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カテゴリ:本のコンシェルジュ( 841 )


2017年 02月 19日

注目新刊:坂口恭平『けものになること』河出書房新社、ほか

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けものになること
坂口恭平著、河出書房新社、2017年2月、本体1,700円、46判上製226頁、ISBN978-4-309-02547-6

★まもなく発売(2月23日予定)。いとうせいこうさんをして「ベケット!」と驚嘆せしめた前作『現実宿り』(2016年10月刊)に続き、最新作ではドゥルーズが降臨します。版元紹介文に曰く「ドゥルーズになった「おれ」は『千のプラトー』第10章を書き始めた。狂気と錯乱が渦巻きながら23世紀の哲学をうみだす空前の実験。『現実宿り』を更新する異才の大傑作」と。

★書き出しはこうです。「おれはドゥルーズだ。どう考えてもそうだ。見た目も知らなければ、彼がいつ死んだかも知らない。死んでいないかもしれない。しかし、明白なことがある。それはおれがドゥルーズであるということで、つまり死んだ男が、今、ここにいるのだ。わたしは、いつまでもそれが続くとは思えない。もう足の指先は幾分冷たくなっていて、小指の爪は跡形もない。それなのに、わたしは、おれがドゥルーズだと分かっていた。明確にそう認識していた」(3頁)。

★「おれは、わたしの体の反乱軍である。わたしはまだそこにはいない。わたしはまだおれに会っていない。おれは向っている。おれは一人で出て行った」(3~4頁)。「書くこと、それもまた加速である。書くことは己の体に針を刺している」(4頁)。「書くことは言語に麻薬を飲ませることだ。言語に呪術をかける魔術師よろしく、己の存在を消し、税務署から、戸籍から、家族から、共同体から、国家から完全に脱獄することだ。つまり、捕まったとしても、わたしにはわからない。完全に麻薬体となったわたしはその意味がわからない。わたしは一本のサボテンである。無数のサボテンである。言語を攪乱する体である」(5頁)。

★「わたしは二十八冊の文献をもとにこの本を書いた。しかし、その本は読んですらいない。つまり、本は読むものではなく、言語を錯乱にいたらせるための魔術師の薬草の一つである。それは干からびた薬草。薬草に見えないただの草。しかし、そこに死はない。われわれもまた死なないのだが、それは肉体が滅びないのではなく、草のように死なない。本は、一本の草、無数の草、見たことのない草である。名前をつけることもできない草」(6~7頁)。『千のプラトー』の第十章『けものになること』を突然書く羽目になった(8頁)という著者の筆致は、保坂和志さんを次のように触発しています。

★「この言葉の激流はなんだ?音楽?ダンス?それも空き缶の中で。あらゆる文献?部屋の中には虎までいた!稲妻?切り落とした自分の中指?焼きもせずそれを食べた。白と黒の中の極彩色?ガタリの持っていた小さな杖?病原菌そのもの。/いや、これは小説だ。信じがたいことにここには言葉しか使われていない!言葉がすべてをやっている。これは小説の奇跡だ」(帯文より)。「あらゆる生命の予感のままでいること」(213頁)を目論んだ本書は、すでに発売前から奇書です。廃位された、とてつもなく(分裂が)速いために止まって見える、幻の王。河出さんのすごいところはドゥルーズの訳書や研究書を多数刊行している守護者であると同時に、それらを訓詁学の閉鎖空間に封じ込めてほとんど誰も入り込めないようにするのではなく、むしろ本作のような思いもよらない通気口を設置して、内と外を爆音で共鳴させる共謀者であることを厭わないというスタンスです。

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★ここ最近ではさらに以下の新刊との出会いがありました。

新装版 生命と現実――木村敏との対話』木村敏/檜垣立哉著、河出書房新社、2017年2月、本体2,400円、46判上製226頁、ISBN978-4-309-24794-6
高橋和巳――世界とたたかった文学』河出書房新社編集部編、河出書房新社、2017年2月、本体1,900円、A5判並製240頁、ISBN978-4-309-02549-0
理性の起源――賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ』網谷祐一著、河出ブックス、2017年2月、本体1,700円、B6判並製240頁、ISBN978-4-309-62501-0
貧困と地域――あいりん地区から見る高齢化と孤立死』白波瀬達也著、中公新書、2017年2月、本体800円、新書判並製240頁、ISBN978-4-12-102422-0
欧州周辺資本主義の多様性――東欧革命後の軌跡』ドロテー・ボーレ/ベーラ・グレシュコヴィッチ著、ナカニシヤ出版、2017年2月、本体4,800円、A5判上製420頁、ISBN978-4-7795-1127-1
【増補新版】ポスト・モダンの左旋回』仲正昌樹著、作品社、2017年1月、本体2,200円、46判上製352頁、ISBN978-4-86182-617-7

★『けものになること』のほかの河出さんの今月新刊には、同じく23日発売予定で、木村敏さんと檜垣立哉さんとの対談本『生命と現実』の新装版や、アンソロジー『高橋和巳』があります。『生命と現実』の初版は2006年。新装版刊行にあたり、檜垣さんによる「『生命と現実』の10年後」という一文が新たに巻末に加えられています。『高橋和巳』では、三島由紀夫と高橋和巳との対談「大きなる過渡期の論理」(初出:「潮」1969年11月号)が再録され、今なお不気味なアクチュアリティを放っています。作品ガイドや年譜も充実。河出文庫では『わが解体』『日本の悪霊』『我が心は石にあらず』が近刊予定だそうです。また、今月第101弾に突入した河出ブックスでは、科学哲学と生物学哲学がご専門の網谷祐一さんによる『理性の起源』が発売済です。戸田山和久さんが「痛快作」と絶賛されている本書では、進化生物学とそれをめぐる科学哲学の観点から理性の起源と進化について分析されています。

★中公新書の新刊『貧困と地域』は大阪の釜ヶ崎をめぐるエリアスタディーズ。著者の白波瀬達也(しらはせ・たつや:1979-)さんは関西学院大学准教授で、著書に『宗教の社会貢献を問い直す』(ナカニシヤ出版、2015年)があるほか、共編著に『釜ヶ崎のススメ』(洛北出版、2011年)があります。今回の新著は「地区指定から半世紀以上が経過し、地域の様相は大きく変化している」ものの「貧困が集中している現実は変わっていない」というあいりん地区(釜ヶ崎)の検証を通じて「「貧困の地域集中」とそれによって生じた問題を論じるものだ」とまえがきにあります。「対策を講じても、また新たな問題が生じることも頻繁にある。絶対的な正解やわかりやすい正義と悪は存在せず、現実は複雑かつ混沌としたものだ。その現実にできる限り目を凝らして考えた成果が本書である」(v頁)。

★ボーレ/グレシュコヴィッチ『欧州周辺資本主義の多様性』は『Capitalist Diversity on Europe's Periphery』(Cornell University Press, 2012)の全訳。巻頭の「日本語版への序文」によれば、ホール/ソスキス『資本主義の多様性――比較優位の制度的基礎』(原著『Varieties of Capitalism』2001年; 遠山弘徳ほか訳、ナカニシヤ出版、2007年)が提示した問題圏に中東欧を適用したもので、「いかに資本主義がポスト社会主義諸国の中で構築され安定してきたか」が明らかにされています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★『【増補新版】ポスト・モダンの左旋回』の親本は情況出版より2002年に刊行。増補新版にあたり、旧版全九章に加えて、「情況」誌に2003年から2004年にかけて発表された五篇の論考と、「増補新版への前書き」「増補新版へのあとがき」が収められています。旧版の目次はこちらをご覧いただくとして、以下には追加された五章の章題を列記しておきます。第十章「『言葉と物』の唯物論」、第十一章「ドゥルーズのヒューム論の思想史的意味」、第十二章「戦後左翼にとっての「アメリカ」」、第十三章「加藤典洋における「公共性」と「共同性」」、第十四章「『ミル・プラトー』から『〈帝国〉』へ――ネグリの権力論をめぐる思想史的背景」。なお、「2015年以降の政治情勢を受けての補遺」と銘打たれ、第十二章には「トランプという逆説」、第十三章には「21世紀の加藤典洋」と、それぞれ新たな節が書き加えられています。

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by urag | 2017-02-19 17:22 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 02月 13日

注目新刊:デリダ『嘘の歴史』とロレッドのデリダ論、ほか

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。

★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
★西山雄二さん(訳書:デリダ『条件なき大学』、共訳:『ブランショ政治論集』)
『Histoire du mensonge : Prolégomènes』(Galilée, 2012)の訳書が刊行され、一昨年来日を果たしたフランスの哲学者パトリック・ロレッド(Patrick Llored)さんのデリダ論『Jacques Derrida : Politique et éthique de l'animalité』(Sils Maria, 2013)の共訳書もまもなく発売されます。それぞれの目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ロレッドさんのデリダ論は西山さんの巻末解説によれば「日本語版のために本文に微修正を施し、後書きを追加しているので、本書は独自編集版となっている」とのことです。

嘘の歴史 序説
ジャック・デリダ著 西山雄二訳
未來社 2017年2月 本体1,800円 四六判上製106頁 ISBN978-4-624-93270-1

カバー紹介文より:晩年のデリダが1997年におこなった講演録。プラトン、アリストテレス、ルソー、カント、ニーチェ、ハイデガー、フロイトを参照しつつ、時代や文化によってことなる嘘の概念の歴史を問い、とりわけアーレントとコイレのテクストを読解する。意識的に嘘をつくことと知らずに間違うことの差異を明確にし、嘘の概念を脱構築的に問い直す。村山富市元首相の1995年の日本軍の戦争犯罪を認めた戦後50年談話や、ヴィシー政府の戦争中のユダヤ人狩りという犯罪的行為を認めたシラク元大統領の発言などを具体的に論じながら、現代の政治的な嘘をアクチュアルに考察する味読すべき小著。


ジャック・デリダ――動物性の政治と倫理
パトリック・ロレッド著 西山雄二/桐谷慧訳
勁草書房 2017年2月 本体2,200円 四六判上製160頁 ISBN978-4-326-15444-9

帯文より:近代政治の主権概念は人間と動物の区分と不可分であり、政治は常に人間に固有なものとされてきた。西欧思想においては、人間と人間ではない生きものたちの政治関係の発明が回避され、獣と主権者のアナロジーによって動物たちに日々ふるわれる根底的な暴力が見えなくされてきたのだ。デリダが人生の最後に発明した「動物-政治」概念から、「民主主義的な主権」の問いが開かれる。いかにしてデリダは動物たちを来たるべき民主主義へ参入させるのか。

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★岡本源太さん(著書:『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』)
★近藤和敬さん(著書:『カヴァイエス研究』、訳書:カヴァイエス『論理学と学知の理論について』)
2月3日発売の『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=人類学の時代』に岡本さんのご論考「イメージにおける自然と自然の「大分割」を超えて――イメージ論の問題圏(三)」(317-325頁)が掲載されました。岡本さんの不定期寄稿「イメージ論の問題圏」はこれまでに「現代思想2013年1月号 特集=現代思想の総展望2013」に「囚われの身の想像力と解放されたアナクロニズム――イメージ論の問題圏」が、そして「現代思想2015年1月号 特集=現代思想の新展開2015――思弁的実在論と新しい唯物論』に「眼差しなき自然の美学に向けて――イメージ論の問題圏(二)」が掲載されています。

また、2月14日発売の『現代思想2017年3月臨時増刊号 総特集=知のトップランナー50人の美しいセオリー』では、近藤さんのご論考「ある理論が美しいと言われるとき、その真の理由は何でありうるか」(226-232頁)が掲載されました。同特集号では、ジュンク堂書店の福嶋聡さんによる「〈未来の自分〉と読書」(242-245頁)も掲載されています。

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by urag | 2017-02-13 16:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 02月 12日

注目新刊:2017年1月~3月

通常の週末記事で手一杯で、言及できてない書目のフォローをここしばらくできていませんでしたが、今年からは少しでも多くの書名を留めておくよう心掛けたいと思います。とはいえ今回できたのは、アマゾン・ジャパンの「人文・思想」分野とその関連書2か月分強の見直しだけで、他分野全体を通覧できてはいません。往々にして「これは」という発見は他分野のものだったりするので、本当は全分野の新刊一覧にしっかり目を通すべきですが、昔ネットでも公開されていたTRCの週刊新刊全点案内のような便利な情報源が見当たらないのが残念です。アマゾンの「人文・思想」分野には学参に移してもらった方がいいような書目や、似たようなハウツー電子書籍も多数見受けるので、そういう中から選別していくのがしんどいですね。

★2017年1月既刊

0105『アレント入門』中山元著、ちくま新書
0106『日本十二支考――文化の時空を生きる』濱田陽著、中公叢書
0110『本屋、はじめました――新刊書店Title開業の記録』辻山良雄著、苦楽堂
0110『キリストを生きる』トマス・ア・ケンピス著、山内清海訳、文芸社セレクション
0110『現代語訳 蓮華面経』仁科龍著、雄山閣
0110『「革命」再考――資本主義後の世界を想う』的場昭弘著、角川新書
0112『質的研究法』G・W・オルポート著、福岡安則訳、弘文堂
0112『ジェンダー史とは何か』ソニア・O・ローズ著、長谷川貴彦/兼子歩訳、法政大学出版局
0113『共時性の深層――ユング心理学が開く霊性への扉』老松克博著、コスモスライブラリー
0114『われわれはいかに働き どう生きるべきか――ドラッカーが語りかける毎日の心得、そしてハウツー』P・F・ドラッカー述、上田惇生訳、ダイヤモンド社
0120『本能の現象学』ナミン・リー著、中村拓也訳、晃洋書房
0120『カント 美と倫理とのはざまで』熊野純彦著、講談社
0120『カント哲学の奇妙な歪み――『純粋理性批判』を読む』冨田恭彦著、岩波現代全書
0124『社史の図書館と司書の物語――神奈川県立川崎図書館社史室の5年史』高田高史著、柏書房
0124『アーカイヴの病〈新装版〉』ジャック・デリダ著、福本修訳、法政大学出版局
0125『生の悲劇的感情〈新装版〉』ウナムーノ著、神吉敬三/佐々木孝訳、法政大学出版局
0125『キリスト教教父著作集 第2巻I エイレナイオス1 異端反駁1』大貫隆訳、教文館
0125『泳ぐ権力者――カール大帝と形象政治』ホルスト・ブレーデカンプ著、原研二訳、産業図書
0125『ダンヒル家の仕事』メアリー・ダンヒル著、平湊音訳、未知谷
0125『ローカルブックストアである――福岡 ブックスキューブリック』大井実著、晶文社
0125『「本をつくる」という仕事』稲泉連著、筑摩書房
0126『岩波茂雄文集 第1巻 1898-1935年』植田康夫/紅野謙介/十重田裕一編、岩波書店
0126『正常と病理〈新装版〉』ジョルジュ・カンギレム著、滝沢武久訳、法政大学出版局
0126『世界宗教の経済倫理――比較宗教社会学の試み 序論・中間考察』マックス・ウェーバー著、中山元訳、日経BPクラシックス
0128『学生との対話』小林秀雄著、国民文化研究会/新潮社編、新潮文庫

一覧をローラーするまで『キリスト教教父著作集 第2巻I エイレナイオス1 異端反駁1』(大貫隆訳、教文館)に気づいていなかったのは不覚でした。エイレナイオス『異端反駁』はこれまでに第3分冊と第4分冊が小林稔訳で1999年に刊行されましたがその後しばらく続刊が途絶えていました。大貫先生が訳者を務められているということで、今後はさほど待たずに完結しそうな気がします。

文芸社セレクションは文庫サイズのシリーズで、ブラヴァツキーの『シークレット・ドクトリン』第三巻を昨年刊行したりして、要チェックなレーベルです。今般もトマス・ア・ケンピスの新訳(『キリストを生きる』山内清海訳)が発売されていて驚きました。雄山閣の単行本、仁科龍『現代語訳 蓮華面経』は同社の『大蔵経全解説大事典』(1998年、新装版2016年)よりの抜粋とのこと。同事典は税込45,360円なので、こうした切り売りは悪い感じはしません。

『泳ぐ権力者――カール大帝と形象政治』(原研二訳、産業図書)はブレーデカンプの8点目の訳書。初期の訳書である『古代憧憬と機械信仰――コレクションの宇宙』(藤代幸一/津山拓也訳、法政大学出版局、1996年)が品切のようですが、ブレーデカンプの知名度や業績から言ってそろそろ文庫の仲間入りを果たしても良いような気がします。


★2017年2月既刊
0201『絵画の歴史――洞窟壁画からiPadまで』デイヴィッド・ホックニー/マーティン・ゲイフォード著、木下哲夫訳、青幻舎
0201『シュタイナーのアントロポゾフィー医学入門』日本アントロポゾフィー医学の医師会監修、ビイングネットプレス
0203『ドイツ啓蒙と非ヨーロッパ世界――クニッゲ、レッシング、ヘルダー』笠原賢介著、未來社
0206『天災と日本人――地震・洪水・噴火の民俗学』畑中章宏著、ちくま新書
0206『カンギレムと経験の統一性――判断することと行動すること 1926-1939年』グザヴィエ・ロート著、田中祐理子訳、法政大学出版局
0206『『法華経釈問題』翻刻研究――翻刻校訂・国訳〔新版〕』『法華経釈問題』翻刻研究会 著、ノンブル社
0206『メディアの歴史――ビッグバンからインターネットまで』ヨッヘン・ヘーリッシュ著、川島建太郎訳、法政大学出版局
0207『アナトミカル・ヴィーナス――解剖学の美しき人体模型』ジョアンナ・エーベンステイン著、布施英利監修、グラフィック社
0209『芸術の終焉のあと――現代芸術と歴史の境界』アーサー・C・ダントー著、山田忠彰監訳、河合大介/原友昭/粂和沙訳、三元社

ホックニーの『絵画の歴史――洞窟壁画からiPadまで』は同版元のホックニーの既刊書『秘密の知識』(木下哲夫訳、青幻舎、2006年;普及版2010年)が品切になっていることを考えると早めに購入しておくのがいいのかもしれません。同じく芸術の分野ではダントーの『芸術の終焉のあと』は見逃せない一書(原著は1997年刊)。さらに『メディアの歴史』はキットラーやボルツに並ぶドイツ・メディア論の大家ヘーリッシュ(Jochen Hörisch, 1951-)の待望の初訳。このところ書店人や司書、出版人の新刊は色々と出ておりそれぞれ注目すべきなのですが、本書は特に業界人必読と強く推すべき重厚な一冊です。


★2017年2月刊行予定
0214『アート・パワー』ボリス・グロイス著、石田圭子/齋木克裕/三本松倫代/角尾 宣信訳、現代企画室
0214『ソシオパスの告白』M・E・トーマス著、高橋祥友訳、金剛出版
0214『セルバンテス全集 第2巻 ドン・キホーテ 前篇』岡村一訳、水声社
0215『キリスト教神学で読みとく共産主義』佐藤優著、光文社新書
0216『プルーストと過ごす夏』アントワーヌ・コンパニョン/ジュリア・クリステヴァ/ほか著、國分俊宏訳、光文社
0217『イスラーム入門――文明の共存を考えるための99の扉』中田考著、集英社新書
0217『アレフ』J・L・ボルヘス著、鼓直訳、岩波文庫
0222『芸術の言語』ネルソン・グッドマン著、戸澤義夫/松永伸司訳、慶應義塾大学出版会
0222『〈新装〉増補修訂版 相互扶助論』ピョートル・クロポトキン著、大杉栄訳、同時代社
0222『オネイログラフィア――夢、精神分析家、芸術家』ヴィクトル・マージン著、斉藤毅訳、書肆心水
0222『エックハルト〈と〉ドイツ神秘思想の開基――マイスター・ディートリッヒからマイスター・エックハルトへ』長町裕司著、春秋社
0227『ドゥルーズと多様体の哲学――二○世紀のエピステモロジーにむけて』渡辺洋平 著、人文書院
0227『主体の論理・概念の倫理――二〇世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義』上野修/米虫正巳/近藤和敬編、以文社
0228『義科『廬談』摩訶止觀――論草3』天台宗典編纂所編、春秋社
0228『アフリカ美術の人類学――ナイジェリアで生きるアーティストとアートのありかた』緒方しらべ著、清水弘文堂書房
0228『無神論と国家』坂井礼文著、ナカニシヤ出版
0228『メルロ=ポンティ哲学者事典(第3巻)歴史の発見・実存と弁証法・「外部」の哲学者たち』モーリス・メルロ=ポンティ編著、加賀野井秀一/伊藤泰雄/本郷均/加國尚志監修・翻訳、白水社

ホックニーやダントーの新刊に続いて芸術論関連ではグロイス『アート・パワー』やグッドマン『芸術の言語』、マージン『オネイログラフィア』と、どんどん話題書が続くことになり、活況を呈するでしょう。水声社版『セルバンテス全集』はアマゾンでは扱いがありませんが、まさか全集が刊行開始とは驚きです。哲学系では全3巻別巻1予定の『メルロ=ポンティ哲学者事典』に注目。4月には第2巻、6月には第1巻、8月に別巻の刊行が予定されています。基礎文献です。


★2017年3月刊行予定
0301『世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話』ボブ・エクスタイン著、藤村奈緒美訳、 エクスナレッジ
0308『語録 要録』エピクテトス著、中公クラシックス
0311『社会問題としての教育問題――自由と平等の矛盾を友愛で解く社会・教育論』ルドルフ・シュタイナー著、今井重孝訳、イザラ書房
0311『アルキビアデス クレイトポン』プラトン著、三嶋輝夫訳、講談社学術文庫
0314『グリム兄弟言語論集――言葉の泉』ヤーコプ・グリム/ヴィルヘルム・グリム著、千石喬/高田博行/木村直司/福本義憲訳、ひつじ書房
0315『幻覚V―器質・力動論2』アンリ・エー著、影山任佐/阿部隆明訳、金剛出版
0317『シュタイナー 根源的霊性論――バガヴァッド・ギーターとパウロの書簡』ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳、春秋社
0322『〈世界史〉の哲学 近世篇』大澤真幸著、講談社
0330『ラカン 真理のパトス』上尾真道著、人文書院

まだリリースされている情報が少ないため点数も少ないものの、『グリム兄弟言語論集』と、エー『幻覚』第V巻は押さえたいところです。2点とも高額本ですが、品切になればいっそう高値がつくことは目に見えています。『幻覚』は全5巻完結で、品切になっている既刊書はオンデマンド版が出るようです。ほっとされる読者もいらっしゃるのではないかと想像します。
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by urag | 2017-02-12 23:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 02月 09日

注目新刊:ルフォール『民主主義の発明』勁草書房

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弊社出版物でお世話になっている訳者の皆さんの最近のご活躍をご紹介します。

★渡名喜庸哲さん(共訳:サラ-モランス『ソドム』)
クロード・ルフォール(Claude Lefort, 1924-2010)の『L'invention democratique』(Fayard, 1981/1994)の共訳書を上梓されました。帯文に曰く「民主主義はまだ発明されていない。全体主義を総括しながら、現代民主主義の理論を打ち立てる、原題フランスの政治哲学者ルフォールの主著」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。あとがきによれば「本書のきっかけとなったのは、〔・・・訳者のうち数名がパリのカフェで集った際に〕フランス政治哲学で何かまだ訳されていない古典的な著作を訳そうと盛り上がったことを機縁にしている」とのことです。ルフォールの訳書でもっとも古いものはサルトルとの論戦を一冊にまとめた『マルクス主義論争』(白井健三郎訳、ダヴィッド社、1955年)ですが、その後刊行された訳書の数は片手で足りる少なさだっただけに、今回のような発掘は非常に有益です。

渡名喜さんは巻末解説「クロード・ルフォールの新しさと古さ」で次のように述べておられます。「「民主主義」および「全体主義」についての今なお色あせない根源的な考察がルフォールにはあるはずだ。〔・・・〕ルフォールが問題にしているのは、「共産主義」対「自由主義」という構図そのものがもはや効力を有さない「ポスト共産主義」(iv頁)の社会だということは忘れないようにしよう」(390頁)。

民主主義の発明――全体主義の限界
クロード・ルフォール著 渡名喜庸哲/太田悠介/平田周/赤羽悠訳
勁草書房 2017年1月 本体5,200円 A5判上製432頁 ISBN978-4-326-30254-3

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★竹峰義和さん(共訳書:シュティーグラー『写真の映像』)
東京大学出版会のPR誌「UP」2017年2月号にご論考「投壜通信の宛先――フランクフルト学派の思想家たちの亡命期の手紙」(1~6頁)を寄稿されています。「われわれのような後世の読者が、みずからに宛てられたわけではないテクストを、あたかも海岸に漂着した「投壜通信」を開封するかのように紐解き、読み進めていくとき、そこにたまたま書きつけられていなければ永遠に失われていたはずの過去の生が刹那的に息を吹き返す。「過去の救済」とはフランクフルト学派の思想における鍵語であるが、そこで志向されているのは、かつて在りしものを、いまでは失われてしまったものを、追想というかたちでよみがえらせようとするような、祈りにも似た営みなのである」(6頁)。

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by urag | 2017-02-09 16:51 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 02月 05日

注目新刊:ブルデュー『男性支配』、ほか

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男性支配』ピエール・ブルデュー著、坂本さやか/坂本浩也訳、藤原書店、2017年1月、本体2,800円、四六上製240頁、ISBN978-486578-108-3
キャリバンと魔女――資本主義に抗する女性の身体』シルヴィア・フェデリーチ著、小田原琳/後藤あゆみ訳、以文社、本体4,600円、四六判上製528頁、ISBN978-4-7531-0337-9
なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか――人間の心の芯に巣くう虫』シェルドン・ソロモン/ジェフ・グリーンバーグ/トム・ピジンスキー著、大田直子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2017年2月、本体2,200円、46判並製280頁、ISBN978-4-7726-9554-1
チャムパ王国とイスラーム――カンボジアにおける離散民のアイデンティティ』大川玲子著、平凡社、2017年2月、本体5,000円、A5判上製248頁、ISBN978-4-582-70354-2

複数の新刊をまとまりとして見ることで、人文書と現代とが響き合う「今」が見えてくることがあります。自分自身や自集団の価値観から他者を排除することを正当化するような強弁がまかり通る危険性に曝されつつある現代において、支配的思想を歴史的に再検証することは一種の「ワクチン」として非常に重要です。ラルフ・キーズが言うところの「ポスト・トゥルースの時代」(『The Post-truth Era: Dishonesty And Deception In Contemporary Life』St. Martins Press, 2004)が、米国の新政権の誕生によっていよいよ顕在化し始めています。もうひとつの世界の可能性を示唆してきたオルタナティヴという言葉がもはや左派の専売特許ではなくなったこんにち、コンウェイ大統領顧問が言う「オルタナティヴ・ファクツ」や、バノン首席戦略官が与してきた「オルト・ライト」が言論の最前線で影響力を発揮し、皮肉にもオーウェルのディストピア小説『1984』がベストセラーに躍り出ています。

日本においても政治やマスコミ、市民運動や一般企業に至るまで右傾化の懸念が年々深刻になっているのは周知の通りです。米国ほどではないにせよ、『1984』をはじめとするオーウェルの作品や、ハクスリーの『素晴らしい新世界』が日本でも再評価される機運が高まるかもしれません。すでにコーナーづくりやフェアの準備を始めている書店さんもあると聞きます。以下にご紹介する書籍のいくつかは、長い目で見た人間社会の弱点を明らかにするのに役立つと思われます。

ここ最近ではジェンダー論やフェミニズム方面で注目新刊が続いています。ブルデュー『男性支配』の原著は1998年刊。「男性的な社会弁護論は、支配関係を、生物学的な自然のなかに組み込むことによって正当化するのだが、その生物学的な自然自体が、自然化された社会的構築物なのである」(41頁)と教えます。「男らしさとは、きわめて関係的な観念であり、〔・・・〕何よりも自己自身のなかの女性的なものに対する一種の恐怖のなかで構築されている観念なのである」(80頁)とも。フェデリーチ『キャリバンと魔女』の原著は2004年刊。「封建制から資本主義への「移行」を女性、身体、そして本源的蓄積という観点から再検討する」(14頁)もの。「資本主義の書くには、契約による賃金労働と奴隷状態の間の共生関係だけでなく、それとともに、労働力の蓄積と破壊という弁証法的対立も存在する。そのために、身体、労働、生命によってもっとも大きな犠牲を強いられたのは、女性であった」(26頁)とフェデリーチは指摘します。フェミニズム、フーコー、マルクス主義の諸理論との交差は、書棚づくりや芋づる式読書ののヒントになるはずです。

ソロモンほか『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか』の原書は2015年刊。原題は「果心の虫――人生における死の役割」。心理学者三氏による「恐怖管理理論」を明かしたもので、自尊心や偏見の昂進や他者嫌悪の裏に潜む恐怖の心的メカニズムを鋭く分析しています。死の恐怖こそが人間の行動に大きな影響を及ぼしている、と暴く本書のユニークさは非常に説得的です。大川玲子『チャムパ王国とイスラーム』は「カンボジアのチャム人の宗教文化であるイスラームについて論じたもの」で「このテーマを論じた日本語著作としては初めて」(18頁)だそうです。チャム人は、2世紀の歴史資料に名を留め、19世紀前半にヴェトナムによって滅ぼされたチャムパ(占城)王国の末裔。東南アジアのムスリム史の興味深い一面を学べます。

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このほか、新訳や新装版、展覧会図録の注目新刊をご紹介します。

テクストの楽しみ』ロラン・バルト著、鈴村和成訳、みすず書房、2017年1月、本体3,000円、四六判上製184頁、ISBN978-4-622-08566-9
[新装版]星と人間──精神科学と天体』ルドルフ・シュタイナー著、西川隆範編訳、風濤社、2017年1月、本体2,200円、四六判上製216頁、ISBN978-4-89219-427-6
アドルフ・ヴェルフリ――二萬五千頁の王国』アドルフ・ヴェルフリ画、服部正監修、国書刊行会、2017年1月、本体2,500円、AB判上製232頁、ISBN978-4-336-06141-6

バルト『テクストの楽しみ』は原著が1973年刊、初訳は沢崎浩平訳『テクストの快楽』で1977年にみすず書房から刊行され、99年に第15刷を数えるロングセラーでした。46の断章から成る比較的に親しみやすい本で、「理論から自伝への回帰を徴づけたバルト後期の代表作」(帯文より)。シュタイナー『星と人間』は2001年に刊行されたものの新装版で編訳者はしがきによれば「シュタイナーが星々の性質について解き明かした幾多の講義のなかから基本的な」9篇の講義を訳出したものです。全354巻という膨大なシュタイナー全集(スイス、ルドルフ・シュタイナー出版社)の規模を考えると今後もシュタイナーの訳書は増えていくに違いありません。『アドルフ・ヴェルフリ』は日本初となる大規模個展「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」の公式図録。図録だけあって豪華な造本の割には非常に安く、お買い得です。2017年1月11日~2月26日まで兵庫県立美術館、3月7日から4月16日まで名古屋市美術館、4月29日から6月18日まで東京ステーションギャラリーにて開催。曼荼羅と楽譜を融合させたような特異な作品群は見る者を別世界に引きずり込む魔力を湛えています。自伝的旅行記『揺りかごから墓場まで』だけでも全45冊2万5千頁に及ぶという膨大な作品群のうち、初期のドローイングから最晩年作まで74点をオールカラーで収録。圧倒的な秩序と圧倒的な自由が共存する驚異的な作品世界を垣間見ることができる、待望の一冊です。

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by urag | 2017-02-05 21:40 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 29日

注目新刊:『現代思想の転換2017』『コミュニズムの争異』『政治の理論』、ほか

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現代思想の転換2017――知のエッジをめぐる五つの対話』篠原雅武編、人文書院、2017年1月、本体1,800円、4-6判並製208頁、ISBN978-4-409-04109-3
コミュニズムの争異――ネグリとバディウ』アルベルト・トスカーノ著、長原豊訳、航思社、2017年1月、本体3,200円、46判上製308頁、ISBN978-4-906738-21-2
フレイマー・フレイムド』トリン・T・ミンハ著、小林富久子+矢口裕子+村尾静二訳、水声社、2016年12月、水声社、本体4,000円、四六判上製407頁、ISBN978-4-8010-0206-7
十九世紀フランス哲学』フェリックス・ラヴェッソン著、杉山直樹+村松正隆訳、知泉書館、2017年1月、本体6,500円、菊判上製440頁、ISBN978-4-86285-247-2

★『現代思想の転換2017』は人文書院のウェブサイト上で連載された4本の対談「いま、人文学の本を書くとは」に新たな1本を加えて1冊としたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。編者の篠原さんは中村隆之さん(中村さんは「不透明なものを訳す」という追記も寄稿しておられます)、小泉義之さん、藤原辰史さん、千葉雅也さんと対談し、さらにティモシー・モートンさんにもインタヴューしています。モートンさんへのインタヴューは篠原さんが先月上梓した『複数性のエコロジー』(以文社、2016年12月)にも別のものが付録として掲載されており、すでに目にした方もいらっしゃるかと思います。『現代思想の転換2017』に収められた諸篇は篠原さんが「歴史学、哲学、文学という、人文学の基礎にかかわる人たちに、研もので、究をおこなううえでのモチベーションを、新年を、率直に聞きたいと考え」て行ったものだ、と巻頭の「はじめに」には書かれています。また、巻末の「インタヴューを終えて」ではこう書かれています。「私は、このインタヴューをする前、現在は、先行き不透明で暗い時代だと考えていた。「唯ぼんやりした不安」に強く苛まれていた。終えてみた今の気分を率直にいうと、不安はわずかに薄れてきて、新しいことが始まっている、もっと楽に構えていいと思えるようになってきた。〔・・・〕いま始まりつつあるのは、喪失と崩壊を本当に埋め合わせようとする機運ではないか。〔・・・〕私はこのインタヴューをつうじて、新しい思想、新しい人文学が、すでに始まっていることを感じ取ったということだけはいっておきたい」。

★『コミュニズムの争異』はまもなく発売。日本オリジナル編集の論文集で、帯文によれば、自らの師であるネグリとバディウの理論をめぐる批判的入門書とのことです。今回が初訳となるトスカーノ(Alberto Toscano, 1977-)はロンドン大学コールドスミス校で社会学を講じており、バディウやネグリ、アリエズらの著書の英訳のほか、『生産の劇場』『ファナティシズム』などの自著があり、マルクス主義の新たな再生を模索する「歴史的唯物論」誌の編集委員を務めています。『コミュニズムの争異』にはネグリ論が3編、バディウ論が4編おさめられています。目次明細は近く版元サイトで公開されるものと思われます。書き下ろしの序文「係争のもとにあるさまざまなコミュニズム」でトスカーノが綴った次の言葉が印象的です。「僕らの手近にはやや妥協的な別種のコミュニズム哲学があったことも確かだ。古典的なマルクス主義的展望の数知れない反復は言うまでもないが、アガンベン、ナンシー、デリダの哲学がそうである。けれども、当時、コミュニズムの釈明なき肯定を哲学の必要性の等しく「純真な」強調に、より精確には、(単に)歴史的に積み上がった思想の身体-遺体としての哲学ではなく一箇の能動的実践としての哲学の必要性の強調に、結びつけていた思想家は、ネグリとバディウだけだったのである」(8~9頁)。

★『フレイマー・フレイムド』は叢書「人類学の転回」の第6弾。『Framer Framed』(Routledge, 1992)の全訳です。ヴェトナム出身でアメリカで活躍する思想家・映像作家であるトリン・ミンハ(Trinh T. Minh-ha, 1952-)の4つ目の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。映像作品三作(「ルアッサンブラージュ」1982年、「ありのままの場所――生きることは円い」1985年、「姓はヴェト、名はナム」1989年)の台本や、インタヴュー9本を収録しています。既訳書と異なり、映像作家としてのトリンに焦点を当てた本で、待望久しかった刊行です。原書とは判型こそ違いますが、多数掲載されていた図版は訳書でもすべて収められているようです。共訳者の小林富久子さんはこれまでもトリンの著書の翻訳に携わってこられており、『月が赤く満ちる時』の上梓から数えて20年以上貢献されています。本書の翻訳を思い立ったのは原著刊行より間もない頃と言いますから、四半世紀以上の献身と言うべきでしょう。

★『十九世紀フランス哲学』は発売済。『La Philosophie en France au XIXe siècle』(Hachette, 1867)の全訳です。ラヴェッソン(Félix Ravaisson, 1813-1900)の単独の訳書は実に『習慣論』野田又夫訳、岩波文庫、1938年;原著『De l'habitude』1838年)以来のもので、約80年ぶりの刊行に驚きを禁じえません。ラヴェッソンがベルクソンに影響を与えていることは良く知られているはずですが、19世紀ヨーロッパの思想家で日本人が思い浮かべるのはヘーゲル、マルクス、ディルタイ、ニーチェなどドイツの巨星たちであり、フランスの思想家たちについてはあまり多くを知らなかったと思われます。本書はその欠落を埋めてくれるものであり、人物小事典ともなっている巻末の人名索引を含め、特筆すべき労作と呼ぶべき成果です。内容紹介や目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

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★このほか以下の新刊との出会いがありました。特に稲葉振一郎さんの『政治の理論』は先述の『現代思想の転換2017』や『コミュニズムの争異』との対比において非常に示唆的です。稲葉さんの前作『宇宙倫理学入門』や篠原さんの『複数性のエコロジー』などの既刊書と合わせて、人文知を問い直し活気づける必読書となっています。

日本批評大全』渡部直己著、河出書房新社、2017年1月、本体7,000円、46判上製644頁、ISBN978-4-309-02534-6
青年の主張――まなざしのメディア史』佐藤卓己著、河出ブックス、2017年1月、本体1,800円、B6判並製440頁、ISBN:978-4-309-62500-3
政治の理論――リベラルな共和主義のために』稲葉振一郎著、中公叢書、2017年1月、本体1,700円、四六判並製320頁、ISBN978-4-12-004935-4
解離の舞台――症状構造と治療』柴山雅俊著、金剛出版、2017年1月、本体4,200円、A5判上製320頁、ISBN978-4-7724-1531-6
短歌で読む哲学史』山口拓夢著、田畑書店、2017年1月、本体1,300円、A5判並製136頁、ISBN978-4-8038-0340-2

★河出書房新社さんの新刊2点は発売済。渡部直己『日本批評大全』は、上田秋成『雨月物語』序や本居宣長『源氏物語玉の小櫛』から、蓮實重彦『夏目漱石論』、柄谷行人『日本近代文学の起源』まで、近現代日本の約百年間の批評70作を渡部さんによる解題を付して収録ないし抄録したアンソロジーです。全8頁の投込小冊子には、本書のサポートを担った大澤聡さんと渡辺さんの対談「近代批評の記念碑のために」が収められています。「「批評」はいま明らかに死にかけている。すでに心肺停止に陥っているといって過言ではない」(638頁)と渡辺さんは後記に本書編纂の動機を明かしておられます。

★2009年10月に創刊された河出ブックスが8年目にして100点目に到達したとのことです。佐藤卓己『青年の主張』はその記念すべき100番で、NHKが毎年の「成人の日」に放送してきた番組「NHK青年の主張全国コンクール」(ラジオ中継は1956年より;テレビ放送は1960~1989年;1990~2004年は「NHK青春メッセージ」と改題)をめぐる初めての総括的研究です。章立ては以下の通り。序章「《青年の主張》の集合的記憶」、第一章「ラジオから響く「小さな幸せ」――1950年代」、第二章「ブラウン管に映る弁論大会――1960年代」、第三章「「らしさ」の揺らぎと再構築――1970年代」、第四章「笑いの時代の「正しさ」――1980年代」、第五章「《青年の主張》のレガシー――1990年以降」。

★稲葉振一郎『政治の理論』は昨年末に刊行された『宇宙倫理学入門』に続く稲葉さんの新著。「すべてが「資本」として流動化していく世界の中で、確固とした(アレント的な意味での)公共世界と私有財産を、資本主義といかに折り合いをつけつつ構築し維持していくか」(298頁)を基本課題とする「リベラルな共和主義」を論じたもの。もともとは入門書として新書で刊行するはずが膨らんだものだそうで、以下の十章から成ります。第一章「政治権力はどのように経験されるか」、第二章「アレントの両義性」、第三章「フーコーにとっての政治・権力・統治」、第四章「自由とは何を意味するのか」、第五章「市場と参加者のアイデンティティ」、第六章「信用取引に潜在する破壊性」、第七章「「市民」の普遍化」、第八章「リベラルな共和主義と宗教」、第九章「リベラルな共和主義の可能性」、第十章「政治の場」。巻末のあとがきには〈ドゥルーズ=ガタリ左派〉への批判が素描されており、興味深いです。

★柴山雅俊『解離の舞台』は帯文に曰く「解離性障害を理解・支援するための比類なき決定書」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「解離性障害では、解離性の意識変容(空間的変容)が基盤にあって、そこからさまざまな解離症状が発展していく。誤解を恐れずに表現すれば、解離とは現実と夢(空想)の接近の諸相である」(22頁)。「夢と現実が織りなす意識変容の夢幻空間が「解離の舞台」である。それは解離の病理であるとともに、解離から回復するための重要な契機となるように思われる」(23頁)。付録として「解離の主観的体験チェックリスト」が巻末に掲載されています。本来の用途ではありませんが、自己診断の手掛かりになるかもしれません。

★山口拓夢『短歌で読む哲学史』は、昨秋に休眠状態から脱し新たな出発を開始した田畑書店さんが放つ「田畑ブックレット」の創刊第一弾です。著者の山口拓夢(やまぐち・たくむ:1966-)さんはかの山口昌男さんのご子息で、本書が初の単独著となります。ギリシア哲学に始まり、イエス・キリストと教父哲学、中世神学、ルネッサンスの哲学、近世哲学、近現代哲学、構造主義以降までの西洋哲学史を概括する入門書となっており、特徴をなすのは哲学者の思想的核心を短歌で表現している点です。たとえばハイデガーはこう詠まれています。「ものごとを立ち現せる「在る」というはたらきに目をじっと凝らそう」。なるほど覚えやすいかもしれませんね。目次や内容詳細については書名のリンク先をご覧ください。

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by urag | 2017-01-29 23:20 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 24日

アガンベン『哲学とはなにか』ほか、書評情報

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★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』)
★上村忠男さん(訳書:アガンベン『到来する共同体』、パーチ『関係主義的現象学への道』、スパヴェンタほか『ヘーゲル弁証法とイタリア哲学』、共訳書:アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』『涜神』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
昨年イタリアで刊行されたばかりのアガンベンさんの最新刊『哲学とは何か』の訳書が早くも上村忠男さんによって実現されました。書誌情報を以下に掲出しますが、目次を含めた詳細は書名のリンク先をご覧ください。なお、上村さんは来月、グラムシ『革命論集』を講談社学術文庫より上梓されます。2月10日発売予定、本体1,680円です。弊社の12月新刊、カッチャーリ『抑止する力』を合わせると、3か月連続でイタリア思想の訳書を世に送り出したことになります。

哲学とはなにか
ジョルジョ・アガンベン著 上村忠男訳
みすず書房 2017年1月 本体4,000円 四六判上製224頁 ISBN978-4-622-08600-0

帯文より:音声を奪われて文字と化した知の弱さ、無調律の政治風景。哲学は今日、音楽の改革としてのみ生じうる。言葉の始原=詩歌女神〔ムーサ〕たちの場所へと、思考を開く。

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なお『抑止する力』と『哲学とはなにか』をめぐっては、文化人類学者の真島一郎さん(東京外国語大学大学院国際協力講座教授)がブログ「真島一郎研究室」1月21日付エントリー「カッチャーリ 『抑止する力』 / アガンベン 『哲学とはなにか』 」で論及してくださっています。

「現実の歴史のうちでカテコーンの抑止的な力が危機を迎えるとき、 当のカテコーンによって維持されていたプロメーテウス的秩序が、エピメーテウス(プロメーテウスの弟)の時の到来により復讐されることになるというのが、著者カッチャーリの予測です。とりわけ、世界の現在と未来を展望する本書末尾の一文は、読み手を戦慄させることになるかもしれません。「プロメーテウスは引退してしまった。あるいはふたたび岸壁に縛りつけられてしまった。そしてエピメーテウスがわたしたちの地球を徘徊してはパンドラの壺の蓋をつぎつぎに開けて回っている」(159頁)。エピメーテウスが扉をひらいてしまう永続的な危機の時とは、かつて『政治神学』のシュミットが、「例外状況」についてふれたのち鮮やかに描いてみせた、ドイツロマン派の「永遠の対話」と、そしてあの「純粋決定/決意」の対立と、どこまで交叉した問題系を形成しうるのか、大いに興味を惹かれるところです」。

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いっぽう最近、弊社11月既刊書、森山大道×鈴木一誌『絶対平面都市』に書評が2本寄せられています。ひとつは「キネマ旬報」2017年2月上旬号「映画・書評」欄に掲載された上野昂志さんによる書評「急かされ、考えさせられる」です。

「『遠野物語』に書かれた森山の言葉を引いた鈴木が、「現実世界のあちら側に、写され、コピーされ、印刷されたものたちの別世界がかたちづくられている」というのは「単なる比喩ではないんですね」と問い、森山が「比喩ではすまない感じ」といい「おびただしい印刷物の世界。コピーされたものの反乱〔ママ〕のなかに人々はいますから」と応えるというような刺激的な応酬が随所にある」(本書294~295頁参照)。

もうひとつは「朝日新聞」2017年1月22日付読書欄の、大竹昭子さんによる書評です。

「森山の発言はつねにブーメランのように同じ場所に戻ってくる。「なにも写さなかったんじゃないか」という自問と「こうしちゃいられない」という焦り。〔・・・〕無意識と自意識のはざまを行き来する言葉の彼方から、写真の不思議さが立ち上がってくる。世界を理解するのではない。世界が謎の集積であることを可視化するのが写真なのだと」。

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by urag | 2017-01-24 17:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 22日

注目新刊:栗原康さんの一遍上人伝、ほか

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死してなお踊れ――一遍上人伝
栗原康著
河出書房新社 2017年1月 本体1,600円 46版上製256頁 ISBN978-4-309-24791-5

帯文より:家も土地も財産も、奥さんも子どもも、ぜんぶ捨てた一遍はなぜ踊り狂ったのか――いま最高度に注目される思想家による絶後の評伝。
推薦文(瀬戸内寂聴氏):踊り狂うほど、民衆を熱狂させた、一遍上人の希有な魅力を、瑞々しい栗原さんの新鮮な文体で描いた、最高に魅力的な力作!
推薦文(朝井リョウ氏):栗原康の言葉を通せば、教科書の中のあの人もこの人もまるで旧知の悪友のよう。一遍と踊りたい、朝まで、床が抜けるまで!

目次:
はじめに
第一章 捨てろ、捨てろ、捨てろ
第二章 いけ、いけ、往け、往け
第三章 壊してさわいで、燃やしてあばれろ
第四章 国土じゃねえよ、浄土だよ
第五章 チクショウ

参考文献
おわりに

★まもなく発売。売り出し中の若手の中でもっとも破天荒で転覆的で痛快な評伝を世に送り出せるアナーキスト、栗原康さんによる最新作。大杉栄伝(夜光社、2013年)、伊藤野枝伝(岩波書店、2016年)に続く第三弾で、踊り念仏で知られる時宗の開祖、一遍を扱います。瀬戸内さん、朝井さんを魅了したその文体は読む者の魂を鼓舞する生気に満ちたもので、このテンションを維持するのはなかなかのエネルギーを必要とするのではないかと思います。栗原さんのエネルギーの源泉のひとつかもしれないものが本書の冒頭にずばり書き記されていますが、こんな書き出しが近年の人文書にあっただろうかという赤裸々な告白になっています。引用するのも無粋なので、ぜひ現物を手に取ってみていただければ幸いです。

★「富も権力もクソくらえ。アミダにまかせろ、絶対他力。浄土にいくということは、権力とたたかうということとおなじことだ」(33頁)。「トンズラだ、トンズラしかない。いちど人間社会をとびだして、アミダの光をあびにゆこう。一遍は、それをやるのが念仏なんだといっている」(57頁)。「だいじなことなので、くりかえしておこう。念仏に作法なんてありゃしない。うれしければうれしいし、たのしければたのしい。念仏は爆発だ。はしゃいじまいな」(110頁)。一遍につられて踊り念仏の輪が広がる様を描いた第三章の「踊り念仏の精神――壊してさわいで、燃やしてあばれろ」の節は、あたかも野外のレイヴでのトランス状態にも似た沸騰の中で、一遍の時代と現代とが見事にひとつになる瞬間を捉えています。「まるで獣だ、野蛮人だ。ここまでくると身分の上下も、キレイもキタナイも、男も女も関係ない。およそ、これが人間だとおもいこんできた身体の感覚が、かんぜんになるなるまで、自分を燃やして、燃やして、燃やしつくす。いま死ぬぞ、いま死ぬぞ、いま死ぬぞ。体が念仏にかわっていく」(114頁)。

★「生きて、生きて、生きて。生きて、生きて、往きまくれ。おまえのいのちは、生きるためにながれている。なんでもできる、なんにでもなれる、なにをやっても死ぬ気がしない。あばよ、人間、なんまいだ。気分はエクスタシー!!」(114~115頁)。「さけべ、うたえ、おどれ、あそべ。おのれの神〔たましい〕をふるわせと。だまされねえぞ、鎌倉幕府。したがわねえぞ、戦争動員。念仏をうたい、浄土をたのしめ。しあわせの歌をうたうということは、あらゆる支配にツバをはきかけつということだ」(158頁)。「一遍にとって、念仏をとなえて死ぬというのは、いまある自分を殺してしまう、からっぽにしてしまうということであった。なんどでも、なんどでも、ゼロから自分の人生をやりなおす、やりなおしていい、やりなおせる。そういう境地を成仏するといっていた」(161頁)。今まで様々な仏僧伝があったとはいえ、栗原さんのそれは最初から最後までそれ自体が「歌」のようで、今までにない、天にも昇るようなヴァイブレーションを発散しています。

★本書『死してなお踊れ』と同日発売となる河出書房新社さんの新刊に、荒川佳洋『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』があります。こちらも評伝です。ジュニア小説と官能小説をともに数多く残した流行作家、富島健夫(とみしま たけお:1931-1998)の生涯を描いたもの。富島の代表作は『おさな妻』(1970年)で、幾度となく映画化やTVドラマ化されています。

★このほか、最近の新刊では『子午線――原理・形態・批評 Vol.5』(書肆子午線、2017年1月、本体2,000円、B5変型判並製264頁、ISBN978-4-908568-10-7)に注目しました。八幡書店社主の武田崇元さんの長編インタヴュー「願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」が掲載されています。子午線ではこれまで既刊号で、松本潤一郎さん(第1号)、大杉重男さん、安里ミゲルさん(ともに第2号)、金井美恵子さん、花咲政之輔さん(ともに第3号)、稲川方人さん(第4号)といった方々のインタヴューを掲載されてきましたが、今回の相手はオカルト界の重鎮。レフトとオカルトのあわいの変遷をたどることのできる貴重な内容で、必読です。
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by urag | 2017-01-22 23:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 15日

注目新刊:ニーチェ『愉しい学問』新訳、ほか

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★毎月の出費はそれなりのものになりますが、素晴らしき文庫の数々が毎月刊行されていることには本当に驚嘆するばかりです。出版社さんと編集者の皆さんに感謝の念を捧げます。

引き裂かれた自己――狂気の現象学』R・D・レイン著、天野衛訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,300円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-09769-9
未開社会における性と抑圧』B・マリノフスキー著、阿部年晴/真崎義博訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,200円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-09775-0
共産主義黒書〈アジア篇〉』ステファヌ・クルトワ/ジャン=ルイ・マルゴラン著、高橋武智訳、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,700円、文庫判576頁、ISBN978-4-480-09774-3
柄谷行人講演集成1995-2015 思想的地震』柄谷行人著、ちくま学芸文庫、2017年1月、本体1,000円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-09773-6
愉しい学問』フリードリヒ・ニーチェ著、森一郎訳、講談社学術文庫、2017年1月、本体1,450円、文庫判512頁、ISBN978-4-06-292406-1
禅語の茶掛を読む辞典』沖本克己/角田恵理子著、講談社学術文庫、2017年1月、本体920円、文庫判256頁、ISBN978-4-06-292411-5
三木清教養論集』三木清著、大澤聡編、講談社文芸文庫、2017年1月、本体1,500円、文庫判272頁、ISBN978-4-06-290336-3
すばらしい新世界〔新訳版〕』オルダス・ハクスリー著、大森望訳、ハヤカワepi文庫、2017年1月、本体800円、文庫判375頁、ISBN978-4-15-120086-1
動物農場〔新訳版〕』ジョージ・オーウェル著、山形浩生訳、ハヤカワepi文庫、2017年1月、本体700円、文庫判206頁、ISBN978-4-15-120087-8
古代研究I 民俗学篇1』折口信夫著、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体920円、文庫判351頁、ISBN978-4-04-400196-4
平治物語 現代語訳付き』日下力訳注、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体1,480円、文庫判477頁、ISBN978-4-04-400034-9
よくわかる真言宗 重要経典付き』瓜生中著、角川ソフィア文庫、2016年12月、本体960円、文庫判342頁、ISBN 978-4-04-400135-3
生きるよすがとしての神話』ジョーゼフ・キャンベル著、飛田茂雄/古川奈々子/武舎るみ訳、角川ソフィア文庫、2016年11月、本体1,240円、文庫判454頁、ISBN978-4-04-400187-2
乳房の神話学』ロミ著、高遠弘美訳/解説、角川ソフィア文庫、2016年9月、本体1,200円、文庫判476頁、ISBN978-4-04-400162-9
幸福な王子/柘榴の家』ワイルド著、小尾芙佐訳、光文社古典新訳文庫、2017年1月、本体880円、文庫判304頁、ISBN978-4-334-75347-4
ポケットマスターピース13 セルバンテス』野谷文昭編、三倉康博編集協力、吉田彩子訳、集英社文庫、本体1,300円、文庫判712頁、ISBN978-4-08-761046-8

★まずはちくま学芸文庫の今月新刊から。レイン『引き裂かれた自己』の親本は1971年にせりか書房より刊行(著者名の当時のカタカタ表記は「レイング」)。文庫化にあたり正副題を逆転させ(原題は『The Divided Self: An Existential Study in Sanity and Madness』で1960年刊)、全面的な訳文改訂の上、新たに1965年の「ペリカン版への序文」を訳出。レインの著書が文庫化されるのは初めてのことです。

★マリノフスキー『未開社会における性と抑圧』の親本は1972年に社会思想社より刊行。原著は『Sex and Repression in Savage Society』(1927年)で底本には53年の第4版が使用されています。文庫版へのあとがきや、編集部による特記はなし。クルトワ/マルゴラン『共産主義黒書〈アジア篇〉』は昨春(2016年3月)に刊行された「ソ連篇」に続くもの。親本は2006年に恵雅堂出版より刊行。文庫化にあたり「誤りを適宜訂正し、新たに人名索引を付した」とのことです。『柄谷行人講演集成1995-2015』は文庫版オリジナルアンソロジー。収録作については書名のリンク先をご覧ください。

★次に講談社学術文庫。ニーチェ『愉しい学問』は文庫版オリジナルの新訳。底本は1887年に刊行された原著第二版。講談社学術文庫にはニーチェ論は複数あるものの、訳書は初めてで(講談社文庫では1971年に吉沢伝三郎訳『このようにツァラトゥストラは語った』上下巻が刊行されていました)、意外な印象があります。訳者の森さんは東北大学教授。一昨年夏(2015年6月)にはみすず書房よりアーレント『活動的生』の訳書を上梓されています。いっぽう『禅語の茶掛を読む辞典』は2002年の同社の単行本を文庫化。掛軸の写真を多数収録し、解説は1頁ないし見開きで読み切れるので、通勤に最適かもしれません。慌ただしい日常のさなかに思索と鑑賞のひとときを。

★続いて講談社文芸文庫。『三木清教養論集』は生誕120年記念の文庫オリジナルアンソロジー。カバー紹介文に曰く「読書論・教養論・知性論の三部構成で、その思想の真髄に迫る」と。それぞれの部には9篇ずつ収められ、合計で27篇を読むことができます。底本は岩波書店版全集で、「新漢字新かなづかいに改め〔・・・〕底本中明らかな誤りは正し」たと特記されています。編者の大澤聡さんが巻末に長文解説「しゃべる教養をめぐって」を寄せておられます。

★続いてハヤカワepi文庫。ハクスリー『すばらしい新世界』とオーウェル『動物農場』はともに新訳。前者は3年前に黒原敏行さんによる新訳が光文社古典新訳文庫より刊行されたばかり。ハヤカワepi文庫でのオーウェルの新訳は、2009年の高橋和久訳『一九八四年』に続くもの。1947年のウクライナ版序文が重訳(英語原文は失われており、ウクライナ語訳の英訳からの日本語訳)されているのが貴重です。『動物農場』の最近の訳書では、新訳ではありませんが、開高健訳/解説がちくま書房より3年前に刊行されています。ハクスリーにせよオーウェルにせよ、その問題意識の鋭さゆえに今後とも長く読まれ続けるに違いありません。

★続いて「創刊20周年」だという角川ソフィア文庫。折口信夫『古代研究』は生誕130周年記念による旧版全6巻(1974~1977年)のリニューアルです。新版も全6巻予定で解説を担当しているのは安藤礼二さん。旧版に掲載されていた池田弥三郎さんの解説も併載されています。今月下旬に第Ⅱ巻「民俗学篇2」が発売予定です。日下力訳注『平治物語』はカバー表4紹介文に曰く「最新の研究成果をふまえ、本文、脚注、現代語訳、校訂注に解説までを収載した文庫で初めての完全版」。瓜生中『よくわかる真言宗 重要経典付き』は、同著者の書き下ろしとなる「よくわかる」シリーズの、お経読本(2014年)、浄土真宗(2015年)、曹洞宗(2016年7月)に続く4点目。重要経典の読み仮名付き原文と現代語訳が、簡潔な解題や語句解説とともに収められているのが勉強になります。

★同文庫については昨年末までに取り上げていなかった2点の既刊書にも注目。キャンベル『生きるよすがとしての神話』は1996年に同版元から刊行された単行本の文庫化。キャンベルの文庫本は『神話の力』(飛田茂雄訳、ハヤカワ文庫NF、2010年)や『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕』(上下巻、倉田真木/斎藤静代/関根光宏訳、ハヤカワ文庫NF、2015年)に続く3点目。いっぽう、ロミ『乳房の神話学』の親本は1997年に青土社から刊行された単行本の改訂版。ロミの単行本は数多くありますが、文庫化は本書が初めて。新たに書き直されたご様子の訳者あとがきによれば図版については版権の問題があり、すべてを収録するわけにはいかなかったとのことです。原著『Mythologie du sein』(1965年)や青土社版と比べてみるのも一興かと。

★最後に光文社古典新訳文庫と集英社文庫「ポケットマスターピース」。前者のワイルドは、同文庫では『ドリアン・グレイの肖像』(仁木めぐみ訳、2006年)、『サロメ』(平野啓一郎訳、2012年)、『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(南條竹則訳、2015年)に続くもの。帯文に曰く「大人のために訳しました。ビターな味わいの童話集、全9篇収録」と。後者の『セルバンテス』は、「ポケットマスターピース」第13弾で、これでシリーズ完結。昨年はセルバンテスの没後400年でした。今どきの文庫はこの大冊ではこうした値段にはなりようがないはずなのですが、そこは天下の集英社で、コスパ抜群の新訳文学古典シリーズでした。第二期があってもおかしくないと思います。

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トランプは世界をどう変えるか?――「デモクラシー」の逆襲』エマニュエル・トッド/佐藤優著、朝日新書、2016年12月、本体720円、新書判176頁、ISBN978-4-02-273699-4
乾浄筆譚2――朝鮮燕行使の北京筆談録』洪大容著、夫馬進訳注、東洋文庫、2017年1月、本体2,800円、6変判上製函入292頁、ISBN978-4-582-80879-7
徂徠集 序類2』荻生徂徠著、澤井啓一/岡本光生/相原耕作/高山大毅訳注、東洋文庫、2017年1月、本体3,000円、B6変判上製函入352頁、ISBN978-4-582-80880-3

★トッド/佐藤優『トランプは世界をどう変えるか?』は帯に「緊急出版」の文字が躍っています。朝日新聞編集委員の大野博人さんによるトッドさんへのインタヴュー「民主主義がトランプを選んだ」(2016年11月10日)と、佐藤さんによる書き下ろし「「トランプ現象」の世界的影響、そして日本は」が併載されています。トランプ次期大統領による「共和党候補指名受諾演説」(2016年7月21日)も収められています。トッドさんはインタヴューの末尾でこう指摘しています。「ある意味で、米国ではどんな大統領であれ、人格的な面はやや二次的なことなのです。やりたいことが何でもできるわけではない」(36頁)。佐藤さんもやはり末尾付近でこう指摘しています。「あるいは、政策がうまくいかなければ、敵を作り出そうとするかもしれません。/今回の大統領選で可視化された、パワーエリートやエスタブリッシュメントから顧みられることのない人々の「不安」を背景に、アメリカ自身が、国内にアメリカの敵を探し始める可能性が充分にあるのです」(162頁)。

★まもなく発売となる東洋文庫の今月最新刊は2点、第879番『乾浄筆譚2』と、第880番『徂徠集 序類2』です。ともに全2巻完結。2月刊行は『陳独秀文集3』と予告されています。また来月、平凡社ライブラリーでは『ヘーゲル・セレクション』(廣松渉著、加藤尚武編訳/解説)が予定されています。佐藤優さん推薦とのこと。
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by urag | 2017-01-15 23:14 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 01月 09日

第一期全12巻完結、晶文社版『吉本隆明全集』、ほか

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吉本隆明全集3[1951-1954]』吉本隆明著、晶文社、2017年1月、本体7,000円、A5判変型上製848頁、ISBN978-4-7949-7103-6
エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読』ヤン・アスマン著、安川晴基訳、藤原書店、2016年12月、本体6,400円、A5判上製432頁、ISBN978-4-86578-104-5
東京を愛したスパイたち 1907-1985』アレクサンドル・クラーノフ著、村野克明訳、藤原書店、2016年12月、本体3,600円、四六判上製432頁、ISBN978-4-86578-103-8
シン・ゴジラ論』藤田直哉著、作品社、2016年12月、本体1,800円、46判並製256頁、ISBN978-4-86182-612-2
現代思想 2017年2月臨時増刊号 総特集=神道を考える』青土社、2016年12月、本体2,000円、A5判並製310頁、ISBN978-4-7917-1336-3
文藝 2017年春季号』河出書房新社、2017年1月、本体1,300円、A5判並製512頁、ISBN978-4-309-97909-0
こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ著、斎藤真理子訳、河出書房新社、2016年12月、本体1,900円、46変形判上製360頁、ISBN978-4-309-20723-0

★第一期完結となる第12回配本『吉本隆明全集3[1951-1954]』はまもなく発売、明日10日取次搬入です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。付属する「月報12」は、吉増剛造「沈黙の言語」、芦田宏直「「転回」について」、ハルノ宵子「eyes」を掲載。帯文に曰く「『日時計篇』の後半部と『転位のための十篇』の初期異稿を含む21篇を新たに収録。大学の特別研究生を修了し、東洋インキ製造株式会社に就職・勤務の日々に書き継がれ、2冊の私家版詩集発行に結実する膨大な詩稿群を中心に収録」と。800頁近い詩群に圧倒されるばかりです。「わたしに信なきものの強さを与へよ」(153頁)という法外な一行は、彼の人生を貫く強烈な光芒であるかのように感じます。次回配本は第37巻、今春(4~5月)の刊行予定とのことです。

★藤原書店さんの新刊2点、ヤン・アスマン『エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読』と、クラーノフ『東京を愛したスパイたち 1907-1985』は発売済。前者の原書は『Moses der Ägypter: Entzifferung einer Gedächtnisspur』(Hanser, 1998)です。前年(97年)に英語版がまず刊行され、著者自身がドイツ語に訳し大幅に加筆したのが当訳書の底本である98年版です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。帯文に曰く「西洋の人文学に“記憶論的転回”をもたらした、大論争の書!〔・・・〕聖書の伝承に対し、モーセを“エジプト人”とする――邪とされたエジプトに、ある真理の故郷を求める――試みが、西洋の精神史にはあった。古代エジプトの王アクエンアテンから、スペンサー、カドワース、ウォーバートン、ラインホルト、シラー、そしてフロイトへ、“エジプト人モーセ”の想起の系譜を掘り起こす」。巻末の訳者解説ではアスマンのその後の著書『モーセの区別』(2003年)、『一神教と暴力の言葉』(2006年)も紹介されており、訳書の続刊を期待せずにはいられません。

★『東京を愛したスパイたち 1907-1985』は「今日のロシアで最も脂の乗り切った日本学舎の一人である」(訳者あとがきより)というクラーノフ(1970-)が2014年に刊行した『スパイの東京』のロシア語版に基づいて大幅に加筆訂正を施し、東京以外の年が舞台の第五章を省略して、全四章にまとめた日本オリジナル版、とのことです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。カバー表4の紹介文によれば、「格闘技サンボの創始者ワシーリー・オシェプコフ、ゾルゲ事件で日本でも名高いリヒャルト・ゾルゲ、ソ連の探偵小説の先駆者として注目が高まっているロマン・キム(キン・キリュー)、さらに主として戦後に活動した四人の諜報員たち。小伝によって彼らの人物像をコンパクトに紹介すると共に、彼らや関係者の書きのこしたもの、さらに公文書の記録から、〔・・・〕現代の東京にその足跡を再現し、著者自身が訪ね歩く」。

★なお藤原書店さんの今月新刊にはピエール・ブルデュー『男性支配』(坂本さやか・坂本浩也訳)が予告されています。「ブルデュー唯一の「ジェンダー」論」とのことです。

★藤田直哉『シン・ゴジラ論』は発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者は巻頭で、『シン・ゴジラ』だけでなく『君の名は。』にも言及し、次のように自問しておられます。「何故2016年に、震災を想起させるエンターテイメントがこれほどヒットしたのか? 震災の経験を心理的に「昇華」させたい人々がこれほど大勢いたからこそ、これほどの「国民的」ヒットとなたのではないか?」(5頁)。先日も書きましたが、この本と、先に発売された笠井潔『テロルとゴジラ』の刊行記念イベントとして、お二人のトークショー「ゴジラの戦後、シン・ゴジラの震災後」が、今月17日(火)19時から八重洲ブックセンター本店8Fギャラリーにて行われます。新刊2点の内いずれかをお買い上げのお客様に参加整理券が配布されます。なお、作品社さんでは今月より山中峯太郎訳著『名探偵ホームズ全集』全三巻が刊行開始となるとのことです。

★『現代思想 2017年2月臨時増刊号 総特集=神道を考える』は発売済。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。赤坂憲雄「イザベラ・バードの見た神道」、山本ひろ子「中世の諏訪――「南宮」と諏訪流神道をめぐって」、彌永信美「八百万の神達=「梵天帝釈、無量の天子……」?」、檜垣立哉「吉本隆明・記紀書・南島論」、福嶋亮大「家・中国化・メディア――折口信夫『死者の書』の構造」などを収録。「現代思想」は2月号(1月27日発売予定)が特集「ビットコインとブロックチェーンの思想」、2月発売の3月臨時増刊号が「人類学の時代」「知のトップランナー46人の美しいセオリー」の2本となるそうです。

★『文藝 2017年春季号』はまもなく発売。佐々木中さんの小説「私を海に投げてから」(165-202頁)や、1月24日発売予定の渡部直己『日本批評大全』(河出書房新社、46判640頁、ISBN978-4-309-02534-6)をめぐる対談、渡部直己×斎藤美奈子「批評よ、甦れ――『日本批評大全』刊行によせて」(476-489頁;『日本批評大全』の詳細目次が484-485頁に掲出)のほか、昨年7月30日に73歳で死去された柳瀬尚紀さんへの追悼特集が組まれています。亡くなる前日まで取り組んでおられたという、ジョイズ『ユリシーズ』第15章「キルケー」冒頭部を訳した遺稿をはじめ、朝吹真理子、いしいしんじ、稲川方人、円城塔、岡田利規、柴田元幸、高山宏、四方田犬彦の各氏がエッセイを寄稿されています。

★四方田さんは昨年末に発売された同社の新刊、チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』にも解説「病身〔ピョンシン〕の眼差し」を寄せておられます。同書は1978年に韓国で刊行されて以来、「約300刷、130万部」(プレスリリースより)のロングセラーで、映画化されたり教科書に掲載されてきたという作品です。四方田さんは本書を次のように紹介しています。「1970年代の韓国社会に横たわっていた数多くの問題が取り上げられている。貧困と身障者差別。土地の再開発と強制執行。劣悪な労働条件と自然破壊。キリスト教信仰と労働争議。〔・・・〕作家としての趙世煕の面目とは、〔・・・〕悲惨な現実を〈病身〉、つまり身体障碍者という視座を通して描いてみせたところにある」(345頁)。
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by urag | 2017-01-09 22:02 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)