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2017年 01月 24日

アガンベン『哲学とはなにか』ほか、書評情報

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
昨年イタリアで刊行されたばかりのアガンベンさんの最新刊『哲学とは何か』の訳書が早くも上村忠男さんによって実現されました。書誌情報を以下に掲出しますが、目次を含めた詳細は書名のリンク先をご覧ください。なお、上村さんは来月、グラムシ『革命論集』を講談社学術文庫より上梓されます。2月10日発売予定、本体1,680円です。弊社の12月新刊、カッチャーリ『抑止する力』を合わせると、3か月連続でイタリア思想の訳書を世に送り出したことになります。

哲学とはなにか
ジョルジョ・アガンベン著 上村忠男訳
みすず書房 2017年1月 本体4,000円 四六判上製224頁 ISBN978-4-622-08600-0

帯文より:音声を奪われて文字と化した知の弱さ、無調律の政治風景。哲学は今日、音楽の改革としてのみ生じうる。言葉の始原=詩歌女神〔ムーサ〕たちの場所へと、思考を開く。

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なお『抑止する力』と『哲学とはなにか』をめぐっては、文化人類学者の真島一郎さん(東京外国語大学大学院国際協力講座教授)がブログ「真島一郎研究室」1月21日付エントリー「カッチャーリ 『抑止する力』 / アガンベン 『哲学とはなにか』 」で論及してくださっています。

「現実の歴史のうちでカテコーンの抑止的な力が危機を迎えるとき、 当のカテコーンによって維持されていたプロメーテウス的秩序が、エピメーテウス(プロメーテウスの弟)の時の到来により復讐されることになるというのが、著者カッチャーリの予測です。とりわけ、世界の現在と未来を展望する本書末尾の一文は、読み手を戦慄させることになるかもしれません。「プロメーテウスは引退してしまった。あるいはふたたび岸壁に縛りつけられてしまった。そしてエピメーテウスがわたしたちの地球を徘徊してはパンドラの壺の蓋をつぎつぎに開けて回っている」(159頁)。エピメーテウスが扉をひらいてしまう永続的な危機の時とは、かつて『政治神学』のシュミットが、「例外状況」についてふれたのち鮮やかに描いてみせた、ドイツロマン派の「永遠の対話」と、そしてあの「純粋決定/決意」の対立と、どこまで交叉した問題系を形成しうるのか、大いに興味を惹かれるところです」。

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いっぽう最近、弊社11月既刊書、森山大道×鈴木一誌『絶対平面都市』に書評が2本寄せられています。ひとつは「キネマ旬報」2017年2月上旬号「映画・書評」欄に掲載された上野昂志さんによる書評「急かされ、考えさせられる」です。

「『遠野物語』に書かれた森山の言葉を引いた鈴木が、「現実世界のあちら側に、写され、コピーされ、印刷されたものたちの別世界がかたちづくられている」というのは「単なる比喩ではないんですね」と問い、森山が「比喩ではすまない感じ」といい「おびただしい印刷物の世界。コピーされたものの反乱〔ママ〕のなかに人々はいますから」と応えるというような刺激的な応酬が随所にある」(本書294~295頁参照)。

もうひとつは「朝日新聞」2017年1月22日付読書欄の、大竹昭子さんによる書評です。

「森山の発言はつねにブーメランのように同じ場所に戻ってくる。「なにも写さなかったんじゃないか」という自問と「こうしちゃいられない」という焦り。〔・・・〕無意識と自意識のはざまを行き来する言葉の彼方から、写真の不思議さが立ち上がってくる。世界を理解するのではない。世界が謎の集積であることを可視化するのが写真なのだと」。

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by urag | 2017-01-24 17:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 22日

注目新刊:栗原康さんの一遍上人伝、ほか

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死してなお踊れ――一遍上人伝
栗原康著
河出書房新社 2017年1月 本体1,600円 46版上製256頁 ISBN978-4-309-24791-5

帯文より:家も土地も財産も、奥さんも子どもも、ぜんぶ捨てた一遍はなぜ踊り狂ったのか――いま最高度に注目される思想家による絶後の評伝。
推薦文(瀬戸内寂聴氏):踊り狂うほど、民衆を熱狂させた、一遍上人の希有な魅力を、瑞々しい栗原さんの新鮮な文体で描いた、最高に魅力的な力作!
推薦文(朝井リョウ氏):栗原康の言葉を通せば、教科書の中のあの人もこの人もまるで旧知の悪友のよう。一遍と踊りたい、朝まで、床が抜けるまで!

目次:
はじめに
第一章 捨てろ、捨てろ、捨てろ
第二章 いけ、いけ、往け、往け
第三章 壊してさわいで、燃やしてあばれろ
第四章 国土じゃねえよ、浄土だよ
第五章 チクショウ

参考文献
おわりに

★まもなく発売。売り出し中の若手の中でもっとも破天荒で転覆的で痛快な評伝を世に送り出せるアナーキスト、栗原康さんによる最新作。大杉栄伝(夜光社、2013年)、伊藤野枝伝(岩波書店、2016年)に続く第三弾で、踊り念仏で知られる時宗の開祖、一遍を扱います。瀬戸内さん、朝井さんを魅了したその文体は読む者の魂を鼓舞する生気に満ちたもので、このテンションを維持するのはなかなかのエネルギーを必要とするのではないかと思います。栗原さんのエネルギーの源泉のひとつかもしれないものが本書の冒頭にずばり書き記されていますが、こんな書き出しが近年の人文書にあっただろうかという赤裸々な告白になっています。引用するのも無粋なので、ぜひ現物を手に取ってみていただければ幸いです。

★「富も権力もクソくらえ。アミダにまかせろ、絶対他力。浄土にいくということは、権力とたたかうということとおなじことだ」(33頁)。「トンズラだ、トンズラしかない。いちど人間社会をとびだして、アミダの光をあびにゆこう。一遍は、それをやるのが念仏なんだといっている」(57頁)。「だいじなことなので、くりかえしておこう。念仏に作法なんてありゃしない。うれしければうれしいし、たのしければたのしい。念仏は爆発だ。はしゃいじまいな」(110頁)。一遍につられて踊り念仏の輪が広がる様を描いた第三章の「踊り念仏の精神――壊してさわいで、燃やしてあばれろ」の節は、あたかも野外のレイヴでのトランス状態にも似た沸騰の中で、一遍の時代と現代とが見事にひとつになる瞬間を捉えています。「まるで獣だ、野蛮人だ。ここまでくると身分の上下も、キレイもキタナイも、男も女も関係ない。およそ、これが人間だとおもいこんできた身体の感覚が、かんぜんになるなるまで、自分を燃やして、燃やして、燃やしつくす。いま死ぬぞ、いま死ぬぞ、いま死ぬぞ。体が念仏にかわっていく」(114頁)。

★「生きて、生きて、生きて。生きて、生きて、往きまくれ。おまえのいのちは、生きるためにながれている。なんでもできる、なんにでもなれる、なにをやっても死ぬ気がしない。あばよ、人間、なんまいだ。気分はエクスタシー!!」(114~115頁)。「さけべ、うたえ、おどれ、あそべ。おのれの神〔たましい〕をふるわせと。だまされねえぞ、鎌倉幕府。したがわねえぞ、戦争動員。念仏をうたい、浄土をたのしめ。しあわせの歌をうたうということは、あらゆる支配にツバをはきかけつということだ」(158頁)。「一遍にとって、念仏をとなえて死ぬというのは、いまある自分を殺してしまう、からっぽにしてしまうということであった。なんどでも、なんどでも、ゼロから自分の人生をやりなおす、やりなおしていい、やりなおせる。そういう境地を成仏するといっていた」(161頁)。今まで様々な仏僧伝があったとはいえ、栗原さんのそれは最初から最後までそれ自体が「歌」のようで、今までにない、天にも昇るようなヴァイブレーションを発散しています。

★本書『死してなお踊れ』と同日発売となる河出書房新社さんの新刊に、荒川佳洋『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』があります。こちらも評伝です。ジュニア小説と官能小説をともに数多く残した流行作家、富島健夫(とみしま たけお:1931-1998)の生涯を描いたもの。富島の代表作は『おさな妻』(1970年)で、幾度となく映画化やTVドラマ化されています。

★このほか、最近の新刊では『子午線――原理・形態・批評 Vol.5』(書肆子午線、2017年1月、本体2,000円、B5変型判並製264頁、ISBN978-4-908568-10-7)に注目しました。八幡書店社主の武田崇元さんの長編インタヴュー「願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」が掲載されています。子午線ではこれまで既刊号で、松本潤一郎さん(第1号)、大杉重男さん、安里ミゲルさん(ともに第2号)、金井美恵子さん、花咲政之輔さん(ともに第3号)、稲川方人さん(第4号)といった方々のインタヴューを掲載されてきましたが、今回の相手はオカルト界の重鎮。レフトとオカルトのあわいの変遷をたどることのできる貴重な内容で、必読です。
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by urag | 2017-01-22 23:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 15日

注目新刊:ニーチェ『愉しい学問』新訳、ほか

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★毎月の出費はそれなりのものになりますが、素晴らしき文庫の数々が毎月刊行されていることには本当に驚嘆するばかりです。出版社さんと編集者の皆さんに感謝の念を捧げます。

引き裂かれた自己――狂気の現象学』R・D・レイン著、天野衛訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,300円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-09769-9
未開社会における性と抑圧』B・マリノフスキー著、阿部年晴/真崎義博訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,200円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-09775-0
共産主義黒書〈アジア篇〉』ステファヌ・クルトワ/ジャン=ルイ・マルゴラン著、高橋武智訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,700円、文庫判576頁、ISBN978-4-480-09774-3
柄谷行人講演集成1995-2015 思想的地震』柄谷行人著、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,000円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-09773-6
愉しい学問』フリードリヒ・ニーチェ著、森一郎訳、講談社学術文庫、2017年1月、本体1,450円、文庫判512頁、ISBN978-4-06-292406-1
禅語の茶掛を読む辞典』沖本克己/角田恵理子著、講談社学術文庫、2017年1月、本体920円、文庫判256頁、ISBN978-4-06-292411-5
三木清教養論集』三木清著、大澤聡編、講談社文芸文庫、2017年1月、本体1,500円、文庫判272頁、ISBN978-4-06-290336-3
すばらしい新世界〔新訳版〕』オルダス・ハクスリー著、大森望訳、ハヤカワepi文庫、2017年1月、本体800円、文庫判375頁、ISBN978-4-15-120086-1
動物農場〔新訳版〕』ジョージ・オーウェル著、山形浩生訳、ハヤカワepi文庫、2017年1月、本体700円、文庫判206頁、ISBN978-4-15-120087-8
古代研究I 民俗学篇1』折口信夫著、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体920円、文庫判351頁、ISBN978-4-04-400196-4
平治物語 現代語訳付き』日下力訳注、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体1,480円、文庫判477頁、ISBN978-4-04-400034-9
よくわかる真言宗 重要経典付き』瓜生中著、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体960円、文庫判342頁、ISBN 978-4-04-400135-3
生きるよすがとしての神話』ジョーゼフ・キャンベル著、飛田茂雄/古川奈々子/武舎るみ訳、角川ソフィア文庫、2016年11月、本体1,240円、文庫判454頁、ISBN978-4-04-400187-2
乳房の神話学』ロミ著、高遠弘美訳/解説、角川ソフィア文庫、2016年9月、本体1,200円、文庫判476頁、ISBN978-4-04-400162-9
幸福な王子/柘榴の家』ワイルド著、小尾芙佐訳、光文社古典新訳文庫、2017年1月、本体880円、文庫判304頁、ISBN978-4-334-75347-4
ポケットマスターピース13 セルバンテス』野谷文昭編、三倉康博編集協力、吉田彩子訳、集英社文庫、本体1,300円、文庫判712頁、ISBN978-4-08-761046-8

★まずはちくま学芸文庫の今月新刊から。レイン『引き裂かれた自己』の親本は1971年にせりか書房より刊行(著者名の当時のカタカタ表記は「レイング」)。文庫化にあたり正副題を逆転させ(原題は『The Divided Self: An Existential Study in Sanity and Madness』で1960年刊)、全面的な訳文改訂の上、新たに1965年の「ペリカン版への序文」を訳出。レインの著書が文庫化されるのは初めてのことです。

★マリノフスキー『未開社会における性と抑圧』の親本は1972年に社会思想社より刊行。原著は『Sex and Repression in Savage Society』(1927年)で底本には53年の第4版が使用されています。文庫版へのあとがきや、編集部による特記はなし。クルトワ/マルゴラン『共産主義黒書〈アジア篇〉』は昨春(2016年3月)に刊行された「ソ連篇」に続くもの。親本は2006年に恵雅堂出版より刊行。文庫化にあたり「誤りを適宜訂正し、新たに人名索引を付した」とのことです。『柄谷行人講演集成1995-2015』は文庫版オリジナルアンソロジー。収録作については書名のリンク先をご覧ください。

★次に講談社学術文庫。ニーチェ『愉しい学問』は文庫版オリジナルの新訳。底本は1887年に刊行された原著第二版。講談社学術文庫にはニーチェ論は複数あるものの、訳書は初めてで(講談社文庫では1971年に吉沢伝三郎訳『このようにツァラトゥストラは語った』上下巻が刊行されていました)、意外な印象があります。訳者の森さんは東北大学教授。一昨年夏(2015年6月)にはみすず書房よりアーレント『活動的生』の訳書を上梓されています。いっぽう『禅語の茶掛を読む辞典』は2002年の同社の単行本を文庫化。掛軸の写真を多数収録し、解説は1頁ないし見開きで読み切れるので、通勤に最適かもしれません。慌ただしい日常のさなかに思索と鑑賞のひとときを。

★続いて講談社文芸文庫。『三木清教養論集』は生誕120年記念の文庫オリジナルアンソロジー。カバー紹介文に曰く「読書論・教養論・知性論の三部構成で、その思想の真髄に迫る」と。それぞれの部には9篇ずつ収められ、合計で27篇を読むことができます。底本は岩波書店版全集で、「新漢字新かなづかいに改め〔・・・〕底本中明らかな誤りは正し」たと特記されています。編者の大澤聡さんが巻末に長文解説「しゃべる教養をめぐって」を寄せておられます。

★続いてハヤカワepi文庫。ハクスリー『すばらしい新世界』とオーウェル『動物農場』はともに新訳。前者は3年前に黒原敏行さんによる新訳が光文社古典新訳文庫より刊行されたばかり。ハヤカワepi文庫でのオーウェルの新訳は、2009年の高橋和久訳『一九八四年』に続くもの。1947年のウクライナ版序文が重訳(英語原文は失われており、ウクライナ語訳の英訳からの日本語訳)されているのが貴重です。『動物農場』の最近の訳書では、新訳ではありませんが、開高健訳/解説がちくま書房より3年前に刊行されています。ハクスリーにせよオーウェルにせよ、その問題意識の鋭さゆえに今後とも長く読まれ続けるに違いありません。

★続いて「創刊20周年」だという角川ソフィア文庫。折口信夫『古代研究』は生誕130周年記念による旧版全6巻(1974~1977年)のリニューアルです。新版も全6巻予定で解説を担当しているのは安藤礼二さん。旧版に掲載されていた池田弥三郎さんの解説も併載されています。今月下旬に第Ⅱ巻「民俗学篇2」が発売予定です。日下力訳注『平治物語』はカバー表4紹介文に曰く「最新の研究成果をふまえ、本文、脚注、現代語訳、校訂注に解説までを収載した文庫で初めての完全版」。瓜生中『よくわかる真言宗 重要経典付き』は、同著者の書き下ろしとなる「よくわかる」シリーズの、お経読本(2014年)、浄土真宗(2015年)、曹洞宗(2016年7月)に続く4点目。重要経典の読み仮名付き原文と現代語訳が、簡潔な解題や語句解説とともに収められているのが勉強になります。

★同文庫については昨年末までに取り上げていなかった2点の既刊書にも注目。キャンベル『生きるよすがとしての神話』は1996年に同版元から刊行された単行本の文庫化。キャンベルの文庫本は『神話の力』(飛田茂雄訳、ハヤカワ文庫NF、2010年)や『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕』(上下巻、倉田真木/斎藤静代/関根光宏訳、ハヤカワ文庫NF、2015年)に続く3点目。いっぽう、ロミ『乳房の神話学』の親本は1997年に青土社から刊行された単行本の改訂版。ロミの単行本は数多くありますが、文庫化は本書が初めて。新たに書き直されたご様子の訳者あとがきによれば図版については版権の問題があり、すべてを収録するわけにはいかなかったとのことです。原著『Mythologie du sein』(1965年)や青土社版と比べてみるのも一興かと。

★最後に光文社古典新訳文庫と集英社文庫「ポケットマスターピース」。前者のワイルドは、同文庫では『ドリアン・グレイの肖像』(仁木めぐみ訳、2006年)、『サロメ』(平野啓一郎訳、2012年)、『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(南條竹則訳、2015年)に続くもの。帯文に曰く「大人のために訳しました。ビターな味わいの童話集、全9篇収録」と。後者の『セルバンテス』は、「ポケットマスターピース」第13弾で、これでシリーズ完結。昨年はセルバンテスの没後400年でした。今どきの文庫はこの大冊ではこうした値段にはなりようがないはずなのですが、そこは天下の集英社で、コスパ抜群の新訳文学古典シリーズでした。第二期があってもおかしくないと思います。

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トランプは世界をどう変えるか?――「デモクラシー」の逆襲』エマニュエル・トッド/佐藤優著、朝日新書、2016年12月、本体720円、新書判176頁、ISBN978-4-02-273699-4
乾浄筆譚2――朝鮮燕行使の北京筆談録』洪大容著、夫馬進訳注、東洋文庫、2017年1月、本体2,800円、6変判上製函入292頁、ISBN978-4-582-80879-7
徂徠集 序類2』荻生徂徠著、澤井啓一/岡本光生/相原耕作/高山大毅訳注、東洋文庫、2017年1月、本体3,000円、B6変判上製函入352頁、ISBN978-4-582-80880-3

★トッド/佐藤優『トランプは世界をどう変えるか?』は帯に「緊急出版」の文字が躍っています。朝日新聞編集委員の大野博人さんによるトッドさんへのインタヴュー「民主主義がトランプを選んだ」(2016年11月10日)と、佐藤さんによる書き下ろし「「トランプ現象」の世界的影響、そして日本は」が併載されています。トランプ次期大統領による「共和党候補指名受諾演説」(2016年7月21日)も収められています。トッドさんはインタヴューの末尾でこう指摘しています。「ある意味で、米国ではどんな大統領であれ、人格的な面はやや二次的なことなのです。やりたいことが何でもできるわけではない」(36頁)。佐藤さんもやはり末尾付近でこう指摘しています。「あるいは、政策がうまくいかなければ、敵を作り出そうとするかもしれません。/今回の大統領選で可視化された、パワーエリートやエスタブリッシュメントから顧みられることのない人々の「不安」を背景に、アメリカ自身が、国内にアメリカの敵を探し始める可能性が充分にあるのです」(162頁)。

★まもなく発売となる東洋文庫の今月最新刊は2点、第879番『乾浄筆譚2』と、第880番『徂徠集 序類2』です。ともに全2巻完結。2月刊行は『陳独秀文集3』と予告されています。また来月、平凡社ライブラリーでは『ヘーゲル・セレクション』(廣松渉著、加藤尚武編訳/解説)が予定されています。佐藤優さん推薦とのこと。
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by urag | 2017-01-15 23:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 09日

第一期全12巻完結、晶文社版『吉本隆明全集』、ほか

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吉本隆明全集3[1951-1954]』吉本隆明著、晶文社、2017年1月、本体7,000円、A5判変型上製848頁、ISBN978-4-7949-7103-6
エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読』ヤン・アスマン著、安川晴基訳、藤原書店、2016年12月、本体6,400円、A5判上製432頁、ISBN978-4-86578-104-5
東京を愛したスパイたち 1907-1985』アレクサンドル・クラーノフ著、村野克明訳、藤原書店、2016年12月、本体3,600円、四六判上製432頁、ISBN978-4-86578-103-8
シン・ゴジラ論』藤田直哉著、作品社、2016年12月、本体1,800円、46判並製256頁、ISBN978-4-86182-612-2
現代思想 2017年2月臨時増刊号 総特集=神道を考える』青土社、2016年12月、本体2,000円、A5判並製310頁、ISBN978-4-7917-1336-3
文藝 2017年春季号』河出書房新社、2017年1月、本体1,300円、A5判並製512頁、ISBN978-4-309-97909-0
こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ著、斎藤真理子訳、河出書房新社、2016年12月、本体1,900円、46変形判上製360頁、ISBN978-4-309-20723-0

★第一期完結となる第12回配本『吉本隆明全集3[1951-1954]』はまもなく発売、明日10日取次搬入です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。付属する「月報12」は、吉増剛造「沈黙の言語」、芦田宏直「「転回」について」、ハルノ宵子「eyes」を掲載。帯文に曰く「『日時計篇』の後半部と『転位のための十篇』の初期異稿を含む21篇を新たに収録。大学の特別研究生を修了し、東洋インキ製造株式会社に就職・勤務の日々に書き継がれ、2冊の私家版詩集発行に結実する膨大な詩稿群を中心に収録」と。800頁近い詩群に圧倒されるばかりです。「わたしに信なきものの強さを与へよ」(153頁)という法外な一行は、彼の人生を貫く強烈な光芒であるかのように感じます。次回配本は第37巻、今春(4~5月)の刊行予定とのことです。

★藤原書店さんの新刊2点、ヤン・アスマン『エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読』と、クラーノフ『東京を愛したスパイたち 1907-1985』は発売済。前者の原書は『Moses der Ägypter: Entzifferung einer Gedächtnisspur』(Hanser, 1998)です。前年(97年)に英語版がまず刊行され、著者自身がドイツ語に訳し大幅に加筆したのが当訳書の底本である98年版です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。帯文に曰く「西洋の人文学に“記憶論的転回”をもたらした、大論争の書!〔・・・〕聖書の伝承に対し、モーセを“エジプト人”とする――邪とされたエジプトに、ある真理の故郷を求める――試みが、西洋の精神史にはあった。古代エジプトの王アクエンアテンから、スペンサー、カドワース、ウォーバートン、ラインホルト、シラー、そしてフロイトへ、“エジプト人モーセ”の想起の系譜を掘り起こす」。巻末の訳者解説ではアスマンのその後の著書『モーセの区別』(2003年)、『一神教と暴力の言葉』(2006年)も紹介されており、訳書の続刊を期待せずにはいられません。

★『東京を愛したスパイたち 1907-1985』は「今日のロシアで最も脂の乗り切った日本学舎の一人である」(訳者あとがきより)というクラーノフ(1970-)が2014年に刊行した『スパイの東京』のロシア語版に基づいて大幅に加筆訂正を施し、東京以外の年が舞台の第五章を省略して、全四章にまとめた日本オリジナル版、とのことです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。カバー表4の紹介文によれば、「格闘技サンボの創始者ワシーリー・オシェプコフ、ゾルゲ事件で日本でも名高いリヒャルト・ゾルゲ、ソ連の探偵小説の先駆者として注目が高まっているロマン・キム(キン・キリュー)、さらに主として戦後に活動した四人の諜報員たち。小伝によって彼らの人物像をコンパクトに紹介すると共に、彼らや関係者の書きのこしたもの、さらに公文書の記録から、〔・・・〕現代の東京にその足跡を再現し、著者自身が訪ね歩く」。

★なお藤原書店さんの今月新刊にはピエール・ブルデュー『男性支配』(坂本さやか・坂本浩也訳)が予告されています。「ブルデュー唯一の「ジェンダー」論」とのことです。

★藤田直哉『シン・ゴジラ論』は発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者は巻頭で、『シン・ゴジラ』だけでなく『君の名は。』にも言及し、次のように自問しておられます。「何故2016年に、震災を想起させるエンターテイメントがこれほどヒットしたのか? 震災の経験を心理的に「昇華」させたい人々がこれほど大勢いたからこそ、これほどの「国民的」ヒットとなたのではないか?」(5頁)。先日も書きましたが、この本と、先に発売された笠井潔『テロルとゴジラ』の刊行記念イベントとして、お二人のトークショー「ゴジラの戦後、シン・ゴジラの震災後」が、今月17日(火)19時から八重洲ブックセンター本店8Fギャラリーにて行われます。新刊2点の内いずれかをお買い上げのお客様に参加整理券が配布されます。なお、作品社さんでは今月より山中峯太郎訳著『名探偵ホームズ全集』全三巻が刊行開始となるとのことです。

★『現代思想 2017年2月臨時増刊号 総特集=神道を考える』は発売済。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。赤坂憲雄「イザベラ・バードの見た神道」、山本ひろ子「中世の諏訪――「南宮」と諏訪流神道をめぐって」、彌永信美「八百万の神達=「梵天帝釈、無量の天子……」?」、檜垣立哉「吉本隆明・記紀書・南島論」、福嶋亮大「家・中国化・メディア――折口信夫『死者の書』の構造」などを収録。「現代思想」は2月号(1月27日発売予定)が特集「ビットコインとブロックチェーンの思想」、2月発売の3月臨時増刊号が「人類学の時代」「知のトップランナー46人の美しいセオリー」の2本となるそうです。

★『文藝 2017年春季号』はまもなく発売。佐々木中さんの小説「私を海に投げてから」(165-202頁)や、1月24日発売予定の渡部直己『日本批評大全』(河出書房新社、46判640頁、ISBN978-4-309-02534-6)をめぐる対談、渡部直己×斎藤美奈子「批評よ、甦れ――『日本批評大全』刊行によせて」(476-489頁;『日本批評大全』の詳細目次が484-485頁に掲出)のほか、昨年7月30日に73歳で死去された柳瀬尚紀さんへの追悼特集が組まれています。亡くなる前日まで取り組んでおられたという、ジョイズ『ユリシーズ』第15章「キルケー」冒頭部を訳した遺稿をはじめ、朝吹真理子、いしいしんじ、稲川方人、円城塔、岡田利規、柴田元幸、高山宏、四方田犬彦の各氏がエッセイを寄稿されています。

★四方田さんは昨年末に発売された同社の新刊、チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』にも解説「病身〔ピョンシン〕の眼差し」を寄せておられます。同書は1978年に韓国で刊行されて以来、「約300刷、130万部」(プレスリリースより)のロングセラーで、映画化されたり教科書に掲載されてきたという作品です。四方田さんは本書を次のように紹介しています。「1970年代の韓国社会に横たわっていた数多くの問題が取り上げられている。貧困と身障者差別。土地の再開発と強制執行。劣悪な労働条件と自然破壊。キリスト教信仰と労働争議。〔・・・〕作家としての趙世煕の面目とは、〔・・・〕悲惨な現実を〈病身〉、つまり身体障碍者という視座を通して描いてみせたところにある」(345頁)。
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by urag | 2017-01-09 22:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 25日

注目文庫本と新刊単行本、さらに関連イベント情報

★ここ3ヶ月(10月~12月)の間に刊行された文庫新刊のうち、今まで取り上げていなかった書目を版元別に列記したいと思います。

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★まずはハヤカワ文庫。リチャード・ドーキンス『進化とは何か――ドーキンス博士の特別講義』(吉成真由美編訳、12月)は2014年12月に刊行された同名単行本の文庫かで、巻末には吉川浩満さんによる解説「危険で魅惑的な知的探求の旅」が加わっています。ドーキンスは単行本は多いものの、文庫本は『遺伝子の川』(垂水雄二訳、草思社文庫、2014年)に続いてやっと2冊目。なお来年2月にはドーキンスの自伝第2巻にして完結編『ささやかな知のロウソク(仮)』(垂水雄二訳)が単行本として早川書房より刊行予定とのことです。

★次に中公文庫。三島由紀夫『古典文学読本』(11月)は、『文章読本』『小説読本』に続く、同文庫の三島文学読本三部作の完結編。巻末の編集付記によれば本書は三島の「古典文学に関するエッセイを独自に編集し、雑誌「文藝文化」掲載の全評論、短篇小説「中世に於ける一殺人常習者の残せる哲学的日記の抜粋」を合わせて収録したもの」と。刊舞うtには富岡幸一郎さんによる解説「詩学の神風」が収められています。

★続いて岩波文庫。カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まった』(竹山博英訳、10月)は同作の既訳『キリストはエボリに止りぬ』(清水三郎治訳、岩波書店、1953年)以来の新訳。上村忠男さんによる詳細な読解本『カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まってしまった』を読む――ファシズム期イタリア南部農村の生活』(平凡社ライブラリー、2010年)も刊行されています。マルトゥレイ/ダ・ガルパ『ティラン・ロ・ブラン』(全4冊、田澤耕訳、既刊1~3、10~12月)はセルバンテスが愛読したという騎士道小説の古典で、第1巻にはバルガス=リョサによる日本語版への序文「「ティラン・ロ・ブラン」――境界のない小説」が置かれています。2007年の単行本の文庫化です。ルドルフ・シュタイナー『ニーチェ 自らの時代と闘う者』(高橋巌訳、12月)は、樋口純明訳『ルドルフ・シュタイナー著作全集(5)ニーチェ――同時代との闘争者』(人智学出版社、1981年)、西川隆範訳『ニーチェ――同時代への闘争者』(アルテ、2008年)に続く新訳。シュタイナーは文庫ではもっぱらちくま学芸文庫で読めるだけでしたが、岩波文庫の仲間入りをついに果たしたことに感慨を覚えます。

★講談社学芸文庫。ダーウィン『人間の由来(下)』(長谷川眞理子訳、10月)と『杜甫全詩訳注(四)』(下定雅弘・松原朗編、10月)はそれぞれ完結編。後者は全詩題索引や杜甫年譜を含め1100頁を超える大冊とはいえ、本体2,900円というお値段で、税込ではついに3,000円を越えました。ジャック・ラカン『テレヴィジオン』(藤田博史・片山文保訳、12月)は同名単行本(青土社、1992年)の文庫化。のっけからルビがとても多いあの訳書がどうなるのかと注目していましたが、基本そのままでした。某動画サイトでは本書の元となった実際の番組映像を見ることができますので、ルビが残っているのはこれはこれで良いのかもしれません。ヴェルナー・ゾンバルト『ブルジョワ――近代経済人の精神史』(金森誠也訳、12月)は同名単行本(中央公論社、1990年)の文庫化。本書より前のゾンバルトの文庫本はすべて金森さん訳で、講談社学術文庫より発売されています。『恋愛と贅沢と資本主義』2000年、『戦争と資本主義』2010年、『ユダヤ人と経済生活』2015年。

★ちくま学芸文庫。エトムント・フッサール『内的時間意識の現象学』(谷徹訳、12月)は、立松弘孝訳(みすず書房、1967年)以来の新訳。ちくま学芸文庫がフッサールの新訳に取り組んでおられるのは実に頭が下がることで、今後も継続して下さることを願うばかりです。アマルティア・セン『経済学と倫理学』(徳永澄憲・青山治城・松本保美訳、12月)は、『経済学の再生――道徳哲学への回帰』(麗澤大学出版会、2002年)の文庫化。センの著書は新書はあったものの文庫本は今回が初めて。今後増えることを期待したいです。エドモンズ/エーディナウ『ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い10分間の大激論の謎』(二木麻里訳、12月)は同名単行本(筑摩書房、2003年)の文庫化。ざっくり言って、議論にイライラしたウィトゲンシュタインをポパーが意地悪く煽る、という風にかつて私には見えていたエピソード(ドミニク・ルクール『ポパーとウィトゲンシュタイン』野崎次郎訳、国文社、1992年参照) の真相について追いかけた実に興味深い一冊。ポパーがウィトゲンシュタインに挑んだのは確かだとしても、彼が「火かき棒で脅さないこと」と言及したのはラッセルにたしなめられたウィトゲンシュタインが退室してからのことだったと知ることができたのは、どこかほっとさせるものがありました。

★最後に河出文庫。ヘーゲル『哲学史講義』(長谷川宏訳)は同講義第一部「ギリシャの哲学」第二篇「独断主義と懐疑主義」から第二部「中世の哲学」第三篇「学問の復興」までを収録した第Ⅲ巻が11月に、第三部「近代の哲学」を収録した第Ⅳ巻が12月に発売で、全4巻完結です。新刊ではありませんがセリーヌ『なしくずしの死』(上下巻、高坂和彦訳、2002年)が、丸善およびジュンク堂書店の限定復刊として、ブコウスキー『くそったれ! 少年時代』中川五郎訳、長野まゆみ『野ばら』、松浦理恵子『親指Pの修業時代』上下巻、田中小実昌『ポロポロ』、金井美恵子『小春日和』などと一緒に10月末にリクエスト重版されたことは特筆しておきたいと思います。復刊されたと聞くと以前の版を持っていてもつい買ってしまいますが、今回セリーヌを買ったのは理由が二つありました。一つは、自分が傑作だと評価している作品を丸善やジュンク堂の書店員さんが高く評価しておられ、熱いコメントが帯文に掲載されていることです。丸善丸広百貨店飯能店の細川翼さんによる「これほどまでにおぞましい小説は、他に類をみない」というコメントはまさに『なしくずしの死』にふさわしい最上の誉め言葉です。この小説に描かれた社会のおぞましさは読者の肺腑を今なお鋭くえぐり、ますますアクチュアリティを増しているかのように思われます。物語の順番は前後しますが、本作の前に書かれた『夜の果てへの旅』(上下巻、生田耕作訳、中公文庫、1978年;改版2003年)で描かれた戦争の風景や退役軍人の苦悩もまた、フラッシュバックのように現代人の胸の内に繰り返し蘇ります。人間の愚かさがなくならない限り、セリーヌの作品もまた生き続けます。

★セリーヌ『なしくずしの死』を再度購入することになった二つ目の理由は、特に下巻の束幅の違いによります。分かりやすいように写真を撮っておきますが、下巻の2刷(2011年9月)と今回の3刷(2016年10月)では束幅が違うのです。2刷の方が厚い。頁数に変更はありません。おそらくたまたま何らかの事情で初刷より厚い本文紙を使ったために、2刷だけ束幅が広くなったのだろうと思われます。3刷では修正されています。こういうアクシデント(?)も時には愛おしいものです。なお上巻にはこうしたブレはありません。

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★また最近では以下の新刊との出会いがありました。

現代思想2017年1月号 特集=トランプ以後の世界』青土社、2016年12月、本体1,400円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1335-6
戦車に注目せよ――グデーリアン著作集』ハインツ・グデーリアン著、大木毅編訳・解説、田村尚也解説、作品社、2016年12月、本体5,500円、46判上製720頁、ISBN978-4-86182-610-8
テロルとゴジラ』笠井潔著、作品社、2016年12月、本体2,200円、46判並製320頁、ISBN978-4-86182-606-1
タブッキをめぐる九つの断章』和田忠彦著、共和国、2016年12月、本体2,400円、A4変型判上製216頁、ISBN978-4-907986-22-3  
重版未定――弱小出版社で本の編集をしていますの巻』川崎昌平著、河出書房新社、2016年11月、A5判並製232頁、ISBN978-4-309-27788-2

★『現代思想2017年1月号』は27日発売予定。収録されている討議や論考については誌名のリンク先をご覧ください。年始の特集号に相応しく読み応えのある寄稿陣となっています。翻訳ものではチョムスキーのインタヴューに始まり、バーニー・サンダースとスパイク・リーの対談、コーネル・ウェスト、マイク・デイヴィス、マイケル・ハート+サンドロ・メッザードラ、ヴィジャイ・プラシャドらのテクストを読むことができます。なお、青土社さんの『現代思想』1973年1月創刊号「特集*現代思想の総展望」と『ユリイカ』1969年7月創刊号が、プリント・オン・デマンド(POD)としてアマゾン・ジャパンより購入可能となっています。これはアマゾン・ジャパンで行われている「プリント・オン・デマンド(POD) 創刊号・復刻版特集」への出品だそうです。古書で所有していてもつい買いたくなりますね。

★なお、今月発売の「情況」誌2016年第3号でも「トランプ・ショック」という特集が組まれています。第二特集は「16年テーゼ」。寄稿者は、高野孟、白井聡、丸川哲史、山の手緑、渋谷要、森元斎、栗原康、矢部史郎、ほか。

★グデーリアン『戦車に注目せよ』と、笠井潔『テロルとゴジラ』はともに22日取次搬入済。『戦車に注目せよ』は田村尚也さんによる解説「各国軍の戦車と機械化部隊について」によれば、本書は「第二次世界大戦前からドイツ軍の装甲部隊の発展に力を注ぎ、「ドイツ装甲部隊の父」とも言われるハインツ・グデーリアン将軍〔Heinz Wilhelm Guderian, 1888-1954〕が。第二次大戦前の1937年に出版した著書『戦車に注目せよ〔Achtung Panzer〕!』と、戦後に書かれたものを含むいくつかの短文を訳出し、一冊にまとめたものである。このうち、『戦車に注目せよ!』は、第一次世界大戦中の戦闘の様相の変化、その中でもとくに戦車部隊の先述の分析を踏まえて、ドイツ軍の装甲部隊が採用すべき戦術や装備、編制などについて論じたものだ」(681頁)とのこと。グデーリアンはこれまで回想録については訳書が刊行されたことがありますが(『電撃戦――グデーリアン回想録』本郷健訳、フジ出版社、1974年;上下巻、中央公論新社、1999年)、主著をはじめとする理論書がまとまって訳されるのは本書が初めてです。帯文に曰く「戦争を変えた伝説の書
電撃戦の立役者が自ら記した組織革新(イノヴェーション)の要諦。名のみ知られていた幻の書ついに完訳。ほかに旧陸軍訳の諸論文と戦後の論考、刊行当時のオリジナル全図版収録」。主要目次は以下の通り。

戦車に注目せよ!(1937年)
 序文
 著者序
 1914年 いかにして陣地戦に陥ったか
 1915年 不十分な手段を以って
 戦車の発生
 新兵科の誕生
 ヴェルサイユの強制
 大戦後の外国における発展
 ドイツの自動車戦闘部隊
 装甲部隊の生活
 装甲部隊の戦法と他兵科との協同
 現代戦争論
 結論
 参考文献一覧
戦車部隊と他兵科の協同(1937年)
 第三版への序文
 一般的観察
 世界大戦における発展
 大戦後の発展
 装甲捜索団隊
 戦闘に任じる装甲部隊
 他兵科との協同
 最近の戦争による教訓
 結論
「機械化」 機械化概観(1935年)
快速部隊の今昔(1939年)
近代戦に於けるモーターと馬(1940年)
西欧は防衛し得るか?(1950年)
 序文
 一、前史
 二、西欧列強の過てる決定
 三、火元はいたるところに在る
 四、ヨーロッパの軍事力
 五、同盟の意義
 六、合衆国の影響
 七、権利と自由をめぐって
 八、認識と行動?
 九、アフリカ、
 一〇、結論
そうはいかない! 西ドイツの姿勢に関する論考(1951年)
 序文
 一、近代の戦争遂行における空間と時間
 二、今日の戦争の本質
 三、ヨーロッパ国防地理学について
 四、若干の戦時ポテンシャル
 五、軍事同盟国か、外人部隊か?
 六、そして、われわれは?
 七、アイゼンハワー
 結語
解説1 各国軍の戦車と機械化部隊について(田村尚也)
解説2 彼自身の言葉で知るグデーリアン(大木毅)

★笠井潔『テロルとゴジラ』は帯文に曰く「半世紀を経て、ゴジラは、なぜ、東京を破壊しに戻ってきたのか? 世界戦争、大量死、例外社会、群集の救世主、行動的ニヒリズム、トランプ……「シン・ゴジラ」を問う表題作をはじめ、小説、映画、アニメなどの21世紀的文化表層の思想と政治を論じる著者最新論集」。あとがきにはこうあります、「小説や映画やアニメなどの文化表象関連と政治論を含む社会思想関連の文章を集めた評論集だ。こうした種類の著作を、私は『黙示録的情熱と死』〔作品社、1994年〕のあと20年以上も出していない」(315頁)。2010年代に発表された論考を中心に、表題作の書き下ろし評論を含め、全4部構成となっています。目次構成は以下の通り。巻末の初出一覧に従い、各論考の初出年も示しておきます。

第Ⅰ部
テロルとゴジラ――〈本土決戦〉の想像的回帰としての(書き下ろし)
3・11とゴジラ/大和/原子力(2011年)
セカイ系と例外状態(2009年)
群衆の救世主〔セレソン〕――『東のエデン』とロストジェネレーション(2010年)
第Ⅱ部
デモ/蜂起の新たな時代(2012年)
「終戦国家」日本と新排外主義(2013年)
シャルリ・エブド事件と世界内戦(2015年)
第Ⅲ部
「歴史」化される60年代ラディカリズム(2009年)
大審問官とキリスト(2012年)
永田洋子の死(2011年)
吉本隆明の死(2012年)
第Ⅳ部
ラディカルな自由主義の哲学的前提(1996年)
あとがき

★なお、作品社さんでは27日取次搬入で、藤田直哉『シン・ゴジラ論』という新刊をリリースされることになっています。笠井さんの『テロルとゴジラ』と、藤田さんの『シン・ゴジラ論』の刊行を記念して、以下の通りトークイベントが行われるとのことです。お二人は対談集『文化亡国論』(響文社、2015年)を昨年上梓されています。

◎笠井潔×藤田直哉「ゴジラの戦後、シン・ゴジラの震災後

日時:2017年1月17日 (火) 19時00分~(開場:18時30分)
会場:八重洲ブックセンター本店 8F ギャラリー
定員:80名(申し込み先着順) 
申込方法:1階カウンターにて参加対象書籍『テロルとゴジラ』もしくは『シン・ゴジラ論』のいずれかをお買い上げの方に、参加整理券を差し上げます。お電話でのご予約の場合、当日ご来店いただいて書籍をご購入いただきます(電話03-3281-8201)。なお整理券1枚につき、お1人のご入場とさせていただきます。

内容:庵野秀明総監督『シン・ゴジラ』は、東日本大震災に対するひとつの回答であった。日本が蒙った巨大な災禍を理解する象徴として「怪獣」を用いた初代『ゴジラ』の精神を受け継いだ傑作であるとの世評が高い。核兵器、第二次世界大戦、その死者たち、戦後に生まれ変わらなければならなかった日本社会の心理的屈折を引き受けたゴジラ。ゴジラは、東日本大震災という、津波と原発事故を巻き起こした巨大な災禍を引き受けて、どう変わったのか。ゴジラを通して戦後日本社会の連続と断層を語る。2016年という、震災から5年経った年に『シン・ゴジラ』や『君の名は。』のように、震災をエンターテイメントとして昇華する作品が成功したということの意義を踏まえたうえで、トランプ以降のアメリカと世界、サブカルと政治、そして2017年、この国の未来を語る。※トークショー終了後、笠井潔さん、藤田直哉さんのサイン会を実施いたします。

★和田忠彦『タブッキをめぐる九つの断章』は発売済。くぼたのぞみ『鏡のなかのボードレール』、ラクーザ『ラングザマー』に続くシリーズ「境界の文学」の第3弾です。タブッキ(Antonio Tabucchi, 1943-2012)の訳書に解説やあとがきとして書いたものを中心に、追悼文や書き下ろしを加えて一冊にまとめたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。タブッキの短篇「元気で」(『絵のある物語』より)や、タブッキへのインタヴュー「物語の水平線」(1997年)も併載されています。投込栞の「共和国急使」第13号によれば、今年共和国さんは新装版1点を含む新刊12点を出版されたとのこと。ひとり出版社としてはなかなかたいへんなペースです。今後も年間10点を維持できればいい、とも。共和国さんのご苦労については、下段でご紹介するトークイベントでも語られることでしょう。

★川崎昌平『重版未定』は発売済ですでに重版したとのこと。「DOTPLACE」でのウェブ連載が一冊となったもので(その後も継続連載中)、小規模出版社の現実を淡々と、分かりやすく描いておられるマンガです。大手版元よりも個性的な出版社での仕事を目指したい学生さんにとって必読なだけでなく、同業者にとっても自分を振り返る上で良いきっかけになると思います。同業者一人ひとりにとっては本書で描かれているエピソードとはまた別の体験を持っているわけですが、それらがすべて一冊の本に結実するわけではありません。大半は語られず知られないまま埋もれていきます。そんななか本書が生まれたのは、著者が編集者であると同時に著述家、大学非常勤講師、同人誌作家でもあるという複合的な視点と立場が可能にした賜物ではないかと思います。先日もご紹介しましたが、著者のお話を直接聞ける機会が以下の通りありますので、お時間のある方はどうぞお越し下さい。

◎川崎昌平×下平尾直×小林浩「小さな出版社と編集者の大きな夢」――『重版未定』重版出来記念

内容:川崎昌平さんによる『重版未定』が、河出書房新社から発売され、このたび重版出来が決定しました! 編集者とは何か? 出版社とは何のためにあるのか? 弱小出版社に勤務する編集者を主人公に描いた、出版文化を深く考えるためのブラック・コメディ『重版未定』。このたびB&Bでは、『重版未定』の重版出来を記念してイベントを開催します。お相手にお迎えするのは、共和国の下平尾直さんと、月曜社の小林浩さん。現実に存在する「小さな出版社」で働く編集者たちは、今、どんな問題点や可能性を考えているのか? 出版の未来に何を見るのか? 2016年の総括と、2017年への期待も含め、大いに語り合っていただきます。どうぞお楽しみに!

出演:川崎昌平(作家、編集者)、下平尾直(共和国)、小林浩(月曜社)
時間:20:00~22:00 (19:30開場)
場所:本屋B&B 世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F
入場料:1500yen + 1 drink order

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by urag | 2016-12-25 23:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 18日

注目新刊:『アントニー・ブラント伝』中央公論新社、ほか

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★風邪をひいて頭がぼんやりしています。今回は簡略なご紹介にて失礼します。まずは発売済の注目新刊から。

『ゲンロン4 現代日本の批評Ⅲ』東浩紀編、ゲンロン、2016年12月、本体2,400円、A5版並製350頁+E19頁、ISBN978-4-907188-19-1
弁論家の教育4』クインティリアヌス著、森谷宇一・戸高和弘・伊達立晶・吉田俊一郎訳、京都大学学術出版会:西洋古典叢書、2016年12月、本体3,400円、四六変判上製328頁、ISBN978-4-8140-0034-0
トマス・アクィナス『ヨブ記註解』』保井亮人訳、知泉書館、2016年11月、本体6,400円、新書判上製706頁、ISBN978-4-86285-243-4
『コモン・フェイス――宗教的なるもの』ジョン・デューイ著、髙徳忍訳、柘植書房新社、2016年12月、本体2,500円、46判並製272頁、ISBN978-4-8068-0683-7

★『ゲンロン4』では特集「現代日本の批評」が完結。完結記念に収録された、浅田彰さんの長編インタヴュー「マルクスから(ゴルバチョフを経て)カントへ――戦後啓蒙の果てに」(聞き手=東浩紀)が目を惹きます。東さんの率直な問いかけの数々に浅田さんが率直に応答されており、浅田さんの半生が垣間見えるものともなっています。東さんの巻頭言「批評という病」によれば『ゲンロン0 観光客の哲学』の刊行がいよいよ近づいているようです。次号となる5号は3月刊行予定、特集名は「幽霊的身体(仮)」となっています。

★『弁論家の教育4』は本邦初完訳となる「Institutionis Oratoriae」全12巻を5巻の訳書に分割して収録する、その第4巻。原著第9巻および第10巻を収録しています。「よく書き、よく話すには、多く読み、多く聞くべし。弁論術を養うための読書指南」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★『トマス・アクィナス『ヨブ記註解』』は「Expositio Super Iob Ad Litteram」の翻訳。新書サイズに横組という珍しい造本で、ほぼ同時期に刊行された同館の『哲学中辞典』と同じ体裁です。半年前には対照的な大判本(B5判)の『ヘーゲルハンドブック――生涯・作品・学派』を刊行されており、内容に応じて様々な器を用意される柔軟性を感じます。

★『コモン・フェイス』は「A Common Faith」(Yale University Press, 1934)の訳書。既訳には、岸本英夫訳『誰れでもの信仰――デュウイー『宗教論』』(春秋社、1956年)、河村望訳『共同の信仰』(『デューイ=ミード著作集(11)自由と文化/共同の信仰』所収、人間の科学新社、2002年)、栗田修訳『人類共通の信仰』(晃洋書房、2011年)があります。「宗教対宗教的なるもの」「信仰とその対象」「宗教的効用の人間的居場所」の全3章。巻末に訳者による長編解説が付されています。

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★このほか最近では以下の書籍との出会いがありました。いずれも発売済です。

アントニー・ブラント伝』ミランダ・カーター著、桑子利男訳、中央公論新社、2016年12月、本体5,000円、A5判上製598頁、ISBN978-4-12-004771-8
シベリア抑留――スターリン独裁下、「収容所群島」の実像』富田武著、中央公論新社、2016年12月、本体860円、新書判並製288頁、ISBN978-4-12-102411-4
死を想え――『九相詩』と『一休骸骨』』今西祐一郎著、平凡社:ブックレット〈書物をひらく〉、2016年12月、本体1,000円、A5判並製90頁、ISBN978-4-582-36441-5
漢字・カタカナ・ひらがな――表記の思想』入口敦志著、平凡社:ブックレット〈書物をひらく〉、2016年12月、A5判並製90頁、ISBN978-4-582-36442-2
漱石の読みかた――『明暗』と漢籍』野網摩利子著、平凡社:ブックレット〈書物をひらく〉、2016年12月、A5判並製84頁、ISBN978-4-582-36443-9

★カーター『アントニー・ブラント伝』は「Anthony Blunt: His Lives」(Macmillan, 2001)の訳書。ソ連のスパイ「ケンブリッジ・ファイヴ」の一人だったイギリスの美術史家に光を当て、複数の文学賞を受賞した評伝大作です。イギリスの歴史家であり作家のミランダ・カーター(Miranda Carter, 1965-)のデビュー作で、いくつもの顔を持っていたアントニー・ブラント(アンソニーとも。Anthony Blunt, 1907-1983)の素顔に迫っています。ブラントの美術評論には『イタリアの美術』(中森義宗訳、SD選書:鹿島出版会、1968年)や、『ピカソ〈ゲルニカ〉の誕生』(荒井信一訳、みすず書房、1981年)、『ウィリアム・ブレイクの芸術』(岡崎康一訳、晶文社、1982年)などがあります。『イタリアの美術』のみ、今なお新刊で購入可能です。

★富田武『シベリア抑留』はカバーソデ紹介文に曰く「第2次世界大戦の結果、ドイツや日本など400万人以上の将兵、数十万人の民間人が、ソ連領内や北朝鮮などのソ連管理地域に抑留され、「賠償」を名目に労働を強制された。いわゆるシベリア抑留である。これはスターリン独裁下、主に政治犯を扱った矯正労働収容所がモデルの非人道的システムであり、多くの悲劇を生む。本書はその起源から、ドイツ軍捕虜、そして日本人が被った10年に及ぶ抑留の実態を詳述、その全貌を描く」と。主要目次は以下の通りです。序章「矯正労働収容所という起源」、第1章「二〇〇万余のドイツ軍捕虜――新客の「人的賠償」、第2章「満州から移送された日本軍捕虜――ソ連・モンゴル抑留」、第3章「現地抑留」された日本人――忘却の南樺太・北朝鮮」、終章「歴史としての「シベリア抑留」の全体像へ」。著者は3年前に人文書院より『シベリア抑留者たちの戦後――冷戦下の世論と運動 1945-56』を刊行されています。

★『死を想え』『漢字・カタカナ・ひらがな』『漱石の読みかた』の3点は平凡社さんの新シリーズ「ブックレット〈書物をひらく〉」の初回配本。巻末の「発刊の辞」によれば、同シリーズは国文学研究資料館の「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」(歴史的典籍NW事業)の研究成果を発信するものだそうです。いずれも興味深いテーマばかりで、図版も多数の、楽しいシリーズとなりそうです。
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by urag | 2016-12-18 15:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 11日

まもなく発売:篠原雅武『複数性のエコロジー』、稲葉振一郎『宇宙倫理学入門』、など

★まもなく発売となる、注目の近刊書を列記します。年の瀬だけあって、注目作が目白押しです。毎年恒例の「紀伊國屋じんぶん大賞2017」は、2015年12月~2016年11月末までに刊行された人文書が対象ですでに12月6日(火)で投票を締め切っていますので(発表は2月上旬予定)、以下の書籍は2018年の選考対象となるのですね。12月刊行分が次年度の選考対象になるのは「新書大賞」と同じで仕方ないことですが、率直な感想を言うと、編集者も書き手も年内刊行を目指して頑張るわけなので、年末にはそれなりに力作が揃うようになります。賞をあげるなら、12月で締めて、翌年1~2月でじっくり投票・選考して3月下旬に発表、新年度である4月からフェア展開、という方が望ましいような気もします。まあ新年度は何かと書店さんは忙しいので去年のことなんざもう構っているヒマはない、となるのが現実でしょうけれど、以下にご紹介する篠原さんや稲葉さんの新刊は大賞候補になっても不思議ではない本なので、翌々年に発表される頃には「けっこう前に発売した本」という印象を抱かれがちではあります。どの時期で区切ろうと同じような問題は起きうるとはいえ、年末の注目作を見逃すな、という作り手の側の思いは残るところです。

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複数性のエコロジー――人間ならざるものの環境哲学』篠原雅武著、以文社、2016年12月、本体2,600円、四六判上製320頁、ISBN978-4-7531-0335-5
宇宙倫理学入門――人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』稲葉振一郎著、ナカニシヤ出版、2016年12月、本体2,500円、4-6判上製272頁、ISBN978-4-7795-1122-6
『破壊 ― HAPAX6』夜光社、2016年12月、本体1,300円、四六判変形並製204頁、ISBN978-4-906944-11-8
吉本隆明と『共同幻想論』』山本哲士著、晶文社、2016年12月、本体4,500円、A5判上製546頁、ISBN978-4-7949-6947-7

★篠原雅武『複数性のエコロジー』は12日頃発売。篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さんは大阪大学大学院特任准教授(2017年3月まで)。本書はイギリスの哲学者ティモシー・モートン(Timothy Bloxam Morton, 1968-)のエコロジー思考と環境哲学を紹介する入門書でもありつつ、篠原さんの日常生活から生まれた問題意識の来歴および現在がそこにどう交差しているかが窺えて、お勉強臭くない、思わず惹きこまれるアクチュアルな五冊となっています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻末には2016年8月18日から20日にかけてライス大学のモートン研究室で行われたインタヴューの記録が「ティモシー・モートン・インタビュー2016」(277~304頁)が併載されています。今後翻訳も増えていくであろうモートンさんについては、ブログ「Ecology without nature」やYouTubeでの彼の公式チャンネルをご参照ください。

★なお、篠原さんがモートンさんをはじめ、中村隆之さん、小泉義之さん、藤原辰史さん、千葉雅也さんらと対談した新著『現代思想の転換2017――知のエッジをめぐる五つの対話』が人文書院から来月下旬に刊行される予定だそうです。『複数性のエコロジー』とともに、要チェックではないかと思います。

★稲葉振一郎『宇宙倫理学入門』は23日頃発売。稲葉振一郎(いなば・しんいちろう:1963-)さんは明治学院大学教授。帯文を借りると本書は「宇宙開発は公的に行われるべきか、倫理的に許容されるスペース・コロニーとはどのようなものか、自律型宇宙探査ロボットは正当化できるか――宇宙開発のもたらす哲学的倫理的インパクトについて考察する、初の宇宙倫理学入門!」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。宇宙植民を考えることは、それを支える技術(生命医療技術、ヒューマン・エンハンスメント、ロボット、人工知能)の考察とも切り離せないことを本書は教えてくれます。テレビ番組「やりすぎ都市伝説」での関暁夫さんの予告的紹介により思いがけず今後読者層を広げる可能性があるかもしれないスウェーデン出身の哲学者ニック・ボストロム(Nick Bostrom, 1973-)についても幾度となく言及されており、哲学や倫理学とは縁がなかった読者層でもこの分野(ポストヒューマン/トランスヒューマン)への関心が高まってほしいと期待するばかりです。

★『破壊 ― HAPAX6』は15日頃発売。収録テクスト10篇については誌名のリンク先をご覧ください。今回もエッジの効いた粒揃いの内容で、鈴木創士さんの詩篇「帝国は滅ぶ」に始まり、フランスにおける労働法改悪反対運動をめぐる『ランディマタン』誌の二つのテクスト、さらに、ティクーン、ライナー・シュールマン、ジョン・クレッグらの翻訳や、『大学生詩を撒く』鎧ヶ淵支部、森元斎、友常勉、鼠研究会の各氏の寄稿が読めます。特にライナー・シュールマン(Reiner Schürmann, 1941-1993)の「アナーキーな主体として自己を自律的に形成する(抄)」(HAPAX訳、93-107頁)は思いがけない年末の贈り物でした。底本はおそらく、『PRAXIS International』誌第3号(1986年、294~310頁)かと思われます。

★シュールマンと言えば、卓抜なエックハルト論『マイスター・エックハルトと彷徨の喜悦』(1972年)やハイデガー論『アナーキーの原理――ハイデガーと行為の問い』(1982年)、ジェラール・グラネル編の遺作『破壊されたヘゲモニー』などの著書で知られ、アムステルダムに生まれフランスや米国で活躍し、惜しくもエイズで早世した神父であり、ドイツ系哲学者です。翻訳を久しぶりに読めることは驚きですらあります。既訳テクストには以下のものがあったかと記憶しています。「道の大家、マイスター・エックハルト」(「神学ダイジェスト」23号、上智大学神学部神学ダイジェスト研究会、1971年9月、4~12頁)、「ハイデッガーをいかに読むか」(「創文」256号、創文社、1985年6月、18~20頁)、「自然法則と裸の自然――マイスター・エックハルトにおける思惟の経験について」(『明日への提言――京都禅シンポ論集』天竜寺国際総合研修所、1999年3月、369~408頁)。

★山本哲士『吉本隆明と『共同幻想論』』は17日頃発売。山本さんは先月、600頁を超える大著『フーコー国家論――統治性と権力/真理』(文化科学高等研究院出版局、2016年11月)を上梓されたばかり。山本さんが編集長を務めておられると聞く文化科学高等研究院出版局ではご承知の通り、吉本さんの『心的現象論』(愛蔵版:序説+本論、文化科学高等研究院出版局、2008年;普及版:本論、文化科学高等研究院出版局、2008年)、『思想の機軸とわが軌跡』(文化科学高等研究院出版局、2015年)などを刊行されており、吉本さんと山本さんの対談集『思想を読む 世界を読む』(文化科学高等研究院出版局、2015年)もあります。

★『吉本隆明と『共同幻想論』』の帯文はこうです、「なぜ今、吉本隆明の思想が必要なのか? 主著のひとつである『共同幻想論』を手がかりに、高度資本主義の変貌をつかみとり、「吉本思想」のエッセンスと現在性を伝える渾身の一冊。共同幻想国家論の構築へ――」。あとがきの最後で山本さんはこう述べておられます。「吉本思想の深みは、あらためて直面してみるとやはり並大抵ではないということです。同時に、『フーコー国家論』、『ブルデュー国家論』を共同幻想概念をもちこんで、明証化しました。この三部作で、マルクス主義的国家論を脱出する閾と通道が明示しえたとおもいます」(543頁)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。『ブルデュー国家論』は続刊書かと思われます。なお、晶文社版『吉本隆明全集』は来月刊行予定の第3巻(1951-1953:日時計篇(下)/「日時計篇」以後/ほか)でもって第Ⅰ期全12巻完結とのことです。山本さんが詳細に論じられた『共同幻想論』は第10巻に収められています。

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★次に発売済の注目新刊をご紹介します。

十年後のこと』東浩紀ほか著、河出書房新社、2016年11月、本体1,600円、46判上製224頁、ISBN978-4-309-02519-3
現代思想2017年1月臨時増刊号 総特集=九鬼周造 -偶然・いき・時間-』青土社、2016年12月、本体1,800円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1334-9
渡辺崋山書簡集』渡辺崋山著、別所興一訳注、東洋文庫、2016年12月、本体3,300円、B6変判上製函入496頁、ISBN978-4-582-80878-0 
地獄大図鑑 復刻版』木谷恭介著、復刊ドットコム、2016年12月、本体4,250円、B6判上製176頁、ISBN978-4-8354-5437-5

★『十年後のこと』は「文藝」誌2014年秋号と2016年秋号からまとめられた掌篇小説アンソロジー。帯文に曰く「明日を想像する人へ、35人の作家が想像する35の物語」と。収録作品については書名のリンク先をご覧ください。漫画家の方の作品も収められていますが、漫画ではなく活字ものです。人文系の書き手では東浩紀さんの「時よ止まれ」(初出「文藝」2014年秋号)を収録。封筒の中身、確かに読むのは辛いですけれど、読まずにはいられない気もします。

★『現代思想2017年1月臨時増刊号 総特集=九鬼周造』では、松岡正剛「面影と偶然性」、山内志朗「九鬼周造とスコラ哲学」、千葉雅也「此性をもつ無――メイヤスーから九鬼周造へ」、檜垣立哉「偶然性と永遠の今――現在性をめぐる九鬼と西田」、合田正人「九鬼周造の戦争――民族(フォルク)幻想とリズム」、ほか9篇の論考と討議1本を収録し、巻末には主要著作ガイドを配しています。九鬼の文庫新刊は今年、岩波文庫から2月に『時間論 他二篇』、8月に『人間と実存』が出ました。

★『渡辺崋山書簡集』は東洋文庫の第878番。年代順に、1831年9月~1837年12月「田原藩政復興と画作の抱負」、1836年12月~1839年3月「西洋事情への開眼と藩政改革の構想」、1839年5月~9月「蛮社の獄中期の苦悩」、1840年1月~12月「田原蟄居と新生の決意」、1841年1月~10月および遺書「再起の断念と自死への道」の全五部で、各書簡の現代語訳のあと部末に訳注と解説、原文は巻末にまとめるという構成。凡例によれば、底本は日本図書センター版『渡辺崋山集』の第3巻と4巻(1999年)。底本にない田原市博物館所蔵の書簡一通が新たに加えられています。訳注者の別所さんは巻頭の「はじめに」で「一国の利害を超えた“人の道”の尊重を訴えた崋山の言説は、今日も見直す価値がある」(8頁)としたためておられます。東洋文庫次回配本は1月、『乾浄筆譚2』と『徂徠集 序類2』とのことです。

★木谷恭介『地獄大図鑑 復刻版』は、復刊ドットコムによるジャガーバックスシリーズ復刻の第5弾です。1975年当時の値段に比べれば恐ろしく高いですが、それでも古書を買うよりかはお得です。主要目次は以下の通り。「日本八大地獄――地獄のきわめつけ」「地獄への道――死者のたどる道は?」「死者の国――昔の人はこう考えた」「東洋の地獄――日本の地獄のみなもと」「キリスト教の地獄――ダンテによる集大成」「世界の地獄――各国の地獄をめぐる」「大ゆかいまんが 地獄に落ちた三人」「巻末特別ふろく 最新版地獄案内」。ページサンプルは書名のリンク先でご覧になれます。予約特典はオリジナル「2017地獄カレンダー」(A3サイズ・四つ折)で、おどろおどろしい赤黒い絵に「まさに地獄。」という文字が躍るシュールなものとなっています。

★なお、復刊ドットコムによるジャガーバックスシリーズ復刻の次弾は2月中旬刊、中西立太著/小林源文イラスト『壮烈! ドイツ機甲軍団 復刻版』だそうです。本体3,700円、予約特典はオリジナルポストカード。今までのラインナップとジャンルが違いますから売れ方も異なるのだろうと思われます。
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by urag | 2016-12-11 21:38 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 04日

注目新刊:コスロカヴァール『世界はなぜ過激化するのか?』、など

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世界はなぜ過激化(ラディカリザシオン)するのか?――歴史・現在・未来』ファラッド・コスロカヴァール著、藤原書店、2016年12月、本体2,800円、四六上製272頁、ISBN978-4-86578-101-4

★発売済。原書は『Radicalisation』(Les Éditions de la Maison des sciences de l'homme, 2014)です。著者のファラッド・コスロカヴァール(Farhad Khosrokhavar, 1948-)はテヘラン生まれの社会学者で、フランスとイランの国籍を有しており、現在はフランスの社会科学高等研究所(EHESS)の教授でいらっしゃいます。既訳書に『なぜ自爆攻撃なのか――イスラムの新しい殉教者たち』(早良哲夫訳、青灯社、2010年6月;著者名表記は「ファルハド・ホスロハヴァル」)があり、今回の新刊は日本語訳第二弾です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭には〈日本語版 特別インタビュー〉として「過激ジハード主義テロの本質にあるもの」が置かれています。ここでコスロカヴァールは日本に「先進国として日本が新しい移民政策モデルをつくり上げてほしい」(31頁)として「選択的な移民政策」をごく簡潔に提言されています。本論で著者は「西欧でジハード主義者の人集めが行われていない国はない」(231頁)とさる情報筋の話を特記しています。実際のところ日本ももはや例外ではなく、ラディカリザシオン=過激化現象について深く学ぶべき時が到来していると言えます。

Farhad Khosrokhavar - Radicalisation et mal démocratique (2016, France Culture)

Farhad Khosrokhavar - Hors-champs (France Culture)

Farhad Khosrokhavar - " Les deux types de jihadismes européen "


★なお、藤原書店さんでは今月下旬、ドイツにおけるエジプト学の大御所ヤン・アスマン(Jan Assmann, 1938-)の代表作のひとつ、『エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読』(安川晴基訳;原著1998年)を刊行する予定とのことです。『エジプト――初期高度文明の神学と信仰心』(吹田浩訳、関西大学出版部、1998年2月、品切)以来の訳書であり、要チェックかと思います。


私たちの“感情”と“欲望”は、いかに資本主義に偽造されているのか?――新自由主義社会における〈感情の構造〉』フレデリック・ロルドン著、杉村昌昭訳、作品社、2016年10月、本体2,400円、四六判上製284頁、ISBN978-4-86182-602-3

★発売済。原書は『La Société des affects : Pour un structuralisme des passions』(Seuil, 2013)です。著者のフレデリック・ロルドン(Frederic Lordon, 1962-)はフランスの経済学者・思想家。フランス国立科学研究センター(CNRS)および、ヨーロッパ社会学センター(CSE)の研究ディレクターで、最近ではパリの大衆抗議運動「Nuit debout(ニュイ・ドゥブ:夜、立ち上がれ)」における活躍が注目されています。既訳書『なぜ私たちは、喜んで“資本主義の奴隷”になるのか?──新自由主義社会における欲望と隷属』(杉村昌昭訳、作品社、2012年11月)があり、今回の新刊は日本語訳第二弾になります。巻頭には日本語版への序文として「「欲望」と「感情」を棚上げにしてきた人文・社会科学――“欲望”が制度的秩序を転覆する“力”ともなる」ではスピノザの東洋性(!)というイメージから語り起こし、スピノザ主義社会科学としての「感情の構造主義」(13頁)が示唆されています。ロルドンはネグリやバリバール以後、スピノザをもっとも先鋭的に政治哲学へと活用している一人として目が離せない存在になっています。巻末には訳者の杉村さんによる解説「ロルドンの活動と本書の思想的戦略について」に続き、付録としてロルドンによる痛烈なピケティ批判である「ピケティでもって“21世紀の資本”は安泰だ」(ル・モンド・ディプロマティーク日本語電子版2015年4月号からの抜粋)が併載されています。

Lordon lance un appel à la révolte # Nuit Debout


Débat entre Frédéric Lordon et David Graeber : les Nuits debout doivent-elles rester sauvages ?


Lordon Piketty CSOJ 04/2015

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

用兵思想史入門』田村尚也著、作品社、2016年11月、本体2,800円、四六判上製352頁、ISBN978-4-86182-605-4
汚れた戦争』タルディ/ヴェルネ著、共和国、2016年12月、本体3,500円、A4変型判上製176頁、ISBN978-4-907986-13-1
沈黙の海へ』髙﨑紗弥香写真、アダチプレス、2016年11月、本体5,000円、B4変型判上製32頁、ISBN978-4-908251-05-4
引揚げ文学論序説――新たなポストコロニアルへ』朴裕河著、人文書院、2016年11月、本体2,400円、4-6han・上製210頁、ISBN978-4-409-16099-2
『加藤秀俊社会学選集()』加藤秀俊著、人文書院、2016年11月、本体各3,400円、4-6判上製314頁/330頁、ISBN978-4-409-24111-0/24112-7
うたごえの戦後史』河西秀哉著、人文書院、2016年10月、本体2,200円、4-6判上製204頁、ISBN978-4-409-52064-2

★田村尚也『用兵思想史入門』は発売済。本書の言う「用兵思想」とは「兵の用い方に関する思想」(1頁)であり、「戦争のやり方や軍隊の使い方に関するさまざまな概念の総称」と定義されています。「用兵思想の夜明け」「ローマの遺産」「封建制と絶対王政が生み出したもの」「ナポレオンと国民軍の衝撃」「産業革命とドイツ参謀本部」「海洋用兵思想の発展」「国家総力戦の現出」「諸兵科協同戦術の発展」「航空用兵思想の発展」「機甲用兵思想の発展」「ロシア・赤軍の用兵思想の発展」「アメリカ軍の原題用兵思想の発展」の全12章で、古代メソポタミアから現代アメリカの「エアランド・バトル」までを概観できます。田村さんは在野の軍事研究家で、近年ではアニメ『ガールズ&パンツァー』の軍事監修のほか、今春から陸上自衛隊幹部学校の技術高級過程の講師をお勤めだそうです。

★タルディ/ヴェルネ『汚れた戦争』はまもなく発売。先月刊行された『塹壕の戦争 1914-1918』に続く、共和国さんのタルディ第二作です。原書は『Putain de Guerre !』(Casterman, 2014)。訳者あとがきによれば、同作はまず2008年から2009年にかけて、タブロイド判6分冊で発行されたあとに2分冊のアルバムとして刊行され、その後本書の底本となる1巻本新装版が2014年に刊行された、とのことです。前半(第1部)は、ジャック・タルディが第一次大戦を描いた「汚れた戦争」で、後半(第2部)はジャン=ピエール・ヴェルネによる大戦をめぐる資料編「汚れた戦争全史 1914-1918」となっています。世界情勢があたかも大戦前夜のようにきな臭くなっているこんにち、100年前に起こった最悪の事態について何度でも学び直す必要があると思えます。共和国さんは今年、タルディの二作をはじめ、池田浩士『戦争に負けないための二〇章』や、藤原辰史編『第一次世界大戦を考える』などの新刊を刊行されており、その出版活動そのものが反戦のアクションとなっています。「この編集者を見よ」と言わずにはいられません。

★髙﨑紗弥香写真集『沈黙の海へ』は発売済。「初夏から晩秋にかけて御嶽山の山小屋で働きながら、撮影を続けている写真家」(版元紹介文より)だという髙﨑紗弥香(たかさき・さやか:1982-)さんの写真集第一作です。当ブログでの写真では小さく見えるかもしれませんが実際はB4変型判(279mm×406mm)というかなり大判な本で迫力があります。収録されているのは「2014年に行なった、日本海から太平洋を縦断する単独行において〔・・・〕新潟・親不知の海抜ゼロメートルを起点に、北アルプス→乗鞍岳→御嶽山→中央アルプス→南アルプス→最終地点の静岡・駿河湾へ至る43日間」の中で撮影されたもので、厳しい自然の表情は「日本の自然でありながら、まったく未知の場所に降り立ったかのような新鮮な印象を与えるもの」となっていると謳われています。サンプル写真は書名のリンク先をご覧ください。静けさの中に生と死が剥き出しのまま隣り合わせているような、美しさと厳しさを併せ持つ凄絶な写真群に圧倒されます。今月17日(土)まで、静岡県三島市のGALLERYエクリュの森にて写真集出版記念展「沈黙の海へ」が開催されています。

★朴裕河『引揚げ文学論序説』はまもなく発売。2008年から2016年に各誌や論集で発表されてきた「引揚げ文学」をめぐる論文を一冊にまとめたもの。「引揚げ文学」とは、前世紀における満州、朝鮮、中国から日本への帰国者の中で作家として活躍した人々のことを指しており、彼らは「帝国時代の記憶にこだわり続け〔・・・〕」多くは、引揚げ後も自らを「在日日本人」と認識し、自らの異邦人性を強く自覚していた。〔・・・〕青少年期までの時期をかの地で過ごした結果として、植民地や占領地以外には「故郷」がないと感じていたひとたち」(14頁)と著者は指摘しています。目次詳細や取り上げられている作家については書名のリンク先をご覧ください。

★「「引揚げ」関連手記や文学作品をひもといてまず気づくのは、これらの物語が、「日本」という主体の統合化に微細ながら決定的な亀裂を入れていることである。つまり、そこでは植民地の日常の記憶や、戦後日本への違和感とともに、植民地からもち帰った言葉や文化の「混交」の現場も語られていて、植民地・占領地返還後の「日本」がけっして単一の言葉・文化・血統を共有する「単一民族国家」ではありえなかったことが、そこからは見えてくる」(29頁)。「「引揚げ文学」は、「引揚げ」そのものの悲惨な記憶を忘却せんとする欲望に加えて、「帝国」政策の結果としての混血性を露わにし、新しいはずの「戦後日本」がほかならぬ「帝国後日本」でしかなかったことをつきつける存在でもあった」(30頁)というのが著者の分析です。

★また、あとがきでは次のように振り返っておられます。「『和解のために』『ナショナル・アイデンティティとジェンダー――漱石・文学・近代』『帝国の慰安婦』と、引揚げとは関係ない本をだしてきたが、『ナショナル・アイデンティティとジェンダー』にさえ、他者と出会う体験をさせる「移動」への関心が底辺にあった。ここ十余年の歳月は、まさに移動への関心とともにあったのである。特に『帝国の慰安婦』は、住み慣れた場所を離れることを余儀なくされ、「移動」させられる女性たちのことを書いたつもりである」(201~202頁)。「歴史は、ともすると観念化する」(204頁)という言葉は朴さんの研究における批判的姿勢をよく表しているように思えます。

★『加藤秀俊社会学選集(上/下)』は発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。版元さんの説明によれば、『加藤秀俊著作集』全12巻(中央公論社、1980~1981年)に含まれていない、「1995年以降の主要な論考を、若い世代の社会学者の意見も参考にしながらまとめた」もので、「各論考に、現在の考え、当時の思い出やこぼれ話といった「あとがき」を付」したもの、とのことです。白い紙に書家の石川九楊さんによる題字が印刷され、カバーには内容紹介文は一切記載されておらず、帯も付属しないという極めてシンプルな装丁です。人文書院さんのウェブサイトでは、竹内洋さんによる「加藤秀俊論」(『大衆の幻像』中央公論新社、2014年より転載)が掲出されており、加藤さんの立場を「非」論壇的で「非」左翼であるとする興味深い分析を読むことができます。

★河西秀哉『うたごえの戦後史』は発売済。著者の河西秀哉(かわにし・ひでや:1977-)さんは神戸女学院大学文学部准教授。これまで主にに戦後の天皇制をめぐる複数の著書を上梓しておられます。本書について「合唱は一緒に歌うことを通じて、参加者どうしの結びつきを強め、一体となる効用があると考えられた。そして、ともに歌うことで、一人ひとりが抱えていた問題が解消し、またそれぞれの生活に戻っていく。うたごえの戦後史は、それをどう思想的に位置づけ実践するのか、という模索であった」(196頁)と著者は終章で述べています。目次詳細や序章の立ち読みは書名のリンク先をご覧ください。

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by urag | 2016-12-04 21:42 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2016年 12月 02日

注目新刊:ブランショ『終わりなき対話』

弊社出版物でお世話になっている著訳者の最近の出版物をご紹介します。

◆モーリス・ブランショさん(著書:『ブランショ政治論集』『書物の不在』『謎の男トマ』)
◆郷原佳以さん(共訳:『ブランショ政治論集』)

後期の代表作評論集のひとつ『終わりなき対話』(L'entretien infini, Gallimard, 1969)の訳書が三分冊で刊行開始となりました。三部構成がそのまま一冊ずつ出版されていくかたちで、今回発売された第Ⅰ巻が「複数性の言葉(エクリチュールの言葉)」、第Ⅱ巻が「限界-経験」で2017年3月刊行予定、第Ⅲ巻が「書物の不在(中性的なもの、断片的なもの)」で2017年7月刊行予定、と告知されています。第Ⅰ巻の翻訳の分担は巻頭の対話篇「終わりなき対話」が郷原さんによるもので、そのほかは湯浅さんと上田さんの共訳です。このお二人が訳者あとがきもお書きになっておられます。

終わりなき対話 Ⅰ 複数性の言葉(エクリチュールの言葉)
モーリス・ブランショ著 湯浅博雄/上田和彦/郷原佳以訳
筑摩書房 2016年11月 本体4,500円 A5判上製248頁 ISBN978-4-480-77551-1

カヴァー表1紹介文より:不可能と対峙せよ。20世紀文学史に屹立する孤高の名著、刊行開始。

目次:
はしがき
終わりなき対話
1 思考と不連続性の要請
2 このうえなく深い問い
 1
 2
 3
3 言葉を語ることは見ることではない
4 大いなる拒否
 1
 2 暗くてわからないものをいかにしてあらわにするか
5 未知なるものを知ること
6 言葉を保ち続ける
7 第三類の関係――地平のない人間
8 中断――リーマン面のうえにいるように
9 複数性の言葉
訳注
訳者あとがき

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by urag | 2016-12-02 12:25 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 27日

注目新刊:レヴィ=ストロースの再刊2点、ほか

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★今回は以下の3点の再刊書に注目したいと思います。

火あぶりにされたサンタクロース』クロード・レヴィ=ストロース著、中沢新一訳・解説、角川書店、2016年11月、本体1,800円、四六判上製124頁、ISBN978-4-04-400220-6
神話と意味』クロード・レヴィ=ストロース著、大橋保夫訳、みすず書房、2016年11月、本体2,400円、四六判上製112頁、ISBN978-4-622-08591-1
心と身体/物質と記憶力――精神と身体の関係について』ベルクソン著、岡部聡夫訳、駿河台出版社、2016年11月、本体3,600円、B6判並製488頁、ISBN978-4-411-02241-7

★まずはレヴィ=ストロースの2点。『火あぶりにされたサンタクロース』は1995年にせりか書房から刊行されたものの新版で、巻頭に新たに置かれた「新版のための序文」によれば、「図版や写真や若干の表記を改めただけで、ほぼそのままのかたちで新しく出版し直す」とのことです。サルトルの依頼により「レ・タン・モデルヌ」誌77号(1952年3月)に寄稿された論考「Le Père Noël supplicié」の翻訳で、巻末にはせりか書房版と同様に、中沢さんの解説「クリスマスの贈与」が付されています。先述した新しい序文で中沢さんはこの論考について次のように紹介されています。「興味ふかい論文の中で、太陽の力が弱まる冬至をはさんでおこなわれた異教世界の死者儀礼が、どのようにしてキリスト教の祭りに組み入れられ、変形されていったかを、それまでにない斬新な着想にもとづいて明らかにしてみせている。とりわけ近代の資本主義化したヨーロッパが、いかにしてたくみにクリスマスを資本主義精神の表現者につくりかえていったかを、みごとに描き出してみせた。/資本主義という経済システムの深層には、「贈与」や「増殖」をめぐる人類のとてつもなく古い思考が埋め込まれている。クリスマスが図らずもそのことを露呈させる。つまりクリスマスとは、キリスト教的なヨーロッパが意識下に押し隠そうとした文明の「無意識」を、夢のようなしつらえをつうじて社会の表面に露呈させる、いささか不穏なおもむきをはらんだ祭りなのである。/レヴィ=ストロースはクリスマスのはらむその不穏なうごめきのようなものを、ヨーロッパ文明の本質をなす矛盾の表現と考えたのである」(2~3頁)。

★『神話と意味』は、1996年にみすずライブラリーの一冊として刊行されたものの新装版。再刊にあたって改訂があったのかどうかは特記されていませんが、訳者は1998年にお亡くなりになっています。原書は『Myth and Meaning』(University of Toronto Press, 1978; 2nd edition, Schocken Books, 1995)です。1977年12月にカナダのCBCラジオで放送された、神話をめぐる全5回の講話。帯文に曰く「ラジオでの講話を編集。『野生の思考』『神話論理』に対する質問に答える。率直かつ明快な、彼自身による入門書」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ウェンディ・ドニジャー(Wendy Doniger, 1940-)による「序」に付されたささやかな注でほのめかされている、レヴィ=ストロースとジーンズメーカーのリーヴァイ・ストラウス(レープ・シュトラウス)の「関係」については、どう理解するべきなのかよく分かりませんが、興味をそそられます。

★続いてベルクソンです。『心と身体/物質と記憶力』は、『物質と記憶――精神と身体の関係について』(駿河台出版社、1995年)の新版。巻末の「後記」によれば、旧版の「段落で見落としたところを補い、気づいた間違いは訂正し、また訳文もいくらか修正した」とのことです。また続けて「日本語として意味不明の訳文が、すべて誤訳であることはいうまでもない」ときっぱりとお書きになっておられ、その厳しいご姿勢に胸を打たれます。新版では新たに『精神的エネルギー』の第二論文「心と身体」の翻訳が掲載され、さらに巻末解説も一新されています。旧版では「脳と記憶――ベルクソンの失語論」(旧版345~362頁)と題されていましたが、新版では「自由な行為における記憶力と身体の関係について」(409~471頁)となっています。御参考までに新旧の訳者解説の詳細目次を以下に列記しておきます。旧版:Ⅰ「『物質と記憶』概観」、Ⅱ「局在論とその問題点」、Ⅲ「ベルクソンによる説明」、Ⅳ「形而上学の伝統的テーマについて」、後記。新版:第一部「記憶は脳のなかにある?」、第二部「心身関係――ベルクソンの場合」〔Ⅰ「記憶力の二つの形態について」、Ⅱ「再認の二つの形態について」、Ⅲ「イマージュの記憶から運動への移行について」〕、第三部「心脳関係――ペンフィルドの場合」、第四部「自由な行為と記憶力」、後記。なお、新版の刊行にあたって『物質と記憶』を『物質と記憶力』と改めたことについては、後記に「精神力の異名であるmémoireを「記憶力」あるいは「記憶力のはたらき」とし、souvenirを「記憶」あるいは「思い出」としたことによる」とお書きになっておられます。

★なお『物質と記憶』をめぐっては今月、注目すべき論文集が刊行されました。『ベルクソン『物質と記憶』を解剖する――現代知覚理論・時間論・心の哲学との接続』(平井靖史/藤田尚志/安孫子信編、書肆心水、2016年11月)。書名のリンク先で目次の閲覧と立ち読みができます。

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★このほか、最近では以下の書籍との出会いがありました。

ジャック・デリダと精神分析――耳・秘密・灰そして主権』守中高明著、岩波書店、2016年11月、本体2,900円、四六判上製256頁、ISBN978-4-00-061157-2
タイム・スリップの断崖で』絓秀実著、書肆子午線、2016年11月、本体2,300円、四六判並製312頁、ISBN978-4-908568-08-4
マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』ロブ・デサール/スーザン・L・パーキンズ著、パトリシア・J・ウィン本文イラスト、斉藤隆央訳、紀伊國屋書店、2016年12月、本体2,000円、46判上製298頁、ISBN978-4-314-01144-0

★守中高明『ジャック・デリダと精神分析――耳・秘密・灰そして主権』は発売済。本書の企図について巻頭の序「「科学」の時代における精神分析」にはこう説明されています。「ジャック・デリダの思考とフロイトに始まる精神分析の思考をあらためて出会わせ、そのことを通して人間という謎に満ちた存在の全的理解が試されるいくつかの限界的場面にその知を向き合わせること、そして同時に、制度化され学としての体系性を手に入れる代償として精神分析が失ったものが何であるかを、デリダの思考を一種の触媒として明らかにすること、つまりは脱構築的読解の介入によって精神分析を変容させ、この知に新たな別種の射程をもたらすこと」(1頁)。序に続く本書の構成は以下の通りです。第Ⅰ部「耳について」〔第一章「脱構築と(しての)精神分析――不気味なもの」、第二章「ラカンを超えて――ファロス・翻訳・固有名」〕、第Ⅱ部「秘密について」〔第一章「告白という経験――フーコーからデリダへ」、第二章「埋葬された「罪=恥」の系譜学――クリプトをめぐって」〕、第Ⅲ部「灰について」〔第一章「終わりなき喪、不可能なる喪――アウシュヴィッツ以後の精神」、第二章「ヘーゲルによるアンティゴネー――『弔鐘』を読む」〕、第Ⅳ部「主権について」〔第一章「絶対的歓待の今日そして明日――精神分析の政治-倫理学」、第二章「来たるべき民主主義――主権・自己免疫・デモス」〕、註、あとがき。

★絓秀実『タイム・スリップの断崖で』は発売済。扶桑社の文芸誌「en-taxi」(2003年~2015年)の第5号(2004年春号)から休刊号となる第46号(2015年冬号)にかけて連載された時評「タイム・スリップの断崖で」に加筆訂正を加えたもの。帯文は以下の通りです、「小泉政権下でのイラク邦人人質事件から安保関連法案をめぐる国会前デモまで、そこに顕在化したリベラル・デモクラシーのリミット=断崖を照射する!」。奥付前の特記によれば、連載第一回目の「さらに、踏み越えられたエロティシズムの倫理――大西巨人の場合」は「文芸評論として書かれており、本書の時評集という性格から外れるため、これを収録しなかった」とのことです。また、絓さんが「本書最大の読みどころ」と絶賛されている、本書の10万字以上に及ぶという脚注は、長濱一眞さんによるものだそうです。

★デサール&パーキンズ『マイクロバイオームの世界』はまもなく発売。原書は『Welcome to the Microbiome: Getting to Know the Trillions of Bacteria and Other Microbes In, On, and Around You』(Yale University Press, 2015)です。訳者あとがきの文言を借りると、本書は「アメリカ自然史博物館で2015年11月から2016年8月まで開催されていた、マイクロバイオームをテーマとして展示会に合わせて制作されたものらしい。展示会はその後、アメリカ国内のみならず国外へもツアーをおこなう予定とのことなので、いずれ日本で開催されることもあるかもしれない」。同じく訳者あとがきによれば、マイクロバイオームとは「私たちの体の内部や表面のほか、家庭や学校などの生活の場のそれぞれに存在する微生物の集まり」であり、そうした微生物のもつ遺伝子の総体を指すこともあるとのことです。目次詳細や本書の概要については書名のリンク先をご覧ください。

★今夏に刊行されたアランナ・コリンによる『あなたの体は9割が細菌――微生物の生態系が崩れはじめた』(矢野真千子訳、河出書房新社、2016年8月)が話題を呼びましたが、この本が踏まえている議論こそが「ヒトマイクロバイオーム・プロジェクト」であり、その詳細を『マイクロバイオームの世界』が教えてくれます。マイクロバイオーム関連の新刊は今後もますます増えていくものと思われます。近年では理系や医学系の雑誌で幾度となく取り上げられてきましたし、マーティン・J・ブレイザー『失われてゆく、我々の内なる細菌』(山本太郎訳、みすず書房、2015年7月)や、今月刊行されたデイビッド・モントゴメリー/アン・ビクレー『土と内臓――微生物がつくる世界』(片岡夏実訳、築地書館、2016年11月)など、単行本も増えています。『現代思想』2016年6月臨時増刊号「総特集=微生物の世界――発酵食・エコロジー・腸内細菌」などもその引力圏にあると言えるかと思われます。文理の別を問わない越境的な問題群に切り込む重要な鍵として書店さんの店頭をにぎわせていくことでしょう。
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by urag | 2016-11-27 16:46 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)