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2014年 06月 25日

太洋社本社移転の影響を考える

専門的な話ですが、同様の案件をお持ちの版元さんもおられるかもしれないと思い、以下に記します。

出版取次の太洋社が本社移転の案内をついに出版社に通知し始めました。8月25日(月)から、仕窓口は地下鉄銀座線「末広町」駅至近のビルに移ります。「注文品物流」は戸田市美女木の同社戸田センターに集約するようです。物流拠点の移転はこれまで取次各社が時代の推移とともに行ってきたものですから、これについては今は脇におくとします。少しやっかいなのは、仕入窓口の移転の影響です。

弊社は日販、トーハン、大阪屋、栗田、太洋社の5社に新刊の見本出しを1人で行っています。利用する交通機関は電車とバスで、あとは徒歩(一部タクシー)です。新刊見本の際に自転車や自動車を利用する版元さん、複数の人数で見本出しする版元さん、郵送や宅配便ですべて済ませる版元さん、あるいは新刊見本を納品で済ませる版元さんなど、事情はそれぞれ異なると思うのですが、弊社と同じように、1人で5社を午前中(厳密に言えば9時半から11時半までの間)に車を使わず回る場合、売上5番手の太洋社に午前中に入るのがとても難しくなることは、版元の営業マンなら気づくと思います。

以前も少し書きましたが、現状では弊社では、地下鉄有楽町線「江戸川橋」で下車し、徒歩で9時半過ぎに太洋社に着くようにします。その次は神田川を挟んだ反対側のトーハンまで歩きます。トーハンを終えたら、タクシーで日販へ。日販の次は地下鉄丸ノ内線に乗って「後楽園」で下車、徒歩で大阪屋を回り、今度は都営三田線に「春日」から乗って「神保町」で降りて徒歩で栗田を回ります。取次窓口が混雑する〆日25日前1週間でなければ、このルートで午前中になんとか回り切れます。

取次搬入日まで中3日がここ10年のスタンダードですが、電車が止まったり、仕入窓口が混んでいたりすると、午前中は大阪屋に滑り込むのがやっとで、栗田には間に合わないことがあります。その場合は栗田のみ中2日に変更し、搬入日が取次他社とズレないようにします。どの取次を優先するかと言えば、それは売上順です。日販やトーハンは大阪屋より優先しなければならないし、大阪屋は栗田より優先されなければなりません。太洋社は5番手です。この現状で、太洋社が本社移転によりルートから外れるとどうなるか。トーハンと近いからこそ早めに回るルートに組み込めていたのが、栗田の後に回るとなれば、弊社の場合、かなりの高確率で「午前中に太洋社を回り切れず、太洋社への搬入日が取次他社より1日ズレ込む」ことになります。

そうなると一番影響が出るのが、太洋社を使ってまとまった部数の新刊を仕入れているTRC(図書館流通センター)のストックブックです。TRCにとっても太洋社にとってもストックブックの納品が取次他社の配本より1日ずれるのは面白いことではありません。納品が遅れても構わないとはまったく思っていないはずです。「午前中に太洋社を回り切れず、太洋社への搬入日が取次他社より1日ズレ込む」ことによって「太洋社からTRCSBへの納品が1日遅れる」事態を生むこの悪循環は、出版社にとっても面倒なことです。太洋社を利用する限りはSBへの納品は遅れることになりますから、最悪の場合「太洋社外し」が懸念されるのです。

(むろんこれは弊社のように、取次見本に1名しか人員を割いていない出版社がどれくらい多く存在するかによるので、単なる杞憂かもしれません。しかし私の知る限りでは、それなりの数の出版社が、1人で見本出しをしているように見受けます。地図が書き変わるためには、こうした出版社が多数派である必要はありません。たとえ1~2割の版元の搬入日が遅れるだけでも、それがずっと続くなら問題はおそらくけっして小さくはないのです。)

TRCがSBの扱いを太洋社から他社へ帳合変更してしまうと、SBの売上が大きいはずの太洋社はかなりの打撃を受けることになるでしょう。太洋社の売上が減ると困るのは、太洋社一手と取引している版元です。太洋社を介して他社取次へ仲間卸しているわけですから、太洋社が打撃を受ければ、その版元にも余波があります。これもまた最悪の場合、「太洋社および取引版元の連鎖倒産リスクの急上昇」が懸念されます。

(つまり、太洋社の本社移転の影響は、たかが見本出しの話とはいえ、太洋社への搬入日に配慮しきれない出版社の数次第では、思いがけない展開へと連鎖しかねないというのが私の印象です。おそらくそこまでの悪循環には陥らないにせよ、不測の事態に備える必要が出版社にとってもゼロではないわけです。)

弊社では太洋社仕入部さんと協議し、搬入日のズレこみを回避するごくシンプルな対策を取ることにしました。新刊見本についてはまず「搬入連絡票」を見本日当日午前中までにFAXし、現物を追って納品する、という方法です(昔からあるいわゆる「後見本」というやつですね)。むろんこうした場合でも、見本当日に日販やトーハンの窓口交渉で、搬入日が前倒しになった場合は、色々しわ寄せが起こります。万全な対策ではありませんが、ほかに方法もないようです(ちなみに他社より1日早く太洋社に見本出しすることや、宅配便で見本日午前中に納品するという選択肢は、印刷製本の事情で弊社には現実的ではありません)。

かつて栗田が文京区の仕入窓口を閉鎖して旧板橋本社(都営地下鉄「志村坂上」駅下車徒歩10分強)に窓口を移した時、書籍の窓口を訪れる版元が少なくなり、版元との人間関係が希薄になったという前例があります。太洋社の移転先は板橋ほど離れてはいませんが、それでも微妙に回りにくい場所ではあるので、直接訪問せず、郵送や宅急便で済ませようという版元が出てくるかもしれません。搬入日がズレようがそれは仕方ないという版元もその中には含まれることでしょう。ごくありふれた問題のようで、下手をすると悪循環につながりかねないこの問題について果たして太洋社さんがどう対策を取られるのか、注視したいと思っています。

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追記:この件がどうしてことさら「嫌な感じ」に見えるのか、同業者の方々はすでにご存じかと思います。背景にあるのは太洋社のここしばらくの経営以不振と最近の支払決済システムのトラブルです。こうした悪い空気がこれ以上続かないようにするべきところに本社移転が本決まりになり(それが以前から検討されていたことで、経営再建には必要なことだとしても)、出版社は一抹の不安感や不満を覚えているのではないでしょうか。SBの帳合変更というカードをTRCに切らせないためには、「太洋社で問題なし」という出版社の信任=後ろ盾も必要なはずです。その部分が若干危うくなりつつあるのかなと案じています。
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by urag | 2014-06-25 15:15 | 雑談 | Trackback | Comments(2)