ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ

カテゴリ:本のコンシェルジュ( 864 )


2017年 05月 28日

注目新刊:ケック『流感世界』水声社、ほか

a0018105_16522778.jpg


流感世界――パンデミックは神話か?
フレデリック・ケック著 小林徹訳
水声社 2017年5月 本体3,000円 46判上製354頁 ISBN978-4-8010-0259-3

帯文より:レヴィ=ストロースの方法論を受け継ぐ気鋭の人類学者が描いた、パンデミック化したこの世界。「種の壁」を乗り越えるインフルエンザウイルスを、香港・中国・日本・カンボジアを股にかけて追跡し、ヒトと動物種とのあいだに広がる諸関係に新たな対角線をひく。ヒトが作り上げる〈社会〉のあり方を、《危機》への対応という観点から問い直す。

目次:
序論 動物疾病の人類学
第一章 バイオセキュリティをめぐる回り道
第二章 自然に面した衛生前哨地
第三章 家禽経営
第四章 仏教的批判
第五章 動物を開放すること
第六章 生物を生産すること
第七章 ウイルスの回帰――あるパンデミックの回想録
第八章 ドライとウェット――実験室の民族誌
結論 パンデミックは神話か?
謝辞/原註/訳註
訳者あとがき――パンデミックの神話論をめぐって

★発売済。叢書「人類学の転回」の第8回配本です。原書は『Un monde grippé』(Flammarion, 2010)です。著者のケック(Frédéric Keck, 1974-)はフランスの人類学者で哲学史家。第一章でケックは自らの人類学的教養の源泉を、アメリカの文化人類学(ボッズ、クローバー、ギアツ)と、フランスの社会哲学や心性史研究(コント、デュルケーム、フェーヴル、ブロック)から得ていると明かしています。また、著者が本書で神話という概念をパンデミックに適用する理由は次のように述べられています。「神話は、表象と現実の連環や、計算的な合理性と道徳的感情の連環より以上のものを含意している。この概念が提示するのは〔・・・〕「世界観」なのである。つまりそれは、共通の世界という地平に含まれるすべてのものを知覚させ、逆説的にこの世界を、それが常に脅かされてきたがゆえに、構築される前のものとして表象するものなのだ」(256頁)。

★そしてこうも著者は述べています。「本書において私が試みたのは、「神話の大地は丸い」というレヴィ=ストロースの断言を取り上げ直すことだったのだ。私は微生物学者たちを追いながら、ウイルスの起源に関する彼らの神話を共有していたが、彼らが国境を跨ぐときには、この神話の変換に注意を向け続けていた。微生物学者たちがウイルスは国境を知らないと言い続けるとしても、それでもなお、ウイルスについての社会的表象が意味をなすのは、歴史によって構成された国境を取り巻く文脈においてなのであり、ウイルスが国境を跨ぐときにこの表象が変換されたり反転したりするその在り方においてなのである」(263頁)。訳者は本書について「さまざまな観念が予感的に散りばめられた豊かな土壌となるべき書物である」(343頁)と評しておられます。科学人類学が有する越境的射程の魅力に溢れた本です。

★帯表4に記載されたシリーズ続刊予定には、クリス・ハン/キース・ハート『経済人類学』、マイケル・タウシグ『模倣と他者性』が挙がっています。また、水声社さんの2015年9月25日付「《叢書 人類学の転回》まもなく刊行開始!」に掲出された刊行予定のうちで未刊の書目には、アルフレッド・ジェル『アートとエージェンシー』、フィリップ・デスコラ『自然と文化を超えて』があります。

+++

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。いずれも発売済です。

現代思想2017年6月号 特集=変貌する人類史』青土社、2017年5月、本体1,400円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1346-2
なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか――“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』クリスティン・ヤノ著、久美薫訳、作品社、2017年5月、本体3,600円、46判上製526頁、ISBN978-4-86182-593-4
カネと暴力の系譜学』萱野稔人著、河出文庫、2017年5月、文庫判208頁、ISBN978-4-309-41532-1
澁澤龍彦ふたたび』河出書房新社編集部編、河出書房新社、2017年5月、本体1,300円、A5判並製224頁、ISBN978-4-309-97918-2
増補新版 ブラック・マシン・ミュージック――ディスコ、ハウス、デトロイト・テクノ』野田努著、河出書房新社、2017年5月、本体4,300円、46判上製512頁、ISBN978-4-309-27846-9

★『現代思想2017年6月号 特集=変貌する人類史』は中沢新一さんと山極寿一さんの討議「「人類史」のその先へ」をはじめ、日本人研究者のインタヴューや寄稿が充実しています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。次号(2017年7月号)の特集は「宇宙への旅」と予告されており、昨年末『宇宙倫理学入門』(ナカニシヤ出版、2016年12月)を上梓された稲葉振一郎さんが三浦俊彦さんと討議されるようです。

★『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか』の原書は『Pink Globalization: Hello Kitty's Trek across the Pacific』(Duke UNiversity Press, 2013)。原題にある「ピンクのグローバリゼーション」とは日本の《カワイイ》をめぐるカルチャーの世界的な伝播と受容を表わすもの。ハワイ大学の人類学教授によるサンリオ研究であり、ユニークです。なお著者には、本書の訳者でもある久美薫さんによる既訳書『パン・アメリカン航空と日系二世スチュワーデス』(原書房、2013年)があります。

★最後に河出書房新社さんの今月新刊より3点をご紹介します。『カネと暴力の系譜学』はシリーズ「道徳の系譜」の単行本を文庫化したもの。文庫化にあたり、國分功一郎さんが解説「理論的であること」を寄せておられます。なお、同シリーズから文庫化された本には酒井隆史『暴力の哲学』(単行本2004年;文庫2016年)があります。

★『澁澤龍彦ふたたび』は「文藝別冊・KAWADE夢ムック」の新刊。編集後記によれば「2002年に「文藝別冊」で澁澤特集を編み、2013年にその増補新版を出した。今回、歿後30年という節目にあらためて澁澤とこの時代の通路をひらくべく新たに別冊を編んだ」とのことです。東雅夫さんによるアンソロジー「掌上のドラコニア――澁澤龍彦による澁澤龍彦」のほか、『現代思想』にも登場されていた中沢新一さんが「水の発見」という論考を寄稿されています。

★『増補新版 ブラック・マシン・ミュージック』は2001年に刊行された長大なクラブミュージック論の新版で、巻末に書き下ろしとなる「16年目のブラック・マシン・ミュージック」が収録されています。「日の当たらないところには、明るい場所にはない力強い繋がりがある」(488頁)。「チャート・ミュージックではないのにかかわらず、途絶えることなく拡大し続けている」ものの力。巻頭に置かれた「ビギン・トランスミッション」にはこう書かれていました。「ディスコ、ハウス、あるいはテクノ、これらアンダーグラウンド・ミュージックは、世界の周辺に住むひとたちが、世界の秩序から隔離された場所で繰り広げてきたものだ。なるだけ世界の痛みから遠ざかろうとする感情が、最初この音楽の根底にはあった。が、この音楽はときを経て、世界を不透明にするシステムに牙をむきはじめた」(12頁)。「ぼくはこの本でなるだけ彼らの背景や考え、その変遷を伝えようと努めている。今や世界中の若者を虜にしているダンス・カルチャーの原風景を見つめ、彼らのやってきたことを歴史的に追い、現在やっていることの意義を読者に問いたいと思う」(13頁)。

+++

[PR]

by urag | 2017-05-28 16:15 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 22日

注目新刊:W・ブラウン、G・アガンベン、『現代思想』資本論特集号

a0018105_17055829.jpg

★中井亜佐子さん(共訳:ロイル『デリダと文学』)
カリフォルニア大学バークレー校政治学教授のウェンディ・ブラウン(Wendy L. Brown, 1955-)さんの、『寛容の帝国』(向山恭一訳、法政大学出版局、2010年)に続く単独著日本語訳第二弾を手掛けられました。まもなく店頭発売開始と聞いています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。原書は『Undoing the Demos: Neoliberalism's Stealth Revolution〔デモス(市民/人民/民衆)の解体――新自由主義のステルス革命〕』(Zone Books, 2015)です。

いかにして民主主義は失われていくのか――新自由主義の見えざる攻撃
ウェンディ・ブラウン著、中井亜佐子訳
みすず書房 2017年5月 本体4,200円 四六判上製336頁 ISBN978-4-622-08569-0
帯文より:いまや新自由主義は、民主主義を内側から破壊している。あらゆる人間活動を経済の言葉に置き換え、民主主義を支える理念、制度、文化を解体する過程を説き明かす。

★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『思考の潜勢力』『瀆神』『到来する共同体』)
3月下旬にミラノの出版社「ノッテテンポ」から初めての自伝となる『書斎の自画像』を刊行されました。秘蔵写真満載の一冊で、いずれ日本語でも読めるようになるのではないかと思われます。

Autoritratto nello studio
Giorgio Agamben著
nottetempo 2017年3月 18ユーロ 菊判変型上製176頁 ISBN978-88-7452-667-3

★アントニオ・ネグリさん(著書:『芸術とマルチチュード』)
『現代思想』2017年6月臨時増刊号「総特集=マルクスの思想――『資本論』150年」に、論文「共の構築――新たなコミュニズム」が長原豊さんの訳で掲載されています(98~111頁)。これの原典は以下のもののようです。'La construction du commun: Un nouveau communisme', trans. Jeanne Revel, in Alain Badiou and Slavoj Žižek (eds), L'Idée du communisme, II. Conférence de Berlin, Fécamp: Nouvelles Editions Lignes, 2010, pp. 199-213. これは、2009年にロンドンで開催されたシンポジウムが書籍化された、The Idea of Communism(Verso, 2010;『共産主義の理念』コスタス・ドゥズィーナス+スラヴォイ・ジジェク編、長原豊監訳、沖公祐+比嘉徹徳+松本潤一郎訳、水声社、2012年6月)に続く、第二弾(2010年6月25~27日にベルリンで開催されたシンポジウムの記録『共産主義の理念Ⅱ』)に収録された発表論文かと思います。ちなみに第一弾『共産主義の理念』ではネグリの論考は「共産主義――概念と実践についての省察」と題されたものでした。『現代思想』臨時増刊号に収録されている諸論考については下記誌名のリンク先をご覧ください。

現代思想2017年6月増刊号 総特集=マルクスの思想――『資本論』150年
青土社 2017年5月 本体1900円 A5判並製278頁 ISBN978-4-7917-1345-5

+++

[PR]

by urag | 2017-05-22 16:51 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 22日

ブックツリー「哲学読書室」に岡本健さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『ゾンビ学』(人文書院、2017年4月)を上梓された岡本健さんの選書リスト「ゾンビを/で哲学してみる!?」が追加されました。下記リンク先一覧よりご覧ください。


◎哲学読書室

上尾真道さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
渡辺洋平さん選書「今、哲学を(再)開始するために
岡本健さん選書「ゾンビを/で哲学してみる!?

+++



[PR]

by urag | 2017-05-22 10:56 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 21日

注目新刊:ディディ=ユベルマン『受苦の時間の再モンタージュ』、ほか

a0018105_22274818.jpg


受苦の時間の再モンタージュ――歴史の眼2』ジョルジュ・ディディ=ユベルマン著、森元庸介/松井裕美訳、ありな書房、2017年5月、本体6,000円、A5判上製292頁、ISBN978-4-7566-1754-5
アール・ブリュット――野生芸術の真髄』ミシェル・テヴォー著、杉村昌昭訳、人文書院、2017年5月、本体4,800円、A5判上製250頁、ISBN978-4-409-10038-7
ジャック・ラカン 不安(下)』ジャック=アラン・ミレール編、小出浩之/鈴木國文/菅原誠一/古橋忠晃訳、岩波書店、2017年5月、本体5,500円、A5判上製296頁、ISBN978-4-00-061187-9

★ディディ=ユベルマン『受苦の時間の再モンタージュ』は発売済。シリーズ『歴史の眼』の第2巻です。既刊書には刊行順に、第3巻『アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』(伊藤博明訳、ありな書房、2015年11月)、第1巻『イメージが位置をとるとき』(宮下志朗/伊藤博明訳、ありな書房、2016年8月)があります。今回刊行された第2巻の原書は、Remontages du temps subi. L'Œil de l'histoire, 2 (Minuit, 2010)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。訳者の松井裕美さんによる巻末解説では本書はこう説明されています。「収容所の映像を読むために「モンタージュする」という行為が考察対象となる。そのためにディディ=ユベルマンが焦点をあてるのは、サミュエル・フラーとハルーン・ファルッキという二人の映画監督である。/本書第Ⅰ章〔「収容所を開き、眼を閉じる──イメージ、歴史、可読性」〕では戦地における経験の表象不可能性と出来事の記録の問題が扱われる。とりわけ記録映像の問題を検討するためにとりあげられるのがフラー〔による「ファルケナウ」1945年、など〕である」(275頁)。そして「本書第Ⅱ章〔「時間を開き、眼を武装する──モンタージュ、歴史、復元」〕では、記録映像を理解可能にするための作業に関するより根本的な方法論的考察が展開される。そのさいに焦点があてられるのはハルーン・ファロッキの作品〔「世界のイメージと戦争の書きこみ」1988年、「猶予」2007年、ほか〕である」(276~277頁)。ディディ=ユベルマンの著書は人文書に置くか芸術書に置くか分類が難しいため、書店さんによっては悩まれるだろうと思うのですが、どちらに置くにせよ、分散させずに一箇所にまとめるのもひとつの手ではあります。

★テヴォー『アール・ブリュット』は発売済。原書は、L'art brut (Skira, 1975)です。著者のミシェル・テヴォー(Michel Thévoz, 1936-)は美術史家、美学者。単独著の既訳書に『不実なる鏡――絵画・ラカン・精神病』(岡田温司/青山勝訳、人文書院、1999年)があります。1976年よりローザンヌの美術館「アール・ブリュット・コレクション(Collection de l'art brut)」の館長を務めておられ、本書『アール・ブリュット』はその設立者である画家のジャン・デュビュッフェが序文を寄せています。そもそも「アール・ブリュット」という概念を提唱したのがデュビュッフェで、本書の第一章にも引用されているテクスト「文化的芸術よりもアール・ブリュットを」でデュビュッフェは次のように書いています。「われわれの言うアール・ブリュットとは次のようなものである。すなわち、それは芸術的文化の影響を逃れた人たちによってつくられた作品であり、そこでは、知的な人々のなかで起きることとは反対に、模倣はほとんどと言っていいほどなく、作品のつくり手がすべてを(主題、材料の選択、作品化の手段、リズム、表現法、等々)伝統的芸術のありきたりの型からではなく、自分自身のなかの奥深い場所から引き出す。われわれはそこで、まったく純粋で生〔き〕のままの芸術的推敲が行なわれ、つくり手自身の固有の衝動を唯一の起点として芸術がその全局面において再発明される現場に立ち会うのである」(11~12頁)。巻頭16頁はカラー図版26点を掲載。目次詳細は書名のリンク先からご覧下さい。版元サイトではデュビュッフェの序文や訳者あとがきも公開されています。アール・ブリュット(英語圏での名称は「アウトサイダー・アート」)にご関心のある方には必携の基本書です。

★『ジャック・ラカン 不安(下)』は発売済。「セミネール」シリーズ第10巻の後半部分です。第12講義「不安、現実的なものの信号」から第24講義「aからいくつかの〈父の名〉へ」までを収録。目次詳細については書名のリンク先をご覧ください。セミネールは原書で全26巻予定、現在まで16巻が刊行されており、そのうち邦訳されたのは今回の『不安』までで9巻です。まだまだ道のりは遥かです。なお、同版元の2017年6月新刊案内によれば、受注生産方式の「岩波オンデマンドブックス」ではセミネール第2巻である『フロイト理論と精神分析技法における自我』上下巻(1998年)の復刻版が6月12日より受付開始だそうです。受注から2~4週間でお届け。本体価格は上巻が7000円、下巻が6600円と割高ですが、仕方ありません。同ブックスは「内容についてはオリジナル本と変わりませんが、装丁や外見が異なります」とのことで、新たな修正はなさそうです。ある場合はもう一度買わねばなりません。

+++

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

戸籍と無戸籍――「日本人」の輪郭』遠藤正敬著、人文書院、2017年5月、本体4,000円、4-6判上製380頁、ISBN978-4-409-24117-2
回想の青山光二――資料で読む「最後の文士」の肖像』池内規行著、共和国、2017年5月、本体5,000円、菊変型判上製288頁、ISBN978-4-907986-35-3
パフォーマンスがわかる12の理論――「クリエイティヴに生きるための心理学」入門!』鹿毛雅治編、金剛出版、2017年4月、本体3,200円、四六判並製400頁、ISBN978-4-7724-1548-4
マインドフルネス実践講義――マインドフルネス段階的トラウマセラピー(MB-POTT)』大谷彰著、金剛出版、2017年5月、本体2,800円、A5判並製184頁、ISBN978-4-7724-1555-2

★遠藤正敬『戸籍と無戸籍』は発売済。前著『戸籍と国籍の近現代史――民族・血統・日本人』(明石書店、2013年)で「戸籍が「日本人なるものを〔・・・〕いかに創出してきたのかを歴史的に検討した」(22頁)著者が今後は「無戸籍とは何か」を問うことによって研究を新たな段階へと進めたユニークな本です。ネタばれはやめておきますが、「あとがき」が非常に自由な筆致で書かれているのも印象的です。

★池内規行『回想の青山光二』は発売済。小説家・青山光二(あおやま・こうじ:1913-2008)さんから著者に当てられた多数の葉書や手紙を引用しつつ綴られた回想記で、巻頭には「秘蔵写真を駆使した」(帯文より)という文学アルバム、巻末には詳細な年譜と全著作目録が収載されています。投げ込みの「共和国急使」第15号(2017年5月20日付)で、下平尾代表は、本書は少部数出版ではあるけれども「諸事即席で売れる本だけが本ではないし、こういう含蓄のある本を世に出すのも版元の仕事であろう」としたためておられます。本書の「あとがき」で著者は下平尾さんを「わが友」と呼び掛けておられ、著者と編集者の麗しい交流に胸打たれる思いがします。

★最後に金剛出版さんの新刊より2点。まず『パフォーマンスがわかる12の理論』は『モティベーションをまなぶ12の理論――ゼロからわかる「やる気の心理学」入門!』(鹿毛雅治編、金剛出版、2012年4月)の続篇で、心理学用語としての「パフォーマンス」をめぐる12の理論を紹介するもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。次に『マインドフルネス実践講義』は『マインドフルネス入門講義』(大谷彰著、金剛出版、2014年10月)の続篇。「マインドフルネスを使いこなすための理論と方法をガイドする実践篇として刊行」(版元サイトより)。目次詳細はこちらも書名のリンク先をご覧ください。マインドフルネスとは「「今、ここ」での体験に気づき(アウェアネス)、それをありのままに受け入れる態度および方法」(16頁)であり、「仏教徒が2500年にわたり実践してきた瞑想がマインドフルネスという臨床手段へと変化し、しかも西洋、特にアメリカを経て仏教国である日本にセラピーとして逆輸入された」(15~16頁)と著者は説明しています。

+++

[PR]

by urag | 2017-05-21 22:05 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 15日

ブックツリー「哲学読書室」に西兼志さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、『アイドル/メディア論講義』(東京大学出版会、2017年4月)を上梓された西兼志さんの選書リスト「〈アイドル〉を通してメディア文化を考える」が追加されました。下記リンク先一覧よりご覧ください。


◎哲学読書室

上尾真道さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
渡辺洋平さん選書「今、哲学を(再)開始するために


+++


[PR]

by urag | 2017-05-15 22:22 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 14日

注目文庫新刊:ヴォルテール『哲学書簡』新訳、ほか

a0018105_22494181.jpg


哲学書簡』ヴォルテール著、斉藤悦則訳、光文社古典新訳文庫、2017年5月、本体980円、364頁、ISBN978-4-334-75354-2
デカメロン(下)』ボッカッチョ著、平川祐弘訳、河出文庫、2017年5月、本体1,000円、560頁、ISBN978-4-309-46444-2
星界の報告』ガリレオ・ガリレイ著、伊藤和行訳、講談社古典新訳文庫、2017年5月、本体600円、128頁、ISBN978-4-06-292410-8
自然魔術』ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ著、澤井繁男訳、講談社学術文庫、2017年5月、本体980円、288頁、ISBN978-4-06-292431-3
柄谷行人講演集成1985-1988 言葉と悲劇』ちくま学芸文庫、2017年5月、本体1,200円、384頁、ISBN978-4-480-09771-2

★今月も続々と古典の新訳が文庫化が続いています。ヴォルテール『哲学書簡』は、斉藤悦則さん訳によるヴォルテール新訳第三弾で、これまでに『カンディード』が2015年8月に、『寛容論』が2016年5月に上梓されています。『哲学書簡』は発禁書にしてベストセラー。既訳文庫には林達夫訳『哲学書簡』(岩波文庫、1980年)があります。

★ボッカッチョ『デカメロン(下)』は、平川祐弘さん訳の全三巻完結編。第八日から第十日、著者結び、までを収録。訳者解説は第六章「『デカメロン』に貼られた様々なレッテル」、第七章「東洋文学との比較」、第八章「結びにかえて」が収められています。なお河出文庫では6月6日発売で、アルトー『タラウマラ』宇野邦一訳が刊行予定だそうです。

★ガリレオ・ガリレイ『星界の報告』は文庫オリジナル版新訳。「1610年にヴェネツィアで刊行された初版に基づいて第一人者が完成させた決定版新訳」(帯文より)と。既訳文庫には、 山田慶児・谷泰訳『星界の報告 他一篇』(岩波文庫、1976年)があります。こちらは「太陽黒点にかんする第二書簡」を併載。

★デッラ・ポルタ『自然魔術』の親本は1990年に青土社より刊行。文庫化にあたっての「追記」によれば「この好機にあたって、科学史家の山本義隆氏から内容等に関して多大なご教示をいただき、感謝の念に堪えない」とありますから、改稿があったと受け止めてよいかと思います。なお同書の「人体篇」が1996年に同じく澤井さんの翻訳で青土社より刊行されており、現在は版元品切の様子。講談社さんから続けて文庫化されたら嬉しいですね。

★『柄谷行人講演集成1985-1988 言葉と悲劇』は、今年1月に刊行された文庫オリジナル版『柄谷行人講演集成1995-2015 思想的地震』に続く講演集。巻末の特記によれば「本書は、1989年に第三文明社より刊行され、1993年に講談社学術文庫に収録された。本文庫化に際しては、講談社学術文庫版を底本とし」、以下のような改変を加えた、とのことです。曰く「一、「バフチンとウィトゲンシュタイン」については、割愛した。一、「漱石の多様性」「坂口安吾その可能性の中心」については、『定本 柄谷行人文学論集』(岩波書店、2016年)所収の改稿版に差し替えた。一、内容の関連性を考慮し、一部講演の配列を差し替えた。一、その他、全体を通して改稿を施した」と。講談社学術文庫版『言葉と悲劇』(現在品切重版未定)と読み比べてみるのも面白そうですね。

+++

[PR]

by urag | 2017-05-14 22:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 07日

注目新刊:大橋喜之訳『ピカトリクス』八坂書房、ほか

a0018105_01051271.jpg


ピカトリクス――中世星辰魔術集成
大橋喜之訳
八坂書房 2017年4月 本体6,800円 A5判上製748頁 ISBN978-4-89694-233-0

帯文より:西欧中世の闇を映す伝説の魔道書、その全貌を明らかにする、待望の原典訳! オカルティストたちが渇仰し、ネオプラトニストたちが偏愛した、隠された知の宝庫への深水への錘鉛を垂らすラテン語版からの全訳。韜晦に満ちた奇書の読み書きに欠かせぬ、註・解題・資料も充実!

★発売済。巻頭の注記によれば底本はデイヴィッド・ピングリー(本書の表記ではピングレー)が19もの写本を校合してウォーバーグ研究所より出版したラテン語版(1986年)。元々の原本であるアラビア語版『ガーヤット・アル-ハキーム(賢者の目的)』がスペイン語に翻訳されたのが1256年、それをさらにラテン語に重訳したのが本書です。数々の歴史的魔術書のまとめ本にして便覧(マニュアル)、西欧中世を代表する魔導書(グリモワール)として後世に影響を及ぼしたあまりにも高名な本でしたが、活字化されたのは20世紀後半になってからです。ピカトリクスというのはその編者の名前であるとされています。

★巻頭の「序」では本書の構成について次のように説明されています。「本書は四書に分けられ、またそれぞれが諸章に分けられている。第Ⅰ書では諸天の存在とそれらがそこでなす像(イマジネ)の効果について論じる。第Ⅱ書では諸天の形象全般、そして第八天の運動およびそれがこの世にもたらす諸効果について語る。第Ⅲ書では諸惑星および星座の数々の特徴およびそれらの形象(フィグーラ)と形相(フォルマ)をそれらの色とともに明らかにし、諸惑星の霊(スピリトゥス)の性質また降霊術(ネグロマンツィア)についてもできるだけ述べることとする。第Ⅳ諸では霊の諸特徴およびこの業において遵守しなくてはならないことども、そして図像と燻香その他の補助的なことがらについて語る」(4頁)。

★いわば幻の書が全訳されるというのはそれ自体大きな事件です。訳者はローマ在住の翻訳家にして錬金術研究者の大橋喜之(おおはし・よしゆき:1955-)さん。数々の訳書を八坂書房さんから上梓されているほか、ブログ「ヘルモゲネスを探して」では錬金術関連の古典の日本語訳の数々を公開されています。『ピカトリクス』訳書では写本から図版を多数掲載しており、さらに充実した付録「『ピカトリクス』を読むために」では参考文献が訳出されています。以下に付録の目次を転記しておきます。

『ピカトリクス』大要――M・プレスナーによる亜版梗概
解題 中世星辰魔術『ピカトリクス』再発見の途――20世紀諸賢による所見の紹介
 ソーンダイクによる『ピカトリクス』概説
 エウジェニオ・ガレン「魔術便覧ピカトリクス」
補遺Ⅰ 哲学としての魔術――ペッローネ・コンパーニ
 ペッローネ・コンパーニ「ピカトリクス・ラティヌス」
補遺Ⅱ 像(イメージ)の遡及と典拠の探索――羅版刊行者ピングレー
 ピングレー「『ガーヤット・アル-ハキム』の典拠の幾つか」抄
 ピングレー「『ガーヤ』と『ピカトリクス』の間Ⅰ:スペイン語異文」抄
 ピングレー「『ガーヤ』と『ピカトリクス』の間Ⅱ:ジャービルに帰される『自然学精華集』」抄
補遺Ⅲ ピカトリクス分光
 『クラテスの書』(全訳)

★4月発売の新刊では本書とともに、伊藤博明『ヨーロッパ美術における寓意と表象――チェーザレ・リーパ『イコノロジーア』研究』(付属資料:『イコノロジーア』一六〇三年版全訳)について特記すべきですが、本体価格36,000円という高額本のため、まだ現物は見たことがありません。hontoでは相変わらず購入できませんし、丸善やジュンク堂の店頭にもありませんが、アマゾン・ジャパンではついに在庫されるようになりました。さすがです。

★このほか、4月新刊単行本には以下の注目書がありました。先月は豊作で、そのすべてを月内には取り上げきれないほどでした。

美学講義』G・W・F・ヘーゲル著、寄川条路監訳、石川伊織/小川真人/瀧本有香訳、法政大学出版局、2017年4月、本体4,600円、四六判上製408頁、ISBN978-4-588-01057-6
美味礼讃』ブリア=サヴァラン著、玉村豊男編訳/解説、新潮社、2017年4月、本体2,800円、46判上製429頁、ISBN978-4-10-507031-1
アレゴリー――ある象徴的モードの理論』アンガス・フレッチャー著、伊藤誓訳、白水社、2017年4月、本体7,600円、4-6判上製598頁、ISBN978-4-560-08309-3
ラカニアン・レフト――ラカン派精神分析と政治理論』ヤニス・スタヴラカキス著、山本圭/松本卓也訳、岩波書店、2017年4月、本体6,600円、A5判上製464頁、ISBN978-4-00-002428-0
科学とモデル――シミュレーションの哲学 入門』マイケル・ワイスバーグ著、松王政浩訳、名古屋大学出版会、2017年4月、本体4,500円、A5判上製328頁、ISBN978-4-8158-0872-3

★ヘーゲル『美学講義』は、1820~1821年冬学期の講義(アッシェベルクとテルボルクの筆記録、ヘルムート・シュナイダー編、ランク社、1995年)の全訳。これまでに翻訳されてこなかったものです。美学講義の既訳には、甘粕石介訳『美学講義』(全2巻、北隆館、1949~1950年)、竹内敏雄訳『美学』(全3巻9分冊、岩波書店、1956~1981年;ラッソン編ヘーゲル全集、1931年)、長谷川宏訳『美学講義』(全3巻、作品社、1995~1996年;グロックナー版ヘーゲル全集12~14巻)がありますが、底本が異なります。

★ブリア=サヴァラン『美味礼讃』は帯に「50年ぶりの新訳」と。ただし抄訳です(正確に言えば「全編を翻訳した上で、その約3分の2を単行本としてまとめたもの」〔訳者あとがき〕)。全訳には周知の通り岩波文庫(『美味礼讃』上下巻、関根秀雄/戸部松実訳、1967年)がロングセラーとなっています。原題は『味覚の生理学』(1825年)。著者のジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin, 1755-1826)はパリ控訴裁判所の裁判官を務め、生涯独身だったそうです。「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人か言い当ててみせよう」という名言は、「美味学の永遠の基礎となる、教授のアフォリスム(箴言)」の4番目に挙げられています(414頁)。

★フレッチャー『アレゴリー』は「高山宏セレクション〈異貌の人文学〉」の最新刊。原書は『Allegory: The Theory of a Symbolic Mode』(Cornell University Press, 1964)で、著者34歳の折のデビュー作です。「批評そのものが「アナトミー(N・フライ)の超ジャンルたり得る一大奇観を目の当たりに、我々の「批評」などもはや赤子のたわ言でしかないと知って呆然とせよ」と高山さんは帯文に寄せられています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。フレッチャー(Angus Fletcher, 1930-2016)の既訳書には『思考の図像学――文学・表象・イメージ』(法政大学出版局、1997年)があり、訳者は『アレゴリー』と同じく伊藤誓さんです。なお同シリーズではウィリアム・マガイアー『ボーリンゲン』が高山宏さんの翻訳で続刊予定とのことです。

★スタヴラカキス『ラカニアン・レフト』の原書は『The Lacanian Left: Psychoanalysis, Theory, Politics』(Edinburgh University Press, 2007)で、巻頭には「日本語版への序文」が付されています。目次詳細や立ち読みPDFは書名のリンク先にてご参照になれます。著者のスタヴラカキス(Yannis Stavrakakis , 1970-)さんは英国生まれのギリシア系思想家で、テッサロニキ・アリストテレス大学教授であり、専門は政治理論です。既訳書に『ラカンと政治的なもの』(有賀誠訳、吉夏社、2003年)があります。なお岩波書店さんでは今月18日発売で、ジャック・ラカン『不安(下)』(ジャック=アラン・ミレール編、小出浩之/鈴木國文 /菅原誠一/古橋忠晃訳)が刊行される予定です。

★ワイスバーグ『科学とモデル』の原書は『Simulation and Similarity: Using Models to Understand the World』(Oxford University Press, 2013)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者のワイスバーグ(Michael Weisberg, 1976-)はアメリカのペンシルヴェニア大学の哲学講座教授で、訳者解説によれば「いまや科学哲学界の重鎮の一人と言ってよい存在」とのこと。単独著としては今回訳された書籍があるのみのようです。帯文には戸田山和久さんの推薦文が掲載されています。「モデル概念を軸に科学哲学を書き換える。よりスリリングでリアルな科学哲学の始まり始まり!」。なお訳者の松王政浩(まつおう・まさひろ:1964-)さんはソーバーの『科学と根拠』(名古屋大学出版会、2012年)の翻訳も手掛けておられます。

★さらに4月刊行の文庫や新書では以下の書目に惹かれました。ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』(巻、堤康徳訳、岩波文庫、2017年4月、文庫各464頁、ISBN978-4-00-327182-7/978-4-00-327183-4)、折口信夫『口訳万葉集(中)』(岩波現代文庫、2017年4月、A6判512頁、ISBN978-4-00-602288-4)、三木清『三木清大学論集』(大澤聡編、講談社文芸文庫、2017年4月、本体1,600円、A6判320頁、ISBN978-4-06-290345-5)、エドワード・スノーデンほか『スノーデン 日本への警告』(青木理/井桁大介/宮下紘/金昌浩/ベン・ワイズナー/マリコ・ヒロセ共著、集英社新書、2017年4月、本体720円、新書判208頁、ISBN978-4-08-720876-4)、エドワード・ルトワック『戦争にチャンスを与えよ』(奥山真司訳、文春新書、2017年4月、本体800円、新書判224頁、ISBN978-4-16-661120-1)。

★5月発売予定の文庫新刊では、講談社学術文庫が気になります。11日発売予定で、ガリレオ・ガリレイ『星界の報告』伊藤和行訳、『新版 平家物語(二)全訳注』杉本圭三郎訳注、フランシス・ギース『中世ヨーロッパの騎士』椎野淳訳、『荘子 全現代語訳(上)』池田知久訳、ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ『自然魔術』澤井繁男訳などが予告されています。池田知久訳『荘子』は『荘子 全訳注』(講談社学術文庫、2014年5月刊)の簡易版だそうで、総説、現代語訳、原文、解説からなるとのことです。

+++

★また、最近では以下の新刊との出会いがありました。

〈男性同性愛者〉の社会史――アイデンティティの受容/クローゼットへの解放』前川直哉著、作品社、2017年3月発売(奥付4月)、本体2,400円、46判上製238頁、ISBN978-4-86182-626-9
アンドレ・バザン研究1:特集=作家主義再考』アンドレ・バザン研究会、2017年3月(発行4月)、非売品、A5判並製116頁、ISSN2432-9002
多田富雄コレクション(1)自己とは何か 免疫と生命』多田富雄著、中村桂子/吉川浩満解説、藤原書店、2017年4月、本体2,800円、四六上製344頁、ISBN978-4-86578-121-2
柏木如亭詩集1』柏木如亭著、揖斐高訳注、東洋文庫、2017年5月、本体2,900円、B6変判上製函入304頁、ISBN978-4-582-80882-7

★前川直哉『〈男性同性愛者〉の社会史』は2015年に京都大学大学院人間・環境学研究科から学位を授与された博士論文「近現代日本における「男性同性愛者」アイデンティティの受容過程」に加筆修正したものとのこと。1920年代から70年代の日本を対象とし、アイデンティティ受容や悩みとその解決法をめぐって検証しています。著者の前川直哉(まえかわ・なおや:1977-)さんは現在、東京大学大学院経済学研究科特任研究員で、ご専門はジェンダー・セクシュアリティの社会史。ご著書に『男の絆――明治の学生からボーイズ・ラブまで』(筑摩書房、2011年)があります。

★『アンドレ・バザン研究』はアンドレ・バザン研究会の会誌で、記念すべき第1号では研究会代表の大久保清朗さんによる「バザンの徴の下に――『アンドレ・バザン研究』創刊によせて」のほか、「作家主義再考」と銘打って古典的なテクストの翻訳7編が掲載されています。

アレクサンドル・アストリュック「新しいアヴァンギャルドの誕生――カメラ万年筆」堀潤之訳
ロジェ・レーナルト「フォード打倒! ワイラー万歳!」堀潤之訳
アンドレ・バザン「ジャック・ベッケル『エストラパード街』」角井誠訳
フランソワ・トリュフォー「アリババと「作家主義」」大久保清朗訳
アンドレ・バザン「誰が映画の本島の作者か」大久保清朗/堀潤之訳
アンドレ・バザン「作家主義について」野崎歓訳
アンドリュー・サリス「作家理論についての覚え書き、1962年」木下千花訳

巻末の編集後記で堀潤之さんは次のようにお書きになっておられます。「本号がもっぱら過去の文献の翻訳から成っていることい、物足りなさを覚える読者もいるかもしれない。だが、日本の映画研究においては、近年、(とりわけ外国語による)基礎的な文献を精読するという、人文学の根幹を成すはずの作業が、いささか蔑ろにされている傾向はないだろうか。〔・・・〕本誌が慎ましい姿ではあれ翻訳と集癪という基礎的作業だけに専心していることには、こうした豊かな伝統にささやかながた連なろうという決意も込められている」。地道なご研鑽の姿勢に共感を覚えます。

★『多田富雄コレクション(1)自己とは何か 免疫と生命』はシリーズ全5巻の第1回配本。帯文に曰く「1990年代初頭、近代的「自己」への理解を鮮烈に塗り替えた多田の「免疫論」の核心と、そこから派生する問題系の現代的意味を示す論考を精選」と。目次詳細については書名のリンク先をご覧ください。同コレクションの続巻予定は以下の通りです。年内に完結予定。

第2巻『生の歓び 食・美・旅』[解説]池内紀・橋本麻里(6月刊行予定)
第3巻『人間の復権 リハビリと医療』[解説]立岩真也・六車由実(8月刊行予定)
第4巻『死者との対話 能の現代性』[解説]赤坂真理・いとうせいこう(10月刊行予定)
第5巻『寛容と希望 未来へのメッセージ』[解説]最相葉月・養老孟司(12月刊行予定)

★『柏木如亭詩集1』は東洋文庫第882弾。全2巻予定の第1巻です。帯文は以下の通り。「遊蕩、遊歴生活を貫いた天性の抒情詩人の主要作品を作詩年代順に収める。江戸後期に出現した異数の漢詩人の全貌を味読する訳注。第1巻は青年期から中年期まで。巻末に解説を付す」と。作品ごとに原詩、訓読、詩体、語注、現代語訳でワンセットとなっています。様々な詩がありますが、「蕎麦歌(そばのうた)」というのがあって、「信山蕎麦無物敵(しんざんのそば、もののてきするなし:信州の蕎麦に匹敵するものはない)」と詠んでいます。東洋文庫の次回配本は2017年7月、『柏木如亭詩集2』です。

a0018105_01052105.jpg


+++

[PR]

by urag | 2017-05-07 00:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 03日

ブックツリー「哲学読書室」に篠原雅武さんと渡辺洋平さんの選書リストが追加されました

オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」に、篠原雅武さんと渡辺洋平さんの選書リストが追加されました。


◎哲学読書室

上尾真道さん選書「心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
渡辺洋平さん選書「今、哲学を(再)開始するために

+++


[PR]

by urag | 2017-05-03 00:58 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 04月 30日

注目シリーズのスタート:『吉本隆明全集』第二期、「井筒俊彦英文著作翻訳コレクション」、ほか

a0018105_02104719.jpg


吉本隆明全集(37)書簡I』晶文社、2017年5月、本体6,000円、A5判変型上製456頁、ISBN978-4-7949-7137-1
老子道徳経』井筒俊彦著、古勝隆一訳、慶応義塾大学出版会、2017年4月、本体3,800円、A5判上製272頁、ISBN978-4-7664-2415-7

★『吉本隆明全集(37)書簡I』は5月10日頃発売。第13回配本で、今回から第二期のスタートです。帯文に曰く「『試行』単独編集、試行出版部創設、『初期ノート』刊行、「全著作集」刊行開始――。1962~68年に白熱の核心をむかえる川上春雄宛全書簡150通余りを収録」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻末の間宮幹彦さんによる解題によれば、川上春雄さんは吉本隆明さんにかんする資料の収集者であり、年譜作成者であり、著作集の編集・校訂をゆだねられた人物で、試行出版部の発行者だったと紹介されています。また、吉本さんと直接知り合うまでの経緯も解題に記載されています。その川上さんへの全書簡のほか、資料として吉本さん本人やそのご両親や友人に訪問取材した記録なども収録されています。付属の月報13は、山根貞男さんによる「ある世代の思い出」、田中和生さんの「文芸批評家から文人へ――書簡集刊行によせて」、ハルノ宵子さん「お気持ち」を掲載。次回配本は9月予定、第13巻(1972~1976年)で「はじめて外国の文学者たちを論じた『書物の解体学』と長くその資質にひかれて論じてきた『島尾敏雄』、その他の散文と詩を収録[単行本未収録二篇]」(全巻内容より)。

★『老子道徳経』は発売済。シリーズ「井筒俊彦英文著作翻訳コレクション」の第一回配本です。同コレクションは「『井筒俊彦全集』と併せて、今日にいたるまで世界で読み続けられている井筒俊彦の英文代表著作を、本邦初訳で提供し、井筒哲学の全体像をより克明に明らかにするもの」(特設サイトより)で、「日本語著作の空白の時代を埋める」(内容見本より)もの。全7巻全8冊の詳細や『老子道徳経』の目次詳細についても版元さんの特設サイトでご覧いただけます。『老子道徳経』の帯には中島隆博さんによる推薦文が掲載されていますが、それも特設サイトで読むことができます。凡例によれば底本は同出版会から2001年に刊行された『Lao-tzŭ:The Way and Its Virtue』で、「翻訳にあたり新たに原文を修正した部分がある。その異同などは適宜訳注に注記した」とのことです。本訳書には新たに訓読索引と事項索引が付されています。第2回配本は6月刊行予定、『クルアーンにおける神と人間――クルアーンの世界観の意味論』(鎌田繁監訳、仁子寿晴訳)とのことです。

+++

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

大航海時代の日本人奴隷――アジア・新大陸・ヨーロッパ』ルシオ・デ・ソウザ/岡美穂子著、中公叢書、2017年4月、本体1,400円、四六判並製208頁、ISBN978-4-12-004978-1
ジョルジュ・ペレック――制約と実存』塩塚秀一郎著、中公選書、2017年5月、本体2,600円、四六判並製456頁、ISBN978-4-12-110028-3
灰緑色の戦史――ドイツ国防軍の興亡』大木毅著、作品社、2017年5月、本体2,800円、46判上製400頁、ISBN978-4-86182-629-0
熟議民主主義の困難――その乗り越え方の政治理論的考察』田村哲樹著、ナカニシヤ出版、2017年5月、本体3,500円、A5判上製282頁、ISBN978-4-7795-1172-1

★『大航海時代の日本人奴隷』は発売済。カバー表4の紹介文は次の通り。「戦国時代の日本国内に、「奴隷」とされた人々が多数存在し、ポルトガル人が海外に連れ出していたことは知られていた。しかし、その実態は不明であり、顧みられることもほとんどなかった。ところが近年、三人の日本人奴隷がメキシコに渡っていたことを示す史料が見つかった。「ユダヤ教徒」のポルトガル人にたいする異端審問記録に彼らに関する記述が含まれていたのだ。アジアにおける人身売買はどのようなものだったのか。世界の海に展開したヨーロッパ勢力の動きを背景に、名もなき人々が送った人生から、大航海時代のもう一つの相貌浮かび上がる」。緒言にはこうあります。「我々〔著者〕がこの三人の「日本人奴隷」に関する記録に出会ったのは、マカオ、長崎、マニラを転々と暮らした「ユダヤ人」一家の異端審問裁判記録中であった。「ユダヤ人」とはいっても、国籍はポルトガル人で、さらには表面的にはカトリックのキリスト教徒であった。なぜ「ユダヤ教徒」のポルトガル人が、16世紀の長崎に住み、日本人を奴隷として連れ、アジア各地を転々としていたのか。それはアジアにおける人身売買と、多様な文化的アイデンティティを擁したイベリア半島社会の歴史が複雑かつ綿密に絡み合った結果に他ならない」(5頁)。目次も列記しておきます。緒言、はじめに、序章「交差するディアスポラ――日本人奴隷と改宗ユダヤ人商人の物語」、第一章「アジア」(Ⅰ:マカオ、Ⅱ:フィリピン、Ⅲ:ゴア)、第二章「スペイン領中南米地域」(Ⅰ:メキシコ、Ⅱ:ペルー、Ⅲ:アルゼンチン)、第三章「ヨーロッパ」(Ⅰ:ポルトガル、Ⅱ:スペイン)、おわりに、あとがき、参考文献、文献、注。あとがきによれば本書は、ポルトガルで出版されたルシオ・デ・ソウザ(Lúcio de Sousa, 1978-)の著書『16・17世紀の日本人奴隷貿易とその拡散〔Escravatura e Diáspora Japonesa nos séculos XVI e XVII〕』(NICPRI, 2014)の第一章と第二章を、吉田尚弘さんが翻訳し、著者の奥様でいらっしゃる岡美穂子さんが著者との調整のもと、日本で出版するにあたり、より理解しやすい内容と表現へと大幅に改稿したもの、とのことです。

★塩塚秀一郎『ジョルジュ・ペレック――制約と実存』はまもなく発売(5月8日頃)。カバー表4の内容紹介文は次の通りです。「ユダヤ系移民の子としてパリに生誕したペレックは、第二次世界大戦によって戦争孤児となり、想像を絶する人生の断絶を体験した。のち特異な言語遊戯小説の制作者となり、評価は歿後ますます高まっている。本書は、日常・自伝・遊戯・物語の四分類よりペレックの総合的読解に挑み、20世紀後半を彗星の如く駆け抜けた作家の魅力へと縦横に迫る」。目次を列記すると、はじめに、第1章「制約が語る――『煙滅』におけるリポグラムの意味」、第2章「制約下の自伝――『Wあるいは子供の頃の思い出』におけるフィクションと自伝」、第3章「制約と自由の相克――『人生 使用法』における諸プロジェクトの表象」、第4章「発見術としての制約――『さまざまな空間』はなぜ幸福な書物なのか」、おわりに――「大衆的な作家」、あとがき、注。ちなみに「リポグラム」とは「アルファベットの特定の文字を使わずに書く技法」(22頁)で、古代ギリシア以来の歴史があるそうです。ペレックには「リポグラムの歴史」という小文があります(酒詰治男訳、『風の薔薇(5)ウリポの言語遊戯』所収、書肆風の薔薇〔現・水声社〕、1991年、86~105頁)。周知の通りペレックの小説『煙滅』(水声社、2010年)はEを使わずに書かれており、それを塩沢さんはなんと、い段(いきしちにひみりゐ)を使わずにお訳しになっておられます。

★大木毅『灰緑色の戦史』は発売済。帯文はこうです。「シュリーフェン計画、電撃戦から、最後の勝利「ゼーロフ高地の戦い」まで、その“勝利”と“失敗”の本質から学ぶ。戦略の要諦、用兵の極意、作戦の成否。独自の視点、最新の研究、ドイツ連邦軍事文書館などの第一次史料の渉猟からつむがれる「灰緑色」の軍隊、ドイツ国防軍の戦史」。灰緑色はドイツ国防軍の軍服の色で、シンボルカラー。目次は以下の通りです。序「ドイツ国防軍にまつわる「神話」の解体」、第Ⅰ部「国防軍――その前史と誕生:第一次大戦 1939年」(第一章「軍事思想の相克」、第二章「総統と国防軍」)、第Ⅱ部「巨大なる戦場へ 1940-1944年」(第三章「閃く稲妻――電撃戦の時代」、第四章「ロシアのフォン・マンシュタイン」)、第Ⅲ部「鋼鉄軍の黄昏 1943-1945年」(第五章「ビヒモス陸に退く」、第六章「狼たちの落日」)、あとがき、註、主要参考文献、索引。作戦や戦線の数々を視覚化した作図の数々が圧巻です。

★田村哲樹『熟議民主主義の困難』はまもなく発売(5月15日頃)。田村哲樹(たむら・てつき:1970-)さんは名古屋大学大学院法学研究科教授でご専門は政治学・政治理論。複数のご著書がありますが、本書は『熟議の理由――民主主義の政治理論』(勁草書房、2008年)に続いて再び熟議民主主義(deliberative democracy)を論じたもの。序論によれば前著が「一定の包括的な構想を示そうとしたもの」で、今回の新著の主題は「熟議民主主義の困難」であり、その困難をもたらす阻害要因について論じられています。「本書の最終的な目的は、様々な阻害要因に対して、熟議民主主義の意義や可能性を擁護することである」(iii頁)。三部構成となっており(目次詳細は書名のリンク先をご参照ください)、第Ⅰ部「現代社会の状況への対応可能性」では「熟議では対応できないとされがちな現代社会の状況を取り上げ」、第Ⅱ部「問題としての思考枠組」では「熟議民主主義の、機能的に等価な代替案となり得る二つのもの〔情念、アーキテクチャ〕について検討」し、第Ⅲ部では「熟議民主主義に関する私たちの「思考枠組」こそが熟議の阻害要因となり得ると考え」、「思考枠組を転換し、より熟議民主主義の可能性を開くために三つの重要な問題〔親密圏、ミニ・パブリックス、自由民主主義〕を検討する」と。

+++

[PR]

by urag | 2017-04-30 23:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 04月 28日

注目新刊『HAPAX 7:反政治』夜光社、注目イベント@PGI

★江川隆男さん(訳書:ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』)
夜光社さんの思想誌『HAPAX』第7号が刊行されました。江川さんは「最小の三角回路について――哲学あるいは革命」(118₋130頁)を寄稿されておられます。

反政治 ― HAPAX 7
夜光社 2017年4月 本体1200円 四六判変形並製186頁 ISBN978-4-906944-12-5

目次:
相模原の戦争(HAPAX+鼠研究会)
人民たちの反政治(HAPAX)
魂の表式(入江公康)
ウンコがしたい(栗原康)
翻訳解題
エイリアンと怪物――『ダーク・ドゥルーズ』における革命(アンドリュー・カルプ)
残酷の政治について(『ホスティス〔Hostis〕』1号より)
残酷の政治についての五つのテーゼ(『ホスティス〔Hostis〕』2号より)
最小の三角回路について――哲学あるいは革命(江川隆男)
火墜論(混世博戯党)
Raw power is laughin' at you and me.(World's Forgotten Boy)
武器を取れ――大道寺将司の俳句(友常勉)

a0018105_15150097.jpg

+++

★星野太さん(著書:『崇高の修辞学』)
PGI(東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F)で2017年5月10日(水)から7月8日(土)にかけて開催される、濱田祐史さんの写真展「Broken Chord」に関連して行われるトークショーにご出演されます。

◎濱田祐史×星野太トークショー

日時:2017年 6月17日 (土) 16:00~
会場:PGI
定員:30 名
料金:500 円(要予約/当日お支払い下さい)

内容:金沢美術工芸大学美術科芸術学専攻講師の星野太氏(美学/表象文化論)をお招きし、”exposure”というキーワードをもとに本作「Broken Chord」を紐解いていくと共に、濱田氏の過去の作品や東欧に滞在した体験にも触れるトークショーを予定しております。

+++


[PR]

by urag | 2017-04-28 15:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)