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カテゴリ:本のコンシェルジュ
  • 弊社出版物の著者や関係者の方々の最近の御活躍(書籍編)
    [ 2012-05-24 15:37 ]
  • 注目新刊:2012年5月:『ジーン・セバーグ vs FBI』ほか
    [ 2012-05-20 23:08 ]
  • 弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍
    [ 2012-05-17 19:21 ]
  • まもなく発売:サンデル『それをお金で買いますか』早川書房、ほか注目新刊
    [ 2012-05-13 23:54 ]
  • 注目新刊:2012年4月~5月
    [ 2012-05-06 03:59 ]
  • 弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍
    [ 2012-04-23 21:10 ]
  • 注目新刊:『共通番号制なんていらない!』『ソウルダスト』
    [ 2012-04-22 21:06 ]
  • 注目新刊:『戦後部落解放運動史』『都市が壊れるとき』
    [ 2012-04-15 18:48 ]
  • 弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍
    [ 2012-04-10 21:49 ]
  • まもなく発売:『新訳 ラーマーヤナ』、平凡社より
    [ 2012-04-08 12:40 ]

2012年 05月 24日
弊社出版物の著者や関係者の方々の最近の御活躍(書籍編)


◆ジョルジョ・アガンベンさん(著書『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『瀆神』『思考の潜勢力』)
平凡社さんの新シリーズ「イタリア現代思想」の第一回配本として、2009年にローマの版元ノッテテンポから出版されたNuditàの訳書が刊行されます。明日25日取次搬入ですので、早い本屋さんで26日以降から順次店頭に並び始めます。このシリーズでは今夏にペルニオーラ『無機的なもののセックス・アピール』が刊行予定のほか、続刊でヴァッティモ『透明な社会』やカッチャーリ『アドルフ・ロースと彼の天使』などがエントリーしているとのことです。

裸性 〔イタリア現代思想 1〕
ジョルジョ・アガンベン著 岡田温司+栗原俊秀訳
平凡社 2012年5月 本体2,600円 四六判上製224頁 ISBN978-4-582-70342-9

帯文より:「裸である=剥き出し」状態とは何か。ヌディタ、すなわち裸性=剥き出しとは、セクシュアリティに関わるものである以上に、われわれが無防備であること、さらされてあることに関係している。原罪を一種の自己誣告とみる独創的なカフカ論をはじめ、原罪によって開かれた潜勢力としての「認識の可能性」がヌディタの核心にあることを喝破した好著。シリーズ第一弾。

訳者あとがき(209頁)より:『ホモ・サケル』が、主権権力の生政治装置によって必然的に産み落とされていく「剥き出しの生」の系譜を、古代以来の政治のなかにたどる試みであったとするなら、ひるがえって『裸性』は、神学の伝統のなかにその根源を探り当てようとする、大胆にしてかつ瀆聖的ですらある試みといえるだろう。つまり、意外に聞こえるかもしれないが、両者は対をなすものであるとも、あるいは、後者は前者を補完するものであるともみなすことができるのである。

原書:Nudità, nottetempo, 2009.

目次:
想像と救済
同時代人とは何か?
K
 I 誣告者
 II 測量士
亡霊にかこまれて生きることの意義と不便さ
しないでいられることについて
ペルソナなきアイデンティティ
裸性
天の栄光に浴した肉体
牛のごとき空腹――安息日、祭日、無為をめぐる考察
世界の歴史の最終章

解題「アガンベンにおけるエロティックなもの――裸体、性、ポルノグラフィー」(栗原俊秀)
訳者あとがき――「剥き出し」ということ(岡田温司)
主要参考文献


★ブレーズ・サンドラールさん(著書『パリ南西東北』)
河出書房新社さんから74年に刊行されていた『モラヴァジーヌの冒険』の復刻新版が同社の復刊シリーズ「KAWADEルネサンス」の一冊として発売されます。版元の公式情報では明日25日発売となっていますから、おそらくは今日あたりからすでに店頭に並び始めていると思われます。ちなみに初版当時の著者名のカタカナ表記は「サンドラルス」でした。

モラヴァジーヌの冒険
ブレーズ・サンドラール著 伊東守男訳
河出書房新社 2012年5月 本体2,800円 46判並製304頁 ISBN978-4-309-29593-0

帯文より:「彼こそは現代の深さと美しさとを宣言し吹聴することにかけて、まさしく第一人者である」(ヘンリー・ミラー)。10数年の幽閉生活から脱出したモラヴァジューヌの行く先は……!? 世界を巡る奇妙で痛快な「旅する文学」、待望の復刊!!

ヘンリー・ミラーによる讃辞:サンドラールを読みながら、ぼくはときどき喜悦、絶望、苦痛のあまり、思わずわが手をふりしぼるために本を放り出すことがある(……)。人間のあらゆる種類の感動が溶けあい、錯綜したような感じのことをいっているのだ。(……)親愛なるサンドラールよ。きみが生活し、消化し、そして変形し、変質し、変化させて吐き出したすべてのものに対し、ぼくが羨望の情を抱いていることを、きみも感じるときがあるに違いない。

原書:Moravagine, Grasset, 1926.

目次:

第1部 時代の精神
 A 病院勤務 / B 国際サナトリウム / C カルテと書類
第2部 モラヴァジーヌの阿呆の生涯
 D 彼の出生――その幼年時代 / E 脱出 / F 変装 / G ベルリン到着 / H 彼の精神形成 / I 腹裂きジャック / J ロシア到着 / K マーシャ / L 大西洋横断 / M アメリカ漫遊 / N 青色インディアン / O パリ帰還 / P 飛行機 / Q 戦争 / R サント・マルグリット島 / S モルヒネ / T 火星 / U 鉄仮面
第3部 モラヴァジーヌの原稿
 V 2013年 / W 世界の終り / X 火星語唯一の単語 / Y モラヴァジーヌの未発表のページ、彼の署名、彼の肖像
自己弁護――私はいかにして『モラヴァジーヌ』を書いたか
後書き
参考文献
訳者あとがき


★伊藤一博さん(企画協力:ユンガー『パリ日記』)
本年2月28日に逝去された、日本政治思想史の大家・河原宏(かわはら・ひろし:1928-2012)さんの遺稿『秋の思想――かかる男の児ありき』が書籍化されました。本日取次搬入で、明日以降順次、書店店頭に並び始めると思います。伊藤さんは本書に跋文を寄せておられます。本書の序文の末尾には「他日、もし能うれば「かかる女性ありき」をまとめたいと思う」(10頁)とあり、本書の対となる書籍の構想があったことが窺えます。著者から伊藤さんに宛てられた昨夏の手紙には次のように書かれてあったと跋文で紹介されています。「もし今後、日本人が世界大の唯心革命になんらかの貢献を果たす時は、女性・自然・大地・生命の意義を深く・広く・優しく説く哲学を創生した時のように思える」(266頁)。

秋の思想――かかる男の児〔おのこ〕ありき
河原宏著
幻戯書房 2012年5月 本体3,000円 四六上製288頁 ISBN978-4-901998-95-6

帯文より:中世、近代、現代――時代の境界〈秋〉を、情と志に生きかつ死んだ〈人〉。知の玩弄物と化した〈思想〉に〈理想〉を追い求めた孤高の思想家の絶筆。特別収録:吉本隆明「転向論」批判(50枚)。解説:中野剛志

目次:
序 かかる男の児ありき
Ⅰ 中世武将の情と義
 その一、源実朝――その優しさと勁さ    
  一、共悲の心
  二、和歌と政治のしがらみ
  三、地獄の現世
  四、詩魂と士魂
  五、近代・戦中・戦後の「実朝」像    
   1 正岡子規と斎藤茂吉
   2 小林秀雄と太宰治
   3 吉本隆明と中野孝次
  六、結 び
 その二、楠木正行――その「情」と「義」    
  一、南北朝時代の「人」
  二、『太平記』が讃える「人」
Ⅱ 江戸の芸術家
 その一、近松門左衛門――その勇気と自覚    
  一、『相模入道千疋犬』 秕政と悪法の糾弾
  二、勇気と自覚、先見性
  三、愛と美の極致『曾根崎心中』    
  四、『国性爺合戦』の日本と日本人    
 その二、伊藤若冲――あらゆる生き物、命の美を描く    
  一、生涯の信念 大根を釈迦に
  二、衆生へのいとおしみ 華麗な彩色と細密描写
Ⅲ 江戸の秋 維新の哀歓
 はじめに
 その一、小林清親――追憶と哀愁の浮世絵    
  一、『東京新大橋雨中図』をめぐって    
  二、「醜」なる近代
 その二、栗本鋤雲から『夜明け前』へ    
  一、鋤雲と福澤諭吉
  二、島崎藤村と鋤雲
 その三、成島柳北の『柳橋新誌』    
  一、歴史に残るその名
  二、その余香、荷風に到る
Ⅳ 戦後文学の輪廻転生観
 序 今なぜ輪廻転生なのか
 その一、三島由紀夫の輪廻転生観    
  一、ひよわな青年
  二、二つの時代を生きた人々
  三、肉体改造による意志的変身    
  四、作品と戦後社会
  五、『豊饒の海』 近代知性の矛盾    
 その二、深沢七郎の輪廻転生観    
  一、常識を軽く超えて
  二、『楢山節考』の宇宙的規模    
  三、『笛吹川』の強さと優しさ    
 その三、遠藤周作の輪廻転生観    
  一、『沈黙』 信仰と宗教の葛藤    
  二、『深い河』の転死と転生
結び

解説「自在に生きた思想史家」(中野剛志)
跋「思い出すままに」(伊藤一博)    

特別附録「イデオロギーとしての転向」 

by urag | 2012-05-24 15:37 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 05月 20日
注目新刊:2012年5月:『ジーン・セバーグ vs FBI』ほか


FBI vs ジーン・セバーグ――消されたヒロイン
ジーン・ラッセル・ラーソン+ギャリー・マッギー著 石崎一樹訳
水声社 2012年5月 本体2,500円 四六判並製288頁+別丁図版8頁 ISBN978-4-89176-901-7

版元紹介文よりより:ヌーヴェルヴァーグのトップ女優は、「政治」に謀殺されたのか? FBIの秘蔵資料や関係者の証言を駆使して、個人と国家権力の相剋を描く、迫真のドキュメント。世界が激しく揺り動いた60年代末、ブラックパンサーとFBI=J・エドガーとの激しい政治闘争の渦中を生きたジーン・セバーグの後半生に焦点を絞り、多くの資料によってその生き様を浮き彫りにする。

原書:Neutralized: The FBI vs. Jean Seberg ― A story of the '60s Civil Rights Movement, BearManor Media, 2008.

目次:
イントロダクション
第一章 ジーン・セバーグという神秘
第二章 ブラック・パンサー
第三章 フーヴァー、FBI、コインテルプロ
第四章 セバーグ、一九六八年―一九六九年
第五章 セバーグ、一九七〇年一月―八月
第六章 セバーグ、一九七〇年八月―十二月
第七章 セバーグ、一九七一年―一九八〇年
第八章 ハリウッド、メディア、そしてFBI
エピローグ
付録1 AIM報告
付録2 FBIへのインタビュー
付録3 FBI文書
参考文献
訳者あとがき

★発売済。昨年刊行され、好評を博したギャリー・マッギー『ジーン・セバーグ』(石崎一樹訳、水声社、2011年)の姉妹編です。ジーン・セバーグ(1938-1979)はアメリカ・アイオワ州出身の女優です。ジャン=リュックゴダール(1930-)監督の長篇デビュー作『勝手にしやがれ』(1959年)への出演によってヌーヴェルヴァーグの立役者の一人として知られています。彼女は1968年前後から公民権運動、中でもラディカルなブラック・パンサーをサポートしていました。第一章の冒頭に1968年当時のセバーグのこんな言葉がエピグラフとして掲げられています。「肌の色が違うという理由だけで人びとが経験しなければならない、恐ろしく理不尽な現在の状況を見てみればいいわ。黒人にも素晴らしい人間と嫌な人間がいる。でも、人は彼らをそのように見ようとはしないの」。そうしたセバーグの政治的コミットメントに対し、J・エドガー・フーヴァー長官率いるFBIは圧力を加えます。水声社さんプレスリリースによれば、本書では「FBIが盗聴、悪意の風評、いやがらせなどによって、ひとりの女優を執拗に追い詰めてゆく過程が、当時のFBI資料によって綿密に検証されて」います。また、「FBIの戦略を垂れ流すことによって、女優を〈消す〉ことに一役買ったメディアの存在についても大きくページを割いて」いるとのことです。セバーグの死因は自殺だとされてきましたが、本書の著者は「殺された可能性が極めて高い」(201頁)と述べています。「戦後アメリカ史の闇」(プレスリリース)を伝える好著として、話題を呼びそうです。

★水声社さんでは今月、以下の新刊を刊行されています。グレアム・ターナー『フィルム・スタディーズ――社会的実践としての映画』(松田憲次郎訳、水声社、2012年;A5判上製288頁、本体2,800円、ISBN978-4-89176-905-5)。グレアム・ターナーと言えば弊社代表取締役のKが作品社時代に手掛けた『カルチュラル・スタディーズ入門――理論と英国での発展』(毛利嘉孝ほか訳、作品社、1999年)の著者でもあります。また、弊社出版物の著者でもあるレーモン・クノーの著作集となる「レーモン・クノー・コレクション」は、先般ご紹介した第2回配本以後、3月までに第6回配本まで進んでいます。

◎レーモン・クノー・コレクション(水声社)

第6回配本2012年03月:
第9巻『人生の日曜日』芳川泰久訳;4/6判上製288頁、本体2,500円、ISBN978-4-89176-869-0
第5回配本2012年02月:
第4巻『きびしい冬』鈴木雅生訳;4/6判上製168頁、本体1,800円、ISBN978-4-89176-864-5
第4回配本2012年01月:
第6巻『ルイユから遠くはなれて』三ツ堀広一郎訳;4/6判上製232頁、本体2,200円、ISBN978-4-89176-866-9
第3回配本2011年11月:
第2巻『最後の日々』宮川明子訳、4/6判上製288頁、本体2,500円、ISBN978-4-89176-862-1
第2回配本2011年10月:
第8巻『聖グラングラン祭』渡邊一民訳、4/6判上製312頁、本体2,800円、ISBN978-4-89176-868-3 
第1回配本2011年10月(2点同時刊行):
第10巻『地下鉄のザジ』久保昭博訳、4/6判上製240頁、本体2,200円、ISBN978-4-89176-870-6
第11巻『サリー・マーラ全集』中島万紀子訳、4/6判上製464頁、本体3,500円 ISBN978-4-89176-871-3

続刊:
第1巻『はまむぎ』久保昭博訳
第3巻『リモンの子どもたち』塩塚秀一郎訳
第5巻『わが友ピエロ』菅野昭正訳
第7巻『文体練習』松島征ほか訳
第12巻『青い花』新島進訳
第13巻『イカロスの飛行』石川清子訳



光と影の芸術――写真の表現と技法
東京都写真美術館編
平凡社 2012年 本体2,500円 B5変型判上製176頁 ISBN978-4-582-20669-2

帯文より:写真の表現と技法、その可能性の追求。写真が登場して170年、そこから現代に至るまで、数多くの写真家が新たな表現を求めて多種多様な技法を用い、名作を生み出してきた。第I部:コラージュ、フォトモンタージュ、ディストーション(歪曲)など、写真(イメージ)に手を加えて新たな表現を生み出した作品、第II部:ネガフィルムと印画紙の変遷と、それに関わる表現と技法のバリエーション、第III部:カメラとレンズという撮影機材を駆使したさまざまな表現、という三つのテーマを軸に、写真という表現手段の歴史と現在を、東京都写真美術館所蔵の名作によって辿る。

目次:
ごあいさつ
第I部 光の造形――操作された写真(藤村里美) ※展示期間:2012年5月12日~7月8日
 彩色写真/フォトモンタージュ/コラージュ/多重露光/リフレクション/デフォルマシオン/雑巾がけ/トリミング
第II部 自然の鉛筆――技法と表現(鈴木佳子) ※2012年7月14日~9月17日
 紙の印画〔フォトジェニック・ドローイング;カロタイプ;単塩紙;鶏卵紙;プラチナ印画;ゼラチン・シルバー・プリント;カーボン印画;ゴム印画;ブロムオイル印画;エリオクロミィ;色素転写方式印画;拡散転写方式印画;発色現像方式印画;銀色素漂白方式印画〕/写真製版〔ウッドバリー・タイプ;フォトグラビア印刷〕/金属・ガラス印画〔ダゲレオタイプ;アンブロタイプ;ティンタイプ;オートクローム〕/ネガティブ〔紙のネガ;ガラスのネガ;プラスチックのフィルム(ネガ/ポジ)〕/暗室技法〔フォトグラム;ソラリゼーション;ネガフォト;粗粒子;焼き込み〕
第III部 機械の眼――カメラとレンズ(金子隆一) ※2012年9月22日~11月18日
 シャープ・フォーカスとソフト・フォーカス/パン・フォーカスとディファレンシャル・フォーカス/レンズの視覚――広角レンズと望遠レンズ/カメラ・アングルの解放――俯瞰撮影と仰角撮影/時間――長時間露光/時間――ブレ/時間――瞬間/人工光/未知の世界へ/特殊効果
掲載作品リスト

★発売済。東京都写真美術館の平成24年度コレクション展の公式図録です。掲載作品130点(第I部47点、第II部36点、第III部47点)。図録とは言え、本書は立派な写真技法史の概説書となっていて、勉強になります。目次に付記した通り、写美では現在は第I部「光の造形」を展示中。

★なお、春恒例の「平凡社ライブラリー復刊」では今月、以下の6点が復刊されました。特に、早めになくなりそうな『ウィトゲンシュタインのウィーン』は押さえておきたいですね。
W・ウェストン『日本アルプス――登山と探検』定価1,470円(税込)
アイザック・ウォルトン『完訳 釣魚大全 1』 定価1,470円(税込)
R・カーソン『海辺――生命のふるさと』 定価1,680円(税込)
安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』定価1,785円(税込)
J・ハーバマス『イデオロギーとしての技術と科学』定価1,260円(税込)
S・トゥールミン+A・ジャニク『ウィトゲンシュタインのウィーン』 定価1,785円(税込)


全系図付 エジプト歴代王朝史
エイダン・ドドソン+ディアン・ヒルトン著 池田裕訳
東洋書林 2012年5月 本体12,000円 A4変形判上製320頁 ISBN978-4-88721-798-0

帯文より:王族約1200人の略歴、27の詳細な家系図、写真約300点を収録!! 数多の遺跡によって明らかにされた全人物像を、最新の解釈をふまえ集成。従来の古代史観に息吹をもたらす、専門研究にも必携の画期的資料!

原書:The Complete Royal Families of Ancient Egypt, 2004/2010, Thames and Hudson.

目次:
はじめに
序論
ファラオ国家
王室
王朝系図について
第I章 初期王朝時代 古王国時代
 1 創設者たち〔第1王朝~第3王朝〕
 2 大ピラミッドの建設者たち〔第4王朝〕
 3 太陽神の子ら〔第5王朝〕
 4 テティとペピの家〔第6王朝~第8王朝〕
第II章 第1中間期 中王国時代 第2中間期
 5 アクトイ家〔第9王朝~第10王朝〕
 6 南部の首長〔第11王朝〕
 7 二つの国土の征服者たち〔第12王朝〕
 8 王たちと平民〔第13王朝〕
 9 外国の支配者たち〔第14王朝~第15王朝〕
10 南王国〔第16王朝~第17王朝その1〕
第III章 新王国時代
11 タア王朝〔第17王朝その2~第18王朝その1〕
12 権力と栄光〔第18王朝その2〕
13 エピソードとしてのアマルナ時代〔第18王朝その3〕
14 ラメセス王家〔第19王朝その1〕
15 ラメセス朝の不和〔第19王朝その2〕
16 ラメセス朝の凋落〔第20王朝〕
第IV章 第3中間期
17 王たちと祭司たちと〔第21王朝〕
18 ショシェンク王家の盛衰〔第22王朝〕
19 テーベの独立〔第23王朝〕
20 西の君主たち〔第24王朝〕
21 「清い山」の主たち〔第25王朝〕
第V章 末期王朝時代 プトレマイオス朝時代
22 最後のルネッサンス〔第26王朝〕
23 ペルシア人ファラオ〔第27王朝〕
24 最後のエジプト人ファラオたち〔第28王朝~第30王朝〕
25 マケドニア王家支配時代〔アルゲアス王朝〕
26 プトレマイオス家〔プトレマイオス朝〕
地図
訳者あとがき
原注/年表/参考文献/索引

★まもなく発売。聞くところによると、全系図を収録した本というのはこれまでなかったそうです。昨今の円高の影響もあって、原書ペーパーバックより1万円ほど高い値段になっていますが、これは商圏(英語圏と日本語圏)の広さの違いによる発行部数の差なので、日本語版がべらぼうに高いと不平を言っても詮無いことです。むしろ東洋書林さんは平均的に、大判でカラー図版を多用している図説書をかなり割安の値段に設定されています。何もかも英語で問題ないという方はともかく、この手の固有名詞の同定が面倒くさい本は日本語版に頼るにしくはないと思われます。なお、東洋書林さんでは類書に、リチャード・H・ウィルキンソン『古代エジプト神殿大百科』(内田杉彦訳、東洋書林、2002年)や同著者による『古代エジプト神々大百科』(内田杉彦訳、東洋書林、2004年)があります。

by urag | 2012-05-20 23:08 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 05月 17日
弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍


◆大竹伸朗さん(著書『UK77』『権三郎月夜』『ネオンと絵具箱』)
ちくま文庫の今月の新刊で『ネオンと絵具箱』が刊行されました。これは2006年10月に弊社より刊行された同名のエッセイ集『ネオンと絵具箱』全編を第1章として収め(224頁まで)、「全景」などの作品展のカラー写真8頁を挟んで、2003年から2011年に新聞雑誌各紙誌に寄稿したエッセイ28編を、第2章「路上と絵具箱」、第3章「日毎と絵具箱」(339頁まで)に再構成して、最後に「文庫版あとがき」「初出一覧」「作品リスト」を加えて一冊としたものです。分量的には3分の2が親本からのもので、残り3分の1が今回の増補分となります。本体950円です。

また、弊社より先月刊行した森山大道写真集『カラー』の発売に合わせ、大竹さんがTシャツを制作してくださいました。ナディッフさんが昨日ツイートされましたが、「【近日入荷予定】月曜社刊行の森山大道・最新写真集「カラー」の発売を記念し、表紙の題字を担当した大竹伸朗氏がオリジナルTシャツを作りました! また、長らく品切れとなっていた「ハワイ」Tシャツも再発売となりますので、夏にむけご用意を。カラー展開は青、白、黒の3色」というものです。このTシャツは「カラー」が青、白、黒の3種類、「ハワイ」が白と黒の2種類で、ナディッフのほか、先週金曜日から6月9日まで六本木のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで開催されている森山大道個展「カラー」の会場でも販売されています。「ハワイ」Tシャツは、弊社より2007年7月に刊行した森山大道写真集『ハワイ』の発刊記念で制作して以来の復刻になります。


◆モーリス・ブランショさん(著書『問われる知識人』『ブランショ政治論集』『書物の不在』)
完本 焔の文学』(重信常喜+橋口守人訳、紀伊國屋書店、新装復刊版、1997年)が、「書物復権2012」で再刊されました。本日取次搬入なので、ほどなく店頭発売開始となります。今回復刊される書目の一覧はこちら

また、過日新聞報道※があった通り、篠沢秀夫さん訳による『謎のトマ』が中央公論新社さんより来月発売になります。礼子夫人が代筆されているブログ記事「モウリス・ブランショの「謎のトマ」が本になります」(2012年1月20日付)もご参照ください。本書は「トマ」の初版本(1941年版)の翻訳。トーハンのe-honアマゾンで予約受付が開始されています。e-honでは発売日が6月10日(日)、アマゾンでは6月7日(木)となっていますから、察するところ、7日が取次搬入で翌々営業日以降から店頭発売開始となるものと思われます【5月18日追記:篠沢先生のウェブサイトの5月8日付のインフォメーションでは「6月13日発売」となっています。こちらが最新情報だとみなしていいのかもしれません】。『書物の不在』(初版2007年;第二版2009年)の著者略歴でご案内している通り、弊社では同じく初版本の訳書を刊行する予定ですが、弊社版の発売はもう少し先になりそうです。なお、新版(1950年版)「トマ」の翻訳は、『ブランショ小説選』(書肆心水、2005年)などで読むことができます。

※「篠沢教授が難病と闘いながら翻訳本」(「日刊スポーツ」2012年3月21日付、柴田寛人氏記名記事)より・・・・・・「昭和の人気番組TBS系「クイズダービー」の解答者で、筋肉が萎縮して動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘病中の篠沢秀夫・学習院大名誉教授(78)が、09年2月の発病後では初めて翻訳本を出版することが20日、分かった。フランス文学の長編小説「謎の男トマ」(モーリス・ブランショ)を発病前から3年以上かけて完成。320ページ分の大作となり、今夏の発売を予定。さらなる出版にも意欲を示し、同じ難病に悩む人々に勇気を与えている。〔中略〕フランス文学者として、発病するまでに40冊以上の翻訳本を出していただけに、地道な翻訳作業も続けていた。フランス人の故モーリス・ブランショのデビュー作「謎の男トマ」。1941年の作品で、生と死を描いた長編小説だ。篠沢教授は発病前から翻訳を続け、このほど320ページ分を書き上げた。簡略化した日本語版は発行されているが、完全翻訳は篠沢教授が初めて出すという。/〔篠沢夫人〕礼子さんは「主人は本を出すことが唯一の生きがい。今後の病気のことを考えると不安になりますけど、前だけ見て、本を出し続けたいと思います」と篠沢教授の意欲を代弁した〔後略〕」。

「簡略化された日本語版」について補足しますと、『謎の男トマ』は1941年に初版が刊行され、その後、1950年に、大幅に短くなった新版が刊行されました。今までに邦訳されたのはこの新版で、1941年版が邦訳されるのは今回が初めてになります。なお、1941年版はフランスでもブランショ(1907‐2003)の生前には刊行されず、死後の2005年になってピエール・マドールの跋文付でようやく再刊されます。篠沢先生の訳書は1941年版の原本からの翻訳で、弊社が出版する予定のものは2005年の再刊版です。内容はマドールの跋文があるかないかの違いで、小説自体に内容の違いはありません。

by urag | 2012-05-17 19:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(2)
2012年 05月 13日
まもなく発売:サンデル『それをお金で買いますか』早川書房、ほか注目新刊
★昨春、紀伊國屋書店新宿本店人文書売場で無料配布された、千葉雅也さんと私の対談冊子「ポスト人文学の思想的境位――2010年を振り返って」で、私は「ビジネス人文書の台頭」について言及しました。これは、『超訳 ニーチェの言葉』や、サンデル『これからの「正義」の話をしよう』などのベストセラー化に見られるように、近年のビジネス書売場では人文系の書目が徐々に売上を伸ばしつつある状況に触れたものです。これらは一過性のものではなく、人文系版元にとっては大きなビジネスチャンスとなりつつあるのかもしれません。今回はまもなく発売のサンデルの新刊や、心理学書版元の最近の新刊などをご紹介します。



それをお金で買いますか――市場主義の限界
マイケル・サンデル=著 鬼澤忍=訳
早川書房 2012年5月 本体2,095円 46判上製334頁 ISBN978-4-15-209284-7

カバーソデ紹介文より:「結局のところ市場の問題は、実はわれわれがいかにして共に生きたいかという問題なのだ」(本文より)。私たちはあらゆるものがカネで取引される時代に生きている。民間会社が戦争を請け負い、臓器が売買され、公共施設の命名権がオークションにかけられる。市場の論理に照らせば、こうした取引に何も問題はない。売り手と買い手が合意のうえで、双方がメリットを得ているからだ。だが、やはり何かがおかしい。貧しい人が搾取されるという「公正さ」の問題? それもある。しかし、もっと大事な議論が欠けているのではないだろうか? あるものが「商品」に変わるとき、何か大事なものが失われることがある。これまで議論されてこなかった、その「何か」こそ、実は私たちがよりよい社会を築くうえで欠かせないものなのでは――? 私たちの生活と密接にかかわる、「市場主義」をめぐる問題。この現代最重要テーマに、国民的ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』のサンデル教授が鋭く切り込む、待望の最新刊。

本文より(17頁):金融危機の際に「強欲さ」が一定の役割を果たしたことは確かであるものの、問題はもっと大きい。この三〇年のあいだに起った決定的な変化は、強欲の高まりではなかった。そうではなく、市場と市場価値が、それらがなじまない生活領域へと拡大したことだったのだ。/こうした状況に対処するには、強欲さをののしるだけではすまない。この社会において市場が演じる役割を考え直す必要がある。市場をあるべき場所に留めておくことの意味について、公に議論する必要がある。この議論のために、市場の道徳的限界を考えぬく必要がある。お金で買うべきではないものが存在するかどうかを問う必要がある。

原書:What Money Can't Buy: The Moral Limits of Markets. Farrar, Straus and Giroux, 2012.

目次:
序章――市場と道徳
 市場勝利主義の時代/すべてが売り物/市場の役割を考え直す
第1章 行列に割り込む
 ファストトラック/レクサスレーン/行列にならぶ商売/医者の予約の転売/コンシェルジュドクター/市場の論理/市場 vs 行列/市場と腐敗/ダフ屋行為のどこが悪い?〔ヨセミテのキャンプ場を転売する/ローマ教皇のミサを売りに出す〕/行列の倫理
第2章 インセンティブ
 不妊への現金/人生への経済学的アプローチ/成績のよい子供にお金を払う/保険賄賂/よこしまなインセンティブ/罰金 vs 料金/二一万七〇〇〇ドルのスピード違反切符/地下鉄の不正行為とビデオレンタル/中国の一人っ子政策/取引可能な出産許可証/取引可能な汚染許可証/カーボンオフセット/お金を払ってサイを狩る/お金を払ってセイウチを撃つ/インセンティブと道徳的混乱
第3章 いかにして市場は道徳を締め出すか
 お金で買えるもの、買えないもの/買われる謝罪や結婚式の乾杯の挨拶/贈り物への反対論/贈り物を現金にする/買われた名誉/市場に対する二つの異論/非市場的規範を締め出す/核廃棄物処理場/寄付の日の迎えの遅れ/商品化効果/血液を売りに出す/市場信仰をめぐる二つの基本教義/愛情の節約
第4章 生と死を扱う市場
 用務員保険/バイアティカル――命を賭けろ/デスプール/生命保険の道徳の簡単な歴史/テロの先物市場/他人の命/死亡債
第5章 命名権
 売られるサイン/名前は大事/スカイボックス/マネーボール/ここに広告をどうぞ/商業主義の何が悪いのか?/自治体マーケティング〔ビーチレスキューと飲料販売権/地下鉄駅と自然遊歩道/パトカーと消火栓/刑務所と学校〕/スカイボックス化
謝辞
原注

★今週火曜日15日取次搬入です。最速で16日(水)以降、順次店頭販売開始となることと思います。累計80万部と聞く『これからの「正義」の話をしよう』は白い本でしたが、今度の本は黒。さすがサンデル教授というべきか、テーマは身近でもっとも根の深い「お金」の問題です。難解な経済学ではなく、原題「お金では買えないもの――市場の道徳的限界」にある通り、今の世の中に蔓延している「何でもお金で解決できる」風潮の代表例をひとつひとつ取り上げ、何がそもそも問題なのか、このままでいいわけがないけれどどうしたらよりよく生きることができるのかを哲学的に追及していきます。

★サンデル教授はこう述べます。「われわれは不一致を恐れるあまり、みずからの道徳的・精神的信念を公の場に持ち出すのをためらう。だが、こうした問いに尻込みしたからといって、答えが出ないまま問いが放置されるわけではない。市場がわれわれの代わりに答えを出すだけだ。それが過去三〇年間の教訓である。市場勝利主義の時代は、たまたま、公的言説全体が道徳と精神的実体を欠いた時期と重なった。市場をその持ち場にとどめておくための唯一の頼みの綱は、われわれが尊重する善と社会的慣行の意味について、公の場で率直に熟議することだ」(283頁)。「民主主義には完璧な平等が必要なわけではないが、市民が共通の生を分かち合うことが必要なのは間違いない。大事なのは、出自や社会的立場の異なる人たちが日常生活を送りながら出会い、ぶつかり合うことだ。なぜなら、それが互いに折り合いをつけ、差異を受け入れることを学ぶ方法だし、共通善を尊ぶようになる方法だからだ。/つまり、結局のところ市場の問題は、実はわれわれがいかにしてともに生きたいかという問題なのだ。われわれが望むのは、何でも売り物にされる社会だろうか。それとも市場が称えずお金では買えない道徳的・市民的善というものがあるのだろうか」(284頁)。

★サンデルさんは東日本大震災後にハーバード大学で開催されたシンポジウムの記者会見で次のように語ったそうです。「今後、原子力をめぐって議論が起こると思いますが、そのときには、率直に意見を交わし、お互いに敬意を払った議論を重ねて頂きたい。恐れることなく、避けることなく向き合って欲しいのです。今、世界中の民主主義が苦戦しています。それはある種の空虚さに打ち勝とうと、もがいているのです。ここ数十年、経済の問題が、政治や民主主義的な議論を押しのける傾向がありました。ですからそうした国家で不満が溜まっていることは驚きではありません。政党や政治家、政治のあり方に対する不満です。これは日本だけではないのです。ヨーロッパでもアメリカでもイギリスでも、政治の進め方に強いフラストレーションが溜まっているのです。今回のことは民主主義に対する究極のテストだと思います。人々にとって最も重要な問題、最も熾烈に争われるような問題が、公けの場で敬意をもって議論できるかどうか。ですから、日本でこの議論が真剣に行われることを期待します」と。

★「皆で話し合う」こと、それは簡単なようでとても難しいことです。話し合えば何とかなるというのではなくて、話し合いを通じてより良い社会を目指すことへの忍耐強い努力をサンデルは常に私たちにうながします。話し合ったって無駄なんだ、と絶望する時、民主主義は死んでしまいます。「共により良く生きる」ことの希望こそが民主主義の命なのでしょう。サンデル教授の実践は、常に現実と向き合う強靭さというものを教えてくれます。今月28日には東京国際フォーラムで来日特別講義「ここから、はじまる。民主主義の逆襲」が開催されます。なんと5000人もの聴衆を前にしたイベントです。おそらくはNHKで後日視聴できるでしょう。

◎マイケル・サンデル既訳書
『自由主義と正義の限界』(菊池理夫訳、三嶺書房、1992年11月;第2版、1999年3月;改題改訂版『リベラリズムと正義の限界』、勁草書房、2009年2月)
『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』(鬼澤忍訳、早川書房、2010年5月;ハヤカワ文庫、2011年11月)
『民主政の不満――公共哲学を求めるアメリカ』(上下巻、金原恭子+小林正弥監訳、勁草書房、2010年7月-2011年)
『完全な人間を目指さなくてもよい理由――遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』(林芳紀+伊吹友秀訳、ナカニシヤ出版、2010年10月)
『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(上下巻、NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム+小林正弥+杉田晶子訳、早川書房、2010年10月;上下巻、ハヤカワ文庫、2012年2月)
『日本で「正義」の話をしよう――サンデル教授の特別授業』(DVDブック、鬼澤忍訳、早川書房、2010年10月)
『サンデル教授の対話術』(小林正弥共著、NHK出版、2011年3月)
『マイケル・サンデル大震災特別講義 私たちはどう生きるのか』(NHK「マイケル・サンデル究極の選択」制作チーム編、NHK出版、2011年5月)
『公共哲学――政治における道徳を考える』(鬼澤忍訳、ちくま学芸文庫、2011年6月)
『Justice(正義) ――ハーバード超白熱講義DVD BOOK:マイケル・サンデルの原点となる講義を映像収録』(DVDブック、クリス・クリステンセン共著、宝島社、2011年8月)


モティベーションをまなぶ12の理論――ゼロからわかる「やる気の心理学」入門!
鹿毛雅治=編著
金剛出版 2012年4月 本体3,200円 四六判並製384頁 ISBN978-4-7724-1249-0

帯文より:あなたのやる気、何%? きまぐれモティベーションを操って、この退屈と倦怠とストレスひしめく現代社会を生き延びるための思想地図!

カバーソデ紹介文より:幻想の自由意志神話(「我思うゆえに我あり」)と虚構の根性論=精神論(「やればできる」)に支えられてきたモティベーション論を、最新の心理学理論でリノベーション。ビジネスから学習、社交から娯楽、友人関係から家族関係まで、トラブル+ストレス必至の現代社会を生き延びるためのモティベーションセオリー・コレクション!/内発的動機づけ、自己決定理論、接近・回避動機づけ、他者志向的動機、自動動機、フロー理論、達成目標理論、自己認知、セルフ・エフィカシー、自己制御学習、学習性無力感、そしてパーソナルセオリーへ――たがいにつながりあう12のセオリーは、わたしたちにとって近くて遠い心の不思議を解き明かし、モティベーション統御(コントロール)のためのヒントを与えてくれる。/世界にひとつ、あなただけのパーソナル・モティベーションセオリーをマスターするための、とっておき12レッスン!

目次:
序「やる気の心理学」への招待(鹿毛雅治)
Theory 1 好きこそものの上手なれ――内発的動機づけ(鹿毛雅治)
Theory 2 夢や目標をもって生きよう!――自己決定理論(櫻井茂男)
Theory 3 生物の根源的な動機を考える――接近・回避動機づけ(村山航)
Theory 4 努力は自分のためならず――他者志向的動機(伊藤忠弘)
Theory 5 知られざる力――自動動機(及川昌典)
Theory 6 楽しさと最適発達の現象学――フロー理論(浅川希洋志)
Theory 7 何を目指して学ぶか――達成目標理論(中谷素之)
Theory 8 自分のことをどう捉える?――自己認知(外山美樹)
Theory 9 「できる」はできるという信念で決まる――セルフ・エフィカシー(伊藤圭子)
Theory 10 自分の学習に自分から積極的にかかわる――自己制御学習(上淵寿)
Theory 11 どうして無気力になるのか――学習性無力感(大芦治)
Theory 12 自分や周りの人のやる気に働きかける――パーソナルセオリー(金井壽宏)
あとがき
事項索引・人名索引

★発売済。版元ウェブサイトで序とあとがきが立ち読みできます。ビジネスマンにとってもこれから就職しようという学生にとっても、「仕事へのやる気」や意欲や動機付けの有無というのは実に大きな問題で、そのためか、ビジネス書売場にはあの手この手で現代人のモチベーションを上げるべく、毎月様々な新刊が出ています。また、どの本が「効果がある」のか、ネット上には様々なレビューが飛び交っています。しかし、いったい何を信じたらいいのでしょうか。心理学系の硬派版元「金剛出版」さんがこのたび発売した新刊『モティベーションをまなぶ12の理論』は、「この本を読めばやる気がでる」というようなガイドブックではなくて、「やる気」がそもそも何なのかをきっちりと研究した12通りの学説と理論を俯瞰的に勉強できる本です。つまり、「やる気よ、今すぐに俺に降りて来てくれ」というような神頼みのための本というよりは、忙しい日常の合間にも冷静に平静に自分やら世間やらを見つめ直したい時に役に立つ本です。各理論の丁寧な解説のあとに文献や読書案内が付されているので、書店員さんがビジネス書売場にどの専門書をコンバートしてくるか考える際のヒントにもなるのではないかと思います。実際のところ、ビジネス書と心理学書の相性は抜群なので、一般書と専門書のうまいグラデーションが作れれば、ビジネス書売場はより深い情報を蓄える場になって、プロ意識を磨きたいビジネスマンの欲求に応えることができますし、一般書とともに専門書が売れれば単価が高いため売上アップにもなるでしょう。おそらく中規模書店の棚改革はこうした一般書(と新書)と専門書の絶妙なブレンドによる「教養」層の編集いかんに掛っているのではないか、と予想できます。

★「教養」層を不断に開発する一方で、読書人をよりディープな世界に引きずり込む上で、人文書は非常に役に立ちます。人文書が擁する話題の幅は歴史的にも地理的にも実に広く、格好の素材が揃っています。こんな難しい本を誰が読むんだよ、と諦めずとも、一般教養の浅瀬の一歩先はすぐ専門書の深い淵へとつながっています。一般書や娯楽書のみで完結している書棚よりも、あちこちに「蟻地獄」があった方が面白いです。ではその蟻地獄をどこに仕掛けるのか。そここそが書店員さんの直感と腕前の見せどころなのでしょうね。



間主観性の現象学 その方法
エトムント・フッサール=著 浜渦辰二+山口一郎=監訳
ちくま学芸文庫 本体1,600円 A6判並製560頁 ISBN978-4-480-09448-3

帯文より:現象学の根本問題。最重要テクストが初めて一冊に。精選編集、本邦初訳。
カバー紹介文より:フッサール現象学の主要概念「間主観性」をめぐるテクストを精選、初めて一冊に集成する。「間主観性」とは、主観(私)と主観(他人)の「間」にあって、主観や客観を基にしては本質を捉えられない「現象」をいう。観念論や唯物論を超えて、事象そのものを捉えるためのキー概念である。それは現代哲学の大きな潮流「他者」論の成立を促した。現象学の中心課題であり、フッサールが生涯追い続けたテーマであった。その問題圏は、現象学的還元、精神科学、時間論、生活世界などへと広がり、諸学の地平を開いた。待望の本邦初訳。これまでにない明解な訳文で、現象学への新たな扉が開かれる。

目次:
まえがき
凡例
第一部 還元と方法
 一 現象学の根本問題
 二 純粋心理学と現象学――間主観的還元
 三 現象学的還元の思想についての考察
 四 現象学的な根源の問題
 五 『デカルト的省察』における間主観性の問題について
 原注・訳注
第二部 感情移入
 六 感情移入に関する古い草稿からの抜粋
 七 感情移入 一九〇九年のテキストから
 八 「感情移入」と「類比による転用」の概念にたいする批判
 九 本来的な感情移入と非本来的な感情移入
 一〇 「内的体験」としての感情移入――モナドは窓をもつ
 原注・訳注
第三部 発生的現象学――本能・幼児・動物
 一一 脱構築による解釈としての用事と動物への感情移入
 一二 他のエゴと間主観性における現象学的還元
 一三 構成的発生についての重要な考察
 一四 原初性への還元
 一五 静態的現象学と発生的現象学
 一六 世界と私たち――人間の環境世界と動物の環境世界
 一七 幼児――最初の感情移入
 原注・訳注
改題
訳者解説(浜鍋辰二)
索引

★発売済。『間主観性の現象学』全三巻からの抜粋。巻頭の「現象学の根本問題」が突出して長いのでこれだけでも一冊に独立できそうですが、そこをあえてそうしていないのがいいと思います。フッサールの哲学はとびきりに難解ですが、どうしたわけか、読んでいると難解な中にもふと入り込める穴があって、フッサール特有の用語を頭に入れさえすればどんどん議論の内側へのめり込んでいけることもあったりします。ちなみに第11論文で「脱構築」とあるのはAbbau(解体)の新訳。言葉は難しいですが、フッサールはようするに人間の「生きている」状態というのがいかなるものなのか、そして世界といかに「関係している」のかを原理的に突き詰めて考えようとした人ですから、日常生活の中のふとした瞬間に浮かび上がる世界と存在の《謎=裂け目》を覗こうとすると、そこには必ずフッサール的問いが影のように付きまとうのだと思います。私は個人的には中公文庫で出ているいわゆる「危機」書が好きです。

◎エトムント・フッサール既訳書(単独著のみ、文庫のみ)
『純粋現象学及現象学的哲学考案』上下巻、池上鎌三訳、岩波文庫、1939-1941年
『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』細谷恒夫+木田元訳、中公文庫、1995年
『デカルト的省察』浜渦辰二訳、岩波文庫、2001年
『ブリタニカ草稿』谷徹訳、ちくま学芸文庫、2004年
『フッサール・セレクション』立松弘孝編、平凡社ライブラリー、2009年

★来月のちくま学芸文庫の新刊(6月6日発売)では、バタイユ『ニーチェ覚書』酒井健=訳、岡倉天心『茶の本 日本の目覚め 東洋の理想――岡倉天心コレクション』櫻庭信之+斎藤美洲+富原芳彰+岡倉古志郎=訳、伊藤義教『アヴェスター』などが出るようです。


眼に映る世界――映画の存在論についての考察
スタンリー・カヴェル(1926-)=著 石原陽一郎=訳
法政大学出版局 2012年4月 本体3,800円 四六判上製347+28頁 ISBN978-4-588-00973-0

帯文より:哲学的映画論の白眉。不在の「現実」をスクリーンに映し出し、一つの世界を魔術的に出現させる映画というメディアは、二十世紀の歴史と思考に何をもたらしてきたか。その物理的・技術的基盤に注目しつつ、絵画・写真・演劇とは異なる映画そのものの本質を、モダニズムの美学批判的眼差しのもとに探究した映画理論の古典。バザン以後の問いを受け継ぎ、ドゥルーズ『シネマ』と双璧をなす名著、待望の邦訳。

原著:The World Viewed: Reflections on the Ontology of Film. Enlarged edition, Harvard University Press, 1979.

★発売済。目次詳細は版元ウェブサイトで確認できます。カヴェルの単独著の翻訳はようやくこれで3冊目。中でもカヴェルの映画論は本書を第一作として原書では何点もあるのですが、訳書は今回が初めて。カヴェルの映画論については他著も含め、訳者解説「なぜ映画が哲学の問題たり得えるのか」で説明されています。アメリカ現代哲学におけるその重要な地位にも関わらず、カヴェルはまだまだ日本には知られていないと言えるかもしれません。彼の既訳書とともに、人柄を伝えるかもしれない動画を貼り付けておきます。

◎スタンリー・カヴェル既訳書(単独著のみ)
『センス・オブ・ウォールデン』齋藤直子訳、法政大学出版局、2005年
『哲学の〈声〉──デリダのオースティン批判論駁』中川雄一訳、春秋社、2008年



★なお、法政大学出版局さんの6月の新刊には、ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『時間の前で――美術史とイメージのアナクロニズム』(小野康男+三小田祥久=訳、6月22日発売予定)や、マーサ・C・ヌスバウム『正義のフロンティア――障碍者・外国人・動物という境界を越えて』(神島裕子訳、6月29日発売予定)などが予告されています。

by urag | 2012-05-13 23:54 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 05月 06日
注目新刊:2012年4月~5月


鳥の言葉――ペルシア神秘主義比喩物語詩
アッタール=著 黒柳恒男=訳
東洋文庫(平凡社) 2012年5月 本体3,000円 全書判上製318頁 ISBN978-4-582-80821-6
帯文より:ペルシアの神秘主義詩人アッタールの代表作を本邦初訳。様々な比喩、物語、逸話によって神秘主義思想を表現。神である霊鳥を探し求めて、鳥(神秘主義者〔スーフィー〕)たちがたどる苦難に満ちた旅。

目次:
第一章 書の初め
第二章 鳥たちの集合・会議
第三章 シェイフ・サムアーンの物語
第四章 鳥たちとヤツガシラの問答
第五章 谷の描写
第六章 スィーモルグの御前の三十羽の鳥〔スィー・モルグ〕
解説(訳者)

★まもなく発売。ボルヘス『幻獣辞典』(晶文社、1974年;1998年)を読んだ方にはおなじみの「シムルグ」の話。ありがたくもペルシア語原典からの翻訳がついに刊行されました。世界に秩序と規律をもたらすべく不在の王を探しに飛び立った鳥たちが様々な艱難を乗り越えて宮殿に辿りつくと、王の驚くべき正体に気づかされる、というお話し。ボルヘス経由で結末を知っていてもやはり最後は感動的ですし、結末を知らない方は、知らないままに読んだ方が得です。最初は大勢だった鳥たちが次第に少なくなり、わずかな仲間を残すのみになるその過程を読む者もまた、鳥たちの一員となって空を翔けます。ついに王と対面する時、あたかも読者自身もその場面に立ち会っているかのような高揚感があります。アッタール(1142c-1230c)の既訳書には散文作品の『イスラーム神秘主義聖者列伝』(藤井守男訳、国書刊行会、1998年)があります。なお、6月の東洋文庫新刊は『新訳 ラーマーヤナ』第二巻。


ジャマーノ編集長 学術論文出版のすすめ
ウィリアム ジャマーノ=著 松井貴子=訳 原田範行=解題
慶應義塾大学出版会 2012年4月 本体3,800円 A5判並製274頁 ISBN978-4-7664-1939-9
帯文より:「すぐれた論文」は「すぐれた本」になりうるか? コロンビア大学出版局の元編集長が、学術出版のイロハを分かりやすくユーモアを交えて解説。すぐれた学術書を執筆する秘訣を“出版社の目線”から伝授する、研究者と編集者必携の書。日本の学術出版界事情を補足する解題(原田範行)付き。

原書:Getting it Published: A Guide for Scholars and Anyone Else Serious about Serious Books, 2nd edition, The University of Chicago Press, 2008.

目次:
第二版への著者まえがき
第一章 本を出版するということ
第二章 出版社の仕事
第三章 原稿を書く
第四章 出版社を選ぶ
第五章 出版社に接触する
第六章 編集者が求めているもの
第七章 原稿評価のプロセスを勝ち残る
第八章 出版契約を結ぶ
第九章 コレクションとアンソロジー
第十章 引用、掲載図版など
第十一章 原稿を引き渡す
第十二章 原稿がたどる道
第十三章 電子出版とは何か
第十四章 次回作に向けて
終章

★発売済。英米語圏と日本では出版の市場規模が違いますし、たとえば出版契約や著作権の法令など国によって文化的に異なりますから、デリダやスピヴァクなどを手掛けた海外の名編集長と言っても実務的には参考にならないのではないか、などと出版人はつい先入観で思ってしまうわけですが、これはなかなか、いや、かなり親切な本です。出版社が著者に期待していることは本書でほとんどすべて把握できるだろうと思います。むろん、本書を掲げて「日本の出版社はこの通りにやってないんじゃないか?」と詰め寄られても困るわけですが、国境を越えても真であることももちろんありますから、研究者にとっては充分な予習になるはずです。また、出版人にとっても自分の仕事を「海外水準」から評価し直す良い機会になるだろうと思います。論文の書き方についてのハウツー本は色々ありますが、学術系出版社との付き合い方をこと細かく伝授するお節介な(良い意味で)類書はほとんどないですから、本書はこの手のスタンダードとして長らく重宝するのではないでしょうか。




同一性の謎――知ることと主体の闇
ピエール・ルジャンドル(1930‐)=著 橋本一径=訳 
以文社 2012年5月 本体2,200円 46判上製120頁 ISBN978-4-7531-0301-0 
帯文より:私が私であるのは何故か? 人間自身の未知なる秘密を出発点に、科学や経済を陰で支える〈法〉のメカニズムを明るみに出し、西洋的制度の核心に迫る。現代思想の要である「ドグマ人類学」の創始者が高校生に向けて語る格好の入門書。

原書:La Balafre:À la jeunesse désireuse..., Mille et une nuits, 2007.

目次:
はじめに 意欲ある若者たちへ
向こう傷
 I 第一の方向
 II 第二の方向
応用編
 I 自らを認識する
 II ユダヤ=ローマ=キリスト教のシナリオからの派生物
 III 理論的な広がり
イコノグラフィ
訳者あとがき

★発売済。今までに刊行された訳書のうちもっとも短い内容であり、なおかつ高校生相手の講演ということで、帯文にある通りルジャンドルのドクマ人類学への「格好の入門書」とみなされうるかと思います。ただし、日本のではなくフランスの高校生ですから、日本の場合、実際は大学生以上でないと読みにくいかもしれません。「これから私がみなさんに提案するのは、道を踏み外す練習、ただそれにつきます。この練習は容易なものではありません。私たち一人ひとりが、自分の習慣的なバランス、つまり先入観や思いこみと、一時的に縁を切ることが求められます」(14頁)とルジャンドルは語りかけます。西洋文明の定礎と同一性をめぐる法学史的考察の原野へと向かうその踏み外しは独特ではありますが、それは文明を突き動かす古い約束事の庭に至るための王道でもあります。その庭から見える景色はいわば舞台裏から見る〈文明という装置〉であり、またとない道案内としてルジャンドルが読者を惹きつけてやまない魅力はまさに歴史を透視するその視点に存するのだろうと思います。


全-生活論――転形期の公共空間
篠原雅武(1975‐)=著 
以文社 2012年4月 本体2,400円 46判上製225頁 ISBN978-4-7531-0302-7 
帯文より:私たちはなぜ自らの「痛み」を言葉にするのをやめてしまったのか? 新進気鋭の思想家が、自身の感覚を研ぎ澄まし、「生活の哲学」の蘇生に賭けた、渾身の書き下ろし!

目次:
序章 生活の失調
第一章 公共性と生活
第二章 装置と例外空間
第三章 誰にも出会えない体制
第四章 開発と棄民
第五章 生活世界の蘇生のために

本文(序章)より:本書は、生活という組織体が壊れ、失調し、荒んでいくということを、全体性の死滅という観点から、論じていこうとするものである。全体性とは、生活という組織体を織り成すさまざまないとなみを、集め、関係づけ、出会わせ、織り成していく作用であり、はたらきのことだ。こうした意味での全体性があってはじめて、生活は、組織体となり、存続可能なものとなる。/……ひそやかに、だが着実に現れつつある何ものかの断片を関係づけ、織り成していくための全体性は、これから新たに発案し、創出していかなくてはならないたぐいのものだ。それは、……表向き明るさを装わされつつ束ねられ硬化と停滞を強いられている生活を解きほぐすところに、回復され、蘇生することになるだろう。

★発売済。『公共空間の政治理論』(人文書院、2007年)、『空間のために――遍在化するスラム的世界のなかで』(以文社、2011年)に続く、単独著第三弾です。現代人の生のあちこちに走っているほころびや亀裂と向き合うことを自らに課しつつ、それでもなお生きていくために、単に生きるのではなく共に創造し蘇生するために、手さぐりで、手作りで、先行者たちの遺した「点」を結んでいく本書は、あるいは読むことの痛みを読者に課すものでありながら、温かく優しく未知の読者へと語りかける誠実な本になっていると思います。著者が取り上げる現代人の傷の来歴はしばしば、読者にとっては目をそらしておきたい生々しいものです。それだけに、それだからこそ、本書は哲学思想書売場の日本現代思想の棚で強力な磁力を発揮し、本書で言及された書籍や思想家をもっとも活きいきした関係性の新しい網目へと再編成する核となりガイドとなるのではないかと予感させます。担当編集者はMさん。Mさんは3月に矢部史郎さんの『3・12の思想』を手掛けたばかり。机上の空論ではないアクチュアルな思想書を読みたい方は、このMさんの仕事を逐一チェックされていることと思います。

by urag | 2012-05-06 03:59 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 23日
弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍


◎イヴ=アラン・ボワさん(『アンフォルム』共著者)
◎近藤學さん(『アンフォルム』共訳者)
◎岡本源太さん(『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』著者)
芸術批評誌「リア」第27号(2012年3月28日発行)にボワさんの論考「THERMOMETERS SHOULD LAST FOREVER――エドワード・ルーシェイの液体語(後編)」が訳載されています。訳者は『アンフォルム』の共訳者の近藤學さんです(同論考の「前編」は第26号(2011年8月20日)に掲載)。また、同号では、岡本源太さんの評論「洞窟の出口へ――『世界制作の方法』展に寄せて」も掲載されています。

なお、同号のメイン特集「批評家はどこにいるのか」では、弊社発売『表象』誌の現編集委員である星野太さんが参加する座談会「美術をめぐる言論の現在と美術批評の可能性」(沢山遼×野田吉郎×星野太)を読むことができます。同特集に掲載された年表「出版にみるゼロ年代の批評活動」も興味深いです。


◎堀江敏幸さん(ドアノー『不完全なレンズで』訳者)
◎立木康介さん(ネグリ『芸術とマルチチュード』共訳者)
河出書房新社さんの季刊誌「文藝」2012夏号の特集「古井由吉」で、『古井由吉自撰作品』の刊行を記念した古井さんへのインタビュー「文学は「辻」で生まれる」は、堀江敏幸さんが聞き手となっています。もうひとつのインタビュー「40年の試行と思考――古井由吉を、今読むということ」の聞き手は佐々木中さんです。佐々木さんは同号に書き下ろし新作「晰子(あきこ)の君の諸問題」を寄稿されています。また、同誌での立木康介さんの連載論考「露出せよ、と現代文明は言う」は、今回が「エピローグ」となっています。


◎ロドルフ・ガシェさん(『いまだない世界を求めて』著者)
新潟大学人文学部哲学・人間学研究会『世界の視点――知のトポス』7号に、ガシェさんの論考「ヒュポテュポーシス──カントにおける感性的描出(hypotyposis)の概念についてのいくつかの考察」(宮﨑裕助+福島健太訳)が訳載されています。原文は1990年に発表されたSome Reflections on the Notion of Hypotyposis in Kantです。なお同号では、ヤコービ、フィヒテ、ハイデガーなどの論考の翻訳も掲載されています。



◎ジャン=ジャック・ルソー(ウェブ連載『化学教程』著者)
白水社の新シリーズ「白水iクラシックス」の刊行第一弾として以下の書籍が刊行されました。

起源
ジャン=ジャック・ルソー著 原好男+竹内成明訳 川出良枝選・解説
白水社 2012年4月 本体2,600円 四六判並製258頁 ISBN978-4-560-09601-7 
版元紹介文より:ルソー生誕三百年! 尽きることない着想の源泉。『人間不平等起源論』『言語起源論』を収録。歯止めのない私有財産制度がうみだす貧富の差、強き者・持てる者たちによる巧妙な圧制、憎しみと暴力がもたらす分裂と無秩序、安楽と引き替えに隷属状態に甘んじる文明人の精神の荒廃──。かつて平和に暮らしていたはずの人類が直面するこうした数々の悲惨は、いつ、いかなる経緯で生じたのか? 生誕三百年を記念したルソー・コレクションの口火を切る本巻は、〈起源〉をめぐる論考を収録する。自然人の無垢と文明社会に生きる人間の堕落の対比を極限まで推し進めた『人間不平等起源論』では、人間同士の絆が必然的に抑圧や差別、排除を伴うという、人間の共同性に対する根底的な問いに貫かれる。一方、十八世紀フランスで流行った言語の起源をめぐる論争に参戦した『言語起源論』では、言語によって積極的に他者との関わりを深める人間像が提示される。果たして両者は矛盾しているのか。それとも、両者をつなぐ論理があるとみるべきか。起源をめぐる二つの作品を合わせ読むことによって、ルソーの政治観の全貌が明らかになる。選者である川出良枝・東大教授による導入と詳細な解説を付す。

本文より:「人間は邪悪であり、悲しく絶えざる経験がその証拠を不要にしているが、しかしながら人間は本来善良であり、私はそれを証明したと思っている。いったいそれほどまでに人間を堕落させたのは、人間の構成のなかに生じた変化、人間が行なった進歩と、獲得した知識でなければなんであろうか」(「人間不平等起源論」より)。

目次:
起源 (川出良枝)
人間不平等起源論
言語起源論
解説 人間の共同性の起源をめぐる根源的問いかけ (川出良枝)

新しいシリーズ「白水iクラシックス」の第一弾であり(同時配本は、マックス・シェーラー『宇宙における人間の地位』(亀井裕+山本達訳/木田元解説)、シリーズ内シリーズとなる「ルソー・コレクション」(川出良枝選)の第一巻。同社刊の『ルソー全集』から改訳する「ルソー・コレクション」の構成は以下の通り。

『起源』(人間不平等起源論、言語起源論)原好男+竹内成明訳
『文明』(学問芸術論、政治経済論、ヴォルテール氏への手紙、他)山路昭+坂上孝+浜名優美ほか訳
『孤独』(孤独な散歩者の夢想、他)佐々木康之訳
『政治』(コルシカ憲法草案、ポーランド統治論)遅塚忠躬+永見文雄訳

なお、主著のひとつ「社会契約論」は白水uブックスのほうで作田啓一訳が2010年に新書化されています。解説は今回のコレクションと同じ、川出先生です。なお、「白水iクラシックス」は巻末に「発刊にあたって」という版元の文章が共通で印刷されており、そこでは次のようにシリーズの趣旨が説明されています。「白水iクラシックスは、哲学・思想の古典をアーカイブしてゆく叢書です。〔…〕いま「幸福」と「希望」の根源的再考が求められています。〈i=わたし〉を取り巻く世界を恢復する一助として、この叢書が資することを願っています」とのことです。

by urag | 2012-04-23 21:10 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 22日
注目新刊:『共通番号制なんていらない!』『ソウルダスト』


共通番号制(マイナンバー)なんていらない!――監視社会への対抗と個人情報保護のために
小笠原みどり+白石孝=著
航思社 2012年4月 本体1,400円 四六判並製176頁 ISBN978-4-906738-01-4
帯文より:個人識別システムは社会保障も民主主義も切り崩す! 制度の内容と意味をわかりやすく解説しながら、過去40年の歴史をひもとき、政府・企業の真のねらいを白日のもとにさらして検証、徹底的に批判する。

本文より:個人情報はいまや、国だけでなく、あらゆるビジネスが求める利益の源になった。官庁や大企業は、ますます私たちの収入、住所、家族構成、学歴、職歴、病歴などを知りたがり、そうした情報を私たちの背後で政治や商売に利用する。もちろん、この過程で情報の目的外使用、大量流出、詐欺、なりすまし事件が発生する。いずれにしても、国と資本は個人情報という力を一方的に蓄える。そのことが私たちの生き方に、この国の民主主義に、どんな影響を与えるかを、この本は追っていく。(「はじめに」8頁より)

目次:
はじめに
序章 二〇二一年――共通番号が「空気」になった日【フィクション】
第I章 政府がふりまく三つのうそ――社会保障の充実、公平な税制、被災者の救済
 1 社会保障の充実にはならない
 2 公平な税制にはならない
 3 被災者の救済にはならない
 4 結論
第II章 四十年の挫折――変わり続ける目的、膨大な浪費、住基ネットの末路
 1 「ムダなIT予算の典型」となった社会保障カード
 2 「国民総背番号」の出発点
 3 ICカード実験は失敗続き
 4 国が自治体を乗っ取る
 5 住基ネットは「国のシステムではありません」
 6 反対世論と民主党
 7 「国民の利便性」にも「行政の効率化」にもならず
 8 自治体に過大なコスト
 9 必要とされなかった住基カード
10 電子申請も大赤字
11 共通番号導入に弱者を利用
12 それでも残るデータマッチングの違憲性
第III章 国民IDカード――全人口を識別する
 1 強制された任意
 2 時間と空間をつなぐ
 3 データベースとつながる
 4 身体をとらえる
 5 植民地支配というルーツ
 6 「内なる敵」を見張る外国人登録証
 7 「国民」を序列化した戸籍と住民登録
 8 国民IDカードを廃止した英国
 9 データで振り分けられる個人
10 透明な主権者
第IV章 番号をとりまく現実――頻発する情報流出と、操作される世論
 1 個人情報大量流出が日常化する韓国
 2 厳罰化はなりすまし対策にならない
 3 住基ネットには反対したメディア
 4 広告に取りこまれる言論
 5 産官学で民意を装う
 6 押しつけられる絆
付記 法案のポイント解説
あとがき

★4月18日取次搬入予定、20日ごろ店頭販売とのことです。『デジタル社会のプライバシー――共通番号制・ライフログ・電子マネー』に続く、新しい版元「航思社」さんの第二作です。プレスリリースによれば、序章を含む全五章の内容は以下の通り。

「序章はフィクションとして、共通番号制が導入された後の社会を描きます。しかし、ここで描かれる技術はすでに実用化され、2012年の日本社会のあちこちで導入されている「現実」です。第I章では、共通番号制が導入されると、政府のいう目的とは真逆に、(1)社会保障の抑制(大幅削減)、(2)不公平税制(貧困・格差・差別の拡大)、(3)被災者切り捨て、となることを明らかにします。第II章では、1970年代の「国民総背番号制」から住基ネットまでの番号制の歴史を振り返ります。ここでも導入の名目とは裏腹に、巨額のムダ金が費やされ、「行政の非効率化」「国民の利便性の縮減」を結果した現実を明らかにします。第III章では、共通番号カード=国民IDカードが、いかに差別拡大・人権抑圧を引き起こし、民主主義の根幹をおびやかしているかを論じます。第IV章では、番号制度が定着している韓国で起きている大量の個人情報流出問題を取り上げるとともに、住基ネットに反対した日本のマスコミがなぜ今回の共通番号制で賛同しているのかを批判的に検討します。」

★担当編集者のOさんは「個人情報に安全神話は通じない」と強調しておられます。合理化の美名のもとに個人情報が集中管理されたとして、もし「事故」が起こった場合、責任を負わされるのはほかならぬ国民一人ひとりでしょう。それがいかに危ういことか、本書が教えるものは大きいと思われます。第一作『デジタル社会のプライバシー』とともに、いまそこにある危機を学ばねばなりません。

★この第二作から、オビには航思社さんのシンボルマークが印刷されています。海上に建って四方に光を放っている燈台が同社のマーク。ウェブサイトに記載されている同社の出版方針は「思想の海にたしかな航跡を描く」というものです。私は当初、航跡を描くのは航思社さんなのだと思っていましたが、シンボルマークを拝見する限り、航跡を描く主体はあくまでも読者であることが分かりました。闇夜の荒波に光を送るのが出版社の社会的使命である、という意味なのでしょう。波に洗われつつ一人立つ燈台というのは、航思社さんの決意を表しているのでしょう。版元のシンボルマークに感動するのは久しぶりのことでした。


ソウルダスト――〈意識〉という魅惑の幻想
ニコラス・ハンフリー=著 柴田裕之=訳
紀伊國屋書店 2012年4月 本体2,500円 46判上製304頁 ISBN978-4-314-01095-5
版元紹介文(その1)より:〈意識〉は脳内のマジックショーにすぎない――それはいったいなぜ発生し、生物学的にはどのような役割を果たしているのか? 意識研究の最先端を切り拓く大胆な仮説を提唱する、理論心理学者ハンフリーの集大成! 

原書:Soul Dust: The Magic of Consciousness, Princeton University Press, 2011.

目次:
招待の口上
プレリュード
 第1章 目が覚めるとはどういうことか
第1部
 第2章 「何かのよう」であるということ
 第3章 私秘化した反応
 第4章 ループをたどる
第2部
 第5章 意識の重要性
 第6章 そこに存在すること
 第7章 魔法をかけられた世界
 第8章 そうか、それが私というものだったのか!
 第9章  自分自身であること
第3部
 第10章 魂の生態的地位に入る
 第11章 危険な領域
 第12章 死を欺く
 最終章 結び
訳者あとがき
原注
索引

版元紹介文(その2)より:本書『ソウルダスト』でハンフリーは驚くべき新理論を提示する。意識は私たちが頭の中で自ら上演するミステリアスなマジックショーにほかならないというのだ。この自作自演のショーが世界を輝かせ、自分は特別で超越的な存在だと私たちに思わせてくれる。こうして意識はスピリチュアリティへの道をつけ、そのおかげで私たち人間は、ハンフリーが「魂のニッチ〔生態的地位〕」と呼ぶ場所に暮らす恩恵を受けることができると同時に、死への不安も抱くことになる。隙のない主張を展開し、知的好奇心と読書の喜びをかき立てながら、深遠な難問に次々と答えを出していく。そして、誰もが頭を悩ます疑問、すなわち、いかに生きるべきか、いかに死の恐怖に立ち向かうかという課題に、意識の問題が直結していることを明らかにする。神経科学や進化理論を基盤に、哲学や文学の豊富な知見を織り交ぜて書かれた本書は、意識の正体についての独創的な理論を提唱すると同時に、人間の生と魂を讃える――。リチャード・ドーキンスやダニエル・デネット、マット・リドレーら著名な科学者たちからも支持を得る、〈知の軽業師〉ハンフリーの刺激的論考。

版元紹介文(その3)より:未だ解決を見ない難問として人類の前に立ちはだかる〈意識〉の謎。その解明をライフワークとする著者は、本書で神経科学や進化理論を基盤に独自の手法で探究を進め、「人間の〈意識〉は頭のなかの劇場で行われる、ミステリアスなマジックショーにすぎない。この自作自演のショーが、我々の住む世界を輝かせ、人間を特別な存在にした」。「たとえ科学的にその仕組みが解明されても、意識が直接経験するさまざまな感覚や魂の不滅という信念は揺るがない」と主張し、さらには生物の避けえぬ運命たる〈死〉についての考察を深めていきます。

推薦の言葉(その1):「理論心理学者のハンフリーは絶好調だ。シェリーやキーツなどのロマンティックな詩情と、シャーロック・ホームズばりの鋭利な知性を持ち合わせた彼は、その明敏な頭脳をもって、科学の一大難問「意識の進化的な起源」に切り込んでいく。そしてこの解決不可能とされる問題に、これまでで最も優れた答えを出したのだ」――V.S.ラマチャンドラン(『脳のなかの幽霊』著者)。

推薦の言葉(その2):「科学者が自然現象の解明を試みると、マジックのようなミステリアスな面を見落としていると非難されることもある。だが、この詩的な驚異の一冊で、ニコラス・ハンフリーは正反対のことをやってのけた。彼は脳を探究するうちに、マジックこそが意識の要であることを発見したのだ」――マット・リドレー(『やわらかな遺伝子』著者)。

★26日発売予定。ハンフリーの訳書はこれで4冊目になります。かつてダニエル・デネットはこう述べたと言います。「ニコラス・ハンフリーは、大胆さと慎重さを兼ね備えた、類稀な知の軽業師だ」と。実際のところ、意識を自作自演の虚構だとする本書には多くの読者がまずは唖然とするでしょう。しかしそれは決して人間存在の価値を貶めるものではなく、豊かな生への肯定につながるものなのだと教えられるとき、読者は感銘を覚えるに違いありません。著者は本書冒頭にこう書きます。「私が行き着く答えは、これまで科学が示してきたものとは似ても似つかない。これ自体は、けっしてほめられたものではないことは認めざるをえない。どう考えても、科学は革命的ではなく累積的なものであってしかるべきだから。とはいえ、人間が自分の経験にまつわる謎について抱く大きな疑問に関しては、意識についての従来の研究がほとんど何の答えも出せていない事実を考えれば、私たちにおなじみの科学には、もう頼ってはいられないのかもしれない」(「招待の口上」11頁より)。

★「訳者あとがき」では本書を端的にこう解説しています。「意識はその持ち主の一生を、いっそう生き甲斐のあるものにする〔…〕。人間は現象的意識を持つことを満喫する(第一のレベル)。自分が現象的意識を持って生きている世界を愛する(第二のレベル)。現象的意識を持っている自己を尊ぶ(第三のレベル)。〔著者は、第二のレベルにおいて人間が〕感覚を外界に投影していることを明らかにする。ちなみに、本書のタイトルもそこから来ている。この感覚の投影が〔…〕「ソウル・ダスト」、すなわち魂の無数のまばゆいかけら、現象的感覚のマジックが周りじゅうのものに振りまかれ、世界を輝かせている〔…〕。/そして、その輝きをもたらしているのが自分自身であることに気づいたとき、人間は「最初どれほどがっかりしようと、天啓のように悟るだろう。自然の退屈さではなく、あなた自身の心の素晴らしさを」(172頁)」(270-271頁)。

★本書は著者の前作『赤を見る』の「最後の数ページを出発点とする」(9頁)ものであることが明かされています。ハンフリーの訳書には本書を含め以下のものがあります。

◎ニコラス・ハンフリー(Nicholas Humphrey: 1943-)既訳書
『内なる目――意識の進化論』垂水雄二訳、紀伊國屋書店、1993年8月
『喪失と獲得――進化心理学から見た心と体』垂水雄二訳、紀伊國屋書店、2004年11月
『赤を見る――感覚の進化と意識の存在理由』柴田裕之訳、紀伊國屋書店、2006年11月
『ソウルダスト――〈意識〉という魅惑の幻想』柴田裕之訳、紀伊國屋書店、2012年4月

★「意識とは何か」を問う新刊は本書のほかにも今月発売されています。デイヴィッド・イーグルマン『意識は傍観者である――脳の知られざる営み』(大田直子=訳、早川書房、2012年4月)は、最新脳科学の研究成果をもとに、「あなたは自分の脳が企むイリュージョンに誰よりも無知な傍観者だ」(版元紹介文より)と暴いた英米ベストセラーです。先月、岩波文庫で西田幾多郎の『善の研究』が新組で発売されましたが、最新の理論心理学や脳科学の見地を踏まえながら西田を再読するとなかなか面白い経験になりそうです。西田の議論は圧倒的に古びて見えますが、かえって最先端の科学が西田を裏打ちするところもあるような気がしています。

by urag | 2012-04-22 21:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 15日
注目新刊:『戦後部落解放運動史』『都市が壊れるとき』


戦後部落解放運動史――永続革命の行方
友常勉(1964-)著
河出ブックス 2012年4月 本体1,300円 B6判並製232頁 ISBN978-4-309-62441-9
帯文より:「水平社宣言」90年――反差別の苦闘が問うもの。輝かしくきびしい戦いの希望と絶望、その可能性から近代をこえる思想をさぐる。
カバー(表1)紹介文より:かつて社会をゆるがした被差別部落民の闘いは何を問いかけたのか。戦後から現在にいたる様々な経験を思想的に検証するかつてない果敢な試み。
カバー(ソデ)紹介文より:「人の世に熱あれ、人間に光あれ。」――水平社宣言にはじまり差別糾弾闘争、そしてその限界を突破した七〇年代の狭山闘争をへて、反差別を全社会に波及させたあと、新たな模索の時代にはいった被差別部落民の闘いは何を問いかけているのか。その戦後から現代まで、運動、行政、文化などの各領域の経験を思想的に検証しながら、〈デモス〉=排除された民の宣言の可能性に迫る、俊英による、いまだ誰もなしえなかった果敢な試み。

目次:
はじめに
第一章 戦後部落解放運動の検証のために
第二章 狭山闘争の思想史
第三章 芦原病院小史――同和行政の総括のための試論
第四章 〈黒い翁〉の発見
第五章 地域社会の未来
終章 『ふつうの家』と『地の群れ』
引用・参考文献一覧
あとがき

★発売済。友常さんの単独著の三冊目になります。巻頭に「戦前の日本の社会主義革命(および民族民主革命)の枠組みに規定されてきた戦後部落解放運動史を、もう一度資本主義社会における前近代的な身分制度の存在というアポリアと、そのアポリアに直面した主体の形成を中心に読み直すこと。これが本書の目的である」(7頁)と書かれています。さらに各章については「第一章で「オール・ロマンス事件」から同和行政の開始時期まで、第二章で狭山闘争、第三章で大阪の芦原病院問題を中心にした同和行政論、第四章で中上健次、村崎修二らの被差別の文化論、芸能論と、その復活の試み、そして第五章で一九七四年に集中した浪速闘争、八鹿闘争が提起している論点、また東日本の部落問題と残されている課題について論じている」(15頁)。

★東日本大震災と原発事故の経験を経て、著者は「政治権力の奪取を自己目的化せず、不断に国家と交渉し、国家を相対化し、それと対峙する社会運動の在り方について考えざるをえなくなった」(223頁)と「あとがき」で述懐しています。本書の議論は濃密であり、急がずゆっくり読むべきものです。同和問題について予備知識がない場合は、著者が「はじめに」の注で薦めている黒川みどり『近代部落史――明治から現代まで』(平凡社新書、2011年)を併読するといいかもしれません。「差別という収奪は不断に静かに起きている」(211頁)と著者は書きます。職業や出自によって社会の片隅に追いやられていた人々の慟哭と労苦は、当事者でないかぎり想像すら難しいのかもしれませんが、人々が紆余曲折を経て社会に取り込まれてもなお(取り込まれるからこそより)執拗に残る差別は、人が人とどう向き合い、どう共に生きるかという問題を根源的に問い返してやみません。

★東京外国語大学出版会(および大学付属図書館)の機関誌「pieria」の2012年春号「新しい世界との邂逅――外大生にすすめる本/世界の詩とめぐりあう」において、同大学の国際日本研究センター専任講師をつとめる友常さんは「運命にあらがう人々の〈身体の内乱〉」をテーマに次の三冊を学生の皆さんに薦めています。高橋和巳『邪宗門』(上下、朝日文芸文庫、1993年)、金薫『孤将』(蓮池薫訳、新潮文庫、2008年)、和合亮一『詩の礫』(徳間書店、2011年)。詳しい選書コメントは本誌をぜひご覧ください。

◎友常勉 (ともつね・つとむ:1964-)単独著既刊
『始原と反復――本居宣長における言葉という問題』三元社、2007年7月
『脱構成的叛乱――吉本隆明、中上健次、ジャ・ジャンクー』以文社、2010年10月
『戦後部落解放運動史――永続革命の行方』河出ブックス、2012年4月


都市が壊れるとき――郊外の危機に対応できるのはどのような政治か
ジャック・ドンズロ著 宇城輝人訳
人文書院 2012年4月 本体2,600円 4-6判上製236頁 ISBN978-4-409-23048-0
帯文より:街を揺るがした、「くず」どもの怒りの理由は何か――2005年におけるパリの暴動後に書かれた、フランス社会学の泰斗による迫真の分析。
帯文(裏表紙)より:貧困、人種、民族によってフランスの都市は、もはや共和主義の理念とは程遠いまでに分断されている。郊外に貧困と暴力とともに取り残される若者、田園地帯の新興住宅地に逃げ込む中産階級、官と民により再開発される都心…。この分断を乗り越え、もう一度都市を作り直すことはいかにして可能か。本書は、フランス都市政策の挫折の歴史をふまえ、その困難な道を指し示す、フランス社会学の泰斗による迫真の分析である。それは、経済格差の拡大と貧困、都市および地域コミュニティの荒廃、そして移民労働者の受け入れに揺れる日本社会にとっても、有益なものとなるだろう。

原書:Quand la ville se défait: Quelle politique face à la crise des banlieues ?, Seuil, 2006.

目次:
まえがき――あぶれからくずへ
序章
第一章 都市問題――都市を分離する論理の出現
第二章 都市に対処する政策――社会的混合の名における遠隔作用による住居対策
第三章 都市を擁護する政策――移動性を促し、居住者の実現能力を高め、都市を結集するために
結論――都市の精神
訳者解説 有機的連帯から都市の精神へ
翻訳対応表/年表(フランスにおける郊外暴動と都市政策略史)/人名索引

★19日(木)取次搬入です。ドンズロの訳書が出るのは実に20年ぶり。本書の「まえがき」を人文書院のウェブサイトで読むことができます(書名のリンク先をご覧ください)。その書き出しはとても印象的です。「くず〔ラカイユ〕。郊外の若者たちを目がけて血気にはやる内務大臣〔当時、内務大臣だった現大統領ニコラ・サルコジのこと。郊外暴動での強硬姿勢が翌々年の大統領選での勝利に結びついたといわれる〕が放ったこの否定的な言葉は、若者たちが棄て置かれていると感じていたあらゆる団地で、三週間にわたる夜間暴動の嵐をひきおこすのに充分であるだろう。たしかに、若者たち自身この語を使っていた。だがそれは自嘲心のなせるわざだったのだから、かれらを指すのに本気で使ってはならない言葉だった。たとえそんな言葉であったにしても、たった一言で暴動を増長させてしまったのは、まさに現況確認のしかたが暴動を準備していたからである。だがそれはいつからなのか。どのくらい前から自嘲と公的軽蔑が希望と理解に勝るようになったのだろうか」(5頁)。

★「絶望の台頭」(12頁)とドンズロが端的に評した状況に若者たちが浸されているのはフランスに限った話ではなく、先進諸国や日本においても見られることです。ドンズロはまた、「中流階級の不満が同じく「許容限度」の閾を越えた外郊外では、かれら中流階級は、泥舟と化した社会的上昇モデルにますますしがみついて暮らしており、下からのグローバリゼーションの脅威と、上からのグローバリゼーションの受益者から浴びせられる軽蔑とのあいだに捕らわれて右往左往している。この不満は、棄て置かれた街区の暴動ほど目立たないように見えるが、基本的にいって、人口のこの部分〔中産階級〕が極左か極右に投票する傾向を強めていることから判断すれば、おそらく重要でないとはいえない」(58頁)とも書きますが、日本の状況も大して変わりません。社会問題のあらわれとしての都市の荒廃を分析し、都市再生を模索する本書は、民主主義の内実とまちづくりのありようをめぐる問いとして読者に熟慮を促すでしょう。

◎ジャック・ドンズロ(Jacques Donzelot: 1943-)既訳書
『家族に介入する社会――近代家族と国家の管理装置』ジル・ドゥルーズあとがき、宇波彰訳、新曜社、1991年11月
『都市が壊れるとき――郊外の危機に対応できるのはどのような政治か』宇城輝人訳、人文書院、2012年4月

by urag | 2012-04-15 18:48 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 10日
弊社出版物の著者や訳者の方々の最近の御活躍


★ジュディス・バトラーさん(『自分自身を説明すること』著者)
以下の新刊が刊行されました。原書はFrames of War: When is Life Grievable ?, Verso, 2009で、2004年から2008年にかけて執筆され加筆修正された論考をまとめたものです。なお、弊社ではバトラーさんの著書『権力の心的な生』(Judith Butler, The Psychic Life of Power: Theories in Subjection, Stanford University Press, 1997)を刊行する予定です。

戦争の枠組――生はいつ嘆きうるものであるのか
ジュディス・バトラー著 清水晶子訳
筑摩書房 2012年3月 本体2,900円 四六判上製256頁 ISBN978-4-480-84719-5 
帯文より:傷つきやすい〈生〉への責任を問う。『ジェンダー・トラブル』のジュディス・バトラー最新刊。暴力、移民排除、性の政治。

目次:
謝辞
序章 あやうい生、悲嘆をもたらす生
第1章 生存可能性、被傷性、情動
第2章 拷問と写真の倫理――ソンタグとともに思考する
第3章 性の政治、拷問、そして世俗的時間
第4章 規範的なものの名における非-思考
第5章 非暴力の要求
原注
訳者解題


★大竹伸朗さん(『UK77』『権三郎月夜』『ネオンと絵具箱』著者)
弊社で2006年10月に刊行させていただいた『ネオンと絵具箱』が来月文庫化されます。ちくま文庫で5月9日発売。

ネオンと絵具箱
大竹伸朗著
ちくま文庫 2012年5月 本体950円 文庫判352頁 ISBN978-4-480-42918-6

なお、トーハンが運営するウェブサイトe-honの文庫新刊情報によれば、ちくま文庫の5月新刊には、ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』第五の書や、由良君美『みみずく偏書記』などがあり、学芸文庫ではド・ラ・ボエシ『自発的隷従論』(西谷修+山上浩嗣訳)や、エトムント・フッサール『間主観性の現象学 その方法』(浜渦辰二+山口一郎訳)が予告されています。


★大橋泉之さん(「暴力論叢書」「古典転生」装丁者)
2012年4月6日発売の以下の新刊の装丁を手掛けられています。

ラテンアメリカにおける従属と発展──グローバリゼーションの歴史社会学
フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ+エンソ・ファレット著 鈴木茂+受田宏之+宮地隆廣訳
東京外国語大学出版会 2012年4月 本体2,800円 四六判上製352頁 ISBN978-4-904575-19-2
帯文より:国家はいかにして経済成長を手にすることができるのか。「先進国=中心」と「途上国=周辺」という構図を超えて、経済発展の歴史とその可能性を「構造的・歴史的アプローチ」によって鋭く論じたラテンアメリカ研究の古典。
恒川惠市(東大名誉教授)「解説」より:本書は、悲観的な言説が支配的だった時代に、ブラジルを含む発展途上国の成長可能性を言い当てていたという点で、画期的な本であり、今こそ読み直されるべき書物である。さらに本書は、経済発展における国家の役割を正面からとりあげることで、市場と国家の関係についての、今日に至る論争にも一石を投じる内容を含んでいる。


★舞台芸術研究センターさん(『舞台芸術』発行元)
★ジャン・ジュネさん(『公然たる敵』著者)
★鵜飼哲さん(ジュネ『公然たる敵』共訳者)
★根岸徹郎さん(ジュネ『公然たる敵』共訳者)
★岑村傑さん(ジュネ『公然たる敵』共訳者)
編集委員に学長の浅田彰さんが加わり、第三期『舞台芸術』の刊行が先月より開始になりました。弊社では同誌の第一期全10巻の発売元を担当し、第二期全5巻は角川学芸出版さんが発行発売元になっています。第三期も角川さんです。第三期の第一弾となる第16号の特集「変貌するジュネ――ジャン・ジュネを再発見する」では、2011年3月26~27日に京都芸術劇場・春秋座(京都造形芸術大学内)で開催されたジャン・ジュネ生誕100年記念シンポジウム 「変貌するジュネ」のパネル・ディスカッションなどが採録されています。パネル・ディスカッションには、渡邊守章さんや浅田彰さん、宇野邦一さんらをはじめ、『公然たる敵』の共訳者の三氏も参加されています。また、ジュネのテクスト「フレッチマンへの十一通の手紙」が岑村傑さんの訳で掲載されています。

舞台芸術(16)マラルメ、ジュネ、パゾリーニを横断する
京都造形芸術大学舞台芸術研究センター編
角川学芸出版 2012年3月 本体1,500円 B5判 ISBN978-4-04-621127-9
発行元内容紹介文より:今期から、より舞台の躍動感が伝わるB5判にリニューアル。「変貌するジュネ」と題したシンポジウムをはじめ、話題のコラボレーションパフォーマンス「マラルメ・プロジェクト」などを収録。



第一期01~10号および第二期10~15号まではA5判でしたが、第三期からはB5判にサイズアップ。比較写真を載せておきます。なお、第一期、第二期、第三期のクレジットの比較も以下に記しておきます。

第一期
責任編集:太田省吾・鴻英良
編集委員:八角聡仁・森山直人・橋口薫(3号まで)・酒井徹(4号より)
編集制作:オシリス
デザイン:川畑直道・石塚雅人
編集協力:内野儀・戸谷陽子(4号・7号~10号)・瀬尾俊二(4号より)・パトリック・ドゥ・ヴォス(7号のみ)

第二期
編集委員:太田省吾(11号のみ)・渡邊守章(14号より)・八角聡仁・内野儀・森山直人・酒井徹(13号まで)
編集制作:オシリス
装幀:相模友士郎
レイアウト:川畑直道・石塚雅人
編集協力:瀬尾俊二・佐藤和佳子(14号より)

第三期
編集委員:渡邊守章・浅田彰・八角聡仁・森山直人
制作協力:角川学芸出版 企画事業推進室
装丁・本文デザイン:菊池祐(株式会社ライラック)
本文DTP:株式会社ライラック
編集協力:佐藤和佳子

by urag | 2012-04-10 21:49 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 08日
まもなく発売:『新訳 ラーマーヤナ』、平凡社より
新訳 ラーマーヤナ 1
ヴァールミーキ著 中村了昭訳
東洋文庫(平凡社) 2012年4月 本体2,800円 全書判上製324頁 ISBN978-4-582-80820-9
帯文より:『マハーバーラタ』と共にインド古典文学を代表する一大叙事詩の初めての完訳。第1巻「少年の巻」は、魔王を対峙するためにヴィシュヌ神が人間に化身して誕生したラーマ王子がシーターと結婚するまでを語る。

★まもなく発売です。サンスクリット語原典からの和訳。同書には、平凡社東洋文庫編集部による「『新訳 ラーマーヤナ』刊行につきまして」と題した紙が挟まれており、そこには以下の通り書かれています。

「小社東洋文庫では、すでに岩本裕訳による『ラーマーヤナ』1・2が刊行されていますが、岩本裕氏の逝去によって、続刊の刊行を断念せざるをえなくなりました。このたび新たに第一巻より、中村了昭氏による全訳を、『新訳 ラーマーヤナ』(全七巻)として刊行いたします。岩本裕訳中断につきまして、御迷惑をおかけした読者に、お詫び申し上げます。」このお知らせは、平凡社ウェブサイトのインフォメーション欄でも公開されています。

★岩本裕訳『ラーマーヤナ』は東洋文庫で第1巻「少年の巻」が1980年4月、第2巻「アヨーディヤーの巻」(79章までの抄訳)が1985年1月に、それぞれ訳者による解題を付して刊行され、現在は現在はワイド版(オンデマンド版)で入手可能です。

★『ラーマーヤナ』はこれまで英訳本からの重訳版や、概略再話版などが出ていましたが、サンスクリット語原典からの翻訳は岩本訳が初めてでした。岩本さんは第2巻刊行の三年後、1988年4月にお亡くなりになりました。『マハーバーラタ』の原典訳を手掛けられた上村勝彦さんも完訳を見ずに2003年1月にお亡くなりになっています(ちくま学芸文庫で、第8巻「カルナの章」49章までの訳が発売)。第一巻巻頭の「まえがき」で上村さんはこう書いていました、「『マハーバーラタ』の英訳者は、三冊目の訳書を出版したところで亡くなっている。『マハーバーラタ』と並ぶ叙事詩『ラーマーヤナ』を翻訳されていた岩本裕先生は、二冊を出版されただけでこの世を去られた。この種の仕事は寿命をちぢめるものなのかもしれない」(10頁)。岩本さんは1910年生まれ、上村さんは1944年生まれでした。まさに命を賭しての翻訳で、戦慄を覚えます。

★今回『ラーマーヤナ』の新訳を手掛けられる中村さんは1927年のお生まれ。第一巻巻頭の「訳者まえがき」にある梗概によれば全七巻の構成は原典に従い以下の通りとなります。

第一巻「少年の巻」
第二巻「アヨーディヤー都城の巻」
第三巻「森林の巻」
第四巻「猿の国キシュキンダーの巻」
第五巻「優美の巻」
第六巻「戦争の巻」
第七巻「後続の巻」

★底本は1909年のボンベイ本。バローダ出版の批評版(1960-75年)を参照されているとのことです。なお、東洋文庫の次回配本は5月刊、『鳥の言葉』。



by urag | 2012-04-08 12:40 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)