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2017年 08月 06日 ( 1 )


2017年 08月 06日

注目新刊:『原典 ルネサンス自然学』上下巻、ほか

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原典 ルネサンス自然学(上)』池上俊一監修、名古屋大学出版会、2017年8月、本体9,200円、菊判上製650頁、ISBN978-4-8158-0880-8
原典 ルネサンス自然学(下)』池上俊一監修、名古屋大学出版会、2017年8月、本体9,200円、菊判上製656頁、ISBN978-4-8158-0881-5
メルロ=ポンティ哲学者事典 第一巻 東洋と哲学・哲学の創始者たち・キリスト教と哲学』モーリス・メルロ=ポンティ編著、加賀野井秀一/伊藤泰雄/本郷均/加國尚志監訳、白水社、2017年7月、本体5,400円、A5判上製436頁、ISBN978-4-560-09311-5

★『原典 ルネサンス自然学』上下巻は発売済。『原典 イタリア・ルネサンス人文主義』を2009年に同版元から上梓された池上俊一さんの監修による、原典で読むルネサンス思想のアンソロジー大冊の第二弾です(ちなみに『原典 イタリア・ルネサンス人文主義』はアマゾンではカート落ちでマケプレの高額出品しか表示されませんが、版元品切ではないので要注意です)。『原典 ルネサンス自然学』は凡例に曰く「15世紀から17世紀の代表的自然学者30人の作品を翻訳し、それぞれに訳者による解題と注を付したもの」。高額本ではありますが、その分中身は充実しており、買い逃す手はありません。収録作品は書名のリンク先でご確認いただければと思いますが、せっかくなので人名だけでも列記しておくと以下の通りになります。

★フランシス・ベイコン、コンラート・ゲスナー、プロスペロ・アルピーニ、オリヴィエ・ド・セール、プラーティナ、ウゴリーノ・ダ・モンテカティーニ、ジャン・フェルネル、ジローラモ・フラカストロ、アンドレアス・ヴェサリウス、マルチェッロ・マルピーギ、ウィリアム・ハーヴィ、アンブロワーズ・パレ、ヘンリクス・コルネリウス・アグリッパ、パラケルスス、トンマーゾ・カンパネッラ、ジョン・ディー、ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ、ゼバスティアン・ミュンスター、マルシリオ・フィチーノ、ニコラウス・コペルニクス、ティコ・ブラーエ、ヨハネス・ケプラー、ウィリアム・オートリッド、シモン・ステヴィン、マリアーノ・ディ・ヤコポ (タッコラ)、ヴァンノッチョ・ビリングッチョ 、伝トマス・ノートン、ロバート・ボイル、アイザック・ニュートン、ウォルター・チャールトン。まさに壮観としか言いようがありません。

★前代未聞の一大コーパスとなる本書の上巻巻頭に置かれた池上さんによる解説にはこうあります。「環境破壊問題や自然災害の多発に直面した現代文明の行き詰まり感の中で、自然と人間の関係の見直しが喫緊の課題となっている。それに伴って西洋近代科学の意義も見直されようとしており、とりわけ近代科学を準備したルネサンス期の「自然学」には、従来行われてきたような遡及的――近代主義的――な見方だけではとらえきれない豊かな側面があることが、近年ではしきりに強調されている。/そうした情勢の中、本書はルネサンス期の多面的な「自然学」の広がりを、現代に受け継がれたもの、否定されたもの、潜行して無意識のうちに影響を拡げていったものなどを含め、原典の翻訳紹介によって示すことを企図している」(1頁)。「誰しもが、いわば総合的な宇宙論・人間学を追究していた」(2頁)時代の豊かな発想力の数々は、科学技術の進展を少数の研究者に頼るほかない現代人の狭量な世界観に、大きな刺激をもたらすに違いありません。

★近年では白水社さんから『フランス・ルネサンス文学集』(1~3巻、2015~2017年)も刊行されており、「ルネサンス」を学び直す読書環境が整いつつあるように思われます。なお、くだんの白水社さんにおかれましては『メルロ=ポンティ哲学者事典』の第3回配本となる第一巻が発売となりました。詳細目次が版元サイトにまだ掲出されていないので、すべてを転記しておきたいところですが、なにぶん量が多いため、主要部分のみ以下に掲げておきます。

Ⅰ 東洋と哲学(モーリス・メルロ=ポンティ)
インドの二人の哲学者
ブッダ(ジャン・フィリオザ)
ナンマールヴァール(ジャン・フィリオザ)
インドの哲学
ヴェーダ哲学(紀元前1500~1000年)
ブラフマーナ哲学(紀元前1000年~600年)
ヴェーダとブラフマンから独立した思想家(紀元前6~5世紀)
ジャイナ教(紀元前6~5世紀)
正統派仏教
非正統派仏教
インドの古典哲学
ダルシャナ
タントラ哲学
インド・イスラーム時代(13~14世紀)
インド・西欧時代(19~20世紀)
インド哲学を論じたインド人歴史家
中国の二人の哲学者
荀子(マックス・カルタンマルク)
荘子(マックス・カルタンマルク)
中国の古代哲学(紀元前二世紀まで)
儒教、道教、仏教(紀元前2世紀~紀元後10世紀)
新儒教の開花とその支配的広がり(6~16世紀)
新儒教に対する反動(17~20世紀初頭)
Ⅱ 哲学の創始者たち(モーリス・メルロ=ポンティ)
ソクラテス以前の哲学者たち
ヘラクレイトス(ジャン・ボーフレ)
パルメニデス(ジャン・ボーフレ)
ゼノン(ジャン・ボーフレ)
ソクラテス(ヴィクトール・ゴルトシュミット)
プラトン(ヴィクトール・ゴルトシュミット)
プラトンと後継者たち
ソクラテス学派
アリストテレス(ミシェル・グリナ)
アリストテレスと後継者たち
エピクロス(ヴィクトール・ゴルトシュミット)
エピクロスと後継者たち
クリュシッポス(ヴィクトール・ゴルトシュミット)
古ストア主義
懐疑主義と実証的な知
プラトンの伝統
中期・新ストア主義
エピクテトス(ヴィクトール・ゴルトシュミット)
新プラトン主義
プロティノス(ミシェル・グリナ)
Ⅲ キリスト教と哲学(モーリス・メルロ=ポンティ)
キリスト教哲学のはじまり
アウグスティヌス(ポール・ヴィニョー)
中世初期
イスラーム哲学、ユダヤ哲学とビザンティン哲学
中世
トマス・アクィナス(オリヴィエ・ラコンブ)
ドゥンス・スコトゥス(ポール・ヴィニョー)
ルネサンス
ニコラウス・クザーヌス(モーリス・ド・ガンディヤック)

★『原典 ルネサンス自然学』で訳出されている人名の中で当事典第一巻にて立項されているのは、フィチーノとパラケルススです。次回配本は最終となる別巻「現代の哲学/年表・総索引」です。

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★また、以下の新刊にも注目しています。

あたらしい無職』丹野未雪著、タバブックス、2017年7月、本体1,400円、B6判変型並製172頁、ISBN978-4-907053-21-5

★「シリーズ3/4」の初回配本2点の内の1冊。もう1冊は山下陽光『バイトやめる学校』です。同シリーズは「3/4くらいの文量、サイズ、重さの本。それぞれのやり方で、余白のある生き方をさがすすべての方へ送る新シリーズです」とのこと。非正規雇用、正社員、アルバイト、無職と渡り歩いてこられた編集者でライターの丹野未雪(たんの・みゆき:1975-)さんの、39歳から41歳までの記録です。多彩なフリーランス層に支えられている出版界に棲息する者にとってはまさに他人事ではない現実の一側面を垣間見ることができます。初出はタバブックスさんの雑誌「仕事文脈」第5号(2014年11月)と第6号(2015年5月号)。

★「39歳無職日記」(第1章)と「41歳無職日記」(第3章)の間に挟まっている「社員はつらいよ」(第2章)の、こんな言葉が胸に残ります。「これは傷なのだろうか。傷だとしたら、癒えていないのだろうか。思い出しても痛みすらない。傷というより、もはや文様のようだ。刺青」(106頁)。本書の書名になぜ「あたらしい」という形容詞が入っているのか途中までよく分かりませんでしたが、読み終えてみて「無職」はいつだってその都度新しい冒険になるほかはなく、日常は単純な繰り返しのようでいて実はそうでもないのだ、と自分なりにじんわり得心した次第でした。本書の刊行を記念して以下のトークイベントが予定されています。また発行元のタバブックスの宮川さんが登壇されるイベントについても特記しておきます。

日時:2017年8月11日(金・祝)19時~21時(開場18時30分)
会場:Readin' Writin' (台東区寿2-4-7)
定員:20名
料金:1,500円+1ドリンク
予約:リンク先をご覧下さい。

登壇:里山社・清田麻衣子/瀬谷出版・瀬谷直子/センジュ出版・吉満明子/タバブックス:宮川真紀
司会:よはく舎・小林えみ
日時:2017年8月23日19時~
会場:Readin'Writin'(リーディンライティン:田原町駅徒歩3分、台東区寿2-4-7)
料金:1000円(当日現金精算)+1ドリンク
定員:20名→30名に拡大しました(8/3修正)
申込:リンク先をご覧下さい。

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★さらに、最近では以下の新刊との出会いがありました。

EU崩壊――秩序ある脱=世界化への道』ジャック・サピール著、坂口明義訳、藤原書店、2017年7月、本体2,800円、四六判上製304頁、ISBN978-4-86578-133-5
ダダイストの睡眠』高橋新吉著、松田正貴編、共和国、2017年8月、本体2,600円、四六変型判上製264頁、ISBN978-4-907986-23-0

★『EU崩壊』は発売済。原書は『La Démondialisation』(Seuil, 2011)で、サピール(Jacques Sapir, 1954-:EHESS〔社会科学高等研究院〕主任研究員)の著書が訳されるのは今回が初めてです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭の「日本語版への序」でサピールはこう述べています。「今日時点で確認しておくべきは、〔・・・〕今作動しているEUが厄介な障害物になっていることはすでに明白だということである。というのも、EUが進めた対外開放の政策は、1990年代以降、われわれの産業の構造的危機を加速してきたからである。長い間わが国の強みであったエネルギーや輸送の分野においてインフラ体系が次第に劣化してきたのは、一貫してEUのせいであった。こうした政策を変えることは可能である。しかし抵抗があまりにも強いようであれば、断固としてわが国の経済政策を再国民化しなければならないだろう。ヨーロッパ・レベルの行動がわれわれに最大の可能性を開く行動であることは確かだが、貿易相手諸国との合意が一時的に不可能であることが判明したときには、各国レベルでの行動も決して排除すべきではない」(16頁)。帯文にはこうあります。「グローバリズムと「自由貿易」礼讃で焼け野原と化したEUの現状に対し、フランスが主導するユーロ離脱と新たな「欧州通貨圏」構想により、各国の経済政策のコントロール奪回を訴える」。

★『ダダイストの睡眠』はまもなく発売。詩人の高橋新吉(たかはし。しんきち:1901-1987)の作品14編(短篇小説12篇と詩作品2篇)と、編者による3つの解説、さらに略年譜が加えられたオリジナル編集凡です。シリーズ「境界の文学」の最新刊。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。電子書籍やオンデマンド本、再刊を除くとずいぶんと久しぶりの新刊です。編者あとがきによれば、松田さんにとって高橋新吉の読解の鍵となったのはフェリックス・ガタリだったと言います。「彼の物語の背後には、「何もいうことはない」という言葉の発生源のようなものが見え隠れしており、そこから何度も「狂気」を語り起こそうとする姿勢が浮かび上がってくるのだ。〔・・・〕狂気を何度も語り直すこの果てしなき言い換えのプロセスが、個々の言葉を下支えする通奏低音のようなものとして絶えず機能している」(258頁)。「発狂も一つの芸術である。熟練を要する」(「桔梗」50頁)と新吉は書いています。本書に接する時、「不気味な運動」と題された作品にある次の言葉が胸に迫ります。「地下室のような薄暗い建物であったが、内部は馬鹿に広かった。此んな大きい建物が何時の時代に建てられたものか、それは不思議な建物であった」(145頁)。極薄の直方体の集積によって構成される書物というこの建築物の内部では「人類の絶滅を美しい芸術として空想する」(「悲しき習性」181頁)新吉の影が、現代の読者に読まれることによって転生を果たすべく様子を伺っている濃密な気配がします。

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by urag | 2017-08-06 17:12 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)