URGT-B(ウラゲツブログ)
2024-03-17T21:47:13+09:00
urag
Backrooms(自社本、他社本、出版業界、等々)
Excite Blog
月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)
http://urag.exblog.jp/7029746/
2024-12-31T23:59:00+09:00
2024-02-13T15:59:33+09:00
2008-04-21T10:25:10+09:00
urag
ご挨拶
◎2011年6月28日~:ルソー「化学教程」翻訳プロジェクト。
◆近刊
2024年3月21日取次搬入予定:『平岡正明著作集』上下巻、各3,200円。
◆最新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
2024年02月16日発売:シャルロット・デルボー『無益な知識――アウシュヴィッツとその後2』本体2,400円。
2024年02月06日発売:アルベール・カミュ『結婚』本体2,000円、叢書・エクリチュールの冒険第24回配本。
2024年01月18日発売:ジュディス・バトラー『新版 自分自身を説明すること』本体2,700円。
2024年01月09日発売:近藤和敬『人類史の哲学』本体3,800円。
2023年12月01日発売:アンジェロ・ポリツィアーノ『シルウァエ』本体5,400円、シリーズ・古典転生第29回配本(本巻28)。
2023年12月01日発売:石川義正『存在論的中絶』本体2,600円。
2023年11月17日発売:小田原のどか/山本浩貴編『この国(近代日本)の芸術――〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』本体3,600円。
2023年11月09日発売:渡辺由利子『ふたりの世界の重なるところ――ジネヴラとジョルジョと友人たち』本体2,200円、シリーズ〈哲学への扉〉第10回配本。
2023年10月25日発売:茅辺かのう『茅辺かのう集成――階級を選びなおす』本体4,800円。
2023年10月02日発売:森山大道『写真よさようなら 普及版』本体4,500円。
2023年09月22日発売:ダヴィッド・ラプジャード『壊れゆく世界の哲学――フィリップ・K・ディック論』本体2,800円。
三田格氏書評(「ele-king」2023年11月20日、Book Revies欄)
藤田直哉氏書評「まだ絶望ではない――現在を生きるためのヒントを、フィリップ・K・ディックの著作の中に探る」(「図書新聞」2023年12月2日3617号8面)
2023年08月04日発売:『表象17:映像と時間――ホー・ツーニェンをめぐって』本体2,000円。
2023年08月01日発売:アレクサンドル・ヴヴェヂェンスキィ『ヴヴェヂェンスキィ全集』本体6,400円。
2023年07月28日発売:ジャン-リュック・ナンシー『否認された共同体』本体3,600円、叢書・エクリチュールの冒険第23回配本。
2023年07月28日発売:ステファヌ・マラルメ『散文詩篇』本体2,000円、叢書・エクリチュールの冒険第22回配本。
2023年06月12日発売:『多様体5:記憶/未来』本体3,000円。
2023年06月12日発売:ベンジャミン・ピケット『ヘンリー・カウ――世界とは問題である』本体6,000円。
2023年06月08日発売:フリードリヒ・シラー『シラー詩集』第1部:本体4000円、第2部:本体4,400円。
2023年05月24日発売:小泉義之『弔い・生殖・病いの哲学――小泉義之前期哲学集成』本体3,600円。
渡名喜庸哲氏書評「生命の哲学を紡ぎ直す――多様な側面をもつ生の諸相について」(「週刊読書人」2023年8月25日号)
2023年04月26日発売:『巡礼――髙﨑紗弥香写真集』本体6,000円。
2023年04月04日発売:長崎浩『中江兆民と自由民権運動』本体2,800円。
2023年03月31日発売:大谷能生『歌というフィクション』本体3,800円。
2023年02月15日発売:鈴木創士編『アルトー横断――不可能な身体』本体3,200円。
2023年02月02日発売:ジョルジョ・アガンベン『バートルビー 新装版』本体2,600円。
◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎重版出来:
2023年03月20日:星野太『崇高の修辞学』4刷(2017年初刷)
2023年03月29日:ジョルジョ・アガンベン『創造とアナーキー』2刷(2022年5月初刷)
◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「新文化 ニュースフラッシュ」「文化通信」
◎一般紙系:Yahoo!ニュース「出版業界」「電子書籍」「アマゾン」
◎話題系:フレッシュアイニュース「出版不況」「電子書籍」「書店経営」
◎新刊書店系:日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話:5ちゃんねる 一般書籍
※このブログの最新記事は当エントリーより下段をご覧ください。
※月曜社について一般的につぶやかれている様子はYahoo!リアルタイム検索からもご覧になれます。月曜社が公式に発信しているものではありませんので、未確定・未確認情報が含まれていることにご注意下さい。ちなみに月曜社はtwitterのアカウントを取得する予定はありませんが、当ブログ関連のアカウントはあります。
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注目新刊および既刊:水声社2023年8月~2024年2月
http://urag.exblog.jp/242113416/
2024-03-17T21:26:00+09:00
2024-03-17T21:47:13+09:00
2024-03-17T21:26:56+09:00
urag
ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
★まず、最近出会いのあった新刊と既刊を列記します。
『哲学ってなんだろう?――哲学の基本がわかる図鑑』DK社(編)、山本貴光(訳)、東京書籍、2024年2月、本体2,200円、A4変形判上製128頁、ISBN978-4-487-81663-7
『パレスチナ解放闘争史』重信房子(著)、作品社、2024年3月、本体3,600円、四六判並製484頁、ISBN978-4-86793-018-2
『孤独と神秘――アリー・シャリーアティーの「沙漠論」にみる現代イランのイスラム思想』村山木乃実(著)、作品社、2024年1月、本体3,800円、ISBN978-4-86793-016-8
★『哲学ってなんだろう?』は『What's the Point of Philosophy?』(DK Children, 2022)の訳書。「古代哲学から21世紀の現代思想までをイラストで解説、10歳から大人まで楽しめる哲学の入門書」(帯文より)。「「存在」ってなんだろう」「「知識」ってなんだろう」「「正しい」とか「間違っている」ってなんだろう」「「平等」ってなんだろう」「「考える」ってなんだろう」の四部構成。巻末には「哲学の歴史」と「用語集」、索引が添えられています。訳者の山本さん曰く「分からないことを楽しみながら、何度も読むのがコツですよ」とのこと。
★東京書籍では本書のほか、原著「DK What's the Point of?」シリーズから『算数・数学で何ができるの?――算数と数学の基本がわかる図鑑』(松野陽一郎監訳、上原昌子訳、2021年1月)と『科学って何のためにあるの?――科学の基本的な5つの分野がわかる図鑑』(左巻健男監訳、上原昌子訳、2022年8月)の2点が刊行されています。
★『パレスチナ解放闘争史』は、帯文に曰く「獄中で綴られた、圧政と抵抗のパレスチナ現代史」。第一部「アラブの目覚め――パレスチナ解放闘争へ(1916年~1994年)」、第二部「オスロ合意――ジェノサイドに抗して(1994年~2024年)」の二部構成。巻末には「パレスチナ民族憲章(1964年5月31日、第1回パレスチナ民族評議会で採択)」「パレスチナ民族憲章(1968年7月17日)」が併録され、年表が付されています。
★『孤独と神秘』は、村山木乃実(むらやま・このみ, 1991-)さんの博士論文「アリー・シャリーアティーの神秘主義思想にかんする宗教学的研究――西洋と出会いから生まれたイラン的イスラム」(2022年)に加筆修正されたもの。帯文に曰く「本書は、現代イラン知識人を代表する、アリー・シャリーアティー(1933~1977)を本邦で初めて本格的に紹介。主要な文学作品群『沙漠論』の読解を通じて、近現代イランの思想を読み解く上で巨大な座標軸となる思想家、シャリーアティーの精神の内奥に迫る」。
★シャリーアティー自身の著書の翻訳にはこれまでに『革命的自己形成』(松本耿郎訳、アジア経済研究所、1981年)、『イスラーム再構築の思想――新たな社会へのまなざし』(櫻井秀子訳、大村書店、1997年)の2点がありますが、いずれも絶版。原典ではペルシャ語全集(全36巻)があります。サルトルやファノンとの交友やフーコーによる評価が日本にも伝えられているものの、一般読者はほどんど知らないかもしれません。村山さんの著書によって再評価への機運が高まることを期待したいです。
★続いて、水声社さんの注目既刊書を列記します。
『震える物質――物の政治的エコロジー』ジェーン・ベネット(著)、林道郎(訳)、水声社、2024年2月、本体3,500円、四六判上製321頁、ISBN978-4-8010-0728-4
『関係性の美学ニコラ・ブリオー(著)、辻憲行(訳)、水声社、2023年12月、本体3,200円、四六判上製256頁、ISBN978-4-8010-0782-6
『聖なる自己――カリスマ派の癒しの文化現象学』トーマス・J・チョルダッシュ(著)、飯田淳子/島薗洋介/川田牧人(監訳)、津村文彦/野波侑里/堀口佐知子/村津蘭(訳)、《人類学の転回》:水声社、2023年12月、本体6,000円、四六判上製457頁、ISBN978-4-8010-0770-3
『摩擦――グローバル・コネクションの民族誌』アナ・ツィン(著)、石橋弘之/岩原紘伊/寺内大左/難波美芸/箕曲在弘(訳)、《人類学の転回》:水声社、2023年12月、本体5,200円、四六判上製474頁、ISBN978-4-8010-0787-1
『ブランショとともに』郷原佳以/安原伸一朗/石井洋二郎/髙山花子/伊藤亮太/門間広明/森元庸介/千葉文夫/石川学(著)、水声社、2024年11月、本体1,000円、四六判アンカット無製本80頁、ISBN978-4-8010-0768-0
『底意地の悪い〈他者〉――迫害の現象学』ジャック=アラン・ミレール(監修)、森綾子/伊藤啓輔(訳)、《言語の政治》:水声社、2023年10月、本体4,000円、A5判上製252頁、ISBN978-4-8010-0750-5
『蜂起――詩と金融における』フランコ・“ビフォ”・ベラルディ(著)、杉田敦(訳)、《批評の小径》:水声社、2023年8月、本体2,500円、四六判上製216頁、ISBN978-4-8010-0744-4
★『震える物質』は、米国の政治理論家でジョンズ・ホプキンズ大学教授のジェーン・ベネット(Jane Bennett, 1957-)による『Vibrant Matter: A Political Ecology of Things』(Duke University Press, 2010)の全訳。「不活発で受動的だとされてきた物質のもつ媒介作用を豊富な例から析出し、人間と人間以外のものが連鎖・協働する世界=アセンブリッジを思い描く。物=生命の新たなポリティカル・エコロジー」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。
★「これまでも政治理論は、物質性を重要なものと認めてはきた。だがそこでいう物質性とは、ほとんどの場合、人間社会の諸構造であり、そういった諸構造やその他の諸対象に「体現」された人間的な意味のことを指していた。政治そのものが、往々にして、人間だけにかかわる領域だと考えられていたために、問題になるのは、あくまでもそこに加えられる一連の物質的制約であり、人間の行為の脈絡だったのだ。そういう人間中心主義への頑固なまでの抵抗こそが、私が求めている生命的物質主義と、今触れたような歴史的唯物論との、たぶん最も重要な違いなのだ。私は、そのようにナルシスティックに自動反応する人間の言語と思考への対抗の試みとして、人間以外のものの諸力(それらは自然、人間の身体、人間がつくった物の中で働いている)が様々なことを引き起こす力の重要性を強調、いや、強調以上に力説したい。むしろ私たちは、そのように世界の番人を自称する人間のナルシシズムに対抗するために、〔人間中心主義ではない〕擬人的な見方――人間の媒介作用が非人間的な自然の中にも反響しているとする考え――を多少なりとも養わなければならないのだ」(序、29~30頁)。
★『関係性の美学』は、フランスのキュレーターで批評家のブリオー(Nicolas Bourriaud, 1965-)の主著『Esthétique relationnelle』(Les Presses du réel, 1998)の全訳。「芸術理論の空白のただなかで、全面的な商品〔コモディティ〕化へ向かいつつある現在のアートを読み解くための必携書」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。ブリオーの既訳書には『ラディカント――グローバリゼーションの美学に向けて』(原著2010年;武田宙也訳、フィルムアート社、2022年)がありますが、『関係性の美学』はそれ以前から長らく翻訳が待ち望まれていました。
★ブリオーはこう書きます。「今や市場価値を持たないものは消え去る運命にある。やがて、商業空間の外部では人間同士の関係は成り立たなくなってしまうだろう。〔…〕全面的な商品化の傾向は、現在の人間関係の空間に強烈な打撃を加えている。〔…〕社会的紐帯は、標準化された人工物に形を変えられたのだ。分業化と超専門化、機械化と収益性が支配する世界では、人間関係を管理可能かつ反復可能な、単純な原理に従属させるように誘導することこそが、支配権力の最優先事項となる。〔…〕現代の芸術的実践は、社会的実験をはぐくむ肥沃な土壌と、行動の画一化から部分的に保護された空間を提供している。本書が考察の対象とする作品は、すべて手の届くユートピアの設計図なのである」(序、16~17頁)。地域の文化拠点を標榜する複合型書店にとっても本書の視点は示唆的となるのではないでしょうか。
★『聖なる自己』と『摩擦』は、ともにシリーズ「人類学の転回」より。米国の人類学者でカリフォルニア大学サンディエゴ校特別栄誉教授のチョルダッシュ(Thomas J. Csordas, 1952-)による『The Sacred Self: A Cultural Phenomenology of Charismatic Healing』(University of California Press, 1994)の全訳。『摩擦』は、米国の人類学者でカリフォルニア大学サンタ・クルーズ校文化人類学科教授のツィン(Anna Lownhaupt Tsing, 1952-)による『Friction: An Ethnography of Global Connection』(Princeton University Press, 2004)の全訳。チョルダッシュの訳書は初めてのものですが、ツィンの既訳書には『マツタケ――不確定な時代を生きる術』(原著2015年;赤嶺淳訳、みすず書房、2019年;訳書での著者名表記は「アナ・チン」)があります。
★『ブランショとともに』は、水声社の会員制メールマガジン「コメット通信」に掲載されてきた論考15篇をまとめたもの。製本されていない状態で透明袋に入れて販売されているため、一般書店では購入しにくいかもしれません。目次は以下の通りです。
「力の過剰」としてのエクリチュール|郷原佳以
モーリス・ブランショの変貌|安原伸一朗
燃えさかる空虚――ロートレアモンを読むブランショ|石井洋二郎
夢のような物語|髙山花子
文学と彷徨の真理|伊藤亮太
ブランショと読者|門間広明
ある造語から|森元庸介
ブランショあるいはレシの体験|千葉文夫
第二次世界大戦期のフランスで執筆するということ|安原伸一朗
批評家になること、あるいは、消滅の始まり|郷原佳以
沈黙から沈黙へ|門間広明
はじまりのブランショ|石川学
ブランショと歴史―― 一九四三年のいくつかの時評について|伊藤亮太
一九四二年のブランショ――第一次世界大戦の痕跡に向かって|髙山花子
常套句の振動と消滅――ポーランとブランショ|郷原佳以
ブランショ書誌抄
★『底意地の悪い〈他者〉』は「叢書 言語の政治」の第27弾。世界精神分析協会(AMP: Association de mondiale Psychanalyse)の主催で2009年2月にパリで開催された症例検討会の記録『L'Autre méchant : Six cas cliniques commentés』(Navarin, 2010) の全訳です。クリスティアンヌ・アルベルティによる「序文」に始まり、第一部「臨床ケースのテクスト」では、ジャン゠ダニエル・マテ、ミケル・バッソル、キャロル・ドゥヴァンブルシ゠ラ・サーニャ、アントニオ・ディ・チャッチャ、フィリップ・ドゥ・ジョルジュ、マリオ・ゼルゲムらの症例報告を収め、第二部「会話」では上記7名にミレールらを加えた討論の様子が活字化されています。
★『蜂起』は、イタリアの思想家で活動家のフランコ・“ビフォ”・ベラルディ(Franco “Bifo” Berardi, 1949-)による『The Uprising: On Poetry and Finance』(Semiotext(e), 2012)の全訳。「言語の過剰としての詩によって感覚的身体と社会的連帯を再活性化し、金融資本主義の支配に対する蜂起を呼びかける、来るべき闘いの書」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。
★「お金と言語には共通する何かがある。それは、何もないにもかかわらず、何でも動かしてしまうことだ。それらは象徴、慣習、〔…〕にすぎないが、人間を説得して行動させ、働かせ、物理的なものを変えさせる力を持っているのだ」(155頁)。「しかし、経済と言語のアナロジーに惑わされてはならない。貨幣と言語には共通するものがあるが、言語が経済的な交換を超えるものである以上、それらの運命が一致することはないのだ。詩は非交換制の言語であり、無限の解釈学の再来であり、言語の感覚的身体の復活なのだ。/わたしがここで述べている詩は、言語の過剰であり、あるパラダイムから別のパラダムに移行することを可能にするような隠れた資源のことなのだ」(160~161頁)。
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月曜社4月新刊:江川隆男『内在性の問題』
http://urag.exblog.jp/242109151/
2024-03-11T14:45:00+09:00
2024-03-11T15:33:04+09:00
2024-03-11T14:45:56+09:00
urag
近刊情報
分野:人文・思想
内在性の問題
江川隆男(著)
月曜社 本体4,300円 46判(縦194mm×横133mm×束幅40mm、重量648g)上製560頁 ISBN:978-4-86503-186-7 C0010
〈自己〉という最小回路を形成すること――スピノザとドゥルーズの先にある新たな〈エチカ〉の誕生。あらゆる道徳的な超越主義(同一性の優越=差異の排除、精神の特権化=身体の無視、人間中心主義的な位階序列化……)を根底から批判する内在性の哲学へ。カントを一義性の哲学として論究し、フーコーの「言表」を身体の作用として論じ、内在性の核心に〈非‐規定性〉を見出す、最新書き下ろし作。
※アマゾン・ジャパン、HMV&BOOKSonlineにて予約受付中。
【目次】
序論 内在性への配慮
内在性の問題
どのように〈自己〉を理解するか
〈自己〉認識について
主観性から被観性へ――自然に内在し直すこと
注(序論)
第Ⅰ部 超越論と内在性
第一章 カントと一義性の思考
一つの錯綜体について―― 一義性とアナロジー
内在性という外部―肖像画の下のキャンバス
超越論的概念の一義性について
〈構成〉以前の存立面(Ⅰ)――超越論的対象について
物自体について(α)――それ自体において多様なもの
〈構成〉以前の存立面(Ⅱ)――超越論的統覚について
〈感性‐受容能力〉の真の意義
非対称性の遠近法的空間
裁断と縫合への努力
物自体について(β)――それ自体において多義的なもの
〈構成〉 以前の存立面(Ⅲ)―― 一つの可能的経験について
物自体について(γ)――〈前‐哲学的なもの〉 から 〈偽なるもの=X〉 へ
注(第一章)
第二章 一義性とアナロジー
非‐様相としての内在性
存在の一義性の系譜学的要素(Ⅰ)
カテゴリーの様式化
存在の一義性の系譜学的要素(Ⅱ)
先端と前提
現象と稀薄化
アナロジーの非‐類推的力能について
移行による多重化(1)――認識の一義性について
移行による多重化(2)――経験の一義性について
批判機能
禁令の意義――批判的形而上学におけるアナロジーの問題について
反復としてのアナロジーの特異性
主観化の過程――『純粋理性批判』における〈折れ目〉(Pli)の構造
近代哲学における一つの結論――錯綜体としての主観性
注(第二章)
第Ⅱ部 内在性と被観性
第三章 自己と言表
問題構成(Ⅰ)
人間身体の性的差異について
〈有限‐無際限〉性の分析批判
超越論的観念論と内在論的観念論について
一義性への配慮
配慮の差異――〈発生的〉と〈名目的〉
時間性の問題――カントにおける〈自己〉とは何か
自己認識から自己配慮へ
〈認識〉と〈配慮〉の不可識別性について
〈自己の差異〉について
〈観念‐言表〉論序説
言表の批判的分析論
言表の機能論的分析論
言表の分裂的総合論(Ⅰ)――〈AZERT〉の規則性
言表の分裂的総合論(Ⅱ)
観念と言表
言表と判断
〈可能的であれ、実在的であれ〉———経験の内在性について
注(第三章)
第四章 非‐規定的総合
哲学の発狂
問題構成(Ⅱ)
規定性図式論の限界について
非‐規定性の忘却――相関主義批判に抗して
〈非—規定性〉について
〈報告〉と〈投射〉――前‐哲学的なものに対する配慮の差異
内在性の哲学の諸特徴
直観知の対象性
言表の脱アナロジー化
脱カテゴリー化の言説
言表論(Ⅰ)
言表論(Ⅱ)
横断性並行論の事例
焼尽する〈身体なき地図〉
抽象機械論
地図作成法の可能性の中心
被観性は産出されうるか
発語内行為と自由意志
非身体的変形と強度的宇宙について
被観性の産出――非身体的変形の位相について
地球倫理学――分子的内在性論と非‐ニヒリズム化
注(第四章)
結論 エチカの諸要請
内在性の哲学――存在論から並行論へ
唯物性観念論――言表作用について(Ⅰ)
機械状観念論――言表作用について(Ⅱ)
非‐戦闘的行為――倫理学の極限形相
内在様相と連続変化について
注(結論)
あとがき
江川隆男(えがわ・たかお)1958年生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科特別専任教授。著書:『存在と差異――ドゥルーズの超越論的経験論』知泉書館、2003年;『死の哲学』河出書房新社、2005年;『超人の倫理――〈哲学すること〉入門』河出書房新社、2013年;『アンチ・モラリア――〈器官なき身体〉の哲学』河出書房新社、2014年、『スピノザ『エチカ』講義――批判と創造の哲学のために』法政大学出版局、2019年;『すべてのつねに別のものである――〈身体-戦争機械〉論』河出書房新社、2019年;『残酷と無能力』月曜社、2021年。訳書:ジル・ドゥルーズ『ニーチェと哲学』河出文庫、2008年;ジル・ドゥルーズ+クレール・パルネ『対話』共訳、河出書房新社、2008年(文庫版『ディアローグ――ドゥルーズの思想』河出文庫、2011年)。
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注目新刊:R・D・レインの詩集2点がついに文庫化、ほか
http://urag.exblog.jp/242108813/
2024-03-10T23:52:00+09:00
2024-03-11T10:29:59+09:00
2024-03-10T23:52:10+09:00
urag
ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
★まず、注目の文庫新刊と既刊を列記します。都合により一部のみコメントします。
『結ぼれ』R・D・レイン(著)、村上光彦(訳)、河出文庫、2024年3月、本体810円、文庫判176頁、ISBN978-4-309-46797-9
『好き? 好き? 大好き?』R・D・レイン(著)、村上光彦(訳)、河出文庫、2023年10月、本体810円、文庫判184頁、ISBN978-4-309-46790-0
『日本霊異記・発心集』伊藤比呂美(訳)、河出文庫、2024年3月、本体800円、文庫判232頁、ISBN978-4-309-42086-8
『堤中納言物語』中島京子(訳)、河出文庫、2024年3月、本体700円、文庫判176頁、ISBN978-4-309-42087-5
『中世哲学の射程――ラテン教父からフィチーノまで』クラウス・リーゼンフーバー(著)、村井則夫(編訳)、平凡社ライブラリー、2024年3月、本体2,500円、B6変型判704頁、ISBN978-4-582-76962-3
『精選 神学大全2 法論』トマス・アクィナス(著)、稲垣良典/山本芳久(編)、稲垣良典(訳)、岩波文庫、2024年2月、本体1,560円、文庫判608頁、ISBN978-4-00-336214-3
『道徳的人間と非道徳的社会』ラインホールド・ニーバー(著)、千葉眞(訳)、岩波文庫、2024年2月、本体1,300円、文庫判480頁、ISBN978-4-00-386037-3
『独裁者の学校』エーリヒ・ケストナー(著)、酒寄進一(訳)、岩波文庫、2024年2月、本体650円、文庫判198頁、ISBN978-4-00-324713-6
『若きウェルテルの悩み』ゲーテ(著)、酒寄進一(訳)、光文社古典新訳文庫、2024年2月、本体780円、文庫判280頁、ISBN978-4-334-10219-7
『三体』劉慈欣(著)、立原透耶(監修)、大森望/光吉さくら/ワンチャイ(訳)、ハヤカワ文庫、2024年2月、本体1,100円、文庫判640頁、ISBN978-4-15-012434-2
『読む哲学事典』田島正樹(著)、講談社学術文庫、2024年2月、本体1,000円、A6判232頁、ISBN978-4-06-534805-5
★河出文庫の2月3月新刊より4点。驚くべきことに、英国の精神科医レイン(Ronald David Laing, 1927-1989)の「詩集」2点が2カ月連続で文庫化。親本はいずれもみすず書房より刊行されたロングセラー。先月発売されすぐさま重版されたのが『好き? 好き? 大好き?』(原著『Do you Love Me?』1976年;みすず書房、1978年)で、今月発売されたのが『結ぼれ』(原著『Knots』1970年;みすず書房、1973年、新装版1997年)。それぞれの文庫版解説を寄せているのは、前者がシナリオライターのにゃるらさんで、後者が歌人の上篠翔さん。
★ネタバレなしで言えば、この2点は結構強力な薬です。精神的に辛い状態の人は読まない方がいいかもしれないし、ましてや、その柔らかなタイトルと装丁に釣られて未読のまま知人友人や家族にプレゼントするようなことはとてもお薦めできない作品です。この2作をけなしてそう言うのではありません。最大限の賞賛を寄せるがゆえに要注意でもあることを記しておいた方がいいと思います。この2冊をまさにこの2020年代において正しく再評価し、こともあろうに文庫化して広い読者層に供した編集者氏には、敬意をこめて「やりやがったな」と言わせてください。
★この2冊を読みながらもっと気分を味わいたい方は、例えばジョナサン・グレイザー(Jonathan Glazer, 1965-)監督の映画『Under the Skin』(2013年:日本語題『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』)ないし『The Zone of Interest』(2024年5月24日日本公開:日本語題『関心領域』)の、ミカ・レヴィ(Micaela Rachel Levi, 1987-)による素晴らしく悩ましいサントラを聴くこと(をお薦めしません鼓膜から浸食され魂を揺さぶられ感情を細切れにされる危険性あり)。
★昨年10月より刊行開始となった河出文庫の「古典新訳コレクション」の3月最新刊は、伊藤比呂美訳『日本霊異記・発心集』(抄訳)と、中島京子訳『堤中納言物語』。来月発売は、町田康訳『宇治拾遺物語』と、角田光代訳『源氏物語5』。同コレクションは、池澤夏樹個人編集『日本文学全集』から「古典の新訳・新釈を文庫化」するもの。加筆修正が施され、新たな解題が付されています。
★なお他社本ですが、日本の古典文学では今月はまもなく上村悦子『新版 蜻蛉日記 全訳注』(講談社学術文庫、2024年3月)が発売予定です。1978年に全3巻で刊行された文庫本の合本再刊。
★平凡社ライブラリーの3月新刊より『中世哲学の射程』。リーゼンフーバー(Kraus Riesenhuber, 1938-2022)さんの『中世哲学の源流』(創文社、1995年)と『中世における理性と霊性』(知泉書館、2008年)に収録された論考を中心に編纂し、単行本未収録論文「中世における自己認識の展開――近代思想の歴史的源泉をめぐって」(2009年)を加えた精選集。編訳者の村井さんによる解題「理性の歴史――超越論哲学と否定神学」が付されています。同ライブラリーでの同著者の既刊書には『西洋古代・中世哲学史』(矢玉俊彦/佐藤直子訳、2000年8月)と『中世思想史』(村井則夫訳、2003年12月)があります。
★他社本ですが、今月はもう一冊、リーゼンフーバーさんの論文集が文庫でまもなく発売となります。『存在と思惟――中世哲学論集』(山本芳久編、村井則夫/矢玉俊彦訳、講談社学術文庫、2024年3月)です。版元の書誌情報によれば「1995年に創文社より刊行された『中世哲学の源流』(上智大学中世思想研究所中世研究叢書)所収の論文から精選し、新たな配列で編み直したもの」とのこと。目次を照合する限り、『中世哲学の射程』とは重複していないようです。
★酒寄進一(さかより・しんいち, 1958-)さんによる新訳がそれぞれ岩波文庫と光文社古典新訳文庫より。ケストナーとゲーテ。『ウェルテル』は初版本からの新訳。
★『三体』三部作の文庫化が先月スタート。第一部は全1巻。第二部『黒暗森林』は上下巻で4月刊、第三部『死神永生』も上下巻で6月刊の予定。
★このほか、最近では以下の新刊、既刊書との出会いがありました。
『失敗のクィアアート――反乱するアニメーション』ジャック・ハルバースタム(著)、藤本一勇(訳)、岩波書店、2024年2月、本体3,600円、四六判並製 344頁、ISBN978-4-00-061631-7
『ブルターニュの歌』ル・クレジオ(著)、中地義和(訳)、作品社、2024年3月、本体2,700円、46判上製228頁、ISBN978-4-86793-020-5
『夏のレクィエム』小川征也(著)、作品社、2023年11月、本体2,000円、46判上製208頁、ISBN978-4-86793-007-6
『朝鮮半島の食――韓国・北朝鮮の食卓が映し出すもの』守屋亜記子(編)、公益財団法人味の素食の文化センター(企画)、平凡社、2024年2月、本体3,000円、4-6判並製296頁、ISBN978-4-582-83951-7
『堀部安嗣作品集Ⅱ 2012–2019 全建築と設計図集』堀部安嗣(著)、平凡社、2024年2月、本体7,800円、B4変型判上製函入256頁、ISBN978-4-582-54477-0
★『失敗のクィアアート』は、『The Queer Art of Failure』(Duke University Press, 2011)の全訳。「バトラー以降のクイア理論を代表する批評家ハルバースタム、待望の初邦訳」(帯文より)。ジャック・ハルバースタム(Jack Halberstam, 1961-;原著刊行当時の名はJudith Halberstam)は米国コロンビア大学教授。訳者の藤本さんがこれまでポール・B・プレシアド(Paul B. Preciado, 1970-)の著書を積極的に翻訳されてきたのは周知の通りです。『失敗のクィアアート』の目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。さらにリンク先では、訳書には収録されていない、藤本さん作成による本書で取り上げられる人物を紹介した47頁にもわたるPDFが無料公開されています。たいへんな労力です。
★ハルバースタムはこう書きます。「オルタナティヴな文化的・学問的な現場は、学界のなかにあるのではなく、むしろその傍らにある。それは、敗者、失敗者、落ちこぼれ、拒否された者たちが作り出す知の世界であり、まさに大学が無力なときにオルタナティヴのための発射台として役立つことが多いのである。/現代は、知の新しい形を生み出すプロジェクトのために学問の転換を試みるには悪い時期ではない。〔…〕大きな学問分野が、不良証券に投資した銀行のように崩壊し始めたとき、私たちはもっと広い視座から、自分たちが共有する関心や知的関与のぼろぼろの境界を本当に補強したいのか、それともむしろこの機会に学習や思考のプロジェクトを完全に考え直したほうがよいのか、問うべきだろう。〔…〕この本は、従来の知の枠組みの外に出て、失敗、迷走、不品行という統制なき領野をうろつき回るものであり、学問や通常の思考方法を大きく迂回しなければならない。いかに大学が(そして暗に高校も)風変わりで独創的な思考を促進するのではなく、むしろ潰してしまうかを説明しよう」(10頁)。
★「私のアーカイヴは、労働史やサバルタン運動史ではない。かわりにポピュラーカルチャーの領野のなかに、クィアな生、ジェンダー、セクシュアリティとのかかわりで、低俗理論とカウンターな知を探し求めたい。これまではオルタナティヴな世界の大きな説明のほとんどから、ジェンダーとセクシュアリティの問題が頻繁に抜け落ちてきたのである」(28頁)。「全体として、この本は、過度な楽観主義でもなくニヒリズム的な批判の袋小路に陥るのでもなく、〈知ること〉と〈存在すること〉のオルタナティヴな方法について書かれた本である。この本は、上手く失敗し、おおいに失敗し、〔…〕よりよく失敗する方法を学ぶための本である」(35頁)。「アカデミックな読者と一般読者をつなぐ幸せな媒介はない。私が挙げるたくさんの失敗の例が、私たちがこれから探検しようとしている失敗の、濁った、暗く、危険な土地の地図を提供することを願っている。/探検やマッピングとは、寄り道することや迷子になることでもあると、そう私は言いたい」(36頁)。
★『ブルターニュの歌』は、『Chanson bretonne, suivi de L'Enfant et la Guerre, deux contes』(Gallimard, 2020)の訳書。帯文に曰く「ノーベル文学賞作家が初めて語る幼少年時代」。「ブルターニュの歌」と「子供と戦争」の2篇を収録。
★『堀部安嗣作品集Ⅱ 2012–2019 全建築と設計図集』は、建築家で堀部安嗣(ほりべ・やすし, 1967-)さんの作品集『堀部安嗣作品集 1994–2014 全建築と設計図集』に続く第2弾。版元紹介文に曰く「住宅から寺社、公共建築、クルーズ船まで、領域を広げてきた、2010年代の作品を総覧」と。同書の刊行を記念して2つのイベントが予定されています。
◎堀部安嗣作品集刊行&京都芸術大学大学院退任記念講演会
日時:2024年3月30日(土)14:00〜16:30(開場13:30)
会場:京都芸術大学 東京外苑キャンパス 101・102教室
定員:200名(申込み不要、当日先着順)
参加費:無料
◎堀部安嗣(建築家)×中島岳志(政治学者)トークイベント
日時:2024年4月9日(火) 18:40開場 19:00開演
場所:紀伊國屋書店新宿本店9階 イベントスペース
参加費:チケット制1,000円
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注目新刊:ちくま学芸文庫3月新刊、ほか
http://urag.exblog.jp/242103933/
2024-03-03T23:06:00+09:00
2024-03-03T23:28:02+09:00
2024-03-03T23:06:01+09:00
urag
ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
★まずは、まもなく発売となるちくま学芸文庫の3月新刊5点。
『資本論 第一巻 上』カール・マルクス(著)、今村仁司/三島憲一/鈴木直(訳)、ちくま学芸文庫、2024年3月、本体1,700円、文庫判688頁、ISBN 978-4-480-51190-4
『資本論 第一巻 下』カール・マルクス(著)、今村仁司/三島憲一/鈴木直(訳)、ちくま学芸文庫、2024年3月、本体1,900円、文庫判816頁、ISBN 978-4-480-51191-1
『江戸の戯作絵本 3』小池正胤/宇田敏彦/中山右尚/棚橋正博(編)、ちくま学芸文庫、2024年3月、本体1,800円、文庫判576頁、ISBN978-4-480-51226-0
『ナチズムの記憶――日常生活からみた第三帝国』山本秀行(著)、ちくま学芸文庫、本体1,500円、文庫判416頁、ISBN978-4-480-51235-2
『概説 人工知能――ディープラーニングから生成AIへ』丸岡章(著)、ちくま学芸文庫、2024年3月、本体1,200円、文庫判288頁、ISBN978-4-480-51234-5
★『資本論 第一巻』上下巻は、『マルクス・コレクション(V)』(筑摩書房、2005年)の全面改訳文庫化。文庫化の経緯や訳語の選択については文庫版訳者あとがきで説明されています。今村仁司さんが亡くなっているため、改訳は三島憲一さんと鈴木直さんのお二人が行なっています。「本訳書では、ドイツ語の文法構造を写しとることなどを翻訳上の原則とはせず、目を戻して読み直さなければ意味のつかめない訳文は極力さけるように努めた。最終的にめざしたのは、マルクスの文章に惹かれながら、最後まで一気に読み通すことができるような訳文を提供することだった」(文庫版訳者あとがきより)。
★『江戸の戯作絵本 3』は、社会思想社の現代教養文庫版『江戸の戯作絵本 続巻一』(1984年)と『江戸の戯作絵本 続巻二』(1985年)の合本文庫化。今回も棚橋正博さんの協力のもと、誤記誤植が改められ、図版は状態のより良いものに差し換えられています。底本とは異なる図版を掲載したものも一部あるとのことです。
★『ナチズムの記憶』は、ドイツ史家の山本秀行(やまもと・ひでゆき, 1945-)さんが初の単独著として山川出版社から1995年に上梓した単行本の文庫化。文庫版あとがきによれば単行本で見逃されていた「ミスや誤植」を訂正したとのことです。
★『概説 人工知能』は、Math&Scienceシリーズの1冊で、東北大学名誉教授の丸岡章(まるおか・あきら, 1942-)さんによる文庫オリジナルの書き下ろし。帯文に曰く「」超絶進化の鍵となる基本概念を解き明かす」と。主要目次を転記しておきます。
第1講 AIが人間を超えた?!
第2講 人工知能研究の歴史
第3講 脳が働き、人が振る舞う
第4講 ディープラーニングのエッセンス
第5講 学習のポテンシャル
第6講 畳み込みニューラルネットワークとバックプロパゲーション
第7講 アルファ碁
第8講 トランスフォーマー、生成AIの心臓部
第9講 大規模言語モデル
第10講 生成AI
巻末注
あとがき
索引
★続いて、最近出会いのあった新刊を列記します。
『音と脳――あなたの身体・思考・感情を動かす聴覚』ニーナ・クラウス(著)、伊藤陽子(訳)、紀伊國屋書店、2024年3月、本体2,700円、46判並製376頁、ISBN978-4-314-01203-4
『現代思想2024年3月号 特集=人生の意味の哲学』青土社、2024年2月、本体1,600円、A5判並製頁238頁、ISBN978-4-7917-1461-2
『記憶と芸術――ラビリントスの谺』中村高朗/虎岩直子(編著)、法政大学出版局、2024年3月、本体3,200円、四六判並製416頁、ISBN978-4-588-41039-0
『誘惑する他者――メルヴィル文学の倫理』古井義昭(著)、法政大学出版局、2024年3月、本体3,200円、A5判上製300頁、ISBN978-4-588-49522-9
『神論――現代一神教神学序説』中田考(著)、作品社、2024年2月、本体3,600円、46判並製384頁、ISBN978-4-86793-001-4
『ニッポンのムスリムが自爆する時――日本・イスラーム・宗教』松山洋平(著)、作品社、2024年2月、本体2,400円、46判並製240頁、ISBN978-4-86793-021-2
『イスラーム・デジタル人文学』須永恵美子/熊倉和歌子(編著)、人文書院、2024年2月、本体3,200円、4-6判並製274頁、ISBN978-4-409-42025-6
『近代日本の身体統制――宝塚歌劇・東宝レヴュー・ヌード』垣沼絢子(著)、人文書院、2024年2月、本体4,500円、4-6判上製378頁、ISBN978-4-409-52093-2
『読書装置と知のメディア史――近代の書物をめぐる実践』新藤雄介(著)、人文書院、2024年2月、本体4,500円、4-6判上製402頁、ISBN978-4-409-24162-2
『金時鐘コレクション(5)日本から光州事件を見つめる――詩集『光州詩片』『季期陰象』ほか エッセイ』金時鐘(著)、細見和之(解説)、細見和之/浅見洋子(解題)、藤原書店、2024年2月、本体4,200円、四六変型判上製400頁+口絵4頁、ISBN978-4-86578-415-2
『フランス大使の眼でみたパリ万華鏡』小倉和夫(著)、藤原書店、2024年2月、本体2,700円、四六判上製416頁、ISBN978-4-86578-414-5
『鶴見和子と水俣――共生(ともいき)の思想としての内発的発展論』杉本星子/西川祐子(編)、藤原書店、2024年3月、本体4,400円、A5判上製344頁、ISBN978-4-86578-413-8
★紀伊國屋書店の新刊『音と脳』は、ノースウェスタン大学コミュニケーション科学・障害学部教授で神経科学者のニーナ・クラウス(Nina Kraus)さんの著書『Of Sound Mind: How Our Brain Constructs a Meaningful Sonic World』(MIT Press, 2021)の訳書。帯文に曰く「音は私たちを変える。言葉、音楽、都市の騒音、大自然の静寂、愛する人の声――聞くことは、感じ、考え、動くことにどう影響するのだろうか? 音の持つ力と可能性を説く、聴覚神経科学のトップサイエンティストの集大成」。書名のリンク先で、目次や本文の試し読みが可能です。
★青土社の月刊誌『現代思想』の3月号は特集「人生の意味の哲学」。版元紹介文に曰く「21世紀的な「人生の意味の哲学」の諸相を展望し、その現代的意義について考察」と。古田徹也さんと森岡正博さんの討議「生きる意味を問うとき、私たちは何を考えているのか」のほか、13篇の論考を収録。詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。次号4月号の特集は「〈子ども〉を考える」と予告されています。
★法政大学出版局の3月新刊より2点。『記憶と芸術』は発売済。書名となっている主題をめぐる、13篇の論考と1本の対談からなるアンソロジーです。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。『誘惑する他者』はまもなく発売。立教大学文学部教授の古井義昭(ふるい・よしあき, 1982-)さんが2010年から2022年にかけて英文で発表してきたメルヴィルをめぐる査読論文10本を自ら翻訳し改稿し、書き下ろしの序章を付して1冊にまとめたものです。帯文に曰く「書くこと/読むことの根源に関わるテーマを徹底的に掘り下げる」と。
★作品社の2月新刊より2点。『神論』はイスラーム法学者の中田考(なかた・こう, 1960-)さんによる「イスラームを超えたイスラームの真義を開示する、一神教の入門書」(帯文より)。「しんろん」と読みます。書名のリンク先で試し読みが可能。『ニッポンのムスリムが自爆する時』は、イスラーム学者の松山洋平(まつやま・ようへい, 1984-)さんが「ゲンロン」誌や「ゲンロンβ」誌に2019年から2022年にかけて発表してきた、イスラームの諸相をめぐるエッセイ11篇に、2014年の他誌への既出論考を合わせ、加筆訂正のうえまとめたもの。
★人文書院の2月新刊より3点。『イスラーム・デジタル人文学』は「イスラーム研究をデジタル人文学で捉え直す、気鋭研究者らによる最新の成果」。9本の論考と9本コラムを収録。詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。『近代日本の身体統制』は、演劇学がご専門の垣沼絢子(かきぬま・あやこ, 1987-)さんの初の単独著。「戦前から戦後にかけての宝塚・東宝のレヴュー史を、「身体統制」と「近代化」という軸をもとに見通すもの」(はじめにより)。『読書装置と知のメディア史』は、メディア史がご専門の新藤雄介(しんどう・ゆうすけ, 1983-)さんが、博士学位論文に大幅な加筆修正を施したもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。
★藤原書店の2月新刊は全3点。『金時鐘コレクション(5)』は全12巻中の第9回配本。詩集『光州詩片』『季期陰象』のほか、エッセイ7本、講演3本、詩集をめぐる語り下ろしのインタヴューを収録。詳細は書名のリンク先をご確認ください。『フランス大使の眼でみたパリ万華鏡』は、ベトナム大使、韓国大使、フランス大使などを歴任した小倉和夫(おぐら・かずお, 1938-)さんによる手記と、パリを訪問した日本人作家たちをめぐるエッセイを1冊にしたもの。『鶴見和子と水俣』は、「不知火海総合学術調査団と内発的発展論」「萃点としての水俣」の二部構成のアンソロジー。9本の論考、6本のシンポジウム発表、3本のコラムから成ります。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。
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「週刊読書人」に渡辺由利子『ふたりの世界の重なるところ』の書評が掲載
http://urag.exblog.jp/242099511/
2024-02-26T16:07:00+09:00
2024-02-26T16:07:27+09:00
2024-02-26T16:07:27+09:00
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書評・催事・広告
注目新刊:リチャード・ライト『地下で生きた男』作品社、ほか
http://urag.exblog.jp/242099027/
2024-02-25T19:38:00+09:00
2024-02-26T10:40:58+09:00
2024-02-25T19:38:47+09:00
urag
ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
★最近出会いのあった新刊を列記します。
『ジャック・デリダ──その哲学と人生、出来事、ひょっとすると』ピーター・サモン(著)、伊藤潤一郎/松田智裕/桐谷慧/横田祐美子/吉松覚(訳)、ele-king books;Pヴァイン、2024年2月、本体3,400円、四六判並製464頁、ISBN978-4-910511-68-9
『大西巨人論――マルクス主義と芸術至上主義』山口直孝(著)、幻戯書房、2024年2月、本体4,500円、A5上製402頁、ISBN978-4-86488-293-4
『鳥たちのフランス文学』岡部杏子/福田桃子(共編)、幻戯書房、2024年2月、本体3,400円、四六上製352頁、ISBN978-4-86488-294-1
『地下で生きた男』リチャード・ライト(著)、上岡伸雄(編訳)、作品社、2024年2月、本体3,600円、46判上製384頁、ISBN978-4-86793-019-9
『町の本屋という物語――定有堂書店の43年』奈良敏行(著)、三砂慶明(編)、作品社、2024年2月、本体2,200円、46判上製240頁、ISBN978-4-86793-013-7
『かくして、死刑は執行停止される』菊田幸一(著)、作品社、2024年2月、本体2,400円、四六判並製224頁、ISBN978-4-86793-011-3
『レヴィナスの論理』ジャン=フランソワ・リオタール(著)、松葉類(訳)、法政大学出版局、2024年2月、本体3,300円、四六判上製274頁、ISBN978-4-588-01167-2
『サルトル「特異的普遍」の哲学――個人の実践と全体化の論理』竹本研史(著)、法政大学出版局、2024年2月、本体4,700円、A5判上製478頁、ISBN978-4-588-15134-7
『暴力の表象空間――ヨーロッパ近現代の危機を読み解く』岡本和子(編)、法政大学出版局、2024年2月、本体4,000円、四六判並製396頁、ISBN978-4-588-13040-3
★ele-king booksさんの新刊より1点。『ジャック・デリダ』は、オーストラリア出身で英国の在住の作家ピーター・サモン(Peter Salmon, 1955-)さんの著書『An Event, Perhaps: A Biography of Jacques Derrida』(Verso, 2020)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。共訳者の伊藤さんは本書を次のように評価されています。「本書の最大の美点は、おそらく作家という姿勢〔ポジション〕ゆえの大胆な情報の取捨選択と文体の力にある。〔…〕脱構築は主体を抹消する思想ではなく、それぞれのポジションからの語りが、既存の秩序の外部へと通じていくのを肯定する思想なのだ。それゆえ、明確に自分自身のポジションからデリダを語り、問いを立てていくサモンの書きぶりは、脱構築の精神に忠実だといえるだろう」(訳者あとがきより)。國分功一郎さんは次のような推薦文を寄せておられます。「デリダの戦いは全く終わっていない。我々はもう一度デリダのように緊張しなければならない。この本を読みながら、緊張することを学ぶのだ」。
★幻戯書房さんの新刊より2点。『大西巨人論』は、二松学舎大学文学部教授で日本近代小説がご専門の山口直孝(やまぐち・ただよし, 1962-)さんが2000年以降に各媒体で発表してきた論考を集成したもの。あとがきによれば「文学芸術運動、革命運動の並走者である武井照夫、湯地朝雄にかんする文章も収載した」と。一冊にまとめるにあたり「若干の修正を行い、いくつかの用語を揃えるなどした以外は、初出の通りとした。初稿の間違いで気づいたことは、「追記」で触れている」とのこと。
★『鳥たちのフランス文学』は、9名の仏文学研究者(中村英俊/岡部杏子/博多かおる/石橋正孝/福田桃子/新島進/前之園望/三枝大修/笠間直穂子)の論考を収めた論文集。帯文に曰く「18世紀の自然誌から、デボルド゠ヴァルモール、ジョルジュ・サンド、バルザック、ヴェルヌ、ビュトール、プルースト、ルーセル、ブルトン、ボヌフォワ、マリー・ンディアイまで――18世紀から21世紀にいたるフランス文学の世界を飛び翔る鳥たちの姿を渉猟、精読する」と。目次詳細はこちらをご覧ください。
★作品社さんの新刊より3点。『地下で生きた男』は米国の黒人作家リチャード・ライト(Richard Wright, 1908-1960)の著書『The Man Who Lived Underground』(Library of America, 2021)のうち、表題の長編作を訳出し、 併せて中短篇5作(「川のほとりで」「長く暗い歌」「でかくて親切な黒人さん」「何でもできる男」「影を殺した男」)を収録。編訳者あとがきによれば、『地下で生きた男』はその内容の重さゆえに出版社に拒絶され、削除したり書き直したりしたヴァージョンを1944年に雑誌に発表。その後、1961年に刊行された短篇集『八人の男』(赤松光雄/田島恒雄訳、晶文社、1969年)に収録され、原稿をもとにオリジナルに近い形で出版されたのが2021年だったとのこと。
★表題作「地下で生きた男」から、帯表4にも掲出されている印象的なくだりを、その前段も含めて引用します。「彼は叫びたかった。“この人は無実だ! 俺も無実だ! みんな無実だ!”この考えがあまりにも激しく彼の心に現われたので、彼は自分が実際に叫んでしまったのかと思った。しかし、声には出していなかった――歯を食いしばったままだ。言葉は彼の内部で発せられたものであり、熱い言葉が堅固な壁を突き破ろうとしていたのだ。そして、彼は再びあの回避できない感情に圧倒された。この地下の生活の基盤に切り込んでくる感情、彼にこう語りかけてくる感情である――おまえは無実だが有罪であり、咎はないが告発され、生きているが死ななければならない。そして、威厳ある人生を送る能力を持ちながら、屈辱の一生を生きなければならず、見たところは合理的な世界に生きているようでいながら、完全に不合理な死を遂げなければならないのである」(121~122頁)。
★印象的な言葉にはこのほかこんなものもあります。「人間は時が刻まれるごとにゆっくりと死んでいる。戦争で死んでいくのと同じように。この荒涼として広大な光景に対し、人間の嘆きや悲しみはまったく不充分なのである。/彼は自分が見たもの、感じたものを正当に扱うことのできる感情を掻き立てられなかった。この生々しい悲劇に直面して空虚感しか抱けない。その思いが高まって、ついには圧倒的な罪悪感となった。こうした究極の難問に直面したときの無力さが、無限の悔恨の念をもって彼を責め、消耗させたのだ。そうだ、こんな絶望的な光景を見下ろして、この無意味さを受け止めることのできる存在は、神しかいないだろう。それだ! おそらく人間は自分たちが感じられないものを感じるために神を発明し、神が自分たちに向けてくれる哀れみに慰めを見出したのだ……! 自分たちの人生のどうしようもない弱さを見下ろしているとき、人間は恥ずかしさと罪の意識を抱き、それに圧倒されてしまうのだから」(108~109頁)。
★「世界は見たところ美しい。しかし、この魅惑的な覆いの下に、恐ろしいものが隠れているように感じた。物事の様相が優しければ優しいほど、しりごみせずにはいられない」(112~113頁)。訳者の上岡伸雄(かみおか・のぶお, 1958-)さんはライトの代表作の新訳も一昨年に上梓されています。『ネイティヴ・サン――アメリカの息子』(新潮文庫、2022年)。
★『町の本屋という物語』は、昨年4月に43年の営業を終えた鳥取の定有堂書店の店主、奈良敏行(なら・としゆき, 1948-)さんが各種媒体に寄稿してきた文章をまとめたもの。著者による書き下ろしの「あとがき」と、編者でTSUTAYA BOOKSTORE梅田MeRISEにお勤めの三砂慶明(みさご・よしあき, 1982-)さんによる「編者後記」のほか、定有堂書店の書棚をテーマ別に再現した「定有堂書店の本棚 往来のベーシックセオリー」、そして「奈良敏行・定有堂書店略年譜」が加えられています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。なお、奈良さんは三砂さんが編者を務めたアンソロジー『本屋という仕事』(世界思想社、2022年)にも、「本屋から遠く離れて――定有堂教室「読む会」のこと」という一文を寄せておられます。併読をお薦めします。
★『かくして、死刑は執行停止される』は、明治大学名誉教授で弁護士の菊田幸一(きくた・こういち, 1934-)さんによる死刑廃止論をまとめたもの。「著者は、国家が殺人者を法の名のもとに殺すことは絶対にあってはならないと半世紀もの長期にわたり著書や論文で、あるいは講演で訴えてきた」(3頁)。「本書の出版目的は「死刑執行モラトリアムをどう実現すべきか」に全力を費やすことにある」(6頁)。作品社さんより刊行された関連書には、菊田さんによる『死刑と日本人』(2022年)や、ロベール・バダンテール『そして、死刑は廃止された』(2002年)があります。
★法政大学出版局さんの新刊より3点。『レヴィナスの論理』は、フランスの哲学者ジャン=フランソワ・リオタール(Jean-François Lyotard, 1924-1998)によるレヴィナス論集『Logique de Levinas』(Verdier, 2015)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭に編者のポール・オーディ(Paul Audi, 1963-)による序文「本書の紹介」が置かれ、巻末にはリオタール論やレオ・シュトラウス論などの著書があるジェラール・スフェズ(Gérald Sfez)による長篇解題「〈他者〉の厚み」が添えられています。スフェズはこう述べています。「本書に集められたテクストは多様な視点から、他性の厚みの認識についてのリオタールによる省察を示している」(185頁)。「本書でのリオタールのレヴィナスにかんする省察は、諸問題を明示するにあたって一貫しており、決定的である」(186頁)。
★『サルトル「特異的普遍」の哲学』は、法政大学人間環境学部人間環境学科 教授の竹本研史(たけもと・けんじ, 1977-)さんの初めての単独著。博士論文「個人の実践と全体化の論理――ジャン=ポール・サルトルにおける特異性の位相」(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻、2020年2月公開審査)に数章を加えたうえで全体を再構成し、大幅な加筆修正を行ったもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。本書は「サルトルの思想において、個人の実践と対他関係、個人の実践と集団統合、「特異的普遍」という三つの位相で、《個人の実践と全体化》がどのようになされているか、またその際に諸個人の「特異性」はどのように捉えられているか、その理路を分析することで、サルトルの社会哲学に関して総合的な研究を行うことを目的とするものである」(序章、13頁)。
★『暴力の表象空間』は、明治大学人文科学研究所の総合研究「暴力の表象空間」(2018~2020年度)に関わった研究者9氏による論文集。「暴力の根源を探る」「暴力との対峙」「暴力の記述を読み解く」の三部構成。帯文に曰く「精神分析論、翻訳論、パンデミック危機に伴う暴力を剔出し、社会的承認論、ケアと贈与、サッカーと市民社会をめぐる考察から共同体と暴力との関係を問い直すとともに、大テロル期ソ連、戦間期ベルリン、北アイルランド紛争時代の文学を通じて暴力の根源に迫る」と。
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「中央公論」の「新書大賞」に参加しました
http://urag.exblog.jp/242090536/
2024-02-14T11:52:00+09:00
2024-02-14T11:52:44+09:00
2024-02-14T11:52:44+09:00
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ご挨拶
東浩紀『訂正する力』朝日新書
斎藤幸平『ゼロからの『資本論』』NHK出版新書
木澤佐登志『闇の精神史』ハヤカワ新書
渡名喜庸哲『現代フランス哲学』ちくま新書
ブライアン・グリーン『時間の終わりまで』ブルーバックス
今回のランキング(ベスト19)で重複した書目は『訂正する力』と『ゼロからの『資本論』』です。私自身にとってのここ一年の注目書目のうち上記以外については、当ブログで順次取り上げてきた通りです。
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保管:月曜社2022年11月~2023年1月新刊
http://urag.exblog.jp/242089874/
2024-02-13T16:00:00+09:00
2024-02-13T16:00:26+09:00
2024-02-13T16:00:26+09:00
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販売情報
郷原佳以氏書評「「ユダヤ虐殺の場」見つめる」(「読売新聞」2023年4月2日朝刊書評欄)
岡本源太氏書評「徹底した「見ること」の実践――権力がいかに経験されるのかを解明する考察」(「週刊読書人」2023年4月21日号)
高橋順一氏書評「アウシュヴィッツの逆説、背理に迫る――想像不可能性に抗して想像し続けること、見ることの不可能性に抗して見続けようとすること……」(「図書新聞」2023年8月19日号)
2022年12月21日発売:アレクサンドル・コイレ『イェーナのヘーゲル』本体4,500円、シリーズ・古典転生第28回配本本巻27。
2022年12月15日発売:ジョルジョ・アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの 新装版』本体2,600円。
ぱや氏書評(『綴葉』2023年4月号「新刊コーナー」)
2022年12月14日発売:築地正明『古井由吉――永劫回帰の倫理』本体3,000円。
長瀬海氏書評「強靭な読み、思考的な粘度のある議論――その文学に挑み続ける、僧の修行のような文芸評論」(「週刊読書人」2023年2月24日号)
2022年11月11日発売:ウィリアム・モリス『小さな芸術――社会・芸術論集Ⅰ』本体2,800円。
鈴木沓子氏書評「芸術に宿る「何か」、現代にも響く感性」(「週刊金曜日」2023年1月13日発売1407号「きんようぶんか」欄)
椹木野衣氏書評「美のある暮らしへの渇望を呼ぶ」(「朝日新聞」2023年2月25日付朝刊書評欄)]]>
月曜社3月新刊:『平岡正明著作集』上下巻
http://urag.exblog.jp/242089860/
2024-02-13T15:40:00+09:00
2024-02-14T09:32:01+09:00
2024-02-13T15:40:33+09:00
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近刊情報
平岡正明著作集(上・下、全2巻)
平岡正明著作集編集委員会[編]
月曜社 本体各3200円 46判並製 C0070
上巻534頁(縦188mm×横130mm×束幅31mm、重量500g) ISBN978-4-86503-184-3
下巻560頁(縦188mm×横130mm×束幅32mm、重量520g) ISBN978-4-86503-185-0
過激で鮮烈でスキャンダラスな思想家のエッセンス――。革命と犯罪、ジャズから歌謡まで、縦横無尽に論じて、いまなお支持を集めつづける思想家・平岡正明の100冊あまりにおよぶ全著作から、そのエッセンスを全2巻、1000ページ余に凝縮し、ときにドゥボール『スペクタクルの社会』やドゥルーズ=ガタリまでをも想起させるその先駆性、革命性を一望する。1962年から2005年までの40篇を収録。上巻に革命論、下巻に大衆文化論を中心に収録。※「山口百恵は菩薩である」「犯罪あるいは革命に関する諸章」など長編評論は抄録です。
五木寛之氏推薦文「平岡正明は、かつて「山口百恵は菩薩である」と宣言した。それは逆だろう。平岡正明こそが菩薩なのだ。菩薩とは真の仏を求める修行者の謂である。そして菩薩は「すべての大衆が救われない限り自分は仏にならない」と宣言した。平岡正明は未完の仏である。彼の言葉は否定から生まれた大いなる肯定の言説であり、未完の魅力と栄光を帯びて年月と共に新しい」。
【上巻目次】
犯罪の擁護
黄昏からの挨拶
韃靼人ふう
犯罪あるいは革命に関する諸章
座頭市オゥ・ゴー・ゴー
ジャズ宣言
コルトレーンテーゼ
ジャズ・シーンにおいて理論の先行は可能か――ジャズ革命の理論的根拠
下方の前衛について
殺人論
谷川雁の不愉快な非転向
昭和元禄水滸伝抒説
暴力論
反面同志の死
『あらゆる犯罪は革命的である』引首
犯罪と革命接近し白熱す
中国人は日本で何をされたか――最初の試論
シンポジウム「犯罪とは何か」を終えて
‘45~‘72めぐる因果の糸車――『あらゆる犯罪は革命的である』のあらすじにかえて
あねさん待ちまち水滸伝
太平洋戦争草稿・解説
石原莞爾試論
解説「犯罪者革命と窮民革命」友常勉
解題
【下巻目次】
フランツ・ファノンのビーバップ革命理解
山口百恵は菩薩である――恋文二度三度:菩薩テーゼあわせて一〇八
〈上海一九三〇ー横浜一九八〇〉ケイ、黄金時代を夢みなさい
官能の武装――岡庭昇『身体と差別』を読む
昭和二十二年歌謡曲論
How Deep Is The古賀メロディ
明菜自殺未遂時点での飛躍の予感
品川駅のレコードの謎――夢野久作『東京人の堕落時代』
新内「ぶんやアリラン」
梅雨明けのジゴロ
「エイブレイサブル・ユー」三題――パーカー、マクリーン&オーネット
長谷川伸の碑
マイルス最後の闘い――合衆国黒人街からブラック・アフリカへ
ヴードゥ的加速――アルバート・アイラーとハイチ革命
樋口一葉「十三夜」の底力
大山倍達、東洋の思想家として
落語、新内、冬の虎退治馬退治
赤色残侠伝
解説「かがやく烏賊と牛たちの自虐」五所純子
解題/年譜/著作一覧
*
平岡正明(ひらおか・まさあき)1941年東京に生まれる。1960年の安保闘争に共産主義者同盟として参加、61年、犯罪者同盟結成、この機関紙に「犯罪の擁護」を執筆したのを端緒に著作活動を開始、労働運動、社会運動などに関わりながら、革命論、犯罪論からジャズ、歌謡曲、浪曲、落語まで、あらゆるジャンルに通じ、新たな批評の世界を切り開いた。2009年没。著作は生前だけで120冊に及ぶ。
※アマゾンジャパン(上・下)、HMV&BOOKS(上・下)にて予約受付中。
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注目新書文庫新刊および既刊:青山南『本は眺めたり触ったりが楽しい』ちくま文庫、ほか
http://urag.exblog.jp/242088369/
2024-02-11T23:42:00+09:00
2024-02-12T00:08:22+09:00
2024-02-11T23:42:41+09:00
urag
ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
★まず注目の新書新刊を2点。
『人類の終着点――戦争、AI、ヒューマニティの未来』エマニュエル・トッド/マルクス・ガブリエル/フランシス・フクヤマ/メレディス・ウィテカー/スティーブ・ロー/安宅和人/岩間陽子/手塚眞/中島隆博(著)、朝日新書、2024年2月、本体990円、新書判272頁、ISBN978-4-02-295254-7
『マルクス・ガブリエル 日本社会への問い――欲望の時代を哲学するⅢ』丸山俊一/NHK「欲望の時代の哲学」制作班(著)、NHK出版新書、2023年12月、本体880円、本体880円、新書判208頁、ISBN978-4-14-088712-7
★ガブリエルが2点に登場。『人類の終着点』は巻末特記によれば「「朝日地球会議2023」(2023年10月9日~10月12日)に登壇したトッド、ガブリエル、フクヤマ、ロー各氏のインタビューと、ウィテカー、安宅、岩間、手塚、中島各氏のシンポジウムを、大幅に加筆修正したうえで、収録したもの」と。ガブリエルのインタビューは、第3部「支配者は誰か? 私たちはどう生きるか?」で「戦争とテクノロジー彼岸「人間性」の哲学」と題されて収録されています。
★『マルクス・ガブリエル 日本社会への問い』は、「欲望の時代を哲学する」シリーズの第3弾。NHKBS1「欲望の時代の哲学2023」の書籍化です。シリーズ既刊書は以下の通り。なお丸山さんによる「おわりに」では、ガブリエルが日本の読者に向けて、「倫理資本主義」をめぐる書き下ろしを準備であることが明かされています。
2018年12月『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』NHK出版新書
2020年04月『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ――自由と闘争のパラドックスを越えて』NHK出版新書
2023年12月『マルクス・ガブリエル 日本社会への問い――欲望の時代を哲学するⅢ』NHK出版新書
★続いて注目の文庫新刊既刊を列記します。
『構造と力――記号論を超えて』浅田彰(著)、千葉雅也(解説)、中公文庫、2023年12月、本体1,000円、文庫判320頁、ISBN978-4-12-207448-4
『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』蓮實重彦(著)、講談社文芸文庫、2022年11月、本体1,800円、A6判272頁、ISBN978-4-06-529925-8
『本は眺めたり触ったりが楽しい』青山南(著)、ちくま文庫、2024年2月、本体800円、文庫判240頁、ISBN978-4-480-43932-1
『所有とは何か』ピエール=ジョゼフ・プルードン(著)、伊多波宗周(訳)、講談社学術文庫、2024年1月、本体1,380円、A6判416頁、ISBN978-4-06-534580-1
『知性改善論』バールーフ・デ・スピノザ(著)、秋保亘(訳)、講談社学術文庫、2023年12月、本体720円、A6判152頁、ISBN978-4-06-534276-3
『新論』会沢正志斎(著)、関口直佑(訳)、講談社学術文庫、2023年12月、本体1,260円、A6判352頁、ISBN978-4-06-534197-1
『人倫の形而上学 第一部 法論の形而上学的原理』カント(著)、熊野純彦(訳)、岩波文庫、2024年1月、本体1,300円、文庫判482頁、ISBN978-4-00-336264-8
『支配について(Ⅱ)カリスマ・教権制』マックス・ウェーバー(著)、野口雅弘(訳)、岩波文庫、2024年1月、本体1,300円、文庫判474頁、ISBN978-4-00-342102-4
『支配について(Ⅰ)官僚制・家産制・封建制』マックス・ウェーバー(著)、野口雅弘(訳)、岩波文庫、2023年12月、本体1,430円、文庫判546頁、ISBN978-4-00-342101-7
『ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇』クライスト(著)、山口裕之(訳)、岩波文庫、2024年1月、本体910円、文庫判326頁、ISBN978-4-00-324166-0
『鷲か太陽か?』オクタビオ・パス(著)、 野谷文昭(訳)、岩波文庫、2024年1月、本体720円、文庫判194頁、ISBN978-4-00-327972-4
『シェイクスピアの記憶』ホルヘ・ルイス・ボルヘス(著)、内田兆史/鼓直(訳)、岩波文庫、2023年12月、本体630円、文庫判158頁、ISBN978-4-00-377014-6
★『構造と力』(勁草書房、1983年)の文庫化には驚きました。解説は千葉雅也さん。言うまでもなく本書はニューアカブームを象徴するバイブル的存在で、学生だけでなくビジネスマンにも広く読まれていました。ニューアカデミズムのバイブルには『構造と力』のほかにも何冊かあります。蓮實重彦『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(朝日出版社、1978年;河出文庫、1995年)は2022年11月に講談社文芸文庫で再文庫化されました。解説「偽装の反=冒険」は郷原佳以さんが書かれています。柄谷行人『隠喩としての建築』(講談社、1983年;講談社学術文庫、1989年;『底本柄谷行人集2』所収、岩波書店、2004年)は現在品切で再文庫化が俟たれるところです。中沢新一『チベットのモーツァルト』(せりか書房、1983年;講談社学術文庫、2003年)は今も文庫で読めます。解説は吉本隆明さんがお書きになっています。
★一般的には、吉本さんとニューアカとの間には世代的な「切断」があったとみなされることがあるかと思いますが、中沢さんは巻頭の「学術文庫版まえがき」でこう述べています。「吉本氏の思想は、海図のない暗い夜の海を一人で航海し続けてきた私にとって、かなたにあって協力でたしかな導きの光を放つ、唯一の灯台であった」。一方、吉本さんは解説で『チベットのモーツァルト』について「この「精神(心)の考古学」の技術法を使ってチベットの原始密教の精神過程と技法に参入し、その世界を解明しようとした最初の試みではないかと思った」と評価されています。「精神の考古学」とはまさにまもなく新潮社より発売となる中沢新一さんの最新著のタイトルでもあります。
★『本は眺めたり触ったりが楽しい』は、ちくま文庫の今月新刊のうちの一冊。翻訳家でエッセイストの青山南(あおやま・みなみ, 1949-)さんの著書『眺めたり触ったり』(早川書房、1997年)の改題文庫化です。巻末特記によれば「文庫化にあたり、加筆訂正のうえ、「文庫版への追記」を加えました」とのこと。帯文に曰く「積ん読、音読、拾い読み、索引読み、解説読み。歩いて読んだり、寝転んで読んだり、バスで読んだり……本はどう読んでもいい!(読まなくてもいい) 読書エッセイの名著、待望の文庫化」と。同版元の文庫で読める、ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』(大浦康介訳、ちくま学芸文庫、2016年)や、管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』(ちくま文庫、2021年)と並んで、堅苦しい読書観のコリをほぐしてくれる、素敵な本です。例えば、「本は最後まで読むもんだ、と決めたのはだれだ? いや、待てよ、そんな決まり、あったっけ。 よくよく考えてみると、そんなの、ないぞ。〔…〕本を最後まで読むということも、じつは、本をめぐるしつけのひとつにすぎないのかもしれない」(87頁)。
★講談社学術文庫の注目既刊書3点は、いずれも文庫オリジナルの新訳。スピノザ『知性改善論』(底本はラテン語版『遺稿集』1677年刊)は「文庫版としては90年ぶりの新訳」(帯文より)で、プルードン『所有とは何か』(原著1840年刊、底本はリーヴル・ド・ポッシュの2009年版)は「半世紀ぶりの新訳」(帯文より)。会沢正志斎『新論』(1825年述作、底本は1857年の江戸玉山堂公刊本)は文庫としては塚本勝義訳註『新論・迪彝篇』(岩波文庫、1941年)以来で、現代語訳つきの文庫としては初めてになるかと思われます。
★岩波書店の注目既刊書は7点。うち、ウェーバー『支配について』、カント『人倫の形而上学』、クライスト『ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇』は新訳。ウェーバーとカントの書目は新訳ですが、文庫になるのは初めてでもあります。いずれも重要書なので、待望の文庫化ではないでしょうか。クライストの「他一篇」は「サント・ドミンゴでの婚約」。文庫で読める既訳としては、種村季弘訳「聖ドミンゴ島の婚約」(『チリの地震――クライスト短篇集』所収、河出文庫、1996年;新装版2011年)があります。パスの「初期代表作」と帯文に謳われた『鷲か太陽か?』は書誌山田より2002年に刊行されていた訳書の文庫化。巻末の編集付記によれば、文庫化に際し、ルフィーノ・タマヨによる挿画3点を収録した、とのこと。ボルヘス『シェイクスピアの記憶』は1983年刊行の「最後の短篇集」(帯文より)の訳書。「一九八三年八月二十五日」「青い虎」「パラケルススの薔薇」「シェイクスピアの記憶」の4篇を収めています。内田さんによる巻末解説によれば、『パラケルススの薔薇』(国書刊行会「バベルの図書館(22)ボルヘス」、1990年;『新編バベルの図書館 第6巻』2013年)に収められている鼓直さんによる既訳3篇(「一九八三年八月二十五日」「青い虎」「パラケルススの薔薇」)には「極力手を入れないことにした。とはいえ、どうしても整えざるをえない箇所については二人〔内田さんと、岩波書店の元編集者の入谷芳孝さん〕で相談し、著作権継承者でラテンアメリカ文学を専門とされる関西大学の鼓宗氏にお認めいただいたうえで、先人の訳を修正させていただいた」とのことです。
★なお、岩波現代文庫では3月15日発売で、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』上下巻がついに文庫化されるそうです。円安で海外版権の維持が難しくなっている昨今、ありがたいことです。
★最後に単行本の注目既刊書を3点ほど。今まで言及しそびれていたものの第3弾です。次回以降、第4弾に続きます。
『新装版 コウモリであるとはどのようなことか』トマス・ネーゲル(著)、永井均(訳)、2023年12月、本体3,200円、A5判並製308頁、ISBN978-4-326-10330-0
『ユング、『ユリシーズ』を読む』カール・ギュスタフ・ユング(著)、小田井勝彦/近藤耕人(訳)、小鳥遊書房、2023年10月、本体2,100円、四六判並製184頁、ISBN978-4-86780-023-2
『タッチング・フィーリング――情動・教育学・パフォーマティヴィティ』イヴ・コソフスキー・セジウィック(著)、岸まどか(訳)、小鳥遊書房、2022年12月、本体3,000円、A5判並製380頁、ISBN978-4-86780-003-4
★米国の哲学者ネーゲル(Thomas Nagel, 1937-)の『新装版 コウモリであるとはどのようなことか』は、『Mortal questions』(Cambridge University Press, 1979)の全訳書として長く読み継がれてきた『コウモリであるとはどのようなことか』(勁草書房、1989年)の新組新装版。46判上製本だった旧版はA5判並製本に変わり、古田徹也さんによる解説「「内側」と「外側」に引き裂かれる観点」と、訳者の永井均さんによる解説「コウモリであることがそのようにあることであるようなそのような何かは存在するだろうか」の、計2本が加わりました。にもかかわらず値上げ幅はわずかで、版元さんの心意気を感じます。
★『ユング、『ユリシーズ』を読む』は、帯文に曰く「1932年に雑誌Europäische Revueに発表されたユングによる『ユリシーズ』論。訳者二人による解説もつき、ユングとジョイスの関係性が紐解かれる」と。底本はW. Stanley Dellによる英訳『Ulysses: A Monologue』(Folcroft library Editions, 1972)とのことです。ユングはこう書いています。「さなだむし風に這っていく文節で明らかになるジョイスの信じられないほど豊かで多面的な言語は、ひどく退屈で単調きわまるが、この退屈と単調こそ叙事詩の早大さを獲得しており、この本をつまらない人間世界の不充分さっとその狂気じみた悪魔的な伏流を描いた『マハーバーラタ』たらしめているのである」(48頁)。
★小鳥遊書房さんの注目既刊書で取り上げたいのはもう1点、発売から1年以上たちますが、セジウィック(Eve Kosofsky Sedgwick, 1950-2009)の『Touching Feeling: Affect, Pedagogy, Performativity』(Duke University Press, 2003)の全訳書『タッチング・フィーリング』です。セジウィックの訳書は、『クローゼットの認識論――セクシュアリティの20世紀』(外岡尚美訳、青土社 1999年;新装版、2018年)、『男同士の絆――イギリス文学とホモソーシャルな欲望』(上原早苗/亀澤美由紀訳、名古屋大学出版会、2001年)に続く3冊目で、新装版を除けば20数年ぶりの翻訳になります。『タッチング・フィーリング』について岸さんは訳者解説で次のように評しておられます。
★「情動という名状しがたい「触・感」を表す概念への注目によって本書は、心身の二項対立や伝統的な自律的主体を揺るがしながら、情動的な知の理論――心と身体で「知る」というのはどんな感じかをめぐる理論――を模索し、2000年代以降の人文思想において「情動的転回〔アフェクティブ・ターン〕」や「ポストクリティーク」という、批評〔クリティーク〕の枠組み自体を問い直すような大きな批評ムーヴメントを広めるきっかけにもなった」(335頁)。
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『人類史の哲学』(月曜社)刊行記念 近藤和敬さんトークショー 「いま、なぜ「人類史の哲学」なのか――人類史にとって哲学とは何か」
http://urag.exblog.jp/242084092/
2024-02-07T10:53:00+09:00
2024-02-07T10:53:15+09:00
2024-02-07T10:53:15+09:00
urag
書評・催事・広告
近年の人類学的転回は哲学に根底からの転換を迫っています。12月末に刊行された『人類史の哲学』(月曜社)は、数理哲学やドゥルーズを論じてきた旗手である近藤和敬さんが、自然、人間、そして社会の形成の基礎を問い、近代の自律/他律を超える〈異律〉という原理から人類史を再構成し、学問=知そのものを問い直す、近藤和敬・主著の誕生!と寿ぐべき、壮大にして記念碑的な力作、壮大にして記念碑的な力作です。今回のトークイベントでは、ご参加いただいた皆様からの質問に、近藤さんが丁寧にお答えくださいます。
日時:2024年2月16日(金)19:00~20:30
会場:MARUZE&ジュンク堂書店梅田店 4階イベントスペース
開場:18:30~
※会場へのご来店をご希望のお客様は「会場観覧チケット」をご購入ください。
オンライン視聴:
※イベント開始の10分前より入室可能です。
※イベント終了後1週間、アーカイブでご視聴いただけます。
<販売期間>
販売開始:2023年1月24日(水)12:00
販売終了 視聴のみ 2024年2月24日(土)12:00
書籍付き 2024年2月24日(土)12:00
会場観覧チケット 2024年2月16日(金)18:00
<チケット案内>
【視聴チケット】1,650円税込
オンラインセミナー視聴に関する情報がダウンロードできます。
【書籍付き+視聴チケット】5,280円税込+別途送料
オンラインセミナーの視聴+『人類史の哲学』(月曜社)を1冊お届けいたします。
【会場観覧チケット】1,650円税込
イベント来店者用チケットです。会場にて『人類史の哲学』(月曜社)の販売も実施いたします。
チケットのお申し込みはチケット販売サイトにて受け付けております。
※店頭やお電話ではお申込みいただけません。
【注意事項】
・参加受付は定員に到達しだい終了となります。
・天候や災害などにより、やむを得ずイベントを中止する場合がございます。予めご了承くださいませ。
【お問い合わせ先】
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店(営業時間10:00~22:00)
電話番号:06-6292-7383
『人類史の哲学』(月曜社)刊行記念 近藤和敬さんトークショー 「いま、なぜ「人類史の哲学」なのか――人類史にとって哲学とは何か」
■近藤和敬(こんどう・かずのり)
一九七九年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科准教授。
【主な著書】『構造と生成1 カヴァイエス研究』(月曜社)、『〈内在の哲学〉へ カヴァイエス・ドゥルーズ・スピノザ』(青土社)、『ドゥルーズ=ガタリの『哲学とは何か』を精読する 〈内在〉の哲学試論』(講談社)、【訳書】A・バディウ『推移的存在論』(水声社)など
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注目新刊:ジョスリン・ゴドウィン英訳版『ポリフィルス狂戀夢』高山宏訳(東洋書林)、ほか
http://urag.exblog.jp/242080766/
2024-02-05T00:12:00+09:00
2024-02-05T00:33:20+09:00
2024-02-05T00:12:48+09:00
urag
ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
★今回も新刊多数のため、注目既刊書の紹介は次回に再度持ち越します。まずは、まもなく発売となる、待望の學魔訳『ポリフィルス』から。
『ポリフィルス狂戀夢』フランチェスコ・コロンナ(著)、ジョスリン・ゴドウィン(英訳)、高山宏(日本語訳)、東洋書林、2024年2月、本体7,500円、A5上製560頁(図版213点)、ISBN978-4-88721-832-1
帯文より:エロイムエッサイム、出でよ、ポリフィロ、出でよ、ポリア。廻り廻る夢の夢の夢の果てまでを巡り巡る綺想・綺観……東西の學魔の黙し交した密契によって絢爛豪華に召喚される、夢幻にして無限の唐草模様を描く愛の遍歴譚。ドラコニア推奨の稀覯書、遂に邦訳。
目次:
序|ジョスリン・ゴドウィン
ポリフィルス狂戀夢|フランチェスコ・コロンナ
前口上
壱之書
弐之書
附録
1. 寓意的人名とその意味
2. 建築用語集
3. 美女神キュテレイアの島の略図
解題
1. アルチンボルドの源泉とポリフィロの緑夢|マウリツィオ・カルヴェージ(伊藤博明訳)
2. Vita voluptuariaとしての重訳|高山宏
版元による概要説明:
ルネサンス後期となる1499年にイタリアで刊行された原典は、黎明期の活版印刷書籍である「初期刊本(インキュナブラ)」の中でも最高峰の贅を尽くしたフォリオ判(二つ折り判)の挿絵入り大型本。原典著者には諸説あるが、本書ではヴェネツィアのドミニコ会士コロンナ説を採用。
テクストはイタリア語文法を基礎にしたラテン語・ギリシア語の混淆で、大量の造語も混じるその難解さ故に、有力な現代イタリア語訳ですら漸く1980年の刊となるほど、完訳は長らく不可能視されていた。そうした原典を『キルヒャーの世界図鑑』などの著書によって好事家に知られる神秘学研究の泰斗ゴドウィンが20年の歳月をかけ英訳。
迎え撃つは本邦人文書の最後のスター高山宏。ゴドウィン訳を底本に、無論のこと原典を縦横に対照しつつ、晩年の澁澤龍彥に推奨されていた完全邦訳の約定を、高山調とも呼ぶべき流麗な文体によって堂々の遂行。
版元による内容紹介:
主人公ポリフィロは胸に秘めた乙女ポリアへの想い故にまたもや眠れぬ夜をまんじりともせず過ごしていた──会いたい、会ってその手を取りたい。そうした一念に没頭するうち、ふと気付けば見たこともない森に迷いこんでいるポリフィロ。建築術、博物学等々のルネサンス後期の新知識や奇想、そして愛の技巧に彩られた「夢中」の彷徨の始まりである。神の恩寵、猛獣の脅威、仙女の誘惑に出逢い乍ら彼は果たしてポリアと結ばれるのか?
カバー表3掲載の讃辞:
「と言うわけで、私のささやかな蔵書の中の逸物とも言うべき、『ポリフィルス』の、世にもみごとな版が、今日、「数多ノ太陽ニモ比ベラレナイ」ものとして、そこに入っているのだ。私は、それを喜んで、愛好家たちの目にさらすのである。彼らは、それが、またとない本であることを認めずにはいられない……」(シャルル・ノディエ「フランシスクス・コロンナ」、篠田知和基訳『炉辺夜話集』牧神社、1975年)。
「オリエント的-古代秘文字術の最初の詩的-マニエリスム的叙述であるフランチェスコ・コロンナの「ポリフィルスの夢」は……恋に溺れたポリフィルスの体験する夢のイメージについての報告である。……謎書、謎絵はシェイクスピア時代のヨーロッパを席捲し魅了した!……この作品は、錯綜たる寓意画的組み合わせのための宝物庫として当時すでに充分に一家をなしているのである」(グスタフ・ルネ・ホッケ「謎術としての寓意画法」、種村季弘訳『文学におけるマニエリスム』第17章より、平凡社ライブラリー、2012年)。
★『ポリフィルス狂戀夢』は今月中旬より発売。幻の奇書『ヒュプネロトマキア・ポリフィリ』(1499年)の、ジョスリン・ゴドウィン(Joscelyn Godwin, 1945-)による英訳『Hypnerotomachia Poliphili: The Strife of Love in a Dream』(Thames & Hudson, 1999/2005)からの、高山宏(たかやま・ひろし, 1947-)さんによる日本語訳。同書の翻訳に至る経緯の一端は、高山さんご自身によって本書の解題2と、「Curiouser and Curiouser――奇書のマニエリスム」(「ユリイカ2023年7月号 特集=奇書の世界」所収、青土社、2023年6月)で明かされています。なお、イタリア語原典版からの完訳には大橋喜之訳『ヒュプネロートマキア・ポリフィリ――全訳・ポリフィルス狂恋夢』(八坂書房、2018年12月)があります。
★続いて、まもなく発売となるちくま学芸文庫の2月新刊5点を列記します。
『他者といる技法――コミュニケーションの社会学』奥村隆(著)、ちくま学芸文庫、2024年2月、本体1,300円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-51222-2
『江戸の戯作絵本2』小池正胤/宇田敏彦/中山右尚/棚橋正博(編)、ちくま学芸文庫、2024年2月、本体1,800円、文庫判624頁、ISBN978-4-480-51225-3
『生のなかの螺旋――自己と人生のダイアローグ』ロバート・ノージック(著)、井上章子(訳)、ちくま学芸文庫、2024年2月、本体1,900円、文庫判592頁、ISBN978-4-480-51227-7
『本地垂迹』村山修一(著)、ちくま学芸文庫、2024年2月、本体1,600円、文庫判464頁、ISBN 978-4-480-51230-7
『種村季弘コレクション 驚異の函』種村季弘(著)、諏訪哲史(編)、ちくま学芸文庫、2024年2月、本体1,300円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-51232-1
★『他者といる技法』は、日本評論社より1998年に刊行された単行本の文庫化。著者の奥村隆(おくむら・たかし, 1961-)さんは社会学者。「文庫版あとがき」によれば「内容はそのままにするのがよいと思った。ただ、表現としてあまりにもくどいと感じる箇所は修正し、「精神分裂病」を「統合失調症」に改めるなどの用語の変更と、書誌情報の追加・修正のみ行うことにした」とのことです。巻末解説「理解できないあなたの隣りにいるために」は、哲学者の三木那由他さんがお書きになっています。
★『江戸の戯作絵本2』は、現代教養文庫の『江戸の戯作絵本(三)変革期黄表紙集』(1982年)と同四巻『末期黄表紙集』(1983年)の合本文庫化。凡例によれば「文庫化に際しては、棚橋正博氏にご協力を仰ぎ、誤記誤植を改めた。また図版は状態のよいものに適宜改めた。〔…〕文庫化に際し、一部底本とは別の図版を掲載したものもある」とのことです。帯文に曰く「忖度一切なし! 政治と下のハナシは格好の茶化しネタ。筆禍事件を招いた発禁策をはじめ16作品を収録」。
★『生のなかの螺旋』は、アメリカの哲学者ロバート・ノージック(Robert Nozick, 1938-2002)の著書『The Examined Life: Philosophical Meditations』(Simon & Schuster, 1989)の全訳書(青土社、1993年)の文庫化。ノージックの著書の文庫化は初めて。文庫化にあたり、「人名表記を一部改めた」とのことです。文庫版訳者あとがきのほか、法哲学者の吉良貴之さんによる解説「人生は強いられず、ただ示される」が加えられています。ノージックの著書のなかでは親しみやすい本ではないでしょうか。それは本書が「生きること、人生で重要なことは何かについて」(12頁)書かれたもので、「人生についての哲学的省察は、理論でなくある肖像画を提供することである」(13頁)からかもしれません。
★『本地垂迹』は、吉川弘文館の「日本歴史叢書」で1974年に刊行された単行本(新装版、1994年)の文庫化。著者の村山修一(むらやま・しゅういち, 1914-2010)さんは逝去されているため、文庫化にあたっての改訂はなし。巻末の文庫版解説「神仏の源流を求めて」は、仏教学者の末木文美士さんがお書きになっています。末木さんは「今日でも神仏習合、本地垂迹をこれほど見事に総合的な視点から描いた著作は出ていない。この分野を学ぶとき、まず読むべき古典として屹立している」とお書きになっています。
★『種村季弘コレクション 驚異の函』は、文庫オリジナル編集。諏訪哲史さんによる編者解説「無限迷宮の歩き方」によれば、「種村季弘の入門的セレクションとして、国書刊行会の傑作撰〔『種村季弘傑作撰(Ⅰ)世界知の迷宮』2013年6月刊、全17篇;『種村季弘傑作撰(Ⅱ)自在郷への退行』2013年7月刊、全21篇〕からさらに精選した代表的な論考も織り交ぜつつ、読みやすい自伝的随想や講演録、対談等を大幅に加え、新たに編み直した、ビギナーズ向けの決定版的な文庫選集」とのこと。収録作を以下に転記しておきます。
吸血鬼幻想
神話の中の発明家
怪物の作り方
洋の東西怪談比較
少女人形フランシーヌ
ケベニックの大尉
地球空洞説
落魄の読書人生
器具としての肉体
物体の軌跡
K・ケレーニイと迷宮の構想
泉鏡花作品に見るオシラ様
グロッソラリー・狂人詩・共感覚
文字以前の世界――童話のアイロニー
偏在する怪物――怪物論のトポス(谷川渥との対談)
★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。書誌情報を列記します。
『感じやすいあなたのためのスピリチュアル・セルフケア――エンパスとして豊かに生きていく』ジュディス・オルロフ(著)、串崎真志(監修)、浅田仁子(訳)、2024年1月、本体3,800円、A5判並製406頁、ISBN978-4-7724-2008-2
『うつ病 隠された真実――逃れるための本当の方法』ヨハン・ハリ(著)、山本規雄(訳)、作品社、2024年1月、本体3,200円、四六判並製416頁、ISBN978-4-86182-843-0
『詳解『源氏物語』文物図典――有職故実で見る王朝の世界』八條忠基(著)、平凡社、2024年1月、本体4,800円、B5判並製400頁、ISBN978-4-582-83947-0
『エドワード・サイード ある批評家の残響』中井亜佐子(著)、書肆侃侃房、2024年1月、本体1,700円、四六判並製208頁、ISBN978-4-86385-612-7
『食と農のソーシャル・イノベーション――持続可能な地域社会構築をめざして』大石尚子(編)、藤原書店、2024年1月、本体4,400円、A5上製288頁、ISBN978-4-86578-411-4
『新ランボー論――慈悲愛と大地母神的宇宙への憧憬』清眞人(著)、藤原書店、2024年1月、本体3,600円、A5判並製上製336頁、ISBN978-4-86578-412-1
『医療とは何か――音・科学そして他者性』方波見康雄(著)、藤原書店、2024年1月、本体2,700円、四六判上製448頁+口絵4頁、ISBN978-4-86578-400-8
★『感じやすいあなたのためのスピリチュアル・セルフケア』について特記しておくと、同書は、米国の精神科医ジュディス・オルロフ(Judith Orloff, 1951-)による『Thriving as an Empath: 365 Days of Self-Care for Sensitive People』(Sounds True, 2019)の全訳。帯文に曰く「一日一ページ、豊かに生きるためのセルフケア365。エンパス(感じやすい人)の心の平穏のために、毎日行う具体的なセルフケアやものの見方、瞑想を紹介します」と。オルロフの既訳書には、以下のものがあります。
『第二の視力』小林サリー(訳)、ヴォイス、1998年9月
『ポジティブ・エネルギー――心・体・魂をすこやかにする』矢鋪紀子(訳)、サンマーク出版、2006年10月
『スピリチュアル・パワーアップ・レッスン――幸せになる第六感の磨き方』サリー・キヨモト(訳)、ハート出版、2007年3月
『こだわらない人ほどうまくいく!(上)泥濘〔ぬかるみ〕の人生からサヨナラできる本!』栗山圭世子(訳)、ヒカルランド、2017年5月
『こだわらない人ほどうまくいく!(下)人生を輝かせる驚きの秘訣』栗山圭世子(訳)、ヒカルランド、2017年5月
『LAの人気精神科医が教える共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』桜田直美(訳)、SBクリエイティブ、2019年12月
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月曜社2024年2月新刊:シャルロット・デルボー『無益な知識――アウシュヴィッツとその後 第二巻』
http://urag.exblog.jp/242067107/
2024-01-29T20:11:00+09:00
2024-01-29T20:13:05+09:00
2024-01-29T20:11:51+09:00
urag
近刊情報
ジャンル:歴史(20世紀ヨーロッパ史、強制収容所、証言文学)
無益な知識――アウシュヴィッツとその後 第二巻
シャルロット・デルボー[著] 亀井佑佳[訳]
月曜社 本体2,400円 46判並製264頁(188x130x17mm) 300g ISBN978-4-86503-183-6
アウシュヴィッツとラーフェンスブリュックへの強制収容体験を経て、その記憶を書きしるすことで証言したフランス人レジスタンス女性、シャルロット・デルボー。ともに逮捕された夫を銃殺され、一緒に闘った仲間たちを次々と喪った彼女は、収容所内で演劇を上演し、パンと引き換えに本を手に入れる。あらゆるものを剥ぎとられてなお、戯曲を暗唱し、詩を想起する。「息を引きとった者たちは歌わない。でも、息を吹き返すやいなや演劇を上演するのだ」――死の知識の無益さに抗う、文学の力。
「あなたたちはあらゆるものを剥ぎとられても、人間から思考し想像する能力だけは奪うことができないと言うだろう。あなたたちは知らないのだ。人は一人の人間を、下痢に腹をゴロゴロ言わせる骸骨に変えることができ、この人から思考する時間と思考する能力を奪うことができる。想像的なものは、十分な食べものを与えられ、自由な時間のゆとりに恵まれ、自分の夢を育むための基本原理を好きなように使える身体の、最初の贅沢品なのだ。アウシュヴィッツでは夢は見られなかった、うなされただけだ」(本文より)。
※アマゾン・ジャパン、HMV&BOOKSonline、HonyaClub、dショッピング、にて予約受付中。
シャルロット・デルボー(Charlotte Delbo, 1913–1985)フランスの作家。レジスタンス活動を理由に夫とともにフランス警察に逮捕され、ゲシュタポに身柄を引きわたされる。アウシュヴィッツ強制収容所より解放後、享年71歳で病没。主な著書に、『アウシュヴィッツの唄』(篠田浩一郎訳、『全集・現代世界文学の発見6 実存と状況』所収、學藝書林、1970年;本訳書『誰も戻らない』の原著初版1965年版の全訳)、『アウシュヴィッツとその後』(全3巻、1970~1971年;第1巻『誰も戻らない』月曜社、2022年)など。
亀井佑佳(かめい・ゆか, 1986–)フランス文学・哲学研究。立命館大学大学院文学研究科人文学専攻哲学専修博士前期課程修了。翻訳に、シャルロット・デルボー『誰も戻らない』(月曜社、2022年)など。
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注目新刊:『ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集』ルリユール叢書、ほか
http://urag.exblog.jp/242066537/
2024-01-29T01:23:00+09:00
2024-01-29T01:35:12+09:00
2024-01-29T01:23:12+09:00
urag
ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
★まず注目新刊を列記します。眼鏡が壊れたため入力作業に支障をきたしており、省力投稿となります。また、今回は取り上げる冊数が多いため、今まで2回やった注目既刊書は次回に持ち越します。
『100分de名著 リチャード・ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』』朱喜哲(著)、NHKテキスト:NHK出版、2024年1月、本体545円、A5判並製116頁、ISBN978-4-14-223160-7
『偶然性・アイロニー・連帯――リベラル・ユートピアの可能性』リチャード・ローティ(著)、齋藤純一/山岡龍一/大川正彦(訳)、岩波書店、2000年10月;2023年12月(16刷)、本体4,800円、四六判上製456頁、ISBN978-4-00-000449-7
『新訳 平和の経済的帰結』ジョン・メイナード・ケインズ(著)、山形浩生(訳・解説)、東洋経済新報社、2024年1月、本体2400円、四六判並製284頁、ISBN978-4-492-31557-6
★NHKEテレの「100分de名著」2024年2月放送は、大阪大学招聘教員の朱喜哲(ちゅ・ひちょる, 1985-)さんによる、リチャード・ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』をめぐる講義。『偶然性・アイロニー・連帯』の原著は『Contingency, Irony, and Solidarity』(Cambridge University Press, 1989)で、全訳書は岩波書店から2000年に刊行されています。最新刷は昨年末の第16刷で、今回の番組放送に合わせた帯が巻かれています。曰く「人間の連帯はいかにして可能になるのか? 私的な生の成就と人間の連帯の根源が同一でないなら、時間と偶然を超えた永遠の秩序が存在しないなら、真理への希求を放棄したあと、果たして私たちにあるべき社会を構想することは可能なのか」。『偶然性・アイロニー・連帯』の目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。
★NHKテキストの表紙に記載されている紹介文は以下の通り。「現代アメリカを代表する哲学者でありながら、真理を探究する近代哲学を根本から否定したリチャード・ローティ。分断やポピュリズムを乗り越え、連帯可能な社会を目指すための「新しい哲学」の役割を追求した、実践的な思想を読みとく」。目次を下段に掲出しておきます。
【はじめに】哲学者とは会話の守護者である
第1回 近代哲学を葬り去った男(2月5日放送、6日・12日再放送)
第2回 「公私混同」はなぜ悪い?(2月12日放送、13日・19日再放送)
第3回 言語は虐殺さえ惹き起こす(2月19日放送、20日・26日再放送)
第4回 共感によって「われわれ」を拡張せよ(3月26日放送、27日・3月4日再放送)
★朱さんは「はじめに」でこう書いています。「今日、世界では政治的な分極化がますます進んでいます。特にSNSを中心に、エコーチェンバー、フィルターバブル、「論破」といった、議論や会話が成り立たなくなってしまう事態が深刻になっています。そのとき、一種の処方箋になるのがローティです。『偶然性・アイロニー・連帯』は、われわれがどうすれば会話を止めずに立ち回ることができるかについてのヒントや、その理論を提供してくれる本として読むことができます。また、いまの時代はいわゆる「炎上」が日常茶飯事となり、ひとたび失言があればすぐそこに人格的非難が集中します。その結果、安心して会話ができる場所が世の中からどんどん消えていっている。『偶然性・アイロニー・連帯』は、それを消さないようにするための足場にもなりうる本です」(8~9頁)。
★『新訳 平和の経済的帰結』は、『The Economic Consequences of the Peace』(Macmillan, 1919)の新訳。既訳には同じ東洋経済新報社から刊行されている『ケインズ全集』の第2巻に早坂忠訳(1977年;こちらの底本は原書全集版『The Collected Writings of John Maynard Keynes』Macmillan/Cambridge University Press)が収められていますが、そちらは高額本ということもあり、入手しやすい価格で新しい訳書が出たのは幸いでした。帯文はこうです。「今こそ読みたい、平和のための経済論。100年前、憎悪へ突き進む世界に警鐘を鳴らした20世紀最高の経済学者ケインズの傑作が復活」と。
★本書の冒頭はこんな言葉で始まります。「人類の顕著な特徴として、自分を取り巻く環境をあたりまえのものと思ってしまうということがある。西ヨーロッパが過去半世紀にわたり頼ってきた経済的な仕組みが、きわめて異例で、不安定でややこしく、信頼できない、一時的なものでしかないということを、はっきり認識している人はほとんどいない。/人々は自分たちの最近の経済的に恵まれた仕組みの中でも、最も特異で一時的な部分について、あたりまえで、永続的であり、あてになるものだと考えて、それに基づいて計画を立てている」(序論、2頁)。百年以上前の著作ですが、人類が歴史を繰り返す愚かさから脱することができていない以上、本書は再読に値すると思われます。
★「人々の意見を変える、示唆と想像の力を動かし始めることだ。真実を主張し、幻想を剥ぎ取り、憎悪をなくし、人々の心情や精神をもっと拡大し、指導することが、その手段でなければならない。/本書執筆時の1919年秋、私たちの運命が死に絶えた季節にいる。過去5年の苦闘、恐怖、苦しみの反動が今絶頂に達している。〔…〕私たちはもはや忍耐の限界を超えて動かされ、休息が必要だ。現存する人々の生涯の中で、今ほど普遍的な要素が輝きを失った時期はない」(236~237頁)。
★最近では以下の新刊との出会いがありました。
『ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集』シュピンドラー/ラウパッハ/ほか(著)、森口大地(編訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2024年1月、本体4,200円、四六変上製464頁、ISBN978-4-86488-292-7
『スリーパー・エージェント――潜伏工作員』アン・ハーゲドーン(著)、布施由紀子(訳)、作品社、2024年1月、本体2,700円、四六判並製288頁、ISBN978-4-86793-005-2
『新視点 出雲古代史――文献史学と考古学』松本岩雄/瀧音能之(編)、平凡社、2024年1月、本体3,900円、4-6判並製336頁、ISBN978-4-582-46913-4
『現代思想2024年2月号 特集=パレスチナから問う――100年の暴力を考える』青土社、2024年1月、本体1,600円、A5判並製254頁、ISBN978-4-7917-1459-9
『一つの惑星、多数の世界――気候がもたらす視差をめぐって』ディペシュ・チャクラバルティ(著)、篠原雅武(訳)、人文書院、2024年1月、本体2,700円、4-6判並製240頁、ISBN978-4-409-03130-8
『ディスレクシア』マーガレット・J・ スノウリング(著)、関あゆみ(監訳)、屋代通子(訳)、人文書院、2024年1月、本体2,600円、4-6判並製208頁、ISBN978-4-409-34064-6
『福澤諭吉――幻の国・日本の創生』池田浩士(著)、人文書院、2024年1月、本体4,600円、4-6判上製368頁、ISBN978-4-409-04126-0
『新装版 フロイト著作集第7巻 ヒステリー研究/科学的心理学草稿』ジークムント・フロイト(著)、小此木啓吾/懸田克躬(訳)、人文書院、2024年1月、本体6,500円、A5判上製314頁、ISBN978-4-409-34061-5
★何点かについて特記します。『ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集』は、ルリユール叢書の第38回配本(52冊目)。帯文に曰く「ポリドリ『ヴァンパイア』ブームのさなか、1820~30年代にかけて発表された〔…〕怪縁が織りなすドイツ・ヴァンパイア文学傑作短編集。本邦初訳」。収録作は下段に転記しておきます。巻末には「ヴァンパイア関係事項年譜」と訳者解題「ヴァンパイア文学のネットワーク」が付されています。
死人花嫁|ゴットフリート・ペーター・ラウシュニク
死者を起こすなかれ|エルンスト・ラウバッハ
ヴァンパイアの花嫁|カール・シュピンドラー
ヴァンパイア アルスキルトの伝説|J・E・H
狂想曲――ヴァンパイア|イジドーア
ヴァンパイアとの駆け落ち|ヒルシュとヴィーザー
ヴァンパイア ワラキア怪奇譚|F・S・クリスマー
★『一つの惑星、多数の世界』は、インドの歴史学者ディペシュ・チャクラバルティ(Dipesh Chakrabarty, 1948-)の『One Planet, Many Worlds: The Climate Parallax』(Brandeis University Press, 2023)の訳書。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「政治的なものは、人間的な現象学に立脚していて、したがって意見の不一致に立脚している。それは人間を、複数のもののあつまりとして考えている。この複数性を逃れるすべはない。だがそれでも、単一の地球システムが人間の日常性へと侵入するということは、この複数性そのものを、緊急の政治的争点にする」(180頁)。
★「多様で対立し合う人間の集団が、提示された惑星的な行動の行程表のまわりで一緒になるとしたら、それはどのようにしてであろうか。私は、対立している立場との類縁関係を作り出し、誰であれ他の人とは完全には一緒にならないだろうということを理解するという思想が、こういったわけのわからない時代において私たち自身を導くにあたって何らかの役にたつことを期待する。一つの政治的主体として役目を果たすことの可能な人間でできた「私たち」は存在しないが、他方では、この危機において、ンベンベがジャン=リュック・ナンシーにならって「共同における存在」と呼ぶものをめぐってなすべきことがまだ残されている」(181頁)。
★『新装版 フロイト著作集第7巻』は、同著作集の新装版シリーズの区切りとなる1冊。人文書院版『フロイト著作集』は全11巻ですが、そのうち新装版で再刊されたのは、第4巻から第7巻の計4冊ということになります。第7巻は『ヒステリー研究』(懸田克躬訳)と、『科学的心理学草稿』(小此木啓吾訳)を収録。
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