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2017年 07月 19日 ( 3 )


2017年 07月 19日

注目新刊:中山元訳『存在と時間3』『今こそ『資本論』』

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★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
ハイデガー『存在と時間』(全8巻、光文社古典新訳文庫)の第3巻と、ウィーン『マルクスの『資本論』』(ポプラ社、2007年)の改題新書版『今こそ『資本論』』(ポプラ新書)を先週上梓されました。

ハイデガー『存在と時間3』に収録されているのは、第一部「時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明」第一篇「現存在の予備的な基礎分析」第三章「世界の世界性」第一七節「指示とめじるし」から、第四章「共同存在と自己存在としての世界内存在、「世人〔ひと〕」第二七節「日常的な自己存在と〈世人〉」まで。中山さん訳の『存在と時間』の最大の特徴は、長大な解説にあります。翻訳と懇切解説が一冊で読めることによって理解が深まるわけです。
なお光文社古典新訳文庫の9月新刊には、ソポクレス『オイディプス王』河合祥一郎訳、マキャヴェッリ『君主論』森川辰文訳、などが予告されています。

フランシス・ウィーン『今こそ『資本論』』は単行本刊行からすでに10年が経過している、という巻頭言にあらためて驚きます。巻頭言というのは、佐藤優さんによる「資本主義システムの下で生き残るために――新書化によせて」という一文です。「ウィーンの『資本論』解釈は、宇野〔弘蔵〕に近い」と佐藤さんは指摘しています。その理由については店頭で本書をご確認下さい。この巻頭言で佐藤さんはこうもしたためられています。「筆者は、学生時代だけでなく、外交官時代も、職業作家になった今も、『資本論』の論理は正しいと考えている。〔・・・〕自らの利潤を犠牲にして、労働者に回すような「人道的」資本家は、資本主義システムの下では生き残ることができないのだ。これが階級社会の本質だ」(5頁)。「資本主義が人間にとって理想的なシステムとは思わない」(6頁)。佐藤さんは親本刊行の時点で書かれた本書の巻末解説「『資本論』の論理で新自由主義を読み解く」において、「本書はこれから『資本論』の標準的な入門書になるであろう」とお書きになっています。なお本書では中山さんによる解説やあとがきの類は掲載されていません。

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by urag | 2017-07-19 11:38 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
2017年 07月 19日

重版情報:星野太『崇高の修辞学』3刷出来

星野太さんの『崇高の修辞学』の3刷ができあがりました。シリーズ「古典転生」で3刷に達したのは本書が初めてです。学術書の初版部数や重版部数が年々少なくなるなか、こうして売れていくことはたいへんありがたいことです。なお3刷にあたって新たな修正はありません。また、代官山蔦屋書店さんでは特別小冊子付の同書の在庫がまだ残っているそうなので、どうぞご利用ください。

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なお同書をめぐっては朝日カルチャーセンターで9月末に、星野さん自身による講義が行われます。リンク先でお申し込みが可能です。

講師:星野 太(金沢美術工芸大学講師)
講座内容:私たちは、「崇高」と聞いてどのようなものを思い浮かべるだろうか。素朴に考えれば、それは私たちの心を厳粛な畏怖によって満たす感情、あるいはそれを引き起こす対象のことだ、とさしあたりは言えるかもしれない。だが、そもそもこの「崇高」という概念は、遡れば古代の修辞家ロンギノスの『崇高論』という書物において論じられ、後に近代の哲学者カントの手により、美学の中心的な概念のひとつとして練り上げられたものである。本講座では、修辞学と美学という二つの分野にまたがるこの概念の歴史的変遷を、理論的な側面も含めて概説していくことにしたい。(講師・記)

日程:2017年9月30日(土)13:30-16:45 9/30 1回
場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
受講料(税込):9月(1回) 会員6,048円 一般7,344円
注意事項:途中15分休憩あり。教室は変わる場合があります。10階と11階の変更もあります。当日の案内表示をご確認ください。

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by urag | 2017-07-19 10:50 | 重版情報 | Trackback | Comments(0)
2017年 07月 19日

メモ(24)

すでに読まれた方も多いと想像しますが、「ねとらぼ」2017年7月16日付の九条誠一さんによる記名記事「Amazon“デリバリープロバイダ”問題、ヤマト撤退で現場は破綻寸前 「遅延が出て当たり前」「8時に出勤して終業は28時」」には戦慄を禁じえません。この記事では、デリバリープロバイダで配送業務に携わっているAさんと、Amazonの倉庫配送拠点であるFC(フルフィルメントセンター)で働くBさんの証言を紹介しています。すべての発言が重要なので出版業界人はぜひとも全文を読む必要がありますが、業界人が想像していた通りの現実に対する強烈な裏打ちとなる発言を一つずつ取り上げたいと思います。

まずAさん。「デリバリーステーションに所属している社員は、8時に出社して終業は28時というのが基本的な労働時間です。そのようなセンターが高品質なサービスを提供できるわけがありません。〔・・・〕大手企業でさえ撤退するような事業を、地域の中規模運送会社が行うのはやはり無理があります。今の運営は遅配ありきの運用であって、決して利用者のためにはなっていません」。

次にBさん。「Amazon自体はめちゃくちゃもうけているのに、そのAmazonを支えている会社はこんなに苦しい思いをしているのかと。ネット通販=配送料無料、注文すればすぐ届くのが当たり前……こういうイメージを創り上げてしまったことが、今回のような事態を招いてしまったのだと思います。しかし、Amazonとしてはそのイメージこそがブランド力ともいえるので、なかなか手放せないところなのでしょう」。

この記事のヤフーニュース版にはすでに5000近いコメントが寄せられていますが、トップコメントの一つにこんな声がありました。「もうAmazonはAmazonロジスティクスみたいな感じで専用の物流会社使ったほうが良いんじゃないかな?/物流の仕組みはあまり詳しくないからよく分からないんだけど。。」。実に正論です。ただ、アウトソーシングできるものはする、という姿勢を常としているように見えるアマゾンが一から物流会社を作ることは難しいのではないか、という見方が業界内にはあります。

「ねとらぼ」記事が言及している「はてな匿名ダイアリー」の2017年7月9日付エントリー「デリバリープロパイダの中の者だが人手不足で配送の現場はもうヤバイ」は、Aさんと同じくデリバリープロバイダの従業員さんの投稿ですが、これは匿名出版人の投稿「【再掲】アマゾンの「バックオーダー発注」廃止は、正味戦争の宣戦」と同様に、出版界を大いに震撼させている必読記事です。

従業員氏はこう証言しています。「皆さんはクロネコヤマトしか知らない人も多いですから、配送=日時通り届いて当たり前。不備があっても逐一、電話連絡があって当たり前…と思っていますよね。/残念ながら、それはヤマトだからこそ出来る芸当で、一般的な配送業者には真似出来ません。/ヤマトは、社員の教育、配送オペレーション、拠点の数まで全て完璧で、配送においてヤマトの横に出るものはいません」。「「時給300円で人を雇いまくれ。Amazonの荷物で稼ぐぞ!」/「ヤマトが逃げた今、うちらにスポットライトが当たり始めた」/等、社長は今の状況を喜んでいるようですが、現場は手取り12万(自爆あり)で休み無し14時間肉体労働、限界がもう来ています。疲弊しています」。

印象がとても悪いと感じるのは、こうした状況を恐らくは把握しているであろうにも関わらず、アマゾン・ジャパンのトップが対外的には次のように発言していることです。「配送遅延は実際に発生していたが、現在は解消した。まだスムーズになっていないところを直し、再発を防止したい」(「ITmediaビジネスオンライン」7月10日付、青柳美帆子氏記名記事「Amazon「プライムデー」、配送は「数カ月前から準備」」より、記者会見でのジャスパー・チャン社長の発言)。これはテレビニュースにもなっているのでご覧になった方もおられるかと推察しますが、「解消した」などとなぜ言えるのでしょうか。「そうした事実はない」が決まり文句の昨今の悪徳政治家かと見まごう発言に、利用者だけでなく、出版人も驚愕しています。もっと別の言い方はできなかったのでしょうか。いったいチャン社長は誰に向って「解消した」と宣言しているのか。

「弁護士ドットコムNEWS」7月11日付記事「アマゾンプライムデー、ドライバーたちは戦々恐々…「多くてさばけない」配達ミスも」では都内でプライムナウ(対象エリアでの買物が1時間以内に届くプライム会員向けサービス)の配送を担当する男性や、アマゾン利用客の主婦、ヤマト運輸のセールスドライバー、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』や『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』の著者・横田増生さんらに取材しています。ここでも上記の記事で書かれていることを再度事実確認できます。ヤフーニュース版でのコップコメントにはこんな声があります。「普通の消費者だが、最近、アマゾンを使うとき、配送業者のことを一瞬考えるようになった。そろそろ考えて使いませんか。皆さん」。この言葉に尽きる気がします。

デリバリープロバイダ関連の記事では以下の配信に注目が集まっていることは周知の通りです。

先の青柳氏の記事でも指摘されている「消費者の「アマゾン離れ」を引き起こしかねない状況となっている」ことに対して、アマゾンが下請けへの無茶振りではなく自社で解決すると決めて根本的な対応を講じない限り、客もメーカーも現実的に「アマゾン離れ」へと傾かざるをえなくなるでしょう。アマゾンだけに頼る買い方や売り方から、複数の他の通販サイトを使い分ける選択の時代への変化の萌芽が表れつつあるように見えます。この件はアマゾンでのカート落ち問題と併せて、後日再度言及するつもりです。

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なお米国のアマゾン・コムにおける物流の現在を追った記事には以下のものがあります。米国版「WIRED」2017年7月11日付、Davey Alba氏記名記事「The Humans Making Amazon Prime Day Possible」の日本語訳版「アマゾンの「プライムデー」は、人力なくして成り立たない──配送の現場を支える人々に迫った」(2017年7月15日配信)。

また、英国アマゾンで始まったドローン配送サーヴィス「Prime Air」についての記事には以下のものがあります。英国版「WIRED」2016年12月14日付、Matt Burgess氏記名記事「Amazon has made its first Prime Air drone delivery in the UK」の日本語訳版「アマゾン、ついに「ドローン配送」を実施:英国で」(2016年12月14日配信)。

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by urag | 2017-07-19 09:11 | 雑談 | Trackback | Comments(0)