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カテゴリ:本のコンシェルジュ( 882 )


2005年 10月 07日

山口晃の「すヾしろ日記」が面白い

a0018105_231321.jpg東京大学出版会さんが毎月発行しているPR誌「UP」の2005年4月号から、画家の山口晃さんが「すヾしろ日記」という絵日記を連載しています。およそ学術出版のPR誌に似つかわしくない、ユルーい内容で、毎回楽しみに読んでいます。ここさいきんの傾向では、夫婦漫才的光景が前面にでてきているのと、だんだん連載が面倒になってきたのか、コマ割がが大きくなっているような気がします。

先月号(9月号)では幼い頃のバキューム・カーへの偏愛を語り、今月ではしょっぱなからハナ×ソをめぐるお話で攻めてきます。奥さんは「下品!」と怒っているわけですが、山口さんはさほど意に介していないようです。その辺が笑える。もうどんどんネタがユルくなって、ユルいわりにはそこに山口さんなりの文明批評もあって、なんともいえない不思議な雰囲気を醸し出しています。

この先どれくらい続けてくれるのかわかりませんが、長く続けて欲しい連載です。(H)
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by urag | 2005-10-07 23:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 10月 03日

岩波書店さんよりアガンベン『残りの時』が刊行

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残りの時――パウロ講義
ジョルジョ・アガンベン著 上村忠男訳
岩波書店 05年9月刊 本体2800円 46判上製308頁 ISBN4000018175
■帯文より:新しい思考のはじまり、パウロの言葉で、現代思想の最前線を照らす。よみがえった「パウロの手紙」が、思想史の風景を一変させる。

■カバーソデ紹介文より:パウロ書簡に、新しい法と権力の理念を掘り起こし、その基盤にある時間変容の経験に論理的な表現を与えて、政治哲学と存在論とを架橋しようとする。「残りの時」とは、終末ではなく、祭のあとの時間でもない。それは過去と未来とを分離する「今・ここ」を、さらにもう一度切断することによって現れる、実存と共同性にかかわる異質な次元のことなのだ。パウロが「召命」と名づけたこの次元の経験は、遠くヘーゲルの止揚に、マルクスの階級に、そしてデリダの差延にもその共鳴版を見いだす。ベンヤミンとともに著者が試みる、「メシアニズム」の再生は、世俗化と啓蒙による近代という精神史の常識を揺るがす起爆力をもち、現代の生存と政治の命運に知られざる視野を提供する。

■解説対談「アガンベンの時」(上村忠男×大貫隆)より:〔『残りの時』は〕新約聖書学の分野に文献学的にも深く分け入りながらも、それを同時に内側から突き破って、現代思想の最先端に接合していこうという、じつに大胆な試みであるということができる。〔・・・〕論の密度がことのほか高いうえに、きわめて包括的な視野をもった作品でもあって、〔アガンベンの〕言葉を借用させてもらうなら、〔彼自身の〕これまでの仕事全体がひとつのメシアニズム的な展望のもとで「総括帰一」されています。

●『アウシュヴィッツの残りのもの 〔「ホモ・サケル」第三部〕』(原著1998年、日本語訳=月曜社)と『開かれ』(原著2002年、日本語訳=平凡社)のあいだの2000年に刊行されたのが本書です。アガンベンの著書は一冊ずつが緊密な連環の内に書かれています。本書『残りの時』では、『アウシュヴィッツの残りのもの』で鍵概念になっていた「残りのもの」がその引用原典である聖書(「ローマ人への手紙」)にまで遡って再検討されています。

●言ってみれば、本書はアガンベンの哲学におけるハードコアの一断面を示したもので、『ホモ・サケル』三部作における「残りのもの」をめぐる長大な注釈がこの一書となっていくわけです。アガンベンの諸著作は固定的な主従関係にあるというよりは、面から面への壮大な縦覧として立ち現れます。

●しっとり落ち着いた装丁は、間村俊一さんによるものです。書名が銀の箔押しで、とても綺麗です。間村さんによるアガンベンの本の装丁は、平凡社の『開かれ』に続いてこれで二冊目。『開かれ』もとても綺麗な本です。

●某書店の人文書担当者氏は、本書と、バディウの『聖パウロ』(河出書房新社)を併読していると言っていました。さすがですね。『残りの時』の参考文献には、カール・バルトの『ローマ書講解』(上下巻、平凡社ライブラリー)や、ヤーコプ・タウベスの『パウロの政治神学』(1993年刊、未訳)などが挙がっていました。

●訳者の上村忠男さんと聖書学者の大貫隆さんによる巻末対談「アガンベンの時」は本書の的確な講評になっていて必読です。上村さんは本書と同時に小社から『涜神』を上梓されたわけで、その精力的なご活躍には頭が下がるばかりです。

●今月下旬には、ネグリ+ハートの『マルチチュード』が上下巻でNHK出版から、また、エーコの『美の歴史』が某社から刊行されると聞きます。月刊誌『現代思想』の11月号は「マルチチュード」特集。イタリア現代思想でフェアを展開される書店さんもちらほら出てきました。(H)
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by urag | 2005-10-03 00:24 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 10月 02日

今週の注目新刊(第22回:05年10月2日)

今週気になったのは、岩波少年文庫で全2巻で刊行されていたe.o.プラウエン(1903-1944)の『おとうさんとぼく』が、青萠堂より全三巻本になって帰ってきたことです。『大好き!ヒゲ父さん――いたずらっ子に乾杯!』、『ごめんね!ヒゲ父さん――わんぱく小僧、どこ行った?』 、『最高だね!ヒゲ父さん――いつも一緒に歩いていこう』 。

いずれも絵本仕様で、岩波少年文庫版に親しんできた自分には、体裁も題名もやや違和感があるのですが、内容にかわりがあるわけではないので、皆さんに広くおすすめしたいです。面白おかしくも愛情溢れる父子のやり取りに、笑ったり泣いたりできるすばらしい作品です。

プラウエンはドイツの著名な風刺漫画家で、ナチスに逮捕され、牢獄で自殺しました。日本でも折々に作品展が開かれることがあったと記憶していますが、本作の再刊をきっかけに再評価の機運が高まれば最高だと思います。

プラウエンの同時代人である劇作家ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)の名作詩集『子供の十字軍』 (長谷川四郎=訳、高頭祥八=絵)も、パロル舎から新装復刊されました。この長谷川訳は、1978年に朔人社から刊行され、1986年にはリブロポートからも刊行されていました。また、同作品は、矢川澄子による訳と山村昌明による銅板画で、1992年にマガジンハウスからも刊行されていました。

***

誰も読まなかったコペルニクス――科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険
オーウェン・ギンガリッチ(1930-)著 柴田裕之(1959-)訳
早川書房 05年9月刊 本体2,300円 46判396頁 ISBN4-15-208673-4
■帯文より:天才科学者をつなぐネットワークは、本の余白の書き込みで成り立っていた。コペルニクスの古典600冊の行方から、科学史上の謎とドラマに迫る会心の書。

象徴と芸術の宗教学
ミルチャ・エリア-デ著 ダイアン・アポストロス・カッパドナ編 奥山倫明訳
作品社 05年09月刊 本体2,800円 46判299頁 ISBN:4861820391
■帯文より:昼の精神と夜の精神を往還し、〈聖なるもの〉を探究し続けた知の巨人の活動の全域を一望する格好の入門書。

シュラクサイの誘惑――現代思想にみる無謀な精神
マーク・リラ著 佐藤貴史(1976-)+高田宏史(1978-)+中金聡(1961-)訳
日本経済評論社 05年09月刊 本体2,800円 46判254頁 ISBN4818818003
■版元紹介文より:哲学者はなぜかくも政治に惹かれるのか。ハイデガーやアーレント、ベンヤミン、フーコー、デリダら、現代思想のスターたちの「失敗」から解き明かす、ユニークな政治哲学入門。

■目次:
第1章 マルティン・ハイデガー、ハンナ・アーレント、カール・ヤスパース
第2章 カール・シュミット
第3章 ヴァルター・ベンヤミン
第4章 アレクサンドル・コジェーヴ
第5章 ミシェル・フーコー
第6章 ジャック・デリダ
終章 シュラクサイの誘惑

●無謀や失敗という表現から推察するに、ポレミカルな本でしょう。引き合いに出される思想家はどれも大物ばかり。政治学から見た現代思想といったところ。

資本主義国家の未来
ボブ・ジェソップ著 中谷義和監訳
御茶の水書房 05年9月刊  本体6,200円 A5判450頁 ISBN4-275-00392-6
■版元紹介文より:利潤志向的で市場媒介型の資本蓄積の足かせによって支配されている世界を変えるための政治実践的な的確な基礎を提示。

生きる意味――「システム」「責任」「生命」への批判
イバン・イリイチ著 デイヴィッド・ケイリー編 高島和哉訳
藤原書店 05年9月刊 本体3,300円 46判461頁 ISBN4-89434-471-8
■帯文より:イリイチ自身が初めて平明に語り下したその思想の集大成。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-10-02 23:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 10月 01日

書肆心水さんより『ブランショ小説選』が刊行

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書肆心水さんより『ブランショ小説選』が発売されました。本屋さんでは早いところは昨日から店頭販売を始めています。私も都内某所で購入しました。

今回収録されているのは、
「謎の男トマ(1950年の改訂版)」の菅野昭正さんによる「改訳」
「死の宣告」三輪秀彦訳
「永遠の繰言(牧歌/窮極の言葉)」三輪秀彦訳
「訳者あとがき――『謎の男トマ』の周辺」菅野昭正
です。

菅野さんの改訳はこれで二度目(新潮社→筑摩書房→書肆心水)。「(ブランショのテクストは)本当に手強い相手」との感想に重みを感じさせます。

三輪さんのパートは健康上の理由から改訳ではなく、校正刷りの確認のみとのこと。原書新版では削除された「死の宣告」の末尾の2段落は、訳文では残されています。

真っ赤な紙のカバーに赤い半透明のオビ、表紙も花ぎれも赤で、鮮烈な印象です。オビに浮かび上がる姿は、若き日のブランショ自身。シンプルで、なおかつインパクトの強い装丁ですね。厚みもあって、モノとしての存在感があります。惚れました。

bk1では早くも24時間以内の出荷を開始(国内送料無料)。同業他社のどこよりも早いデータ登録です。GJ!

担当編集者であり発行者である清藤洋さんの本書に寄せる言葉が「最新刊」のコーナーで読めます。

「圧倒的な才能と磨き上げられた思索をもって鳴るモーリス・ブランショの邦訳書が、現在あまり店頭で売られていないことを残念に思っておりましたので、後発の出版社にできる範囲で公刊販売の任をつとめたく、このような小説選を刊行いたしました」と書かれています。

出版界の先達が残した宝石を埋もれさせるのではなく再生させよう、という姿勢に、同業者として大きな共感を覚えます。

同書肆では、この次は天沢退二郎さんの『至高者』(初版は筑摩書房)が準備されています。おそらく改訳版となることでしょう。(H)
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by urag | 2005-10-01 21:13 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2005年 09月 26日

今週の注目新刊(第21回:05年9月25日)

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笑いと哲学の微妙な関係――25のコメディーと古典朗読つき哲学饗宴
山内志朗(1957-)著
哲学書房、05年8月刊、本体2400円、46判上製254頁、ISBN4-88679-152-2

■帯文より:笑いの種子を前菜においしく哲学を食す。笑いとはエネルゲイアである。哲学もまた。微笑、含笑、大爆笑。生きること、為すこと、考えることの根に笑いが触れて、おのずから心が養われる。このときすでに、哲学が始まっているのだ。笑いは、魂の養分。

●シリーズ「魂の本性(コレクション・ヌース)」の第三弾。2003年6月から2004年5月まで25回にわたって「中日新聞」に連載された「哲学つまみ食い」を加筆したもの。内容は古今東西の思想家の諸著作からテーマを借りて、哲学の諸相や学問の根幹を平易な言葉で講釈したもので、本編はオヤジギャグ満載のエッセイ(これが連載された部分)、それに続いて(今回加筆された)「原典を読んでみよう」という関連原典の引用、「ちょっとひとこと」という補足的コメント、「てびきになる書物」という参考文献一覧が付されています。

●そのオヤジギャグの濃さたるや、世代によって好悪が分かれるところかもしれませんが、ごくごく気楽に読める本なので、通勤通学途中の読書に最適です。ふだんは哲学や現代思想の本など絶対に手に取らないという読者も、本書を読めばいつの間にかかなりディープな場所にまで連れて行かれることうけあい。個人的には、エックハルトと引きこもりというテーマをもっと山内先生に詳しく聞いてみたい気がしました。


ピーク・オイル――石油争乱と21世紀経済の行方
リンダ・マクウェイグ著、益岡賢訳
作品社、05年9月刊、本体2400円、46判上製386頁、ISBN4-86182-050-2

■帯文より:ピーク・オイルとは、世界の石油産出が、あと数年でピークに達することを意味する。以後、産出量は減少し、安価な石油の時代は終焉を迎える。巨大石油企業の思惑、欧米、中国、OPEC諸国の駆け引き、代替エネルギー開発、地球温暖化問題など、エネルギー問題の歴史を未来を多角的に論じた衝撃の書。

●いわゆる「世界資源戦争」に関する類書は近年増えてきましたが、本書も恐い本です。私が小学生だった70年代には、石油はあと数十年で枯渇するとはっきり教えられていました。しかしその後、代替エネルギーの開発は「石油以後」の時代を生むほどには進んでいないし、なんとなくまだまだ石油に頼れるような世の中のゆるんだ空気というものがありました。

●実際のところ、真相はかなり深刻。昨今、原油価格高騰のニュースをよく耳にしますが、それを単に政治的もしくは経済的次元にかかわる一時的現象と切り捨てるのはまずかろうと思います。いよいよ「ピーク・オイル」の前兆が黒い影となって一般市民の目にも見えるようになってきたと言ってもいいのかも知れません。今後ますます私たちの生活を脅かすようになる石油資源問題。本書は意識ある市民の必読書になるでしょう。

以上です。(H)
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by urag | 2005-09-26 22:19 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 09月 18日

今週の注目新刊(第20回:05年9月18日)

bk1の「新入荷一覧」ではこれだ、と思える書目に出会いづらく(重いので見づらいし)、ヤフー・ブックスの「本日の新刊」――こちらも特別見やすいわけではありませんが――を見直して書目を拾っている感じです。その後改めてbk1で検索を掛けてみると、おや、いずれも24h以内に出荷、となっています。ひょっとして「一覧」に載っているのは「24h」の全部ではない? ええ?!

今週は芸術書系に収穫ありです。パノフスキーにユイスマンス。言うことなしです。

***

ティツィアーノの諸問題――純粋絵画とイコノロジーへの眺望
エルヴィン・パノフスキー著 織田春樹訳
言叢社 2005年8月 本体7,600円 A5判316+29P ISBN4-86209-003-6

■帯文より:パノフスキーが最後の著作に託した〈芸術形象の問題圏〉とは何だったのか。文化人類学から歴史、文学、科学、音楽、映画に至るまで、美術史以外の人文科学の研究者たちが、それぞれの領域の新たな創造のために不可欠とするにいたったパノフスキーの仕事を代表する最晩年の著作。完訳。


三つの教会と三人のプリミティフ派画家
J.K.ユイスマンス(1848-1907)著 田辺保訳
国書刊行会 2005年9月刊 本体3,800円 A5判220p ISBN4-336-04722-7

■版元紹介文より:〈まさしく傑作の名に価する〉と激賞された、ユイスマンスの最重要エッセイ評論集。グリューネヴァルトの十字架刑図やフレマールの画家の聖母像の謎と神秘に迫り、ノートルダム大聖堂をはじめとした教会堂の魂のあらわれを余すところなく描く、比類なき美術批評。本邦初訳。


映画における意味作用に関する試論――映画記号学の基本問題
叢書記号学的実践 (23)
クリスチャン・メッツ(Christian Metz. 1931-1993)著 浅沼圭司監訳 木村建哉ほか訳
水声社 2005年9月 本体5,000円 A5判440頁 ISBN4-89176-484-8

●現物を見ていませんが、本書は87年に第二巻が翻訳された『映画における意味作用に関する試論』の第一巻だと思われます。そうだとすると実に18年ぶりの刊行ですね。ちなみにメッツの既訳書は以下の通りです。

『映画と精神分析――想像的シニフィアン』鹿島茂訳、白水社、1981年8月刊、46判285頁。
原題: Le signifiant imaginaire: psychanalyse et cinema.
※白水叢書(57)として刊行されたのが本邦初訳でした。しかも鹿島さん訳。当時、数え年で32歳。

『映画記号学の諸問題』浅沼圭司監訳、書肆風の薔薇(現=水声社)、1987年3月刊、A5判 332頁、ISBN4-89176-203-9 原題: Essais sur la signification au cinema, tome 2.
※叢書記号学的実践(8)として刊行。当時、風の薔薇は白馬書房が発売元でした。

『エッセ・セミオティック』樋口桂子訳、勁草書房、1993年3月刊、46判269頁、ISBN4-326-15269-9 原題: Essais semiotiques.


ジャン・パウル中短編集 (I)
ジャン・パウル著 恒吉法海訳
九州大学出版会 2005年9月刊 本体8,500円 A5判551頁 ISBN4-87378-875-7

■帯文より:「彼の詩的レンブラントは、より破茶滅茶となり、より小都市風になるにつれ、より一層神々しくなる。」――フリードリヒ・シュレーゲル

■収録作品:『ビエンロートのフィーベル』の著者フィーベルの生涯/カンパンの谷/教理問答の十戒の下の木版画の説明/など

●九州大学出版会はこれまでも地道にジャン・パウルの翻訳書を刊行してきました。それらはすべて、九州大学大学院言語文化研究院の恒吉法海(1947-)教授によるもの。こうした積み重ねの賜物を私たちは幸いにも手にすることができるわけです。

●ちなみに九州大学出版会が、九大にのみ所属しているのではなく、沖縄・九州・中国の国公私立27大学の共同学術出版会であることはあまり知られていないように思います。


アイゼンシュタインとクロネッカーによる楕円関数論
シュプリンガー数学クラシックス 第16巻
アンドレ・ヴェイユ(1906-1998)著 金子昌信訳
シュプリンガー・フェアラーク東京 2005年9月 本体2,500円 A5判122頁 ISBN4-431-71169-4

■帯文より:「この本を書くのは、私にとってたいへん楽しみであった。読者がそれに気づいてくださることを希望する。」――アンドレ・ヴェイユ

■版元紹介文より:本書は,アンドレ・ヴェイユがプリンストンの高等研究所で行なった講義をもとに書き下ろした、楕円関数論の解説書である。1976年に初版が出版されて以来、数十年以上にわたって版を重ねてきた名著である。

■原題:Elliptic Functions According to Eisenstein and Kronecker.

■目次より:

第I部 アイゼンシュタイン
  第I章 序
  第II章 三角関数
  第III章 基本となる楕円関数
  第IV章 基本関係式と無限積
  第V章 変奏I
  第VI章 変奏II

第II部 クロネッカー
  第VII章 クロネッカーへの前奏曲
  第VIII章 クロネッカーの二重級数
  第IX章 終楽章 ――アレグロ・コン・ブリオ――

●数学者アンドレ・ヴェイユは、いわずと知れたシモーヌ・ヴェイユの兄です。2004年に同版元から刊行された巻の自伝の増補新版では、シモーヌの思い出がほんの少しですが告白されています。妹を心配する兄の素顔を垣間見ることができます。


三国志名言集
井波律子著
岩波書店 2005年9月 本体2,500円 46判14+366+33頁 ISBN4-00-023013-1

■帯文より:波乱万丈の物語りを彩る名言・名句・名調子。物語の〈さわり〉を楽しみ、言葉の〈張り〉と〈響き〉を味わう。「三国志」がいよいよ面白い!


***

以上です。(H)
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by urag | 2005-09-18 17:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 09月 13日

別冊「ifeel」出版部50周年記念号

紀伊國屋書店出版部さんが設立50周年を迎えられたことは皆様ご承知の通りです。「ifeel」の別冊特集号PDFで読めます。紀伊國屋書店の店頭でも無料配布している冊子ですが、店頭に出かけずともウェブサイトからDLして読めるというのは本当に便利ですねえ。

目次より:

年表:50年の歩み
エッセイ:紀伊國屋新書があった頃
 新宿発の文化活動/矢島文夫
 村上一郎さんの幻影/岡井隆
 私にとっての紀伊國屋新書/黒川紀章
 『自覚の精神病理』のこと/木村敏
エッセイ:『利己的な遺伝子』のインパクト/日高敏隆
エッセイ:紀伊國屋書店と文化の香り/斎藤美奈子

アンケート:紀伊國屋の本 私のおすすめ
 アデア『ベースボールの物理学』/松井秀喜
 ジェインズ『神々の沈黙』/養老孟司
 ホームズ『小さな塵の大きな不思議』/椎名誠
 橋川文三『ナショナリズム』/姜尚中
 コjリングウッド『歴史の概念』/山内昌之
 北川透『中原中也の世界』加藤典洋
 川村邦光『オトメの祈り』『オトメの身体』『オトメの行方』/上野千鶴子
 アンドレーエ『化学の結婚』/谷川渥
 いとうせいこう『ボタニカル・ライフ』/最相葉月
 ペラン『母の手を逃れて』/久田恵
 シオラン『生誕の災厄』/宮崎哲弥
 加藤恵津子『〈お茶〉はなぜ女のものになったか』/永江朗
 尾崎秀樹『大衆文学』/児玉清
 西村三郎『毛皮と人間の歴史』/与那原恵
 斉藤環『ひきこもり文化論』/村上龍
 ボードリヤール『消費社会の神話と構造』/北田暁大
 斉藤美奈子『文学的商品学』/米原万里
 佐藤雅彦『砂浜』/岩井俊雄
 エンジェル『動物たちの自然健康法』/横尾忠則

厳選レビュー多面体: 
 永井良和・橋爪紳也『南海ホークスがあったころ』/枝川公一・遥洋子・綱島理友
 リドレー『ゲノムが語る23の物語』/松原謙一
 〃『やわらかな遺伝子』/渡辺政隆
 コント=スポンヴィル『哲学はこんなふうに』/池田晶子

***

紀伊國屋書店さんの出版物は私も多数を購読してきました。その中から強いて選書するとすれば、ブランショ『焔の文学』、ユング『元型論』、フロム『破壊』といった大著も重要ではありますが、私はラプージュ『ユートピアと文明――輝く都市・虚無の都市』(1988年)を挙げておきたいと思います。

ラプージュは古代から19世紀に至る西洋のユートピア思想を渉猟しています。そして「現代」について彼はこう述べます、「現代社会は巨大な時計の様相を呈し、世界の市民全員が、その生存を刻むコンピューターから時計にいたる際限のない機会の再建のない歯車仕掛のなかにいて、奴隷化し、安売りや投売りに供され、中性化し、消されてゆく。もはやユートピア人しかいないのだ」(196頁)と。

私たちが生きている現在が皮肉な意味での「ユートピア」、もしくは理想の必然的反転の結果としてのディストピアだとするならば、私たちが再考しなければならないのはむしろ、フーコーやサイードの示唆から独自に練り上げられた、上村忠男さんの「ヘテロトピア」の視座なのかもしれません。

建築家たちはよりいっそう、現実と理想を近づける試みを続けてきました。たとえば、ドクシアディスが提唱したような実現可能な都市計画としての「エントピア」や、ソレリがアリゾナの砂漠のど真ん中で創り続けている実験都市「アーコサンティ」など。ただし、彼らのオルタナティヴ志向と、「ヘテロトピア」の視座とを橋渡しするのは、必ずしも容易ではありません。

「ヘテロトピア」の視座はユートピアと現実社会の基盤をともに解体し再審に付しますが、建築家によるオルタナティヴは、ごく一般化して言えば、ユートピアを再審には付しても、諸価値の具現化において、良かれ悪しかれ現実社会の「現状」との遠近感の中で計画されなくてはなりません。

ソレリの「アーコサンティ」は観光地でしかない、などと皮肉を言おうとしているのではありません。理想を避難所とするのでもなく、現状に拘束されるのでもないオルタナティヴを模索することの困難さを噛み締めたいと思います。改革と持続可能性との間の微妙な相克を調停することがそこでは要求されます。「現状」の真っ只中に穿たれたオルタナティヴな地点に踏み留まりつつ、掘り下げ、堀り広げる必要があるわけです。留まりつつ移動するという矛盾がそこでは果たされなければなりません。(H)
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by urag | 2005-09-13 23:54 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 09月 12日

今週の注目新刊(第19回:05年9月11日)

ヤフーブックスの「今日の新刊」と、bk1の「新入荷一覧」を一週間分見ました。ここ一週間で、平凡社ライブラリーやちくま学芸文庫、講談社文芸文庫などに目立った新刊が多かったのですが、何と言っても注目は次の一冊。

オーストリア皇太子の日本日記――明治二十六年夏の記録
フランツ・フェルディナント(1863-1914)著 安藤勉訳
講談社学術文庫 2005年9月刊 本体840円 文庫判237頁 ISBN:4061597256

■帯文より:本邦初訳! 「サラエボの悲劇」の主人公が綴る日本紀行。

■版元紹介文より:1892年末、オーストリア帝国帝位継承者、皇太子フェルディナントは世界周遊の旅に出た。翌年長崎に到着した彼は東京を目ざすが、その途次、各地で日本文化との出会いを堪能しつつ、のちにウィーン民族学博物館日本部門の礎をなす18000点もの美術品等の蒐集も行う。21年後、サラエボで暗殺される悲運の皇太子若き日の日本紀行。

■目次:
第1章:長崎-熊本-下関-宮島
第2章:京都-大阪-奈良-大津-岐阜
第3章:名古屋-宮ノ下-東京-日光-横浜

●彼の名前は、その暗殺による死(1914年6月28日)が第一次世界大戦のきっかけになったことで、世界史に刻まれています。本書は海外要人の眼から見た明治期日本の面影を伝える貴重な記録となっています。さいきん平凡社より刊行された資料写真集『ケンブリッジ大学秘蔵明治古写真』(ISBN4-582-83283-0)などと合わせて購読すると、当時の日本がいっそう偲ばれて、しばしのタイムスリップを楽しめることでしょう。

***

時節柄、911関連の新刊を1点だけ挙げたいと思います。『マウス』(晶文社)の著者アート・スピーゲルマンのコミック『消えたタワーの影のなかで』(小野耕世訳、岩波書店、B4判変型並製40頁、本体3,800円、2005年9月9日刊、ISBN4-00-022542-1)です。

『マウス』(および『マウスII』)ではスピーゲルマンはホロコーストを描き、ピュリッツァー賞を受賞しました。彼の両親は絶滅収容所のサヴァイヴァーです。そして今回は自らが目撃した911を描きます。四色刷りという豪華さ。大判な本ですし、買切版元の岩波としては部数を絞っているでしょうし、3800円は仕方ないのかも。スピーゲルマンのコミックは個性が強いので、好みは分かれると思いますが、ニュースでは知りえないアメリカの一「内面」を垣間見ることができるでしょう。

以上です。(H)
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by urag | 2005-09-12 22:24 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 09月 11日

「シェリング著作集」が来月から燈影舎より刊行開始

今春から刊行との情報が流れていた、燈影舎版『シェリング著作集』全5巻がいよいよ来月(2005年10月)下旬から刊行開始になります。書店に案内チラシが流れていると聞き及びますので、いよいよ確度が高くなったということでしょう。

燈影舎と言えば、京都学派の古典を復刊していくシリーズ『京都哲学撰書』や、『西田哲学選集』など、地道な出版活動を続けている京都の出版社です。母体は西田天香氏が明治37年に創設した一燈園という思想的・宗教的団体で、昭和4年に財団法人として認可された「懺悔奉仕・光泉林」が運営しています。建築、演劇、農業、学校などの多角的なグループを形成する特異な団体です。その一角が燈影舎ということになります。

「没後150年記念特別企画」と銘打たれた今回の日本初の著作集は、シェリング(1775-1854)の全生涯にわたる膨大な著作から主要作を厳選したものです。「主要著作、論文の初版本を底本とし、読み易く明快に翻訳」とのこと。

編集幹事は、高山守さん(東京大学教授)と松山壽一さん(大阪学院大学教授)。高山さんは日本シェリング協会の会長をおつとめになっておられます。協会はもちろんこの企画をバックアップされているのでしょうが、監修者と協会役員はあまり重複しているようには見えません。協力はバイエルン科学アカデミー・シェリングコミッション。

A5判上製カバー装で、平均500頁強、各巻の定価は税込で8,000円台だそうです。書店店頭で配布され始めた内容見本によれば、全5巻の内容構成は以下の通り。

第1巻:自我と自然の哲学 (高山守・松山尋一=編) 第2回配本:06年1月下旬
 哲学の原理としての自我について
 独断論と批判主義に関する哲学的書簡
 自然哲学に関する諸考案 序説
 世界霊について (抄訳)
 自然哲学体系の第一草案 (抄訳)
 自然哲学体系草案 序説

第2巻:超越論的観念論の体系 (久保陽一・小田部胤久=編)
 超越論敵観念論の体系

第3巻:同一哲学と芸術哲学 (伊坂青司・西村清和=編) 第1回配本:05年10月下旬
 私の哲学体系の叙述
 哲学体系の詳述
 芸術の哲学 一般部門
 学問論 第十四講 ほか
 哲学一般に対する自然哲学の関係について (抄訳)
 哲学との関連からみたダンテについて

第4巻:自由と歴史の哲学 (藤田正勝・山口和子=編)
 哲学と宗教
 人間的自由に関する哲学的探究
 シュトゥットガルト私講義
 諸世界時代 第一草稿

第5巻:神話と啓示の哲学 (大橋良介・諸岡道比古=編)
 神話の哲学への歴史的批判的序論 第十、二十二、二十四講 ほか
 啓示の哲学 第一書 (第一~八講)

画期的な企画で、大いに期待できます。同時代の哲学者では、ヘーゲルには岩波書店の全集があり、フィヒテには晢書房の全集(刊行中)があり、ショーペンハウアーには白水社の全集があります。全5巻とはいえ、こうした著作集を待ち望んでいた読者は少なからずいるはず。待ち遠しいですが、まもなくです。(H)
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by urag | 2005-09-11 23:58 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2005年 09月 05日

TRC「週刊新刊案内」復活を望む声の高まり

雨崎良未さんのブログ [ EP: end-point ] の2005年9月4日のエントリー「新刊リストよ、お願いだからザオラル!」では、TRCの「週刊新刊案内」がどれほど有用だったかが非常に手際よく十全にまとめられています。私もこれまで幾度か言及してきましたが、TRCがブックポータルのサービスを終了したことについて、誰とも話し合えず、孤独を感じていました。

ところが雨崎さんの上記エントリーを読み、「週刊新刊案内」終了を惜しむ声、復活を望む声があちこちであがっていることを知って、大いに共感を覚えている次第です。

雨崎さん個人としては、これまで「週刊新刊案内」を利用して、自身で購入する書籍と、図書館に購入依頼を出す書籍をピックアップしておられたとのこと。この、「図書館に購入依頼を出す書籍をピックアップ」するということを明示されたのは非常に重要です。

TRCは個人客に、以後はbk1を利用するよう促しています。TRCにとって個人客は、新刊書籍を「個人消費」するだけでなく、図書館が本を購入するよう自由にリクエストを出せる存在なわけで、その意味では「間接的」な大得意先であるはずなのですが、TRCはそのことを低く見積もっていると思わざるを得ません。

有料でもいいから情報が欲しい、という声があるのも事実なようです。私としては、無料提供での復活を望んでいます。TRCは個人客に無料提供するかわりに、個人客を利用してTRCの収益に繋がるような何かしらのプログラムを作るといいのではないかと思うのです。

「週刊新刊案内」復活のために、個人客が連帯していけるならとても嬉しいです。(H)
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by urag | 2005-09-05 20:54 | 本のコンシェルジュ | Trackback(2) | Comments(2)