ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ
2009年 12月 21日

映画『哲学への権利――国際哲学コレージュの軌跡』

弊社より刊行したジャック・デリダ『条件なき大学』の翻訳解説者である西山雄二さんがこのたびドキュメンタリー映画『哲学への権利――国際哲学コレージュの軌跡』を制作され、来年年明けから順次一般公開されます。以下に、西山さんによる映画の案内文をご紹介します。

***

◆映画『哲学への権利』とは何か?

「脱構築とは制度という概念がつねに問題となる制度的実践である」(ジャック・デリダ)。・・・映画「哲学への権利――国際哲学コレージュの軌跡」は、1983年にジャック・デリダやフランソワ・シャトレらがパリに創設した半官半民の研究教育機関「国際哲学コレージュ(CIPH)」をめぐる初のドキュメンタリー映画である。

映画は、歴代議長ミシェル・ドゥギー、フランソワ・ヌーデルマン、ブリュノ・クレマン、現副議長ボヤン・マンチェフ、新旧のプログラム・ディレクターであるカトリーヌ・マラブー、フランシスコ・ナイシュタット、ジゼル・ベルクマンへのインタヴューから構成される。

この研究教育機関の独創性を例として、本作品では、収益性や効率性が追求される現在のグローバル資本主義下において、哲学や文学、芸術などの人文学的なものの可能性をいかなる現場として構想し実践すればよいのかが問われる。

監督・西山雄二が歴代の議長を含む関係者7名へのインタヴューを通じて、大学、人文学、哲学の現在形と未来形を描き出す。

映画『哲学への権利』はまず9月初旬に、デリダが教鞭をとっていたアメリカ東海岸の大学(ニュー・スクール、コーネル大学、ニューヨーク大学、イェール大学)で英語版が上映された。日本では12月5日、南山大学での上映会を皮切りに、各地での上映と討論会が進行している。毎回異なる討論者とともに、本作品から出発して、現在の大学、人文学、哲学の困難の深度を理解し、議論を通じて将来的な展望を開きたいと考えている。上映と討論会に数多くの人々の来場を期待する次第である。

◆映画『哲学への権利』に寄せる識者の声

国際哲学コレージュが受け入れてきた数々の革新は、根底的に変容しつつある世界へと思考をたえず開いてきた。この意味で、映画『哲学への権利』は「世界を変化させる」作業に対するきわめて貴重な貢献である。こうした変化の端緒が開けるのは、「世界」が意味するものの「解釈」を通じて、それゆえ、「国際」や「哲学」が意味するものの解釈を通じてなのだから。 ――ジャン=リュック・ナンシー(ストラスブール大学名誉教授)

映画『哲学への権利』は過去の映画ではない。国際哲学コレージュの未来を切り開く、計り知れない価値をもつドキュメントである。現在の世界における哲学の状況を問いながら、本作品が描き出すさまざまな方向性は、まちがいなく、未来の思考にとっての重大な指針となるであろう。 ――カトリーヌ・マラブー(パリ第一〇大学准教授)

多種多様な角度からの鑑賞が求められる哲学に関するたぐい稀な映画。私たちは、現代哲学が引き受けるべき責務を、西洋と非西洋という言説を乗り越えた世界を体現するという現代哲学の責任をたしかに思い出す。――酒井直樹(コーネル大学教授)

◆映画『哲学への権利』 2010年1月~3月上映日程

※朝日カルチャーセンター新宿校と渋谷UPLINKでの上映を除き、基本的に入場無料、事前予約不要。映画上映(九三分間)後に休憩を挟んで実施される討論会はすべて、監督西山雄二とゲストによって構成されます。すべての回で、上映のみの参加も、討論会のみの参加も可能です。詳細は変更される場合があります。上映情報や映画の概要、上映会報告については、公式HPをご参照ください。

1月7日(木)14:30-17:30 広島大学 東広島キャンパス高等教育研究開発センター授業開発研究室 司会:大場淳(広島大学)主催:高等教育研究開発センター

1月16日(土)17:45-20:45朝日カルチャーセンター新宿校 ゲスト:高橋哲哉(東京大学)要予約・受講料 電話:03-3344-1998/1945

1月19日(火)18.15-21.15早稲田大学 早稲田キャンパス 1号館 310教室 ゲスト:岡山茂(早稲田大学)、藤本一勇(早稲田大学)主催:アレゼール日本

1月23日(土)14:00-17:00東京外国語大学 海外事情研究所会議室(研究講義棟四階)ゲスト:岩崎稔(東京外国語大学)、田崎英明(立教大学)、桑田光平(東京外国語大学)

1月25日(月)19:00-22:00高円寺・素人の乱「地下大学」 ゲスト:平井玄(音楽評論家)、白石嘉治(上智大学)

2月4日(木)17:00-20:00筑波大学 総合研究棟A 107教室 ゲスト:佐藤嘉幸(筑波大学)主催:筑波大学現代語・現代文化フォーラム

2月5日(金)18.00-20.30アートエリアB1(京阪電車中之島線「なにわ橋」地下駅構内)ゲスト:本間直樹(大阪大学)、中村征樹(大阪大学)主催:ラボカフェほか

2月6日(土)上映1=14.30-16.00/上映2=16.15-17.45/討議=18.00-19.30 京都大学 農学部総合館W100教室(西棟一階) ゲスト:廣瀬純(龍谷大学)

2月7日(日)15.00-18.00 大阪大学 豊中キャンパス教育研究棟Iステューデントコモンズ開放型セミナー室 ゲスト:斎藤渉(大阪大学)、望月太郎(大阪大学)

2月8日(月)18:00-20:30 神戸大学 瀧川記念学術記念交流会館大会議室 ゲスト:松葉祥一(神戸市看護大学)、中畑寛之(神戸大学)

2月中旬 フランス(パリ、ボルドー、ストラスブール)で開催予定

3月7日(日)15:00-18:00 東京大学本郷キャンパス 法文二号館二階一番大教室 ゲスト:熊野純彦(東京大学)、鈴木泉(東京大学)後援:哲学会

3月13日(土)13:30-17:30 京都大学 人間・環境学研究棟地下講義室 ゲスト:森田伸子(日本女子大学)、山名淳(京都大学)、大河内泰樹(京都産業大学)、小野文生(京都大学) 主催:グローバルCOE「心が活きる教育のための国際的拠点」

3月20日(土)16:30- 渋谷「UPLINK FACTORY」(Bunkamuraより徒歩3分)ゲスト:芹沢一也(シノドス)入場料:1,800円

3月27日(土)15:00-18:00 東京大学駒場キャンパス 18号館ホール 討論「哲学への権利」ゲスト:ボヤン・マンチェフ(国際哲学コレージュ副議長、新ブルガリア大学)、ジゼル・ベルクマン(国際哲学コレージュ・プログラム・ディレクター)、小林康夫(東京大学)主催:グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター(UTCP)」

以後、愛知大学(樫村愛子)、一橋大学(鵜飼哲)、新潟大学(宮崎裕助)、神戸市外国語大学、アメリカ西海岸、韓国などで上映予定


◆参考情報:国際哲学コレージュについて

哲学者ジャック・デリダは1983年10月に政府の依頼を受けて、フランソワ・シャトレらとともにパリに研究教育組織「国際哲学コレージュ(Le Collège internationale de Philosophie: CIPH)」を創設した。国際哲学コレージュは産業・研究、文部、文化の三大臣の後押しを受け、資金を公的に援助されてはいるが、基本的にはアソシエーション法に依拠して運営されている(日本でいうところのNGOやNPO)。コレージュは50名のプログラム・ディレクター(内10名は外国人枠)からなるが、ディレクターの任期は六年で再選はできない。博士号などの学位や社会的地位ではなく、研究計画書によって選抜がおこなわれるため、高校教員でもディレクターに選出され、自分のゼミを担当することができる。そして、哲学という看板を掲げるコレージュの目的は、哲学のみならず、科学や芸術、文学、精神分析、政治などの諸領域の非階層的で非中心的な学術交流によって新しいタイプの哲学を可能にすることである。つまり、国際哲学コレージュは一定の公的資金によって運営される在野の市民団体であり、大学教員とそれ以外の人材によって構成されることで、哲学とその外部との関係を問う組織なのである。デリダは伝統的な高等教育制度――例えば大学――の外部にコレージュを創設したのではなく、その境界を脱構築的に問う仕方でこの組織を創設したと言える。
[PR]

by urag | 2009-12-21 17:53 | イベント告知 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/9474829
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 人文書在庫僅少本フェア第6弾:...      09年12月21日発売:ジョル... >>