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カテゴリ:本のコンシェルジュ( 913 )


2017年 11月 03日

注目新刊:ドゥルーズ/ガタリ『カフカ』新訳版刊行、ほか

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カフカ――マイナー文学のために〈新訳〉』ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ著、宇野邦一訳、法政大学出版局、2017年10月、本体2,700円、四六判上製218頁、ISBN978-4-588-01068-2
哲学のプラグマティズム的転回』リチャード・J・バーンスタイン著、廣瀬覚/佐藤駿訳、岩波書店、2017年10月、本体3,600円、四六判上製408頁、ISBN978-4-00-024057-4
科学の本質と多様性』ジル=ガストン・グランジェ著、松田克進/三宅岳史/中村大介訳、文庫クセジュ:白水社、2017年10月、本体1,200円、新書判並製176頁、ISBN978-4-560-51016-2

★新訳『カフカ』は、1978年に叢書ウニベルシタスの第85番として刊行された旧訳(宇波彰/岩田行一訳)以来の、待望の新訳。原著は『Kafka: Pour une littérature mineure』(Minuit, 1975)です。新訳と旧訳の章題節題の比較を列記します。

新訳|旧訳
第1章 内容と表現|内容と表現
 うなだれた頭、もたげた頭|うなだれた頭、挙げられた頭
 写真、音|写真・音
第2章 太りすぎのオイディプス|ふとりすぎのオイディプス
 二重の乗り越え――社会的三角形、動物になること|二重の超越――社会的三角形、動物への変身
第3章 マイナー文学|マイナー文学とは何か
 言葉|言語
 政治|政治
 集団|集団的なもの
第4章 表現の構成要素|表現の構成要素
 愛の手紙と悪魔の契約|愛の手紙と悪魔の契約
 短編小説と動物になること|物語と動物への変化
 長編小説と機械状アレンジメント|長篇小説と機械状鎖列
第5章 内在性と欲望|内在と欲求
 法、罪悪性等々に抗して|法に対する違反、罪など
 過程──隣接的なもの、連続的なもの、無制限なもの|プロセス、隣接・連続・無限定
第6章 系列の増殖|セリーの増殖
 権力の問題|権力の問題
 欲望、切片、線|欲求・分節・線
第7章 連結器|連結器
 女性と芸術家|女たちと芸術家
 芸術の反美学主義|芸術の反=美的主義
第8章 ブロック、系列、強度|ブロック・セリー・強度
 カフカによる建築の二つの状態|カフカによる構築物の二つの状態
 もろもろのブロック、それらの異なる形式と長編小説の構成|ブロック、そのさまざまなかたちと長篇小説の構成
 マニエリズム|マニエリスム
第9章 アレンジメントとは何か|鎖列とは何か
 言表と欲望、表現と内容|言表と欲求、表現と内容

★旧訳では巻末に訳者あとがきと、宇波さんによる論考「カフカの表現機械」が付録として納められていました。新訳では長めの訳者あとがきのみです。宇野さんの訳者あとがきの節題も列記しておくと、1「読みの転換」、2「アンチ・オイディプスとしてのカフカ」、3「リゾーム、強度、マイノリティ」、4「アレンジメントのほうへ」、5「ガタリのプロジェクト」、6「ベンヤミンとカネッティ」の全6節です。「『アンチ・オイディプス』と『千のプラトー』のあいだに刊行された『カフカ』は他の二冊とともに確かに三部作を構成するといえる。〔・・・〕このカフカ論のめざましい発見と、すさまじい思考の生気〔・・・〕カフカ自身の書いたテクストを〈名作〉の囲いから引きずりだし、生々しく蠕動する現在の〈過程〉そのものとして読み直すことを、いまもこの本はうながしているはずだ」と宇野さんは評しておられます。『カフカ』はその独特な言葉遣いと自在な論理展開によって難解とも見える論考ですが、著者二人の思考の中核的主題が次々に現れる非常に濃密なテクストであるだけに、新訳によって新たな読解の鍵が示されたことは読者にとって幸運だと言えるのではないでしょうか。

★『哲学のプラグマティズム的転回』は、アメリカの哲学者バーンスタイン(Richard J. Bernstein, 1932-)による『The pragmatic turn』(Polity, 2010)の全訳です。ローティ夫妻への献辞がある本書では、「プラグマティストたちとともに50余年を生きてきた者として、彼らから学んだことを読者と分かち合うのが狙い」(まえがきより)とされており、以下通り全9章立てとなっています。第一章「パースのデカルト主義批判」、第二章「ジェイムズのプラグマティックな多元主義と倫理的帰結」、第三章「デューイの根源的民主主義のヴィジョン」、第四章「ヘーゲルとプラグマティズム」、第五章「プラグマティズム・客観性・真理」、第六章「経験が意味するもの――言語論的転回のあとで」、第七章「ヒラリー・パットナム――事実と価値の絡み合い」、第八章「ユルゲン・ハーバマスのカント的プラグマティズム」、第九章「リチャード・ローティのディープ・ヒューマニズム」。

★訳者あとがきにはこう書かれています。「いわば新旧のプラグマティストとの対話という体裁で編まれた本書は、著者自身がプラグマティズムの歴史を綴ったものではないと断りながらも、“プラグマティズムの衰亡と分析哲学の台頭”という従来の「物語」を刷新し、米国の哲学について「より精妙で入り組んだ」物語を語る流れに掉さすものとなっている」。なお、バーンスタインの訳書は本書で4点目。既刊書には以下の3点4冊があります。『科学・解釈学・実践――客観主義と相対主義を超えて』(全2巻、丸山高司/木岡伸夫/品川哲彦/水谷雅彦訳、岩波書店、1990年、品切;Beyond Objectivism and Relativism: Science, Hermeneutics, and Praxis, University of Pennsylvania Press, 1983)、『手すりなき思考――現代思想の倫理-政治的地平』(谷徹/谷優訳、産業図書、1997年;The New Constellation: The Ethical-Political Horizons of Modernity/Postmodernity, Polity, 1991)、『根源悪の系譜――カントからアーレントまで』(阿部ふく子/後藤正英/齋藤直樹/菅原潤/田口茂訳、法政大学出版局、2013年;Radical Evil: A Philosophical Interrogation, Polity, 2002)。

★『科学の本質と多様性』は『La science et les sciences』(初版1993年;第二版1995年)の全訳。『理性』(山村直資訳、文庫クセジュ、1956年)、『哲学的認識のために』 (植木哲也訳、法政大学出版局、1996年)に続く、フランスの科学哲学者グランジェ(Gilles-Gaston Granger, 1920-2016)の久しぶりの訳書です。訳者あとがきに曰く「本書は、「科学とは何か」というきわめて大きな問題を巡るほぼ半世紀にわたる著者の議論のエッセンスを、数式等のテクニカルな論述を用いずに分かりやすく記述したものである」と。「「科学の時代」の諸問題」「科学的知識と技術知の相違」「方法の多様性と目標の統一性」「形式科学と経験科学」「自然科学と人間科学」「科学的真理の進歩」の全6章立て。よく詳しくは書名のリンク先をご覧ください。

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★また、最近では以下の新刊との出会いがありました。

心理学と錬金術 Ⅰ 新装版』C・G・ユング著、池田紘一/鎌田道生訳、人文書院、2017年11月、本体4,200円、A5判上製326頁、ISBN978-4-409-33055-5
心理学と錬金術 Ⅱ 新装版』C・G・ユング著、池田紘一/鎌田道生訳、人文書院、2017年11月、本体4,700円、A5判上製404頁、ISBN978-4-409-33056-2
フトゥーワ――イスラームの騎士道精神』アブー・アブドゥッラフマーン・スラミー著、中田考監訳、山本直輝訳、作品社、2017年11月、本体2,200円、46判上製192頁、ISBN 978-4-86182-649-8

★ユング『心理学と錬金術』2巻本は、新装復刊。初版は1976年のロングセラーで、ユングの代表作である1944年の大著『Psychologie und Alchemie』の全訳です。底本は1951年の第2版。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。原著は全1巻ですが訳本では2分冊です。第Ⅰ巻は第一部「錬金術に見られる宗教心理学的問題」と第二部「個体化過程の夢象徴」を収め、第Ⅱ巻では第三部「錬金術における救済表象」が収められています。図版は全部で270葉。「キリスト教文明と意識・自我万能の西洋合理主義の蔭に、地下水として古代以来連綿と命脈を保ち続け、現代という危機の時代において無意識の諸問題として前面に現れ出てきたところの隠された心の歴史」(訳者あとがきより)をめぐる本書は、脳や心の科学的研究が進展してもなお割り切れないものを残す不可解な〈深み〉を見つめようとする時、何度でも読み直されるのではないかと思われます。

★『フトゥーワ』は帯文に曰く「イスラーム版『武士道』、初翻訳」と。著者のアブー・アブドゥッラフマーン・スラミー(937-1021)はイランのハディース学者。訳者によれば「フトゥーワ」とはアラビア語でもともと「若々しさ」や「漢気(おとこぎ)」を意味するとのことで「弱いものを助け、気前よく振る舞い、名誉を重んずることを良しとする生き方を意味」しているとのことです。イスラーム教における礼節と自己鍛錬、精神修養を端的に教えるもので、たいていは短いアフォリズムのような形式をとり、フトゥーワの何たるかが様々な表現で簡潔に示されたあと、聖典やスーフィーの先師たちの言葉などによる例証が続きます。非常に興味深い一冊です。以下に目次を列記しておきます。

はじめに:『フトゥーワ』邦訳に寄せて(レジェブ・シェンチュルク:イブン・ハルドゥーン大学学長)
フトゥーワ
 第一章「家族、同胞と共に生きること」
 第二章「己を鍛えること」
 第三章「全てをゆだねること」
 第四章「尽くすこと」
 第五章「恩寵のもとに」
解説:『フトゥーワ』とは何か?(山本直輝)
解説:西洋の騎士道と「フトゥーワ」について(中田考)

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by urag | 2017-11-03 22:35 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 30日

注目新刊:ホワイト『実用的な過去』岩波書店、ほか

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★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、編訳書:パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
ヘイドン・ホワイトさんの論文集『実用的な過去』(上村忠男監訳、上村忠男/佐藤啓介/松原俊文/那須敬訳、岩波書店、2017年10月)が発売となりました。『The Practical Past』(North western University Press, 2014)の全訳に、ホワイトさんの最新論考「歴史的真実、違和、不信」(翻訳初出は上村さん訳で『思想』2016年11月号)を付録として収めています。目次詳細や立ち読みは書名のリンク先でご利用になれます。上村さんは同書の翻訳に当たられ、さらに監訳者として解説「ホロコーストをどう表象するか――「実用的な過去」の見地から」と監訳者あとがきも担当されておられます。

★星野太さん(著書:『崇高の修辞学』)
中沢研さんの作品集『中沢研』(赤々舎、2017年10月)の巻末に、星野さんが執筆された「形態の明滅――中沢研の作品(2012-2016)」が併載されています。「フレーム」「空間」「軽量化」「形態」「形象」「理性/比率」の全6節で、中沢さんの作品を読み解かれておられます。

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一方、弊社刊行物の書評情報です。8月刊、ポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない――人種と国民をめぐる文化政治』(田中東子/山本敦久/井上弘貴訳)の書評が出ました。『MUSIC MAGAZINE』2017年11月号の「RANDOM ACCESS」欄に、石田昌隆さんによる書評が掲載されています。また「図書新聞」2017年11月4日号では1~2面に、酒井隆史さんによる長文の書評「不変と変化、この30年――レイシズムとナショナリズムの不可分な力関係」が掲載されています。また、再掲となりますが、同書をめぐるシンポジウムが来月中旬行われます。


日時:2017年 11月12日(日曜日)13:30〜17:00(開場13:00)
場所:神戸市・海外移住と文化の交流センター
参加費:無料(要・事前申し込み→こちらから)

登壇者:酒井隆史(大阪府立大学人間社会システム研究科教授)、鈴木慎一郎(関西学院大学社会学部教授)、田中東子(大妻女子大学文学部准教授)、山本敦久(成城大学社会イノベーション学部准教授)、井上弘貴(神戸大学国際文化学研究科准教授)

主催:神戸大学国際文化学研究推進センター2017年度研究プロジェクト「ポストBrexitの文化状況――身体・都市・メディア・資本へのグローバルな影響と意味」(代表者:小笠原博毅)
後援:カルチュラル・ スタディーズ学会

内容:「ユニオンジャックに黒はない」。1970年代イギリスの極右勢力が移民排斥のスローガンとしたこの文言は同時に、「だからなんだってんだ!」というカルチュラル・スタディーズの立ち位置を鮮明に表す合言葉ともなった。原著出版後30年の時を経てついに邦訳なる! ディアスポラの響きに誰よりも寄り添ってきた鈴木慎一郎氏と、近代資本主義を地べたから検証している酒井隆史氏をゲストに迎え、訳者3名と徹底的に討論する。

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by urag | 2017-10-30 12:47 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 29日

注目新刊:コペルニクス『完訳 天球回転論』みすず書房、ほか

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完訳 天球回転論――コペルニクス天文学集成』高橋憲一訳/解説、みすず書房、2017年10月、本体16,000円、A5判上製728頁、ISBN978-4-622-08631-4
麻薬常用者の日記〔新版〕Ⅰ天国篇』アレイスター・クロウリー著、植松靖夫訳、国書刊行会、2017年10月、本体2,300円、四六変型判並製320頁、ISBN978-4-336-06215-4
書物の宮殿』ロジェ・グルニエ著、宮下志朗訳、岩波書店、2017年10月、本体2,700円、四六判上製208頁、ISBN978-4-00-061223-4
語るボルヘス――書物・不死性・時間ほか』J・L・ボルヘス著、木村榮一訳、岩波文庫、2017年10月、本体580円、192頁、ISBN978-4-00-327929-8
国語学史』時枝誠記著、岩波文庫、2017年10月、本体900円、320頁、ISBN978-4-00-381504-5
呻吟語(ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)』湯浅邦弘著、角川ソフィア文庫、2017年10月、本体960円、320頁、ISBN978-4-04-400291-6 
幸福論』B・ラッセル著、堀秀彦訳、角川ソフィア文庫、2017年10月、本体800円、384頁、ISBN978-4-04-400339-5

★コペルニクス『完訳 天球回転論』は、高橋憲一さんによる『コペルニクス・天球回転論』(みすず書房、1993年)に続く、待望の完訳版です。既訳は大まかに言うと、『天球回転論』第一巻の抄訳(全14章のうち第11章まで)と関連する未刊論考「コメンタリオルス〔小論〕」と訳者解説の三本立てでしたが、今回の完訳版では『天球回転論』全6巻の全訳と「コメンタリオルス」、そして訳者解説の三本立てです。同書第1巻の既訳には矢島祐利訳『天体の回転について』(岩波文庫、1953年)があります。言うまでもありませんが、『天球回転論』はコペルニクスの没年に刊行された主著で、地動説を闡明した歴史的転換点を為す古典です。高額本ではありますけれども、品切になる前に購入しておきたい書目です。みすず書房さんの近刊書にはスピノザ『知性改善論・短論文』の佐藤一郎さんによる新訳が12月刊行と予告されていて、こちらも鶴首して待ちたい本です。

★クロウリー『麻薬常用者の日記〔新版〕Ⅰ天国篇』は国書刊行会版『アレイスター・クロウリー著作集』第3巻(1987年;原著『The Diary of a Drug Fiend』1922年)の改訳新装版を3分冊で刊行するものの第1回配本。個人的にはギーガーの絵をあしらった旧版の函入本が好きなのですが、今回の新装版は判型もハンディかつスタイリッシュに変更されて、これはこれで美しい一冊です。クロウリー没後70年を記念しての刊行で、第Ⅱ巻「地獄篇」は来月(2017年11月)発売予定、第Ⅲ巻「煉獄篇」は12月とのことです。全巻購読者は特典として特製収納BOXがもらえるとのことで、これは揃えるしかないでしょう。国書刊行会さんでは今月、グスタフ・マイリンク『ワルプルギスの夜――マイリンク幻想小説集』(垂野創一郎訳、国書刊行会、2017年10月、本体4,600円、A5判上製450頁、ISBN 978-4-336-06207-9)も刊行されており、こちらも要チェックです。

★次に岩波書店の今月新刊から3点。グルニエ『書物の宮殿』は『Le palais des livres』(Gallimard, 2011)の全訳。書名からすると書物論なのかと連想しますが、実際は少し違います。訳者あとがきで宮下さんは次のように紹介しておられます。「作家人生も終わりに近づいたグルニエが、テーマに応じて、これまで自分が読んできた文学テクストを引いたり、ジャーナリスト・作家としての経験を織り交ぜたりしながら、文学について、書くことについて思いをめぐらせたエッセイだといえる」。目次詳細と立ち読みは書名のリンク先でご利用になれます。特に本書末尾のテクスト「愛されるために」は印象的で、「書くこと〔エクリチュール〕は、ひとつの生きる理由なのだろうか?」という一文から始まります。この一文は帯にも大書されている文言です。

★ブエノスアイレスでの1978年の連続講演集である『語るボルヘス』は特記がないものの、『ボルヘス、オラル』(書肆風の薔薇、1987年;第二版〔新装版〕、水声社、1991年)の改訳版と見ていいかと思います。単行本版と文庫版の違いを列記しておくと、単行本版は原著『Borges, oral』1979年初版を底本とし、ボルヘスの「序言」と5つの講演「書物」「不死性」「エマヌエル・スウェデンボルグ」「探偵小説」「時間」を収めたほか、巻頭にはアベリーノ・ホセ・ポルト(ベルグラーノ大学学長)による「ベルグラーノ大学におけるボルヘス」、巻末にマルティン・ミュラーによる「講演者ボルヘス」、さらに「ボルヘスのプロフィール」と題した無記名の紹介文が訳出され、最後に「訳者あとがき」が置かれています。一方、文庫版は序文と5つの講演(「スウェデンボルグ」が「スヴェーデンボリ」と表記変更されています)を収録したほかは、新たに書き直された訳者による「解説」が巻末に配され、単行本版にあるポルトやミュラーのテクストはありません。底本は原著初版本ではなく、1996年刊の全集第4巻です。

★時枝誠記『国語学史』は、1940年に岩波書店から刊行された単行本の文庫化。凡例によれば底本は改版第14刷(1966年)です。「序説」と「研究史」の二部構成で、第二部は「第一期 元禄期以前」「第二期 元禄期より明和安永期へ」「第三期 明和安永期より江戸末期へ」「第四期 江戸末期」「第五期 明治初年より現代に至る」と立て分けられています。藤井貞和さんが解説「『国語学史』と『国語学原論』」を寄せておられます。巻末に索引あり。時枝誠記(ときえだ・もとき:1900-1967)の文庫で読める著書は、『国語学原論』(上巻、岩波文庫、2007年、品切重版中)と『国語学原論 続篇』(岩波文庫、2008年、在庫僅少)以来のもの。

★角川ソフィア文庫の今月新刊では2点取り上げます。「『菜根譚』と並ぶ混沌の時代の処世訓」との端的な惹句が帯文に書かれた呂坤『呻吟語』は抄訳です。現代語訳、書き下し、原文、解説で構成されています。文庫で読める『呻吟語』抄訳には講談社学術文庫版(荒木見悟訳著)がありましたが、現在品切。「『呻吟語』は、決して過去の遺物ではありません。むしろ今こそ読まれるべき古典です」と今回の編訳本の巻頭に置かれた「はじめに」で湯浅さんは強調しておられます。まったく同感です。現代人の心に深く突き刺さる教えに満ちた素晴らしい本です。

★ラッセル『幸福論』は1952年に刊行され、1970年に改版が出た角川文庫の、久しぶりの新版です。目次や試し読みは書名のリンク先へどうぞ。巻末にはNHK「100分de名著」で『幸福論』を取り上げた小川仁志さんが「復刊に際しての解説」を寄せておられます。「幸福論」という訳題のついた古典的名著にはアランやヒルティ、ヘッセのそれがありますが、類似する書名ではショーペンハウアーの『幸福について』などもあり、ラッセルの本書と比べ読みするのも面白いと思います。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

タラバ、悪を滅ぼす者』ロバート・サウジー著、道家英穂訳、作品社、2017年10月、本体2,400円、四六判上製272頁、ISBN978-4-86182-655-9
『死者の書』の謎』鈴木貞美著、作品社、2017年10月、本体1300円、46判上製280頁、ISBN978-4-86182-658-0
詩集工都――松本圭二セレクション第2巻(詩2)』松本圭二著、航思社、2017年10月、本体3,200円、四六判上製396頁、ISBN978-4-906738-26-7

★『タラバ、悪を滅ぼす者』は、イギリスの桂冠詩人ロバート・サウジー(Robert Southey, 1774-1843)による物語詩『Thalaba the Destroyer』(1801年)の全訳。訳者あとがきによれば、サウジーによる自註のうち、「本文と関連するところ、直接の関係は薄くても内容的に興味深いところは訳出」したとのことです。既訳には高山宏さんによる抄訳「破壊者サラバ」(『夜の勝利――英国ゴシック詞華撰Ⅱ』所収、国書刊行会、1984年)があり、今回の新訳本でも言及があります。訳者の道家さんは「アラブ人でイスラム教徒の主人公タラバがドムダニエルの悪の魔術師の一味と戦う」作品である本作を、「突飛と思われるかもしれないが〔・・・〕話の枠組みが驚くほど『ハリー・ポッター』に類似し、かつ対照的」とも指摘されています。

★『『死者の書』の謎』は27日(金)取次搬入済。章立てを列記しておくと、序章「釈迢空と折口信夫のあいだ」、第一章「『死者の書』の同時代」、第二章「『死者の書』の読まれ方」、第三章「「口ぶえ」とその周辺」、第四章「釈迢空の象徴主義」、第五章「『死者の書』の謎を解く」。巻末には、文献一覧と人名・書名索引が配されています。折口の生誕130周年にあたる本年、『死者の書』は中公文庫版や岩波文庫版があるにもかかわらず角川ソフィア文庫でも今夏刊行されており、今世紀に入ってから川本喜八郎さんによる人形アニメ映画化や、近年の近藤ようこさんによる漫画化が果たされていることは周知のとおりですが、丸ごと一冊を費やした謎解き本はさほど多くありません。

★『詩集工都』はまもなく発売(30日取次搬入)。「松本圭二セレクション」の第2回配本、第2巻です。底本は七月堂より2000年に刊行された単行本で、帯文に曰く「幻の」第二詩集。付属の「栞」には「「詩」を映写すること」と題された佐々木敦さんによる寄稿と、松本さんによる著者解題が掲載されています。後者は前橋文学館特別企画展図録『松本圭二 LET'S GET LOST』からの転載とのことですが、第二詩集の刊行までの紆余曲折に満ちた顛末が赤裸々に記されていて、読む者を戦慄させます。松本さんの執念もさることながら、セレクションに賭ける航思社さんの思いにも凄まじいものを感じます。こうした情念の塊にも似た書物に出会うと、読み手が味読するという次元を超えて、手にしたこの物体に刻まれた言葉たちに読者が視線を食らわれているかのような心地さえします。

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by urag | 2017-10-29 00:23 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 26日

ブックツリー「哲学読書室」に吉田奈緒子さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ボイル『無銭経済宣言』(紀伊國屋書店、2017年8月)の訳者・吉田奈緒子さんによる選書リスト「お金に人生を明け渡したくない人へ」が追加されました。下記リンク先一覧よりご覧ください。


◎哲学読書室

星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
吉田奈緒子(よしだ・なおこ)さん選書「お金に人生を明け渡したくない人へ

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by urag | 2017-10-26 19:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 22日

注目新刊:スタノヴィッチ『現代世界における意思決定と合理性』太田出版、ほか

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現代世界における意思決定と合理性』キース・E・スタノヴィッチ著、木島泰三訳、太田出版、2017年11月、本体3,800円、A5判並製324頁、ISBN978-4-7783-1597-9
政治の本質』マックス・ヴェーバー/カール・シュミット著、清水幾太郎訳、中公文庫、2017年10月、本体900円、文庫判288頁、ISBN978-4-12-206470-6

★『現代世界における意思決定と合理性』はまもなく発売(25日取次搬入)。『Decision Making and Rationality in the Modern World』(Oxford University Press, 2010)の全訳です。カナダの認知心理学者スタノヴィッチ(Keith E. Stanovich, 1950-)の訳書は『心は遺伝子の論理で決まるのか――二重過程モデルでみるヒトの合理性』(椋田直子 訳、みすず書房、2008年、品切)、『心理学をまじめに考える方法――真実を見抜く批判的思考』(金坂弥起監訳、誠信書房、2016年7月)に続き本書が3冊目。「スタノヴィッチが自身の学問的・思想的営みの核心に据えている「合理性」の概念を、心理学の学生向け教科書として簡潔かつ平易に解説した書物である」と訳者はあとがきに記しています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。各章末には「さらなる読書案内」と題したブックリストがあり、巻末にも充実した「参考文献」があるので、書店さんにとっても書棚編集の大きな参考になるはずです。合理性は分野横断的なキーワードですから、ブックフェアにも向いていると思います。

★『政治の本質』は発売済。三笠書房より1939年に刊行された同名単行本の文庫化です。ヴェーバーの「職業としての政治」(1919年)とシュミットの「政治的なるものの概念」(1933年第3版からの翻訳)のカップリングであり、文庫化にあたり、清水幾太郎さんの関連論考2篇「職業としての政治」「名著発掘 カール・シュミット著『政治的なるものの概念』」を収め、苅部直さんによる解説「幻の政治学古典」が付されています。シュミットの「政治的なるものの概念」が文庫化されるのは初めてのことです。原書は版によって異同がありますからいずれ文庫で各版の異同が分かる新訳が出ることを祈りたいです。なお、中公文庫さんの「古典作品の歴史的な翻訳に光を当てる精選シリーズ」である《古典名訳再発見》では本書の前には、トーマス・マン/渡辺一夫『五つの証言』が刊行されましたが、続刊にはヴァレリー『精神の政治学』吉田健一訳、が予定されているそうで、楽しみです。

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★10月20日(金)に代官山蔦屋書店1号館2Fイベントスペースで行われた、記念すべき第1回となる「代官山人文カフェ」にお邪魔してきました。ローリー・アン・ポール『今夜ヴァンパイアになる前にーー分析的実存哲学入門』(名古屋大学出版会、2017年5月)の刊行を記念し、「人生を変える選択にベストアンサーはあるか?」と題して、訳者の奥田太郎さん(南山大学社会倫理研究所教授)と、訳者あとがきに「助力を得た」と謝辞のある宮野真生子さん(福岡大学人文学部准教授)、さらに進行役として『哲学カフェのつくりかた』(大阪大学出版会、2014年)などの共著書がある三浦隆宏さん(椙山女学園大学人間関係学部准教授)がお越しになり、車座になった会場で、参加者との様々なトークのキャッチボールが尽きることなく交わされました。

★書店さんのトークイベントというとどうしても新刊を出した著者のお話を来場者が拝聴するというのがメインとなるわけですが、「代官山人文カフェ」では哲学カフェ形式で、参加者を交えた多様なトークをじっくりと堪能できるのが特徴です。オチのないユルい展開もまた自然なもので、参加者のほとんどは「哲学カフェ」形式は初体験とのことでしたが、結果的には三先生の気さくな人柄とざっくばらんな進行、参加者の肩ひじ張らない発言の数々で、ゆったりと楽しめるひとときでした。ちなみにイベント前には三先生と一緒に参加者が売場を散策する「オーサー・ビジット」も行われており、カフェ形式との相乗効果を生んでいました。「オーサー・ビジット」で三先生が言及された本が買われていく光景は、書き手と読み手の垣根を越えた、読書好き同士ならではのものかと思います。

★新刊を出していないとイベントができない、ですとか、著者が来ないとイベントができない、という発想から自由になれば、書店でのイベントでできることの枠組は大きく広がるだろうな、と感じました。哲学カフェや読書会の楽しさを書店イベントに導入するという代官山蔦屋書店さんの挑戦に、率直な驚きと可能性をかいまみた次第でした。蔦屋さんはお客様の体験を重視した「滞在型書店」を目指しておられるわけなので、「哲学カフェ+オーサー・ビジット」のようなイベントの進化は必然的なのかもしれないなと思います。また、こうした試みにいち早く目を付けて参加された読者の方々に、一出版人として強い感銘を覚えました。

★なお、同店では「代官山人文カフェ」を記念したフェア「人生を変える選択にベストアンサーはあるか?を考えるための50冊」が展開されています。ポールの本や、彼女の師匠であるデイヴィッド・ルイスの『世界の複数性について』(名古屋大学出版会、2016年)をはじめ、興味深いラインナップです。選書コメントの入ったパンフレットも店頭で無料配布されています。

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by urag | 2017-10-22 22:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 18日

注目新刊:『〈ポスト68年〉と私たち――「現代思想と政治」の現在』平凡社

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★佐藤嘉幸さん(共訳:バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』
★廣瀬純さん((著書:『絶望論』、共著:コレクティボ・シトゥアシオネス『闘争のアサンブレア』、訳書:ヴィルノ『マルチチュードの文法』、共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
★立木康介さん(共訳:ネグリ『芸術とマルチチュード』)
まもなく発売となる『〈ポスト68年〉と私たち――「現代思想と政治」の現在』に佐藤さんと廣瀬さんの論考や、廣瀬さんや立木さんが王寺さんや信友建志さんとともにお訳しになったバリバールの論考が収録されています。この論集は、2011年3月から2016年3月まで京都大学人文科学研究所において行われた共同研究「ヨーロッパ現代思想と政治」の2冊目となる成果報告書です。1冊目は『現代思想と政治――資本主義・精神分析・哲学』(市田良彦/王寺賢太編、平凡社、2016年、品切)でした。

〈ポスト68年〉と私たち――「現代思想と政治」の現在
市田良彦/王寺賢太編
平凡社 2017年10月 本体5,200円 A5判上製412頁 ISBN978-4-582-70355-9

帯文より:反乱の〈68年〉、それ以後の現在、〈私たち〉とはだれか? 〈68年〉のあとのフーコーとアルチュセールの思考について、〈68年〉、現代思想、政治、主体について、それらを考え抜いてきたバリバールらとともに、根底的に討究。

目次:
〈ポスト68年〉と私たち(市田良彦)
第Ⅰ部(1)国際シンポジウム「《Pourvu que ça dure ...》:政治・主体・〈現代思想〉[2015年1月12日]
(ポスト)構造主義のヒーロー、政治の政治(市田良彦)
政治と主体性をめぐる20のテーゼ(ブリュノ・ボステイルス)
大革命の後、いくつもの革命の前(エティエンヌ・バリバール)
第Ⅰ部(2)国際ワークショップ「〈われわれ〉がエティエンヌ・バリバールの読解に負うもの――ルソーからブランショまでの個体性と共同性」[2015年1月17日]
孤独のアノマリー――事例オタネスとルソー政治思想(佐藤淳二)
ルソーにおける所有権と共同体(ガブリエル・ラディカ)
「市民-主体」の理念とそのパラドックス――バリバール、ルソー、政治的主体性(佐藤嘉幸)
バリバールとともにブランショの不服従を考える――侵犯と抵抗の方法としての非応答の権利(上田和彦)
第Ⅱ部(1)国際ワークショップ「〈権力-知〉か〈国家装置〉か――〈68年5月〉後のフーコーとアルチュセール」[2016年3月19日]
「権力-知」か「国家装置」か――〈68年5月〉後のフーコーとアルチュセール(市田良彦)
68年5月の翌朝は、抑圧の二日酔い――アルチュセールとフーコーを過ぎゆく批判のステージ(バーナード・E・ハーコート)
真理と帰結――フーコーとアルチュセールにおける政治的判断と歴史的知(ノックス・ピーデン)
〈68年〉後に、政治経済学においてマルクス主義者であること――あるいは「マルクス経済学にとって唯一の心理とは、じつは何であったか(長原豊)
フーコーの精神分析批判――『性の歴史Ⅰ』に即して(小泉義之)
第Ⅱ部(2)書き下ろし補論
真理戦――後期フーコーの戦争から統治への転回をめぐって(箱田徹)
規律権力論の射程――権力、知、イデオロギー(廣瀬純)
《non-lieu》一歩前――1960年~70年代日本のアルチュセール受容(王寺賢太)
勝敗の彼岸――戦後イギリス「新左翼」の位置断片を小さな鏡として(布施哲)
あとがき(王寺賢太)

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by urag | 2017-10-18 01:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 16日

注目新刊:今福龍太『ハーフ・ブリード』河出書房新社、ほか

★今福龍太さん(著書:『ブラジルのホモ・ルーデンス』)
集英社さんの月刊誌「すばる」で2014年12月から2017年6月号まで隔月連載されていたものが単行本化され、先週より発売開始となっています。印象的な造本は佐藤篤司さんによるもの。

ハーフ・ブリード
今福龍太著
河出書房新社 2017年10月 本体3,800円 46判上製368頁 ISBN978-4-309-24830-1

星野智幸氏推薦文:自らが純血ではなくハーフ・ブリードだと気づくことが、これほどの解放をもたらすとは! メキシコ性を極限まで探究したこの驚くべき詩的散文は渡したいtの未来を映す鏡だ。

辻原登氏推薦文:目に見えぬ「Soul-line」が、“風という靴底を持つ男”今福隆太によって、メキシコの地から、精緻かつ果敢に、地球上に引かれた!

坂口恭平氏「『ハーフ・ブリード』に寄せて」:覚えていたのが時間のことだったのか 空間のことだったのか わからなくなると鏡を見る 大木が映りこんでいた 知らない木だった そこに寄り添っている自分がいて それを黙って見ていた 音は何も聞こえずに 水がながれていることはわかった どこも行ったことがないのに記憶だけは次から次へと蘇ってくる 誰の記憶なのか 体は、まあ待てと肩を叩いてきた しばらくお茶を飲んで過ごした 風が吹いた 何かを焼く匂いがした 目の前にいる男が昔の海について話をしている 「お前は船に乗ってた。櫂も持たずに」 男は言った 上を見たら、昼間なのに星が見えた 「お前は森のことを知っていた」 誰のことなのだろうか 「ずっと昔のことだ」 男はそう言うと、煙草の火を消していなくなった 消えるようにしていなくなった 耳が思い出したように音をかき集めはじめた 水の音が少しずつ大きくなってきた いつのまにか音は水しぶきをあげて 洪水となって茂みの奥から溢れ出てきた 飲み込まれ 息もできなくなった 元の自分に戻った 息もせず 目も見えず あるのは記憶だけだった 記憶の中に隠れ家があった ところが、右に言えば、体は底に落ち 這い上がろうとすると忘れてしまった 一瞬のうちにカーテンや廊下が水滴になった 「知らないことなんかひとつもなかっただろう」 男はまだ煙草を吸っていた ずっと昔のことだった 本を読みながら、今そのことをふと思い出した

目次:
Prologue
Ⅰ 赤と黒の十字路
Ⅱ 蛇と黒曜石の物語
Ⅲ 雑種或いはKの交差点
Ⅳ アルトゥーロ、砂漠の吐息
Ⅴ 流れよ川、歌えよギタレーロ
Ⅵ 風と炎のある風景
Ⅶ 反転-人類学の呪術師
Ⅷ マヤの漂泊者
Ⅸ 国境の詩篇〔カントス〕
Ⅹ 砂漠と監獄
Ⅺ 峡谷〔カニャーダ〕へ
Ⅻ 水で書かれた父と母の歌
Epilogue
引用出典一覧
あとがき

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知り合いの版元さんから色々な冊子をいただいたのでご紹介します。

1)「大学出版」2017年秋号「特集=一冊入魂!――編集の愉楽」
大学出版部協会さんが発行するPR誌「大学出版」が最新号で協会員ではない版元の編集者の方々から、自らの仕事をめぐるエッセイを寄せてもらっていて、とても興味深いです。業界人必読かと。PDFを協会のウェブサイトでダウンロードできます。

左右社・小柳学さん「こんどはもっと遅かった『〆切本2』の編集」
亜紀書房・内藤寛さん「いま、小説を作るということ」
共和国・下平尾直さん「ページの奴隷、編集者!」
堀之内出版・小林えみさん「『nyx』は百年後の光となるか」

ちなみに堀之内出版さんは、今月末に開催予定の、本好きのためのブックフェア「BOOK MARKET 2017」や、後段でご紹介するブックフェア「版元やおよろず」に出展されるとのことです。後者には共和国さんも参加されています。

◎ブックフェア「BOOK MARKET 2017

期間:2017年 10月28日(土)、29日(日)
時間:28日:11:00〜19:00 / 29日:11:00〜18:00
場所:アートコンプレックス・センター(〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9 TEL03-3341-3253)
主催:アノニマ・スタジオ

内容:BOOK MARKETは、今年で9回目を迎える「本当におもしろい本」だけを集めた本好きのためのブックフェアです。 出展社もさらにパワーアップ。 1年でいちばん本を読みたくなる晩秋の開催です。 「本のお祭り」BOOK MARKET 2017で、読者のみなさまとお会いできることを楽しみにしております!

出展社:フィルムアート社、誠文堂新光社、地球丸、夏葉社、エクスナレッジ、偕成社、京阪神エルマガジン社、作品社、G.B.、自然食通信社、青幻舎、西日本出版社、而立書房、ニジノ絵本屋、パイ インターナショナル、HaoChi Books、ビーナイス、堀之内出版、本の雑誌社、ミシマ社、港の人、雷鳥社、リトルモア、グラフィック社、リットーミュージック、アタシ社、カンゼン、木楽舎、アノニマ・スタジオ、かもめブックス、メリーゴーランド京都、藤原印刷。

2)「版元やおよろず2017 ハンドブック」

23の出版社が参加する、双子のライオン堂で今月開催されているブックフェア「版元やおよろず2017」で100円で販売されている冊子です。出店版元が「代表する書籍」「出版社自己紹介」「なぜ出版社を立ち上げたのか、なぜ出版社で働いているのかなど」「他社のお薦め本」の4つの質問に答えたものをまとめています。様々な出版社の横顔が分かって楽しい一冊です。

◎ブックフェア「版元やおよろず

期間:10月11日(水)~10月20日(金)
時間:15:00~21:00
※10/16、17はお休み。10/15(日)は13:00~18:00。
場所:双子のライオン堂(東京都港区赤坂6-5-21

内容:「まっすぐに本を売る」出版社たちのブックフェア。一人ひとりの読者の顔を思い浮かべながら、直接手渡しをするかのように丁寧に本を作り売る出版社が集まりました。小さな版元さんが魂込めて作られた本たちをドドンと!展開いたします。

出展社:アタシ社、えにし書房、キーステージ21、共和国、ころから、猿江商會、三輪舎、センジュ出版、太郎次郎社エディタス、TANG DENG、トランスビュー、バナナブックス、羽鳥書店、H.A.B.、ビーナイス、ブックエンド、ブリコルール・パブリッシング、ポット出版、堀之内出版、本の種出版、マドレーヌブックス、まむかいブックスギャラリー、ユウブックス。
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by urag | 2017-10-16 20:36 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 15日

注目新刊:ベンソン『世界《宇宙誌》大図鑑』東洋書林、ほか

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世界《宇宙誌》大図鑑
マイケル・ベンソン著 野下祥子訳
東洋書林 2017年10月 B5判上製320頁 ISBN978-4-88721-824-6

帯文より:コペルニクスは考えた――もし美が真実だというのなら、真実は美しいはずだ。「創造」「地球」「月」などのテーマ別10章のもと、前2000年から現代に至る世界認識の諸相を概観する“宇宙誌/宇宙図”集成。謎めいた古代の遺物から現代美術さながらのデジタル解析図へと飛躍する美麗図版300点が誘う、視覚知のミクロコスモス!

オーウェン・ギンガリッチ「序文」より:この“宇宙図集”は、天文学の驚異や発見、理解についての色鮮やかな記録であり、中世の緻密なミニアチュールから現代のコンピュータを駆使したデザインにいたるまでの描法に関する歴史書でもある。手短かに言うと“美を愛でる者にとっての賛歌”なのだ。

目次:
序文(オーウェン・ギンガリッチ)
はじめに
第1章 創造
第2章 地球
第3章 月
第4章 太陽
第5章 宇宙の構造
第6章 惑星と衛星
第7章 星座・獣帯・天の川銀河
第8章 食と太陽面通過
第9章 彗星と隕石
第10章オーロラと大気現象
解(松井孝典)
図版出典
索引

★まもなく発売(本日16日取次搬入済)。『ビヨンド――惑星探査機が見た太陽系』(新潮社、2005年)、『ファー・アウト――銀河系から130億光年のかなたへ』(新潮社、2010年)、『プラネットフォール――惑星着陸』新潮社、2013年)と、日本でもその美しい天体写真集の数々によって知られている映像作家/写真家のベンソン(Michael Benson, 1962-)の近作『Cosmigraphics: Picturing Space through Time』(Abrams, 2014)の日本語版です。今までの既刊写真集が科学技術の賜物であったのに対し、今回は天体と人間をめぐる数千年の歴史をひもとく驚異的な一書となっています。約4000年前の天文盤(ネブラディスク)や、前50年頃のデンデラ神殿の天井レリーフなどにはじまり、ランベール『花々の書(Liber Floridus)』1121年、アピアヌス『皇帝の天文学(Astronomicum Caesareum)』1540年、『アウクスブルクの奇跡の書(Augsburger Wunderzeichenbuch)』1547~1552年、『彗星の書(Kometenbuch)』1587年、セラリウス『大宇宙の調和(Harmonia Macrocosmica)』1660年、など傑作の数々を経て、さらに、17世紀ではフラッドやキルヒャー、19世紀ではトルーヴェロ、フラマリオン、リエ『天界』など、カラーのものはすべてフルカラーで掲載されています。幻視されたものから科学的な描写まで、めくるめく美の世界に陶酔するばかりです。新潮社版の写真集に比べると生産部数が限られていると聞きますので、気になる方はどうかお早目に購入されてみて下さい。

★ちなみに『アウクスブルクの奇跡の書』は『The Book of Miracle』としてTaschenから今夏に廉価版が出ています(英独仏の三か国語併記。最初の100頁が解説、後の170頁強がプレートのリプリントの大判大冊です。2017年10月15日現在、ありがたいことにアマゾン・ジャパンでも在庫しています。BuzzFeed Japanの記事「400年の時を超えて。幻の奇書『奇跡の書』が色鮮やかで、怖い」でもサンプルをご覧になれます)。また、『世界《宇宙誌》大図鑑』で言及され引用されているコペルニクスの『天球回転論』はいよいよ今週後半に完訳版がみすず書房さんより刊行されます。本体16,000円とお高いですが、何とか購読したいものです。

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★このほか最近では以下の新刊に注目しています。

『ベル・フックスの「フェミニズム理論」――周辺から中心へ』ベル・フックス著、野﨑佐和/毛塚翠訳、あけび書房、2017年10月、本体2,400円、A5判並製240頁、ISBN978-4-87154-154-1
道徳を基礎づける――孟子vs. カント、ルソー、ニーチェ』フランソワ・ジュリアン著、中島隆博/志野好伸訳、講談社学術文庫、2017年10月、本体1,150円、360頁、
ISBN978-4-06-292474-0
言語起源論』ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー著、宮谷尚実訳、講談社学術文庫、2017年10月、本体840円、232頁、ISBN978-4-06-292457-3
水滸伝(二)』井波律子訳、講談社学術文庫、2017年10月、本体1,830円、692頁、ISBN978-4-06-292452-8
ロシア革命とは何か――トロツキー革命論集』トロツキー著、森田成也訳、光文社古典新訳文庫、2017年10月、本体1,100円、414頁、ISBN978-4-334-75364-1
初級者のためのギリシャ哲学の読み方・考え方』左近司祥子著、だいわ文庫、2017年10月、本体780円、296頁、ISBN978-4-479-30673-3

★『ベル・フックスの「フェミニズム理論」』は、『Feminist Theory: From Margin to Center』(1984, South End Press; 2nd edition, 2000, South End Press; 3rd edition, Routledge, 2015)の新訳です。既訳には、清水久美訳『ブラック・フェミニストの主張――周縁から中心へ』(勁草書房、1997年、絶版)があります。全12章構成なのは今回の新訳の底本である新版(第三版)でも変わりませんし、章題も変わっていません。目次詳細は版元さんのウェブサイトでご確認いただけます。「序文(新版)」と訳されているのは原著では「新版への序文:光を見る――ヴィジョンのあるフェミニズム」で、この序文は原著第二版より付されている序文と変わりありません。この序文でフックスは次のように述べています。

★「フェミニストたちはしばしば、一般大衆を基盤にしたフェミニズム運動をつくりあげる必要性について話し合ったが、そうした運動を立ちあげるためのしっかりした基盤などどこにもなかった。ウーマンリブ運動は、狭い土台の上に形づくられてきたというだけではなく、何よりもまず特権階級(そのほとんどが白人)の女性に関係する問題にしか注意を呼び起こさなかった。/わたしたちは、一般大衆を基盤にした運動のための考えや戦略を示してくれる理論を必要としていた。そうした理論が、ジェンダー、人種、そして階級の理解に根ざしたフェミニズム的な視点からわたしたちの文化を検証してくれるに違いなかったからである。そうした必要性に答えて、わたしは本書『フェミニズム理論 周辺から中心へ』を執筆したのである」(12頁)。

★帯文には「男性女性ともに読んでほしい一冊です」とあります。野﨑さんは巻頭の訳者まえがきこうお書きになっています。「何だか生きづらさを感じている人、自分のパートナーや家族との関係がうまくいかないという人、女性であっても男性であっても構いません、そういう人にこそ本書を手に取ってほしいのです。/些細な問題だと思っていたことが実は深刻なフェミニズムの問題だったということもあるからです」(2頁)。ベル・フックス(bell hooks, 1952-)の著書は90年代からこんにちに至るまで6点ほど訳されてきましたが、初訳がほからなぬ本書の旧訳本でした。7冊目となる今回の新訳がフックス再読の契機となることを期待したいです。

★講談社学術文庫の今月新刊からはいくつか。ジュリアン『道徳を基礎づける』は2002年に講談社現代新書として刊行されたものの文庫化。原書は『Fonder la morale』(Grasset, 1996)です。巻末に付された中島さんによる「講談社学術文庫のための解題」によれば、共訳者の志野さんが「細かい訳文の修正」を行われたとのことです。新書版は古書価が高騰していたので文庫化は妥当だと思います。帯文には東浩紀さんの推薦文が掲載されています。曰く「カントと孟子が互いを照らし合う。西欧近代と東洋思想がぶつかる場所にいる、ぼくたちこそが読むべき新たな哲学」と。なお中島さんによるジュリアンの訳書はもう一冊あります。『勢――効力の歴史:中国文化横断』(知泉書館、2004年)です。書店店頭ではあまり見かけませんが、版元さんのサイトでは「在庫あり」となっています。

★ヘルダー『言語起源論』は文庫オリジナルの新訳。既訳には木村直司訳(大修館書店、1972年2月)や、大阪大学ドイツ近代文学研究会訳(法政大学出版局、1972年3月)があります。ともに72年刊でほぼ同時期に出版されたものです。今回の新訳の底本は訳者解説によれば「最終版の手書き原稿」とのことで、ゲーテも見たであろう手稿と地道に向き合ったり、既訳から学んだりする謙虚な姿勢が解説やあとがきから垣間見えます。一方、『水滸伝(二)』は第23回から第42回を収録。帯文には「『金瓶梅』の原話「〈行者〉武松の物語」あります!」と特記されています。本巻に収められた第23~32回に武松の生きざまが描かれています。いつの日か、井波さん訳の『金瓶梅』を読む日も訪れるでしょうか。

★光文社古典新訳文庫の今月新刊では『ロシア革命とは何か』に注目。1906年から1939年までに公刊された重要論文6本を収録。同文庫でのトロツキー新訳本は、『レーニン』(森田成也訳、2007年)、『永続革命論』(森田成也訳、2008年)、『ニーチェからスターリンへ――トロツキー人物論集【1900?1939】』(森田成也/志田昇訳、2010年)に続く4点目です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。1932年の高名な「コペンハーゲン演説」を、英訳や独訳からの重訳ではなくロシア語から新訳したのが目玉のひとつ。同書は「ロシア革命100周年企画」の第1弾だそうです。同文庫では来月、ジョン・リード『世界を揺るがした10日間』(伊藤真訳)の発売が予定されていますが、こちらが第2弾となるのでしょうか。月刊誌『現代思想』2017年10月号で「ロシア革命100年」の特集が組まれ、『ゲンロン』誌では二号連続で「ロシア現代思想」が特集されます。ロシア思想のコーナーを作る絶好のチャンスかと思われます。幾度となく推していますが、水声社版「叢書・二十世紀ロシア文化史再考」もお薦めします。

★だいわ文庫の新刊では、文庫版オリジナルの書き下ろしである『初級者のためのギリシャ哲学の読み方・考え方』に注目。同書は著者の左近司祥子(さこんじ・さちこ:1938-)先生にとって、『哲学するネコ――文学部哲学科教授と25匹のネコの物語』(小学館文庫、1998年)、『本当に生きるための哲学』(岩波現代文庫、2004年)に続く、久しぶりの文庫新刊です。ソクラテス、プラトン、アリストテレスのほか、少しばかりですが、タレスら初期の哲学者たちや、ソフィスト、エピクロス派、ストア派、ネオプラトニズムも言及されています。文庫で読めるギリシア哲学入門は数少なく、現在入手可能な本も少ないなか、とりわけ取っつきやすい内容となっていると感じます。目次詳細は版元サイトにはありませんが、アマゾンや7ネット、紀伊國屋書店などには掲載されているので、ご参照なさってください。

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by urag | 2017-10-15 22:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 12日

ブックツリー「哲学読書室」に岡嶋隆佑さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、ハーマン『四方対象』(人文書院、2017年9月)の監訳者・岡嶋隆佑さんによる選書リスト「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流」が追加されました。下記リンク先一覧よりご覧ください。


◎哲学読書室

星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「崇高が分かれば西洋が分かる
國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「20世紀フランスの哲学地図を書き換える
上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「今、哲学を(再)開始するために
西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?
金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-)さん選書「19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「ラディカル無神論をめぐる思想的布置
高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「死刑を考えなおす、何度でも
杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流

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by urag | 2017-10-12 11:38 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 08日

注目新刊:クセナキス『形式化された音楽』筑摩書房、ほか

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アメリカンドリームの終わり――あるいは、富と権力を集中させる10の原理』 ノーム・チョムスキー著、寺島隆吉/寺島美紀子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017年10月、本体1,800円、46判上製304頁、ISBN978-4-7993-2183-6
チョムスキー言語学講義――言語はいかにして進化したか』ノーム・チョムスキー/ロバート・C・バーウィック著、渡会圭子訳、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,000円、256頁、ISBN978-4-480-09827-6
原典訳 原始仏典』上巻、中村元編、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,700円/本体1,400円、656頁/496頁、ISBN978-4-480-09808-5/09809-2
定本 葉隠〔全訳注〕(上)』山本常朝/田代陣基著、佐藤正英校訂、吉田真樹監訳注、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,600円、592頁、ISBN978-4-480-09821-4
記号論』吉田夏彦著、ちくま学芸文庫、2017年10月、本体1,000円、224頁、ISBN978-4-480-09824-5
アンチクリストの誕生』レオ・ペルッツ著、垂野創一郎訳、ちくま文庫、2017年10月、本体900円、288頁、ISBN978-4-480-43466-1
形式化された音楽』ヤニス・クセナキス著、野々村禎彦監訳、冨永星訳、筑摩書房、2017年9月、本体6,500円、A5判上製440頁、ISBN978-4-480-87393-4
対称性――不変性の表現』Ian Stewart著、川辺治之訳、サイエンス・パレット;丸善出版、2017年9月、本体1,000円、新書判並製178頁、ISBN978-4-621-30203-3

★『アメリカンドリームの終わり』は『Requiem for the American Dream: The 10 Principles of Concentration of Wealth & Power』(Seven Stories Press, 2017)の翻訳です。本書のもととなった長編インタヴューは2015年に「アメリカン・ドリームへのレクイエム」として映画化されています。4年にわたる聴き取りをまとめたもので、動画はネットで探せばご覧になれます。豊富な資料と注を付け加えた書籍版は原書に倣って墨と緑色の二色刷で美しい本に仕上がっています。緑と言っても昨今の新党のシンボルカラーに合わせてあるわけではありませんが、ちょうど選挙目前ということもあり、例の党首(だけでなく)に向かって本書を振りかざして差し上げるくらいの皮肉は当然たしなんでも構わないと思います。

★チョムスキーは本書で、アメリカの「建国以来の下劣で恥ずべき行動原理」として10項目を挙げています。曰く「民主主義を減らす」「若者を教化・洗脳する」「経済の仕組みを再設計する」「負担は民衆に負わせる」「連帯と団結への攻撃」「企業取締官を操る」「大統領選挙を操作する」「民衆を家畜化して整列させる」「合意を捏造する」「民衆を孤立させ、周辺化させる」。舌鋒鋭いチョムスキーの分析内容は日本人にとっても対岸の火事として放っておけばいいものでは断じてありません。版元さんの力から言って本書は多くの書店さんの店頭に置かれると思いますが、この本はぜひ、かつての『超訳 ニーチェの言葉』と同様に地道に長く店頭に置いて下さることを祈るばかりです。訳者が言う通り、本書は「明日の日本に対する警告の書」だからです。

★『アメリカンドリームの終わり』ではチョムスキーの政治的発言を読むことができますが、今月はチョムスキーの本職である生成文法論関連の邦訳新刊も発売されています。ちくま学芸文庫から出た、コンピュータ科学者バーウィックとの共著で『Why Only Us: Language and Evolution』(MIT Press, 2015)の訳書で、文庫オリジナルの初訳本です。言語の進化が主題であり、「なぜ今なのか?」「進化する生物言語学」「言語の構成原理とその進化に対する意義」「脳の三角形」の全4章立て。「言語は形と形以外の“モジュール”からの違う表現を結合する媒介語(リンガ・フランカ)である〔・・・〕。“心の内的道具”がそうであるように、さまざまな視覚手がかりを統合し、それらについて推論する――動物が岩の上にいるか下にいるか――ことは、間違いなく選択的に有利と思われる。そのような性質が子孫に受け継がれ、ある小さな集団にいきわたるかもしれない。これが私たちの思い描いた進化のシナリオだ」(215~216頁)と二人は結論づけています。

★今月のちくま学芸文庫およびちくま文庫ではこのほか4点5冊に注目したいと思います。まず『原典訳 原始仏典』上下巻は、筑摩書房版『世界古典文学全集(6)仏典I』(1966年;のちに『原始仏典』1974年として新版を刊行)を文庫化したもので、1974年版を底本としているとのことです。1987年に東京書籍より刊行された中村元さんの解説本『原始仏典(1)釈尊の生涯』『原始仏典(2)人生の指針』を合本文庫化した『原始仏典』(ちくま学芸文庫、2011年)とは別物で、今回の上下巻は書名通り仏典(パーリ語およびサンスクリット語)を現代語訳したものです。上巻には仏伝として「仏伝に関する章句」と「偉大なる死(大パリニッバーナ経)」を収め、原始経典として「経典のことば」「シンガーラへの教え」「本生経(ジャータカ)」「長老の詩(テーラ・ガーター)」を収めています。下巻では原始経典として「長老尼の詩(テーリー・ガーター)」を収め、さらに「アヴァダーナ」「百五十讃」「金剛の針」「ラトナーヴァリー」「ナーガナンダ」を収めています。

★次に『定本 葉隠〔全訳注〕』は全3巻で10月から12月にかけて上中下巻と発売されていきます。ちくま学芸文庫のために新たに書き下ろされたものです。先日言及しましたが、講談社学術文庫でも先月より『新校訂 全訳注 葉隠』全3巻が発売開始となっています。講談社版が佐賀県立図書館所蔵の天保本(杉原本)を底本とし、餅木本や小城本などにより校訂したものであるのに対し、ちくま版は同じく佐賀県立図書館所蔵ながら新出だという小山信就本を底本とし、餅木本や山本本を校合したとのことです。講談社版は原文・現代語訳・語注の順の構成で、ちくま版は原文・語注・現代語訳の順番となっています。読み比べれば分かりますが、現代語訳にはそれぞれの味わいがあり、ここは両書とも買い揃えて理解を深めたいところです。

★続いて吉田夏彦『記号論』は放送大学の教材として執筆され1989年に公刊されたものの文庫化。帯文に曰く「世界は巨大な記号の体系だ。その構造を読み解く最強の技術、論理学への誘い」と。文庫版あとがきによれば、「今度読み返してみて、放送とは独立に読めることを確かめたので、大筋はそのままにし、字句を多少修正して復刊することにした」とのことです。章立ては、「変項」「形式と抽象」「そのほかの論理記号」「計算と証明」「形式化」「記号の濫用」「ものごと」「話」「記号の役割」「環境としての記号」「記号としての環境」「かたち」「楽譜と音楽」「自然と記号」「終に」の全15章。

★ペルッツ『アンチクリストの誕生』は1930年に刊行された中短編集『Herr, erbarme dich meiner』の全訳で文庫版オリジナルの新刊。収録作は全8編で、原書名である「「主よ、われを憐れみたまえ」」のほか、「一九一六年十月十二日火曜日」「アンチクリストの誕生」「月は笑う」「霰弾亭」「ボタンを押すだけで」「夜のない日」「ある兵士との会話」。巻末解説「レオ・ペルッツの綺想世界」は皆川博子さんがお書きになっておられます。

★筑摩書房さんでは先月末、クセナキスの『Formalized Music: Thought and Mathematics in Composition』(Revised edition, Pendragon Press, 1992)の全訳である『形式化された音楽』を発売されています。たいへんに美麗な装丁は工藤強勝さんと勝田亜加里さんによるもの。目次を以下に列記しておきます。

序文
フランス語原版の序文
英語版(ペンドラゴン版)の序文
第1章 拘束のない推計学的音楽全般について
第2章 マルコフ連鎖を用いた推計学的音楽――その理論
第3章 マルコフ連鎖を用いた推計学的音楽――その応用
第4章 音楽における戦略――戦略、線型計画法、そして作曲
第5章 計算機を用いた拘束のない推計学的音楽
第6章 記号論的音楽
第1章から第6章までの結論と拡張
第7章 メタ音楽に向けて
第8章 音楽の哲学に向けて
第9章 微細音響構造に関する新たな提案
第10章 時間と空間と音楽について
第11章 ふるい
第12章 「ふるい」のユーザーズガイド
第13章 ダイナミックな推計学的合成
第14章 さらに徹底した推計学的音楽
補遺Ⅰ 連続確率の二つの法則
補遺Ⅱ
補遺Ⅲ 新しいUPICシステム
参考文献
監訳者解説
訳者あとがき
索引

★監訳者解説に本書の書誌情報が詳しく書かれています。「本書は彼〔クセナキス〕自身による作曲技法の解説書だが、元々は独立な論文をほぼ執筆年代順に並べて一冊にまとめたものであり、刊行年代に応じて複数の版が存在する」。以下に、本書の先行する版についての監訳者による解説を図式的に転記しておきます。

1)仏語版初版『Musiques formelles』(Richard-Masse, 1963)・・・当訳書の底本(英語版増補版)との対応:第1章~第6章(第2章と第3章は分割されていない)、補遺ⅠおよびⅡ、あとがき(底本では「第1章から第6章までの結論と拡張」)。

2)英語版初版『Formalized Music』(Indiana University Press, 1971)・・・当訳書の底本との対応:第1章~第6章および、第7章と第8章の仏語論文の英訳、そして第9章(書き下ろし)。

★留意点として、今回の訳書では、英訳の読みにくさのために、仏語原文があるものは仏語から訳したとのことです。なお『音楽と建築』(高橋悠治訳、全音楽譜出版社、1975年;新編新訳版、河出書房新社、2017年7月)との違いについては次のように書かれています。『形式化された音楽』英語版増補版の「第1章から第6章の要約(に相当する短い論文や講演原稿)及び第7章・第8章原文と若干の建築に関するメモ(現行版〔すなわち英語版増補版〕第1章に含まれるフィリップス・パビリオンのプランの説明など)からなり、英語版初版の仏語による簡易版とみなせる。刊行時点では〔・・・〕内容が重複しないように配慮したのだろう」。

★イアン・スチュアート『対称性――不変性の表現』は、Oxford University Pressの「A Very Short Introduction」シリーズより刊行された『Symmetry』(2013年)の全訳。カバーソデ紹介文は以下の通り。「「対称性」は現代科学の重要語の一つです。対称性といえば、虹、雪の結晶、貝殻などの線対称や回転対称な図形を連想し、その規則正しく並んだ模様に私たちは魅了されてきました。この対称性を現代科学で扱われているように抽象化するきっかけとなったのは、対称な図形・模様の分析・研究ではなく、方程式の解の探求といわれています。本書では対称性についての素朴なイメージからはじめ、対称性の抽象的定義、その性質の広がり、魅力をイアン・スチュアートが描きます」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者は本書の末尾でこう述べています。「対称性の物語、そこから導かれる数学、そしてその結果得られた理論に基づく利用は、単純だが深遠な概念がいかにして途方もなく強力な理論と大きな科学的発展になりうるかを示している。〔・・・〕対称性を理解するための探求は、いかに自然界の美が美しい科学と美しい数学につながるかという見事な例になっている」(160~161頁)。著者自身による紹介動画を以下に貼り付けておきます。


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★数々の本がかたちづくる宇宙との出会いは、書店にあります。当たり前のことが忘れられてしまいがちなこんにち、何度でも強調しなければなりません。しばらく寄っていなかった外国文学棚に行くと、美しい本たちが待っていました。澁澤龍彦没後30年記念で再刊された3点と、基本的に熊本県下でしか買えなかった本を手に取りました。いずれも既刊書ですが、特記しておきたい書目です。

超男性(愛蔵版)』アルフレッド・ジャリ著、澁澤龍彦訳、白水社、2017年8月、本体3,600円、4-6判上製244頁、ISBN978-4-560-09570-6
大胯びらき(愛蔵版)』ジャン・コクトオ著、澁澤龍彦訳、白水社、2017年8月、本体3,600円、4-6判上製187頁、ISBN978-4-560-09579-9
城の中のイギリス人(愛蔵版)』アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ著、澁澤龍彦訳、白水社、2017年8月、本体3,600円、4-6判上製202頁、ISBN978-4-560-09569-0
抄訳 アフリカの印象』レーモン・ルーセル著、坂口恭平画、國分俊宏訳、いとうせいこう解説、伽鹿舎、2016年8月、本体926円、ライブラリー判並製306頁
ISBN:978-4-908543-04-3

★『超男性』『大胯びらき』『城の中のイギリス人』は原条令子さんによるほれぼれするような美しい装幀に誘われて、軽装版を持っているにもかかわらずまんまと購入。それぞれ中身は、1975年版、1954年版、1982年版の復刻で、書体や組版に当時の雰囲気があります。3点とも手元に揃えるのが正解かと。いっぽう、『抄訳 アフリカの印象』は坂口さんの独特な挿画がとてもいいです。伽鹿舎(かじかしゃ)は熊本市の版元さん。「スタッフ全員が本業を別にもっている非営利の文藝出版社」で週末出版社とも自身を位置づけておられます。編集、造本、販売のそれぞれのこだわりに共感を覚える素敵なチームだと思います。ルーセルの新訳本は同舎のシリーズ「伽鹿舎QUINOAZ(キノアス)」の一冊。文庫より少し大きなライブラリーサイズのシリーズです。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

空間へ』磯崎新著、河出文庫、2017年10月、本体1,400円、584頁、ISBN978-4-309-41573-4
改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』――演出家としてのベケット』堀真理子著、藤原書店、2017年9月、本体3,800円、四六上製288頁、ISBN978-4-86578-138-0
いのち愛づる生命誌(バイオヒストリー)――38億年から学ぶ新しい知の探求』中村桂子著、藤原書店、2017年9月、本体2,600円、四六並製304頁、ISBN978-4-86578-141-0
夜の光に追われて』津島佑子著、津島佑子コレクション;人文書院、2017年9月、本体3,000円、4-6判上製372頁、ISBN978-4-409-15030-6
ジェンダー研究を継承する』佐藤文香/伊藤るり編、人文書院、2017年10月、本体4,800円、A5判上製524頁、ISBN978-4-409-24119-6
貧困と自己責任の近世日本史』木下光生著、人文書院、2017年10月、本体3,800円、4-6判上製330頁、ISBN978-4-409-52067-3
海の民のハワイ――ハワイの水産業を開拓した日本人の社会史』小川真和子著、人文書院、2017年10月、本体4,000円、4-6判上製288頁、ISBN978-4-409-53051-1

★河出文庫さんの新刊『空間へ』は建築家の磯崎新さんの初めての単独著(初版は美術出版社より1971年刊)の文庫化で、磯崎さんの文庫本としては「へるめす」誌での連載をまとめた『建築家捜し』(岩波現代文庫、2005年、品切)以来の新刊です。1960年から68年にかけて各媒体で発表された論考やエッセイを集成したもので、再刊にあたり文庫版あとがきと松井茂さんによる解説が加えられています。初版本の函に印刷されていた瀧口修造さんの推薦文は文庫版あとがきの末尾に全文が転載されています。

★藤原書店さんの9月新刊より2点を挙げます。『改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』』はベケット研究の第一人者が、戯曲『ゴドーを待ちながら』のおびただしい台本改訂と演出ノートの細部に迫る解読本です。「本書のねらいは『ゴドー』の舞台を楽しむために、またその戯曲を味わうための指針となるよう、この作品に秘められた未曾有の仕掛けを明かし、筆者なりに紐解いていくことである」(10頁)。いっぽう、『いのち愛づる生命誌(バイオヒストリー)』は90年代後半から今日に至るまでの間に各媒体で発表されてきた生命誌関連の文章に書き下ろしを加えてまとめたものです。「私が知りたいのは、バクテリアもキノコもミミズもチョウもタンポポも、それぞれがみごとに生きていることであり、みんなでつくる歴史物語です。〔勝者の目線で書かれた〕「史」よりも「誌」にしたいと思ったのはそのためであり、それが思いがけずヒストリーの本来の意味と重なったのでした」(6頁)。2点の目次詳細は書名のリンク先にてご確認いただけます。

★人文書院さんの新刊では発売済2点とまもなく発売の2点を挙げます。まずは発売済み2点。『夜の光に追われて』は「津島佑子コレクション」第Ⅰ期第2回配本。80年代半ばの東京新聞(北海道新聞、中日新聞)での連載小説で、再刊にあたっての底本は講談社文芸文庫版(1989年)とのことです。「生きることの核心」という解説を木村朗子さんがお寄せになっています。『ジェンダー研究を継承する』は現代日本におけるジェンダー研究の先達21名のインタヴューを収めた意義深い大冊。「一橋大学大学院社会学研究科先端課題研究叢書」の一冊と銘打たれています。続いてまもなく発売の2点。『貧困と自己責任の近世日本史』は奈良県田原村(現在の奈良市東部)に残る「片岡家文書」に記された近世農村の家計のありようから江戸時代の貧困について精密に分析したもの。『海の民のハワイ』は「日本人と海の結びつきに着目した上で、海がもたらす資源に生活の糧を求める人々を海の民と総称し、20世紀におけるハワイの水産業の発展に貢献した日本の海の民の軌跡を、主に社会史的側面から追究」(9頁)したもの。4点の目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

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by urag | 2017-10-08 20:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)