、558ページ。岩波文庫版上下巻、2003年。
『アダム・スミス哲学論文集』水田洋訳者代表、名古屋大学出版会、1993年、タテ20cm、362,9ページ。
『アダム・スミス修辞学・文学講義』水田洋+松原慶子訳、名古屋大学出版会、 2004年、タテ20cm、390,25ページ。グラースゴウ大学所蔵の手稿に基づく新訳決定版。未来社から1972年に刊行されたのは、ジョン・M・ロージアン編、宇山直亮訳、タテ22cm、383,14ページ。

***
以上、今回は1192点の新刊のなかから、単行本8冊、文庫本2冊を選びました。全部を購入した場合、39,200円也。(H)
[PR]

by urag | 2005-05-22 02:51 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 05月 15日

今週の注目新刊(第4回:05年5月15日[番外編])

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

今週は点数が多いため、文庫新書編、単行本編、番外編と三部門に分けます。最後は番外編。番外編は、「必ずしも購入したいわけではないが、私が書店員だったら、こんな取り合わせを考える」といった、下世話な選書です。

***

死体検案ハンドブック
的場梁次+近藤稔和+田中圭二+ほか編著
金芳堂 本体6500円 タテ21cm 368p
4-7653-1185-6 / 2005.05.
■現場で役立つ情報、特に写真や資料を豊富に備えた死体検案のノウハウを中心に掲載。初心者からベテランまで、いつでも、どこでも、どのような場面でも必要とされる事項を網羅する。
●純然たる医学書ですが、研究者以外に需要があると予想できます。本書をもしサブカルチャー棚に置く書店員さんがいたら、相当のセンスだと思います。キーワードは法医学。

樹海の歩き方
栗原亨(1966-)著
イースト・プレス 本体1500円 タテ21cm 230p 付:樹海完全マップ(1枚)
4-87257-437-0 / 2005.05.
■誰もが知る自殺の名所、「帰らずの森」とも呼ばれる不可侵の地。「方位磁針が回り続ける」「幻の遊歩道が存在する」等、あらゆる謎を実地調査し、最深部への探索方法までも網羅した完全ガイド。遺体の写真を掲載した袋綴付き。
●いわずと知れた著名な廃墟探検家さんですが、この袋とじは流通的にはアリなのか?

エチオピア黙示録――野町和嘉写真集
野町和嘉写真・文
岩波書店 本体6200円 タテ31cm 191p
4-00-008079-2 / 2005.04.
■きわめて特異なキリスト教文化に支えられたエチオピア高原の厳しい暮らしと、飢餓や戦乱の記憶を写しとる。多難な時代を生き抜いた人びとの、光と闇の記録。
●日本人には想像しにくい、生きることのリアルな困難さ。

マネキン
林雅之著
パロル舎 本体3600円 タテ27cm 1冊(ノンブルなし)
4-89419-035-4 / 2005.05.
■写し出されたマネキンの表情は、「光の空間」では決して見せることのない、より深い美と穏やかさを湛えている。汚れたマネキンは、人に愛され続けた証明である。究極のマネキン美に迫った写真を収載。
●生命なきものに宿るなにものかを見るために。映画『イノセンス』やベルメールの主題につながる?

***

サブカル棚でこそ、生命とはなにかを考えさせる様々な思想書や科学書を展開してほしいですね。たとえば、宇野邦一さんの『〈単なる生〉の哲学』平凡社とか、小泉義之さんの『生殖の哲学』河出書房新社とか、フーコーの『性の歴史』全3巻・新潮社とか、小社のアガンベン著『アウシュヴィッツの残りのもの』とか。ベルタランフィの『一般システム理論』みすず書房とか、ヴァレラの『身体化された心』工作舎とか、ヴァイツゼッカー『生命と主体』人文書院とか。養老孟司さんや布施英利さんの本とか。

以上、今回は1812点の新刊のなかから選びました。(H)
[PR]

by urag | 2005-05-15 22:42 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 05月 15日

今週の注目新刊(第4回:05年5月15日[単行本編])

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

今週は点数が多いため、文庫新書編、単行本編、番外編と三部門に分けます。文庫編につづいて単行本編。

***

フロイト=ラカン
新宮一成(1950-)+立木康介編
講談社(講談社選書メチエ330 知の教科書) 本体1600円 タテ19cm 254p
4-06-258330-5 / 2005.05.
■「無意識」は「他者の語らい」というように、フロイトの独創的な発見は、ラカンによってすべて掬い取られ、深く大きく展開された。人間の「現実」を追究した思想の系としてのフロイト=ラカンが本当にわかる一冊。
●評判がいい新刊ですね。ちなみに今月26日には、岩波書店からラカンのセミネール第5巻『無意識の形成物(上)』(ISBN:4-00-023410-2)が刊行されます。また、次の新装版も発売されました。

フロイトを読む――解釈学試論
ポール・リクール(1913-)著 久米博訳
新曜社 本体7200円 タテ22cm 628, 10p
4-7885-0948-2 / 2005.05.
■1961年秋、著者がイェール大学でテリー記念講座として行なった3回の講義をまとめる。フロイトの全著作を周到精密に読み、自らの解釈学的立場との壮絶な知的対決を通してその哲学的意義を十全に解明。1982年刊の新装版。
●この新装版は以下の新刊にあわせての刊行です。ちなみに、来月には白水社から『解釈の革新』が復刊されます。

記憶・歴史・忘却(下)
ポール・リクール(1913-)著 久米博訳
新曜社 本体4500円 タテ22cm 362p
4-7885-0947-4 / 2005.05.
■「記憶と忘却」の弁証法の中で歴史叙述の可能性をつきつめた壮大な「記憶の政治学」の試み。下巻では歴史の批判哲学、記憶の条件としての「忘却」などを論じ、赦しえないものをいかに赦すかという「困難な赦し」の問題に至る。
●『時間と物語』(全3巻、新曜社)や『意志的なものと非意志的なもの』(全3巻、紀伊國屋書店)と並ぶ、リクールの主著です。全部を買い揃え(税込36,113円也)、なおかつ通読するのはたしかに骨が折れますが、特にこの『記憶・歴史・忘却』全2巻は必読でしょう。関連する主題をめぐるデリダ派の議論とのあいだの差異に注目。

イエスとパウロ――イスラエルの子
アンドレ・シュラキ(1917-)著 長柴忠一訳
新教出版社 本体1200円 タテ19cm 123p
4-400-12135-6 / 2005.04.
■イエスとパウロの二人を、ユダヤ教の立場から一つの神信仰を共有する預言者的実存として、深い共感を込めて描き出す。また同じアブラハム的一神教として、イスラム教を併せた三つの宗教に人類的平和への連帯と共働を促す。著者はアルジェリア生まれのユダヤ思想研究家。パリ大学法学博士。戦後イスラエルに移住し、エルサレム副市長などを歴任。ユダヤ教に関する多数の著書をフランス語で著す。
●シュラキさんの本は主に白水社の文庫クセジュなどで読めます。『イスラエル』『ユダヤ思想』『ユダヤ教の歴史』など。

夜の記憶――日本人が聴いたホロコースト生還者の証言
沢田愛子(山梨大学大学院医学工学総合研究部教授)著
創元社 本体3200円 タテ20cm 470p
4-422-30039-3 / 2005.05.
■決して忘れてはならない、ホロコースト生還者12人が恐怖と不安を乗り越えて語った真実の言葉。その「証言」をよりよく理解できるよう、詳細な解説を収めるほか、ホロコーストの記憶を継承していくことの意味を考察する。
●ボリューム感といい、読み応えのあるものだろうことが期待できます。

パレスチナから報告します――占領地の住民となって
アミラ・ハス(1956-)著 くぼたのぞみ訳 土井敏邦解説
筑摩書房 本体2400円 タテ20cm 299, 3p
4-480-83713-2 / 2005.05.
■ヨルダン川西岸地区ラマラに住むイスラエル人特派員からのレポート。土地や家屋の強制収用、道路封鎖、ジェニン侵攻…。和平のために今、求められているのは何か? 不条理な暴力の日常に生きる現地の人々の声を伝える。著者はイスラエル生まれのジャーナリスト。 同国日刊紙『ハアレツ』の特派員としてパレスチナに住み、現地から記事を送り続けている。
●ハスさんの記事を読んだことがない方は、グーグルなどで検索して、翻訳記事などを読まれるといいかもしれません。彼女はイスラエル人ですが、パレスチナのアラブ人の苦悩と苦境をつぶさに把握しようとしている良識派だと思います。

エボニクスの英語――アフリカン・アメリカンのスラング表現
泉山真奈美著
研究社 本体1800円 タテ19cm 247p
4-327-45188-6 / 2005.05.
■R&Bやラップ、ヒップ・ホップの曲を長年聞き取って訳してきた著者によるEBONICS攻略法! EBONICS(ebony+phonicsから成る造語/アフリカン・アメリカンのスラング)の英語表現を楽しく解説。
●まあ上記のような、攻略ですとか楽しくですとか商売っ気のある宣伝文句には目を瞑るとしまして。私はこの著者の政治的スタンスを知りませんし。エボニクスの文化的政治的歴史的背景を知るためのアプローチとしては、たとえば荒このみさんの二つの著書『アフリカン・アメリカンの文学――「私には夢がある」考』平凡社や『アフリカン・アメリカン文学論――「ニグロのイディオム」と想像力』東京大学出版会も参照しておきたいですね。シドニー・W・ミンツの『〈聞書〉アフリカン・アメリカン文化の誕生――カリブ海域黒人の生きるための闘い』(藤本和子訳、岩波書店)なども。

初稿チャタレー卿夫人の恋人
D・H・ロレンス(1885-1930)著 増口充訳
彩流社 本体2800円 タテ20cm 452p
4-88202-979-0 / 2005.05.
■現在巷に流布する「ワイセツ論争」を呼んだ第3稿を含め、「チャタレー」には3つの作品があった! 「森番」を共産主義者で階級的憎悪が激しい人物として設定し、3つの中で最もリアルで生き生きとした「初稿」を完訳。
●裁判沙汰と言えば、サドの『ジュスチーヌ』も三種類あるわけで。原作の時系列順に並べると、1787年版:澁澤龍彦訳『美徳の不幸』河出文庫、1791年版:植田祐次訳『ジュスチーヌまたは美徳の不幸』岩波文庫、1797(1799)年版:澁澤龍彦訳『新ジュスティーヌ』河出文庫もしくは佐藤晴夫訳『ジュスチーヌ物語又は美徳の不幸』未知谷。

情熱としての愛――親密さのコード化
ニクラス・ルーマン著 佐藤勉+村中知子訳
木鐸社 本体3500円 タテ22cm 299p
4-8332-2363-5 / 2005.04.
■シンボルによって一般化されたコミュニケーション・メディアとしての「愛」を手がかりに、親密な関係を生きる人間を見つめる。ゼマンティクとメディアの概念を軸に近代社会における「親密な関係」の深化の可能性を追究。

演劇のエクリチュール 1955-1957――ロラン・バルト著作集(2)
ロラン・バルト著 大野多加志訳
みすず書房 本体4200円 タテ21cm 279p
4-622-08112-1 / 2005.05.
■「民衆演劇の希望」「なぜブレヒトか?」をはじめとする重要な演劇批評、さらに論争の発端となるカミュ「ペスト論」など、緊張と期待にみちた時代の批評集。

衣裳のフォークロア
ピョートル・ボガトゥイリョフ(1893-1971)著 桑野隆+朝妻恵里子編訳
せりか書房 本体2300円 タテ19cm 218p
4-7967-0263-6 / 2005.05.
■バルトやエーコに影響を及ぼした、ロシアにおける「記号論的アプローチの先駆者」ボガトゥイリョフの、衣装の記号論の古典として定評のある表題作のほか、広告の記号や伝統と即興の関係を論じた論文5編を収録。81年刊の増補・新訳版。
●初訳は松枝到と中沢新一の両氏による英訳本からの共訳でした。このたびはスロヴァキア語原典を参照しつつロシア語訳版から翻訳したそうです。それにしても造本装丁が素っ気ないことよ。ボガトゥイリョフの日本語訳は、このほか、桑野隆訳『民衆演劇の機能と構造』未来社や、千野栄一+松田州二訳『呪術・儀礼・俗信――ロシア・カルパチア地方のフォークロア』岩波書店があり、両方とも入手可能ですから、ぜひこの機会に購入してみてはいかがでしょうか。お奨めです。

フィレンツェ文化とフランドル文化の交流――ヴァールブルク著作集(3)
アビ・ヴァールブルク著 伊藤博明+岡田温司+加藤哲弘訳
ありな書房 本体5000円 タテ22cm 318p 付:図(1枚)
4-7566-0586-9 / 2005.05.
■フィレンツェ人の美的心性とフランドルの彩り豊かな美術表現との、文化の相互交流が生む精緻な美の世界。世界の隠された徴を露にする、イコノロジーというテクネ-イデアの精華。
●全7巻のうち、これで5点まで刊行されたことになります。いずれも薄い本の割には高価ですが、ネームバリューによるものか、私はさほど違和感は感じていません。既刊書の進藤英樹訳『異教的ルネサンス』ちくま学芸文庫(ISBN:4-480-08814-8)もぜひどうぞ。

***

以上です。すべてを購入した場合、12点合計で税込41,685円也。(H)
[PR]

by urag | 2005-05-15 21:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 05月 15日

今週の注目新刊(第4回:05年5月15日[文庫新書編])

他社版元さんの新刊で、要チェックだなと感じた本を、毎週末、リストアップします。このほかにもたくさん素晴らしい本はありますが、自分がぜひ購読してみたいと思った書目に絞ります。

書誌情報の見方と配列は次のようになっています。

書名――副題
著者、訳者など
版元、本体価格、判型サイズ、頁数(本文, 本文とは別立ての巻末索引や巻頭口絵など)
ISBN、発行年月
■は、図書館流通センターさんのデータを引用&活用した内容紹介。
●は、私のコメントです。

今週は点数が多いため、文庫新書編、単行本編、番外編と三部門に分けます。まずは文庫編。いつもより多めに拾っています。

***

マルクス入門
今村仁司著
筑摩書房(ちくま新書533) 本体720円 タテ18cm 238p
4-480-06233-5 / 2005.05.
●ただいま「マルクス・コレクション」刊行中、という時節柄もあるので。

こまった人たち――チャペック小品集
カレル・チャペック(1890-1938)著 飯島周編訳
平凡社(平凡社ライブラリー538) 本体1100円 タテ16cm 276p
4-582-76538-6 / 2005.05.
■ひょんなことから平穏な日常が一変してしまう人間社会の不条理を、ユーモアと鋭い批評眼で綴る傑作集。スペイン市民戦争やナチスドイツの台頭、歴史上の侵略者を皮肉る寓話や警句は、混迷を深める世界に生きる全人類必読!
●カフカ(1883-1924)と同時代、同じ国(チェコ)で活躍した作家として読んでみる。世紀転換期のプラハ。

純粋理性批判(中)
イマヌエル・カント(1724-1804)著 原佑訳
平凡社(平凡社ライブラリー539) 本体1800円 タテ16cm 559p
4-582-76539-4 / 2005.05.
■「カント全集 第5巻」(1966年、理想社)の補訂版。 全3巻。

論理哲学論考
L.ウィトゲンシュタイン著 中平浩司訳
筑摩書房(ちくま学芸文庫) 本体840円 タテ15cm 230p
4-480-08920-9 / 2005.05.
●またまたまたまた新訳ですか。

藤本隆志+坂井秀寿訳『論理哲学論考』法政大学出版局、1968年、本体3000円、ISBN:4-588-00006-3
山元一郎訳『論理哲学論』中公クラシックス、2001年(1971年『世界の名著(58)』)、本体1200円、ISBN:4-12-160010-X
奥雅博訳『論理哲学論考――ウィトゲンシュタイン全集(1)』大修館書店、1975年、本体価4000円、ISBN:4-469-11011-6

という3つの定番があったところへ、今世紀になって、

黒崎宏訳『『論考』『青色本』読解』産業図書、2001年、本体3300円、ISBN:4-7828-0137-8
野矢茂樹訳『論理哲学論考』岩波文庫、2003年、本体700円、ISBN:4-00-336891-6

ときて、もはや打ち止めとばかり思っていました。だって、上記書はみんなまだ手に入るんですよ。競合しまくりじゃないですか。文庫棚では岩波文庫のみとの競合だから、という判断でしょうか。部分訳でしたら、

黒田亘編訳『ウィトゲンシュタイン・セレクション』平凡社ライブラリー、2000年(1978年『世界の思想家(23)』)、本体1300円、ISBN:4-582-76324-3

というのもあるのです。

そんなわけで、懐に余裕のある方はいっそのこと全部買ってみるのもいいかもしれません。全部買っても税込15057円。どうせなら、ズーアカンプ社から刊行されている原書(ISBN:3-518-10012-2)と、ラウトレッジから刊行されている草稿『Prototractatus』(ISBN:0-7100-6788-7)をこれらにあわせて買っても、合計二万円ていどです。異なる翻訳を比較し吟味するというきわめて高尚な読書をご堪能いただけることでしょう。

最澄と空海――日本人の心のふるさと
梅原猛著
小学館(小学館文庫) 本体638円 タテ16cm 365p
4-09-405623-8 / 2005.06.
■「梅原猛著作集(9)三人の祖師」(2002年)の抜粋。

日本の伝統
岡本太郎著
光文社(知恵の森文庫) 本体629円 タテ16cm 292p
4-334-78356-2 / 2005.05.
●光文社1956年刊が初版でしょうか。ハードカバーでは『岡本太郎の本(2)』みすず書房(ISBN:4-622-04257-6)がまだ入手可能ですが。一緒に、以下の文庫本もどうでしょうか。
岡本敏子編著『芸術は爆発だ!――岡本太郎痛快語録』(小学館文庫、ISBN:4-09-403671-7)

菊と刀――日本文化の型
ルース・ベネディクト著 長谷川松治訳
講談社(講談社学術文庫1708) 本体1250円 タテ15cm 423p
4-06-159708-6 / 2005.05.
●消滅してしまった現代教養文庫版「定訳」(社会思想社)の引継ぎ版ですね。

姜尚中にきいてみた! ――東北アジア・ナショナリズム問答
姜尚中著 『アリエス』編集部編
講談社(講談社文庫) 本体514円 タテ15cm 295p
4-06-275044-9 / 2005.05.
●学術文庫ではないというのがポイントです。

治療教育講義
ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)著 高橋巌訳
筑摩書房(ちくま学芸文庫) 本体1200円 タテ15cm 294p
4-480-08908-X / 2005.05.
●いまやシュタイナーもずいぶん文庫で買えるようになりましたね、ちくま学芸文庫のおかげで。『神秘学概論』『神智学』『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』『自由の哲学』『オカルト生理学』に続いて6点目ですか。『魂のこよみ』だけは、ちくま文庫。合計7点。

文庫ではありませんが、今月は以下のような新刊もありました。

精神科学による教育の改新――シュタイナー教育基礎講座(3)
ルドルフ・シュタイナー著 西川隆範訳
アルテ(発行) 星雲社(発売) 本体2000円 タテ20cm 190p
4-434-06054-6 / 2005.05.
■子どもの健全な成長を追究したシュタイナーの講義録を紹介するシリーズ。ヴァルドルフ学校設立の翌年に行われたバーゼル教育講義の邦訳。その教育のカリキュラム、オイリュトミー、方言と書き言葉、遊び等について語る。

シュタイナー医学入門
マイケル・エバンズ+イアン・ロッジャー著 塚田幸三訳
群青社(発行) 星雲社(発売) 本体2800円 タテ20cm 295p
4-434-06063-5 / 2005.05.
■シュタイナーのアントロポゾフィーないし精神医学は、人間を身体と心魂と精神からなるものとみる。生理現象の拡大が医療に大きな影響を及ぼすことを一群の医師が認識した結果誕生した、アントロポゾフィー医学を詳解。

***

以上です。(H)
[PR]

by urag | 2005-05-15 20:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)